説明

癌標的化のための操作された抗前立腺幹細胞抗原(PSCA)抗体

前立腺癌は、男性における癌死の2番目に多い原因である。本発明は、特に前立腺癌、膀胱癌、および膵臓癌の診断、予後の提供、癌のイメージングのために、これらの癌を含む様々な癌に過剰発現するタンパク質である前立腺細胞表面抗原(PSCA)に特異的に結合する、新規ヒト化抗体断片を提供する。さらに、細胞表面PSCAを過剰発現する、癌の治療のため、癌の診断のため、癌の進行の予後を提供するため、および癌のイメージングのために、本発明の組成物を使用するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
関連する出願への相互参照
本出願は、2006年3月20日に出願され、全ての目的において、その全体が本明細書中で参考として援用される米国仮特許出願第60/784,192号に対する優先権を主張する。
【0002】
連邦政府により後援された研究および開発でなされた発明に対する権利としての申し立て
本発明は、NIH/NCIにより授与された補助金第PO1 CA43904号および第P50 CA92131号のもと、政府の後援でなされた。
【0003】
コンパクトディスク上で提出される「配列リスト」の表、またはコンピュータープログラムリストの付録に関して
適用はない
前立腺癌は、男性における癌死の2番目に多い原因であり、アメリカ人男性において今年約27,000例の死亡例および234,000例の新規症例が予測される。前立腺癌は、精液の産生および貯蔵を司る男性生殖器系において見出される、およそクルミ大の腺である前立腺に生じる。前立腺は、多くの小さい腺を含み、それが精液を含む液体の約20%を産生する。前立腺癌において、これら前立腺の細胞が癌細胞に形質転換する。前立腺は尿道の一部を囲むので、前立腺疾患は多くの場合、排尿、射精、または排便に影響を与える。
【0004】
正常な精液分泌前立腺細胞が、癌細胞への形質転換をした場合に前立腺癌が発生するので、前立腺癌は腺癌または腺性の癌と分類される。腺癌が最も多い前立腺の領域は、末梢部分である。最初に、癌細胞の小さい塊が、それ以外は正常な前立腺に閉じ込められたままであり、上皮内癌または前立腺上皮内腫瘍(PIN)として知られる状態を引き起こす。時間につれて、これらの癌細胞は増殖および周囲の前立腺組織(間質)に広がり始め、腫瘍を形成する。最後には、腫瘍は精嚢または直腸のような、付近の臓器を侵すほど十分大きく成長し得る、または腫瘍細胞は血流およびリンパ系を移動する能力を発達させ得る。前立腺癌は、骨、リンパ節、直腸および膀胱に最もよく転移する。
【0005】
前立腺癌のスクリーニングは、一般的に直腸診または前立腺特異的抗原(PSA)テストのいずれかを含む。直腸診の間、医療提供者は、前立腺癌を示し得る、不規則な、固い、または塊のある領域に関して前立腺の大きさ、形および感触をチェックする。PSAテストは、前立腺によって産生される酵素である、前立腺特異的抗原の血液レベルを測定する。4ng/mLより低いPSAレベルは、一般的に正常と考えられる;4および10ng/mLの間のPSAレベルは、正常より高い前立腺癌のリスクを示すが、この6点の範囲内でそのリスクは増大しないようである。PSAレベルが10ng/mLより高い場合、癌との関連は強くなる。
【0006】
血清PSAアッセイの測定は、非常に有用な診断ツールであることが証明されたが、PSAテストの有用性は限界を有する。例えば、PSAテストは、初期の疾患を信頼度高く同定することができない。同様に、典型的には致死性の、疾患の転移段階の出現を予測するために利用可能なマーカーは存在しない。転移性前立腺癌の診断は、開放手術または腹腔鏡下骨盤リンパ節切除術、全身放射性核種スキャン、骨格X線検査、および/または骨病変生検分析によって達成される。明らかに、より良いイメージングおよび他のより侵襲的でない診断方法は、それらの処置が患者に与える困難を軽減する、および治療オプションを改善する見込みがある。よって、前立腺癌の治療、診断、予後、および管理において補助するために、初期の疾患を信頼性高く同定し得る、転移の発生率を予測し得る、および腫瘍を正確にイメージングし得る試薬の必要性が存在する。本発明は、これらおよび他の必要性を満たす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、特に前立腺、膀胱、および膵臓癌の、癌の診断において使用するために、癌の進行の予後を提供するために、および癌のイメージングのために、前立腺細胞表面抗原(PSCA)に特異的に結合する、新規ヒト化抗体断片を提供する。
【0008】
最初の実施態様において、本発明は、癌細胞の表面のPSCAに特異的に結合する、ヒト化抗体断片を提供する。本発明の抗体断片の例は、scFv、scFvダイマー(二重特異性抗体)、sc−Fv−CH3ダイマー(ミニボディ)、およびscFv−Fcを含み、ここでその抗体断片は、図1に示すような、可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)領域の配列を含む。この実施態様の局面において、scFvダイマーは、リンカーによって連結した2つのscFvモノマーを含み得る。適当なリンカーは、ペプチド配列を含み、そのうち、配列[(GGGS)]は、都合のよい例である。この実施態様の他の局面において、その抗体断片は、K=2.0nMまたはそれより低い、またはK=5.5nMまたはそれより低い親和性を有する。本発明の実施に都合のよい抗体断片は、scFvダイマー(二重特異性抗体)およびsc−Fv−CH3ダイマー(ミニボディ)を含む。
【0009】
2つめの実施態様において、本発明は、(a)患者に、癌細胞表面のPSCAに特異的に結合するヒト化抗体断片を投与すること、ここでその抗体断片は、scFv、scFvダイマー(二重特異性抗体)、sc−Fv−CH3ダイマー(ミニボディ)、またはscFv−Fcを含む、および(b)分子インビボイメージングを用いて、患者においてPSCAタンパク質が過剰発現しているかどうかを決定し、従って細胞表面PSCAを過剰発現する癌を診断することによって、細胞表面PSCAを過剰発現する癌を診断する方法を提供する。有利な局面において、その抗体断片は、図1に示すような、可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)領域の配列を含む。
【0010】
3番目の実施態様において、本発明は、(a)患者に、癌細胞表面のPSCAに特異的に結合するヒト化抗体断片を投与すること、ここでその抗体断片は、scFv、scFvダイマー(二重特異性抗体)、sc−Fv−CH3ダイマー(ミニボディ)、またはscFv−Fcを含む、および(b)分子インビボイメージングを用いて、患者においてPSCAタンパク質が過剰発現しているかどうかを決定し、従って細胞表面PSCAを過剰発現する癌の予後を提供することによって、細胞表面PSCAを過剰発現する癌の予後を提供する方法を提供する。有利な局面において、その抗体断片は、図1に示すような、可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)領域の配列を含む。
【0011】
2番目および3番目の実施態様の局面において、細胞表面PSCAを過剰発現する癌は、前立腺癌、膀胱癌、および膵臓癌を含む。2番目および3番目の実施態様のさらなる局面において、そのヒト化抗体断片は、検出可能な部分に連結している。検出可能な部分の例は、放射性核種、ナノ粒子、蛍光色素、蛍光マーカー、および酵素を含む。放射性核種である検出可能な部分の例は、64Cu、99mTc、111In、123I、124Iまたは131Iを含む。2番目および3番目の実施態様の実施において使用し得る分子インビボイメージング方法には、MRI、SPECT、PET、および平面ガンマカメライメージングがある。
【0012】
本発明の4番目の実施態様は、(a)生物学的サンプルを、癌細胞表面のPSCAに特異的に結合するヒト化抗体断片と接触させること、ここでその抗体断片は、scFv、scFvダイマー(二重特異性抗体)、sc−Fv−CH3ダイマー(ミニボディ)、およびscFv−Fcであり得る、そしてその抗体断片は、図1に示すような、可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)領域の配列を含む;および(b)その生物学的サンプルにPSCAタンパク質が過剰発現しているかどうかを決定し、従って細胞表面PSCAを過剰発現する癌の診断または予後を提供することによって、細胞表面PSCAを過剰発現する癌の診断または予後を提供する方法を提供する。
【0013】
4番目の実施態様の局面において、細胞表面PSCAを過剰発現する癌は、前立腺癌、膀胱癌、および膵臓癌を含む。さらなる局面において、その生物学的サンプルは、組織生検または体液サンプルであり、そのうち、血液、尿、または前立腺液が例である。この実施態様のいくつかの局面において、そのヒト化抗体断片は、放射性核種、ナノ粒子、蛍光色素、蛍光マーカー、および酵素のような、検出可能な部分に連結している。
【0014】
本発明の5番目の実施態様は、(a)治療的に有効な量の、癌細胞表面のPSCAに特異的に結合するヒト化抗体断片を患者に投与すること、ここでその抗体断片は、scFv、scFvダイマー(二重特異性抗体)、sc−Fv−CH3ダイマー(ミニボディ)、およびscFv−Fcであり得る、そしてその抗体断片は、図1に示すような、可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)領域の配列を含む、従って患者において細胞表面PSCAを過剰発現する癌を治療または予防することによって、患者において細胞表面PSCAを過剰発現する癌を治療または予防する方法を提供する。この実施態様のいくつかの局面において、細胞表面PSCAを過剰発現する癌は、前立腺癌、膀胱癌、および膵臓癌を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(詳細な説明)
本発明は、遺伝子操作したPSCA特異的ヒト化抗体断片、例えばscFvダイマー(二重特異性抗体)、scFv−CH3ダイマー(ミニボディ)、およびscFv−Fcを提供し、それらは前立腺、膀胱、および膵臓癌細胞のような、細胞表面PSCAを過剰発現する癌細胞の診断、予後、および治療において使用するための、以前に公知のPSCAに対する未処理の抗体の使用に関連する欠点を克服する、インビボにおける薬物動態学的および標的化可能性を有する。
【0016】
I.序文
PSCAは、前立腺細胞、尿路上皮、腎臓集合管、直腸神経内分泌細胞、胎盤、正常な膀胱および尿道の移行上皮細胞のような、正常な細胞に発現する、新規のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)−アンカー細胞表面抗原である。PSCA遺伝子は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)−アンカー細胞表面抗原のThy−1/Ly−6ファミリーのメンバーである、幹細胞抗原−2(SCA−2)と30%の相同性を示し、そしてアミノ末端のシグナル配列、カルボキシル末端のGPI−アンカー配列、および複数のN−グリコシル化部位を有する123アミノ酸のタンパク質をコードする。
【0017】
正常細胞におけるその発現パターンに加えて、PSCAは、アンドロゲン依存性およびアンドロゲン非依存性両方の前立腺癌細胞、骨への前立腺癌の転移、膀胱癌腫、および膵臓癌腫によって過剰発現されている。PSCAは、高いグレードの前立腺上皮内腫瘍(PIN)を含む、全てのステージの前立腺癌において広く過剰発現している。インサイツのmRNA分析は、PSCAの発現を、基底細胞上皮、前立腺の推定幹細胞区画に局在化する。フローサイトメトリー分析は、PSCAは主に細胞表面に発現し、そしてGPI結合によって固定されていることを示す。蛍光インサイツハイブリダイゼーション分析は、PSCA遺伝子を、染色体8q24.2、80%以上の前立腺癌における対立遺伝子獲得の領域に局在化する。
【0018】
癌、例えば前立腺癌および膀胱癌において観察されるPSCAの発現は、グレードの増加と関連しているようである。さらに、癌、例えば前立腺癌に罹患した患者におけるPSCAの過剰発現(すなわち、正常細胞において見出されるよりも高い発現)は、悪い予後を示すようである。例えば、PSCAは、良性前立腺肥大症(BPH)との関連において、前立腺癌において非常に高いレベルで発現する。対照的に、前立腺癌マーカーPSAは、正常前立腺およびBPHの両方において高いレベルで発現するが、前立腺癌においてより低いレベルで発現し、悪性の前立腺癌をBPHまたは正常な腺と区別するためにPSA発現を無用にする。PSCA発現は本質的にPSA発現の逆であるので、PSCA発現の分析を、前立腺癌を非悪性状態と区別するために採用し得る。
【0019】
よって、前立腺および他の癌におけるPSCAの発現パターンによって、それは様々な診断および治療戦略のために魅力的な分子となる。PSCAに対するいくつかの未処理の抗体を、前立腺癌の診断および治療のために試験した。しかし、前立腺癌の診断または治療のための、未処理の抗PSCA抗体の有用性は、未処理の抗体のような大きなサイズの分子の腫瘍部位に到達する能力が限られているために、制限され得る。結果として、前立腺癌の診断または治療のために未処理の抗PSCA抗体を使用する現在のアプローチは、抗体伝達の効率によって制限され得る。
【0020】
さらに、従来の未処理の治療的モノクローナル抗体は、分解を防ぐために凍結温度付近で保存しなければならない。さらに、未処理の抗体は、腸において迅速に消化されるので、経口投与に適さない。そのため、多くの患者は未処理の抗体を、診療所における注射または注入のより簡便でない手段によって投与される。上記で暗示したように、たとえそのような分布が望ましいとしても、そのような大きな試薬は、固体腫瘍の表面を越えて浸透する、または血液脳関門を通過するのが困難であり得るので、未処理の抗体の体内分布は制限され得る。
【0021】
未処理のPSCA抗体を使用することに伴う伝達および安定性の問題を克服するために、我々は一連の遺伝子操作したPSCA特異的ヒト化抗体断片(二重特異性抗体(scFvダイマー、50kDa)、ミニボディ(scFv−CH3ダイマー、80kDa)、およびscFv−Fc、110kDa)を開発し、それらは好ましいインビボ薬物動態学的特徴および標的化可能性を示す。
【0022】
開始点として、我々は正常ヒト前立腺および膀胱に発現する細胞表面糖タンパク質であるPSCAに特異的なマウスモノクローナル抗体、1G8から始めた。PSCAは前立腺癌において過剰発現している(40%の原発性腫瘍および60−100%のリンパ節および骨髄転移)。それはまた膀胱の移行上皮癌および膵臓癌腫にも高度に発現している。マウス1G8抗PSCA抗体は、インビトロおよびインビボにおいて、実質的な抗腫瘍活性を示す。この抗体を臨床使用のために開発するために、1G8をCDRグラフティングおよび続く最適化のためのCDRの分子修飾によってヒト化し、2B3抗体を生じた。その配列を図1に示す。
【0023】
我々は最初、ヒト化過程が、できた抗体のPSCAへの結合親和性を4倍減少させることを見出した。タンパク質モデリングによって、結合親和性の潜在的な増加に関して試験するために、6つのフレームワーク変異が特異的に選択された。この仕事の結果として、親の、そして親和性が発達した、両方とも8アミノ酸のリンカーペプチド[(GGGS)]を有する、2つの別々の二重特異性抗体が産生された。見かけの親和性が、Biacoreによって、それぞれK=5.41nMおよび1.89nMと決定された。サイズ排除クロマトグラフィーは、均一なダイマーが、親の二重特異性抗体には好都合であるが、親和性が発達したものにはそうでないことを明らかにした。それに加えて、均一なダイマー調製物を得るために、異なるリンカーの長さ(5対8アミノ酸)および保存条件を調査した。インビトロにおけるPSCA結合を、PSCA陽性前立腺癌細胞系統を用いた免疫蛍光によって示した。二重特異性抗体を放射ヨウ素標識して、親および親和性が発達した二重特異性抗体に関して、それぞれ17%および22%の免疫反応性を保持した。124I標識二重特異性抗体を用いたマイクロPET研究は、LAPC−9異種移植SCIDマウスにおけるPSCA陽性腫瘍への有効な局在化を示した。124I標識二重特異性抗体による体内分布研究は、1.22%ID/gの腫瘍取り込みを示した。そのようなタンパク質工学方法によって、我々は、2B3二重特異性抗体の結合親和性およびコンフォメーションのようなパラメーターを最適化した。
【0024】
ポジトロンエミッター124I(t1/2=4.2d)による組み換え断片の放射ヨウ素標識、およびマイクロPETスキャニングによる評価によるインビボイメージングの最適なフォーマットを決定するために、さらなる研究を行った。中間サイズのミニボディは、PSCA発現LAPC−9異種移植片(n=12)において、注射の21時間後に、1gあたり注射した投与量の5.2(±1.6)%(%ID/g)の高い腫瘍取り込みを示した;血液および正常組織からの迅速なクリアランスは、高いコントラストのマイクロPET画像を生じた(図12)。コントロール腫瘍(PC−3)に対する陽性腫瘍の取り込み比は2.0であり、腫瘍対死体比は4.3であった。より小さい断片(抗−PSCA二重特異性抗体)は、循環から迅速に一掃され、そしてLAPC−9異種移植片において、21時間(n=4)で0.9(±0.3)%ID/gに達したのみであった(図11)。迅速なクリアランスのために操作された、より大きなscFv−Fc断片は、PC−3(1.7±0.2%ID/g)と比較して、LAPC−9異種移植片において3.1(±0.4)%ID/gを達成した(n=4)(図13)。よって、本明細書中で記載したように、本発明は、前立腺、膀胱、および膵臓癌のような、PSCAを発現する癌の、非常に改善されたインビボ臨床イメージング薬剤を提供し、そして従って、PSCAに対する試薬の有用性を、組織サンプルにおける治療および診断のためのみに認可された、以前に記載された抗体の能力を超えて拡大する。
【0025】
II.定義
本明細書中で使用する場合、以下の用語は、他に明記されなければ、それらに属する意味を有する。
【0026】
「前立腺幹細胞抗原」または「PSCA」は、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000またはそれ以上のアミノ酸の範囲にわたって、本明細書中で記載されたようなPSCAに対応するポリペプチドに対して、約60%より高いアミノ酸配列同一性、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、好ましくは約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高いアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、 核酸(例えば遺伝子、プレmRNA、mRNA)、ポリペプチド、多型変異体、対立遺伝子、変異体、および種間ホモログを指す。PSCAの代表的なアミノ酸配列の受け入れ番号は、特にCAB97347(ヒト)およびNP_082492(マウス)を含む。PSCAの代表的な核酸配列の受け入れ番号は、特にNM_005672(ヒト)およびNM_028216(マウス)を含む。
【0027】
「癌」という用語は、ヒト癌および癌腫、肉腫、腺癌、リンパ腫、白血病、固体およびリンパ系癌等を指す。異なる型の癌の例は、前立腺癌、腎臓癌(すなわち腎細胞癌)、膀胱癌、肺癌、乳癌、甲状腺癌、肝臓癌(すなわち、肝細胞癌)、胸膜癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、精巣癌、大腸癌、肛門癌、膵臓癌、胆管癌、消化管カルチノイド腫瘍、食道癌、胆嚢癌、直腸癌、虫垂癌、小腸癌、胃(胃)癌、中枢神経系の癌、皮膚癌、絨毛癌、頭部および頚部癌、血液癌、骨形成肉腫、線維肉腫、神経芽細胞腫、グリオーマ、黒色腫、B−細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小細胞リンパ腫、大細胞リンパ腫、単球性白血病、骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、および多発性骨髄腫を含むがこれに限らない。好ましい実施態様において、本発明の組成物および方法は、前立腺、膀胱、または膵臓癌またはそのサブタイプを診断、イメージング、予後を証明する、および治療するために有用である。
【0028】
「過剰発現する」、「過剰発現」または「過剰発現した」という用語は、交換可能に、正常細胞と比較して、通常癌細胞で、検出可能に高いレベルで転写または翻訳される遺伝子を指す。従って、過剰発現は、PSCAタンパク質およびRNAの過剰発現をどちらも、および変化したタンパク質の輸送パターンおよび/または増加した機能的活性のための局所的な過剰発現を指す。過剰発現を、タンパク質(例えばELISA、ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光、免疫組織化学等)またはmRNA(例えばRT−PCR、PCR、ハイブリダイゼーション等)を検出するための従来の技術を用いて検出し得る。当業者は、PSCAタンパク質またはmRNAの過剰発現を検出するために適当な他の技術を知る。癌性細胞、例えば癌性前立腺、膀胱、または膵臓細胞は、細胞表面に、対応する正常な非癌性細胞と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%のレベルでPSCAを過剰発現し得る。癌性細胞はまた、正常な非癌性細胞と比較して、少なくとも約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、または7倍高いレベルのPSCA転写または翻訳を有し得る。ある例において、その癌細胞サンプルは自己由来である。いくつかの細胞において、PSCA発現は非常に低い、または検出不可能である。そのために、発現は発現なし、すなわち検出不可能またはわずかである発現を含む。
【0029】
「生物学的サンプル」という用語は、生検および剖検サンプルのような組織の切片、および組織学的目的のためにとられた凍結切片を含む。そのようなサンプルは、血液および血液画分または産物(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球等)、痰、組織、培養細胞(例えば一次培養、外植片、および形質転換した細胞)、便、尿、他の生物学的液体(例えば前立腺液、胃液、腸管液、腎液、肺液、脳脊髄液等)等を含む。生物学的サンプルを、典型的には真核生物、最も好ましくは霊長類、例えばチンパンジーまたはヒト;ウシ;イヌ;ネコ;げっ歯類、例えばモルモット、ラット、マウス;ウサギのような哺乳類、または鳥類;爬虫類;または魚類から得る。
【0030】
「生検」は、診断的または予後の評価のために組織サンプルを除去する過程、および組織標本そのものを指す。当該分野で公知のあらゆる生検技術を、本発明の診断および予後の方法に適用し得る。適用される生検技術は、他の因子の中で、評価する組織の型(例えば前立腺、腎臓、膀胱、リンパ節、肝臓、骨髄、血液細胞等)、腫瘍のサイズおよび型(例えば固体または懸濁、血液または腹水)に依存する。代表的な生検技術は、切除生検、切開生検、針生検、外科的生検、および骨髄生検を含むがこれに限らない。「切除生検」は、周囲の正常組織の狭い周辺部分を有する腫瘍塊全体の除去を指す。「切開生検」は、腫瘍の横断直径を含む、楔形の組織の除去を指す。内視鏡検査または蛍光透視によってなされた診断または予後は、腫瘍塊の「コア針生検」、または一般的に腫瘍塊から細胞の懸濁液を得る「穿刺吸引細胞診」を必要とし得る。生検技術は、例えばHarrison’s Principles of Internal Medicine、Kasperら編、第16版、2005、70章、およびパートV全体において議論されている。
【0031】
「癌関連抗原」、「腫瘍特異的マーカー」、または「腫瘍マーカー」という用語は、交換可能に、正常細胞と比較して癌細胞において選択的に発現している分子(典型的にはタンパク質、炭水化物、または脂質)を指し、そしてそれは薬剤の癌細胞への選択的標的化のために有用である。マーカーまたは抗原は、細胞表面または細胞内に発現し得る。多くの場合、癌関連抗原は、例えば正常細胞と比較して1倍過剰発現、2倍過剰発現、3倍過剰発現、またはそれ以上、正常細胞と比較して癌細胞において過剰発現している、または最低限の分解によって安定化している分子である。多くの場合、癌関連抗原は、癌細胞において不適当に合成される分子、例えば、正常細胞に発現する分子と比較して、欠失、追加、または変異を含む分子である。多くの場合、癌関連抗原は、癌細胞のみに発現し、そして正常細胞において合成されない、または発現しない。典型的な細胞表面腫瘍マーカーは、乳癌に関してタンパク質c−erbB−2およびヒト表皮増殖因子受容体(HER)、前立腺癌に関してPSMA、および乳房、卵巣、および結腸直腸を含む多くの癌における炭水化物ムチンを含む。典型的な細胞内腫瘍マーカーは、例えば変異した腫瘍抑制因子、またはp53を含む細胞周期タンパク質を含む。本発明のPSCA抗原は、前立腺、膀胱、および膵臓癌の腫瘍細胞マーカーとしてはたらく。
【0032】
「標識」、「検出可能な部分」、または「イメージング薬剤」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。検出可能な部分を、当該分野で周知の方法を用いて、本明細書中で記載されたPSMAポリペプチドまたはペプチド断片に、直接または間接的に結合し得る。適当な検出可能な部分は、放射性核種、蛍光色素(例えばフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーンTM、ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、Cy3、Cy5等)、蛍光マーカー(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、フィコエリトリン等)、腫瘍関連プロテアーゼによって活性化される自己消光(autoquenched)蛍光化合物、酵素(例えばルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、ナノ粒子、高電子密度試薬、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン等を含むがこれに限らない。
【0033】
