説明

癌の指標である核酸を検出するための方法

【課題】大きなDNAフラグメントについてスクリーニングすることにより、患者における癌を早期検出するための方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、組織または体液のサンプルを癌または前癌の指標である核酸についてスクリーニングするための方法を提供する。本発明の方法は、癌または前癌について患者をスクリーニングするための方法であって、この方法は、剥離した細胞および細胞細片を含む患者の組織または体液のサンプルにおいて長さが200塩基対を超える核酸フラグメントを検出する工程を包含し、このフラグメントの存在は、癌または前癌についてスクリーニング陽性であることを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、大きなDNAフラグメントについてスクリーニングすることにより、患者における癌を早期検出するための方法に関する。本発明の方法は、結腸癌の検出において特に有用である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ゲノムの完全性における変化は、しばしば、疾患と関連するか、または疾患についての傾向と関連する。例えば、多くの癌は、ゲノムDNAにおける一連の変異を通じて発生し、結果として、制御されない細胞増殖の形態でゲノム不安定性を生じると考えられる。正常細胞において、ゲノムDNAに対する損傷は、代表的には、腫瘍サプレッサ(例えば、細胞周期レギュレーターであるp53)の発現をもたらす。例えば、細胞DNAに対する損傷は、p53(細胞周期を停止して、損傷の修復を可能にする)の発現の増大を生じる。損傷したDNAが修復できない場合、この細胞はアポトーシスを受け、このようにして、娘細胞におけるさらなる変異の蓄積を防止する。しかしp53遺伝子自体(または別の細胞周期レギュレーター)に変異が存在する場合、損傷した細胞は、細胞周期を進行し、さらなるDNA変異がチェックされないままである子孫を生じる。多くの癌の顕著な特徴は、これらの変異の蓄積である。
【0003】
アポトーシスのプロセスは、細胞代謝の調節の際のみならず、腫瘍形成を阻害する際にも重要である。細胞がアポトーシスを受けるにつれて、核は小さくなり、そしてフラグメント化される。核DNAは、一般に約200塩基対より長くはない紡錘フラグメントに消化される。プロセスが続くにつれ、通常は、複数の経路を通じて、細胞膜が解体され、そして細胞内容物が代謝される。結果として、癌を導く複数工程の経路に入る潜在性を有する細胞が排除される。
【0004】
多くの癌は、それらの発生が初期に検出される場合は治癒可能である。例えば、結腸直腸癌は、代表的には結腸上皮に起こり、そして発生の初期段階の間に広範囲には血管化しない(従って、侵襲性ではない)。高度に血管化した侵襲性であり、かつ最終的に転移性の癌への移行は、一般に、十年以上を要する。癌の存在が広範な血管新生の前に検出されれば、外科的な除去は、代表的には効果的な治療法である。しかし、結腸直腸癌は、しばしば、臨床症状(例えば、疼痛および黒いタール状の糞便)が現れた際にのみ検出される。一般に、このような症状は、疾患が十分に確率した場合にのみ、そしてしばしば、転移が生じた後に存在する。従って、結腸直腸癌の初期検出は、その病的状態を有意に減じるために重要である。
【0005】
侵襲性の診断方法(例えば、内視鏡検査)により、直接視同定、除去および潜在的癌性組織の生検が可能になる。内視鏡は、高価であり、苦しく、本来危険性を伴い、かつ初期診断のためには実際的なツールではない。
【0006】
確立した非侵襲性のスクリーニング方法は、糞便の潜血の存在について、または癌胎児性抗原のレベルの上昇について(この両方が、結腸直腸癌の存在を示唆する)糞便サンプルをアッセイする工程を包含する。さらに、分子生物学の近年の発展は、結腸直腸癌の指標である一定範囲のDNA変異の存在を検出することについて大きな可能性のある方法を提供している。このような変異の存在は、結腸直腸癌の種々の段階の間に、糞便サンプル中で見出されたDNAにおいて検出され得る。しかし、糞便は、患者由来、微生物由来、および食品由来の細胞および細胞細片を含み、結果として細胞の不均質な集団を生じる。このことにより、小さく、特定の亜集団の検出を信頼性をもって検出することを困難にしている。
【0007】
癌の存在を示す特徴を検出する、癌の早期診断のためのさらなる非侵襲的方法が当該分野で必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、組織または体液のサンプルにおいて、それらのサンプルにおいてアポトーシスを受けでいないDNAを同定することにより、癌の指標を同定するための方法を提供する。本発明はまた、剥離した上皮細胞を含むサンプルにおいて癌または前癌の指標を同定するための方法を提供する。剥離した正常(非癌性)細胞から得られたDNAは、剥離した癌または前癌の細胞から得られたDNAとは異なることは今や認識されている。剥離した正常細胞は、代表的には、アポトーシスを受けており、従って、実質的に分解されたDNAを含有する細胞または細胞細片(アポトーシスの段階に依存する)を生じる。剥離した癌または前癌の細胞は、代表的にはアポトーシスを受けておらず、そしてこのような細胞またはそれらの細片は、代表的には、サンプルにおける分解の結果としていくらかの非常に小さなフラグメントを生じながら、より高い割合の大きなDNAフラグメント(剥離した正常細胞由来の細胞または細片において観察されたDNAフラグメントと比較して)もまた含む。正常細胞と非正常細胞との間のDNA完全性における差異は、剥離した細胞を含むサンプルにおいて、癌または前癌の存在についてのマーカーである。
