癌の処置および予防のための試薬および方法
本発明は、一般に、癌の予防および/または治療に関し、より具体的には、放射線または標準的な化学療法剤を用いない、固形腫瘍およびその転移を含む腫瘍の治療に関する。一実施形態では、本発明は、a)腫瘍細胞を有する被験体を提供する工程と、b)前記被験体から前記腫瘍細胞の少なくとも一部を除去して除去細胞を作製する工程と、c)処理された腫瘍細胞を作製するため、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物を含む刺激剤を用いて、前記除去細胞の少なくとも一部をエキソビボで処理する工程と、d)前記処理された腫瘍細胞(またはその断片)を同じ被験体にインビボで導入して抗癌治療効果を生じさせる工程とを含む方法を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、癌の治療に関し、より具体的には、放射線または標準的な化学療法剤を用いない、固形腫瘍およびその転移を含む腫瘍の治療に関する。好ましい実施形態では、本発明は、癌ワクチンの使用による癌の予防および治療に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
現代の癌療法は、ほとんどが放射線、手術および化学療法剤の使用を伴う。しかし、これらの手段による結果は、一部の腫瘍では有益であるものの、多くの他の腫瘍ではわずかな効果しか得られないかまたは効果がない。さらに、これらのアプローチは、容認できない毒性を有する場合が多い。
【0003】
放射線および手術はいずれも、同じ理論的な短所を被る。単一のクローン原性悪性細胞は、宿主を死滅させるのに十分な子孫を生じさせることができることを考慮すると、新生物細胞の集団全体が根絶されなければならないことが認識されている。一般には、非特許文献1を参照のこと。「全細胞死滅」というこのコンセプトは、治癒を得ようとするのであれば、外科的アプローチには腫瘍の全切除が必要であり、放射線アプローチでは全ての癌細胞の完全な破壊が必要とされることを意味する。実際これはほとんど可能ではなく、まさに、転移がある場合には不可能である。
【0004】
さらに、従来の化学療法癌治療も、腫瘍の完全寛解はほとんど得られず、中程度の反応を生じさせるのに必要なかなり高い投与量レベルは、容認できない毒性を伴う場合が多い。抗癌剤は、典型的には、負の血液学的効果(例えば、有糸分裂の停止ならびに骨髄およびリンパ組織における有形成分の崩壊)、および免疫抑制作用(例えば、細胞数の減少)、ならびに上皮組織(例えば、腸粘膜)、生殖組織(例えば、精子形成不全)、および神経系に対する重篤な影響をもたらす。非特許文献2。高い投与量レベル、およびこの結果得られた毒性は、大部分が抗癌剤自体の標的特異性の欠如により必然的に生じる。薬剤は、癌性である宿主細胞と、非癌性である宿主細胞を区別する必要がある。大多数の抗癌剤は、このレベルにおいて無差別であり、著しい固有の毒性を有する。
【0005】
抗癌剤としての標準的化学療法剤による奏効も、複数の薬剤耐性、多様な構造的に無関係な細胞毒性抗癌化合物に対する耐性の現象に妨げられてきた。非特許文献3。進行性薬剤耐性の根本的な原因は、診断時における腫瘍(例えば、変異細胞)内の薬剤耐性細胞の小集団による可能性がある。非特許文献4。単一薬剤によるこうした腫瘍の治療は、最初に寛解をもたらし、主要な薬剤感受性細胞を死滅させる結果、腫瘍はサイズが縮小する。薬剤感受性細胞がいなくなると、残った薬剤耐性細胞は増殖し続け、最終的に腫瘍の細胞集団を支配する。
【0006】
同じ細胞で2つ以上の異なる薬剤耐性が自然発生する可能性は小さいことから、薬剤の併用により最初に治療することが1つの解決法として提案された。非特許文献5。しかし、現在では、薬剤耐性は、全般的な薬剤耐性を与えることができる膜輸送タンパク質、「P−糖タンパク質」が原因であることが知られている。非特許文献6。表現型的には、腫瘍細胞は、時間とともに全薬剤の細胞内蓄積の減少を示す。要するに、併用化学療法は、答えになっていないように思われる。
【0007】
養子細胞免疫療法は、毒性を低減しつつ標的細胞特異性を改善するために生体自体の免疫系を用いる代替治療方法として提案された。インビボおよびインビトロでのリンホカインによる様々なリンパ球集団の活性化および増殖が研究され、奏効程度は相半ばしている。例えば、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)はいずれも、転移性疾患治療でインターロイキン−2(IL−2)と併用して使用されている。非特許文献7;非特許文献8参照。
【0008】
残念ながら、細胞集団を活性化し増殖させる高レベルのIL−2の包含は、これ自体が患者に対する著しい毒性を伴う。さらに、高レベルのIL−2で培養されたリンパ球は、結局はIL−2に対する不反応性を生じ、続いて増殖および細胞毒性の重大な減少を示すことから、標的細胞特異的細胞集団は、インビトロでは増殖が困難であった。非特許文献9参照。後者の問題も、ヒトにおける遺伝子療法のための細胞担体としてリンパ球をうまく使用する努力を妨げている。
【非特許文献1】GoodmanおよびGilman The Pharmacological Basis of Therapeutics(Pergamon Press、第8版)(1202〜1204頁)
【非特許文献2】P.CalabresiおよびB.A.Chabner、GoodmanおよびGilman The Pharmacological Basis of Therapeutics(Pergamon Press、第8版)(1209〜1216頁)
【非特許文献3】J.H.Gerlachら、Cancer Surveys、5:25〜46頁(1986年)
【非特許文献4】J.H.GoldieおよびAndrew J.Goldman、Cancer Research、44:3643〜3653頁(1984年)
【非特許文献5】V.T.DeVita,Jr.、Cancer、51:1209〜1220頁(1983年)
【非特許文献6】M.M.GottesmanおよびI.Pastan、Trends in Pharmacological Science、9:54〜58頁(1988年)
【非特許文献7】Rosenbergら、N.Engl.J.Med.316:889〜97頁(1987年)
【非特許文献8】Belldegrunら、Cancer Res.48:206〜14頁(1988年)
【非特許文献9】Schoofら、Cancer Res.50:1138〜43頁(1990年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
必要とされているのは、多様な腫瘍タイプに対して確実に殺腫瘍性である特異的な抗癌アプローチである。重要なことに、治療は、最小限の宿主毒性で有効でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、一般に、癌の予防および/または治療に関し、より具体的には、放射線または標準的化学療法剤を用いない、固形腫瘍およびその転移を含む腫瘍の治療に関する。一実施形態では、本発明は、a)腫瘍細胞を有する被験体を提供する工程と、b)前記被験体から前記腫瘍細胞の少なくとも一部を除去して除去細胞を作製する工程と、c)処理された腫瘍細胞を作製するため、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物を含む刺激剤を用いて、前記除去細胞の少なくとも一部をエキソビボで処理する工程と、d)前記処理された腫瘍細胞を同じ被験体にインビボで導入して抗癌治療効果を生じさせる工程とを含む方法を含む。被験体にキャリーオーバーされる薬剤量を最少化するため、前記処理された腫瘍細胞を導入する前に、これらは(例えば緩衝液、培地などで)洗浄することができる。好ましい実施形態では、本発明は、a)腫瘍細胞を有する患者を提供する工程と、b)前記患者から前記腫瘍細胞の少なくとも一部を除去して除去細胞を作製する工程と、c)処理された腫瘍細胞を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤に、前記除去細胞の少なくとも一部をエキソビボで曝露する工程と、d)前記処理された腫瘍細胞を溶解して細胞断片を作製する工程と、e)前記断片を同じ患者にインビボで導入して抗癌治療効果を生じさせる工程とを含む方法を含む。一実施形態では、工程(d)の前に、次の工程へキャリーオーバーされる薬剤量を最少化するため、処理された細胞を洗浄することが好ましい。本発明は、工程(c)の任意の特定の曝露/処理時間により限定されるものではない。1秒から72時間の間、より好ましくは30秒から1時間の間、さらにより好ましくは1分から30分の間の曝露時間を含む、様々な曝露時間が意図される。本発明は、工程(d)において溶解の性質により限定されるものではない。一実施形態では、処理された腫瘍細胞は、細胞を凍結/解凍して溶解される。別の実施形態では、溶解剤を使用する。溶解剤は、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム)、酵素(例えばQiagen Buffer B1 1ml、リゾチーム20μl、プロテアーゼ45μlおよびQiagen Buffer B2 0.35mlから成る酵素消化緩衝液)、または単純な溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)もしくは例えば、低張溶解緩衝液(5mM リン酸ナトリウム pH7.4、プロテアーゼ阻害剤カクテル、5mM DTT)で、細胞を浸透圧で溶解するためのより複雑な溶液であり得る。別の実施形態では、細胞は超音波処理される。別の実施形態では、細胞抽出物が作製される(例えば膜抽出物、細胞質抽出物など)。別の実施形態では、これらの方法の組み合わせが使用される(例えば低張溶解、それに続くホモジナイザー、例えばポリトロンPT 3000、Kinematica社、ルツェルン、スイスでの処理)。本発明は、細胞断片または細胞成分の導入方法に限定されるものではなく、これらは静脈内(IV)、筋肉内(IM)、腹腔内(IP)、皮下(SC)、皮内(ID)などで投与することができる。特定の癌には特定の方法で断片/抽出物を投与することが好ましい場合がある。例えば、皮膚癌の場合、メラノーマなどの癌を治療するため皮膚を介して(例えば皮下、経皮などで)断片/抽出物を投与することが(一実施形態では)好ましい場合がある。前立腺癌の場合、断片/抽出物を腹腔内投与することが(一実施形態では)好ましい場合がある。一方、幾つかの実施形態では、断片/抽出物は、腫瘍から離れた部位、および腫瘍の組織型(例えば乳癌、肺癌など)に関係のない組織(例えば筋肉、皮膚など)に投与する。
【0011】
本発明は、インビボでの断片/抽出物のみの導入に限定されるものでもなく、他の化合物(アジュバント、マイトジェンなどを含むが、これらに限定されない)または成分(ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質の持続性もしくは一過性発現を提供する発現構築物、または核酸分子の持続性もしくは一過性生成を提供する構築物を含むが、これらに限定されない)も意図される。他の化合物に関して、本発明は、一実施形態では、断片/抽出物の前、後、または一緒に1つまたは複数のサイトカインの投与を意図する。表1は、免疫応答を高めるため、インビボで断片/抽出物と共に投与され得る、或いは、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様薬剤と共に単純投与され得る(すなわち細胞または溶解物を用いずに該薬剤を直接投与)サイトカインの例示的な例を提供する。特に好ましい実施形態では、タプシガルギンと一緒に(またはタプシガルギン処理した細胞、断片もしくは溶解物と共に)投与されるサイトカインは、インターフェロン−γである。
【0012】
【表1−1】
【0013】
【表1−2】
さらに他の実施形態では、患者は、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF、一般名サルグラモスチム(sargramostim)、商品名ロイキン(Leukine))および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF、一般名フィルグラスチム、商品名ノイポジン)など、骨髄における白血球細胞の産生を刺激する1つまたは複数の薬剤と共に前、後または同時に治療され得る。好ましい発現構築物に関して、一実施形態では、本発明は、長期持続効果を生じさせるため断片/抽出物の前、後、または一緒にCD40L発現プラスミドを導入することを意図する。
【0014】
患者への生癌細胞の再導入を回避するため、一実施形態では、断片/抽出物は無細胞であることが好ましい(しかし、幾つかの場合では、細胞は急速に死滅するまたは患者により急速に破壊されるため、抽出物よりむしろ細胞、または細胞を含有する抽出物を再導入することができ得る)。一実施形態では、前記腫瘍細胞は生検から得られ、抽出物は同じ患者に投与される。別の実施形態では、断片/抽出物は別の患者に導入される(実際、断片/抽出物は複数の患者で幅広く使用され得る)。第3の実施形態では、細胞は、連続的な抗癌使用のための細胞株として確立される。言い換えれば、この第3の実施形態では、腫瘍細胞は必要とされる度に患者から採取されるのではなく、代わりに、細胞株(通常は患者の腫瘍と同じ癌型)から提供される。細胞株は、従来技術(例えば、DMSO、培地、ウシ胎仔血清など)を用いて液体窒素下、適切な容器で保管することができる。一方、細胞株は、使用まで培養下で連続的に継代することができる。本発明は、特定の癌型に限定されるものではない。皮膚癌細胞、前立腺癌細胞、乳癌細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、膵臓癌細胞、結腸癌細胞、肺癌細胞、骨癌細胞およびリンパ腫を含むがこれらに限定されない、様々な癌型が意図される(例示的細胞株のリストについては表2参照)。本発明は、単回治療に限定されるものではなく、すなわち断片/抽出物(他の化合物または成分の有無にかかわらず)は、周期的に(例えば週1回、月2回、月1回、6カ月ごとに1回、年1回など)投与することができる。
【0015】
【表2】
腫瘍細胞が患者から除去される幾つかの実施形態では、a)原発腫瘍(またはその部分)を除去するための標準的な手術を使用することが意図される。b)処理された腫瘍細胞を作製するため、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物を含む刺激剤を用いて、エキソビボで腫瘍細胞を処理し、c)前記処理された腫瘍細胞由来の腫瘍細胞断片/抽出物を調製し、d)前記断片/抽出物を同じ患者にインビボで導入した後、抗転移効果が生じることが意図される。このように、本発明の実施形態は、従来の外科的処置と併用することができる。例えば、一実施形態では、乳房の原発腫瘍は、従来の手術(すなわち部分または全乳房切除術)により除去することができ、断片/抽出物は、転移治療のため術後に患者に投与することができる。幾つかの実施形態では、患者が転移を有することがわかっているか否かにかかわらず(または転移は検出されたが転移性疾患の全範囲はわからない場合に)、治療が行われる。言い換えれば、本発明の保護療法は、従来の手術後、ならびに既知の転移性疾患の救急治療後に患者に適用することができる。
【0016】
一方、原発腫瘍を除去することが常に可能なわけではない。腫瘍細胞が患者から除去される幾つかの実施形態では、a)原発腫瘍(またはその部分)を除去するための標準的な手術を使用することが意図される。b)処理された腫瘍細胞を作製するため、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物を含む刺激剤を用いて、腫瘍細胞をエキソビボで処理し、c)前記処理された腫瘍細胞由来の腫瘍細胞断片/抽出物を調製し、d)前記断片/抽出物を同じ患者にインビボで導入した後、原発腫瘍(および残存転移性疾患)に対する抗腫瘍効果が生じることが意図される。このように、本発明の実施形態は、従来の外科的処置と併用することができる。
【0017】
さらに別の実施形態では、被験体は癌を予防するために治療される。好ましい実施形態では、特定の癌のリスクがある(年齢、遺伝的素因、放射線曝露、煙への曝露、粒子の吸入、変異誘発物質の消費、HIV感染などのためであろうとなかろうと)被験体が治療される。一実施形態では、本発明は、a)癌を発症するリスクのある患者および癌細胞株を提供する工程と、b)処理された癌細胞を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤で、前記癌細胞株由来の細胞をエキソビボで処理する工程と、c)前記患者にインビボで前記細胞を導入して抗癌予防効果を生じさせる工程とを含む方法を意図する。当然のことながら、生癌細胞を導入することは、(たとえこれらが、死滅または破壊されようと)魅力的でない可能性がある。したがって、一実施形態では、本発明は、a)癌を発症するリスクのある患者および癌細胞株を提供する工程と、b)処理された癌細胞を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤で、前記癌細胞株由来の細胞をエキソビボで処理する工程と、c)前記処理された癌細胞由来の細胞断片/抽出物を調製する工程と、d)前記患者にインビボで前記断片/抽出物を導入して抗癌予防効果を生じさせる工程とを含む方法を意図する。この特定の実施形態では、癌細胞は確立された細胞株由来であってよく、断片/抽出物はワクチンと見なすことができる。本発明は、単回治療に限定されることを意図するものではなく、すなわち断片/抽出物(他の化合物または成分の有無にかかわらず)は、周期的に(例えば週1回、月2回、月1回、6カ月ごとに1回、年1回、5年に1回、10年に1回など)投与することができる。本発明は、特定の癌型に限定されるものではない。皮膚癌細胞、前立腺癌細胞、乳癌細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、膵臓癌細胞、結腸癌細胞、肺癌細胞、骨癌細胞およびリンパ腫を含むがこれらに限定されない、様々な癌型が意図される(例示的な細胞株のリストについては表2を参照)。好ましい実施形態では、癌のリスクのある被験体は、治療時には癌がない。
【0018】
上述のワクチンは、集団を治療する量で製造され得る。例えば、一実施形態では、50歳を超える(すなわち55歳を超える)疾患のないヒトは、ワクチンを予防剤として、例えば1回限りのワクチンとしてまたは長期間にわたり周期的に繰り返し(例えば、2〜5年ごとまたは5〜10年ごとに)投与され得る。実際、癌に対するより広範囲の予防を提供するため、集団は、少なくとも2つの異なる癌型の(すなわち処理された癌細胞を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物を含む刺激剤を用いて、癌細胞をエキソビボで処理した後の)断片/抽出物を含む「カクテル」ワクチンにより治療され得る。「カクテル」用の異なる癌型は、特定の年齢以降の特定集団における発症の増加(例えば男性における55歳以降の結腸癌および前立腺癌の増加、女性における55歳以降の乳癌および子宮頸癌の増加)を基に選択することができる。
