説明

癌抗原及びその利用

【課題】膵癌・大腸癌をはじめとする各種癌や腫瘍の診断・治療に応用することができるヒト膵癌・大腸癌抗原や、それをコードする遺伝子、それを用いた抗癌ワクチン等を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列からなる蛋白からなる癌抗原;上記の蛋白の一部からなり、かつ免疫誘導活性を有するペプチド;該ペプチドを含む抗癌ワクチン;特定の塩基配列又はその相補的配列並びにこれらの配列の一部または全部を含むDNA;該DNAを含む抗癌ワクチン;並びにこれらの利用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵癌又は大腸癌等の各種癌の診断や免疫療法などに有用な新規なヒト癌抗原、及びその利用等に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、死亡原因の第一位となっている癌においては、その発生機序、診断法、治療法が進歩したにもかかわらず、未だに多くの進行癌を治療できないのが現状である。これを改善するためには、新しい早期診断法と治療法の開発が必要とされている。
【0003】
癌の治療法として免疫療法は古くから期待され、様々な試みがなされてきたが、まだ十分な抗腫瘍効果を示すには至っていない。従来、癌の免疫療法は非特異的免疫療法を中心として行われてきたが、近年、T細胞が生体内での腫瘍拒絶に重要な役割を果たすことが明らかになり、細胞傷害性T細胞(CTL:cytotoxic T lymphocyte)を誘導しうるT細胞認識腫瘍抗原の単離とMHCクラスI拘束性エピトープの決定に努力がそそがれている。
【0004】
従来、多くの腫瘍抗原の単離としてCTLを用いたcDNA発現クローニング法で行われてきたが、腫瘍の細胞株化とCTLの樹立が必要であることから、メラノーマ以外の癌腫からの腫瘍抗原の単離は困難である。また、免疫治療法の効果を上げるために、多くのペプチドをミックスした治療法が有効と考えられているが、それを確立するためには、数多くの抗原の単離が必要であり、従来のcDNA発現クローニング法は、1つの抗原の単離に多くの労力と時間を費やすという問題があった。
【0005】
1995年にドイツのPfreundschuhや米国のOldらのグループにより、癌患者血清中の抗体が認識する癌抗原タンパクを検出するSEREX法(serological identification of reconbinant cDNA expression cloning;Proc.Natl. Acad. Sci. USA 92, 11810-11813, 1995)が報告されている。この方法によって多くの腫瘍抗原が単離されているが、本方法を用いて単離された抗原の中にはCTLを誘導するMAGE−1やチロシナーゼなどの抗原がみられることから、細胞性免疫が認識する抗原を検出する方法としても有用であることが指摘されている。また、上記方法を用いて患者IgG抗体が認識する癌抗原を単離した報告もなされている(Int. J. Cancer 72, 965-971, 1997、Cancer Res. 58, 1034-1041, 1998、Int.J. Cancer 29, 652-658, 1998、Int. J. Oncol. 14, 703-708, 1999、Cancer Res. 56, 4766-4772, 1996、Hum. Mol. Genet 6, 33-39, 1997)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Proc.Natl. Acad. Sci. USA 92, 11810-11813, 1995
【非特許文献2】Int. J. Cancer 72, 965-971, 1997
【非特許文献3】Cancer Res. 58, 1034-1041, 1998
【非特許文献4】Int.J. Cancer 29, 652-658, 1998
【非特許文献5】Int. J. Oncol. 14, 703-708, 1999
【非特許文献6】Cancer Res. 56, 4766-4772, 1996
【非特許文献7】Hum. Mol. Genet 6, 33-39, 1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、膵癌・大腸癌をはじめとする各種癌や腫瘍の診断・治療に応用することができるヒト膵癌・大腸癌抗原や、それをコードする遺伝子、それを用いた抗癌ワクチン等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明によれば、下記(A)又は(B)の何れかの蛋白質から成る癌抗原が提供される。
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質。
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、免疫誘導活性を有する蛋白質。
【0009】
本発明の別の側面によれば、上記した本発明の癌抗原を含む、癌に対する免疫誘導剤が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の癌抗原の一部からなり、かつ免疫誘導活性を有するペプチドが提供される。本発明のペプチドは、好ましくは、癌抗原蛋白質を認識する細胞傷害性T細胞を活性化しうるペプチドである。本発明のペプチドは、好ましくは、配列番号3〜22の何れかに記載のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0010】
本発明のさらに別の側面によれば、配列番号3〜22の何れかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、免疫誘導活性を有するペプチドが提供される。上記のペプチドは、好ましくは、癌抗原蛋白質を認識する細胞傷害性T細胞を活性化しうるペプチドである。
本発明のさらに別の側面によれば、上記の何れかのペプチドを含む、癌に対する免疫誘導剤が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記の本発明の癌抗原をコードするDNAが提供される。
【0011】
本発明のさらに別の側面によれば、下記(a)、(b)又は(c)の何れかのDNAが提供される。
(a)配列番号2に記載の塩基配列を有するDNA。
(b)配列番号2に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、免疫誘導活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(c)上記(a)又は(b)のDNAの部分配列を有し、かつ、免疫誘導活性を有する蛋白質をコードするDNA。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、上記の本発明の癌抗原又はペプチドに対する抗体が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記の本発明の癌抗原、又はペプチド、又はそれらの混合物を用いてインビトロ刺激により誘導されたヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記の本発明の癌抗原、又はペプチド、又はそれらの混合物と、免疫賦活剤とを用いてインビトロ刺激により誘導されたヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団が提供される。好ましくは、免疫賦活剤は細胞増殖因子又はサイトカインである。