【0009】
糞便は、本発明の方法の具体例についての良好なサンプルである。結腸上皮は、剥離の連続的プロセスを受けている。正常上皮細胞は、アポトーシスを受け、そして結腸の管腔へ、および糞便の形成時に閉じこめられる。ポリープおよび腫瘍由来の細胞もまた、糞便形成時に閉じこめられる。しかし、ポリープまたは腫瘍由来の細胞は、定義によれば、アポトーシスを受けていない。本発明の方法は、癌または前癌の指標について患者のサンプルをスクリーニングするために、アポトーシスを受けた細胞とアポトーシスを受けていない細胞との間の異なる特徴を利用する。
【0010】
上記のように、非癌性(正常)細胞は、周期的間隔でまたは修復できない細胞損傷に応答してアポトーシスを受けている。アポトーシスの結果として、正常細胞由来のDNAは、約200塩基対以下、そして代表的には、180塩基対以下を有する小さなフラグメントに切断される。対照的に、癌または前癌の細胞から得られたDNAは、代表的なアポトーシスを受けたフラグメントよりはるかに大きい。従って、サンプル(例えば、閉じこめられた結腸上皮の)中の大きなDNAフラグメントの存在は、サンプル(またはサンプルが得られた標本)中にアポトーシスおよび同時に起こるDNAの分解を回避した細胞が存在しているか、またはこのような細胞が存在したということを示す。大きなDNAフラグメントの存在は、癌または前癌についてスクリーニング陽性であることを示す。
【0011】
従って、本発明の方法は、癌または前癌の指標である、生物学的サンプルにおける種特異的核酸の存在を検出する工程を包含する。このような核酸を含むサンプルは、癌または前癌の指標を有すると同定される。好適な方法において、本発明の方法によって決定されるように、高い割合の、アポトーシスを受けていない核酸を有するサンプルを提示する患者は、腫瘍、腺腫、または他の癌性もしくは前癌性の病変の存在についてさらに評価される。
【0012】
一般に、本発明の方法は、生物学的サンプル中の、非癌性細胞または細胞細片に実質的に存在しない長さの1以上のDNAフラグメントを検出する工程を包含する。好ましい実施形態において、このようなフラグメントは、典型的なアポトーシス紡錘体フラグメントまたは約170塩基対よりも大きい。しかし、また好ましい実施形態において、本発明の方法は、約200塩基対、および好ましくは約500塩基対よりも大きいDNAフラグメントを検出する工程を包含する。これらのフラグメントに上限は存在しない。なぜなら、フラグメントがアポトーシスを受けているフラグメントよりも大きいことが必要とされる全てだからである。しかし、代表的には、癌細胞または前癌細胞を示すフラグメントは、約200塩基対と約3500塩基対との間、および理想的には、約500塩基対と約200塩基対との間である。
【0013】
従って、好ましい実施形態において、本発明の方法は、組織または体液サンプル中の、約500を超える塩基対を有するか、または約500を超える塩基対に対応する分子量を有する、核酸フラグメントの存在を検出する工程を包含する。他の好ましい実施形態において、本発明の方法は、約200塩基対と約1000塩基対との間、好ましくは約200塩基対と約600塩基対との間、および最も好ましくは約500塩基対を有する核酸フラグメントを検出する工程を包含する。
【0014】
また好ましい実施形態において、本発明の方法は、小さなフラグメント(200bp未満)に対する大きなフラグメント(200〜3500bp)の比率を決定する工程、およびこの比率が、経験的に導かれる閾値を超えるか否かを決定する工程を包含する。この閾値は、小さなフラグメントに対する大きなフラグメントの比率を分析して、そして正常および癌の患者の選択された集団の疾患状態とこの比率とを相関させることによって、経験的に決定される。好ましい実施形態において、大きなフラグメントおよび小さなフラグメントの量は、長いフラグメントおよび短いフラグメントを増幅するように選択されたプライマーを使用する、サンプルDNAのポリメラーゼ連鎖反応増幅によって決定される。あるいは、大きなフラグメントおよび小さなフラグメントの量は、同じプライマーを使用して決定される。
【0015】
本発明の好ましい方法は、ヒト特異的プライマーを使用して、代表的な糞便サンプル中の核酸を増幅する工程、ならびに約200を超える、および好ましくは約500以上の塩基対を有するアンプリコンを検出する工程を包含する。非常に好ましい実施形態において、増幅は、ヒト特異的核酸フラグメントに対して指向され、そして得られるアンプリコンでより低い限界を提供するように離れて間隔を空けられている、正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって達成される。または非常に好ましい実施形態において、PCRプライマーは、ヒト癌遺伝子または腫瘍抑制配列に対して指向される。PCRプライマーについて好ましい標的核酸としては、p53、Kras、apc、dcc、および癌、特に結腸直腸癌に関連することが公知であるか、またはこれに関連することが疑われる他の遺伝子が挙げられる。PCRを行うための方法は、米国特許第4,683,202号(本明細書中に参考として援用される)中に提供される。長さが約200塩基対よりも大きなアンプリコンの存在は、サンプルにおいて、その長さ(またはそれよりも大きい)の鋳型核酸の示す。本発明の方法に従って、このような長い配列は、スクリーニング陽性を示し、そして癌または前癌を示す。