【0019】
さらに別の実施形態では、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物を含む刺激剤を、インビボで投与する。一実施形態では、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物は、担体と共に、担体に入れてまたは担体上で投与される。好ましい実施形態では、タプシガルギンは、送達ビヒクルにカプセル化される。本発明は、送達ビヒクルの性質に制限されるものではない。一実施形態では、送達ビヒクルは、疎水性担体、例えば疎水性相互作用ビーズ(このようなビーズは、クロマトグラフィー試薬として使用される)を含むがこれに限定されない疎水性粒子を含み、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物の存在下で強力な炎症シグナルを送達することができる。図2Bは、タプシガルギンで処理したブチルセファロースビーズが、抗原提示細胞からのIL−8放出をもたらすために使用された結果を示す。別の実施形態では、本発明は、送達ビヒクルとして、同様に疎水性であるリポソームを意図する(図2C参照のこと)。
【0020】
カプセル化タプシガルギン(例えばリポソームカプセル化)は、局所進行癌または転移癌を有する癌患者を含むがこれらに限定されない癌患者に全身または局所投与できることが意図される。これらは、静脈内、髄腔内、腹腔内、鼻腔内、および経口投与することができる。これらはまた、肺内投与により(例えば吸入または気管内チューブを介して)導入されてもよい。これらはまた、メラノーマなどの皮膚癌を含む癌を治療するため皮膚を介して投与することもできる。これらは、単独でまたは他の化合物と併用して投与することができる。これらは、手術前に患者における転移量(metastatic load)を低減するのに投与することができる。または、これらは術後に投与することができる。
【0021】
上述のエキソビボ処理方法は、直接インビボ投与(例えば静脈内注射)するよりも場合によっては利点を有し得る。エキソビボ処理の場合、1)タプシガルギンは適切な標的細胞、すなわち、癌細胞に接触する;2)培養下での曝露は、患者における断片/抽出物の再導入前に該薬剤を除去することを可能にする、すなわち患者はインビボできわめて少量のタプシガルギンにのみ曝露される(最小限の毒性をもたらす)および3)刺激抗原への全身曝露がないことは、タプシガルギンに対する抗体誘導の機会を減少させる。
【0022】
一方、1)タプシガルギンが適切な標的細胞、すなわち、癌細胞に接触する;2)患者がインビボできわめて少量のタプシガルギンにのみ曝露される(最小限の毒性をもたらす)および3)タプシガルギンに対する抗体誘導の機会が少ないように、直接インビボ投与を使用できる場合もあり得ることが意図される。例えば、腫瘍が、内視鏡検査、気管支鏡検査、膀胱鏡検査、結腸鏡検査、腹腔鏡検査、およびカテーテル検査から成る群から選択される処置を介して接触可能な場合、多量のタプシガルギンに患者を曝露することなく癌細胞を標的にすることが可能であり得る。さらに、皮膚癌は、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物(リポソーム製剤中であろうと他の疎水性製剤中であろうと)の直接インビボ投与に特によく適している。皮膚表面の皮膚癌は、インサイチュでタプシガルギンに接触することができる。皮膚内または皮膚下の皮膚癌は、皮下、皮膚内、または経皮的に接触され得る。一実施形態では、本発明は、a)皮膚癌を有する患者を提供する工程と、b)前記皮膚癌をタプシガルギンに接触させる工程とを含む方法を意図する。一実施形態では、タプシガルギンはクリームまたは軟膏において局所適用される。一実施形態では、タプシガルギンはパッチを介して皮膚に適用される。
【0023】
皮膚に関して、本発明は、特定の実施形態において、予防的抗癌免疫応答を誘発するため健常なメラニン細胞(または樹状細胞)をタプシガルギンに曝露(例えばリポソーム送達、皮膚パッチなどを介して)することを意図する。このようなアプローチでは、特定の機構に限定されないものの、健常なメラニン細胞の近くに導入されたタプシガルギンが、免疫系を活性化して遠位部位でのメラノーマの進行を抑制(または遠位部位でのメラノーマ形成に対して防御)し得ると考えられる。機構に関係なく、タプシガルギンによる処理は、癌から遠位の部位で投与されても有益であり得ることが(以下に)実験的に示される。
【0024】
本発明はまた、1)タプシガルギンが適切な標的細胞、すなわち、癌細胞に接触する;2)患者がインビボできわめて少量のタプシガルギンにのみ曝露される(最小限の毒性をもたらす)および3)タプシガルギンに対する抗体誘導の機会が少ない、直接インビボ投与に対する他のアプローチも意図する。例えば、一実施形態では、本発明は、1)タプシガルギンを適切な標的細胞、すなわち、癌細胞に接触させるように、タプシガルギンが標的分子または部分に結合される;およびこれにより2)患者がインビボできわめて少量のタプシガルギンにのみ曝露される(最小限の毒性およびタプシガルギンに対する抗体誘導の機会の減少をもたらす)、直接インビボ投与に対する標的アプローチを意図する。本発明は、標的分子もしくは部分、または結合体の性質により制限されるものではない。様々な標的分子または部分が意図される。一実施形態では、標的分子は、抗体またはこの断片(Fab、一本鎖など)であり、結合体は、参照により本明細書に組み込まれている、Rodwellら、米国特許第4,671,958号および参照により本明細書に組み込まれている、Goersら、米国特許第4,867,973号に記載の通りに作製される。本発明は、抗体の性質により制限されるものではない。モノクローナル抗体が使用され得る。しかし、ヒト化または完全なヒト抗体が好ましい。
【0025】
本発明は、標的分子のための標的の性質(すなわち抗体のための抗原の性質)により制限されるものではない。例えば、抗体は、ヒト癌細胞の受容体(例えばエストロゲン受容体)またはヒト癌細胞表面の癌遺伝子産物を標的にし得る。一方、本発明は抗体標的化に限定されない。一実施形態では、タプシガルギンはエストロゲンに直接結合され得るため、(抗体を使用することなく)ヒト癌細胞のエストロゲン受容体に送達され得る。或いは、タプシガルギンは、他のステロイド性アンドロゲン(シス−アンドロステロン、エストラジオール、テストステロン、19−テストステロン、および5−α−ジヒドロテストステロン)またはこれらに対応するペプチド類似体に結合することができる。一実施形態では、タプシガルギンは、参照により本明細書に組み込まれている、Myersら、米国特許第5,087,616号に記載の方法と類似した方法で上皮増殖因子などの増殖因子に結合することができる。
【0026】
任意の機構に限定されないものの、細胞をタプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物に曝露することは、癌細胞を免疫賦活性にすると考えられる。腫瘍を有する被験体に投与された場合、抽出物は、好ましくは腫瘍退縮をもたらす殺腫瘍反応を誘導する。本明細書では、「殺腫瘍反応」という用語は、腫瘍細胞が死滅されることを意味し、腫瘍細胞を死滅させる任意の特定の方法に限定されることを意味しないことを理解するべきである。例えば、腫瘍細胞は直接的(例えば、細胞間相互作用)または間接的(例えば、サイトカイン様インターフェロンの放出)に死滅することがあり得る。サイトカインに関して、上述された断片/抽出物は、免疫細胞においてサイトカイン分泌を誘導することが本明細書で示される。
【0027】
一実施形態では、本発明は、タプシガルギン様免疫効果のための化合物をスクリーニングするためのインビトロアッセイを意図する。例えば、一実施形態では、本発明は、a)癌細胞、およびマーカータンパク質の発現を促進するNF−κBプロモーターをコードするDNA構築物をトランスフェクトされた前単球細胞株を提供する工程と、b)処理された癌細胞株を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤で前記癌細胞をインビトロで処理する工程と、c)インビトロで前記前単球細胞株に前記処理された癌細胞を導入する工程と、e)前記マーカータンパク質の量を測定する工程とを含む方法を意図する。別の実施形態では、本発明は、a)癌細胞、およびマーカータンパク質の発現を促進するNF−κBプロモーターをコードするDNA構築物をトランスフェクトされた前単球細胞株を提供する工程と、b)処理された癌細胞株を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤で前記癌細胞をインビトロで処理する工程と、c)前記処理された癌細胞由来の細胞抽出物を調製する工程と、d)インビトロで前記前単球細胞株に前記抽出物を導入する工程と、e)前記マーカータンパク質の量を測定する工程とを含む方法を意図する。スクリーニングアッセイは、前単球細胞株のみを使用することに限定されるものではない。細胞株RAWなどの単球様細胞株も、使用されてよい。さらに、前単球細胞株が使用される場合、本発明は、特定の細胞株により制限されるものではない。ML1、HL60、およびU−937を含む様々な前単球細胞株が知られている。好ましい前単球細胞株は、ヒト前単球細胞株THP−1およびMonoMac−6である。
【0028】
一実施形態では、エキソビボ方法は、患者が前記断片/抽出物に曝露されないようにさらに修正される。むしろ、免疫細胞は、インタクトな癌細胞または断片/抽出物にエキソビボで曝露される。例えば、患者のリンパ球は患者から除去され、刺激されたリンパ球を生じるように、処理された(すなわちタプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物で処理された)腫瘍細胞または断片/抽出物にエキソビボで曝露される。この後、前記刺激されたリンパ球は、抗癌治療効果と共に患者に再導入される。本発明は、免疫細胞の由来または性質により制限されるものではない。好ましくは、免疫細胞は、リンパ球(例えば、腫瘍浸潤リンパ球)、マクロファージ、樹状細胞(など)といった造血細胞、または免疫細胞になることができる細胞である。さらに、これらは、骨髄(例えば、吸引により大腿から)、脾臓または抹消血(例えば、ヘパリンにより回収され、フィコール/ハイパック(Ficoll/hypaque)勾配により分離される)などの様々なソースから、および腫瘍から(例えば、腫瘍浸潤リンパ球)単離することができる。これらは、リンパ節から得られることが好ましい。これらは、正常な、疾患のないドナーから得ることができるものの、腫瘍を有する宿主から得られることも好ましい。
【0029】
本発明は、癌治療のための製剤および方法に限定されるものではない。一実施形態では、タプシガルギンおよびタプシガルギン様化合物は、免疫応答、および特に細胞性免疫応答を高めるのに一般に使用することができる薬剤として意図される。一実施形態では、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物は、病原体に対する免疫応答を高めるのに使用される。このような病原体には、細菌(例えば大腸菌、ヒト型結核菌、炭疽菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌、ピロリ菌、野兎病菌)、ウイルス(例えばA型、B型、C型、D型およびE型肝炎、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、HIV)、原虫(例えばクリプトスポリジウム、ランブル鞭毛虫、マラリア原虫、クルーズトリパノソーマ)、真菌(例えばカンジダ、ニューモシスティス、白癬)、および寄生虫(例えば条虫)が含まれるがこれらに限定されない。本発明は、病原体に対する反応の増大が得られる方法により制限されるものではない。一実施形態では、病原体の標準的製剤(熱殺菌、ホルマリン処理などがされているかにかかわらず)が、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物と共に投与(例えばIP、IM、SC、IDなど)される。別の実施形態では、病原体由来の精製抗原(例えば組換え発現タンパク質)が、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物と一緒にワクチンにおいて使用される。別の実施形態では、病原体抗原をコードする核酸(ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質の持続性もしくは一過性発現をもたらす発現構築物、または核酸分子の持続性または一過性生成をもたらす構築物)が、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物と一緒に(例えばIP、IM、SC、IDなどで)投与される。
【0030】
本発明は、免疫応答の増大が有用となり得る他の状況を意図する。例えば、一実施形態では、本発明は、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物が、エンドトキシン耐性に対する闘いにおいて使用され得ることを意図する。エンドトキシン耐性は、細菌感染中の先天性免疫系の活性化亢進から生体を防御するための適応反応であると考えられる。しかし、敗血症の初期発症を防ぐとはいえ、エンドトキシン耐性は、敗血症生存者におけるその後の感染に対し免疫応答の致命的な鈍化ももたらし得る(Koxら(2000年)Intensive Care Med.26、124頁)。敗血症ショックから患者を治療する療法を見出すための相当な努力にもかかわらず、これまでのところほとんどの臨床試験が、残念な結果となった(Koxら(2000年)Intensive Care Med.26、124頁)。これらのほとんどが、IL−1アンタゴニストまたは抗TNFもしくは抗LPS抗体の投与による過剰炎症状態のダウンレギュレーションを目的としていた。これらの療法の失敗の理由の1つは、敗血症の発症から治療開始までの間の遅れである可能性があり、故に、患者が入院する時点で、初期の過剰炎症状態は、二次性低炎症反応により既に弱められている。したがって、新たな療法は、炎症誘発性分子による治療による免疫応答の回復に重点を置いている(Dockeら(1997年)Nature Med.3(6)678頁)。一実施形態では、本発明は、敗血症の被験体および/または敗血症のリスクのある被験体(例えば動物に咬まれた者、銃で撃たれた者など)にタプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物を投与する(インビボで、または細胞をエキソビボで処理し再注射する)ことによる応答の回復を意図する。
【0031】
タプシガルギンおよびタプシガルギン様化合物は、抗体反応を阻害する可能性がある。本発明は、したがって、(喘息症状を有する被験体において、または全身性ループスエリテマトーデスもしくは望ましくない抗体産生を特徴とする他の自己免疫疾患を有する被験体において)抗体反応が望ましくないまたは抑制される必要がある場合の、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物の投与を意図する。
【0032】
タプシガルギンおよびタプシガルギン様化合物は、脱毛のため局所使用することができることがわかった。皮膚においてuM量で使用される場合、2週間以上(最大で18週間も)ほとんど再生することなく毛を除去することができる。高用量(mM)も脱毛をもたらすが、関連炎症を避けるべきである。故に、50uM以下の用量(0.4uMから40uM)が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
定義
本明細書では、「被験体」はヒトまたは動物であり得る。患者は、病院であれ、通院患者としてであれ、診療所であれ、または医院であれ、医療を受けているヒトである。「癌のリスクのある被験体」および「癌のリスクのある患者」は、様々な理由で(年齢、遺伝的素因、放射線曝露、煙への曝露、粒子の吸入、変異誘発物質の消費、HIV感染などのためであれ何であれ)リスクのある可能性がある。例えば、ある人は、彼/彼女が癌の罹患歴を有する家族の一員であるという理由でリスクのある可能性がある。一方、ある人は、遺伝子スクリーニングアッセイの結果によりリスクのある可能性がある。後者に関して、突然変異の検出は、癌および/または癌になる傾向がある個人(すなわちリスクのある)の診断を含むがこれに限定されず、臨床診断においてますます重要な分野となっている。タンパク質トランケーションテスト(PTT)は、ナンセンス、および切断タンパク質産物の生成をもたらすフレームシフト突然変異を検出する方法である。ヒトmutLホモログおよびヒトnutSホモログ(いずれも結腸癌に関与)、ならびにBRAC1(家族性乳癌に関与)などの癌関連遺伝子は、他の方法と並んで、現在この方法で変異をスクリーニングすることができる。こうした切断変異(および他の種類の変異)を有することがわかっている者が、癌のリスクがあると認識される。
【0034】
タプシガルギシンおよびタプシガルギンは、タプシアガルガニカL(Thapsia garganica L)の根から合成または(より一般的には)抽出することができる天然化合物(近縁グアイアノリド類(guaianolide))である。実際、タプシアで見出される少なくとも15種類の近縁グアイアノリド類がある(以下の表3参照)。これら16種類の天然化合物は、C−2の位置の酸素置換基の存在により区別される2つの分子シリーズに分類される。トリロボライド(trilobolide)シリーズの化合物では、この置換基が欠落している。タプシガルギンは幾つかの供給元から市販されている。MP Biomedicals社(アーバイン、CA)、Sigma社、Calbiochem社、およびAlomone Labs社。タプシガルギシンも市販されている(Calbiochem社)。
【0035】
【表3】
タプシガルギンは、セスキテルペンラクトン(以下の構造1参照)またはセスキテルペンラクトンテトラエステルと呼ばれることが多い。タプシガルギン誘導体は、様々な戦略で作製された。例えば、デアセチルタプシガルギン(deacetylthapsigargin)を得るためO−10のアセチル基の加水分解が行われた(以下の構造2参照)。
【0036】
【化1】
ヒドロキシル基の1つのアセチル化およびカルボニルラクトンのメチレン基への還元も行われた。本明細書では、「タプシガルギン関連化合物」には、タプシガルギン誘導体、類似体および類似の活性を有する化合物が含まれる。故に、天然の類似体(上記表2参照)および合成類似体(下記参照のこと)は、本発明の範囲内にあるものである。実際、一般にはセスキテルペノイドおよび具体的にはグアイアノリドは、本発明の範囲内にあるものである。幾つかのタプシガルギン類似体は、タプシガルギシンを還元して得られるラクトールのO−11およびO−12をアルキル化またはアシル化して合成された。α配置置換基の導入は、類似体のCa(2+)−ATPase阻害能力を減少させたのに対し、酵素はβ配置置換基に対しより寛容であった。これは、ラクトン環のα面(alpha−face)が、阻害剤が酵素に結合した場合、結合部位と密接に接触していることを示している。合成的に作製された幾つかの類似体は、強力な活性を有することを示した(以下の化合物77など)。他の類似体にはL12ADTが含まれる。