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、上記のヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団を体内に移入することを含む、腫瘍を抑制する方法が提供される。上記方法は、好ましくは、癌を予防及び/又は治療するために行うことができる。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の癌抗原、又はペプチド、又はそれらの混合物を含む、本発明のヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団を作製するための細胞培養液が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、上記の細胞培養液、及び細胞培養容器を含む、本発明のヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団を作製するための細胞培養キットが提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の癌抗原及び/又は少なくとも1種類以上のペプチドを含む癌ワクチンが提供される。上記癌ワクチンは、好ましくは、アジュバンドをさらに含む。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明のDNA、又は該DNAを含む組換えウイルス若しくは組換え細菌を含む、癌ワクチンが提供される。上記癌ワクチンは、好ましくは、アジュバンドをさらに含む。
【0015】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明のDNAを含む、癌診断用プローブが提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の癌診断用プローブ及び/又は抗体を含む、癌診断薬が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の癌抗原、ペプチド、抗体、及び/又はヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団を含む、癌の予防・治療薬が提供される。
本発明において好ましくは、癌は膵癌・大腸癌、脳腫瘍、悪性黒色腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、肺癌、乳癌、胃癌、肝癌、胆嚢癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、膀胱癌又は肉腫である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の癌抗原蛋白、および抗原ペプチド、あるいは本発明の蛋白またはペプチドをコードするDNAは自己傷害性等の副作用が少なく優れた抗癌ワクチンとして使用することが出来る。また、抗体は診断薬として使用することができる。また本発明の抗原により刺激、活性化されたヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団は抗癌剤として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は膵癌におけるhsp105の免疫組織化学的解析結果を示した顕微鏡写真である。A:膵癌と周囲の非癌部のヘマトキシリン・エオジン染色、CA:癌部、NP:非癌部を示す。B:癌細胞にhsp105蛋白の高発現を認める。非癌部にも弱い発現を認める。C:非癌部の強拡大。細胞質に弱いhsp105蛋白の発現を認める。D:癌部の強拡大。癌細胞の主に細胞質にhsp105蛋白の高発現を認める。
【図2】図2は大腸癌におけるhsp105の免疫組織化学的解析結果を示した顕微鏡写真である。A:大腸癌と周囲の非癌部のヘマトキシリン・エオジン染色、CA:癌部、NP:非癌部を示す。B:癌細胞にhsp105蛋白の高発現を認める。非癌部にも弱い発現を認める。C:非癌部の強拡大。細胞質に弱いhsp105蛋白の発現を認める。D:癌部の強拡大。癌細胞の主に細胞質にhsp105蛋白の高発現を認める。核にも弱い発現を認める。
【図3】図3はマウス大腸癌細胞Colon-26に対するhsp105のDNAワクチン、およびhsp105ペプチドワクチン、及び対照品の抗癌効果を示したグラフである。Aは癌部の面積を、Bは癌が生着したマウスの割合、Cは生存マウスの割合を示す。
【図4】図4はhsp105蛋白由来の各種ペプチドワクチンまたはhsp105蛋白をコードするDNAワクチンのColon-26に対する細胞傷害活性を51Crrelease assayにより測定した結果を示すグラフである。
【図5】図5は、組織におけるhsp105の免疫組織化学的解析の結果を示す。
【図6】図6は、hsp105で誘導したマウスのCD4陽性ヘルパーT細胞株のin vivoにおける抗腫瘍活性を解析した結果を示す。
【図7】図7は、大腸癌患者のCD4陽性ヘルパーT細胞株をhsp105で誘導した結果を示す。
【図8】図8は、hsp105由来ペプチドで誘導したBALB/cマウスの細胞傷害性T細胞(CTL)が、hsp105を高発現する大腸癌細胞株Colon26腫瘍塊を縮小させるかどうかを調べた結果を示す。
【図9】図9は、hsp105由来ペプチドで誘導した大腸癌患者の細胞傷害性T細胞(CTL)が、hsp105を高発現する大腸癌細胞株sw620腫瘍塊を縮小させるかどうかを調べた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
(1)本発明の癌抗原、ペプチド及び癌に対する免疫誘導剤
本発明の膵癌・大腸癌から採取された癌抗原は、下記(A)又は(B)の何れかの蛋白質である。
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質(以下「hsp105」とも言う)。
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、免疫誘導活性を有する蛋白質。
【0019】
本明細書で言う免疫誘導活性を有する蛋白質とは、抗体産生、細胞性免疫等の免疫反応を誘導する活性を有する蛋白質を言うが、なかでも、細胞傷害性T細胞(キラーT細胞/CTL)を刺激するT細胞誘導活性を有する蛋白質が特に好ましい。
hsp105はhsp110/105ファミリーに属する高分子量の熱ショック蛋白で、hsp105αと105βからなっている。105αは105kDaの熱ショック蛋白で、様々なストレスで誘導される。105βは105αのmRNAがスプライシングにより産生される105αより分子量の小さい蛋白である。本発明の膵癌・大腸癌抗原であるhsp105は例えば、本明細書の下記実施例のようなSEREX法で検出することができる。
【0020】
本発明において「配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列」における「1若しくは数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
本発明の癌抗原蛋白質の入手・製造方法は特に限定されず、天然由来の蛋白質でも、化学合成した蛋白質でも、遺伝子組み換え技術により作製した組み換え蛋白質の何れでもよい。比較的容易な操作でかつ大量に製造できるという点では、組み換え蛋白質が好ましい。
【0021】
天然由来の蛋白質を入手する場合には、該蛋白質を発現している細胞又は組織から蛋白質の単離・精製方法を適宜組み合わせて単離することができる。化学合成蛋白質を入手する場合には、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って本発明の蛋白質を合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して本発明の蛋白質を合成することもできる。
