説明

癒着防止材及びその製造方法

【課題】従来のものよりも優れた性能を有する癒着防止材を提供することを課題とする。
【解決手段】生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子を含んでなる癒着防止材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癒着防止材に関する。また、本発明は、癒着防止材の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
遊離しているものの、互いに相対して近接している臓器間又は組織間において、様々な原因により連続性が生じることがあり、この状態のことを癒着(adhesion)という。
【0003】
癒着としては、炎症性、腫瘍性、及び先天性がある。炎症性癒着は、線維素(フィブリン)を主体とした滲出物や出血部分に器質化が生じ、これが線維化することによりもたらされるとされる。
【0004】
癒着は、例えば、臓側漿膜と壁側漿膜の間において生じる。また、手術によりできた縫合部においても炎症性癒着が生じる場合がある。例えば、開腹術後等においては癒着により腸閉塞等を来す場合もあり、患者のQOLを低下させる原因となっている。
【0005】
従来から癒着を防止するために使用される種々の癒着防止材が開発されてきた。現在市販されている癒着防止材はフィルム状である。しかしながら、市販の癒着防止材には炎症反応を惹起するおそれ等の問題点が指摘されている(非特許文献1)。このように、従来の癒着防止材には改良すべき点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Diseases of the Colon & Rectum, Volume 42, Number 1, pp. 1639-1642
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のものよりも優れた性能を有する癒着防止材を提供することを課題とする。また、本発明は、従来のものよりも優れた性能を有する癒着防止材の製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来開発されてきたフィルム状の癒着防止材の性能を如何にして向上させればよいかについて検討を行った。検討を日夜重ねた結果、乾燥多孔質粒子状という、従来の技術常識からは到底想到できないような新たな形状を採用することで、驚くべきことに癒着防止材として要求される種々の性能が従来のものよりも大きく向上することを見出した。
【0009】
この技術的思想を基礎として、本発明者らはさらに多大な時間と労力をかけることにより一層優れた性能を有する癒着防止材を開発することに成功し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は次の通りである:
1.癒着防止材
(1−1)生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子を含んでなる癒着防止材。
(1−2)生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子の粒子径が50〜3,000μmである(1−1)記載の癒着防止材。
(1−3)生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子の粒子径が500〜1,500μmである(1−1)記載の癒着防止材。
(1−4)粒子径50〜3,000μmの生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子が生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子全体の60%以上を占める(1−1)記載の癒着防止材。
(1−5)粒子径500〜1,500μmの生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子が生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子全体の60%以上を占める(1−1)記載の癒着防止材。
(1−6)乾燥多孔質粒子が、生体適合性高分子含有水溶液の凍結乾燥物を粉砕することによって得ることができるものである、(1−1)〜(1−5)のいずれかに記載の癒着防止材。
(1−7)癒着を防止しようとする部位に空気噴射によって吹き付けることにより使用される癒着防止材である、(1−1)〜(1−6)のいずれかに記載の癒着防止材。
(1−8)生体適合性高分子がアルギン酸塩、キトサン、ヒアルロン酸、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも1種である(1−1)〜(1−7)のいずれかに記載の癒着防止材。
(1−9)生体適合性高分子がアルギン酸ナトリウムである(1−1)〜(1−4)のいずれかに記載の癒着防止材。
2.癒着防止材の製造方法
(2−1)生体適合性高分子を含む粒子径50〜3,000μmの乾燥多孔質粒子を含んでなる癒着防止材の製造方法であって:
