説明

癌の化学療法のための予測方法

mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能な哺乳類の腫瘍を特定するための方法であって、哺乳類の腫瘍から得られたサンプルをアッセイし、(a)EGF経路の少なくとも一つのポリペプチド、及び(b)mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチドからなる二以上のポリペプチドのパネルの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンを検出するステップを含み、ポリペプチドのパネルの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方が、哺乳類の腫瘍を、mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療に対する個人における反応を判定し、又は予測するための方法及び試薬に関する。また本発明は、mTOR、HIF-1α、pERK、及び/又はpMEKの発現及びリン酸化反応(活性化)を含む、癌関連代謝経路の遺伝子の遺伝子発現、リン酸化反応、又は両方を定量するための、免疫組織化学的に染色されたサンプルの画像解析の使用方法に関する。また本発明は、複数の前記癌関連代謝経路に対する二剤併用治療用の処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療の主な目的は、制御不能に成長する悪性細胞を選択的に殺傷又は阻害する一方、正常細胞には反対に影響を与えないことである。伝統的な化学療法薬は高い細胞毒性を有する試薬であり、好ましくは正常細胞よりも悪性細胞に対してより強い親和性を有し、あるいは悪性細胞の細胞成長の速さや代謝活性に基づいて、曲がりなりにも選択的に悪性細胞に対して影響を及ぼす。しかしこれらの試薬は正常細胞にしばしば害を及ぼす。ターゲット療法とも呼ばれる、正常細胞に害を加えずに悪性細胞をターゲットにする癌治療療法は、化学療法の新しい波の一つである。そのような療法の成功をもたらし、評価し、そして予測するための方法のみならず、そのような新しい療法は、慢性症状として観察され続け、副作用の少ない長期的な治療の必要性をもたらす固形腫瘍癌にとって重要である。
【0003】
個々の細胞に成長停止、最終分化、及び細胞死をもたらすために用いられる従来の化学療法又は化学抗癌剤に対し、ターゲット癌療法は、腫瘍細胞及び発癌現象に特異的な分子や細胞内経路を阻害することにより、癌細胞の成長及び転移を妨げようとする。従来の治療方法は、癌又は前癌状態の細胞に選択的に影響を及ぼす一方、それら固有の非特異性は正常細胞にも有害な影響を及ぼす。
【0004】
従来、癌の治療投薬計画は、多数の試験結果に基づいて作成されてきていた。そして、多様な患者及び腫瘍にとって予測可能な結果に依存している。個々の患者及び腫瘍に対するテーラー療法の性質は、悪性腫瘍に対するより有効な治療を、少ない副作用で提供しうる。さらに、広範な患者グループからのデータを用いて従来作成されてきた治療投薬計画に対して、癌治療の進展を監視し適切に治療を調節する技量は、個体差に対するより速い対応を可能にしうる。
【0005】
固形腫瘍及び血液学的悪性腫瘍の成長が脈管形成に依存するという発見は、腫瘍成長を阻害するある機構が、初期の血管発達に関与する経路を阻害すること示唆した(Folkman, 2003, Curr. MoI. Med. 3:643-51; Folkman, 1971, New England Journal of Medicine, 285:1182- 86)。加えてこの観察は、例えば治療上とりうる方法を決定するために、形質転換細胞それ自体における酸素の役割を検査するための補足的な戦略にまで拡張されてきた。
【0006】
いくつかのシグナル経路が、腫瘍形成の理解と治療のために重要なターゲットとして浮上している。しかし、リガンド及び受容体、受容体シグナル伝達からの結果的な出力の多様性が、ターゲット療法のための確固たる診断候補バイオマーカーを特定することを、部分的に困難にしてきている。しかしターゲットとして見込みのあるシグナル経路は、成長因子及び栄養素依存性シグナル伝達経路を含む。成長因子及び栄養素経路は、細胞内及び環境におけるきっかけに応じて、細胞成長と代謝を調節する。これらのシグナル経路は、癌においてしばしば変化させられるか無調節にされ、結果として調節不可能な成長の表現形と、周囲組織への浸潤をもたらす。成長因子又は上皮成長因子 ("EGF: Epidermal growth factor")経路、及びラパマイシンの栄養素の哺乳類のターゲット(mTOR: mammalian target of rapamycin)の両方は、癌診断及び治療における意欲的な研究のターゲットである。
【0007】
EGFは、シグナル伝達のカスケードを開始させ、結果的に細胞成長、増殖、及び分化に変化をもたらすタンパク質-受容体型チロシンキナーゼ("RTK: receptor tyrosine kinase")を活性化させる。EGFと、ras/raf、mek、及びerkを含む下流のターゲットは、いくつかの異なる癌の発生と進行に関与することが示されている。この経路とそのシグナル伝達分子は、診療にとって興味深いターゲットを提供し、そのようなアプローチはなされている(Stadler, 2005, Cancer, 104(11):2323-33; Normannoら, 2006, Gene, 366(1):2-16)。 EGFとその受容体をターゲットにする試薬は、ベバシツマブ (Bevacizumab)、PTK787、SU011248、及びBAY 43-9006を含む。またBAY 43-9006化合物は、raf、mek及びerkを含むEGF経路における下流のターゲットを阻害することが示されている(Stadler, 2005 Cancer, 104(11):2323-33)。
【0008】
またmTOR経路を含む栄養素応答性シグナル経路は、腫瘍形成、特に固体腫瘍及び血液学的悪性腫瘍において重要である。mTORは、栄養素の取得可能性の応じて細胞周期のG1期からS期への進行を誘導することにより細胞増殖/生存シグナル伝達に関与する、セリン/スレオニンキナーゼである(Maloney and Rees, 2005, Reproduction, 130:401-410)。mTORシグナル伝達における調節異常は、腫瘍形成に関連付けられている。EGF経路のように、mTOR経路は診療に適した複数の小分子ターゲットを含む。ラパマイシン、及びその類似体であるCCI-779、RAD001、及びAP23573を含むmTOR阻害剤が開発されてきている。そのような処理剤は、現在では臨床試験のフェーズII-IIIにある(Janusら, 2005, Cell MoI Biol Lett, 10(3):479-98)。
【0009】
RTK又はEGFシグナル伝達、及びmTOR駆動経路の交点は、ターゲット療法の開発において、多くの関心を集めてきている。特にターゲットは、EGFファミリ及びmTOR/HIF-1α経路の変調を含む。両方の経路が、固体腫瘍成長及び血液学的悪性腫瘍を促進する。
【0010】
mTOR経路の下流ターゲットである低酸素症誘導因子1 (HIF-1α: hypoxia-inducible factor- 1)は、哺乳類細胞における酸素ホメオスタシスに含まれる二量体の転写因子である。複合体はα及びβサブユニットからなり、低下した酸素取得可能性に応じて、低酸素応答エレメント (HRE: Hypoxia-response element)として知られるエンハンサーに結合する。低酸素応答エレメントは、エリスロポエチン(erythropoietin)、血管内皮成長因子(VEGF: Vascular Endothelial Growth Factor)、及びFIt-1(VEGF受容体)のような遺伝子調節に関与することが知られていた。血管新生及び赤血球生成に関与する遺伝子の発現調節に加えて、増殖、生存、及び代謝に関与するタンパク質産物と共に、遺伝子転写を調節する(Semenza, 2000, Journal of Applied Physiology, 88:1474-80)。
【0011】
またHIF-1αの安定化は、インシュリン、EGF、FGF、及びTNF-αによって活性化されたこれらを含む、酸素正常状態下でのいくつかのシグナル伝達カスケードの下流であることが示されてきている。HIF-1αは共通のシグナル伝達成分を介して、これらのシステムで調節されているようである。事実、PI3K/Akt/mTor及びras/raf/mek-1/(erk1/2)経路の両方が、多数の細胞タイプにおけるHIF-1αの機能に関係している(Powis and Kirkpatrick, 2004, Molecular Cancer Therapeutics, 3:647-54)。これらの結果は、下流HER-2シグナル伝達又は低酸素症のような複数のイベントがありうることの付加的な証拠を与え、それはHIF-1α発現を調節するには必要であるが、充分ではない。
【0012】
コントロール及び癌治療において、EGF及びmTOR経路の両方の役割が研究により調べられてきたが、HIF1αを介したこれらの二つの経路の間の相互作用、及び一つの経路又はその他における診療の起こりうる結果について、知見は少ない。それらの結合は、悪性腫瘍の診断及び治療に顕著なインパクトを与えうる。さらにHIF-1αは、検査される固形腫瘍の多数で発現される(Ryanら, 1998, EMBO, 17:3005-15; Powis and Kirkpatrick, 2004, Molecular Cancer Therapeutics, 3:647-54)。診断マーカーとして、高いレベルのHIF-1α発現は、リンパ節陰性乳癌、口腔咽頭の癌腫、初期の子宮頚管の癌腫、オリゴデンドログリオーマ(oligodendrogliomas)、及び非小細胞肺癌腫における予後不良と関連付けられる(Bosら, 2003, Cancer, 97:1573-81)。
【0013】
mTOR経路に対する治療効果を監視するために、癌治療の間、多様な細胞内シグナル伝達分子における変化をスクリーニングし、高速に検出することを可能にする、診断バイオマーカーを開発する必要性が、当該技術分野にある。またEGF及びmTOR経路に向けられた二剤併用阻害剤の改良された同定方法も必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、癌患者由来細胞及び組織サンプルにおける、腫瘍形成の生物学的マーカーの発現又は活性を特定及び検出するための試薬及び方法を提供する。ここで提供される方法は、特定の処方計画に対する個々の癌患者の反応を予測又は評価(又は反応の無いことを予測又は評価)するために有益である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様において、本発明は、mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能な哺乳類の腫瘍を特定する方法を提供し、二以上のポリペプチドのパネルの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンを検出するために、哺乳類の腫瘍から得られたサンプルを分析するステップを含み、ポリペプチドが、
(a) EGF経路の少なくとの一つのポリペプチド、及び
(b) mTOR経路の少なくとの一つのポリペプチド
からなり、発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方が、mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法が必要な哺乳類の腫瘍を特定する。発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンは、非腫瘍サンプルの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンと比較されてもよい。
【0016】
ある実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドは、リン酸化ERKポリペプチド、リン酸化MEKポリペプチド、又はリン酸化ERKポリペプチド及びリン酸化MEKポリペプチドを含む。他の実施の形態において、mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチドは、HIF-1αポリペプチド、mTORポリペプチド、又はHIF-1α及びmTORポリペプチドの両方を含む。 サンプル中のポリペプチドのパネルの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方の検出されたパターンが、非腫瘍コントロールにおけるポリペプチドのパネルの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のレベルより大きい時、哺乳類の腫瘍は、mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると特定される。
【0017】
