発作を処置するための非神経毒性プラスミノゲンを活性化する因子
【課題】ヒトにおける虚血性発作の処置のための新規な治療を提供する。
【解決手段】発作の処置のためのプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子のフィブリン特異性は、野生型t−PAと比較して増強されている、使用。1種の非神経毒性プラスミノゲン活性化因子を含む発作の処置のための薬物の製造のための方法であって、当該プラスミノゲン活性化因子の改変のために、以下の工程:チモーゲン三つ組残基の少なくとも一部を導入する工程;フィブリンの非存在下での触媒活性な立体構造の安定性を減少させるために、Asp194または一致するアスパラギン酸を置換する工程;自己分解ループまたは当該ループと一致するペプチド部分における、疎水性アミノ酸残基を置換する工程;プラスミンによるチモーゲンの触媒を妨げるために当該チモーゲン中に変異を導入する工程;のうちの少なくとも1つを包含する、方法。
【解決手段】発作の処置のためのプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子のフィブリン特異性は、野生型t−PAと比較して増強されている、使用。1種の非神経毒性プラスミノゲン活性化因子を含む発作の処置のための薬物の製造のための方法であって、当該プラスミノゲン活性化因子の改変のために、以下の工程:チモーゲン三つ組残基の少なくとも一部を導入する工程;フィブリンの非存在下での触媒活性な立体構造の安定性を減少させるために、Asp194または一致するアスパラギン酸を置換する工程;自己分解ループまたは当該ループと一致するペプチド部分における、疎水性アミノ酸残基を置換する工程;プラスミンによるチモーゲンの触媒を妨げるために当該チモーゲン中に変異を導入する工程;のうちの少なくとも1つを包含する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは発作の処置のための、Desmodus rotundusの唾液に特に由来する非神経毒性プラスミノゲン活性化因子(DSPA)の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる臨床像が、それらの臨床的症状に相関する用語「発作」の下でまとめられている。それぞれの病因に従って、いわゆる虚血性発作における臨床像と出血性発作における臨床像との間のこれらの第1の差異があり得る。
【0003】
虚血性発作(虚血)は、動脈血液供給の欠如に起因して脳内の血液循環の減少または中断により特徴づけられる。しばしば、このことは、それぞれ動脈硬化により狭窄した血管の血栓症または動脈性心臓塞栓症によって引き起こされる。
【0004】
出血性発作は、特に、動脈高血圧症によって損傷を受けた脳血液供給動脈(brain supplying arteria)の灌流に基づく。しかし、全ての大脳発作のうちのわずか約20%が出血性発作によって引き起こされる。従って、血栓症に起因する発作は、遙かに関連性がある。
【0005】
他の組織虚血に比較して、神経組織の虚血は、変化がもたらされた細胞の壊死を広く伴う。ニューロン組織における壊死のより高い発生率は、複数の反応工程を含む複雑なカスケードである現象「興奮特性」の新たな知識により説明されうる。そのカスケードは、酸素の欠如によって影響を受ける虚血ニューロンによって開始され、次いで、すぐにATPを失い、脱分極する。このことによって、神経伝達物質であるグルタミン酸の増大したシナプス後放出を生じ、このことにより、膜結合グルタミン酸レセプター(これは、カチオンチャネルを調節する)を活性化する。しかし、増大したグルタミン酸放出に起因して、グルタミン酸レセプターは、過剰に活性化される。
【0006】
グルタミン酸レセプターは、グルタミン酸のそのレセプターへの結合によって開口する、電圧依存性カチオンチャネルを調節する。このことは、Na+とCa2+の細胞への流入を生じ、Ca2+依存性細胞代謝を広く妨害する。特に、Ca2+依存性異化酵素の活性化は、その後の細胞死の理由を与える(Lee,Jin−Moら「The changing landscape of ischaemic brain injury mechamisms」;Dennis W.Zhol「Glutamate neurotoxicity and diseases of the nervous system」)。
【0007】
グルタミン酸媒介性神経毒性の機構は、まだ完全には理解されていないものの、大脳虚血後のニューロン細胞死に大きく寄与していることに意見が一致している(Jin−Mo Leeら)。
【0008】
生命機能を保護すること、および生理学的パラメーターを安定化させることの他に、閉塞した血管を再び開口することは、急性の大脳虚血の治療において優先される。再開口は、異なる手段によって行われ得る。今までは、例えば、心臓発作後のPTCAのような機械的再開口のみでは、まだ満足行く結果をもたらしていなかった。首尾よい線維素溶解によってのみ、患者の生理学的状態の許容可能な改善は、達成され得る。このことは、カテーテルを用いる局所的適用(PROCAT、プロウロキナーゼを用いる研究)によって達成されうる。しかし、第1のポジティブな結果にかかわらず、この方法は未だ、薬学的処置として公的に認められていない。
【0009】
天然に存在する繊維溶解は、セリンプロテアーゼであるプラスミン(触媒作用(活性化)によりその不活性前駆体から生じる)のタンパク質分解活性に基づく。プラスミノゲンの天然の活性化は、身体中に天然に存在するプラスミノゲン活性化因子u−PA(ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子)およびt−PA(組織プラスミノゲン活性化因子)によって触媒される。u−PAとは対照的に、t−PAは、フィブリンおよびプラスミノゲンとともに、いわゆる活性化因子複合体を形成する。従って、t−PAの触媒活性は、フィブリン依存性であり、その存在を約550倍に増強する。フィブリンの他に、フィブリノゲンもまた、より少ない程度ではあるが、プラスミノゲンからプラスミンへのt−PA媒介性触媒を刺激し得る。フィブリノゲンの存在下では、t−PA活性は、25倍増大するのみである。またフィブリンの切断産物(フィブリン分解産物(FDA))は、t−PAを刺激する。
【0010】
急性発作の血栓溶解処置の初期の試みは、1950年代に遡る。ストレプトキナーゼ、β溶血連鎖球菌由来のフィブリン溶解薬剤での最初の広範な臨床試験は、ようやく1995年に始まった。プラスミノゲンとともに、ストレプトキナーゼは、他のプラスミノゲン分子をプラスミンに触媒する複合体を形成する。
【0011】
ストレプトキナーゼでの治療は、重大な欠点を有する。なぜなら、ストレプトキナーゼは、細菌性プロテアーゼであり、従って、身体においてアレルギー反応を誘起しうるからである。さらに、抗体の生成を含む前者の連鎖球菌感染に起因して、患者は、いわゆるストレプトキナーゼ耐性を示し得、このことは、治療をより困難にする。このほかに、欧州での臨床試験(欧州の多施設急性発作治験(MAST−E)、イタリアの多施設急性発作治験(MAST−I)およびオーストラリアでの臨床試験(オーストラリアのストレプトキナーゼ治験(AST))は、ストレプトキナーゼで患者を処置した後の増大した死亡率の危険性および脳内出血(脳内出血(ICH))のより高い危険性を示した。これらの治験は、早期に終了されなければならなかった。
【0012】
あるいは、ウロキナーゼ(これもまた、伝統的な線維素溶解性薬剤である)が適用されうる。ストレプトキナーゼとは対照的に、ウロキナーゼは、抗原性特徴を示さない。なぜなら、ウロキナーゼは、種々の身体組織に天然に存在する酵素であるからである。ウロキナーゼは、プラスミノゲンの活性化因子であり、補因子とは無関係である。ウロキナーゼは、腎臓細胞培養物中で生成される。
【0013】
治療的血栓溶解に対する広範な経験が、組織型プラスミノゲン活性化因子(いわゆるrt−PA)について利用可能であり(EP0093619、米国特許第4,766,075号を参照のこと)、この組織型プラスミノゲン活性化因子は、組換えハムスター細胞において生成される。90年代には、主な適応症として、急性心筋梗塞に対する、t−PAを使用するいくつかの臨床試験が、世界中で行われた。これは、部分的に理解できない矛盾する結果をもたらした。いわゆる欧州急性発作治験(ECASS)において、患者は、発作の症状の発生から6時間の時間枠内で、t−PAを静脈内に処置された。90日後、死亡率ならびにBarthel指数を、患者の疾病または無関係の生存についての指標として調べた。生存の有意な改善は報告されなかったが、有意ではなかったものの、死亡率の増加が報告された。従って、発作の開始直後に、それぞれの病歴に従って個々に選択されたrt−PAでの患者の血栓溶解処置は、おそらく有利であり得た。しかし、発作の発生から6時間の時間枠内でのrt−PAの一般的な使用は、推奨されなかった。なぜなら、この時間の間の適用は、脳内出血(ICH)の危険性を増大させるからである(C.Lewandowski CおよびWiliam Barson、2001;Treatment of Acute Stroke;Annals of Emergency Medicine 37:2;S.202 ff)。
【0014】
発作の血栓溶解処置はまた、米国のNational Institute of Neurologic Disorder and Strokeによって行われた臨床試験(いわゆるNINDS rtPA発作治験)の主題であった。この治験は、症状の発生からわずか3時間後内の静脈内rt−PA処置の効果に対して集中していた。患者は、処置の3ヶ月後まで調べられた。この処置の患者の生存に対する観察されたポジティブな結果に起因して、3時間のこれらの限られた時間枠内でのrt−PA処置が推奨されたが、筆者らは、ICHのより高い危険性が見いだした。
【0015】
2つのさらなる研究(ECASS II治験:Alteplase Thrombolysis for Acute Noninterventional Therapy in Ischaemic Stroke(ATLANTIS))により、発作の発生から3時間後内のrt−PA処置のポジティブな効果が、6時間内の処置を用いてなお繰り返されるか否かを調べた。しかし、この問題には、確かな答えが出なかった。なぜなら、臨床症状の改善も、死亡率の低下も全く観察されなかったからである。ICHのより高い危険性が残ったままであった。
【0016】
それらの部分的に矛盾する結果は、rt−PAの使用における高い警戒をもたらした。既に1996年には、American Heart Associationの刊行物により、発作の血栓溶解処置に関する医師の間で、強い懐疑が指摘されたのに対して;心筋梗塞の治療における線維素溶解に関するそのような懸念はない(van Gijn J,MD,FRCP,1996−Circulation 1996,93:1616−1617)。
【0017】
この懐疑の後ろにある道理は、まず、1997年に公表された(2001年3月に更新された)全ての発作治験のまとめにおいて示された。この総説によれば、全ての血栓溶解処置(ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、rt−PAまたは組換えウロキナーゼ)は、発作から最初の10日間後内に有意により高い死亡率を生じたが、死亡患者または疾病患者いずれの総数も、血栓溶解の場合、発作の発生から6時間後以内に適用した場合、減少した。この効果は、主にICHに起因した。発作の処置のための血栓溶解の広範な使用は、従って、推奨されなかった。
【0018】
以前ですら、このような結果により、いくらかの他の著者らは、発作の患者は、死亡か、生存はするが障害が残るかのいずれかの選択を有するだけという辛辣な記事を示した(SCRIP 1997:2265,26)。
【0019】
にもかかわらず、これまで、rt−PAでの処置は、米国において、食品医薬局(FDA)により認可された急性脳虚血の処置のみである。しかし、この処置は、発作の発生から3時間後以内のrt−PAの処置の適用に制限されていた。
【0020】
rt−PAの認可は、1996年に通達された。以前は、1995年に、t−PAのネガティブな副作用(これは、3時間の時間枠外で発作処置に適用した場合、その劇的な効果についての説明の根拠を提供する)についての最初の通知が知られた。従って、海馬の小膠細胞はおよび神経細胞は、グルタミン酸媒介性興奮毒性に寄与するt−PAを生成する。これは、グルタミン酸アゴニストを、それぞれ、t−PA欠損マウスおよび野生型マウスの海馬に注射した場合のt−PA欠損マウスおよび野生型マウスに対する比較研究から結論づけられる。t−PA欠損マウスは、外因的に(クモ膜下腔内)適用されたグルタミン酸に対する有意に高い耐性を示した(Tsirka SEら、Nature,Vol.377,1995「Excitoxin−induced neuronal degeneration and seizure are mediated by tissue plasminogen activator」)。これらの結果は、Wangらが、t−PAを静脈内注射した場合、t−PA欠損マウスの壊死ニューロン組織のほぼ2倍の量を証明することができたときに、1998年に確認された。野生型マウスに対する外因的t−PAのこのネガティブな効果は、わずか約33%であった(Wangら、1998,Nature「Tissue plasminogen activator(t−PA) increases neuronal damage after focal cerebral ischaemia in wild type and t−PA deficient mice」)。
【0021】
t−PAによる興奮毒性の刺激に対するさらなる結果が、2001年初めにNicoleら(Nicole O.,Docagne F Ali C;Margaill I;Carmeliet P;MacKenzie ET、Vivien DおよびBuisson A,2001;The proteolytic activity of tissue−plasminogen activator enhances NMDA receptor−mediated signaling;Nat Med 7,59〜64)により刊行された。彼等は、脱分極された皮質ニューロンにより放出されるt−PAが、NMDA型のグルタミン酸レセプターのいわゆるNR1サブユニットと相互作用してNR1の切断をもたらし得ることを証明し得た。これは、このレセプターの活性を増加して、グルタミン酸アゴニストであるNMDAが適用された後により多くの組織損傷を生じる。このNMDAアゴニストは、興奮毒性を誘導した。従って、t−PAは、NMDA型のグルタミン酸レセプターを活性化することによって、神経毒性効果を示す。
【0022】
さらなる説明的概念によると、t−PAの神経毒性は、プラスミンにおけるプラスミノゲンの転換から間接的に生じる。このモデルによると、プラスミンは、神経毒性のエフェクターである(Chen ZLおよびStrickland S,1997;Neuronal Death in the hippocampus is promoted by plasmin−catalysed degradation of laminin、Cell:91,917〜925)。
【0023】
t−PAの時間依存性神経毒性効果の概略が、図9に示される。この図9にはまた、内因性t−PAと比較した組換えt−PAの毒性増加が明らかになることもまた、示される。これは、おそらく、rt−PAが、より高濃度で組織に侵入可能であることに起因する。
【0024】
その神経毒性副作用および死亡率に対する増加する影響にも関わらず、t−PAは、FDAによって認可された。これは、有害性および有効な選択肢がないことによってのみ説明され得る。従って、これは、非常に実用的な費用便益分析に起因する。従って、未だに安全な治療についての必要性が存在する。しかし、その治療が血栓崩壊剤に基づく場合、血栓崩壊に対する代替法を見出すことは可能ではない場合に備えて、神経毒性の問題が考慮されなければならない(例えば、Wangら、a.a.O.;LewandowskiおよびBarson 2001 a.a.O.を参照のこと)。
【0025】
従って、発作についての新規な薬物を開発するために、DSPA(Desmodus rotundus プラスミノゲン活性化因子(Plasminogen Activator)を含む公知の血栓崩壊剤のさらなる試験が終了したが、原則的にすべての血栓崩壊剤は、潜在的に適切である。特にDSPAの場合、この医療適用にとって可能な適切さが、以前に指摘された(Medan P;Tatlisumak T;Takano K;Carano RAD;Hadley SJ;Fisher M:Thrombolysis with recombinant Desmodus saliva plasminogen activator(rDSPA) in a rat embolic stroke model;Cerebrovasc Dis 1996:6;175〜194(4th International Symposium on Thrombolic Therapy in Acute Ischaemic Stroke)。DSPAは、t−PAと高い相同性(類似性)を有するプラスミノゲン活性化因子である。従って、t−PAの神経毒性副作用から生じる幻滅に加えて、DSPAが発作処置のために適切な薬物であることについてさらなる期待は存在しなかった。
【0026】
