説明

癌薬剤として使用できるアンスラサイクリン代謝産物を産生する遺伝子改変株

本発明は、少なくとも0.5g/l 発酵ブロスのタイターでアンスラサイクリン代謝産物を産生する微生物株に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ストレプトマイセス・ペウセティウス(Streptomyces peucetius)種の遺伝子改変株、及び、単一のバッチ発酵によるアンスラサイクリン代謝産物、例えば4′−エピダウノルビシン、13−ジヒドロ−エピダウノルビシン、4′−エピ−フォイドマイシン及びε−ロドマイシノンの高タイター混合物の製造における前記株の使用に関し、これは活性のある製薬的成分、エピルビシン及び/又はイダノルビシンの産生のための本発明による下流プロセスにおいて利用可能である。
【0002】
背景技術
ダウノマイシンは、幾つかのストレプトマイセス種、例えばS.ペウセティウス(S. peucetius)、S.コエルレオルビダス(S. coerulorubidus)、S.グリセウス(S. griseus)、ストレプトマイシン種C5(Streptomyces sp. C5)、S.ペウセティウス var.セシウス(S. peucetius var. caesius)、及びS.ビフルカス(S. bifurcus)により産生される抗腫瘍性抗生物質の一群である。この群の基本的な化合物は、ダウノマイシン(DiMarco et al., 1964)である。ダウノマイシン及びその14−ヒドロキシ誘導体ドキソルビシンは、癌の化学療法において1967年及び1971年からそれぞれ使用されている。ダウノマイシンは、特に、血液学的悪性疾患のために使用され、その一方でドキソルビシンは幅広い抗癌スペクトルを示す。臨床的使用において現在公知のアンスラサイクリンを全てを考慮すると、7つのうち6つがダウノマイシン群の一員である。この化合物のための製造プロセスは、ダウノルビシン又はそのアグリコン、ダウノマイシノンを、化学合成のための出発材料として使用する。
【0003】
アンスラサイクリンは、30年以上癌の化学療法のために使用されている。ドキソルビシンは今日未だに、悪性疾患の極めて幅広いスペクトルのために、主として使用される細胞毒性薬剤である。エピルビシンは、ドキソルビシンの次に第2に最も重要な抗腫瘍性抗生物質であるが、更に一層重要になっている。
【0004】
ダウノマイシンは、一般式
【化1】

により説明されることができ、その最も重要な誘導体は第1表中に示される。
【0005】
第1表
【表1】

【0006】
エピルビシンは、多くの種類の癌のために臨床的に使用される。この市場は成長しており、というのはこの化合物はドキソルビシンに匹敵するからである。新規の処方、コンジュゲート及びその他の癌薬剤との新規の組み合わせもまた、エピルビシンの使用を発展させる。エピルビシンは、発酵によりダウノルビシンを産生し、そしてこのアグリコン及び糖残基を合成的に改変することを含む方法により製造され、例えばUS特許公報5,874,550中に開示されるとおりである。
【0007】
イダルビシン(4−デメトキシ−ダウノルビシン)は、特定の種類の癌、例えば白血病、リンパ腫、及び骨髄の他の疾病を治療するために使用される。ドキソルビシンよりも少ない副作用を生じると言われている。イダルビシンのための世界的な年間市場は、しかしながら、異例なまでに高額なためにおそらく20kgより多くなく、これは、極めて複雑化した製造プロセスのためである。イダルビシノンはダウノマイシノンから出発して製造され、これはダウノルビシンの発酵と引き続く酸性加水分解から得られる。ダウノルビシノンが更に、イダルビシノンへと合成的に改変される。糖残基、ダウノサミンが、複雑化した合成反応系列により取り付けられ、これはUS特許公報第4,325,946号中に説明されているとおりである。
【0008】
遺伝子エンジニアリングに先立つ、所望される非内因性物質を産生する株の作出はほとんど不可能である。化学構造における改変は些細なものであっても、例えばエピダウノルビシンは、ダウノルビシンとは、ダウノサミン残基中の4′OH基の立体化学の点のみで相違するが、幾つかの突然変異がこの変化を生じるために必要とされる。このことは、突然変異の幾つかのラウンドが必要とされ、かつ、数百万のクローンが選択され、かつ、化学構造における所望の変化を見出すべく試験されなくてはならないことを意味する。
【0009】
今日では、細菌株の遺伝子的改変が、非内因性代謝産物の産生を容易にすることが良く知られている。しかしながら、この株が、内因性の代謝産物が比較的高いレベルで産生されるにもかかわらず、この外来性の代謝産物、ハイブリッドをわずかな量で蓄積することも良く知られている。この事実は、乏しい経済性を生じ、かつ、この方法はしばしば商業上利用可能でない。
【0010】
EP特許公開公報EP1123310は、アンスラサイクリン産生株への遺伝子snogCの導入によるアンスラサイクリンの糖残基の成功した改変を説明し、この株はアクラビノン−4′−エピ−2−デオキシフコースの形成を生じることとなる。しかしながら、この産生タイターは、上記したとおり低いままである。
【0011】
更に、典型的には10〜20個の類似の産生物を含む複雑なマトリックスからの所望される代謝産物の精製は、しばしば成功しない。また低い収率のための更なる理由としては、産生株による非内因性化合物に対する低い抵抗性が挙げられる。毒性生成物、エピダウノルビシン、エピルビシン又はイダルビシンの、培養ブロスへの段階的な添加により産生株を非内因性代謝産物へと適合させることは、時間がかかり、かつ有利には、産生株に対して少ない毒性である代謝産物の蓄積を生じる。
【0012】
