説明

痛みを緩和するトレーニング装置

【課題】脱力トレーニングを行う際の身体の一部の動かし始めの位置を、個々の運動者ごとに異なるように設定することができるようにする。
【解決手段】運動者はトレーニング装置本体1におけるサドル2に腰掛け、腕を内外方向に水平に動かして運動する。腕を痛みを感じる方向に回し、痛みを感じる位置から所定の負荷をかけた状態で痛みを感じない位置まで戻して初期位置を決定する。この初期位置から痛みを全く感じない基点となる位置に向けて腕を動かす。腕を嵌め入れる用具4にかける負荷は、最初に最大負荷とし、所定の時間経過後に2次曲線的に減衰させる。基点となる位置に戻った用具4は自動的に初期位置に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は痛みを緩和するトレーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
痛みは本人でなければ分からないものであり、例えば五十肩に代表されるような肩の痛みは相当な苦痛を覚えるものである。
【0003】
そして、斯かる人体の痛みを緩和するためのトレーニングの一つとして脱力トレーニングがある。それは、腕を、痛みを感じる側から痛みを感じない側の方向に向けて動かし、且つ動かし始めの腕に加える初期負荷を最大とし、一定の時間経過後に2次曲線的に減衰させるものである。
【0004】
ところで、人体はその骨格や筋肉が各個人ごとに相違している。このため例えば、肩の痛みの場合には、腕を前正面から水平に横方向に回したときに、どの角度になったときに痛みを感じるかが各個人ごとに異なっている。
【0005】
このようなことから、腕の動かし始めの位置をどこにするかは個々の運動者の身体特性に合わせることが望ましいが、従来の脱力トレーニング装置ではこれが一定の位置に設定されていることから、人によっては効果的な運動を行うことができない場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、脱力トレーニングを行う際の腕や脚部等の身体の一部の動かし始めの位置を、個々の運動者ごとに異なるように設定することができるようになした脱力トレーニング装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
而して、本発明の要旨とするところは、最大負荷から逐次負荷を減衰させる用具を、痛みを感じる身体の一部をもって、痛みを感じる側から痛みを感じない側の方向に向けて一定のストロークの範囲内において動かす動作を繰り返して痛みを緩和するトレーニング装置において、用具に負荷をかける負荷手段と、負荷を制御する負荷制御手段と、用具の現在位置を検出する手段と、設定時における痛みを感じる位置の指定手段と、設定時における動かし始めの位置となる痛みを感じない位置の指定手段と、設定時における痛みを感じる位置から痛みを感じない位置までの負荷を決定する手段とを備え、身体の一部の動かし始めの位置を、個々の運動者ごとに異なるように設定することができるようになしたことを特徴とする痛みを緩和するトレーニング装置にある。
【0008】
また、上記構成において、用具の現在位置と、その位置における用具にかかる負荷を表示する表示部を備えるようになしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脱力トレーニングを行う際の腕や脚部等の身体の一部の動かし始めの位置を、個々の運動者ごとに異なるように設定することができる。もって従来装置よりも効果的なトレーニングを行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態は、用具に負荷をかける負荷手段と、負荷を制御する負荷制御手段と、用具の現在位置を検出する手段と、設定時における痛みを感じる位置の指定手段と、設定時における動かし始めの位置となる痛みを感じない位置の指定手段と、設定時における痛みを感じる位置から痛みを感じない位置までの負荷を決定する手段とを備え、身体の一部の動かし始めの位置を、個々の運動者ごとに異なるように設定することにある。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施例について説明する。
図1は本発明の第1実施例の概略的説明図、図2は操作パネルの平面図、図3は制御部のブロック図、図4は用具のストロークの説明図、図5は用具の初期位置設定とトレーニング開始までの手順を示すフローチャートである。
【0012】
本実施例は肩の痛みを緩和するトレーニング装置であり、1はトレーニング装置本体である。そして、本実施例はトレーニング装置本体1をサドル2、支持台3、縦断面U字形をなし、腕を受容する用具4、4、該用具4、4の夫々の支持杆4a、4aとをもって構成し、運動者はサドル2に腰掛け、腕を用具4、4に嵌め入れて内側に向かって動かす動作を行なうものである。
【0013】
5は前記トレーニング装置本体1における支持台3中に設けた、用具4、4に負荷をかける負荷手段、6は前記負荷手段5を制御する負荷制御手段、7は前記支持台3中に設けた、用具4、4の現在位置を検出する手段である。
【0014】
8は前記支持台3の前方に立設した支柱9の上端部に設置した操作パネルであり、運動者又は指導者が運動中に該操作パネルを見ることができ、且つまた所定の操作を行なうことができる位置に設置している。
【0015】
また、該操作パネル8は、例えば、図2に示す如く中央部に表示部10、該表示部10の左側に電源ボタン11、位置指定ボタン12、該表示部10の下側に負荷選択ボタン13、14、該表示部10の右側にリセットボタン15を夫々配置している。尚、前記表示部10は液晶表示部である。
【0016】
また、該操作パネル8は、図3に示すトレーニング装置の制御部のブロック図に示す通り、バッテリーからなる電源16、スイッチ17、液晶ディスプレイ(LCD)18及びCPU19を備えている。そしてまた、該CPU19は、トレーニング装置本体1における負荷手段5、負荷制御手段6、位置検出手段7に接続している。
【0017】