代わりに、公知の血栓崩壊処置を改善することを目的とする最近のストラテジーは、血栓崩壊物質をもはや静脈内適用を試みないが、脈管内血栓付近に直接カテーテルを介して動脈内適用を試みる。最初の経験は、組換え生成されたウロキナーゼを用いて利用可能である。従って、おそらく、血栓崩壊のために必要な用量およびそれに伴う負の副作用は、減少され得る。しかし、この適用には、高い技術的出費が必要であり、どこででも利用可能ではない。さらに、患者は、時間がかかる行為にて準備されなければならない。しかし、時間がしばしば制限されている。従って、この準備は、さらなる危険を提供する。
【0027】
現在、新しい概念が、抗凝固剤(例えば、ヘパリン、アスピリンまたはアンクロド)に対している。アンクロドは、マレーシア穴ヘビ(malayna pit viper)の毒中にある活性物質である。しかし、ヘパリンの効果を試験する2つのさらなる臨床試験(International Stroke Trial(IST)およびTrial of ORG 10172 in Acute Stroke Treatment(TOAST))は、発作の死亡率の有意な改善も発作の予防も示さない。
【0028】
さらなる新規な処置は、血栓に対しても、血液低粘稠化に対しても、抗凝固に対しても焦点を合わせず、血液供給の妨害により損傷した細胞の生存性を高めることを試みる(WO 01/51613 A1およびWO 01/51614 A1)。これを達成するために、キノン、アミノグリコシドまたはクロラムフェニコールの群からの抗生物質が、適用される。同様の理由で、発作の発症後にシチコリン(citicholin)の直接適用を始めることが、さらに示唆される。身体において、シチコリンは、シチジンとコリンとに切断される。これらの切断産物は、神経細胞膜の一部を形成し、従って、損傷組織の再生を支持する(米国特許第5,827,832号)。
【0029】
安全な処置に関する最近の研究は、死に到る発作の結果の一部が、妨害された血液供給によって間接的にのみ生じるが、過剰活性化グルタミン酸レセプターを含む興奮毒性または神経毒性に直接的には引き起こされないという、新規な知見に基づく。この影響は、t−PAによって増加される(上記を参照のこと)。従って、興奮毒性を減少するための概念は、いわゆる神経保護剤(neuroprotective)を適用することである。これらは、神経毒性効果を最小にするために、個別に使用され得るか、またはフィブリン溶解剤と組み合わせて使用され得る。これらは、直接的に(例えば、グルタミン酸レセプターアンタゴニストとして)かまたは電位依存性ナトリウムチャネルもしくはカルシウムチャネルを阻害することにより間接的に、興奮毒性の減少をもたらし得る(Jin−Mo Leeら、a.a.O.)。
【0030】
NMDA型のグルタミン酸レセプターの競合阻害(アンタゴニスト作用)が、例えば、2−アミノ−5−ホスホノバレレート(phosphonovalerate)(APV)または2−アミノ−5−ホスホノヘプタノエート(phosphonoheptanoate)(APH)と起こり得る。非競合阻害が、例えば、上記チャネルのフェンシクリジン側に結合する物質によって、達成され得る。このような物質は、フェンシクリジン、MK−801、デキストロファン(dextrophane)またはセタミン(cetamine)であり得る。
【0031】
従来、神経保護剤による処置は、予期された成功を示さなかった。これはおそらく、神経保護剤が、その保護効果を示すために血栓崩壊剤と合わせられなければならなかったからである。これは、他の物質に当てはまる(図10も参照のこと)。
【0032】
t−PAと神経保護剤との組み合わせでさえ、制限された損傷しか生じない。それにも関わらず、このようにフィブリン溶解剤の不利な神経毒性は回避される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0033】
従って、ヒトにおける発作の処置のための新規な治療概念を提供することが、本発明の目的である。
【0034】
本発明によると、発作の治療的処置のための非毒性プラスミノゲン活性化因子の使用が、項目1に概略されるように示唆される。さらなる有利な使用は、それぞれ、独立項目およびさらなる従属項目の主題である。
【0035】
本発明の中心的考えは、発作の処置におけるプラスミノゲン活性化因子の使用であり、成熟酵素が活性を示す、これは、フィブリンマニホールド(manifold)により選択的に(すなわち、650倍より多く)増加される。
・本発明は、以下を提供し得る:
・(項目1)
発作の処置のためのプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子のフィブリン特異性は、野生型t−PAと比較して増強されている、使用。
・(項目2)
項目1に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子は、アスパラギン酸残基と一緒になってチモーゲン三つ組残基の少なくとも一部を形成する、少なくともヒスチジン残基またはセリン残基を含む、使用。
・(項目3)
項目2に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、上記セリン残基は、t−PAの292位と少なくとも部分的に一致する位置に位置し、上記ヒスチジン残基は、t−PAの305位と少なくとも部分的に一致する位置に位置し、そして上記アルパラギン酸残基は、t−PAの447位と少なくとも部分的に一致する位置に位置する、使用。
・(項目4)
項目3に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子は、以下のt−PA変異体:t−PA/R275E;t−PA/R275E,F305H;t−PA/R275E,F305H,A292Sからなる群より選択される、使用。
・(項目5)
項目1に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子は、Asp194または一致する位置にあるアスパラギン酸の点変異を保有し、これにより、フィブリンの非存在下における当該プラスミノゲン活性化因子の触媒的に活性な立体構造の安定性が減少される、使用。
・(項目6)
項目5に記載の使用であって、Asp194が、グルタミン酸またはアスパラギンによって置換されている、使用。
・(項目7)
項目6に記載の使用であって、t−PAが、Asp194からGlu194またはAsn194への置換を保有する、使用。
・(項目8)
項目1に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子は、当該因子中の自己分解ループ中に少なくとも1つの変異を含み、当該変異により、フィブリンの非存在下でのプラスミノゲンとプラスミノゲン活性化因子との間の機能的相互作用が減少される、使用。
・(項目9)
項目8に記載の使用であって、上記自己分解ループ中の少なくとも1つの変異が、野生型t−PAのアミノ酸420位〜423位または一致する位置に影響を与える、使用。
・(項目10)
項目9に記載の使用であって、上記変異が、以下の変異体:L420A、L420E、S421G、S421E、P422A、P422G、P422E、F423AおよびF423Eからなる群より選択される、使用。
・(項目11)
項目1に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子が、プラスミンによる触媒を妨げる少なくとも1つの点変異を含むチモーゲンである、使用。
・(項目12)
項目11に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、上記点変異が、t−PAの15位〜275位またはその位置に一致する位置に位置する、使用。
・(項目13)
項目12に記載の使用であって、グルタミン酸が15位または275位にある、使用。
・(項目14)
項目1に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子が、血吸いコウモリの唾液から単離された(DSPA)、使用。
・(項目15)
発作発症の少なくとも3時間後のヒトにおける発作の治療的処置のための、項目1〜14のうちの少なくとも1項に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用。
・(項目16)
発作発症の少なくとも6時間後のヒトにおける発作の治療的処置のための、項目1〜15のうちの少なくとも1項に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用。
・(項目17)
発作発症の少なくとも9時間後のヒトにおける発作の治療的処置のための、項目1〜16のうちの少なくとも1項に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用。
・(項目18)
発作患者の治療的処置のための項目1〜17のうちの少なくとも1項に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該発作の発症は、一時的であって正確には決定されていない、使用。
・(項目19)
野生型t−PAの神経毒性を回避している発作の治療のための、項目1〜18のうちの少なくとも1項に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用。
・(項目20)
His420、Asn42、Ala422およびCys423を含む、自己分解ループを含む組織プラスミノゲン活性化因子。
・(項目21)
項目20に記載の組織プラスミノゲン活性化因子であって、194位における点変異により特徴付けられ、当該点変異は、フィブリンの非存在下における当該プラスミノゲン活性化因子の触媒的な活性な立体構造の安定性を減少させる、組織プラスミノゲン活性化因子。
・(項目22)
Phe194を特徴とする、項目21に記載の組織プラスミノゲン活性化因子。
・(項目23)
項目20〜22のうちの少なくとも1項に記載の組織プラスミノゲン活性化因子であって、プラスミンによる触媒を妨げる少なくとも1つの点変異を特徴とする、組織プラスミノゲン活性化因子。
・(項目24)
Glu275を特徴とする、項目23に記載の組織プラスミノゲン活性化因子。
・(項目25)
配列番号1に従うアミノ酸配列を有する、組織プラスミノゲン活性化因子。
・(項目26)
Val420、Thr421、Asp422、およびSer423を含む、自己分解ループを含むウロキナーゼ。
・(項目27)
項目26に記載のウロキナーゼであって、194位における点変異によって特徴付けられ、当該点変異は、フィブリンの非存在下での当該ウロキナーゼの触媒活性な立体構造の安定性を減少させる、ウロキナーゼ。
・(項目28)
Glu194により特徴付けられる、項目27に記載のウロキナーゼ。
・(項目29)
項目26〜28のうちの少なくとも1項に記載のウロキナーゼであって、プラスミンによる触媒を妨げる少なくとも1つの点変異により特徴付けられる、ウロキナーゼ。
・(項目30)
Ile275により特徴付けられる、項目29に記載のウロキナーゼ。
・(項目31)
配列番号2に従うアミノ酸配列を有する、ウロキナーゼ。
・(項目32)
項目1〜31のうちの少なくとも1項に記載のプラスミノゲン活性化因子と、少なくとも1つのさらなる薬学的に活性な構成成分またはその薬学的に受容可能な塩とを含む、薬学的組成物。
・(項目33)
神経保護因子を特徴とする、項目32に記載の薬学的組成物。
・(項目34)
グルタミン酸レセプターアンタゴニストを特徴とする、項目33に記載の薬学的組成物。
・(項目35)
競合性アンタゴニストまたは非競合性アンタゴニストを特徴とする、項目34に記載の薬学的組成物。
・(項目36)
項目33に記載の薬学的組成物であって、少なくとも1つのトロンビンインヒビターを特徴とし、当該トロンビンインヒビターは、以下の物質:トロンボモジュリン、トロンボモジュリンアナログ、トリアビン、パリジピン、またはソルリンからなる群より優先的に選択される、薬学的組成物。
・(項目37)
項目33に記載の薬学的組成物であって、少なくとも1つの抗凝固剤を特徴とし、当該抗凝固剤は、以下の抗凝固剤:ヒルジン、ヘパリン、アセチルサリチル酸またはアンクロドからなる群より優先的に選択される、薬学的組成物。
・(項目38)
抗炎症物質を特徴とする、項目33に記載の薬学的組成物。
・(項目39)
抗生物質を特徴とする、項目33に記載の薬学的組成物。
・(項目40)
シチコリンを特徴とする、項目33に記載の薬学的組成物。
・(項目41)
項目1〜19に記載の、項目36〜45のうちの少なくとも1項に記載の薬学的組成物の使用。
・(項目42)
1種の非神経毒性プラスミノゲン活性化因子を含む発作の処置のための薬物の製造のための方法であって、当該プラスミノゲン活性化因子の改変のために、以下の工程:
チモーゲン三つ組残基の少なくとも一部を導入する工程;
フィブリンの非存在下での触媒活性な立体構造の安定性を減少させるために、Asp194または一致するアスパラギン酸を置換する工程;
自己分解ループまたは当該ループと一致するペプチド部分における、疎水性アミノ酸残基を置換する工程;
プラスミンによるチモーゲンの触媒を妨げるために当該チモーゲン中に変異を導入する工程;
のうちの少なくとも1つを包含する、方法。
・(項目43)
項目42に記載の方法により製造される、薬物。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1を参照のこと。
【図2】図2を参照のこと。
【図4a】図4aを参照のこと。
【図4b】図4bを参照のこと。
【図7】図7を参照のこと。
【図9】図9を参照のこと。
【図10】図10を参照のこと。
【図11】図11を参照のこと。
【図12】図12を参照のこと。
【図13】図13を参照のこと。
【図14】図14を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明によるプラスミノゲン活性化因子の使用は、以下の知見に基づく。発作により引き起こされる脳内の組織損傷に起因して、血液脳関門が損傷または破壊される。従って、血液中を循環するフィブリノゲンが、脳のニューロン組織内に侵入し得る。ここで、フィブリノゲンがt−PAを、グルタミン酸レセプターまたはプラスミノゲンを活性化することにより間接的に活性化する。これは、さらなる組織損傷を生じる。この影響を回避するために、本発明は、非常にフィブリン選択的であり、かつ議論の逆として、フィブリノゲンにより活性化される可能性が低い、プラスミノゲン活性化因子の使用を示唆する。従って、このプラスミノゲン活性化因子は、損傷した血液脳関門の結果として血液からニューロン組織へと侵入するフィブリノゲンにより活性化されないか、またはt−PAと比較して少なくとも実質的に少なくしか活性化されない。なぜなら、t−PAの活性化因子であるフィブリンは、その大きさに起因して、ニューロン組織に侵入し得ないからである。従って、本発明によるプラスミノゲン活性化因子は、非神経毒性である。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によると、非毒性プラスミノゲン活性化因子が使用され、これは、いわゆるチモーゲン三つ組残基(zymogene triade)の少なくとも1つのエレメントを含む。キモトリプシンファミリーのセリンプロテアーゼの触媒中心からの匹敵する三つ組残基(triade)が公知であり、この三つ組残基は、相互作用する3つのアミノ酸(アスパラギン酸194、ヒスチジン40およびセリン32)からなる。しかし、この三つ組残基は、キモトリプシン様セリンプロテアーゼのファミリーにこれもまた属するt−PA中には存在しない。それにも関わらず、適切な位置に上記のアミノ酸のうちの少なくとも1つを導入するためのネイティブt−PAの特異的変異誘発は、フィブリン存在下でプロ酵素(単鎖t−PA)の活性の減少を生じ、成熟酵素(二本鎖t−PA)の活性の増加を生じることが、公知である。従って、この三つ組残基のうちの少なくとも1つのアミノ酸の(またはこの三つ組残基中の個々の機能を有するアミノ酸の)導入が、t−PAのチモーゲン性(zymogenity)(すなわち、成熟酵素の活性とプロ酵素の活性との間の比)を増加し得る。結果として、フィブリンは、特に、顕著に増加される。これは、導入されたアミノ酸残基および/または野生型配列のアミノ酸残基間の立体構造相互作用に起因する。
【0039】
Phe305をHisにより置換(F305H)し、Ala292をSerにより置換(A292S)するネイティブt−PAの変異誘発が、チモーゲン性を20倍増加する一方、改変体F305H単独は、5倍高いチモーゲン性をすでにもたらすことが公知である(EL Madison,Kobe A,Gething M.J;Sambrook JF、Goldsmith EJ 1993;Converting Tissue Plasminogen Activator to a Zymogen:A regulatory Triad of Asp−His−Ser;Science 262,419〜421)。フィブリン存在下で、これらのt−PA変異体は、それぞれ、30,000倍(F305H)および130,000倍(F305H、A292S)の活性増加を示す。さらに、これらの変異体は、切断部位Aug275−Ile276でのプラスミンによる切断を防ぐために、Arg275からR275Rへの置換を含み、それにより、単鎖t−PAを二本鎖形態へと転換する。変異部位R275E単独は、t−PAのフィブリン特異性を6,900倍増加する(K Tachias,Madison EL 1995:Variants of Tissue−type Plaminogen Activator Which Display Substantially Enhanced Stimulation by Fibrin:Journal of Biological Chemistry 270,31:18319〜18322)。
