説明

癲癇発生および癲癇を処置するための2−フェニル−1,2−エタンジオール(DI)カルバメートの使用

本発明は個体の癲癇および癲癇発生を防止し、処置し、逆転させ、抑制し、または停止する方法を対象とし、この方法はそれが必要な個体に治療に有効な量の式(I)および式(II)、またはその製薬学的に許容され得る塩もしくはエステルからなる群から選択される化合物を投与することを含んでなり:式(I)式(II)、式中、フェニルはXで、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される1から5個のハロゲン原子で置換され;そしてR、R、R、R、RおよびRは独立して、水素およびC−Cアルキルからなる群から選択され;ここでC−Cアルキルは場合によりフェニルで置換されてもよい(ここでフェニルは場合によりハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノからなる群から独立して選択される置換基で置換されてもよい)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、2004年9月16日に出願された特許文献1、および2005年6月12日に出願された特許文献2および2005年8月11日に出願された特許文献3の利益を主張する。これら3つの特許文献は引用により本明細書に編入する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に薬理学、神経学および精神医学の分野に関する。特に本発明は発作または発作関連障害の発生、発症および成熟(maturation)を処置し、防止し、逆転させ、停止し、または抑制する方法を提供する。より詳細には、本発明は癲癇発生および癲癇を治療的または予防的に処置し、防止し、逆転させ、停止し、または抑制するためのある種のカルバメート化合物の使用法を提供する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
中枢神経系(CNS)または末梢神経系(PNS)に対する種々の損傷または外傷は、根深く、そして長期の神経学的および精神的症状および障害を生じる恐れがある。これらの効果の生成に共通する1つのメカニズムは、CNSまたはPNSの神経および神経節における発作活動または発作様の現象の誘導である。CNSまたはPNSの電気活性における発作性障害の症状、発作または発作様の神経学的メカニズムが、広い様々な神経学的および精神医学的障害における多くの病理学的現象の下にあると考えられている。
【0004】
発作を特徴とする1つの深刻な神経学的状態は癲癇である。癲癇は一般的であるが、米国単独で250万人以上が罹患している痛烈な障害である。癲癇では、人は慢性的な根源的プロセスにより再発性の発作を有すると説明される。癲癇は、癲癇の多くの形態および原因により、1つの独立した疾患というよりはむしろ臨床的な現象を称する。2以上の誘因のない発作とする癲癇の定義を使用して、癲癇の発生率は世界中の様々な集団で約0.3〜0.5パーセントと予想され、癲癇の罹患率は1000人あたり5〜10人と予想される。
【0005】
臨床的および脳撮影現象に基づき、癲癇では4つの再分が認識されている:大発作(全身、焦点、ジャクソニアンのサブグループ)、小発作、精神運動または側頭葉癲癇(精神運動の正しい(proper)、または反対運動もしくは捻転運動もしくは咀嚼現象を有する強直性の、健忘を伴う自発的な、あるいは幻覚もしくは夢状態を伴う感覚のサブグループ)、ならびに自律神経性または間脳性癲癇(潮紅、蒼白、頻拍、高血圧、発汗または他の内蔵症状を伴う)。
【0006】
癲癇は発作関連障害の主要な例の1つであるが、それらの病因、発作または関連する発作様の神経学的現象から広い種々の神経学的および精神医学的症状および障害を有し得る。単純な意味で、発作または関連する発作様の神経学的現象は、「癲癇原性(ictogenesis)」と呼ばれるプロセスを介してニューロンの集合または発作を起こし易いニューロン群からの過剰な放電により引き起こされる1つの明確な臨床的出来事である。癲癇原性発作はそれ自体は単なる疾患の症状であるかもしれない。しかし癲癇および他の類似する発作関連障害は動的であり、そしてしばしば進行性の疾患であり、複雑かつよく理解されていない病理学的変換の連続を特徴とする成熟プロセスを有する。
【0007】
そのような変化の発生および成熟が「癲癇発生(epileptogenesis)」のプロセスであり、これにより正常な脳のニュローンの大きな集まりが改変され、そして続いて異常な、自発的な、急な、再発性の、過剰放電、すなわち発作を受け易くなる。癲癇発生プロセスの成熟は、「癲癇発生点(focus)」の発生をもたらし、これにより異常に放電するニューロンまたは発作を受け易いニューロンの集合が、局所化された群または皮質組織全体に散在する「癲癇発生帯」を形成する。癲癇発生帯は生化学的に相互に連結しているので、異常な癲癇原性放電は帯から帯へと縦続接続することができる。
【0008】
癲癇発生が進行すると、関与する神経系の領域は発作をさらに受け易くなり、そして発作が誘発され易くなり、進行的に弱体化する(debilitating)発作または発作関連障害の症状を生じる。
【0009】
癲癇原性および癲癇発生は特定の生化学的現象において共通する起源、および種々の疾患と共通の神経経路を有するが、2つのプロセスは同一ではない。癲癇原性は別個の時期および空間における発作の始まりおよび伝達であり、数秒から数分の範囲の一定期間にわたって起こる急速かつ明確な電気的/化学的出来事である。
【0010】
これと比較して癲癇発生は、漸次的な生化学的または神経的再構成プロセスであり、これにより正常な脳は癲癇原性の出来事により、癲癇原性の出来事に対して感受性で、かつ応答性となる神経回路を有する癲癇を発生する焦点化した脳に転換され、個体を自発的な、エピソード性の時間が限定された発作の再発に対して益々罹り易くし、発作または発作関連障害の症状の進行的な弱体化をもたらし、そして処置に対して進行的な非応答性を生じる。「癲癇発生点」の成熟は、一般に数カ月から数年にわたって起こるゆっくりとした生化学的および/または構造的プロセスである。
【0011】
癲癇発生は2フェイズプロセスである:
「フェイズ1の癲癇発生」は、最初の癲癇性発作または類似の発作関連障害の症状以前の癲癇発生プロセスの始まりであり、そしてしばしば脳に対するある種の損傷または外傷、すなわち脳卒中、疾患(例えば髄膜炎のような感染)、または頭部に対する偶発的な打撃(blow)、または脳に関して行われる外科的処置のような外傷の結果である。
【0012】
「フェイズ2の癲癇発生」は、癲癇性発作または類似の発作関連害の発作関連現象を受け易い脳組織が、さらに頻度が増し、かつ/または重篤な発作に一層罹り易くなり、かつ/または処置に対して応答性が低くなるプロセスを指す。
【0013】
癲癇発生に関与するプロセスは明確には同定されていないが、研究者の中にはN−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体により媒介されるニューロン間の励起的共役のアップレギュレーションが関与すると考える者もある。他の研究者はガンマ−アミノ−酪酸(GABA)受容体により媒介されるニューロン間の阻害的共役のダウンレギュレーションを含意する。多くの他の因子が、NO(一酸化窒素)または鉄、カルシウムまたは亜鉛イオンの存在、濃度または活性に関するこのプロセスに関与し得る。
【0014】
癲癇性発作は致死的となることは稀であるが、多数の患者が破壊的で、しかも潜在的に危険な発作の連続を回避するために投薬療法を必要とする。多くの場合で、癲癇性発作または類似の発作関連障害の症状を管理するために使用される投薬療法には長期を要し、そして場合によっては患者はそのような処方投薬を生涯、摂取し続けなければならない。さらにそのような薬剤は症状の管理に効果的なだけで、慢性の長期使用に伴う副作用がある。
【0015】
癲癇性発作の管理に利用可能な広い種々の薬剤には、フェニトイン、バルプロエートお
よびカルバマゼピン(イオンチャンネル遮断薬)のような古い薬剤、ならびにフェルバメート、ガバペンチン、トピラメートおよびチアガビン(tiagabine)のような、より新しい薬剤がある。さらに例えばβ−アラニンは抗発作活性、NMDA阻害活性およびGABA作用性刺激活性を有すると報告されたが、癲癇を処置するために臨床的に使用されてこなかった。
【0016】
癲癇の処置に認可された薬剤は鎮痙薬(anticonvulsant)、すなわちより正確に言うと抗癲癇薬(AED)であり、ここで「抗癲癇薬(anti−epileptic)」は「抗発作(anti−seizure)」または「抗癲癇原性」と同義である。これらの薬剤は1つの癲癇原性の出来事の開始を遮断することにより発作を治療的に抑制する。現在、これらのAEDは臨床的に利用可能であるが、癲癇発生のプロセスを防止しない。
【0017】
発作または類似の発作関連障害の関連する症状、すなわち双極性障害における気分の循環、衝動調節障害の患者における衝動的行動のような発作障害に明らかに関連し得る発作様の神経学的現象がある疾患および障害に、あるいは脳損傷から生じる発作の処置において、幾つかのAEDは治療的にも有用となり得る。しかし現在認可されているそれらのAEDは、初期の発症を、あるいは類似の発作関連障害の特徴でもある癲癇発生点に対する癲癇発生の進行的成熟を予防的または治療的に防止することができない。
【0018】
癲癇発生の下にある十分に解明されていない病理学的メカニズムは、自発的な発症を含む様々な臨床的状況下で、あるいは中枢または末梢神経系に対する多くの種類の損傷または外傷の結果として、癲癇および類似の癲癇関連障害の発症に確かに役割を果たしている。
【0019】
現在の癲癇の処置は、明白な臨床的癲癇が発症した後にAEDを投与することにより発作活性を抑えることに集中している。AEDは発作の抑制に正の効果を有するが、これらの現在利用可能なAEDが癲癇発生の防止、すなわち癲癇および他の関連する発作様疾患の最初の発症または進行および悪化の防止には例外なく成功しなかった。たとえAEDで前処置しても、神経系に対する損傷または外傷後に癲癇の発症を防止しない。さらにAEDでの治療を中断すれば発作が多くは再発し、そして不幸な場合には時間が経つにつれ悪化する。現在、臨床的に利用可能な癲癇または他の発作障害または多くの類似の発作関連障害の発症および/または進行を処置し、防止し、逆転させ、停止し、または抑制するために臨床的に利用できる方法は無い。
【0020】
加えて、癲癇発生に相当する類似の神経学的メカニズムには、双極性障害、衝動調節障害、強迫性障害、分裂感情障害、物質濫用または依存性障害および多くの他の精神医学的および神経学的障害の成熟疾患状態で観察される初期の発症および進行的悪化のような、明白に「癲癇性」になるとは思われない、癲癇に臨床的に類似する多くの発作関連障害の進展および発展が関与し得るとも考えられる。
【0021】
このように癲癇(すなわち、癲癇発作、すなわち癲癇性発作に伴う痙攣の抑制を介して)および他の類似の発作関連障害の処置に利用できる多数の薬剤にもかかわらず、癲癇および双極性障害を含む類似の発作関連障害のような多くの痛烈な神経学的および精神医学的障害において病因となり得る下にある癲癇発生のプロセスを処置し、防止し、逆転させ、停止または抑制するために一般に受け入れられている薬剤は無い。
【0022】
現在、癲癇または他の類似する発作関連障害の症状を未だに示していないが、その疾患を有することに気づいていないか、または疾患を発症する危険性がある患者において、それらの発症を防止するために、癲癇発生プロセスを抑制する既知の方法はない。さらに癲
癇発生のプロセスを防止するか、そのプロセスを逆転させるために知られている方法は無く、すなわち発作活動の源であったか、活動の影響を受け易いか、あるいはそれに参加することができる癲癇発生帯中のニューロンの集合を、異常な、自発的な、急な、再発性の、または過剰な放電を表さないか、そのような発作活動の影響を受け易くないか、または発作活動をすることができない神経組織に変換させる方法は知られていない。さらにそのような抗癲癇発生特性を有すると認識されている認可されたまたは非認可の薬剤、すなわち真の抗癲癇発生剤(AEGD)は無い(非特許文献1を参照にされたい)。
【0023】
このように安全かつ効果的な薬剤またはAED、および発作または痙攣または発作関連症状をすでに現している患者におけるそれらの症状を抑制することに加えて、発作に関連する神経学的および/または精神医学的障害における癲癇発生を効果的に処置し、防止し、停止し、抑制し、そして逆転させる処置法を開発する大きな必要性が存在する。
【参考文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/610,276号明細書
【特許文献2】米国特許仮出願第60/698,625号明細書
【特許文献3】米国特許仮出願第60/707,242号明細書
【非特許文献1】Schmidt,D.and Rogawski,M.A.,Epilepsy Research,2002,50:71−78
【発明の開示】
【0025】
発明の要約
本発明の一部は、癲癇および類似の発作関連障害の処置および/または防止に有用な方法および組成物に関する。具体的に本発明の一部は、限定するわけではないが、癲癇および/または双極性障害における気分の循環、疼痛症候群、衝動調節障害における衝動的行動および強迫性障害、偏頭痛症候群および依存的行動および物質濫用における症状を含む類似の発作関連症状の疾患プロセスの現れである痙攣または発作の発症を防ぐ方法に関する。 加えて本発明は、一部は発作障害または類似の発作関連障害を発症する危険性がある患者において、癲癇発生を処置し、かつ/または防止し、停止し、抑制し、そして逆転させるために有用な方法および組成物に関する。
【0026】
本発明は一部は本発明のカルバメート化合物のこれまでに知られていない特性に基づく。これらの化合物は効果的なAEDであり、そして癲癇性発作を抑制することができ、そしてさらに有力な抗癲癇発生剤であり、そして発作および関連する症状を起こし、かつ/または広げる神経系の病理学的変化の初期の発生および成熟を防止することができ、そしてそのような変化を逆転させることができる。このように本発明のカルバメート化合物は、本発明の方法で使用する場合、真の抗癲癇発生剤(AEGD)であり、そして現在認可されているAED剤とは明らかに異なり、そしてそれらが持たない特性を有する。
【0027】
したがって1つの観点では、本発明は処置および防止が必要な個体における発作および発作関連障害を処置し、そして防止するための改善された方法を提供する。この方法にはそれらが必要な個体に、個体における発作、痙攣または発作関連障害の発症を処置し、そして防止すると同時に、癲癇発生を抑制する治療に有効な量の本発明のカルバメート化合物を予防的または治療的に投与する工程を含む。
【0028】
別の観点では、本発明は個体における癲癇発生を任意の段階で停止し、抑制し、そして逆転させる方法を提供する。この方法にはそれらが必要な個体に、個体における癲癇発生を処置し、防止し、停止し、抑制し、そして逆転させる有効量の本発明のカルバメート化合物を予防的または治療的に投与する工程を含む。
【0029】
様々な態様において、本発明は癲癇発生を処置し、防止し、逆転させ、停止し、または抑制する方法を提供する。特定の態様では、これらの方法は予防に、または治療に有効な量のカルバメート化合物を個体に投与することを含んでなる。
【0030】
したがって本発明は、処置、防止、停止、抑制および逆転が必要な個体の癲癇発生を処置し、防止し、停止し、抑制し、そして逆転する方法を提供し、この方法は個体に、式1または式2:
【0031】
【化1】

【0032】
[式中:
、R、RおよびRは独立して、水素またはC−Cアルキルであり、ここでC−Cアルキルはフェニルで置換されているか、または非置換であり、そしてここでフェニルは独立してハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノから選択される1から5個の置換基で置換されているか、または非置換であり、ここでアミノ場合によりC−Cアルキル、ニトロまたはシアノでモノもしくはジ置換され;そしてX、X、X、XおよびXは独立して水素、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である]
の少なくとも1つの化合物、またはその製薬学的に許容され得る塩またはエステル形を含んでなる組成物の予防に、または治療に有効な量を投与することを含んでなる。本発明の態様には、X、X、X、XおよびXが独立して水素、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択される式1または式2の化合物を含む。
【0033】
特定の態様では、X、X、X、XおよびXが独立して水素または塩素から選択される。別の態様では、Xはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択される。別の態様では、Xは塩素であり、そしてX、X、XおよびXは水素である。別の態様では、R、R、RおよびRが水素である。
【0034】
本発明は、処置が必要な個体の癲癇発生を処置するために式1または式2のエナンチオマーを提供する。特定の態様では、式1または式2の化合物は、それらの1つのエナンチオマーの状態である。別の態様では、式1または式2の化合物は1つのエナンチオマーがもう1つのエナンチオマーに対して優勢であるエナンチオマー混合物の状態である。
【0035】
別の観点では、1つのエナンチオマーが約90%以上の範囲で優勢である。さらなる観点では、1つのエナンチオマーが約98%以上の範囲で優勢である。
【0036】
また本発明は、式1または式2の化合物の少なくとも1つを含んでなる組成物の予防に、または治療に有効な量を個体に投与することを含んでなる方法を提供し、ここでR、R、RおよびRが独立して水素またはC−Cアルキルから選択され;そしてX、X、X、XおよびXが独立して水素、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択される。
【0037】
本発明の態様では、個体への組成物の予防的または治療的投与の前に、個体が癲癇または類似の発作関連障害に罹患しているかどうか、あるいはそのような発作または発作関連障害を発症する高い危険性にあると考えられるかどうかが決定される。
【0038】
また本発明は抗癲癇発生組成物の予防的または治療的投与の必要性がある個体を同定する方法を提供し、ここで個体は癲癇または類似の発作関連障害に罹患しているか、あるいは癲癇を発症する高い危険性があると考えられ、すなわち個体はAEGDで処置する必要がある。本発明は式1または式2を有する少なくとも1つの化合物を含んでなる組成物を個体に予防的または治療的に投与することを含んでなる方法を提供する。
【0039】
本発明の特定の態様では、癲癇を処置するために予防に、または治療に有効な量の式1または式2の化合物は、約400mg/日〜約3000mg/日(体重70kgのヒトで約5.7mg/kg/日〜約43.0mg/kg/日である)の範囲である。すなわち本発明の製薬学的化合物および組成物は、約5.7〜約43.0mg/kg/日(体重70kgのヒトで400〜3000mg/日)、好ましくは約6.4〜約35.7mg/kg/日(体重70kgのヒトで450〜2500mg/日)、より好ましくは約7.1〜約28.6mg/kg/日(体重70kgのヒトで500〜2000mg/日)、さらにより好ましくは約7.9〜約21.4mg/kg/日(体重70kgのヒトで550〜1500mg/日)、あるいは最も好ましくは約8.6〜約17.1mg/kg/日(体重70kgのヒトで600〜1200mg/日)の投薬用量で投与することができる。しかし投薬用量は、個々の特性および個体の耐容、および処置する状態の正確な性質に依存して変動してよい。
【0040】
特定の態様では、発作または痙攣または発作関連障害のような症状をすでに示した患者におけるそのような障害を防止または処置するために、その製薬学的に許容され得る塩またはそのエステルを含む式1または式2の化合物の1もしくは複数のエナンチオマーを、製薬学的に許容され得る担体または賦形剤との混合物で含んでなる予防的または治療に有効な量の製薬学的組成物が、そのような処置が必要な個体に投与される。
【0041】
特定の態様では、式1または式2の化合物の1もしく複数のエナンチオマーを含んでなる、癲癇発生を防止し、処置し、逆転させ、停止し、または抑制するための製薬学的組成物の予防に、または治療に有効な量には、その製薬学的に許容され得る塩またはエステルを製薬学的に許容され得る担体または賦形剤との混合物で含み、これによりそのような組成物がAEGDでの処置が必要な個体に投与される。式1または式2を有する少なくとも1つの化合物、および1もしくは複数の製薬学的に許容され得る賦形剤を含んでなる製薬学的組成物は、それが必要な個体に投与される。
【0042】
特定の態様では、処置が必要な個体または患者は、癲癇の症状、すなわち発作または痙攣をすでに示した個体であることができ、あるいは投与時の前に類似の発作関連障害の症状を示したかもしれない個体であることができる。
【0043】
特定の態様では、AEGDでの処置が必要な個体または患者は、癲癇の症状、すなわち発作または痙攣を示したことがないが、投与時の前に類似の発作関連障害の症状を示した
かもしれない個体であることができる。
【0044】
別の観点では、個体または患者は投与時に癲癇または類似の発作関連障害を発症する危険性があると決定され、そしてこれに基づき患者はAEGDでの処置が必要であると考えられるだろう。別の態様では、それが必要な個体は投与前または投与時に癲癇(例えば明白な発作)または類似の発作関連障害(例えば気分の循環、衝動的行動、依存的行動等)の症状を示した個体である。
【0045】
発明の詳細な説明
本発明は、2−フェニル−1,2−エタンジオールモノカルボメートおよびジカルバメートの癲癇発生、癲癇および関連する障害の処置および/または防止における使用法を提供する。
【0046】
本発明のカルバメート化合物
本発明による代表的なカルバメート化合物は、式1または式2:
【0047】
【化2】

【0048】
[式中、
、R、RおよびRは独立して、水素またはC−Cアルキルであり、そして、X、X、X、XおよびXは独立して水素、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である]
を有するものを含む。
【0049】
本明細書で使用する「C−Cアルキル」は、1〜4個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の脂肪族炭化水素を指す。「アルキル」の定義に具体的に含まれるのは、場合により置換されてもよい脂肪族炭素水素であるものである。本発明の好適な態様では、C−Cアルキルは非置換であるか、またはフェニルで置換されている。
【0050】
本明細書で使用する「フェニル」は、単独または別の基の一部として使用する場合でも、6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の芳香族炭化水素環基と定義する。「フェニル」の定義に具体的に含まれるのは、場合により置換されてもよいそれらフェニル基で
ある。例えば本発明の好適な態様では、「フェニル」基は非置換であるか、またはハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロまたはシアノで置換されている。
【0051】
本発明の好適な態様では、Xがフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、そしてX、X、XおよびXが水素である。
【0052】
本発明の別の好適な態様では、X、X、X、XおよびXが独立して塩素または水素である。
【0053】
本発明の別の好適な態様では、R、R、RおよびRはすべて水素である。
【0054】
本発明の化合物上の置換基および置換パターンは、当業者により選択されて、化学的に安定であり、そして当該技術分野で知られている技術ならびに本明細書に提供する方法により容易に合成することができる化合物を提供することができると理解される。
【0055】
代表的な2−フェニル−1,2−エタンジオールモノカルボメートおよびジカルバメートには、例えば以下の化合物を含む:
【0056】
【化3】