本発明の癌抗原蛋白質を組み換え蛋白質として産生するには、該蛋白質をコードする塩基配列(例えば、配列番号2に記載の塩基配列)を有するDNA又はその変異体又は相同体を入手し、これを好適な発現系に導入することにより本発明の癌抗原を製造することができる。
【0022】
発現ベクターとしては、好ましくは宿主細胞において自立複製可能であるか、あるいは宿主細胞の染色体中へ組込み可能であるものであればよく、本発明の遺伝子を発現できる位置にプロモーターを含有しているものが使用される。また、本発明の蛋白質をコードする遺伝子を有する形質転換体は、上記の発現ベクターを宿主に導入することにより作製することができる。宿主は、細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞のいずれでもよく、また宿主への発現ベクターの導入は、各宿主に応じた公知の手法により行えばよい。
本発明においては、上記のようにして作製した本発明の遺伝子を有する形質転換体を培養し、培養物中に本発明の蛋白質を生成蓄積させ、該培養物より本発明の蛋白質を採取することにより組み換え蛋白質を単離することができる。
【0023】
本発明の形質転換体が大腸菌等の原核生物、酵母菌等の真核生物である場合、これら微生物を培養する培地は、該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれでもよい。また培養条件も該微生物を培養するのに通常用いられる条件にて行えばよい。培養後、形質転換体の培養物から本発明の蛋白質を単離精製するには、通常の蛋白質の単離、精製法を用いればよい。
なお、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有する蛋白質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNA配列の一例示す配列番号2に記載の塩基配列の情報に基づいて当業者であれば適宜製造又は入手することができる。
【0024】
即ち、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする塩基配列を有する遺伝子(変異遺伝子)は、化学合成、遺伝子工学的手法又は突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法で作製することもできる。具体的には、配列番号2に記載の塩基配列を有するDNAを利用し、これらDNAに変異を導入することにより変異DNAを取得することができる。
例えば、配列番号2に記載の塩基配列を有するDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法等を用いて行うことができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)等に記載の方法に準じて行うことができる。
【0025】
本発明はさらに、上記した本発明の蛋白質の一部からなり、かつ免疫誘導活性を有するペプチドにも関する。本発明のペプチドは、癌抗原蛋白質を認識する細胞傷害性T細胞を活性化しうるものが好ましい。このようなペプチドの具体例としては、下記の何れかのアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
Asn-Tyr-Gly-Ile-Tyr-Lys-Gln-Asp-Leu (配列番号3)
Ala-Phe-Asn-Lys-Gly-Lys-Leu-Lys-Val-Leu (配列番号4)
Lys-Tyr-Lys-Leu-Asp-Ala-Lys-Ser-Lys-Ile (配列番号5)
Gln-Phe-Glu-Glu-Leu-Cys-Ala-Glu-Leu (配列番号6)
Met-Tyr-Ile-Glu-Thr-Glu-Gly-Lys-Met-Ile (配列番号7)
Thr-Phe-Leu-Arg-Arg-Gly-Pro-Phe-Glu-Leu (配列番号8)
Glu-Tyr-Val-Tyr-Glu-Phe-Arg-Asp-Lys-Leu (配列番号9)
His-Tyr-Ala-Lys-Ile-Ala-Ala-Asp-Phe (配列番号10)
Lys-Tyr-Asn-His-Ile-Asp-Glu-Ser-Glu-Met (配列番号11)
Ser-Leu-Asp-Glu-Lys-Pro-Arg-Ile-Val-Val (配列番号12)
Arg-Leu-Tyr-Gln-Glu-Cys-Glu-Lys-Leu (配列番号13)
Lys-Leu-Met-Ser-Ser-Asn-Ser-Thr-Asp-Leu (配列番号14)
Leu-Met-Ser-Ser-Asn-Ser-Thr-Asp-Leu (配列番号15)
Ser-Gln-Phe-Glu-Glu-Leu-Cys-Ala-Glu-Leu (配列番号16)
Lys-Ile-Gly-Arg-Phe-Val-Val-Gln-Asn-Val (配列番号17)
Tyr-Val-Tyr-Glu-Phe-Arg-Asp-Lys-Leu (配列番号18)
Leu-Leu-Thr-Glu-Thr-Glu-Asp-Trp-Leu (配列番号19)
Trp-Leu-Tyr-Glu-Glu-Gly-Glu-Asp-Gln-Ala (配列番号20)
Glu-Leu-Met-Lys-Ile-Gly-Thr-Pro-Val (配列番号21)
Val-Met-Asn-Ala-Gln-Ala-Lys-Lys-Ser-Leu (配列番号22)
【0026】
さらに、上記の配列番号3〜22の何れかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、免疫誘導活性を有するペプチドも本発明の範囲内である。このようなペプチドの好ましい例としては、癌抗原蛋白質を認識する細胞傷害性T細胞を活性化しうるペプチドが挙げられる。
本発明において、「配列番号3〜22の何れかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列」における「1若しくは数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から5個、好ましくは1から4個、より好ましくは1から3個、さらに好ましくは1又は2個、特に好ましくは1個を意味する。
本発明のペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して本発明のペプチドを合成することもできる。
【0027】
上記した本発明の癌抗原蛋白質及びペプチドは、後記実施例にも示す通り、癌に対する免疫を誘導することができる。従って、本発明によれば、本発明の癌抗原蛋白質又はペプチドを含む、癌に対する免疫誘導剤が提供される。
本発明の癌に対する免疫誘導剤は、インビトロ又はインビボ、好ましくはインビトロで用いることにより、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団を誘導することができ、これにより癌に対する免疫を付与することができる。
【0028】
(2)本発明のDNA
本発明のDNAは、上記(1)に記載した本発明の癌抗原蛋白質をコードするDNAであり、好ましくは、下記(a)、(b)又は(c)の何れかのDNAである。
(a)配列番号2に記載の塩基配列を有するDNA。
(b)配列番号2に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、免疫誘導活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(c)上記(a)又は(b)のDNAの部分配列を有し、かつ、免疫誘導活性を有する蛋白質をコードするDNA。