現在では、アンスラサイクリン、エピルビシンのバイオテクノロジーによる産生の収率及び経済性に関するいくばくかの進展が報告されており、例えばこれは、国際特許出願公報WO 2006/111561 A1中に報告されている。ストレプトマイセス・ペウセティウス(Streptomyces peucetius)種からの株の突然変異により、エピダウノルビシン(エピルビシンの前駆体)及び/又はエピルビシン自体を少なくとも0.1g/l 発酵ブロスの濃度で産生する微生物株が得られた。
【0013】
アンスラサイクリンのための生合成経路及び基質特異性は、複数の刊行物中で説明され(現在の概要についてはNiemi et al., 2002を参照のこと)、ダウノマイシン生合成の最終工程にもかかわらず、グリコシル化後のアグリコン残基の改変反応及びこの場合の分子遺伝学完全には理解されていない。図1には、生合成経路が示されている。アンスラサイクリンの優勢は連続的であるようにみえる。ダウノマイシンのクラスの幾つかの新規処方、コンジュゲート、新規分子及びプロドラッグは、癌薬剤のためのパイプラインにある。化学合成によるダウノルビシンから出発するアンスラサイクリン産生は、比較的低い収率を生じる多工程方法であり、このことは改善された方法が必要であることを示唆する。従って、改善された産生株及び効率的に商業的に利用可能な製造方法のための必要性が良く認識されている。
【0014】
図面の簡単な説明
図1は、アンスラサイクリンのダウノマイシンのクラスのための生合成経路を図示する。
図2は、発酵バッチからの粗製エピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンを生成及び単離するための方法を図示する。
図3は、本発明に関連して、エピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンの高タイター製造のための能力を有する微生物株から得られる代謝産物の典型的なクロマトグラム同定を示す。典型的な代謝産物プロファイルは次のとおりである:Rt=6.950 13−DHED、Rt=7.850 4′−エピ−フォイドマイシン、Rt=8.725 4′−エピダウノルビシン、Rt=15.842 ε−ロドマイシノン。
【0015】
発明の詳細な説明
この説明を通じて、エピダウノマイシン、例えばエピダウノルビシン(CAS # 56390-08-0)、13−ジヒドロ−エピダウノルビシン=4′−エピ−ダウノルビシノール(以下、13−DHEDと呼ぶ)、及びエピフォイドマイシン(フォイドマイシンBと類似して設計される)は、一緒にしてエピダウノマイシンと呼ぶ。
【0016】
本発明は、改善した、遺伝子改変された産生株、有利には、ストレプトマイセス・ペウセティウス(Streptomyces peucetius)由来の株であって、アンスラサイクリン代謝産物、例えば非内因性代謝産物、例えばエピダウノマイシンの混合物を、培養ブロス1リットルあたり少なくとも0.5gのタイターで製造する産生株に関し、これはアンスラサイクリン抗生物質、特にエピルビシン及びイダルビシンの引き続く製造のために使用される。
【0017】
本研究においては、我々は、寄託番号DSM12245でDSMZに寄託されたS.ペウセティウスvar.セシウス(S. peucetius var. caesius)の突然変異株を使用し、これはバウマイシンの生合成において遮断され、かつ、野生型株に比較して100倍以上のより高いタイターでダウノマイシンを産生することができる。この株も、ε−ロドマイシノンの増加した量を産生する。この株は更に、この機能的な遺伝子dnmV(Often et al., 1997)を遺伝子ekr8で置き換えることにより遺伝子的に改変されており、これによりダウノマイシン代謝産物の4′位において反対の立体化学を生じ、従って、エピダウノマイシン代謝産物ファミリーを提供する。この置き換えのために使用される遺伝子は意外なことに、snogCに由来のプローブを用いた細菌培養液からの遺伝子の単離に関連したショットガンクローニング実験において見出された(Torkkell et al., 2001)。この遺伝子的に改変された株は、G001/pB70dvと呼ばれ、エピダウノルビシン代謝産物を培養ブロス1リットルあたりおおよそ800mg蓄積し、同時にε−ロドマイシノンが比較的高いレベル;200〜300mg/lで産生された。しかしながら、エピダウノマイシン代謝産物の混合物は、4−OH化合物、いわゆるエピ−カルミノマイシンを含有することが見出され、これにより精製プロセスはいくらか複雑になる。
【0018】
利用可能な様々な遺伝子コンストラクトが宿主株G001からプラスミドpB70dVを少量ずつなくすことにより得られる株中に導入され、かつ、意外なことに、このプラスミドpB89rdmBは、エピ−カルミノマイシン無しにエピダウノマイシン代謝産物の産生を生じた。更に、産生タイターにおける予期できない増加が、この株培養液をもう一度変異原物質で処理した場合に得られた。200個の突然変異体を試験管培養においてエピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンの製造のために検査し、培養ブロス1リットルにつき1gより多いアンスラサイクリン代謝産物を産生する高産生株を同定した。この株は、エピダウノマイシン代謝産物及びε−ロドマイシノンの良好な混合物を生産する:典型的には、エピダウノルビシン:13−DHED:4′−エピフォイドマイシン:ε−ロドマイシノンそれぞれ、タイター600mg/l:500mg/l:200mg/l:200mg/l:である。エピルビシンの少ない量もまた、全ての培養の副生成物中に見出された。
【0019】