【0037】
【化2】
誘導体に関して、本発明は、8−O−デブタノイルタプシガルギン、8−O−(4−アミノシンナモイル)−8−O−デブタノイルタプシガルギン(ACTAと呼ばれる)を含むがこれらに限定されない多様性を意図する。タプシガルギンC8誘導体(ZTG)は、4−アジド[カルボキシル−14C]安息香酸でデブタノイルタプシガルギンをアシル化することにより合成された。
【0038】
「類似の活性を有する」化合物に関して、タプシガルギン(TG)は、筋小胞体および小胞体由来のCa(2+)−ATPaseの強力な阻害剤である。過去の酵素試験は、Ca(2+)−ATPaseは親和性<1nMでTGを結合する際、デッドエンド複合体(dead−end complex)に閉じ込められる、およびこの複合体はE(2)酵素状態と酷似すると結論している。しかし、類似の活性を有する化合物が、同じ機構を介して作用する必要はない。類似の効力を有する可能性のある薬剤には、2,5−ジ−(tert−ブチル)−1,4−ベンゾヒドロキノン、コレシストキニンオクタペプチド(CCK−8)、シクロピアゾン酸、カルシウムイオノフォアA23187、3,3’−ジインドリルメタン(DIM)、環置換DIMおよび1,1−ビス(3’−インドリル)−1−(p−置換フェニル)メタン(C−DIM)、N,N−ジメチル−D−エリトロ−スフィンゴシン(DMS)、エコナゾール、イノシトール1,4,5−三リン酸、およびパスツレラマルトシダ毒素(PMT)が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書では、「抗癌治療効果」には1つまたは複数の以下のものが含まれる:癌細胞増殖の阻害、癌細胞死の増加(殺腫瘍反応)、腫瘍浸潤の減少、全腫瘍量の減少、局所腫瘍量の減少、原発腫瘍サイズの減少、転移予防、転移数の減少、転移サイズの減少、疾患進行の阻害(一時的であろうと永続的であろうと)、および延命。治療は被験体を無病にさせることが望まれるが、本発明は癌を治癒させることに限定されるものではない。癌の進行をただ遅らせるだけでも治療効果はある。本発明は、効果の規模に限定されるものではない。例えば、原発腫瘍(または転移)サイズの減少は、わずか10%減または90%(以上)減であってもよい。また、本発明は、抗癌治療効果の持続時間に限定されるものでもない。治療(本明細書に記載された様々な実施形態による)は、一時的な癌細胞増殖の阻害、一時的な癌細胞死の増加、一時的な腫瘍浸潤の減少、一時的な全腫瘍量の減少、一時的な局所腫瘍量の減少、一時的な原発腫瘍サイズの減少、一時的な転移予防、一時的な転移数の減少、または一時的な転移サイズの減少のみをもたらし得る。一時的な効果は、数週間から数カ月、または数カ月から数年続き得る。これらのパラメータは、測定する(例えば原発腫瘍サイズの減少を)のが比較的容易である。転移予防および延命に関して、これらのパラメータは、特定の腫瘍型、病期などについて患者集団データと比較して測定することができる。本明細書では、「抗癌予防効果」または「予防効果」は、新たな癌の発症を低減する効果を含む。このパラメータは、動物で立証することができ、ヒトでは集団ベースで測定することができる。
【0040】
本明細書では、「マーカー」および「標識」は、検出可能な化合物または部分である。これらは、酵素、蛍光分子などであり得る。例示的酵素には、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、細菌ルシフェラーゼ、昆虫ルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼ(Renilla koellikeri)が含まれる。これらは全て、適切な基質およびアッセイ条件の存在下で検出可能なシグナルを発生することができる。
【0041】
本発明は、カチオン性リポソームを含む様々な種類の「リポソーム」を意図するが、これらに限定されない。本発明は、このようなリポソームの正確な組成により制限されるものではない。一実施形態では、リポソームは、1つまたは複数の糖脂質を含む。好ましい実施形態では、リポソームは、1つまたは複数のリン脂質を含む。
【実施例】
【0042】
実験
以下は、本発明により意図される特定の実例および実施形態を示し、限定されるものではない。
【0043】
(実施例I)
基本的実験手順
この例は、以下の実施例II〜VIIで使用される基本的な材料および方法を提供する。これらの特定の実験は、特定の化合物および方法を利用しているが、他の類似の化合物および方法も、類似のデータをもたらすことができる。
【0044】
細胞株
ヒト子宮頸上皮細胞株HeLaおよびマウスB16−F10メラノーマは、アメリカンTCCから購入し、10%ウシ胎仔血清(Sigma−Aldrich社、セントルイス、MO)を補充したダルベッコ改変イーグル培地[DMEM(Cellgro(登録商標)、ハーンドン VA)]で維持した。以下に記載された全ての細胞ストレス/死関連処理は、初回スクリーニングにおいてHeLa細胞を用いて行った。ヒト前単球白血病THP−1(ATCC、マナッサス VA)および前マクロファージMonoMac6細胞を、この試験で利用された細胞を提示するレポーター抗原として利用した。Ziegler−Heitbrockら、「Establishment of a human cell line(Mono Mac 6)with characteristics of mature monocytes」Int.J.Cancer 41:456〜461頁(1988年)。両方の系は、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI−1640培地(Cellgro(登録商標))で維持した。特に注記のない限り、細胞は全て5% CO2を補充した加湿インキュベーターで37℃にて維持した。
【0045】
化合物
以下のリストには、この試験で評価される小分子化合物が含まれる:タプシガルギン、タプシガルギシン(MP Biomedicals社、アーバイン CA)、1,2−ビス(o−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸テトラ(アセトキシメチル)エステル[BAPTA−AM、(EMD Biosciences社、サンディエゴ、CA)]、エチレングリコール−ビス(β−アミノエチル)−N,N,N’,N’−テトラアセトキシメチルエステル[EGTA−AM(EMD Biosciences社)]、1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、テトランドリン、KCl、アミロイドペプチドAβ1−42、1−オレオイル−2−アセチル−sn−グリセロール(OAG)、カルシマイシンA23187、ジフェニルボリン酸2−アミノエチル(2−APB)、ヒスタミン、シクロピアゾン酸、2,5−ジ−(t−ブチル)−1,4−ヒドロキノン[BHQ(EMD Biosiences社)]、GdCl3、塩酸ニカルジピン、1−(o−クロロ−α,αジフェニルベンジル)イミダゾール(クロトリマゾール)、アパミン、カリブドトキシン、ラジシコール、ブレフェルジンA、ツニカマイシン、タモキシフェン、イオノマイシン、スタウロスポリン、シス−ジアミン白金(II)ジクロリド(シスプラチン)、パクリタキセル、メトトレキサート、シクロヘキシミド、およびラパマイシン。特に注記のない限り、化合物は全てSigma−Aldrich社から購入した。化合物を、公開された文献に基づく一連の濃度でHeLa細胞に添加する前にメーカーの推奨により溶解し、1分間から2日間インキュベートした。炎症pam3cys−ser−(lys)4,ヒドロクロリド(Pam3Cys)、細菌フラジェリン、およびリポ多糖の既知のメディエーターは、EMD Biosiences社から購入した。
【0046】
DNA構築物
評価する細胞死誘導トランス遺伝子には、ヒトカスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ3、ヒトインスリン増殖因子−1受容体細胞内ドメイン(IGF−1R IC)、およびニューロキニン−1受容体(NK1R)が含まれ、全てpcDNA3.1ベクター(Invitrogen社)にクローニングした。マウスCD40L(またはCD154)発現プラスミドは、NCBIに公開されているマウスCD40Lのヌクレオチド配列(図12)を使用し、XbaI制限部位が隣接する配列をコードするオリゴヌクレオチド(図13)を重複させてCD40L相補的DNAを作製した後、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene社、サンディエゴ CA)を使用してポリメラーゼ連鎖反応を行った。得られたDNAを、XbaI(New England Biolabs社、イプスウィッチ MA)で消化し、同様に消化したpVAX1発現ベクター(Invitorogen社、カールスバッド CA)に連結した(図14)。pVAX−CD40L構築物はDNA配列決定により確認した。
【0047】
トランスフェクション
トランスフェクションは全て、メーカーの指示によりHeLa細胞およびリポフェクタミン2000(登録商標)トランスフェクション試薬(Invitorogen社)を用いて行った。NK1R−トランスフェクト細胞を、1μM サブスタンスPペプチド(Sigma−Aldrich社)と共にインキュベートしてトランスフェクションの翌日に死を誘導した。
【0048】
他の細胞ストレス/死経路
血清飢餓は、1〜24時間の間、血清を含まないDMEMでHeLa細胞をインキュベートした後に行った。熱ショックは、1〜6時間の間、42〜45℃で細胞をインキュベートして誘導した。
【0049】
炎症誘発性サイトカイン放出の定量化
細胞ストレス/死の後、得られた細胞/細胞残屑を回収し、過剰量のリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、凍結/解凍(−80℃から25℃)を3回素早く繰り返し、UV分光光度法(A280)により定量した。ストレス/死細胞内の炎症誘発性シグナルの存在を判定するため、40μgのストレス/死細胞を50,000個のTHP−1に添加し、18時間インキュベートした。腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン8(IL−8)、およびIL−12を含む炎症誘発性サイトカインの存在について、上清を市販のELISAシステムにより評価した。
【0050】
タプシガルギン依存性炎症活性の発生
B16−F10細胞を、タプシガルギン(2.5μM)の添加前に、約80%コンフルエントになるまで150mm組織培養プレートで培養した。細胞を、回収前に48時間インキュベートし、過剰量のリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、凍結−解凍サイクルを行い、上述の通りに定量した。未処理細胞を同様に回収し、両方の抽出物を、インビボでのさらなる使用の前に上述のTHP−1システムにより炎症活性についてインビトロで評価した。
【0051】
マウスの免疫感作および腫瘍曝露
記載された以下のマウス試験は全て、Buck Instituteの所内動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)により開始前に承認された。6〜8週齢のメスC57Bl/6およびnu/nuマウスは、Charles River Laboratories社から購入した(ウィルミントン MA)。免疫感作は、皮下、腹腔内、および皮内経路を含む様々な免疫感作経路により、500μgのB16−F10抽出物(タプシガルギン処理の有無にかかわらず)を2週間間隔で3回注射して行った。生腫瘍の曝露は、最後の追加免疫から2週間後、対側部位に100,000個の生B16−F10細胞を皮下注射して行った。
【0052】
(実施例II)
タプシガルギン感受性内因性危険シグナル(danger signal)の同定
薬剤を誘導する様々の異なる、可能性のある細胞ストレスおよび細胞死をスクリーニングした。植物由来タプシガルギン毒素は、患者由来子宮頸癌細胞株(HeLa)においてTNF−α分泌を誘導し、故に上述の様々な抗癌実施形態で使用するため同定された。反対に、他の可能性のある細胞ストレッサー(すなわち、例えば、タキソール、ツニカマイシン、ブレフェルジンA、シクロヘキシミド、およびカルシマイシン)をテストしたが、免疫賦活活性は誘導しなかった(図1参照のこと)。
【0053】
タプシガルギンは、単球細胞株を利用する読み出しシステムにおいて、抗原提示細胞(APC)を活性化して大量の炎症性サイトカイン腫瘍壊死因子−α(TNF−α)を分泌することもできた(データ不図示)。
【0054】
(実施例III)
サイトカインのタプシガルギン誘導分泌
この例は、癌細胞のタプシガルギン処理が、サイトカインを放出するように活性化される抗原提示細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞など)に対し、この細胞を免疫賦活性にすることを例証する。発明の機構を理解する必要はないが、IL−12は、細胞性免疫応答(癌および細胞内病原体による感染の制御に必要となり得る免疫応答の種類)の発生に役割を果たしていると考えられる。
【0055】
タプシガルギン関連化合物であるタプシガルギシン(疎水性のより低いタプシガルギン類似体)およびタプシガルギンは、単球細胞株THP−1からのIL−8の用量依存的分泌を活性化した。(図2A参照)。本発明は、幾つかの実施形態では、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物の直接投与を意図する。別の実施形態では、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物は、ビーズ(タプシガルギンで処理したブチルセファロースビーズを使用された図2B参照)およびリポソーム(カチオン性リポソームにカプセル化したタプシガルギンが使用された図2C参照)などのビヒクルを介して投与される。これらのデータは、タプシガルギン関連化合物が、強力な炎症反応を活性化できることを示す。タプシガルギン処理はまた、様々な患者由来癌細胞株においてIL−12、IL−8、およびTNF−αの分泌ももたらす。(図3参照)。
【0056】
(実施例IV)
タプシガルギン処理したB16抽出物によるインビボ免疫感作
この例は、タプシガルギン処理細胞による免疫感作が、癌の進行に対する防御をもたらすことを示す。
【0057】
免疫原性の乏しいマウスメラノーマ細胞株B16を、インビトロでタプシガルギンにより処理し、これを炎症誘発性に(すなわち、実施例IIIに従いサイトカインを分泌できるように)した。続いて、タプシガルギン処理したB16細胞(B16細胞を洗浄し、定量化し、ならびに凍結および解凍により溶解して細胞断片溶液を作製した後)(B16+TG;500μg)および対照として未処理のB16細胞(B16)または生理食塩水緩衝液により、マウスを2週間ごとに1度、3回免疫感作した。最終免疫感作から2週間後、マウスに生B16癌細胞を移植し、腫瘍進行をモニターした。
【0058】
B16+TGは、C57Bl/6マウスにおいて免疫感作部位での一過性炎症反応を誘導した。この反応は、生理食塩水溶液またはB16群では見られなかった。C57Bl/6マウスは、B16+TGによる免疫感作後の腫瘍進行の有意な遅延および寿命の改善を示したが、B16または生理食塩水注射後では示さなかった(それぞれ、図4Aおよび4B参照)。データは、治療した動物が、腫瘍移植後、平均してほぼ2倍長生きしたことを示す。
【0059】
ヌードマウス(Nu/Nu)を用いた同様の実験は、B16+TG(同様に、細胞を洗浄し、定量化し、ならびに凍結および解凍により溶解して細胞断片溶液を作製した後)は、生存の改善に効果がないことを示した。ヌードマウスのタプシガルギン処理細胞免疫感作は、有意なインサイチュでの炎症を示したが、これは腫瘍進行の制御には効果がなかった(それぞれ、図5Aおよび図5B参照)。本発明の実践に必要ではないが、これらのデータは、ヌードマウスは正常な胸腺発達を妨げる遺伝子変異を有するため、機能性Tリンパ球の生成を阻害するという仮説と一致している。
【0060】
発明の機構を理解する必要はないが、Tリンパ球、特にCD8+細胞毒性サブセットは、新生物組織および細胞内病原体感染組織の破壊に役割を果たすと考えられる。以上のことから、これらのデータは、タプシガルギン処理細胞が、アジュバントに類似した方法で防御的T細胞反応の発生を順次もたらす炎症を活性化することを示す。
【0061】
(実施例V)
B16+TG注射により誘導された免疫防御記憶(immunoprtective memory)
この例は、B16+TG(すなわちこの後、細胞断片溶液を作製するため洗浄され、定量化され、ならびに凍結および解凍により溶解された、TG処理したB16細胞)による免疫感作は、注射したメラノーマに対する長期防御をもたらす一実施形態を提供する。
【0062】
C57Bl/6マウスを、実施例VIに従いB16+TGで免疫感作し、続いて生B16−F10メラノーマ細胞に曝露した。0日目および116日目では、B16+TG免疫感作マウスはメラノーマ腫瘍を発症していなかった。(図6参照)。B16+TG抽出物を投与されなかった対照マウスは、典型的な腫瘍進行速度を示した。
【0063】
或いは、マウスCD40L発現プラスミドは、B16+TG抽出物で共免疫感作した。免疫感作を皮内注射により行った場合、完全な腫瘍抑制が0日目に見られた。免疫感作を皮下または腹腔内注射により行った場合、部分的腫瘍抑制が0日目に見られた。0日目に皮内注射した動物を116日目に再曝露した場合、部分的腫瘍抑制のみが見られた。(図7参照)
これらのデータは、TG処理したB16抽出物で免疫感作したマウスは、B16メラノーマに対する長期持続免疫を発生できることを示す。この実験では、この免疫程度は、投与経路にある程度依存するように思われる。例えば、腹腔内または皮下的に与えられた免疫感作は、0日目または116日目ではB16メラノーマ細胞注射後の腫瘍増殖を完全には抑制しなかった。(図7参照)。しかし、条件を最適化していなかった。
【0064】
結論として、これらのデータは、B16+TGが最初の免疫感作および曝露後少なくとも3カ月の期間(すなわち、116日)にわたり、生癌細胞再曝露に対し防御できることを示す。これらのデータはまた、B16+TG抽出物が、Bおよび/またはT細胞による一過性の腫瘍特異的適応免疫応答を活性化してインビボでの腫瘍増殖を遅延させる可能性のある抗原提示細胞により、TNF−αなどの炎症誘発生サイトカインの合成を誘導し得ることも示唆する。
【0065】
(実施例VI)
B16−TG抽出物により誘導される単球分化
この例は、タプシガルギン処理細胞が、抗原提示細胞の他のサブタイプへの単球分化を誘発することができるかどうかについて例示的データを示す。過去の研究は、特定の薬剤が、抗原提示細胞上で作用する結果、成熟樹状細胞への分化をもたらすことを示している。Hertzら、「Microbial lipopeptides stimulate dendritic cell maturation via Toll−like receptor 2」J.Immunol.166:2444〜2450頁(2001年)。発明の機構を理解する必要はないが、樹状細胞は、生体における任意の抗原について適応免疫応答を活性化するか免疫寛容を活性化するかの決定に関与する主な細胞型であると考えられる。