【0029】
上記した「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、DNAをプローブとして使用し、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味し、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNA又は該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSC溶液は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNA等を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、モレキュラークローニング第2版等に記載されている方法に準じて行うことができる。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げられ、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。
【0030】
本発明のDNAの取得方法は特に限定されない。本明細書中の配列表の配列番号1および配列番号2に記載したアミノ酸配列及び塩基配列の情報に基づいて適当なブローブやプライマーを調製し、それらを用いてヒトなどのcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより本発明のDNAを単離することができる。cDNAライブラリーは、本発明のDNAを発現している細胞、器官又は組織から作製することが好ましい。
PCR法により配列番号2に記載した塩基配列を有するDNAを取得することもできる。ヒト染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、配列番号2に記載した塩基配列を増幅できるように設計した1対のプライマーを用いてPCRを行う。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応工程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができる。次いで、増幅されたDNA断片を、大腸菌等の宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。
【0031】
上記したプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された方法に準じて行うことができる。
【0032】
(3)本発明の抗体
本発明は、上記した本発明の蛋白質またはペプチドの一部もしくは全部をエピトープ(抗原)として認識する抗体、並びに該蛋白質又はペプチドを用いてインビトロ刺激により誘導された細胞傷害性(キラー)T細胞(CTL)にも関する。一般的には、CTLのほうが抗体よりも強い抗腫瘍活性を示す。
本発明の抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよく、その作製は定法により行なうことができる。
【0033】
例えば、ポリクローナル抗体は、本発明の蛋白質を抗原として哺乳動物を免疫感作し、該哺乳動物から血液を採取し、採取した血液から抗体を分離・精製することにより得ることができる。例えば、マウス、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ラット、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ等の哺乳動物を免疫することができる。免疫感作の方法は当業者に公知であり、例えば抗原を、例えば7〜30日間隔で2〜3回投与すればよい。投与量は1回につき、例えば抗原約0.05〜2mg程度とすることができる。投与経路も特に限定されず、皮下投与、皮内投与、腹膜腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与等を適宜選択することができる。また、抗原は適当な緩衝液、例えば完全フロイントアジュバント又は水酸化アルミニウム等の通常用いられるアジュバントを含有する適当な緩衝液に溶解して用いることができる。
免疫感作した哺乳動物を一定期間飼育した後、抗体価が上昇してきたら、例えば100μg〜1000μgの抗原を用いて追加免疫を行なうことができる。最後の投与から1〜2ケ月後に免疫感作した哺乳動物から血液を採取して、該血液を、例えば遠心分離、硫酸アンモニウム又はポリエチレングリコールを用いた沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィー等の常法によって分離・精製することにより、ポリクローナル抗血清として、本発明の蛋白質を認識するポリクローナル抗体を得ることができる。
【0034】
一方、モノクローナル抗体はハイブリドーマを調製して得ることができる。例えば、抗体産生細胞とミエローマ細胞株との細胞融合によりハイブリドーマを得ることができる。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、以下のような細胞融合法によって得ることができる。
抗体産生細胞としては、免疫された動物からの脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等を使用する。抗原としては、本発明の蛋白質又はその部分ペプチドを使用する。免疫動物としてはマウス、ラット等を使用でき、これらの動物への抗原の投与は常法により行う。例えば完全フロインドアジュバント、不完全フロインドアジュバントなどのアジュバントと抗原である本発明の蛋白質との懸濁液もしくは乳化液を動物の静脈、皮下、皮内、腹腔内等に数回投与することによって動物を免疫化する。免疫化した動物から抗体産生細胞として例えば脾細胞を取得し、これとミエローマ細胞とを公知の方法(G.Kohler et al .,Nature,256 495(1975))により融合してハイブリドーマを作製することができる。
【0035】
細胞融合に使用するミエローマ細胞株としては、例えばマウスではP3X63Ag8、P3U1株、Sp2/0株などが挙げられる。細胞融合を行なうに際しては、ポリエチレングリコール、センダイウイルスなどの融合促進剤を用い、細胞融合後のハイブリドーマの選択にはヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地を常法に従って使用する。細胞融合により得られるハイブリドーマは限界希釈法等によりクローニングする。さらに必要に応じて、本発明の蛋白質を用いた酵素免疫測定法によりスクリーニングを行うことにより、本発明の蛋白質を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する細胞株を得ることができる。
このようにして得られたハイブリドーマから目的とするモノクローナル抗体を製造するには、通常の細胞培養法や腹水形成法により該ハイブリドーマを培養し、培養上清あるいは腹水から該モノクローナル抗体を精製すればよい。培養上清もしくは腹水からのモノクローナル抗体の精製は、常法により行なうことができる。例えば、硫安分画、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて使用できる。
【0036】
また、上記した抗体の断片も本発明の範囲内である。抗体の断片としては、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント等が挙げられる。
