説明

癌の処置のための併用療法

【課題】癌を処置するための方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、癌の処置が必要な患者において、癌を処置するための方法に関する。この方法は、必要な患者に、第1の処置手順において第1量のヒストンデアセチラーゼインヒビター、ならびに第2の処置手順において第2量のヒストンデアセチラーゼインヒビターを投与する工程を包含を包含する。第1量および第2量が、一緒に、治療的有効量を含有する。HDACインヒビターおよび放射線療法の組合せが、治療的相乗的である。1つの実施形態において、癌の処置のための併用療法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、米国仮出願第60/373,033号(2002年4月15日出願)の優先権を主張する。上記出願の教示全体は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(政府支援)
本発明は、全体または一部において、国立癌センターからのCore支援(支援番号08748)およびNIHからのCA05826によって支援された。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
正常な組織のホメオスタシスは、細胞増殖の速度と細胞死の速度との間の複雑なバランスによって達成される。細胞増殖の速度を増加させるか、または細胞死の速度を減少させるかのいずれかによるこのバランスの崩壊は、細胞の異常な増殖を引き起こし得、そして癌の発生における主要な現象であると考えられている。癌の処置のための従来の戦略としては、化学療法、放射線療法、手術、生物学的療法またはそれらの組み合わせが挙げられる;しかし、これらの戦略は、特異性の欠落および正常な組織に対する過剰な毒性によって制限されている。さらに、特定の癌は、化学療法のような処置に対して耐性であり、そして手術のようなこれらの戦略のいくつかは、常に実行可能な代替であるわけではない。
【0004】
癌細胞は、特定の種類の放射線を用いる攻撃によって、弱められ、最終的には殺傷され得、したがって、放射線療法は、癌について重要な処置である。例えば、前立腺癌の場合、癌の放射線療法の遡及的分析により、原発性腫瘍の局所コントロールを達成できないことは、疾患の最終的な転移性拡散と大きく関連していることが証明されている(Yorke,E.D.ら、Cancer Res.53:2987−93(1993);Fuks,Z.ら,Int.J.Radiat.Oncol Biol.Phys.21:537−47(1991))。また、再発の早期マーカー(例えば、PSA)のアベイラビリティにより、前立腺癌の放射線療法において使用される標準的な投薬レジメンが、不適切であることも示唆されている(Pollack,A.ら、Int J Radiat Oncol Biol Phys.53:1097−1105(2002))。これらの2つの観察は、3D立体処置および強度調節放射線療法(IMRT)のような、正常な器官の曝露を最小限にしか増加させずに治療用放射線の線量を増加させることを可能にする技術の研究のための機動力を提供した(Zelefsky,M.J.ら,Radiother.Oncol.55:241−9(2000))。用量送達を増加させることなく治療効率を増加させるためのアプローチとしての放射線増感剤の使用もまた、研究されている(Lawton,C.A.ら,Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Phys.36:673−80(1996))。
【0005】
癌の処置はまた、化学療法剤の使用を包含し得る。例えば、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)は、ヒドロキサム酸ベースの混成極性化合物であり、この化合物は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)活性を阻害し、そして末端分化、細胞増殖の停止および/または腫瘍細胞のアポトーシスをインビトロで誘導する(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。SAHAは、末端分化、細胞増殖の停止および/または腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し得るヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビターのクラスに属する。この化合物は、検出可能な毒性を最小限か全く伴うことなく、ヌードマウスにおける前立腺癌異種移植片の阻害を示した(Butler,L.M.ら,Cancer Res.60:5165−70(2000)。固形腫瘍および血液腫瘍(前立腺癌を含む)の処置のためのI期試験は完了している(Kelly,W.K.ら、Expert Opin.Investig.Drugs 11:1695−713(2002);Kelly,W.K.ら,ASCO Proceedings,Orlando,FL,2002,pp.1831)。
【0006】
代表的に、HDACインヒビターは、以下の5つの一般的なクラスに入る:A)ヒドロキサム酸誘導体;B)環状テトラペプチド;C)短鎖脂肪酸(SCFA);D)ベンズアミド誘導体;およびE)求電子性ケトン誘導体。
【0007】
併用療法は、しばしば、癌の処置において用いられる。例えば、2つ以上の許容された治療(例えば、化学療法および放射線療法)が用いられている。特定の併用療法から誘導される治療効果は、SteelおよびPeckham(Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Phys.5:85−91(1979))によって、4つの一般的なカテゴリーの下で分類されている。これらのカテゴリーは、以下である:1)空間的協働−化学療法および放射線療法は、異なる解剖学的部位における疾患を撲滅する;2)毒性非依存性−化学療法に起因する殺傷が、非オーバーラップ正常器官毒性に起因して放射線療法から誘導される殺傷に加えられる;3)正常組織の保護−多くの線量の放射線を標的に送達することを可能にする薬剤;4)腫瘍応答の増強−1つの薬剤(化学療法または放射線)は、腫瘍細胞を他の薬剤に対して優勢に「感作」し、その結果、これら2つの効果が、各個の効果を加えることによって予測される効果よりも大きくなる。
【0008】
初めの2つのカテゴリーは、2つの薬剤の間の相互作用を必要としない。組合わせた放射線療法/化学療法に起因する治療効果の臨床例は、一般に、カテゴリー1および2に入り、ここでカテゴリー1は、組み合わせ様式療法のための優勢な臨床原理である。カテゴリー3および4に対応する治療効果は、研究室で観察されているが、臨床への移行は遅れている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Richon,V.M.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.(1998)95:3003−7
【非特許文献2】Marks,P.Aら,Curr.Opin.Oncol.(2001)13:477−83
【非特許文献3】Marks,P.Aら,Nature Reviews Cancer (2001)1:194−202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の観点から、癌は、多くの潜在的に有効な処置が利用可能である疾患である。しかし、種々のタイプの癌の罹患率およびそれが有し得る重大な影響に起因して、より効果的な処置、特に、現在利用可能な形態の処置よりも小さい有害な副作用を伴う処置が、必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、以下を提供する。
(項目1)
癌の処置が必要な患者において、癌を処置するための方法であって、該患者に、第1の処置手順において第1量のヒストンデアセチラーゼインヒビター、および第2の処置手順において第2量の放射線を投与する工程を包含し、ここで、該第1量および第2量が、一緒になって治療的有効量を構成する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、ヒドロキサム酸誘導体、短鎖脂肪酸(SCFA)、環式テトラペプチド、ベンズアミド誘導体、または求電子性ケトン誘導体である、方法。
(項目3)
項目2に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、SAHA、ピロキサミド、CBHA、トリコスタチンA(TSA)、トリコスタチンC、サリチルヒドロキサム酸(SBHA)、アゼライックビスヒドロキサム酸(ABHA)、アゼライック−1−ヒドロキサメート−9−アニリド(AAHA)、6−(3−クロロフェニルウレイド)カプロン酸ヒドロキサム酸(3Cl−UCHA)、オキサムフラチン、A−161906、スクリプタイド、PXD−101、LAQ−824、CHAP、MW2796、およびMW2996からなる群より選択されるヒドロキサム酸誘導体である、方法。
(項目4)
項目2に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、トラポキシンA、FR901228(FK228またはデプシペプチド)、FR225497、アピシジン、CHAP、HC−毒素、WF27082、およびクラミドシンからなる群より選択される環式テトラペプチドである、方法。
(項目5)
項目2に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、酪酸ナトリウム、イソバレレート、バレレート、4 フェニルブチレート(4−PBA)、フェニルブチレート(PB)、プロピオネート、ブチルアミド、イソブチルアミド、フェニルアセテート、3−ブロモプロピオネート、トリブチリン、バルプロ酸およびバルプロエートからなる群より選択される、短鎖脂肪酸(SCFA)である、方法。
(項目6)
項目2に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、CI−994、MS−27−275(MS−275)およびMS−27−275の3’−アミノ誘導体からなる群より選択されるベンズアミド誘導体である、方法。
(項目7)
項目2に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、トリフルオロメチルケトンおよびα−ケトアミドからなる群より選択される求電子性ケトン誘導体である、方法。
(項目8)
項目2に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、デプデシンである、方法。
(項目9)
項目1に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、以下の構造:
【化1】


またはその薬学的に受容可能な塩によって表される、方法。
(項目10)
項目1に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、以下の構造:
【化2】


またはその薬学的に受容可能な塩によって表されるピロキサミドである、方法。
(項目11)
項目1に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、以下の構造:
【化3】


またはその薬学的に受容可能な塩によって表される、方法。
(項目12)
項目1に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、以下の構造:
【化4】


またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物によって表され、ここで:
およびRは、同じであっても異なっていてもよく;
およびRが、同じである場合、各々は、置換または非置換のアリールアミノシクロアルキルアミノ基またはピペリジノ基であり;
およびRが、異なるR=R−N−Rである場合、RおよびRの各々は、独立して、互いに同じであるか、または異なり、そして水素原子、ヒドロキシル基、置換または非置換の分枝または非分枝のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基であるか、またはRおよびRは、一緒に結合して、ピペリジン基を形成し;
は、ヒドロキシアミノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基またはアルキルオキシ基であり;そして
nは、約4〜約8の整数である、方法。
(項目13)
項目1に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、以下の構造:
【化5】


またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物によって表され、ここで:
Rが、置換または非置換のフェニル基、ピペリジノ基、チアゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基または4−ピリジル基であり;そして
nが、約4〜約8の整数である、
方法。
(項目14)
項目1に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、以下の構造:
【化6】


またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物によって表され、ここで:
Aは、アミド部分であり;
およびRが、各々、置換または非置換のアリール基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アリールアルキル基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基から選択され;
が、水素、ハロゲン基、フェニル基またはシクロアルキル基であり;そして
nが、約3〜約10の整数である、方法。
(項目15)
項目1に記載の方法であって、前記第2の処置手順の放射線が、外部ビーム放射線である、方法。
(項目16)
項目1に記載の方法であって、前記第2の処置手順の放射線が、放射性医薬品である、方法。
(項目17)
項目16に記載の方法であって、前記放射性医薬品が、放射性結合体である、方法。
(項目18)
項目17に記載の方法であって、前記放射性結合体が、放射標識抗体である、方法。
(項目19)
項目1に記載の方法であって、前記放射線が、電磁放射線および粒子状放射線からなる群より選択される、方法。
(項目20)
項目19に記載の方法であって、前記電磁放射線が、X線、γ線およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、方法。
(項目21)
項目19に記載の方法であって、前記粒子状放射線が、電子ビーム(β粒子)、陽子線、中性子線、α粒子および負性π中間子からなる群より選択される、方法。
(項目22)
項目21に記載の方法であって、前記粒子状放射線が、α粒子である、方法。
(項目23)
項目1に記載の方法であって、合計少なくとも約1Gyの放射線が前記患者に投与される、方法。
(項目24)
項目1に記載の方法であって、合計少なくとも約10Gyの放射線が前記患者に投与される、方法。
(項目25)
項目1に記載の方法であって、合計少なくとも約20Gyの放射線が前記患者に投与される、方法。
(項目26)
項目1に記載の方法であって、合計少なくとも約40Gyの放射線が前記患者に投与される、方法。
(項目27)
項目1に記載の方法であって、前記HDACインヒビターおよび前記放射線の治療効果が、相乗的である、方法。
(項目28)
項目26に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、放射線に対して、前記患者の癌細胞を感作させる、方法。
(項目29)
項目1に記載の方法であって、放射線が、前記HDACインヒビターに対して、前記患者の癌細胞を感作させる、方法。
(項目30)
項目1に記載の方法であって、前記HDACインヒビターおよび放射線が、同時に投与される、方法。
(項目31)
項目1に記載の方法であって、前記HDACインヒビターおよび前記放射線が、連続的に投与される、方法。
(項目32)
項目31に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、前記放射線の投与の前に投与される、方法。
(項目33)
項目31に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、前記放射線の投与の後に投与される、方法。
(項目34)
項目1に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、経口的、非経口的、腹腔内的、静脈内的、動脈内的、経皮的、舌下的、筋肉内的、直腸的、経頬的、経鼻的、吸入によって、膣的、眼内的、局所的、皮下的、脂肪内的、関節内的、髄腔内的に投与される、方法。
(項目35)
項目1に記載の方法であって、前記HDACインヒビターが、遅延放出投薬形態である、方法。
(項目36)
項目16に記載の方法であって、前記放射性医薬品が、経口的、非経口的、腹腔内的、静脈内的、動脈内的、経皮的、舌下的、筋肉内的、直腸的、経頬的、経鼻的、吸入によって、膣的、眼内的、局所的、皮下的、脂肪内的、関節内的、または髄腔内的に投与される、方法。
(項目37)
項目16に記載の方法であって、前記放射性医薬品が、遅延放出投薬形態である、方法。
(項目38)
HDACインヒビターおよび放射線の併用療法に対する癌細胞の感受性を決定する方法であって、該方法が、該癌細胞に、第1の処置手順で第1量のヒストンデアセチラーゼインヒビター、および第2の処置手順で第2量の放射線を接触させる工程であって、ここで、該第1の処置および第2の処置が一緒に、治療的有効量を含む工程、ならびに処置に対する該細胞の感受性を評価する工程、を包含する、方法。
(項目39)
癌の処置のためのHDACインヒビターおよび放射線の組合せの治療的有効量を決定する方法であって、癌細胞に、第1の処置手順で第1量のヒストンデアセチラーゼインヒビター、および第2の処置手順で第2量の放射線に曝露する工程であって、該第1の処置および第2の処置が一緒に、治療的有効量を含む工程、ならびに抗癌効果を評価する工程、を包含する、方法。
(項目40)
第1量のヒストンデアセチラーゼインヒビターおよび第2量の放射線を含む、薬学的組成物であって、該第1量および第2量が、一緒に、治療的有効量を含む、薬学的組成物。
(項目41)
項目40に記載の組成物であって、前記放射線が、放射性医薬品である、組成物。
(項目42)
癌を処置するための医薬の製造のための、第1量のHDACインヒビターおよび第2量の放射線の使用。
(項目43)
項目42に記載の使用であって、前記放射線が、放射性医薬品である、使用。
【0012】
本発明は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビター(例えば、SAHA)を、放射線源(例えば、外部ビーム放射線)または放射性同位体(例えば、放射性医薬)と組合わせて使用して、治療的に有効な抗癌効果を提供し得るという発見に基づく。さらに、HDACインヒビターと放射線源との間の予想外の相乗的相互作用は、増強されたかまたは相乗的な治療効果を生じ、ここでこの合わされた効果は、ある治療用量における2つの処置剤の各々を投与することから得られる相加的効果よりも大きい。これらの観察は、HDACインヒビター(例えば、SAHA)が、癌の処置のための放射線療法と組合わせて使用され得る放射線増感剤として働き得ることを示唆する。HDACインヒビター(例えば、SAHA)が放射線増感剤として働く能力は、以前には記載されていない。
【0013】
第1の処置手順(これは、本明細書中に記載されるように、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビターの投与を包含する)と、第2の処置手順(これは、本明細書中に記載されるように、その必要のある患者に放射線処置を使用する)との組み合わせは、治療的に有効な抗癌効果を提供し得ることが、予想外にも発見された。これらの処置(HDACインヒビターの投与および放射線療法の投与)のそれぞれが、他方と組み合わされた場合に治療的に有効な処置を提供する量または線量で使用される。
【0014】
このように、本発明は、その必要のある患者における、癌の処置のための方法に関する。本明細書中で使用される場合、癌の処置とは、癌転移を含む癌の進行を部分的または全体的に、阻害、遅延または予防すること;癌転移を含む癌の再発を阻害、遅延または予防すること;あるいは哺乳動物(例えば、ヒト)における癌の発症または発生を予防すること(化学予防法)をいう。
【0015】
本発明の方法は、以下を含むがそれらに限定されない種々の癌の処置において有用である:固形腫瘍(例えば、肺、乳房、結腸、前立腺、膀胱、直腸、脳または子宮内膜の腫瘍)、血液悪性腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫)、腺癌(例えば、膀胱癌、直腸がん、乳癌、結腸直腸癌)、神経芽細胞腫または黒色腫。
【0016】
この方法は、その必要のある患者に、第1の処置手順において、第1の量のヒストンデアセチラーゼインヒビターを、第2の処置手順において、第2の量または線量の放射線を投与する工程を包含する。これらの第1の量および第2の量が一緒になって、治療的有効量を構成する。
【0017】
本発明はさらに、癌の処置に有用な薬学的組成物に関する。この薬学的組成物は、第1の量のヒストンデアセチラーゼインヒビターおよび第2の量の放射線(例えば、放射性医薬)を含む。この第1の量および第2の量は、一緒になって、治療的有効量を構成する。
【0018】
本発明はさらに、癌を処置するための医薬の製造のための、第1の量のHDACインヒビターおよび第2の量の放射線(例えば、放射性医薬)の使用に関する。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、HDACインヒビターと放射線療法との組み合わせは、この併用療法レジメンが、ある治療用量で単独で投与された場合の各々の成分の相加的効果よりも、有意に良好な抗癌結果(例えば、増殖の阻害)を生じる場合に、治療的に相乗的であるとみなされる。標準的な統計分析は、この結果が有意に良好である場合を決定するために用いられ得る。例えば、Mann−Whitney試験またはいくつかの他の一般的に許容されている統計分析が用いられ得る。
【0020】
放射線治療において使用される放射線源は、電磁放射線(例えば、X線またはγ線)、または粒子放射線(例えば、電子ビーム(β粒子)、プロトンビーム、ニュートロンビーム、α粒子、またはネガティブπ中間子)であり得る。
【0021】
放射線処置は、外部ビーム放射線であり得るか、または放射性同位体の使用を含み得る(例えば、本明細書中に記載されるような、放射性医薬の投与による)。放射線処置はまた、外部ビーム放射線と放射性同位体(例えば、放射性医薬)との組み合わせであり得る。
【0022】
1つの特定の実施形態において、放射線は、標的化送達によって、または標的化放射性結合体(例えば、放射性標識された抗体)の全身送達によって提供される。
【0023】
放射線の線量は、患者、および処置される癌のタイプに依存して決定され得る。特定の実施形態において、患者は、少なくとも約1Gyの放射線(例えば、約5、6、7、8、9、10Gy、20Gyまたは40Gyなどの放射線のような約5〜40Gyの放射線)を受け得る。
【0024】
処置手順は、任意の順序で連続的に、同時にまたはそれらの組み合わせで行われ得る。例えば、第1の処置手順(ヒストンデアセチラーゼインヒビターの投与)は、第2の処置手順(放射線)の前、放射線処置の後、放射線と同時、またはこれらの組み合わせで行われ得る。例えば、全処置期間は、ヒストンデアセチラーゼインヒビターについて決定され得る。放射線は、インヒビターでの処置の開始の前、またはインヒビターでの処置に続いて投与され得る。さらに、放射線処置は、インヒビター投与の期間の間に投与され得るが、インヒビター処置期間の全体にわたって行われる必要はない。
【0025】
本発明における使用に適切なHDACインヒビターとしては、本明細書中に規定されるような、ヒドロキサム酸誘導体、短鎖脂肪酸(SCFA)、環式テトラペプチド、ベンズアミド誘導体、または求電子性ケトン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の方法における使用に適切なHDACインヒビターの特定の非制限的な例は、以下である:
A)ヒドロキサム酸誘導体(SAHA、ピロキサミド、CBHA、トリコスタチン(Trichostatin)A(TSA)、トリコスタチンC、サリチルヒドロキサム酸(SBHA)、アゼライックビスヒドロキサム酸(Azelaic Bishydroxamic Acid)(ABHA)、アゼライック−1−ヒドロキサメート−9−アニリド(AAHA)、6−(3−クロロフェニルウレイド)カプロン酸ヒドロキサム酸(3Cl−UCHA)、オキサムフラチン(Oxamflatin)、A−161906、スクリプタイド、PXD−101、LAQ−824、CHAP、MW2796、およびMW2996から選択される);
B)環式テトラペプチド(トラポキシン(Trapoxin)A、FR901228(FK228またはデプシペプチド)、FR225497、アピシジン、CHAP、HC−毒素、WF27082、およびクラミドシン(Chlamydocin)から選択される);
C)短鎖脂肪酸(SCFA)(酪酸ナトリウム、イソバレレート、バレレート、4 フェニルブチレート(4−PBA)、フェニルブチレート(PB)、プロピオネート、ブチルアミド、イソブチルアミド、フェニルアセテート、3−ブロモプロピオネート、トリブチリン、バルプロ酸およびバルプロエートから選択される);
D)ベンズアミド誘導体(CI−994、MS−27−275(MS−275)およびMS−27−275の3’−アミノ誘導体から選択される);
E)求電子性ケトン誘導体(トリフルオロメチルケトン、およびN−メチル−α−ケトアミドのようなα−ケトアミドから選択される);および
F)デプデシン(DEPUDECIN)
特定のHDACインヒビターとしては、以下が挙げられる:
スベロイルアニロドヒドロキサム酸(SAHA)。これは、以下の構造式:
【0027】
【化7】