さらなる実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの両方が、リン酸化ERKポリペプチド、リン酸化MEKポリペプチド、又はリン酸化ERKポリペプチド及びリン酸化MEKポリペプチドの両方を含む。そしてmTOR経路の少なくとも一つのポリペプチドが、HIF-1αポリペプチド、mTORポリペプチド、又はHIF-1α及びmTORポリペプチドの両方を含む。 本発明のその他の実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドは、リン酸化ERK ポリペプチドを含み、ここで、mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチドは、HIF-1αポリペプチドを含む。さらに他の実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドは、リン酸化MEKポリペプチドを含み、ここでmTOR経路の少なくとも一つのポリペプチドは、HIF-1αポリペプチドを含む。ある実施の形態において、サンプル中のポリペプチドのパネルの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方の検出されたパターンが、腫瘍でないコントロールにおけるポリペプチドのパネルの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のレベルよりも大きい時、哺乳類の腫瘍は、mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると特定される。
【0018】
第2の態様において、本発明は、個人におけるmTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法を受けたことに対する肯定的な反応を評価するための方法を提供し、
(a) 個人にmTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法を受けさせる前に、個人から第1の組織又は細胞サンプルを取得すること、
(b) 個人にmTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法を受けさせた後に、個人から第2の組織又は細胞サンプルを取得すること、
(c) 第1の組織又は細胞サンプル及び第2の組織又は細胞サンプルにおける、
(i) EGF経路の少なくとも一つのポリペプチド、及び
(ii) mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチド
からなる二以上のポリペプチドのパネルの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応のパターンを検出すること、
(d) 第1の組織又は細胞サンプルと第2の組織又は細胞サンプルとの間で、発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンの差異を検出することを含み、ここで、第2の組織又は細胞サンプルと第1の組織又は細胞サンプルとの間で減少した発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方は、mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法を受けたことへの肯定的な反応を示す。
【0019】
ある実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドは、リン酸化ERKポリペプチド、リン酸化MEKポリペプチド、又はリン酸化ERKポリペプチド及びリン酸化MEKポリペプチドの両方を含む。他の実施の形態において、mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチドは、HIF-1αポリペプチド、mTORポリペプチド、又はHIF-1α及びmTORポリペプチドの両方を含む。さらに他の実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドは、リン酸化ERKポリペプチド、リン酸化MEKポリペプチド、又はリン酸化ERKポリペプチド及びリン酸化MEKポリペプチドの両方を含み、かつ、mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチドは、HIF-1αポリペプチド、mTORポリペプチド、又はHIF-1α及びmTORポリペプチドの両方を含む。
【0020】
さらに他の実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドは、リン酸化ERKポリペプチドを含み、mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチドは、HIF-1αポリペプチドを含む。さらなる実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドは、リン酸化MEKポリペプチドを含み、mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチドは、HIF-1αポリペプチドを含む。
【0021】
第3の態様において、本発明は、mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能な哺乳類の腫瘍を特定するための、又は肯定的な反応を評価するためのキットを提供し、EGF経路、mTOR経路、又はEGF経路及びmTOR経路の両方における、ポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方を検出するための少なくとも二つの試薬を含む。
【0022】
ある実施の形態において、少なくとも二つの試薬は、
(a) EGF経路の少なくとも一つのポリペプチド、及び
(b) mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチド
からなるポリペプチドのパネルの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方を検出する。
【0023】
他の実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドは、ERKのリン酸化物でありうる。さらに他には、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドは、MEKのリン酸化物でありうる。他の実施の形態において、mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチドは、HIF-1αでありうる。さらに他には、mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチドは、mTORでありうる。
【0024】
ある実施の形態において、少なくとも二つの試薬は抗体である。さらに他には、二つの試薬は、(a) EGF経路のポリペプチドのエピトープに結合する少なくとも一つの抗体、及び(b) mTOR経路のポリペプチドのエピトープに結合する少なくとも一つの抗体を含む。また他の実施の形態において、キットは検出試薬を含む。他の実施の形態において、EGF経路のポリペプチドのエピトープに結合する少なくとも一つの抗体は、ERK、又はERKのリン酸化物のエピトープに結合する。その他の実施の形態において、それはMEK、又はMEKのリン酸化物のエピトープに結合する。さらにその他の実施の形態において、mTOR経路のポリペプチドのエピトープに結合する少なくとも一つの抗体は、HIF-1αのエピトープに結合する。さらにその他の実施の形態において、それはmTORのエピトープに結合する。
【0025】
第4の態様において、本発明は、EGF経路の阻害剤、及びHIF-1αのようなmTOR経路の阻害剤を含む治療用処理剤を提供する。さらに実施の形態において、EGF経路の阻害剤は、MEKリン酸化反応の阻害剤、又はERKリン酸化反応の阻害剤のどちらかである。またさらなる実施の形態において、mTOR経路の阻害剤はmTORの阻害剤である。さらなる実施の形態において、阻害剤はラパマイシンである。ある実施の形態において、mTOR経路の阻害剤は、HIF-1αの阻害剤である。またさらなる実施の形態において、阻害剤はPX-478である。
【0026】
第5の態様において、本発明は、mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能な哺乳類の腫瘍を特定するための方法を提供し、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンを検出するために、mTOR経路阻害剤を投与された個人から採取された哺乳類の腫瘍サンプルを分析するステップを含み、ここでEGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方が、哺乳類の腫瘍をmTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で処置可能であると特定する。
【0027】
ある実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドは、リン酸化ERKポリペプチド、リン酸化MEKポリペプチド、又はリン酸化ERKポリペプチド及びリン酸化MEKポリペプチドの両方を含む。他の実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方の検出されたパターンは、コントロールにおけるEGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンと比較される。ここで、コントロールにおけるポリペプチドのパネルのレベルと比較して、サンプルにおけるEGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの増加したレベルは、哺乳類の腫瘍が、mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であることを示す。コントロールは、個人がmTOR経路阻害剤を投与される前の、個人からの腫瘍サンプルが使用可能である。
【0028】
第6の態様において、本発明は、mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能な哺乳類の腫瘍を特定するための方法を提供し、(1) 個人から採取された哺乳類の腫瘍サンプルをmTOR経路阻害剤で処理するステップと、(2) EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンを検出するステップを含み、ここでEGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方が、哺乳類の腫瘍をmTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると特定する。
【0029】
ある実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドは、リン酸化ERKポリペプチド、リン酸化MEKポリペプチド、又はリン酸化ERKポリペプチド及びリン酸化MEKポリペプチドの両方を含む。 他の実施の形態において、EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方の検出パターンは、コントロールにおけるEGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンと比較される。ここで、コントロールにおけるポリペプチドのパネルのレベルに対する、サンプルにおけるEGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの上昇したレベルは、哺乳類の腫瘍を、mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると特定する。コントロールは、mTOR経路阻害剤を投与されなかった個人からの腫瘍サンプルであってもよい。
【0030】
本発明の特定の実施の形態は、以下の好ましい、ある実施の形態のより詳細な説明と請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
この出願は、2005年8月3日に出願された米国仮出願第60/705,805号の利益を主張する。
【0032】
本発明は、癌患者を含む、癌治療を受ける癌における反応を予測するための方法を提供する。加えて本発明は、阻害剤の二剤併用療法を含む、治療薬を投薬されることが最も効果的な癌患者を特定するための予測バイオマーカーを提供する。具体的には、本発明は、EGF経路又はmTOR経路の構成因子に向けられた二剤併用治療薬の効能を評価又は監視するための予測バイオマーカーを提供する。さらに本発明は、二剤併用mTOR経路阻害剤が必要な哺乳類の腫瘍を特定し、あるいは、二剤併用mTOR経路阻害剤を投与される患者における反応を分析するためのキットを提供する。さらに本発明は、二剤併用阻害剤治療用の治療用処理剤を提供する。
【0033】