(A)生体適合性高分子含有水溶液を凍結乾燥する工程;及び
(B)工程(A)で得られた凍結乾燥物を粉砕する工程
を含む方法。
(2−2)乾燥多孔質粒子の粒子径が500〜1,500μmである(2−1)記載の方法。
(2−3)生体適合性高分子がアルギン酸塩、キトサン、ヒアルロン酸、及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも1種である(2−1)又は(2−2)に記載の方法。(2−4)生体適合性高分子がアルギン酸ナトリウムである(2−1)又は(2−2)に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、留置部位における滞留性、癒着抑制効果、肥厚化抑制効果、及び生分解性に優れる癒着防止材を提供することができる。
【0012】
本発明によれば、特に、従来のフィルム状のものに比べ凹凸面に対してより適用し易い癒着防止材を提供することができる。
【0013】
また、本発明によれば、癒着を防止しようとする部位に空気噴射によって吹き付けることにより留置することができる癒着防止材を提供することもできる。本発明によれば、さらに、例えば内視鏡手術や鍵穴手術等において、空気噴射により導入細管を通して癒着防止材を体内に導入することもできるため、患者に対する侵襲度を低減することができ、患者QOLを向上することもできる。
【0014】
このように、本発明により優れた癒着防止処置を行うことができるので、多くの患者、そしてその治療等に携わる医療機関の双方が大きなメリットを享受できることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の癒着防止材0.01gの、図面に代わる写真である。
【図2】本発明の癒着防止材の、図面に代わる電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例2における無処置群の14日後の様子の、図面に代わる写真である。
【図4】実施例2におけるセプラフィルム処置群の14日後の様子の、図面に代わる写真である。
【図5】実施例2におけるゲル処置群の14日後の様子の、図面に代わる写真である。
【図6】実施例2における粉末処置群の14日後の様子の、図面に代わる写真である。
【図7】実施例2における乾燥多孔質粒子処置群の14日後の様子の、図面に代わる写真である。
【図8】実施例2における無処置群の7日後のヘマトキシリン−エオシン染色切片の、図面に代わる顕微鏡染色写真(40倍拡大)である。図中「Ce」は盲腸を、「Ab」は腹壁を指す。
【図9】実施例2におけるセプラフィルム処置群の7日後のヘマトキシリン−エオシン染色切片の、図面に代わる顕微鏡染色写真(40倍拡大)である。図中「Ce」は盲腸を、「Ab」は腹壁を指す。
【図10】実施例2におけるゲル処置群の7日後のヘマトキシリン−エオシン染色切片の、図面に代わる顕微鏡染色写真(40倍拡大)である。図中「Ce」は盲腸を、「Ab」は腹壁を指す。
【図11】実施例2における粉末処置群の7日後のヘマトキシリン−エオシン染色切片の、図面に代わる顕微鏡染色写真(40倍拡大)である。図中「Ce」は盲腸を、「Ab」は腹壁を指す。
【図12】実施例2における乾燥多孔質粒子処置群の7日後のヘマトキシリン−エオシン染色切片の、図面に代わる顕微鏡染色写真(40倍拡大)である。図中「Ce」は盲腸を、「Ab」は腹壁を指す。
【図13】実施例2における無処置群の14日後のヘマトキシリン−エオシン染色切片の、図面に代わる顕微鏡染色写真(40倍拡大)である。図中「Ce」は盲腸を、「Ab」は腹壁を指す。
【図14】実施例2におけるセプラフィルム処置群の14日後のヘマトキシリン−エオシン染色切片の、図面に代わる顕微鏡染色写真(40倍拡大)である。図中「Ce」は盲腸を、「Ab」は腹壁を指す。
【図15】実施例2におけるゲル処置群の14日後のヘマトキシリン−エオシン染色切片の、図面に代わる顕微鏡染色写真(40倍拡大)である。図中「Ce」は盲腸を、「Ab」は腹壁を指す。
【図16】実施例2における粉末処置群の14日後のヘマトキシリン−エオシン染色切片の、図面に代わる顕微鏡染色写真(100倍拡大)である。図中「Ce」は盲腸を、「Ab」は腹壁を指す。
【図17】実施例2における乾燥多孔質粒子処置群の14日後のヘマトキシリン−エオシン染色切片の、図面に代わる顕微鏡染色写真(100倍拡大)である。図中「Ce」は盲腸を、「Ab」は腹壁を指す。
【図18】実施例2における乾燥多孔質粒子処置群の7日後のHBME-1染色切片の、図面に代わる顕微鏡染色写真である。
【図19】実施例2における乾燥多孔質粒子処置群の14日後のHBME-1染色切片の、図面に代わる顕微鏡染色写真である。
【図20】実施例3で得られた、ゼラチンの乾燥多孔質粒子(未架橋ゼラチンフレーク)の、図面に代わる電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.癒着防止材
本発明の癒着防止材は、生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子を含んでなる癒着防止材である。