【0057】
【化4】

【0058】
【化5】

【0059】
本発明の方法で使用するカルバメートエナンチオマーを含め、カルバメート化合物の合成および精製に関する適切な方法は、当業者には周知である。例えば2−フェニル−1,2−エタンジオールモノカルボメートおよびジカルバメートの純粋なエナンチオマー形およびエナンチオマー混合物は、米国特許第5,854,283号、同第5,698,588号および同第6,103,759号明細書に記載され、その開示は全部、引用により本明細書に編入する。
【0060】
本発明は式1または式2の単離されたエナンチオマーの使用を含む。
【0061】
1つの好適な態様では、式1の単離されたS−エナンチオマーを含んでなる製薬学的組成物を使用して個体の癲癇発生または癲癇を処置する。
【0062】
別の好適な態様では、式2の単離されたR−エナンチオマーを含んでなる製薬学的組成物を使用して個体の癲癇発生または癲癇を処置する。
【0063】
別の態様では、式1の単離されたS−エナンチオマーおよび式2の単離されたR−エナンチオマーを含んでなる製薬学的組成物を使用して個体の癲癇発生または癲癇を処置することができる。
【0064】
また本発明は式1または式2のエナンチオマーの混合物の使用も含む。本発明の1つの観点では、1つのエナンチオマーが優勢である。混合物中で優勢なエナンチオマーは、混合物中に存在する他の任意のエナンチオマーの量よりも多い量、例えば50%よりも多い量で混合物中に存在するものである。1つの観点では、1つのエナンチオマーが90%の程度で、あるいは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%以上の程度で優勢である。1つの好適な態様では、式1の化合物を含んでなる組成物中で優勢なエナンチオマーは、式1のS−エナンチオマーである。別の好適な態様では、式2の化合物を含んでなる組成物中で優勢なエナンチオマーは、式2のR−エナンチオマーである。
【0065】
本発明の好適な態様では、本発明の組成物中で単独のエナンチオマーとして、または優勢なエナンチオマーとして存在するエナンチオマーは、式3または式5により表されるか
(式中、X、X、X、X、X、R、R、RおよびRは上記定義の通りである)、あるいは式7または式8により表される。
【0066】
【化6】

