説明

癌治療用人工リンパ節

【課題】生体内において癌の治療効果が持続する人工リンパ節を提供する。
【解決手段】以下の工程を包含する、癌抗原特異的な免疫反応を誘導可能な人工リンパ節の製造方法:(a)癌抗原と、細胞性免疫を誘導可能なアジュバントとを用いて非ヒト動物を免疫する工程;および(b)免疫した非ヒト動物に、サイトカイン産生ストローマ細胞および樹状細胞を含む高分子生体材料からなる人工リンパ節材料を移植する工程、前記製造方法により得られた、癌抗原特異的な免疫反応を誘導可能な人工リンパ節、前記人工リンパ節を含む癌の治療剤、ならびに以下を含む、癌の治療用人工リンパ節の製造用キット:(a)癌抗原;(b)細胞性免疫を誘導可能なアジュバント;(c)サイトカイン発現ベクターおよびストローマ細胞、またはサイトカイン産生ストローマ細胞;(d)樹状細胞;および(e)高分子生体材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療用人工リンパ節に関する。詳しくは、癌抗原特異的インターフェロンγを産生するT細胞の供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ節は、高度に組織化された三次元構造をとることにより、リンパ球が抗原及び抗原提示細胞と相互作用して抗原特異的な免疫反応(適応免疫)を開始する場所であり、生体防御のための必須の器官である。
【0003】
本発明者らは、ストローマ細胞、サイトカインおよび高分子生体材料を人工リンパ組織の構築に必須である三要素と仮定し、ストローマ細胞とサイトカインを高分子生体材料から構成される三次元構造に組み込み、これをマウスの腎皮膜下に移植することによって、移植の3週間後には、二次リンパ組織と構造的に類似した組織(人工リンパ節)を構築できること、さらに、この三要素の組み合わせに骨髄由来の活性化樹状細胞を加えることによって、人工リンパ節構築の効率を改善できる(移植組織の約60〜80%)ことを明らかにした(特許文献1および非特許文献1を参照のこと)。また、本発明者らは、免疫不全の個体において効率のよい適応免疫反応を誘導可能な、抗原特異的抗体を産生する人工リンパ節を提供することにも成功した(特許文献2)。これらの人工リンパ節は、生体内で天然のリンパ節と同様の機能を発揮するものである。特許文献1に記載の人工リンパ節は、T細胞領域とB細胞領域が通常のリンパ節と同様に明確に区別されて存在すること、および当該人工リンパ節におけるCD4T細胞とCD8T細胞の割合としてはCD4T細胞が多数を占めており、これは正常リンパ節のT細胞領域のCD4T細胞とCD8T細胞の割合と類似していることを特徴とする。特許文献2に記載の人工リンパ節は、T細胞およびB細胞と共に、免疫反応において重要な役割を果たす樹状細胞が存在すること、中心部に濾胞樹状細胞のネットワークを含むB細胞領域が存在すること、胚中心B細胞様のB細胞が存在すること、抗体産生細胞である形質細胞が存在することなどを特徴とする。
【0004】
一方、癌の治療において、様々な免疫療法が試みられており、例えば、癌抗原ペプチドを用いたワクチン接種、癌タンパク抗原を用いたワクチン接種、IL−2活性化リンパ球、NKT細胞、樹状細胞などを用いた各種細胞療法、サイトカイン療法、抗体製剤、BCGまたは結核菌などの菌体成分を用いたBRM非特異的免疫療法などが知られているが、生体内での免疫賦活作用を持続させるためには、複数回の適用が要求される。
【特許文献1】特開2004−255110号公報
【特許文献2】特開2006−129839号公報
【非特許文献1】Sachiko Suematsu and Takeshi Watanabe, Nature Biotechnology vol.22, 1539-1545, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生体内において癌の治療効果が持続する人工リンパ節を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、癌抗原と特定のアジュバントとを組合わせて免疫した動物を用いることで癌抗原特異的CD8陽性キラーT細胞の治療人工リンパ節を構築することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 以下の工程を包含する、癌抗原特異的な免疫反応を誘導可能な人工リンパ節の製造方法:
(a)癌抗原と、細胞性免疫を誘導可能なアジュバントとを用いて非ヒト動物を免疫する工程;および
(b)免疫した非ヒト動物に、サイトカイン産生ストローマ細胞および樹状細胞を含む高分子生体材料からなる人工リンパ節材料を移植する工程。
〔2〕 以下の工程をさらに包含する、前記〔1〕記載の製造方法:
(c)前記移植工程で構築された人工リンパ節を、移植した非ヒト動物から回収する工程。
〔3〕 前記アジュバントが完全フロイントアジュバント、CpGアジュバント、リポソーム、BCG、polyI:C、R848、リポポリサッカリドおよび水酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記〔1〕に記載の製造方法。
〔4〕 前記樹状細胞が骨髄細胞由来の樹状細胞である、前記〔1〕記載の製造方法。
〔5〕 前記高分子生体材料が、コラーゲンスポンジである、前記〔1〕記載の製造方法。
〔6〕 前記サイトカインがリンホトキシンおよび/またはケモカインである、前記〔1〕記載の製造方法。
〔7〕 前記非ヒト動物が、非ヒト哺乳動物である、前記〔1〕記載の製造方法。
〔8〕 前記〔1〕〜〔7〕いずれか1項に記載の製造方法により得られた、癌抗原特異的な免疫反応を誘導可能な人工リンパ節。
〔9〕 前記〔1〕の免疫工程で用いた癌抗原で刺激した場合に、癌抗原特異的インターフェロンγ産生細胞を優勢に含むものである、前記〔8〕に記載の人工リンパ節。
〔10〕 前記〔8〕または〔9〕記載の人工リンパ節を含む、癌の治療剤。
〔11〕 以下を含む、癌の治療用人工リンパ節の製造用キット:
(a)癌抗原;
(b)細胞性免疫を誘導可能なアジュバント;
(c)サイトカイン発現ベクターおよびストローマ細胞、またはサイトカイン産生ストローマ細胞;
(d)樹状細胞;および
(e)高分子生体材料。
〔12〕 前記アジュバントが完全フロイントアジュバント、CpGアジュバント、リポソーム、BCG、polyI:C、R848、リポポリサッカリドおよび水酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記〔11〕に記載のキット。
〔13〕 前記樹状細胞が骨髄細胞由来の樹状細胞である、前記〔11〕記載のキット。
〔14〕 前記高分子生体材料がコラーゲンスポンジである、前記〔11〕記載のキット。
〔15〕 前記サイトカインがリンホトキシンおよび/またはケモカインである、前記〔11〕記載のキット。
〔16〕 以下の工程を包含する、癌抗原特異的な免疫反応を誘導可能な人工リンパ節の製造方法:
(a1)癌抗原と、細胞性免疫を誘導可能なアジュバントとを用いて動物を免疫する工程;および
(b1)免疫した動物に、サイトカイン産生ストローマ細胞および樹状細胞を含む高分子生体材料からなる人工リンパ節材料を移植する工程。
〔17〕 前記免疫工程が前記動物の生体内で担持している癌細胞により行われるものである、前記〔16〕に記載の製造方法。
〔18〕 前記移植工程が前記動物における癌の手術前、手術中または手術後に行われるものである、前記〔16〕に記載の製造方法。