外科的介入の補助として化学療法薬品処理が外科的介入の後になされる従来の制癌方法に対して、新補助(ネオアジュバント)(又は初期)化学療法は、ある癌患者の最初の治療として薬品を投与することからなる。そのようなアプローチの一つの利点は、3cm以上の初期の腫瘍の場合、化学療法の腫瘍縮小作用により、(例えば乳癌患者のラジカル乳腺切除とは反対に)保存外科手術を、後に、あるいは付随的に利用することを、多くの患者に対して可能にすることである。その他の利点は、多くの癌に対し、部分的及び/又は完全な反応が、総ての患者の約2/3で得られることである。最後に、ほとんどの患者は、化学療法処置の2乃至3サイクルの後に反応するので、化学療法処置に反応しない腫瘍を有する患者を特定することを目的として、採用された化学療法の投薬計画のin vivoにおける効能を監視することが可能になる。無反応の腫瘍をタイムリーに特定することは、臨床医が不必要な処置の副作用を癌患者に与えることを制限し、代わりの処置を開始することを可能にする。残念ながら組織学的検査を含む当該技術分野に現存する方法は、そのような時を得た正確な特定を最適に実施するには不充分である。本発明は、より効果的な結果(つまり、腫瘍の縮小又は除去)を得られるであろう、癌患者に適用されうる療法のより情報に基づき効果的な処方計画を作成するための方法を提供する。
疾患の初期診断及び疾患経過(処置の前、間、又は後)の事後観察の両方を含む癌診断は、患者から除去された細胞又は組織サンプルの組織学的検査を通して、従来検証されてきていた。臨床病理学者は、そのようなサンプルが良性か悪性かを正確に判定し、悪性と推定された腫瘍サンプルの悪性度を分類できる必要がある。なぜならこれらの判断が、しばしば患者の治療の適切な方針の選択の基礎をなすからである。同様に病理学者は、特に処置、さらに特に化学療法又は生物学的試薬による処置の結果として、成長又は鎮静に向かった癌の広がりを検出できる必要がある。
【0034】
組織学的検査は、サンプルの形態的特徴が光学顕微鏡下で容易に観察されるようにする組織染色法を伝統的に必要としていた。病理学者は染色サンプルを検査した後、典型的には、腫瘍サンプルが悪性か否か定性的な判定をしている。しかしサンプルの組織学的検査のみで腫瘍の悪性度を確認するのは困難である。なぜなら、しばしば腫瘍の悪性度は、タンパク質の発現又は抑制、タンパク質のリン酸化反応のような腫瘍内の細胞の生化学の結果であり、それはサンプルの形態に反映されるかもしれないし、されないかもしれないからである。それゆえ、腫瘍サンプル内の細胞の生化学を評価できることが重要である。さらに、遺伝子発現及び腫瘍関連遺伝子又はタンパク質のタンパク質リン酸化反応の両方、あるいはより特異的な腫瘍関連シグナル経路の細胞成分を観察し、定量化できることが望ましい。
【0035】
癌治療は、単なる腫瘍の組織学や疾患の部位よりも、腫瘍の分子プロファイリングに基づくことができる。腫瘍組織におけるターゲット療法の生物学的影響を明らかにし、これらの影響と臨床反応を相関付けることは、顕著な成長と腫瘍において有効な生存経路を特定することを助け、それにより、応答と思われるもののパターンを決定し、逆に言えば、抵抗を克服するための戦略を構築するための合理性を与える。例えば、成長因子受容体を好適に診断標的にすることは、腫瘍成長又は生存が、ターゲット受容体又は受容体ファミリによって促進されているのか、あるいは診断上標的にされていない他の受容体によって促進されているのか、そして下流のシグナル伝達がその他の癌経路を含むことを示唆するのか否かを決定しなくてはならない。さらに、1以上のシグナル伝達経路が関係している場合、二剤併用阻害剤療法が将来又は現在有効であるかどうか決定するために、シグナル経路の構成因子が診断ターゲットとして利用されうる。
【0036】
化学療法を効果的にするために、薬物は腫瘍細胞を破壊し、正常体細胞、特に腫瘍に隣接するか、近接しうるこれらの正常細胞には害を与えるべきでない。これはとりわけ、癌細胞で支配的に進行し、正常細胞では進行しない細胞活性に影響する薬物によって実現されうる。正常細胞と腫瘍細胞の一つの差異は、細胞中における酸素の量である。多くの腫瘍細胞は酸素が不足しており、「低酸素」である。哺乳類細胞は、エネルギー基質としての酸素の必要性と、細胞巨大分子に対する酸化損傷の固有リスクとの間のバランスとして存在する酸素ホメオスタシスを維持するための多数の反応を有する。酸素ホメオスタシスの細胞及び全身性の多様な機構の分子基礎は現在特定されており、そのような機構は、遺伝子転写、タンパク質翻訳、翻訳後修飾、及び細胞局在を含む総ての調節レベルで生じることが確認されている(Harris, 2002, Nat Rev. 2:38-47)。
【0037】
低酸素癌細胞は、多くの理由により生じる。完全に代謝される前は、酸素は毛細血管から細胞まで100-180ミクロンだけ拡散できる。それゆえ、血管からこの距離以上離れたいかなる細胞も低酸素になる。変形血管が成長により押しつぶされたり、妨害されたりすることにより遮断された時に、低酸素症は生じうる。一般的に、特徴は、腫瘍の急速な成長の間に観察される。低酸素になった細胞は解糖代謝となり、アポトーシス(プログラムされた細胞死)に対して抵抗するようになり、身体のより低酸素の領域により移動(転移)するようになる。また低酸素細胞は、血管内皮成長因子(VEGF: vascular endothelial growth factor)のような血管新生を促進する因子を生成し、それは既存の血管系からの新しい血管形成を刺激し、腫瘍の酸化、ついには腫瘍成長を加速させる。この理由により、低酸素腫瘍は、最も血管新生を促進する攻撃的な腫瘍である。
【0038】
当該技術分野で知られている自動化(コンピュータ支援)画像分析システムは、腫瘍サンプルの視覚検査を拡大しうる。代表的な実施の形態において、細胞又は組織サンプルは、特定の細胞マーカーに特異的な、検出可能に標識された試薬にさらされる。そして細胞の拡大画像は、電荷結合素子(CCD: charge-coupled device)又はテレビカメラのようなカメラから画像を受け取るコンピュータによって処理される。例えばそのようなシステムは、サンプル中におけるHIF-1α、pMEK、pERK、mTOR、pmTOR、pAKT、pTSC2、pS6、及びp4EBPlや、任意の付加的な診断バイオマーカーの発現及び活性化レベルを検出し測定するために使用可能である。このように本発明の方法は、より正確な癌診断と、組織学的に特定された癌細胞の遺伝子発現、特に、腫瘍マーカー遺伝子、又は(例えば異なる悪性の程度を有する)特有の癌のタイプ及びサブタイプのおいて発現すると知られている遺伝子に関して、よりよい特徴付けを提供する。この情報は、より情報を含み、効果的な療法の処方計画が実施されることを可能にする。なぜなら、ある腫瘍のタイプ又はサブタイプに対して臨床上の効能を有する薬品が、特定された細胞を有する患者に投与されることができるからである。
【0039】
既存の抗癌療法のその他の欠点は、個々の人間の患者の特定の癌を治療する際において、特定の化学療法薬品の効能が予測不可能であることである。予測不能である故、当該技術は、療法を開始する前に、一又は複数の選択された試薬が抗腫瘍試薬として活性であるか、あるいは個々の患者において、正確な予後、又は治療経過を示すことができるか決定できなかった。特定の臨床癌は臨床医に処方計画の選択肢を示すが、どの処方計画が特定の個人にとって最も有効か評価する目下の方法を何ら示さないことから、これは極めて重要である。個々の患者に対して提案された治療薬品(又は薬品の組み合わせ)の予測される効能を良好に評価可能であることが、本発明の方法の利点である。本発明の方法は、化学療法計画の効能を評価する際に時間とコストの両面で効率的であり、癌患者に対する損傷が少ないというさらなる理由により、本発明の方法は有利である。
【0040】
本発明の方法は、mTOR経路阻害剤、又はmTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法に反応する哺乳類の腫瘍を特定するために使用可能である。さらに本発明の方法は、mTOR経路及びEGF経路の構成因子をターゲットにする分子を用いる二剤併用療法を施す癌患者を選別するためにも使用可能である。また本発明の方法は、mTORに向けられた療法に反応しない哺乳類の腫瘍の特定に用いることも可能である。さらに本発明の方法は、mTOR及びHIF-1αを含む、mTOR経路の構成因子をターゲットにする分子を用いる療法を受けるべきでない癌患者の選別にも使用可能である。
【0041】
「mTOR経路阻害剤」によって、mTOR経路の構成因子の発現、又は活性、又は発現と活性の両方の阻害剤が意味される。例えばmTOR経路阻害剤は、mTOR経路の任意の構成因子を活性化する任意の受容体又は受容体のリガンドのみならず、AKT、mTOR、pTSC2、HIF-1α、pS6、p4EBPl、pI3K、STAT3の発現又は活性、又は両方を阻害することができる。mTOR経路のこの構成因子のリストは例示的なものであり、網羅的であるという意図はない。
【0042】
「EGF経路阻害剤」によって、EGF経路の構成因子の発現、又は活性、又は発現と活性の両方の阻害剤が意味される。例えばEGF経路阻害剤は、EGF経路の任意の構成因子を活性化するHERl、HER2、HER3、又はHER4のような任意の受容体、又はEGF、TGF-α、エピレグリン、NRG 1-4、又は成長因子のような受容体のリガンドのみならず、RAS/RAF、MEK、及びERKの発現、又は活性、又は両方を阻害することができる。EGF経路のこの構成因子のリストは例示的なものであり、網羅的であるという意図はない。
【0043】
mTOR経路阻害剤、特にmTOR又はHIF-1α阻害剤での処置が検討される患者にとって、ターゲットmTOR又はHIF-1αの存在以外に、付加的なバイオマーカーを考慮する必要がある。少なくとも、EGF経路の構成因子の状態、特にpERK及びpMEKは、癌患者におけるmTOR経路阻害剤療法反応に影響するからである。そのためHIF-1αの発現のみでは、必ずしもmTOR経路阻害剤に対する総ての応答を予測しない。
【0044】
mTOR経路ターゲット療法の実施前に、各々の療法の最適な候補を見つけるために、本発明の方法に従って、各々の腫瘍の診断パネルが用いられる。本発明の方法によれば、ラパマイシン又はPX-478のようなmTOR経路ターゲット療法による治療は、EGF経路阻害剤が併用療法で用いられない限り、効果的でない場合もある。例えばpERK及びpMEKのようなEGF経路の構成因子の発現が高いレベルにある場合、mTOR経路ターゲット療法は効果的でない。本発明の方法の使用は、臨床医が癌患者にとってより効果的なターゲット療法の組み合わせを選択することを可能にする。
【0045】
例えば本発明のmTOR経路療法は、HIF-1αの阻害剤のみならず、ラパマイシン、及びその類似体であるCCI-779、RAD001、及びAP23573を含みうる。さらにEGF経路阻害剤は、例えばベバシツマブ(bevacizumab)、PTK787、SU011248、及びBAY43-9006を含みうる。
【0046】
ポリペプチドの発現及びリン酸化反応のパターンは、本発明の方法を用いることにより検出され定量化される。また特に腫瘍関連シグナル伝達経路の細胞成分であるポリペプチドの発現及びリン酸化反応のパターンが、本発明の方法を用いることにより検出され定量化される。例えば、ポリペプチドの発現及びリン酸化反応のパターンは、これに限定されないが、ポリペプチドに特異的な抗体を含むバイオ検出試薬を用いることにより検出されうる。あるいはバイオ検出試薬は、核酸プローブであってもよい。
【0047】
ここに開示される発明の方法で使用される場合、核酸プローブとは、そのサンプルへのハイブリダイゼーションが検出されうる一又は複数の核酸フラグメントの集まりと定義される。プローブは標識されていなくてもよいし、ターゲットやサンプルへの結合が検出できるよう、標識されていてもよい。例えば一又は複数のクローン、単離された染色体全体又は染色体断片、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR: polymerase chain reaction)の増幅産物の回収物のような、ゲノムの一又は複数の特定の(事前に選択された)部分からなる核酸材料から作製される。また核酸プローブは、固体表面(例えば、ニトロセルロース、ガラス、石英、溶融石英スライド)上にアレイ状に固定された単離された核酸であってもよい。プローブは、例えばWO 96/17958に開示されているような核酸アレイの構成要素であってもよい。また高密度アレイを作製可能な技術が、この目的のために使用されることができる (例えば、Fodor (1991) Science 767-773、Johnston (1998) Curr. Biol. 8: R171-R174、Schummer (1997) Biotechniques 23: 1087-1092、Kern (1997) Biotechniques 23: 120-124、 U.S. Pat. No. 5,1435854参照)。 当業者は、あるプローブの正確な配列が、「実質的に同一」なプローブを生成するためにある程度修飾可能であり、由来元となるプローブと同じようにターゲット又はサンプルに特異的に結合する(つまり特異的にハイブリダイズする)能力を保てることを認めるであろう。「核酸」との語は、一本鎖又は二本鎖の形態の両方におけるデオキシリボ核酸又はリボ核酸を意味する。その語は、例えば参照核酸として同様の又は改良された結合特性を有する、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む、オリゴヌクレオチド等の核酸を含む。またその語は、天然に生じるヌクレオチドと同様に、あるいは所望の目的のために改良された速度で代謝される核酸を含む。またその語は、合成骨格を有する核酸類似体も含む。当業者は、例えば結腸癌細胞のスクリーニングを対象とする米国特許第6,326,148号を参照することにより、サンプル中の癌細胞のスクリーニングのために、核酸プローブをどのように使用するか分かるであろう。