によって表される。
【0028】
ピロキサミド。これは、以下の構造式:
【0029】
【化8】

によって表される。
【0030】
m−カルボキシシンナム酸ビスヒドロキサメート(CBHA)。これは、以下の構造式:
【0031】
【化9】

によって表される。
【0032】
本発明の方法における使用のために適切なHDACインヒビターの他の非制限定な例は、以下である:
以下の構造:
【0033】
【化10】

によって表される化合物。ここで、RおよびRは、同じまたは異なり得る;RおよびRが、同じである場合、各々は、置換されたまたは非置換のアリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、ピリジンアミノ、9−プリン−6−アミノまたはチアゾールアミノ)、シクロアルキルアミノ基またはピペリジノ基であり;RおよびRが、異なるR=R−N−Rである場合、RおよびRの各々は、独立して、互いに同じであるか、または異なり、そして水素原子、ヒドロキシル基、置換または非置換の分枝または非分枝のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール(例えば、フェニルまたはピリジル)基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはピリジン基であるか、またはRおよびRは、一緒に結合して、ピペリジン基を形成し;Rは、ヒドロキシアミノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基またはアルキルオキシ基であり;そしてnは、約4〜約8の整数である;
以下の構造:
【0034】
【化11】

によって表される化合物。ここで、Rが、置換または非置換のフェニル基、ピペリジン基、チアゾール基、2−ピリジン基、3−ピリジン基または4−ピリジン基であり;そしてnが、約4〜約8の整数である;ならびに
以下の構造:
【0035】
【化12】