【0017】
癒着防止材とは、臓器間又は組織間において生じる癒着を軽減、又は防止するために使用される材料のことである。癒着防止材は、心臓、腎臓、肝臓、胃、腸、及び子宮等をはじめとする臓器、並びに血管、粘膜、骨、及び腱をはじめとする組織において創傷、手術、その他の理由により損傷、又は炎症等が発生することにより生じる癒着を防止するために使用される。癒着防止材は、創傷部位、又は手術部位、並びにそれらの周辺に留置することによって使用される。
【0018】
本発明の癒着防止材は、生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子を主成分として含む。
【0019】
生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子とは、生体適合性高分子を含有し、乾燥した状態にあり、かつ多孔状の物理的形状を有する粒子をいう。
【0020】
生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子は、生体適合性高分子を主成分として含む。
【0021】
生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子は、例えば、水で膨潤させた生体適合性高分子を乾燥して水分を取り除くことによって得ることができる乾燥多孔質体を、さらに粉砕すること等によって得ることができる。粉砕手段は、後述する通り所定の粒子径を有する乾燥多孔質粒子が得られればよく限定されない。粉砕後に必要に応じてさらに篩にかける等して粒子径のより大きなものを取り除いてもよい。具体的には、例えば、生体適合性高分子含有水溶液を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥体を粉砕することによって得ることができる。
【0022】
生体適合性高分子とは、生体適合性を有する高分子を意味する。生体適合性とは、生体とのなじみ良さの度合いを表す。生体適合性はさらに組織適合性と血液適合性とに分けられる。組織適合性とは組織への親和性を示すことをいう。血液適合性とは、血液を凝固させない性質を示すことをいう。生体適合性の尺度は次の通りである。すなわち、まず組織適合性は炎症反応の程度を尺度とすることができる。一方、血液適合性は血栓形成反応の程度を尺度とすることができる。さらに組織適合性の別の尺度としては、カプセル化等の程度を用いることもできる。カプセル化とは、生体が組織適合性の悪い材料を異物と認識して異物反応を起こし、厚いカプセルで覆って隔絶したりする現象をいう。さらに血液適合性の別の尺度としては、石灰沈着、パンヌス形成、又は溶血等の程度を用いることもできる。石灰沈着とは、血液中のリンとカルシウムが材料表面で結晶化することによりヒドロキシアパタイトを形成する現象をいう。パンヌス形成とは、材料表面に炎症性滑膜肉芽組織が形成される現象をいう。
【0023】
生体適合性高分子としては、水分を含んでゲル化し、癒着防止材として使用できるものであればよく、限定されない。
【0024】
生体適合性高分子としては、天然由来のもの、天然由来のものを加工したもの、及び人工的に合成したものを用いることができる。
【0025】
生体適合性高分子としては、例えば、多糖類、及びタンパク質、並びにこれらの誘導体等が挙げられる。生体適合性高分子としてはこれらの生体適合性高分子を単独で用いてもよいし、2種以上の生体適合性高分子を組み合わせて用いてもよい。2種以上の生体適合性高分子を組み合わせて用いる場合、2種以上の生体適合性高分子を原料の段階で混合してから生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子を製造してもよいし、2種以上の生体適合性高分子を別々の原料としてそれぞれ生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子を製造した後の段階で混合してもよい。
【0026】
多糖類としては、例えば、アルギン酸、ヒアルロン酸、キトサン、デキストラン及びその誘導体、ヘパラン硫酸、ヘパリン、カルボキシル化デンプン、カルボキシル化アミロース、カルボキシル化セルロース、並びにこれらの塩等が挙げられる。デキストランの誘導体としては、例えばデキストラン硫酸等が挙げられる。カルボキシル化セルロースとしては、例えばカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。多糖類としてはこれらの多糖類を単独で用いてもよいし、2種以上の多糖類を組み合わせて用いてもよい。2種以上の多糖類を組み合わせて用いる場合、2種以上の多糖類を原料の段階で混合してから生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子を製造してもよいし、2種以上の多糖類を別々の原料としてそれぞれ生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子を製造した後の段階で混合してもよい。
【0027】