「放射性核種」という用語は、放射活性を示す核種を指す。「核種」は、炭素14(14C)のような、その原子番号、原子量、およびエネルギー状態によって特定される原子の型を指す。「放射活性」は、放射活性物質によって放出される、アルファ粒子、ベータ粒子、核子、電子、ポジトロン、ニュートリノ、およびガンマ線を含む放射を指す。本発明において使用するために適当な放射性核種は、フッ素18(18F)、リン32(32P)、スカンジウム47(47Sc)、コバルト55(55Co)、銅60(60Cu)、銅61(61Cu)、銅62(62Cu)、銅64(64Cu)、ガリウム66(66Ga)、銅67(67Cu)、ガリウム67(67Ga)、ガリウム68(68Ga)、ルビジウム82(82Rb)、イットリウム86(86Y)、イットリウム87(87Y)、イットリウム89(89Y)、ストロンチウム89(89Sr)、イットリウム90(90Y)、ロジウム105(105Rh)、銀111(111Ag)、インジウム111(111In)、ヨウ素124(124I)、ヨウ素125(125I)、ヨウ素131(131I)、スズ117m(117mSn)、テクネチウム99m(99mTc)、プロメチウム149(149Pm)、サマリウム153(153Sm)、ホルミウム166(166Ho)、ルテチウム177(177Lu)、レニウム186(186Re)、レニウム188(188Re)、タリウム201(201Tl)、アスタチン211(211At)、およびビスマス212(212Bi)を含むがこれに限らない。本明細書中で使用される場合、117mSnおよび99mTcにおける「m」は、準安定状態を表す。さらに、典型的には放射性同位体の混合物を表すウラン、ラジウム、およびトリウムのような天然に存在する放射活性元素は、放射性核種の適当な例である。
【0034】
本明細書中で記載したように、PSCAを認識する抗体または抗体断片と結合した放射性核種を含む組成物は、患者における治療、イメージング、診断、または予後の目的のために特に有用である。放射性核種は、PSCA特異的抗体または断片に直接結合し得る、連結グループ(例えばペプチド連結グループ)に直接結合し得る、またはキレート化剤に結合し得る。放射性核種をタンパク質または連結グループに結合する、または放射性核種をキレート化剤に結合する方法は、当業者に公知である。ある例において、本発明の組成物は、それに結合した47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117mSn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211Atおよび/または212Biのような放射性核種を含む二機能性キレート化剤に結合したPSCA特異的抗体および抗体断片を含む。あるいは、本発明の組成物は、18F、124I、125I、および/または131Iのような放射性核種で放射性標識した、PSCA特異的抗体または断片、またはそれに結合した連結グループを含む。ある他の例において、本発明のイメージング組成物は、それに結合した55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、66Ga、67Cu、67Ga、68Ga、82Rb、86Y、87Y、90Y、111In、99mTc、および/または201Tlのような放射性核種を含む二機能性キレート化剤に結合した、PSCA特異的抗体または断片を含む。あるいは、本発明のイメージング組成物は、18Fおよび/または131Iのような放射性核種で放射性標識した、PSCA抗体断片またはそれに結合した連結グループを含む。さらに、Gd+3を、MRIのような適用において造影剤として使用するために、本発明の抗体断片に結合し得る。
【0035】
「キレート化剤」は、かなりの親和性および安定性で、放射性核種のような金属イオンに結合する化合物を指す。それに加えて、本発明のキレート化剤は、二機能性であり、1つの末端に金属イオンキレート化グループ、そして他方にペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に結合し得る反応性官能基を有する。二機能性キレート化剤を、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に結合する方法は、当該分野で周知である。適当な二機能性キレート化剤は、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N’”−四酢酸(DOTA)、DOTAのブロモアセタミドベンジル誘導体(BAD)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N”,N’”−四酢酸(TETA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジエチレントリアミン五酢酸の二環二無水物(ca−DTPA)、2−(p−イソチオシアナトベンジル)ジエチレントリアミン五酢酸(SCNBzDTPA)、および2−(p−イソチオシアナトベンジル)−5(6)−メチル−ジエチレントリアミン五酢酸(MxDTPA)を含むがこれに限らない(例えばRueggら、Cancer Res.50:4221−4226(1990);DeNardoら、Clin.Cancer Res.4:2483−2490(1998)を参照のこと)。他のキレート化剤は、EDTA、NTA、HDTA、およびEDTP、HDTP、およびNTPのようなそのホスホネートアナログを含む(例えばPittら、INORGANIC CHEMISTRY IN BIOLOGY AND MEDICINE、Martell編、American Chemical Society、Washington,D.C.、1980、279−312頁;Lindoy、THE CHEMISTRY OF MACROCYCLIC LIGAND COMPLEXES、Cambridge University Press、Cambridge、1989;Dugas、BIOORGANIC CHEMISTRY、Springer−Verlag、New York、1989を参照のこと)。
【0036】
「ナノ粒子」という用語は、その大きさがナノメートルで測定される顕微鏡的粒子、例えば少なくとも1つの次元が約100nmより小さい粒子を指す。ナノ粒子は、可視光を吸収するのではなく散乱させるのに十分小さいので、検出可能な部分として特に有用である。例えば、金ナノ粒子は、有意な可視光消光性質を有し、そして溶液中で深い赤色から黒色に見える。結果として、ナノ粒子と結合したPSCA特異的抗体または断片を含む組成物を、患者における腫瘍または癌性細胞のインビボイメージングのために使用し得る。ポリペプチドまたはペプチドをナノ粒子に結合する方法は、当該分野で周知であり、そして例えばLiuら、Biomacromolecules、2:362−368(2001);Tomlinsonら、Methods Mol.Biol.303:51−60(2005);およびTkachenkoら、Methods Mol.Biol.303:85−99(2005)において記載されている。サイズ範囲の小さい側で、ナノ粒子は多くの場合クラスターと呼ばれる。金属、誘電性、および半導体ナノ粒子およびハイブリッド構造(例えばコア−シェルナノ粒子)が形成された。ナノスフィア、ナノロッド、およびナノカップ(nanocups)は、発達したただ少数の形である。半導体量子ドットおよびナノ結晶は、さらなる型のナノ粒子の例である。そのようなナノスケール粒子を、本発明のPSCA特異的抗体または断片と結合した場合、前立腺、膀胱、または膵臓癌組織のような、腫瘍組織のインビボ検出のためにイメージング薬剤として使用し得る。あるいは、ナノ粒子を、治療的適用において、薬剤キャリアとして使用し得、それは本発明のPSCA特異的抗体または断片と結合した場合、化学療法剤、ホルモン療法剤、放射線治療薬剤、毒素、または当該分野で公知のあらゆる他の細胞毒性または抗癌薬剤を、細胞表面にPSCAを過剰発現する癌性細胞へ伝達する。
【0037】
例えば細胞、核酸、タンパク質、またはベクターに言及して使用された場合、「組み換え」という用語は、その細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種由来の核酸またはタンパク質の導入、または天然の核酸またはタンパク質の変化によって修飾されたこと、またはその細胞がそのように修飾された細胞由来であることを示す。従って、例えば組み換え細胞は、天然(非組み換え)形式の細胞では見いだされない遺伝子を発現する、またはそうでなければ異常に発現する、低発現の、または全く発現していない天然遺伝子を発現する。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「投与」という用語は、患者に対する、経口投与、坐剤としての投与、局所的接触、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、くも膜下腔内、鼻腔内、または皮下投与、または徐放性装置、例えばミニ浸透圧ポンプの埋め込みを意味する。投与は、非経口および経粘膜(例えば頬側、舌下、口蓋、歯肉、鼻腔内、膣内、直腸内、または経皮)を含む、あらゆる経路による。非経口投与は、例えば静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、および頭蓋内を含む。他の形式の伝達は、リポソーム処方の使用、静脈内注入、経皮パッチ等を含むがこれに限らない。
【0039】
本明細書中において「治療的に有効な量または投与量」または「治療的に十分な量または投与量」によって、それを投与する目的である治療的効果を生じる投与量を意味する。正確な投与量は、治療の目的に依存し、そして公知の技術を用いて(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(1−3巻、1992);Lloyd、The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar、Dosage Calculations(1999);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2003、Gennaro編、Lippincott、Williams&Wilkinsを参照のこと)、そして本明細書中でさらに記載されるように、当業者によって確かめることができる。
【0040】
III.抗体および断片
「抗体」という用語は、一般的に、特定の抗原と免疫学的に反応性の、免疫グロブリン分子を指し、そしてポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方を含む。その用語はまた、キメラ抗体(例えばヒト化マウス抗体)および異種結合抗体(heteroconjugate)(例えば二種特異性抗体)のような、遺伝的に操作した形式も含む。「抗体」という用語はまた、プロテアーゼ処理または組み換えによるような、当該分野で公知のあらゆる手段によって産生された、抗原結合能力を有する断片(例えばFab’、F(ab’)、Fab、FvおよびrIgG。Pierce Catalog and Handbook、1994−1995(Pierce Chemical Co.、Rockford、Illも参照のこと))を含む、抗体の抗原結合形式も含む。また例えば、Kuby,J.、Immunology 3.sup.rd Ed、W.H.Freeman&Co.、New York(1998)も参照のこと。その用語はまた、組み換え1本鎖Fv断片(scFv)も指す。抗体という用語はまた、二価または二重特異性分子、二重特異性抗体、三重特異性抗体(triabodies)、および四重特異性抗体(tetrabodies)、ミニボディ、およびscFv−Fc構造を含む。例えばWeinerら(2000)Oncogene 19:6144;Quiocho(1993)Nature 362:293を参照のこと。二価および二重特異性分子が、例えばKostelnyら(1992)J Immunol 148:1547;PackおよびPluckthun(1992)Biochemistry 31:1579;Hollingerら、1993、前出;Gruberら(1994)J.Immunol.:5368;Zhuら(1997)Protein Sci 6:781;Huら(1996)Cancer Res.56:3055;Adamsら(1993)Cancer Res.53:4026;およびMcCartneyら(1995)Protein Eng.8:301において記載されている。
【0041】
「抗体断片」という用語は、一般的に抗原結合能力を有する、抗体のあらゆる部分を指す。その用語は、未処理の抗体のプロテアーゼ処理から生じる、FabおよびFc断片のような、自然界に天然に存在する構造、または抗体ドメインを天然には通常見いだされない配置に結合する分子生物学的または他の操作から生じる、操作された天然に存在しない抗体構造を含む。例えば、抗体ドメインの非天然配置を、ペプチド配列のようなリンカーを有するまたは有さない、融合タンパク質の構築による、または化学的リンカーとの共有結合によるような、当該分野で公知の様々な方法によって得ることができる。
【0042】
「特異的に結合する」という用語は、抗体または抗体断片が、PSCAのような特定の抗原またはエピトープに、主に結合することを意味する。
【0043】
「Fc」という用語は、一般的に、抗体のクラスに依存して、それぞれ2つから3つの定常ドメインに寄与する2つの重鎖からなる抗体構造の一部を指す。Fcを、タンパク質分解または組み換え発現法によるような、当該分野で公知のあらゆる方法によって産生し得ることが、当業者によって認識される。
【0044】
特定の抗原に免疫学的に反応性の抗体を、ファージまたは同様のベクターにおける、組み換え抗体のライブラリーの選択のような組み換え法によって、例えばHuseら、Science 246:1275−1281(1989);Wardら、Nature 341:544−546(1989);およびVaughanら、Nature Biotech.14:309−314(1996)を参照のこと、または抗原または抗原をコードするDNAで動物を免疫することによって産生し得る。
【0045】
典型的には、免疫グロブリンは重鎖および軽鎖を有する。重鎖および軽鎖はそれぞれ、定常領域および可変領域を含む(その領域は「ドメイン」としても知られる)。軽鎖および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる、3つの超可変領域によって中断される、4つの「フレームワーク」領域を含む。フレームワーク領域およびCDRの範囲が定義された。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。構成する軽鎖および重鎖のあわせたフレームワーク領域である、抗体のフレームワーク領域は、CDRを3次元空間に配置および整列させるようにはたらく。
【0046】
CDRは、主に抗原のエピトープへの結合を司る。各鎖のCDRは、N末端から開始して連続的に番号をつけて、典型的にはCDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、そしてまた典型的には特定のCDRが位置する鎖によって同定される。従って、VCDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、一方VCDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインのCDR1である。
【0047】
「V」への言及は、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指し、Fv、scFv、またはFabの重鎖を含む。「V」への言及は、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指し、Fv、scFv、dsFv、またはFabの軽鎖を含む。
【0048】
「1本鎖Fv」または「scFv」という語句は、従来の2本鎖の抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインが、結合して1本鎖を形成する抗体断片を指す。典型的には、適切なフォールディングおよび活性な結合部位の産生を可能にするために、リンカーペプチドが2つの鎖の間に挿入される。従って、リンカーは、例えば図7(a)において示すように、VドメインをVドメインに結合するようはたらく。
【0049】
「scFvダイマー」および「二重特異性抗体」という用語は、一般的に上記で記載したような、および例えば図7(a)で図示したような、2つの1本鎖Fvモノマーの間の相互作用によって形成されたダイマーを含む抗体断片を指す。
【0050】
「scFv−CH3ダイマー」または「ミニボディ」という用語は、一般的にCH3ドメインのような定常領域重鎖に結合したscFvの構造を含むモノマーを結合することによって形成されたダイマーを含む抗体断片を指す。一般的に、scFvを、VH鎖を介してCH3ドメインに結合するために、リンカーを使用する。そのようなリンカーは、scFv−CH3モノマーのジスルフィド結合を可能にして、例えば図7(a)において図示したようなscFv−CH3ダイマーまたはミニボディを形成するために、1つまたはそれ以上のシステイン残基を有利に含み得る。
【0051】
「scFv−Fc」という用語は、一般的に抗体Fcドメインに結合したscFvの構造を含むモノマーの結合によって形成されたダイマーを含む抗体断片を指す。一般的に、scFvを、VH鎖を介して、Fcドメインに結合するために、リンカーを使用する。そのようなリンカーは、例えば図2で図示したようなscFv−Fcを提供するためのジスルフィド結合を可能にするために、1つまたはそれ以上のシステイン残基を有利に含み得る。
【0052】
「キメラ抗体」は、(a)定常領域、またはその部分が、変化、置換、または交換されており、抗原結合部位(可変領域)が、異なるまたは変化したクラス、エフェクター機能、および/または種の定常領域、またはキメラ抗体に新しい性質を与える全く異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬剤等と結合している、;または(b)可変領域、またはその部分が、異なるまたは変化した抗原特異性を有する可変領域に変化、置換、または交換されている免疫グロブリン分子である。
【0053】
「ヒト化抗体」は、最低限の非ヒト免疫グロブリン由来の配列を含む免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、望ましい特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラット、またはウサギのような、非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基で置換されている。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体または
導入されたCDRまたはフレームワーク配列のどちらにおいても見出されない残基も含み得る。一般的に、ヒト化抗体は、実質的に、少なくとも1つ、そして典型的には2つの可変ドメインの全てを含み、そこで全てまたは実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、そして全てまたは実質的に全てのフレームワーク(FR)領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は任意でまた、少なくとも免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含む(Jonesら、Nature 321:522−525(1986);Riechmannら、Nature 332:323−329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992))。ヒト化を、実質的にWinterおよび同僚らの方法に従って(Jonesら、Nature 321:522−525(1986);Riechmannら、Nature 332:323−327(1988);Verhoeyenら、Science 239:1534−1536(1988))、げっ歯類CDRまたはCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列と置換することによって行い得る。よって、そのようなヒト化抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、ここで実質的により少ない未処理のヒト可変ドメインが、対応する非ヒト種由来の配列によって置換された。
【0054】
「エピトープ」または「抗原決定基」は、抗体が結合する抗原の部位を指す。エピトープは、タンパク質、炭水化物、脂質、核酸、または小分子部分のいずれかであり得るが、タンパク質エピトープが最もよくあることが理解される。タンパク質の場合、エピトープは、連続的なアミノ酸またはタンパク質の3次フォールディングによって隣接した非連続的なアミノ酸の両方から形成され得る。連続的なアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒への接触時に保持されるが、3次フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒による処理時に失われる。エピトープは、典型的には少なくとも3、そしてより通常には少なくとも5または8−10アミノ酸を、独特の空間配置で含む。エピトープの空間配置を決定する方法は、例えばX線結晶学、および2次元核磁気共鳴を含む。例えばEpitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、第66巻、Glenn E.Morris編(1996)を参照のこと。
【0055】
ポリクローナル抗体を調製する方法は、当業者に公知である(例えば、Coligan、前出;およびHarlowおよびLane、前出)。ポリクローナル抗体を、哺乳類において、例えば免疫化薬剤、およびもし望ましいならアジュバントの1回またはそれ以上の注射によって、産生し得る。典型的には、免疫化薬剤および/またはアジュバントを、複数の皮下または腹腔内注射によって哺乳類に注射する。免疫化薬剤は、その形の核酸によってコードされるタンパク質またはその断片、またはその融合タンパク質を含み得る。免疫化薬剤を、免疫される哺乳類において免疫原性であることが公知であるタンパク質に結合することが有用であり得る。そのような免疫原性タンパク質の例は、カサガイヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、およびダイズトリプシン阻害剤を含むがこれに限らない。採用し得るアジュバントの例は、フロイント完全アジュバントおよびMPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)を含む。免疫化プロトコールは、過剰な実験無しに当業者によって選択され得る。
【0056】
あるいはその抗体は、モノクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗体を、KohlerおよびMilstein、Nature 256:495(1975)によって記載されたもののような、ハイブリドーマ法を用いて調製し得る。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター、または他の適当な宿主動物を、典型的には免疫化薬剤で免疫して、免疫化薬剤に特異的に結合する抗体を産生する、または産生し得るリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化し得る。一般的に、もしヒト由来の細胞が望ましいなら、末梢血リンパ球(「PBL」)を使用し、またはもし非ヒト哺乳類供給源が望ましいなら、脾臓細胞またはリンパ節細胞を使用する。次いでリンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融合薬剤を用いて、不死化細胞系統と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、59−103頁(1986))。不死化細胞系統は、通常形質転換した哺乳類細胞、特にげっ歯類、ウシおよびヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウス骨髄腫細胞が採用される。ハイブリドーマ細胞を、好ましくは1つまたはそれ以上の、融合していない不死化細胞の増殖または生存を阻害する物質を含む、適当な培地中で培養し得る。例えば、もし親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠くなら、ハイブリドーマのための培地は、典型的にはヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含み(「HAT培地」)、その物質はHGPRT欠損細胞の増殖を阻害する。
【0057】
ヒト抗体を、ファージディスプレイライブラリー(HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.227:381(1991);Marksら、J.Mol.Biol.222:581(1991))を含む、当該分野で公知の様々な技術を用いて産生し得る。ColeらおよびBoemerらの技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、77頁(1985)およびBoemerら、J.Immunol.147(1):86−95(1991))。同様に、ヒト抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、トランスジェニック動物、例えば内因性免疫グロブリン遺伝子を部分的にまたは完全に不活性化したマウスに導入することによって産生し得る。誘発時に、ヒト抗体の産生が観察され、それは、遺伝子の再構成、組み立て、および抗体レパトアを含む、全ての面でヒトにおいて見られるものと非常に似ている。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,661,016号および以下の科学出版物において記載されている:Marksら、BioTechnology 10:779−783(1992);Lonbergら、Nature 368:856−859(1994);Morrison、Nature 368:812−13(1994);Fishwildら、Nature Biotechnology 14:845−51(1996);Neuberger、Nature Biotechnology 14:826(1996);LonbergおよびHuszar、Inter.Rev.Immunol.13:65−93(1995)。
【0058】