【0066】
未分化の、円形をした、単球(図8A)を、タプシガルギン処理したHeLa細胞抽出物を用いてまたは用いずに24時間処理した。細胞形態の変化を、次いで評価した(すなわち、例えば、誘導された細胞の伸びおよび/または平板化)。結果は、タプシガルギン処理細胞が、最初の丸いものから平板で伸びたものへと単球細胞の形態変化を誘導することを示す。(図8B参照。黒い矢印で示されている)。この形態変化は、マクロファージまたは未成熟樹状細胞に特有の長い細胞プロセスを有する接着細胞への、一般に形態の丸い未分化単球の成熟プロセスを示すと考えられる。
【0067】
(実施例VII)
TGリポソーム製剤により誘導された腫瘍減少
この例は、タプシガルギン含有リポソームが、用量依存的な様式で腫瘍の進行を減少させることを示すデータを示す。
【0068】
増加する量のタプシガルギン(0.0003、0.003、および0.03mol%)を含有する総脂質量50mMのカチオン性リポソームは、脂質フィルム法に続く数サイクルの押出しにより調製した。Kuntsfeldら、Journal of Investigative Dermatology、120:476〜482頁(2003年)。リポソームは、様々な濃度のタプシガルギン、合計で50mol%にするのに十分な1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホクロリン(DOPC)および50mol% 1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を用いてクロロホルムにおいて調製した。脂質フィルムを回転蒸発器での蒸発後に生成し、5%スクロース緩衝液で一晩再水和した。リポソームを、200nMの押出し膜により押出し、使用まで4℃でアルゴンガス下で保管した。2匹のメスC57Bl/6マウスから成る4群に、0日目に左脇腹に1×105生B16−F10メラノーマ細胞を同時に皮下移植した。リポソームカプセル化タプシガルギンを投与されたマウスに、腫瘍移植後7、8、9、14、15、16、21、22、および23日目に尾底から右脇腹にかけての遠位部位に各タプシガルギン含有リポソーム製剤50μlを皮内注射し、腫瘍の進行をモニターした。
【0069】
2匹のメスC57Bl/6マウスから成る4群に、次いで0日目に左脇腹に1×105生B16−F10メラノーマ細胞を同時に皮下移植した。リポソームカプセル化タプシガルギンを投与されたマウスに、7、8、9、14、15、16、21、22、および23日目に尾底から右脇腹にかけての遠位部位に各タプシガルギン含有リポソーム製剤50μlを皮内注射し、腫瘍の進行をモニターした。データは、リポソームカプセル化タプシガルギンが、用量依存的な様式で腫瘍の進行を低減できることを示す。(図9参照)。
【0070】
(実施例VIII)
毒素誘導NF−κBプロモーター系
この例は、毒素感受性ハイスループットレポーター(すなわちマーカーまたは標識)系の一実施形態を示す。
【0071】
ホタルルシフェラーゼ発現誘導NF−κBプロモーターをコードする安定にトランスフェクトしたDNA構築物を、i)ヒト前単球細胞株THP−1、およびii)ヒト前単球細胞株MonoMac−6に組み込んだ。簡単には、ホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流のコンカテマー化NF−κB応答エレメントをコードするDNA[Tingら、「RIP mediates tumor necrosis factor receptor 1 activation of NF−kappaB but not Fas/APO−1−initiated apoptosis」EMBO J.Nov 15;15(22):6189〜96頁(1996年)]を、標準的分子生物学的方法によりpEAK8ベクター骨格(Edge Biosystems社、ゲイサーズバーグ MD)にサブクローニングした。エレクトロポレーションを、10μgのDNAおよび700,000個のTHP−1またはMonoMac6細胞を用いて、Biorad Gene Pulser IIエレクトロポレーター(Biorad社、ハーキュリーズ CA)、0.4cmエレクトロキュベット(electrocuvette)、および200V、950μFにより行った。エレクトロポレーション後、安定にトランスフェクトしたクローンを生成するため、300ng/mlのピューロマイシンアミノヌクレオシド(Sigma−Aldrich社)による選択前に、細胞を2日間回復させた。ルシフェラーゼ発現を、Top Count NXTルミノメーター(Perkin Elmer社、ウェルズリー MA)により定量化した。簡単には、50,000個のレポーター細胞を、回収および分析前に96ウェルホワイトプレートで18時間、列挙した指定濃度の炎症メディエーターと共にインキュベートした。
【0072】
THP−1クローンA9
(TLR2を介してシグナル伝達する)TLRリガンドPam−3−Cysおよび(TLR5を介してシグナル伝達する)細菌フラジェリン((TLR4を介してシグナル伝達する)細菌リポ多糖ではない)のTHP−1由来クローンA9認識を、TGインキュベーション中に96ウェルホワイトプレート自動化アッセイでNF−κB活性をモニターして判定した。(図10A参照)
様々な濃度のタプシガルギンも、予め播種したHeLa細胞の存在下または非存在下で使用した。これらの結果は、クローンA9が、未処理HeLa細胞またはタプシガルギン単独よりも相乗的な高レベルでタプシガルギン処理したHeLa細胞を認識したことを示した。(図10B参照)。
【0073】
同時に、これらのデータは、TLR2を介した炎症を調節する新規化合物および/または因子の同定におけるクローンA9の使用を支持するものである。
【0074】
MonoMac−6クローンC5
第2の安定なNF−κBレポーター構築物形質転換体を、MonoMac−6細胞を用いて作製した。クローンA9とは対照的に、MonoMac−6由来クローンC5は、細菌リポ多糖の認識を改善したことを示した。クローンC5もまた、Pam3Cys、フラジェリン、およびタプシガルギン処理したHeLa細胞を認識した。(図11参照)。
【0075】
(実施例IX)
タプシガルギン誘導脱毛
この例は、タプシガルギン(TG)が、脱毛を誘導する局所用溶液で使用される一実施形態を示す。様々な濃度(対照0、ならびにテスト試料40uM、1.2mMおよび40mM)でTGを含有する擦り込み溶液(rub−on solution)(75%エタノール、22%シクロヘキサン、および3%ジメチルスルホキシド)を調製した。様々な溶液を、異なるマウスに局所適用した。高濃度では、インサイチュで誘導炎症を素早く見ることができた(データ不図示)。高濃度での3日目の炎症は、この濃度が不適切であることが明らかになるほど多くの炎症を誘導した。低濃度では、擦り込み部位で一過性の脱毛症/抜け毛を誘導した(データ不図示)。脱毛は、数週間、および数カ月間も続き、4.5カ月(18週)でも依然として脱毛を見ることができた。何匹かの動物では、TG治療した動物(1回治療)でひとたび完全に脱毛すると、治療部位は、18週時点で若干毛が再生しはじめていた。故に、この低用量(uM)のTGは、脱毛を誘導するため、または化粧品および他の医学的適用のための他の脱毛製品で使用するのに(例えばローションで)使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、子宮頸癌HeLa細胞の炎症誘発性活性に対する様々な化合物の効果を示す例示的データを示す図である。X軸:対照(−−)、タプシガルギン(TG)、タキソール、ツニカマイシン(Tunic)、ブレフェルジン(BrefA)、シクロヘキシミド(CHX)、およびカルシマイシン(A23187)。Y軸:TNF−α(pg/ml)。
【図2A】図2Aは、単球細胞株THP−1からのヒトIL−8の放出の刺激において、タプシガルギン対タプシガルギシン処理HeLa細胞の比較を示す例示的データを示す図である。X軸:タプシガルギンまたはタプシガルギシン濃度(μM);Y軸:インターロイキン8(IL−8)濃度(pg/ml)。
【図2B】図2Bは、タプシガルギン処理したブチルセファロースビーズを使用して、抗原提示細胞からのIL−8放出をもたらした結果を示す図である。
【図2C】図2Cは、カチオン性リポソームカプセル化TGが、APCからのIL−8放出を誘導することを示す図である。別の実施形態では、本発明は、送達ビヒクルとして、やはり疎水性であるリポソームを意図する。
【図3】図3は、タプシガルギン関連化合物への曝露後のサイトカインを分泌することが知られている様々な組織由来癌細胞株の発生率(prevalence)を示す実例リストを示す図である。
【図4】図4は、タプシガルギンベースの免疫感作は腫瘍増殖を減少させ、C57Bl/6マウスにおける生存を改善することを示す例示的データを示す図である。パネルA:経時的腫瘍増殖。短い線:生理食塩水対照。白丸:未処理B16細胞抽出物。黒丸:2.5μM B16+TG細胞抽出物。パネルB:経時的細胞生存。短い線:生理食塩水対照。白丸:未処理B16細胞抽出物。黒丸:2.5μM B16+TG細胞抽出物。
【図5】図5は、タプシガルギンベースの免疫感作は、ヌードマウス(Nu/Nu)における腫瘍増殖に影響しないことを示す例示的データを示す図である。パネルA(矢印は注射部位を示す):マウス1およびマウス2;B16−TG誘導炎症。マウス3およびマウス4;B16対照。パネルB:経時的細胞生存。白丸:未処理B16細胞抽出物。黒丸:2.5μM B16+TG細胞抽出物。
【図6】図6は、C57Bl/6マウスのB16+TG細胞抽出物(500μg I.P.)免疫感作後の腫瘍増殖の減少を示す例示的データを示す図である。X軸:0日目にB16−F10メラノーマ細胞を注射した後の日数。Y軸:腫瘍面積(mm2)。白丸:2回のB16+TG細胞抽出物(0日目および116日目)注射および2回のB16−F10細胞注射(0日目および116日目)。黒い四角:B16−F10細胞を注射した0日目の未処理対照。黒い三角:B16−F10を注射した116日目の未処理対照。
【図7】図7は、C57Bl/6マウスの、B16+TG細胞抽出物(500μg)/CD40L発現プラスミド免疫感作後の腫瘍増殖の減少を示す例示的データを示す図である。X軸:0日目にB16−F10メラノーマ細胞を注射した後の日数。Y軸:腫瘍面積(mm2)。白丸:2回のB16+TG細胞抽出物/CD40L発現プラスミド腹腔内注射(0日目および116日目)および2回のB16−F10メラノーマ細胞注射(0日目および116日目)。白い四角:2回のB16+TG細胞抽出物/CD40L発現プラスミド皮内注射(0日目および116日目)および2回のB16−F10メラノーマ細胞注射(0日目および116日目)。白い菱形:2回のB16+TG細胞抽出物/CD40L発現プラスミド皮下注射(0日目および116日目)および2回のB16−F10メラノーマ細胞注射(0日目および116日目)。黒い四角:B16−F10メラノーマ細胞を注射した0日目の未処理対照。黒い三角:B16−F10メラノーマ細胞を注射した116日目の未処理対照。
【図8】図8は、タプシガルギン処理したHeLa細胞抽出物の単球分化の誘導を示す例示的データを示す図である。パネルA:丸い形態を有する未処理単球。パネルB:伸長したおよび平板化した形態を有する処理した単球(矢印)。
【図9】図9は、7、8、9、14、15、16、21、22、および23日目(矢印)にTGリポソーム製剤を投与した後のC57Bl/6マウス生存の用量依存的改善を示す例示的データを示す図である。白丸:B16−F10細胞を0日目に注射(S.C.)した後の未処理対照。黒い菱形:B16−F10細胞を0日目に注射(S.C.)した後の0.003モル%TG(I.D.)。黒い四角:B16−F10細胞を0日目に注射(S.C.)した後の0.003モル%TG(I.D.)。黒い三角:B16−F10細胞を0日目に注射(S.C.)した後の0.03モル%TG(I.D.)。
【図10】図10のパネルAは、ルシフェラーゼレポーター系で判定した、様々なTLRリガンドに対する50,000個のTHP−1クローンA9の反応を示す例示的データを示す図である。Y軸:ホタルルシフェラーゼタンパク質の化学発光特性により発生した相対発光量(RLU)。図10BのパネルBは、ルシフェラーゼレポーター系で判定した、50,000個のTHP−1クローンA9を用いたタプシガルギン(TG)用量反応曲線を示す例示的データを示す図である。Y軸:ホタルルシフェラーゼタンパク質の化学発光特性により発生した相対発光量(RLU)。白いバー:TG単独。黒いバー:30,000個のTG処理したHeLa細胞。Med=培地対照。
【図11】図11は、ルシフェラーゼレポーター系で判定した、様々なTLRリガンドに対するMonoMac−6クローン5の反応を示す例示的データを示す図である。Y軸:ホタルルシフェラーゼタンパク質の化学発光特性により発生した相対発光量(RLU)。TG(2.5μM)。培地=対照。
【図12】図12は、CD40Lのヌクレオチド配列を示す図である。
【図13】図13は、pVAX1のXbaI制限部位へのライゲーション用に調製したCD40L cDNAを示す図である。
【図14】図14は、市販のpVAX1発現プラスミドのマップを示す図である。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、癌の治療に関し、より具体的には、放射線または標準的な化学療法剤を用いない、固形腫瘍およびその転移を含む腫瘍の治療に関する。好ましい実施形態では、本発明は、癌ワクチンの使用による癌の予防および治療に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
現代の癌療法は、ほとんどが放射線、手術および化学療法剤の使用を伴う。しかし、これらの手段による結果は、一部の腫瘍では有益であるものの、多くの他の腫瘍ではわずかな効果しか得られないかまたは効果がない。さらに、これらのアプローチは、容認できない毒性を有する場合が多い。
【0003】
放射線および手術はいずれも、同じ理論的な短所を被る。単一のクローン原性悪性細胞は、宿主を死滅させるのに十分な子孫を生じさせることができることを考慮すると、新生物細胞の集団全体が根絶されなければならないことが認識されている。一般には、非特許文献1を参照のこと。「全細胞死滅」というこのコンセプトは、治癒を得ようとするのであれば、外科的アプローチには腫瘍の全切除が必要であり、放射線アプローチでは全ての癌細胞の完全な破壊が必要とされることを意味する。実際これはほとんど可能ではなく、まさに、転移がある場合には不可能である。
【0004】
さらに、従来の化学療法癌治療も、腫瘍の完全寛解はほとんど得られず、中程度の反応を生じさせるのに必要なかなり高い投与量レベルは、容認できない毒性を伴う場合が多い。抗癌剤は、典型的には、負の血液学的効果(例えば、有糸分裂の停止ならびに骨髄およびリンパ組織における有形成分の崩壊)、および免疫抑制作用(例えば、細胞数の減少)、ならびに上皮組織(例えば、腸粘膜)、生殖組織(例えば、精子形成不全)、および神経系に対する重篤な影響をもたらす。非特許文献2。高い投与量レベル、およびこの結果得られた毒性は、大部分が抗癌剤自体の標的特異性の欠如により必然的に生じる。薬剤は、癌性である宿主細胞と、非癌性である宿主細胞を区別する必要がある。大多数の抗癌剤は、このレベルにおいて無差別であり、著しい固有の毒性を有する。
【0005】
抗癌剤としての標準的化学療法剤による奏効も、複数の薬剤耐性、多様な構造的に無関係な細胞毒性抗癌化合物に対する耐性の現象に妨げられてきた。非特許文献3。進行性薬剤耐性の根本的な原因は、診断時における腫瘍(例えば、変異細胞)内の薬剤耐性細胞の小集団による可能性がある。非特許文献4。単一薬剤によるこうした腫瘍の治療は、最初に寛解をもたらし、主要な薬剤感受性細胞を死滅させる結果、腫瘍はサイズが縮小する。薬剤感受性細胞がいなくなると、残った薬剤耐性細胞は増殖し続け、最終的に腫瘍の細胞集団を支配する。
【0006】
同じ細胞で2つ以上の異なる薬剤耐性が自然発生する可能性は小さいことから、薬剤の併用により最初に治療することが1つの解決法として提案された。非特許文献5。しかし、現在では、薬剤耐性は、全般的な薬剤耐性を与えることができる膜輸送タンパク質、「P−糖タンパク質」が原因であることが知られている。非特許文献6。表現型的には、腫瘍細胞は、時間とともに全薬剤の細胞内蓄積の減少を示す。要するに、併用化学療法は、答えになっていないように思われる。
【0007】
養子細胞免疫療法は、毒性を低減しつつ標的細胞特異性を改善するために生体自体の免疫系を用いる代替治療方法として提案された。インビボおよびインビトロでのリンホカインによる様々なリンパ球集団の活性化および増殖が研究され、奏効程度は相半ばしている。例えば、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)はいずれも、転移性疾患治療でインターロイキン−2(IL−2)と併用して使用されている。非特許文献7;非特許文献8参照。
【0008】
残念ながら、細胞集団を活性化し増殖させる高レベルのIL−2の包含は、これ自体が患者に対する著しい毒性を伴う。さらに、高レベルのIL−2で培養されたリンパ球は、結局はIL−2に対する不反応性を生じ、続いて増殖および細胞毒性の重大な減少を示すことから、標的細胞特異的細胞集団は、インビトロでは増殖が困難であった。非特許文献9参照。後者の問題も、ヒトにおける遺伝子療法のための細胞担体としてリンパ球をうまく使用する努力を妨げている。
【非特許文献1】GoodmanおよびGilman The Pharmacological Basis of Therapeutics(Pergamon Press、第8版)(1202〜1204頁)
【非特許文献2】P.CalabresiおよびB.A.Chabner、GoodmanおよびGilman The Pharmacological Basis of Therapeutics(Pergamon Press、第8版)(1209〜1216頁)
【非特許文献3】J.H.Gerlachら、Cancer Surveys、5:25〜46頁(1986年)
【非特許文献4】J.H.GoldieおよびAndrew J.Goldman、Cancer Research、44:3643〜3653頁(1984年)
【非特許文献5】V.T.DeVita,Jr.、Cancer、51:1209〜1220頁(1983年)
【非特許文献6】M.M.GottesmanおよびI.Pastan、Trends in Pharmacological Science、9:54〜58頁(1988年)
【非特許文献7】Rosenbergら、N.Engl.J.Med.316:889〜97頁(1987年)
【非特許文献8】Belldegrunら、Cancer Res.48:206〜14頁(1988年)
【非特許文献9】Schoofら、Cancer Res.50:1138〜43頁(1990年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