【0040】
t−PAの305位および292位は、キモトリプシンセリンプロテアーゼの公知の三つ組残基の位置His40およびSer32と一致する。それぞれヒスチジンまたはセリンを導入する対応する置換によって、これらのアミノ酸は、t−PAのアスパラギン酸477と相互作用し得、t−PA変異体において機能的三つ組残基を生じる(Madisonら、1993)。
【0041】
これらのt−PA変異体は、本発明による発作の処置のために使用され得る。なぜなら、これらは、そのフィブリン特異性の増加に起因して、神経毒性を示さないか、または野生型t−PAと比較して、有意に減少した神経毒性を示すからである。上記のt−PA変異体F305H;F305H;A292Sの単独またはR275Eと組み合わせたA292Sの開示のために、本発明者らは、Madisonら(1993)ならびにTachiasおよびMadison(1995)の刊行物を本明細書により参考として完全に援用する。
【0042】
プラスミノゲン活性化因子のフィブリン特異性の増加は、あるいは、Asp194(または一致する位置のアスパラギン酸)の点変異によって達成され得る。プラスミノゲン活性化因子は、キモトリプシンファミリーのセリンプロテアーゼの群に属し、従って、保存されたアミノ酸Asp194を含む。このAsp194は、成熟プロテアーゼの触媒活性立体構造の安定性を担う。Asp194は、セリンプロテアーゼのチモーゲン形態にて、His40と相互作用することが公知である。そのチモーゲンが切断により活性化された後で、この特異的相互作用は、妨害され、Asp194の側鎖が約170°回転して、Ile16と新規な塩架橋を形成する。この塩架橋は、成熟セリンプロテアーゼの触媒中心のオキシアニオンポケットの安定性に本質的に寄与する。これもまた、t−PA中に存在する。
【0043】
Asp194を置換する点変異の導入は、明白に、セリンプロテアーゼの触媒立体構造の形成または安定性をそれぞれ妨害する。これにも関わらず、変異型プラスミノゲン活性化因子は、その補因子であるフィブリンの存在下で、特に、成熟野生型形態と比較して活性の有意な増加を示す。このことは、フィブリンとの相互作用が触媒活性を促進する立体構造変化を可能にする様式でのみ、説明され得る(L Strandberg,Madison EL、1995;Variants of Tissue−type Plasminogen Activator with Substantially Enhanced Response and Selectivity towards Fibrin co−factors:Journal of Biological Chemistry 270、40:2344〜2349)。
【0044】
まとめると、プラスミノゲン活性化因子のAsp194変異体は、フィブリンの存在下で高い活性増加を示す。このことにより、本発明によるその使用が可能である。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、変異体t−PAが使用され、この変異体において、Asp194が、それぞれ、グルタミン酸(D193E)またはアスパラギン(D194N)によって置換されている。これらの変異体において、t−PAの活性は、フィブリン非存在下では2000分の1に減少し、一方、フィブリン存在下では、498,000〜1,050,000倍の活性増加が達成され得る。これらの変異体は、Arg15からR15Eへの置換をさらに含み得、この置換は、ペプチド結合Arg15−Ile16でのプラスミンによる一本鎖t−PAの切断を防ぎ、t−PAの二本鎖形態をもたらす。この変異単独は、フィブリンによるt−PAの化成かを12,000倍増加する。194位および15位でのt−PA変異の開示のために、StrandbergおよびMadison(1995)の刊行物が、参考として完全に援用される。
【0046】
プラスミノゲン活性化因子のフィブリン依存性の増加はまた、いわゆる「自己溶解ループ」中への点変異の導入によって、達成され得る。このエレメントは、トリプシンから公知である。これはまた、セリンプロテアーゼの相同的部分として見出され得、特に、3つの疎水性アミノ酸(Leu、Pro、およびPhe)により特徴付けられる。プラスミノゲン活性化因子中の自己溶解ループは、プラスミノゲン活性化因子との相互作用を担う。この領域における点変異は、プラスミノゲンとプラスミノゲンとの間のタンパク質−タンパク質相互作用がもはや有効には形成され得ないという、効果を有し得る。これらの変異は、フィブリンの非存在下では単に機能的に関連するだけである。対照的に、フィブリン存在下では、これらは、プラスミノゲン活性化因子の活性増加を担う(K Song−Hua、Tachias K、Lamba D、Bode W、Madison EL、1997:Identification of a Hydrophobic exocite on Tissue Type Plaminogen Activator That Modulates Specificity for Plasminogen:Journal of Biological Chemistry 272:3,1811〜1816)。
【0047】
好ましい実施形態において、420位〜423位での点変異を示すt−PAが、使用される。これらの残基が特異的変異誘発により置換された場合、これは、t−PAのフィブリン依存性を増加し、61,000倍まで増加する(K Song−Huaら)。Song−Huaらは、点変異L420A、L420E、S421G、S421E、P422A、P422G、P422E、F423AおよびF423Eを試験した。これらの刊行物は、本発明による使用の開示のために、参考として完全に援用される。
【0048】
さらなる有利な実施形態によると、配列番号1(図13)によるアミノ酸配列を有する改変型組織プラスミノゲン活性化因子が、使用される。この改変型t−PAは、自己溶解ループ中の420位〜423位における疎水性アミノ酸のHis420、Asp421、Ala422およびCys423のような交換によって、野生型t−PAと異なる。このt−PAは、194位にフェニルアラニンを優先的に含む。さらに、275位は、グルタミン酸により占められ得る。有利なことに、194位は、フェニルアラニンにより占められる。
【0049】
さらに、改変型ウロキナーゼが、本発明により使用され得る。本発明によるウロキナーゼは、配列番号2(図14)によるアミノ酸配列を含み得、その配列において、自己溶解ループ中の疎水性アミノ酸が、Val420、Thr421、Asp422、およびSer423により置換されている。有利なことに、このウロキナーゼは、Ile275およびGlu194を保有する。この変異体は、野生型ウロキナーゼと比較して、500倍増加したフィブリン特異性を示す。
【0050】
ウロキナーゼおよびt−PA両方の変異体が、半定量的試験において分析され、野生型t−PAと比較して増加したフィブリン特性を示した。
【0051】
血吸いコウモリ(Desmodus totundus)の唾液由来のプラスミノゲン活性化因子(DSPA)もまた、フィブリン存在下で、非常に増加した活性(詳細には、100,000倍の増加)を示す。従って、このプラスミノゲン活性化因子は、本発明により優先的に使用され得る。用語DSPAは、この血吸いコウモリにとって必須の機能(すなわち、創傷の出血期間の増加)を満たす(Carwright、1974)、4つの異なるプロテアーゼを包含する。これらの4つのプロテアーゼ(DSPAα1、DSPAα2、DSPAβ、DSPAγ)は、互いに対して、そしてヒトt−PAに対して、高い類似性(相同性)を示す。これらはまた、類似する生理学的活性を示し、包括的用語DSPAの下での共通した分類をもたらす。DSPAは、特許EP 0 352 119 A1およびUS 6,008,019およびUS 5,830,849に開示される。これらの特許は、開示目的のために参考として完全に本明細書により援用される。
【0052】
DSPAαは、今までのところ、このグループからの最も良く分析されたプロテアーゼである。それは、既知のヒトt−PAアミノ酸配列(Kratzschmerら、1991)と比較して72%より大きい相同性をもつアミノ酸配列をもつ。しかし、t−PAとDSPAとの間には2つの本質的な差異がある。第1は、すべてのDSPAが一本鎖分子として完全なプロテアーゼ活性をもつことである。なぜなら、それは、t−PAとは対照的に、二本鎖形態に変換されないからである(Gardellら、1989:Kratzschmerら、1991)。第2に、DSPAの触媒活性は、ほぼ完全にフィブリンに依存している(Gardelら、1989;Bringmannら、1995;Toschieら、1998)。例えば、DSPAα1の活性は、フィブリンの存在下で100,000倍増加し、その一方、t−PA活性は550倍増加するに過ぎない。対照的に、DSPA活性は、フィブリノゲンによってよりかなり弱く誘導される。なぜなら、それは7〜9倍の増加を示すのみであるからである(Bringmannら、1995)。結論として、DSPAは、フィブリンにかなりより依存性であり、そしてフィブリンにより550倍だけ活性化される野生型t−PAよりはかなりフィブリン特異的である。
【0053】
そのフィブリン溶解性性質とt−PAに対する強い類似性のため、DSPAは、血栓溶解剤の開発のための興味深い候補である。これにも関わらず、DSPAの血栓溶解剤としての治療使用は、過去においては心筋梗塞の処置に限られていた。なぜなら、t−PAに関連するプラスミノゲン活性化因子が急性発作の処置に合理的に用いられ得るという正当化された希望が存在せず、グルタミン酸で誘導される神経毒性に対するt−PAの寄与に起因するからである。
【0054】
驚くべきことに、DSPAは、たとえ、t−PAに対する高い類似性(相同性)を示すとしても、そしてたとえ、これら分子の生理学的効果が大きな程度まで匹敵するとしても、神経毒性効果をもたないことが示されている。上記の結論は、DSPAは、結局、ニューロン組織損傷の重篤なリスクを引き起こすことなく、発作の治療のための血栓溶解剤として首尾良く用いられ得るというアイデアに至った。特に、興味深いのは、DSPAがまた、発作の兆候の開始後3時間より後にも用いられ得るという事実である。
【0055】
本発明のさらなる教示は、上記の知見から発展させたものであり、さらなるプラスミノゲン活性化因子を、それらがDSPAの本質的な特徴、特にt−PAの神経毒性の欠如を示すように改変または生成するという選択肢である。この基礎は、神経毒性プラスミノゲン活性化因子を、非神経毒性プラスミノゲン活性化因子に変形し、そしてそれによって既知または新たに発見された神経毒性プラスミノゲン活性化因子を基に非神経毒性プラスミノゲン活性化因子を生成することを可能にする、調査された構造と生化学的効果との相関関係である。
【0056】
この新たな教示は、いわゆるカイニン酸モデルおよび線条のNMDA誘導損傷の調査のためのモデルを用いて実施される、1つの側面でt−PAの、そして他の側面でDSPAの神経変性効果のインビボ比較実験に基づく。
【0057】
カイニン酸モデル(カイニン酸損傷モデルともいう)は、カイニン酸型(KA型)のレセプターおよびNMDAおよびAMPAグルタミン酸レセプターのアゴニストとしての、カイニン酸(KA)の外部適用による神経毒性カスケードの刺激に基づく。実験モデルとしてt−PA欠損マウス幹を用い、実験室動物のカイニン酸に対する感受性が、外部t−PAの補助的付与の後のみ、野生型マウスのレベルに到達するであることを示すことが可能である。対照的に、同じ実験条件の下でDSPAの等モル濃度の注入は、カイニン酸(KA)に対する感受性を回復しない。t−PAの神経毒性影響は、DSPAによって誘導されなかったと結論された。これらの結果の要約は、表2に示される。
【0058】
【表2】
このモデルに基づく定量的試験は、DSPA濃度の10倍増加でさえ、KA処置に対するt−PA欠損マウスの感受性が回復され得なかったこと、その一方、既に10分の1に低いt−PA濃度がKA誘導組織損傷に至ったことを示した。これは、DSPAが、KA処置後の神経変性の刺激に関して、t−PAと比較して少なくとも100分の1に低い神経毒性能力を所有するという結論に至る(図11および12もまた参照のこと)。
【0059】
神経変性の第2のモデルでは、NMDA依存性神経変性の刺激に対するt−PAおよびDSPAの可能な影響が、野生型マウスと比較された。この目的には、NMDA(NMDA型のグルタミン酸レセプターのアゴニストとして)を、野生型マウスに単独またはt−PAまたはDSPAのいずれかとの組合せで注射した。このモデルは、常に、神経変性、および血液脳関門の破壊に起因する血漿タンパク質の流入(Chenら、1999)に至る条件下で、これらプロテアーゼの影響の比較を可能にする。
【0060】
このモデル上で作業する間、NMDAの注射は、マウスの線条における再現性ある損傷に至った。これら損傷の容量は、t−PAおよびNMDAの組み合わせた注射で少なくとも50%だけ増加した。対照的に、DSPAα1との同時注射は、NDMAによって引き起こされる損傷の増加または拡張に至らなかった。NMDAによって誘導される損傷の領域中に自由に拡散し得る血漿タンパク質の存在下でさえ、DSPAは、増加する神経変性を生じなかった(表3もまた参照のこと)。
【0061】
【表3】
これらの結果は、t−PAとは対照的に、フィブリンを含まないDSPAが、哺乳動物、そしてまたヒトの中枢神経系でほぼ不活性プロテアーゼのように挙動し、そしてそれ故、KAまたはNMDAによって引き起こされる神経毒性影響に寄与しないことを示す。発作におけるt−PA様タンパク質の治療使用に対する偏見にも関わらず、この神経毒性の欠如は、DSPAを、急性発作の処置のための適切な血栓溶解剤にする。
【0062】
臨床試験の最初の結果は、これら結果をヒトにおける発作の処置に対しても移行可能であることを示す。成功した灌流の後の患者で有意な改善が達成され得ることが見出された(8ポイントNIHSSまたはNIHSSスコア0→1の改善)。表1はこのデータを示す。
【0063】
【表1】
DSPAおよびその他の非神経毒性プラスミノゲン活性化因子の神経毒性の欠如(上記を参照のこと)は、野生型t−PAとは対照的に、これらプラスミノゲン活性化因子を用いる発作処置において特別の利点を提供し、発作の発生後3時間のみの短い最大時間に限定されない。反対に、この処置はより後期、例えば6時間後またはより後期に開始され得る。なぜなら、興奮毒性応答を刺激するリスクがほぼないからである。DSPAを用いる最初の臨床試験は、発作の兆候の開始後6〜9時間に亘る範囲の時間でさえ、患者の安全処置を照明する。
【0064】
非神経毒性活性化因子での時間的に制限されない処置というこの選択肢は、特に重要である。なぜなら、それは、診断が遅延するとき、または発作の開始が十分な安全性で決定できないときでさえ、急性発作の兆候をもつ患者を処置することを、初めて可能にするからである。先行技術では、このグループの患者は、所望されないリスク推定に起因してプラスミノゲン活性化因子での血栓溶解治療から排除されていた。結果として、発作に対する血栓溶解剤の認可された使用のための必須の反適応症が排除される。
【0065】
DSPAおよびさらなる非神経毒性プラスミノゲン活性化因子は、組織損傷副作用を示さない。しかし、ヒト身体中で自然に起こるグルタミン酸により誘導される組織損傷を制限するために、発作の処置に神経保護薬剤と組合せて、それらを付与することとが有利であり得る。グルタミン酸レセプターを競争的または非競争的に阻害する神経保護薬剤が用いられ得る。有用な組合せは、例えば、NMDA型のグルタミン酸レセプター、カイニン酸型またはキスカル酸型(例えば、APV、APH、フェンシクリジン、MK−801、デキストロルファンまたはセタミン)である既知のインヒビターとともにである。
【0066】
さらに、カチオンとの組合せが有利であり得る。なぜなら、カチオン、特にZnイオンは、グルタメータレセプターにより調節されるカチオンチャネルをブロックし、そしてそれ故、神経毒性影響を減少し得るからである。
【0067】
さらに有利な実施形態では、非神経毒性プラスミノゲン活性因子は、少なくとも1つのさらなる治療剤と、または薬学的に許容可能なキャリヤーと組合せられ得る。細胞を生存させることにより組織損傷の減少を支持する治療剤との組合せは特に有利である。なぜなら、それは、既に損傷した組織の再生に寄与するか、またはさらなる発作発症の予防の役に立つからである。有利な例は、キノンのような抗生物質、ヘパリンまたはヒルジンのような抗凝固剤およびシチコリンまたはアセチルサリチル酸との組合せである。
【0068】
少なくとも1のトロンビンインヒビターとの組合せもまた有利であり得る。好ましくは、トロンボモジュリンおよびトロンボモジュリンアナログ(例えば、ソルリン、トリアビンまたはパリジピン)が用いられ得る。抗炎症性物質とのさらなる組合せもまた有利である。なぜなら、それらは、白血球による浸潤に影響するからである。
【実施例】
【0069】
(t−PAとDSPAとの比較実験は、以下の方法である:)
(1.動物)