いくつかの実施態様において、その抗体は1本鎖Fv(scFv)である。scFv抗体のVおよびV領域は、2本鎖抗体において見出されるものと同様の抗原結合部位を作るようフォールディングされた1本鎖を含む。一旦フォールディングされると、非共有結合相互作用が、1本鎖抗体を安定化する。いくつかの抗体実施態様のVおよびV領域を直接結合し得るが、当業者は、1つまたはそれ以上のアミノ酸からなるペプチドリンカーによってその領域を分離し得ることを認識する。ペプチドリンカーおよびその使用は、当該分野で周知である。例えば、Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8:5879(1988);Birdら、Science 242:4236(1988);Glockshuberら、Biochemistry 29:1362(1990);米国特許第4,946,778号;米国特許第5,132,405号およびStemmerら、Biotechniques 14:256−265(1993)を参照のこと。一般的に、ペプチドリンカーは、領域を結合する、またはVおよびV間のいくらかの最低限の距離または他の空間的関係を保存する以外の、特定の生物学的活性は有さない。しかし、ペプチドリンカーの構成アミノ酸を、フォールディング、全体の荷電、または疎水性のような、分子のいくらかの性質に影響を与えるように選択し得る。1本鎖Fv(scFv)抗体は、任意で長さが50アミノ酸より小さい、一般的には40アミノ酸より小さい、好ましくは30アミノ酸より小さい、そしてより好ましくは20アミノ酸より小さいペプチドリンカーを含む。いくつかの実施態様において、そのペプチドリンカーは、配列Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(GGGS)のコンカテマー、好ましくは2、3、4、5、または6つのそのような配列である。しかし、リンカー内のいくつかのアミノ酸置換をし得ることが認識される。例えば、バリンがグリシンを置換し得る。
【0059】
scFv抗体を産生する方法が記載された。Huseら、前出;Wardら、前出;およびVaughanら、前出を参照のこと。簡単には、免疫した動物由来のB細胞からのmRNAを単離し、そしてcDNAを調製する。cDNAを、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域に特異的なプライマーを用いて増幅する。そのPCR産物を精製し、そして核酸配列を結合する。もしリンカーペプチドが望ましいなら、ペプチドをコードする核酸配列を、重鎖および軽鎖核酸配列の間に挿入する。scFvをコードする核酸を、ベクターに挿入し、そして適当な宿主細胞において発現する。望ましい抗原に特異的に結合するscFvを、典型的にはファージディスプレイライブラリーのパニングによって見出す。いくつかの方法のいずれかによって、パニングを行い得る。その表面に望ましい抗原を発現する細胞を用いて、または望ましい抗原でコートされた固体表面を用いて、パニングを簡便に行い得る。簡便に、その表面は磁気ビーズであり得る。結合しないファージを、固体表面から洗い流し、そして結合したファージを溶出する。
【0060】
本発明の実施において使用される抗体は、二重特異性抗体を含み得る。二重特異性抗体は、モノクローナル、好ましくはヒトまたはヒト化抗体であり、それは少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するか、または同じ抗原上の2つのエピトープに対する結合特異性を有する。
【0061】
二重特異性抗体を産生する方法は、当該分野で公知である。伝統的には、二重特異性抗体の組み換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアの同時発現に基づき、ここでその2つの重鎖は異なる特異性を有する[MilsteinおよびCuello、Nature 305:537−539(1983)]。無作為な免疫グロブリン重鎖および軽鎖の取り合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生し、そのうち1つのみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、通常アフィニティークロマトグラフィー工程によって達成される。同様の手順が、1993年5月13日に公開されたWO93/08829、およびTrauneckerら、EMBO J.10:3655−3659(1991)において開示される。望ましい結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合し得る。その融合は、好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2、およびCH3領域を含む、免疫グロブリンの5つの重鎖定常ドメインとである。融合の少なくとも1つに存在する軽鎖の結合に必要な部位を含む、最初の重鎖定常領域(CH1)を有することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合物、およびもし望ましいなら、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、そして適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。二重特異性抗体の産生のさらなる詳細に関しては、例えばSureshら、Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照のこと。
【0062】
ヘテロ結合(heteroconjugate)抗体も、本発明の範囲内である。ヘテロ結合(heteroconjugate)抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。そのような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対して免疫系細胞を標的化するために[米国特許第4,676,980号]、およびHIV感染の治療のために[WO91/00360;WO92/200373;EP03089]提案された。その抗体を、架橋薬剤を含むものを含む、合成タンパク質化学において公知の方法を用いて、インビトロで調製し得ることが企図される。例えば、免疫毒素を、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することによって、構築し得る。この目的のために適当な試薬の例は、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデート、および例えば米国特許第4,676,980号において開示されたものを含む。
【0063】
IV.診断及び予後の方法
ある局面において、本発明は、癌、例えば前立腺、膀胱、または膵臓癌のような、PSCAを過剰発現する癌を診断する、または予後を提供する方法を提供する。本明細書中で使用される場合、「予後を提供する」という用語は、癌の可能性のある過程および結果、または癌からの回復の可能性の予測を提供することを指す。ある場合には、陰性または低いPSCA発現を有する癌患者は、高いPSCA発現を有する患者と比較して、より長い疾患特異的生存期間を有する。そのために、PSCA発現のレベルを、陰性または低い発現を良い予後、例えばより長い疾患特異的生存期間を示すものとして、予後の指標として使用し得る。
【0064】
本発明の方法はまた、癌の重症度、例えばPSCAを過剰発現する癌を診断するために有用であり得る。制限しない例として、PSCA発現のレベルを、例えばTumor/Nodes/Metastases(TNM)分類システム(International Union Against Cancer、第6版、2002)、またはWhitmore−Jewettステージ分類システム(American Urological Association)によって、前立腺癌のような癌のステージまたはグレードを決定するために使用し得る。典型的には、理学的検査、血液検査、および医学的イメージングの組み合わせを用いて、癌をステージ分類する:もし腫瘍組織が生検または手術によって得られるなら、顕微鏡下での組織の検査も、病理学的ステージ分類を提供し得る。ある場合には、高いPSCA発現を有する癌患者は、より重症のステージまたはグレードのその型の癌を有する。そのため、PSCA発現のレベルを、癌の重症度またはより重症のステージまたはグレードの癌に発展するリスクの診断的指標として使用し得る。ある他の例で、癌のステージまたはグレードは、癌の予後の決定および適当な癌治療の選択において、治療者を助ける。
【0065】
本発明の診断および予後の方法は、細胞表面PSCAに結合する、新規の遺伝子操作したヒト化抗体断片を有利に利用する。そのような抗体断片を、腫瘍組織または癌性細胞においてPSCA発現のレベルを決定するために使用し、そして次いでベースラインの値または範囲と比較し得る。典型的には、ベースラインの値は、癌に罹患していない健康な人のPSCA発現レベルを表す。ベースライン範囲からのPSCAレベルの変動(すなわち上または下への)は、その患者が癌を有すること、または癌を発症するリスクがあることを示す。いくつかの実施態様において、血液、尿、前立腺液、または腫瘍組織サンプルを患者から取り、そして当該分野で公知のあらゆる多くの検出方法を用いて、サンプル中のPSCAの量を測定することによって、PSCA発現のレベルを測定する。例えば、磁気ビーズ(例えばDynabeads;Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)と結合した、本明細書中で記載されたPSCA抗体断片を用いて、血清または前立腺液のようなサンプルに対して、プルダウンアッセイを実施して、PSMA発現のレベルを決定し得る。
【0066】
いくつかの実施態様において、癌性または潜在的に癌性の組織におけるPSCAの発現を、患者におけるPSCAの存在および/または局在化を可視化することによって評価し得る。生きた患者において腫瘍、組織、または臓器を可視化するための、当該分野で公知のあらゆる方法を、本発明のイメージング方法において使用し得る。好ましくは、癌性または潜在的に癌性の組織のインビボイメージングを、PSCAを発現する細胞の表面に結合する抗体断片を用いて行う、ここでそのPSCA抗体断片は、検出可能な部分のようなイメージング薬剤(すなわち造影剤)と結合している。検出可能な部分を、当該分野で周知の方法を用いて、本明細書中で記載されたPSCA抗体断片に、直接または間接的に結合し得る。必要な感受性、PSCA抗体断片との結合の容易さ、安定性の必要性、および利用可能な計測手段および廃棄の提供に依存して標識を選択して、広く様々な検出可能な部分を使用し得る。適当な検出可能な部分は、上記で記載したような放射性核種、蛍光色素(例えばフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーンTM、ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、Cy3、Cy5等)、蛍光マーカー(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、フィコエリトリン等)、腫瘍関連プロテアーゼによって活性化される自己消光(autoquenched)蛍光化合物、酵素(例えばルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、ナノ粒子、ビオチン、ジゴキシゲニン等を含むがこれに限らない。
【0067】
検出可能な部分を、当該分野で公知のあらゆる装置または方法を用いて、患者において可視化し得る。例えば、回転するガンマカメラを用いて、単一光子ガンマ線放出放射性核種からの照射を検出する、単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)、およびシンチレーションガンマカメラを用いて、組織、臓器、または体のシステムにおける放射性核種の分布のイメージまたは一連の連続イメージを得る、放射線核種シンチグラフィーのような方法を、本発明のPSCA抗体断片と結合した、検出可能な部分から放出される照射を検出するために使用し得る。ポジトロン放出断層撮影(PET)は、本発明の方法によって、生きた患者において腫瘍を可視化するために、患者において照射を検出するために適当な別の技術である。さらに、米国特許第5,429,133号は、固体組織腫瘍に集中した照射を検出するための、腹腔鏡下プローブを記載する。医学的使用のために意図された、微小および柔軟な照射検出器が、Infra−Medical LLC、Santa Monica、Californiaによって産生された。核磁気共鳴画像法(MRI)または当業者に公知のあらゆる他のイメージング技術(例えばラジオグラフィー(すなわちX線)、コンピューター断層撮影(CT)、蛍光透視等)も、放射性核種の放射性照射を検出するために適当である。
【0068】
蛍光および/または酵素標識またはマーカーの可視化に適当な、様々なインビボ光学的イメージング技術は、蛍光マイクロ内視鏡検査(例えばFlusbergら、Optics Lett.30:2272−2274(2005)を参照のこと)、光ファイバー蛍光イメージング(例えばFlusbergら、Nature Methods、2:941−950(2005)を参照のこと)、飛点走査器を用いた蛍光イメージング(例えばRamanujamら、IEEE Trans.Biomed.Eng.48:1034−1041(2001)を参照のこと)、カテーテルに基づくイメージングシステム(例えばFunovicsら、Radiology 231:659−666(2004)を参照のこと)、近赤外線イメージングシステム(例えばMahmoodら、Radiology 213:866−870(1999)を参照のこと)、蛍光分子トモグラフィー(例えばGurfinkelら、Dis.Markers 19:107−121(2004)を参照のこと)、および生物発光イメージング(例えばDikmenら、Turk.J.Med.Sci.35:65−70(2005)を参照のこと)を含むがこれに限らない。
【0069】
本発明のPSCA抗体断片を、上記で記載した検出可能な部分のいずれかと結合した場合、患者において腫瘍組織または癌性細胞の望ましい画像を達成するために有効な投与量で投与し得る。そのような投与量は、採用された特定の検出可能な標識、イメージング手順の対象である腫瘍組織または癌性細胞の型、使用されるイメージング装置等に依存して、広く変動し得る。しかし、使用される検出可能な部分またはイメージング技術に関わらず、そのような検出は、患者においてPSCA抗体断片がどこに集中しているかを決定することを目指し、そのような集中は、腫瘍または腫瘍細胞の位置を示す。あるいは、そのような検出は、患者における腫瘍の退縮の程度を決定することを目指し、腫瘍のサイズが癌治療の有効性の指標である。例えば、PSCAの発現は、PTEN欠失またはアンドロゲン受容体活性化のような、癌における他の変化の代理マーカーとして働き得るという証拠が存在する;従って、本発明のPSCA特異的抗体断片を、これらの経路を標的とする治療に対する患者の反応をモニターするために使用し得る。
【0070】
V.投与の方法および診断および医薬品組成物
本明細書中で記載されたように、癌細胞のような細胞の表面のPSCAに結合する抗体断片は、前立腺、膀胱、および膵臓癌のような癌の治療、イメージング、診断、および/または予後の提供において特に有用である。治療的適用に関して、本発明のPSCA抗体断片を、単独で投与し得る、または従来の化学療法、放射線療法、ホルモン療法、および/または免疫療法と組み合わせて同時投与し得る。
【0071】
制限しない例として、PSCA抗体断片を、アルキル化剤(例えばシスプラチン、シクロホスファミド、カルボプラチン、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、ニトロソウレア等)、代謝拮抗剤(例えば5−フルオロウラシル、アザチオプリン、メトトレキサート、フルダラビン等)、植物アルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセル、ドセタキセル等)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えばアムサクリン、エトポシド(VP16)、リン酸エトポシド、テニポシド等)、抗腫瘍抗生物質(例えばドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン等)等を含む従来の化学療法剤と同時投与し得る。
【0072】
PSCA抗体断片をまた、ステロイド(例えばデキサメタゾン)、フィナステリド、アロマターゼ阻害剤、タモキシフェン、およびゴセレリンのようなゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(GnRH)を含むがこれに限らない、従来のホルモン療法薬剤と同時投与し得る。
【0073】
さらに、PSCA抗体断片を、免疫賦活薬(例えばBacillus Calmette−Guerin(BCG)、レバミソール、インターロイキン−2、アルファ−インターフェロン等)、モノクローナル抗体(例えば抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗HLA−DR、および抗VEGFモノクローナル抗体)、免疫毒素(例えば抗CD33モノクローナル抗体−カリチアマイシン結合物、抗CD22モノクローナル抗体−シュードモナス外毒素結合物等)、および放射免疫療法(例えば111In、90Y、または131I等に結合した抗CD20モノクローナル抗体)を含むがこれに限らない、従来の免疫療法薬剤と同時投与し得る。
【0074】
さらなる実施態様において、PSCA抗体断片を、任意で腫瘍抗原に対する抗体と結合した、47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117mSn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211Atおよび212Biのような放射性核種を含むがこれに限らない、従来の放射線療法薬剤を同時投与し得る。
【0075】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、PSCA抗体断片および生理学的に(すなわち薬剤学的に)許容可能な担体を含む。本明細書中で使用される場合、「担体」という用語は、典型的には治療薬のような薬剤の希釈剤または媒体として使用される不活性な物質を指す。その用語はまた、典型的には組成物に粘着性の性質を与える不活性な物質も含む。典型的には、生理学的に許容可能な担体は、液体、固体、または半固体形式で存在する。液体担体の例は、生理学的食塩水、リン酸緩衝液、通常緩衝化生理食塩水(135−150mM NaCl)、水、緩衝化水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、増強された安定性を提供するための糖タンパク質(例えばアルブミン、リポタンパク質、グロブリン等)等を含む。固体または半固体担体の例は、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルトデキストリン、ラクトース、デキストロース、ショ糖、グルコース、イノシトール、粉砂糖、糖蜜、デンプン、セルロース、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、グアーガム、トラガカントゴム、アルギン酸塩、アイリッシュモスの抽出物、パンワールゴム、ガッチゴム、イサポール外皮の粘液、Veegum、カラマツアラボガラクタン(arabogalactan)、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸(例えばカルボポール)、珪酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジカルシウム、硫酸カルシウム、カオリン、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、およびその組み合わせを含む。生理学的に許容可能な担体は、部分的には投与される特定の組成物によって、およびその組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定されるので、広く様々な本発明の医薬品組成物の適当な処方が存在する(例えばRemington’s Pharmaceutical Scineces、第17版、1989を参照のこと)。
【0076】
本発明の医薬品組成物を、従来の、周知の滅菌技術によって滅菌し得る、または滅菌条件下で産生し得る。水性溶液を、無菌条件下で使用のために包装またはろ過、および凍結乾燥し得、凍結乾燥した調製物は、投与前に滅菌水性溶液と組み合わせる。その組成物は、生理学的条件に近づけるために必要なので、pH調節および緩衝化剤、毒性調節薬剤、湿潤剤等のような、薬剤学的に許容可能な補助物質、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、およびオレイン酸トリエタノールアミンを含み得る。
【0077】
経口投与に適当な処方は、(a)希釈剤、例えば水、生理食塩水、またはPEG400に懸濁した、有効な量の包装されたPSCA抗体断片のような液体溶液;(b)それぞれ前もって決定した量のPSCA抗体断片を、液体、固体、顆粒またはゼラチンとして含む、カプセル、サシェ、または錠剤;(c)適当な液体中の懸濁液;および(d)適当なエマルションを含み得る。錠剤処方は、1つまたはそれ以上のラクトース、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、結晶セルロース、ゼラチン、コロイド性二酸化珪素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝化剤、湿潤剤、保存剤、香料、色素、崩壊剤、および薬剤学的に適合性の担体を含み得る。ポリペプチドまたはペプチドに加えて、当該分野で公知の担体を含む、ゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアラビアゴムエマルション、ゲル等のような不活性な基剤中にポリペプチドまたはペプチド断片を含むトローチ剤と同様、ロゼンジ形態は、香料、例えばショ糖中にPSCA抗体断片を含み得る。
【0078】
選択したPSCA抗体断片を、単独で、または他の適当な成分と組み合わせて、吸入によって投与するエアロゾル処方にし得る(すなわち、それらを「噴霧投与」し得る)。エアロゾル処方を、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等のような、加圧した許容可能な噴霧剤中に入れ得る。
【0079】
直腸内投与に適当な処方は、例えば坐剤を含み、それは坐剤基剤と共に有効な量の包装したPSCA抗体断片を含む。適当な坐剤の基剤は、天然または合成トリグリセリドまたはパラフィン炭化水素を含む。それに加えて、選択したPSCA抗体断片と、例えば液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、およびパラフィン炭化水素を含む基剤の組み合わせを含む、ゼラチン直腸カプセルの使用も可能である。
【0080】
例えば関節内(関節内)、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮内、腹腔内、および皮下経路によるような、非経口投与に適当な処方は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および処方を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る、水性および非水性、等張滅菌注射溶液、および懸濁剤、可溶化剤、濃化剤、安定剤、および保存剤を含み得る、水性および非水性滅菌懸濁液を含む。注射溶液および懸濁液をまた、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製し得る。本発明の実施において、組成物を、例えば静脈内注入によって、経口、局所、腹腔内、膀胱内、またはくも膜下腔内に投与し得る。非経口投与、経口投与、および静脈内投与が好ましい投与方法である。化合物の処方を、アンプルおよびバイアルのような、単位投与または複数回投与の密封した容器で提示し得る。
【0081】
医薬品調製物は、好ましくは単位投与量形式である。そのような形式において、調製物を、適当な量の活性成分、例えばPSCA抗体断片を含む単位投与量に細別する。単位投与量形式は、小包にした錠剤、カプセル、およびバイアルまたはアンプル中の粉末のような、包装した調製物であり得、その包装は別個の量の調製物を含む。また、単位投与量形式は、カプセル、錠剤、カシェ剤、またはロゼンジ自体であり得る、または包装した形式の適当な数のこれらのいずれかであり得る。その組成物は、もし望ましいなら、他の適合性の治療薬も含み得る。
【0082】
癌の治療のための治療的使用において、本発明の医薬品組成物において利用されるPSCA抗体断片を、毎日約0.001mg/kgから約1000mg/kgの初期投与量で投与する。約0.01mg/kgから約500mg/kg、または約0.1mg/kgから約200mg/kg、または約1mg/kgから約100mg/kg、または約10mg/kgから約50mg/kgの1日投与量の範囲を使用し得る。しかし、投与量は、患者の必要条件、治療する状態の重症度、および採用されるPSCA抗体断片に依存して変動し得る。例えば、特定の患者において診断された癌の型およびステージを考慮して、投与量を経験的に決定し得る。本発明の関係において、患者に投与された投与量は、時間につれて患者において有用な治療的反応を起こすのに十分であるべきである。投与量を、特定の患者における特定のPSCA抗体断片の投与に伴うあらゆる有害な副作用の存在、性質、および程度によっても決定する。特定の状況のために適当な投与量の決定は、医療者の技術の範囲内である。一般的に、PSCA抗体断片の最適投与量より少ない、低投与量から治療を開始する。その後、投与量を少しの増加量で、その状況下で最適の効果に達するまで増加させる。簡便さのために、望ましいなら、1日投与量全体を分け、1日の間に一部分ずつ投与し得る。
【0083】
VI.キット
本発明はまた、本明細書中で記載された、治療、診断、予後、およびイメージングアッセイを行うためのキットを提供する。そのキットは、典型的には、細胞表面PSCAに結合するPSCA抗体断片を、例えば脱水形式で、その再水和および投与の指示と共に含む、1つまたはそれ以上の容器から成る。例えば、キットの1つの容器は、脱水したPSCA抗体断片を有し得、そして別の容器は、乾燥成分を再水和するために適当な緩衝液を有し得る。キットは、上記で述べた組成物のいずれかを含み得、そして任意で望ましい方法を実施するための指示、コントロール抗体、抗原、ネガティブコントロール抗体またはポジティブコントロール抗原のようなポリペプチドまたはペプチド、キットの構成要素を混合するための機械構成(robotic armature)等の、さらなる構成要素をさらに含み得る。
【実施例】
【0084】
(実施例)
以下の実施例を、請求される発明を制限するためでなく説明するために提供する。
【0085】