アグリコン残基のグリコシル化は、この株で完全には進行せず、かつ、この決定的な生合成中間体、ε−ロドマイシノンが、この培養ブロス中で顕著な量で見出される。これらの遺伝子的に改変された株の樹脂を用いた発酵ブロス中での培養は、代謝産物の一層より高いタイターを生じ、かつ、この下流プロセスを容易化する。本発明は更に、粗製エピダウノマイシン、例えばエピダウノルビシン、13−ジヒドロ−エピダウノルビシン(13−DHED)、4′−エピ−フォイドマイシン、及びε−ロドマイシノンを単一の発酵バッチから産生及び単離する方法に関する。本発明による方法スキームは図2に一般的に示されている。
【0020】
本発明は、エピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンの製造の最大化、非内因性副生成物の製造の最小化を目的とし、かつ、この引き続く下流プロセスのこの様式において簡素化することを目的とする。本発明の製造方法における使用に適した生産株の重要な観点は、
i)粗製代謝産物プロファイルが、下流プロセシングのために適している、及び
ii)過剰生産の能力が、エピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンに対する株の感受性により制限されない、ことである。
【0021】
本発明による方法においては、単一の発酵バッチが、エピルビシン及びイダルビシン両者のための合成材料の供給源として使用され、即ち、両者共に商業的に重要なアンスラサイクリンである。
【0022】
発明の詳細な説明
先行技術の公知の欠点を考慮すると、単一のバッチ発酵において、1種より多いアンスラサイクリン抗生物質、特にエピルビシン及びイダルビシンの引き続く製造のために適した、高いタイターの非内因性代謝産物の混合物を提供することができることが、経済的に重要な観点であろう。引き続く下流のプロセシングを簡易化するためには、可能な限り内因性化合物の付加的な形成を回避することがより一層の経済的な観点である。これら全てが本発明の課題である。
【0023】
最適化された微生物株を用いる、単一のバッチ発酵による1のアンスラサイクリン、例えばエピルビシンの製造が、より効率的な製造目的のための開始点である。しかしながら、商業的に利用可能な製造方法のための最良の解決策は、単一のバッチ発酵において、1回で1より多いアンスラサイクリンの製造のための出発材料として使用できる代謝産物の混合物の高いタイターを提供する改変された微生物株を用いて作業することであろう。
【0024】
本発明は、エピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンを発酵により製造するための方法において使用するための改善された産生株を提供する。幾つかのストレプトマイセス株が、ダウノマイシンを産生することができるが、一方でS.ペウセティウスが有利には、本発明においてエピダウノマイシンのための産生株として使用される。実施例を含めて本発明を通じて、S.ペウセティウス var.セシウス(S. peucetius var. caesius)G001(DSM12245)が、エピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンを蓄積する株を得るための遺伝子改変のために使用される親株として使用される。
【0025】
しかしながら、以下の特性を有する任意の株がこの方法に適する:
1.全体で0.1g/lを超える、エピダウノマイシン代謝産物の高い産生のための能力、
2.発酵プロセスにおいてε−ロドマイシノンを得るための不完全なグリコシル化系;全体のアンスラサイクリン代謝産物分画の10%超。
3.全ての代謝産物、エピダウノルビシン、13−DHED、エピ−フォイドマイシン及びε−ロドマイシノンが、全体のアンスラサイクリン代謝産物分画それぞれの少なくとも10%の量で産生される。
3.ダウノルビシンを産生するための生合成経路及び関連する代謝産物が遮断される。
【0026】
S.ペウセティウス var.セシウス(S. peucetius var. caesius)G001の突然変異株が本発明の親株として使用された。しかしながらダウノマイシンの産生のための生合成機構を有する複数の他の株も等しく適する。この株は、化学的変異原物質NTG(N−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)によるバウマイシンの産生において遮断され、かつ、相応する遺伝子dnrHは、バウマイシン産生の遮断を生じる点突然変異を同定すべく配列決定されていた。この点突然変異が、アミノ酸中の変化を引き起こした;Glyが、Aspにより置き換えられた。任意のダウノルビシン産生体が適するものの、バウマイシンの生合成において遮断されている高産生株が、本発明には有利な宿主株である。
【0027】
4′−ケトレダクターゼのための遺伝子のクローニングは、選択された宿主中で発現されるべき遺伝子を有用に生じる任意の公知の方法により実施されることができる。Ylihonko et al. (1999)により4′−エピ−アンスラサイクリンを作成することが前もって示されている遺伝子snogCに由来するDNA断片を、ダウノサミン経路のグリコシルトランスフェラーゼとより良好に共同した作用を有する相応するケトレダクターゼ遺伝子のためのスクリーニングにプローブとして使用し、これは例えばekr8である。遺伝子ライブラリーのための宿主株としてE.コリ(E. coli)を使用すると、ハイブリダイゼーションが有利なスクリーニングストラテジーである。このハイブリダイゼーションのためのプローブは、snogC又は類似遺伝子に由来する任意の断片であってよく、かつ、適した制限部位でのサブクローニング又はPCR増幅により作成されてよい。遺伝子ライブラリーのためのコロニーは、フィルターハイブリダイゼーションのための膜へと移され、かつ、ナイロン膜が典型的に使用される。ハイブリダイゼーションのための任意の検出方法が使用されてよいが、特に、DIG系(Boehringer Mannheim, GmbH, ドイツ国)が使用できる。