説明

癌治療のためのrhuMAbHER2と組み合わせたドセタキセル

【課題】ドセタキセルまたはrhuMAb HER2の単独投与した場合に比べて共同作用的治療効果を有する癌の治療方法の提供。
【解決手段】約20〜100mg/mのような一定用量を1時間にわたって癌患者に投与(例えば、静脈経路により、3週間に1回または1週間毎に投与)されるドセタキセルおよび約4mg/kgのような一定用量を癌患者に投与(例えば、静脈経路)されるrhuMAb HER2(HERCEPTIN(登録商標))する治療用医薬の組合せ。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は癌治療に有用な抗腫瘍薬の、新規な治療的かつ共同作用的組合せに関する。
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
【0002】
発明の背景
本発明はさらに詳しくは、癌治療のための組換えヒト化抗HER2抗体、すなわちrhuMAb HER2と組み合わせたドセタキセル(docetaxel)の使用に関する。
選択された用語の定義は次の通りである:
「ドセタキセル」とは、TAXOTERE(登録商標)の有効成分あるいはTAXOTERE(登録商標)自体をいい;
「rhuMAb HER2」またはtrastuzumabとは、HERCEPTIN(登録商標)の有効成分あるいはHERCEPTIN(登録商標)自体をいい;
「HER2」とは、ヒト上皮増殖因子2, 185kDトランスメンブラン糖タンパク質受容体(p185HER2)をいい;また
「薬剤」(1種または複数種)とは、上記の有効成分またはそれらを含有する医薬または医薬製剤をいう。
【0003】
これまで研究者らは、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))およびその誘導体(TAXOL(登録商標)、パクリタキセルなど)が固形腫瘍およびその他の悪性腫瘍のような悪性新生物の治療に有用であることに注目してきた。欧州特許EP0253738および国際特許出願WO92/09589では、ドセタキセルの製造方法が記載されている。一般にその用量は患者によって様々であるが、ドセタキセルを60〜400mg/m含有している。通常、ドセタキセルは静脈内経路により3週間毎に1時間にわたって60〜100mg/mの用量を投与する(Textbook of Medical Oncology, Franco Cavelli et al., Martin Dunitz Ltd., p. 4623 (1997))。
【0004】
多くの臨床研究により、多種にわたる癌、特に乳癌の治療におけるドセタキセルの効力が確認されてきた。ドセタキセルの効果は第一ライン治療や第二ライン治療でも示されている。ドセタキセルの作用機構は細胞レベルでの微小管構築の増大およびチューブリン解重合の阻害によるものと考えられている。
【0005】
ヒト化した組換えモノクローナル抗体rhuMAb HER2(Trastuzumab、HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)もまたHER2を発現する癌の治療に有効であることが分かっている。neuまたはc−erbB−2として知られる遺伝子は、HER2として知られるヒト上皮増殖因子受容体2をコードする。HER2は上皮増殖因子受容体と部分相同性を有するトランスメンブラン受容体チロシンキナーゼであり、この両受容体はI型チロシンキナーゼ受容体スーパーファミリーに属している。ヒト乳癌の約30%がHER2を過剰発現する。かかる過剰発現は予後の不十分さと関係している。rhuMAb HER2はHER2を過剰発現している乳癌細胞の増殖を阻害し、単独の薬剤としていくつかの臨床的作用を示している。
【0006】
またrhuMAb HER2がHER2/neuを過剰発現しているヒト乳癌異種移植片に対する化学療法薬の抗腫瘍活性を増強することも記載されている(Baselga et al., Cancer Research, 58, 2825-2831, July 1, 1998)が、この結果は単に臨床前動物モデルのものにすぎない。
【0007】
さらにtaxotereおよびrhuMAb HER2を単独で使用する両治療には副作用の心配がある。ドセタキセルをはじめとするタキソイド誘導体に基づくあらゆる治療には特に脊髄抑制、好中球減少症、過敏症、末梢神経障害、および体液停留のような重篤かつ厄介な毒性を示す可能性がある(Fumoleau et al., Bull. Cancer, (82) 8: 629-636 (1995))。一方、rhuMAb HER2は心臓機能不全に関連していることが分かっている薬剤であり、この薬剤による治療でまれに好中球減少症、脱毛および粘膜炎が起こる。かかる毒性が顕れた場合、薬剤の用量を制限しなければならず、治療効果が限定されたものとなる。