必要とされているのは、多様な腫瘍タイプに対して確実に殺腫瘍性である特異的な抗癌アプローチである。重要なことに、治療は、最小限の宿主毒性で有効でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、一般に、癌の予防および/または治療に関し、より具体的には、放射線または標準的化学療法剤を用いない、固形腫瘍およびその転移を含む腫瘍の治療に関する。一実施形態では、本発明は、a)腫瘍細胞を有する被験体を提供する工程と、b)前記被験体から前記腫瘍細胞の少なくとも一部を除去して除去細胞を作製する工程と、c)処理された腫瘍細胞を作製するため、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物を含む刺激剤を用いて、前記除去細胞の少なくとも一部をエキソビボで処理する工程と、d)前記処理された腫瘍細胞を同じ被験体にインビボで導入して抗癌治療効果を生じさせる工程とを含む方法を含む。被験体にキャリーオーバーされる薬剤量を最少化するため、前記処理された腫瘍細胞を導入する前に、これらは(例えば緩衝液、培地などで)洗浄することができる。好ましい実施形態では、本発明は、a)腫瘍細胞を有する患者を提供する工程と、b)前記患者から前記腫瘍細胞の少なくとも一部を除去して除去細胞を作製する工程と、c)処理された腫瘍細胞を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤に、前記除去細胞の少なくとも一部をエキソビボで曝露する工程と、d)前記処理された腫瘍細胞を溶解して細胞断片を作製する工程と、e)前記断片を同じ患者にインビボで導入して抗癌治療効果を生じさせる工程とを含む方法を含む。一実施形態では、工程(d)の前に、次の工程へキャリーオーバーされる薬剤量を最少化するため、処理された細胞を洗浄することが好ましい。本発明は、工程(c)の任意の特定の曝露/処理時間により限定されるものではない。1秒から72時間の間、より好ましくは30秒から1時間の間、さらにより好ましくは1分から30分の間の曝露時間を含む、様々な曝露時間が意図される。本発明は、工程(d)において溶解の性質により限定されるものではない。一実施形態では、処理された腫瘍細胞は、細胞を凍結/解凍して溶解される。別の実施形態では、溶解剤を使用する。溶解剤は、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム)、酵素(例えばQiagen Buffer B1 1ml、リゾチーム20μl、プロテアーゼ45μlおよびQiagen Buffer B2 0.35mlから成る酵素消化緩衝液)、または単純な溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)もしくは例えば、低張溶解緩衝液(5mM リン酸ナトリウム pH7.4、プロテアーゼ阻害剤カクテル、5mM DTT)で、細胞を浸透圧で溶解するためのより複雑な溶液であり得る。別の実施形態では、細胞は超音波処理される。別の実施形態では、細胞抽出物が作製される(例えば膜抽出物、細胞質抽出物など)。別の実施形態では、これらの方法の組み合わせが使用される(例えば低張溶解、それに続くホモジナイザー、例えばポリトロンPT 3000、Kinematica社、ルツェルン、スイスでの処理)。本発明は、細胞断片または細胞成分の導入方法に限定されるものではなく、これらは静脈内(IV)、筋肉内(IM)、腹腔内(IP)、皮下(SC)、皮内(ID)などで投与することができる。特定の癌には特定の方法で断片/抽出物を投与することが好ましい場合がある。例えば、皮膚癌の場合、メラノーマなどの癌を治療するため皮膚を介して(例えば皮下、経皮などで)断片/抽出物を投与することが(一実施形態では)好ましい場合がある。前立腺癌の場合、断片/抽出物を腹腔内投与することが(一実施形態では)好ましい場合がある。一方、幾つかの実施形態では、断片/抽出物は、腫瘍から離れた部位、および腫瘍の組織型(例えば乳癌、肺癌など)に関係のない組織(例えば筋肉、皮膚など)に投与する。
【0011】
本発明は、インビボでの断片/抽出物のみの導入に限定されるものでもなく、他の化合物(アジュバント、マイトジェンなどを含むが、これらに限定されない)または成分(ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質の持続性もしくは一過性発現を提供する発現構築物、または核酸分子の持続性もしくは一過性生成を提供する構築物を含むが、これらに限定されない)も意図される。他の化合物に関して、本発明は、一実施形態では、断片/抽出物の前、後、または一緒に1つまたは複数のサイトカインの投与を意図する。表1は、免疫応答を高めるため、インビボで断片/抽出物と共に投与され得る、或いは、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様薬剤と共に単純投与され得る(すなわち細胞または溶解物を用いずに該薬剤を直接投与)サイトカインの例示的な例を提供する。特に好ましい実施形態では、タプシガルギンと一緒に(またはタプシガルギン処理した細胞、断片もしくは溶解物と共に)投与されるサイトカインは、インターフェロン−γである。
【0012】
【表1−1】
【0013】
【表1−2】
さらに他の実施形態では、患者は、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF、一般名サルグラモスチム(sargramostim)、商品名ロイキン(Leukine))および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF、一般名フィルグラスチム、商品名ノイポジン)など、骨髄における白血球細胞の産生を刺激する1つまたは複数の薬剤と共に前、後または同時に治療され得る。好ましい発現構築物に関して、一実施形態では、本発明は、長期持続効果を生じさせるため断片/抽出物の前、後、または一緒にCD40L発現プラスミドを導入することを意図する。
【0014】
患者への生癌細胞の再導入を回避するため、一実施形態では、断片/抽出物は無細胞であることが好ましい(しかし、幾つかの場合では、細胞は急速に死滅するまたは患者により急速に破壊されるため、抽出物よりむしろ細胞、または細胞を含有する抽出物を再導入することができ得る)。一実施形態では、前記腫瘍細胞は生検から得られ、抽出物は同じ患者に投与される。別の実施形態では、断片/抽出物は別の患者に導入される(実際、断片/抽出物は複数の患者で幅広く使用され得る)。第3の実施形態では、細胞は、連続的な抗癌使用のための細胞株として確立される。言い換えれば、この第3の実施形態では、腫瘍細胞は必要とされる度に患者から採取されるのではなく、代わりに、細胞株(通常は患者の腫瘍と同じ癌型)から提供される。細胞株は、従来技術(例えば、DMSO、培地、ウシ胎仔血清など)を用いて液体窒素下、適切な容器で保管することができる。一方、細胞株は、使用まで培養下で連続的に継代することができる。本発明は、特定の癌型に限定されるものではない。皮膚癌細胞、前立腺癌細胞、乳癌細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、膵臓癌細胞、結腸癌細胞、肺癌細胞、骨癌細胞およびリンパ腫を含むがこれらに限定されない、様々な癌型が意図される(例示的細胞株のリストについては表2参照)。本発明は、単回治療に限定されるものではなく、すなわち断片/抽出物(他の化合物または成分の有無にかかわらず)は、周期的に(例えば週1回、月2回、月1回、6カ月ごとに1回、年1回など)投与することができる。
【0015】
【表2】
腫瘍細胞が患者から除去される幾つかの実施形態では、a)原発腫瘍(またはその部分)を除去するための標準的な手術を使用することが意図される。b)処理された腫瘍細胞を作製するため、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物を含む刺激剤を用いて、エキソビボで腫瘍細胞を処理し、c)前記処理された腫瘍細胞由来の腫瘍細胞断片/抽出物を調製し、d)前記断片/抽出物を同じ患者にインビボで導入した後、抗転移効果が生じることが意図される。このように、本発明の実施形態は、従来の外科的処置と併用することができる。例えば、一実施形態では、乳房の原発腫瘍は、従来の手術(すなわち部分または全乳房切除術)により除去することができ、断片/抽出物は、転移治療のため術後に患者に投与することができる。幾つかの実施形態では、患者が転移を有することがわかっているか否かにかかわらず(または転移は検出されたが転移性疾患の全範囲はわからない場合に)、治療が行われる。言い換えれば、本発明の保護療法は、従来の手術後、ならびに既知の転移性疾患の救急治療後に患者に適用することができる。
【0016】
一方、原発腫瘍を除去することが常に可能なわけではない。腫瘍細胞が患者から除去される幾つかの実施形態では、a)原発腫瘍(またはその部分)を除去するための標準的な手術を使用することが意図される。b)処理された腫瘍細胞を作製するため、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物を含む刺激剤を用いて、腫瘍細胞をエキソビボで処理し、c)前記処理された腫瘍細胞由来の腫瘍細胞断片/抽出物を調製し、d)前記断片/抽出物を同じ患者にインビボで導入した後、原発腫瘍(および残存転移性疾患)に対する抗腫瘍効果が生じることが意図される。このように、本発明の実施形態は、従来の外科的処置と併用することができる。
【0017】
さらに別の実施形態では、被験体は癌を予防するために治療される。好ましい実施形態では、特定の癌のリスクがある(年齢、遺伝的素因、放射線曝露、煙への曝露、粒子の吸入、変異誘発物質の消費、HIV感染などのためであろうとなかろうと)被験体が治療される。一実施形態では、本発明は、a)癌を発症するリスクのある患者および癌細胞株を提供する工程と、b)処理された癌細胞を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤で、前記癌細胞株由来の細胞をエキソビボで処理する工程と、c)前記患者にインビボで前記細胞を導入して抗癌予防効果を生じさせる工程とを含む方法を意図する。当然のことながら、生癌細胞を導入することは、(たとえこれらが、死滅または破壊されようと)魅力的でない可能性がある。したがって、一実施形態では、本発明は、a)癌を発症するリスクのある患者および癌細胞株を提供する工程と、b)処理された癌細胞を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤で、前記癌細胞株由来の細胞をエキソビボで処理する工程と、c)前記処理された癌細胞由来の細胞断片/抽出物を調製する工程と、d)前記患者にインビボで前記断片/抽出物を導入して抗癌予防効果を生じさせる工程とを含む方法を意図する。この特定の実施形態では、癌細胞は確立された細胞株由来であってよく、断片/抽出物はワクチンと見なすことができる。本発明は、単回治療に限定されることを意図するものではなく、すなわち断片/抽出物(他の化合物または成分の有無にかかわらず)は、周期的に(例えば週1回、月2回、月1回、6カ月ごとに1回、年1回、5年に1回、10年に1回など)投与することができる。本発明は、特定の癌型に限定されるものではない。皮膚癌細胞、前立腺癌細胞、乳癌細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、膵臓癌細胞、結腸癌細胞、肺癌細胞、骨癌細胞およびリンパ腫を含むがこれらに限定されない、様々な癌型が意図される(例示的な細胞株のリストについては表2を参照)。好ましい実施形態では、癌のリスクのある被験体は、治療時には癌がない。
【0018】
上述のワクチンは、集団を治療する量で製造され得る。例えば、一実施形態では、50歳を超える(すなわち55歳を超える)疾患のないヒトは、ワクチンを予防剤として、例えば1回限りのワクチンとしてまたは長期間にわたり周期的に繰り返し(例えば、2〜5年ごとまたは5〜10年ごとに)投与され得る。実際、癌に対するより広範囲の予防を提供するため、集団は、少なくとも2つの異なる癌型の(すなわち処理された癌細胞を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物を含む刺激剤を用いて、癌細胞をエキソビボで処理した後の)断片/抽出物を含む「カクテル」ワクチンにより治療され得る。「カクテル」用の異なる癌型は、特定の年齢以降の特定集団における発症の増加(例えば男性における55歳以降の結腸癌および前立腺癌の増加、女性における55歳以降の乳癌および子宮頸癌の増加)を基に選択することができる。
【0019】
さらに別の実施形態では、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物を含む刺激剤を、インビボで投与する。一実施形態では、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物は、担体と共に、担体に入れてまたは担体上で投与される。好ましい実施形態では、タプシガルギンは、送達ビヒクルにカプセル化される。本発明は、送達ビヒクルの性質に制限されるものではない。一実施形態では、送達ビヒクルは、疎水性担体、例えば疎水性相互作用ビーズ(このようなビーズは、クロマトグラフィー試薬として使用される)を含むがこれに限定されない疎水性粒子を含み、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物の存在下で強力な炎症シグナルを送達することができる。図2Bは、タプシガルギンで処理したブチルセファロースビーズが、抗原提示細胞からのIL−8放出をもたらすために使用された結果を示す。別の実施形態では、本発明は、送達ビヒクルとして、同様に疎水性であるリポソームを意図する(図2C参照のこと)。
【0020】
カプセル化タプシガルギン(例えばリポソームカプセル化)は、局所進行癌または転移癌を有する癌患者を含むがこれらに限定されない癌患者に全身または局所投与できることが意図される。これらは、静脈内、髄腔内、腹腔内、鼻腔内、および経口投与することができる。これらはまた、肺内投与により(例えば吸入または気管内チューブを介して)導入されてもよい。これらはまた、メラノーマなどの皮膚癌を含む癌を治療するため皮膚を介して投与することもできる。これらは、単独でまたは他の化合物と併用して投与することができる。これらは、手術前に患者における転移量(metastatic load)を低減するのに投与することができる。または、これらは術後に投与することができる。
【0021】
上述のエキソビボ処理方法は、直接インビボ投与(例えば静脈内注射)するよりも場合によっては利点を有し得る。エキソビボ処理の場合、1)タプシガルギンは適切な標的細胞、すなわち、癌細胞に接触する;2)培養下での曝露は、患者における断片/抽出物の再導入前に該薬剤を除去することを可能にする、すなわち患者はインビボできわめて少量のタプシガルギンにのみ曝露される(最小限の毒性をもたらす)および3)刺激抗原への全身曝露がないことは、タプシガルギンに対する抗体誘導の機会を減少させる。
【0022】
一方、1)タプシガルギンが適切な標的細胞、すなわち、癌細胞に接触する;2)患者がインビボできわめて少量のタプシガルギンにのみ曝露される(最小限の毒性をもたらす)および3)タプシガルギンに対する抗体誘導の機会が少ないように、直接インビボ投与を使用できる場合もあり得ることが意図される。例えば、腫瘍が、内視鏡検査、気管支鏡検査、膀胱鏡検査、結腸鏡検査、腹腔鏡検査、およびカテーテル検査から成る群から選択される処置を介して接触可能な場合、多量のタプシガルギンに患者を曝露することなく癌細胞を標的にすることが可能であり得る。さらに、皮膚癌は、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物(リポソーム製剤中であろうと他の疎水性製剤中であろうと)の直接インビボ投与に特によく適している。皮膚表面の皮膚癌は、インサイチュでタプシガルギンに接触することができる。皮膚内または皮膚下の皮膚癌は、皮下、皮膚内、または経皮的に接触され得る。一実施形態では、本発明は、a)皮膚癌を有する患者を提供する工程と、b)前記皮膚癌をタプシガルギンに接触させる工程とを含む方法を意図する。一実施形態では、タプシガルギンはクリームまたは軟膏において局所適用される。一実施形態では、タプシガルギンはパッチを介して皮膚に適用される。
【0023】
皮膚に関して、本発明は、特定の実施形態において、予防的抗癌免疫応答を誘発するため健常なメラニン細胞(または樹状細胞)をタプシガルギンに曝露(例えばリポソーム送達、皮膚パッチなどを介して)することを意図する。このようなアプローチでは、特定の機構に限定されないものの、健常なメラニン細胞の近くに導入されたタプシガルギンが、免疫系を活性化して遠位部位でのメラノーマの進行を抑制(または遠位部位でのメラノーマ形成に対して防御)し得ると考えられる。機構に関係なく、タプシガルギンによる処理は、癌から遠位の部位で投与されても有益であり得ることが(以下に)実験的に示される。
【0024】
本発明はまた、1)タプシガルギンが適切な標的細胞、すなわち、癌細胞に接触する;2)患者がインビボできわめて少量のタプシガルギンにのみ曝露される(最小限の毒性をもたらす)および3)タプシガルギンに対する抗体誘導の機会が少ない、直接インビボ投与に対する他のアプローチも意図する。例えば、一実施形態では、本発明は、1)タプシガルギンを適切な標的細胞、すなわち、癌細胞に接触させるように、タプシガルギンが標的分子または部分に結合される;およびこれにより2)患者がインビボできわめて少量のタプシガルギンにのみ曝露される(最小限の毒性およびタプシガルギンに対する抗体誘導の機会の減少をもたらす)、直接インビボ投与に対する標的アプローチを意図する。本発明は、標的分子もしくは部分、または結合体の性質により制限されるものではない。様々な標的分子または部分が意図される。一実施形態では、標的分子は、抗体またはこの断片(Fab、一本鎖など)であり、結合体は、参照により本明細書に組み込まれている、Rodwellら、米国特許第4,671,958号および参照により本明細書に組み込まれている、Goersら、米国特許第4,867,973号に記載の通りに作製される。本発明は、抗体の性質により制限されるものではない。モノクローナル抗体が使用され得る。しかし、ヒト化または完全なヒト抗体が好ましい。
【0025】
本発明は、標的分子のための標的の性質(すなわち抗体のための抗原の性質)により制限されるものではない。例えば、抗体は、ヒト癌細胞の受容体(例えばエストロゲン受容体)またはヒト癌細胞表面の癌遺伝子産物を標的にし得る。一方、本発明は抗体標的化に限定されない。一実施形態では、タプシガルギンはエストロゲンに直接結合され得るため、(抗体を使用することなく)ヒト癌細胞のエストロゲン受容体に送達され得る。或いは、タプシガルギンは、他のステロイド性アンドロゲン(シス−アンドロステロン、エストラジオール、テストステロン、19−テストステロン、および5−α−ジヒドロテストステロン)またはこれらに対応するペプチド類似体に結合することができる。一実施形態では、タプシガルギンは、参照により本明細書に組み込まれている、Myersら、米国特許第5,087,616号に記載の方法と類似した方法で上皮増殖因子などの増殖因子に結合することができる。