によって表される化合物。ここで、Aは、アミド部分であり;RおよびRが、各々、置換または非置換のアリール基、アリールアミノ基(例えば、ピリジンアミノ、9−プリン−6−アミンまたはチアゾールアミノ)、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基から選択され;Rが、水素、ハロゲン基、フェニル基またはシクロアルキル基であり;そしてnが、約3〜約10の整数である。
【0036】
併用療法は、2つの処置様式と関連する異なる毒性の観点で治療的に利点を提供し得る。より詳細には、HDACインヒビターでの処置は、血液学的毒性を導き得るが、放射線療法は、腫瘍部位に隣接する組織に対して毒性であり得る。このように、この差示的毒性によって、各処置は、患者の病的状態を増加することなく、治療的用量で投与され得る。しかし、驚くべきことに、併用処置の結果として達成される治療的効果は、増強されるかまたは相乗的であり、例えば、相加的効果よりも有意に良い。
【0037】
本発明の前記および他の目的、特徴および利点は、添付の図面に示されるように、本発明の好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1−1】図1A〜Dは、連続的および120時間の処置時間の両方の(A)未処置;(B)1μM SAHAで処置;(C)2.5μM SAHAでの処置;ならびに5μM SAHAでの処置を行ったLNCaP細胞についてのスフェロイド容積のプロットである。太い実線は、各個人の実験についての中央値プロットに対応する。
【図1−2】図1A〜Dは、連続的および120時間の処置時間の両方の(A)未処置;(B)1μM SAHAで処置;(C)2.5μM SAHAでの処置;ならびに5μM SAHAでの処置を行ったLNCaP細胞についてのスフェロイド容積のプロットである。太い実線は、各個人の実験についての中央値プロットに対応する。
【図2】図2A〜Bは、(A)5μM SAHAおよび(B)2.5μM SAHA(上記プロットの1Dおよび1C)での連続的インキュベーションの開始後の異なる時点で行なわれたLNCaP細胞のスフェロイドの光学顕微鏡画像の走査である。各パネルの下の左の数字は、インキュベーション後の時間(日数)に対応する。
【図3−1】図3A〜Dは、以下のレジメンに従って処置されたLNCaP細胞の中央値(太線)および個々(細線)のスフェロイド容積のプロットである:A)未処置;B)5μM SAHAでの96時間インキュベート;C)6GyのCs−137放射線(LET 0.2keV/μm)を使用する外部ビーム放射線の急性線量で照射;ならびにD)SAHA処置の中点(48時間後)に続く、96時間の5μM SAHA処置および6GyのCs−137放射線(LET 0.2keV/μm)を使用する急性線量の放射線。
【図3−2】図3A〜Dは、以下のレジメンに従って処置されたLNCaP細胞の中央値(太線)および個々(細線)のスフェロイド容積のプロットである:A)未処置;B)5μM SAHAでの96時間インキュベート;C)6GyのCs−137放射線(LET 0.2keV/μm)を使用する外部ビーム放射線の急性線量で照射;ならびにD)SAHA処置の中点(48時間後)に続く、96時間の5μM SAHA処置および6GyのCs−137放射線(LET 0.2keV/μm)を使用する急性線量の放射線。
【図4】図4は、図3Dに記載されるSAHAおよび6Gy放射線の併用で処置されたスフェロイドの光学顕微鏡画像の走査である。各パネルの下の左の数字は、SAHAでのインキュベーションの開始からの時間に対応する。
【図5−1】図5A〜Cは、処置されたLNCaPスフェロイドのTUNEL染色切片の走査である。パネル(A〜C)は、SAHA単独(5μM、96時間)で処置された。パネル(A)は、インキュベーションの終了の直後に処置されたスフェロイドを示す;パネル(B)は、SAHAとのインキュベーションの終了の24時間後のスフェロイドを示す;パネル(C)は、SAHAとのインキュベーションの終了の48時間後スフェロイドを示す;パネル(D〜F)は、SAHA+6Gy放射線の組み合わせで処置されたLNCaPスフェロイドについてのTUNEL染色を示す:パネル(D)は、インキュベーションの終了直後である;パネル(E)は、インキュベーションの終了の24時間後である;およびパネル(F)は、インキュベーションの終了の48時間後である。以下についてのTUNEL染色:パネル(G)陽性DNase処置コントロール;パネル(H)未処置スフェロイド;およびパネル(I)6GY放射線で処置されたスフェロイドがまた示される。全ての切片を、ヘマトキシリンで対比染色した。
【図5−2】図5A〜Cは、処置されたLNCaPスフェロイドのTUNEL染色切片の走査である。パネル(A〜C)は、SAHA単独(5μM、96時間)で処置された。パネル(A)は、インキュベーションの終了の直後に処置されたスフェロイドを示す;パネル(B)は、SAHAとのインキュベーションの終了の24時間後のスフェロイドを示す;パネル(C)は、SAHAとのインキュベーションの終了の48時間後スフェロイドを示す;パネル(D〜F)は、SAHA+6Gy放射線の組み合わせで処置されたLNCaPスフェロイドについてのTUNEL染色を示す:パネル(D)は、インキュベーションの終了直後である;パネル(E)は、インキュベーションの終了の24時間後である;およびパネル(F)は、インキュベーションの終了の48時間後である。以下についてのTUNEL染色:パネル(G)陽性DNase処置コントロール;パネル(H)未処置スフェロイド;およびパネル(I)6GY放射線で処置されたスフェロイドがまた示される。全ての切片を、ヘマトキシリンで対比染色した。
【図5−3】図5A〜Cは、処置されたLNCaPスフェロイドのTUNEL染色切片の走査である。パネル(A〜C)は、SAHA単独(5μM、96時間)で処置された。パネル(A)は、インキュベーションの終了の直後に処置されたスフェロイドを示す;パネル(B)は、SAHAとのインキュベーションの終了の24時間後のスフェロイドを示す;パネル(C)は、SAHAとのインキュベーションの終了の48時間後スフェロイドを示す;パネル(D〜F)は、SAHA+6Gy放射線の組み合わせで処置されたLNCaPスフェロイドについてのTUNEL染色を示す:パネル(D)は、インキュベーションの終了直後である;パネル(E)は、インキュベーションの終了の24時間後である;およびパネル(F)は、インキュベーションの終了の48時間後である。以下についてのTUNEL染色:パネル(G)陽性DNase処置コントロール;パネル(H)未処置スフェロイド;およびパネル(I)6GY放射線で処置されたスフェロイドがまた示される。全ての切片を、ヘマトキシリンで対比染色した。
【図6−1】図6A〜Cは、処置LNCaPスフェロイドのKi67染色切片の走査である。パネル(A〜C)は、SAHAのみ(5μM、96時間)で処置された。パネル(A)は、SAHAでのインキュベーションの終了直後のスフェロイドを示す;パネル(B)は、インキュベーションの終了の24時間後のスフェロイドを示す;パネル(C)は、インキュベーションの終了の48時間後のスフェロイドを示す。パネルD〜Fは、SAHA+6Gy放射線の組み合わせで処置されたスフェロイドについてのKi67染色を示す:インキュベーションの終了後の(D)直後;(E)24時間、および(F)48時間。未処置スフェロイド(G)および6Gy放射線で処置されたスフェロイド(H)についてのKi67染色もまた示される。全ての切片を、ヘマトキシリンで対染色した。
【図6−2】図6A〜Cは、処置LNCaPスフェロイドのKi67染色切片の走査である。パネル(A〜C)は、SAHAのみ(5μM、96時間)で処置された。パネル(A)は、SAHAでのインキュベーションの終了直後のスフェロイドを示す;パネル(B)は、インキュベーションの終了の24時間後のスフェロイドを示す;パネル(C)は、インキュベーションの終了の48時間後のスフェロイドを示す。パネルD〜Fは、SAHA+6Gy放射線の組み合わせで処置されたスフェロイドについてのKi67染色を示す:インキュベーションの終了後の(D)直後;(E)24時間、および(F)48時間。未処置スフェロイド(G)および6Gy放射線で処置されたスフェロイド(H)についてのKi67染色もまた示される。全ての切片を、ヘマトキシリンで対染色した。
【図6−3】図6A〜Cは、処置LNCaPスフェロイドのKi67染色切片の走査である。パネル(A〜C)は、SAHAのみ(5μM、96時間)で処置された。パネル(A)は、SAHAでのインキュベーションの終了直後のスフェロイドを示す;パネル(B)は、インキュベーションの終了の24時間後のスフェロイドを示す;パネル(C)は、インキュベーションの終了の48時間後のスフェロイドを示す。パネルD〜Fは、SAHA+6Gy放射線の組み合わせで処置されたスフェロイドについてのKi67染色を示す:インキュベーションの終了後の(D)直後;(E)24時間、および(F)48時間。未処置スフェロイド(G)および6Gy放射線で処置されたスフェロイド(H)についてのKi67染色もまた示される。全ての切片を、ヘマトキシリンで対染色した。
【図7−1】図7A〜Bは、(A)TUNELおよび(B)Ki67染色についての陽性染色された細胞の%の平均および標準偏差を示すグラフである。実験当たり、3〜5個の異なる切片が、得点付けられた。SAHAのみの切片対SAHA+放射線での陽性染色された細胞の割合は、48時間でのKi67染色について有意に異なった(p<0.01)。
【図7−2】図7A〜Bは、(A)TUNELおよび(B)Ki67染色についての陽性染色された細胞の%の平均および標準偏差を示すグラフである。実験当たり、3〜5個の異なる切片が、得点付けられた。SAHAのみの切片対SAHA+放射線での陽性染色された細胞の割合は、48時間でのKi67染色について有意に異なった(p<0.01)。
【図8】図8は、以下のレジメンに従って処置されたLNCaP細胞のスフェロイド容積を示すグラフである:未処置コントール;黒四角 Ac225−HuM195での処置;5μM SAHAでの96時間の処置;X Ac225−HuM195および5μM SAHAでの処置。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明は、癌の処置の必要な患者における、癌の処置のための方法に関する。この方法は、第1の量のヒストンデアセチラーゼインヒビターおよび第2の処置手順における第2の量または線量の放射線を、必要な患者に投与する工程を包含する。第1の量および第2の量は、ともに、治療的有効量を含む。
【0040】
1つの実施形態において、この方法は、相乗的である抗癌効果を提供する。
【0041】
癌の処置(本明細書中で使用される)とは、部分的または全体的に、癌の転移を含む癌の進行を阻害、遅延または予防すること;癌の転移を含む癌の再発を阻害、遅延または予防すること;あるいは、哺乳動物(例えば、ヒト)における癌の発症または進展の予防(化学的防御)をいう。
【0042】
1つの実施形態では、このHDACインヒビターは、患者中の癌細胞を放射線に対して感受性にする。従って、このHDACインヒビターは、放射線感作剤として作用し得る。例えば、任意の特定の機構または理論に拘束されることを望まずに、HDACインヒビターと放射線処置との組み合わせ投与の治療効果は、放射線感作剤として作用するHDACインヒビターの能力に起因し得、それによって、放射線処置に対する患者中の癌細胞の感受性を増加する。従って、このHDACインヒビターは、放射線感作量で投与され得る。この感作は、細胞周期における不可逆的停止に起因し得る。
【0043】
別の実施形態では、放射線は、患者中の癌細胞をHDACインヒビターの作用に対して感受性にする。
【0044】
本発明はまた、本発明の併用療法に対する特定の癌の感受性を決定する方法に関する。この方法は、癌細胞を、第1の処置手順において第1の量のヒストンデアセチラーゼインヒビターに、および第2の処置手順において第2の量または用量の放射線に曝すか、または接触させる工程、ならびに抗癌効果を評価する工程を包含する。この第1の量および第2の量は、ともに、治療的に有効な量を含む。抗癌効果は、任意の適切なアッセイを用いて評価され得る。
【0045】
さらなる実施形態では、本発明は、特定の癌のタイプのためのHDACインヒビターおよび放射線治療の最適組み合わせを決定するためのスクリーニング方法に関する。このスクリーニングの方法は、癌細胞を、第1の処置手順において第1の量のヒストンデアセチラーゼインヒビターに、および第2の処置手順において第2の量または用量の放射線に曝す工程を包含する。この第1の治療および第2の治療は、ともに、治療的に有効な量を含む。細胞は、培養中であるか、または処置の必要な患者の身体中に存在し得る。この処置の抗癌効果は、適切な方法を用いて評価され得る。
【0046】
本明細書で用いる用語「治療的に有効な量」は、上記併用療法における第1の処置および第2の処置の組合せた量を表すことが意図される。この組み合わせた量は、所望の生物学的応答を達成する。本発明では、所望の生物学的応答は、癌転移を含む癌の部分的阻害または全体阻害、遅延または予防;癌の進行(哺乳動物、例えば、ヒトにおける癌転移;または癌の発症または進行の予防(化学防御)を含む)の阻害、遅延または予防である。
【0047】
本発明の併用療法は、広範な種類の癌の処置における使用に適切である。本明細書で用いられるとき、癌は、腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫などをいう。例えば、癌は、制限されずに、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞リンパ栄養ウイルス(HTLV)と関連するリンパ腫(例えば、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキン病リンパ腫、および多発性骨髄腫)、小児固形腫瘍(例えば、脳腫瘍、神経芽腫、網膜芽腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍、および軟組織肉腫など)、成人の一般固形腫瘍(頭部癌および頸部癌(例えば、口腔、咽頭および食道))、尿生殖器癌(例えば、前立腺、膀胱、腎、子宮、卵巣、精巣、直腸および結腸)、肺癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫およびその他の皮膚癌、胃癌、脳癌、肝臓癌および甲状腺癌)を包含する。
【0048】
(ヒストンデアセチラーゼおよびヒストンデアセチラーゼインヒビター)
本明細書で用いられる用語としてのヒストンデアセチラーゼ(HDAC)は、ヌクレオソームのコアヒストンのアミノ末端テール中のリジン残基からのアセチル基の除去を触媒する酵素である。従って、HDACは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)とともに、ヒストンのアセチル化状態を調節する。ヒストンのアセチル化は、遺伝子発現に影響し、そしてヒドロキサム酸を基礎にするハイブリッド極性化合物スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)のようなHDACのインヒビターは、インビトロで形質転換細胞の成長停止、分化および/またはアポトーシスを誘導し、そしてインビボで腫瘍成長を阻害する。HDACは、構造的相同性を基に3つのクラスに分割され得る。酵母RPD3タンパク質に類似するクラスIのHDAC(HDAC1、2、3および8)は、核中に位置し、そして転写コリプレッサーと会合する複合体中に見出される。クラスIIのHDAC(HDAC4、5、6、7および9)は、酵母HDA1タンパク質に類似し、そして核および細胞質の両方の細胞下局在性を有する。クラスIおよびIIの両方のHDACは、SAHAのような、ヒドロキサム酸を基礎にしたHDACインヒビターによって阻害される。クラスIIIのHDACは、酵母SIR2タンパク質に関連するNAD依存性酵素の構造的に遠いクラスを形成し、そしてヒドロキサム酸を基礎にしたHDACインヒビターによっては阻害されない。
【0049】
本明細書で用いられる用語として、ヒストンデアセチラーゼインヒビターまたはHDACインヒビターは、インビボ、インビトロまたはその両方でヒストンの脱アシル化を阻害し得る化合物である。従って、HDACインヒビターは、少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する。少なくとも1つのヒストンの脱アセチル化を阻害する結果として、アセチル化ヒストンの増加が起こり、そしてアセチル化ヒストンの蓄積は、HDACインヒビターの活性を評価するための適切な生物学的マーカーである。従って、アセチル化ヒストンの蓄積をアッセイし得る手順は、目的の化合物のHDAC阻害活性を決定するために用いられ得る。ヒストンデアセチラーゼ活性を阻害し得る化合物はまた、その他の物質に結合し得、そしてその結果、酵素のようなその他の生物学的に活性な分子を阻害し得ることが理解される。
【0050】
例えば、HDACインヒビターを受ける患者において、HDACインヒビターで処理された末梢単核細胞中および組織中のアセチル化ヒストンの蓄積は、適切なコントロールに対して決定され得る。
【0051】
特定化合物のHDAC阻害活性は、例えば、少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼの阻害を示す酵素アッセイを用いてインビトロで決定され得る。さらに、特定の組成物で処理された細胞におけるアセチル化ヒストンの蓄積の測定は、化合物のHDAC阻害活性の決定詞であり得る。
【0052】
アセチル化ヒストンの蓄積のためのアッセイは、文献にあり周知である。例えば、Marks、P.A.ら、J.Natl.Cancer Inst.、92:1210〜1215、2000、Butler、L.M.ら、Cancer Res.60:5165〜5170(2000)、Richon、V.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:3003〜3007、1998、およびYoshida、Mら、J.Biol.Chem.、265:17174〜17179、1990を参照のこと。
【0053】
例えば、ヒストンデアセチラーゼインヒビター化合物の活性を測定するための酵素アッセイは、以下のように実施され得る。簡単に述べれば、アフィニィティー精製されたヒトエピトープタグ化(Flag)HDAC1に対するHDACインヒビター化合物の効果は、示された量のインヒビター化合物との約20分間の適切な温度下に関し、基質の非存在下で酵素調製物をインキュベートすることによりアッセイされ得る。基質([H]アセチル−標識されたマウス赤白血病細胞由来ヒストン)が添加され得、そしてこのサンプルは、30μLの総容量中約37℃で20分間インキュベートされ得る。次いで、反応は停止され得、そして放出された酢酸塩が抽出され得、そして放出された放射活性の量がシンチレーション計測により決定される。ヒストンデアセチラーゼインヒビター化合物の活性を測定するために有用な代替のアッセイは、BIOMOL(登録商標)Research Laboratories,Inc.、Plymouth Meeting、PAから入手可能な「HDAC Fluorescent Activity Assay;Drug Discovery Kit−AK−500」である。
【0054】
インビボ研究は、以下のように実施され得る。動物(例えばマウス)は、HDACインヒビター化合物で腹腔内注射され得る。選択された組織、例えば、脳、膵臓、肝臓などが、投与後、所定の時点で単離され得る。ヒストンは、本質的にYoshidaら、J.Biol.Chem.265:17174〜17179、1990に記載のように組織から単離され得る。等量のヒストン(約1μg)は、15%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動され得、そしてHybond−Pフィルター(Amershamから入手可能)に移され得る。フィルターは3%ミルクでブロックされ得、そしてウサギの精製されたポリクローナル抗アセチル化ヒストンH4抗体(αAc−H4)および抗アセチル化ヒストンH3抗体(αAc−H3)(Upstate Biotechnology、Inc.)でプローブされ得る。アセチル化ヒストンのレベルは、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(1:5000)およびSuperSignal化学発光基質(Pierce)を用いて可視化され得る。ヒストンタンパク質のための装填コントロールとして平行ゲルが泳動され得、そしてCoomassie Blue(CB)で染色される。
【0055】
さらに、SAHAのようなヒドロキサム酸を基礎にしたHDACインヒビターは、細胞周期のG相における一時的停止に寄与するサイクリン依存性キナーゼの阻害の原因である、p21WAF1遺伝子の発現を上方制御することが示されている(Richon、V.M.ら、Proc Natl Acad Sci USA.97:10014〜9.、2000)。このp21WAF1タンパク質は、標準的な方法を用い、種々の形質転換細胞において、HDACインヒビターで培養の2時間以内に誘導される。このp21WAF1遺伝子の誘導には、この遺伝子のクロマチン領域中のアセチル化ヒストンの蓄積がともなう。p21WAF1の誘導は、それ故、形質転換細胞中のHDACインヒビターによって引き起こされるG1細胞周期停止に関与するとして認識され得る。
【0056】
最近、SAHAのようなHDACインヒビターは、チオレドキシン結合性プロテイン2を上方制御することが示された(Butler、L.M.ら、Proc Natl Acad Sci USA.99:11700〜5.、2002)。TBP−2は、チオレドキシンの調節に関与している(Nishiyama、A.ら、J Biol Chem.274:21645〜50、1999)。それは、チオール還元活性を阻害し、そしてチオレドキシンのレベルを減少する。チオレドキシンは、主要な細胞タンパク質ジスルフィドレダクターゼである(Amer、E.S.ら、Eur J Biochem.267:6102〜9.、2000)。多くのその他の機能(Gasdaska、J.R.ら、Cell Growth Differ.6:1643〜50.、1995;Berggren、M.ら、Anticancer Res.16:3459〜66、1996;Gallegos、A.ら、Cancer Res.56:5765〜70、1996;Grogan、T.M.ら、Hum Pathol.31:475〜81.、2000;Baker、A.ら、Cancer Res.57:5162〜7.、1997)に加え、チオレドキシンは、DNA複製および修復に必要なヌクレオシド三リン酸からデオキシヌクレオシド三リン酸への還元に関係あるリボヌクレオチドレダクターゼ反応における電子ドナーとして供される(Arner、E.S.ら、Eur J Biochem.267:6102〜9.、2000)。グルタチオンのように、チオレドキシンもまた、解毒反応に、および放射線で誘導された反応性酸素種およびその他のフリーラジカルの脱離に関与している還元剤である(Didier、C.ら、P Radic Biol Med.30:537〜46.、2001)。
【0057】
従って、SAHAのようなヒドロキサム酸誘導体は、炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患、酸化的ストレスにともなう疾患または細胞過剰増殖によって特徴付けられる疾患のような、広範な種々のチオレドキシン(TRX)媒介疾患および症状を処置または予防する際の使用に適切である(Richonらによる「ヒストンデアセチラーゼインヒビターを用いるTRX媒介疾患を処置する方法」と題し、その全体の内容が参考として本明細書によって援用される、2003年2月15日に出願された米国出願第10/369,094号)。
【0058】
さらに、SAHAのようなヒドロキサム酸誘導体は、最近、神経変性疾患のような中枢神経系(CNS)の疾患を処置するため、および脳腫瘍を処置するために有用であることが示されている(Richonらによる「ヒストンデアセチラーゼインヒビターを用いる神経変性疾患および脳の癌の処置」と題し、その全体の内容が本明細書によって参考として援用される、2002年10月16日に出願された米国出願第10/273,401号)。
【0059】
代表的には、HDACインヒビターは、5つの一般的クラスに入る:1)ヒドロキサム酸誘導体;2)短鎖脂肪酸(SCFA);3)環状テトラペプチド;4)ベンズアミド;および5)求電子ケトンである。
【0060】
従って、HDACインヒビター化合物は、本発明における使用に適切である。例えば、適切なHDACインヒビターは、1)ヒドロキサム酸誘導体;2)短鎖脂肪酸(SCFA);3)環状テトラペプチド;4)ベンズアミド;5)求電子ケトン;および/またはヒストンデアセチラーゼを阻害し得る任意のその他のクラスの化合物を含む。
【0061】
このようなHDACインヒビターの例は、制限されないで:
A)スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)(Richonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95、3003〜3007(1998));M−カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキシアミド(CBHA)(Richonら、前述);ピロキシアミド;CBHA;トリコスタチンA(TSA)およびトリコスタチンCのようなトリコスタチンアナログ(Kogheら、1998.Biochem.Pharamacol.56:1359〜1364);サリチリヒドロキサム酸(SBHA)(Andrewsら、International J.Parasitology 30、761〜768(2000));アゼライックビスヒドロキサム酸(ABHA)(Andrewsら、前述);アゼライック−1−ヒドロキサメート−9−アニリド(AAHA)(Qiuら、Mol.Biol.Cell 11、2069〜2083(2000));6−(3−クロロフェニルウレイド)カルポイックヒドロキサム酸(3Cl−UCHA)、オキサムフラチン[(2E)−5−[3−[(フェニルスイブニル)アミノフェニル]−ペント−2−エン−4−イオノヒドロキサム酸(Kimら、Ongcogene、18:2461 2470(1999));A−161906、Scriptaid(Suら、2000 Cancer Research、60:3137〜3142);PXD−101(Prolifix);LAQ−824;CHAP;MW2796(Andrewsら、前述);およびMW2996(Andrewsら、前述)のようなヒドロキサム酸誘導体。
【0062】
B)トラポキシンA(TPX)−環状テトラペプチド(シクロ−(L−フェニルアラニル−L−フェニルアラニル−D−ピペコリニル−L−2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシデカノイル))(Kijimaら、J Biol.Chem.268、22429〜22435(1993));FR901228(FK228、デプシペプチド)(Nakajimaら、Ex.Cell Res.241、126〜133(1998));FR225497環状テトラペプチド(H.Moriら、PCT出願WO00/08048(2000年2月17日));アピシジン環状テトラペプチド[シクロ(N O−メチル−L−トリプトファニル−L−イソロイシニル−D−ピペコリニル−L−2−アミノ o−8オキソデカノイル)](Darkin−Rattrayら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93、1314313147(1996));アピシジンIa、アピシジンIb、アピシジンIc、アピシジンIIa、およびアピシジンIIb(P.Dulskiら、PCT出願WO97/11366);CHAP、HC−トキシン環状テトラペプチド(Boschら、Plant Cell 7、1941〜1950(1995));WF27082環状テトラペプチド(PCT出願WO98/48825);およびクラミドシン(Boschら、前述)のような環状テトラペプチド。
【0063】
C)酪酸ナトリウム(Cousensら、J.Biol.Chem.254、1716〜1723(1979));イソ吉草酸(McBainら、Biochem.Pharm.53:1357〜1368(1997));吉草酸(McBainら、前述);4フェニル酪酸(4−PBA)(LeaおよびTulsyan、Anticancer Research、15、879〜873(1995));フェニル酪酸(PB)(Wangら、Cancer Research、59、2766〜2799(1999));プロピオン酸(McBainら、前述);ブチルアミド(LeaおよびTulsyan、前述);イソブチルアミド(LeaおよびTulsyan、前述);フェニルアセテート(LeaおよびTulsyan、前述);3−ブロモプロピオン酸(LeaおよびTulsyan、前述);トリブチリン(Guanら、Cancer Research、60、749〜755(2000));バルプロ酸およびバルプロ酸塩のような短鎖脂肪酸(SCFA)誘導体。
【0064】
D)CI−994;MS−27−275[N−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルメトキシカルボニル)アミノメチル]ベンズアミド](Saitoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96、4592〜4597(1999));およびMS−27−275の3’−アミノ誘導体(Saitoら、前述)のようなベンズアミド誘導体。
【0065】
E)トリフルオロメチルケトン(Freyら、Bioorganic&Med.Chem.Lett.(2002)、12、3443〜3447;U.S.6,511,990)、およびN−メチル−α−ケトアミドのようなα−ケトアミドのような求電子ケトン誘導体。
【0066】
F)デプデシン(Kwonら、1998.PNAS 95:3356〜3361)のようなその他のHDACインヒビター。
【0067】
好適なヒドロキサム酸を基礎にしたHDACインヒビターは、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、m−カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキサメート(CBHA)およびピリドキシアミドである。SAHAは、ヒストンデアシラーゼ酵素の触媒ポケット中に直接結合することが示された。SAHAは、培養中の形質転換細胞の細胞周期停止、分化および/またはアポトーシスを誘導し、そしてげっ歯類における腫瘍増殖を阻害する。
SAHAは、固形腫瘍および血液学的癌の両方においてこれらの効果を誘導する際に有効である。SAHAは、動物に毒性なしで動物中の腫瘍増殖を阻害する際に有効であることが示された。腫瘍増殖のこのSAHAで誘導された阻害は、腫瘍におけるアセチル化ヒストンの蓄積をともなう。SAHAは、ラットにおける発癌物質(N−メチルニトロソウレア)で誘導された乳腫瘍の発症および継続する成長を阻害する際に有効である。SAHAは、研究の130日間に亘ってそれらの食餌中でラットに投与された。従って、SAHAは、その作用の機構が、ヒストンデアセチラーゼ活性の阻害を含む、非毒性の経口的に活性な抗腫瘍剤である。
【0068】
SAHAは、以下の構造式によって表され得る:
【0069】
【化13】