【0016】
好ましい生物学的サンプルとしては、糞便、膿および尿が挙げられる。本発明の方法は、剥離物を含むサンプルにおいて、大きなDNAフラグメントの検出に特に有用である。細胞、特に上皮細胞が剥離される組織(例えば、結腸、肺、膀胱)が、本発明のスクリーニング方法に最も好ましい。このような組織において、細胞の再生の継続は、細胞がアポトーシスを受けた後に規則的にはがれることを必要とする。剥離物のサンプル(剥離した細胞を含む組織または体液)は、主に、アポトーシスを受けているDNAを含む。
【0017】
糞便サンプルでの使用に好ましい本発明の方法は、代表的な糞便のサンプルを得る工程を包含する。糞便サンプルを調製するために特に好ましい方法は、米国特許第5,741,650号および共有に係る同時継続米国特許出願第09/059,713号(代理人整理番号EXT−015)(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)に開示されている。
【0018】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、少なくとも5:1の溶媒容量対糞便質量の比率を有する均一なサンプル混合物を形成するために、溶媒中に代表的な糞便サンプルを均一にする工程を包含する。溶媒容量対糞便質量の特に好ましい比率は、約20:1である。本発明に従って糞便サンプルを調製するための好ましい溶媒は、界面活性剤およびプロテイナーゼならびに必要に応じてDNaseインヒビターを含む生理学的に適合性の緩衝液(例えば、Tris−EDTA−NaClを含む緩衝液)である。好ましい緩衝液は、50mM Tris、150mM EDTAおよび10mM NaCl(pH9.0)である。別の好ましい溶媒は、グアニジンイソチオシアネート(GITC)である。糞便質量に対する最適な溶媒容量の比率の提供は、サンプルからの核酸の収率を、一般に増加させる。サンプル調製に関するさらなる詳細は、共有に係る同時継続米国特許出願第08/XXXXXXX(代理人整理番号EXT−0028)(本明細書中に参考として援用される)に開示される。
【0019】
本発明の好ましい方法は、ヒトDNAについてサンプルを富化する工程をさらに包含する。本発明での使用に好ましい富化方法は、アフィニティーカラム(配列特異的捕捉)を使用してか、またはヒトDNAの単離を偏らせる好ましい緩衝液の使用を通じて、所望のヒト標的配列を富化する工程を包含する。好ましい富化方法は、例えば、アフィニティーカラムを使用する、独特なヒト核酸の捕捉に基づく。このような方法の詳細は、以下に提供される。
【0020】
好ましい実施形態において、方法はさらに、配列特異的核酸プローブを使用して、均一なサンプル混合物からDNAを抽出する工程を包含する。ヒトDNAにハイブリダイズするプローブが、特に好ましい。このプローブは、好ましくは、標識される。好ましい標識としては、放射性標識、蛍光標識、分子量標識および酵素標識が挙げられる。他の標識は、当該分野で周知である。
【0021】
好ましい実施形態において、ゲル電気泳動、アフィニテイークロマトグラフィー、または質量分析が、大きなDNAフラグメント(約200を超える塩基対を含むフラグメント)を検出するために使用される。サンプル中の大きなDNAフラグメントの存在は、結腸直腸癌を示す。
【0022】
好ましい実施形態において、捕捉プローブとしては、DNA、RNAまたはPNAが挙げられ、そして当該分野で公知の方法を使用して検出のために標識される。1つの実施形態において、プローブは、放射性同位体(例えば、32P、33P、35S、125Iもしくはハイブリダイゼーションプローブを標識するために有用な任意の他の検出可能な同位体)で標識される。別の好ましい実施形態において、プローブは、蛍光分子で標識される。多くの蛍光標識が、当該分野において公知であり、そして任意の検出可能な蛍光プローブ標識が、本発明の実施に有用である。あるいは、プローブは、それらの分子量を増やす部分に付着される。例えば、プローブは、糖タンパク質、またはガラスビーズ、またはプローブの分子量に対する検出可能な効果を有する任意の化合物に直接的に付着され得る。さらなる実施形態において、プローブは、さらなる化合物との特異的相互作用に起因して検出可能である化合物で標識される。例えば、ビオチン化プローブは、ストレプトアビジンとの相互作用を介して検出可能である。このストレプトアビジン部分は、検出可能な標識(例えば、ビーズ、蛍光タグ、または酵素)に付着される。別の例において、このプローブは、抗体によって特異的に認識されるハプテンまたは抗原で標識される。この抗体は、当該分野で公知の方法(放射性同位体、蛍光タグおよび酵素反応を含む)を使用して検出可能にされる。さらなる例において、このプローブは、反応を触媒して検出可能な生成物を生成する特異的な酵素を通じて検出可能である酵素に付着される。
【0023】