〔19〕 以下を含む、担癌動物に対する癌治療用人工リンパ節の移植キット:
サイトカイン発現ベクターおよびストローマ細胞、またはサイトカイン産生ストローマ細胞;
樹状細胞;および
高分子生体材料。
〔20〕 前記樹状細胞が骨髄細胞由来の樹状細胞である、前記〔19〕記載の移植キット。
〔21〕 前記高分子生体材料がコラーゲンスポンジである、前記〔19〕記載の移植キット。
〔22〕 前記サイトカインがリンホトキシンおよび/またはケモカインである、前記〔19〕記載の移植キット。
〔23〕 前記担癌動物がヒトである、前記〔19〕記載の移植キット。
〔24〕 担癌動物における癌の手術中もしくは手術後に移植するための、以下を含む癌の再発または転移予防剤:
サイトカイン発現ベクターおよびストローマ細胞、またはサイトカイン産生ストローマ細胞;
樹状細胞;および
高分子生体材料。
〔25〕 前記樹状細胞が骨髄細胞由来の樹状細胞である、前記〔24〕記載の予防剤。
〔26〕 前記高分子生体材料がコラーゲンスポンジである、前記〔24〕記載の予防剤。
〔27〕 前記サイトカインがリンホトキシンおよび/またはケモカインである、前記〔24〕記載の予防剤。
〔28〕 前記担癌動物がヒトである、前記〔24〕記載の予防剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の人工リンパ節の製造方法および製造用キットによれば、癌抗原特異的な免疫反応を誘導可能な人工リンパ節をテーラーメイドに提供することができる。本発明の人工リンパ節は、天然のリンパ節と比較して、癌抗原刺激によるインターフェロンγの産生能に優れ、細胞傷害性T細胞(CD8陽性キラーT細胞)の供給源としても優れるものであり、癌の治療に有用である。本発明の癌の治療剤によれば、前記人工リンパ節を含むことにより、従来の癌の免疫療法に比べて生体内でのインターフェロンγの産生能が高く、かつインターフェロンγの産生が有効に持続するので、患者の負担も少なく、癌の治療効果が期待できる。さらに、本発明の人工リンパ節は、NK細胞、NKT細胞などの癌細胞傷害活性を持つ免疫細胞も濃縮することが可能であり、MHCの発現が減少した癌細胞に対しても治療効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、癌抗原特異的な免疫反応を誘導可能な人工リンパ節の製造方法を提供し、この方法は、以下の工程:
(a)癌抗原と、細胞性免疫を誘導可能なアジュバントとを用いて非ヒト動物を免疫する工程;および
(b)免疫した非ヒト動物に、サイトカイン産生ストローマ細胞および樹状細胞を含む高分子生体材料からなる人工リンパ節材料を移植する工程
を包含する。
好ましくは、本発明の製造方法は、以下の工程をさらに包含する:
(c)前記移植工程で構築された人工リンパ節を、移植した非ヒト動物から回収する工程。
【0010】
本発明はまた、上記製造方法により得られる、サイトカイン産生ストローマ細胞、樹状細胞および高分子生体材料を含む、癌抗原特異的な免疫反応を誘導可能な人工リンパ節(以下、「癌抗原特異的人工リンパ節」と略称する)を提供する。
【0011】
リンパ節とは、リンパ系組織(リンパ球が非リンパ系細胞と相互作用する組織)であって、リンパ球系の細胞の成熟や適応免疫応答に重要な役割を果たす組織器官である。リンパ系組織は一次リンパ組織と二次リンパ組織に分類することができる。一次リンパ組織はリンパ球産生の場所であり、骨髄と胸腺がこれに含まれる。また、二次リンパ組織は、抗原を捕捉するための特殊な構造をしており、適応免疫応答が開始される場所である。二次リンパ組織(末梢リンパ組織とも呼ばれる)には、脾臓、リンパ節、粘膜関連リンパ性組織(扁桃、気管関連リンパ性組織、腸管関連リンパ性組織、パイエル板(Peyer’s patches)(PP)、その他のリンパ球系細胞の凝集塊)が含まれる。
【0012】
本発明において癌抗原とは、癌細胞において過剰に発現し、免疫細胞に攻撃されるタンパク質成分をいい、現在知られている癌抗原および将来その存在が明らかになる癌抗原を包含するものである。本発明で用いる場合、前記癌抗原は、癌細胞の細胞質内で分解され、癌細胞の表面にクラスIMHC分子(ヒトの場合はクラスIHLA分子)と共に提示される癌抗原ペプチドの形態であることが好ましい。また、癌抗原は、癌抗原特異的ヘルパーT細胞も同時に活性化可能であり、キラーT細胞の活性化、増殖を促進することがより効果的な抗腫瘍効果を得るためには必要である。したがって、樹状細胞により、クラスIIMHC分子(ヒトの場合はクラスIIHLA分子)とともにT細胞に提示される癌抗原ペプチドも癌抗原に含まれる。本発明の一実施態様において、癌抗原とは癌細胞自体であってもよい。
【0013】
癌抗原の具体例としては、CEA、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、HER2/neu、MART−1、MUC−1、PR−1、G250、NY−ESO−1、p53、PM17、PSA−1、PSCA、Proteinase3、Survivin、Survivin2B、hTERT、Gp−100、Tyrosinase、Livin7、WT1などが知られているが、これらに限定されるものではない。癌抗原ペプチドとしては、前記癌抗原から選択可能なあらゆるペプチドがあげられる。癌抗原ペプチドの長さは、通常7〜12アミノ酸であり、8〜10アミノ酸が好ましい。癌抗原ペプチドの配列は、HLA結合ペプチド予測プログラム等を用いて、当業者であれば、そのアミノ酸配列を予測可能であり、また、治療対象の癌細胞から細胞表面に提示されている癌抗原ペプチドを常法により単離し、そのアミノ酸配列を決定することも可能である。癌の有効な治療目的のためには、治療対象のMHC(HLA)のタイプを同定し、さらに癌抗原の過剰発現の有無を調べ、癌抗原ペプチドを含む癌抗原を選択することが好ましい。本発明の一実施態様において、癌抗原の具体例は、前記した癌抗原ペプチドが提示されていることが予測可能な癌細胞自体であってもよい。
【0014】
本発明の癌抗原特異的人工リンパ節は、上記癌抗原が発現している対象において当該癌抗原特異的なインターフェロンγ産生細胞を供給することができるものである。ここで、インターフェロンγ産生細胞とは、CD8陽性細胞、CD4陽性細胞、NK細胞、NKT細胞などが挙げられる。以下、かかる人工リンパ節の製造方法について説明する。
【0015】
(a)癌抗原と、細胞性免疫を誘導可能なアジュバントとを用いて非ヒト動物を免疫する工程
【0016】
癌抗原で免疫する対象となる非ヒト動物は、好ましくは、非ヒト哺乳動物(例えば、サル、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)である。
【0017】
これらの動物は、高分子生体材料の移植の前に、治療目的等に応じて選択された前記癌抗原で免疫される(以下、一次免疫ともいう)。この一次免疫によって、動物の二次リンパ組織内等の免疫担当細胞は抗原刺激され、抗原特異的T細胞を生じる。
【0018】