【0008】
従って、当技術分野では、投与量を増やさず、かつ、有害な副作用を増大させずにドセタキセルおよびrhuMAb HER2の活性を増強する癌治療の医薬製剤および方法がまだ検討されておらず必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、共同作用的効果をもたらすのに有効な量でドセタキセルおよびrhuMAb HER2をそれを必要とする患者にを投与することを含んでなる、癌の治療方法を提供する。本発明の好ましい特徴の中に、ドセタキセルおよびrhuMAb HER2の比率により治療的共同作用性活性を提供する組成物がある。この組合せにおける効果の向上は、得られる治療的共同作用性を調べることによって示された。かかる治療的共同作用性はその組合せが1つまたは他の構成要素をその至適用量で使用した場合に比べて治療上優れていることを示すことで証明される(T. H. Corbett et al., Cancer Treatments Reports, 66: 1187 (1982))。組合せの効果を証明するためには、対象となる構成要素各々単独の最大許容量を比較する必要がある。
【0010】
またドセタキセルおよびrhuMAb HER2の組合せによって、腫瘍体積の成長が、腫瘍に冒された哺乳類への各化合物単独の投与から予期される以上に有意に弱まることも認められている。
【0011】
本発明のもう1つの態様としては、ドセタキセルとrhuMAb HER2を組み合わせて含有する、癌治療のための新規な医薬キットおよび医薬を含む。
【0012】
本発明のさらにもう1つの態様は癌治療のためのドセタキセルおよびrhuMAb HER2の新規な投与計画に関し、ここではrhuMAb HER2を1週間毎に投与し、かつドセタキセルを1週間または3週間毎に投与する。
【0013】
好ましい具体例の説明
本発明の発明者らは臨床試験により、ドセタキセルとrhuMAb HER2との特定量における組合せによって腫瘍性疾患、特に乳癌、さらく詳しくはHER2/癌原遺伝子が過剰発現される転移性乳癌の治療において予期しない強い共同作用性治療効果が顕れることを明らかにした。一般に、本発明によれば、ドセタキセルを約20〜100mg/mの用量で投与し、rhuMAb HER2を2〜10mg/kgの用量で投与する。本発明の特定の具体例では、ドセタキセルを3週間に1回約75mg/mの用量で投与し、rhuMAb HER2を最初4mg/kgの用量で、以後1週間毎に2mg/kgの用量で投与する。本発明のもう1つの具体例では、ドセタキセルを1週間毎に35mg/mの用量で投与し、rhuMAb HER2を開始用量約4mg/kg、続いて1週間毎に2mg/kgを投与する。これらの特定の具体例ではいずれも、組合せにより治療的共同作用性が示される。
【0014】
治療的共同作用性は組合せが1つまたは他の構成要素をその至適用量で使用した場合に比べて治療上優れていることを示すことによって証明される(T. H. Corbett et al., Cancer Treatments Reports, 66: 1187 (1982))。従って、個々の成分から得られる応答率を第一に考慮しなければならない。
【0015】
最近発表された2つの臨床研究では、rhuMAb HER2の単独投与により完全鎮静および部分鎮静データが得られ、それらから他覚的応答率を算出した。最初の研究からは、全体の他覚的応答率11.6%が報告された(J. Baselga et al., Oncology, March 1997, Supplement 2: 43-48)。多国籍による第2の研究からは、患者に抗体を添加用量4mg/kgで投与し、続いて1週間毎に2mg/kgを投与する(この用量および投与は実施例において用いられている)という2つの大規模な臨床試験が報告された。この大規模な研究では、15%の全体の他覚的応答率で8例の完全応答(4%)と26例の部分応答(11%)があった(M. A. Cobleigh, C. L. Vogel. et al., J. Clin. Oncology, 17: 2639-2648(1999))。
【0016】
いくつかの組織内部特許研究では、ドセタキセル単独で全応答率40〜43%(100mg/mの用量における第二ライン治療)、48%(75mg/mの用量における第一ライン治療)および61%(100mg/mの用量における第一ライン治療)が示された。
【0017】