実施例1:抗PSCA抗体断片のデザインおよび遺伝子の構築
2B3可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)遺伝子を、マウスモノクローナル1G8抗体のヒト化バージョンから得た。未処理のヒト化抗体を構築するために、CDRグラフティングが以前に使用された(Z.Gu、T.Olafsenら、2005)。pEE12発現ベクター中の未処理の2B3抗体のDNAから始めて、個々のVおよびV鎖を増幅するためにプライマーをデザインした。V鎖は、AgeI制限部位を含み、一方V鎖はXhoI制限部位をそのC末端に含んでいた。次いでその2つの遺伝子を、重複伸長PCR(overlap−extension PCR)によって融合して、GlySerリッチな18残基の長さのリンカーで連結した、V−Vの方向の1本鎖FV(scFv)断片を産生した。オーバーラップPCRの後、産物をTOPOベクター(Stratagene)にクローニングし、そして配列決定した。制限部位AgeIおよびEcoRIを有するpUC18にサブクローニングを続け、ここでシグナルペプチドをV遺伝子の5’末端(上流)に融合し、そしてV遺伝子を、10残基のGlySerペプチドリンカーを含むヒトIgG1ヒンジを介してヒトIgG1CH3ドメインに融合した。構築物の最終的な配列を、図1に示す。最後に、制限部位XbaIおよびEcoRIを用いて、ミニボディをpEE12(Lonna Biologics、Slough、UK)哺乳類発現ベクターにクローニングした。このベクターは、hCMVプロモーターおよび選択のためにグルタミンシンセターゼ遺伝子を含む(Bebbingtonら、1992)。
【0086】