最終的には、本発明の方法は、糞便サンプルにおいて、長さが200塩基対よりも大きいDNAフラグメントの相対量に基づいて、結腸直腸病変の結腸の位置を見積もることを可能にする。本発明の局面は、糞便の溶解特性が結腸の遠位にあるよりも結腸の近位にある方がより大きいという事実に基づく。近位の結腸において、糞便は、代表的には、液体形態である。従って、結腸中の細胞溶解およびDNA分解酵素は、結腸の遠位中で典型の形成されたかまたは形成している糞便にはがれた剥離細胞の利用に比較して、結腸の近位の液体混合物中の剥離細胞をより利用しやすい。近位結腸の環境と遠位結腸の環境との間の差異の結果として、本発明は、近位結腸中に剥離した細胞からの代表的なDNAフラグメントが、遠位結腸中に剥離した細胞からのDNAフラグメントよりも小さいということを提供する。図1は、結腸の異なる領域中に剥離した癌細胞または前癌細胞について予期されるDNAサイズの進行の例を提供する。非癌性細胞または前癌性細胞に由来するDNAフラグメントのサイズは、これらの細胞に由来するDNAが、アポトーシスを通じて主に分解されるという事実に起因して、結腸全体にわたって同じである。従って、細胞溶解およびDNA分解は、結腸全体にわたって剥離したほとんどの正常細胞に由来するDNAフラグメントのサイズの決定においてわずかな役割のみを果たす。しかし、例えば、結腸から機械的に剪断される正常細胞は、代表的な癌細胞または前癌細胞と同じ溶解および分解サイクルを受けることが留意される。しかし、糞便サンプルにおけるDNAのレベル全体に対するこのような非アポトーシス正常細胞の寄与は、小さく、そして以下に教示されるような標準物を確立することによって制御される。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)癌または前癌について患者をスクリーニングするための方法であって、該方法は、以下の工程:
剥離した細胞および細胞細片を含む患者の組織または体液のサンプルにおいて、長さが200塩基対を超える核酸フラグメントを検出する工程、
を包含し、該フラグメントの存在が、癌または前癌についてスクリーニング陽性である、方法。
(項目2)前記検出工程が、長さが200塩基対を超える前記サンプル中の核酸のみを増幅するように設計された増幅反応を行う工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)前記サンプルが、糞便、膿、および尿からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)前記サンプルをヒトDNAについて富化する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目5)前記サンプルからヒトDNAを単離する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目6)癌または前癌について患者をスクリーニングするための方法であって、該方法は、以下の工程:
患者の組織または体液のサンプルにおいて、長さが200塩基対を超える核酸フラグメントの第1の量を決定する工程;
該サンプルにおいて、長さが200塩基対未満の核酸フラグメントの第2の量を決定する工程;
該第1の量と該第2の量との間の比を決定する工程;および
該比が癌または前癌を有さない患者についての閾値比を超える場合にスクリーニング陽性であると同定する工程、
を包含する、方法。
(項目7)癌または前癌について患者をスクリーニングするための方法であって、該方法は、以下の工程:
剥離した細胞を含む患者の組織または体液のサンプルにおいて健常患者の該サンプルに存在するとは予測されない長さの核酸フラグメントを検出する工程
を包含し、該フラグメントの存在が、スクリーニング陽性である、方法。
本発明のさらなる局面および利点は、本発明の以下の詳細な説明中に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、結腸の模式図、および結腸の種々の領域について、代表的(典型的)なアポトーシスを受けている(正常)DNAフラグメントの長さに対する、癌または前癌の剥離細胞から得られたDNAについての代表的(典型的)なDNAフラグメントの長さを示す。
【図2】図2は、約200bp離れて間隔を空けられた正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用して、糞便から単離されたKras(エキソン1)DNAの増幅の結果を示すゲルの写真である。このバンド強度は、サンプル中の200bp以上の生成物の量に関する。レーン1〜4は、癌または腺腫を患う患者からの結果であり、レーン5は、陽性コントロールであり、レーン6〜10は、癌または腺腫を有しなかった患者からであり、レーン11〜12は、陰性コントロールであり、そしてレーン13〜18は、図においておおよその分子量を示す標準物である。
【図3】図3は、約200bp離れて間隔を空けられた正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用して、糞便から単離されたapc(エキソン15)DNAの増幅の結果を示すゲルの写真である。このバンド強度は、サンプル中の200bp以上の生成物の量に関する。レーン1〜4は、癌または腺腫を患う患者からの結果であり、レーン5は、陽性コントロールであり、レーン6〜10は、癌または腺腫を有しなかった患者からであり、レーン11〜12は、陰性コントロールであり、そしてレーン13〜18は、図においておおよその分子量を示す標準物である。