ピロキシアミドは、以下の構造式によって表され得る:
【0070】
【化14】

CBHAは、以下の構造式によって表され得る:
【0071】
【化15】

1つの実施形態では、このHDACインヒビターは、式Iによって表され得る:
【0072】
【化16】

ここで、RおよびRは同じかまたは異なり得;RおよびRが同じであるとき、各々は、置換または置換されていないアリールアミノ(例えば、ピリジンアミノ、9−プリン−6−アミノまたはチアゾールアミノ)、シクロアルキルアミノまたはピペリジノ基であり;RおよびRが異なるとき、R=R−N−Rであり、ここで、RおよびRの各々は、独立して、同じかまたは互いに異なり、そして水素原子、ヒドロキシル基、置換または非置換の分岐または非分岐アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ基、またはRおよびRはともに結合してピペリジン基を形成し、Rはヒドロキシアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアルキルオキシ基であり、そしてnは約4〜約8の整数である。
【0073】
従って、別の実施形態では、本発明の方法で用いられるHDACインヒビターは、式IIによって表され得る:
【0074】
【化17】

ここで、RおよびRの各々は、独立して、同じかまたは互いに異なり、そして水素原子、ヒドロキシル基、置換または非置換の分岐または非分岐アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシまたはアリールアルキルオキシ基、またはRおよびRはともに結合してピペリジン基を形成し、Rはヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアルキルオキシ基であり、そしてnは約4〜約8の整数である。
【0075】
式IIの特定の実施形態では、Rはヒドロキシアミノ、ヒドロキシル、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノまたはメチルオキシ基であり、そしてnは6である。なお別の式IIの実施形態では、Rは水素原子であり、Rは置換または非置換フェニルであり、そしてnは6である。式IIのさらなる実施形態では、Rは水素であり、そしてRはα−、β−、またはγ−ピリジンである。
【0076】
その他の特定の式IIの実施形態では、Rは水素原子であり、そしてRはシクロヘキシル基であり;Rは水素原子であり、そしてRはメトキシ基であり;RおよびRの各々は、一緒に結合してピペリジン基を形成し;Rは水素原子であり、そしてRはヒドロキシル基であり;RおよびRは両方メチル基であり、そしてRはフェニルであり、そそしてRはメチルである。
【0077】
本発明における使用のために適切なさらなるHDACインヒビターは、構造式IIIによって表され得る:
【0078】
【化18】

ここで、XおよびYの各々は、独立して、同じかまたは互いに異なり、そして、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシアミノ基、置換または非置換のアルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノアリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基であり;Rは、水素原子、ヒドロキシル基、置換または非置換のアルキル、アリールアルキルオキシ、またはアリールオキシ基であり;そしてmおよびnの各々は、独立して同じか、または互いに異なり、そして各々が約0〜約8の整数である。
【0079】
特定の実施形態では、HDACインヒビターは、式IIIの化合物であり、ここで、X、YおよびRは、各々ヒドロキシルであり、そしてmとnの両方は5である。
【0080】
なお別の実施形態では、本発明の方法における使用に適切なHDACインヒビター化合物は、構造式IVによって表され得:
【0081】
【化19】

ここで、XおよびYの各々は、独立して、同じかまたは互いに異なり、そして、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシアミノ基、置換または非置換のアルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;RおよびRの各々は、独立して同じであるか、または互いに異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換または非置換のアルキル、アリール、アルキルオキシ、またはアリールオキシ基であり;そしてm、nおよびoの各々は、独立して同じか、または互いに異なり、そして各々が約0〜約8の整数である。
【0082】
本発明における使用に適切なその他のHDACインヒビターは、構造式Vを有する化合物を含む:
【0083】
【化20】

ここで、XおよびYの各々は、独立して、同じかまたは互いに異なり、そして、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシアミノ基、置換または非置換のアルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;RおよびRの各々は、独立して同じであるか、または互いに異なり、そして水素原子、ヒドロキシル基、置換または非置換のアルキル、アリール、アルキルオキシ、またはアリールオキシ基であり;そしてmおよびnの各々は、独立して同じか、または互いに異なり、そして各々が約0〜約8の整数である。
【0084】
さらなる実施形態では、本発明の方法における使用に適切なHDACインヒビターは、構造式VIを有し得:
【0085】
【化21】

ここで、XおよびYの各々は、独立して、同じかまたは互いに異なり、そして、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシアミノ基、置換または非置換のアルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;そしてmおよびnの各々は、独立して同じか、または互いに異なり、そして各々が約0〜約8の整数である。
【0086】
なお別の実施形態では、本発明の方法において有用なHDACインヒビターは、構造式VIIを有し得:
【0087】
【化22】

ここで、XおよびYの各々は、独立して、同じかまたは互いに異なり、そして、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシNアミノ基、置換または非置換のアルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;RおよびRは、独立して同じであるか、または互いに異なり、そして水素原子、ヒドロキシル基、置換または非置換のアルキル、アリールアルキルオキシ、またはアリールオキシ基であり;そしてmおよびnの各々は、独立して同じか、または互いに異なり、そして各々が約0〜約8の整数である。
【0088】
なおさらなる実施形態では、本発明における使用のために適切なHDACインヒビターは、構造式VIIIを有し得:
【0089】
【化23】

ここで、XおよびYの各々は、独立して、同じかまたは互いに異なり、そして、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシアミノ基、置換または非置換のアルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基であり;そしてnは約0〜約8の整数である。
【0090】
本発明の方法における使用のために適切なさらなる化合物は、式IXにより表されるものを含む:
【0091】
【化24】

ここで各々のXおよびYは、独立して同じであるか、または互いに異なり、これらは、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または非置換の、アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;RおよびRの各々が、独立して同じであり、または互いに異なり、これらは、水素原子、ヒドロキシル基、置換または非置換のアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、カルボニルヒドロキシアミノまたはフッ素基であり;そしてmおよびnの各々は、独立して同じであり、または互いに異なり、そして各々約0〜約8の整数である。
【0092】
さらなる実施形態において、本発明での使用のために適切なHDACインヒビターは、以下の構造式Xを有する化合物を含み:
【0093】
【化25】

ここでRおよびRの各々が、独立して同じであり、または互いに異なり、これらは、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基である。特定の実施形態において、HDACインヒビターは、構造式Xの化合物であり、ここでRおよびRは、両方ヒドロキシルアミノである。さらなる実施形態において、本発明の使用のために適切なHDACインヒビターは、以下の構造式XIを有する:
【0094】
【化26】

ここでRおよびRの各々が、独立して同じであり、または互いに異なり、これらは、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基である。特定の実施形態において、HDACインヒビターは、構造式XIの化合物であり、ここでRおよびRは、両方ヒドロキシルアミノである。
【0095】
さらなる実施形態において、本発明の使用のために適切なHDACインヒビターは、以下の構造式XIIによって表される化合物を含む:
【0096】
【化27】

ここでRおよびRの各々が、独立して同じであり、または互いに異なり、これらは、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基である。特定の実施形態において、HDACインヒビターは、構造式XIIの化合物であり、ここでRおよびRは、両方ヒドロキシルアミノである。
【0097】
本発明の方法での使用に適切なさらなる化合物は、構造式XIIIにより表される化合物を含む:
【0098】
【化28】

ここでRは、置換または非置換の、フェニル、ピペリジン、チアゾール、2−ピリジン、3−ピリジンまたは4−ピリジンであり、nは、約4〜約8の整数である。
【0099】
なお別の実施形態において、本発明での使用のために適切なHDACインヒビターは、構造式(XIV)により表され得るかまたはその薬学的に受容可能な塩である:
【0100】
【化29】

ここでRは、置換または非置換の、フェニル、ピリジン、ピペリジン、またはチアゾール基であり、nは、約4〜約8の整数である。
【0101】
特定の実施形態において、Rは、フェニルであり、またはnは5である。別の実施形態において、nは5であり、そしてRは3−クロロフェニルである。
【0102】
本発明の使用のための別のHDACインヒビターは、構造式XVにより表され得る:
【0103】
【化30】

ここで各々のRおよびRは、直接またはリンカーを介して結合され、これは、ヒドロキシル、置換または非置換の、アリール(例えば、ナフチル、フェニル、キノリニル、イソキノリニルまたはピリジル)、シクロアルキル、シクロアルキルアミノ、ピペリジノ、分枝したまたは分枝していない、アルキル、アルケニル、アリールアミノ(ピリジンアミノ、9−プリン−6−アミノまたはチアゾールアミノ)、アリールアルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルオキシ、アリールオキシ、またはアリールアルコキシ基である;nは、約3〜約10の整数であり、Rは、ヒドロキサム酸、ヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、またはアルキルオキシ基である。
【0104】
リンカーは、アミド部分、−O−、−S−、−NH−、または−CH2−であり得る。
【0105】
特定の実施形態において、Rは、−NH−Rであり、ここでRは、ヒドロキシル、置換または非置換の、アリール(例えば、ナフチル、フェニル、キノリニル、イソキノリニルまたはピリジル)、シクロアルキル、シクロアルキルアミノ、ピペリジノ、分枝したまたは分枝していない、アルキル、アルケニル、アリールアミノ(例えば、ピリジンアミノ、9−プリン−6−アミノまたはチアゾールアミノ)、アリールアルキルアミノ、アルキルオキシ、アリールアルキル、アリールオキシまたはアリールアルキシオキシ基である。
【0106】
式XVのさらなるかつより特定のHDACインヒビターは、式XVIにより表され得るインヒビターを含む:
【0107】
【化31】

ここで各々のRおよびRは、ヒドロキシル、置換または非置換のアリール(例えば、フェニル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニルまたはピリジル)、シクロアルキル、シクロアルキルアミノ、ピペリジノ、アリールアミノ(例えば、ピリジンアミノ、9−プリン−6−アミノまたはチアゾールアミノ)、アリールアルキルアミノ、分枝したまたは分枝していない、アルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アリールアルキル、アリールオキシ、またはアリールアルキルオキシ基である;Rは、ヒドロキサム酸、ヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノまたはアルキルオキシ基である;Rは、水素、ハロゲン、フェニルまたはシクロアルキル部分である;そしてAは、同じでも異なっていても良く、これは、アミド部分、−O−、−S−、−NR−、または−CH−を表し、Rは、置換または非置換のC−Cアルキルであり、そしてnは、約3〜約10の整数である。
【0108】
例えば、式XVI中のより特定の構造を有するさらなる化合物は、構造式XVIIにより表され得る:
【0109】
【化32】

ここでAは、アミド部分であり、RおよびRは、置換または非置換のアリール(例えば、フェニル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニルまたはピリジル)、アリールアミノ(例えば、ピリジンアミノ、9−プリン−6−アミノまたはチアゾールアミノ)、アリールアルキルアミノ、アリールアルキル、アリールオキシ、またはアリールアルキルオキシ基から各々選択され、そしてnは、約3〜約10の整数である。
【0110】
例えば、Aにてアミド部分を有する化合物が、以下の式により表され得る:
【0111】
【化33】

別の実施形態において、HDACインヒビターが、以下の式XVIIIを有し得るかまたはその薬学的に受容可能な塩である:
【0112】
【化34】

ここでRは、置換または非置換のアリール(例えば、フェニル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニルまたはピリジル)、アリールアミノ(例えば、ピリジンアミノ、9−プリン−6−アミンまたはチアゾールアミノ)、アリールアルキルアミノ(arylakylamino)、アリールアルキル、アリールオキシまたはアリールアルキルオキシから選択され、そしてnは、約3〜約10の整数であり、そしてYは、以下から選択される:
【0113】
【化35】


【0114】
さらなる実施形態において、HDACインヒビター化合物は、式XIXまたはその薬学的に受容可能な塩を有し得る:
【0115】
【化36】

ここでnは、約3〜約10の整数であり、Yは、以下から選択され:
【0116】
【化37】

そして、R’は、以下:
【0117】
【化38】

から選択される。
【0118】
本発明における使用のためのさらなる化合物が、構造式XXにより表され得る:
【0119】
【化39】

ここでRは、置換または非置換のアリール、アリールアミノ(例えば、ピリジンアミノ、9−プリン−6−アミノまたはチアゾールアミノ)、アリールアミノ、アリールアルキル、またはアリールオキシ、アリールアルキルオキシから選択され、そしてnは、3〜10であり、そしてR’は、以下から選択される:
【0120】
【化40】


【0121】
本発明において有用なさらなるHDACインヒビターが、以下の構造式XXIまたはその薬学的に受容可能な塩により表され得る:
【0122】
【化41】

ここで、Aは、アミド部分であり、RおよびRは、置換または非置換のアリール、アリールアミノ(例えば、ピリジンアミノ、9−プリン−6−アミンまたはチアゾールアミノ)アリールアルキルアミノ、アリールアルキル、アリールオキシまたはアリールアルキルオキシ基から各々選択され、Rは、水素、ハロゲン、フェニルまたはシクロアルキル部分であり、そしてnは、約3〜10の整数である。
【0123】
例えば、式XXIの化合物は、以下の構造:
【0124】
【化42】

または以下の構造:
【0125】
【化43】

により表され得、ここでR、R、Rおよびnは、式XXIの意味を有する。
さらに、HDACインヒビターは、以下の構造式XXII:
【0126】
【化44】

を有し、ここでLは、−(CH−、−(CH=CH)、フェニル、−シクロアルキル−、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカーであり;そしてRおよびRの各々が、独立して、置換されたまたは置換されていない、アリール、アリールアミノ(例えば、ピリジンアミノ、9−プリン−6−アミノもしくはチアゾールアミノ)、アリールアルキルアミノ、アリールアルキル、アリールオキシまたはアリールアルキルオキシ基であり、nは、約3〜約10の整数であり、そしてmは、0〜10の整数である。
【0127】
例えば、式XXIIの化合物は、以下:
【0128】
【化45】