実施例2:ミニボディの発現、選択、および精製
記載されたように、全部で2×10のNS0マウス骨髄腫細胞(GalfreおよびMilstein、1981)を、エレクトロポレーションによって、10μgの直線状にした(SalIで切断)ベクターDNAでトランスフェクトし、そしてグルタミン欠損培地で選択した(Yazaki、Shivelyら、2001;Yazaki、Shermanら、2004)。ミニボディクローンを、ELISAによって発現に関してスクリーニングし、それによって望ましいタンパク質をヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)で捕捉し、そしてアルカリホスファターゼ(AP)結合ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)で検出した(どちらもJackson ImmunoResearch Labs、West Grove、PAから)。最も多く生産するクローンを増殖させ、そして最終的な培養物とした。
【0087】
まず細胞培養上清を、5%のAG1−X8、100−200メッシュ(Bio−Rad labolatories、Hercules、CA)で一晩処理して、フェノールレッドおよび細胞の破片を除去することによって精製し、次いで100mlに濃縮し、そして50mMの酢酸、pH5.0に対して透析した。タンパク質を次いで1.6mlの陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(Poros)にかけた。タンパク質を、50mMの酢酸、pH5.0の存在下で、0−0.25MのNaClの勾配で溶出した。望ましいミニボディを含む、あわせた溶出画分(18ml)を、50mMのMES、pH6.5で100mlに希釈し、そして陽イオン交換カラムに再びかけた。タンパク質を、MES、pH6.5の存在下で、0−0.3MのNaClの勾配で溶出した。次いでミニボディを、分子多孔性膜チューブ(mwco:30,000)を用いてPBSに対して透析し、そしてVivascience Vivaspin20(mwco:30,000)で濃縮した。
【0088】