これに対し、下記実施例1および2では、より低い、従ってより毒性の少ない用量のドセタキセルをrhuMAb HER2と組み合わせて投与することによっていずれの成分単独の場合と比べて予期しない優れた全応答率が得られた。特にこれらの第二ライン研究では、rhuMAb HER2を開始添加量約4mg/kg、続いて1週間毎に2mg/kgを投与し、一方、ドセタキセルを21日毎に75mg/mの用量で投与した。この予備研究でこれまでに得られた全応答率は44%であったが、組合せに必要なドセタキセルの用量が単独治療における100mg/mよりも少ない25mg/mであることから、実際にはこれはこれまでに得られた第二ラインのドセタキセル単独の場合の率(40〜43%)よりも優れていることになる。さらにまた、全応答率44%はrhuMAb HER2を単独で使用する場合の全応答率15%よりも著しく優れている。よって、この結果により治療的共同作用性が証明される。
【0018】
同様に、実施例3では、より低用量のドセタキセルをrhuMAb HER2と組み合わせて投与することによっていずれの成分単独の場合よりも予期しない優れた全応答率が得られた。特にHER2過剰発現の第一ライン転移性乳癌患者の治療にはドセタキセルを1週間毎に35mg/m、rhuMAb HER2を開始添加量4mg/kgの後、1週間毎に2mg/kgを投与した。全応答率は54%であった。これは第一ライン治療において用量75mg/mでドセタキセル単独の場合の応答率48%よりも優れ、かつ、同量および同一投与様式でrhuMAb HER2単独の場合の応答率15%よりも優れている。言い換えれば、組合せ治療に使用する場合にはより低用量のドセタキセルと同量のrhuMAb HER2によって、いずれの薬剤単独の場合よりも優れた、54%の全応答率が得られた。よって、このドセタキセル/rhuMAb HER2組合せは治療的共同作用性があった。
【0019】
ドセタキセルの新規な使用は個別に投与する組合せに限定されるものではなく、共同作用的治療効果が得られるいずれの場合のドセタキセルおよびrhuMAb HER2の物理的結合によって得られる組成物も含まれる。
【0020】
本発明によるドセタキセルのこの新規な使用により、多面発現耐性または「多剤耐性」もしくはその他の耐性機構の現象を容易に回避または遅延し得ることも分かった。下記実施例1および2に記載するように、第二ライン治療として本発明の組合せにより首尾良く治療された臨床患者の多くはもはや他種の化学療法にはすでに応答できずなかったが、このことからこの新規な組合せが癌の多剤耐性またはその他の耐性種との対抗に有効であることが示唆される。
【0021】
ドセタキセルは1週間に1回または3週間に1回投与すればよい。これは1時間にわたって;または30分間等のより短い時間にわたって、あるいは30分〜1時間の間の任意の期間で投与してもよい。ドセタキセルの用量は治療する癌の性質、薬剤を与える間隔および投与方法によって異なる。好ましい用量は通常3週間毎に100mg/mまたは75mg/mである。所望により、この用量は100mg/m未満であってもよいし、または20mg/m〜100mg/mの間の用量を含んでももよい。例えば、好適な用量は1週間を基準として20〜50mg/mの間、好ましくは40mg/mである。
【0022】
モノクローナル抗体、rhuMAb HER2は通常1週間に1回投与する。rhuMAb HER2は約30〜120分間にわたって;好ましくは90分間にわたって投与することが適当である。rhuMAb HER2の各用量は2〜20mg/kgの範囲にあってよい。最も好ましい態様では、モノクローナル抗体を最初に4mg/kgの用量で、続いて1週間毎に約2mg/kgの用量で投与する。
【0023】
ドセタキセルおよびrhuMAb HER2はいずれも非経口投与してもよいが、静脈経路(IV)で与えるのが好ましい。またこれらの薬剤は局所治療の場合には腹膜内投与してもよい。両薬剤は組合せの最大効果が得られるように、同時に、個別に、または一定の時間間隔で投与してもよい。各投与については迅速全投与から連続的点滴まで継続時間を変えることが可能である。
【0024】
静脈投与用の薬剤は一般に医薬上許容される滅菌溶液または懸濁液であり、所望により要すれば使用時にまたは使用直前に調製してもよい。非水性溶液または懸濁液の調製には、オリーブ油またはゴマ油のような天然植物油、液体ペトロラタム、またはオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルを使用してもよい。滅菌水性溶液は生成物の水溶液からなってもよい。pHを適宜調整し、溶液を例えば、十分量の塩化ナトリウムまたはグルコースで等張とした水性溶液は静脈投与に好適である。滅菌は加熱または組成物に悪影響を及ぼさない他のいずれの手段によって行ってもよい。また薬剤はリポソーム形態またはシクロデキストリン、ポリエチレングリコールまたはポリソルベートとの結合形態を取ってもよい。経口および腹膜内投与用の組成物は水性懸濁液または溶液であることが好ましい。