多糖類としては、アルギン酸及びその塩、キトサン及びその塩、並びにヒアルロン酸及びその塩が好ましく、アルギン酸塩がより好ましく、アルギン酸ナトリウムがさらに好ましい。
【0028】
タンパク質としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、ヘパリン、エラスチン、フィブリン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、エンタクチン、トロンボスポンジン、テナシン、及びガゼイン等が挙げられる。
【0029】
生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子は、主成分としての生体適合性高分子の他に、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。例えば、薬効成分等が挙げられる。薬効成分としては、例えば抗がん剤、及び成長因子(growth factor)等が挙げられる。抗がん剤としては、例えば5-フルオロウラシル、ビンブラスチン、タキソール、及びシスプラチン等が挙げられる。成長因子としては、例えば肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor; HGF)、及び線維芽細胞増殖因子(Fibroblast Growth Factor;FGF)等が挙げられる。生体適合性高分子に加えてその他の成分をさらに含有させた生体適合性高分子含有水溶液を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥体を粉砕することによって生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子を得ることもできる。
【0030】
生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子の粒子径は、50〜3,000μmであれば好ましく、200〜2,000μmであればより好ましく、500〜1,500μmであればさらに好ましく、700〜1,000μmであればさらにより好ましい。
【0031】
粒子径は実体顕微鏡によって測定することができる。実体顕微鏡により観察された最大粒子径を粒子径とする。
【0032】
本発明の癒着防止材は、生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子全体のうち、それぞれ上で示したような数値範囲内の粒子径を有する生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子を、少なくとも60%以上含んでいれば好ましく、少なくとも70%以上含んでいればより好ましく、少なくとも80%以上含んでいればさらに好ましく、少なくとも90%以上含んでいればさらにより好ましい。
【0033】
本発明の癒着防止材は、必要に応じて、上で説明した生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子に加えてさらに他の成分を含有していてもよい。例えば、本発明の癒着防止材は、空気噴射によって吹き付けることにより使用される場合、密度を増加させることでより円滑に空気噴射が行われるようにすることができる。このように空気噴射を円滑に行わせる目的で他の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子よりも乾燥状態での密度が高い成分が好ましい。例えば糖類(乾燥多孔質粒子の形態ではないもの)等が挙げられる。糖類としては、各種の多糖、オリゴ糖、及び単糖が挙げられる。
【0034】
本発明の癒着防止材は、分子間が架橋されていてもよい。架橋の方法としては特に限定されないが、例えば、生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子を真空乾燥機にて減圧下で高温処理することにより、熱架橋する方法等が挙げられる。
【0035】
本発明の癒着防止材は、癒着を防止しようとする部位に空気噴射によって吹き付けることにより使用される。
【0036】
例えば、患者への侵襲度を低減するために、口腔、大腸、又は尿道等をはじめとする開孔部から導入細管を挿入する内視鏡手術や、生体組織に最小限の孔を開けて導入細管を挿入する鍵穴手術等において、導入細管を通して空気噴射によって体内に導入することにより使用される。このときに使用される導入細管の内径は限定されないが、例えば4mm程度のものを用いることができる。
【0037】
空気噴射の条件としては、本発明の癒着防止材が体内に導入されればよく限定されない。用いる導入細管の内径も適宜設定することができる。例えば、内径が4mmの導入細管を用いることができる。
2.癒着防止材の製造方法
本発明の癒着防止材の製造方法は、生体適合性高分子を含む粒子径50〜3,000μmの乾燥多孔質粒子を含んでなる癒着防止材の製造方法であって、(A)生体適合性高分子含有水溶液を凍結乾燥する工程、及び(B)工程(A)で得られた凍結乾燥物を粉砕する工程を含む方法である。
【0038】