プローブはハイブリダイズしたDNAに対して非相同性であるので、Boehringer Mannheim'のマニュアル, DIG System User's Guide for Filter hybridizationに応じて、ハイブリダイゼーションのストリンジェントな洗浄を65℃で低塩濃度で実施することが好ましい。遺伝子の機能性は、高いコピー数の発現ベクター、plJE486中にクローニングされたekr8を有する株による培養ブロス中でのエピダウノマイシン(ε−ロドマイシノンの他に)を検出するための実験により実証された。ダウノサミン中の4′−OH基の立体化学を変換することができる任意の4′−ケトレダクターゼが、本発明によるエピダウノマイシン(ε−ロドマイシノンの他に)の産生を生じるべくダウノルビシン−産生株中へのクローニングするために適しているが、遺伝子が高レベルで発現されていることが有利である。ダウノマイシンのための生合成経路によれば、遺伝子dnmV(Often et at., 1997)が、ダウノサミン経路におけるケト還元工程を担う。この特定の遺伝子は、移送された遺伝子のための競合体であり、従って有利には不活性化されているか又は欠失されている。遺伝子dnmVの不活性化は、遺伝子機能の破壊のための任意の公知技術により達成されてよい。この目的のためには遺伝子不活性化のための非相同的組み換えが有利である。この遺伝子に対して、ランダム技術、例えば化学的突然変異により突然変異を生じることも可能である。
【0028】
ekr8遺伝子は様々なコンストラクト中で親株G001のプラスミド落下により得られる株中へとクローニングし、かつ、この達成される株の代謝産物を分析した。1個のクローンの代謝産物プロファイルは、下流目的のために有望であると考えられた。このクローンは、プラスミドpB89rdmB(rdmB, 参照、Jansson et al. 2003)を有し、かつ、エピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンを、株G001により産生されるダウノマイシンの量のおおよそ50%に相当するタイターで産生した。プラスミドpB89rdmBは、遺伝子ekr8及びrdmBを有する。このクローンはG005aと呼ばれた。この遺伝子コンストラクトは、ストレプトマイセス放射菌中で複製できる任意のベクター中で発現されることができる。高いコピー数のプラスミドがしかしながら、ベクターとして有利に使用される。本発明のためには、プラスミドベクターplJE48(Ylihonko et al., 1996)が有利であることが見出された。
【0029】
宿主細胞中にDNAを導入するための複数の方法が説明されている。極めて有利な手段は、プロトプラストトランスフォーメーションであり、これをこの研究を通じて使用した。しかしながら、上述したとおりの本発明による株の特性を有する株を産生すべく使用される任意の方法及び任意のベクターが、利用できる。
【0030】
プラスミドpB89rdmBを含有する前述の株が、エピダウノマイシンに対して幾分感受性があることが見出され、というのはダウノマイシンに対する内因性の抵抗性が十分でなく、かつ、株の乏しい安定性を生じたからであり、これは、繰り返された培養において見出された産生タイターにおける変化により認められた。この抵抗性をエピルビシン又はエピダウノルビシンを用いた適合により増加させると、13−DHEDのより高いタイターを生じた。この株の培養液を、ストリンジェントな条件において、変異原物質で処理し、かつ、任意の化学的変異原物質が使用できるものの、NTGが有利である。pB89rdmB含有クローンに比較して同じ代謝産物の増加した生産を伴う突然変異処理からのクローンを得、この長期間の安定性が認められた。この安定性は、商業上の産生のために重要であり、従って、意外であるにもかかわらず極めて有利である。この遺伝子的に改変された株は、淘汰圧無しに安定である。8日目に産生レベルのピークを新規クローンは達成し、その一方で6日目が親株G001についての最良であった。典型的には突然変異株は、エピダウノルビシン、13−DHED、エピ−フォイドマイシン及びε−ロドマイシノンを主生成物として産生し、その一方で残りのアンスラサイクリン分画がこの収率の10%未満をカバーする。
【0031】
第2表は、提示された発明のための株の典型的な代謝産物プロファイルについて情報を示す。mg/lにおいて量を示す。
【0032】
第2表
【表2】

*主としてエピカルミノマイシン
【0033】
S.ペウセティウス又は関連した株を臨床的な使用のためのアンスラサイクリンの製造において使用することを試みる場合の良く知られた困難性は、生産力の点での乏しい安定性、株の培養の産生タイターの変化である。このような株を使用することは経済的に可能ではなく、そして最悪なことには、この株は顕著な経済的な欠点を引き起こし、かつ、最悪の場合には、癌患者に所望される細胞毒性薬剤の欠失を生じる。その生産力に対する株の不安定性の作用は、ダウノルビシン及び関連する代謝産物の突然変異原性の結果である。従って、本発明による安定な産生株が、アンスラサイクリンの製造のために有利であり、かつ、重要な細胞毒性抗癌剤の連続的な供給のための保証である。
【0034】
本発明により改変された産生株、有利にはストレプトマイセス株、最も有利にはストレプトマイセス・ペウセティウス(Streptomyces peucetius)株の培養は、適した栄養源を含有する培地中で実施されることができる。適した培地は、E1培地であり、この培地は実験2において説明される。plJE486のプラスミド体は、チオストレプトンに対する抵抗性を担う遺伝子を含む。従って、一般的な実験プロトコルは、培養中においてプラスミドを含有する株を維持すべく淘汰圧を維持することを示唆する。しかしながら意外にも、前記株の培養はチオストレプトンの非存在下で、クローニングされたプラスミドの欠損を示さず、このことはE1培地が、供給される抗生物質無しに、培養において好ましいことを示唆する。