【0067】
【化7】

【0068】
本発明は式1または式2により表される化合物のエナンチオマーおよびエナンチオマー混合物、またはその製薬学的に許容され得る塩もしくはエステルの使用法を提供する。
【0069】
式1または式2のカルバメートエナンチオマーは、不斉キラル炭素をベンジル位に含み、これはフェニル環に隣接する脂肪族炭素である。
【0070】
単離されたエナンチオマーは、対応するエナンチオマーを実質的に含まないものである。すなわち単離されたエナンチオマーとは対応するエナンチオマーの分離技術を介して分離されるか、またはそれを含まずに調製された化合物を指す。本明細書で使用する「実質的に含まない」とは、1つのエナンチオマーが有意に高い比率で作成されている化合物を意味する。好適な態様では、化合物は少なくとも約90重量%の好適なエナンチオマーを含む。
【0071】
本発明の別の態様では、化合物は少なくとも約99重量%の好適なエナンチオマーを含む。好適なエナンチオマーは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)およびキラル塩の形成および結晶化を含め、当業者に知られている方法によりラセミ混合物から単離することができ、あるいは好適なエナンチオマーは本明細書に記載する方法により調製するこことができる。
【0072】
好適なエナンチオマーの調製法は当業者に知られており、そして例えばJacques,et al.,エナンチオマー、ラセミ体および分割(Enantiomers,Racemates and Resolution)(ウィリ−インターサンエンス(Wiley Interscience)、ニューヨーク、1981);Wilen,S.H.,et al.,Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,E.L.炭素化合物の立体化学(Stereochemistry of Carbon Compounds)(マグロウヒル(McGraw−Hill)、ニューヨーク、1962);およびWilen,S.H.,分割剤および光学分割の表(Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions) p.268(E.L.Eliel編集、ノートルダム大学出版、ノートルダム、インディアナ州、1972)に記載されている。
【0073】
さらに本発明の化合物は米国特許第3,265,728号明細書(この開示は全部、そしてすべての目的に関して引用により本明細書に編入する)、同第3,313,692号明細書(この開示は全部、そしてすべての目的に関して引用により本明細書に編入する)および以前に参照した米国特許第5,854,283号、同第5,698,588号および同第6,103,759号明細書(この開示は全部、そしてすべての目的に関して引用により本明細書に編入する)に記載されているように調製することができる。
【0074】
癲癇および癲癇発生の処置
本発明の方法、化合物および組成物は、癲癇および他の発作障害のための効果的な従来の処置を提供する。本発明のカルバメート化合物は抗癲癇薬(AED)であり、すなわち疾患である癲癇および他の発作障害の症状である発作、および類似の発作関連障害の症状を抑え、そして防止することができる。加えてこの方法を使用することにより、本発明の化合物および組成物は、癲癇および関連発作障害を悪化し、臨床的に進行させ、あるいはその処置に対する耐性、または神経系に対するある形態の損傷または外傷の結果として、これらの障害およびその症状の新たな始まりに対する耐性を増す、癲癇発生のプロセスを抑え、制御し、そして防止することが可能である。
【0075】
このように本発明の一部は、癲癇および/または類似の発作関連障害の処置および/または防止に有用な方法および組成物に関する。具体的には本発明の一部は、癲癇および/または限定するわけではないが双極性障害における気分の循環、疼痛症候群、衝動調節障害(ICD)における衝動的行動および強迫性障害(OCD)、偏頭痛症候群および依存的行動および物質濫用障害における症状を含む類似の発作関連症状の疾患プロセスの現れである痙攣または発作の発症を防ぐ方法に関する。
【0076】
具体的には、本発明の方法は臨床家が癲癇、他の発作障害の症状および/または類似の発作関連障害の症状を処置できるようにすると同時に、下にある疾患プロセスを悪化させ、進行させ、延ばし、または処置耐性を上げる原因である癲癇発生プロセスを抑制する。この方法は予防または処置が必要な個体に本発明のカルバメート化合物の抗癲癇発生に有効な量または用量を予防的または治療的に投与することを含んでなり、同時にその個体に対して発作または障害の他の症状を処置し、そして防止し、さらにその個体における癲癇発生のプロセスを停止し、抑制し、そして逆転させることができる。
【0077】
特定の態様では、処置が必要な個体または患者は、癲癇の症状、すなわち発作または痙攣をすでに示した個体でよく、あるいは投与の前、または投与時に類似の発作関連障害の症状(例えば気分の循環、衝動的行動、依存的行動等)を示したかもしれない個体でよい。
【0078】
したがって1つの観点では、本発明は処置または防止が必要な個体における発作および
発作関連障害の症状の処置および防止のための改善された方法を提供する。この方法には処置または防止が必要な患者に、個体の発作、痙攣または発作関連障害の発生を処置し、そして防止する本発明の治療に有効な量のカルバメート化合物を予防的または治療的に投与する工程を含む。
【0079】
別の態様では、処置が必要な個体または患者は投与時の前に癲癇の症状、すなわち発作または痙攣または類似の発作関連障害の症状を示したことがない個体でよい。この態様では、個体または患者は、投与時に癲癇または類似の発作関連障害を発症する危険性があることを測定され、そしてこれに基づき患者はAEGDでの処置が必要であると考えられる。この観点では、本発明は個体における癲癇発生を停止し、抑制し、そして逆転させるための方法を提供する。この方法には予防または防止が必要な個体に、個体の癲癇発生を処置し、防止し、停止し、抑制し、そして逆転させる本発明の予防にまたは治療に有効な量のカルバメート化合物を予防的または治療的に個体に投与する工程を含む。
【0080】
癲癇発生のプロセスを抑制することにより、発作障害または関連障害の発症は、神経系に対して持続的なある状態の損傷または傷害を有するか、またはそうではない危険性を有する個体において防止することができる。
【0081】
したがって本発明は必要な患者における癲癇発生を処置し、防止し、停止し、抑制し、そして逆転させる方法を提供し、この方法は個体に式1または式2の少なくとも1つの化合物を含んでなる予防にまたは治療に有効な量の組成物を投与することを含んでなる。
【0082】
したがって幾つかの態様では、AEGDでの処置が必要な個体は投与前または投与時に癲癇の症状(例えば発作)または類似の発作関連障害(例えば気分の循環、衝動的行動、依存的行動等)を示したことがない個体であるが、それでも以下に検討する理由からAEGDでの処置が必要な個体となり得る。
【0083】
特定の態様では、AEGDでの処置が必要な個体または患者は、癲癇の症状、すなわち発作または痙攣を示したことがないが、投与前または投与時に類似の発作関連障害の症状を示したことがある個体でよい。
【0084】
癲癇
癲癇という用語は、周期的で予想できない発作の発生を特徴とする脳機能の障害を指す(癲癇の処置、原理および実際(The Treatment of Epilepsy,Principles & Practice)、第3版、Elaine Wyllie,M.D.編集、リッペンコット ウィリアムス & ウィルキンス,2001;グッドマン&ギルマンの治療薬の薬理学的基礎(Goodman & Gliman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics)、第9版、1996を参照にされたい)(両方とも引用により本明細書に編入する)。明確な誘発なしに起こる発作は癲癇性と分類される。癲癇は特発性であるか、または生命の任意の段階で中枢神経に対するある種の損傷、奇形または傷害に関連するものであることができる。個体は典型的には24時間以上空けて起こる2以上の発作を経験する癲癇に罹患していると考えられる。
【0085】
臨床的には癲癇性発作は、脳または神経系のいたるところで相互に連結しているニューロンの集合から起こる急激な、しかも異常な放電から生じる。関与する癲癇の種類に依存して、生じる神経細胞活性は制御不能な運動性移動(motor movement)、患者の意識レベルの変化等のような広い様々な臨床的症状により現れる得る。癲癇および癲癇性発作および症候群は、様々な方法で分類することができる(癲癇の処置、原理および実際、第3版、Elaine Wyllie,M.D.編集、リッペンコット ウィリ
アムス & ウィルキンス,2001を参照にされたい)。しかし本明細書で使用するように用語「癲癇」、「癲癇性発作」および「癲癇症候群」はすべての知られている種類の癲癇性発作および症候群を含み、それらには:単純発作(simple seizure)を含む部分発作、全身性の強直・間代痙攣および全身発作に進展する複合(complex)および部分発作、痙攣性および非痙攣性の両方および分類できない癲癇性発作がある。
【0086】
癲癇発生プロセス
癲癇発生プロセスは一般に2つのフェイズからなる。第1の癲癇発生段階は、初期の傷害または損傷段階として知られている。初期の傷害または損傷は一般に、例えば閉塞もしくは貫通頭部または神経外科的処置を含む外傷性脳損傷;例えば細菌性髄膜炎、ウイルス性脳炎、細菌性の脳膿瘍または神経嚢虫症のようなCNS感染);脳血管疾患(脳卒中または例えば悪性神経膠腫を含む脳腫瘍のような:神経外科術(例えば開頭術のような)および癲癇重積持続状態を含む1もくしは多数の可能な因子により引き起こされる脳を傷害する損傷である。
【0087】
場合により、初期の傷害は出生前の発生の問題の結果(限定するわけではないが、仮死出産、出産時の頭蓋内外傷、代謝障害または脳の先天性奇形)であるか、または遺伝的決定基の結果である。
【0088】
第2の癲癇発生段階は潜伏段階として知られている。本発明の方法は、必要な個体において引き続いて癲癇または他の類似の発作関連傷害の発生を処置し、抑制し、防止し、停止、または逆転させるために、第1または第2の癲癇発生段階のいずれかに、あるいはこれらの段階に先行して、本発明のカルバメート化合物の予防的または治療的投与を含む。
【0089】
第2の癲癇発生段階はさらに神経再構成のプロセスを含み、これは再発性発作(例えば症状のある癲癇)、または類似の発作関連障害に示される症状を特徴とする。また癲癇発生プロセスは、癲癇または類似の発作関連障害に実際に罹患している人の間でも観察され得る。癲癇に罹患している人が経験する発作は、引き続いて発作をより起こり易く、または発作活動にかかわる神経組織の領域の範囲を広げ、あるいは発作障害を処置に対してさらに耐性にする点でそれ自体が癲癇発生性である。発作障害を有する患者はこのプロセスの結果、発作が頻発する傾向となり、そしてさらに重篤となり、しかもしばしば通常のAEDでの処置に対してさらに耐性となる。
【0090】
類似の様式で、癲癇に類似する神経学的または精神医学的障害における関連する発作様応答は、時間が経つにつれ益々重症となるか、または障害が成熟すると処置に耐性となるおそれがある。本発明の方法および化合物は、そのような類似の発作が関連する神経学的もしくは精神医学的障害ならびに癲癇および他の発作障害における癲癇発生のプロセスを処置し、防止し、停止し、抑制し、または逆転させるために使用することを意図している。
【0091】
特定の態様では、フェイズ1の癲癇発生は癲癇発生性の化合物、例えば三環式抗鬱剤、クロザピンおよびリチウム等のような向精神薬の摂取によるような上記に列挙したもの以外の因子により開始され得る。本発明の方法および化合物は、個体が癲癇発生となる可能性を上げる傾向がある因子により開始された癲癇発生の発症を処置し、防止し、停止し、抑制し、または逆転させることも意図している。
【0092】
したがって癲癇発生の処置では、本発明の方法は発作、特に癲癇性発作の発症に先んずることができる。したがってそのような方法は癲癇および癲癇性発作を処置および防止し、癲癇の発症の危険性を下げ、癲癇の発症を停止し(特に癲癇原性発作の源またはそれにかかり易いニューロンの集合の発生)、癲癇の発症および成熟化を抑制し(特に癲癇発生帯および癲癇発生点)、個体の癲癇の重篤度を下げ、そして癲癇における癲癇発生プロセスを逆転させるために使用することができる。
【0093】
加えて、本発明の方法に従い癲癇発生を処置し、防止し、抑制し、停止し、または逆転させることにより、病因の一部または全部が発作様の作用機作に基づく類似の神経学的および/または精神医学的障害の発症または進行を処置し、防止し、抑制し、停止し、または逆転させる。
【0094】
幾つかの態様では、本発明の方法は現在知られている抗痙剤または抗癲癇(AED)剤で効果的に処置されることが分かっている状態に罹患していないか、または罹患していることが知られている患者を処置するために有利に使用される。これらの状態には限定するわけではないが、類似の発作関連障害(1つもしくは複数)がある。これらの場合、本発明の方法および化合物を使用する決定は、患者が上記に定義する用語「抗癲癇発生剤(AEGD)で処置する必要がある患者」であるかどうかの決定に基づきなされる。
【0095】
幾つかの態様では、本発明は癲癇または他の発作障害および/または発作関連障害における類似の症状がある患者における発作を処置および/または防止すると同時に、癲癇発生のプロセスを抑制し、これにより下にある疾患プロセスの広がりまたは悪化を防止し、あるいは非発作傾向神経組織の癲癇発生のプロセスによる再発を防止するために有用な方法および化合物を提供する。
【0096】
このように幾つかの態様では本発明は、癲癇または他の発作障害および/または類似の発作関連症状(限定するわけではないが双極性障害における気分の循環、疼痛症候群、衝動調節障害(ICD)における衝動的行動または強迫性障害(OCD)、偏頭痛および物質濫用障害における依存的行動を含む)の疾患プロセスの現れである痙攣または発作の発生を防止する方法を提供する。この方法は処置が必要な患者に、式1または式2の化合物の治療に有効な量の1もしくは複数のエナンチオマー、または2つのエナンチオマー混合物、またはその製薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを、製薬学的に許容され得る担体または賦形剤との混合物で投与することを含んでなる。このように式1または式2を有する少なくとも1つの化合物、および1もしくは複数の製薬学的に許容され得る賦形剤を含んでなる製薬学的組成物は、それが必要な個体に投与され得る。
【0097】
幾つかの態様では、本発明の方法は癲癇発生を処置し、防止し、逆転させ、停止し、または抑制する方法を提供する。特定の態様ではこれらの方法は、癲癇または任意の種類の発作障害または類似の発作関連障害を発症していないが、すでに起こった(限定するわけではないが、頭部損傷または脳卒中)、あるいは将来起こり得る(限定するわけではないが計画されている神経外科的処置を含む)神経系への損傷または外傷により、あるいは生化学的もしくは遺伝的ないずれかの幾つかの既知の素因、または1もしくは複数のこれら疾患を実証するバイオマーカーの知見により、発作または類似の発作関連障害について発症の高い危険性がある群に入る可能性がある患者に、治療に有効な量の本発明のカルバメート化合物を投与することを含んでなる。
【0098】
すなわち幾つかの態様では、本発明の方法および組成物は、癲癇または発作関連障害または類似の発作関連障害(1つもしくは複数)を発症する危険性があるが、癲癇または臨床的な発作の証拠がない個体における癲癇発生の処置を対象とする。
【0099】
癲癇または類似の発作関連障害(1つもしくは複数)を発症する危険性があるが、癲癇または他の発作障害または類似の発作関連障害(1つもしくは複数)がない個体は、癲癇または類似の発作関連障害(1つもしくは複数)があると未だ診断されていないが、癲癇
または類似の発作関連障害(1つもしくは複数)の発症について一般の集団よりも高い危険性がある個体であり得る。この「より高い危険性」とは、個体における任意の因子の認識、または彼らの家族の病歴、身体検査、または癲癇または類似の発作関連障害(1つもしくは複数)の発症に関して平均より高いことを示す試験により決定することができる。したがって任意に利用可能な手段により患者が「より高い危険性」にあり得ることの決定は、患者が本発明の方法で処置されるべきかどうかを決定するために使用することができる。
【0100】
より高い危険性がある患者には、限定するわけではないが彼らが中枢神経系への傷害または損傷には罹患していないが、彼らの医学的状態または環境のいずれかによりそのような傷害または損傷に対する高い見込みがある患者も含む。これらには限定するわけではないが:一過性脳虚血発作(TIA)または既知の頸動脈狭窄、または単純な既知の深刻な動脈硬化の患者、ならびに神経外科的処置を受けることになっている患者を含む。さらに戦争またはスポーツにより神経学的傷害を受ける見込みがある個体に本発明の化合物を予防的に投与することができ:これには戦闘状態の兵士またはボクシングのような激しい接触スポーツを行う運動家を含む。
【0101】
したがって例示的態様では、本発明の方法および化合物による処置から利益を受ける個体は、癲癇発生、癲癇または他の発作障害または類似の発作関連障害に関連する危険因子を決定するために受け入れられているスクリーニング法を使用して同定することができる。
【0102】
個体が癲癇、別の発作障害または類似の発作関連障害を有するか、または発症する危険性があり得るかの決定には、例えば病歴、身体検査および一連の関連する血液検査に通すことを含む医学的評価を含む。また脳波(EEG)、コンピューター断層撮影法(CT)、磁気共鳴撮影法(MRI)または陽電子断層撮影法(PET)を含むことができる。癲癇または類似の発作関連障害を発症する危険性の上昇の決定は、遺伝子発現プロファイリングまたはプロテオミックス技術を含む遺伝子検査によっても行うことができる(Schmidt,D.Rogawski,M.A.Epilepsy Research 50:71−78(2002)、およびLoscher,W,Schmidt,D.Epilepsy Research 50:3−16(2002)を参照にされたい)。
【0103】
これらのスクリーニング法には、例えば癲癇発生に関連し得る危険因子を決定するための通例の医学的処置を含み、それらには限定するわけではいが:例えば閉塞または貫通状態の頭部外傷、神経外科的処置を含む。CNS感染、細菌またはウイルス性、三叉神経痛、脳血管疾患(限定するわけではないが脳卒中またはTIAの病歴、脳腫瘍、脳水腫、嚢虫症、ポルフィリン症、代謝性脳障害を含む)、薬物離脱(限定するわけではないが鎮痛性−催眠性、またはアルコール離脱を含む)、異常な周産期歴(出生時仮死、または任意の種類の出産傷害、脳性麻痺、学習障害、過活動、熱性麻痺の病歴、癲癇重積持続状態の病歴、癲癇または任意の発作関連障害の家族歴、脳または血管の炎症疾患(狼瘡を含む)、直接または胎盤移動によるいずれかの薬物中毒(限定するわけではないがコカインおよびメタンフェタミン毒性を含む)、親の血族、および抗鬱薬もしくは抗精神病薬療法のような向精神薬療法を含む発作の閾値を下げる薬剤を用いた処置)を含む。
【0104】
幾つかの態様では、本発明の化合物は抗癲癇発生剤(AEGD)での処置が必要な患者を処置する目的の薬剤の製造で使用される。これには上で定義した癲癇、発作障害または類似の発作関連障害(1つもしくは複数)、または癲癇に関連する発作様の神経学的現象または発作関連障害、あるいは患者の現在の臨床的状態または予後が、任意の神経学的または精神医学的障害の広がり、悪化、またはその処置に対する上昇した耐性を防止するための癲癇発生のプロセスの抑制または阻害から利益を得ることができる任意の障害を、一
般に有したか、または発症する危険性があった患者を処置する目的の薬剤の製造を含む。
【0105】
癲癇または他の発作障害または類似の発作関連障害の臨床的兆候または症状が無い患者において、どの患者がAEGDでの処置から利益を得るかの決定は、種々の「代理マーカー」または「バイオマーカー」に基づくことができる。そのようなバイオマーカーには限定するわけではないが、組織、血液またはCSF中での遺伝子もしくはタンパク質発現プロファイル、あるいはSNPのような遺伝子マーカーの存在を含む。
【0106】
本明細書で使用するように、用語「代理マーカー」および「バイオマーカー」は互換的に使用され、そして任意の解剖学的、生化学的、構造的、電気的、遺伝的または化学的指示物質またはマーカーを指し、これらは癲癇または発作障害または類似の発作関連障害の現在の存在、または将来の発症と確かに相関させることができる。幾つかの場合では、コンピューター断層撮影法(CT)、磁気共鳴撮影法(MRI)または陽電子断層撮影法(PET)のような脳を撮影する技術、あるいは他の神経学的撮影技術を使用して、個体が上記の障害の1つを発症する危険性があるかどうかを決定することができる。
【0107】
本発明の方法に適切なバイオマーカーの例には、限定するわけではないが:MRI、CTまたは他の撮影技術による海馬中の硬化、萎縮または容量喪失、あるいは近位一過性硬化(MTS)の存在または類似の関連する解剖学的病状の測定;患者の血液、血清または組織中のタンパク質のような分子種または他の生化学的バイオマーカー、例えば毛様体神経栄養因子(CNTF)レベルの上昇、または神経分解産物の血清レベルの上昇の検出;あるいは患者が抗癲癇発生剤での処置が必要ある代理マーカーまたはバイオマーカーからの他の証拠、例えば発作障害または類似の発作関連障害(1つもしくは複数)癲癇に関連する発作様神経現象または発作関連障害を示唆するEEGがある。
【0108】
種々の広範な検出技術を利用するさらに多くのそのようなバイオマーカーが将来開発されると予想される。発作障害、癲癇または類似の発作関連障害(この用語は本明細書で使用する通りである)の存在または将来的な発症の可能性のようなマーカーまたは指示物質は、本発明の組成物および方法での処置が必要であることを決定するために本発明の方法で使用することができる。
【0109】
「類似の発作関連障害」であり得る精神医学的障害、例えば双極性障害、衝動調節障害、物質濫用障害等には、上記試験に現状試験、家族歴、および経時的な気分障害症状および/または精神症状のような患者の症状の経過の詳細な病歴を含むことができ、そして他の処置と関連して、患者は経時的に例えば詳細な精神医学的病歴またはライフチャートを受けることができる。これらのおよび他の具体的な、そして日常的な方法は、臨床家が本発明の方法および組成物を使用して治療が必要な患者を選択できるようにする。
【0110】
本発明の幾つかの態様では、本発明の実施に使用するのに適するカルバメート化合物が単独で、または少なくとも1もしくは複数の他の化合物または治療薬、例えば他の抗癲癇薬、抗痙薬または神経保護薬または電気痙攣療法(ECT)と同時に投与される。これらの態様では、本発明は患者の癲癇発生および癲癇または他の発作障害または類似の発作関連障害を処置し、防止し、または逆転させるための方法および組成物を提供する。この方法は:処置が必要な患者に、本明細書に開示する有効量のカルバメート化合物の1つを、癲癇発生を処置または防止する能力、または本発明の化合物の抗癲癇、抗痙攣または神経保護効果を増加する能力を有する有効量の1もしくは複数の他の化合物または治療薬と組み合わせて投与する工程を含む。
【0111】
本明細書で使用するように、化合物、治療薬または既知の薬剤と本発明の化合物との「同時投与」または「組み合わせ投与」という用語は、既知の薬剤および化合物の両方が治療効果を有するような時期に薬剤および1もしくは複数の化合物の投与を意味する。幾つかの場合では、この治療効果は相乗的である。そのような同時投与には、本発明の化合物の投与に関して薬剤の同時(すなわち同じ時期)、前またはその後の投与を含むことができる。当業者は特定の薬剤および本発明の組成物について、投与の適切な時期、順序および投薬用量を難無く決定するだろう。
【0112】
上記1もしくは複数の他の化合物または治療薬は、1もしくは複数の以下の特性を有する化合物から選択することができる:抗酸化活性;NMDA受容体拮抗活性;内因性のGABA阻害の増加;NOシンターゼインヒビター活性;鉄結合能、例えば鉄キレーター;カルシウム結合能、例えばCa(II)キレーター;亜鉛結合能、例えばZn(II)キレーター;ナトリウムもしくはカルシウムイオンチャンネルを効果的に遮断する能力、または患者のCNSのカリウムもしくはクロライドイオンチャンネルを開く能力(既知のAEDを含む)、または物質濫用および依存の処置に有用な治療薬(限定するわけではないが、メタドン、ジスルフィラム、ブプロピオン、抗精神病薬、抗鬱薬、ベンゾジアゼピン、ブプスピロン、ナロキソンまたはナルトレキソンを含む)。
【0113】
幾つかの好適な態様では、1もしくは複数の他の化合物または治療薬は、NMDA受容体への結合によりNMDA受容体と拮抗し(例えばNMDA受容体のグリシン結合部位への結合により)、かつ/または作用物質はグリアのGABA取り込みを低下することによりGABA阻害を増す。
【0114】
加えて上記1もしくは複数の他の化合物または治療薬は、たとえ化合物が癲癇発生を抑制すると知られていなくても、発作活性を抑えることが知られている作用物質でよい。そのような作用物質には限定するわけではないが、任意の効果的なAEDまたは当業者には知られているか、または将来見いだされる抗痙薬、例えば適当な作用物質には限定するわけではないが;カルバマゼピン、クロバザム、クロナゼパム、エトスクシミド、フェルバメート、ガバペンチン(gabapentin)、ラモチギン(lamotigine)、レベチラセタム(levetiracetam)、オキカルバゼピン(oxcarbazepine)、フェノバルビタール、フェニトイン、プレガバリン(pregabalin)、プリミドン、レチガビン(retigabine)、タランパネル(talampanel)、チアガビン(tiagabine)、トピラメート(topiramate)、バルプロエート(valproate)、ビガパトリン、ゾニサミド(zonisamide)、ベンゾジアゼピン、バルビツレートまたは鎮静催眠薬がある。
【0115】
本発明の幾つかの態様では、処置は上記定義の癲癇または癲癇に関連する発作様の神経学的現象または類似の発作関連障害がある患者を対象とし、そして癲癇発生を逆転させる本発明の化合物の能力を利用することにより、患者の上記定義の癲癇または癲癇に関連する発作様の神経学的現象または類似の発作関連障害の臨床的発現を制御するために要する維持療法(maintenance medication)の投薬用量または処置の強度を次第に低下させることができる。
【0116】
したがって本発明の方法および組成物での処置は、下にある疾患に改善を生じるので、本発明の化合物が単独療法として使用されているならば、患者は限定するわけではないが本発明の化合物自体を含む維持療法から離脱することができる。すなわち従来のAEDでの維持療法中の癲癇患者は、本発明の1もしくは複数の化合物で処置した後に下にある癲癇障害が逆転し、AEDから離脱することができた。加えて、限定するわけではないが双極性障害を含む上記定義の癲癇に関連する発作様の神経学的現象または類似の発作関連障害の患者は、1もしくは複数の該方法および組成物での処置が進行するにつれ、彼らの維持療法、例えば炭酸リチウム、カルバマゼピン、バルプロ酸または他の薬剤を次第に減らすことができる。同様に1もしくは複数の該組成物が単独療法として使用されれば、この
化合物の用量を時間が経つにつれて減らすことができる。
【0117】
当業者は、EEG、突破発作または下の障害の他の適切なバイオマーカーを含む臨床的兆候および症状に基づき、いかに早く漸減を行うかを決定することができる。
【0118】
定義
本明細書で使用する用語「癲癇発生」とは、再発性の、自然な発作を受け易い中枢神経系(CNS)を含め、神経組織を作る生化学的、遺伝的、組織学的または他の構造または機能的プロセスまたは変化を意味する。加えて用語「癲癇発生」は、限定するわけではないが:障害の悪化または進行、およびその症状、または「薬剤抵抗性」(ここで障害は、低下した薬剤感度または非発作傾向神経組織の癲癇発生のプロセスによる漸増加をもたらす神経生物学的変化の結果として、さらに処置し難くなる)の発生を含め、癲癇または他の発作障害または類似の発作関連障害の患者で観察される臨床的進行に寄与する変化およびプロセスを指すために本明細書では広い意味で使用する。
【0119】
さらに用語「癲癇発生」は、明らかに非癲癇性障害の兆候および症状が経時的に進行して悪化する類似現象を指すために本明細書で可能な限り広い意味で使用し、そのような障害には精神医学的障害を含み、その病因は発作に関連していると思われる。これは限定するわけではないが:例えばサイクリングの上昇速度、エピソードの重篤度の上昇、増大する重篤な精神的症状および/または処置に対する低下した応答性等に示されるように、経時的な、または抗鬱剤または他の薬剤への暴露の結果としての双極性障害;衝動調節障害;強迫性障害、物質濫用障害における依存的行動、ある種の人格障害における症状、神経変性または関連障害における衝動的または攻撃的行動の悪化または進行を含むと解釈される。
【0120】
本明細書で使用する用語「癲癇発生の抑制」とは、癲癇発生プロセスの防止、遅延、停止または逆転を指す。
【0121】
本明細書で使用する用語「抗癲癇発生剤または薬剤(AEGD)」とは、作用物質が投与の必要性がある個体に投与された時、癲癇発生を抑制することができる作用物質を指す。
【0122】
本明細書で使用する用語「痙攣障害」は、個体が痙攣、例えば癲癇性発作による痙攣に罹患している個体の障害を指す。痙攣障害には限定するわけではないが、癲癇性および非癲癇性痙攣、例えば痙攣剤または個体に対する毒物の投与による痙攣を含む。
【0123】
本明細書で使用する用語「類似の発作関連障害(1もしくは複数)」または「癲癇関連発作様の神経学的現象」とは、明白な発作活動をほとんど示すことができないか、または示すことができないが、それでも全体的または部分的に発作様または関連する神経メカニズムの結果であると考えられ、そしてしばしばAEDで処置できることが分かった神経生物学的障害または精神的障害を指す。類似の発作関連障害(1もしくは複数)の例には限定するわけではないが;双極性障害、分裂感情性障害、精神病障害、衝動調節障害および関連する衝動調節障害疾患スペクトル、過食症または神経性食欲不振のような摂食障害、強迫性障害(OCD)、物質濫用障害における依存的および衝動的行動、および側頭葉癲癇患者または特定の一次人格障害で起こる人格および行動の変化を含む。
【0124】
本明細書で使用する用語「個体」または「患者」には、癲癇または類似の発作関連障害の症状を未だ示さなかったが、高い危険性の群にあり得るヒトを含む。
【0125】
本明細書で使用する用語「AEGDを用いた処置が必要な個体」には、癲癇または類似
の発作関連障害の症状がないが、中枢神経(CNS)または末梢神経系(PNS)の損傷または外傷により発作または発作関連障害を発症する高い危険性群にあり得る個体を含む。個体または患者は、CNSまたはPNSへの損傷もしくは外傷により、癲癇または類似の発作関連障害に対する幾つかの既知の生化学的または遺伝的素因により、または1もしくは複数のこれら障害が見いだされた、実証されたバイオマーカーまたは代理マーカーにより、そのような発作または発作関連障害を発症する高い危険性群にあると考えられる。
【0126】
また本明細書で使用する用語「AEGDを用いた処置が必要な個体」には、臨床的状態または予後にAEGDを用いた処置から利益を得ることができる任意の個体を含む。これには限定するわけではないが、任意の素因子により上記定義の癲癇、発作障害または類似の発作関連障害または癲癇に関連する発作様の神経学的現象または発作関連障害を発症する危険性が上昇していると決定された任意の個体を含む。素因子には限定するわけではないが:CNSまたはPNSへの任意の種類の損傷または外傷;CNSの感染、例えば髄膜炎または脳炎;無酸素症;脳卒中、すなわち脳−血管事故(CVA);CNSに影響を及ぼす自己免疫疾患、例えば狼瘡;出産傷害、例えば周産期仮死;心停止;治療的または診断的な血管の外科的処置、例えば頸動脈内膜切除法または大脳血管撮影法;心臓バイパス手術;脊髄外傷;低血圧;塞栓、高または低還流からCNSへの傷害;CNSに影響を及ぼす低酸素;AEGDに応答することが知られている障害に対する既知の遺伝的素因;CNSの損傷を占める場所;脳腫瘍、例えば多形グリア芽腫;CNS中または周辺の出血(bleeding)または出血(hemorrhage)、例えば大脳内出血または硬膜下血腫;脳水腫;熱性痙攣;高体温;毒性(toxic)または有毒性(poisonous)剤に対する暴露;薬剤中毒、例えばコカイン;発作障害または類似の発作関連障害の家族歴、癲癇重積持続状態の病歴;発作の閾値を下げる薬剤での現行処置、例えば炭酸リチウム、トラジンもしくはクロザピン;患者が抗癲癇発生剤での処置が必要である代理マーカーまたは生物マーカーからの証拠、例えば海馬硬化症を示すMRIスキャン、または他のCNS病状、神経分解産物の上昇した血清レベルを含む。
【0127】
さらにまた用語「AEGDを用いた処置が必要な個体」は:上記定義の癲癇、発作障害または類似の癲癇に関連する発作様の神経学的現象または発作関連障害、あるいは患者の現在の臨床状態または予後が、任意の神経学的または精神病障害の拡大、進行、悪化またはその処置に対する耐性上昇を防ぐために、癲癇発生のプロセスを抑えまたは抑制することから利益を得る任意の障害の病歴を有するか、または現在有する任意の個体を指す。
【0128】
本明細書で使用するように、他に特記しない限り、用語「癲癇」は、個体(好ましくはヒト成人、子供または幼児)が1もしくは複数の発作および/または振顫を経験する任意の障害を意味する。適切な例には限定するわけではないが、癲癇(限定するわけではないが局所関連癲癇、全身性癲癇、全身的および局所的発作の両方が起こる癲癇等を含む)、疾患または状態の合併としての発作(脳障害、フェニルケトン尿、若年性ゴーシェ病、Lundborgの進行性間代性筋痙攣癲癇、脳卒中、頭部外傷、ストレス、ホルモン変化、薬剤使用または離脱、アルコール使用または離脱、睡眠剥奪等に伴う発作のような)等を含む。この用語は、発作の種類、発作の起源、発作の進行または下にある原因または病因にかかわらず臨床的な障害を指すことを意味する。
【0129】
用語「抗癲癇薬」(AED)は、用語「抗痙薬」と互換的に使用され、そして本明細書で使用するように、両用語は;作用物質が個体または患者に投与された場合、発作活動または癲癇原性を処置し、抑制し、または防止することができる作用物質を指す。
【0130】
本明細書で使用するように用語「AEDを用いた処置が必要な個体」には、それらの症状の病因にかかわらず疾患である癲癇を有することが知られている個体、または発作または痙攣を繰り返した個体、または類似の発作関連障害の症状を示した個体を含む。
【0131】
本明細書で使用するように「ハロゲン」は塩素、臭素、フッ素およびヨウ素を意味する。
【0132】
本明細書で使用するように用語「アルキル」は単独または置換基の一部として使用する場合でも、直鎖および分枝状鎖を含む。例えばアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル等を含む。他に特記しない限り、「C1−4アルキル」は1〜4個の炭素原子の炭素鎖組成を意味する。
【0133】
特定の基が「置換されている」場合(例えば、アルキル、フェニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール)、その基は置換基の一覧から独立して選択される1もしくは複数の置換基、好ましくは1〜5個の置換基、より好ましくは1〜3個の置換基、最も好ましくは1〜2個の置換基を有することができる。
【0134】
置換基に関して、用語「独立して」とは1より多くのそのような置換基が可能である場合、そのような置換基は互いに同じでも異なってもよいことを意味する。
【0135】
さらに簡潔な記載を提供するために、本明細書で与える定量的表現の幾つかは用語「約」で加減されない。用語「約」が明確に使用されていてもされてなくても、本明細書で与える各量は、実際に与えられる量を指し、そしてそのように与えられた値に関する実験的および/または測定条件による近似も含め、当該技術分野の通例の技術に基づき合理的に推定されるそのように与えられた量の近似を指すことも意味すると理解される。
【0136】
本明細書で使用する用語「個体」または「患者」は互換的に使用され、そして本明細書で使用するように処置、観察または実験の対象となったヒトを指す。
【0137】
本明細書で使用する用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含んでなる生成物、ならびに直接的または間接的に特定の成分の特定の量の組み合わせから生じる任意の生成物を包含することを意図する。
【0138】
本発明の化合物が少なくとも1つのキラル中心を有する場合、それらはしかるべくエナンチオマーとして存在することができる。化合物が2以上のキラル中心を有する場合、それらはさらにジアステレオマーとして存在することができる。すべてのそのような異性体およびその混合物が本発明の範囲に包含される。さらにその化合物に関する結晶形の中には多形として存在できるものもあり、そしてそのまま本発明に含まれることを意図する。加えて、化合物の中には水(すなわち水和物)または一般的な有機溶媒との溶媒和物を形成できるものもあり、そしてそのような溶媒和物も本発明の範囲に包含されることを意図している。
【0139】
本発明はその範囲に、本発明の化合物のプロドラッグを含む。一般にそのようなプロドラッグは、インビボで必要な化合物に容易に変換され得る化合物の機能的誘導体である。すなわち、本発明の処置法では、用語「投与すること」は、記載する種々の障害の、具体的に開示する組成物を用いた、または具体的には開示しないが患者に投与された後にインビボで具体的な化合物に転換する組成物での処置を包含する。適切なプロドラッグ誘導体の選択および調製に関する通常の手順は、例えば「プロドラッグの設計(Design of Prodrug)」H.Bundgaard編集、エルセビア(Elsevier)、1985に記載されている。
【0140】
薬剤で使用するために、本発明の化合物の塩は非毒性の「製薬学的に許容され得る塩」
を指す。しかし他の塩も本発明の化合物またはそれらの製薬学的に許容され得る塩の調製に有用となり得る。化合物の適切な製薬学的に許容され得る塩には酸付加塩を含み、これは例えば化合物の溶液を、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酢酸、酒石酸、カルボン酸またはリン酸のような製薬学的に許容され得る酸の溶液と混合することにより形成することができる。
【0141】
さらに本発明の化合物が酸性部分を持つ場合、その適切な製薬学的に許容され得る塩にはアルカリ金属塩、例えばナトリウムもしくはカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムもしくはマグネシウム塩;および適切な有機リガンドと形成される塩、例えば四級アンモニウム塩を含むことができる。このように代表的な製薬学的に許容され得る塩には以下を含む:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、硼酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシラート(edisylate)、エストレート(estolate)、エシレート(esylate)、フマル酸塩、グリセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコーリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフタレン酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、ムコ酸塩、ナプシレート、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート、トシル酸塩、トリエチオジドおよび吉草酸塩。
【0142】
製薬学的に許容され得る塩の調製に使用できる代表的な酸および塩基には以下を含む:酸;酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アシル化アミノ酸、アジピン酢酸、アルギン酸、アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、(+)−樟脳酸、カンファースルホン酸、(+)−(1S)−カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシルスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、D−グルクロン酸、L−グルタミン酸、α−オキソ−グルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、(+)−L−乳酸、(±)−DL−乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、(±)−DL−マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、蓚酸、パルミトル酸、パモ酸、リン酸、L−ピログルタミン酸、サリチル酸、4−アミノ−サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)−L−酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸およびウンデシレン酸;および塩基;アンモニア、L−アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−(ジエチルアミノ)−エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−グルカミン、ヒドラバミン、1H−イミダゾール、L−リシン、水酸化マグネシウム、4−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン、ピペラジン、水酸化カリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリジン、2級アミン、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミンおよび水酸化亜鉛を含む。
【0143】
本明細書で使用する用語「処置する」または「処置」とは、症状の減退、鎮静、減少のような客観的または主観的パラメーター、または患者が損傷、病状または状態により耐えられるようにすること;変性または下降の速度を遅くすること;変性の最終点の衰弱を少
なくすること;または患者の身体的または精神的状態を改善することを含む損傷、病状、症状または状態の防止または緩和における任意のしるしを生じる作用を指す。
【0144】
このように用語「処置」または「処置するために」とは、癲癇発生の用語が本明細書で定義され、そして使用されるように、癲癇発生の病理学的プロセスを改善し、防止し、逆転させ、停止しまたは抑制する任意の作用を含むことを意図する。症状の処置または緩和は、客観的または主観的パラメーターに基づくことができ、それらには身体検査、神経学的検査および/または精神学的評価の結果を含む。
【0145】
したがって用語「処置する」または「処置」には、癲癇発生のプロセスを処置し、防止し、逆転させ、停止し、または抑制するために本発明の化合物または作用物質の投与を含む。場合により、本発明の化合物での処置は癲癇に付随する脳の機能不全または脳の過興奮の進行を防止し、抑制し、または停止する。
【0146】
本明細書で使用する用語「治療効果」は、個体における癲癇発生、癲癇発生の効果もしくは症状、または癲癇発生の副作用の処置、抑制、軽減、逆転または防止を指す。
【0147】
用語「治療に有な効量」または「治療に有効な用量」は互換的に使用され、そして本明細書で使用するように、そのような:癲癇発生、癲癇発生の効果もしくは症状、または癲癇発生の副作用の処置、抑制、軽減、逆転または防止が必要な個体または患者において、上記定義の治療効果を生成するために、1もしくは複数の本発明の化合物または組成物の十分な量または用量を意味する。これら種々の治療効果に必要な用量の範囲は、個体または患者の特性、および処置する状態の正確な性質に従い異なる。
【0148】
本明細書で使用する用語の「製薬学的剤形」は、個体に投与するために適する製剤を生成するために、製薬学的に許容され得る賦形剤と一緒の本発明の1もしくは複数の化合物または組成物の形態を指す。この形態は限定するわけではないが、即時および遅延放出型の両方の経口、静脈内(IV)、経皮、筋肉内、心室内(intraventricular)または鼻を含む任意の適切な経路により投与するために適合され、そして錠剤、丸剤、カプセル、半固体、散剤、徐放型製剤、溶液、懸濁液、乳液、シロップ、エリキシル、エーロゾルまたは任意の他の適切な組成物を含んでなることができる。
【0149】
投薬計画
本発明は、本発明のカルバメート化合物または組成物を使用してヒト個体または患者における癲癇発生および癲癇または他の発作障害および類似の発作関連障害を処置する方法を提供する。癲癇発生を処置するために必要なカルバメート化合物の量は、治療的または製薬学的に有効な量または用量と定義される。癲癇または他の発作障害または類似の発作関連障害の処置では、本発明の方法は発作、痙攣または類似の発作関連障害の症状を抑える能力を提供すると同時に、癲癇発生のプロセスを防止するので、下にある疾患または非発作傾向神経組織の癲癇発生のプロセスによる加入の進行または悪化を防ぐ。この目的を達成するために、本発明の化合物または組成物は、以下に記載するような正しい治療に有効な量または用量で使用しなければならない。
【0150】
この用途に効果的な投薬スケジュールおよび量、すなわち投与または投薬計画は疾患または損傷の正確な性質、患者の身体的状態、体重、年齢等を含む種々の因子に依存する。患者に関する投薬計画を計算するには、投与様式も考慮される。
【0151】
実施例2のリチウム−ピロカルピンラットモデルに類似する重篤および急性の臨床状態では、ヒトに抗癲癇発生効果を生じるために有効となると予想される用量の範囲は、ラットおよびヒトにおける既知の有効用量および血液レベルを比較することにより決定される