【図4】図4は、約200bp離れて間隔を空けられた正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用して、糞便から単離されたapc(エキソン15)DNAの増幅の結果を示すゲルの写真である。このバンド強度は、サンプル中の200bp以上の生成物の量に関する。レーン1〜4は、癌または腺腫を患う患者からの結果であり、レーン5は、陽性コントロールであり、レーン6〜10は、癌または腺腫を有しなかった患者からであり、レーン11〜12は、陰性コントロールであり、そしてレーン13〜18は、図においておおよその分子量を示す標準物である。
【図5】図5は、約200bp離れて間隔を空けられた正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用して、糞便から単離されたapc(エキソン15)DNAの増幅の結果を示すゲルの写真である。このバンド強度は、サンプル中の200bp以上の生成物の量に関する。レーン1〜4は、癌または腺腫を患う患者からの結果であり、レーン5は、陽性コントロールであり、レーン6〜10は、癌または腺腫を有しなかった患者からであり、レーン11〜12は、陰性コントロールであり、そしてレーン13〜18は、図においておおよその分子量を示す標準物である。
【図6】図6は、約200bp離れて間隔を空けられた正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用して、糞便から単離されたp53(エキソン5)DNAの増幅の結果を示すゲルの写真である。このバンド強度は、サンプル中の200bp以上の生成物の量に関する。レーン1〜4は、癌または腺腫を患う患者からの結果であり、レーン5は、陽性コントロールであり、レーン6〜10は、癌または腺腫を有しなかった患者からであり、レーン11〜12は、陰性コントロールであり、そしてレーン13〜18は、図においておおよその分子量を示す標準物である。
【図7】図7は、約200bp離れて間隔を空けられた正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用して、糞便から単離されたp53(エキソン7)DNAの増幅の結果を示すゲルの写真である。このバンド強度は、サンプル中の200bp以上の生成物の量に関する。レーン1〜4は、癌または腺腫を患う患者からの結果であり、レーン5は、陽性コントロールであり、レーン6〜10は、癌または腺腫を有しなかった患者からであり、レーン11〜12は、陰性コントロールであり、そしてレーン13〜18は、図においておおよその分子量を示す標準物である。
【図8】図8は、約200bp離れて間隔を空けられた正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用して、糞便から単離されたp53(エキソン8)DNAの増幅の結果を示すゲルの写真である。このバンド強度は、サンプル中の200bp以上の生成物の量に関する。レーン1〜4は、癌または腺腫を患う患者からの結果であり、レーン5は、陽性コントロールであり、レーン6〜10は、癌または腺腫を有しなかった患者からであり、レーン11〜12は、陰性コントロールであり、そしてレーン13〜18は、図においておおよその分子量を示す標準物である。
【図9】図9は、およそ1.8Kb離れて間隔を空けられた正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、糞便サンプルからのDNAの増幅の結果を示すゲルの写真である。このバンド強度は、1.8Kb以上の生成物の量を示す。レーン1、8および9は、陰性コントロールであり、レーン2、3および5は、癌または腺腫を患う患者からの結果であり、レーン4,6および7は、癌または腺腫を有しなかった患者からの結果であり、そしてレーン10〜14は、分子量標準物である。
【図10】図10は、およそ1.8Kb離れて間隔を空けられた正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、糞便サンプルからのDNAの増幅の結果を示すゲルの写真である。このバンド強度は、1.8Kb以上の生成物の量を示す。レーン1、8および9は、陰性コントロールであり、レーン2、3および5は、癌または腺腫を患う患者からの結果であり、レーン4,6および7は、癌または腺腫を有しなかった患者からの結果であり、そしてレーン10〜14は、分子量標準物である。
【図11】図11は、およそ1.8Kb離れて間隔を空けられた正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、糞便サンプルからのDNAの増幅の結果を示すゲルの写真である。このバンド強度は、1.8Kb以上の生成物の量を示す。レーン1、8および9は、陰性コントロールであり、レーン2、3および5は、癌または腺腫を患う患者からの結果であり、レーン4,6および7は、癌または腺腫を有しなかった患者からの結果であり、そしてレーン10〜14は、分子量標準物である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明の方法は、癌または前癌を患う患者に由来する細胞を含むサンプルが、癌/前癌を患わない個体から得られた対応するサンプルと比較して、より多量の高分子量(長い配列)DNAフラグメントを含むという知見に基づく。従って、本発明の方法は、癌または前癌についての正確なスクリーニングおよび診断手順を提供する。