野生型マウス(c57/Black 6)およびt−PA欠損マウス(t−PA−/−マウス)(c57/Black 6)(Carmelietら、1994)は、Peter Carmeliet博士,Leuven,Belgiumによって提供された。
【0070】
(2.脳組織からのタンパク質抽出)
t−PAまたはDSPAα1のいずれかの注入後の、脳組織におけるタンパク質分解活性の評価を、電気泳動分析によって実施した(Granelli−PipernoおよびReich,1974)。7日間の期間にわたる海馬内への注入後に、マウスを麻酔し、次いで、心臓を通して(transcardially)PBSで灌流し、そして脳を取り出した。海馬領域を取り出し、エッペンドルフ管に移し、そしてプロテアーゼインヒビターを含まない等体積(w/v)(約30〜50μm)の0.5%NP−40溶解緩衝液(0.5% NP−40、10mM Tris−HCl(pH7.4)、10mM NaCL、3mM mgCl2、1mm EDTA)中でインキュベートした。脳抽出物を、携帯型ガラスホモジナイザでホモジナイズし、そして氷上で30分間維持した。次いで、サンプルを遠心分離し、そして上清を除去した。存在するタンパク質の量を決定した(Bio−Rad試薬)
(3.プロテアーゼのザイモグラフィ分析)
サンプルおよび脳組織抽出物におけるタンパク質分解活性を、Granelli,PipernoおよびReich(1974)の方法に従って、電気泳動分析によって決定した。組換えタンパク質(100nMまで)または脳組織抽出物(20μg)を含むサンプルを、非還元条件下で(10%)SDS−PAGEに供した。ゲルをプレートから取り出し、1% Triton X 100中で2時間洗浄し、次いで、重合したフィブリノゲンおよびプラスミノゲンを含有するアガロースゲル上に重ねた(Granelli,PipernoおよびReich,1974)。タンパク質分解されたゾーンが現れるまで、加湿チャンバ内でゲルを37℃でインキュベートする。
【0071】
(4.t−PA、DSPAの海馬内注入および引き続くカイニン酸の注入)
カイニン酸損傷モデルは、Tsirkaら(1995)の研究に基づいた。動物に、アトロピン(4mg/kg)を腹腔内(i.p.)に注射し、次いで、ペントバルビタールナトリウム(70mg/kg)のi.p.注射で麻酔した。その後、マウスを、定位フレーム中に配置し、100μlのPBSまたは組換えヒトt−PA(0.12mg/ml,1.85μM)またはDSPAα1(1.85μM)のいずれかを含むミクロ浸透圧ポンプ(Alzetモデル 1007D、Alzet CA、USA)を、肩甲骨間に皮下移植した。これらのポンプを、滅菌チューブを介して脳カニューレに連結し、そしてバー開口部を通って挿入し、正中栓付近に液体を導入するために、座標ブレグマ−2.5mm、座標中外側0.5mmおよび座標背腹側1.6mmで、頭蓋を通した。このカニューレを、所望の位置で固定し、そしてこれらのポンプを、それぞれの溶液を時速0.5μlで合計7日間注入させた。
【0072】
プロテアーゼ注入の2日後、マウスを再麻酔し、そして再度、定位フレーム中に配置した。その後、0.3μlPBS中の1.5nmolのカイニン酸(KA)を、海馬中に片側性に注射した。これらの座標は、以下であった:ブレグマ−2.5mm、中外側1.7mmおよび背腹側1.6mm。この興奮毒(KA)を、30秒間送達した。このカイニン酸処置後、液体の逆流を防ぐために、この注射針を、さらに2分間これらの座標に留めた。
【0073】
5.脳プロセシング手順
KA注射5日後、これらの動物を麻酔し、そして経噴門的に30mlのPBSで還流し、続いて70mlの4%パラホルムアルデヒド溶液で還流し、同じ固定液中で後固定し、続いて30%ショ糖中でさらに24時間インキュベーションした。脳の冠状切片(40μm)を、次いで、凍結ミクロトーム上で切断し、そしてチオニン(BDH、Australia)で対比染色するかまたは以下に記載されるように、免疫組織化学試験のために処理した。
【0074】
(6.海馬内でのニューロン喪失の定量)
海馬のCA1−CA3亜領域内でのニューロン喪失の定量を、以前(Tsirkaら,1995;Tsirkaら,1996)に記載されたとおりに行った。全ての処置群からの背側海馬の連続した5つの部分を、その部分が実際にCA注射および損傷領域の場所を含むことに注意しながら調製した。これらの切片の海馬の亜領域(CA1〜CA3)を、海馬のカメラルシダーの図によってトレースした。亜領域全体の長さを、同じ倍率でトレースした1mm標準への比較によって測定した。生存可能な錐体ニューロンを有する(正常な形態を有する)組織の長さおよびニューロンのない(細胞が存在せず、チオニン染色もない)組織の長さを決定した。これらの長さは、各海馬亜領域についてのインタクトなニューロンおよびニューロン喪失を表す。これらの長さを切片毎に平均し、そして標準偏差を決定した。
【0075】
(7.t−PAまたはDSPAを有するかまたは有さない、線条体内NMDA興奮毒性損傷)
野生型マウス(c57/Black 6)に麻酔し、そして定位フレーム内に配置した(上記を参照のこと)。次いで、マウスに、単独で、または46μM rt−PAもしくは46μM DSPAα1のいずれかと組み合わせて注射した、50nmol NMDAの片側注射を左側の層に受けさせた。コントロールとして、t−PAおよびDSPAもまた(いずれも、46μMの濃度にて)単独で注射した。この注射の座標は以下の通りであった:ブレグマ−0.4mm、側方中間(midiolateral)2.0mmおよび背腹側2.5mm。溶液(全ての処置について1μl総体積)を、0.2μl/分の速度で5分間の期間にわたって移し、そして液体の逆流を最小にするために、注射後、針をさらに2分間適所に配置した。24時間後、これらのマウスに麻酔をかけ、そして30ml PBS、続いて70mlの4%パラホルムアルデヒド溶液で、心臓を経て灌流し、同じ固定剤中で24時間にわたって事後固定し、続いて30%スクロース中でさらに24時間にわたってインキュベートした。次いで、脳を、凍結ミクロトームで切断(40μm)し、そしてゼラチンをコーティングしたスライドガラスに載せた。
【0076】
(8.NMDA注射後の損傷体積の定量)
線条体損傷体積の定量を、Callawayら(2000)によって記載された方法を用いて行った。損傷を受けた領域にまたがる10個の連続する冠状縫合切片を調製した。この損傷を受けた領域を、Callaway法を用いて可視化し、そして損傷体積を、マイクロコンピュータ画像化デバイス(MCID,Imaging Research Inc.,Brock University,Ontario,Canada)の使用によって定量した。
【0077】
(9.免疫組織化学)
免疫組織化学を、標準的な方法論を使用して行った。結腸切片を、3% H2O2および10%メタノールの溶液に5分間浸漬し、続いて5%正常ヤギ血清中で60分間インキュベートした。この切片を、星状細胞検出のための抗GFAP抗体(1:1000;Dako,Carpinteria,CA,USA)、小膠細胞の検出のための抗MAC−1抗体(1:1000,Serotec,Raleigh,NC,USA)またはポリオクローナル抗DSPA抗体(Schering AG,Berlin)のいずれかとともに、一晩インキュベートした。すすいだ後、この切片を適切なビオチン化二次抗体(Vector Laboratories,Burlingame,CA,USA)とともにインキュベートした。これに続いて、アビジン/ビオチン−複合体(Vector Laboratories,Burlingame,CA,USA)とともに60分間最後にインキュベートした後、3,3’−ジアミンベブシジン(diaminebebcidine)/0.03% H2O2で可視化した。次いで、切片を、ゼラチンコーティングしたスライドガラスに載せ、乾燥させ、脱水し、permountとともにカバースリップを載せた。
【0078】
(B.結果)
(1.t−PAまたはDSPAの注入は、t−PA−/−マウスの海馬に分散し、タンパク質分解活性を保持する)
最初の実験を、DSPAおよびt−PAの両方が、注入の7日間にわたって、それらのタンパク質分解活性を保持することを確認するように設計した。この目的のために、t−PAおよびDSPAのアリコート(100nmol)を、水浴中で37℃および30℃にて7日間インキュベートした。タンパク質分解活性を決定するために、プローブの5倍連続希釈物を、非還元条件下でSDS−PAGEに供し、タンパク質活性をザイモグラム分析により評価した。7日間凍結したままで維持したt−PAおよびDSPAのアリコートを、コントロールとして使用した。図1に認められ得るように、30℃または37℃いずれかでのインキュベーションのときに、この期間の間にDSPA活性またはt−PA活性がごくわずかに喪失した。
【0079】
(2.t−PA活性およびDSPA活性は、注入後にt−PA−/−マウスから調製された海馬抽出物中で回収される)
まず、注入したプロテアーゼが、注入した動物の脳に存在し、それらのタンパク質分解活性もまた保持すると同時に、この区画に存在することを確認しなければならなかった。この点に対処するために、t−PA−/−に、t−PAまたはDSPAのいずれかを7日間にわたり注入した(上記を参照のこと)。次いで。心臓を介してマウスをPBSで灌流し、脳を取り出した。同側海馬領域および対側海馬領域を単離し、同様に、小脳領域もまた単離した(ネガティブコントロールとして)。組織サンプル(20μg)を、方法の節における記載に従って、SDS−PAGEおよびザイモグラム分析に供した。図2に認められ得るように、t−PA活性およびDSPA活性の両方を、海馬の同側領域中で検出したのに対し、いくらかの活性が、対側でも検出された。このことは、注入したプロテアーゼが、脳においてそれらの活性を維持しているのみならず、海馬領域に拡散したこともまた示す。コントロールとして、小脳から調製した抽出物中では活性を検出することはできなかった。
【0080】
(3.DSPAの免疫組織化学的評価)
DSPAが、海馬領域に実際に拡散したことをさらに確認するために、t−PA−/−マウスの冠状脳切片を、DSPA注入後に、免疫組織化学的に分析した。DSPA抗原は、海馬領域において検出され、注入部位の領域において最も顕著に染色された。この結果により、注入されたDSPAが可溶性であり、かつ実際に海馬に存在することが確認される。
【0081】
(4.DSPA注入は、インビボでカイニン酸媒介性ニューロン変性を修復しない)
t−PA−/−マウスは、特徴として、カイニン酸(KA)媒介性ニューロン変性に耐性である。しかし、rt−PAの海馬内注入は、KA媒介性障害に対する感受性を完全に回復する。DSPAが、このモデルにおいてt−PAと置換され得るか否かを決定するために、t−PA−/−マウスの海馬内に、t−PAまたはDSPAのいずれかを、ミニ浸透圧ポンプを使用して注入した。両方の群について、12匹のマウスを試験した。2日後、動物にカイニン酸を注射し、回収するまで放置した。5日後、動物を屠殺し、その脳を取り出し、調製した(上記のように)。コントロールとして、KA処理前に、t−PA−/−マウスに、PBSもまた注入した(N=3)。
【0082】
冠状脳切片を調製し、Nissl染色により、ニューロンを検出した。図4に示されるように、PBSを注入したt−PA−/−マウスは、KAでの引き続くチャレンジに耐性であった。しかし、組換えt−PAの注入は、KA処理に対する感受性を回復させた。対照的に、同じ濃度のDSPAの海馬領域への注入は、動物のKAに対する感受性を変化させなかった。
【0083】
これらの結果の定量は、各群において12匹のマウスから得られたデータに基づいた。DSPAを注入した12匹のマウスのうちの2匹において、小さな程度のニューロン変性が観察された。その理由は未知であり、DSPAの存在におそらく関連しない。データを合わせて、これらの2匹の動物の場合において観察された小さな効果を検討する。t−PAで処置した12匹全てのマウスは、KA処置に対して感受性であった。これらの結果は、等モル濃度でのt−PAまたはDSPAα1の注入の場合に、t−PAの投与のみが、KA誘導性ニューロン変性に対する感受性の回復をもたらしたことを示す。
【0084】
(5.DSPA注入は、小膠活性化を生じない)
t−PA注入によって引き起こされるt−PA−/−マウスのKA感受性の回復はまた、小膠活性化を生じる(Rogoveら、1999)。t−PAまたはDSPA注入および引き続くKA処置後の小膠活性化の程度を評価するために、マウスの冠状切片を、Mac−1抗体を使用する活性化小膠細胞についての免疫組織化学的染色に供した。t−PA注入後のKA感受性回復は、Mac−1ポジティブ細胞の明らかな増加を生じた。このことは、DSPAを注入したマウスにおいては観察されなかった。従って、DSPAの存在は、KA処置後の小膠細胞の活性化を生じない。
【0085】
(6.マウス海馬領域におけるDSPAおよびt−PAの力価測定)
注入に使用したt−PAの濃度は、Tsirkaら(1995)によって記載される濃度(0.12mg/mlを100μl[1.85μM])に基づいた。KA傷害実験を、10分の1のt−PA(0.185μM)および10倍高いDSPA(18.5μM)を使用して反復した。より低いt−PA濃度は、なお、KA処置に対する感受性を回復させることができた(n=3)。特に興味深いのは、10倍高いDSPA濃度の注入が、KA処置後のニューロン喪失をほとんど引き起こさないという知見であった。これらのデータは、DSPAが、KAに対する感受性の増大をもたらさないことを強く指摘する。
【0086】
(7.野生型マウスにおけるt−PAおよびDSPAのNMDA依存性ニューロン変性に対する効果)
t−PAおよびDSPAの効果もまた、野生型マウスにおけるニューロン変性のモデルにおいて試験した。これらのマウスの線条におけるt−PAの注入は、グルタミン酸アナログNMDAによって引き起こされるニューロン変性効果の増大をもたらした(Nicoleら、2001)。
【0087】
NMDAを、総容積1μlで、t−PAまたはDSPA(各46μM)の存在下で、野生型マウスの線条領域に注射した。24時間後に、脳を取り出し、病巣のサイズを、Callaway法(Callawayら、2000)に従って、定量した(上記を参照のこと)。図7において認められ得るように、NMDA単独の注射は、全ての処置マウスにおいて再現可能な病巣を引き起こした(N=4)。t−PAおよびNMDAをともに適用した場合、病巣のサイズは、約50%増大した(P<0.01、n=4)。明らかに対照的に、NMDAおよび同じ濃度のDSPAの同時注射は、NMDA単独と比較して、病巣サイズの増大をもたらさなかった。
【0088】
t−PAまたはDSPAの単独での注射は、検出可能なニューロン変性をもたらさなかった。単独で投与される場合、t−PAの効果の欠如は、Nicoleら(2001)の結果と一致する。これらのデータは、DSPAの存在が、ニューロン変性事象の間ですら、ニューロン変性を増大させないことを示す。
【0089】
DSPAの注射が、海馬領域に実際に拡がった否かを確かめるために、DSPA抗体の使用によって、冠状切片に対して免疫組織化学を行った。この試験により、DSPAのアリコートは、線条領域内に実際に入ることが示された。
【0090】
(間接的クロモゲン試験によるプラスミノゲン活性化の動力学的分析)
t−PA活性の間接的クロモゲン試験を、基質Lys−プラスミノゲン(American Diagnostica)およびspectrocyme PL(American Diagnostica)を用いて、Madisan E.L.,Goldsmith E.J.,Gerard R.D.,Gething M.J.,Sambrook J.F.(1989)Nature 339:721−724;Madison E.LO.,Goldsmith E.J.,Gething M.J.,Sambrook J.F.およびBassel−Duby R.S.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,3530−3533、ならびにMadison E.L.,Goldsmith E.J.,Gething M.J.,Sambrook J.F.およびGerard R.D.(1990)J.Biol.Chem.265,21423−21426に従って行った。補因子DESAFIB(American Diagnostica)の存在下および非存在下の両方で試験を行った。DESAFIBは、プロテアーゼバトロキソビンでの非常に純粋なヒトフィブリノゲンの切断によって得られる可溶性フィブリンモノマーの調製物である。バトロキソビンは、フィブリノゲンのAα鎖におけるArg16−Gly17結合を切断し、それによってフィブリノペプチドAを放出する。フィブリンIモノマーを示す、得られたdes−AA−フィブリノゲンは、ペプチドGly−Pro−Arg−Proの非存在下で可溶性である。Lys−プラスミノゲンの濃度を、DESAFIBの存在下では0.0125μM〜0.2μMまで、補因子の非存在下では、0.9μM〜16μMまで変化させた。
【0091】
(異なる刺激の存在下での間接的クロモゲン試験)