生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子についての説明は、1.癒着防止材について説明した通りであるので省略する。
【0039】
工程(A)は、生体適合性高分子含有水溶液を凍結乾燥する工程である。
【0040】
生体適合性高分子含有水溶液は、生体適合性高分子が水で膨潤させられた状態にあればよい。生体適合性高分子の含有濃度は生体適合性高分子の種類によって異なり、限定されない。生体適合性高分子の含有濃度は、凍結乾燥することによって多孔質化されるように適宜設定することができる。例えばアルギン酸ナトリウムを用いる場合、水中に20 mg/mlとなるように溶解させることができる。
【0041】
生体適合性高分子含有水溶液には、必要に応じて、生体適合性高分子とは別の成分をさらに含有させることもできる。
【0042】
生体適合性高分子含有水溶液を、凍結乾燥を行う前に泡立てておいてもよい。泡立てる方法としては、特に限定されないが、例えば、ホモジナイザーを用いて泡立てる方法等が挙げられる。
【0043】
凍結乾燥の条件は、生体適合性高分子が多孔質化されればよく限定されない。凍結条件としては、例えば、-20〜-80℃で10〜24時間冷凍させる条件が挙げられる。
【0044】
工程(B)は、工程(A)で得られた凍結乾燥物を粉砕する工程である。
【0045】
粉砕手段は、目的の粒子径を有する乾燥多孔質粒子が得られればよく限定されない。例えば、モーターによる刃の回転により対象物を切り刻む機械等を用いることができる。粉砕後に必要に応じてさらに篩(メッシュ)にかける等して粒子径のより大きなものを取り除いてもよい。篩(メッシュ)としては所望の目開き(オープニング)のものを使用することができる。例えば、金属製の篩(メッシュ)、より具体的にはステンレス製の篩(メッシュ)を使用することができる。例えば、目開き(オープニング)が1,500μmの篩(メッシュ)を使用することができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例にのみ限定されるものではない。
【0047】
実施例1.本発明の癒着防止材の製造
本発明の癒着防止材(2%アルギン酸ナトリウム、5%ゼラチン、1%キトサン、及び0.5%ヒアルロン酸をそれぞれ含有する乾燥多孔質粒子)を次の通り製造した。
【0048】
アルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社)、ゼラチン(和光純薬工業株式会社)、キトサン(株式会社キミカ)、及びヒアルロン酸(和光純薬工業株式会社)を蒸留水中にそれぞれ20 mg/ml、5 mg/ml、1 mg/ml、及び0.5 mg/mlとなるよう溶解させた。これらの生体適合性高分子含有水溶液を-80 ℃で24時間冷凍させた後、さらに凍結乾燥機(FDU−810;東京理科株式会社)を用いて外観が多孔質状(スポンジ状)となるまで3日間凍結乾燥した。
【0049】
次に、この乾燥多孔質を図1に示すように粒子径500〜1,500 μmの乾燥多孔質粒子(フレーク状粒子)となるようフードプロセッサー(YAMAZEN ミルミキサー MR-280(W))を用いて「お茶挽き」モードで2分間粉砕した。
【0050】
以上の製法により製造されたアルギン酸ナトリウム含有乾燥多孔質粒子からなる癒着防止材の写真を図1左側(右側は粉末状アルギン酸ナトリウム)及び図2に示す。
【0051】
試験例1.粒子状癒着防止材の粒子径の最適化
本発明の癒着防止材は、癒着を防止しようとする部位に空気噴射によって吹き付けることにより使用される。そこで、あらかじめそのような用途において使用するにあたって適切な粒子径を決定した。適切な粒子径の決定は次の通り行った。
【0052】
実施例1製法により製造されたアルギン酸ナトリウム含有乾燥多孔質粒子を、目開き(オープニング)が1,500μmのステンレス製篩(メッシュ)に通し、篩(メッシュ)を通過しなかったもの(メッシュ不通過群)と、通過したもの(メッシュ通過群)とをそれぞれ得た。さらに、粒子径500μm未満の乾燥多孔質粒子を別に得た。
【0053】
これらの乾燥多孔質粒子をそれぞれ腹腔鏡手術用薬剤導入細管(内径4mm)を用いてビーグル犬の腹腔内の臓器表面腹膜および副壁の壁側腹膜とその損傷部位上に空気噴射によって吹き付けた。その結果、メッシュ通過群は吹き付け後に凝集はみられず、また薬剤導入細管内に詰まりを生じず円滑に吹き付けることができ、さらに吹き付けようとする目的部位に絞って吹き付けることができた。これに対して、メッシュ不通過群は吹き付け後に凝集がみられ、また薬剤導入細管内に詰まりを生じた。また、粒子径500μm未満の乾燥多孔質粒子は吹き付けようとする目的部位に止まらず、他の部位にまで広く拡散してしまう傾向がみられた。
【0054】
これらの検討の結果、最も好ましい粒子径は500〜1,500μmであることが判明した。そこで、以後の試験例及び実施例においてはいずれもメッシュ通過群を使用した。
【0055】
試験例2.本発明の癒着防止材の性能評価(Ex Vivo性能試験)
実施例1で製造した癒着防止材(アルギン酸ナトリウム乾燥多孔質粒子)の性能を、次の通りEx Vivo試験にて評価した。
【0056】
(1)ゲル化速度の評価