【0026】
任意の機構に限定されないものの、細胞をタプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物に曝露することは、癌細胞を免疫賦活性にすると考えられる。腫瘍を有する被験体に投与された場合、抽出物は、好ましくは腫瘍退縮をもたらす殺腫瘍反応を誘導する。本明細書では、「殺腫瘍反応」という用語は、腫瘍細胞が死滅されることを意味し、腫瘍細胞を死滅させる任意の特定の方法に限定されることを意味しないことを理解するべきである。例えば、腫瘍細胞は直接的(例えば、細胞間相互作用)または間接的(例えば、サイトカイン様インターフェロンの放出)に死滅することがあり得る。サイトカインに関して、上述された断片/抽出物は、免疫細胞においてサイトカイン分泌を誘導することが本明細書で示される。
【0027】
一実施形態では、本発明は、タプシガルギン様免疫効果のための化合物をスクリーニングするためのインビトロアッセイを意図する。例えば、一実施形態では、本発明は、a)癌細胞、およびマーカータンパク質の発現を促進するNF−κBプロモーターをコードするDNA構築物をトランスフェクトされた前単球細胞株を提供する工程と、b)処理された癌細胞株を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤で前記癌細胞をインビトロで処理する工程と、c)インビトロで前記前単球細胞株に前記処理された癌細胞を導入する工程と、e)前記マーカータンパク質の量を測定する工程とを含む方法を意図する。別の実施形態では、本発明は、a)癌細胞、およびマーカータンパク質の発現を促進するNF−κBプロモーターをコードするDNA構築物をトランスフェクトされた前単球細胞株を提供する工程と、b)処理された癌細胞株を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤で前記癌細胞をインビトロで処理する工程と、c)前記処理された癌細胞由来の細胞抽出物を調製する工程と、d)インビトロで前記前単球細胞株に前記抽出物を導入する工程と、e)前記マーカータンパク質の量を測定する工程とを含む方法を意図する。スクリーニングアッセイは、前単球細胞株のみを使用することに限定されるものではない。細胞株RAWなどの単球様細胞株も、使用されてよい。さらに、前単球細胞株が使用される場合、本発明は、特定の細胞株により制限されるものではない。ML1、HL60、およびU−937を含む様々な前単球細胞株が知られている。好ましい前単球細胞株は、ヒト前単球細胞株THP−1およびMonoMac−6である。
【0028】
一実施形態では、エキソビボ方法は、患者が前記断片/抽出物に曝露されないようにさらに修正される。むしろ、免疫細胞は、インタクトな癌細胞または断片/抽出物にエキソビボで曝露される。例えば、患者のリンパ球は患者から除去され、刺激されたリンパ球を生じるように、処理された(すなわちタプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物で処理された)腫瘍細胞または断片/抽出物にエキソビボで曝露される。この後、前記刺激されたリンパ球は、抗癌治療効果と共に患者に再導入される。本発明は、免疫細胞の由来または性質により制限されるものではない。好ましくは、免疫細胞は、リンパ球(例えば、腫瘍浸潤リンパ球)、マクロファージ、樹状細胞(など)といった造血細胞、または免疫細胞になることができる細胞である。さらに、これらは、骨髄(例えば、吸引により大腿から)、脾臓または抹消血(例えば、ヘパリンにより回収され、フィコール/ハイパック(Ficoll/hypaque)勾配により分離される)などの様々なソースから、および腫瘍から(例えば、腫瘍浸潤リンパ球)単離することができる。これらは、リンパ節から得られることが好ましい。これらは、正常な、疾患のないドナーから得ることができるものの、腫瘍を有する宿主から得られることも好ましい。
【0029】
本発明は、癌治療のための製剤および方法に限定されるものではない。一実施形態では、タプシガルギンおよびタプシガルギン様化合物は、免疫応答、および特に細胞性免疫応答を高めるのに一般に使用することができる薬剤として意図される。一実施形態では、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物は、病原体に対する免疫応答を高めるのに使用される。このような病原体には、細菌(例えば大腸菌、ヒト型結核菌、炭疽菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌、ピロリ菌、野兎病菌)、ウイルス(例えばA型、B型、C型、D型およびE型肝炎、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、HIV)、原虫(例えばクリプトスポリジウム、ランブル鞭毛虫、マラリア原虫、クルーズトリパノソーマ)、真菌(例えばカンジダ、ニューモシスティス、白癬)、および寄生虫(例えば条虫)が含まれるがこれらに限定されない。本発明は、病原体に対する反応の増大が得られる方法により制限されるものではない。一実施形態では、病原体の標準的製剤(熱殺菌、ホルマリン処理などがされているかにかかわらず)が、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物と共に投与(例えばIP、IM、SC、IDなど)される。別の実施形態では、病原体由来の精製抗原(例えば組換え発現タンパク質)が、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物と一緒にワクチンにおいて使用される。別の実施形態では、病原体抗原をコードする核酸(ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質の持続性もしくは一過性発現をもたらす発現構築物、または核酸分子の持続性または一過性生成をもたらす構築物)が、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物と一緒に(例えばIP、IM、SC、IDなどで)投与される。
【0030】
本発明は、免疫応答の増大が有用となり得る他の状況を意図する。例えば、一実施形態では、本発明は、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物が、エンドトキシン耐性に対する闘いにおいて使用され得ることを意図する。エンドトキシン耐性は、細菌感染中の先天性免疫系の活性化亢進から生体を防御するための適応反応であると考えられる。しかし、敗血症の初期発症を防ぐとはいえ、エンドトキシン耐性は、敗血症生存者におけるその後の感染に対し免疫応答の致命的な鈍化ももたらし得る(Koxら(2000年)Intensive Care Med.26、124頁)。敗血症ショックから患者を治療する療法を見出すための相当な努力にもかかわらず、これまでのところほとんどの臨床試験が、残念な結果となった(Koxら(2000年)Intensive Care Med.26、124頁)。これらのほとんどが、IL−1アンタゴニストまたは抗TNFもしくは抗LPS抗体の投与による過剰炎症状態のダウンレギュレーションを目的としていた。これらの療法の失敗の理由の1つは、敗血症の発症から治療開始までの間の遅れである可能性があり、故に、患者が入院する時点で、初期の過剰炎症状態は、二次性低炎症反応により既に弱められている。したがって、新たな療法は、炎症誘発性分子による治療による免疫応答の回復に重点を置いている(Dockeら(1997年)Nature Med.3(6)678頁)。一実施形態では、本発明は、敗血症の被験体および/または敗血症のリスクのある被験体(例えば動物に咬まれた者、銃で撃たれた者など)にタプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物を投与する(インビボで、または細胞をエキソビボで処理し再注射する)ことによる応答の回復を意図する。
【0031】
タプシガルギンおよびタプシガルギン様化合物は、抗体反応を阻害する可能性がある。本発明は、したがって、(喘息症状を有する被験体において、または全身性ループスエリテマトーデスもしくは望ましくない抗体産生を特徴とする他の自己免疫疾患を有する被験体において)抗体反応が望ましくないまたは抑制される必要がある場合の、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン様化合物の投与を意図する。
【0032】
タプシガルギンおよびタプシガルギン様化合物は、脱毛のため局所使用することができることがわかった。皮膚においてuM量で使用される場合、2週間以上(最大で18週間も)ほとんど再生することなく毛を除去することができる。高用量(mM)も脱毛をもたらすが、関連炎症を避けるべきである。故に、50uM以下の用量(0.4uMから40uM)が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
定義
本明細書では、「被験体」はヒトまたは動物であり得る。患者は、病院であれ、通院患者としてであれ、診療所であれ、または医院であれ、医療を受けているヒトである。「癌のリスクのある被験体」および「癌のリスクのある患者」は、様々な理由で(年齢、遺伝的素因、放射線曝露、煙への曝露、粒子の吸入、変異誘発物質の消費、HIV感染などのためであれ何であれ)リスクのある可能性がある。例えば、ある人は、彼/彼女が癌の罹患歴を有する家族の一員であるという理由でリスクのある可能性がある。一方、ある人は、遺伝子スクリーニングアッセイの結果によりリスクのある可能性がある。後者に関して、突然変異の検出は、癌および/または癌になる傾向がある個人(すなわちリスクのある)の診断を含むがこれに限定されず、臨床診断においてますます重要な分野となっている。タンパク質トランケーションテスト(PTT)は、ナンセンス、および切断タンパク質産物の生成をもたらすフレームシフト突然変異を検出する方法である。ヒトmutLホモログおよびヒトnutSホモログ(いずれも結腸癌に関与)、ならびにBRAC1(家族性乳癌に関与)などの癌関連遺伝子は、他の方法と並んで、現在この方法で変異をスクリーニングすることができる。こうした切断変異(および他の種類の変異)を有することがわかっている者が、癌のリスクがあると認識される。
【0034】
タプシガルギシンおよびタプシガルギンは、タプシアガルガニカL(Thapsia garganica L)の根から合成または(より一般的には)抽出することができる天然化合物(近縁グアイアノリド類(guaianolide))である。実際、タプシアで見出される少なくとも15種類の近縁グアイアノリド類がある(以下の表3参照)。これら16種類の天然化合物は、C−2の位置の酸素置換基の存在により区別される2つの分子シリーズに分類される。トリロボライド(trilobolide)シリーズの化合物では、この置換基が欠落している。タプシガルギンは幾つかの供給元から市販されている。MP Biomedicals社(アーバイン、CA)、Sigma社、Calbiochem社、およびAlomone Labs社。タプシガルギシンも市販されている(Calbiochem社)。
【0035】
【表3】
タプシガルギンは、セスキテルペンラクトン(以下の構造1参照)またはセスキテルペンラクトンテトラエステルと呼ばれることが多い。タプシガルギン誘導体は、様々な戦略で作製された。例えば、デアセチルタプシガルギン(deacetylthapsigargin)を得るためO−10のアセチル基の加水分解が行われた(以下の構造2参照)。
【0036】
【化1】
ヒドロキシル基の1つのアセチル化およびカルボニルラクトンのメチレン基への還元も行われた。本明細書では、「タプシガルギン関連化合物」には、タプシガルギン誘導体、類似体および類似の活性を有する化合物が含まれる。故に、天然の類似体(上記表2参照)および合成類似体(下記参照のこと)は、本発明の範囲内にあるものである。実際、一般にはセスキテルペノイドおよび具体的にはグアイアノリドは、本発明の範囲内にあるものである。幾つかのタプシガルギン類似体は、タプシガルギシンを還元して得られるラクトールのO−11およびO−12をアルキル化またはアシル化して合成された。α配置置換基の導入は、類似体のCa(2+)−ATPase阻害能力を減少させたのに対し、酵素はβ配置置換基に対しより寛容であった。これは、ラクトン環のα面(alpha−face)が、阻害剤が酵素に結合した場合、結合部位と密接に接触していることを示している。合成的に作製された幾つかの類似体は、強力な活性を有することを示した(以下の化合物77など)。他の類似体にはL12ADTが含まれる。
【0037】
【化2】
誘導体に関して、本発明は、8−O−デブタノイルタプシガルギン、8−O−(4−アミノシンナモイル)−8−O−デブタノイルタプシガルギン(ACTAと呼ばれる)を含むがこれらに限定されない多様性を意図する。タプシガルギンC8誘導体(ZTG)は、4−アジド[カルボキシル−14C]安息香酸でデブタノイルタプシガルギンをアシル化することにより合成された。
【0038】
「類似の活性を有する」化合物に関して、タプシガルギン(TG)は、筋小胞体および小胞体由来のCa(2+)−ATPaseの強力な阻害剤である。過去の酵素試験は、Ca(2+)−ATPaseは親和性<1nMでTGを結合する際、デッドエンド複合体(dead−end complex)に閉じ込められる、およびこの複合体はE(2)酵素状態と酷似すると結論している。しかし、類似の活性を有する化合物が、同じ機構を介して作用する必要はない。類似の効力を有する可能性のある薬剤には、2,5−ジ−(tert−ブチル)−1,4−ベンゾヒドロキノン、コレシストキニンオクタペプチド(CCK−8)、シクロピアゾン酸、カルシウムイオノフォアA23187、3,3’−ジインドリルメタン(DIM)、環置換DIMおよび1,1−ビス(3’−インドリル)−1−(p−置換フェニル)メタン(C−DIM)、N,N−ジメチル−D−エリトロ−スフィンゴシン(DMS)、エコナゾール、イノシトール1,4,5−三リン酸、およびパスツレラマルトシダ毒素(PMT)が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書では、「抗癌治療効果」には1つまたは複数の以下のものが含まれる:癌細胞増殖の阻害、癌細胞死の増加(殺腫瘍反応)、腫瘍浸潤の減少、全腫瘍量の減少、局所腫瘍量の減少、原発腫瘍サイズの減少、転移予防、転移数の減少、転移サイズの減少、疾患進行の阻害(一時的であろうと永続的であろうと)、および延命。治療は被験体を無病にさせることが望まれるが、本発明は癌を治癒させることに限定されるものではない。癌の進行をただ遅らせるだけでも治療効果はある。本発明は、効果の規模に限定されるものではない。例えば、原発腫瘍(または転移)サイズの減少は、わずか10%減または90%(以上)減であってもよい。また、本発明は、抗癌治療効果の持続時間に限定されるものでもない。治療(本明細書に記載された様々な実施形態による)は、一時的な癌細胞増殖の阻害、一時的な癌細胞死の増加、一時的な腫瘍浸潤の減少、一時的な全腫瘍量の減少、一時的な局所腫瘍量の減少、一時的な原発腫瘍サイズの減少、一時的な転移予防、一時的な転移数の減少、または一時的な転移サイズの減少のみをもたらし得る。一時的な効果は、数週間から数カ月、または数カ月から数年続き得る。これらのパラメータは、測定する(例えば原発腫瘍サイズの減少を)のが比較的容易である。転移予防および延命に関して、これらのパラメータは、特定の腫瘍型、病期などについて患者集団データと比較して測定することができる。本明細書では、「抗癌予防効果」または「予防効果」は、新たな癌の発症を低減する効果を含む。このパラメータは、動物で立証することができ、ヒトでは集団ベースで測定することができる。
【0040】
本明細書では、「マーカー」および「標識」は、検出可能な化合物または部分である。これらは、酵素、蛍光分子などであり得る。例示的酵素には、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、細菌ルシフェラーゼ、昆虫ルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼ(Renilla koellikeri)が含まれる。これらは全て、適切な基質およびアッセイ条件の存在下で検出可能なシグナルを発生することができる。
【0041】
本発明は、カチオン性リポソームを含む様々な種類の「リポソーム」を意図するが、これらに限定されない。本発明は、このようなリポソームの正確な組成により制限されるものではない。一実施形態では、リポソームは、1つまたは複数の糖脂質を含む。好ましい実施形態では、リポソームは、1つまたは複数のリン脂質を含む。
【実施例】
【0042】
実験
以下は、本発明により意図される特定の実例および実施形態を示し、限定されるものではない。
【0043】
(実施例I)
基本的実験手順
この例は、以下の実施例II〜VIIで使用される基本的な材料および方法を提供する。これらの特定の実験は、特定の化合物および方法を利用しているが、他の類似の化合物および方法も、類似のデータをもたらすことができる。
【0044】
細胞株
ヒト子宮頸上皮細胞株HeLaおよびマウスB16−F10メラノーマは、アメリカンTCCから購入し、10%ウシ胎仔血清(Sigma−Aldrich社、セントルイス、MO)を補充したダルベッコ改変イーグル培地[DMEM(Cellgro(登録商標)、ハーンドン VA)]で維持した。以下に記載された全ての細胞ストレス/死関連処理は、初回スクリーニングにおいてHeLa細胞を用いて行った。ヒト前単球白血病THP−1(ATCC、マナッサス VA)および前マクロファージMonoMac6細胞を、この試験で利用された細胞を提示するレポーター抗原として利用した。Ziegler−Heitbrockら、「Establishment of a human cell line(Mono Mac 6)with characteristics of mature monocytes」Int.J.Cancer 41:456〜461頁(1988年)。両方の系は、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI−1640培地(Cellgro(登録商標))で維持した。特に注記のない限り、細胞は全て5% CO2を補充した加湿インキュベーターで37℃にて維持した。
【0045】
化合物