【0152】
ヒトでは、本明細書で試験化合物(TC)と称する本発明の化合物の1つ、すなわち実施例7の薬物動態学が、健康な成人男性に単回および繰り返し経口投与した後に直線であることが知られている(実施例4を参照にされたい)。
【0153】
ヒトでの血液レベル
ヒトを対象とした毒物学実験では、種々の用量の試験化合物の7日間の経口投与で、以下のCmaxおよびAUC(0−24)が生成された:
1)100mgのb.i.d.(70kgのヒトを対象として24時間に200mg、または2.85mg/kg/日)で、Cmaxは3.6−マイクログラム/mLであり、そしてAUCは42.2マイクログラム−時間/mLであった;
2)250mgのb.i.d.(70kgのヒトを対象として24時間に500mg、または7.14mg/kg/日)で、Cmaxは8.2マイクログラム/mLであり、そしてAUCは102.3マイクログラム−時間/mLであった;
3)500mgのb.i.d.(70kgのヒトを対象として24時間に1000mg、または14.28mg/kg/日)で、Cmaxは17.2−マイクログラム/mLであり、そしてAUCは204.1マイクログラム−時間/mLであった;
4)750mgのb.i.d.(70kgのヒトを対象として24時間に1500mg、または21.4mg/kg/日)で、Cmaxは28.2−マイクログラム/mLであり、そしてAUCは322.7マイクログラム−時間/mLであった。
【0154】
ラットでの血液レベル
ラットを対象とした毒物学実験では、試験化合物(TC)の8日間の経口投与で、以下のCmaxおよびAUCが生成された:
1)30mg/kg/日で、Cmaxは9.33マイクログラム/mLであり、そしてAUCは97.32マイクログラム−時間/mLであった;
2)100mg/kg/日で、Cmaxは20.63マイクログラム/mLであり、そしてAUCは230.33マイクログラム−時間/mLであった;
3)300mg/kg/日で、Cmaxは70.34マイクログラム/mLであり、そしてAUCは525.95マイクログラム−時間/mLであった。
【0155】
抗癲癇発生効果について、実施例2でラットを対象とした用量試験は、30mg/kg/日〜120mg/kg/日の範囲であった。この実施例で試験した最低用量、すなわち30mg/kgでは幾らかの測定可能な保護効果が生成したが、実施例1で試験した最低用量は10mg/kg/日であり、そして最少の保護効果を生じたか、または効果は無かった(以下の実施例1および2を参照にされたい)。ラットでは、30mg/kg/日i用量の試験化合物(TC)が、9.33マイクログラム/mLのCmaxおよび97.32マイクログラム−時間/mLのAUCの血液レベルを生じると予想さる。ヒトでは、これらの血液レベルは70kgのヒトを対象に、約500mg/日〜約600mg/日の用量、または約7.1〜約8.6mg/kg/日の用量からと予想される。
【0156】
しかし実施例1および2では、使用した動物モデルが急性で、しかも大変重篤であり、そして劇的で、迅速な抗癲癇発生効果が生じることが示される必要があったので、比較的高い用量および血液レベルを要した。またはこれらの重篤な急性の動物モデルで、化合物は外傷的出来事または損傷が起こった後、すなわちLi−ピロカルピンの投与による癲癇重積持続状態の誘導後に与えられた。この種の損傷後モデルは、限定するわけではないがすでにCNS損傷が起こった後に投薬療法を開始するヒト患者において類似する急性の重篤な臨床状態に相関するようである。そのような状況では、抗癲癇発生効果に必要な投薬用量は、急性または重篤度が低い状況、または慢性状況、そして特に薬物療法が予防的に使用される場合で必要となるような用量より高くなる。
【0157】
最初の防止または前処置のパラダイムにおいて薬物療法が予防的に使用される状況では、臨床的に重要な抗癲癇発生効果を生じるために必要な用量および血液レベルは、実施例2で使用される30mg/kg/日用量のヒトに均等物よりも幾分低くなると予想される。
【0158】
このように臨床的プラクティスで治療に有効となると予想される用量は、多くの場合で癲癇発生の重篤な動物モデルで同定される用量よりも低い。ラットでは発作を防止するための試験化合物のED50は約4mg/kg〜30mg/kgであるので(時間および実験の種類に依存する)、癲癇発生のラットモデルでの30mg/kgの最少有効用量は期待されなくもない。このデータに基づき、予想される有効な抗癲癇発生性のヒト用量は、ヒトの抗痙攣効力に必要とされる最少用量よりも高い。最初の予防パラダイムにおいて投与が任意の傷害または病理学的プロセスの始まる充分前に行われる場合、ヒトで有効な用量および血液レベルは、実施例1および2におけるリチウム−ピロカルピンラットモデルで最少で有効であることが分かった30mg/kg/日用量のヒト均等物よりも幾分低くなると予想される。
【0159】
ヒト患者では、最初の予防パラダイムにおいて投薬療法がヒトの神経系に対する任意の損傷または傷害前に始まる場合、抗癲癇発生効果用量の下限は約400mg/日〜約500mg/日または約5.7mg/kg/日〜約7.14mg/kg/日になると予想される。投薬療法が損傷を受けた後に開始される状況では、用量範囲は幾分高く、例えば70kgのヒトで約500mg/日〜約600mg/日、または約7.14〜8.6mg/kg/日になると予想される。
【0160】
本発明の化合物および組成物は、それらの臨床的に有効な用量範囲まで理論的な上限を持たない。すなわち治療に有効な範囲の上限は、患者が耐え得る最大量により決定される。しかしラットで試験した最高用量(すなわち120mg/kg、これは大変顕著な神経保護および抗癲癇発生効果を示した)は、上記のデータに基づき、ヒトで1日2回、750mgの用量で生じるものに等しいか、またはそれより低いCmaxおよびAUCを有すると予想される(1500mg/日または約21.4mg/kg/日)。この用量はヒトが容易に耐えられ、そして最大耐容用量は多くの患者についてこれよりもかなり高く、恐らく70kgのヒトで2500〜3000mg/日または約35.7mg/kg/日〜約42.9mg/kg/日になるだろう。
【0161】
このように本発明の製薬学的化合物および組成物は、約5.7mg/kg/日〜約43.0mg/kg/日(体重70kgのヒトで400〜3000mg/日)、好ましくは約6.4〜約35.7mg/kg/日(体重70kgのヒトで450〜2500mg/日)、より好ましくは約7.1〜約28.6mg/kg/日(体重70kgのヒトで500〜2000mg/日)、さらにより好ましくは約7.8〜約21.4mg/kg/日(体重70kgのヒトで550〜1500mg/日)、あるいは最も好ましくは約8.6〜約17.1mg/kg/日(体重70kgのヒトで600〜1200mg/日)の投薬用量で投与することができる。しかし投薬用量は、個々の特性および個体の耐容、および処置する状態の正確な性質に依存して変動してよい。
【0162】
この開示に基づき、その技術に関心がある当業者は不当な実験を行うことなく、癲癇を処置するために、そして臨床的に有意な抗癲癇発生効果を生じるために、本発明の特定の置換されたカルバメート化合物の治療に有効な用量または量を決定することができる。(例えば、Lieberman,製薬学的剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)、(第1〜3巻、1992);Lloyd,1999,製薬の技術、科学および技術(The art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding);およびPickar,1999、投薬用量の計算(Dosage Calculations)を参照にされたい)。
【0163】
また治療に有効な用量は、活性剤の任意の毒性または有害な副作用が臨床的意味で治療に有益な効果よりも重要となるものである。さらに各特定の個体について、具体的な投薬用量計画が評価され、そして個々の必要性および化合物の投与を管理または指示する人の専門的判断に従い経時的に調整されるべきであることに留意されたい。また本発明の組成物は低い、または中程度の用量から開始し、次いで時間が経つにつれ次第に完全に治療に有効な用量および血液レベルに増加させることができる。
【0164】
処置目的には、本明細書に開示する組成物または化合物は単回のボーラス送達で、長期にわたり連続的な送達を介して、または反復投与プロトコールで(例えば1時間、1日、1週間、反復する投与プロトコール)個体に投与することができる。本発明の製薬学的製剤は、例えば1日に1もしくは複数回、1週間に3回、または毎週投与することができる。本発明の1つの態様では、本発明の製薬学的製剤は1日に1または2回、経口的に投与される。
【0165】
幾つかの態様では、本発明の化合物を用いた処置計画は、癲癇の診断を正当化するために十分発作があった個体または患者で始めることができる。この態様では、本発明の化合物はAEDとして使用され、認識される発作障害または癲癇を持つ患者の発作を抑える。しかしこの内容では、本発明の方法に従い、これらの化合物はさらに抗癲癇発生効果(AEGD効果)を提供し、そして発作活動に供された神経組織の延長または拡大、そして続いて疾患の悪化を防止するために、適切な投薬範囲で使用することができる。
【0166】
幾つかの態様では、本発明の化合物を用いた処置計画は、例えば個体が脳を傷害する損傷または他の初めての傷害に罹患した後に、しかし個体が癲癇と診断される前に(例えば個体が最初または2回目の発作を有する前)に開始することができる。1つの態様では、抗癲癇発生能を有する化合物、例えば向精神薬で処置されている個体、または癲癇を発症する危険性が付随する疾患、例えば自閉症を有する個体は、本発明のカルバメート化合物を用いた処置計画を開始することができる。
【0167】
さらに他の態様では、本発明の化合物を用いた処置計画は神経系に対する任意の傷害または損傷が起こる前、しかしそのような傷害または損傷を予測できるか、または起こる見込みがある時に開始することができる。例えばそのような処置計画は、個体が神経外科的処置を受ける前、あるいは他の形態の頭部もしくは脳外傷、例えば戦闘、激しいスポーツまたはレース、再発性の脳卒中、TIA等に罹る見込みがある時に始めることができる。
【0168】
特定の態様では、カルバメート化合物は脳を傷害する損傷または最初の傷害が起こった後、設定期間(週、月、年)、毎日投与することができる。担当医師は、例えば患者の臨床検査、あるいは血中もしくは脳脊髄液中の薬剤レベルを測定することにより、カルバメート化合物が治療に有効なレベルに達したことをどのように決定するかを知っている。当業者は不明瞭言語、嗜眠または障害がある共調(impaired coordination)のような副作用の存在または重篤度を決定するための身体検査により、最大耐容用量を決定することができる。
【0169】
この内容では、生物学的に活性剤(1つもしくは複数)の治療に有効な投薬用量には、癲癇発生を防止、逆転、停止または抑制するために臨床的に有意な結果を生じる長期処置計画内での反復投与を含むことができる。この内容において有効な投薬用量の決定は、典型的には動物モデル実験、続いてヒトでの臨床実験に基づき、そして個体において目的と
する露呈症状または状態の発生または重篤度を有意に下げる有効な投薬用量および投与プロトコールを決定することにより導かれる。これに関して適切なモデルには、例えばマウス、ラット、ブタ、ネコ、非ヒト霊長類、および当該技術分野で知られている認可された他の動物モデルを含む。あるいは有効な投薬用量はインビトロモデル(例えば免疫学的および組織病理学的アッセイ)を使用して決定することができる。そのようなモデルを使用して、生物学的に活性な作用剤(1もしくは複数)の治療に有効な量を投与するために、典型的には通常の計算および調整だけが適切な濃度および用量(例えば所望する応答を誘導するために、鼻内で有効な、経皮的に有効な、静脈内で有効な、または筋肉内で有効な量)を決定するために必要である。
【0170】
本発明の実施例の態様では、化合物の単位剤形が標準的な投与計画のために調製される。このように組成物は医師の指示で、より少ない用量に容易に再分割され得る。例えば単位剤形は包装された散剤に、バイアルまたはアンプル中に作成されることができ、そして好ましくはカプセルまたは錠剤の形態である。
【0171】
組成物のこれらの単位剤形に存在する活性化合物は、患者の特定の必要性に従い、毎日1回、または多回投与するために、例えば約25mg〜約800mgの量で、または好ましくは1もしくは複数の本発明の活性なカルバメート化合物の約50、100、200、250、400、450、500および600mgの単位用量の量で存在することができる。
【0172】
薬剤としてのカルバメート化合物
本発明は薬剤として式1および/または式2のエナンチオマー混合物および単離されたエナンチオマーを提供する。カルバメート化合物は、癲癇発生を処置するために、例えば個体においる癲癇の発症を防止し、抑制し、逆転させ、または停止するために、薬剤として配合される。
【0173】
製薬学的組成物
本発明で記載する癲癇、癲癇発生および関連する障害の処置法は、本明細書で定義する任意の化合物および製薬学的に許容され得る担体を含んでなる製薬学的組成物を使用して行うこともできる。したがって本発明は、さらに式1または式2の1もしくは複数の化合物および製薬学的に許容され得る担体を含有する製薬学的組成物を含んでなる。
【0174】
有効成分として本明細書に記載する本発明の化合物の1もしくは複数の化合物を含有する製薬学的組成物は、化合物(1もしくは複数)を常通の製薬学的配合技術に従って製薬学的担体とよく混合することにより調製することができる。この担体は、所望する投与経路に依存して広い種々の形態(例えば経口、非経口)をとることができる。従って懸濁液、エリキシルおよび液剤のような液状経口調製物では、適当な担体および添加剤には、水、グリコール、油、アルコール、香料、防腐剤、安定化剤、着色剤等を含み;散剤、カプセルおよび錠剤のような固形経口製調製物には、適当な担体および添加剤には、澱粉、糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等を含む。固体経口調製物は、吸収の主要部位を調節するために、糖のような物質でコートされるか、または腸溶コーティングしてもよい。非経口投与では担体は通常、滅菌水からなり、そして他の成分は溶解性を上げ、または防腐のために加えることができる。注入可能な懸濁液または溶剤も適切な添加剤と一緒に水性担体を使用して調製することができる。
【0175】
本発明の製薬学的組成物を調製するために、有効成分として本発明の1つもしくは複数の化合物を、通常の製薬学的配合技術に従って製薬学的担体とよく混合し、この担体は、投与に所望される製剤の形態、例えば経口もしくは筋肉内のような非経口により多種多様な形態をとることができる。経口剤形の組成物の調製では、任意の通常の製薬学的媒質を
用いることができる。すなわち懸濁剤、エリキシル剤および液剤のような液状経口製剤では、適当な担体および添加剤には、水、グリコール、油、アルコール、香料、防腐剤、着色剤などが包含され;例えば、散剤、カプセル剤、キャプレット、ゲルキャップおよび錠剤のような固形経口製剤では、適当な担体および添加剤には、澱粉、糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などが包含される。錠剤およびカプセル剤は、投与におけるそれらの容易さのために、最も都合のよい経口単位剤形を表し、この場合、固形の製薬学的担体を明らかに用いる。
【0176】
所望により、錠剤は、標準的な技術により糖衣をコーティングするかもしくは腸溶コーティングすることができる。非経口的使用では担体は通常、滅菌水を含んでなるが、例えば、溶解性を促進するかもしくは防腐のような目的のために他の成分を含むことができる。注入可能な懸濁剤も調製することもでき、この場合、適切な液状担体、沈殿防止剤等を用いることができる。
【0177】
本明細書における製薬学的組成物は、投薬単位、例えば、錠剤、カプセル、散剤、注射、茶さじ1杯等あたり、上記のような有効用量を送達するために必要な有効成分の量を含有する。本明細書における製薬学的組成物は、単位投薬単位、例えば、錠剤、カプセル、散剤、注射、座薬、茶さじ1杯等当たり、約10mg〜約1000mgの式1または式2の1もしくは複数の化合物、そして好ましくは約25mg〜約800mgの単位用量、そしてさらに好ましくは約50mg、100mg、250mg、400mg、450mg、500mgおよび600mgの単位用量を含む。
【0178】
本発明の製薬学的組成物は、約5.7mg/kg/日〜約43.0mg/kg/日(体重70kgのヒトで400〜約3000mg/日)、好ましくは約6.4〜約35.7mg/kg/日(体重70kgのヒトで450〜2500mg/日)、より好ましくは約7.1〜約28.6mg/kg/日(体重70kgのヒトで500〜2000mg/日)、さらにより好ましくは約7.9mg/kg/日〜約21.4mg/kg/日(体重70kgのヒトで550〜1500mg/日)、あるいは最も好ましくは約8.6〜約17.1mg/kg/日(体重70kgのヒトで600〜1200mg/日)の投薬用量で投与することができる。しかし投薬用量は、患者の必要性、処置する状態の重篤度、および使用する化合物に依存して変動してよい。
【0179】
有利には、本発明の化合物は1日に1回の用量で投与することができ、または1日の全投薬用量を1日あたり2、3、または4回の用量に分割して投与してもよい。さらに本発明の化合物は、当業者に周知な適切な鼻内賦形剤の局所的使用を介して、または経皮的な皮膚パッチを介して鼻に投与することができる。経皮的送達系の状態で投与するためには、投薬はもちろん投薬計画を通して断続的というよりむしろ連続的である。
【0180】
好ましくは、これらの組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下もしくは直腸投与用または吸入もしくは吹送による投与用の錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、滅菌非経口液剤もしくは懸濁剤、定量エーロゾルもしくは液状スプレー、ドロップ、アンプル、オートインジェクター装置または座薬のような単位剤形である。あるいは組成物は、週に1回もしくは月に1回の投与に適当な形態で与えることができ;例えば、デカン酸塩のような、活性化合物の不溶性の塩を筋肉内注射用のデボー製剤(depot preparation)を提供するために適応させることができる。錠剤のような固形組成物を製造するために、主要有効成分を製薬学的担体、例えば、コーンスターチ、ラクトース、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウムもしくはガムのような通常の錠剤成形成分および他の製薬学的希釈剤、例えば水と混合して本発明の化合物もしくはその製薬学的に許容しうる塩の均質な混合物を含有する固形前調合(preformulation)組成物を生成する。これらの前調合組成物を均質と呼ぶ場合、組成物を錠剤、丸剤およびカプセル剤のような同等に有効な剤形に容易に再分割することができるように、有効成分が組成物の全体にわたって均一に分散していることを意味する。次に、この固形前調合組成物は25mg〜約800mgの本発明の有効成分を含有する上記種類の単位剤形さらに分割する。
【0181】
新規な組成物の錠剤もしくは丸剤は、持続性作用の利点を与える剤形を提供するためにコーティングするかもしくはそうでなく配合することができる。例えば錠剤もしくは丸剤は、内部投与成分および外部投与成分を含んでなることができ、後者は前者を包む形態である。この2つの成分は、胃における分解に抵抗するように働きそして内部成分が十二指腸に完全なまま到達するか、もしくは放出が遅延されることを可能にする腸溶性の層により分離することができる。様々な物質をそのような腸溶性の層もしくはコーティングに用いることができ、そのような物質には、シェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような物質と共に多数のポリマー酸が包含される。
【0182】
本発明の新規な組成物を経口的もしくは注射による投与用に包含することができる液状形態には、水性液剤、適当に風味を加えたシロップ剤、水性もしくは油懸濁剤および綿実油、ゴマ油、ココナッツ油もしくはピーナッツ油のような食用油との風味を加えたエマルジョン、ならびにエリキシル剤および同様の製薬学的賦形剤を含む。水性懸濁剤の適当な分散剤もしくは沈殿防止剤には、合成および天然のガム、例えば、トラガカント、アカシア、アルギネート、デキストラン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニル−ピロリドンもしくはゼラチンを含む。
【0183】
例えば、錠剤もしくはカプセル剤の形態の経口投与には、活性薬剤成分をエタノール、グリセロール、水等のような経口用の無毒の製薬学的に許容しうる不活性担体と合わせることができる。さらに、所望もしくは必要に応じて、適当な結合剤、潤滑剤、崩壊剤および着色剤もまた、混合物に包含することができる。適当な結合剤には、限定するわけではないが澱粉、ゼラチン、グルコースもしくはベータ−ラクトースのような天然の糖、コーン甘味料、アカシア、トラガカントもしくはオレイン酸ナトリウムのような天然および合成ガム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが包含される。崩壊剤には、限定するわけではないが澱粉、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが包含される。
【0184】
液体は、合成および天然のガム、例えば、トラガカント、アカシア、メチルセルロース等のような適当に風味を加えた沈殿防止剤もしくは分散剤中に形成する。非経口投与には、滅菌懸濁剤および液剤が望ましい。静脈内投与が所望される場合、適当な防腐剤を一般に含有する等張製剤を用いる。
【0185】
投与する最適投薬量は、当業者により容易に決定されることができ、そして使用する特定の化合物、投与の形態、調製物の強さ、投与の様式および疾患症状の進展で変動する。さらに、患者の年齢、体重、食事および投与時期を含め、処置する特定の患者と関連する因子が投薬量を調整する必要性をもたらす。
【0186】
当業者は、適切な既知の、および一般的に受け入れられている細胞および/または動物モデル使用したインビボおよびインビトロ試験の両方で、上記障害を処置し、または防止するための試験化合物の能力が予測されることを認識している。
【0187】
当業者はさらに、健康な受診者および/または上記障害に罹患している患者を対象としたヒト初回投与(first−in−human)、用量範囲および効力試験を含むヒトの臨床試験を、臨床および医学分野で周知な方法に従い行うことができることを認識している。
【0188】
一般に本発明のカルバメート化合物は、経口、頬内、局所、全身性(例えば経皮、鼻内、もしくは座薬による)、あるいは非経口(例えば筋肉内、皮下、または静脈内注射)を含め、治療薬を投与するために当該技術分野で知られている任意の方法により製薬学的組成物として投与することができる。神経系への化合物の直接投与には、頭蓋内または嚢内針もしくはカテーテルを介する送達により、ポンプデバイスを用いて、または用いずに、例えば大脳内、心室内、脳室内、硬膜下腔内、脊髄内への投与または脊髄周辺への投与経路を含むことができる。
【0189】
組成物は錠剤、丸剤、カプセル、半固体、散剤、徐放性製剤、液剤、懸濁液、乳液、シロップ、エリキシル、エーロゾルまたは任意の他の適切な組成物の形態をとるこができ;そして少なくとも1つの製薬学的に許容され得る賦形剤と組み合わせて、本発明の少なくとも1つの化合物を含んでなることができる。適切な賦形剤は当業者には周知であり、そしてそれらおよび組成物の配合法は、Alfonso AR:レミングトンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、17版、マック出版社(Mack Publishing Company)、イーストン、ペンシルバニア州、1985のような標準的参考書に見いだすことができる(この開示はすべての目的に関して引用により全部、本明細書に編入する)。適切な液体担体、特に注入可能な液剤には水、生理食塩水、デキストロース水溶液およびグリコールを含む。
【0190】
カルバメート化合物は水性懸濁液として提供することができる。本発明の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適する賦形剤との混合物中にカルバメート化合物を含むことができる。そのような賦形剤には例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアラビアガムのような沈殿防止剤、および天然に存在するホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えばポリエチレンソルビトールモノ−オレート)、またはエチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノ−オレート)のような分散または湿潤剤を含むことができる。
【0191】
また水性懸濁液は、エチルもしくはn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸のような1もしくは複数の防腐剤、1もしくは複数の着色剤、1もしくは複数の香料、およびシュクロース、アスパルテームもしくはサッカリンのような1もしくは複数の甘味料を含むことができる。製剤は等張性を調整することができる。
【0192】
本発明の方法に使用する油懸濁液は、カルバメート化合物をピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油またはヤシ油のような植物油、または液体パラフィンのような鉱物油;あるいはそれらの混合物に懸濁することにより配合することができる。油懸濁液はミツロウ、硬質パラフィンまたはセチルアルコールのような増粘剤を含むことができる。グリセロール、ソルビトールまたはシュクロースのような甘味料を加えて嗜好性のある経口調製物を提供することができる。これらの製剤はアスコルビン酸のような酸化防止剤の添加により保護され得る。注入可能な油賦形剤として、Minto,J,Pharmacol.Exp.Ther.281:93−102,1997を参照にされたい。本発明の製薬学的製剤は水中油型の乳液状態であることもできる。油性相は上記の植物油または鉱物油、またはそれらの混合物であることができる。
【0193】
適切な乳化剤にはアラビアガムおよびトラガカントガムのような天然に存在するガム、
ダイズレシチンのような天然に存在するホスファチド、脂肪酸と無水ヘキシトールから誘導されるエステルもしくは部分エステル(ソルビタンモノ−オレートのような)、およびこれら部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(ポリエチレンソルビタンモノ−オレートのような)を含む。また乳液はシロップおよびエリキシル製剤におけるような甘味料および香料も含むことができる。そのような製剤は粘滑薬、防腐剤または着色剤も含むことができる。
【0194】
単独または他の適切な成分と組み合わせる化合物を選択して、吸入により投与されるエーロゾル製剤(すなわちそれらは「噴霧化」され得る)を作成することができる。エーロゾル製剤はジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等のような加圧化される許容し得る推進薬に配合され得る。
【0195】
非経口投与、例えば関節内(関節に)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、心室内および皮下経路に適する本発明の製剤は、水性および非水性の、等張性滅菌注入溶液を含むことができ、これは酸化防止剤、バッファー、静菌剤および製剤を目的の受容体の血液と等張にする溶質、および沈殿防止剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤および防腐剤を含むことができる水性および非水性の滅菌懸濁液を含むことができる。使用できる中でも許容され得る賦形剤および溶媒は、水およびリンゲル溶液、等張性塩化ナトリウムである。さらに滅菌された固定油を溶媒または懸濁媒質として従来どおり使用することができる。この目的には、合成のモノ−もしくはジグリセリドを含む任意の銘柄の油を使用することができる。さらにオレイン酸のような脂肪酸も同様に注入物の調製に使用することができる。これらの溶液は滅菌され、そして一般に望ましくない物質を含まない。
【0196】
化合物が十分に溶解性である場合、それらはプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールのような適切な有機溶媒を用いて、または用いずに標準塩水に直接溶解することができる。微細に分割された化合物の分散物は、水性澱粉もしくはナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液中に、またはピーナッツ油のような適切な油中に作成することができる。これらの製剤は通例の周知な滅菌技法により滅菌することができる。製剤はpH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等のような製薬学的に許容され得る補助物質をおよそ生理学的条件まで必要に応じて含むことができる。
【0197】
これらの製剤中のカルバメート化合物の濃度は大変広く変動することができ、そして選択した特定の投与様式および患者のニーズに従い主に流体容量、粘度、体重等に基づき選択される。IV投与には、製剤は滅菌された注入可能な水性または油性懸濁液のような滅菌された注入可能な調製物であることができる。この懸濁液はこれらの適切な分散または湿潤剤および沈殿防止剤を使用して、既知の技術に従い配合することができる。また滅菌された注入可能な調製物は、1,3−ブタンジオールの溶液のような非毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶剤中の滅菌された注入可能な溶液または懸濁液であることもできる。
【0198】
これらの製剤は、アンプルおよびバイアルのような単位用量または多用量の密閉容器中で与えることができる。注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、粒子およびすでに記載した種類の錠剤から調製することができる。
【0199】
本発明の実施で使用するために適するカルバメート化合物は、経口で投与されることができ、そしてそれが好ましい。組成物中の本発明の化合物の量は、組成物の種類、単位投薬用量のサイズ、賦形剤の種類および当業者に周知な他の因子に依存して大変広く変動し得る。一般に最終組成物は、例えば1.0%重量パーセント(%w)〜90重量%のカルバメート化合物,好ましくは10重量%〜75重量%を含んでなることができ、残りは賦
形剤(1もしくは複数)である。
【0200】
経口投与用の製薬学的製剤は、経口投与に適する投薬用量で当該技術分野で周知の製薬学的に許容され得る担体を使用して配合することができる。そのような担体は製剤を患者による摂取に適する錠剤、丸剤、散剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ロゼンジ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等の単位剤形に配合できるようにする。
【0201】
経口投与に適する製剤は、(a)水、塩水またはPEG400のような希釈剤中に懸濁された有効量のパッケージされた核酸のような液体溶液;(b)カプセル、サッシェまたは錠剤、各々が予め定めた量の有効成分を液体、固体、粒子またはゼラチンとして含有する;(c)適切な液体中の懸濁液;および(d)適切な乳液からなることができる。
【0202】
経口使用のための製薬学的調製物は、本発明の化合物と固体賦形剤を組み合わせ、場合により生じた混合物を挽き、そして粒子の混合物を処理し、所望により適切なさらなる化合物を加えた後、錠剤または糖衣錠の芯を得ることを通して得ることができる。適切な固体賦形剤は炭水化物またはタンパク質充填剤であり、そして限定するわけではないがラクトース、シュクロース、マンニトールまたはソルビトールのような糖;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモまたは他の植物に由来する澱粉;メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースまたはナトリウムカルボキシメチルセルロースのようなセルロース;およびアラビアおよびトラガカントを含むガム:ならびにゼラチンおよびコラーゲンのようなタンパク質を含む。
【0203】
所望により、架橋化ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウムのようなそれらの塩のような崩壊剤または可溶化剤を加えることができる。錠剤形態には1もしくは複数のラクトース、シュクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、微結晶セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、加湿剤、防腐剤、香料、色素、崩壊剤および製薬学的に適合性の担体を含むことができる。
【0204】
ロゼンジ形態は、香料、例えばシュクロース中に有効成分を含んでなることができ、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはシュクロースおよびアカシア乳液、ゲルのような不活性基剤に有効成分を含んでなる香錠等は、有効成分に加えて当該技術分野で知られている担体を含有する。
【0205】
本発明の化合物は、薬剤の直腸投与用の座薬形態で投与することもできる。これらの製剤は、常温では固体であるが、直腸温度では液体となり、したがって直腸で溶けて薬剤を放出する適切な非炎症性賦形剤と薬剤を混合することにより調製することができる。そのような物質はカカオ脂およびポリエチレングリコールである。
【0206】
本発明の化合物は、座薬、吸入剤、散剤およびエーロゾル製剤を含む鼻内、眼内、膣内および直腸内投与により投与することもでなきる(ステロイド吸入の例については、Rohatagi,J.Clin.Pharmacol.35:1187−1193,1993,1195;Tjwa,Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107−111,1995を参照にされたい)。
【0207】
本発明の化合物は、アプリケータースティック、液剤、懸濁液、乳液、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、散剤およびエーロゾルのように配合され、局所的経路により経皮的に送達することができる。
【0208】
カプセル化材料も本発明の化合物と使用することができ、そして用語「組成物」には他の担体を用いて、または用いずに製剤としてカプセル化材料と組みあわせた有効成分を含むことができる。例えば本発明の化合物は、体内でゆっくりと放出されるために微小球として送達することができる。1つの態様では、微小球は薬剤(例えばミフェプリストン)を含有する、皮下でゆっくりと放出する微小球の皮内注射を介して(Rao,J.Biomater Sci.Polym.編集、7:623−645,1995を参照にされたい);生分解性および注射可能なゲル製剤として(例えばGao.Pharm.Res.12:857−863,1995);あるいは経口投与用の微小球として(例えばEyles,J.Pharm.Pharmacol.49:669−674,1997を参照にされたい)投与することができる。経皮的および皮内経路の両方が数週間または数カ月間、一定の送達を提供する。カシェ剤も本発明の化合物の送達に使用することができる。
【0209】
本発明の組成物は、遅延放出(slow)または放出制御に適合した種々の経口剤形で投与することができる。例えば組成物は穴がある不溶性カプセルの1端に配置し、そして流体を吸収する膨張性組成物をカプセル中の穿孔と反対側に配置する。投与後、流体吸収組成物は患者のGI管から水を吸収し、そして膨潤し、そして活性薬剤を穿孔に既知の制御可能な速度で通す。当該技術分野で知られている多くの他の遅延型(delayed)放出または放出制御剤形を、本発明の方法および組成物と一緒に使用することができる。
【0210】
別の態様では、本発明の化合物は細胞膜と融合するか、またはエンドサイトーシスされるリポソームの使用により送達することができ、すなわち細胞の表面膜タンパク質受容体に結合するリポソームに結合したリガンドを採用することにより、エンドサイトーシスを生じる。リポソームを使用することにより、特にリポソーム表面が標的細胞に特異的なリガンドを持つ場合、またはそうではなく特異的な器官に優先的に向けられる場合、カルバメート化合物の送達をインビボの標的細胞に収束させることができる。(例えばAl−Muhammed,J.Microencapsul.13:293−306,1996;Chonn,Curr.Opin.Biotechnol.6:698−708,1995;Ostro,Am.J.Hosp.Pharm.46:1576−1587,1989を参照にされたい)。
【0211】
本発明の製薬学的製剤は塩として提供されることができ、そして限定するわけではないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等を含む多くの酸を用いて形成することができる。対応する遊離塩基形である水性溶媒または他のプロトン性溶媒中で、塩はより可溶性となる傾向がある。
【0212】
他の場合では、好適な調製物は例えば以下の任意の、またはすべてを含むことができる凍結乾燥粉末であることができる:使用前にバッファーと合わせられる4.5から5.5のpH範囲の1mM〜50mMのヒスチジン、0.1%〜2%のシュクロース、2%〜7%マンニトール。
【0213】
製薬学的に許容され得る塩およびエステルは、製薬学的に許容され、そして所望する薬理学的特性を有する塩およびエステルを指す。そのような塩には、化合物中に存在する酸性のプロトンが無機もしくは有機塩基と反応できる場合に形成され得る塩を含む。適切な無機塩には、アルカリ金属、例えばナトリウムおよびカリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウムと形成されるものを含む。適切な有機塩には、アミン塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン等のような有機塩基と形成されるものを含む。