【0048】
癌関連ポリペプチドは、これらには限定されないが、HIF-1α、pMEK、pERK、mTOR、pmTOR、pAKT、pTSC2、pS6、及びp4EBPlを含むバイオマーカーに対する直接検出される適切な一次抗体、又は適切な二次抗体(例えばマウス一次抗体を用いる時はウサギ抗マウスIgG)、及び/又は第三のアビジン(又はストレプトアビジン)ビオチン複合体(「ABC」)を用いた画像解析によって定量化されることができる。
【0049】
ここに例示される発明の方法の実施にあたって有益な試薬の例は、これに限定されないが、Ventana Medical Systems社(トゥーソン、アリゾナ州)から入手可能なマウス・モノクローナル抗体VMSI 760-4285を含む、HIF-1αに特異的な抗体を含む。本発明の方法の実施にあたって有益な試薬の他の例は、これらに限定されないが、mTORに特異的なウサギ・ポリクローナル抗体Abeam 2732、pmTORに特異的なウサギ・ポリクローナル抗体CST 2971、mTSC2に特異的なウサギ・ポリクローナル抗体CST 3614、pS6に特異的なウサギ・ポリクローナル抗体CST 2211、pAKTに特異的なウサギ・モノクローナル抗体CST 3787、pMEKに特異的なウサギ・ポリクローナル抗体CST 9121、mERK (p44/p42)に特異的なウサギ・ポリクローナル抗体VMSI 760-4228、及びm4EBPlに特異的なウサギ・ポリクローナル抗体CST 9455を含む。
【0050】
さらに予測されるポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンは、非腫瘍組織又は細胞サンプルと比較されることができる。非腫瘍組織又は細胞サンプルは、同一の個人からの非腫瘍組織又は細胞サンプル、又は異なる個人からの非腫瘍組織又は細胞サンプルから得られることができる。非腫瘍組織又は細胞サンプルと比較して検出されたポリペプチドが少ない場合、ポリペプチドの検出されたパターンは、哺乳類の腫瘍組織又は細胞サンプル中で、減少したとみなされる。非腫瘍組織又は細胞サンプルと比較して検出されたポリペプチドが多い場合、ポリペプチドの検出されたパターンは、哺乳類の腫瘍組織又は細胞サンプル中で、「増加した」とみなされる。非腫瘍組織又は細胞サンプルと比較して検出されたポリペプチドが同じか、ほぼ同じである場合、ポリペプチドの検出されたパターンは、哺乳類の腫瘍組織又は細胞サンプル中で、「通常」であるとみなされる。
【0051】
mTOR経路阻害剤、mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法に応答する、又は応答しない哺乳類の腫瘍を特定するための本発明の方法は、一又は複数のポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は両方のパターンを検出するために、哺乳類の腫瘍から得られたサンプルを分析するステップを含み、ポリペプチドは、(a) HIF-1αポリペプチド、(b)mTORポリペプチド、(c)リン酸化MEKポリペプチド、(d)リン酸化ERKポリペプチドからなる。ポリペプチドと、発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方との組み合わせにより、mTOR経路阻害剤、又はmTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法を指向する療法に反応するか、又は反応しない哺乳類の腫瘍が特定される。本方法は、これらのポリペプチドの一つ、二つ、三つ、又は四つ総ての発現、リン酸化反応、又は両方のパターンを検出することを含む。さらに本方法は、異なるポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は両方のパターンの検出のようなステップを含む他のステップを含むことができるが、必ずしも必要でない。さらに本方法は、異なるポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は両方のパターンの検出のようなステップを含む他のステップを含むことができるが、必ずしも必要でない。
【0052】
例えば哺乳類の腫瘍を応答性であると特定し、又はmTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法用の分子で治療される癌患者を選択するために使用されることができるパターンは、非腫瘍組織又は細胞サンプルと比較して増加したERK ポリペプチドのリン酸化物の発現である。あるいは検出パターンは、非腫瘍組織又は細胞サンプルと比較して増加したMEK ポリペプチドのリン酸化物の発現である。これらの特定パターンは、非限定的であると理解されるべきである。
【0053】
例えば哺乳類の腫瘍が応答的でないと特定する、あるいはmTOR経路阻害剤用の分子を用いた治療を受けるべきでない癌患者を選択するために使用されることができるパターンは、増加したMEKポリペプチドのリン酸化物の発現である。あるいは検出パターンは、非腫瘍組織又は細胞サンプルと比較して増加したMEK ポリペプチドのリン酸化物の発現である。これらの特定されたパターンは、非限定的であると理解されるべきである。
【0054】
本発明の方法を実施するにあたって、染色手順は、解剖病理学研究室の組織学専門家のような人によって実施されることができる。あるいは染色手順は、自動染色機であるVentana Medical Systems社のBenchmark(登録商標)シリーズのような自動化システムを用いて実施されることができる。両方の場合において、本発明の方法に係る使用のための染色手順は、一般的な技術及び当該技術分野で確立されたプロトコールに従って実施される。
【0055】
「細胞又は組織サンプル」によって、これらに限定されないが、塗抹標本(スミア)、痰、生検(バイオプシー)、分泌物、脳脊髄液、胆汁、血液、リンパ液、尿、及び排泄物のような身体サンプルから単離された細胞、最も好ましくは腫瘍細胞、又は乳房、肺、腸、皮膚、頚、前立腺、及び胃のような器官から除去された組織を含む生物学的サンプルが意味される。例えば組織サンプルは、機能的に関連する細胞又は隣接する細胞の領域を含む。
【0056】
標的タンパク質の量は、染色抗体の平均光学密度を測定することにより、定量化されうる。同時に、染色された全組織領域の割合又は百分率は、例えば第2の画像における(例えば抗体閾値レベルのような)コントロール・レベルを上回って染色された領域として、容易に計算されることができる。バイオマーカーを含む細胞核の視覚化に引き続き、治療後の患者由来の組織中におけるそのような細胞の百分率又は量が、処理されていない組織中におけるそのような細胞の百分率又は量と比較される。本発明の目的のために、ポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンを「決定」することは、直接検査、又は例えば請負診断サービスからの間接的な検査のいずれかによる、例えばポリペプチドの発現レベル情報を単に得ることを意味すると広範に理解されるべきである。
【0057】
あるいは標的タンパク質の量は、蛍光法を用いて決定されることができる。例えば量子ドット(Qdots: Quantum dots)は、免疫組織化学、フローサイトメトリー、及びプレートを用いるアッセイを含む多数のアプリケーションで、ますます有益になってきており、本発明と共に使用されるであろう。Qdotナノクリスタルは、感光及び定量するための非常に明るいシグナルや、画像化及び分析のための高い光安定性といった、ユニークな光学特性を有する。単一励起光源が必要とされ、接合体の広いレンジは、細胞ベース・アプリケーションの広い範囲において、それらを有益にする。Qdotバイオ接合は、従来入手可能な最も明るい染料に匹敵する量子収量によって特徴付けられる。さらに、これらの量子ドットに基づく発蛍光団は、従来の染料の10から1000倍の光を吸収する。根本的にQdot量子ドットからの放射は、狭く対称性である。このことは、他の色とのオーバーラップが最小化されることを意味し、さらに多くの色が同時に使用されることができるという事実にもかかわらず、結果的に隣接する検出チャネルへのにじみが最小化され、クロストークが弱められる。一般的な蛍光顕微鏡が、Qdotバイオ接合体の検出のための高価でない手段である。Qdot接合体はほぼ光安定性であるので、顕微鏡で対象領域を探し、サンプルに焦点を適切に合わせる時間をとることが可能である。Qdot接合体は明るく安定的な光放射が要求されるあらゆる時に有益であり、一個の励起光源/フィルタのみで使用可能であり、色の間における最小限のクロストークが要求される場面における、複数の色を用いるアプリケーションで特に有効である。例えば量子ドットは、細胞表面マーカー及び核抗原を標識するためと、微小管及びアクチンを標識するために、ストレプトアビジンとIgGの接合体として使用されている(Wu, X. et at (2003). Nature Biotech. 21, 41-46)。
【0058】
一例として蛍光は、複数波長の画像化システムNuance(登録商標)(Cambridge Research & Instrumentation、ウォバーン、マサチューセッツ州)で測定されることができる。その他の例として蛍光は、分光画像化システムSpectrView(登録商標)(Applied Spectral Imaging、ビスタ、カリフォルニア州)で測定されることができる。複数波長による画像化は、画像の各々のピクセルにおける分光情報を集め、得られたデータを分光画像処理ソフトウェアで分析する技術である。例えばNuanceシステムは、電気的に連続的に選択可能な異なる波長で一連の画像を撮ることができ、そのようなデータを操作可能に設計された分析プログラムで利用される。Nuanceシステムは、染料のスペクトルが非常に重なっている時、あるいは、サンプル中の同じ場所にそれらが共に位置しているか、生じている時でも、分光曲線が異なるのであれば、複数の染料から同時に定量情報を得ることができる。多くの生物物質は自己蛍光し、又は高いエネルギーの光で照射された時に、低いエネルギーの光を発する。このシグナルは、結果として低いコントラストの画像やデータをもたらす。複数波長画像化能力のない高感度カメラは、蛍光シグナルと共に、自己蛍光シグナルまでも単純に上昇させる。複数波長による画像化は、組織からの自己蛍光を混ぜない、あるいは分離することが可能であり、それにより実現可能なシグナル-ノイズ比を上昇させる。
【0059】
抗体検出方法に関して、「検出試薬」は一次抗体又は二次抗体を含む抗体を検出するために使用されることができる試薬を意味する。例えば検出試薬は、蛍光検出試薬、qdots、発色検出試薬、又はポリマー型検出システムであってもよい。しかし本発明の方法及びキットは、これらの検出試薬に限定されず、一次及び二次抗体系に限定されない(例えば、三次抗体は本発明の方法によって考慮される。)。
【0060】
また本発明は、発現したタンパク質バイオマーカーを間接的に検出する手段として、核酸プローブを使用してもよい。例えばpERK、pMEK、HIF-1α、及びmTORバイオマーカー用のプローブは、当該プローブ設計技術分野における通常の技術を有する者に周知の一般的なプローブ設計方法を用いて組み立てられる。一例として、参照することにより本願に組み込まれる米国特許出願番号US20050137389A1「染色体に特異的な染色方法及び組成物」は、全染色体を標識するために設計された配列の不均質な混合物を含む、繰り返し配列のない(repeat-free)プローブ組成物の設計方法を記載している。
【0061】
遺伝子特異的プローブは、以下の公表された手順のいずれかに従って設計されうる。この目的のために、対称となる部位以外の領域でのハイブリダイゼーションを最小化する、純粋で均質なプローブを生成することが重要である(Henderson, 1982, International Review of Cytology, 76: 1-46)。Manuelidisら(1984年、Chromosoma、91 : 28-38)は、繰り返しDNA配列のファミリの構成因子に対応する染色体上の複数の部位を検出するための一種のDNAプローブの構築について記載している。
【0062】
Wallaceら(1981、Nucleic Acids Research、9:879-94)は、構造遺伝子に対応する一つの部位を検出するための混合された塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドプローブの構築について記載している。塩基配列の混合物は、構造遺伝子が対応するタンパク質におけるアミノ酸の選択された配列をコードすることができる総ての考え得るヌクレオチド配列を考慮することにより決定された。
【0063】
Olsenら(1980年、Biochemistry、19:2419-28)は、連続的なハイブリダイゼーションによって、標識されたユニークな配列のヒトX染色体DNAを単離するための方法を記載している。 第1にユニークな配列のDNA断片が単離されうるよう、全ゲノムヒトDNA自身に対して。第2に相同マウス/ヒト配列が除去されるように、マウスDNAに対して単離されたユニークな配列のヒトDNA断片。そして最後に、ユニークな配列X染色体DNAの断片が単離されるように、ヒト染色体だけが染色体Xであるヒト/マウスハイブリッドの全遺伝子DNAに対して、マウスに相同的でないユニークな配列のヒトDNA。