【0025】
本発明のドセタキセルを使用する組成物は、これらの薬剤および1種以上の好適な医薬上許容される賦形剤を含んでなる。ドセタキセルの好適な医薬製剤は、ポリソルベート中のドセタキセル40mg/ml溶液を0.59mlまたは2.36ml含有する20mgまたは80mgバイアルで供給してもよい。次いでこのバイアルを、水で希釈した13%エタノール溶液1.83mlまたは7.33mlを含有する付加的に供給された対応する溶媒バイアルで希釈する。得られる溶液のドセタキセル濃度は10mg/mlとなる。
【0026】
抗体rhuMAb HER2は非経口投与用にバイアル当たり名目含量400mgの凍結乾燥製剤として使用するために供給する。ヒスチジン、トレハロースおよびポリソルベート20のいずれか1つにまたはそれらを組合せて処方してもよい。各バイアルは、各バイアルで提供される静菌注射水USP(1.1%ベンジルアルコール含有)20mlで再構成する。再構成した溶液は22mg/ml rhuMAb HER2を含有しており、これを0.9塩化ナトリウム注射USP250mlに加えればよい。この処方は複数回の使用のために設計することもできるが、再構成後は28日以内に使用しなければならない。
【0027】
本発明によれば、ドセタキセル量が組合せの約10〜90重量%であることが有利である。この含量は結合させた物質の性質、必要な効力および治療する癌の性質によって変更してもよく、医師によって決定すればよい。
【0028】
本発明によれば、ドセタキセルの新規な使用はあらゆる種類の癌、さらに好ましくは乳癌、卵巣癌、肺癌、頭頸部癌、前立腺癌、胃癌またはカポジ肉腫の治療に極めて有利であり、いっそうさらに好ましくはドセタキセルの新規な使用は特に乳癌の治療に好適である。
【0029】
以下、実施例により本発明のドセタキセルの新規な使用を説明するが、これに限定するものではない。
【0030】
実施例1:
ドセタキセルおよびrhuMAb HER2の組合せの安全性および効力を以下のプロトコールに従い、患者において調べた:
転移性乳癌、2+または3+HER2過剰発現を有するか、転移性乳癌に対する事前の1回までの非タキサンを含む管理に失敗したか、またはアジュバントまたは転移状態においてさらにいずれかのアジュバント化学療法管理またはホルモン療法を受けた患者が研究には適していた。患者は二次元的に測定可能であるかまたは評価可能であるかのいずれかの疾患を有する必要があった。
【0031】
外来患者の設定で組合せ療法を行い、最初にrhuMAb HER2を、続いて同じ日にドセタキセルを静脈投与した。急性rhuMAb HER2毒性はドセタキセルの投与の前に消散させた。
【0032】
0日目に患者に、投与するrhuMAb HER2の4mg/kg添加量の静脈投与を、続いて疾病の進行または許容されない副作用が起こるまで1週間毎に2mg/kgを施した。
【0033】
rhuMAb HER2の開始用量を90分間にわたって投与した。この最初の用量が十分に許容された場合、その後の点滴時間を時に30分間に短縮した。開始またはその後の用量が十分に許容されなかった(例えば、患者が発熱または寒気を覚えた)場合、用量が十分に許容された後にのみ、その後の点滴を短縮した。
【0034】
rhuMAb HER2の開始用量を完了した後、1時間、患者を医師の管理下に置いた。最初の点滴によって不都合が起こらなければ、第2の点滴についての点滴後の観察期間を場合により30分間に短縮し、または場合によりその後の点滴を完全に除いた。
【0035】
rhuMAb HER2の開始用量および適当な観察期間を完了した後、外来患者の境遇においてドセタキセルを投与した。ドセタキセルを施した患者には前投薬を行った(デクサメタゾンなど、12時間に1回8mgを口から、ドセタキセルの各点滴24時間前に開始、計3日間継続)。静脈点滴を完了し、かつ生命徴候が安定したことを確認するのに十分な観察期間をおいた後に患者を解放するものとした。
【0036】
rhuMAb HER2の開始投与3週間後、ドセタキセルを75mg/mの用量で1時間の静脈点滴として与えた。ドセタキセルのこの用量を21日間に1回計6用量、または進行性疾患または許容されない副作用のいずれかが起こるまで与えた。
【0037】
患者の第二期予防としてG−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)が必要とされた時、治療サイクルの2〜5日目に製造業者の推奨する用量および計画においてG−CSFの皮下注射による投与を開始した。
【0038】
第一期終了点としては応答率、応答期間、治療ができない時間、安全性および許容性を含んだ。
【0039】