であり得る。
【0129】
本発明での使用のために適切な他のHDACインヒビターは、以下のより特定の式で示されるインヒビター:
【0130】
【化46】

(nは、3〜10の整数)またはエナンチオマー、あるいは
【0131】
【化47】

(nは、3〜10の整数)またはエナンチオマー、あるいは
【0132】
【化48】

(nは、3〜10の整数)またはエナンチオマー、あるいは
【0133】
【化49】

(nは、3〜10の整数)またはエナンチオマー、あるいは
【0134】
【化50】

(nは、3〜10の整数)またはエネンチオマーを含む。
【0135】
本発明の使用のために適切なさらに特定のHDACインヒビターは、以下:
【0136】
【化51】

【0137】
【化52】

(nは、3〜10の整数)、および以下の化合物:
【0138】
【化53】

を含む。
【0139】
さらに特定のHDACインヒビターは、以下の式XXIII:
【0140】
【化54】

により表され得るものを含み、ここでRは、置換または非置換の、アリール基、アリールアルキル基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アリールオキシ基またはアリールアルコキシ基であり、nは、3〜10の整数である。特定の実施形態において、nは、構造式XXIIIの化合物について5である。
【0141】
特定の実施形態において、式XXIIIの化合物は、以下の構造:
【0142】
【化55】

により表される。
【0143】
別の特定の実施形態において、式XXIIIの化合物は、以下の式:
【0144】
【化56】

により表される。
【0145】
なお別の特定の実施形態において、式XXIIIの化合物が、以下の構造により表される:
【0146】
【化57】

なお別の特定の実施形態において、式XXIIIの化合物は、以下の構造により表される:
【0147】
【化58】

さらに特定のHDACインヒビターは、以下の式XXIVにより表され得:
【0148】
【化59】

ここでQは、置換または非置換のキノリニルまたはイソキノリニル基であり、そしてnは、3〜10の整数である。特定の好ましい実施形態において、nは、構造式XXIVの化合物について5である。
【0149】
特定の実施形態において、式XXIVの化合物は、以下の構造:
【0150】
【化60】

により表される。
【0151】
さらに特定のHDACインヒビターは、式XXVにより表され得るものを含み:
【0152】
【化61】

ここでQおよびQは、置換または非置換の、キノリニルまたはイソキノリニルであり、そしてnは、約3〜約10の整数である。特定の実施形態において、nは、構造式XXVの化合物について5である。
【0153】
特定の実施形態において、式XXVの化合物は、以下の構造により表される:
【0154】
【化62】


【0155】
さらに特定のHDACインヒビターは、以下の式XXVIにより表されるものを含み:
【0156】
【化63】

、ここでRは、アリールアルキルであり、Rは、置換または非置換の、アリール基、アリールアルキル基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アリールオキシ基またはアリールアルコキシ基であり、Aは、アミドであり、nは、3〜10の整数である。特定の実施形態において、nは、構造式XXVIの化合物について5である。
【0157】
特定の実施形態において、式XXVIの化合物は、以下の構造により表される:
【0158】
【化64】

。 特定の実施形態において、式XXVIの化合物は、以下の構造により表される:
【0159】
【化65】


【0160】
特定の実施形態において、式XXVIの化合物は、以下の構造により表される:
【0161】
【化66】


【0162】
このような化合物および他のHDACインヒビターの別の例は、以下において見出され得る:米国特許第5,369,108号(1994年11月29日発行)、同第5,700,811号(1997年12月23日発行)、同第5,773,474号(1998年6月30日発行)、同第5,932,616号(1999年8月3日発行)、同第6,511,990号(2003年1月28日発行)(全てがBreslowに対するものである);米国特許第5,055,608号(1991年10月8日発行)、同第5,175,191号(1992年12月29日発行)、および同第5,608,108号(1997年3月4日発行)(全てがMarkらに対するものである);米国仮特許出願番号60/459,826(Breslowの名で2003年3月4日出願);ならびにYoshida,M.ら、Bioassays 17,423−430(1995);Saito,A.ら、PNAS USA 96,4592−4597,(1999);Furamai R.ら、PNAS USA 98(1),87−92(2001);Komatsu,Y.ら、Cancer Res.61(11),4459−4466(2001);Su,G.H.ら、Cancer Res.60,3137−3142(2000);Lee,B.I.ら、Cancer Res.61(3),931−934;Suzuki,T.ら、J.Med.Chem.42(15),3001−3003(1999);PCT公開出願WO01/18171(2001年3月15日公開)(Sloan−Kettering Institute forCancer ResearchおよびThe
Trustees of Columbia Universityに対する);Hoffmann−La Rocheに対するPCT出願公開WO02/246144;Novartisに対するPCT出願公開WOWO02/22577;Prolifixに対するPCT出願公開WO02/30879;PCT出願公開WO01/38322(2001年5月31日公開)、WO01/70675(2001年9月27日公開)およびWO00/71703(2000年11月30日)(全てがMethylgene,Inc.に対する);Fujisawa Pharmaceutical Co.,Ltdに対する1999年10月8日に公開されたPCT公開出願WO00/21979;Beacon Laboratories,L.L.C.に対する1998年3月11日に公開されたPCT出願公開WO98/40080;ならびにCurtin M.(histone deacetylase inhibitors Expert Opin.Ther.Patents(2002)12(9):1375−1384の現在の特許状態そして本明細書中で参考として引用される)。
【0163】
HDACインヒビターの特定の非限定的例は、以下の表で提供される。本発明が、以下に表した化合物に構造的に類似する任意の化合物を包含し、そしてこれらの化合物が、ヒストンデアセチラーゼを阻害し得ることに留意のこと。
【0164】
【化67】