免疫の際、癌抗原は、細胞性免疫を誘導可能なアジュバントと共に動物へ投与される。かかるアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント、CpGアジュバント、リポソーム、BCG、polyI:C、R848(resiquimod:4-アミノ-2-エトキシメチル-α,α-ジメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-エタノール)、リポポリサッカリド(LPS)、水酸化アルミニウム(Alum)、R−837(imiquimod:1-(2-メチルプロピル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン)、loxoribine(7-アリル-8-オキソグアノシン)、bropirimine(2-アミノ-5-ブロモ-6-フェニル-4-ピリミジノン)などがあげられる。本発明においては、完全フロイントアジュバント、CpGアジュバント、リポソーム、BCG、polyI:C、R848、リポポリサッカリド(LPS)および水酸化アルミニウム(Alum)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、より好ましくは完全フロイントアジュバントまたはCpGアジュバントを用いる。
【0019】
一次免疫に用いる癌抗原の量は、使用する動物の種類、年齢、体重、投与の経路などによって異なる。本発明においては、投与経路は皮内が好ましい。例えば、成体マウスに皮内投与する場合、10μg〜1000μg、好ましくは、10〜100μgの抗原量が例示される。一次免疫に用いるアジュバントの量は、アジュバントの種類、使用する動物の種類、年齢、体重、投与の経路などによって異なるが、当業者であれば適宜設定することができる。
【0020】
さらに、免疫担当細胞の抗原刺激を確実にするために、1〜2週間の間隔で、1または数回(例えば、1〜3回)、一次免疫を繰り返してもよい。一次免疫を繰り返す場合、抗原は、好ましくは、静脈(i.v.)投与され得る。但し、担癌生体では、人工リンパ節を移植した生体の血液中を流れる癌抗原分子により抗原刺激を受けることにより免疫が成立する。
【0021】
(b)免疫した非ヒト動物に、サイトカイン産生ストローマ細胞および樹状細胞を含む高分子生体材料からなる人工リンパ節材料を移植する工程
本工程において、人工リンパ節材料を前記非ヒト動物に移植する。人工リンパ節材料は、サイトカイン産生ストローマ細胞および樹状細胞を含む高分子生体材料からなる。以下、人工リンパ節材料の構成を説明する。
【0022】
(サイトカイン)
サイトカインとは、各種の血球細胞の増殖と分化を制御するタンパク質性の生理活性物質の総称を意味し、さらには、非免疫系細胞を含む細胞の増殖因子および増殖抑制因子をいうこともある。作用の特性から、インターロイキン、コロニー刺激因子、インターフェロン、ケモカイン、リンホカイン、腫瘍壊死因子(TNF)などに分類される。本発明において使用されるインターロイキンは、特に限定されず、IL−1〜IL−18の中から任意に選択することができる。コロニー刺激因子としては、例えば、G−CSF、M−CSF、GM−CSFなどが使用され得る。インターフェロン(IFN)としては、例えば、IFN−α、IFN−β、IFN−γなどが使用され得る。ケモカインとしては、例えば、CCL21(SLC(secondary lymphoid tissue chemokine)ともいう)、CXC
L13(BLC(B lymphocyte chemoattractant)ともいう)、CCL19(ELC(Epstein-Barr virus-induced molecule 1 ligand chemokine)ともいう)、CXCL12などが使用され得る。TNFとしては、例えば、TNF−α、TNF−βなどが使用され得る。TNF−βは、リンホトキシンα(LTα)ともいわれる。LTαは、リンパ節(LN)およびパイエル板(PP)の器官形成のために、ならびに正常な脾臓組織構造の形成のために必須であることが見出された最初の分子である。リンホトキシンには、LTαの他に、LTβが存在する。これらのリンホトキシンもまた、本発明に使用され得る。
本発明において使用されるサイトカインは、好ましくは、リンホトキシンおよび/またはケモカインであり、より好ましくは、LTα、CCL21、CXCL13、および/またはCCL19である。
これらのサイトカインは市販されており、容易に入手することが可能である。
【0023】
(ストローマ細胞)
ストローマ細胞とは、腺あるいは器官に特異的な固有の機能を持つ様々な細胞(実質細胞)を取り巻く微小環境を構成する細胞の総称であり、「支質細胞」ともいう。この「支質細胞」は、文字どおり実質の細胞を物理的に支持するとともに、細胞同士の相互作用により相手の細胞に何らかの作用を及ぼすという意味での支持機能も果たしていると考えられている。ストローマ細胞はまた、「支持細胞」あるいは「間質細胞」ともいう。
【0024】
本発明において使用されるストローマ細胞としては、例えば、2週齢のBALB/cマウス胸腺から樹立されたTEL−2ストローマ細胞(Eur. J. Immunol 20: 47-53, 1990
)が挙げられる。このTEL−2細胞は、10%の非働化したFCSおよび50μMの2−メルカプトエタノールを補充したRPMI−1640培地で培養することによって、維持および継代することができる。例えば、培養している細胞を、3日毎に、Trypsin−EDTA溶液で培養用ディッシュから収集し、1/10〜1/20に希釈して継代することができる。
【0025】
(サイトカイン産生ストローマ細胞)
本発明に用いられる、サイトカインを産生するストローマ細胞は、サイトカインをコードする遺伝子を含む発現ベクター(サイトカイン発現ベクターともいう)を構築し、この発現ベクターを、公知の遺伝子導入技術によって、ストローマ細胞に導入することにより作製することができる。尚、元来サイトカインを発現するストローマ細胞でもよいことは当然である。種々のサイトカインに関する遺伝子情報は公知であり、例えば、GenBankなどの公に利用可能な遺伝子データベースから入手可能である。
【0026】
例えば、TEL−2ストローマ細胞において、上述のサイトカインまたはケモカインを産生させるには、それらをコードする遺伝子と薬剤耐性遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子)を含む発現ベクターをリポフェクション法などにより導入し、薬剤(例えば、G418(500μg/ml))を添加した選択培地で10日から2週間培養して、薬剤耐性細胞株を得ることができる。導入遺伝子の発現は、細胞培養上清の生物活性を測定して確認することができる。生物活性の測定には、例えば、ケモカインの場合であれば、T細胞またはB細胞に対する遊走活性を測定するchemotaxis assayを用いることができる。
【0027】
(高分子生体材料)
本発明において使用される高分子生体材料としては、三次元構造骨格を有する生体適合性高分子材料が使用され得る。本発明において「三次元構造骨格」とは「ストローマ細胞と、リンパ球や樹状細胞などのリンパ節構成細胞とを、三次元的に組織化させるための足場(scaffold)」を意味する。また、「生体適合性高分子材料」とは、「生体に何らかの方法で適用した時、生体が異物としてそれを排除しようとする反応を極力低く抑えるようにされた、様々な高分子から構成される材料」のことを意味する。
【0028】
このような高分子生体材料としては、例えば、コラーゲン、グリコサミノグリカン、ポリグリコール酸、ポリ−L−乳酸などが挙げられる。また、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタンまたはエチレンビニルアセテートなどの非生体分解性の材料も、単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
【0029】