評価可能な病巣のX線撮影による調査を9、18、27週目に、次いでこれ以降疾病が進行するまで3ヶ月に1回行った。この試験において患者は最大1年間処置された。X線撮影または臨床評価により他覚的に疾病の進行が起こっていれば、速やかにその患者を調査から外して他の治療の選択を提示した。病気の進行が現れた総ての患者は調査の統計的解析が終了するまで2ヶ月毎に生存情報について追跡した。
【0040】
応答基準は次の通りであった:
完全応答(CR):X線撮影および/または目視により明らかな総ての腫瘍が最短4週間で消滅;
部分応答(PR):測定可能な総ての病巣の垂直径の積の総和が最短4週間で少なくとも50%縮小;
軽微応答(MR):測定可能な総ての病巣の垂直径の積の総和が25〜49%縮小;
安定疾患:測定可能な病巣の大きさに25%を超える変化がない;
進行性疾患:いずれの測定可能な病巣においても25%以上の増加が他覚的に明らか;および
病気の進行、進行しない時間、治療ができない時間および生存。
【0041】
13人の適した患者が上記プロトコールにより治療を受けた。2人に部分応答が確認され、3人に軽微応答があり、進行性疾患を理由に除外した患者はなかった。重大な毒性の報告はなかった。よって、HER2過剰発現乳癌患者の化学療法にrhuMAb HER2を加えることで応答率および腫瘍進行時間だけでなく、生存についても向上することが分かった。
【0042】
実施例2:
実施例1の第一期II試験を継続し、rhuMAb HER2およびドセタキセルの組合せの効力ならびに安全性プロフィールを測定可能な転移性乳癌の患者において確認した。
【0043】
この試験では1日目にrhuMAb HER2を4mg/kg添加用量を、続いて疾病の進行まで1週間毎に2mg/kgを与えた。rhuMAb HER2後、各サイクルの1日目にドセタキセルを3週間毎に75mg/mを投与した。1サイクルとは1および22日目にドセタキセルを投与する3週間の治療を示す。
【0044】
21人の患者はドセタキセルの108+サイクルおよびrhuMAb HER2の300+用量を受けた。これらの患者の年齢は36〜72歳の範囲内にあり、中央値は54歳であった。総ての患者の腫瘍標本をDAKOキットによるHER2発現測定(免疫組織化学)のために中央研究所に送った。14人の患者は3+過剰発現を示し、7人の患者は2+過剰発現を示した:16人は化学療法の前に治療を行った。各患者は中央値6サイクルを受け、この調査の時間の中央値は約200日であった。
【0045】
毒性は最小限にとどまり、熱性好中球減少症の1症状の発現、および3人の患者には2等級以上の皮膚炎があった。臨床的に重大な心臓毒性は見られなかった(左心室駆出部分、LVEF、40%以下の低下なし、LVEF20%以上の低下なし、および徴候なし)。
【0046】
応答についての評価が可能な16人の患者(3人の患者は評価するには時期が早すぎた、2人の患者は応答についての評価ができなかった)では、44%の全応答率で1CR、6PRおよび3MRと認められた。3+過剰発現患者において主要な7種の応答のうち6種が認められた。1人の患者にのみ、その患者の最大の応答として進行性疾患が起こっていた。進行時間の中央値は6ヶ月を超えていた。
【0047】
他覚的腫瘍応答および進行時間の双方、ならびに最小限の毒性により示されるように、この組合せ管理により効力のある抗腫瘍活性化がもたらされた。
【0048】
実施例3:
本実施例ではHER2過剰発現(2+または3+)している転移性乳癌(“MBC”)の第一ライン治療として1週間に1回のドセタキセルと1週間に1回のrhuMAb HER2とを組み合わせた。事前の化学療法管理を1回を超えて受けておらず、かつ事前にタキサン(taxane)療法を受けていないMBCの患者が適していた。
【0049】
治療管理は次の通りであった。ドセタキセルの8週間に35mg/m のIV6をrhuMAb HER2の開始添加用量4mg/kgの後、1週間に1回2mg/kgの同日静脈投与と組み合わせた。14人の適した患者の予備毒性および応答データおよび治療の26サイクルを完了した。総ての腫瘍を中心に再検討し、HER2を過剰発現することを調べた(10人の患者−HER2 3+;4人の患者−HER2 2+)。患者の年齢は36〜73歳の範囲内にあり、中央値は53歳であった。疾患部位数は1〜4の範囲内にあり、中央値は2であった。臨床結果は次の通りであった。
【0050】
1人の患者はサイクル1で3等級の悪心、4等級の好中球減少症、および好中球減少症熱を受けた。その他の3または4等級の毒性はいずれの他の患者にも認められなかった。最も数多く報告された非血液学的毒性は疲労(3人の患者−G2、8人の患者−G1)、消化不良(2人の患者−G2、4人の患者−G1)、下痢(1人の患者−G2、5人の患者−G1)、および悪心(1人の患者−G3、2人の患者−G2、3人の患者−G1)であった。MUGAスキャンを基準にてかつ8週後毎に行った。心臓機能不全は収縮期の駆出率(EF)の低下により測定した。いずれの患者においてもEFの低下徴候はなかった。1人の患者にのみ、基準において68%〜2サイクルの治療後52%の無症候性のEFの低下があったが、医師が介入することなくEFは基準(65%)に回復した。