次に、図5に示した、用具の初期位置設定とトレーニング開始までの手順を説明する。運動者はトレーニング装置本体1におけるサドル2に腰掛け、腕を用具4に嵌め入れる。この位置は図4におけるAの位置、即ち基点となる0度の位置である。次に、運動者は腕を痛みを感じる方向(矢標方向)に水平に回す。尚、このときには用具4には負荷手段5による負荷をかけない。そして、運動者は、ある程度の痛みを感じる位置、即ち図4におけるCの位置(約60度)になったら、操作パネル8における位置指定ボタン12を押す。そして、この位置は操作パネル8におけるCPU19に記憶される。次に、CPU19はトレーニング装置本体1における負荷制御手段6に指令を出し、負荷手段5によって用具4に最大負荷をかけさせる。そして、運動者は、用具4に最大負荷がかかった状態において腕を痛みを感じない元の基点A方向に向けて回すようにする。このとき負荷が大き過ぎて腕を動かすことができないときには、操作パネル8における「NO」の負荷選択ボタン14を押す。次に、この操作によってCPU19は負荷制御手段6に対して負荷を例えば2分の1にするよう指令する。また、これらの操作をするときには、操作パネル8における表示部10に、用具4の位置(角度)と負荷の程度を表示する。
【0018】
そして、運動者は再び腕を内側に向けて動かす動作を行ない、それでもなお動かすことができない場合には再び「NO」の負荷選択ボタン14を押す。これにより前記と同様の手順により用具4にかかる負荷をスタート時の4分の1減少させる。
【0019】
そして再度腕を内側に向けて動かす動作を行ない、その時腕が動いたら「YES」の負荷選択ボタン13を押す。そして、CPU19は、この負荷の数値を記憶する。これにより負荷が決定される。
【0020】
次に、用具4に前記CPU19に記憶された負荷をかけた状態において、運動者は再び腕を内側に向けて動かす。そして、痛みを感じない、心地よい位置、即ち図4におけるBの位置(約35度)になったら、運動者又は指導者は操作パネル8における位置指定ボタン12を押す。そして、この位置はCPU19に記憶される。以上の操作によって初期設定が完了する。
【0021】
そして、トレーニングは、この位置、即ち図4におけるBの位置からAの位置にかけて腕を動かすことによって行い、痛みを感じない位置から痛みを感じない方向に向けて腕を動かすものである。また、腕への負荷は、動かし始めの位置において最大負荷をかけ、所定の時間(数秒〜数十秒)経過してから急激に負荷を減少させ、恰もつっかい棒が外れたかのような負荷のかけ方をするものである。
【0022】
即ち、図4におけるBの位置においてCPU19は負荷制御手段6に対して指令を出し、負荷手段5によって用具4に最大負荷をかけさせる。そして、運動者はこの負荷の状態において腕を図4におけるAの位置の方向に向けて動かそうとする。このとき運動者は腕に相当な力を入れるが、その力は用具4にかかる負荷より小さいため、腕を動かすことはできない。そして、この状態で所定の時間(数秒〜数十秒)が経過したら、2次曲線的に負荷を減衰させる。これはCPU19から負荷制御手段6に対して指令を出すことによって行う。これによって運動者の腕にかかる負荷は急激に減少し、運動者は腕をそのまま図4におけるAの位置まで動かす。そして、再び運動者は腕を図4におけるBの位置まで戻し、再び上記の動作を繰り返すものである。また、運動者がBの位置まで腕を戻すときには、用具4の支持杆4aをモータ等によって機械的に動かすことによって自動的に行うようにするものである。以上のようにして、運動者が運動するときには、運動者に適した所定の位置から動かし始めることができるものである。
【0023】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、脚部の痛みを緩和するトレーニング装置として構成するようになしてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例の概略的説明図である。
【図2】操作パネルの平面図である。
【図3】制御部のブロック図である。
【図4】用具のストロークの説明図である。
【図5】用具の初期位置設定とトレーニング開始までの手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
1 トレーニング装置本体
2 サドル
3 支持台
4、4 用具
4a、4a 支持杆
5 負荷手段
6 負荷制御手段
7 位置検出手段
8 操作パネル
10 表示部
12 位置指定ボタン
13、14 負荷選択ボタン
16 電源
18 液晶ディスプレイ(LCD)
19 CPU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大負荷から逐次負荷を減衰させる用具を、痛みを感じる身体の一部をもって、痛みを感じる側から痛みを感じない側の方向に向けて一定のストロークの範囲内において動かす動作を繰り返して痛みを緩和するトレーニング装置において、用具に負荷をかける負荷手段と、負荷を制御する負荷制御手段と、用具の現在位置を検出する手段と、設定時における痛みを感じる位置の指定手段と、設定時における動かし始めの位置となる痛みを感じない位置の指定手段と、設定時における痛みを感じる位置から痛みを感じない位置までの負荷を決定する手段とを備え、身体の一部の動かし始めの位置を、個々の運動者ごとに異なるように設定することができるようになしたことを特徴とする痛みを緩和するトレーニング装置。
【請求項2】
用具の現在位置と、その位置における用具にかかる負荷を表示する表示部を備えてなる請求項1記載の痛みを緩和するトレーニング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−282775(P2007−282775A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111905(P2006−111905)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(392017303)システム・インスツルメンツ株式会社 (15)
【出願人】(393026733)株式会社ソフィアプレシジョン (9)