間接的クロモゲン標準試験を、上記の刊行物に従って行った。0.25〜1ng酵素、0.2μM Lys−プラスミノゲン、および0.62mM spectrocyme PLを含む、総容積100μlのプローブを使用した。緩衝液、25μg/ml DESAFIB、100μg/ml フィブリノゲンの臭化シアンフラグメント(American Diagnostica)または100μg/mlの刺激性の13アミノ酸のペプチドP368のいずれかの存在下で試験を行った。分析をマイクロタイタープレート中で行い、光学密度を、「Molecular Devices Thermomax」において、1時間の間30秒ごとに、405nm波長で決定した。反応温度は、37℃であった。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは発作の処置のための、Desmodus rotundusの唾液に特に由来する非神経毒性プラスミノゲン活性化因子(DSPA)の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる臨床像が、それらの臨床的症状に相関する用語「発作」の下でまとめられている。それぞれの病因に従って、いわゆる虚血性発作における臨床像と出血性発作における臨床像との間のこれらの第1の差異があり得る。
【0003】
虚血性発作(虚血)は、動脈血液供給の欠如に起因して脳内の血液循環の減少または中断により特徴づけられる。しばしば、このことは、それぞれ動脈硬化により狭窄した血管の血栓症または動脈性心臓塞栓症によって引き起こされる。
【0004】
出血性発作は、特に、動脈高血圧症によって損傷を受けた脳血液供給動脈(brain supplying arteria)の灌流に基づく。しかし、全ての大脳発作のうちのわずか約20%が出血性発作によって引き起こされる。従って、血栓症に起因する発作は、遙かに関連性がある。
【0005】
他の組織虚血に比較して、神経組織の虚血は、変化がもたらされた細胞の壊死を広く伴う。ニューロン組織における壊死のより高い発生率は、複数の反応工程を含む複雑なカスケードである現象「興奮特性」の新たな知識により説明されうる。そのカスケードは、酸素の欠如によって影響を受ける虚血ニューロンによって開始され、次いで、すぐにATPを失い、脱分極する。このことによって、神経伝達物質であるグルタミン酸の増大したシナプス後放出を生じ、このことにより、膜結合グルタミン酸レセプター(これは、カチオンチャネルを調節する)を活性化する。しかし、増大したグルタミン酸放出に起因して、グルタミン酸レセプターは、過剰に活性化される。
【0006】
グルタミン酸レセプターは、グルタミン酸のそのレセプターへの結合によって開口する、電圧依存性カチオンチャネルを調節する。このことは、Na+とCa2+の細胞への流入を生じ、Ca2+依存性細胞代謝を広く妨害する。特に、Ca2+依存性異化酵素の活性化は、その後の細胞死の理由を与える(Lee,Jin−Moら「The changing landscape of ischaemic brain injury mechamisms」;Dennis W.Zhol「Glutamate neurotoxicity and diseases of the nervous system」)。
【0007】
グルタミン酸媒介性神経毒性の機構は、まだ完全には理解されていないものの、大脳虚血後のニューロン細胞死に大きく寄与していることに意見が一致している(Jin−Mo Leeら)。
【0008】
生命機能を保護すること、および生理学的パラメーターを安定化させることの他に、閉塞した血管を再び開口することは、急性の大脳虚血の治療において優先される。再開口は、異なる手段によって行われ得る。今までは、例えば、心臓発作後のPTCAのような機械的再開口のみでは、まだ満足行く結果をもたらしていなかった。首尾よい線維素溶解によってのみ、患者の生理学的状態の許容可能な改善は、達成され得る。このことは、カテーテルを用いる局所的適用(PROCAT、プロウロキナーゼを用いる研究)によって達成されうる。しかし、第1のポジティブな結果にかかわらず、この方法は未だ、薬学的処置として公的に認められていない。
【0009】
天然に存在する繊維溶解は、セリンプロテアーゼであるプラスミン(触媒作用(活性化)によりその不活性前駆体から生じる)のタンパク質分解活性に基づく。プラスミノゲンの天然の活性化は、身体中に天然に存在するプラスミノゲン活性化因子u−PA(ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子)およびt−PA(組織プラスミノゲン活性化因子)によって触媒される。u−PAとは対照的に、t−PAは、フィブリンおよびプラスミノゲンとともに、いわゆる活性化因子複合体を形成する。従って、t−PAの触媒活性は、フィブリン依存性であり、その存在を約550倍に増強する。フィブリンの他に、フィブリノゲンもまた、より少ない程度ではあるが、プラスミノゲンからプラスミンへのt−PA媒介性触媒を刺激し得る。フィブリノゲンの存在下では、t−PA活性は、25倍増大するのみである。またフィブリンの切断産物(フィブリン分解産物(FDA))は、t−PAを刺激する。
【0010】
急性発作の血栓溶解処置の初期の試みは、1950年代に遡る。ストレプトキナーゼ、β溶血連鎖球菌由来のフィブリン溶解薬剤での最初の広範な臨床試験は、ようやく1995年に始まった。プラスミノゲンとともに、ストレプトキナーゼは、他のプラスミノゲン分子をプラスミンに触媒する複合体を形成する。
【0011】
ストレプトキナーゼでの治療は、重大な欠点を有する。なぜなら、ストレプトキナーゼは、細菌性プロテアーゼであり、従って、身体においてアレルギー反応を誘起しうるからである。さらに、抗体の生成を含む前者の連鎖球菌感染に起因して、患者は、いわゆるストレプトキナーゼ耐性を示し得、このことは、治療をより困難にする。このほかに、欧州での臨床試験(欧州の多施設急性発作治験(MAST−E)、イタリアの多施設急性発作治験(MAST−I)およびオーストラリアでの臨床試験(オーストラリアのストレプトキナーゼ治験(AST))は、ストレプトキナーゼで患者を処置した後の増大した死亡率の危険性および脳内出血(脳内出血(ICH))のより高い危険性を示した。これらの治験は、早期に終了されなければならなかった。
【0012】
あるいは、ウロキナーゼ(これもまた、伝統的な線維素溶解性薬剤である)が適用されうる。ストレプトキナーゼとは対照的に、ウロキナーゼは、抗原性特徴を示さない。なぜなら、ウロキナーゼは、種々の身体組織に天然に存在する酵素であるからである。ウロキナーゼは、プラスミノゲンの活性化因子であり、補因子とは無関係である。ウロキナーゼは、腎臓細胞培養物中で生成される。
【0013】
治療的血栓溶解に対する広範な経験が、組織型プラスミノゲン活性化因子(いわゆるrt−PA)について利用可能であり(EP0093619、米国特許第4,766,075号を参照のこと)、この組織型プラスミノゲン活性化因子は、組換えハムスター細胞において生成される。90年代には、主な適応症として、急性心筋梗塞に対する、t−PAを使用するいくつかの臨床試験が、世界中で行われた。これは、部分的に理解できない矛盾する結果をもたらした。いわゆる欧州急性発作治験(ECASS)において、患者は、発作の症状の発生から6時間の時間枠内で、t−PAを静脈内に処置された。90日後、死亡率ならびにBarthel指数を、患者の疾病または無関係の生存についての指標として調べた。生存の有意な改善は報告されなかったが、有意ではなかったものの、死亡率の増加が報告された。従って、発作の開始直後に、それぞれの病歴に従って個々に選択されたrt−PAでの患者の血栓溶解処置は、おそらく有利であり得た。しかし、発作の発生から6時間の時間枠内でのrt−PAの一般的な使用は、推奨されなかった。なぜなら、この時間の間の適用は、脳内出血(ICH)の危険性を増大させるからである(C.Lewandowski CおよびWiliam Barson、2001;Treatment of Acute Stroke;Annals of Emergency Medicine 37:2;S.202 ff)。
【0014】
発作の血栓溶解処置はまた、米国のNational Institute of Neurologic Disorder and Strokeによって行われた臨床試験(いわゆるNINDS rtPA発作治験)の主題であった。この治験は、症状の発生からわずか3時間後内の静脈内rt−PA処置の効果に対して集中していた。患者は、処置の3ヶ月後まで調べられた。この処置の患者の生存に対する観察されたポジティブな結果に起因して、3時間のこれらの限られた時間枠内でのrt−PA処置が推奨されたが、筆者らは、ICHのより高い危険性が見いだした。
【0015】
2つのさらなる研究(ECASS II治験:Alteplase Thrombolysis for Acute Noninterventional Therapy in Ischaemic Stroke(ATLANTIS))により、発作の発生から3時間後内のrt−PA処置のポジティブな効果が、6時間内の処置を用いてなお繰り返されるか否かを調べた。しかし、この問題には、確かな答えが出なかった。なぜなら、臨床症状の改善も、死亡率の低下も全く観察されなかったからである。ICHのより高い危険性が残ったままであった。
【0016】
それらの部分的に矛盾する結果は、rt−PAの使用における高い警戒をもたらした。既に1996年には、American Heart Associationの刊行物により、発作の血栓溶解処置に関する医師の間で、強い懐疑が指摘されたのに対して;心筋梗塞の治療における線維素溶解に関するそのような懸念はない(van Gijn J,MD,FRCP,1996−Circulation 1996,93:1616−1617)。
【0017】
この懐疑の後ろにある道理は、まず、1997年に公表された(2001年3月に更新された)全ての発作治験のまとめにおいて示された。この総説によれば、全ての血栓溶解処置(ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、rt−PAまたは組換えウロキナーゼ)は、発作から最初の10日間後内に有意により高い死亡率を生じたが、死亡患者または疾病患者いずれの総数も、血栓溶解の場合、発作の発生から6時間後以内に適用した場合、減少した。この効果は、主にICHに起因した。発作の処置のための血栓溶解の広範な使用は、従って、推奨されなかった。
【0018】
以前ですら、このような結果により、いくらかの他の著者らは、発作の患者は、死亡か、生存はするが障害が残るかのいずれかの選択を有するだけという辛辣な記事を示した(SCRIP 1997:2265,26)。
【0019】
にもかかわらず、これまで、rt−PAでの処置は、米国において、食品医薬局(FDA)により認可された急性脳虚血の処置のみである。しかし、この処置は、発作の発生から3時間後以内のrt−PAの処置の適用に制限されていた。
【0020】
rt−PAの認可は、1996年に通達された。以前は、1995年に、t−PAのネガティブな副作用(これは、3時間の時間枠外で発作処置に適用した場合、その劇的な効果についての説明の根拠を提供する)についての最初の通知が知られた。従って、海馬の小膠細胞はおよび神経細胞は、グルタミン酸媒介性興奮毒性に寄与するt−PAを生成する。これは、グルタミン酸アゴニストを、それぞれ、t−PA欠損マウスおよび野生型マウスの海馬に注射した場合のt−PA欠損マウスおよび野生型マウスに対する比較研究から結論づけられる。t−PA欠損マウスは、外因的に(クモ膜下腔内)適用されたグルタミン酸に対する有意に高い耐性を示した(Tsirka SEら、Nature,Vol.377,1995「Excitoxin−induced neuronal degeneration and seizure are mediated by tissue plasminogen activator」)。これらの結果は、Wangらが、t−PAを静脈内注射した場合、t−PA欠損マウスの壊死ニューロン組織のほぼ2倍の量を証明することができたときに、1998年に確認された。野生型マウスに対する外因的t−PAのこのネガティブな効果は、わずか約33%であった(Wangら、1998,Nature「Tissue plasminogen activator(t−PA) increases neuronal damage after focal cerebral ischaemia in wild type and t−PA deficient mice」)。
【0021】
t−PAによる興奮毒性の刺激に対するさらなる結果が、2001年初めにNicoleら(Nicole O.,Docagne F Ali C;Margaill I;Carmeliet P;MacKenzie ET、Vivien DおよびBuisson A,2001;The proteolytic activity of tissue−plasminogen activator enhances NMDA receptor−mediated signaling;Nat Med 7,59〜64)により刊行された。彼等は、脱分極された皮質ニューロンにより放出されるt−PAが、NMDA型のグルタミン酸レセプターのいわゆるNR1サブユニットと相互作用してNR1の切断をもたらし得ることを証明し得た。これは、このレセプターの活性を増加して、グルタミン酸アゴニストであるNMDAが適用された後により多くの組織損傷を生じる。このNMDAアゴニストは、興奮毒性を誘導した。従って、t−PAは、NMDA型のグルタミン酸レセプターを活性化することによって、神経毒性効果を示す。
【0022】
さらなる説明的概念によると、t−PAの神経毒性は、プラスミンにおけるプラスミノゲンの転換から間接的に生じる。このモデルによると、プラスミンは、神経毒性のエフェクターである(Chen ZLおよびStrickland S,1997;Neuronal Death in the hippocampus is promoted by plasmin−catalysed degradation of laminin、Cell:91,917〜925)。
【0023】
t−PAの時間依存性神経毒性効果の概略が、図9に示される。この図9にはまた、内因性t−PAと比較した組換えt−PAの毒性増加が明らかになることもまた、示される。これは、おそらく、rt−PAが、より高濃度で組織に侵入可能であることに起因する。
【0024】
その神経毒性副作用および死亡率に対する増加する影響にも関わらず、t−PAは、FDAによって認可された。これは、有害性および有効な選択肢がないことによってのみ説明され得る。従って、これは、非常に実用的な費用便益分析に起因する。従って、未だに安全な治療についての必要性が存在する。しかし、その治療が血栓崩壊剤に基づく場合、血栓崩壊に対する代替法を見出すことは可能ではない場合に備えて、神経毒性の問題が考慮されなければならない(例えば、Wangら、a.a.O.;LewandowskiおよびBarson 2001 a.a.O.を参照のこと)。
【0025】
従って、発作についての新規な薬物を開発するために、DSPA(Desmodus rotundus プラスミノゲン活性化因子(Plasminogen Activator)を含む公知の血栓崩壊剤のさらなる試験が終了したが、原則的にすべての血栓崩壊剤は、潜在的に適切である。特にDSPAの場合、この医療適用にとって可能な適切さが、以前に指摘された(Medan P;Tatlisumak T;Takano K;Carano RAD;Hadley SJ;Fisher M:Thrombolysis with recombinant Desmodus saliva plasminogen activator(rDSPA) in a rat embolic stroke model;Cerebrovasc Dis 1996:6;175〜194(4th International Symposium on Thrombolic Therapy in Acute Ischaemic Stroke)。DSPAは、t−PAと高い相同性(類似性)を有するプラスミノゲン活性化因子である。従って、t−PAの神経毒性副作用から生じる幻滅に加えて、DSPAが発作処置のために適切な薬物であることについてさらなる期待は存在しなかった。
【0026】
代わりに、公知の血栓崩壊処置を改善することを目的とする最近のストラテジーは、血栓崩壊物質をもはや静脈内適用を試みないが、脈管内血栓付近に直接カテーテルを介して動脈内適用を試みる。最初の経験は、組換え生成されたウロキナーゼを用いて利用可能である。従って、おそらく、血栓崩壊のために必要な用量およびそれに伴う負の副作用は、減少され得る。しかし、この適用には、高い技術的出費が必要であり、どこででも利用可能ではない。さらに、患者は、時間がかかる行為にて準備されなければならない。しかし、時間がしばしば制限されている。従って、この準備は、さらなる危険を提供する。
【0027】
現在、新しい概念が、抗凝固剤(例えば、ヘパリン、アスピリンまたはアンクロド)に対している。アンクロドは、マレーシア穴ヘビ(malayna pit viper)の毒中にある活性物質である。しかし、ヘパリンの効果を試験する2つのさらなる臨床試験(International Stroke Trial(IST)およびTrial of ORG 10172 in Acute Stroke Treatment(TOAST))は、発作の死亡率の有意な改善も発作の予防も示さない。
【0028】
さらなる新規な処置は、血栓に対しても、血液低粘稠化に対しても、抗凝固に対しても焦点を合わせず、血液供給の妨害により損傷した細胞の生存性を高めることを試みる(WO 01/51613 A1およびWO 01/51614 A1)。これを達成するために、キノン、アミノグリコシドまたはクロラムフェニコールの群からの抗生物質が、適用される。同様の理由で、発作の発症後にシチコリン(citicholin)の直接適用を始めることが、さらに示唆される。身体において、シチコリンは、シチジンとコリンとに切断される。これらの切断産物は、神経細胞膜の一部を形成し、従って、損傷組織の再生を支持する(米国特許第5,827,832号)。