【0051】
全応答率54%の13人の評価可能患者に1人のCRおよび6人のPRが認められた。予備試験ではあるが、この応答率は上記のrhuMAb HER2またはドセタキセルのいずれか単独で報告された率より有意に高い。これらの予備データから、1週間に1回のドセタキセルおよびrhuMAb HER2の組合せは十分に許容され、結果として有意な抗腫瘍活性が得られる。
【0052】
本発明はその精神または本質的な特徴を逸脱することなく、その他の特定の形態で具体化できる。記載の具体例は例示としてのみあらゆる点で考慮されるべきものであって、これに限定されるものではない。従って、本発明の範囲は上記の説明によってではなく、添付の請求の範囲によって示される。請求項と同等の意味および範囲にあるあらゆる変更がそれらの範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定用量のドセタキセルおよび一定用量のrhuMAb HER2をそれを必要とする患者に投与することを含んでなり、該用量がドセタキセルまたはrhuMAb HER2単独を投与した場合に比べて共同作用的治療効果を有する、癌の治療方法。
【請求項2】
ドセタキセルおよびrhuMAb HER2が同時にまたは個別に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
癌が転移性乳癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
乳癌においてHER2/癌原遺伝子が過剰発現している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ドセタキセルおよびrhuMAb HER2の投与が静脈経路によるものである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ドセタキセルが1時間にわたって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ドセタキセルが30分〜1時間にわたって投与される、請求項6に記載の癌治療法。
【請求項8】
ドセタキセルが約20〜100mg/mの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ドセタキセルが約75mg/mの用量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ドセタキセルが約35mg/mの用量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ドセタキセルが3週間に1回投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
ドセタキセルが1週間毎に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
ドセタキセルおよびrhuMAb HER2を含んでなる治療用医薬の組合せ。
【請求項14】
約20〜100mg/mの用量のドセタキセルおよび約2〜10mg/kgの用量のrhuMAb HER2を含んでなる、請求項13に記載の医薬の組合せ。
【請求項15】
約75mg/mの用量のドセタキセルを含んでなる、請求項14に記載の医薬の組合せ。
【請求項16】
約4mg/kgの用量のrhuMAb HER2を含んでなる、請求項14に記載の医薬の組合せ。
【請求項17】
G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)をそれを必要とする患者に投与することをさらに含んでなる、請求項2に記載の方法。

【公開番号】特開2012−136535(P2012−136535A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35366(P2012−35366)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【分割の表示】特願2000−610517(P2000−610517)の分割
【原出願日】平成12年4月7日(2000.4.7)
【出願人】(591156825)アベンテイス・フアルマ・ソシエテ・アノニム (7)
【氏名又は名称原語表記】Aventis Pharma S.A.
【Fターム(参考)】