【0214】
また製薬学的に許容され得る塩には、元の化合物中のアミン部分と無機酸(例えば塩酸および臭化水素酸)および有機酸(例えば酢酸、クエン酸、マレイン酸、およびメタンス
ルホン酸および安息香酸のようなアルカン−およびアレーンスルホン酸)との反応から形成される酸付加塩も含むことができる。製薬学的に許容され得るエステルには、化合物中に存在するカルボキシ、スルホニルオキシおよびホスフェノキシ基から形成されるエステルを含む。2つの酸性基が存在する場合、製薬学的に許容され得る塩またはエステルはモノ−酸−モノ−塩もしくはエステルまたはジ−塩もしくはエステルであることができ;そして同様に存在する2以上の酸性基がある場合、そのような基の幾つか、またはすべてを造塩またはエステル化することができる。
【0215】
本発明で挙げる化合物は、非造塩または非エステル化形態で、あるいは造塩および/またはエステル化形態で存在することができ、そのような化合物のネーミングは、元の(非造塩または非エステル化)化合物およびその製薬学的に許容され得る塩およびエステルの両方を含むことを意図している。本発明は式1および式2の製薬学的に許容され得る塩およびエステル形を含む。式1または式2のエナンチオマーの1より多くの結晶形が存在でき、そしてそのままで本発明に含まれる。
【0216】
本発明の製薬学組成物は場合により、カルバメート化合物に加えて、癲癇または癲癇発生または類似の発作関連障害に付随する疾患または状態の処置に有用な少なくとも1つの他の治療薬を含むことができる。
【0217】
製薬学的組成物の配合法は、マルセルデッカー社(Marcel Dekker,Inc)から出版されている多くの出版物、例えば製薬学的剤形:錠剤(Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets)、第2版、改定および拡大版、1〜3巻、Lieberman et al編集;製薬学的剤形:非経口薬剤(Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications)、1〜2巻、Avis et al.編集;および製薬学的剤形:分散系(Pharmaceutical Dosage FormsDisperse Systems)、1〜2巻、Lieberman et al.編集に記載されてきた(これらの開示内容は、それらの内容について、そしてすべての目的のために引用により本明細書に編入する)。
【0218】
製薬学的組成物は一般に滅菌され、実質的に等張性に配合され、そして米国食品医薬品局のすべてのグッド マニファクチャリングプラクティス(Good Manufacturing Practice:GMP)規則を完全に遵守している。
【0219】
癲癇または癲癇発生の処置に使用するためのキット
カルバメート化合物を含んでなる薬剤が適切な担体中に配合された後、これを適切な容器に入れ、そして癲癇または癲癇発生の処置用のラベルを付けることができる。さらに癲癇発生、癲癇または癲癇発生に付随する別の障害または状態の処置に有用な少なくとも1つの他の治療薬を含んでなる別の薬剤も容器に入れ、そして示した疾患の処置用のラベルを付けることができる。そのようなラベリングには例えば、各薬剤の量、頻度および投与法に関する使用説明を含むことができる。
【0220】
前記本発明は、明白な理解のために例として詳細に記載してきたが、当業者には特定の変更および修飾が開示内容から理解され、そして添付する範囲内で過度の実験を行わなくても実施することができ、これらは限定ではなく具体的説明のために提示されることが明らかである。以下の実施例は本発明の理解を助ける目的で説明され、そして添付する特許請求の範囲で説明される本発明をどのようにも限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0221】
実施例
本明細書中で「試験化合物」または「TC」または「試験化合物」と呼ぶ単離された式1のS−エナンチオマー(例えば式7)の活性を以下の実験で評価して、ラットを対象とした神経保護およびリチウムおよびピロカプリンにより誘導された側頭葉癲癇のモデルにおける癲癇発生の処置に関する化合物の効力について測定した。
【0222】
実施例1
側頭葉癲癇のリチウム−ピロカプリンモデル
リチウムに結合したピロカプリン(Li−Pilo)によりラットに誘導したモデルは、ヒト側頭葉癲癇のほとんどの臨床的および神経生理学的特徴を生じる(Turski et al.,1989,Synapse 3:154−171;Cavalheiro,1995,Ital J Neurol Sci 16:33−37)。ラット成体では、ピロカプリンの全身投与が癲癇重積持続状態(SE)を導く。初日に死亡率は30〜50%に達する。生存した動物では、神経傷害が海馬形成、梨状および内側嗅皮質、視床、扁桃体、新皮質および黒質で優勢である。この急性発作期間に続いて、「サイレント(silent)」な発作が無い期間が平均14〜25日間続き、その後、すべての動物が通常一週間に2〜5回の頻度で自発的な再発性痙攣発作を現す(Turski et al.,1989,Synapse 3:154−171;Cavalheiro,1995,Ital J Neurol Sci 16:33−37;Dube et al,2001,Exp Neurol 167:227−241)。
【0223】
リチウム−ピロカプリンおよび試験化合物を用いた処置
Janvierブリーディングセンター(Le Genest−St−lste、フランス)により提供された体重225〜250gのオスのWistarラットを、制御された標準条件下で収容し(明/暗サイクル 午前7.00−午後7.00、点灯)、食事として水は自由に与えた。すべての動物実験は、1986年11月24日の欧州連合理事会指令(European Communities Council Directive)(86/609/EEC)およびフランス農務省(ライセンスN゜67−97)の規則に従い行った。電極の移植については、ラットに2.5mg/kgのジアセパム(DZP、Valium、ロッシュ、フランス)および1mg/kgのケタミンクロルハイドレート(Imalgene1000、ローヌ メリー、フランス)のi.p.注射により麻酔をかけた。4匹の1点接触記録電極を各側2カ所で壁側皮質上の頭蓋上に配置した。
【0224】
癲癇重積持続状態の誘導
試験化合物での処置および自発的な再発性発作(RSS)の発生
すべてのラットは塩化リチウム(3meq/kg、i.p.、シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州、米国)を受けた;約20時間後、動物はベースラインの皮質EEGを記録するためにプレキシグラスの箱に入れた。メチルスコポラミンブロミド(1mg/kg、s.c.、シグマ)を痙攣の末梢効果を制限するために投与した。SEは塩酸ピロカプリンを(25mg/kg、s.c.、シグマ)をメチル−スコポラミンの30分後に注射することにより誘導した。両側のEEG皮質活性はSEの全期間記録し、そして行動的変化を記録した。
【0225】
試験化合物の上昇用量効果は、3群のラットで実験した。第1群の動物はSEの発生から1時間後に、10mg/kgの試験化合物をi.p.により受け(pilo−TC10)、一方、第2および3群の動物はそれぞれ30および60mg/kgの試験化合物を受けた(pilo−TC30およびpilo−TC60)。
【0226】
別の群には2mg/kgのジアゼパム(DZP,i.m.)をSEの発生から1時間後に注射し、これはSE後に動物の生存を改善するための我々の標準処置である(pilo−DZP)。対照群はピロカプリンおよび試験化合物の代わりに塩水を受けた(塩水−塩
水。SEを生き残ったpilo−試験化合物のラットは、次いで第1の試験化合物の注射から約10時間後に2回目の等用量の試験化合物のi.p.注射で注射され、そしてさらに6日間、試験化合物で1日2回の処置下に維持した。Pilo−DZPは最初の注射から約10時間後にSEの日に2回目の1mg/kgのDZP注射を受けた。その後Pilo−DZPおよび塩水−塩水ラットは、1日2回、等容量の塩水を受けた。
【0227】
EEGおよびSRSの発生に対する潜在性に及ぼす試験化合物の効果は毎日、1日に10時間、動物をビデオで録画することにより調査し、そして1週間に2回、8時間の電気記録図活性の記録を調査した。
【0228】
細胞密度の定量
細胞密度の定量は、8pilo−DZP、8pilo−TC10、7pilo−TC30、7pilo−TC60および6塩−塩ラットについてSEから6日後に行った。SEから14日後、動物には1.8g/kgのペントバルビタール(Dolethal(商標)、ベトキノール(Vetoquinol)、ルアー、フランス)で深く麻酔をかけた。次いで脳を摘出し、そして凍結した。連続した20μmの切片を低温保持装置中で切り出し、数日間、風乾した後、チオニン染色を行った。
・細胞密度の定量は、ラット脳環椎の定位座標に従い、冠状切片上に10×10ボックスの1cm顕微鏡グリッドを用いて行った。(Paxinos G,Watson C(1986)、定位座標中のラット脳(The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates)、第2版、アカデミック出版社、サンディエゴを参照にされたい)
・細胞計数はブラインド様式で2回行い、そして各個別の動物の隣接する2つの切片から少なくとも3つの値の平均であった。10μmより大きい細胞のみを計数し、小さい細胞は神経細胞と考えた。
【0229】
ティム染色(Timm staining)
自発的な再発性発作の発症から2カ月で、苔状繊維の出芽を試験化合物またはDZPに長期(chronic period)暴露したラットおよび3匹の塩−塩ラットで調査した。動物には深く麻酔をかけ、そして経心的に塩水を潅流し、続いて100mlの1.15(重量/容量)%のNaS(0.1Mリン酸バッファー中)、および100mlの4(容量/容量)%のホルムアルデヒド(0.1Mリン酸バッファー中)を流した。脳を頭蓋から取り出し、4%ホルムアルデヒドで3〜5時間、後固定し、そして40μm切片をスライディングビブラトーム(sliding vibratome)上で切り取り、そしてゼラチン被覆スライド上に乗せた。
【0230】
翌日、切片を暗中、26℃の50(重量/容量)%アラビアガム(160ml)溶液、クエン酸ナトリウムバッファー(30ml)、5.7(重量/容量)%のハイドロキノン(80ml)、および10(重量/容量)%の硝酸銀(2.5ml)中で40〜45分間現像した。次いで切片を水道水で40℃にて少なくとも45分間すすぎ、蒸留水で迅速にすすぎ、そして乾燥させた。それらをエタノール中で脱水させ、そしてカバースリップを乗せた。
【0231】
苔状繊維の出芽は、背側海馬を対象として以前に記載された基準に従い評価した(Cavazos et al、1991,J Neurosci 11:2795−2803)、それは次の通りである:0−DGの先端と首筋の間に顆粒が無い:1−DGの先端と首筋の間の斑状分布中の超顆粒領域(supergranular region)中の散在する顆粒;2−DGの先端と首筋の間の連続する分布中により多くの顆粒;3−先端と首筋の間の連続パターン中の顕著な顆粒、場所によっては先端と首筋の間に集密した顆粒斑;4−先端と首筋の間の集密な高密度の薄板バンドから形成される顕著な顆粒;5−:内部の分子層に延びた集密な高密度の薄板バンドの顆粒。
【0232】
データ分析
pilo−塩水およびpilo−試験化合物動物において、SEの特徴を比較するために、ノンペアード(non−paired)スチューデントt−検定を使用した。両群間のラットの発作(seizing)の回数の比較は、カイ2乗試験により行った。神経傷害については、群間の統計分析はANOVA、続いてStatviewソフトウェアを使用した多比較用のフィッシャー検定(Fisher’s test)を使用して行った(Fisher RA,1946a,研究者用の統計法(Statistical Methods for Research Workers)(10版)、オリバー&ボイド(Oliver & Boyd)、エジンバラ;Fisher RA,1946b,実験計画(The Design of Experiments)(4版)、オリバー&ボイド、エジンバラ)。
【0233】
リチウム−ピロカルピン癲癇重積持続状態の行動的およびEEG特性決定
体重250〜330gのSprague−Dawleyラット全数を、Li−Pilo誘導型SEにかけた。SEの行動的特徴は、pilo−塩水およびpilo−試験化合物群の両方で同一であった。ピロカルピン注射から5分以内に、ラットは下痢、起毛および他のコリン作用性刺激を現した。続く15〜20分の間、ラットは頭の上下運動、掻き毟り、咀嚼および調査行動を現した。再発性発作がピロカルピンの投与から約15〜20分で始まった。以前に記載されたように(Turski et al.,1983,Behav Res 9:315−335)、後脚立ちおよび転倒がある頭および前脚ミオクローヌスのエピソードと結び付いたこれらの発作は、ピロカルピンから約35〜40分後にSEに進行した。
【0234】
SE中のEEGパターン
薬理学処理なしのSEの最初の1時間の間、EEGの振幅(amplitude)は進行につれて上昇する一方、頻度は下がった。ピロカルピンの注射後5分内に、正常なバックグラウンドEEG活性は皮質中の低電位の速い活性に置き換わる一方、シータリズム(5〜7Hz)が海馬に現れた。15〜20分までに、高電位の速い活性が海馬のシータリズムに重なり、そして孤立した高電位スパイクは海馬のみで記録されたが、皮質の活性は実質的に変化しなかった。
【0235】
ピロカルピン注射後35〜40分までに、動物は発作に先立つ活性のバーストとして最初に起こった海馬および皮質の両方に存在する高電位の速い活性を伴う典型的な電気記録的発作を発症し、続いて連続する高電位スパイクの列が現れ、そしてポリスパイクがDZPまたは試験化合物を投与するまで続いた。SEの約3〜4時間で、海馬のEEGは海馬および皮質の両方でpilo−DZPおよびpilo−10群で周期的な電気記録的放電(PED、約1/秒)を特徴とした。EEGバックグラウンド活性の振幅は、pilo−TC60動物では低かった。SEの6〜7時間までに、スパイク活性はDZP−およびTC10−処置ラットの皮質および海馬には存在したが、EEGの振幅はTC30ラットの海馬で、およびTC60処置ラットの両構造でベースラインレベルに戻った。TC10、TC30およびTC60群の間に変化は無かった。SEの9時間までに、孤立したスパイクが試験化合物処置ラットの海馬中および場合により皮質中で未だに記録された。両構造ではバックグラウンド活性はこの時点で大変低い振幅であった。
【0236】
SEにより誘導される死亡率
SE後最初の48時間中に、pilo−DZPラット(23%、5/22)、pilo−TC10ラット(26%、6/23)およびpilo−TC30ラット(20%、5/25)における死亡率の程度は同様であった。死亡率はpilo−TC60ラットでは大
きく低下し、ここではわずか4%に達しただけであった(1/23)。この差異は統計的に有意であった(p<0.01)。
【0237】
サイレント期および自発的な再発性発作のEEG特性決定
サイレント期中のEEGパターンは、pilo−DZPおよびpiloTC10、30または60ラットで類似していた。SEから24および48h時間で、ベースラインEEGは未だPEDの発生に特徴付けられ、ここで大きな波またはスパイクを重ね合わせることができた。試験化合物の注射または賦形剤注射から1から8時間の間に、pilo−DZPまたはpilo−TC10群に変化は無かった。TC30およびTC60ラットで、PEDの頻度および振幅は注射から10分後にすぐ低下し、そしてTC30群では大きな振幅のスパイクに、そしてTC60群では低い振幅に置き換わった。注射から4時間後までに、EEGは2つの後者の群でベースラインレベルに戻った。SE後6日までに、EEGはピロカルピン注射前よりも未だに低い振幅であり、そしてほとんどの群のスパイクが未だに記録でき、場合によりpilo−DZP、−TC10および−TC30ラットでも記録できた。pilo−TC60ラットでは、大きい振幅のスパイクの頻度がすべての他の群よりも高かった。
【0238】
試験化合物または賦形剤注射後、EEG記録はpilo−DZPおよびpilo−TC10群で注射により影響されなかった。pilo−TC30ラットでは、注射が海馬および皮質の両方のEEGに遅い波の発生を誘導し、そしてpilo−TC60ラットには低下した頻度のスパイクを誘導した。
【0239】
すべてのラットをDZP、TC10およびTC30に暴露し、そして慢性期が同様の潜伏期でSRSを発症するまで試験した。潜伏期はpilo−DZPラットで6.9日(n=9)、TC10ラットで15.4±5.1日(n=7)、pilo−TC30ラットで18.9±9.0日(n=10)であった。TC60にかけたラット群で、ラットのサブグループは他の群に類似する潜伏期がある癲癇となり(すなわち17.6±8.7日、n=7)、一方別のラット群はSE後109〜191日の範囲のより長い遅れを有する癲癇となり(149.8±36.0日、n=4)、そして1匹のラットはSE後9カ月遅れても癲癇とはならなかった。pilo−DZP、pilo−TC10、pilo−TC30とpilo−TPM60ラットの第1のサブグループとの間のSRSに対する潜伏期の差異は、統計的に有意ではなかった。塩水−塩水ラット(n=5)のいずれもSRSを発症しなかった。
【0240】
ピロカルピン−暴露ラットでSRSの頻度を計算するために、発作の重篤度および識別段階III(顔面筋肉および前脚の間代発作)および段階IV−V発作(後脚立ちおよび転倒)を測定した。pilo−DZPおよびpilo−試験化合物ラットにおける1週間あたりの段階IIIのSRSの頻度は、群間で変動性であった。これは最初の3週間の間、pilo−DZPおよびpilo−TC60(早いSRSの発生)群で低く一定であり、そしてpilo−DZP群では第4週の間に消えた。段階IIIのSRSの頻度は、pilo−TC10群でより高く、この場合3および4週間の間、pilo−DZP値よりも有意に上昇した。より重篤な段階IV−VのSRSの頻度はほとんどの群で第1週中に最高であったが、後期に発作の発生があるpilo−TC30およびTC60は除き、この場合、SRSの頻度はTC30群で全4週間にわたり一定であり、そして後期SRS発生のpilo−TC60群では最初の2週間にわたり一定であり、この場合、段階IV−V発作は無く、ここで第2週以降に記録された発作はない。段階IV−VのSRSの頻度は、最初の1週間の間、pilo−DZP群(1週間あたり11.3SRS)に比べて、TC10、TC30およびTC60(初期SRS発生)群で有意に減少した(1週間あたり2.3〜6.1のSRS)。2〜4v週の間、段階IV−VのSRS頻度は、1週間あたり2〜6回の発作の値に達する第1週に比べてすべての群で減少したが、初期SRS発生のpilo−TC60群を除き、この場合、発作の頻度は、SRSの頻度が3.3〜5.8の範囲になるpilo−DZP群に比べて、1週間当たりの発作の頻度は0.6〜0.9発作に有意に低下した。
【0241】
海馬、視床および皮質の細胞密度
塩水−塩水ラットと比較してpilo−DZPラットでは、細胞数が海馬のCA1領域で大きく減少したが(錐体細胞層において70%の細胞損失)、CAS領域は傷害の広がりは低かった(CA3aで54%、CA3bで31%の細胞損失)。歯状回では、pilo−DZPラットは門(73%)にかなりの細胞損失を体験したが、顆粒細胞層には視覚で確認できる傷害が無かった。同様な傷害は腹部海馬に観察されたが、細胞計数はこの領域については行わなかった。またかなりの傷害が側方視床核に記録されたが(91%の細胞損失)、背側正中視床核の傷害は中程度であった(56%)。梨状皮質では細胞の損失はもはや見えない層III−IVでの総数であり、そしてpilo−DZPラットの層IIでは53%に達した。背側の内側嗅領皮質では、層IIおよびIII−IVがわずかに傷害を受けた(それぞれ9および15%)。腹側の内側嗅領皮質の層IIは完全に保存されたが、層III−IVは44%の細胞損失を受けた。
【0242】
pilo−試験化合物の動物の海馬では、細胞の損失はpilo−DZPラットに比べてCA1錐体層で減少し、ここで細胞損失はpilo−DZPラットで75%、そしてpilo−TC30またはpilo−TC60動物ではそれぞれ35および16%に達した。この差異は2つの試験化合物用量で統計的に有意であった。CAS錐体層では、試験化合物はCA3a領域にいかなる保護も与えず、60mg/kgの試験化合物用量ではCA3bで有意に神経保護的であった。歯状回では、門での細胞損失はpilo−試験化合物(69〜72%)とpilo−DZP動物(73%)で同様であった。2つの視床核では、60mg/kg用量でも保護的であり、側方および背側正中核でそれぞれ65および42%までニューロン傷害を減少させた。大脳皮質では、試験化合物での処置が60mg/kgの最高用量でのみDZPに比べてニューロン保護を提供した。2つの最低用量、10および30mg/kgでは、梨状皮質の層III−IVで観察される細胞の全損失および組織の解体は、pilo−DZPラットおよびpilo−試験化合物ラットで同一であり、そしていかなる群でも計数できなかった。梨状皮質の層IIおよびIII−IVで、TC60処置はpilo−DZPラットで記録されるニューロン傷害をそれぞれ41および44%まで減少させた。腹側の内側嗅領皮質では、神経保護は層III−IVにおいてTC60投与により誘導され、そしてpilo−DZPラットに比べて31%に達した。内側嗅領皮質では、背側の内側嗅領皮質の層III−IV(28%以上の傷害)、および腹側の内側嗅領皮質の層III−IV(35%以上の傷害)で、pilo−DZPに比べてpilo−TC10ラットの細胞損失にわずかな悪化あった。試験化合物の他の用量では、内側嗅領皮質の細胞損失はpilo−DZPラットで記録された損失に類似した。
【0243】
海馬中の苔状繊維の出芽
pilo−DZPおよびpilo−TPM群でSRSを現すべてのラットは、歯状回の内部分子層に類似のティム染色強度を示した(2〜4のスコア)。ティム染色は歯状回
の上および下刃(blade)の両方に存在した。ティムスコアの上刃の平均値はpilo−DZPラット(n=9)で2.8±0.8に、pilo−TC10ラット(n=7)で1.5±0.6に、pilo−TC30ラット(n=10)で2.6±1.0に、そしてpilo−TC60ラット(n=11)の全群で1.5±0.7に達した。60mg/kg群でpilo−試験化合物はSRSに対する潜伏期に従い再分割された時、早期のSRS発生の群は1.8±0.6(n=6)のティムスコアを示し、そしてSRSの後期の発生または発生無しの群は、1.2±0.6(n=5)のティムスコアを示した。pilo−DZPラットで記録された値は、pilo−TC10(p=0.032)および後期または発作無しのpilo−TC60サブグループ(p=0.016)の値とは統計的に
有意に異なった。
【0244】
検討および結論
本実験の結果は、SEの発生から1時間後に始まる試験化合物での7日の処置が、脳のある領域、例えばCA1およびCA3b領域の錐体細胞層、背側正中視床、梨状皮質の層IIおよびII MV、および腹側の内側嗅領皮質の層III−IVをニューロン傷害から保護することができるが、最高用量の試験化合物、すなわち60mg/kgでのみであることを表す。またこの試験化合物の用量は、他の動物群よりも平均約9倍長い遅れがある癲癇になった少なくとも1つの動物のサブグループで、SRSの発生を遅らせることもでき、そして1匹の動物はSEから9カ月遅れても癲癇にならなかった。
【0245】
これらの結果は抗発作特性(これはほんとんどの抗癲癇性の市販薬の古典的特性である)を持つを1つの化合物が、癲癇発生を遅らせる、すなわち癲癇発生性となることもできることを示す。本実験のデータは、試験化合物の処置がどの用量を使用しても、主に最初の1週間の発症および60mg/kgの処置で試験化合物を用いた4週間の全観察期間中に、段階IV−Vの発作数を低下させることから、癲癇の重篤度を低下させることも示す。さらにTC10群では、pilo−DZP群より多い回数の、重篤度が低い段階IIIの発作の発生が増すように移行する。
【0246】
実施例2
この実験の拡大部分の目的は、側頭葉癲癇のリチウム−ピロカルピン(Li−Pilo)モデルにおいて、同じ試験化合物(TC)の有力な神経保護効果および抗癲癇発生特性に関する上記実施例1に報告した実験を追跡することであった。第1実験では、TCが海馬のCA1およびCA3、梨状および腹側の内側嗅領域皮質を、Li−Pilo癲癇重積持続状態(SE)により誘導されるニューロン傷害から保護できることが示された。これらの神経保護特性のほとんどは、実験した最高用量、60mg/kgで起こり、そして処置はラットの36%(11のうちの4)に自発的な発作の発生を遅らせることができた。本実施例では、ニューロン傷害および癲癇発生について、より高用量のTCによる処置の成果を実験する。
【0247】
リチウムを会合したピロカルピン(Li−Pilo)によりラットに誘導した癲癇のモデルは、ヒトの側頭葉癲癇のほとんどの臨床的および神経生理学的特徴を再生する(Turski L,Ikonomidou C,Turski WA,Bortolotto
ZA、Cavalheiro EA(1989)総説:コリン作用性メカニズムおよび癲癇発生(Review:Cholinergic mechanism and epileptogenesis)。ピロカルピンにより誘導される発作:難治性癲癇の新規実験モデル,Synapse 3:154−171;Cavalheiro EA(1995)癲癇のピロカルピンモデル。Ital J Neurol Sci 16:33−37を参照にされたい)。
【0248】
成体のラットでは、ピロカルピンの全身投与が24時間まで続く可能性があるSEを導く。最初の1日で死亡率は30〜50%に達する。生存した動物では、ニューロン傷害は海馬形成、梨状および内側嗅領皮質、視床、扁桃体、新皮質および黒質で優勢である。この急性発作期間に「サイレント」な発作が無い期間が平均14〜25日間続き、その後、すべての動物が通常一週間に2〜5回の頻度で自発的な再発性痙攣発作を現す(Turski L,Ikonomidou C,Turski WA,Bortolotto ZA、Cavalheiro EA(1989)総説:コリン作用性メカニズムおよび癲癇発生(Review:Cholinergic mechanism and epileptogenesis)。ピロカルピンにより誘導される発作:難治性癲癇の新規実験モデル,Synapse 3:154−171;Cavalheiro EA(1995
)癲癇のピロカルピンモデル。Ital J Neurol Sci 16:33−37;Dubea C,Boyet S,Marescaux C,Nehling A(2001)未成熟および成体ラットを対象とした癲癇のリチウム−ピロカルピンモデルの慢性期間中のニューロン損失と発作間のグルコース代謝との間の関係。Exp Neurol 167:227−241を参照にされたい)。
【0249】
現在の抗癲癇薬(AED)は癲癇発生を防止せず、そして一時的に再発性の発作に効果があるだけである。
【0250】
これまでの実験では、我々は単独療法で与えられる試験化合物(TC)の用量を増して、潜在的な神経保護および抗癲癇発生効果を実験し、そしてほとんどが高い死亡率を防ぐために与えられている我々の標準ジアゼパム(DZP)処置と比較した。これらのデータはSEの発生から1時間後に始まる10、30または60mg/kgTCでの7日間の処置が、ニューロン傷害から幾つかの脳領域を保護できることを示す。この効果はCA1およびCA3b領域の錐体細胞層、背側正中視床、梨状皮質の層IIおよびIII−IV、および腹側の内側嗅領皮質の層III−IVで統計的に有意であるが、TCの最高用量、すなわち60mg/kgを用いた時のみ統計的に有意である。さらにこのTCの用量はSRS発生を遅らせることができる唯一の用量でもあると思われ、動物の少なくとも1つのサブグループでは他の動物群よりも平均約9倍遅れて癲癇となり、そして1匹の動物はSE後に9カ月遅れても癲癇にならかなった。
【0251】
本実験では、種々の用量の試験化合物(TC)、すなわち30、60、90および120mg/kg(TC30、TC60、T90およびTC120)の効果を前の実験と同じ計画を使用して試験した。処置はSEの発生から1時間後に開始し、そして動物は同じ薬剤用量で2回目の注射を用いて処置した。このSEの早期処置に、6日間のTC処置が続いた。この報告はSEから14日後に、4種の用量のTCが海馬、海馬傍回皮質、視床および扁桃で評価されるニューロン傷害、および自発的な癲癇性発作の潜伏期および頻度に及ぼす効果に関する。
【0252】
方法
動物
ジャンヴィエブリーディングセンター(Le Genest−St−lste、フランス)により提供されたオス成体のSprague−Dawleyラットを、制御された混んでいない標準条件下に20〜22℃で収容し(明/暗サイクル 午前7.00−午後7.00、点灯)、食事と水は自由に与えた。すべての動物実験は、1986年11月24日の欧州連合理事指令(European Communities Council Directive)(86/609/EEC)およびフランス農務省(ライセンスN゜67−97)の規則に従い行った。
【0253】
癲癇重積持続状態の誘導、試験化合物(TC)処置およびSRSの発生
すべてのラットは塩化リチウム(3meq/kg、i.p.、シグマ、セントルイス、ミズーリ州、米国)を受け、そして約20時間後、すべての動物はメチルスコポラミンブラミド(1mg/kg、s.c.、シグマ)も痙攣の末梢効果を制限するために投与された。SEは塩酸ピロカプリン(25mg/kg、s.c.、シグマ)をメチル−スコポラミンの30分後に注射することにより誘導した。TCの上昇用量効果は、5群のラットで実験した。動物はSEの発生から1時間後に、2.5mg/kgのDZP、i.m.、または30、60、90もしくは120mg/kgのTC(TC30、TC60、TC90、TC120)、i.p.を受けた。対照群はピロカルピンおよびTCの代わりに賦形剤を受けた。SEを生き残ったラットは、次いで最初のTC注射から約10時間後に2回目の1.25mg/kgのDZPのi.p.注射をDZP群に、または等用量のTCを朝に注射し、そしてさらに6日間、1日2回、TC処置(s.c.)下で維持し、一方、DZPラットは賦形剤注射を受けた。
【0254】
DZPおよび4用量のTCが癲癇発生に及ぼす効果は毎日、1日に10時間、動物をビデオで録画することにより調査した。ビデオ録画は4週間行い、この間、最初の発作の発生を記録し、ならびに全期間にわたる発作の総数を記録した。次いで動物のビデオ録画システムを切り、そしてさらに4週間、我々の動物施設で維持した後、全8週間の癲癇期間の後に屠殺された。発作を現さなかったラットは、5カ月間のビデオ録画後に屠殺された。
【0255】
細胞密度の定量はSE後に2回行った:第1群はSEから14日後に実験し、そして7DZP、8TC30、11TC60、10TC90、8TC120およびSEにはかけない8匹の対照からなった。SRSに対する潜伏期の実験に関して使用する第2群は、最初のSRSから8週間後、またはその遅れ中にSRSが見られない場合は5カ月目のいずれかに屠殺され、そして14DZP、8TC30、10TC60、11TC90、9TC120ラットからなった。この時、癲癇発生に関して実験した第2群の動物のニューロン計数は未だに進行中であるので、長期計数およびその実験の一部に関するデータは本報告に含まれない。
【0256】
ニューロン計数については、動物は1.8g/kgのペントバルビタール(Dolethal(商標)、ベトキノール(Vetoquinol)、ルアー、フランス)で深く麻酔をかけた。次いで脳を摘出し、そして凍結した。連続した20μmの切片を低温保持装置中で切り出し、数日間、風乾した後、チオニン染色を行った。細胞密度の定量は、ラット脳環椎の定位座標に従い、冠状切片上に10×10ボックスの1cm顕微鏡グリッドを用いて行った(Paxinos G,Watson C(1986)、ラット脳の定位座標(The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates)、第2版、アカデミック出版社、サンディエゴ)。計数の格子は目的の大脳構造のよく定めた領域に配置し、そして計数は各々1つの大脳構造について200−または400−倍に定めた顕微鏡倍率で行った。細胞の計数は、動物の処置について知らされていない1人の観察者により、各領域について3つの隣接切片の各スライドについて2回行った。各大脳構造で12の計数した場で得られた細胞数を平均した。この手順は、細胞数の過大評価を導く2重計数の結果から生じ得る潜在的な誤差を最少にするために使用した。格子の下部または右縁に接するニューロンは計数しなかった。10μmより大きい細胞体のニューロンのみを計数した。小さい細胞体の細胞は神経膠細胞と考え、そして計数しなかった。
【0257】
ニューロン傷害および癲癇発生について、群間の統計分析は分散の1元分析、続いてStatiscaソフトウェアを使用したpost−hoc DunnetまたはFisher検定により行った。
【0258】
結果
リチウム−ピロカルピン癲癇重積持続状態の行動的特性決定
体重250〜330gの全数143のSprague−Dawleyラットを、Li−ピロカルピン(Li−pilo)誘導型SEにかけた。これでは、10匹がSEを発症せず、133匹のラットが完全なLi−pilo SEの特徴を発症した。SEの行動的特徴は、li−pilo−DZPおよびli−pilo−TC群の両方で同一であった。ピロカルピン注射から5分以内で、ラットは下痢、起毛および他のコリン作用性刺激の兆候を現した。続く15〜20分の間、ラットは頭の上下運動、掻き毟り、咀嚼および調査行動を現した。再発性発作がピロカルピンの投与から約15〜20分で始まった。以前に記載されたように(Turski L,Ikonomidou C,Turski WA,
Bortolotto ZA、Cavalheiro EA(1989)総説:コリン作用性メカニズムおよび癲癇発生(Review:Cholinergic mechanism and epileptogenesis)。ピロカルピンにより誘導される発作:難治性癲癇の新規実験モデル,Synapse 3:154−171;Dube C,Boyet S,Marescaux C,Nehling A (2001)未成熟および成体ラットを対象とした癲癇のリチウム−ピロカルピンモデルの慢性期間中のニューロン損失と発作間のグルコース代謝との間の関係。Exp Neurol 167:227−241;Andrea V,Rigoulot MA,Koning E,Ferrandon A,Nehling A(2003)ラットを対象としたリチウム−ピロカルピンモデルで長期のプレガバリン処置は基底皮質を保護し、そして自発的発作の発生を遅らせる。Epilepsia 44:893−903)。後脚立ちおよび転倒がある頭および前脚ミオクローヌスのエピソードと結び付いたこれらの発作は、ピロカルピンから約35〜40分後にSEに進行した。SEにかけず、そしてリチウムおよび塩水を受けた対照群は、20匹のラットからなった。
【0259】
SEから14日後に細胞計数にかけられた57匹の動物群では、全部で13匹のラットがSE後最初の48時間で死んだ。死亡率の程度は処置で変動した:DZPラットの36%(4/11)、TC30ラットの33%(4/12)、TC60ラットの8%(1/12)、TC90ラットの0%(0/10)、そしてTC120ラットの33%(4/12)が死んだ。DZP群では、SE後最初の24時間に4匹のラットが死んだ。TC30の群では、SEから1日目に1匹のラットが死に、SEから24時間後までに1匹のラットが死に、そして48時間までに2匹のラットが死んだ。TC60ラット群では、1匹のラットがSE後48時間に死んだ。TC120ラット群ではSEから24時間後までに2匹のラットが死に、そして48時間後までに2匹が死んだ。
【0260】
SRSに対する潜伏期の試験および後期細胞計数にかけられた55匹の動物群では、SE後最初の48時間にわたる死亡率の程度は以下の通りであった:DZPラットの7%(1/14)、TC30ラットの27%(3/11)、TC60ラットの0%(0/10)、TC90ラットの0%(0/11)、そしてTC120ラットの0%(0/9)が死んだ。DZPラット群では、SE後最初の24時間に1匹のラットが死んだ。TC30群では、SE後24時間までに2匹のラットが死に、そしてSE後48時間までに1匹のラットが死んだ。
【0261】
早期フェイズの海馬および皮質における細胞密度(SEから14日後)
対照ラットと比較してDZPラットでは、ニューロン数が海馬のCA1領域で大きく減少したが(錐体細胞層において85%の低下)、CA3領域はひどい傷害の程度が低かった(40%の損失)(表1および図1)。歯状回ではDZPラットは門にかなりのニューロン損失を体験したが(65%)、顆粒細胞層は明白な傷害を示さなかった。同様な傷害の分布が腹部海馬に観察されたが、細胞計数はこの領域については行わなかった。
【0262】
視床では、ニューロン損失は背側正中中央および側方、側背内側背側および中央内側核で中程度であり(それぞれ18、24、40および34%の低下)、背側正中核でより顕著(49%)であり、そして側背核の腹側方部分で主要であった(90%)(表1および図2)。扁桃では、ニューロン損失は内側腹後方核で中程度であり(38%)、そして基底側方および内側背側前方核でさらに顕著であった(それぞれ73%および53%の低下)。中央核にニューロン傷害は無かった(表1および図3)。
【0263】
梨状皮質では、ニューロン損失はもはや実際には見えない層IIIでのほぼ総数であり(94%)、そして対照の塩水処置ラットに比べてDZPラットでは背側および腹側層IIでそれぞれ66および89%に達した。背側内側嗅領皮質では、層IIおよびIII−
IVがわずかに傷害を受け(それぞれ18および24%)、そして腹側層IIおよびIII/IVでは、傷害はそれぞれ22および74%に達した(以下の表1および図4)。
【0264】
【表1】