【0029】
安全な処置に関する最近の研究は、死に到る発作の結果の一部が、妨害された血液供給によって間接的にのみ生じるが、過剰活性化グルタミン酸レセプターを含む興奮毒性または神経毒性に直接的には引き起こされないという、新規な知見に基づく。この影響は、t−PAによって増加される(上記を参照のこと)。従って、興奮毒性を減少するための概念は、いわゆる神経保護剤(neuroprotective)を適用することである。これらは、神経毒性効果を最小にするために、個別に使用され得るか、またはフィブリン溶解剤と組み合わせて使用され得る。これらは、直接的に(例えば、グルタミン酸レセプターアンタゴニストとして)かまたは電位依存性ナトリウムチャネルもしくはカルシウムチャネルを阻害することにより間接的に、興奮毒性の減少をもたらし得る(Jin−Mo Leeら、a.a.O.)。
【0030】
NMDA型のグルタミン酸レセプターの競合阻害(アンタゴニスト作用)が、例えば、2−アミノ−5−ホスホノバレレート(phosphonovalerate)(APV)または2−アミノ−5−ホスホノヘプタノエート(phosphonoheptanoate)(APH)と起こり得る。非競合阻害が、例えば、上記チャネルのフェンシクリジン側に結合する物質によって、達成され得る。このような物質は、フェンシクリジン、MK−801、デキストロファン(dextrophane)またはセタミン(cetamine)であり得る。
【0031】
従来、神経保護剤による処置は、予期された成功を示さなかった。これはおそらく、神経保護剤が、その保護効果を示すために血栓崩壊剤と合わせられなければならなかったからである。これは、他の物質に当てはまる(図10も参照のこと)。
【0032】
t−PAと神経保護剤との組み合わせでさえ、制限された損傷しか生じない。それにも関わらず、このようにフィブリン溶解剤の不利な神経毒性は回避される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0033】
従って、ヒトにおける発作の処置のための新規な治療概念を提供することが、本発明の目的である。
【0034】
本発明によると、発作の治療的処置のための非毒性プラスミノゲン活性化因子の使用が、項目1に概略されるように示唆される。さらなる有利な使用は、それぞれ、独立項目およびさらなる従属項目の主題である。
【0035】
本発明の中心的考えは、発作の処置におけるプラスミノゲン活性化因子の使用であり、成熟酵素が活性を示す、これは、フィブリンマニホールド(manifold)により選択的に(すなわち、650倍より多く)増加される。
・本発明は、以下を提供し得る:
・(項目1)
発作の処置のためのプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子のフィブリン特異性は、野生型t−PAと比較して増強されている、使用。
・(項目2)
項目1に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子は、アスパラギン酸残基と一緒になってチモーゲン三つ組残基の少なくとも一部を形成する、少なくともヒスチジン残基またはセリン残基を含む、使用。
・(項目3)
項目2に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、上記セリン残基は、t−PAの292位と少なくとも部分的に一致する位置に位置し、上記ヒスチジン残基は、t−PAの305位と少なくとも部分的に一致する位置に位置し、そして上記アルパラギン酸残基は、t−PAの447位と少なくとも部分的に一致する位置に位置する、使用。
・(項目4)
項目3に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子は、以下のt−PA変異体:t−PA/R275E;t−PA/R275E,F305H;t−PA/R275E,F305H,A292Sからなる群より選択される、使用。
・(項目5)
項目1に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子は、Asp194または一致する位置にあるアスパラギン酸の点変異を保有し、これにより、フィブリンの非存在下における当該プラスミノゲン活性化因子の触媒的に活性な立体構造の安定性が減少される、使用。
・(項目6)
項目5に記載の使用であって、Asp194が、グルタミン酸またはアスパラギンによって置換されている、使用。
・(項目7)
項目6に記載の使用であって、t−PAが、Asp194からGlu194またはAsn194への置換を保有する、使用。
・(項目8)
項目1に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子は、当該因子中の自己分解ループ中に少なくとも1つの変異を含み、当該変異により、フィブリンの非存在下でのプラスミノゲンとプラスミノゲン活性化因子との間の機能的相互作用が減少される、使用。
・(項目9)
項目8に記載の使用であって、上記自己分解ループ中の少なくとも1つの変異が、野生型t−PAのアミノ酸420位〜423位または一致する位置に影響を与える、使用。
・(項目10)
項目9に記載の使用であって、上記変異が、以下の変異体:L420A、L420E、S421G、S421E、P422A、P422G、P422E、F423AおよびF423Eからなる群より選択される、使用。
・(項目11)
項目1に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子が、プラスミンによる触媒を妨げる少なくとも1つの点変異を含むチモーゲンである、使用。
・(項目12)
項目11に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、上記点変異が、t−PAの15位〜275位またはその位置に一致する位置に位置する、使用。
・(項目13)
項目12に記載の使用であって、グルタミン酸が15位または275位にある、使用。
・(項目14)
項目1に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該プラスミノゲン活性化因子が、血吸いコウモリの唾液から単離された(DSPA)、使用。
・(項目15)
発作発症の少なくとも3時間後のヒトにおける発作の治療的処置のための、項目1〜14のうちの少なくとも1項に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用。
・(項目16)
発作発症の少なくとも6時間後のヒトにおける発作の治療的処置のための、項目1〜15のうちの少なくとも1項に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用。
・(項目17)
発作発症の少なくとも9時間後のヒトにおける発作の治療的処置のための、項目1〜16のうちの少なくとも1項に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用。
・(項目18)
発作患者の治療的処置のための項目1〜17のうちの少なくとも1項に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用であって、当該発作の発症は、一時的であって正確には決定されていない、使用。
・(項目19)
野生型t−PAの神経毒性を回避している発作の治療のための、項目1〜18のうちの少なくとも1項に記載のプラスミノゲン活性化因子の使用。
・(項目20)
His420、Asn42、Ala422およびCys423を含む、自己分解ループを含む組織プラスミノゲン活性化因子。
・(項目21)
項目20に記載の組織プラスミノゲン活性化因子であって、194位における点変異により特徴付けられ、当該点変異は、フィブリンの非存在下における当該プラスミノゲン活性化因子の触媒的な活性な立体構造の安定性を減少させる、組織プラスミノゲン活性化因子。
・(項目22)
Phe194を特徴とする、項目21に記載の組織プラスミノゲン活性化因子。
・(項目23)
項目20〜22のうちの少なくとも1項に記載の組織プラスミノゲン活性化因子であって、プラスミンによる触媒を妨げる少なくとも1つの点変異を特徴とする、組織プラスミノゲン活性化因子。
・(項目24)
Glu275を特徴とする、項目23に記載の組織プラスミノゲン活性化因子。
・(項目25)
配列番号1に従うアミノ酸配列を有する、組織プラスミノゲン活性化因子。
・(項目26)
Val420、Thr421、Asp422、およびSer423を含む、自己分解ループを含むウロキナーゼ。
・(項目27)
項目26に記載のウロキナーゼであって、194位における点変異によって特徴付けられ、当該点変異は、フィブリンの非存在下での当該ウロキナーゼの触媒活性な立体構造の安定性を減少させる、ウロキナーゼ。
・(項目28)
Glu194により特徴付けられる、項目27に記載のウロキナーゼ。
・(項目29)
項目26〜28のうちの少なくとも1項に記載のウロキナーゼであって、プラスミンによる触媒を妨げる少なくとも1つの点変異により特徴付けられる、ウロキナーゼ。
・(項目30)
Ile275により特徴付けられる、項目29に記載のウロキナーゼ。
・(項目31)
配列番号2に従うアミノ酸配列を有する、ウロキナーゼ。
・(項目32)
項目1〜31のうちの少なくとも1項に記載のプラスミノゲン活性化因子と、少なくとも1つのさらなる薬学的に活性な構成成分またはその薬学的に受容可能な塩とを含む、薬学的組成物。
・(項目33)
神経保護因子を特徴とする、項目32に記載の薬学的組成物。
・(項目34)
グルタミン酸レセプターアンタゴニストを特徴とする、項目33に記載の薬学的組成物。
・(項目35)
競合性アンタゴニストまたは非競合性アンタゴニストを特徴とする、項目34に記載の薬学的組成物。
・(項目36)
項目33に記載の薬学的組成物であって、少なくとも1つのトロンビンインヒビターを特徴とし、当該トロンビンインヒビターは、以下の物質:トロンボモジュリン、トロンボモジュリンアナログ、トリアビン、パリジピン、またはソルリンからなる群より優先的に選択される、薬学的組成物。
・(項目37)
項目33に記載の薬学的組成物であって、少なくとも1つの抗凝固剤を特徴とし、当該抗凝固剤は、以下の抗凝固剤:ヒルジン、ヘパリン、アセチルサリチル酸またはアンクロドからなる群より優先的に選択される、薬学的組成物。
・(項目38)
抗炎症物質を特徴とする、項目33に記載の薬学的組成物。
・(項目39)
抗生物質を特徴とする、項目33に記載の薬学的組成物。
・(項目40)
シチコリンを特徴とする、項目33に記載の薬学的組成物。
・(項目41)
項目1〜19に記載の、項目36〜45のうちの少なくとも1項に記載の薬学的組成物の使用。
・(項目42)
1種の非神経毒性プラスミノゲン活性化因子を含む発作の処置のための薬物の製造のための方法であって、当該プラスミノゲン活性化因子の改変のために、以下の工程:
チモーゲン三つ組残基の少なくとも一部を導入する工程;
フィブリンの非存在下での触媒活性な立体構造の安定性を減少させるために、Asp194または一致するアスパラギン酸を置換する工程;
自己分解ループまたは当該ループと一致するペプチド部分における、疎水性アミノ酸残基を置換する工程;
プラスミンによるチモーゲンの触媒を妨げるために当該チモーゲン中に変異を導入する工程;
のうちの少なくとも1つを包含する、方法。
・(項目43)
項目42に記載の方法により製造される、薬物。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1を参照のこと。
【図2】図2を参照のこと。
【図4a】図4aを参照のこと。
【図4b】図4bを参照のこと。
【図7】図7を参照のこと。
【図9】図9を参照のこと。
【図10】図10を参照のこと。
【図11】図11を参照のこと。
【図12】図12を参照のこと。
【図13】図13を参照のこと。
【図14】図14を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明によるプラスミノゲン活性化因子の使用は、以下の知見に基づく。発作により引き起こされる脳内の組織損傷に起因して、血液脳関門が損傷または破壊される。従って、血液中を循環するフィブリノゲンが、脳のニューロン組織内に侵入し得る。ここで、フィブリノゲンがt−PAを、グルタミン酸レセプターまたはプラスミノゲンを活性化することにより間接的に活性化する。これは、さらなる組織損傷を生じる。この影響を回避するために、本発明は、非常にフィブリン選択的であり、かつ議論の逆として、フィブリノゲンにより活性化される可能性が低い、プラスミノゲン活性化因子の使用を示唆する。従って、このプラスミノゲン活性化因子は、損傷した血液脳関門の結果として血液からニューロン組織へと侵入するフィブリノゲンにより活性化されないか、またはt−PAと比較して少なくとも実質的に少なくしか活性化されない。なぜなら、t−PAの活性化因子であるフィブリンは、その大きさに起因して、ニューロン組織に侵入し得ないからである。従って、本発明によるプラスミノゲン活性化因子は、非神経毒性である。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によると、非毒性プラスミノゲン活性化因子が使用され、これは、いわゆるチモーゲン三つ組残基(zymogene triade)の少なくとも1つのエレメントを含む。キモトリプシンファミリーのセリンプロテアーゼの触媒中心からの匹敵する三つ組残基(triade)が公知であり、この三つ組残基は、相互作用する3つのアミノ酸(アスパラギン酸194、ヒスチジン40およびセリン32)からなる。しかし、この三つ組残基は、キモトリプシン様セリンプロテアーゼのファミリーにこれもまた属するt−PA中には存在しない。それにも関わらず、適切な位置に上記のアミノ酸のうちの少なくとも1つを導入するためのネイティブt−PAの特異的変異誘発は、フィブリン存在下でプロ酵素(単鎖t−PA)の活性の減少を生じ、成熟酵素(二本鎖t−PA)の活性の増加を生じることが、公知である。従って、この三つ組残基のうちの少なくとも1つのアミノ酸の(またはこの三つ組残基中の個々の機能を有するアミノ酸の)導入が、t−PAのチモーゲン性(zymogenity)(すなわち、成熟酵素の活性とプロ酵素の活性との間の比)を増加し得る。結果として、フィブリンは、特に、顕著に増加される。これは、導入されたアミノ酸残基および/または野生型配列のアミノ酸残基間の立体構造相互作用に起因する。
【0039】
Phe305をHisにより置換(F305H)し、Ala292をSerにより置換(A292S)するネイティブt−PAの変異誘発が、チモーゲン性を20倍増加する一方、改変体F305H単独は、5倍高いチモーゲン性をすでにもたらすことが公知である(EL Madison,Kobe A,Gething M.J;Sambrook JF、Goldsmith EJ 1993;Converting Tissue Plasminogen Activator to a Zymogen:A regulatory Triad of Asp−His−Ser;Science 262,419〜421)。フィブリン存在下で、これらのt−PA変異体は、それぞれ、30,000倍(F305H)および130,000倍(F305H、A292S)の活性増加を示す。さらに、これらの変異体は、切断部位Aug275−Ile276でのプラスミンによる切断を防ぐために、Arg275からR275Rへの置換を含み、それにより、単鎖t−PAを二本鎖形態へと転換する。変異部位R275E単独は、t−PAのフィブリン特異性を6,900倍増加する(K Tachias,Madison EL 1995:Variants of Tissue−type Plaminogen Activator Which Display Substantially Enhanced Stimulation by Fibrin:Journal of Biological Chemistry 270,31:18319〜18322)。
【0040】
t−PAの305位および292位は、キモトリプシンセリンプロテアーゼの公知の三つ組残基の位置His40およびSer32と一致する。それぞれヒスチジンまたはセリンを導入する対応する置換によって、これらのアミノ酸は、t−PAのアスパラギン酸477と相互作用し得、t−PA変異体において機能的三つ組残基を生じる(Madisonら、1993)。
【0041】
これらのt−PA変異体は、本発明による発作の処置のために使用され得る。なぜなら、これらは、そのフィブリン特異性の増加に起因して、神経毒性を示さないか、または野生型t−PAと比較して、有意に減少した神経毒性を示すからである。上記のt−PA変異体F305H;F305H;A292Sの単独またはR275Eと組み合わせたA292Sの開示のために、本発明者らは、Madisonら(1993)ならびにTachiasおよびMadison(1995)の刊行物を本明細書により参考として完全に援用する。
【0042】