コラーゲンスポンジは、生体の構成成分であり、炎症反応や免疫反応を低く抑えられる点で、高分子生体材料として好ましい。「コラーゲンスポンジ」とは、コラーゲンを含むスポンジ構造を有する多孔性材料を意味し、例えば、ウシアキレス腱の不溶性コラーゲンを凍結乾燥することにより、多孔性のスポンジ状にした、三次元組織培養用コラーゲンなどが本発明に利用可能である。
【0030】
本発明で使用される高分子生体材料は、それが生体分解性であっても、非生体性分解性であってもよく、生体へ移植した際に、それ自身の抗原性による免疫反応および/または物理的刺激による炎症反応を起こしにくい素材である限り、任意の素材を用いることができる。ただし、ストローマ細胞と免疫担当細胞が三次元的に組織化され、人工リンパ節として機能するためには、例えば、多孔性の高分子材料であれば、人工リンパ節の構築に適した孔径(ポアサイズ)、または、移植する高分子材料全体の大きさを選択する必要がある。このような移植物の孔径および大きさは、当業者により適宜決定され得る。
【0031】
(樹状細胞)
樹状細胞とは、造血幹細胞由来の樹枝状形態をとる細胞群の総称であり、リンパ系器官のみならず、リンパ系器官以外にも広く分布している。樹状細胞は、癌抗原をその細胞表面に提示して、キラーT細胞(CTL)の活性化および増殖を促進させる有効な刺激因子となる。
【0032】
本発明に用いる樹状細胞は、その前駆細胞を培養することによって得ることができる。樹状細胞の前駆細胞は、骨髄、臍帯血、末梢血由来の造血幹細胞、末梢血由来の単球細胞などを起源とする。本発明においては、樹状細胞は、(1)抗原ペプチドを試験管内でパルスできる、(2)骨髄造血細胞由来のリンパ節形成に関わるインデューサー細胞が含まれている可能性がある、という観点から骨髄細胞由来のものが好ましい。樹状細胞の前駆細胞は、採取した骨髄液、臍帯血、あるいは末梢血液などの懸濁液から必要に応じて分離精製することができる。
【0033】
樹状細胞の前駆細胞を含む細胞群を増殖させ、さらに成熟/活性化樹状細胞へと分化誘導させるには、適切な誘導剤を使用する。誘導剤として、サイトカイン類を選択して使用することができる。サイトカインとしては、例えば、GM−CSF、IL−1、IL−4、IFN−α、TNF−αなどが挙げられ、これらを単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。
【0034】
例えば、樹状細胞を成熟/活性化させるには、5〜20ng/mlの上記サイトカインを加えたRPMI−1640培地、あるいはMcCoy’s培地などを使用し、最終的に活性化させるためには、LPS(lipopolysaccharide)などの活性化因子を加えて培養すればよい。さらに、このLPSと共に癌抗原(好ましくは、治療目的等に応じて選択された癌抗原)を加えて培養することによって、樹状細胞を抗原パルスすることができる。
【0035】
(人工リンパ節材料の調製)
前記サイトカイン産生ストローマ細胞および樹状細胞(好ましくは、癌抗原でパルスした活性化樹状細胞)を高分子生体材料に付着させることにより、人工リンパ節材料が調製される。サイトカイン産生ストローマ細胞を高分子生体材料に付着させるには、高濃度に調製した細胞浮遊液に浸すか、あるいは、この細胞を、注射針(例えば、26ゲージ)を装着した注射器を用いて、高分子生体材料に注入する。樹状細胞を高分子生体材料に付着させるには、高濃度に調製した細胞浮遊液に浸すか、あるいは、この細胞を、注射針(例えば、26ゲージ)を装着した注射器を用いて、高分子生体材料に注入する。
【0036】
このようにして調製された人工リンパ節材料は、一次免疫(一次免疫が複数回行われる場合には最後の免疫)から、好ましくは、一週間以降に動物の組織(例えば、腎皮膜下、皮下、腹腔内など)に移植される。
【0037】
このような人工リンパ節におけるインターフェロンγ産生細胞の誘導を確実にするために、一次免疫をした動物への人工リンパ節材料の移植の数週間(例えば、1〜3週間)後に、一次免疫に用いたのと同じ抗原で、二次免疫を行ってもよい。さらに、インターフェロンγ産生細胞の誘導をより確実にするために、1〜2週間の間隔で、数回(例えば、1〜3回)、二次免疫を繰り返してもよい。二次免疫は担癌生体に人工リンパ節を移植することにより、担癌生体中を流れる癌抗原によっても充分に誘導されうる。
二次免疫に用いる抗原の量は、使用する動物の種類、年齢、体重、投与の経路などによって異なるが、例えば、成体マウスに皮内投与する場合、10μg〜1000μg、好ましくは、10〜100μgの抗原量が例示される。
【0038】
(c)前記移植工程で構築された人工リンパ節を、移植した非ヒト動物から回収する工程。
前記人工リンパ節材料の移植から約3週間後には、動物の体内で本発明の癌抗原特異的人工リンパ節が構築され得る。このようにして構築された癌抗原特異的人工リンパ節は、生体から回収され、さらに別の動物に再移植して二次免疫されるか、in vitro培養に供されるか、癌の個体に治療のために用いられるか、または、適切な保存剤(例えば、10%DMSO)を添加した培養液中で−80℃以下の低温にて保存して、使用前に調製して用いることができる。
【0039】
このようにして構築された人工リンパ節の移植対象は、ヒト及び非ヒト動物であり、非ヒト動物は、好ましくは、非ヒト哺乳動物(例えば、サル、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)である。ヒトに移植する場合は、拒絶反応を防止するため、下記のヒト型人工リンパ節を用いることが好ましい。
【0040】
1つの実施形態では、本発明はヒト型の癌抗原特異的人工リンパ節を提供する。このようなヒト型の癌抗原特異的人工リンパ節は、例えば、免疫不全動物(例えば、免疫不全マウス)にヒトリンパ球、ヒトリンパ球前駆体、骨髄細胞、および/または造血幹細胞などを導入して免疫不全動物の生体内にヒト免疫系を構築した後、このヒト免疫系を有する動物を、上記の方法に従って、治療目的等に応じて選択された癌抗原およびアジュバントで一次免疫し、ストローマ細胞および樹状細胞を付着させた高分子生体材料からなる人工リンパ節材料を移植し、そして、必要に応じて、同じ抗原で二次免疫することによって構築できる。
【0041】
別の実施形態では、本発明はヒトの癌抗原特異的人工リンパ節を提供する。ヒトの癌抗原特異的人工リンパ節は、例えば、癌患者の生体内では癌抗原での一次免疫が成立していることから、ストローマ細胞および樹状細胞を付着させた高分子生体材料からなる人工リンパ節材料を移植し、所定の期間、生体内で保持することにより構築することができる。本発明においては、治療対象の癌患者に本発明の人工リンパ節材料の一部を直接移植することにより、癌を治療することができる。本発明は、かかる癌の治療方法も提供する。
【0042】
(人工リンパ節の培養)
本発明の癌抗原特異的人工リンパ節をin vitroにおいて培養するには、生体から回収した当該人工リンパ節を、リンパ球や樹状細胞が生存、増殖を続けるためのサイトカインやその他の刺激因子を添加した培養液中に移して培養を行う。この培養系に、徐放性マテリアルを加えてもよい。癌抗原特異的人工リンパ節をin vitroで培養する場合は、新しい造血幹細胞、リンパ球または樹状細胞の前駆細胞、および、リンパ球、樹状細胞などを調製し、培養系に適宜補充しながら、培養を続ける。
【0043】