【0165】
【化68】

【0166】
【化69】

(定義)
「脂肪族基」は、非芳香族であり、炭素および水素のみからなり、必要に応じて1つ以上の不飽和単位(例えば、二重結合および/または三重結合)を含み得る。脂肪族基は、直鎖でも分枝鎖でも環状でもよい。直鎖または分枝鎖の場合、脂肪族基は、代表的に、約1〜約12の炭素原子、より代表的には約1〜約6の炭素原子を含む。環状の場合、脂肪族基は、代表的に、約3〜約10の炭素原子、より代表的には約3〜約7の炭素原子を含む。脂肪族基は、好ましくは、C−C12の直鎖または分枝鎖アルキル基(すなわち、完全に飽和した脂肪族基)、より好ましくは、C−Cの直鎖または分枝鎖アルキル基である。例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。
【0167】
本明細書中で使用される場合、「芳香族基」(「アリール基」とも呼ばれる)としては、本明細書中で定義されるような、炭素環式芳香族基、複素環式芳香族基(「ヘテロアリールとも呼ばれる」)および縮合多環式芳香環系が挙げられる。
【0168】
「炭素環式芳香族基」は、5〜14の炭素原子の芳香族環であり、インダンのような5員環シクロアルキル基または六員環シクロアルキル基と縮合される炭素環式芳香族基を含む。炭素環式芳香環の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フェニル、ナフチル(例えば、1−ナフチルおよび2−ナフチル);アントラセニル(例えば、1−アントラセニル、2−アントラセニル);フェナントレニル;フルオレノニル(例えば、9−フルオレノニル)、インダニルなど。炭素環式芳香環は、必要に応じて、以下に記載される指定された数の置換基で置換される。
【0169】
「複素環芳香族基」(または「ヘテロアリール」)は、5〜14個の炭素の環原子およびO、N、またはSから選択される1〜4個のヘテロ原子の単環式、二環式または三環式芳香環である。ヘテロアリールの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ピリジル(例えば、2−ピリジル(α−ピリジルともいわれる)、3−ピリジル(β−ピリジルともいわれる)、および4−ピリジル(γ−ピリジルともいわれる));チエニル(例えば、2−チエニルおよび3−チエニル);フラニル(例えば、2−フラニルおよび3−フラニル);ピリミジル(例えば、2−ピリミジルおよび4−ピリミジル);イミダゾリル(例えば、2−イミダゾリル);ピラニル(例えば、2−ピラニルおよび3−ピラニル);ピラゾリル(例えば、4−ピラゾリルおよび5−ピラゾリル);チアゾリル(例えば、2−チアゾリル、4−チアゾリルおよび5−チアゾリル);チアジアゾリル;イソチアゾリル;オキサゾリル(例えば、2−オキサゾリル、4−オキサゾリルおよび5−オキサゾリル);イソキサゾリル;ピロリル;ピリダジニル;ピラジニルなど。上記に定義される複素環芳香族(またはヘテロアリール)は、必要に応じて、芳香族について以下に記載されるように、指定の数の置換基で置換され得る。
【0170】
「縮合多環式芳香族」環構造は、1つ以上の他のヘテロアリールまたは非芳香族複素環式環を縮合している炭素環芳香族またはヘテロアリールである。例としては、以下が挙げられる:キノリニルおよびイソキノリニル(例えば、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル、5−キノリニル、6−キノリニル、7−キノリニルおよび8−キノリニル、1−イソキノリニル、3−キノリニル、4−イソキノリニル、5−イソキノリニル、6−イソキノリニル、7−イソキノリニルおよび8−イソキノリニル);ベンゾフラニル(例えば、2−ベンゾフラニルおよび3−ベンゾフラニル);ジベンゾフラニル(例えば、2,3−ジヒドロベンゾフラニル);ジベンゾチオフェニル;ベンゾチエニル(例えば、2−ベンゾチエニルおよび3−ベンゾチエニル);インドリル(例えば、2−インドリルおよび3−インドリル);ベンゾチアゾリル(例えば、2−ベンゾチアゾリル);ベンゾオキサゾリル(例えば、2−ベンゾオキサゾリル);ベンゾイミダゾリル(例えば、2−ベンゾイミダゾリル);イソインドリル(例えば、1−イソインドリルおよび3−イソインドリル);ベンゾトリアゾリル;プリニル;チアナフテニルなど。縮合多環式芳香族環構造は、必要に応じて、本明細書中で記載されるように、指定された数の置換基で置換され得る。
【0171】
「アラルキル基」(アリールアルキル)は、芳香族基、好ましくは、フェニル基で置換されたアルキル基である。好ましいアラルキル基は、ベンジル基である。適切な芳香族基は、本明細書中に記載され、適切なアルキル基は、本明細書中に記載される。アラルキル基に対する適切な置換基は、本明細書中に記載される。
【0172】
「アリールオキシ基」は、酸素を介して化合物に結合されたアリール基(例えば、フェノキシ)である。
【0173】
「アルコキシ基」(アルキルオキシ)は、本明細書中で使用される場合、酸素原子を介して化合物に連結された直鎖または分枝鎖のC〜C12または環式C〜C12アルキル基である。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシおよびプロポキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
「アリールアルコキシ基」(アリールアルキルオキシ)は、アリールアルキルのアルキル部分上の酸素を介して化合物に結合されたアリールアルキル基(例えば、フェニルメトキシ)である。
【0175】
「アリールアミノ基」は、本明細書中で使用される場合、窒素を介して化合物に結合されたアリール基である。
【0176】
本明細書中で使用される場合、「アリールアルキルアミノ基」は、アリールアルキルのアルキル部分上の窒素を介して化合物に結合されたアリールアルキル基である。
【0177】
本明細書中で使用される場合、多くの部分または基は、「置換」または「非置換」のいずれかであるとして言及される。部分が置換されているとして言及される場合、置換について利用可能であることが当業者に公知の部分の任意の一部が、置換され得ることに留意すること。例えば、置換可能な基は、水素以外の基(すなわち置換基)で置換される水素原子であり得る。複数の置換基が存在し得る。複数の置換基が存在する場合、これらの置換基は、同じでも異なっていてもよく、置換基は、任意の置換可能な部位において置換され得る。置換についてのこのような意味は、当該分野で周知である。例示の目的として、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではないが、置換基である基の例は、以下である:アルキル基(これは、1つ以上の置換基(例えば、CF)で置換され得る)、アルコキシ基(これはまた、例えば、OCFで置換され得る)、ハロゲンまたはハロ基(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、ニトロオキソ、−CN、−COH、−COOH、アミノ、アジド、N−アルキルアミノまたはN,N−ジアルキルアミノ(ここで、これらのアルキル基はまた、置換され得る)、エステル(−C(O)−OR、ここで、Rは、例えば、アルキル、アリールなどのような基で置換され得、これは、置換され得る)、アリール(最も好ましくは、フェニルであり、これは、置換され得る)、アリールアルキル(これは置換され得る)およびアリールオキシ。
【0178】
(立体化学)
多くの有機化合物は、平面分極光の平面を回転させる能力を有する、光学的に活性な形態で存在する。光学的に活性な化合物を記載する際に、接頭語DおよびLまたはRおよびSは、そのキラル中心の周りでの分子の完全な立体配置を記載するのに使用される。接頭語dおよびlまたは(+)および(−)は、化合物による平面分極光の回転の記号を指定するために使用され、(−)またはlは、化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdの接頭語のついた化合物は、右旋性である。所定の化学構造について、これらの化合物は、立体異性体と呼ばれ、互いに重ねることができない鏡像であることを除いて同一である。特定の立体異性体はまた、エナンチオマーとも呼ばれ、このような異性体の混合物は、しばしば、鏡像異性体混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物とも呼ばれる。本明細書中で記載される化合物の多くは、1つ以上のキラル中心を有し、それゆえに、異なる鏡像異性形態で存在し得る。所望であれば、キラル炭素は、アスタリスク()を用いて指定され得る。キラル炭素への結合が本発明の式において直線として示される場合、キラル炭素の(R)および(S)立体配置の両方、つまり、エナンチオマーおよびその混合物の両方は、式中に含まれることが理解される。当該分野で使用されるように、キラル炭素についての完全な立体配置を特定することが望まれる場合、キラル炭素への結合の一方は、楔(平面より上にある原子への結合)として示され得、そして他方は、一連の短い平行線または短い平行線の楔(平面より下にある原子への結合)として示され得る。Cahn−Inglod−Prelog系を使用して、キラル炭素に(R)または(S)立体配置を割り当て得る。
【0179】
本発明のHDACインヒビターが、1つのキラル中心を含む場合、これらの化合物は、2つの鏡像異性形態で存在し、本発明は、エナンチオマーおよびエナンチオマーの混合物(例えば、ラセミ混合物ともいわれる特異的な50:50混合物)の両方を含む。これらのエナンチオマーは、以下の当該分野で公知の方法によって分離され得る:例えば、結晶化によって分離され得るジアステレオ異性体塩の形成(David KozmaによるCRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation(CRC Press,2001)を参照のこと);例えば、結晶化、ガス−液体クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーによって分離され得るジアステレオ異性誘導体または錯体の形成;一方のエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬との選択的反応(例えば、酵素的エステル化);あるいは、キラルな環境(例えば、キラル支持体(例えば、キラルなリガンドが結合したシリカ)上、またはキラル溶媒の存在下)でのガス−液体クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィー。所望のエナンチオマーが、上記の分離手順の1つによって別の化学実体に変換される場合、所望の鏡像異性形態を遊離させるのに、さらなる工程が必要とされることが理解される。あるいは、特定のエナンチオマーは、光学的に活性な試薬、基質、触媒または溶媒を使用する非対称合成によって、または非対称変換による一方のエナンチオマーの他方のエナンチオマーへの変換によって合成され得る。
【0180】
本発明の化合物のキラル炭素における特定の完全な立体配置の指定は、化合物の指定された鏡像異性形態が、エナンチオマー過剰(ee)であるか、または言い換えると、他方のエナンチオマーを実質的に含まないことを意味することが理解される。例えば、化合物の「R」形態は、化合物の「S」形態を実質的に含まず、従って、「S」形態のエナンチオマー過剰である。逆に、化合物の「S」形態は、化合物の「R」形態を実質的に含まず、従って、「R」形態のエナンチオマー過剰である。エナンチオマー過剰は、本明細書中で使用される場合、特定のエナンチオマーが50%より多く存在する。例えば、エナンチオマー過剰は、約60%以上、例えば、約70%以上、例えば、約80%以上、例えば、約90%以上であり得る。特定の実施形態において、特定の完全な立体配置が指定される場合、示される化合物のエナンチオマー過剰は、少なくとも約90%である。より特定の実施形態において、化合物のエナンチオマー過剰は、少なくとも約95%、例えば、少なくとも約97.5%、例えば、少なくとも約99%エナンチオマー過剰である。
【0181】
本発明の化合物が、2つ以上のキラル炭素を有する場合、それは、2つより多い光学異性体を有し得、ジアステレオ異性形態で存在し得る。例えば、2つのキラル中心が存在する場合、この化合物は、4個までの光学異性体および2対のエナンチオマー((S,S)/(R,R)および(R,S)/(S,R))を有し得る。これらのエナンチオマーの対((S,S)/(R,R))は、互いに鏡像立体異性体である。鏡像ではない立体異性体(例えば、(S,S)および(R、S))は、ジアステレオマーである。ジアステレオマーの対は、当該分野で公知の方法(例えば、クロマトグラフィーまたは結晶化)によって分離され得、各々の対内の個々のエナンチオマーは、上記のように分離され得る。本発明は、このような化合物の各々の立体異性体およびそれらの混合物を含む。
【0182】
本明細書中で使用される場合、「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明確に記載しない限り、単数および複数への言及を含む。従って、例えば、「活性因子」または「薬学的に活性な因子」との言及は、単一の活性因子および2つ以上の異なる活性因子の組み合わせを含み、「キャリア」との言及は、2つ以上のキャリアの混合物および単一のキャリアを含む、などである。
【0183】
開示される活性な化合物は、上記のように、それらの薬学的に受容可能な塩の形態で調製され得る。薬学的に受容可能な塩は、親化合物の所望の生物学的活性を有し、所望でない毒物学的な効果を与えない塩である。このような塩の例は、以下である:無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)と形成される酸付加塩;および有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギニン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸など)と形成される塩;(b)アニオン原子(例えば、塩素、臭素、およびヨウ素)から形成される塩;ならびに(c)塩基(例えば、アンモニウム塩)から誘導される塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムおよびカリウムの塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムおよびマグネシウムの塩)、ならびに有機塩基(例えば、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン)との塩など。
【0184】
開示される活性化合物は、上記のように、その水和物(例えば、半水和物(hemihydrate)、単水和物、二水和物、三水和物、四水和物など)の形態において調製され得る。
【0185】
本発明はまた、本明細書において開示されるHDACインヒビターのプロドラッグを包含することが意図される。任意の化合物のプロドラッグは、周知の薬理学的技術を用いて作製し得る。
【0186】
上記に列挙した化合物に加えて、本発明は、そのような化合物のホモログおよびアナログの使用を包含することが意図される。この文脈において、ホモログは、上記に記載の化合物と実質的に構造類似性を有する分子であり、アナログとは、構造の類似性に関わりなく、実質的な生物学的類似性を有する分子である。
【0187】
(放射線治療)
本明細書に記載の処置との組み合わせにおける使用のために適切な放射線治療としては、(a)外部ビーム照射;および(b)放射線放射放射性同位元素を含む放射性薬剤の使用が挙げられる。
【0188】
(外部ビーム照射)
癌の処置のための外部ビーム照射治療は、患者に対して外部の放射線供給源(代表的には、放射性同位元素(例えば、60Co、137Cs)、または高エネルギーX線供給源(例えば、線形加速器))を用いる。外部供給源は、腫瘍部位で患者の内部へ向けられた平行ビームを生じる。外部供給源放射線治療は、内部照射放射線治療のいくつかの問題を避けるが、望まれることなく、そして必然的に、腫瘍組織に沿った照射ビーム経路において、かなりの容量の非腫瘍組織または健常組織を照射する。
【0189】
患者中への外部照射ビームを、腫瘍部位に集中させながら、多様な「ガントリー(gantry)」角度で照射することによって、腫瘍組織における照射の所定用量を維持しながら、健常組織の照射の副作用を減少させ得る。健常組織の特定の容量要素は、放射ビームの経路に沿って、変化し、全体としての処置の間に、健常な組織のそのような要素の各々に対する全体としての容量を減少する。
【0190】
健常組織の照射はまた、照射ビームの軸に対して垂直とした場合の、腫瘍の断面全体に対して、照射ビームを厳密に平行にすることによって、減少し得る。そのような円周の平行化を生じるために、多数のシステムが存在し、そのいくつかは、複数のスライディングシャッターを使用し、そのスライディングシャッターは、それぞれの部分に関して、任意の輪郭の照射に対して放射線不透過なマスクを生じ得る。
【0191】
(放射性薬剤)
本明細書において定義する場合、「放射性薬剤」とは、少なくとも1つの放射線を照射する放射性同位元素を含む薬剤をいう。放射性薬剤は、種々の疾患の診断および/または治療のための核医療において慣用的に使用される。放射性同位元素標識薬剤(例えば、放射性同位元素標識抗体)は、放射線供給源として作用する、放射性同位元素(RI)を含む。本明細書において検討される場合、用語「放射性同位元素」は、金属および非金属放射性同位元素を含む。放射性同位元素は、放射性標識した薬剤の医療適用に基づいて選択される。放射性同位元素が金属製放射性同位元素である場合、金属製放射性同位元素をその他の分子と結合するために、キレート剤が、代表的には用いられる。放射性同位元素が非金属放射性同位元素である場合、非金属放射性同位元素が、代表的には、直接またはリンカーを解して、その他の分子に結合する。
【0192】
本明細書において使用する場合、「金属製放射性同位元素」は、インビボまたはインビトロにおける、治療的手順または診断的手順において有用である、任意の適切な金属製放射性同位元素である。適切な金属製放射性同位元素としては、限定されることはないが、アクチニウム−225、アンチモン−124、アンチモン−125、ヒ素−74、バリウム−103、バリウム−140、ベリリウム−7、ビスマス−206、ビスマス−207、ビスマス−212、ビスマス−213、カドミウム−109、カドミウム−115m、カルシウム−45、セリウム−139、セリウム−141、セリウム−144、セシウム−137、クロミウム−51、コバルト−55、コバルト−56、コバルト−57、コバルト−58、コバルト−60、コバルト−64、銅−60、銅−62、銅−64、銅−67、エルビウム−169、ユーロピウム−152、ガリウム−64、ガリウム−67、ガリウム−68、ガドリニウム−l53、ガドリニウム−157、金−195、金−199、ハフニウム−175、ハフニウム−175〜181、ホルミウム−166、インジウム−110、インジウム−111、イリジウム−192、鉄−55、鉄−59、クリプトン−85、鉛−203、鉛−210、ルテチウム−177、マンガン−54、水銀−197、水銀−203、モリブデン−99、ネオジム−147、ネプツニウム−237、ニッケル−63、ニオブ−95、オスミウム−185+191、パラジウム−103、パラジウム−109、白金−195m、プラセオジム−143、プロメチウム−147、プロメチウム−149、プロトアクチニウム−233、ラジウム−226、レニウム−186、レニウム−188、ルビジウム−86、ルテニウム−97、ルテニウム−103、ルテニウム−105、ルテニウム−106、サマリウム−153、スカンジウム−44、スカンジウム−46、スカンジウム−47、セレン−75、銀−110m、銀−111、ナトリウム−22、ストロンチウム−85、ストロンチウム−89、ストロンチウム−90、硫黄−35、タンタル−182、テクネチウム−99m、テルル−125、テルル−132、タリウム−204、トリウム−228、トリウム−232、タリウム−170、スズ−113、スズ−114、スズ−117m、チタン−44、タングステン−185、バナジウム−48、バナジウム−49、イッテルビウム−169、イットリウム−86、イットリウム−88、イットリウム−90、イットリウム−91、亜鉛−65、ジルコニウム−89、およびジルコニウム−95が挙げられる。
【0193】
本明細書において使用する場合、「非金属製放射性同位元素」は、インビボまたはインビトロにおける、治療手順または診断手順において有用な、適切な非金属製放射性同位元素(非金属放射性同位元素)である。適切な非金属放射性同位元素としては、ヨウ素−131、ヨウ素−125、ヨウ素−123、リン−32、アスタチン−211、フッ素−18、炭素−11、酸素−15、臭素−76、および窒素−13が挙げられるが、これらに限定されない。
【0194】
放射線治療のために最も適切な同位体を同定することは、種々の因子に重み付けをすることが必要とされる。これら因子としては、腫瘍の取り込み、および保持、血中クリアランス、放射線送達の速度、放射性同位元素の半減期および比活性、ならびに経済的な様式における、大規模スケールの放射性同位元素製造の実現可能性が挙げられる。治療用放射性薬剤の要点は、必要量の放射線用量を、腫瘍細胞に送達し、そして収拾不可能な副作用を生じることなく、細胞障害性または殺腫瘍効果を達成する。
【0195】
治療用放射性同位元素の物理的な半減期は、腫瘍部位における放射性薬剤の生物学的半減期と類似であることが好ましい。例えば、放射性同位元素の半減期があまりに短いと、放射性薬剤が最大の標的/バックグラウンド比に到達する前に、多くの崩壊が生じる。一方、あまりに長い半減期は、正常組織に対して、不要な照射用量を生じ得る。理想的には、放射性同位元素は、最小の用量比を達成し、そして細胞周期の照射に感受性の相のほとんどの間に、全ての細胞を照射するのに十分長い半減期を有するできである。さらに、放射性同位元素の半減期は、製造、搬出、および輸送にための適切な時間を許容するように、十分長くなければならない。
【0196】
腫瘍治療における所定の適用のために放射性同位元素を選択することにおける他の実際の考慮は、アベイラビリティーおよび質である。純度は、十分でありかつ再現可能でなければならない、なぜなら微量の不純物は、放射性薬剤の放射性標識および放射性化合物純度に影響し得るからである。
【0197】
腫瘍中の標的レセプター部位は、代表的には、数が限られている。従って、放射性同位元素は、高い比活性を有することが好ましい。比活性は、主に、生産方法に依存する。微量金属混入物は、最小でなければならない。なぜなら、それらは、しばしば、キレート剤に対して放射性同位元素と競合し、そしてその金属の錯体は、放射性標識されたキレート剤と、レセプター結合について、しばしば競合するからである。
【0198】
本発明の方法における使用のために適切な放射のタイプは、変化し得る。例えば、照射は、その性質において、電磁気的または微粒子的であり得る。本発明の実施において有用な電磁気的照射としては、X線およびガンマ線が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施において有用な微粒子照射としては、電子ビーム(β粒子)、プロトンビーム、ニュートロンビーム、アルファ粒子、および負のπ中間子が挙げられるが、これらに限定されない。照射は、従来の放射線医学処置装置および方法を用いて、および、手術内の方法および定位方法によって、送達され得る。本発明の実施における使用のために適切な照射処置に関するさらなる考察は、Steven A.Leibelら、、Textbook of Radiation Oncology(1998)(出版社W.B.Saunders Company)の全体、そして特に第13章および第14章において見出され得る。照射はまた、標的送達のような他の方法によって送達され得る(例えば、放射活性「シード」によるか、または標的化された放射活性結合体の全身送達による)。J.Padawerら、Combined Treatment with Radioestradiol lucanthone in Mouse C3HBA Mammary Adenocarcinoma and with Estradiol lucanthone in an Estrogen Bioassay、Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Phys.7:347−357(1981)。他の照射送達法を、本発明の実施において使用し得る。
【0199】
腫瘍治療のために、α粒子放射体およびβ粒子放射体が研究されている。α粒子は、特に良好な細胞毒である。なぜなら、これらは、1つまたは2つの細胞の直径内において、多量のエネルギーを散逸するからである。β粒子放射体は、エネルギーレベルに依存して、比較的長い侵入範囲(組織内で2〜12mm)を有する。長い範囲の侵入は、不均一な血流および/またはレセプター発現を有する固形腫瘍について特に重要である。β粒子放射体は、それらが標的組織内において、不均一に分布する場合であっても、より均一な用量の分布を生じる。
【0200】
(投与の様式および用量)
本発明の方法は、その投与が必要な患者に対して、第1の処置手順におけるヒストン脱アセチラーゼインヒビターの第1の量または用量、および第2の処置手順における第2の量または用量を、投与することを包含する。第1の量および第2の量はともに、治療的有効量を含む。
【0201】
本明細書において使用される用語としての「患者」とは、処置の受容者をいう。哺乳動物および非哺乳動物患者が、含まれる。特定の実施形態において、患者は動物(例えば、ヒト、イヌ、マウス、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタまたはヤギ)である。特定の実施形態において、患者はヒトである。
【0202】
(HDACインヒビターの投与)
本発明のHDACインヒビターは、錠剤、カプセル剤(この各々は、徐放性処方、および時限式処方を含む)、ピル、粉末剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁剤、シロップ、およびエマルジョンのような経口形態において投与され得る。同様に、HDACインヒビターは、静脈内(ボーラスまたは注入)、腹腔内、皮下、または筋肉内の形態において投与され得る(全ては、薬学分野の当業者にとって周知の形態を使用する)。
【0203】
HDACインヒビターは、活性成分の徐放性放出を許容するような様式において、処方され得る、蓄積注射の形態または移植調製物の形態において投与され得る。活性成分は、ペレット内または小さな円柱内に圧縮され、そして、皮下に、または筋肉内に、蓄積注射または移植物として移植され得る。移植物は、不活性な物質(例えば、生分解性ポリマーまたは合成シリコーン(例えば、シラスチック、シリコーンゴム、またはDow−Corning Corporationによって製造される他のポリマー)を利用し得る。
【0204】
HDACインヒビターはまた、リポソーム送達システム(例えば、小さい単層ベシクル、大きな単層ベシクル、および多層ベシクル)の形態において投与され得る。リポソームは、種々のリン脂質(例えば、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリン)から形成され得る。
【0205】
HDACインヒビターはまた、化合物分子がカップルした個別のキャリアとしてのモノクローナル抗体の使用によって、送達され得る。
【0206】
HDACインヒビターはまた、標的化することが可能な薬物キャリアとしての可溶性ポリマーを用いて調製され得る。そのようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシ−プロピル−メタクリルアミド−フェノール(polyhydroxy−propyl−methacrylamide−phenol)、ポリヒドロキシエチル−アスパルタミド−フェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリジンが挙げられ得る。さらに、HDACインヒビターを、薬物の制御放出を達成するにおいて有用な生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、および架橋されたかまたは両親媒性のヒドロゲルのブロックコポリマー)を用いて調製し得る。
【0207】
HDACインヒビターを用いる投薬養生法は、以下を含む種々の因子に従って選択され得る:タイプ、種、年齢、体重、性別、および処置される癌の種類;処置される癌の重篤度(すなわち、段階);投与の経路;患者の腎機能および肝機能;ならびに使用される特定の化合物またはその塩。通常の知識を有する医師または獣医は、疾患を処置(例えば、予防、阻害(完全または部分的)または進行の停止)するために必要とされる薬物の有効量を容易に決定および処方し得る。
【0208】
所望の癌を処置するために使用されるHDACインヒビターの経口投薬量は、一日あたり約2mgから約2000mgの間の範囲(例えば、一日あたり約20mg〜約2000mg、例えば、一日あたり約200mg〜約2000mg)であり得る。例えば、経口投与量は、一日あたり、約2、約20、約200、約400、約800、約1200、約1600、または約2000であり得る。一日あたりの総量は、単回用量において投与され得るか、または複数回の投薬(例えば、一日あたり2回、3回または4回)において投与され得る。
【0209】
例えば、患者は、約2mg/日から約2000mg/日の間、例えば、約20mg/日から約2000mg/日の間、例えば、約200mg/日から約2000mg/日の間、例えば、約400mg/日から約1200mg/日の間を受領し得る。従って、一日あたり一回投与のために適切に調製された医薬は、約2mgから約2000mgの間、例えば、約20mgから約2000mgの間、例えば、約200mgから約1200mgの間、例えば、約400mg/日から約1200mg/日の間を含み得る。HDACインヒビターは、単回用量において、または毎日2回、3回、または4回の用量に分けて投与され得る。従って、一日あたり2回の投与のために、適切に調製された医薬は、必要とされる毎日の用量の半分を含む。
【0210】
静脈内または皮下に、患者は、一日あたり約3〜1500mg/mの間の送達に十分な量のHDACインヒビターを受ける(例えば、一日あたり約3、30、60、90、180、300、600、900、1200または1500mg/m)。そのような量は、多数の適切な方法において投与され得る(例えば、一回の伸長された時間の間、または一日数回、大容量の低濃度のHDACインヒビター)。その量は、一日以上の連続する日、断続的な日、または一週間(7日間)あたりのその組み合わせについて投与され得る。あるいは、短時間に、少量の高濃度のHDACインヒビター(例えば、一日一回を一日以上、連続的にか、断続的にか、または一週間(7日間)あたりのその組み合わせ)。例えば、一日あたり300mg/mの用量を、5連続日、処置あたり総量1500mg/mについて投与し得る。別の投薬養生法において、連続日数はまた、5であり得、処置は、3000mg/mおよび4500mg/mの総処置の総量について、連続する2週間または3週間の間続く。
【0211】
代表的には、静脈内の処方は、約1.0mg/mLから約10mg/mLの間、例えば、約2.0mg/mL、約3.0mg/mL、約4.0mg/mL、約5.0mg/mL、約6.0mg/mL、約7.0mg/mL、約8.0mg/mL、約9.0mg/mL、および約10mg/mLであり、上記の用量を達成する量において投与される。一例において、静脈内処方の十分な用量が、一日あたり患者に投与され得、その結果、一日の総用量は、約300と約1500mg/mの間である。
【0212】
グルクロン酸、L−乳酸、酢酸、クエン酸またはHDACインヒビターの静脈内投与のために受容可能なpH範囲において合理的な緩衝能を有する任意の薬学的に受容可能な酸/共役塩基を、緩衝液として用い得る。酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)を用いてpHが所望の範囲に調整された塩化ナトリウム溶液もまた、使用され得る。代表的には、静脈内処方のためのpH範囲は、約5〜約12の範囲であり得る。HDACインヒビターがヒドロキサム酸部分を有する場合の静脈内処方のための好ましいpH範囲は、約9から約12であり得る。適切な賦形剤の選択において、HDACインヒビターの可溶性および化学的適合性について、考慮すべきである。