本発明の方法は、任意の組織サンプルまたは体液サンプルにおいて、癌または前癌を示す核酸を検出するために有用である。例えば、痰サンプルは、癌のマーカーとして、高分子量(長い配列)のDNAの存在を検出するために使用される。痰に剥離した細胞の多くは、アポトーシスおよびその後にさらに酵素分解を受けている。これらの細胞に由来する顕著なDNAは、小さなアポトーシスを受けているDNAである。例えば、肺、鼻孔、または気管によって生成される癌細胞もまた、痰中にはがれる。しかし、酵素処理に曝されているこれらの細胞からのDNAは、アポトーシスによって影響されていない。従って、痰に見出される癌細胞または前癌細胞に由来するフラグメントは、正常細胞により生成されることが予期されるフラグメントよりも大きい。
同様に、膀胱または腎臓における癌性または前癌性の病変によりはがれる細胞は、アポトーシスを受けていないDNAを尿中に生成し、リンパ節における癌性または前癌性の病変は、リンパ中にアポトーシスを受けていないDNAフラグメントを生じ、そして乳房における癌性または前癌性の細胞は、吸引によって回収され得るアポトーシスを受けていないDNA含有細胞をはがす。従って、本発明の方法は、任意の組織または体液において有用である。しかし、本明細書中に記載される方法の例示の目的のために、糞便サンプルを使用して、結腸直腸の癌または前癌の存在を推定した。糞便は、上記のような結腸上皮に特有のはがれに起因する分析用の優れた試料である。
【0026】
本発明の方法は、健常な個体(すなわち、癌または前癌を有さない個体)から得られるサンプルにおいて、有意な量にて存在することが予期されない配列の長さを有するDNAフラグメントの存在を検出することによって行われる。閾値量の大きなフラグメントは、非癌性/非前癌性細胞について予期されるか、または決定される所定のレベルを超える量である。所定のレベルまたは標準物は、正常な患者の集団または部分集団において、特定のサイズのDNAフラグメント(好ましくは、正常細胞に特有のアポトーシスを受けているフラグメント)の量を検出することによって決定され得る。標準物は、経験的に決定され得、そして一旦決定されると、さらなるスクリーニングのための基礎として使用され得る。
【0027】
使用されるフラグメントのサイズは、スクリーニングを行う個体の利便性に依存して選択される。本発明のスクリーニング方法または診断方法に使用されるフラグメントのサイズに影響する因子としては、プローブおよびプライマーの入手のし易さおよび費用、増幅の所望の標的、スクリーニングされる癌の型、ならびにスクリーニングを行う患者のサンプルが挙げられる。本発明は、大きなフラグメントが正常なサンプルよりも異常なサンプル中に豊富に存在するという認識を利用する。従って、本発明の方法に使用されるフラグメントの正確なサイズは、重要ではない。分析されるフラグメントの任意の所定のサイズに関して、カットオフ(cutoff)が、正常サンプルと異常サンプルとを区別するために決定されなければならない。好ましくは、このカットオフは、既知の正常サンプルおよび異常サンプルに基づいて経験的に決定され、次いでさらなるスクリーニングに使用される。
【0028】
以下の実施例は、本発明に従う方法のさらなる詳細を提供する。例示の目的のために、以下の実施例は、本発明が結腸癌の検出である場合には、この方法の使用の詳細を提供する。従って、以下の様式にて例示されるが、本発明は、そのように限定されず、そして当業者は、それを考慮してその広範な範囲の適用を理解する。
【0029】
(結腸癌の検出のための例示的方法)
糞便サンプルの分析のために、本発明の好ましい方法は、排泄された糞便の少なくとも横断面または周辺(circumfrential)部分を得る工程(米国特許第5,741,650号、および同時係属の、共有に係る米国特許出願番号09/059,718(これらの両方は、本明細書中で参考として援用される)に教示されるように)を包含する。糞便の横断面部分または周辺部分が望ましいが、本明細書中に提供される方法は、スミアまたは切屑を含む、排泄された糞便から得られたランダムなサンプルに対して実行される。一旦、得られると、この糞便試料をホモジナイズする。ホモジナイゼーションのための好ましい緩衝液は、少なくとも16mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む緩衝液である。しかし、同時係属中の共有に係る米国特許出願第60/122,177号(本明細書中に参考として援用される)に教示されるように、少なくとも150mMのEDTAの使用が、糞便からの核酸の収率を大幅に改善することが考察されている。従って、糞便のホモジナイゼーションのための好ましい緩衝液は、リン酸緩衝化生理食塩水、20〜100mM NaClまたはKCl、少なくとも150mMのEDTA、ならびに必要に応じて界面活性剤(例えば、SDS)およびプロテイナーゼ(例えば、プロテイナーゼK)を含む。
【0030】
ホモジナイゼーション後、核酸は、好ましくは、この糞便サンプルから単離される。核酸の単離または抽出は、本発明の必ずしも全ての方法において必要とはされない。なぜなら、特定の検出技術は、核酸の単離を伴わずに、ホモジナイズされた糞便において十分に実行され得るからである。しかし、好ましい実施形態において、ホモジナイズされた糞便を遠心分離して、核酸、タンパク質、脂質および他の細胞細片を含む上清を作製する。この上清を界面活性剤およびプロテイナーゼで処理してタンパク質を分解し、そして核酸をフェノール−クロロホルム抽出する。次いで、この抽出された核酸を、アルコールで沈殿させる。他の技術を使用して、このサンプルから核酸を単離し得る。このような技術としては、ハイブリッド捕捉、およびこのホモジナイズした糞便からの直接的な増幅が挙げられる。核酸は、使用されるスクリーニングアッセイに必要とされる程度に、精製および/または単離され得る。総DNAは、当該分野で公知の技術を使用して単離される。