【0064】
mTOR経路、又はEGF経路の構成因子の発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反用の免疫組織化学、又はそれらの組み合わせを予測する任意の肯定的な治療反応によって、本発明の方法に従って、患者からとられた癌組織切片は分析される。本発明の方法において「発現」の変化は、バイオマーカーが検出される細胞の数の変化、あるいは陽性の細胞の数は同じであるかもしれないが、強度(又はレベル)が変化したことを意味することができる。発現との語は、分子活性化レベルの変化を示す代理的な用語として使用されることができる。
【0065】
これらの測定は、例えば組織マイクロアレイを用いてなされることができる。均一な染色及び数え上げ条件下で多数の組織サンプルを高速にスクリーニングできる非常に有効な方法であるため、組織マイクロアレイは本発明の方法において有利に利用される。(Hoosら, 2001, Am J Pathol. 158: 1245-51)。染色されたアレイの数え上げは、一般的な0乃至3+スケールを用いて人手により、又は観測された染色を正確に定量化する自動化システムによってなされる。この分析の結果は、治療後の患者の結果を最適に予測するバイオマーカーを特定する。患者の0から100パーセントの範囲の「反応の可能性」は、リガンド、レセプター、シグナル伝達タンパク質、又は予測しうるそれらの組み合わせの発現、リン酸化反応、又は両方に基づいて、予測されることができる。組織マイクロアレイの結果に代えて、あるいは加えて、癌患者からのさらなるサンプルが分析されることができる。例えば、もし患者の応答が受容体発現、及び/又は下流のシグナル伝達の特異的なパターンと相関するならば、乳癌患者からのサンプルの分析は、組織分析による結果を確認しうる。
【0066】
本発明の一つは、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。例えば本方法は、EGF経路、mTOR経路、又は両方におけるポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は両方を検出可能な少なくとも二つの試薬、好ましくは抗体を含む、mTOR経路の阻害剤、mTOR経路阻害剤及びEGR経路阻害剤の二剤併用に対する哺乳類の腫瘍の応答を特徴付けるキットを提供する。例えばキットは、ERKのリン酸化物に結合する、MEKのリン酸化物に結合する、HIF-1αに結合する、又はmTORに結合する少なくとも二つ、三つ、又は四つの試薬を含んでいてもよい。さらにキットは、これに限定されないが付加的な抗体を含む、上述された試薬以外の付加的な成分を含むことができる。例えばそのようなキットは、臨床医又は内科医によって、特定の患者に対する適切な療法を選択するための補助器具として使用されうる。
【0067】
本発明の特に有益な実施の形態とその効果は、実施例1-6を参照して理解されることができる。これらの実施例は本発明の特定の実施の形態の実例であり、その多様な使用法である。これらは説明の目的のみに使用され、本発明を限定するように理解されるべきでない。
【0068】
(実施例1)
「低酸素条件下における、EGF/mTOR経路の下流分子の免疫組織化学染色」
mTOR、TSC2、S6、AKT、MEK、ERK (p44/p42)、及び4EBP 1のリン酸化物のみならず、mTOR、HIF-1αを含むこれらの経路のマーカーの発現レベルを評価することにより、EGF及びmTOR経路における受容体の下流のタンパク質に対する低酸素症の影響が評価された。これらのマーカーは、デスフェリオキサミン("DFO: Desferrioxamine ")で誘導される低酸素症の存在下、あるいは非存在下、又は酸素正常状態で、免疫組織化学 ("IHC: immunohistochemistry")及び画像解析を用いて評価された。DFOは低酸素症を誘導することで知られる鉄キレート剤であり、これらの実験で低酸素症のためのモデルとして使用された。総てのIHC分析は、BenchMark XT(登録商標)又はDiscovery XT(登録商標)(Ventana Medical Systems社("VMSI")、トゥーソン、アリゾナ州)染色プラットフォームのいずれかの上で実施された。一次抗体は市販の供給源(表1参照)から入手された。コントロールはビヒクル処理された。
【0069】
Jurkat (American Type Culture Collection ("ATCC")、マナッサス、バージニア州、Accession No. TIB-152)及びHT1080 (ATCC CCL-121)細胞株が、低酸素症及び酸素正常状態のモデルとして50 μM DFOの存在下又は不在下のいずれかで、一晩培養された。細胞は回収され、10%中性緩衝ホルマリン("NBF: neutral buffered formalin")で固定され、その後、パラフィンで包埋された("FFPE: “paraffin- embedded")。FFPE細胞は1500rpmで10分間遠心分離された。上澄みは除去され、Shandon Cytoblock(登録商標)細胞ブロック調整システム("Shandon Cytoblock") (Thermo Electron社、ウォルサム、マサチューセッツ州)の試薬1が3滴加えられた。細胞は3000rpmで2分間遠心分離された。三滴のShandon Cytoblockの試薬2がチューブの側面に滴下され、試薬2は細胞ペレット懸濁液の下を流された。サンプルは10分間インキュベートされ、5mlの70%エタノールが加えられた(ペレットはエタノール上に浮かんだ。)。最後にサンプルは3000rpmで2分間スピンされ、その後生検(バイオプシー)カセットに移され、パラフィン包埋処理された。
【0070】
ヘマトキシリン(Hematoxylin)・エオシン(Eosin) ("H&E")染色が観察され、IHCに対する組織の安定性が確認された。H&E染色は、以下のステップを含んだ。キシレン、100%エタノール、及び95%エタノールでパラフィン除去し、水中に浸す。スライドはヘマトキシリン中に3分間浸され、水ですすがれ、青み剤に1分間浸され、水ですすがれ、エオシン中に浸され、最後にカバースリップがつけられた。
【0071】
免疫学的検定法は以下の手順を含んだ。抗原の脱マスキング、及び関連する一次及び二次抗体とインキュベーション後の検出。ネガティブ・コントロールとして、適切なスライドを用いてBenchMark XT(登録商標)又はDiscovery XT(登録商標)希釈液(VMSI)がインキュベートされた。一次抗体は、DABMap(登録商標)、OmniMap(登録商標)(Discovery XT(登録商標))、又はiView(登録商標)DAB (BenchMark XT(登録商標))検出キットを用いて、製造者の指示書に従って検出された。手短かに言えば、iVIEW(登録商標)DAB検出キットは、パラフィン固定又は凍結組織切片中の抗原に特異的に結合したマウスIgG、IgM、及びウサギIgG抗体を検出した。特異的な抗体は、ビオチン接合二次抗体で突き止められた。このステップに引き続き、二次抗体につけられたビオチンに結合するストレプトアビジン-酵素接合体が加えられた。そして複合体は、沈降発色酵素製品を用いて視覚化された。各々のインキュベーション・ステップの終わりに、固定されなかった物質を除去するために自動スライド染色機が切片を洗浄し、スライドからの液体試薬の蒸発を最小限にするための液体カバースリップを滴下した。結果は光学顕微鏡を用いて分析され、病態生理学的過程の差異化診断を補助し、特定の抗原と関連付けられるか、関連付けられなかった。作成されたプロトコールの要旨を表1に示す。
【表1】

具体的な例として、フォスフォS6("pS6")の検出は、以下の手順でなされた。組織における腫瘍の存在と、細胞株及び組織における細胞の生存可能性を検証するために、H&Eが病理学者によってレビューされた。一次抗体2211はCell Signaling Technology社("CST")(ダンバーズ、マサチューセッツ州)から入手された。pS6 IHCアッセイのために、CC1調整緩衝液を用いて100℃で60分間、細胞が調整された。ここでCC1は高pH細胞調整溶液であり、トリス/ホウ酸塩/EDTA緩衝液(VMSI)であり、pH8である。スライドは室温で32分間、一次抗体の在庫品濃度(表1参照)の1/120希釈液を用いてインキュベートされた。在庫品の抗体濃度は、抗体が市場で売られる場合の濃度を引用している。いくつかの販売者によっては、この情報は入手可能ではない。ネガティブ・コントロールとして、製造者の指示書に従って用いられたVMSI抗体希釈液が、同じ条件下で適切なスライドを用いてインキュベートされた。pS6抗体は、万能二次抗体のない状態で、VMSI iView DAB検出キットを用いて検出され、製造者の指示書(Vector Laboratories、バーリンゲーム、カリフォルニア州)に従って、ベクタービオチン化抗ウサギIgGに交換され、37℃で32分間適用された。pS6の酵素検出/位置決めは、ストレプトアビジン西洋ワサビペルオキシダーゼ接合体(VMSI)を用いて実施され、その後、製造者の指示書と使用されたキットに従って(表1参照)、ジアミノベンジジン("DAB: diaminobenzidine ")及び硫酸銅の存在下で、過酸化水素と反応させられた。また接合及び総ての発色試薬は、ベクタービオチン化二次ウサギ抗体を除き、iView検出キットの成分であり、製造者により推奨される時間に添加された。
【0072】
有資格病理学者によって人手によりスコア付けがなされた。染色強度、反応細胞のパーセンテージ、及び細胞局在が記録された。定性的な染色強度として、0が最も陰性であり、3+が最も陽性である。病理学者によって採用されたスコア付けの原理は、VMSI Pathway(登録商標)HER2/neu Scoring Guideに概説されている。光学画像による定量の前に、病理学者によってスライドが観察され、スコア付けされた。
【0073】
光学イメージングについては、数値化されたスコアに変換された染料の(平均光密度又は平均OD: optical densityとして表現される)強度に基づいて画像を定量化するデジタルアプリケーション(VMSI)が利用された。各々のサンプルに対して高解像度画像が撮られ、陽性に染色された細胞の形及び色の範囲の具体的な分類子に基づいて、OD値が決定された。20倍又は40倍の対物レンズのいずれかを用いて、検体につき少なくとも三つの異なる領域が撮られた。ある場合において、「組み合わせスコア」又は乗法インデックスが得られ、それは下記式に従って、陽性細胞のパーセンテージと、染色強度の両方を取り込む。
【0074】
組み合わせスコア = (陽性の%) X (光強度スコア)
Jurkat細胞の代表的な画像が図1A〜1Hに描かれており、結果が図2に描かれている。誘導された低酸素症により、結果的にp4EBP1、pMEK、及びpS6の発現が減少し、HIF-1α及びpmTORの発現が増加した。ここで発現とは、リン酸マーカーが検出された細胞の数、又は染色強度のいずれかの測定値である。事実、pMEKの発現はHIF-1αの存在下では検出されなかった。pAKT及びpTSC2の発現又は活性のレベルに変化はなかった。mTORのレベルには変化が検出されず、常に高かった。あるいは、pERKのレベルには変化が検出されず、Jurkat細胞では陰性であり、HT1080細胞では陽性であった。これらの結果は、高いスループットと、定量化可能な方式で、高速かつ再現性のある染色工程を実施するためのIHC方法の有用性を示した。
【0075】
(実施例2)
「低酸素症に応答するHIF1αの発現及び阻害」
Jurkat細胞及びHT1080細胞がDFO又はビヒクル処理され、実施例1で述べたようにIHC用に準備された。さらにHT1080細胞は、PX-478 (ProlX Pharmaceuticals社、トゥーソン、アリゾナ州)、HIF-1α阻害剤(小分子)で、上昇していく一連の適用量で処理された。コントロールはビヒクル処理された。条件は表2に要約される。
【表2】

IHCは実施例1で詳述した手順に従って実施され、評価された。ウェスタンブロッティング及びFACS分析は、通常の条件を用いて実施された。DFO処理により、結果としてJurkat及びHT1080細胞株の両方でHIF-1αの発現が上昇した。代表的な染色画像を、図3A (Jurkat)及び図3B (HT1080)に示す。HIF-1α阻害剤処理(表2参照)によって、結果としてDFO誘導低酸素症に対応するHIF-1αの発現が濃度依存的に減少した。図4Aは、各々の阻害剤濃度(25 μM、50 μM、及び75 μM PX-478)における代表的な画像を示す。図4B及び4Cは、各々の処理グループにおけるHIF-1αレベルの画像分析の結果を示す。さらに図5A (レーン(1)ビヒクル処理、(2)DFO、(3)DFO + 25 μM、(4)DFO + 50 μM、及び(5)DFO + 75 μM PX-478))に示されるように、ウェスタン・ブロット分析も、HIF-1α阻害剤の濃度上昇に従って、DFO誘導低酸素症に対応するHIF-1αのレベルがこのように減少することを示した。ラミニン検出が、等価に装填したことを確認するために用いられた(図5B)。HIF-1α発現レベルの定量化は、阻害剤の存在下、濃度測定によって判断された。さらにFACSからの結果により、DFOで処理された後のHIF-1αの上昇が確認された(図6)。これらの結果はHIF-1αレベルは低酸素症に応じて上昇し、同様に、低酸素誘導HIF-1αのレベルは阻害剤の存在下減少することを確証した。