実施例1で製造した癒着防止材(2%アルギン酸ナトリウム、5%ゼラチン、1%キトサン、及び0.5%ヒアルロン酸をそれぞれ含有する乾燥多孔質粒子)のそれぞれについてゲル化速度を評価した。なお、同じ組成を有する粉末状組成物を比較例として用いた。
【0057】
トリささみ肉上におけるゲル化速度を次のように評価した。まず、トリささみ肉表面の余分な水分を拭き取りにより除去した。生理食塩水を霧吹きで2回表面に噴霧して、トリささみ肉表面を適度に湿った状態とした。パラフィルムを用いて1cm×1cmのトリささみ肉表面の領域の四方を囲むことによりマーキングした。このマーキングされた1cm×1cmの領域に対してさらに生理食塩水を霧吹きで2回噴霧した。その後、このマーキングされた領域に各種癒防止材を薄く均一に撒いた。その上から生理食塩水を霧吹きで2回噴霧した。パラフィルムを外してマーキングされた領域外の癒着防止材を取り除いた。そして、癒着防止材がゲル化するまでの時間を計測した。各試料につき評価は5回行った(n=5)。
【0058】
結果を表1に示す。全ての生体適合性高分子について、乾燥多孔質粒子状のもののほうが粉末状のものに比べて有意にゲル化速度が速かった。p valueは次の通り。アルギン酸ナトリウム乾燥多孔質粒子:アルギン酸ナトリウム粉末(p=6.71522E-19)。ゼラチン乾燥多孔質粒子:ゼラチン粉末(p=6.1981E-08)。キトサン乾燥多孔質粒子:キトサン粉末(p=2.80275E-10)。ヒアルロン酸乾燥多孔質粒子:ヒアルロン酸粉末(p=1.21124E-08)。
【0059】
【表1】

【0060】
(2)生理食塩水に対する溶解性
比較例として、アルギン酸ナトリウム粉末、及びアルギン酸ナトリウムゲル(2%水溶液)を用意した。
【0061】
内視鏡下で体内に薬剤等を導入するために通常用いられるアルミ製の内径4 mmの細管を通して、各材を湿ったニワトリ肉(white meat)の表面上に対して、空気噴射することにより噴霧した。次に、これらのニワトリ肉を60 ml生理食塩水に浸し、振とう器(Bio-shaker)を用いて振とうサイクル60 r/minにて10分間37 ℃で振とうした。振とう終了後に10%塩化カルシウム水溶液20 mlをこのアルギン酸含有生理食塩水60 mlに添加し、水溶性のアルギン酸を不溶性のアルギン酸カルシウムへと変換させた。このアルギン酸含有生理食塩水を濾紙で濾過し、不溶性アルギン酸カルシウムを分離した。分離されたアルギン酸カルシウムを乾燥し、その乾燥重量を測定した。
【0062】
その結果、表2に示すように、アルギン酸ナトリウムゲルに比べると、アルギン酸ナトリウム乾燥多孔質粒子、及びアルギン酸ナトリウム粉末はいずれも、生理食塩水中へのアルギン酸の流出量が著しく少ないことが分かった。このことは、ゲル状に比べると、乾燥多孔質粒子状、及び粉末状のアルギン酸ナトリウムのほうが、生理食塩水に対する溶解性が著しく抑えられているということを示している。これは、乾燥多孔質粒子状、及び粉末状のアルギン酸ナトリウムのほうが生体組織上における滞留性が遙かに優れていることを示している。
【0063】
【表2】

【0064】
(3)ブタ皮膚に対する付着性
比較例として、アルギン酸ナトリウム粉末0.05g、及びアルギン酸ゲル(アルギン酸2%水溶液)2.5 mlを用意した。
【0065】
内視鏡下で体内に薬剤等を導入するために通常用いられるアルミ製の内径4 mmの細管を通して、各材をブタの湿った皮膚の4×3 cm片の表面上に対して、空気噴射することにより噴霧した。次に、これらのブタ皮膚片を噴霧面が垂直方向を向くようにして20 ml生理食塩水を入れた容器の上に吊した。30 分後にこのブタ皮膚片から生理食塩水中に落下したアルギン酸の量を実施例2.(2)と同様の方法で評価した。
【0066】
その結果、表3に示すように、アルギン酸ナトリウムゲルに比べると、アルギン酸ナトリウム乾燥多孔質粒子、及びアルギン酸ナトリウム粉末はいずれも、噴霧面からのアルギン酸の落下量が著しく少ないことが分かった。このことは、ゲル状に比べると、乾燥多孔質粒子状、及び粉末状のアルギン酸ナトリウムのほうが、生体組織に対する滞留性が著しく優れているということを示している。
【0067】
【表3】

【0068】
実施例2.本発明の癒着防止材の使用(In Vivo性能試験)
実施例1で製造した癒着防止材(アルギン酸ナトリウム乾燥多孔質粒子)の性能を、次の通り実際にIn Vivoで使用することにより評価した。
【0069】
本動物試験は、同志社大学の動物実験委員会の承認を得た上で実施された。外科処置方法及び麻酔は全て同志社大学のガイドラインに沿って実施された。
【0070】
体重200〜220 gの雌ウィスターラット40 匹を使用した。室温(19〜22 ℃)で水及び標準飼料を自由に与えて飼育した。その後試験直前に1週間実験室で飼育した。無作為に5つの群に次の通り分けた:無処置群(n=8);セプラフィルム(登録商標)処置群(n=8);アルギン酸ナトリウム乾燥多孔質粒子処置群(乾燥多孔質粒子処置群)(n=8);アルギン酸ナトリウム粉末処置群(粉末処置群)(n=8);及びアルギン酸ナトリウムゲル処置群(ゲル処置群)(n=8)。