【0031】
一旦、DNAを単離すると、そのサンプルは、好ましくは、配列特異的捕捉プローブを使用してヒト核酸について富化される。ペレット化したDNAを、TE緩衝液中に再懸濁する。次いで、グアニジンイソチオシアネート(GITC)を添加する。ヒトDNAを標的化する過剰の捕捉プローブを、このサンプルに添加する。このサンプルを加熱してDNAを変性し、次いで、冷却する。最後に、プローブおよび標的DNAをハイブリダイズさせる。ストレプトアビジン(steptavidin)をコートした磁気ビーズを水に懸濁し、そしてこの混合物に添加する。手短に混合した後、この混合物を、室温で約30分間維持する。一旦、アフィニティー結合が完了すると、このサンプルに磁場を適用し、この磁気単離ビーズ(ハイブリダイズした複合体を有するビーズおよび有さないビーズの両方)を引き付ける。次いで、これらのビーズを、1M GITC/0.1% Igepal(Sigma,St.Louis,MO)溶液中で15分間、4回洗浄し、その後、温めた緩衝液(1M NaClを含むTE)で15分間、2回洗浄して、複合体化ストレプトアビジンを単離する。最後に、滅菌水をこのビーズに添加し、そして加熱してDNAを遊離させる。次いで、この捕捉されたヒトDNAに対して、ゲル電気泳動を行う。
【0032】
(III.フラグメント長の決定)
上記で得られたDNAフラグメントのサイズは、多くの手段で決定され得る。例えば、ヒトDNAを、ゲル電気泳動を使用して分離し得る。5%アクリルアミドゲルを、当該分野で公知の技術を使用して調製する。Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sones,1195、2−23〜2−24頁(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。次いで、ヒトDNAフラグメントのサイズを、公知のスタンダードと比較して決定する。約200bpより大きいフラグメントが、陽性スクリーニングを提供する。診断は、このスクリーニング単独に基づいて成され得るが、陽性スクリーニングを表す患者には、好ましくは、確かな診断を与えるための再試験を受けることを助言する。
【0033】
ヒトDNAフラグメントの長さを決定するための好ましい手段は、PCRを使用することによる。PCRを行うための方法は、周知である。本発明において、ヒトDNAフラグメントを、ヒト特異的プライマーを使用して増幅させる。PCRによって生成された約200bpより大きいアンプリコンが、陽性スクリーニングを表す。他の増幅反応およびPCRの改変(例えば、リガーゼ連鎖反応、逆相PCR、Q−PCRなど)が、検出可能なレベルのアンプリコンを生成するために使用され得る。アンプリコンは、レポーター(例えば、フルオレセイン、放射性同位体など)へのカップリングによって、配列決定によって、ゲル電気泳動によって、質量分析法によって、または当該分野で公知の任意の他の手段(アンプリコンの長さ、質量または他の特性が、そのサイズによって、そのアンプリコンを同定する限り)によって、検出され得る。
【実施例】
【0034】
(実施例)
糞便中の増幅可能なDNAの特徴が、その糞便サンプルを得た患者における癌または前癌を予測するか否かを決定するために、実験を行った。第1の実験において、増幅可能なDNAの量を、サンプル中の少なくとも200塩基対長のDNAフラグメントを検出するようなPCR増幅を使用して、いくつかの糞便サンプルの各々において測定した。第2の実験によって、そのサンプル中の長い(200塩基対より大きい)フラグメントの量を決定し、次いで、短い生成物に対する長い生成物の比を決定した。
【0035】
(I.癌または前癌についてのマーカーとしての増幅可能なDNAの使用)
糞便サンプルを、結腸鏡検査が行われるべきであることを示す症状または病歴を示す、9人の患者から収集した。各糞便サンプルを凍結させた。各糞便サンプルの提供直後に、各患者の疾患状態を決定するために、各患者に対して結腸鏡検査を行った。この結腸鏡検査の結果、およびその後の、結腸鏡検査の間に採取した生検サンプルの病歴分析に基づいて、個体を、以下の2つのグループに分けた:正常または異常。異常グループは、癌または少なくとも1cm直径の腺腫を有する患者からなった。これらの結果に基づいて、9人の患者のうち4人の患者が、異常グループに分類された。
【0036】
ヒトDNAのハイブリッド捕捉、および少なくとも200塩基対を有する増幅可能なDNAの量を決定することによって、これらのサンプルをスクリーニングした。各凍結糞便試料(7〜33グラムの重量)を、500mM Tris、16mM EDTA、および10mM NaCl、pH9.0中で、3:1の容量:質量の比でホモジナイズした。次いで、20:1の最終的な容量:質量の比まで、同じ緩衝液でサンプルを再ホモジナイズし、そして2356×gでガラスマクロビーズ中で遠心分離した。この上清を収集し、SDSおよびプロテイナーゼkで処理した。次いで、このDNAを、フェノール−クロロホルム抽出し、アルコールで沈殿させた。この沈殿物を、10mM Trisおよび1mM EDTA(1×TE)、pH7.4中に懸濁した。最後に、このDNAを、RNaseで処理した。
【0037】