【0076】
(実施例3)
「低酸素条件下でHIF1α阻害に応答するEGF下流マーカーの調節」
EGF及びmTOR経路の間の相互作用を評価するために、EGF経路の下流マーカーであるpMEK及びpERKの発現(ここで発現とは、リン酸マーカーが検出される細胞の数又は染色強度のいずれかの測定値である。)が、低酸素条件下で、HIF-1α阻害剤PX-478に応じて測定された。HT1080は、実施例1で述べたように、DFO又はビヒクル処理を用いて、濃度が上昇するHIF-1α阻害剤の存在下で(表2参照)調製された。pMEK、pERK、pAKT、及びpS6用のIHC染色が実施例1で述べたように実施された。
【0077】
図7Aは、HIF-1α阻害剤(25 μM、50 μM、及び75 μM PX-478)の濃度を上昇させた場合の、上昇したpMEK染色の代表的な画像を示す。低酸素症に応じるpMEK及びpERKの発現の阻害のレベルは、増加するHIF-1α阻害剤により減少した。一方、pS6及びpAKTの発現は変わらなかった(図7B)。図7Cは、HIF-1α阻害剤の濃度が上昇した時の、(実施例1で詳述された)pMEKの組み合わせのスコアの上昇を示す。これらの結果は、HIF-1α 阻害剤の濃度の上昇に応じて、EGF経路のマーカー(pMEK及びpERK)が増加したことを示した。
【0078】
(実施例4)
「HIF-1α及びmTOR経路の下流マーカーの二重標識」
同一組織におけるEGF及びmTOR経路の変化を同時に監視するために、IHC二重標識がHIF-1α及びpMEK又はHIF-1α及びpERKについて実施された。HeLaヒト腫瘍細胞異種移植片サンプルが、2006年5月1日に出願された、共有され継続している、本願に組み込まれた米国特許出願11/416,362に以前記載されたプロトコールにしたがって作製された。そしてHeLa細胞異種移植片は、実施例5で述べたように、VMSI Discovery(登録商標)XTによって分析された。実施例1で先述したように、表1に示された一次抗体の滴定濃度と、HIF-1α、pMEK、及びpERKのインキュベーション時間によって、IHCが実施された。
【0079】
二つの異なるタイプの検出用二次抗体と検出基質が、染色を視覚化するために用いられた。デュアル明視野IHCとQDOT蛍光である。デュアル明視野IHC用に、二次抗体は西洋ワサビペルオキシダーゼ("HRP") (UltraMAP P.N. 760-500, VMSI)、又はアルカリ・ホスファターゼ("AP: alkaline phosphatase ")に直接接合された。検出基質はHRP用としてはDAB/銅(ChromoMap DAB, VMSI)、AP用としてはNuclear Fast Red (ChromoMap RED, VMSI)又はNBT/BCIP (ChromoMap BLUE, VMSI)であり、製造者の指示書に従って用いられた。図8は、(A)(Nuclear Fast Redを用いて検出された)HIF-1α及び(DAB-brownを用いて検出された)pMEK、(B)(DAB- brownを用いて検出された)HIF-1α及び(NBT/BCIP -Blueを用いて検出された)pMEKのデュアル明視野IHC標識の結果を示す。図8A-Bにおいて、各々のバイオマーカーがラベルされた。
【0080】
QDOT蛍光IHCのための二次抗体は、実施例1で述べたものと同じであり、検出基質はストレプトアビジン接合QDOT(VMSI QD605又はQD655)であった。画像分析は、分光画像化カメラ(Cambridge Research Instruments、ウォバーン、マサチューセッツ州)上に最初に撮られた画像立方体(image cubes)を用いて実施された。励起はUV(水銀)光源によって誘導された。そして画像立方体はVMSI Research画像化アプリケーション上で分析された。手短に言えば、画像立方体はアプリケーション中に回収され、605nm(HIF-1α)及び655nm (pMEK又はpERK)で光を放射すると予測されるQdotのピクセル強度に基づいて、データが抽出され、報告された。そしてアプリケーションを用いた分析が実施され、腫瘍中における個々のHIF-1α及び/又はpMEK及び/又はpERK発現細胞が特定された。図9はHIF-1α及び(A)pMEK又は(B)pERKによるQDOT蛍光二重標識を示す。図9において、HIF-1α発現細胞は、主に低酸素標識領域に見られる。これに対し、pMEK及びpERKは、主に増殖ラベル領域に見られる。図に示すように、高いレベルのpMEKを発現する細胞は、HIF-1αを発現しないことが分かった。一方、高いレベルのHIF-1αを発現する細胞は、pMEKを発現しない(図9C)。図10は、これらの結果から提案されるEGF及びmTOR経路の間のクロストークの概略図を示す。
【0081】
(実施例5)
「HIF1αアッセイプロトコール」
抗HIF-1α一次抗体アッセイのプロトコールは、腫瘍サンプルにおけるHIF-1αの発現と、癌治療に応答する発現の変化を高速に評価することを可能にする。VMSI抗HIF-1α (マウス・モノクローナル)一次抗体は、Discovery(登録商標)、Discovery(登録商標)XT、BenchMark(登録商標)及びBenchMark(登録商標)XTプラットフォーム上でテストされ、DABMap(登録商標)、BlueMap(登録商標)、RedMap(登録商標)、OmniMap(登録商標)、AmpMap(登録商標)、QDMap(登録商標)655、/View(登録商標)DAB、uItra(登録商標)View等の選択された検出キットで検出されることができる。図11は上記検出キットから得られた代表的な画像を示す。アッセイの特異性、範囲、及び線形性が、正常及び新生組織のコアを含む多臓器組織マイクロアレイを用いて検査された。病理学者によるこれらのサンプルのスコア付けは、染色強度、バックグランドに対するコントラスト、及び核に対するサブ細胞の局在に基づいた。抗体は、ホルマリン固定パラフィン埋め込み組織及び細胞株で試験された。Discovery(登録商標)のプロトコールの条件が以下に概説される。
【0082】
a. NexESソフトウェアを開く。
【0083】
b. プロトコールを作るために、主画面の”Protocols”ボタンをクリックする。"Create/Edit Protocol"及び"Manage Protocol"という表記と共に、ウィンドウが現れる。"NexES Protocol Editor"ウィンドウを開くために、"Create/Edit Protocol"をクリックする。
【0084】
c. "Procedure"フィールド下で、適切な手順を選択する。
【0085】
d. "Tissue"の隣のボックスをチェックする。
【0086】
e. "Paraffin"の隣のボックスをチェックする。
【0087】
f. "Cell Conditioning"の隣のボックスをチェックする。
【0088】
g. "Conditioner # 1"の隣のボックスをチェックする。
【0089】
h. "Mild CC1"の隣のボックスをチェックする。
【0090】
i. "Standard CC1"の隣のボックスをチェックする。
【0091】
j . "No Heat"の隣のボックスをチェックする。
【0092】
k. "Antibody"の隣のボックスをチェックする。
l. "Antibody Auto Dispense"の隣のボックスをチェックする。
m. "Standard Ab Incubation"の隣のボックスをチェックする。
n. "Antibody"プルダウンメニューにおいて、"anti-HIFα"を選択する。
o. "Standard Ab Incubation Time"プルダウンメニューにおいて、"1 hour"を選択する。
p. 引き続き適切なボックスをチェックし、貴方の二次抗体及び検出にとって適切な選択をする。
【0093】
抗体は、LinkOD(登録商標)による検出のDiscovery(登録商標)OmniMAP(登録商標)ライン及びヤギ抗ウサギHRP検出を用いて作製され、最適化された。候補サンプル中におけるHIF-1αの検出のための高速アッセイ開発プロセス(図12)が図13に示される。表3は最終的なアッセイのプロトコールを要約する。
【表3】

(実施例6)
「HIF-1α及びEGF経路に対するmTOR阻害の効果」
HT1080、Jurkat、及び何割かのLNCaP (ATCC CRL-1740) (前立腺癌腫細胞) HIF+/pMEK-細胞が、mTOR 阻害剤であるラパマイシンで処理される。mTORの阻害は、HIF-1αの減少とpMEKの誘導をもたらすと期待される。16時間、DFO(50μM)の存在下、又は非存在下、1x106 cells/mLを10mLの細胞培養培地(10%のウシ胎仔血清、及び通常量の抗生物質(ペニシリン及びストレプトマイシン)及びL-グルタミンが添加されているRPMI; GIBCO-BRL)でインキュベートすることにより、HT1080、Jurkat及びLNCaPを含む感受性ヒト細胞株モデルに低酸素症が誘導される。一晩培養した後、細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄され、上述された培養培地、又は様々な濃度のラパマイシン(50 μM、30μM、10μM又は培地のみ)を添加された培地で、18時間インキュベートされる。処理の後、細胞はPBSで2回洗浄される。(LnCAPのような)接着細胞は、トリプシン処理される。総ての培養物は培地で再懸濁され、遠心分離される。遠心分離の後、培地は除去され、細胞は10%のリン酸緩衝ホルマリンで再懸濁される。そして細胞は4乃至6時間、10%のリン酸緩衝ホルマリンで固定され、PBSで2回洗浄され、先述したように(実施例1)包埋する前に70%のエタノールで固定される。実施例1及び表1で述べたように、HIF-1α、mTOR、pmTOR、pS6、pMEK及びpERKについてIHCが実施される。低酸素症の誘導はpMEK及びpERKを減少させるであろう。一方、ラパマイシン処理はHIFを減少させ、これに応じてpMEKを誘導するであろう。
【0094】
以上の開示は本発明のある特定の実施の形態に重点を置いたものであり、あらゆる変更やそれらと等価な代替案は、添付された請求項に記載の本発明の意図と範囲内にあることを理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1A】図1Aは、Jurkat細胞中の経路バイオマーカー(pAKT)染色の代表的な画像を示す。コントロール及びDFO処理条件の両方が示されており、倍率は40xである。
【図1B】図1Bは、Jurkat細胞中の経路バイオマーカー(mTOR)染色の代表的な画像を示す。コントロール及びDFO処理条件の両方が示されており、倍率は40xである。
【図1C】図1Cは、Jurkat細胞中の経路バイオマーカー(pmTOR)染色の代表的な画像を示す。コントロール及びDFO処理条件の両方が示されており、倍率は40xである。
【図1D】図1Dは、Jurkat細胞中の経路バイオマーカー(pTSC2)染色の代表的な画像を示す。コントロール及びDFO処理条件の両方が示されており、倍率は40xである。
【図1E】図1Eは、Jurkat細胞中の経路バイオマーカー(HIF-1α)染色の代表的な画像を示す。コントロール及びDFO処理条件の両方が示されており、倍率は40xである。
【図1F】図1Fは、Jurkat細胞中の経路バイオマーカー(pMEK)染色の代表的な画像を示す。コントロール及びDFO処理条件の両方が示されており、倍率は40xである。
【図1G】図1Gは、Jurkat細胞中の経路バイオマーカー(pS6)染色の代表的な画像を示す。コントロール及びDFO処理条件の両方が示されており、倍率は40xである。
【図1H】図1Hは、Jurkat細胞中の経路バイオマーカー(p4EBP)染色の代表的な画像を示す。コントロール及びDFO処理条件の両方が示されており、倍率は40xである。
【図2】図2はHIF-1α導入後の細胞シグナル伝達の概念図を示す。RTK及びmTOR経路におけるバイオマーカーの相対発現は、IHC及び画像解析後に示される。
【図3A】図3Aは、酸素正常状態及び低酸素 (DFO: desferoxamine)状態下、Jurkat細胞株において評価されたHIF-1αの発現を示す。細胞株は病理学者によって観察され、倍率が示されている。
【図3B】図3Bは、酸素正常状態及び低酸素 (DFO: desferoxamine)状態下、HT1080細胞株において評価されたHIF-1αの発現を示す。細胞株は病理学者によって観察され、倍率が示されている。
【図4A】図4Aは、DFO及び様々な濃度のHIF-1α阻害剤PX-478 (40x) (コントロール、DFOのみ、DFO + 25 μM PX-478、DFO + 50 μM PX-478、及びDFO + 75 μM PX-478)で処理されたHT1080細胞の代表的な免疫組織化学 (IHC: 免疫組織化学)画像を示す。
【図4B】図4BはIHC画像上で実施された画像解析を示す。
【図4C】図4CはHIFαの発現を示す。
【図5A】図5Aは、小分子HIF-1α阻害剤PX-478で処理されたHT1080細胞のウェスタン・ブロット分析を示す。レーンは、(1) ビヒクル処理、(2) DFOのみ、(3) DFO + 25 μM薬物、(4) DFO + 50 μM薬物、及び(5) DFO + 75 μM薬物を含む。