さらに、上記した抗体の標識抗体も本発明の範囲内である。即ち、上記のようにして作製した本発明の抗体は標識して使用することができる。抗体の標識の種類及び標識方法は当業者に公知である。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼなどの酵素標識、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)又はTRITC(テトラメチルローダミンBイソチオシアネート)等の蛍光標識、コロイド金属および着色ラテックスなどの呈色物質による標識、ビオチンなどのアフィニティー標識、あるいは125Iなどの同位体標識などを挙げることができる。本発明の標識抗体を用いた本発明の蛋白質(即ち、癌抗原)の分析又は測定は、酵素抗体法、免疫組織染色法、免疫ブロット法、直接蛍光抗体法又は間接蛍光抗体法等の当業者に周知の方法に従って行うことができる。
【0037】
(4)ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団
本発明はまた、本発明の癌抗原、ペプチド、又はそれらの混合物を用いてインビトロ刺激により誘導されたヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団に関する。例えば、末梢血リンパ球や腫瘍浸潤リンパ球を本発明の蛋白質又はペプチドでインビトロ刺激すると腫瘍反応性活性化T細胞が誘導され、この活性化されたT細胞は養子免疫療法に有効に用いることができる。また本発明の癌抗原又はペプチドを強力な抗原提示細胞である樹状細胞にインビボあるいはインビトロで発現させて、その抗原発現樹状細胞投与により免疫誘導を行うことができる。
好ましくは、本発明の癌抗原、ペプチド又はそれらの混合物と、免疫賦活剤とを用いてインビトロ刺激により、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団を誘導することができる。ここで用いる免疫賦活剤としては細胞増殖因子又はサイトカインなどが挙げられる。
【0038】
上記のようにして得られたヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団を体内に移入することにより、腫瘍を抑制することができ、癌を予防及び/又は治療することが可能である。
また、本発明の癌抗原又はペプチド、又はそれらの混合物を用いることにより、上記した通り腫瘍を抑制することができるヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団を作製することができる。従って、本発明によれば、本発明の癌抗原又はペプチド、又はそれらの混合物を含む細胞培養液が提供される。この細胞培養液を用いることにより、腫瘍を抑制することができるヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団を作製することができる。さらに、本発明によれば、上記の細胞培養液、及び細胞培養容器を含む、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、又はこれらを含む免疫細胞集団を作製するための細胞培養キットも提供される。
【0039】
(5)本発明の癌ワクチン
本発明のDNA、癌抗原及びペプチドは、癌細胞特異的細胞傷害性T細胞を誘導することができるので、癌の治療、予防剤として期待できる。例えば、本発明のDNAを適当なベクターに組み込み、この組換えDNAで形質転換されたBCG菌の細菌、または本発明のDNAをゲノムに組み込まれたワクシニアウイルス等のウイルスは、ヒト癌の治療・予防用生ワクチンとして有効に利用できる。なお、癌ワクチンの投与量及び投与法は通常の種痘やBCGワクチンと同様である。
即ち、本発明のDNA(そのまま、あるいは発現ベクターに組み込んだプラスミドDNAの形)、該DNAを含む組換えウイルス若しくは組換え細菌はそのままあるいはアジュバントに分散した状態で癌ワクチンとしてヒトを含む哺乳動物に投与することができる。本発明のペプチドも同様にアジュバンドと分散した状態で癌ワクチンとして投与することができる。
【0040】
本発明で用いることができるアジュバントとしては、フロイントの不完全アジュバント、BCG、トレハロースダイマイコレート(TDM)、リポ多糖(LPS)、ミョウバンアジュバント、シリカアジュバント等が挙げられるが、抗体の誘導能等の関係から、フロイントの不完全アジュバント(FIA)を使用することが好ましい。
【0041】
(6)本発明の癌診断用プローブ、癌診断薬、癌の予防・治療薬
本発明のDNAは各種ヒト癌のDNAを取り出してその相同性を調べることで診断用プローブとして使用することができる。また、このプローブや前記抗体を使用して癌診断薬として使用することができる。
即ち、本発明は、本発明の蛋白質をコードするDNA又はRNAのアンチセンス鎖の全部又は一部を含む癌診断用プローブに関する。さらに本発明は、上記の癌診断用プローブ又は本発明の蛋白質に対する抗体を含む、癌診断薬に関する。本発明の癌診断用プローブとしては、本発明の蛋白質をコードするDNA(cDNA)又はRNA(cRNA)のアンチセンス鎖の全部又は一部であり、プローブとして成立する程度の長さ(少なくとも20ベース以上)を有するものが好ましい。例えば、上記アンチセンス鎖を用いて検体から得られた本発明の蛋白質(癌抗原)のmRNAを検出することにより、癌の診断が可能となる。検出に用いられる検体としては、被験者の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織等の生検から得ることができるゲノムDNAや、RNA又はcDNAを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。かかる検体を使用する場合、PCR等により増幅したものを用いてもよい。
【0042】
本明細書で言う癌の種類は特に限定されず、具体例としては、膵癌・大腸癌、脳腫瘍、悪性黒色腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、肺癌、乳癌、胃癌、肝癌、胆嚢癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、膀胱癌又は肉腫などが挙げられる。
癌患者の癌細胞に対する免疫応答は予想以上に活発であり、多種多様な蛋白に対してIgG抗体が産生されていることを見出している。本発明の抗原蛋白であるhsp105は後述の実施例に示すように膵癌、大腸癌、乳癌、食道癌、悪性リンパ腫、褐色細胞腫、甲状腺癌、膀胱癌、精上皮腫で特異的に高発現する。
【0043】
本発明の蛋白質又はペプチドは、T細胞エピトープとして癌細胞特異的細胞傷害性T細胞を誘導することができるので、ヒト癌の予防・治療剤として有用である。また、本発明の抗体も、癌抗原である本発明の蛋白質の活性を阻害することができるものであれば、ヒト癌の予防・治療剤として有用である。実際の使用法としては、本発明の蛋白質、ペプチド又は抗体をそのまま、又は医薬的に許容される担体及び/又は希釈剤ととともに、必要に応じて下記の補助剤も加えて、注射剤として投与することもできるし、噴霧などの方法で粘膜からの経皮吸収などで投与してもよい。尚、ここで言う担体とは例えば、ヒト血清アルブミンであり、また希釈剤としては、例えばPBS、蒸留水等を挙げることができる。
投与量は成人1人当たり、本発明の癌抗原、ペプチド又は抗体を例えば、1回当たり0.01mg〜100mgの範囲になるように投与することができるが、この範囲に限定されるものではない。製剤の形態も特に限定されず、凍結乾燥したものや、糖などの賦形剤を加えて顆粒にしたものでもよい。