【0213】
好ましくは、約5と約12の間の範囲のpHにて、当該分野において周知の手順によって調製される皮下処方物は、適切な緩衝液および等張剤を含む。これらは、1つ以上の毎日の皮下投与において、HDACインヒビターの毎日の用量を送達するために、処方され得る(例えば、毎日1回、2回、または3回)。処方物の適切な緩衝液およびpHの選択は、投与されるHDACインヒビターの可溶性に依存し、当業者によって容易に作製される。酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)を用いてpHが所望の範囲に調整された塩化ナトリウム溶液はまた、皮下処方物において使用され得る。代表的には、皮下処方物のpH範囲は、約5から約12の範囲内であり得る。HDACインヒビターがヒドロキサム酸部分を有する場合の皮下処方のための好ましいpH範囲は、約9から約12であり得る。適切な賦形剤の選択において、HDACインヒビターの可溶性および化学的適合性について、考慮すべきである。
【0214】
HDACインヒビターはまた、適切な鼻腔内ビヒクルの局所的使用を介して鼻腔内形態において、または当業者に周知の経皮皮膚パッチの形態を用いて経皮経路を介して、投与され得る。経皮送達システムの形態において投与するために、投薬量の投与は、当然に、投薬養生法を通じて、断続的よりもむしろ連続的である。
【0215】
HDACインヒビターは、意図された投与形態(すなわち、経口錠剤、カプセル、エリキシル剤、およびシロップなど)に関して適切に選択されそして従来の薬学的慣行と一致した、適切な薬学的希釈剤、賦形剤またはキャリア(これらをまとめて、本明細書において「キャリア」物質という)と混合された活性成分として投与され得る。
【0216】
例えば、錠剤またはカプセルの形態における経口投与のために、HDACインヒビターは、経口、非経口、薬学的に受容可能な、不活性なキャリア(例えば、ラクトース、スターチ、スクロース、グルコース、メチルセルロース、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム(sodium croscarmellose)、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなど、またはこれらの組み合わせ)と組み合わせられ得る;液体形態における経口投与のために、経口薬物成分は、任意の経口、非毒性、薬学的に受容可能な不活性なキャリア(例えば、エタノール、グリセロール、水など)と組み合わせられ得る。さらに、所望される場合、または必要な場合、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、および着色剤もまた、混合物中に取り込まれ得る。適切な結合剤としては、スターチ、ゼラチン、天然の糖(例えば、グルコース、またはβラクトース、穀物甘味料、天然および合成のガム(例えば、アラビアゴム、トラガカントゴム、またはアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム(sodium croscarmellose)、ポリエチレングリコール、ワックスなど)が挙げられる。これらの投薬形態において使用される潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、限定されることはないが、スターチ、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。
【0217】
本明細書に記載され、そして本発明の方法における使用のために適切なヒストンデアセチラーゼインヒビター化合物の適切な薬学的に受容可能な塩は、従来の非毒性の塩であり、そして塩基または酸添加塩(例えば、無機塩基を有する酸(例えば、アルカリ金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩);有機塩基を有する塩(例えば、有機アミン塩(例えば、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩など)など);無機塩添加塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など);有機カルボン酸またはスルホン酸添加塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩など);塩基性または酸性アミノ酸を有する塩(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸など)など)を含み得る。
【0218】
ヒストンデアセチラーゼインヒビターおよび照射はまた、以下の工程を包含する細胞中の癌を処置する方法において使用され得る:細胞を、ヒストンデアセチラーゼを阻害し得る化合物またはその塩の第1の量と接触させる工程、および、細胞を、放射線治療の第2の量と接触させて、癌を予防、阻害(完全に、または部分的に)あるいはその進行を停止る工程。細胞は、トランスジェニック細胞であり得る。別の実施形態において、細胞は、患者(例えば、哺乳動物、例えば、ヒト)中であり得る。
【0219】
特定の実施形態において、細胞中で癌を処置する第1の量は、HDACインヒビターの接触濃度であって、約1pMから約50μM、例えば、約1pMから約5μM、例えば、約1pMから約500nM、例えば、約1pMから約50mM、例えば、約1pMから約500pMである。特定の実施形態において、濃度は、約5.0μM未満である。別の実施形態において、濃度は、約500nMである。
【0220】
(外部ビーム照射の投与)
外部ビーム照射の投与のために、処置容量に対して、量は、少なくとも約1グレイ(Gy)画分で、少なくとも2日に一回である。特定の実施形態において、照射は、処置容量に対して、少なくとも約2グレイ(Gy)画分で、少なくとも1日一回投与される。別の特定の実施形態において照射は、処置容量に対して、1週間につき連続する5日間、少なくとも約2グレイ(Gy)画分で、少なくとも1日一回である。別の特定の実施形態において、処置容量に対して、1週間に3回、2日に一回、10グレイ画分で、投与される。別の特定の実施形態において、少なくとも約20Gyの総量が、必要とする患者に投与される。別の特定の実施形態において、少なくとも約30Gyが、必要とする患者に投与される。別の特定の実施形態において、少なくとも約40Gyが、必要とする患者に投与される。
【0221】
代表的には、患者は、外部ビーム治療を、1週間に4回から5回受ける。全体の処置の経過は、癌の種類および処置の目的に依存して、通常、1〜7週間続く。例えば、患者は、30日にわたって、2Gy/日の用量を受け得る。
【0222】
(放射性薬剤の投与)
多数の、放射性薬剤の投与方法が存在する。例えば、放射性薬剤は、標的化放射性結合体(例えば、放射性抗体、放射性ペプチドおよびリポソーム送達系)の標的化送達によってか、または全身送達によって、投与され得る。
【0223】
標的化送達の1つの特定の実施形態において、放射性標識化薬剤は、放射性標識した抗体であり得る。例えば、Ballangrud A.M.ら、Cancer Res.、2001;61:2008−2014、およびGoldenber,D.M.J.Nucl.Med.,2002;43(5):693−713を参照のこと(これらの内容は、本明細書中において参考として援用される)。
【0224】
標的化送達の別の特定の実施形態において、放射性薬剤は、リポソーム送達システム(例えば、小さい単層ベシクル、大きな単層ベシクルおよび多層ベシクル)の形態において投与され得る。リポソームは、種々のリン脂質(例えば、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリン)から形成され得る。例えば、Emfietzoglou D,Kostarelos K,Sgouros G.An analytical dosimetry study for the use of radionuclide−liposome conjugates in internal radiotherapy.J Nucl Med 2001;42:499−504を参照のこと(この内容は、本明細書において参考として援用される)。
【0225】
標的化送達のなお別の特定の実施形態において、放射性標識された薬剤は、放射性標識ペプチドである、例えば、Weiner RE、Thakur ML.、Radiolabeled peptides in the diagnosis and therapy of oncological diseases.Appl Radiat Isot 2002 Nov;57(5):749−63を参照のこと(この内容は、本明細書において参考として援用される)。
【0226】
標的化送達に加えて、近接照射療法を用いて、放射性薬剤を標的部位に送達し得る。近接照射療法は、放射線供給源を、腫瘍部位に可能な限り近くに配置する技術である。しばしば、供給源は、直接腫瘍内に挿入される。放射能供給原は、ワイヤ、シード、またはロッドの形態であり得る。一般に、セシウム、イリジウム、またヨウ素が使用される。
【0227】
2種類の近接照射療法が存在する:腔内処置および間隙処置。腔内処置において、放射線供給源を保持する容器が、腫瘍内または腫瘍近傍に配置される。供給源は、身体の腔内に配置される。
【0228】
間隙処置において、放射線供給源は、単独で、腫瘍内に配置される。これらの放射線供給源は、患者内に永久に留まり得る。もっともしばしば、放射線供給源は、数日後に患者から除去される。放射線供給源は、容器内にある。
【0229】
さらに、放射性薬剤は、HDACインヒビターについての上記に詳細に記載される投与の様式のいずれか1つを用いて、患者に投与され得る。
【0230】
必要な放射の量は、癌の特定の型について公知の用量に基づいて、当業者によって決定され得る。例えば、Cancer Medicine、第5版、R.C.Bastら編集、July 2000、BC Deckerを参照のこと(この内容は、本明細書において参考として援用される)。
【0231】
特定の実施形態において、照射がHDACインヒビターとともに投与される場合、照射は、癌の停止を生じるか、または癌の退行を生じるのに有効な量で、投与され得る。
【0232】
(組み合わせ投与)
第1の処置手順であるヒストンデアセチラーゼインヒビターの投与は、第2の処置手順である放射線の前に、放射線処置の後に、放射線と同時に、またはこれらの組み合わせで行われうる。第1および第2の量は、投与前に組み合わせられ得るか、または異なる部位であるが、同時に投与され得る。例えば、総処置期間は、ヒストンデアセチラーゼインヒビターについて決定されうる。放射線は、インヒビターでの処置を行う前に施されうるか、またはインヒビターでの処置の後に施されうる。さらに、放射線処置は、インヒビター投与の期間の間に施されうるが、インヒビター処置期間全体にわたって行う必要はない。
【0233】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより完全に例示する。しかし、これらは、本発明の広い範囲を限定するとしては、如何様にも解釈されるべきではない。
【実施例】
【0234】
(実験法)
(材料および方法)
細胞培養:ヒト前立腺癌腫細胞株LNCaP(CRL 1740)を、ATCC(Manassas,VA)から購入した。ストックT−フラスコ培養物を、37℃、95% 相対湿度、および5% COにて、10% ウシ胎仔血清(Sigma,St.Louis,MO)、100ユニット/mL ペニシリン、および100mg/mL ストレプトマイシン(Gemini Bio−products,Woodland,CA)を補充したRPMI 1640(Invitrogen,Carlsbad,CA)中で増殖させた。細胞濃度を、トリプシン処理した細胞を血球計算板で計数することにより決定した。
【0235】
スフェロイドイニシエーション:腫瘍細胞クラスタまたはスフェロイド(Spheroid)を、Yuhasらの液体重層技術に従って開始した。Yuhas J.M.ら,Cancer Res.,37,3639−3643,1977を参照のこと。LNCaPスフェロイド形成についての詳細および特徴付けは、Ballangrud A.M.ら.Clin.Cancer Res.,5.3171s−3176s,1999に記載される。上記参考文献の内容全体は、参考として援用される。
【0236】
簡潔には、1% 寒天(Difco,Detroit,MI)で固化したRPMI 1640培地の薄層を含む液体重層プレートを、100mmまたは35mmのペトリ皿(Becton Dickinson Labware,Franklin Lakes,NJ)から調製した。この培地に、トリプシン処理ストック培養物からの6.7×10細胞/mLを接種した。得られた懸濁液を、100mmプレートに約10細胞を播種するために使用した。5〜7日間インキュベートした後、約200μm直径のスフェロイドを、エッペンドルフピペットを使用して、目盛りを備えた倒立型位相差顕微鏡(Axiophot 2;Carl Zeiss Ltd.,Gottingen,Germany)下で選択した。
【0237】
処置プロトコル:各処置の後に、スフェロイドを、新たな培地中で懸濁することによって3回洗浄した。完全な処置は、SAHAでのインキュベーション、放射線、またはSAHAおよび放射線両方への曝露のいずれかからなった。最低12個のスフェロイドを、二連の実験において各条件に使用した。
【0238】
SAHAインキュベーションについて、DMSO中の10mMのストック溶液を培地で連続希釈して1〜5μM SAHAを生成し、0.01%未満の最終DMSO濃度にした。12〜24個の洗浄したスフェロイドを、上記のように寒天調製35mmペトリ皿に入れ、寒天表面全体が覆われるように、十分なSAHAを含む培地で覆った。
【0239】
外部ビーム照射のために、スフェロイドを、2.3Gy/分(Cs−137 Model 68;JL Shepherd and Associates,Glendale,CA)の線量速度で、セシウム照射器を使用して、6Gy外部ビーム光子放射線の強い線量に曝した。
【0240】
α放射線について、スフェロイドを、Ac225−HuM 195 α放射線の放射活性(100 nCi/mL)濃度に24時間曝した。Ac225−HuM 195は、アクチニウム225で放射性標識された組換えヒト化抗CD33モノクローナル抗体である。この抗体を、David Scheinberg,M.D.,Ph.D.(Memorial Sloan−Kettering Cancer Center)の研究室から得た。
【0241】
完全な処置の後に、洗浄したスフェロイドを、24ウェルプレートの別個の寒天調製ウェルに入れた。未処理スフェロイドを洗浄し、最初の選択の直後に分離した。各ウェル中の培地を置換し、1週間に2回容量測定を行った。倒立型顕微鏡および上記の目盛りを使用して、大きい方の直径と小さい方の直径(それぞれ、dmaxおよびdmin)を、V=(1/6)・πdmaxminとして計算した。一旦スフェロイドが顕微鏡の視野を超えたか、または個々の細胞もしくは複数の小さな細胞クラスタに断片化したら、容量モニタリングを停止した。各実験の最後に、再増殖しなかったスフェロイドを、成長アッセイ(outgrowth assay)を使用して生存度をスコア付けした。再増殖しなかったスフェロイドを含むウェルからの細胞またはスフェロイド断片を収集し、別個の寒天非含有(接着)24ウェルプレートの個々のウェル中に入れ、2週間インキュベートし、次いで、コロニーについてスコア付けした。
【0242】
免疫組織化学:スフェロイド内の腫瘍細胞の増殖またはアポトーシスを、それぞれ、Ki67媒介性またはTdT媒介性のdUTP−ビオチンニックエンド標識(TUNEL)染色によって評価した。処理の0、6、24、または48時間後に、スフェロイドを冷培地で洗浄し、4% パラホルムアルデヒド中で4時間固定し、パラフィンブロック中に置いた。そのブロックの連続する5μm切片を、ミクロトームを用いて切断し、ポリ−L−リジンコーティングしたスライド硝子にマウントし、氷冷アセトン中で10分間固定した。
【0243】
Ki67染色を、Ki67に対するモノクローナル抗体およびMOMキット(Vector Labs,Burlingame,CA)を用いて行った。
【0244】
アポトーシス細胞を、Gavrieliら(J Cell Biol.119:493−501,1992)から改変したTUNELを用いて染色した。ヘマトキシリン中での最終的な2分のインキュベーションを使用して、切片を対比染色した。未処理スフェロイドを、コントロールとして使用した;陽性コントロールを、DNase I(Boehringer,Ingelheim,Germany)を使用した作製した。画像を、結合型Pixera Professional Cameraおよび関連づけられたソフトウェア(Pixera Visual Communication Suite,Pixera,Los Gatos,CA)を用いて、倒立型位相差顕微鏡からデジタルで獲得した。画像を、スフェロイド切片内の反応性細胞の割合として、陽性染色についてスコア付けした。
【0245】
(統計学的分析)SAHAと放射線との間の相乗効果を評価するために、腫瘍体積曲線の下の面積(AUC)を、各スフェロイドについて測定した。腫瘍増殖の相乗的阻害は、平均して、各処置群を別個に含む相加的モデルによって予想されるより小さいlog AUCを生じる、組み合わせ処置群として定義される。本発明者らは、この関係を、以下の不等式によって記載する:
avg(V|S=5M,R=6 Gy)<C+{avg(V|S=5μM,R=0)−C}+{avg(V|S=0,R=6 Gy)−C}
ここで、Vは、log AUCであり、S=5μMおよびR=6Gyは、実験において使用されるSAHAおよび放射線の線量を表し、そしてCは、コントロール群における平均log AUCである[C=avg(V|S=0,R=0)]。相乗効果を試験するために、本発明者らは、平均log AUCの2000のブートストラップ反復を、4つの群の各々について計算し、そしてこの不等式が得られない反復の割合を計算した。この割合は、達成された有意性レベル(p値)と呼ばれる。小さい達成された有意性レベルは、腫瘍増殖の相乗的阻害が組み合わせ処置に起因して起こったことの指標である。
【0246】
両側T検定を使用して、陽性に染色された細胞の百分率の有意な差異を試験した。
【0247】
(結果)
(実施例1)
(スフェロイド増殖に対するSAHAの影響)
化学療法および放射線に対する応答が、インビボで腫瘍において見られる応答をよく近似するスフェロイドにおいて、研究を行った(Stuschke,M.ら、Int J Radiat Oncol Biol Phys.24:119−26,1992;Santini,M.T.ら、Int J Radiat Biol.75:787−99、1999;Dertinger,H.ら、Radiat Environ Biophys.19:101−7,1981)。
【0248】
スフェロイド増殖に対するSAHAの効果を、スフェロイドを、0μM、1.25μM、2.5μM、および5μM、のSAHAと一緒に、120時間かまたは連続的にかのいずれかでインキュベートすることによって、試験した(図1A〜D)。スフェロイド増殖を、120時間のSAHAとのインキュベーション後少なくとも40日間、または40日間の連続処理にわたって、モニタリングした。1.25μMのSAHAの濃度において、120時間と連続的との両方の曝露条件について、スフェロイド増殖は遅くなったが、停止しなかった。2.5μMにおいて、完全な増殖停止が、120時間のインキュベーション期間にわたって観察された。増殖の阻害は、薬物曝露の終了後さらに4〜5日間、次いで、回復におけるこの遅延の後に、指数関数的増殖が続き、その後、プラトーが続いた(すなわち、ゴンペルツ成長(Bassukas,I.D.Cancer Res.54:4385−92,19949))。これは、未処理のスフェロイドを用いて得られるものと類似である。5μMのSAHAとの120時間のインキュベーションの5日後、2.4倍の中央体積減少が見られ、この後、スフェロイド増殖は、ゴンペルツ速度論に戻った。スフェロイドが、0μM(SAHA曝露なし)、1.25μM、2.5μMおよび5μM、のSAHA(5日間のインキュベーション)の後の開始体積より1000倍大きい体積(体積が2倍になる時間の約10倍)に達するために必要とされる時間は、それぞれ16日間、20日間、23日間、および29日間であり、それぞれ、SAHA処理されたスフェロイドについて、4日間、7日間、および13日間の増殖の遅れを生じた。
【0249】
2.5μMでのスフェロイドの連続的な曝露は、完全な増殖抑制を生じた;5μMにおいて、スフェロイド体積の急激な損失が観察され、大部分のスフェロイドが、20日目までに解離した。停止されたかまたは解離されたスフェロイドの代表的な形態学は、図2A(5μM)および図2B(2.5μM)に示されている。
【0250】
SAHAの、抗腫瘍細胞剤としての活性を評価するために、スフェロイドを使用して得られる結果を、単層培養実験と比較することが、有益である。LNCaP単層細胞培養において、2.5μMのSAHAは、完全な増殖抑制を引き起こし、4日間にわたって細胞の殺傷が最小〜なしであり、そして5μMのSAHAは、SAHAインキュベーションの48時間後に開始する、進行性の細胞殺傷を引き起こす(Butler,L.M.ら、Cancer Res.60:5165−70.2000)。
【0251】
これらの実験において、LNCaPスフェロイドの、これらの濃度に対する体積応答性は、一般に、単層培養での結果と一致した(図1A〜D)。しかし映像(図2A〜B)は、これらの効果に対する時間スケールおよび病因学が、単層培養において見られるものとは異なることを明らかにした。5μMにおいて、完全なスフェロイドの破壊は、SAHAとのインキュベーションの13〜16日後まで起こらなかった;そして2.5μMにおける見かけの増殖阻害は、主として、スフェロイド表面上の細胞の連続的な損失に起因して生じるようであった。TUNEL染色によって示されるように(以下および図5A〜Cを参照のこと)、そしてスフェロイドにおける細胞の形態学および迅速な排除によって示唆されるように(図2A)、SAHAへの曝露後の細胞死は、主として、アポトーシスによる。
【0252】
(実施例2)
(スフェロイド増殖に対するSAHAおよび外部ビーム放射の影響)
外部ビーム(低LETの高線量率照射)に対するLNCaPの用量−応答が、以前に報告された(Ballangrud,A.M.ら、Cancer Res.61:2008−14,2001;Enmon,R.M.ら、Cancer Res,提出された)。これらのデータに基づいて、3Gyおよび6Gyの吸収された線量を、組み合わせ研究において選択した。なぜなら、これらの放射線の用量は、単独で、形状が未処理曲線に一致するが、最初のスフェロイド体積の1000倍に達するために、4〜10日の遅れを有する、増殖曲線を与えたからである。SAHA用量−応答データ(図1A〜D)に基づいて、5μMのSAHAとの96時間のインキュベーションを、組み合わせ研究のために選択した。組み合わせ処理を、スフェロイドをSAHAに48時間曝露し、照射し、次いでさらに48〜72時間インキュベートすることによって実施し、その後、洗浄し、そして増殖をモニタリングした。
【0253】
スフェロイドとして増殖したLNCaPを、この研究において使用した。以下の処理レジメンを使用した:
A:処理なし。
B:5μM SAHAでの96時間の処理。
C:2.3Gy/分の線量率でのCs−137照射を使用する、6Gyの急激な照射での処理(Cs−137モデル68:JL Shepherd and Associated,Glendale,CA)。処理は、スフェロイドにわたって均一であり、そして0.2keV/μmの低LETを使用した。
D:合計96時間の、5μM SAHAでの処理であって、48回の合計96時間のSAHA曝露に引き続いて、Cs−137照射基を使用する6Gyの急激な照射(上記のような)による処理。
【0254】
3Gy(および120時間SAHA)を用いる組み合わせ研究は、スフェロイドの増殖における、SAHA用量に依存する適度な遅延を生じた;5μMの濃度で、7日間の遅延が観察された(データは示さない)。
【0255】
6Gyおよび5μMのSAHAとの96時間のインキュベーションを用いる組み合わせ研究は、完全な増殖阻害を引き起こし、12のスフェロイドのいずれも、増殖アッセイにおいてコロニーを形成しなかった(図3D)。対照的に、6Gyの放射線単独(図3C)または5μM SAHAへの96時間の曝露単独(図3B)は、最初の体積の1000倍の増加について、それぞれ5日間および15日間の遅延を生じた。これらの結果の統計学的分析は、併用療法から生じる腫瘍増殖の相乗的な阻害を示した(p<0.01)。組み合わせて医療後の異なる時点での代表的なスフェロイドの形態学は、図4に示される。処理の終了の直後(4日目および9日目)、スフェロイドは、SAHAのみの処理を用いて見られたものと類似の外観を有する。より後の時点で、スフェロイドの形態は、かなり変化する;これらのスフェロイドは、少数の膨張した、おそらく壊死性の細胞から構成されるようである。
【0256】
(実施例3)
(アポトーシスに対するSAHAおよび外部ビーム放射の影響)
SAHAが放射線誘導アポトーシスを増加させるか否かを試験するために、単一治療または併用療法の終了後の種々の時点において、スフェロイドセクションのTUNEL染色を実施した。96時間のSAHAインキュベーションの直後、スフェロイド表面上の細胞の大部分がアポトーシスを起こし、そしてスフェロイドの内部でのアポトーシスの証拠はほとんどない(図5A)。この知見はまた、3日目および6日目の、SAHAで処理したスフェロイドの形態学的外観と一致する(図2A)。SAHAインキュベーションの終了後48時間目までに、スフェロイド表面でのアポトーシス性細胞は検出されず(これはおそらく、剥離(shedding)に起因する)、そしてアポトーシス性細胞は、スフェロイド全体にわたって見出される。細胞細片のポケットもまた、内部において明らかである。これらは、SAHAインキュベーションの終了直後に明らかであるが、6時間後および24時間後に、より顕著になる。SAHAおよび放射線で処理されたスフェロイドのTUNEL染色は、ほとんど同じパターンを生じ、このことは、SAHAがかなりのアポトーシスを誘導するが、組み合わせを用いて見られる相乗的なスフェロイドの応答は、増強されたアポトーシスによっては説明され得ないことを示唆する(図7A)。
【0257】
(実施例4)
(増殖に対するSAHAおよび外部ビーム放射線の影響)
実施例3に示されるTUNEL染色結果とは対照的に、Ki67染色によって増殖活性を試験する、対応する免疫組織学的研究は、組み合わせに対して、各処理単独についての細胞増殖におけるかなりの差異を示した(図6A〜Cおよび7B)。SAHAとの96時間のインキュベーションの終了時に、スフェロイドを構成する事実上全ての細胞が、周期を停止した。このことは、SAHAの公知の細胞周期阻害性と一致する。阻害効果は短寿命であり、そして6〜24時間のかすかな陽性Ki67染色が見られ得る。48時間目までに、多くの細胞が、セクション全体にわたって、SAHAのみで処理されたスフェロイドにおけるKi67染色の増加を示す。このような染色のいずれも、組み合わせを用いて処理されたスフェロイドにおいては、見られない(p<0.01)。
【0258】
(実施例5)
(スフェロイド増殖に対するSAHAおよびα放射線の影響)
SAHAとα粒子放出放射性同位体との組み合わせの影響を試験するために、スフェロイドを24時間、100nCi/mLのAc−225に曝露し、次いでSAHAに96時間曝露することによって、組み合わせ処理を実施した。
【0259】
LNCaP細胞は、上記のようにスフェロイドとして増殖した。以下の処理レジメンを使用した:
A:処理なし。
B:5μM SAHAでの96時間の処理。
C:100nCi/mLのAc225−HuM195での24時間の処理。
D:SAHA処理の前の、100nCi/mLのAc225−HuM195での24時間の処理と組み合わせた、合計96時間の、5μM SAHAでの処理。
【0260】
Ac225−HuM195への24時間の曝露、引き続く5μM SAHAとの96時間のインキュベーションを用いる組み合わせ研究は、完全な増殖阻害を引き起こし、これは、50日間の期間にわたって維持された(図8)。対照的に、Ac225−HuM195処理単独では、スフェロイドの増殖阻害を引き起こさず、そして5μM SAHAへの96時間の曝露単独では、最初の10日間の遅延を生じ、引き続いて、スフェロイド増殖は、30日後に、ほぼ、コントロールである未処理のスフェロイド体積のレベルになった。抗CD33抗体を、これらの実験において選択した。なぜなら、この抗体は、前立腺癌細胞にもスフェロイドにも結合しないことが既知であり、従って、インキュベーション期間、およびAc225放射性核種によって送達されるα粒子の線量の制御を可能にすることが公知であるからである。「無関係の」抗体の使用は、スフェロイドに送達された吸収された線量を計算することを、より容易にする。なぜなら、インキュベーション期間を超える放射能の保持がないからである。このことは、用量応答関係を確立する際、および観察される相乗効果が、抗体によって媒介される効果よりむしろ、主としてSAHAと放射線との組み合わせに起因することを確実にする際に、重要である。実際に、腫瘍細胞上の抗原部位を認識する特異的抗体が、放射性核種を送達するために使用され得る。
【0261】
(知見の要旨)
放射線とSAHAとの組み合わせは、増殖抑制を生じ、これは、各様式単独と比較して、スフェロイド体積の1万倍〜10万倍の差異を導いた(図3A〜D。組み合わせ処理されたスフェロイドに対するSAHA単独についてのTUNEL染色の結果は、効力の相乗的増加が、増強されたアポトーシスの結果として生じるのではないようであることを示唆する(図5Bおよび図7Aに対して図5A))。この観察は、併用療法の直後および数週間から1ヶ月を超えての後の、スフェロイドの形態学的特徴と一致する。6Gyで照射(図4、4日間)されたスフェロイドのSAHA曝露の終了時に、これらのスフェロイドの形態学的外観は、SAHA単独で処理されたスフェロイドについて観察されるものと類似しており、そしてこのことは、SAHAにより誘導されるアポトーシスと一致する。対照的に、14〜42日目の形態は、細胞の膨張および溶解を示し、これは、壊死による死と一致する。
【0262】
SAHA単独と組み合わせ処理との間のスフェロイドの発生運命の分岐の最初の証拠が、Ki67染色において観察された(図6A〜Cおよび7B)。5μM SAHA単独とのインキュベーションの終了の48時間後、増殖する細胞が観察され、一方で、このような回復は、SAHAおよび放射線で処理されたスフェロイドにおいて見出されなかった;使用される投薬量において、放射線単独では、Ki67染色によって証拠付けられるように、細胞増殖を変化させなかった(図6C、パネルH)。一緒にすると、増殖およびアポトーシスのデータは、放射線によって増強されたSAHAの効果は、放射線によって誘導される増加したアポトーシスよりむしろ、主として、SAHAとのインキュベーション後の、細胞の引き続く増殖の減少に起因することを示唆する。
【0263】
細胞が、組み合わせたSAHAと放射線との処理に曝露された後に周期を再開し得ないことは、放射線により誘導される損傷の修復の破壊、または他の修復可能なDNA損傷の増強を示し得る。
【0264】
本発明は、その好ましい実施形態を参照して、特に図示および記載されたが、形式および細部における種々の変化が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることが、当業者によって理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳の癌の処置が必要な被験体において、放射線療法と併用して脳の癌を処置するための薬学的組成物であって、該薬学的組成物が、第1量のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビターを含み、該ヒストンデアセチラーゼインヒビターが、以下の構造式:
【化70】