本発明の癌抗原特異的人工リンパ節は、癌抗原特異的な免疫反応を誘導可能である。実施例に示すように、人工リンパ節材料を移植した動物(マウス)の皮内に、アジュバント(完全フロイントアジュバント)と混合した癌抗原を注射すると、人工リンパ節内にインターフェロンγ産生T細胞が極めて高い頻度(約75%)で誘導される。この人工リンパ節を更に担癌動物(担癌ヌードマウス)に移植すると、癌が縮小することが示された。また、人工リンパ節を移植された動物(ヌードマウス)においては、脾臓等でもインターフェロンγ産生T細胞が出現したことから、人工リンパ節の移植により全身のT細胞が活性化されることが示された。
【0044】
天然のリンパ節内のインターフェロンγ産生T細胞の割合は、数%程度であり、従来の人工リンパ節におけるCD4T細胞とCD8T細胞の割合が正常リンパ節のT細胞領域のCD4T細胞とCD8T細胞の割合と良く似ているとの文献(特開2004−255110号公報)も参酌すると、実施例で確認された「約75%」という割合は予想外に高く、本発明で構築される人工リンパ節を使用することにより、インターフェロンγ産生T細胞を誘導する手段として優れていることがわかる。また、本発明の人工リンパ節は、製造時に免疫原として用いた癌抗原で刺激した場合に、天然のリンパ節に比べて癌抗原特異的CD8T細胞(キラーT細胞または細胞傷害性T細胞ともいう)を優勢に産生するものである。その結果、同じ癌抗原を発現する癌細胞の存在が疑われる対象において、本発明の人工リンパ節は、強い抗腫瘍効果が期待される。
【0045】
(癌の治療剤)
本発明の癌抗原特異的人工リンパ節は、迅速かつ大量に癌抗原特異的にインターフェロンγを産生する性質を有するため、癌の治療剤として、白血病を始めとする血液癌および種々の固形癌の予防、治療、再発の防止、転移の抑制に用いられ得る。本発明は、かかる人工リンパ節を含有する癌の治療剤を提供する。本発明の治療剤の目的は、治療のみならず、予防、再発の防止、転移の抑制などが含まれる。
【0046】
本発明の特異抗体産生人工リンパ節を被験対象に移植するときの量(大きさ)は、対象となる被験体により適宜設定することができる。例えば、成人に移植する場合は、本来のリンパ節と同等の大きさのもの、あるいは、本来のリンパ節よりも小さいが複数個を移植することができるものなどである。移植部位としては、皮下、皮内、腫瘍内、腎臓皮膜下、筋肉内、リンパ組織内などが挙げられるが、侵襲の少なさ、移植手術手技の容易さから、皮下への移植が望ましい。
【0047】
被験対象が癌を担持している場合は、本発明の治療剤を癌の発生部位から適当な間隔で離して移植することが癌の治療効果の観点から好ましい。
【0048】
本発明の癌抗原特異的人工リンパ節は、以下に挙げる、癌抗原特異的な免疫反応を起こす場として必須であると考えられるリンパ節の基本構造をも備えるものである。
【0049】
[1] 明確に区別されるT細胞領域とB細胞領域を有する。
正常リンパ組織と同様、本発明の特異抗体産生人工リンパ節においてもT細胞とB細胞の領域は明確に分かれており、それぞれ「T細胞領域」、「B細胞領域」と呼ぶ。特にB細胞集団は「濾胞(follicle)」とも呼ばれる。
【0050】
[2] T細胞およびB細胞と共に、免疫反応において重要な役割を果たす樹状細胞が存在する。
【0051】
[3] 中心部に濾胞樹状細胞のネットワークを含むB細胞領域が存在する。
濾胞樹状細胞(FDC:follicular dendritic cell)は、「濾胞中心部に存在する樹
状の突起を持つ特殊な細胞」を意味し、濾胞中心部でネットワークを形成している(FDC networkという)。FDCは、樹状細胞(dendritic cell)とは別の種類の細胞である。
【0052】
[4] 胚中心B細胞様のPNA(peanut agglutinin)強陽性B細胞が存在する。
抗原刺激による抗体産生に先立って、濾胞の中心部でB細胞の活発な増殖と形質細胞(抗体産生細胞)への分化が起きる。この部位を胚中心(GC:germinal center)と呼ぶ
が、この胚中心で活発に増殖するB細胞は、胚中心B細胞(germinal center B cell)と称する。胚中心B細胞 はPNAとよく結合する性質を持つため、PNAで染色した時に
PNA強陽性(PNAhigh+)となることが知られている。
【0053】
[5] リンパ節へのリンパ球の侵入門戸となるHEV様の血管構造が存在する。
高内皮細静脈(HEV)は、リンパ節、パイエル板などの二次リンパ組織に特異的に観察される特殊な血管構造であり、一般的な血管とは異なり、背の高い(壁が分厚い)内皮細胞を有する。このHEVは、ある種の接着因子やケモカインを発現しており、リンパ球が血流からこれらの二次リンパ組織に遊走して入ってくる時の入り口となっている。
【0054】
(キット)
本発明はまた、癌抗原特異的人工リンパ節の製造用キットを提供する。このキットは、動物において、本発明の癌抗原特異的人工リンパ節を製造するために必要な、癌抗原、細胞性免疫を誘導可能なアジュバント、サイトカイン発現ベクターおよびストローマ細胞またはサイトカイン産生ストローマ細胞、樹状細胞ならびに高分子生体材料を含む。このキットに含まれる樹状細胞は、好ましくは骨髄細胞由来樹状細胞であり、より好ましくは、上記癌抗原でパルスした活性化樹状細胞である。
【0055】
本発明の一実施態様において、本発明の癌抗原特異的人工リンパ節は、治療対象の動物の生体内で直接製造することができる。本発明は、かかる製造方法(直接製造方法とも称する)も提供する。直接製造方法は、以下の工程を包含する。
(a1)癌抗原と、細胞性免疫を誘導可能なアジュバントとを用いて動物を免疫する工程;および
(b1)免疫した動物に、サイトカイン産生ストローマ細胞および樹状細胞を含む高分子生体材料からなる人工リンパ節材料を移植する工程。
【0056】
直接製造方法における免疫工程(a1)は、前記した免疫工程(a)のうち、担癌生体の血液中を流れる癌抗原分子による刺激により免疫が成立する工程である。したがって、免疫工程(a1)は、動物(好ましくはヒト)の生体内で担持している癌細胞により行われるものであることが好ましい。
【0057】
直接製造方法における移植工程(b1)は、前記した移植工程(b)と同様である。
【0058】
直接製造方法において、免疫した動物(好ましくはヒト)の癌の治療のためには、担持している癌細胞から構成される癌組織を外科的に摘出することが好ましい。したがって、移植工程(b1)は、癌の手術前、手術中または手術後のいずれかに行われることが好ましい。移植部位は、癌の発生部位から適当な間隔で離れた部位が好ましい。移植後、所定の期間経過後に治療対象の動物(好ましくはヒト)の移植部位に人工リンパ節が形成される。これにより、摘出しきれずに生体内に存在する癌細胞による再発または転移が有意に抑制される。
【0059】
本発明は、担癌動物における癌の手術中もしくは手術後に移植するための、以下を含む癌の再発または転移予防剤を提供する。本発明の予防剤は、サイトカイン発現ベクターおよびストローマ細胞またはサイトカイン産生ストローマ細胞、樹状細胞ならびに高分子生体材料を含む。予防剤に含まれる樹状細胞は、好ましくは骨髄細胞由来の樹状細胞であり、より好ましくは上記癌抗原でパルスした活性化樹状細胞である。また、予防剤に含まれる高分子生体材料およびサイトカインは、前記した通りである。
【0060】
本発明はまた、担癌動物に直接移植可能な、癌治療用人工リンパ節の移植キットを提供する。このキットは、担癌動物において、本発明の癌抗原特異的人工リンパ節を製造するために必要な、サイトカイン発現ベクターおよびストローマ細胞またはサイトカイン産生ストローマ細胞、樹状細胞ならびに高分子生体材料を含む。移植キットに含まれる樹状細胞は、好ましくは骨髄細胞由来樹状細胞であり、より好ましくは、上記癌抗原でパルスした活性化樹状細胞である。また、移植キットに含まれる高分子生体材料およびサイトカインは、前記した通りである。