以下のリストには、この試験で評価される小分子化合物が含まれる:タプシガルギン、タプシガルギシン(MP Biomedicals社、アーバイン CA)、1,2−ビス(o−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸テトラ(アセトキシメチル)エステル[BAPTA−AM、(EMD Biosciences社、サンディエゴ、CA)]、エチレングリコール−ビス(β−アミノエチル)−N,N,N’,N’−テトラアセトキシメチルエステル[EGTA−AM(EMD Biosciences社)]、1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、テトランドリン、KCl、アミロイドペプチドAβ1−42、1−オレオイル−2−アセチル−sn−グリセロール(OAG)、カルシマイシンA23187、ジフェニルボリン酸2−アミノエチル(2−APB)、ヒスタミン、シクロピアゾン酸、2,5−ジ−(t−ブチル)−1,4−ヒドロキノン[BHQ(EMD Biosiences社)]、GdCl3、塩酸ニカルジピン、1−(o−クロロ−α,αジフェニルベンジル)イミダゾール(クロトリマゾール)、アパミン、カリブドトキシン、ラジシコール、ブレフェルジンA、ツニカマイシン、タモキシフェン、イオノマイシン、スタウロスポリン、シス−ジアミン白金(II)ジクロリド(シスプラチン)、パクリタキセル、メトトレキサート、シクロヘキシミド、およびラパマイシン。特に注記のない限り、化合物は全てSigma−Aldrich社から購入した。化合物を、公開された文献に基づく一連の濃度でHeLa細胞に添加する前にメーカーの推奨により溶解し、1分間から2日間インキュベートした。炎症pam3cys−ser−(lys)4,ヒドロクロリド(Pam3Cys)、細菌フラジェリン、およびリポ多糖の既知のメディエーターは、EMD Biosiences社から購入した。
【0046】
DNA構築物
評価する細胞死誘導トランス遺伝子には、ヒトカスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ3、ヒトインスリン増殖因子−1受容体細胞内ドメイン(IGF−1R IC)、およびニューロキニン−1受容体(NK1R)が含まれ、全てpcDNA3.1ベクター(Invitrogen社)にクローニングした。マウスCD40L(またはCD154)発現プラスミドは、NCBIに公開されているマウスCD40Lのヌクレオチド配列(図12)を使用し、XbaI制限部位が隣接する配列をコードするオリゴヌクレオチド(図13)を重複させてCD40L相補的DNAを作製した後、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene社、サンディエゴ CA)を使用してポリメラーゼ連鎖反応を行った。得られたDNAを、XbaI(New England Biolabs社、イプスウィッチ MA)で消化し、同様に消化したpVAX1発現ベクター(Invitorogen社、カールスバッド CA)に連結した(図14)。pVAX−CD40L構築物はDNA配列決定により確認した。
【0047】
トランスフェクション
トランスフェクションは全て、メーカーの指示によりHeLa細胞およびリポフェクタミン2000(登録商標)トランスフェクション試薬(Invitorogen社)を用いて行った。NK1R−トランスフェクト細胞を、1μM サブスタンスPペプチド(Sigma−Aldrich社)と共にインキュベートしてトランスフェクションの翌日に死を誘導した。
【0048】
他の細胞ストレス/死経路
血清飢餓は、1〜24時間の間、血清を含まないDMEMでHeLa細胞をインキュベートした後に行った。熱ショックは、1〜6時間の間、42〜45℃で細胞をインキュベートして誘導した。
【0049】
炎症誘発性サイトカイン放出の定量化
細胞ストレス/死の後、得られた細胞/細胞残屑を回収し、過剰量のリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、凍結/解凍(−80℃から25℃)を3回素早く繰り返し、UV分光光度法(A280)により定量した。ストレス/死細胞内の炎症誘発性シグナルの存在を判定するため、40μgのストレス/死細胞を50,000個のTHP−1に添加し、18時間インキュベートした。腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン8(IL−8)、およびIL−12を含む炎症誘発性サイトカインの存在について、上清を市販のELISAシステムにより評価した。
【0050】
タプシガルギン依存性炎症活性の発生
B16−F10細胞を、タプシガルギン(2.5μM)の添加前に、約80%コンフルエントになるまで150mm組織培養プレートで培養した。細胞を、回収前に48時間インキュベートし、過剰量のリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、凍結−解凍サイクルを行い、上述の通りに定量した。未処理細胞を同様に回収し、両方の抽出物を、インビボでのさらなる使用の前に上述のTHP−1システムにより炎症活性についてインビトロで評価した。
【0051】
マウスの免疫感作および腫瘍曝露
記載された以下のマウス試験は全て、Buck Instituteの所内動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)により開始前に承認された。6〜8週齢のメスC57Bl/6およびnu/nuマウスは、Charles River Laboratories社から購入した(ウィルミントン MA)。免疫感作は、皮下、腹腔内、および皮内経路を含む様々な免疫感作経路により、500μgのB16−F10抽出物(タプシガルギン処理の有無にかかわらず)を2週間間隔で3回注射して行った。生腫瘍の曝露は、最後の追加免疫から2週間後、対側部位に100,000個の生B16−F10細胞を皮下注射して行った。
【0052】
(実施例II)
タプシガルギン感受性内因性危険シグナル(danger signal)の同定
薬剤を誘導する様々の異なる、可能性のある細胞ストレスおよび細胞死をスクリーニングした。植物由来タプシガルギン毒素は、患者由来子宮頸癌細胞株(HeLa)においてTNF−α分泌を誘導し、故に上述の様々な抗癌実施形態で使用するため同定された。反対に、他の可能性のある細胞ストレッサー(すなわち、例えば、タキソール、ツニカマイシン、ブレフェルジンA、シクロヘキシミド、およびカルシマイシン)をテストしたが、免疫賦活活性は誘導しなかった(図1参照のこと)。
【0053】
タプシガルギンは、単球細胞株を利用する読み出しシステムにおいて、抗原提示細胞(APC)を活性化して大量の炎症性サイトカイン腫瘍壊死因子−α(TNF−α)を分泌することもできた(データ不図示)。
【0054】
(実施例III)
サイトカインのタプシガルギン誘導分泌
この例は、癌細胞のタプシガルギン処理が、サイトカインを放出するように活性化される抗原提示細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞など)に対し、この細胞を免疫賦活性にすることを例証する。発明の機構を理解する必要はないが、IL−12は、細胞性免疫応答(癌および細胞内病原体による感染の制御に必要となり得る免疫応答の種類)の発生に役割を果たしていると考えられる。
【0055】
タプシガルギン関連化合物であるタプシガルギシン(疎水性のより低いタプシガルギン類似体)およびタプシガルギンは、単球細胞株THP−1からのIL−8の用量依存的分泌を活性化した。(図2A参照)。本発明は、幾つかの実施形態では、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物の直接投与を意図する。別の実施形態では、タプシガルギンおよび/またはタプシガルギン関連化合物は、ビーズ(タプシガルギンで処理したブチルセファロースビーズを使用された図2B参照)およびリポソーム(カチオン性リポソームにカプセル化したタプシガルギンが使用された図2C参照)などのビヒクルを介して投与される。これらのデータは、タプシガルギン関連化合物が、強力な炎症反応を活性化できることを示す。タプシガルギン処理はまた、様々な患者由来癌細胞株においてIL−12、IL−8、およびTNF−αの分泌ももたらす。(図3参照)。
【0056】
(実施例IV)
タプシガルギン処理したB16抽出物によるインビボ免疫感作
この例は、タプシガルギン処理細胞による免疫感作が、癌の進行に対する防御をもたらすことを示す。
【0057】
免疫原性の乏しいマウスメラノーマ細胞株B16を、インビトロでタプシガルギンにより処理し、これを炎症誘発性に(すなわち、実施例IIIに従いサイトカインを分泌できるように)した。続いて、タプシガルギン処理したB16細胞(B16細胞を洗浄し、定量化し、ならびに凍結および解凍により溶解して細胞断片溶液を作製した後)(B16+TG;500μg)および対照として未処理のB16細胞(B16)または生理食塩水緩衝液により、マウスを2週間ごとに1度、3回免疫感作した。最終免疫感作から2週間後、マウスに生B16癌細胞を移植し、腫瘍進行をモニターした。
【0058】
B16+TGは、C57Bl/6マウスにおいて免疫感作部位での一過性炎症反応を誘導した。この反応は、生理食塩水溶液またはB16群では見られなかった。C57Bl/6マウスは、B16+TGによる免疫感作後の腫瘍進行の有意な遅延および寿命の改善を示したが、B16または生理食塩水注射後では示さなかった(それぞれ、図4Aおよび4B参照)。データは、治療した動物が、腫瘍移植後、平均してほぼ2倍長生きしたことを示す。
【0059】
ヌードマウス(Nu/Nu)を用いた同様の実験は、B16+TG(同様に、細胞を洗浄し、定量化し、ならびに凍結および解凍により溶解して細胞断片溶液を作製した後)は、生存の改善に効果がないことを示した。ヌードマウスのタプシガルギン処理細胞免疫感作は、有意なインサイチュでの炎症を示したが、これは腫瘍進行の制御には効果がなかった(それぞれ、図5Aおよび図5B参照)。本発明の実践に必要ではないが、これらのデータは、ヌードマウスは正常な胸腺発達を妨げる遺伝子変異を有するため、機能性Tリンパ球の生成を阻害するという仮説と一致している。
【0060】
発明の機構を理解する必要はないが、Tリンパ球、特にCD8+細胞毒性サブセットは、新生物組織および細胞内病原体感染組織の破壊に役割を果たすと考えられる。以上のことから、これらのデータは、タプシガルギン処理細胞が、アジュバントに類似した方法で防御的T細胞反応の発生を順次もたらす炎症を活性化することを示す。
【0061】
(実施例V)
B16+TG注射により誘導された免疫防御記憶(immunoprtective memory)
この例は、B16+TG(すなわちこの後、細胞断片溶液を作製するため洗浄され、定量化され、ならびに凍結および解凍により溶解された、TG処理したB16細胞)による免疫感作は、注射したメラノーマに対する長期防御をもたらす一実施形態を提供する。
【0062】
C57Bl/6マウスを、実施例VIに従いB16+TGで免疫感作し、続いて生B16−F10メラノーマ細胞に曝露した。0日目および116日目では、B16+TG免疫感作マウスはメラノーマ腫瘍を発症していなかった。(図6参照)。B16+TG抽出物を投与されなかった対照マウスは、典型的な腫瘍進行速度を示した。
【0063】
或いは、マウスCD40L発現プラスミドは、B16+TG抽出物で共免疫感作した。免疫感作を皮内注射により行った場合、完全な腫瘍抑制が0日目に見られた。免疫感作を皮下または腹腔内注射により行った場合、部分的腫瘍抑制が0日目に見られた。0日目に皮内注射した動物を116日目に再曝露した場合、部分的腫瘍抑制のみが見られた。(図7参照)
これらのデータは、TG処理したB16抽出物で免疫感作したマウスは、B16メラノーマに対する長期持続免疫を発生できることを示す。この実験では、この免疫程度は、投与経路にある程度依存するように思われる。例えば、腹腔内または皮下的に与えられた免疫感作は、0日目または116日目ではB16メラノーマ細胞注射後の腫瘍増殖を完全には抑制しなかった。(図7参照)。しかし、条件を最適化していなかった。
【0064】
結論として、これらのデータは、B16+TGが最初の免疫感作および曝露後少なくとも3カ月の期間(すなわち、116日)にわたり、生癌細胞再曝露に対し防御できることを示す。これらのデータはまた、B16+TG抽出物が、Bおよび/またはT細胞による一過性の腫瘍特異的適応免疫応答を活性化してインビボでの腫瘍増殖を遅延させる可能性のある抗原提示細胞により、TNF−αなどの炎症誘発生サイトカインの合成を誘導し得ることも示唆する。
【0065】
(実施例VI)
B16−TG抽出物により誘導される単球分化
この例は、タプシガルギン処理細胞が、抗原提示細胞の他のサブタイプへの単球分化を誘発することができるかどうかについて例示的データを示す。過去の研究は、特定の薬剤が、抗原提示細胞上で作用する結果、成熟樹状細胞への分化をもたらすことを示している。Hertzら、「Microbial lipopeptides stimulate dendritic cell maturation via Toll−like receptor 2」J.Immunol.166:2444〜2450頁(2001年)。発明の機構を理解する必要はないが、樹状細胞は、生体における任意の抗原について適応免疫応答を活性化するか免疫寛容を活性化するかの決定に関与する主な細胞型であると考えられる。
【0066】
未分化の、円形をした、単球(図8A)を、タプシガルギン処理したHeLa細胞抽出物を用いてまたは用いずに24時間処理した。細胞形態の変化を、次いで評価した(すなわち、例えば、誘導された細胞の伸びおよび/または平板化)。結果は、タプシガルギン処理細胞が、最初の丸いものから平板で伸びたものへと単球細胞の形態変化を誘導することを示す。(図8B参照。黒い矢印で示されている)。この形態変化は、マクロファージまたは未成熟樹状細胞に特有の長い細胞プロセスを有する接着細胞への、一般に形態の丸い未分化単球の成熟プロセスを示すと考えられる。
【0067】
(実施例VII)
TGリポソーム製剤により誘導された腫瘍減少
この例は、タプシガルギン含有リポソームが、用量依存的な様式で腫瘍の進行を減少させることを示すデータを示す。
【0068】
増加する量のタプシガルギン(0.0003、0.003、および0.03mol%)を含有する総脂質量50mMのカチオン性リポソームは、脂質フィルム法に続く数サイクルの押出しにより調製した。Kuntsfeldら、Journal of Investigative Dermatology、120:476〜482頁(2003年)。リポソームは、様々な濃度のタプシガルギン、合計で50mol%にするのに十分な1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホクロリン(DOPC)および50mol% 1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を用いてクロロホルムにおいて調製した。脂質フィルムを回転蒸発器での蒸発後に生成し、5%スクロース緩衝液で一晩再水和した。リポソームを、200nMの押出し膜により押出し、使用まで4℃でアルゴンガス下で保管した。2匹のメスC57Bl/6マウスから成る4群に、0日目に左脇腹に1×105生B16−F10メラノーマ細胞を同時に皮下移植した。リポソームカプセル化タプシガルギンを投与されたマウスに、腫瘍移植後7、8、9、14、15、16、21、22、および23日目に尾底から右脇腹にかけての遠位部位に各タプシガルギン含有リポソーム製剤50μlを皮内注射し、腫瘍の進行をモニターした。
【0069】
2匹のメスC57Bl/6マウスから成る4群に、次いで0日目に左脇腹に1×105生B16−F10メラノーマ細胞を同時に皮下移植した。リポソームカプセル化タプシガルギンを投与されたマウスに、7、8、9、14、15、16、21、22、および23日目に尾底から右脇腹にかけての遠位部位に各タプシガルギン含有リポソーム製剤50μlを皮内注射し、腫瘍の進行をモニターした。データは、リポソームカプセル化タプシガルギンが、用量依存的な様式で腫瘍の進行を低減できることを示す。(図9参照)。
【0070】
(実施例VIII)
毒素誘導NF−κBプロモーター系
この例は、毒素感受性ハイスループットレポーター(すなわちマーカーまたは標識)系の一実施形態を示す。
【0071】
ホタルルシフェラーゼ発現誘導NF−κBプロモーターをコードする安定にトランスフェクトしたDNA構築物を、i)ヒト前単球細胞株THP−1、およびii)ヒト前単球細胞株MonoMac−6に組み込んだ。簡単には、ホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流のコンカテマー化NF−κB応答エレメントをコードするDNA[Tingら、「RIP mediates tumor necrosis factor receptor 1 activation of NF−kappaB but not Fas/APO−1−initiated apoptosis」EMBO J.Nov 15;15(22):6189〜96頁(1996年)]を、標準的分子生物学的方法によりpEAK8ベクター骨格(Edge Biosystems社、ゲイサーズバーグ MD)にサブクローニングした。エレクトロポレーションを、10μgのDNAおよび700,000個のTHP−1またはMonoMac6細胞を用いて、Biorad Gene Pulser IIエレクトロポレーター(Biorad社、ハーキュリーズ CA)、0.4cmエレクトロキュベット(electrocuvette)、および200V、950μFにより行った。エレクトロポレーション後、安定にトランスフェクトしたクローンを生成するため、300ng/mlのピューロマイシンアミノヌクレオシド(Sigma−Aldrich社)による選択前に、細胞を2日間回復させた。ルシフェラーゼ発現を、Top Count NXTルミノメーター(Perkin Elmer社、ウェルズリー MA)により定量化した。簡単には、50,000個のレポーター細胞を、回収および分析前に96ウェルホワイトプレートで18時間、列挙した指定濃度の炎症メディエーターと共にインキュベートした。
【0072】
THP−1クローンA9
(TLR2を介してシグナル伝達する)TLRリガンドPam−3−Cysおよび(TLR5を介してシグナル伝達する)細菌フラジェリン((TLR4を介してシグナル伝達する)細菌リポ多糖ではない)のTHP−1由来クローンA9認識を、TGインキュベーション中に96ウェルホワイトプレート自動化アッセイでNF−κB活性をモニターして判定した。(図10A参照)
様々な濃度のタプシガルギンも、予め播種したHeLa細胞の存在下または非存在下で使用した。これらの結果は、クローンA9が、未処理HeLa細胞またはタプシガルギン単独よりも相乗的な高レベルでタプシガルギン処理したHeLa細胞を認識したことを示した。(図10B参照)。
【0073】
同時に、これらのデータは、TLR2を介した炎症を調節する新規化合物および/または因子の同定におけるクローンA9の使用を支持するものである。
【0074】
MonoMac−6クローンC5
第2の安定なNF−κBレポーター構築物形質転換体を、MonoMac−6細胞を用いて作製した。クローンA9とは対照的に、MonoMac−6由来クローンC5は、細菌リポ多糖の認識を改善したことを示した。クローンC5もまた、Pam3Cys、フラジェリン、およびタプシガルギン処理したHeLa細胞を認識した。(図11参照)。
【0075】
(実施例IX)
タプシガルギン誘導脱毛