ヒトDNAを、配列特異的ハイブリッド捕捉によって、この沈殿物から単離した。p53遺伝子、K−ras遺伝子およびapc遺伝子の部分に対するビオチン化プローブを使用した。このK−rasプローブは、5’GTGGAGTATTTGATAGTGTATTAACCTTATGTGTGAC3’(配列番号1)であった。apcプローブは、以下の2つであった:apc−1309は、5’TTCCAGCAGTGTCACAGCACCCTAGAACCAAATCCAG3’(配列番号2)であり、そしてapc−1378は、5’CAGATAGCCCTGGACAAACAATGCCACGAAGCAGAAG3’(配列番号3)であった。p53に対するプローブは、以下の4つであった:第1(エキソン5の一部分にハイブリダイズする)は、5’TACTCCCCTGCCCTCAACAAGATGTTTTGCCAACTGG3’(配列番号4)であり、第2(エキソン7の一部分にハイブリダイズする)は、5’ATTTCTTCCATACTACTACCCATCGACCTCTCATC3’(配列番号5)であり、第3(これもまた、エキソン7の一部分にハイブリダイズする)は、5’ATGAGGCCAGTGCGCCTTGGGGAGACCTGTGGCAAGC3’(配列番号6)であり、そして最後(エキソン8に対するプローブ)は、配列5’GAAAGGACAAGGGTGGTTGGGAGTAGATGGAGCCTGG3’(配列番号7)を有する。各プローブ(20pmol/捕捉)の10μlアリコートを、室温で2時間、310μlの6M GITC緩衝液の存在下で、300μlのDNAを含有する懸濁液に添加した。ハイブリッド複合体を、ストレプトアビジンでコートしたビーズ(Dynal)を使用して単離した。洗浄後、プローブ−ビーズ複合体を、0.1×TE緩衝液、pH7.4中に、1時間25℃で懸濁させた。次いで、この懸濁液を、85℃で4分間加熱し、そしてビーズを取り除いた。
【0038】
次いで、捕捉したDNAを、実質的に米国特許第4,683,202号(本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、PCRを使用して増幅させた。各サンプルを、正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用して、7つの遺伝子座(Kras,エキソン1、APC エキソン15(3つの異なる遺伝子座)、p53,エキソン5、p53,エキソン7、およびp53,エキソン8)について、2連(各遺伝子について、全14個の増幅)で増幅させた。200塩基対以上を有するサンプル中のフラグメントを検出するように指向されるプライマーを使用して、7つの別々のPCR(各33サイクル)を、2連で行った。増幅されたDNAを、4% Nusieve(FMC Biochemical)ゲル(3%Nusieve、1%アガロース)上に配置し、そしてエチジウムブロミド(0.5μg/ml)で染色した。得られた増幅DNAを、染色されたゲルの相対強度に基づいて段階付けた。結果を、図2〜8に示す。各図は、全9人の患者の増幅された7つの異なる遺伝子座についての結果(スタンダードを含む)を示す。これらの図に示されるように、癌または腺腫を有する患者由来の各サンプルは、癌または前癌を有さない患者由来のサンプルに関連するバンドよりも、有意に大きい強度を有するバンドとして検出された。結腸鏡検査を使用して同定された全4人の癌/腺腫患者は、200塩基対長より大きい増幅可能なDNAの量を決定することによって、正確に同定された。図2〜8に示されるように、これらの結果は、どの遺伝子座が増幅されるかに関わらず同じであった。従って、サンプル中の200bpより大きいDNAの量は、患者の疾患状態を予測した。
【0039】
(実施例2)
上記実施例1に記載される実験と本質的に同一の実験を行ったが、約1.8kb以上のフラグメントが増幅されるように、正方向プライマーおよび逆方向プライマーを配置した。
【0040】
DNAを上記のように調製した。正方向プライマーおよび逆方向プライマーは、3つの異なる遺伝子座(Kras、エキソン1、APC、エキソン15、およびp53 エキソン5)上で約1.8kb離れてハイブリダイズするように、間隔を開けた。33ラウンドの増幅を行い、そして得られたDNAを、5%アクリルアミドゲル上に配置した。これらの結果を、図9〜11に示す。これらの図(「長い」生成物を増幅および検出するための3つの別々の実験からの結果を示す)に示されるように、癌または前癌を有する個体由来のサンプルは、大量の高分子量(この場合において、1.8kb以上)のDNAを生成したが;癌または前癌を有さなかった患者由来のサンプルは、約1.8kbより高い範囲のDNAを生成しなかった。従って、高分子量DNAの存在は、患者の疾患状態を示す。
【0041】
本発明は、その好ましい実施形態の点で記載されてきた。代替的実施形態は、本明細書および特許請求の範囲の試験に基づいて当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−187701(P2010−187701A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121029(P2010−121029)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【分割の表示】特願2000−611730(P2000−611730)の分割
【原出願日】平成12年4月7日(2000.4.7)
【出願人】(500579888)ジェンザイム・コーポレーション (34)
【Fターム(参考)】