実施例3:抗体断片の特徴づけ
精製タンパク質の大きさおよび組成を、非還元および還元(1mMのDTT)条件下で、SDS−PAGEによって分析した(図2)。天然の構造の大きさを、サイズ排除カラム(Superdex75)(Pharmacia)によって決定した(図3)。
【0089】
2B3ミニボディの構造的特徴を調べるために、SDS−PAGEを還元および非還元条件下で行った。ミニボディは、還元条件下で〜47kDaと、そして非還元条件下で〜95kDaと移動した(図2)。2つの別の細胞型における、フローサイトメトリーおよび免疫蛍光染色(図4および5)による結合活性は、ミニボディは細胞PSCAを認識することを示した。未処理の抗体対応物およびもとのマウスモノクローナル抗体(1G8)に関する、ミニボディの見かけの親和性を、競合的ELISAによって決定した。1G8の相対的親和性は5nM、ヒト化2B3抗体は25nM、一方ミニボディは46nMと測定された。従って、ミニボディの1本鎖タンパク質フォールディング形式は、その相対的親和性において、マウス抗体より9.2倍低く、親和性において未処理の2B3抗体より相対的に〜2倍低くなった。
【0090】
ミニボディに対するPSCA相対的結合親和性を、競合的ELISAによって決定し、ここでマイクロタイタープレートのウェルを、精製PSCA−Fcでコートした(Z.Gu、T.Olafsenら、2006)。
【0091】
細胞PSCA結合活性を評価するために、フローサイトメトリーを行った(図4)。外来性PSCAを発現するEBVトランスフェクトB細胞リンパ腫細胞系統およびPSCAトランスフェクトLN−CaP安定細胞系統を使用した。簡単には、細胞5×10を、100μlのミニボディと、2μg/mlの濃度で、氷上で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、そして1:500の希釈で、ヤギ抗hFc Alexa488結合抗体で染色した。
【0092】
免疫蛍光研究に関して、LNCaP細胞を、ポリ−L−リシンでコートしたガラスのカバーガラス上で増殖させた。細胞を、(Z.Gu、2000)において記載されたように、非透過処理方式で処理した。ミニボディを、PBS/1%BSA中2mg/mlで60分間加え、そしてPBS/1%BSAで2回洗浄した。Alexa488結合ヤギ抗ヒトIgG(1:500希釈)(Molecular Probes、Eugene Oregon)を30分間加え、そしてPBSで3回洗浄した。スライドをvectashield(Vector Laboratory,Inc.、Burlingame、CA、USA)中でマウントし、そしてAxioskop2蛍光顕微鏡(Zeiss)を用いてイメージングした(図5)。
【0093】
放射ヨウ素標識およびマイクロPETイメージングに関して、精製ミニボディを、以前に記載されたように(Kenanova、Olafsenら、2005)、V.G.Khlopin Radium Institute&RITVERC GmbH(St.Petersburg、、Russia)によって提供された、ポジトロン放出同位元素124I(0.02MのNaOH中のヨウ化ナトリウム;放射性核種純度>99%)で放射ヨウ素標識した。放射ヨウ素標識したミニボディを、過剰量のSKW−PSCA+細胞と1時間インキュベートし、そして計測のために細胞を遠心沈殿することによって、免疫活性をアッセイした。
【0094】