【0035】
吸着樹脂を培養ブロスに添加することは、アンスラサイクリンのための方法において説明されている(Torkkell et al. 2001 and Metsa-Ketela et al., 2003)。やはり変異原であるこの毒性産物は、以下の2つの様式で影響を及ぼす;(i)毒性作用により引き起こされるより少ない産生、及び(ii)産生株の突然変異化。従って、培養において生産物又は細菌と干渉しないが、分泌された代謝産物及び細胞中で蓄積された代謝産物の両方を吸着する吸着剤が有利である。
【0036】
本発明の有利な一実施態様において、発酵ブロスから代謝産物を回収するために、培養前又は間に非イオン性吸着剤が培地に添加され、これによりブロス毎の回収率を増加させる。適した培地、例えばE1培地中のポリスチレン樹脂、例えばAmberlite XAD-7 (CAS # 37380-43-1) (Rohm & Haas Germany GmbH, Frankfurt)又はジアニオン(Diaion)HP-20は実験の部分でより詳細に説明され、エピダウノルビシン13−DHED及びエピ−フォイドマイシンの回収率を増加させる。ε−ロドマイシノンも発酵ブロスから一緒に同様に吸着される。このより高い収率は、この分子の架橋によるエピダウノマイシン代謝産物のためのXAD−7の極めて強力な吸着能力のためである。回収の収量として得られる粗製エピダウノマイシンは、エピダウノルビシン500〜700mg/l、13−DHED400〜600mg/l、4′−エピ−フォイドマイシン150〜300mg/l及びε−ロドマイシノン150〜300mg/lをおおよそ含有する。吸着剤としてジアニオンHP-20が使用される場合には、同じ収量が回収されるが、E1培地に対して補われる吸着剤の量は著しくより高くなくてはならない。
【0037】
この発酵プロセスはエピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンの最大限の産生を可能にする任意の条件で実施できる。しかしながら、発酵を26℃〜34℃の温度範囲で、pH6.5〜7.5で14日間にわたり実施することが有利である。吸着剤は培養の任意の時間で添加されてよく、しかしながら、この最高の収量は吸着剤が培養の開始時に培地に添加される場合に得られる。
【0038】
吸着樹脂中で吸着される物質は、ほとんどエピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンを含有するが、デカンテーションにより培養ブロスから分離された。有機溶媒を用いて樹脂は抽出され、メタノール及びブタノールが有利である。発酵槽中の培養ブロスの容積の10〜50%としての溶媒の量が推奨される。1〜5回抽出を繰り返すことにより、使用される吸着剤が全てのアンスラサイクリン代謝産物から自由になり、かつ樹脂は、水での洗浄後に再利用可能である。
【0039】
ε−ロドマイシノンを含有するアグリコン分画の分離が、吸着剤からの全ての代謝産物の回収後に有利である。
【0040】
粗製アンスラサイクリンの更なる処理
エピダウノルビシンへの13−DHEDの変換
13−DHEDは、グリコシド分画からクロマトグラフィ、引き続く結晶化、それに伴うエピダウノルビシン分離により容易に分離される。13−DHEDは、ストレプトマイセス株の培養ブロスに添加された樹脂に対して吸着性であることができ、これはダウノマイシン合成及びとりわけ後期の段階のための能力を有する。任意の株が適するものの、初期の生合成経路において遮断され、かつ、ダウノマイシン代謝産物を蓄積することができない株を使用することが好ましい。
【0041】
エピルビシンへのエピダウノルビシンの変換
粗製エピダウノルビシン(純度≧80%)を、しばしば使用される癌薬剤であるエピルビシンを得るための合成化学のための出発材料として使用する。合成又は生体触媒的な任意の反応系列が、14−ヒドロキシル化のために使用されてよい。
【0042】
エピダウノルビシンをその14−ヒドロキシル化形態、エピルビシンへ変換するための幾つかの可能性がある。内因性遺伝子産物単独、14−ヒドロキシラーゼでは、培養ブロス中に少量のエピルビシンが見出されても、培養条件において全ての形成されるエピダウノルビシンをエピルビシンへと変換させるのに十分に活性でない。我々の実験によれば(データ示さず)、14−ヒドロキシラーゼのための遺伝子の高いコピー数であっても、エピルビシン産生のための方法を完了し損ねる。にもかかわらず、2つのUS特許公報US 5,955,319及びUS 6,210,930は、doxAの遺伝子産物による低レベルでのダウノルビシンのドキソルビシンへの変換を開示する。明らかに、この生体変換は高度に条件に依存性であり、かつ、この方法を繰り返すことに我々は成功していない。
【0043】
ダウノルビシンからのドキソルビシンの合成に類似して、ヒドロキシル基を完全なエピダウノルビシンのC−14に付加するための様々な可能性が存在する。
【0044】
エピルビシンの精製は、合成混合物からのエピルビシンの抽出後にクロマトグラフィ及び/又は結晶化により実施される。しかしながら、活性のある製薬的な成分に対して要求される品質を達成するためには、≧97%の純度においてエピルビシンを生じるためにクロマトグラフィ分離が重要である。
【0045】
イダルビシンへのε−ロドマイシノンの変換
図1中で示される順番で生合成が進行することが知られている。アクラビノン、いくつかのアンスラサイクリンのための典型的な前駆体が、11−ヒドロキシル化され、グリコシル化されるε−ロドマイシノンを形成する。他の糖残基、例えばロドサミンが許容される基質であるにもかかわらず、10位での改変が、グリコシル化形態のために必要である。10−改変後に13−酸素化が生じ、かつ、ダウノルビシン生合成のための最終的な工程はC−4でのO−メチル化である。従って、10−及び13−改変もまた同様にグリコシル化も、4−デオキシ形態にもかかわらず成功する。4−デオキシアクラビノン及び4−デオキシ−ε−ロドマイシノンは、イダルビシンへと変換される。