【0265】
TC処置動物の海馬では、細胞の損失はCA1錐体層でDZPラットに比べて有意に減少した。この減少はTC30、60または90ラットで顕著であり(36〜47%の細胞
損失)、そしてTC120群で優勢であった(12%の細胞損失)。この差異はすべてのTC用量で統計的に有意であった(表1および図1)。CA3錐体層では、試験化合物により誘導されるわずかな神経保護に対する傾向があったが、120mg/kg用量のみであり、DZP群との差異は有意ではなかった。歯状回では、門での細胞損失はDZPおよびTC30、60および90群で類似し(61〜66%の低下)、そしてTC120群(53%のニューロン損失)ではDZP動物(66%の低下)に比べて、傷害の減少に対するわずかな傾向があった。これらの差異は統計的に有意ではなかった。
【0266】
視床では、ニューロン損失はDZPおよびTC30およびTC60ラットで同様であった。TCは側背内側背側核で60mg/kg用量でも有意に保護的であり、2つの最高用量、90および120mg/kgですべての視床核で有意に保護的であったが、差異はTC90ラットの背側正中中央および中央内側核で有意に達しなかった。TC120ラットでは、ニューロン低下はDZPラットに比べてかなり減少した。これは4〜19%の範囲であり、そして側背内側背側核を除いてニューロンの数はもはや対照動物とは有意に異ならなかった(表1および図2)。扁桃において、TCは30mg/kg用量で基底外側核では有意に保護的であり、そして60mg用量で内側背側前方核でも有意に保護的であった。最高用量で、TCは大いに神経保護的であり;ニューロン数は対照レベルともはや有意に異ならず、そしてすべての扁桃核で対照レベルの86〜99%に達した(表1および図3)。
【0267】
大脳皮質では、TCの処置はDZP処置に比べて30mg/kgの用量で任意の皮質領域を有意に保護しなかった。60mg/kgでTCは背側梨状皮質の層IIのみでニューロン損失を有意に低下した(DZP群の66%に比べて25%の低下)。90および120mg/kgでTCはDZP処置に比べて梨状皮質のすべての3つの領域を有意に保護し、そして最高用量のTC、120mg/kgではニューロン密度はたとえ梨状皮質、背側層IIおよびIIIでも(ここでDZP群はニューロン集団はほとんど全部が除去された)対照レベルの78〜96%に達した。背側および腹側内側嗅領皮質のすべての層で、2つの最低用量のTC、30および60mg/kgは、いかなる神経保護も提供しなかった。90mg/kgのTCは腹側内側嗅領皮質の層IIおよびIII/IVを有意に保護した(DZP群の19および73%と比べて、4および17%の傷害が背側部分の層IIおよびII/IVおよび腹側部分の層IIに残った)。TCの最高用量、120mg/kgで内側嗅領皮質のすべての部分、背側および腹側の両方が保護され、そしてこれらの領域のニューロン数は、もはや対照のレベルと有意に異ならなかった(DZP群の27〜81%に比べて、85〜94%のニューロンが生存した)。
【0268】
再発性発作に対する潜伏期および頻度
自発的発作に対する潜伏期は、DZP群(14ラット)で15.5±2.3日の平均値に達し、そしてTC30群(8ラット)で同様であった(11.6±2.5日)。より高濃度のTCで、動物は短期および長期潜伏期のサブグループに再分割することができた。短期潜伏期はSE後40日よりも短い期間と考えた。何匹かのラットは、DZPおよびTC群で記録される期間に類似する最初の自発的発作に対する潜伏期を現したが、この短い潜伏期値を現すラットの数はTC濃度の上げるにつれて減少した。すなわち30mg/kgで、70%のラット(7/10)が発作に対する短期潜伏期性を有したが、90および120mg/kgで、このパーセントはそれぞれ36%(4/11)および11%(1/9)に達した(以下の表2および図5)。
【0269】
【表2】