【0071】
なお、セプラフィルム(登録商標)(科研製薬株式会社)は、ヒアルロン酸ナトリウムとカルボキシメチルセルロースを成分とした生体吸収性の物質であるとされ、現在臨床で広く使用されている癒着防止材の代表的なものの一つである。
【0072】
全ての外科的処置は一人の外科医が行った。癒着の程度の評価は、別の二人の外科医が行った。
【0073】
処置群のラットを、0.5 %ペンタバルビトール(30 mg/kg)を腹膜内注射することによる通常の麻酔処置に処した。麻酔状態のマウスの腹部を4 cm切開した。盲腸前部の漿膜側表面をflex-shaft rotary toolを用いて直径15 mmの領域を微細な微慢性出血(small bleed drops)が表面に現れるまで損傷させた。
【0074】
次に、この領域と約2 cmの間隔を置いて向き合っている右側腹壁漿膜側表面の直径15 mmの領域を同様に損傷させた。
【0075】
無処置群においては、開腹傷(laparotomy incisions)を4/0 Prolene(Mono-filament;Ethicon, Inc.)を使って縫合した。癒着を起こさせるため、二つの損傷領域が互いに相対して近接するように縫合した。
【0076】
セプラフィルム(登録商標)処置群においては、2cm四方角のセプラフィルム(登録商標)を二つの損傷領域の間に挟むようにして縫合した。
【0077】
アルギン酸ナトリウム乾燥多孔質粒子処置群及びアルギン酸ナトリウム粉末処置群においては、0.01 gのアルギン酸ナトリウム乾燥多孔質粒子又はアルギン酸ナトリウム粉末を、損傷領域を含む2cm四方角の領域に対して圧縮空気を用いて吹き付けた。
【0078】
アルギン酸ナトリウムゲル処置群においては、0.5 mlの0.2 %アルギン酸ナトリウムゲル(0.01 gのアルギン酸ナトリウムを含有)を、損傷領域を含む2cm四方角の領域に対して塗布した。
【0079】
セプラフィルム(登録商標)処置群、乾燥多孔質粒子処置群、粉末処置群、及びゲル処置群において、次に無処置群におけるのと同様にして二つの損傷領域が互いに相対して近接するように縫合した。
【0080】
切開から縫合までの時間がみな同じになるように全ての処置を行った。
【0081】
癒着防止効果の評価は次のようにして行った。全てのラットを処置後14日目にペンタバルビトールを腹膜内注射することにより犠牲死させた。U字型に開胸して癒着の程度を評価した。盲目試験により二人の外科医がそれぞれ個別に癒着の程度を評価した。評価は次の採点基準に基づいて行った:癒着が観察されない=0点;わずかに薄い癒着が観察され、鈍的切開によって癒着面を剥離することができる=1点;癒着が観察され、癒着面を剥離するためには50 %以下の鋭的切開が必要=2点;癒着が観察され、癒着面を剥離するためには50 %を超える鋭的切開が必要=3点;癒着が観察され、癒着面を剥離すると漿膜が損傷を受ける=4点;癒着が観察され、癒着面を剥離すると腸管の全層性損傷を受ける=5点。
【0082】
さらに顕微鏡を用いた評価も行った。処置後7及び14日目にそれぞれ犠牲死させた後、10 %ホルマリンで固定した組織サンプルを通常の組織学的解析に供した。具体的には、ヘマトキシリン−エオシン染色及びAnti-HBME-1(中皮細胞を認識するモノクローナル抗体;Dako)を利用して組織学的解析を行った。
【0083】
癒着の程度については、マン・ホイットニー検定(two-sided Mann - Whitney's U-test)による検定を行い、P>0.05であれば有意差があると判断した。
【0084】
その結果を表4に示す。無処置群では重篤な癒着がみられ、平均癒着スコアが約4.6であった。これに対して、他の4群(セプラフィルム(登録商標)処置群、ゲル処置群、粉末処置群、及び乾燥多孔質粒子処置群)に関しては、無処置群に比べて有意に癒着が抑制されていることが明らかになった。
【0085】
しかも、乾燥多孔質粒子処置群は平均癒着スコアが約0.5であり、全ての処置群の中で最も抑制されていた。また、乾燥多孔質粒子処置群はゲル処置群に比べて有意に癒着スコアが抑制されていることも明らかになった。セプラフィルム(登録商標)処置群、及びゲル処置群においては1〜2匹のラットが非常に重篤な癒着(癒着スコア=5)を示したのに対して、乾燥多孔質粒子処置群は癒着が全く見られないか(癒着スコア=0)、又はわずかに薄い癒着が観察される程度(癒着スコア=1)であった。
【0086】
さらに顕微鏡観察によると、無処置群においては二つの損傷領域が接する面において重篤な癒着が観察された(図8、13)。処置後7日目と14日目には、重篤な癒着が生じている部位において繊維組織の肥厚化及びリンパ球の侵入が観察された。これに対して、セプラフィルム(登録商標)処置群、及び乾燥多孔質粒子処置群においては処置後7日目と14日目の時点では肥厚化は観察されず、7日目に比べると14日目においてリンパ球の侵入が大きく改善していた(図9、14、12、14)。
【0087】