【0046】
本発明の方法は確かに効率的であり、というのは、この方法は、単一の発酵バッチからの、ε−ロドマイシノン、エピダウノルビシン、13−DHED及び4′−エピ−フォイドマイシンの産生及び回収を可能にする。
【0047】
上記した理由のために、経済的な使用のためにエピルビシン及びイダルビシンを産生するべく本発明による株を発酵において使用することが有利である。本発明による方法は、高い収率及び低コストで重要なアンスラサイクリンの産生を可能にする。発酵プロセスの流れ図は図2に説明されている。本発明のより詳細な説明は、以下の実施例に挙げられている。技術の進歩と共に本発明のコンセプトが様々に実現できることが当業者には明らかであろう。本発明及びその実施態様は、上に説明されるとおり実施例に限定されないが、特許請求の範囲内で変動してよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、アンスラサイクリンのダウノマイシンのクラスのための生合成経路を図示する図である。
【図2】図2は、発酵バッチからの粗製エピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンを生成及び単離するための方法を図示する図である。
【図3】図3は、本発明に関連して、エピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンの高タイター製造のための能力を有する微生物株から得られる代謝産物の典型的なクロマトグラム同定を示す図である。
【0049】
実施例
例1
高タイターのエピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンを産生する微生物株の構築
ストレプトマイセスDNAの操作をE.コリ中で実施し、かつ、成長したDNAを次いでストレプトマイセス株に導入した。この研究において使用した細菌株及びプラスミドは以下第3表に説明されている。
【0050】
第3表:細菌株及びプラスミド
【表3】

【0051】
ストレプトマイセス及びE.コリ株の培養また同様にDNAの単離及び操作を、それぞれHopwood et al. (1985)及びSambrook et al. (1989)の実験室マニュアルにおいて説明されているとおりに実施した。プラスミドを高圧エレクトロポレーションによりE.コリ株中に導入し、プロトプラスト形質転換によりストレプトマイセス中に導入した(Ylihonko et al., 1996)。遺伝子snogCを、ストレプトマイセス遺伝子ライブラリーからの相応する遺伝子のクローニングのためのプローブとして使用した。E.コリ中でクローニングしかつ成長した遺伝子をG001中にベクターplJE486において移し、かつ、小さいスケールの培養において得られる生成物をG001生成物に対する比較により研究した。このようにして、ekr8を有するクローンが、ダウノマイシンの他にエピダウノマイシンを産生することが見出された。このクローンを、典型的なダウノルビシン代謝産物を産生することができないが、エピダウノマイシンを蓄積するように選択し、かつ、G001/pB70dv (寄託番号: DSM 19076).と呼んだ。例2において説明された条件においてクローンを培養する際に得られる生成物は、エピダウノマイシン及びエピ−カルミノマイシン両者を示した。
【0052】
このプラスミドを含有するクローンG001/pB70dvを幾つかのラウンドでTSB培地中で培養し(1リットルにつきオキソイドトリプトン大豆ブロス粉末(Oxoid Tryptone Soya Broth powder)30g)、プラスミドを落とした。この得られる株は、プラスミドを有さず、かつ、アグリコンを産生した。遺伝子ekr8をアンスラサイクリン生合成の後期の段階に関連する遺伝子を有する異なるコンストラクトにクローニングし、かつ、上述したアグリコンを産生する株中に導入した。例2において説明した条件での小さいスケールの培養からの試料の分析を調べ、かつ、プラスミドpB89rdmBを有する得られるクローンがエピダウノマイシン代謝産物を産生することができるが、エピカルミノマイシンはもはや培養ブロス中に蓄積されない。この量は上記の第2表中に示される。
【0053】
エピ−カルミノマイシンの産生は、クローンG001/pB70dv中での4−O−メチラーゼの不完全な活性の結果であってよい。従って、コンストラクションpB89rdmBにおいてクローニングされた遺伝子rdmBは、エピカルミノマイシンを回避するために完全な生合成を担うことが示唆された。rdmB(アクセッション U10405)は、O−メチルトランスフェラーゼ活性が実証されていないにもかかわらずdnrKとの高い配列類似性を示す(Jansson et al. 2003参照のこと)。pB89rdmBを有する株を更に、NTG(N−メチル−N′−ニトロ−ニトロソグアニジン)(Sigma-Aldrich)により突然変異させた。突然変異後におおよそ200個のコロニーが寒天プレート上で取り出され、かつ最初にE1−培地3ml中で培養した。培養条件の更なる詳細については以下の例2参照のこと。pB89rdmB含有株に対して改善したエピダウノマイシン産生及び同一の産生プロファイルを有するランダム突然変異により得られるクローンを複数回培養した。同じ量でかつ淘汰圧のための培地中のチオストレプトン無しにエピダウノマイシン代謝産物をpB89rdmBを含有するクローンに比較してより多く産生することができる微生物株を最後に選択した。