実施例4:124I抗PSCA二重特異性抗体を用いた、異種移植片のマイクロPETイメージング
124Iミニボディの腫瘍標的化を評価するために、抗原陽性(LAPC−9前立腺癌腫)または抗原陰性(PC−3前立腺癌腫)異種移植片を、8匹のSCIDマウスにおいて皮下接種によって確立した。マイクロPETイメージング研究を、平均488mg(64−1236mgの範囲)および574mgのPSCA陽性腫瘍を有する動物に対して行った。118.24μCiの平均投与量の124I親ミニボディをマウスに注射し、そして投与後4時間で始まり、そして21時間で終わる、全身PETスキャンを得た。21時間におけるマイクロPET画像(図6)は、陽性(LAPC−9)腫瘍への取り込み、およびコントロール(PC−3)腫瘍および他の生きた臓器での低い活性を示した。21時間の時点のスキャン後、動物を屠殺し、そして様々な組織における活性を、ガンマカウンターを用いて定量した。その結果、LAPC−9モデルにおける取り込みを確認し、平均(n=8)の取り込みは4.65%ID/g(2.14−7.06%ID/gの範囲)であった。コントロールPC−3異種移植片による取り込み、および肝臓および脾臓における活性は、陽性腫瘍における取り込みより有意に低かった。21時間において、ミニボディは依然として循環中にあり、平均3.80%ID/gの血液活性を示した。
【0095】