【0044】
本発明の薬剤に添加することができる細胞傷害性T細胞誘導活性を高めるための補助剤としては、BCG菌などの菌体成分、Nature, vol. 344, p873 (1990)に記載されるISCOM、J.Immunol. vol. 148, p1438(1992)に記載されるサポニン系のQS-21、リポソーム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、レンチナン、シゾフィラン、ピシバーニールなどの免疫賦活剤を補助剤として用いることもできる。また、IL−2、IL−4、IL−12、IL−1、IL−6、TNFなどのT細胞の増殖、分化を増強するサイトカイン等も補助剤として用いることができる。
また、患者から採取した細胞または、同一のHLAパプロタイプを持つ細胞に試験管内で当該抗原ペプチドを加え、抗原提示させた後、患者血管内に投与し、患者体内で効果的に細胞傷害性T細胞を誘導することもできる。また、患者末梢血リンパ球に当該ペプチドを加えて試験管内で培養することにより試験管内で細胞傷害性T細胞を誘導した後に患者血管内に戻すこともできる。このような細胞移入による治療は既に癌治療法として実施されており、当業者間ではよく知られた方法である。
【0045】
特異的抗腫瘍免疫療法の標的抗原となるものは、その抗原が細胞傷害性T細胞(キラーT細胞/CTL)の認識抗原であることが必要である。本発明の抗原は日本人に多いHLA−A24あるいは世界的に多いHLA−A2において、インビトロにおけるキラーT細胞誘導活性を増大させた。このことから本発明の抗原を体内に注入することにより、CTLを誘導活性化し、その結果、抗腫瘍効果が期待できる。また、リンパ球をインビトロで本発明の抗原で刺激すると活性化T細胞が誘導され、この活性化されたT細胞を患部に注入することによる養子免疫療法に有効に用いることができる。
【実施例】
【0046】
実施例
次に本発明の抗原、その製造方法、効果について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるのもではない。
実施例1
《血清の採取》
膵癌患者から血清を採取した。採血後の血清は−80℃で保存した。この血清サンプルから、大腸菌とファージの溶解物とセファロース4Bが充填されたカラムを用いて大腸菌とλファージに対する抗体を除去した後、100〜800倍に希釈し、使用した。
《cDNAライブラリー/蛋白の作製》
Stratagene、La Jolla、CAより膵癌細胞株CFPAC−1のcDNAをλZAPエクスプレスベクターに挿入してあるファージcDNAライブラリーを購入した。この・ファージcDNAライブラリーを大腸菌に感染させた後、NZYプレート培地上で42℃、6時間培養し溶菌斑(プラーク)を作らせた。isopropyl β-D-thiogalactoside(IPTG)を浸透させたニトロセルロースメンブレンでプレートを37℃で3時間覆うことにより、プラーク中でλファージに組み込んだcDNAがコードする蛋白を作らせた。
【0047】
《イムノスクリーニング》
上記方法で産生した蛋白をニトロセルロースメンブレンに転写した。ブロッキング後のニトロセルロースを洗浄し、前記血清と4℃で15時間反応させた。洗浄後2次抗体としてHorseradish Oeroxidase(HRP)標識マウス抗ヒトIgG抗体をメンブレンと反応させた。洗浄した後に、化学発光をX線フイルム上で検出し、写真のプレートと照らし合わせ、陽性プラークを周囲の陰性プラークとともにピックアップした。発色反応陽性部位に一致するプラークを15cmNZYアガロースプレート上から採取し、SM緩衝液(100mMのNaCl、10mMのMgSO4、50mMのTris−HCl、0.01%のゼラチン;pH7.5)に溶解させた。発色反応陽性プラークが単一化するまで上記と同様の方法で2次、3次スクリーニングを繰り返し、血清中のIgG抗体が反応する単一のファージクローンを得た。以上の方法により膵癌細胞株由来のcDNAから63個の陽性クローンを単離した。
【0048】
《単離抗原遺伝子の相同性検索》
PCR法によりインサートDNAを増幅し、以後の解析に用いた。得られたPCR産物をBig Dye DNA シーケンシングキット(PE Biosystems, CA)Aシーケンシングを行い、塩基配列を決定した。上記決定された63種類の遺伝子の塩基配列を、それぞれ相同性検索プログラムBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を用いて、NCBIデータバンクに登録されている遺伝子情報と比較した。
【0049】
《hsp105》
その結果、表1の18個の陽性クローンを認めた。その1個がhsp105であった。
【0050】
【表1】

【0051】
《hsp105発現の確認》
各種癌組織および正常組織における、hsp105蛋白の発現の有無を免疫組織化学的に解析した。その結果、図1および図2に示したようにhsp105は膵癌組織及び大腸癌組織に発現することがわかった。
【0052】
実施例2
《hsp105を構成するペプチド》
日本人の60%が陽性のHLA−A24に結合するモチーフとBALB/cマウスのKdの結合するモチーフはほとんど同じである。HLA−peptide binding prediction(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/)を用いてHLA−A24とKdの両方に結合すると予測されるヒト・マウスhsp105共通のペプチドをhsp105のシークエンスより選び出し、9または10のアミノ酸からなる9種類のペプチドをFmoc/PyBOP法で合成した。ペプチドのシークエンスとKdへの結合予測値を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例3
《DNAワクチン》
マウスhsp105cDNAを発現ベクターpCAGGSに組み込んだプラスミドDNAをそのまま適当な濃度に調整してワクチンとして以下の性能評価試験に使用した。なお、このマウスhsp105−pCAGGSDNAワクチンは大腸菌を培養し、その後大腸菌からプラスミドDNAを取り出し、精製することにより大量に産生したものを用いた。
【0055】
《ペプチドワクチンおよびDNAワクチンの抗癌効果》
BALB/cマウスの筋肉に(1)生理食塩水、(2)ベクターのみ、(3)hsp105cDNAベクター、(4)アジュバントのみ、及び(5)アジュバント+ペプチドを注射し、同系マウス由来のhsp105を高発現する大腸癌細胞株Colon-26を背部皮下に移植して、マウスの癌の発症を(1)癌部の面積、(2)癌が生着したマウスの割合、(3)生存マウスの割合で評価した。結果を図3A、B、Cに示す。
図3A、B、Cに示すように、3x104個のColon26を植えた場合、生食のみあるいは、pCAGGSのみを免疫したマウスには13日目までにそれぞれ5匹全例腫瘍が生着したが、hsp105−DNAエアクチンを免疫した5匹のうち、20日目に1匹、24日目に1匹腫瘍が生着したものの、残りの3匹は腫瘍を完全に拒絶した。アジュバント群は、24日目までに5匹全例腫瘍が生着した。DNAワクチン・ペプチドワクチン・アジュバント群と生食・ベクター群間に有意差を認めた(図3B)。腫瘍面積の平均においても同様の結果であった(図3A)。
【0056】
これらの結果からペプチドワクチンおよびDNAワクチンの抗癌剤としての効果は明らかである。全体の生存曲線でみると、生食・ベクター・アジュバント群は45日目でも5匹中2匹が生存しており、DNAワクチン群に至っては、5匹全例とも生存していた。DNAワクチン群は他の4群全てとの間に有意差を認めた。ペプチドワクチン群は生食・ベクター・アジュバント群との間に有意差をもって生存期間の延長を認めた(図3C)。更に、腫瘍を拒絶したマウスを病理学的に観察し、正常臓器への傷害がおこっていないことと、腫瘍を拒絶した局所に炎症細胞が多数浸潤していることを確認した。