【0061】
前記予防剤または移植キットの移植対象である担癌動物は、ヒト及び非ヒト動物であり、非ヒト動物は、好ましくは、非ヒト哺乳動物(例えば、サル、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)である。癌治療または癌の再発もしくは転移の予防目的のためには、ヒトへの移植が好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の単なる例示を示すものにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0063】
以下の製造例および実施例において使用した培養液、試薬および器具は以下の通りである。
RPMI−1640:GIBCO社
2−メルカプトエタノール:Sigma社
FCS(fetal calf serum;ウシ胎仔血清): Cell Culture Technologies社
細胞培養液:10%の非働化したFCSおよび50μMの2−メルカプトエタノールを補充したRPMI−1640
Trypsin−EDTA溶液:GIBCO社
G418(geneticin):GIBCO社
リコンビナントマウス GM−CSF(granulocyte-macrophage colony stimulating factor):PeproTech社
LPS(lipopolysaccharide):Sigma社
フロイント完全アジュバント: DIFCO Laboratories社(Michigan USA)製
BSA(bovine serum albumin):Sigma社
培養ディッシュ、培養プレート、ペトリディッシュ;全て、FALCON社製
【0064】
(製造例1)
(組換えストローマ細胞の調製)
ストローマ細胞として、2週齢のBALB/cマウスの胸腺から樹立したTEL−2細胞(Nakashima M. et al., Eur J Immunol. 1990 Jan;20(1):47-53)を、10%ウシ胎仔血清および50μM 2−メルカプトエタノールを補充したRPMI1640中で培養した。マウスのリンホトキシンα(LTα)またはケモカイン(CCL21、CCL19およびCXCL13)cDNAを、マウス脾臓RNAからRT−PCR(reverse transcription-polymerase chain reaction)によりクローニングした。各cDNAを、pCXN
2ベクター(Niwa H, et al., Gene. 1991 Dec 15;108(2):193-9)のEcoRI部位へと挿入した。このベクターは、ニワトリβアクチンプロモーター、CMVエンハンサー、およびウサギβグロビンスプライシングドナーを有する。得られた発現ベクターをTEL−2細胞へと導入し、そして安定なトランスフェクタント細胞株を、2週間のG418選択(500μg/ml)後に得た。安定なトランスフェクタント細胞株を樹立させた後、全ての細胞株を200μg/mlのG418を含む培養培地中で培養した。導入された遺伝子の発現を、LTαについては蛍光表示式細胞分取器(FACS)分析およびケモカインについては走化性アッセイにより確認した。
【0065】
(製造例2)
(ストローマ細胞を吸着させたコラーゲンスポンジの調製)
コラーゲンスポンジ(「Collagen Sponge」 #CS-35, KOKEN, Tokyo, Japan)を、一定の形および大きさに小さく切り、48ウェルプレートのウェルに1片ずつ入れた。製造例1に従って樹立したサイトカイン産生TEL−2ストローマ細胞を、Trypsin−EDTA溶液を用いて収集し、培養液で1回洗浄して培養液に浮遊させ、さらに、PBS(phosphate buffered saline)、0.1%BSA/PBSでそれぞれ1回ずつ洗浄した後、1mlの1%BSA/PBSを加えて細胞浮遊液を作製した。この細胞浮遊液を遠心分離に供して細胞を沈澱させてペレットの状態にし、少量の1%BSA/PBSに細胞を浮遊させて、細胞濃度の非常に濃い、均一な細胞浮遊液を作製した。この細胞浮遊液をコラーゲンスポンジの上に滴下し、スポンジを揉むようにして細胞をコラーゲンスポンジに吸着させた。少量の1%BSA/PBS溶液に細胞を浮遊させてコラーゲンスポンジに吸着させているので、乾燥させないように注意した。この細胞を吸着させたコラーゲンスポンジを入れた48ウェルプレートを、マウスの腎皮膜下への移植まで氷上に置いた。
【0066】
(製造例3)
(活性化樹状細胞の調製)
7週齢から12週齢の雌性BALB/cAnNCrjマウスの大腿骨と脛骨の骨髄腔内を、26ゲージの注射針を装着した注射器を用いてPBSで洗い出し、骨髄細胞液を得た。この骨髄細胞液をナイロンメッシュでろ過して大きな細胞塊等を除き、培養液で2×10cells/mlの濃度に調製して細胞浮遊液を作製した。なお、細胞浮遊液中には赤血球系の細胞がかなり含まれているが、赤血球系の細胞を無視して細胞の濃度を2×10cells/mlと計算した。この細胞浮遊液を、直径10cmのプラスチック製ディッシュ(ペトリディッシュ)に、1ディッシュ当たり7mlを移し、リコンビナントマウスGM−CSFを最終濃度5ng/mlとなるように添加した。3日又は4日毎に細胞上清を半分捨て、5ng/mlのGM−CSFを加えた新しい培養液を加えた。培養8日目または9日目に浮遊細胞を集め、5 ng/ml のGM−CSFを加えた新しい培養液で2×10cells/mlの細胞浮遊液を作り、1μg/mlのLPS(もしくはTNF−α)、および、抗原パルスを行う場合、高分子生体材料の移植前にマウスに接種される抗原と同じ抗原を加えて、細胞培養ディッシュで17〜20時間培養し、樹状細胞を成熟および活性化させた。
【0067】
(製造例4)
(ストローマ細胞および樹状細胞を吸着させたコラーゲンスポンジの調製)
コラーゲンスポンジ(「Collagen Sponge」 #CS-35, KOKEN, Tokyo, Japan)を、一定の形および大きさに小さく切り、48ウェルプレートのウェルに1片ずつ入れた。製造例1に従って樹立したサイトカイン産生TEL−2ストローマ細胞を、Trypsin−EDTA溶液を用いて収集し、培養液で1回洗浄して培養液に浮遊させ、細胞数を数えて氷上に置いた。製造例3に従って調製した活性化樹状細胞を、培養液で2回洗浄して培養液に浮遊させて細胞数を数え、氷上に置いた。その際、樹状細胞をLPSで活性化した場合は、LPSが残らないように丁寧に洗浄した。その後、それぞれの細胞を、PBS(phosphate buffered saline)、0.1%BSA/PBSでそれぞれ1回ずつ洗浄した後、1mlの1%BSA/PBSを加えて細胞濃度のほぼ同じ均一な細胞浮遊液を作製した。これらの浮遊液を1対1の容量で混合し、遠心分離により細胞を沈澱させてペレットの状態にし、さらに少量の1%BSA/PBSを加えて、非常に細胞濃度の濃い均一な細胞浮遊液を作製した。この細胞浮遊液をコラーゲンスポンジの上に滴下し、スポンジを揉むようにして細胞をコラーゲンスポンジに吸着させた。少量の1%BSA/PBS溶液に細胞を浮遊させてコラーゲンスポンジに吸着させているので、乾燥させないように注意した。この細胞を吸着させたコラーゲンスポンジを入れた48ウェルプレートは、細胞を吸着させたコラーゲンスポンジをマウスの腎皮膜下に移植するまで氷上に保った。