また、粉末処置群においては、処置後7日目の時点でともにアルギン酸粉末の凝集物が生じてしまい、これを巨細胞の働きで肥厚化した組織が覆う様子が観察され、その後も改善しなかった。またリンパ球の侵入も同じく7日目の時点で観察され、その後も改善しなかった(図11、16)。これに対して、乾燥多孔質粒子処置群は、損傷領域において腹膜上皮が再生しつつある様子が処置後14日において観察された。そして、乾燥多孔質粒子処置群では処置後14日にアルギン酸乾燥多孔質粒子が完全に生分解により消失していた。
【0088】
以上の通り、アルギン酸ナトリウムの乾燥多孔質粒子は、従来品、及びアルギン酸ナトリウムのゲルに比べて癒着抑制効果がより高いという優れた効果を有するものであることが実証された。
【0089】
それに加えて、アルギン酸ナトリウムの乾燥多孔質粒子は、従来品、並びにアルギン酸ナトリウムのゲル及び粉末のいずれに比べても肥厚化をより抑制するという一層優れた効果を有するものであることも実証された。
【0090】
また、アルギン酸ナトリウムの乾燥多孔質粒子は、従来品、並びにアルギン酸ナトリウムのゲル及び粉末のいずれに比べてもより良好な組織再生促進能を示すという一層優れた効果を有するものであることも実証された。
【0091】
さらに、アルギン酸ナトリウムの乾燥多孔質粒子は、従来品、並びにアルギン酸ナトリウムのゲル及び粉末のいずれに比べてもより良好な生分解性を示すという一層優れた効果を有するものであることも実証された。
【0092】
【表4】

【0093】
実施例3.本発明の癒着防止材の製造
次のとおり、生体適合性高分子がゼラチンである本発明の癒着防止材を製造した。
【0094】
ゼラチン(株式会社ニッピ製、「メディゼラチン」(品番:HMG−BP)の4.8%水溶液300mlをホモジナイザー(Nissei社製Excel Auto)を用いて3分間400rpmで十分に泡立てた。泡立てたゼラチン溶液100mlをアルミニウム製トレイ(160mm×120mm)に流し込み、−80℃で1時間保管し、凍結させた。これを真空凍結乾燥器(ヤマト社製DP−41)を用いて凍結乾燥させ、ゼラチンスポンジを得た。得られたスポンジを高速度超微細粉砕機(アドマイザーサンプルミル、不二パウバル株式会社製)を用いて粉砕後、さらに1mm径メッシュを通して、ゼラチンの乾燥多孔質粒子(未架橋ゼラチンフレーク)を得た。得られたゼラチンフレークの電子顕微鏡写真像を図20に示す。さらに、この未架橋ゼラチンフレークを真空乾燥機にて減圧下で140℃14時間処理することにより、熱架橋ゼラチンフレークを得た。
【0095】
実施例4.本発明の癒着防止材の使用(In Vivo性能試験)
実施例2と同様に試験を行った。なお、ゼラチンフレークの吹き付け量は、20mgとした。未架橋ゼラチンフレークと熱架橋ゼラチンフレークでは、熱架橋ゼラチンフレークのほうが臓器表面に均一に塗布することができ、操作性に優れていた。
【0096】
試験の結果、無処置群では縫合固定部を含めて広範囲に渡って強固な癒着が見られた。癒着は腹壁だけでなく臓器間でも観察された。これに対して、ゼラチン処置群では未架橋ゼラチン処置群及び熱架橋ゼラチン処置群のいずれにおいても一部の群に限り縫合部周辺のみの軽度な癒着が観察されるに止まっていた。両群間で癒着強度には有意差はみられなかった。
【0097】
このように、ゼラチンの乾燥多孔質粒子であっても高い癒着防止効果が得られることが確認された。
【0098】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子を含んでなる癒着防止材。
【請求項2】
生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子の粒子径が50〜3,000μmである請求項1記載の癒着防止材。
【請求項3】
粒子径50〜3,000μmの生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子が生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子全体の60%以上を占める請求項1記載の癒着防止材。
【請求項4】
生体適合性高分子含有乾燥多孔質粒子が、生体適合性高分子含有水溶液の凍結乾燥物を粉砕することによって得ることができるものである請求項1〜3のいずれか記載の癒着防止材。
【請求項5】
癒着を防止しようとする部位に空気噴射によって吹き付けることにより使用されるものである請求項1〜4のいずれか記載の癒着防止材。
【請求項6】
生体適合性高分子がアルギン酸塩である請求項1〜5のいずれか記載の癒着防止材。
【請求項7】
生体適合性高分子を含む粒子径50〜3,000μmの乾燥多孔質粒子を含んでなる癒着防止材の製造方法であって:
(A)生体適合性高分子含有水溶液を凍結乾燥する工程;及び
(B)工程(A)で得られた凍結乾燥物を粉砕する工程
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−25013(P2011−25013A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134916(P2010−134916)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】