【0054】
商業的な生産のための適性のためにこのような株の安定性を、14回の繰り返した培養により実証した(データ示さず)。
【0055】
例2
高タイターのエピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンを産生する微生物株の培養及び生産プロファイル
例1に説明されたとおりに得られる株を、XAD−7(15g/l)で補われたE1−培地50ml中で培養した。(E1:水道水1リットルにつき:グルコース20g;溶解性澱粉20g;ペプチド5g;酵母エキス2.5g;K2HPO4/3H2O 1.3g;MgSO4・7H2O 1g;NaCl 3g;CaCO3 3g;pH7〜7.5)。
【0056】
産生タイターを決定するために化合物を成長第4日目から第10日目まで抽出した。産生されたアンスラサイクリン代謝産物の量を決定するために、XAD−7を水で1つの培養フラスコからデカンテーションし、かつ、洗浄したXAD−7を40mlのメタノールで少なくとも30分間振盪して抽出した。HPLCをこの試料の分析のために使用した。E1培地中でのXAD−7の使用は、エピダウノマイシンの収量を約400〜500mg/lから500〜700mg/lに増加させた。第2表の他の生成物を参照のこと。この最適な生産時間は11日間であった。コロニー形態における変化は吸着剤の存在下での培養の終了時に見出されず、このことは、エピダウノマイシンの代謝産物の毒性及び変異原性の作用を、培養の間にXAD中にこれらを吸着することにより妨げることが可能であることを示唆する。得られる生成物の典型的なクロマトグラムは図3中に示される。
【0057】
例3
エピダウノマイシン代謝産物及びε−ロドマイシノンの発酵における産生
4日間にわたり、チオストレプトン(5mg/l)で補われたE1培地60mlを有する4つのフラスコ中でエピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンの高タイター産生の能力を有する株を培養することにより種培養を作成した。この培養物を組み合わせ、この培養ブロス240mlを使用して、XAD−7(15g/l)で補われたE1−培地20lを発酵槽中で接種した。発酵を20リットルの容積で11日間にわたり30℃及び34℃の温度、350rpmで、10l/分のエアレーションを用いて実施した。
【0058】
例4
粗製エピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンの回収及び精製
4.1 粗製エピダウノマイシンの精製
XAD−7に吸着されたエピダウノルビシン及びε−ロドマイシノンを含有する置換物を発酵から得られた培養ブロス20リットルからデカンテーションした。この樹脂を洗浄して水により細胞デブリを除去した。ペレットをメタノール1リットルで2〜5回抽出した。このアグリコンを、クロロホルム1lを3リットルの組み合わせたメタノール抽出物に添加することにより、クロロホルムで抽出した。溶媒及び水相を分離した。水層中のグリコシドをクロロホルムへとわずかにアルカリ性のpHで抽出し、pHを飽和したNaHCO3で安定化した。塩を水での洗浄により除去した。最後にクロロホルム相をカートリッジフィルターを通じて濾過した。前記方法を用いたエピダウノマイシンの収量は、粗製抽出物の70%に相当する。
【0059】
4.2 ε−ロドマイシノンの精製
上記の第4.1節においての抽出から得られる溶媒分画を乾燥し、かつ少量に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィをクロロホルムを溶出剤として実施した。精製した分画をクロロホルム−メタノール混合物中に溶解することにより晶出し、少量に濃縮し、かつ、ε−ロドマイシノンの>90%の純度が得られた。乾燥沈殿物を溶解し、CHCl3:アセトン:メタノールを用いる溶媒系を用いてフラッシュクロマトグラフィにより精製を実施した。グリコシドを抽出した。収率を最大化するためにこれを2回実施した。グリコシドを全てクロロホルムへと抽出した後に、このpHを飽和したNaCCO3での抽出により安定化した。次いで塩を、2〜4回RO水で抽出することにより除去した。相を2相分離器で分離した。
【0060】
例5
エピダウノマイシン分画からの個々の化合物の分離
エピダウノルビシン、13−DHED及びエピ−フォイドマイシンを例4.1において得られるエピダウノマイシンから分離するためにクロマトグラフィを実施した。この濾過されたクロロホルムをシリカカラムにポンプ輸送し、クロロホルム−メタノール−溶液を移動相として使用するクロマトグラフィにより精製した。それぞれ3つの代謝産物の純粋な分画を回収し、それぞれの生成物の分画をプールした。エピダウノルビシン分画にブタノールを添加し、酸性pH値に調節した。この後で蒸発を開始した。蒸発が継続されるとエピダウノルビシンが晶析し始める。この結晶を濾過し、真空キャビネット中で乾燥させる。13−DHEDの分画をエタノール−水溶液により晶出した。
【0061】
例6
エピルビシンへの粗製エピダウノマイシンの合成による変換
2個の反応;臭素化及び加水分解からなるワンポット反応として、精製したエピダウノルビシンをエピルビシンへと化学合成により変換した。第1の工程においてC−14位を臭素で置換し、第2の工程においてC−14をヒドロキシ化し、エピルビシンの形成を生じる。例5において説明されたように得られるエピダウノルビシンをメタノール中に溶解し、かつ、臭素を添加した。反応を10℃未満で実施し、HPLCにより分析した。この臭素化反応をギ酸ナトリウム緩衝液の添加により1日後に停止した。pHを<3に調節し、この混合物の温度を50〜60℃に調節した。反応をHPLCを用いて観察し、エピルビシンの量がこれ以上高くならない場合に、この反応混合物を冷却することによりこの反応を停止した。