プラスミノゲン活性化因子のフィブリン特異性の増加は、あるいは、Asp194(または一致する位置のアスパラギン酸)の点変異によって達成され得る。プラスミノゲン活性化因子は、キモトリプシンファミリーのセリンプロテアーゼの群に属し、従って、保存されたアミノ酸Asp194を含む。このAsp194は、成熟プロテアーゼの触媒活性立体構造の安定性を担う。Asp194は、セリンプロテアーゼのチモーゲン形態にて、His40と相互作用することが公知である。そのチモーゲンが切断により活性化された後で、この特異的相互作用は、妨害され、Asp194の側鎖が約170°回転して、Ile16と新規な塩架橋を形成する。この塩架橋は、成熟セリンプロテアーゼの触媒中心のオキシアニオンポケットの安定性に本質的に寄与する。これもまた、t−PA中に存在する。
【0043】
Asp194を置換する点変異の導入は、明白に、セリンプロテアーゼの触媒立体構造の形成または安定性をそれぞれ妨害する。これにも関わらず、変異型プラスミノゲン活性化因子は、その補因子であるフィブリンの存在下で、特に、成熟野生型形態と比較して活性の有意な増加を示す。このことは、フィブリンとの相互作用が触媒活性を促進する立体構造変化を可能にする様式でのみ、説明され得る(L Strandberg,Madison EL、1995;Variants of Tissue−type Plasminogen Activator with Substantially Enhanced Response and Selectivity towards Fibrin co−factors:Journal of Biological Chemistry 270、40:2344〜2349)。
【0044】
まとめると、プラスミノゲン活性化因子のAsp194変異体は、フィブリンの存在下で高い活性増加を示す。このことにより、本発明によるその使用が可能である。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、変異体t−PAが使用され、この変異体において、Asp194が、それぞれ、グルタミン酸(D193E)またはアスパラギン(D194N)によって置換されている。これらの変異体において、t−PAの活性は、フィブリン非存在下では2000分の1に減少し、一方、フィブリン存在下では、498,000〜1,050,000倍の活性増加が達成され得る。これらの変異体は、Arg15からR15Eへの置換をさらに含み得、この置換は、ペプチド結合Arg15−Ile16でのプラスミンによる一本鎖t−PAの切断を防ぎ、t−PAの二本鎖形態をもたらす。この変異単独は、フィブリンによるt−PAの化成かを12,000倍増加する。194位および15位でのt−PA変異の開示のために、StrandbergおよびMadison(1995)の刊行物が、参考として完全に援用される。
【0046】
プラスミノゲン活性化因子のフィブリン依存性の増加はまた、いわゆる「自己溶解ループ」中への点変異の導入によって、達成され得る。このエレメントは、トリプシンから公知である。これはまた、セリンプロテアーゼの相同的部分として見出され得、特に、3つの疎水性アミノ酸(Leu、Pro、およびPhe)により特徴付けられる。プラスミノゲン活性化因子中の自己溶解ループは、プラスミノゲン活性化因子との相互作用を担う。この領域における点変異は、プラスミノゲンとプラスミノゲンとの間のタンパク質−タンパク質相互作用がもはや有効には形成され得ないという、効果を有し得る。これらの変異は、フィブリンの非存在下では単に機能的に関連するだけである。対照的に、フィブリン存在下では、これらは、プラスミノゲン活性化因子の活性増加を担う(K Song−Hua、Tachias K、Lamba D、Bode W、Madison EL、1997:Identification of a Hydrophobic exocite on Tissue Type Plaminogen Activator That Modulates Specificity for Plasminogen:Journal of Biological Chemistry 272:3,1811〜1816)。
【0047】
好ましい実施形態において、420位〜423位での点変異を示すt−PAが、使用される。これらの残基が特異的変異誘発により置換された場合、これは、t−PAのフィブリン依存性を増加し、61,000倍まで増加する(K Song−Huaら)。Song−Huaらは、点変異L420A、L420E、S421G、S421E、P422A、P422G、P422E、F423AおよびF423Eを試験した。これらの刊行物は、本発明による使用の開示のために、参考として完全に援用される。
【0048】
さらなる有利な実施形態によると、配列番号1(図13)によるアミノ酸配列を有する改変型組織プラスミノゲン活性化因子が、使用される。この改変型t−PAは、自己溶解ループ中の420位〜423位における疎水性アミノ酸のHis420、Asp421、Ala422およびCys423のような交換によって、野生型t−PAと異なる。このt−PAは、194位にフェニルアラニンを優先的に含む。さらに、275位は、グルタミン酸により占められ得る。有利なことに、194位は、フェニルアラニンにより占められる。
【0049】
さらに、改変型ウロキナーゼが、本発明により使用され得る。本発明によるウロキナーゼは、配列番号2(図14)によるアミノ酸配列を含み得、その配列において、自己溶解ループ中の疎水性アミノ酸が、Val420、Thr421、Asp422、およびSer423により置換されている。有利なことに、このウロキナーゼは、Ile275およびGlu194を保有する。この変異体は、野生型ウロキナーゼと比較して、500倍増加したフィブリン特異性を示す。
【0050】
ウロキナーゼおよびt−PA両方の変異体が、半定量的試験において分析され、野生型t−PAと比較して増加したフィブリン特性を示した。
【0051】
血吸いコウモリ(Desmodus totundus)の唾液由来のプラスミノゲン活性化因子(DSPA)もまた、フィブリン存在下で、非常に増加した活性(詳細には、100,000倍の増加)を示す。従って、このプラスミノゲン活性化因子は、本発明により優先的に使用され得る。用語DSPAは、この血吸いコウモリにとって必須の機能(すなわち、創傷の出血期間の増加)を満たす(Carwright、1974)、4つの異なるプロテアーゼを包含する。これらの4つのプロテアーゼ(DSPAα1、DSPAα2、DSPAβ、DSPAγ)は、互いに対して、そしてヒトt−PAに対して、高い類似性(相同性)を示す。これらはまた、類似する生理学的活性を示し、包括的用語DSPAの下での共通した分類をもたらす。DSPAは、特許EP 0 352 119 A1およびUS 6,008,019およびUS 5,830,849に開示される。これらの特許は、開示目的のために参考として完全に本明細書により援用される。
【0052】
DSPAαは、今までのところ、このグループからの最も良く分析されたプロテアーゼである。それは、既知のヒトt−PAアミノ酸配列(Kratzschmerら、1991)と比較して72%より大きい相同性をもつアミノ酸配列をもつ。しかし、t−PAとDSPAとの間には2つの本質的な差異がある。第1は、すべてのDSPAが一本鎖分子として完全なプロテアーゼ活性をもつことである。なぜなら、それは、t−PAとは対照的に、二本鎖形態に変換されないからである(Gardellら、1989:Kratzschmerら、1991)。第2に、DSPAの触媒活性は、ほぼ完全にフィブリンに依存している(Gardelら、1989;Bringmannら、1995;Toschieら、1998)。例えば、DSPAα1の活性は、フィブリンの存在下で100,000倍増加し、その一方、t−PA活性は550倍増加するに過ぎない。対照的に、DSPA活性は、フィブリノゲンによってよりかなり弱く誘導される。なぜなら、それは7〜9倍の増加を示すのみであるからである(Bringmannら、1995)。結論として、DSPAは、フィブリンにかなりより依存性であり、そしてフィブリンにより550倍だけ活性化される野生型t−PAよりはかなりフィブリン特異的である。
【0053】
そのフィブリン溶解性性質とt−PAに対する強い類似性のため、DSPAは、血栓溶解剤の開発のための興味深い候補である。これにも関わらず、DSPAの血栓溶解剤としての治療使用は、過去においては心筋梗塞の処置に限られていた。なぜなら、t−PAに関連するプラスミノゲン活性化因子が急性発作の処置に合理的に用いられ得るという正当化された希望が存在せず、グルタミン酸で誘導される神経毒性に対するt−PAの寄与に起因するからである。
【0054】
驚くべきことに、DSPAは、たとえ、t−PAに対する高い類似性(相同性)を示すとしても、そしてたとえ、これら分子の生理学的効果が大きな程度まで匹敵するとしても、神経毒性効果をもたないことが示されている。上記の結論は、DSPAは、結局、ニューロン組織損傷の重篤なリスクを引き起こすことなく、発作の治療のための血栓溶解剤として首尾良く用いられ得るというアイデアに至った。特に、興味深いのは、DSPAがまた、発作の兆候の開始後3時間より後にも用いられ得るという事実である。
【0055】
本発明のさらなる教示は、上記の知見から発展させたものであり、さらなるプラスミノゲン活性化因子を、それらがDSPAの本質的な特徴、特にt−PAの神経毒性の欠如を示すように改変または生成するという選択肢である。この基礎は、神経毒性プラスミノゲン活性化因子を、非神経毒性プラスミノゲン活性化因子に変形し、そしてそれによって既知または新たに発見された神経毒性プラスミノゲン活性化因子を基に非神経毒性プラスミノゲン活性化因子を生成することを可能にする、調査された構造と生化学的効果との相関関係である。
【0056】
この新たな教示は、いわゆるカイニン酸モデルおよび線条のNMDA誘導損傷の調査のためのモデルを用いて実施される、1つの側面でt−PAの、そして他の側面でDSPAの神経変性効果のインビボ比較実験に基づく。
【0057】
カイニン酸モデル(カイニン酸損傷モデルともいう)は、カイニン酸型(KA型)のレセプターおよびNMDAおよびAMPAグルタミン酸レセプターのアゴニストとしての、カイニン酸(KA)の外部適用による神経毒性カスケードの刺激に基づく。実験モデルとしてt−PA欠損マウス幹を用い、実験室動物のカイニン酸に対する感受性が、外部t−PAの補助的付与の後のみ、野生型マウスのレベルに到達するであることを示すことが可能である。対照的に、同じ実験条件の下でDSPAの等モル濃度の注入は、カイニン酸(KA)に対する感受性を回復しない。t−PAの神経毒性影響は、DSPAによって誘導されなかったと結論された。これらの結果の要約は、表2に示される。
【0058】
【表2】
このモデルに基づく定量的試験は、DSPA濃度の10倍増加でさえ、KA処置に対するt−PA欠損マウスの感受性が回復され得なかったこと、その一方、既に10分の1に低いt−PA濃度がKA誘導組織損傷に至ったことを示した。これは、DSPAが、KA処置後の神経変性の刺激に関して、t−PAと比較して少なくとも100分の1に低い神経毒性能力を所有するという結論に至る(図11および12もまた参照のこと)。
【0059】
神経変性の第2のモデルでは、NMDA依存性神経変性の刺激に対するt−PAおよびDSPAの可能な影響が、野生型マウスと比較された。この目的には、NMDA(NMDA型のグルタミン酸レセプターのアゴニストとして)を、野生型マウスに単独またはt−PAまたはDSPAのいずれかとの組合せで注射した。このモデルは、常に、神経変性、および血液脳関門の破壊に起因する血漿タンパク質の流入(Chenら、1999)に至る条件下で、これらプロテアーゼの影響の比較を可能にする。
【0060】
このモデル上で作業する間、NMDAの注射は、マウスの線条における再現性ある損傷に至った。これら損傷の容量は、t−PAおよびNMDAの組み合わせた注射で少なくとも50%だけ増加した。対照的に、DSPAα1との同時注射は、NDMAによって引き起こされる損傷の増加または拡張に至らなかった。NMDAによって誘導される損傷の領域中に自由に拡散し得る血漿タンパク質の存在下でさえ、DSPAは、増加する神経変性を生じなかった(表3もまた参照のこと)。
【0061】
【表3】
これらの結果は、t−PAとは対照的に、フィブリンを含まないDSPAが、哺乳動物、そしてまたヒトの中枢神経系でほぼ不活性プロテアーゼのように挙動し、そしてそれ故、KAまたはNMDAによって引き起こされる神経毒性影響に寄与しないことを示す。発作におけるt−PA様タンパク質の治療使用に対する偏見にも関わらず、この神経毒性の欠如は、DSPAを、急性発作の処置のための適切な血栓溶解剤にする。
【0062】
臨床試験の最初の結果は、これら結果をヒトにおける発作の処置に対しても移行可能であることを示す。成功した灌流の後の患者で有意な改善が達成され得ることが見出された(8ポイントNIHSSまたはNIHSSスコア0→1の改善)。表1はこのデータを示す。
【0063】
【表1】
DSPAおよびその他の非神経毒性プラスミノゲン活性化因子の神経毒性の欠如(上記を参照のこと)は、野生型t−PAとは対照的に、これらプラスミノゲン活性化因子を用いる発作処置において特別の利点を提供し、発作の発生後3時間のみの短い最大時間に限定されない。反対に、この処置はより後期、例えば6時間後またはより後期に開始され得る。なぜなら、興奮毒性応答を刺激するリスクがほぼないからである。DSPAを用いる最初の臨床試験は、発作の兆候の開始後6〜9時間に亘る範囲の時間でさえ、患者の安全処置を照明する。
【0064】
非神経毒性活性化因子での時間的に制限されない処置というこの選択肢は、特に重要である。なぜなら、それは、診断が遅延するとき、または発作の開始が十分な安全性で決定できないときでさえ、急性発作の兆候をもつ患者を処置することを、初めて可能にするからである。先行技術では、このグループの患者は、所望されないリスク推定に起因してプラスミノゲン活性化因子での血栓溶解治療から排除されていた。結果として、発作に対する血栓溶解剤の認可された使用のための必須の反適応症が排除される。
【0065】
DSPAおよびさらなる非神経毒性プラスミノゲン活性化因子は、組織損傷副作用を示さない。しかし、ヒト身体中で自然に起こるグルタミン酸により誘導される組織損傷を制限するために、発作の処置に神経保護薬剤と組合せて、それらを付与することとが有利であり得る。グルタミン酸レセプターを競争的または非競争的に阻害する神経保護薬剤が用いられ得る。有用な組合せは、例えば、NMDA型のグルタミン酸レセプター、カイニン酸型またはキスカル酸型(例えば、APV、APH、フェンシクリジン、MK−801、デキストロルファンまたはセタミン)である既知のインヒビターとともにである。
【0066】
さらに、カチオンとの組合せが有利であり得る。なぜなら、カチオン、特にZnイオンは、グルタメータレセプターにより調節されるカチオンチャネルをブロックし、そしてそれ故、神経毒性影響を減少し得るからである。
【0067】
さらに有利な実施形態では、非神経毒性プラスミノゲン活性因子は、少なくとも1つのさらなる治療剤と、または薬学的に許容可能なキャリヤーと組合せられ得る。細胞を生存させることにより組織損傷の減少を支持する治療剤との組合せは特に有利である。なぜなら、それは、既に損傷した組織の再生に寄与するか、またはさらなる発作発症の予防の役に立つからである。有利な例は、キノンのような抗生物質、ヘパリンまたはヒルジンのような抗凝固剤およびシチコリンまたはアセチルサリチル酸との組合せである。
【0068】
少なくとも1のトロンビンインヒビターとの組合せもまた有利であり得る。好ましくは、トロンボモジュリンおよびトロンボモジュリンアナログ(例えば、ソルリン、トリアビンまたはパリジピン)が用いられ得る。抗炎症性物質とのさらなる組合せもまた有利である。なぜなら、それらは、白血球による浸潤に影響するからである。
【実施例】
【0069】
(t−PAとDSPAとの比較実験は、以下の方法である:)
(1.動物)
野生型マウス(c57/Black 6)およびt−PA欠損マウス(t−PA−/−マウス)(c57/Black 6)(Carmelietら、1994)は、Peter Carmeliet博士,Leuven,Belgiumによって提供された。
【0070】
(2.脳組織からのタンパク質抽出)
t−PAまたはDSPAα1のいずれかの注入後の、脳組織におけるタンパク質分解活性の評価を、電気泳動分析によって実施した(Granelli−PipernoおよびReich,1974)。7日間の期間にわたる海馬内への注入後に、マウスを麻酔し、次いで、心臓を通して(transcardially)PBSで灌流し、そして脳を取り出した。海馬領域を取り出し、エッペンドルフ管に移し、そしてプロテアーゼインヒビターを含まない等体積(w/v)(約30〜50μm)の0.5%NP−40溶解緩衝液(0.5% NP−40、10mM Tris−HCl(pH7.4)、10mM NaCL、3mM mgCl2、1mm EDTA)中でインキュベートした。脳抽出物を、携帯型ガラスホモジナイザでホモジナイズし、そして氷上で30分間維持した。次いで、サンプルを遠心分離し、そして上清を除去した。存在するタンパク質の量を決定した(Bio−Rad試薬)
(3.プロテアーゼのザイモグラフィ分析)
サンプルおよび脳組織抽出物におけるタンパク質分解活性を、Granelli,PipernoおよびReich(1974)の方法に従って、電気泳動分析によって決定した。組換えタンパク質(100nMまで)または脳組織抽出物(20μg)を含むサンプルを、非還元条件下で(10%)SDS−PAGEに供した。ゲルをプレートから取り出し、1% Triton X 100中で2時間洗浄し、次いで、重合したフィブリノゲンおよびプラスミノゲンを含有するアガロースゲル上に重ねた(Granelli,PipernoおよびReich,1974)。タンパク質分解されたゾーンが現れるまで、加湿チャンバ内でゲルを37℃でインキュベートする。