実施例5:124I抗PSCA二重特異性抗体を用いた、異種移植片のさらなるマイクロPETイメージング
さらなるPSCA特異的な遺伝子操作したヒト化抗体断片[二重特異性抗体(scFvダイマー、50kDa)、ミニボディ(scFv−CH3ダイマー、80kDa)およびscFv−Fc、110kDa]を産生し、それらはインビボにおける薬物動態および標的化能力において異なっていた。インビボにおけるイメージングのために最適な形式を決定するために、組み換え断片を、ポジトロンエミッター124I(t1/2=4.2d)で放射ヨウ素標識し、そしてマイクロPETスキャニングによって評価した。図12に示すように、中間サイズのミニボディは、PSCA発現LAPC−9異種移植片(n=12)において注射の21時間後に、1gあたり5.2(±1.6)パーセントの注射投与量(%ID/g)の優れた腫瘍取り込みを示した。血液および正常組織からの迅速なクリアランスは、高いコントラストのマイクロPET画像を生じた。コントロール腫瘍(PC−3)に対する陽性腫瘍の取り込み比は2.0であり、そして腫瘍対死体比は4.3であった。
【0096】
図11に示すように、より小さい断片(抗PSCA二重特異性抗体)は、循環から迅速に排泄され、そしてLAPC−9異種移植片において21時間で0.9(±0.3)%ID/gにしか達しなかった(n=4)。迅速なクリアランスのために遺伝子操作された、より大きなscFv−Fc断片は、PC−3(1.7±0.2%ID/g)と比較して、LAPC−9異種移植片において3.1(±0.4)%ID/gを達成した(n=4)(図13)。
【0097】
本明細書中で記載された実施例および実施態様は、説明目的のためのみであること、そしてそれを考えて様々な修飾または変化が当業者に示唆され、そして本申請の意図および範囲、および添付の請求の範囲内に含まれることが理解される。本明細書中で引用された全ての出版物、特許、および特許申請は、これによって全ての目的のために、その全体として参考文献に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1−1】図1は、ヒト化抗PSCAミニボディのDNA配列および翻訳されたタンパク質配列を示す。以下のタンパク質部分の始まりも示される:シグナルペプチド(哺乳類の分泌のため)、ヒト化2B3抗PSCA抗体からの軽鎖可変領域(V)、18アミノ酸のドメイン間リンカーペプチド、ヒト化2B3からの重鎖可変領域(V)、ヒトIgG1ヒンジ配列および10アミノ酸の延長、およびヒトIgG1CH3ドメインに続く2つの停止コドン。
【図1−2】図1は、ヒト化抗PSCAミニボディのDNA配列および翻訳されたタンパク質配列を示す。以下のタンパク質部分の始まりも示される:シグナルペプチド(哺乳類の分泌のため)、ヒト化2B3抗PSCA抗体からの軽鎖可変領域(V)、18アミノ酸のドメイン間リンカーペプチド、ヒト化2B3からの重鎖可変領域(V)、ヒトIgG1ヒンジ配列および10アミノ酸の延長、およびヒトIgG1CH3ドメインに続く2つの停止コドン。
【図1−3】図1は、ヒト化抗PSCAミニボディのDNA配列および翻訳されたタンパク質配列を示す。以下のタンパク質部分の始まりも示される:シグナルペプチド(哺乳類の分泌のため)、ヒト化2B3抗PSCA抗体からの軽鎖可変領域(V)、18アミノ酸のドメイン間リンカーペプチド、ヒト化2B3からの重鎖可変領域(V)、ヒトIgG1ヒンジ配列および10アミノ酸の延長、およびヒトIgG1CH3ドメインに続く2つの停止コドン。
【図2】図2は、非還元(1)および還元(2)条件下での、抗PSCAミニボディのSDS−PAGE分析を示し、95kDaの共有結合ダイマーおよび47kDaのモノマーサブユニットを示す。
【図3】図3は、抗PSCAミニボディのサイズ排除HPLCを示し、予測される分子サイズにおける均一なピークを示す。
【図4a】図4は、抗PSCAミニボディのフローサイトメトリー結合研究を示す。パネル1、抗原陰性B細胞系統;パネル2、PSCAを発現するよう安定にトランスフェクトしたB細胞系統、パネル3、PSCA発現LNCaPヒト前立腺癌細胞。
【図4b】図4は、抗PSCAミニボディのフローサイトメトリー結合研究を示す。パネル1、抗原陰性B細胞系統;パネル2、PSCAを発現するよう安定にトランスフェクトしたB細胞系統、パネル3、PSCA発現LNCaPヒト前立腺癌細胞。
【図4c】図4は、抗PSCAミニボディのフローサイトメトリー結合研究を示す。パネル1、抗原陰性B細胞系統;パネル2、PSCAを発現するよう安定にトランスフェクトしたB細胞系統、パネル3、PSCA発現LNCaPヒト前立腺癌細胞。
【図5】図5は、免疫蛍光顕微鏡による、抗原陽性細胞に対する抗PSCAミニボディの結合を示す。
【図6】図6は、LAPC−9(PSCA陽性ヒト前立腺癌)およびPC−3(PSCA陰性前立腺癌)異種移植片を有するヌードマウスの、同時記録マイクロPET/マイクロCTスキャンを示す。マウスにI−124放射性標識抗PSCAを注射した。
【図7a】図7(a)は、本発明の抗体断片の概略図表示を提供する。図7(b)は、時間につれた(a)の抗体断片の相対的な腫瘍取り込みおよび血液活性を示す。
【図7b】図7(a)は、本発明の抗体断片の概略図表示を提供する。図7(b)は、時間につれた(a)の抗体断片の相対的な腫瘍取り込みおよび血液活性を示す。
【図8−1】図8(シート1のパネル)は、本発明のヒト化PSCA二重特異性抗体の概略図表示、およびSDS−PAGEにおける〜25kDaタンパク質としての二重特異性抗体の移動を示す。シート2のパネルは、FACSによる、PSCA陽性細胞への二重特異性抗体の結合を示す。
【図8−2】図8(シート1のパネル)は、本発明のヒト化PSCA二重特異性抗体の概略図表示、およびSDS−PAGEにおける〜25kDaタンパク質としての二重特異性抗体の移動を示す。シート2のパネルは、FACSによる、PSCA陽性細胞への二重特異性抗体の結合を示す。
【図9−1】図9(シート1のパネル)は、本発明のPSCAミニボディの概略図表示、および還元および非還元条件下でのSDS−PAGEにおけるミニボディの移動を示す。免疫蛍光顕微鏡による、抗原陽性細胞への抗PSCAミニボディの結合も示す。シート2のパネルは、FACSによる、PSCA陽性細胞へのミニボディの結合、およびミニボディを用いた競合的ELISAアッセイを示す。
【図9−2】図9(シート1のパネル)は、本発明のPSCAミニボディの概略図表示、および還元および非還元条件下でのSDS−PAGEにおけるミニボディの移動を示す。免疫蛍光顕微鏡による、抗原陽性細胞への抗PSCAミニボディの結合も示す。シート2のパネルは、FACSによる、PSCA陽性細胞へのミニボディの結合、およびミニボディを用いた競合的ELISAアッセイを示す。
【図10】図10は、LAPC−9(PSCA陽性ヒト前立腺癌)およびPC−3(PSCA陰性前立腺癌)異種移植片を有するヌードマウスの、同時記録マイクロPET/マイクロCTスキャンを示す。マウスにI−124放射性標識抗PSCA二重特異性抗体を注射した(左のパネル)、またはLAPC−9(PSCA陽性ヒト前立腺癌)およびPC−3(PSCA陰性前立腺癌)異種移植片を有するヌードマウスの、同時記録マイクロPET/マイクロCTスキャンを示す。マウスにI−124放射性標識抗PSCAミニボディを注射した(右のパネル)。
【図11−1】図11(シート1のパネル)は、本発明の抗体断片の概略図表示を提供する。図11(シート2のパネル)は、LAPC−9(PSCA陽性ヒト前立腺癌)およびPC−3(PSCA陰性前立腺癌)異種移植片を有するヌードマウスの、同時記録マイクロPET/マイクロCTスキャンを示す。マウスにI−124放射性標識抗PSCA二重特異性抗体を注射した。
【図11−2】図11(シート1のパネル)は、本発明の抗体断片の概略図表示を提供する。図11(シート2のパネル)は、LAPC−9(PSCA陽性ヒト前立腺癌)およびPC−3(PSCA陰性前立腺癌)異種移植片を有するヌードマウスの、同時記録マイクロPET/マイクロCTスキャンを示す。マウスにI−124放射性標識抗PSCA二重特異性抗体を注射した。
【図12−1】図12(シート1のパネル)は、LAPC−9(PSCA陽性ヒト前立腺癌)およびPC−3(PSCA陰性前立腺癌)異種移植片を有するヌードマウスの、同時記録マイクロPET/マイクロCTスキャンを示す。マウスにI−124放射性標識抗PSCAミニボディを注射した。シート2のパネルは、異なるマウス体組織における、ミニボディおよび不活性化ミニボディの21時間体内分布を示す表である。
【図12−2】図12(シート1のパネル)は、LAPC−9(PSCA陽性ヒト前立腺癌)およびPC−3(PSCA陰性前立腺癌)異種移植片を有するヌードマウスの、同時記録マイクロPET/マイクロCTスキャンを示す。マウスにI−124放射性標識抗PSCAミニボディを注射した。シート2のパネルは、異なるマウス体組織における、ミニボディおよび不活性化ミニボディの21時間体内分布を示す表である。
【図13−1】図13(シート1のパネル)は、I−124放射性標識抗PSCA野生型scFv−Fc抗体を注射した後の、LAPC−9(PSCA陽性ヒト前立腺癌)異種移植片を有するヌードマウスの、同時記録マイクロPET/マイクロCTスキャンを示す。シート2のパネルは、I−124放射性標識二重変異体抗PSCAscFv−Fc抗体を注射した後の、LAPC−9(PSCA陽性ヒト前立腺癌)およびPC−3(PSCA陰性前立腺癌)異種移植片を有するヌードマウスの、同時記録マイクロPET/マイクロCTスキャンを示す。
【図13−2】図13(シート1のパネル)は、I−124放射性標識抗PSCA野生型scFv−Fc抗体を注射した後の、LAPC−9(PSCA陽性ヒト前立腺癌)異種移植片を有するヌードマウスの、同時記録マイクロPET/マイクロCTスキャンを示す。シート2のパネルは、I−124放射性標識二重変異体抗PSCAscFv−Fc抗体を注射した後の、LAPC−9(PSCA陽性ヒト前立腺癌)およびPC−3(PSCA陰性前立腺癌)異種移植片を有するヌードマウスの、同時記録マイクロPET/マイクロCTスキャンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞の表面のPSCAに特異的に結合するヒト化抗体断片であって、scFv、scFvダイマー(二重特異性抗体)、sc−Fv−C3ダイマー(ミニボディ)、およびscFv−Fcからなる群より選択され、ここで該抗体断片が、図1に示される可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)領域の配列を含む、ヒト化抗体断片。
【請求項2】
請求項1に記載のヒト化抗体断片であって、ここで前記scFvダイマーが、リンカーにより結合された二つのscFvモノマーを含む、ヒト化抗体断片。
【請求項3】
請求項2に記載のヒト化抗体断片であって、ここで前記リンカーが、ペプチド配列を含む、ヒト化抗体断片。
【請求項4】
請求項3に記載のヒト化抗体断片であって、ここで前記ペプチド配列が、配列[(GGGS)]を含む、ヒト化抗体断片。
【請求項5】
請求項1に記載のヒト化抗体断片であって、ここで前記抗体断片がK=2.0nMまたはそれより小さい親和性を有する、ヒト化抗体断片。
【請求項6】
請求項1に記載のヒト化抗体断片であって、ここで前記抗体断片がK=5.5nMまたはそれより小さい親和性を有する、ヒト化抗体断片。
【請求項7】
請求項1に記載のヒト化抗体断片であって、ここで前記抗体断片が、scFvダイマー(二重特異性抗体)である、ヒト化抗体断片。
【請求項8】
請求項1に記載のヒト化抗体断片であって、ここで前記抗体断片が、sc−Fv−C3ダイマー(ミニボディ)である、ヒト化抗体断片。
【請求項9】
細胞表面PSCAを過剰発現する癌を診断する方法であって、該方法が、以下:
(a)scFv、scFvダイマー(二重特異性抗体)、sc−Fv−CH3ダイマー(ミニボディ)、およびscFv−Fcからなる群より選択される、癌細胞の表面上のPSCAに特異的に結合するヒト化抗体断片を、被験体に投与する工程;および
(b)PSCAタンパクが、該被験体において過剰発現されているか否かを分子インビボイメージングを用いて決定し、それによって、細胞表面PSCAを過剰発現する癌を診断する工程、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、ここで前記抗体断片が、図1に示される可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)領域の配列を含む、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、ここで細胞表面PSCAを過剰発現する前記癌が、前立腺癌、膀胱癌、および膵臓癌からなる群より選択される、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、ここで細胞表面PSCAを過剰発現する前記癌が、前立腺癌である、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法であって、ここで前記ヒト化抗体断片が、検出可能な部分に連結されている、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、ここで前記検出可能な部分が、放射性核種、ナノ粒子、蛍光色素、蛍光マーカー、および酵素からなる群より選択される、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、ここで前記検出可能な部分が放射性核種である、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、ここで前記放射性核種が、64Cu、99mTc、111In、123I、124Iまたは131Iからなる群より選択される、方法。
【請求項17】
請求項9に記載の方法であって、ここで前記分子インビボイメージングが、MRI、SPECT、PET、および平面ガンマカメライメージングからなる群より選択される、方法。
【請求項18】
細胞表面PSCAを過剰発現する癌の予後を提供する方法であって、該方法が、以下:
(a)scFv、scFvダイマー(二重特異性抗体)、sc−Fv−CH3ダイマー(ミニボディ)、およびscFv−Fcからなる群より選択される、癌細胞の表面上のPSCAに特異的に結合するヒト化抗体断片を、被験体に投与する工程;および
(b)PSCAタンパクが、該被験体において過剰発現されているか否かを分子インビボイメージングを用いて決定し、それによって、細胞表面PSCAを過剰発現する癌の予後を提供する工程、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、ここで前記抗体断片が、図1に示される可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)領域の配列を含む、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、ここで細胞表面PSCAを過剰発現する前記癌が、前立腺癌、膀胱癌、および膵臓癌からなる群より選択される、方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法であって、ここで細胞表面PSCAを過剰発現する前記癌が、前立腺癌である、方法。
【請求項22】
請求項18に記載の方法であって、ここで前記ヒト化抗体断片が、検出可能な部分に連結されている、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、ここで前記検出可能な部分が、放射性核種、ナノ粒子、蛍光色素、蛍光マーカー、および酵素からなる群より選択される、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、ここで前記検出可能な部分が放射性核種である、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、ここで前記放射性核種が、64Cu、99mTc、111In、123I、124Iまたは131Iからなる群より選択される、方法。
【請求項26】
請求項18に記載の方法であって、ここで前記分子インビボイメージングが、MRI、SPECT、PET、および平面ガンマカメライメージングからなる群より選択される、方法。
【請求項27】
細胞表面PSCAを過剰発現する癌の診断または予後を提供する方法であって、該方法が、以下:
(a)生物学的サンプルを、scFv、scFvダイマー(二重特異性抗体)、sc−Fv−CH3ダイマー(ミニボディ)、およびscFv−Fcからなる群より選択され、癌細胞の表面上のPSCAに特異的に結合するヒト化抗体断片と接触させる工程であって、ここで前記抗体断片が、図1に示される可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)領域の配列を含む工程;および
(b)PSCAタンパクが、該生物学的サンプル中で過剰発現されているか否かを決定し、それによって、細胞表面PSCAを過剰発現する該癌の診断または予後を提供する工程、
を含む、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、ここで細胞表面PSCAを過剰発現する前記癌が、前立腺癌、膀胱癌、および膵臓癌からなる群より選択される、方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、ここで細胞表面PSCAを過剰発現する前記癌が、前立腺癌である、方法。
【請求項30】
請求項27に記載の方法であって、ここで前記生物学的サンプルが、組織生検または体液サンプルである、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、ここで前記体液サンプルが、血液、尿、または前立腺液である、方法。
【請求項32】
請求項27に記載の方法であって、ここで前記ヒト化抗体断片が、検出可能な部分に連結されている、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、ここで前記検出可能な部分が、放射性核種、ナノ粒子、蛍光色素、蛍光マーカー、および酵素からなる群より選択される、方法。
【請求項34】
被験体において、細胞表面PSCAを過剰発現する癌を処置または予防する方法であって、該方法が、以下:
(a)scFv、scFvダイマー(二重特異性抗体)、sc−Fv−CH3ダイマー(ミニボディ)、およびscFv−Fcからなる群より選択され癌細胞の表面上のPSCAに特異的に結合する、治療上有効な量のヒト化抗体断片を、被験体に投与する工程であって、ここで該抗体断片が、図1に示される可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)領域の配列を含み、それによって、被験体において細胞表面PSCAを過剰発現する癌を処置または予防する工程、
を含む、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、ここで細胞表面PSCAを過剰発現する前記癌が、前立腺癌、膀胱癌、および膵臓癌からなる群より選択される、方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって、ここで細胞表面PSCAを過剰発現する前記癌が、前立腺癌である、方法。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図1−3】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図4c】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7a】
image rotate

【図7b】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図9−1】
image rotate

【図9−2】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11−1】
image rotate

【図11−2】
image rotate

【図12−1】
image rotate

【図12−2】
image rotate

【図13−1】
image rotate

【図13−2】
image rotate


【公表番号】特表2009−531324(P2009−531324A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501542(P2009−501542)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/007020
【国際公開番号】WO2007/109321
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】