によって表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、またはその薬学的に受容可能な塩であり、該組成物が、第2量の放射線とともに使用されることが意図されており、該第1量および該第2量が一緒になって治療有効量を構成する、薬学的組成物。
【請求項2】
SAHAが、HDACインヒビターとして投与される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記放射線が、外部ビーム放射線によって提供される、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記放射線が、電磁放射線である、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記電磁放射線が、γ線である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記第2量が、少なくとも約40Gyの放射線である、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記HDACインヒビターおよび放射線が、同時に投与されることが意図されている、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記HDACインヒビターが、前記放射線の前に投与されることが意図されている、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記HDACインヒビターが、前記放射線の後に投与されることが意図されている、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記SAHAが、前記患者に一日当たり400mgで経口投与するのに適している、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記SAHAが、一日2回の経口投与に適している、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記SAHAが、一日1回の経口投与に適している、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記SAHAが、一日1回、200mgで前記患者に経口投与するのに適している、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記脳の癌が、網膜芽腫または神経芽腫である、請求項2に記載の薬学的組成物。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−114207(P2009−114207A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43108(P2009−43108)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【分割の表示】特願2003−585706(P2003−585706)の分割
【原出願日】平成15年4月15日(2003.4.15)
【出願人】(500516056)スローン − ケッタリング インスティチュート フォー キャンサー リサーチ (14)
【Fターム(参考)】