【0068】
(製造例5)
(コラーゲンスポンジのマウスへの移植)
緩衝液(PBS)に溶解させた抗原とフロイント完全アジュバントを同量ずつ、それぞれ個別の2本のガラス注射筒にとり、その2本の注射筒をダブルハブニードルで接続した。まず、水層の抗原溶液から油層の完全フロイントアジュバントの方に溶液をインジェクションし、その後、交互にインジェクションを繰り返すことで、抗原溶液とアジュバントのエマルジョンを形成させた。
8週齢から10週齢の雌性BALB/cAnNCrjマウス(日本チャールズリバー社、SPF環境のマウス室で飼育)に麻酔をし、尾根部皮下に抗原エマルジョンを100μl注入した。それから3週間から4週間マウスを飼育し、抗原に対する免疫が形成されるのを待った。
8週齢から14週齢の雌性BALB/cAnNCrjマウス(日本チャールズリバー社、SPF環境のマウス飼育室で飼育)に麻酔をし、体表面を70%エタノールで消毒して右側臥位にした。左季肋部の皮を約1cm切開し、その真下の筋層もほぼ同じ大きさに切開した。腎周辺の脂肪組織をピンセットでつまみ、腎臓を体外に引き出した。実体顕微鏡下で観察しながら、先の鋭利なピンセットを用いて、腎実質に傷をつけないように注意しながら、腎皮膜を開き、腎皮膜と腎臓の間に製造例4で調製したコラーゲンスポンジを挿入した。通常、片方の腎臓につき2ケ所(腎上極、下極付近)移植するため、左右の腎臓で一匹のマウスあたり計4つの、ストローマ細胞を付着させたコラーゲンスポンジを移植した。移植3週間後に移植組織(以下、人工リンパ節という)を回収した。
【0069】
(実施例1)
(製造例5のマウスにおける人工リンパ節の解析)
製造例5で回収した人工リンパ節をPBSで洗浄した後、培養液の入った6ウェルプレートに移し、スライドガラスを用いて十分に磨り潰した。磨り潰して得られた細胞液をナイロンメッシュでろ過して大きな細胞塊等を除き、15ml遠心チューブに細胞浮遊液を回収した。回収した細胞浮遊液を、2μMモネンシンの溶解した培養液で1×106 cells/mlに調整した後、抗TCR抗体でコートされた24ウェルプレートに1mlずつ播種した。24ウェルプレートの抗TCR抗体でのコーティングは、前日に3μg/mlの抗TCR抗体を250μlずつ各ウェルに滴加し、4℃で一晩インキュベーションすることで行った。播種した細胞を6時間、CO2インキュベーターで培養した後、軽くピペッティングすることで細胞をはがし、FACSチューブに回収した。回収した細胞液をPBSで2回洗浄した後、3%BSA/PBSを350μl加えて、氷上で15分間インキュベーションした。その後、遠心分離により3%BSA/PBSを除き、細胞表面抗原を染色するため、各種の抗体溶液を細胞のペレットに加え、氷上で再び45分間インキュベーションした。細胞表面抗原の染色が終了した細胞を2回PBSで洗浄した後、4%PFAを350μl加えて、室温で10分間インキュベーションすることで、ホルマリン固定を行った。その後、2%FCS/PBSからなるFACS bufferで2回洗浄後、Permealize bufferを350μl加えて、氷上で10分間インキュベーションした。再度FACS bufferで2回洗浄後、3%BSA/PBSを350μl加えて、氷上で15分間インキュベーションした。その後、遠心分離により3%BSA/PBSを除き、IFN−γやIL−4などの細胞内抗原を染色するため、各種の抗体溶液を細胞のペレットに加え、氷上で再び45分間インキュベーションした。細胞内染色も終了した細胞をFACS bufferで洗浄し、ナイロンメッシュでろ過して細胞塊を除いた。これにより得られた染色後の細胞液をFACS calibratorを用いて解析を行った。
【0070】
(実施例2)
(担癌マウスへの人工リンパ節の移植)
培養等で得られた癌細胞を回収し、PBSで洗浄後、PBSに1×106 〜108 cells/mlで懸濁した。8週齢から10週齢の雌性BALB/c SCIDマウス(日本チャールズリバー社、SPF環境のマウス室で飼育)に麻酔をし、背中皮下に癌細胞液を100μl注入した。それから6日間マウスを飼育し、腫瘍塊が形成されるのを待った。そして、腫瘍塊が形成された担癌マウスに麻酔をし、体表面を70%エタノールで消毒して右側臥位にした。左肋骨部の皮を約1cm切開し、その真下の筋層もほぼ同じ大きさに切開した。腎周辺の脂肪組織をピンセットでつまみ、腎臓を体外に引き出した。実体顕微鏡下で観察しながら、先の鋭利なピンセットを用いて、腎実質に傷をつけないように注意しながら、腎皮膜を開き、腎皮膜と腎臓の間に製造例5で回収した人工リンパ節を挿入した。通常、片方の腎臓につき2ヶ所(腎上極、下極付近)移植するため、左右の腎臓で1匹のマウスあたり計4つの人工リンパ節を移植した。
【0071】
実施例1の結果を図2Aおよび2Bに示す。図2Aは、人工リンパ節でのインターフェロンγの産生を示す。図2Bから、インターフェロンγ産生細胞はCD8陽性細胞、CD4陽性細胞およびNK細胞であることが示唆される。実施例2の結果を図2Cおよび2Dに示す。図2Cから、担癌マウスでは、人工リンパ節由来のCD8陽性キラー細胞が脾臓にても増殖してインターフェロンγを産生することがわかる。一方、図2Dから、人工リンパ節を移植しない担癌マウスでは、インターフェロンγが産生されないことがわかる。
【0072】
実施例2の結果を図3に示す。図3より、人工リンパ節を移植した担癌マウスは、移植後30日経過後、癌組織が劇的に縮小したが、移植しない担癌マウスでは、癌の縮小が観察されなかった。
【0073】
(製造例6)
(癌細胞移植によるマウスの免疫およびコラーゲンスポンジのマウスへの移植)
8週齢から10週齢の雌性BALB/cAnNCrjマウス(日本チャールズリバー社、SPF環境のマウス室で飼育)に麻酔をし、尾根部皮内に5×10個のBリンパ腫細胞A20−OVA(オブアルブミン抗原を細胞表面に発現しているBalb/cマウス由来癌細胞、北海道大学西村教授より供与)を移植した。移植6〜14日後に、移植マウスから成長した癌の塊をできるだけ丁寧に外科的に摘除した。
癌の摘除の際に、左季肋部の皮を約1cm切開し、その真下の筋層もほぼ同じ大きさに切開した。腎周辺の脂肪組織をピンセットでつまみ、腎臓を体外に引き出した。実体顕微鏡下で観察しながら、先の鋭利なピンセットを用いて、腎実質に傷をつけないように注意しながら、腎皮膜を開き、腎皮膜と腎臓の間に製造例4で調製したコラーゲンスポンジを挿入した。片方の腎臓につき2ケ所(腎上極、下極付近)移植するため、左右の腎臓で一匹のマウスあたり計4つの、ストローマ細胞を付着させたコラーゲンスポンジを移植した。本製造例の工程の概略を図4Aに示す。
移植マウス群では、コラーゲンスポンジ移植後2週間経過して、人工リンパ節の形成を確認した。対照として、癌の摘除のみのマウス群も同時に飼育した。これらのマウス群で、癌細胞移植3週間目まで癌の再発の有無を観察した。結果を図5に示す。
【0074】
本製造例で形成された人工リンパ節は、形成されたマウス内で癌の再発を強く抑制することがわかった。所属リンパ節の転移もほとんど見られなかった。一方、人工リンパ節材料を移植しなかったマウス群では、免疫能力は正常にも拘わらず、癌が急激に大きくなり、リンパ節転移も著しく起こった。癌摘除後に残った微量の癌細胞が人工リンパ節に移行し、抗腫瘍免疫反応を強く誘導したためと思われる。事実、前記人工リンパ節内にインターフェロンγを産生するT細胞が大量に増えていることを確認した。このことから、ヒトの癌患者においても、癌の外科的摘出時に当該ヒトに適合する適切な人工リンパ節材料を移植して生体内で人工リンパ節を構築させることにより、癌の再発または転移を有効に抑制することができると思われる。