【0071】
(4.t−PA、DSPAの海馬内注入および引き続くカイニン酸の注入)
カイニン酸損傷モデルは、Tsirkaら(1995)の研究に基づいた。動物に、アトロピン(4mg/kg)を腹腔内(i.p.)に注射し、次いで、ペントバルビタールナトリウム(70mg/kg)のi.p.注射で麻酔した。その後、マウスを、定位フレーム中に配置し、100μlのPBSまたは組換えヒトt−PA(0.12mg/ml,1.85μM)またはDSPAα1(1.85μM)のいずれかを含むミクロ浸透圧ポンプ(Alzetモデル 1007D、Alzet CA、USA)を、肩甲骨間に皮下移植した。これらのポンプを、滅菌チューブを介して脳カニューレに連結し、そしてバー開口部を通って挿入し、正中栓付近に液体を導入するために、座標ブレグマ−2.5mm、座標中外側0.5mmおよび座標背腹側1.6mmで、頭蓋を通した。このカニューレを、所望の位置で固定し、そしてこれらのポンプを、それぞれの溶液を時速0.5μlで合計7日間注入させた。
【0072】
プロテアーゼ注入の2日後、マウスを再麻酔し、そして再度、定位フレーム中に配置した。その後、0.3μlPBS中の1.5nmolのカイニン酸(KA)を、海馬中に片側性に注射した。これらの座標は、以下であった:ブレグマ−2.5mm、中外側1.7mmおよび背腹側1.6mm。この興奮毒(KA)を、30秒間送達した。このカイニン酸処置後、液体の逆流を防ぐために、この注射針を、さらに2分間これらの座標に留めた。
【0073】
5.脳プロセシング手順
KA注射5日後、これらの動物を麻酔し、そして経噴門的に30mlのPBSで還流し、続いて70mlの4%パラホルムアルデヒド溶液で還流し、同じ固定液中で後固定し、続いて30%ショ糖中でさらに24時間インキュベーションした。脳の冠状切片(40μm)を、次いで、凍結ミクロトーム上で切断し、そしてチオニン(BDH、Australia)で対比染色するかまたは以下に記載されるように、免疫組織化学試験のために処理した。
【0074】
(6.海馬内でのニューロン喪失の定量)
海馬のCA1−CA3亜領域内でのニューロン喪失の定量を、以前(Tsirkaら,1995;Tsirkaら,1996)に記載されたとおりに行った。全ての処置群からの背側海馬の連続した5つの部分を、その部分が実際にCA注射および損傷領域の場所を含むことに注意しながら調製した。これらの切片の海馬の亜領域(CA1〜CA3)を、海馬のカメラルシダーの図によってトレースした。亜領域全体の長さを、同じ倍率でトレースした1mm標準への比較によって測定した。生存可能な錐体ニューロンを有する(正常な形態を有する)組織の長さおよびニューロンのない(細胞が存在せず、チオニン染色もない)組織の長さを決定した。これらの長さは、各海馬亜領域についてのインタクトなニューロンおよびニューロン喪失を表す。これらの長さを切片毎に平均し、そして標準偏差を決定した。
【0075】
(7.t−PAまたはDSPAを有するかまたは有さない、線条体内NMDA興奮毒性損傷)
野生型マウス(c57/Black 6)に麻酔し、そして定位フレーム内に配置した(上記を参照のこと)。次いで、マウスに、単独で、または46μM rt−PAもしくは46μM DSPAα1のいずれかと組み合わせて注射した、50nmol NMDAの片側注射を左側の層に受けさせた。コントロールとして、t−PAおよびDSPAもまた(いずれも、46μMの濃度にて)単独で注射した。この注射の座標は以下の通りであった:ブレグマ−0.4mm、側方中間(midiolateral)2.0mmおよび背腹側2.5mm。溶液(全ての処置について1μl総体積)を、0.2μl/分の速度で5分間の期間にわたって移し、そして液体の逆流を最小にするために、注射後、針をさらに2分間適所に配置した。24時間後、これらのマウスに麻酔をかけ、そして30ml PBS、続いて70mlの4%パラホルムアルデヒド溶液で、心臓を経て灌流し、同じ固定剤中で24時間にわたって事後固定し、続いて30%スクロース中でさらに24時間にわたってインキュベートした。次いで、脳を、凍結ミクロトームで切断(40μm)し、そしてゼラチンをコーティングしたスライドガラスに載せた。
【0076】
(8.NMDA注射後の損傷体積の定量)
線条体損傷体積の定量を、Callawayら(2000)によって記載された方法を用いて行った。損傷を受けた領域にまたがる10個の連続する冠状縫合切片を調製した。この損傷を受けた領域を、Callaway法を用いて可視化し、そして損傷体積を、マイクロコンピュータ画像化デバイス(MCID,Imaging Research Inc.,Brock University,Ontario,Canada)の使用によって定量した。
【0077】
(9.免疫組織化学)
免疫組織化学を、標準的な方法論を使用して行った。結腸切片を、3% H2O2および10%メタノールの溶液に5分間浸漬し、続いて5%正常ヤギ血清中で60分間インキュベートした。この切片を、星状細胞検出のための抗GFAP抗体(1:1000;Dako,Carpinteria,CA,USA)、小膠細胞の検出のための抗MAC−1抗体(1:1000,Serotec,Raleigh,NC,USA)またはポリオクローナル抗DSPA抗体(Schering AG,Berlin)のいずれかとともに、一晩インキュベートした。すすいだ後、この切片を適切なビオチン化二次抗体(Vector Laboratories,Burlingame,CA,USA)とともにインキュベートした。これに続いて、アビジン/ビオチン−複合体(Vector Laboratories,Burlingame,CA,USA)とともに60分間最後にインキュベートした後、3,3’−ジアミンベブシジン(diaminebebcidine)/0.03% H2O2で可視化した。次いで、切片を、ゼラチンコーティングしたスライドガラスに載せ、乾燥させ、脱水し、permountとともにカバースリップを載せた。
【0078】
(B.結果)
(1.t−PAまたはDSPAの注入は、t−PA−/−マウスの海馬に分散し、タンパク質分解活性を保持する)
最初の実験を、DSPAおよびt−PAの両方が、注入の7日間にわたって、それらのタンパク質分解活性を保持することを確認するように設計した。この目的のために、t−PAおよびDSPAのアリコート(100nmol)を、水浴中で37℃および30℃にて7日間インキュベートした。タンパク質分解活性を決定するために、プローブの5倍連続希釈物を、非還元条件下でSDS−PAGEに供し、タンパク質活性をザイモグラム分析により評価した。7日間凍結したままで維持したt−PAおよびDSPAのアリコートを、コントロールとして使用した。図1に認められ得るように、30℃または37℃いずれかでのインキュベーションのときに、この期間の間にDSPA活性またはt−PA活性がごくわずかに喪失した。
【0079】
(2.t−PA活性およびDSPA活性は、注入後にt−PA−/−マウスから調製された海馬抽出物中で回収される)
まず、注入したプロテアーゼが、注入した動物の脳に存在し、それらのタンパク質分解活性もまた保持すると同時に、この区画に存在することを確認しなければならなかった。この点に対処するために、t−PA−/−に、t−PAまたはDSPAのいずれかを7日間にわたり注入した(上記を参照のこと)。次いで。心臓を介してマウスをPBSで灌流し、脳を取り出した。同側海馬領域および対側海馬領域を単離し、同様に、小脳領域もまた単離した(ネガティブコントロールとして)。組織サンプル(20μg)を、方法の節における記載に従って、SDS−PAGEおよびザイモグラム分析に供した。図2に認められ得るように、t−PA活性およびDSPA活性の両方を、海馬の同側領域中で検出したのに対し、いくらかの活性が、対側でも検出された。このことは、注入したプロテアーゼが、脳においてそれらの活性を維持しているのみならず、海馬領域に拡散したこともまた示す。コントロールとして、小脳から調製した抽出物中では活性を検出することはできなかった。
【0080】
(3.DSPAの免疫組織化学的評価)
DSPAが、海馬領域に実際に拡散したことをさらに確認するために、t−PA−/−マウスの冠状脳切片を、DSPA注入後に、免疫組織化学的に分析した。DSPA抗原は、海馬領域において検出され、注入部位の領域において最も顕著に染色された。この結果により、注入されたDSPAが可溶性であり、かつ実際に海馬に存在することが確認される。
【0081】
(4.DSPA注入は、インビボでカイニン酸媒介性ニューロン変性を修復しない)
t−PA−/−マウスは、特徴として、カイニン酸(KA)媒介性ニューロン変性に耐性である。しかし、rt−PAの海馬内注入は、KA媒介性障害に対する感受性を完全に回復する。DSPAが、このモデルにおいてt−PAと置換され得るか否かを決定するために、t−PA−/−マウスの海馬内に、t−PAまたはDSPAのいずれかを、ミニ浸透圧ポンプを使用して注入した。両方の群について、12匹のマウスを試験した。2日後、動物にカイニン酸を注射し、回収するまで放置した。5日後、動物を屠殺し、その脳を取り出し、調製した(上記のように)。コントロールとして、KA処理前に、t−PA−/−マウスに、PBSもまた注入した(N=3)。
【0082】
冠状脳切片を調製し、Nissl染色により、ニューロンを検出した。図4に示されるように、PBSを注入したt−PA−/−マウスは、KAでの引き続くチャレンジに耐性であった。しかし、組換えt−PAの注入は、KA処理に対する感受性を回復させた。対照的に、同じ濃度のDSPAの海馬領域への注入は、動物のKAに対する感受性を変化させなかった。
【0083】
これらの結果の定量は、各群において12匹のマウスから得られたデータに基づいた。DSPAを注入した12匹のマウスのうちの2匹において、小さな程度のニューロン変性が観察された。その理由は未知であり、DSPAの存在におそらく関連しない。データを合わせて、これらの2匹の動物の場合において観察された小さな効果を検討する。t−PAで処置した12匹全てのマウスは、KA処置に対して感受性であった。これらの結果は、等モル濃度でのt−PAまたはDSPAα1の注入の場合に、t−PAの投与のみが、KA誘導性ニューロン変性に対する感受性の回復をもたらしたことを示す。
【0084】
(5.DSPA注入は、小膠活性化を生じない)
t−PA注入によって引き起こされるt−PA−/−マウスのKA感受性の回復はまた、小膠活性化を生じる(Rogoveら、1999)。t−PAまたはDSPA注入および引き続くKA処置後の小膠活性化の程度を評価するために、マウスの冠状切片を、Mac−1抗体を使用する活性化小膠細胞についての免疫組織化学的染色に供した。t−PA注入後のKA感受性回復は、Mac−1ポジティブ細胞の明らかな増加を生じた。このことは、DSPAを注入したマウスにおいては観察されなかった。従って、DSPAの存在は、KA処置後の小膠細胞の活性化を生じない。
【0085】
(6.マウス海馬領域におけるDSPAおよびt−PAの力価測定)
注入に使用したt−PAの濃度は、Tsirkaら(1995)によって記載される濃度(0.12mg/mlを100μl[1.85μM])に基づいた。KA傷害実験を、10分の1のt−PA(0.185μM)および10倍高いDSPA(18.5μM)を使用して反復した。より低いt−PA濃度は、なお、KA処置に対する感受性を回復させることができた(n=3)。特に興味深いのは、10倍高いDSPA濃度の注入が、KA処置後のニューロン喪失をほとんど引き起こさないという知見であった。これらのデータは、DSPAが、KAに対する感受性の増大をもたらさないことを強く指摘する。
【0086】
(7.野生型マウスにおけるt−PAおよびDSPAのNMDA依存性ニューロン変性に対する効果)
t−PAおよびDSPAの効果もまた、野生型マウスにおけるニューロン変性のモデルにおいて試験した。これらのマウスの線条におけるt−PAの注入は、グルタミン酸アナログNMDAによって引き起こされるニューロン変性効果の増大をもたらした(Nicoleら、2001)。
【0087】
NMDAを、総容積1μlで、t−PAまたはDSPA(各46μM)の存在下で、野生型マウスの線条領域に注射した。24時間後に、脳を取り出し、病巣のサイズを、Callaway法(Callawayら、2000)に従って、定量した(上記を参照のこと)。図7において認められ得るように、NMDA単独の注射は、全ての処置マウスにおいて再現可能な病巣を引き起こした(N=4)。t−PAおよびNMDAをともに適用した場合、病巣のサイズは、約50%増大した(P<0.01、n=4)。明らかに対照的に、NMDAおよび同じ濃度のDSPAの同時注射は、NMDA単独と比較して、病巣サイズの増大をもたらさなかった。
【0088】
t−PAまたはDSPAの単独での注射は、検出可能なニューロン変性をもたらさなかった。単独で投与される場合、t−PAの効果の欠如は、Nicoleら(2001)の結果と一致する。これらのデータは、DSPAの存在が、ニューロン変性事象の間ですら、ニューロン変性を増大させないことを示す。
【0089】
DSPAの注射が、海馬領域に実際に拡がった否かを確かめるために、DSPA抗体の使用によって、冠状切片に対して免疫組織化学を行った。この試験により、DSPAのアリコートは、線条領域内に実際に入ることが示された。
【0090】
(間接的クロモゲン試験によるプラスミノゲン活性化の動力学的分析)
t−PA活性の間接的クロモゲン試験を、基質Lys−プラスミノゲン(American Diagnostica)およびspectrocyme PL(American Diagnostica)を用いて、Madisan E.L.,Goldsmith E.J.,Gerard R.D.,Gething M.J.,Sambrook J.F.(1989)Nature 339:721−724;Madison E.LO.,Goldsmith E.J.,Gething M.J.,Sambrook J.F.およびBassel−Duby R.S.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,3530−3533、ならびにMadison E.L.,Goldsmith E.J.,Gething M.J.,Sambrook J.F.およびGerard R.D.(1990)J.Biol.Chem.265,21423−21426に従って行った。補因子DESAFIB(American Diagnostica)の存在下および非存在下の両方で試験を行った。DESAFIBは、プロテアーゼバトロキソビンでの非常に純粋なヒトフィブリノゲンの切断によって得られる可溶性フィブリンモノマーの調製物である。バトロキソビンは、フィブリノゲンのAα鎖におけるArg16−Gly17結合を切断し、それによってフィブリノペプチドAを放出する。フィブリンIモノマーを示す、得られたdes−AA−フィブリノゲンは、ペプチドGly−Pro−Arg−Proの非存在下で可溶性である。Lys−プラスミノゲンの濃度を、DESAFIBの存在下では0.0125μM〜0.2μMまで、補因子の非存在下では、0.9μM〜16μMまで変化させた。
【0091】
(異なる刺激の存在下での間接的クロモゲン試験)
間接的クロモゲン標準試験を、上記の刊行物に従って行った。0.25〜1ng酵素、0.2μM Lys−プラスミノゲン、および0.62mM spectrocyme PLを含む、総容積100μlのプローブを使用した。緩衝液、25μg/ml DESAFIB、100μg/ml フィブリノゲンの臭化シアンフラグメント(American Diagnostica)または100μg/mlの刺激性の13アミノ酸のペプチドP368のいずれかの存在下で試験を行った。分析をマイクロタイタープレート中で行い、光学密度を、「Molecular Devices Thermomax」において、1時間の間30秒ごとに、405nm波長で決定した。反応温度は、37℃であった。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される、組成物。
【請求項1】
本明細書に記載される、組成物。
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【図4a】
【図4b】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【図4a】
【図4b】
【図7】
【図10】
【公開番号】特開2009−137983(P2009−137983A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−322(P2009−322)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【分割の表示】特願2003−539706(P2003−539706)の分割
【原出願日】平成14年10月31日(2002.10.31)
【出願人】(503224770)パイオン ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【分割の表示】特願2003−539706(P2003−539706)の分割
【原出願日】平成14年10月31日(2002.10.31)
【出願人】(503224770)パイオン ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]