【図5B】図5Bは、等価に充填されたことを確認するためにラミニン検出を用いたウェスタン・ブロットを示す。
【図5C】図5Cは、阻害剤の存在下、HIF-1α発現を定量するためのウェスタン・ブロットの濃度分析の結果を示す。
【図6】図6はJurkat腫瘍細胞株における低酸素誘導HIF-1αの発現の蛍光活性化細胞分類 (FACS: fluorescence-activated cell sorting)の結果を示す。
【図7A】図7AはDFO及びHIF-1α阻害剤(コントロール、DFOのみ、DFO + 25 μM PX-478、DFO + 50 μM PX-478、及びDFO + 75 μM PX-478)で処理されたHT1080細胞のpMEK染色の代表的な画像を示す。
【図7B】図7Bは、HT1080細胞におけるHER/mTOR経路マーカー(pS6、pAKT、及びpMEK及びpERK)の発現の今回の阻害を示す。細胞はDFO及び種々の濃度のHIF-1α阻害剤PX-478で処理された後、分析された。分割細胞はpMEK発現について分析された。データは、(100- ((% 処理 ÷ %ベースライン) x 100))という式に従って計算された代用的なマーカー上の低酸素効果(DFO処理)のパーセントの阻害を示す。
【図7C】図7Cは、DFO及び種々の濃度のHIF-1α阻害剤で処理された後のHT1080細胞中のpMEK発現について分析された細胞を示す。データは、pMEKバイオマーカー上の低酸素症、及び低酸素効果の阻害(DFO処理 ± HIF-1α阻害剤)を示す。
【図8A】図8Aは、HIF-1α(Fast Red検出試薬)及びpMEK(DAB-brown検出試薬)対比染色 (ヘマトキシリン)の二重明視野IHC二重標識の代表的な画像を示す。図8Aにおいて、各々のバイオマーカーは標識される。
【図8B】図8Bは、HIF-1α(DAB-brown検出試薬)及びpMEK(NBT/BCIP-Blue検出試薬)対比染色(Nuclear Fast Red)の二重明視野IHC二重標識の代表的な画像を示す。図8Bにおいて、各々のバイオマーカーは標識される。
【図9A】図9Aは、HIF-1αとpMEKのQDOT蛍光IHC二重標識の代表的な画像を示す。
【図9B】図9Bは、HIF-1αとpERKのQDOT蛍光IHC二重標識の代表的な画像を示す。HIF-1α発現細胞は、図9において、主に低酸素ラベル領域に見られる。一方、pMEK及びpERKは、主に増殖性ラベル領域に見られる。
【図9C】図9Cは、QDOT蛍光IHC二重標識を用いたHIF-1α及びpMEKの同時検出の結果を示し、領域から選択された細胞の画像を含む。
【図10】図10はEGF及びmTOR経路の間のクロストークの概略図である。
【図11】図11は、異なる検出キットとIHCを用いたHIF-1αタンパク検出の代表的な画像を示す。
【図12】図12は、アッセイ開発マトリックス(CLAD(登録商標))を示す概念図である。
【図13】図13は、HIF-1αマウス・モノクローナル・アッセイ開発を示す概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能な哺乳類の腫瘍を特定するための方法であって、
前記哺乳類の腫瘍から得られたサンプルをアッセイし、
(a) 前記EGF経路の少なくとも一つのポリペプチド、及び
(b) 前記mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチド
からなる二以上のポリペプチドのパネルの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンを検出するステップを含み、
前記ポリペプチドのパネルの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方が、前記哺乳類の腫瘍を、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定する。
【請求項2】
請求項1の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、リン酸化ERKポリペプチド、リン酸化MEKポリペプチド、又はリン酸化ERKポリペプチド及びリン酸化MEKポリペプチドの両方を含む。
【請求項3】
請求項2の方法において、
前記サンプル中で検出された前記ポリペプチドのパネルの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンが、非腫瘍コントロールにおける前記ポリペプチドのパネルの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のレベルよりも大きい時、前記哺乳類の腫瘍は、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定される。
【請求項4】
請求項1の方法において、
前記mTOR経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、HIF-1αポリペプチド、mTORポリペプチド、又はHIF-1α及びmTORポリペプチドの両方を含む。
【請求項5】
請求項4の方法において、
前記サンプル中で検出された前記ポリペプチドのパネルの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンが、非腫瘍コントロールにおける前記ポリペプチドのパネルの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のレベルよりも大きい時、前記哺乳類の腫瘍は、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定される。
【請求項6】
請求項1の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、リン酸化ERKポリペプチド、リン酸化MEKポリペプチド、又はリン酸化ERKポリペプチド及びリン酸化MEKポリペプチドの両方を含み、
前記mTOR経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、HIF-1αポリペプチド、mTORポリペプチド、又はHIF-1α及びmTORポリペプチドの両方を含む。
【請求項7】
請求項6の方法において、
前記サンプル中で検出された前記ポリペプチドのパネルの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方の前記パターンが、非腫瘍コントロールにおける前記ポリペプチドのパネルの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のレベルよりも大きい時、前記哺乳類の腫瘍は、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定される。
【請求項8】
請求項1の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが前記リン酸化ERKポリペプチドを含み、
前記mTOR経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがHIF-1αポリペプチドを含む。
【請求項9】
請求項8の方法において、
前記サンプル中で検出された前記ポリペプチドのパネルの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンが、非腫瘍コントロールにおける前記ポリペプチドのパネルの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のレベルよりも大きい時、前記哺乳類の腫瘍は、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定される。
【請求項10】
請求項1の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが前記リン酸化MEKポリペプチドを含み、
前記mTOR経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがHIF-1αポリペプチドを含む。
【請求項11】
請求項10の方法において、
前記サンプル中で検出された前記ポリペプチドのパネルの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンが、非腫瘍コントロールにおける前記ポリペプチドのパネルの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のレベルよりも大きい時、前記哺乳類の腫瘍は、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定される。
【請求項12】
mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法を受けることへの肯定的な反応を個人において評価する方法であって、
(a)前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法を前記個人に受けさせる前に、前記個人から第1の組織又は細胞サンプルを得ること、
(b)前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法を前記個人に受けさせた後に、前記個人から第2の組織又は細胞サンプルを得ること、
(c)前記第1の組織又は細胞サンプル、及び前記第2の組織又は細胞サンプルにおける
(i) 前記EGF経路の少なくとも一つのポリペプチド、及び
(ii) 前記mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチド
からなる二以上のポリペプチドのパネルの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンを検出すること、
(d)前記第1の組織又は細胞サンプルと前記第2の組織又は細胞サンプルとの間で、前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンにおける差異を検出することを含み、
前記第2の組織又は細胞サンプルと前記第1の組織又は細胞サンプルとの間での減少した発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方は、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法を受けることへの肯定的な反応を示す。
【請求項13】
請求項12の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、リン酸化ERKポリペプチド、リン酸化MEKポリペプチド、又はリン酸化ERKポリペプチド及びリン酸化MEKポリペプチドの両方を含む。
【請求項14】
請求項12の方法において、
前記mTOR経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、HIF-1αポリペプチド、mTORポリペプチド、又はHIF-1α及びmTORポリペプチドの両方を含む。
【請求項15】
請求項12の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、リン酸化ERKポリペプチド、リン酸化MEKポリペプチド、又はリン酸化ERKポリペプチド及びリン酸化MEKポリペプチドの両方を含み、
前記mTOR経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、HIF-1αポリペプチド、mTORポリペプチド、又はHIF-1α及びmTORポリペプチドの両方を含む。
【請求項16】
請求項12の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがリン酸化ERKポリペプチドを含み、
前記mTOR経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがHIF-1αポリペプチドを含む。
【請求項17】
請求項12の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがリン酸化MEKポリペプチドを含み、
前記mTOR経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがHIF-1αポリペプチドを含む。
【請求項18】
mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能な腫瘍を特定し、個人において前記療法を受けることに対する肯定的な反応を評価するためのキットであって、
前記EGF経路、前記mTOR経路、又は前記EGF経路及び前記mTOR経路の両方におけるポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方を検出するための少なくとも二つの試薬を含む。
【請求項19】
請求項18のキットにおいて、
前記少なくとも二つの試薬が、
(a) 前記EGF経路の少なくとも一つのポリペプチド、及び
(b) 前記mTOR経路の少なくとも一つのポリペプチド
からなるポリペプチドのパネルの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方を検出する。