この例は、タプシガルギン(TG)が、脱毛を誘導する局所用溶液で使用される一実施形態を示す。様々な濃度(対照0、ならびにテスト試料40uM、1.2mMおよび40mM)でTGを含有する擦り込み溶液(rub−on solution)(75%エタノール、22%シクロヘキサン、および3%ジメチルスルホキシド)を調製した。様々な溶液を、異なるマウスに局所適用した。高濃度では、インサイチュで誘導炎症を素早く見ることができた(データ不図示)。高濃度での3日目の炎症は、この濃度が不適切であることが明らかになるほど多くの炎症を誘導した。低濃度では、擦り込み部位で一過性の脱毛症/抜け毛を誘導した(データ不図示)。脱毛は、数週間、および数カ月間も続き、4.5カ月(18週)でも依然として脱毛を見ることができた。何匹かの動物では、TG治療した動物(1回治療)でひとたび完全に脱毛すると、治療部位は、18週時点で若干毛が再生しはじめていた。故に、この低用量(uM)のTGは、脱毛を誘導するため、または化粧品および他の医学的適用のための他の脱毛製品で使用するのに(例えばローションで)使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、子宮頸癌HeLa細胞の炎症誘発性活性に対する様々な化合物の効果を示す例示的データを示す図である。X軸:対照(−−)、タプシガルギン(TG)、タキソール、ツニカマイシン(Tunic)、ブレフェルジン(BrefA)、シクロヘキシミド(CHX)、およびカルシマイシン(A23187)。Y軸:TNF−α(pg/ml)。
【図2A】図2Aは、単球細胞株THP−1からのヒトIL−8の放出の刺激において、タプシガルギン対タプシガルギシン処理HeLa細胞の比較を示す例示的データを示す図である。X軸:タプシガルギンまたはタプシガルギシン濃度(μM);Y軸:インターロイキン8(IL−8)濃度(pg/ml)。
【図2B】図2Bは、タプシガルギン処理したブチルセファロースビーズを使用して、抗原提示細胞からのIL−8放出をもたらした結果を示す図である。
【図2C】図2Cは、カチオン性リポソームカプセル化TGが、APCからのIL−8放出を誘導することを示す図である。別の実施形態では、本発明は、送達ビヒクルとして、やはり疎水性であるリポソームを意図する。
【図3】図3は、タプシガルギン関連化合物への曝露後のサイトカインを分泌することが知られている様々な組織由来癌細胞株の発生率(prevalence)を示す実例リストを示す図である。
【図4】図4は、タプシガルギンベースの免疫感作は腫瘍増殖を減少させ、C57Bl/6マウスにおける生存を改善することを示す例示的データを示す図である。パネルA:経時的腫瘍増殖。短い線:生理食塩水対照。白丸:未処理B16細胞抽出物。黒丸:2.5μM B16+TG細胞抽出物。パネルB:経時的細胞生存。短い線:生理食塩水対照。白丸:未処理B16細胞抽出物。黒丸:2.5μM B16+TG細胞抽出物。
【図5】図5は、タプシガルギンベースの免疫感作は、ヌードマウス(Nu/Nu)における腫瘍増殖に影響しないことを示す例示的データを示す図である。パネルA(矢印は注射部位を示す):マウス1およびマウス2;B16−TG誘導炎症。マウス3およびマウス4;B16対照。パネルB:経時的細胞生存。白丸:未処理B16細胞抽出物。黒丸:2.5μM B16+TG細胞抽出物。
【図6】図6は、C57Bl/6マウスのB16+TG細胞抽出物(500μg I.P.)免疫感作後の腫瘍増殖の減少を示す例示的データを示す図である。X軸:0日目にB16−F10メラノーマ細胞を注射した後の日数。Y軸:腫瘍面積(mm2)。白丸:2回のB16+TG細胞抽出物(0日目および116日目)注射および2回のB16−F10細胞注射(0日目および116日目)。黒い四角:B16−F10細胞を注射した0日目の未処理対照。黒い三角:B16−F10を注射した116日目の未処理対照。
【図7】図7は、C57Bl/6マウスの、B16+TG細胞抽出物(500μg)/CD40L発現プラスミド免疫感作後の腫瘍増殖の減少を示す例示的データを示す図である。X軸:0日目にB16−F10メラノーマ細胞を注射した後の日数。Y軸:腫瘍面積(mm2)。白丸:2回のB16+TG細胞抽出物/CD40L発現プラスミド腹腔内注射(0日目および116日目)および2回のB16−F10メラノーマ細胞注射(0日目および116日目)。白い四角:2回のB16+TG細胞抽出物/CD40L発現プラスミド皮内注射(0日目および116日目)および2回のB16−F10メラノーマ細胞注射(0日目および116日目)。白い菱形:2回のB16+TG細胞抽出物/CD40L発現プラスミド皮下注射(0日目および116日目)および2回のB16−F10メラノーマ細胞注射(0日目および116日目)。黒い四角:B16−F10メラノーマ細胞を注射した0日目の未処理対照。黒い三角:B16−F10メラノーマ細胞を注射した116日目の未処理対照。
【図8】図8は、タプシガルギン処理したHeLa細胞抽出物の単球分化の誘導を示す例示的データを示す図である。パネルA:丸い形態を有する未処理単球。パネルB:伸長したおよび平板化した形態を有する処理した単球(矢印)。
【図9】図9は、7、8、9、14、15、16、21、22、および23日目(矢印)にTGリポソーム製剤を投与した後のC57Bl/6マウス生存の用量依存的改善を示す例示的データを示す図である。白丸:B16−F10細胞を0日目に注射(S.C.)した後の未処理対照。黒い菱形:B16−F10細胞を0日目に注射(S.C.)した後の0.003モル%TG(I.D.)。黒い四角:B16−F10細胞を0日目に注射(S.C.)した後の0.003モル%TG(I.D.)。黒い三角:B16−F10細胞を0日目に注射(S.C.)した後の0.03モル%TG(I.D.)。
【図10】図10のパネルAは、ルシフェラーゼレポーター系で判定した、様々なTLRリガンドに対する50,000個のTHP−1クローンA9の反応を示す例示的データを示す図である。Y軸:ホタルルシフェラーゼタンパク質の化学発光特性により発生した相対発光量(RLU)。図10BのパネルBは、ルシフェラーゼレポーター系で判定した、50,000個のTHP−1クローンA9を用いたタプシガルギン(TG)用量反応曲線を示す例示的データを示す図である。Y軸:ホタルルシフェラーゼタンパク質の化学発光特性により発生した相対発光量(RLU)。白いバー:TG単独。黒いバー:30,000個のTG処理したHeLa細胞。Med=培地対照。
【図11】図11は、ルシフェラーゼレポーター系で判定した、様々なTLRリガンドに対するMonoMac−6クローン5の反応を示す例示的データを示す図である。Y軸:ホタルルシフェラーゼタンパク質の化学発光特性により発生した相対発光量(RLU)。TG(2.5μM)。培地=対照。
【図12】図12は、CD40Lのヌクレオチド配列を示す図である。
【図13】図13は、pVAX1のXbaI制限部位へのライゲーション用に調製したCD40L cDNAを示す図である。
【図14】図14は、市販のpVAX1発現プラスミドのマップを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)腫瘍細胞を有する患者を提供する工程と、b)前記患者から前記腫瘍細胞の少なくとも一部を除去して除去細胞を作製する工程と、b)処理された腫瘍細胞を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤に、前記除去細胞の少なくとも一部をエキソビボで曝露する工程と、c)前記処理された腫瘍細胞を溶解して細胞断片を作製する工程と、d)前記断片を前記患者にインビボで導入して抗癌治療効果を生じさせる工程とを含む、方法。
【請求項2】
工程(c)が、前記処理された腫瘍細胞由来の腫瘍細胞抽出物を調製する工程をさらに含み、工程(d)が、同じ患者にインビボで前記抽出物を導入して抗癌治療効果を生じさせる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出物が無細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)の前記処理が、1分と30分との間の時間にわたる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
CD40L発現構築物を前記患者に導入する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍細胞が、前立腺癌細胞、乳癌細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、膵臓癌細胞、結腸癌細胞、肺癌細胞、および骨癌細胞から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍細胞が皮膚癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記腫瘍細胞がリンパ腫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗癌治療効果が、腫瘍サイズの減少を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤がタプシガルギンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤がタプシガルギシン(thapsigargicin)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
a)癌を発症するリスクのある患者および癌細胞株を提供する工程と、b)処理された癌細胞を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤で、前記癌細胞株由来の細胞をエキソビボで処理する工程と、c)細胞断片を作製するため、前記処理された癌細胞を溶解する工程と、d)前記患者にインビボで前記断片を導入して抗癌予防効果を生じさせる工程とを含む、方法。
【請求項13】
工程(c)が、前記処理された腫瘍細胞由来の腫瘍細胞抽出物を調製する工程をさらに含み、工程(d)が、同じ患者にインビボで前記抽出物を導入して抗癌治療効果を生じさせる工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抽出物が無細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(b)の前記処理が、1分と30分との間の時間にわたる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記癌細胞株が、前立腺癌細胞、乳癌細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、膵臓癌細胞、結腸癌細胞、肺癌細胞、および骨癌細胞から成る群から選択される細胞に由来する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記癌細胞株が皮膚癌細胞を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記癌細胞株がリンパ腫細胞を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤がタプシガルギンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤がタプシガルギシンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
a)癌細胞、および前単球細胞株を提供する工程であって、前記前単球細胞株は、マーカータンパク質の発現を促進するNF−κBプロモーターをコードするDNA構築物をトランスフェクトされている、工程と、(b)処理された癌細胞株を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤で前記癌細胞をインビトロで処理する工程と、c)前記処理された癌細胞由来の細胞断片を調製する工程と、d)インビトロで前記前単球細胞株に前記断片を導入する工程と、e)発現した前記マーカータンパク質の量を測定する工程とを含む、方法。
【請求項22】
前記マーカーがホタルルシフェラーゼを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記前単球細胞株が、ML1、HL60およびU−937から成る群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記前単球細胞株が、ヒト前単球細胞株THP−1およびヒト前単球細胞株MonoMac−6から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項1】
a)腫瘍細胞を有する患者を提供する工程と、b)前記患者から前記腫瘍細胞の少なくとも一部を除去して除去細胞を作製する工程と、b)処理された腫瘍細胞を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤に、前記除去細胞の少なくとも一部をエキソビボで曝露する工程と、c)前記処理された腫瘍細胞を溶解して細胞断片を作製する工程と、d)前記断片を前記患者にインビボで導入して抗癌治療効果を生じさせる工程とを含む、方法。
【請求項2】
工程(c)が、前記処理された腫瘍細胞由来の腫瘍細胞抽出物を調製する工程をさらに含み、工程(d)が、同じ患者にインビボで前記抽出物を導入して抗癌治療効果を生じさせる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出物が無細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)の前記処理が、1分と30分との間の時間にわたる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
CD40L発現構築物を前記患者に導入する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍細胞が、前立腺癌細胞、乳癌細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、膵臓癌細胞、結腸癌細胞、肺癌細胞、および骨癌細胞から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍細胞が皮膚癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記腫瘍細胞がリンパ腫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗癌治療効果が、腫瘍サイズの減少を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤がタプシガルギンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤がタプシガルギシン(thapsigargicin)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
a)癌を発症するリスクのある患者および癌細胞株を提供する工程と、b)処理された癌細胞を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤で、前記癌細胞株由来の細胞をエキソビボで処理する工程と、c)細胞断片を作製するため、前記処理された癌細胞を溶解する工程と、d)前記患者にインビボで前記断片を導入して抗癌予防効果を生じさせる工程とを含む、方法。
【請求項13】
工程(c)が、前記処理された腫瘍細胞由来の腫瘍細胞抽出物を調製する工程をさらに含み、工程(d)が、同じ患者にインビボで前記抽出物を導入して抗癌治療効果を生じさせる工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抽出物が無細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(b)の前記処理が、1分と30分との間の時間にわたる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記癌細胞株が、前立腺癌細胞、乳癌細胞、子宮頸癌細胞、子宮癌細胞、膵臓癌細胞、結腸癌細胞、肺癌細胞、および骨癌細胞から成る群から選択される細胞に由来する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記癌細胞株が皮膚癌細胞を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記癌細胞株がリンパ腫細胞を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤がタプシガルギンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤がタプシガルギシンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
a)癌細胞、および前単球細胞株を提供する工程であって、前記前単球細胞株は、マーカータンパク質の発現を促進するNF−κBプロモーターをコードするDNA構築物をトランスフェクトされている、工程と、(b)処理された癌細胞株を作製するため、タプシガルギンおよびタプシガルギン関連化合物から成る群から選択される薬剤で前記癌細胞をインビトロで処理する工程と、c)前記処理された癌細胞由来の細胞断片を調製する工程と、d)インビトロで前記前単球細胞株に前記断片を導入する工程と、e)発現した前記マーカータンパク質の量を測定する工程とを含む、方法。
【請求項22】
前記マーカーがホタルルシフェラーゼを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記前単球細胞株が、ML1、HL60およびU−937から成る群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記前単球細胞株が、ヒト前単球細胞株THP−1およびヒト前単球細胞株MonoMac−6から選択される、請求項21に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【公表番号】特表2009−535298(P2009−535298A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502932(P2009−502932)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/007526
【国際公開番号】WO2007/126787
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508289523)ザ バック インスティテュート フォー エイジ リサーチ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/007526
【国際公開番号】WO2007/126787
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508289523)ザ バック インスティテュート フォー エイジ リサーチ (1)
【Fターム(参考)】
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