【0270】
TC60、90および120群では、長期潜伏期のラットの平均値は同様であり、そして52〜85日であった。最後に2つの最高用量のTCで、我々はSE後150日の期間にわたりいかなる発作も発症しなかったラットの割合を確認できた。非癲癇性ラットの割合は、両用量のTCで45%に達した。
【0271】
自発的発作の頻度は、4週間の記録にわたり同様であった。これはDZPおよびTC30群で高くなる傾向を示すが、TC60、90および120群で低かった(図6)。これらの差異は個々の1週間の頻度のレベルでは統計的に有意に達しなかったが、4週間にわたる発作の総数および平均については有意に達した。
【0272】
発作の数も、最初の自発的発作に対する潜伏期間に従いプロットした。短い潜伏期間の動物は、長い潜伏期のラットよりも4週間の記録にわたり2〜3倍多い発作を示す傾向を表した。恐らくTC120動物の短い潜伏期間のサブグループに1匹の動物がいただけであることから、ANOVAはいかなる有意性も示さなかったので、統計分析は行うことができなかった(図7)。しかしすべての潜伏期間の値を発作の数に対してプロットした場
合、−0.4の相関係数で直線を導く有意な逆相関があった(図8)。
【0273】
この分析を仕上げるために、さらに2つの測定が行われる。第1の測定は、ビデオ録画され、最初の自発的発作から2カ月間追跡されたか、または5カ月目に屠殺されて脳の傷害の程度と場所と、自発的発作に対する発生および/または潜伏期との間の相関の可能性を実験した動物についての細胞計数である。第2は、我々が5カ月目に「非癲癇性」と言明した動物に発作が無いままかどうかを実験するために、1群のラットで1年間、発作発生の追跡を行うことである。
【0274】
本実験の結果は、Li−pilo−誘導型SEの発生から1時間後に始めるTCでの処置が、海馬のCA1錐体細胞層および腹側および背側梨状および内側嗅領皮質のすべての層で神経保護特性を有することを示す。TCは視床および扁桃核も保護する。しかしTCはCA1、1つの視床および1つの扁桃核を除いて、TC30mg/kgの用量では保護的ではない。60mg/kgの用量で、背側梨状皮質の層IIおよび第2扁桃体核も保護される。90および120mg/kgで、薬剤は海馬CA3および歯状回の門を除き、実験したほとんどの脳領域を保護する。この2つの構造に加えて、側背腹外側視床核は、ニューロン数が120mg/kgTCの用量で対照と有意に異なるままである唯一の領域である。これらのデータから、TCの大変有力な神経保護特性が明らかに現れる。この分子はLi−piloにより誘導される辺縁系の癲癇の回路に属するほとんどの領域、すなわち海馬、視床、扁桃および海馬傍回皮質でニューロンの死亡を保護するようである。これらは我々がLi−pilo処置ラットにおける癲癇発生の過程で、MRIシグナルを検出したすべての領域である(Roch C,Leroy C,Nehling A,Namer IJ(2002a)成体ラットを対象とした側頭葉癲癇のリチウム−ピロカルピンモデルの実験に対する磁気共鳴撮影法の貢献。Epilepsia 43:325−335)。TCにより効果的に保護されないわずか2つの領域は、CA3錐体細胞層および歯状回の門である。後者の領域は急速および徹底的な細胞傷害を受け(Andre V,Marescaux C,Nehlig A,Fritschy JM(2001)海馬GABA作用系の改変は、側頭葉転換のリチウム−ピロカルピンモデルにおける自発的な再発性発作の発症に貢献する。Hippocampus 11:452−468;Roch C,Leroy C,Nehling A,Namer IJ(2002a)成体ラットを対象とした側頭葉癲癇のリチウム−ピロカルピンモデルの実験に対する磁気共鳴撮影法の貢献。Epilepsia 43:325−335)、そして我々が以前の実験で使用したいずれの神経保護もこの構造を保護できなかった。また我々は以前の実験に基づき、この構造がLi−piloモデルでの癲癇発作の開始および維持に重要な領域と同定した(Dube C,Marescaux C,Nehlig A(2000)リチウム−ピロカルピン誘導型癲癇発生中に、未成熟および成体ラットの脳で起こる形成性変化の理解に対する代謝的および神経病理学的取り組み。Epilepsia 41(追補6):S36−S43)。
【0275】
明らかに、本データはたとえ傷害がこの領域で極めて顕著なままでも癲癇発生を防止することができることを示す。ビデオ記録した動物群についての長期の細胞計数は、この領域の傷害の程度がこのモデルで癲癇発生に重要であるかどうかを示すことができる。
【0276】
処置は30mg/kgの用量で最初の自発的発作に対する潜伏期に影響を及ぼさなかった。より高い3つの用量で、ある割合の動物はDZPまたはTC30ラットのように早く癲癇を発症するが、このサブグループの相対的重要性は使用したTCの用量に対して逆相関した。サイズが一定の別のサブグループ(群あたり2〜4匹の動物)は、4〜6倍長い潜伏期間後に癲癇を発症したが、2つの最高用量の薬剤で4〜5匹のラットは5カ月後に癲癇とならず、すなわち短期潜伏期の約10倍の期間、および長期潜伏期の2〜3倍であった。癲癇の発症におけるこの遅れは、動物の基底皮質におけるニューロン保護の数と相関するかもしれない。この仮定は、SEから14日後の短期ニューロン計数にかけた動物の基底皮質における神経保護の程度に、我々がいくつかの不均一性に注目したという事実に基づく。しかし現時点で、我々は癲癇発生の実験のために使用した動物におけるニューロン計数を行っておらず、したがって基底皮質中で生存するニューロンの数と、癲癇発生の率またはさらに発生との間の潜在的関連については結論を引き出せない。
【0277】
本実験で得られたデータは、60mg/kg用量の試験化合物(TC)が海馬および基底皮質を神経傷害から保護し、そして再発性発作の発生を遅らせることを報告するこの群からの事前の実験と並ぶ(実施例1を参照にされたい)。それらは基底皮質の保護が癲癇のリチウム−ピロカルピンモデルにおける疾患修飾効果の誘導に鍵となり得る因子であることを確認する。癲癇プロセスのイニシェーターとして基底皮質の重要な役割は、リチウム−ピロカルピンモデルにおいて、我々のグループにより以前に証明された(Andrea V,Rigoulot MA,Koning E,Ferrandon A,Nehling A(2003)ラットを対象としたリチウム−ピロカルピンモデルで長期のプレガバリン処置は基底皮質を保護し、そして自発的発作の発生を遅らせる。Epilepsia 44:893−903;Roch C,Leroy C,Nehling A,Namer IJ(2002a)成体ラットを対象とした側頭葉癲癇のリチウム−ピロカルピンモデルの実験に対する磁気共鳴撮影法の貢献。Epilepsia 43:325−335;Roch C,Leroy C,Nehling A,Namer IJ(2002b)P21−日齢ラットにおける側頭葉癲癇の発症に関する皮質損傷の予想値:リチウム−ピロカルピンモデルを使用したMRIの取り組み。Epilepsia 43:1129−1136)。
【0278】
実施例2に関する参考文献
Andre V,Marescaux C,Nehlig A,Fritschy JM(2001)海馬GABA作用系の改変は、側頭葉癲癇のリチウム−ピロカルピンモデルにおける自発的な再発性発作の発症に貢献する。Hippocampus 11:452−468。
・Andre V,Rigoulot MA,Koning E,Ferrandon A,Nehling A(2003)ラットを対象としたリチウム−ピロカルピンモデルで長期のプレガバリン処置は基底皮質を保護し、そして自発的発作の発生を遅らせる。Epilepsia 44:893−903。
・Cavalheiro EA(1995)癲癇のピロカルピンモデル。Ital J Neurol Sci 16:33−37。
・Dube C,Marescaux C,Nehlig A(2000)リチウム−ピロカルピン誘導型癲癇発生中に、未成熟および成体ラット脳で起こる形成性変化の理解に対する代謝的および神経病理学的取り組み。Epilepsia 41(追補6):S36−S43
・Dube C,Boyet S,Marescaux C,Nehling A(2001)未成熟および成体ラットを対象とした癲癇のリチウム−ピロカルピンモデルの慢性期間中のニューロン損失と発作間のグルコース代謝との間の関係。Exp Neurol 167:227−241。
・Paxinos G,Watson C(1986)、定位座標中のラット脳(The
Rat Brain in Stereotaxic Coordinates)、第2版、アカデミック出版社、サンディエゴ。
・Roch C,Leroy C,Nehling A,Namer IJ(2002a)成体ラットを対象とした側頭葉癲癇のリチウム−ピロカルピンモデルの実験に対する磁気共鳴撮影法の貢献。Epilepsia 43:325−335。
・Roch C,Leroy C,Nehling A,Namer IJ(2002b)P21−日齢ラットにおける側頭葉癲癇の発症に関する皮質損傷の予想値:リチウム−ピロカルピンモデルを使用したMRIの取り組み。Epilepsia 43:1129−1136。
・Turski L,Ikonomidou C,Turski WA,Bortolotto ZA,Cavalheiro EA(1989)総説:コリン作用性メカニズムおよび癲癇発生。ピロカルピンにより誘導される発作:難治性癲癇の新規実験モデル,Synapse 3:154−171。
【0279】
以下の実施例で指す試験化合物(TC)は、式7の化合物であり、そして他の上記実施例1および2と同じ化合物である。
【0280】
実施例3
この実験の目的は、臨床的に関連する用量で健康な成人男性に単回、および繰り返し経口投与された後の試験化合物(TC)の薬物動態学(PK)を評価することであった。
方法
【0281】
2回のシングル−センター(single−center)、プラセボ−制御、二重−盲検、上昇−用量実験を、18および45歳の健康な男性を対象として行った。実験1(N=70)では、個体を試験化合物(TC)またはプラセボの単回用量に無作為に割り当てた。上昇させた用量は、100、250、400、750、1000、1250および1500mgとして受けた。PKのパラメーターは投与から3日後に集めた血漿および尿サンプルから予想した。実験2(N=53)は4種の用量群(100、250、500または750mg)で試験化合物(TC)の反復投与のPKを評価した。各群で、12名の個体を薬剤またはプラセボでの1週間にわたるq12h処置に割り当て、そして14日後の洗浄期間後に交換した。PKパラメーターは1および7日の血漿および尿から予想した。
【0282】
結果:
単回投与:試験化合物(TC)は経口投与後に急速に吸収された。CmaxおよびAUC0−∞は100〜1500mgの範囲にわたる用量に比例して上昇した。平均tmaxは1.3〜2.7時間の範囲であった。平均t1/2(11.5〜13.9時間)、CL/F(2.87〜3.67L/h)およびVd/F(52.1〜66.3L/h)値は、すべての7用量群で同様であった。
【0283】
反復投与:試験化合物(TC)の血漿濃度は単回投与の半減期から予想されるように3〜4日後に定常状態に達した。平均tmaxは投与から1.3〜1.8時間後に起こった。定常状態での平均t1/2(11.9〜12.8h)およびCL/F(3.40〜3.78L/h)値は、1日目および実験1の単回投与後のPKパラメーターに匹敵した。定常状態CmaxおよびAUC0−12は用量に比例して増加した。
【0284】
予想どおり、試験化合物(TC)の中程度の蓄積があった:CmaxおよびAUC0−12は7日対1日で約2倍高かった(P<0.001)。平均CLは試験化合物(TC)が平均経口クリアランスの<5%であったことを予想し、試験化合物(TC)排除の主要なメカニズムとして非腎臓クリアランスが示唆された。
【0285】
結論:
試験化合物(TC)は単回(100〜1500mg)および反復(100〜750mgbid)投与後に直線PKを表した。これは急速に吸収され、そして11.5〜13.9hの平均予想半減期を有し、bid投与を可能とした。q12h投与後、試験化合物(TC)は2倍蓄積され、そして主に非腎臓経路により排除された。
【0286】
実施例4
試験化合物(TC)を用いた処置計画の予告的実施例:
52歳の男性は自宅で見られた発作に襲われた後、評価のために入院する。これはこの患者が襲われた2回目の発作である。発作は強直間代行動および幾らかの尿失禁を伴う意識の喪失を特徴とする。EEGは発作疾患について陽性である。病院で行ったMRIは、CNSの外見上の構造的異常を示さない。患者の担当医師は突発性癲癇と診断し、そしてさらなる発作を防止し、そして患者の癲癇の拡大および悪化を防ぐために、十分な用量の試験化合物(TC)を提供する両方のために、1日に2回、250mgの用量で試験化合物(TC)の処置計画を開始する。患者は処置計画に十分耐え、そして追跡中、続く6カ月間にわたりさらに発作を起こすことはない。追跡EEGはこの疾患の進行を示さない。
【0287】
実施例5
試験化合物(TC)を用いた処置計画の予告的実施例:
23歳の男性兵士は爆弾断片から頭を貫通する創傷のために入院する。断片は脳の右前頭葉に入り、そして脳に約1インチ貫通した。断片を外科的に取り出し、そして患者は最少の神経学的機能不全で十分に回復する。患者には発作障害の個人歴または家族歴が無く、そして手術後に発作障害のいかなる証拠も現さず、そしてEEGは発作活性について陰性である。患者の担当医師は、損傷の結果として発作障害の発症を防止するために、1日に2回、500mgの用量で試験化合物(TC)を用いた処置を直ちに開始する。予防的処置は1年間続き、そして患者の追跡では発作障害の発症の証拠は無いことが示される。患者はさらに1年間追跡され、そして発作障害の発症の証拠は無いことが示される。
【0288】
実施例6
試験化合物(TC)を用いた処置計画の予告的実施例:
37歳の女性は交通事故による閉塞性頭部外傷に襲われた後に入院する。患者にはいかなる種類の発作障害の病歴が無く、そして個人の病歴または家族歴は本質的に陰性である。患者の頭部は車のダッシュボードを打ち、そして彼女は事故後30分間、意識を失った。CTスキャンは脳の左前頭領域に小さい挫傷を示し、そして患者は振とうを伴う閉塞性頭部外傷を有すると診断される。患者の担当医師は、患者の前頭葉に対する損傷の結果として将来、発作障害の発症の可能性を案じる。患者の担当医師は、発作障害の発症を防止するために、1日に2回、300mgの用量で試験化合物(TC)を用いた処置を直ちに開始する。患者は1年間追跡され、そして発作の発症の証拠は無いことが示される。試験化合物の用量を次第に少なくし、そして停止し、そして患者はその後2年間の追跡で発作は無いままである。
【0289】
実施例7
試験化合物(TC)を用いた処置計画の予告的実施例:
74歳の女性は、彼女が右側の脱力の生じ、そして喋れなくなった時、自宅でのエピソード後に入院する。MRIは左中央大脳動脈脳卒中を示す。患者には発作または他の神経学的問題に関する家族歴は無い。日常的な補助介護に加えて、患者の担当医師は、脳卒中回復期における発作障害の発症を防止するために、1日に2回、250mgの用量で試験化合物(TC)の処方を開始する。患者は続いて1年後まで診察され、そして発作障害の発症の証拠は無いことが示され、そして投薬療法を次第に少なくする。患者は2年間の追跡で発作は無いままである。
【0290】
実施例8
試験化合物(TC)を用いた処置計画の予告的実施例:
それまでは健康であった7歳の男児は、家庭でウイルス上気道感染に2次的な105度の発熱という理由で繰り返し発作が起こった後に病院に来院すれる。患者はウイルス感染から回復し、そして発作障害がある兆候を示さない。医師は熱性痙攣と診断する。男児の
体重は27キログラムであり、そして医師は7.1mg/kg/日の用量で試験化合物の処方を開始し、したがって発作障害の発症を防ぐために、少年には1日2回、100mgが始まる。患者は追跡して診察され、そして1年間発作が無い。投薬療法は2年間続けられ、そして次第に減少させる。患者はに3年間の追跡で発作障害の証拠は無い。
【0291】
実施例9
試験化合物(TC)を用いた処置計画の予告的実施例:
47歳の男性は右前頭葉前部AVMの切除のために入院する。患者には発作障害の個人的病歴または家族歴はない。神経外科的処置の前に、患者の担当医師は手術後の発作障害の発症の危険性を最少とするために、1日2回、200mgの用量で試験化合物の処方を開始する。患者は処置後1年間追跡して診察され、そして投薬療法を減少し、そして停止する。患者は快方にむかい、そして3年後の追跡で発作障害を発症している証拠はない。
【0292】
本発明は本出願に記載する特定の態様または実施例の用語に限定されず、これらは本発明の個別の観点の1つの具体的説明と意図される。本発明の多くの修飾および変更は、当業者には明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなく作成することができる。本発明の範囲内で機能的に均等な方法および組み合わせが、本明細書に挙げたものに加えて、前述の記載、実施例および添付図面から当業者には明らかであろう。そのような修飾および変更は添付する特許請求の範囲内にあることを意図している。本発明は添付の特許請求の範囲の用語により、そのような特許請求の範囲に与えられる均等物の全範囲と共に限定される。
【0293】
引用文献
本明細書に引用するすべての文献は、それらの全部が引用により本明細書に編入され、そして各公報または特許または特許出願が具体的または個別にすべての目的についてその全部を引用により包含されるように、ある程度まですべての目的に編入される。
【0294】
本明細書の参考文献の検討は、著者により作成される主張を単に要約することを意図し、そして任意の参考文献が従来技術を構成するという承認は得ていない。出願人は引用する参考文献の正確さおよび適切さを調べる権利を保有する。
【図面の簡単な説明】
【0295】
【図1】li−pilo SEから14日後に計数した海馬の種々の領域のニューロン数に及ぼすTCの上昇用量の効果を示すグラフである。値は目的の各領域中のニューロン細胞体の数±S.E.Mとして表す。
【図2】li−pilo SEから14日後に計数した扁桃の種々の核中のニューロン数に及ぼすTCの上昇用量の効果を示すグラフである。値は目的の各領域中のニューロン細胞体の数±S.E.Mとして表す。
【図3】li−pilo SEから14日後に計数した視床の種々の核中のニーロン数に及ぼすTCの上昇用量の効果を示すグラフである。値は目的の各領域中のニューロン細胞体の数±S.E.Mとして表す。
【図4】li−pilo SEから14日後に計数した皮質の種々の領域中のニーロン数に及ぼすTCの上昇用量の効果を示すグラフである。値は目的の各領域中のニューロン細胞体の数±S.E.Mとして表す。
【図5】最初の自発的な発作に対する潜伏期間に及ぼすTCの上昇用量の効果を示すグラフである。値は各群での平均潜伏期間±S.E.Mとして表す。
【図6】4週間にわたりビデオ録画した自発的な発作の頻度に及ぼすTCの上昇用量の効果を示すグラフである。値は発作の数の平均±S.E.Mとして表す。合計は4週間のビデオ録画中に観察された発作の総数を表し、そして平均は1週間あたりの発作の平均数を表す。Anova検定は、発作の総数(p=0.045)および1週間あたりの発作の平均数(p=0.045)に及ぼす処置効果を示した。
【図7】最初の自発的な発作に対する潜伏期間に従いプロットした4週間にわたるビデオ録画した発作の総数を示す(SL=短い潜伏期間、LL=長い潜伏期間)。値は各サブグループの発作の平均数±S.E.Mとして表す。ANOVA検定はこの処置の有意な効果を示さなかった。
【図8】最初の自発的な発作に対する潜伏期間と続いて4週間の間に観察された発作の総数との間の相関を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癲癇発生を処置する方法であって、抗癲癇発生剤(AEGD)での処置が必要な患者に、式(I)および式(II):
【化1】