【請求項20】
請求項18のキットにおいて、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがERKのリン酸化物である。
【請求項21】
請求項18のキットにおいて、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがMEKのリン酸化物である。
【請求項22】
請求項18のキットにおいて、
前記mTOR経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがHIF-1αである。
【請求項23】
請求項18のキットにおいて、
前記mTOR経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがmTORである。
【請求項24】
請求項18のキットにおいて、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがERKのリン酸化物であり、
前記mTOR経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがHIF-1αである。
【請求項25】
請求項18のキットにおいて、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがMEKのリン酸化物であり、
前記mTOR経路の前記少なくとも一つのポリペプチドがHIF-1αである。
【請求項26】
請求項18のキットにおいて、
前記少なくとも二つの試薬が抗体である。
【請求項27】
請求項18のキットにおいて、
前記少なくとも二つの試薬が、
(a) 前記EGF経路のポリペプチドのエピトープに結合する少なくとも一つの抗体と、
(b) 前記mTOR経路のポリペプチドのエピトープに結合する少なくとも一つの抗体
を含む。
【請求項28】
検出試薬を更に含む請求項27に記載のキット。
【請求項29】
請求項27のキットにおいて、
前記EGF経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、ERKのエピトープに結合する。
【請求項30】
請求項27のキットにおいて、
前記EGF経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、ERKのリン酸化物のエピトープに結合する。
【請求項31】
請求項27のキットにおいて、
前記EGF経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、MEKのエピトープに結合する。
【請求項32】
請求項27のキットにおいて、
前記EGF経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、MEKのリン酸化物のエピトープに結合する。
【請求項33】
請求項27のキットにおいて、
前記mTOR経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、HIF-1αのエピトープに結合する。
【請求項34】
請求項27のキットにおいて、
前記mTOR経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、mTORのエピトープに結合する。
【請求項35】
請求項27のキットにおいて、
前記EGF経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、ERKのエピトープに結合し、
前記mTOR経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、HIF-1αのエピトープに結合する。
【請求項36】
検出試薬を更に含む、請求項35のキット
【請求項37】
請求項27のキットにおいて、
前記EGF経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、ERKのリン酸化物のエピトープに結合し、
前記mTOR経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、HIF-1αのエピトープに結合する。
【請求項38】
検出試薬を更に含む、請求項37のキット。
【請求項39】
請求項27のキットにおいて、
前記EGF経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、MEKのエピトープに結合し、
前記mTOR経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、HIF-1αのエピトープに結合する。
【請求項40】
検出試薬を更に含む、請求項39のキット。
【請求項41】
請求項27のキットにおいて、
前記EGF経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、MEKのリン酸化物のエピトープに結合し、
前記mTOR経路のポリペプチドのエピトープに結合する前記少なくとも一つの抗体が、HIF-1αのエピトープに結合する。
【請求項42】
検出試薬を更に含む、請求項41のキット。
【請求項43】
EGF経路の阻害剤及びHIF-1αの阻害剤を含む、治療用処理剤。
【請求項44】
請求項43の治療用処理剤において、
前記EGF経路の阻害剤がMEKリン酸化反応の阻害剤である。
【請求項45】
請求項43の治療用処理剤において、
前記EGF経路の阻害剤がERKリン酸化反応の阻害剤である。
【請求項46】
請求項43の治療用処理剤において、
前記HIF-1αの阻害剤がPX-478である。
【請求項47】
mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能な哺乳類の腫瘍を特定するための方法であって、
mTOR経路阻害剤を投与された個人から得られた哺乳類の腫瘍サンプルをアッセイし、前記EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンを検出するステップを含み、
前記EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方が、前記哺乳類の腫瘍を、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定する。
【請求項48】
請求項47の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、リン酸化ERKポリペプチド、リン酸化MEKポリペプチド、又はリン酸化ERKポリペプチド及びリン酸化MEKポリペプチドの両方を含む。
【請求項49】
請求項48の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方の前記検出されたパターンが、コントロールにおける前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンと比較され、
前記コントロールにおける前記ポリペプチドのパネルのレベルと比較して上昇した、サンプルにおける前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドのレベルは、前記哺乳類の腫瘍を、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定する。
【請求項50】
請求項47の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、リン酸化ERKポリペプチドを含む。
【請求項51】
請求項50の方法において、
前記リン酸化ERKポリペプチドの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方の検出されたパターンが、コントロールにおける前記リン酸化ERKポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンと比較され、
前記コントロールにおける前記リン酸化ERKポリペプチドのレベルと比較して上昇した、サンプル中における前記リン酸化ERKポリペプチドのレベルは、前記哺乳類の腫瘍を、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定する。
【請求項52】
請求項47の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、前記リン酸化MEKポリペプチドを含む。
【請求項53】
請求項52の方法において、
前記リン酸化MEKポリペプチドの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方の検出されたパターンが、コントロールにおける前記リン酸化MEKポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンと比較され、
前記コントロールにおける前記リン酸化MEKポリペプチドのレベルと比較して上昇した、サンプル中における前記リン酸化MEKポリペプチドのレベルは、前記哺乳類の腫瘍を、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定する。
【請求項54】
mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能な哺乳類の腫瘍を特定するための方法であって、
(1) 個人から得られた哺乳類の腫瘍サンプルをmTOR経路阻害剤で処理するステップと、
(2) 前記EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンを検出するステップ
とを含み、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方が、前記哺乳類の腫瘍を、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定する。
【請求項55】
請求項54の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、リン酸化ERKポリペプチド、リン酸化MEKポリペプチド、又はリン酸化ERKポリペプチド及びリン酸化MEKポリペプチドの両方を含む。
【請求項56】
請求項55の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方の検出されたパターンが、コントロールにおける前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンと比較され、
前記コントロールにおける前記ポリペプチドのパネルのレベルと比較して上昇した、サンプルにおける前記EGF経路の少なくとも一つのポリペプチドのレベルは、前記哺乳類の腫瘍を、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定する。
【請求項57】
請求項54の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、リン酸化ERKポリペプチドを含む。
【請求項58】
請求項57の方法において、
前記リン酸化ERK ポリペプチドの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方の検出されたパターンが、コントロールにおける前記リン酸化ERKポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンと比較され、
前記コントロールにおける前記リン酸化ERKポリペプチドのレベルと比較して上昇した、サンプルにおける前記リン酸化ERKポリペプチドのレベルは、前記哺乳類の腫瘍を、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定する。
【請求項59】
請求項54の方法において、
前記EGF経路の前記少なくとも一つのポリペプチドが、前記リン酸化MEKポリペプチドを含む。
【請求項60】
請求項59の方法において、
前記リン酸化MEK ポリペプチドの前記発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方の検出されたパターンが、コントロールにおける前記リン酸化MEKポリペプチドの発現、リン酸化反応、又は発現及びリン酸化反応の両方のパターンと比較され、
前記コントロールにおける前記リン酸化MEKポリペプチドのレベルと比較して上昇した、サンプルにおける前記リン酸化MEKポリペプチドのレベルは、前記哺乳類の腫瘍を、前記mTOR経路阻害剤及びEGF経路阻害剤の二剤併用療法で治療可能であると同定する。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−506303(P2009−506303A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525257(P2008−525257)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/030595
【国際公開番号】WO2007/019385
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(599075070)ベンタナ・メデイカル・システムズ・インコーポレーテツド (31)
【Fターム(参考)】