【0062】
RP−シリカクロマトグラフィにより精製を実施した。分画を回収し、HPLCで分析し、純粋な分画(純度>97%)をプールした。結晶化後に98%を超える純度が得られた。
【0063】
例7
アグリコン及びアンスラサイクリンの分析による測定
HPLC:
装置:Jasco HPLC
カラム:Phenomenex, Aqua, 150x4.6mm、3μm
溶媒A:0.05% TEA(pH=2.0、TFAを用いる)
溶媒B:THF中10%MeOH
カラム温度:室温
流速度:1ml/分
検出:UV−Vis、480nm
注入溶液:5μl
勾配:
【表4】

【0064】
寄託した微生物
以下の微生物をDMSZ Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Mascheroder Weg 1b, D38124 Braunschweig,ドイツ国で、ブダペスト条約の規則下で寄託した。
【表5】

【0065】
【表6】

【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図1−4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.5g/l 発酵ブロスのタイターでアンスラサイクリン代謝産物を産生する微生物株。
【請求項2】
化合物エピダウノルビシン、13−ジヒドロ−エピダウノルビシン、4′−エピ−フォイドマイシン及びε−ロドマイシノンのそれぞれの少なくとも0.1g/l 発酵ブロスを産生する、請求項1記載の株。
【請求項3】
化合物エピダウノルビシン、13−ジヒドロ−エピダウノルビシン、4′−エピ−フォイドマイシン及びε−ロドマイシノンのいずれかを全体のアンスラサイクリン代謝産物分画の少なくとも10%産生する、請求項1又は2記載の株。
【請求項4】
内因性ダウノマイシン代謝産物の生合成が遮断される、請求項1から3までのいずれか1項記載の株。
【請求項5】
バウマイシン産生がランダム突然変異により遮断される、請求項1から4までのいずれか1項記載の株。
【請求項6】
株が、4′ケトレダクターゼ及びO−メチル化のための遺伝子を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の株。
【請求項7】
遺伝子がekr8及びrdmBである、請求項6記載の株。
【請求項8】
ストレプトマイセス属から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の株。
【請求項9】
有利にはストレプトマイセス・ペウセティウス種から選択される、請求項1から8までのいずれか1項記載の株。
【請求項10】
より有利にはストレプトマイセス・ペウセティウスvar.セシウス種から選択される、請求項9記載の株。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の微生物性産生株を用いる発酵によるアンスラサイクリン代謝産物の製造方法。
【請求項12】
アンスラサイクリン代謝産物が、エピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンからなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アンスラサイクリン代謝産物が有利には、エピダウノルビシン、13−ジヒドロエピダウノルビシン、4′−エピ−フォイドマイシン及びε−ロドマイシノンからなる群から選択される、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
粗製エピダウノマイシン及びε−ロドマイシノンが任意の時間に樹脂を添加することにより発酵ブロスから吸収される、請求項11から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
樹脂が、イオン性吸着剤及び非イオン性吸着剤の群から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
樹脂が、ポリスチレンの群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
樹脂が、XAD−7及びジアニオンHP−20からなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
樹脂が、1〜100g/lの量で添加される、請求項14から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
樹脂が有利には15〜40g/lの量で添加される、請求項18記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−525828(P2010−525828A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506832(P2010−506832)
【出願日】平成20年4月29日(2008.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003447
【国際公開番号】WO2008/135195
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(390023560)ヴェー ツェー ヘレーウス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (42)
【氏名又は名称原語表記】W.C.Heraeus GmbH 
【住所又は居所原語表記】Heraeusstrasse 12−14, D−63450 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】