[式中:
フェニルはXで、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される1から5個のハロゲン原子で置換され;そして
、R、R、R、RおよびRは独立して、水素およびC−Cアルキルからなる群から選択され;ここでC−Cアルキルは場合によりフェニルで置換されてもよい(ここでフェニルは場合によりハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノからなる群から独立して選択される置換基で置換されてもよい)]、からなる群から選択される治療に有効な量の化合物、またはその製薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを投与することを含んでなる上記処置方法。
【請求項2】
Xが塩素である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Xがフェニル環のオルト位で置換されている請求項1に記載の方法。
【請求項4】
、R、R、R、RおよびRが水素から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
癲癇発生を処置する方法であって、抗癲癇発生剤(AEGD)での処置が必要な患者に、式(I)および式(II):
【化2】

[式中:
フェニルはXで、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される1から5個のハロゲン原子で置換され;そして
、R、R、R、RおよびRは独立して、水素およびC−Cアルキルからなる群から選択され;ここでC−Cアルキルは場合によりフェニルで置換されてもよい(ここでフェニルは場合によりハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノからなる群から独立して選択される置換基で置換されてもよい)]、からなる群から選択される治療に有効な量のエナンチオマー、またはその製薬学的に許容され得る塩もしくはエステル、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが優勢である)を投与することを含んでなる上記処置方法。
【請求項6】
Xが塩素である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Xがフェニル環のオルト位で置換されている請求項5に記載の方法。
【請求項8】
、R、R、R、RおよびRが水素から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項9】
式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが、約90%以上の程度まで優勢である請求項5に記載の方法。
【請求項10】
式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが、約98%以上の程度まで優勢である請求項5に記載の方法。
【請求項11】
式(I)および式(II)からなる群から選択されるエナンチオマーが、式(Ia)および式(IIa):
【化3】

[式中:
フェニルはXで、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される1から5個のハロゲン原子で置換され;そして
、R、R、R、RおよびRは独立して、水素およびC−Cアルキルからなる群から選択され;ここでC−Cアルキルは場合によりフェニルで置換されてもよい(ここでフェニルは場合によりハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノからなる群から独立して選択される置換基で置換されてもよい)]
からなる群から選択されるエナンチオマーである請求項5に記載の方法。
【請求項12】
Xが塩素である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Xがフェニル環のオルト位で置換されている請求項11に記載の方法。
【請求項14】
、R、R、R、RおよびRが水素から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項15】
式(Ia)および式(IIa)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが、約90%以上の程度まで優勢である請求項11に記載の方法。
【請求項16】
式(Ia)および式(IIa)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが、約98%以上の程度まで優勢である請求項11に記載の方法。
【請求項17】
式(I)および式(II)からなる群から選択されるエナンチオマーが、式(Ib)および式(IIb):
【化4】

またはその製薬学的に許容され得る塩もしくはエステル形から選択されるエナンチオマーである、請求項5に記載の方法。
【請求項18】
式(Ib)および式(IIb)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが、約90%以上の程度まで優勢である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
式(Ib)および式(IIb)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが、約98%以上の程度まで優勢である請求項17に記載の方法。
【請求項20】
患者に抗癲癇剤(AEGD)での処置を必要とさせる素因子(1つもしくは複数)が:CNSに対する任意の種類の損傷または外傷;CNS損傷の危険がある神経外科的処置、活動、例えば格闘技、自動車または乗馬レース、およびボクシングを含む接触スポーツ;脊髄外傷;CNSの感染;酸素欠乏;脳卒中(CVA);一過性脳虚血発作(TIA)の病歴;頸動脈狭窄;アテローム硬化の血管疾患の病歴;肺閉塞の病歴;末梢血管疾患;CNSに影響を及ぼす自己免疫疾患、例えば狼瘡;出産傷害、例えば周産期仮死;心停止;治療的または診断的な血管の外科的処置、例えば頸動脈内膜切除法または大脳血管撮影法;低血圧;塞栓、高または低還流からCNSへの損傷;低酸素;AEGDに応答することが知られている障害に対する既知の遺伝的素因;CNSの損傷を占める場所;脳腫瘍、例えば多形グリア芽腫;CNS中または周辺の出血(bleeding)または出血(hemorrhage)、例えば大脳内出血または硬膜下血腫;脳水腫;熱性痙攣;高体温;毒性(toxic)または有毒性(poisonous)剤に対する暴露;薬剤中毒または離脱、例えばコカイン、メタンフェタミンもしくはアルコール;発作障害または癲癇に関連する発作様の神経障害または発作関連障害の家族歴、癲癇重積持続状態の病歴;発作の閾値を下げる薬剤での現行処置、例えば炭酸リチウム、トラジンもしくはクロザピン;患者が抗癲癇発生剤での処置が必要である代理マーカーまたは生物マーカーからの証拠、例えば海馬硬化症を示すMRIスキャン、神経分解産物の血清レベルの上昇、毛様体神経栄養因子(CNTF)レベルの上昇、または発作障害または癲癇関連発作様の神経学的障害または類似の発作関連障害を示唆するEEG、からなる群から選択される請求項1または5に記載の方法。
【請求項21】
患者に抗癲癇発生剤(AEGD)での処置を必要とさせる素因子(1つもしくは複数)が:閉鎖または貫通している頭部外傷;神経外科的処置;頸動脈狭窄、脳卒中または他の大脳血管事故(CVA);癲癇重積持続状態およびCNSの損傷を占める場所からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
上記素因子(1つもしくは複数)が閉鎖型頭部外傷または貫通している頭部外傷または神経外科的処置である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
上記素因子(1つもしくは複数)が脳卒中、他の大脳血管事故(CVA)、頸動脈狭窄の存在または一過性脳虚血発作である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
上記素因子が癲癇重積持続状態である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記化合物(またはエナンチオマー)またはその製薬学的に許容され得る塩またはエステルが、1もしくは複数の他の化合物または治療薬との組み合わせ投与で投与される、請求項1または5に記載の方法。
【請求項26】
上記1もしくは複数の他の化合物または治療薬が、以下の特性:抗酸化活性;NMDA受容体拮抗作用;内因性のGABA阻害を増す能力;NOシンターゼインヒビター活性;鉄結合能、例えば鉄キレーター;カルシウム結合能、例えばCa(II)キレーター;亜鉛結合能、例えばZn(II)キレーター;ナトリウムもしくはカルシウムイオンチャンネルを遮断する能力;カリウムもしくはクロライドイオンチャンネルを開く能力の1もしくは複数を有する化合物、物質濫用の処置に有用な治療薬からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
上記1もしくは複数の化合物が、抗癲癇薬(AED)からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
上記抗癲癇薬(AED)が;カルバマゼピン、クロバザム、クロナゼパム、エトスクシミド、フェルバメート、ガバペンチン、ラモチギン、レベチラセタム、オキカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、プレガバリン、プリミドン、レチガビン、タランパネル、チアガビン、トピラメート、バルプロエート、ビガバトリン、ゾニサミド、ベンゾジアゼピン、バルビツレートまたは鎮静催眠薬からなる群から選択される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
式(I)および式(II):
【化5】

[式中:
フェニルはXで、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される1から5個のハロゲン原子で置換され;そして
、R、R、R、RおよびRは独立して、水素およびC−Cアルキルからなる群から選択され;ここでC−Cアルキルは場合によりフェニルで置換されてもよい(ここでフェニルは場合によりハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノからなる群から独立して選択される置換基で置換されてもよい)]、からなる群から選択される製薬学的に有効な量のエナンチオマー、またはその製薬学的に許容され得る塩もしくはエステル、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが優勢である)、および製薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項30】
治療に有効な剤形の請求項29に記載の製薬学的組成物を、それらの適切な使用のための情報または使用説明と一緒に適切な包装または容器中に含んでなるキット。
【請求項31】
治療に有効な量が約5.7mg/Kg/日〜約42.9mg/Kg/日である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項32】
治療に有効な量が約6.4mg/Kg/日〜約35.7mg/Kg/日である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項33】
治療に有効な量が約7.1mg/Kg/日〜約28.6mg/Kg/日である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項34】
治療に有効な量が約7.9mg/Kg/日〜約21.4mg/Kg/日である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項35】
治療に有効な量が約8.6mg/Kg/日〜約17.1mg/Kg/日である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項36】
上記患者が上記投与時に癲癇を発症していなかった、請求項1または5に記載の方法。
【請求項37】
上記患者が上記投与時に癲癇を発症する危険性がある、請求項1または5に記載の方法。
【請求項38】
治療に有効な量が約400mg/日〜約3000mg/日である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項39】
治療に有効な量が約450mg/日〜約2500mg/日である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項40】
治療に有効な量が約500mg/日〜約2000mg/日である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項41】
治療に有効な量が約550mg/日〜約1500mg/日である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項42】
治療に有効な量が約600mg/日〜約1200mg/日である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項43】
上記の治療的量が上記患者における癲癇発生プロセスの処置が進行するにつれて次第に
減少する、請求項1または5に記載の方法。
【請求項44】
上記化合物(またはエナンチオマー)またはその製薬学的に許容され得る塩もしくはエステルと組み合わせて投与される上記1もしくは複数の他の化合物または治療薬の量が、上記患者の癲癇発生プロセスの処置が進行するにつれて進行的に減少する、請求項25、26、27または28に記載の方法。
【請求項45】
癲癇を処置する方法であって、抗癲癇剤(AED)での処置が必要な患者に、式(I)および式(II):
【化6】

[式中:
フェニルはXで、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される1から5個のハロゲン原子で置換され;そして
、R、R、R、RおよびRは独立して、水素およびC−Cアルキルからなる群から選択され;ここでC−Cアルキルは場合によりフェニルで置換されてもよい(ここでフェニルは場合によりハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノからなる群から独立して選択される置換基で置換されてもよい)]、からなる群から選択される約5.7mg/kg/日〜約43.0mg/kg/日の用量の化合物、またはその製薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを投与することを含んでなる上記処置方法。
【請求項46】
Xが塩素である請求項45に記載の方法。
【請求項47】
Xがフェニル環のオルト位で置換されている請求項45に記載の方法。
【請求項48】
、R、R、R、RおよびRが水素から選択される請求項45に記載の方法。
【請求項49】
癲癇を処置する方法であって、抗癲癇剤(AED)での処置が必要な患者に、式(I)および式(II):
【化7】

[式中:
フェニルはXで、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される1から5個のハロゲン原子で置換され;そして
、R、R、R、RおよびRは独立して、水素およびC−Cアルキルからなる群から選択され;ここでC−Cアルキルは場合によりフェニルで置換されてもよい(ここでフェニルは場合によりハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノからなる群から独立して選択される置換基で置換されてもよい)]、からなる群から選択される約5.7mg/kg/日〜約43.0mg/kg/日の用量のエナンチオマー、またはその製薬学的に許容され得る塩もしくはエステル、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが優勢である)を投与することを含んでなる上記処置方法。
【請求項50】
Xが塩素である請求項49に記載の方法。
【請求項51】
Xがフェニル環のオルト位で置換されている請求項49に記載の方法。
【請求項52】
、R、R、R、RおよびRが水素から選択される請求項49に記載の方法。
【請求項53】
式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが、約90%以上の程度まで優勢である請求項49に記載の方法。
【請求項54】
式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが、約98%以上の程度まで優勢である請求項49に記載の方法。
【請求項55】
式(I)および式(II)からなる群から選択されるエナンチオマーが、式(Ia)および式(IIa):
【化8】

[式中:
フェニルはXで、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される1から5個のハロゲン原子で置換され;そして
、R、R、R、RおよびRは独立して、水素およびC−Cアルキルからなる群から選択され;ここでC−Cアルキルは場合によりフェニルで置換されてもよい(ここでフェニルは場合によりハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノからなる群から独立して選択される置換基で置換されてもよい)]
からなる群から選択されるエナンチオマーである、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
Xが塩素である請求項55に記載の方法。
【請求項57】
Xがフェニル環のオルト位で置換されている請求項55に記載の方法。
【請求項58】
、R、R、R、RおよびRが水素から選択される請求項55に記載の方法。
【請求項59】
式(Ia)および式(IIa)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが、約90%以上の程度まで優勢である請求項55に記載の方法。
【請求項60】
式(Ia)および式(IIa)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが、約98%以上の程度まで優勢である請求項55に記載の方法。
【請求項61】
上記癲癇が、部分発作、全身発作および分類されない癲癇性発作からなる群から選択される発作を特徴とする、請求項45または49に記載の方法。
【請求項62】
式(I)および式(II):
【化9】

[式中:
フェニルはXで、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される1から5個のハロゲン原子で置換され;そして
、R、R、R、RおよびRは独立して、水素およびC−Cアルキルからなる群から選択され;ここでC−Cアルキルは場合によりフェニルで置換されてもよい(ここでフェニルは場合によりハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノからなる群から独立して選択される置換基で置換されてもよい)]、からなる群から選択される製薬学的に有効な量のエナンチオマー、またはその製薬学的に許容され得る塩もしくはエステル、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが優勢である)、および製薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項63】
治療に有効な剤形の請求項62に記載の製薬学的組成物を、それらの適切な使用のための情報または使用説明と一緒に適切な包装または容器中に含んでなるキット。
【請求項64】
投与される用量が約6.4mg/Kg/日〜約35.7mg/Kg/日である、請求項45または49に記載の方法。
【請求項65】
投与される用量が約7.1mg/Kg/日〜約28.6mg/Kg/日である、請求項45または49に記載の方法。
【請求項66】
投与される用量が約7.9mg/Kg/日〜約21.4mg/Kg/日である、請求項45または49に記載の方法。
【請求項67】
投与される用量が約8.6mg/Kg/日〜約17.1mg/Kg/日である、請求項45または49に記載の方法。
【請求項68】
投与される用量が約400mg/日〜約3000mg/日である、請求項45または49に記載の方法。
【請求項69】
投与される用量が約450mg/日〜約2500mg/日である、請求項45または49に記載の方法。
【請求項70】
投与される用量が約500mg/日〜約2000mg/日である、請求項45または4
9に記載の方法。
【請求項71】
投与される用量が約550mg/日〜約1500mg/日である、請求項45または49に記載の方法。
【請求項72】
投与される用量が約600mg/日〜約1200mg/日である、請求項45または49に記載の方法。
【請求項73】
上記化合物(またはエナンチオマー)またはその製薬学的に許容され得る塩またはエステルが、1もしくは複数の他の化合物または治療薬との組み合わせ投与で投与される、請求項45または49に記載の方法。
【請求項74】
上記1もしくは複数の他の化合物または治療薬が、以下の特性:抗酸化活性;NMDA受容体拮抗作用;内因性のGABA阻害を増す能力;NOシンターゼインヒビター活性;鉄結合能、例えば鉄キレーター;カルシウム結合能、例えばCa(II)キレーター;亜鉛結合能、例えばZn(II)キレーター;ナトリウムもしくはカルシウムイオンチャンネルを遮断する能力;カリウムもしくはクロライドイオンチャンネルを開く能力の1もしくは複数を有する化合物、物質濫用の処置に有用な治療薬からなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
上記1もしくは複数の化合物が、抗癲癇薬(AED)からなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
上記抗癲癇薬(AED)が;カルバマゼピン、クロバザム、クロナゼパム、エトスクシミド、フェルバメート、ガバペンチン、ラモチギン、レベチラセタム、オキカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、プレガバリン、プリミドン、レチガビン、タランパネル、チアガビン、トピラメート、バルプロエート、ビガバトリン、ゾニサミド、ベンゾジアゼピン、バルビツレートおよび鎮静催眠薬からなる群から選択される請求項75に記載の方法。
【請求項77】
上記の治療量が時間が経つにつれて減少する、請求項45または49に記載の方法。
【請求項78】
上記化合物(またはエナンチオマー)またはその製薬学的に許容され得る塩またはエステルと組み合わせて投与される上記1もしくは複数の他の化合物または治療薬の量が、時間が経つにつれて進行的に減少する、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
式(I)および式(II)からなる群から選択される約50mgの1もしくは複数の化合物、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが優勢である)を含んでなる製薬学的剤形。
【請求項80】
式(I)および式(II)からなる群から選択される約50mgの1もしくは複数の化合物、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが優勢である)を含んでなる製薬学的剤形。
【請求項81】
式(I)および式(II)からなる群から選択される約100mgの1もしくは複数の化合物、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが優勢である)を含んでなる製薬学的剤形。
【請求項82】
式(I)および式(II)からなる群から選択される約200mgの1もしくは複数の化合物、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から
選択される1つのエナンチオマーが優勢である)を含んでなる製薬学的剤形。
【請求項83】
式(I)および式(II)からなる群から選択される約250mgの1もしくは複数の化合物、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが優勢である)を含んでなる製薬学的剤形。
【請求項84】
式(I)および式(II)からなる群から選択される約400mgの1もしくは複数の化合物、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが優勢である)を含んでなる製薬学的剤形。
【請求項85】
式(I)および式(II)からなる群から選択される約450mgの1もしくは複数の化合物、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが優勢である)を含んでなる製薬学的剤形。
【請求項86】
式(I)および式(II)からなる群から選択される約500mgの1もしくは複数の化合物、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが優勢である)を含んでなる製薬学的剤形。
【請求項87】
式(I)および式(II)からなる群から選択される約600mgの1もしくは複数の化合物、またはエナンチオマー混合物(ここで式(I)および式(II)からなる群から選択される1つのエナンチオマーが優勢である)を含んでなる製薬学的剤形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−513466(P2008−513466A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532446(P2007−532446)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/032861
【国際公開番号】WO2006/033947
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】