【0057】
《hsp105のCTLエピトープペプチドの決定》
CTLエピトープペプチドを同定するため、DNAワクチン−ペプチドワクチンが有効であったマウスより膵臓細胞を回収し、表2に示す9種類のペプチドで1回刺激し、51Crrelease assayによってColon-26に対する細胞傷害活性を検討した。その結果、上記9種のペプチドの中では、下記5種類のペプチド1、2、3.4、6が有用であることを認めた(図4)。
Asn-Tyr-Gly-Ile-Tyr-Lys-Gln-Asp-Leu … (1)
Ala-Phe-Asn-Lys-Gly-Lys-Leu-Lys-Val-Leu … (2)
Lys-Tyr-Lys-Leu-Asp-Ala-Lys-Ser-Lys-Ile … (3)
Gln-Phe-Glu-Glu-Leu-Cys-Ala-Glu-Leu … (4)
Met-Tyr-Ile-Glu-Thr-Glu-Gly-Lys-Met-Ile … (5)
【0058】
《癌診断薬》
hsp105の抗体を用いて、膵癌・大腸癌、脳腫瘍、悪性黒色腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、肺癌、乳癌、胃癌、肝癌、胆嚢癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、膀胱癌又は肉腫等の癌の病理診断をすることができる。
【0059】
《CTL癌治療薬》
マウスにおいてhsp105および/又はhsp105を構成するペプチドを抗原として認識するキラーT細胞は正常細胞を傷付けず、マウス大腸癌にのみ細胞傷害活性を有することがわかった。hsp105は高発現するヒト膵癌・大腸癌における、副作用の少ない癌治療薬あるいは予防薬として使用することが出来る可能性がある。
【0060】
実施例4:hsp105のヒトにおけるHLA-A24のCTLエピトープペプチドの同定
hsp105のヒトにおけるHLA-A24のCTLエピトープペプチドを決定するため、HLA-A24の2人の大腸癌患者さんの末梢血リンパ球を表3に示す9種類のペプチドで4回刺激し、51Cr release assayによって、hsp105を高発現し、かつHLA-A24を発現するヒト大腸癌細胞株sw620に対する細胞傷害活性を検討した。
具体的には、末梢血より単核球を分離し、24穴プレート1ウェルあたり200万個の単核球を、自己の血清を10%含み、IL-2 (100IU/ml)さらには各ペプチド10μMを含む培養液2ml中で1週間培養し、1週間毎に、毎回1週間かけて誘導した樹状細胞 (Dendritic cell; DC) 20万個に該ペプチドを10μMでパルスして放射線照射したものを用いて刺激することをさらに3回繰り返し、その6日後に細胞傷害活性を検討した。なお、DCとして、200万個の単核球を、GM-CSF (100ng/ml)、IL-4 (100U/ml) 存在下で5日間培養し、さらにTNF-α (20ng/ml)を加え2日間培養したものを用いた。
【0061】
また、C1RA2402細胞に該ペプチドをのせたものをのせないものより傷害するものを、ペプチド特異性陽性と判定した。結果を表3に示す。表3の太字の数字が、ペプチド特異的かつ癌細胞傷害性のCTLが誘導できていることを示す。
【0062】
【表3】

【0063】
実施例5:hsp105のヒトにおけるHLA-A2のCTLエピトープペプチドの同定
hsp105のヒトにおけるHLA-A2のCTLエピトープペプチドを決定するため、HLA-A2の1人の大腸癌患者さんと1人の健常人の末梢血リンパ球を表4に示す30種類のペプチドで4回刺激し、51Cr release assayによって、hsp105を高発現し、かつHLA-A2を発現するヒト大腸癌細胞株sw620に対する細胞傷害活性を検討した。具体的実験方法は、実施例4と同様に行った。
また、sw620細胞のhsp105の発現をRNAiを用いて落としたものをsw620 hsp105-RNAi 細胞とし、これを傷害しないことで、hsp105に特異的な細胞傷害活性であることを判定した。さらに、sw620 hsp105-RNAi 細胞に該ペプチドをのせたものをのせないものより傷害するものを、ペプチド特異性陽性と判定した。結果を表4に示す。表4の太字の数字が、ペプチド特異的かつ癌細胞傷害性のCTLが誘導できていることを示す。
【0064】
【表4】

【0065】
実施例6:組織におけるhsp105の免疫組織化学的解析結果
様々な組織におけるhsp105の発現を免疫組織化学的に解析した。具体的には、様々な組織のホルマリン固定、パラフィン包埋ブロックを用いて3mmの薄切切片を作成し、VECTOR stain ABC-PO (rabbit IgG) kit (Vector Laboratories, Inc. Burlingame, CA) を用いて、ABC法 (avidin-biotin complex immuneoperoxidase technique) で免疫組織化学的解析を行った。一次抗体には、rabbit polyclonal anti-human HSP105 Ab (SANTACRUZ, Santa Cruz, CA) を購入して200倍に希釈して用いた。
【0066】
結果を示した顕微鏡写真を図5に示す。図5においては、A:大腸癌、B:大腸腺腫の中の大腸癌、C:大腸癌の肝転移、D:膵癌、E:膵島細胞腫、F:乳癌の乳頭腺管癌、G:乳癌の硬癌、H:食道癌、I:甲状腺癌、J:胃悪性リンパ腫、K:褐色細胞腫、L:膀胱癌、M:精巣、及びN:精上皮腫を示す。図5の結果から分かるように、A, B, C, D, E, F, H, I, J, K, L, M, N、すなわちG以外の腫瘍ならびに精巣でhsp105の高発現が認められた。
【0067】
実施例7:hsp105で誘導したマウスのCD4陽性ヘルパーT細胞株のin vivoにおける抗腫瘍活性
BALB/cマウスの脾臓を採取し、すりつぶして脾細胞を分離し、96穴平底プレート1ウェルあたり20万個の脾細胞を、IL-2 (100IU/ml)さらにはリコンビナントhsp105蛋白2μg/mlを含む培養液200μl中で1週間培養し、1週間毎に、毎回脾細胞 20万個にリコンビナントhsp105蛋白を2μg/mlでパルスして放射線照射したものを用いて刺激することをさらに何回も繰り返し、複数のCD4陽性ヘルパーT細胞株(Th)を樹立した。細胞表面のCD4、CD8の発現の確認は、Monoclonal Antibody MOUSE CD4-FITC, CD8-FITC (IMMUNOTECH, Marseille, France) を用いて免疫蛍光染色を行い、FACSにて解析した(図6のA)。Thがhsp105蛋白に特異的に反応して増殖するかどうかを[3H]thymidineの取り込みで調べた。具体的には、96穴平底プレート1ウェルあたり15万個の脾細胞を入れ、hsp105蛋白を一晩パルスしたものとしないものを用意し、それぞれに対し、3万個のThを入れ、72時間反応させた(最後の16時間に1ウェルあたり1μCiの[3H]thymidineを入れた)。そして、[3H]thymidineの取り込みを液体シンチレーションカウンターで測定した。そのThはhsp105蛋白に特異的に反応して増殖した(図6のB)。また、この際、Thを入れて24時間後の上清をとっておき、Mouse IFN-γ, IL-4 ELISA Ready-SET-Go!(eBioscience) を用いて、Thが反応して分泌したIFN-γと IL-4を測定した。そのThはhsp105蛋白に特異的に反応してIFN-γを大量に産生するTh1タイプであった。(図6のC)。BALB/cマウスの背部皮下にColon 26を移植し、3mm大の腫瘍を形成した後に、そのThを局注して経過を観察した結果、治療後は、明らかにColon 26腫瘍塊の増殖を遅らせた(図6のD)。