【0075】
(実施例3)
(担癌マウスへの製造例6の人工リンパ節の移植)
製造例6で癌の摘除後のマウスで形成された人工リンパ節を回収し、あらかじめBリンパ腫細胞A20−OVAを植えつけておいた担癌SCIDマウスの腎臓皮膜下に、実施例2と同様の方法で移植した。本実施例の工程の概略を図4Bに示す。対照として、人工リンパ節を移植しない担癌SCIDマウスも同時に飼育した。移植マウス群と移植なしのマウス群との間で、癌細胞移植3週間目まで癌の進行の程度を比較した。結果を図5に示す。
【0076】
その結果、人工リンパ節を移植した担癌マウスでは、癌の増殖が強く抑制されたのに対し、移植しなかった担癌マウスでは癌の進行が著しいことがわかった。したがって、外科的に摘出不可能な癌に対しても、本発明の人工リンパ節は、癌の進行を有効に抑制することができると思われる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、癌の治療に有用な人工リンパ節を提供し、癌の新規治療方法の開発に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、製造例における人工リンパ節製造工程の概略図を示す。
【図2】図2は、人工リンパ節を癌抗原で刺激した後のインターフェロンγの産生を調べたグラフである。図2Aは、人工リンパ節でのインターフェロンγの産生を示し、図2Bは、インターフェロンγ産生細胞がCD8陽性細胞、CD4陽性細胞およびNK細胞であることを示す。図2Cは、人工リンパ節由来のCD8陽性キラー細胞が脾臓にても増殖してインターフェロンγを産生することを示し、図2Dは、人工リンパ節移植なしではインターフェロンγが産生されないことを示す。
【図3】図3は、人工リンパ節を移植した担癌マウスにおける癌の縮小効果を示す写真である。図3Aは人工リンパ節を移植したマウスであり、図3Bは、移植しないマウスである。
【図4】図4は、担癌動物における人工リンパ節形成の概略図を示す。
【図5】図5は、人工リンパ節による癌の再発または原発癌の抑制効果を示すグラフである。図5上段は、癌切除後の再発を調べたグラフである。図5下段は、原発癌に対する移植人工リンパ節の効果を調べたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を包含する、癌抗原特異的な免疫反応を誘導可能な人工リンパ節の製造方法:
(a)癌抗原と、細胞性免疫を誘導可能なアジュバントとを用いて非ヒト動物を免疫する工程;および
(b)免疫した非ヒト動物に、サイトカイン産生ストローマ細胞および樹状細胞を含む高分子生体材料からなる人工リンパ節材料を移植する工程。
【請求項2】
以下の工程をさらに包含する、請求項1記載の製造方法:
(c)前記移植工程で構築された人工リンパ節を、移植した非ヒト動物から回収する工程。
【請求項3】
前記アジュバントが完全フロイントアジュバント、CpGアジュバント、リポソーム、BCG、polyI:C、R848、リポポリサッカリドおよび水酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記樹状細胞が骨髄細胞由来の樹状細胞である、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
前記高分子生体材料がコラーゲンスポンジである、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
前記サイトカインがリンホトキシンおよび/またはケモカインである、請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
前記非ヒト動物が非ヒト哺乳動物である、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項に記載の製造方法により得られた、癌抗原特異的な免疫反応を誘導可能な人工リンパ節。
【請求項9】
請求項1の免疫工程で用いた癌抗原で刺激した場合に、癌抗原特異的インターフェロンγ産生細胞を優勢に含むものである、請求項8に記載の人工リンパ節。
【請求項10】
請求項8または9記載の人工リンパ節を含む、癌の治療剤。
【請求項11】
以下を含む、癌の治療用人工リンパ節の製造用キット:
(a)癌抗原;
(b)細胞性免疫を誘導可能なアジュバント;
(c)サイトカイン発現ベクターおよびストローマ細胞、またはサイトカイン産生ストローマ細胞;
(d)樹状細胞;および
(e)高分子生体材料。
【請求項12】
前記アジュバントが完全フロイントアジュバント、CpGアジュバント、リポソーム、BCG、polyI:C、R848、リポポリサッカリドおよび水酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記樹状細胞が骨髄細胞由来の樹状細胞である、請求項11記載のキット。
【請求項14】
前記高分子生体材料がコラーゲンスポンジである、請求項11記載のキット。
【請求項15】
前記サイトカインがリンホトキシンおよび/またはケモカインである、請求項11記載のキット。
【請求項16】
以下の工程を包含する、癌抗原特異的な免疫反応を誘導可能な人工リンパ節の製造方法:
(a1)癌抗原と、細胞性免疫を誘導可能なアジュバントとを用いて動物を免疫する工程;および
(b1)免疫した動物に、サイトカイン産生ストローマ細胞および樹状細胞を含む高分子生体材料からなる人工リンパ節材料を移植する工程。
【請求項17】
前記免疫工程が前記動物の生体内で担持している癌細胞により行われるものである、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記移植工程が前記動物における癌の手術前、手術中または手術後に行われるものである、請求項16に記載の製造方法。
【請求項19】
以下を含む、担癌動物に対する癌治療用人工リンパ節の移植キット:
サイトカイン発現ベクターおよびストローマ細胞、またはサイトカイン産生ストローマ細胞;
樹状細胞;および
高分子生体材料。
【請求項20】
前記樹状細胞が骨髄細胞由来の樹状細胞である、請求項19記載の移植キット。
【請求項21】
前記高分子生体材料がコラーゲンスポンジである、請求項19記載の移植キット。
【請求項22】
前記サイトカインがリンホトキシンおよび/またはケモカインである、請求項19記載の移植キット。
【請求項23】
前記担癌動物がヒトである、請求項19記載の移植キット。
【請求項24】
担癌動物における癌の手術中もしくは手術後に移植するための、以下を含む癌の再発または転移予防剤:
サイトカイン発現ベクターおよびストローマ細胞、またはサイトカイン産生ストローマ細胞;
樹状細胞;および
高分子生体材料。

【図2】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−163015(P2008−163015A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315574(P2007−315574)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本免疫学会総会・学術集会記録 第36巻
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】