【0068】
以上の結果から、hsp105蛋白で誘導したBALB/cマウスのCD4陽性ヘルパーT細胞株は、hsp105蛋白特異的に増殖し、hsp105を高発現する大腸癌細胞株Colon26腫瘍塊の増殖を遅らせることが示された。
【0069】
実施例8:hsp105で誘導した大腸癌患者のCD4陽性ヘルパーT細胞株
末梢血より単核球を分離し、96穴平底プレート1ウェルあたり20万個の単核球を、IL-2 (100IU/ml)さらにはリコンビナントhsp105蛋白2μg/mlを含む培養液200μl中で1週間培養し、1週間毎に、毎回単核球20万個にリコンビナントhsp105蛋白を2μg/mlでパルスして放射線照射したものを用いて刺激することをさらに何回も繰り返し、複数のCD4陽性ヘルパーT細胞株(Th)を樹立した。細胞表面のCD4、CD8の発現の確認は、ファーミンジェン抗ヒトCD4, CD8-FITC を用いて免疫蛍光染色を行い、FACSにて解析した。Thがhsp105蛋白に特異的に反応して増殖するかどうかは実施例7と同様に行った。そのThはhsp105蛋白に特異的に反応して増殖した。(図7のA)。また、実施例7と同様に、Human IFN-γ, IL-4 US ELISA Kit (BIOSOURCE, Camarillo, CA) を用いて、Thが反応して分泌したIFN-γと IL-4を測定した。そのThはhsp105蛋白に特異的に反応してIFN-γを大量に産生するTh1タイプであった。(図7のB)。一般的に、Th1はCTLの誘導および抗腫瘍免疫に有利な方に働くことが知られており、ヒトにおいても、末梢血リンパ球をhsp105蛋白で刺激することで、このようなTh1が誘導できることが示された。
【0070】
実施例9:hsp105ペプチドで刺激した細胞傷害性T細胞のin vivoにおける抗腫瘍活性
hsp105由来ペプチド Asn-Tyr-Gly-Ile-Tyr-Lys-Gln-Asp-Leu (配列番号3)で誘導したBALB/cマウスの細胞傷害性T細胞(CTL)が、hsp105を高発現する大腸癌細胞株Colon26腫瘍塊を縮小させるかどうかを調べた。具体的には、BALB/cマウスの背部皮下にColon26を移植し、5mm大の腫瘍を形成した後、CTLを局注して1週間後に解剖して、HE染色により病理学的に観察した。結果を図8に示す。図8の結果から分かるように、hsp105由来ペプチドで誘導したCTLの投与により、腫瘍は明らかに縮小した。
【0071】
さらに、hsp105由来ペプチド Lys-Leu-Met-Ser-Ser-Asn-Ser-Thr-Asp-Leu (配列番号14)で誘導した大腸癌患者の細胞傷害性T細胞(CTL)が、hsp105を高発現する大腸癌細胞株sw620腫瘍塊を縮小させるかどうかを調べた。具体的には、ヌードマウスの背部皮下にsw620を移植し、5mm大の腫瘍を形成した後、CTLを局注した。
CTLの局注から1週間後には、腫瘍は縮小した。治療して2週間後に解剖して、HE染色により病理学的に観察した。結果を図9に示す。図9の結果から分かるように、CTLの投与により、腫瘍の増大を明らかに遅らせることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号9、25、14、4〜8、10〜13、15〜24、26〜29の何れかに記載のアミノ酸配列からなり、免疫誘導活性を有するペプチド。
【請求項2】
配列番号9、25、14、4〜8、10〜13、15〜24、26〜29の何れかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、免疫誘導活性を有するペプチド。
【請求項3】
癌抗原蛋白質を認識する細胞傷害性T細胞を活性化しうる、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のペプチドを含む、癌に対する免疫誘導剤。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載のペプチドに対する抗体。
【請求項6】
請求項1から3の何れかに記載のペプチド、又はそれらの混合物を用いてインビトロ刺激により誘導されたヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、インビトロでパルスされた抗原提示細胞、インビトロでパルスされた樹状細胞又はこれらを含む免疫細胞集団。
【請求項7】
請求項1から3の何れかに記載のペプチド、又はそれらの混合物と、免疫賦活剤とを用いてインビトロ刺激により誘導されたヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、抗原提示細胞、樹状細胞又はこれらを含む免疫細胞集団。
【請求項8】
免疫賦活剤が細胞増殖因子又はサイトカインである、請求項7に記載のヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、抗原提示細胞、樹状細胞又はこれらを含む免疫細胞集団。
【請求項9】
請求項1から3の何れかに記載のペプチド、又はそれらの混合物を含む、請求項6から8の何れかに記載のヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、抗原提示細胞、樹状細胞又はこれらを含む免疫細胞集団を作製するための細胞培養液。
【請求項10】
請求項9に記載の細胞培養液、及び細胞培養容器を含む、請求項6から8の何れかに記載のヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、抗原提示細胞、樹状細胞又はこれらを含む免疫細胞集団を作製するための細胞培養キット。
【請求項11】
請求項1から3の何れかに記載の少なくとも1種類以上のペプチドを含む癌ワクチン。
【請求項12】
アジュバンドをさらに含む請求項11に記載の癌ワクチン。
【請求項13】
請求項5に記載の抗体を含む、癌診断薬。
【請求項14】
請求項1から3の何れかに記載のペプチド、請求項5に記載の抗体、及び/又は請求項6から8の何れかに記載のヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、抗原提示細胞、樹状細胞又はこれらを含む免疫細胞集団を含む、癌の予防・治療薬。
【請求項15】
癌が膵癌・大腸癌、脳腫瘍、悪性黒色腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、肺癌、乳癌、胃癌、肝癌、胆嚢癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、膀胱癌又は肉腫である、請求項13又は14に記載の薬剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−159257(P2010−159257A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9018(P2010−9018)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【分割の表示】特願2004−532775(P2004−532775)の分割
【原出願日】平成15年8月29日(2003.8.29)
【出願人】(801000050)財団法人くまもとテクノ産業財団 (38)
【Fターム(参考)】