説明

発側呼処理装置及び発信制御方法

【課題】複数の網が同一局番を使用する通信網において輻輳範囲を識別した輻輳制御を提供する。
【解決手段】発信加入者100からのサービス要求に応じて、同一の局番を使用する複数の着側呼処理装置のうち所望の着信加入者101を収容する着側呼処理装置121への接続を試みる接続手段221と、前記複数の着側呼処理装置から輻輳範囲を示す輻輳識別情報を受信して管理する管理手段222と、前記輻輳識別情報に基づいて前記輻輳範囲への接続を規制する規制手段223とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、番号ポータビリティまたは同番移行を提供可能な通信網における輻輳制御に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国内の固定電話サービスは、0-ABCDE-FGHJ(以降、9Dとも称する)という番号体系(番号計画)に従って電話番号を定めている。上記番号体系において、A乃至Jは1桁の数字を夫々表す。即ち、日本国内の固定電話サービスで使用される電話番号は、0を先頭とする10桁の数字列で表される。また、上記番号体系においてABCDE(以降、5Dとも称する)は局番と呼ばれ、FGHJは加入者番号と呼ばれる。局番は、総務省から各通信事業者に割り当てられており、市外局番及び市内局番で構成される。局番の上位1〜3桁によって表される市外局番は、国内の地理的位置に応じて割り当てられる。加入者番号は、通信事業者から加入者に割り当てられ、加入者を識別する。
【0003】
電話などの公衆通信網は、通常、全加入者に同時にサービスを提供できるだけの設備(リソース)を用意していない。故に、加入者からのサービス要求が集中すると、輻輳が生じることがある。そこで、様々な輻輳制御手法が提案されている(例えば、非特許文献1の1章(まえがき)を参照)。尚、後述する番号ポータビリティ及び同番移行は以下の説明において考慮されていない。
【0004】
輻輳は、発生原因、発生箇所などによって、(1)地域輻輳、(2)呼処理装置輻輳及び(3)加入者輻輳などに類型化される。(1)地域輻輳は、例えば、地震、洪水、台風などの災害の被災地域に設けられた呼処理装置に対して安否確認、お見舞いなどのための呼が集中することにより発生する。(2)呼処理装置輻輳は、例えば、ある呼処理装置が故障した場合に当該呼処理装置ならびにこれに接続する周辺の呼処理装置に対して呼が集中することにより発生する。(3)加入者輻輳は、例えば、特定の加入者がチケット予約、通信販売などの申し込みを受け付ける場合に、当該特定の加入者に対して呼が集中することにより、当該特定の加入者を収容する呼処理装置において発生する。
【0005】
輻輳の発生した呼処理装置は、前述の番号体系を利用することにより識別することができる。(1)地域輻輳の発生した呼処理装置は、地理的位置を識別する市外局番A、AB、ABCなどによって識別することができる。(2)呼処理装置輻輳の発生した呼処理装置は、その呼処理装置が使用する局番ABCDEによって識別することができる。(3)加入者輻輳の発生した呼処理装置は、輻輳の発生した加入者の番号0-ABCDE-FGHJに含まれる局番ABCDEによって識別することができる。
【0006】
輻輳制御の手法は、規制と疎通とに分類される。規制とは、輻輳の拡大を防ぐために、輻輳範囲への呼接続を網の入り口で制限する手法である。この手法は、網の入り口における制限であることから、発信規制とも呼ばれる。一方、疎通とは、中継路の迂回選択を行ったり、加入者が話中または不出の場合にトーキ装置に接続して発信者に再発呼を止めるように促したり、輻輳の発生しない程度に接続を制限しつつ制限された呼を待ち合わせまたは呼び返しなどにより時間間隔を空けて接続させたりするなどして、可能な限り呼を完了させる手法である。呼の完了率を最大化すること(即ち、疎通の向上)が輻輳制御の第一義的な目的であって、発信規制はこれを実現するための基本機能と位置づけられる。
【0007】
また、輻輳制御の主体は、集中型と分散型とに分類される。従来の通信網において輻輳制御は、集中型であることが多い。集中型の輻輳制御では、制御主体が輻輳情報を集約して全体最適解を求め、当該全体最適解に沿って具体的な制御を適用する。集中型の輻輳制御における制御主体は、例えば輻輳制御装置である。地域輻輳を対象にした輻輳制御装置(トラヒック制御装置)の一例は、特許文献1に記載されている。尚、呼処理装置輻輳または加入者輻輳を対象とする場合にも、輻輳制御を実現するために利用する情報(局番、加入者番号など)において異なるものの基本的に同じ仕組みを適用可能である。以下、図6乃至図12を用いて従来の通信網における輻輳制御を説明する。
【0008】
図6は、従来の通信網の一例を示している。発信加入者400は発側呼処理装置420に収容され、着信加入者401は着側呼処理装置421に収容されている。着側呼処理装置421は、局番ABCDEを使用し、網411に属する。発側呼処理装置420及び着側呼処理装置421は、信号線431を介して接続されている。また、輻輳制御サーバ423が、発側呼処理装置420及び着側呼処理装置421と信号線430及び433を夫々介して接続されている。
【0009】
図7は、図6の発側呼処理装置420を示している。発側呼処理装置420は、プロセッサ510、メモリ511及びスイッチ512を含む。発側呼処理装置420は、発信加入者400と加入者回線501を介して接続されており、発信加入者400以外の加入者とも加入者回線を介して接続されている。プロセッサ510は、メモリ511の記憶内容(レコード)を参照して、スイッチ512を制御することにより、加入者回線501と、呼処理信号を通信するための信号線502及びメディア信号(音声など)を通信するためのメディア線503とを交換してデータの送受信を実現する。
【0010】
図7のメモリ511には、例えば図8に示すようなレコードが記憶される。即ち、局番ABCDEに対する呼数密度分配値c/n、局番と加入者番号とを合わせた電話番号0-ABCDE-FGHJに対する呼数密度分配値d/mなどがメモリ511によって記憶される。ここで、呼数密度は、単位時間当たりに発信可能な呼数[呼/時間]である。
【0011】
図9は、図6の着側呼処理装置421を示している。着側呼処理装置421は、プロセッサ610、メモリ611及びスイッチ612を含む。着側呼処理装置421は、着信加入者401と加入者回線601を介して接続されており、着信加入者401以外の加入者とも加入者回線を介して接続されている。プロセッサ610は、メモリ611のレコードを参照して、スイッチ612を制御することにより、加入者回線601と、呼処理信号を通信するための信号線602及びメディア信号を通信するためのメディア線603とを交換してデータの送受信を実現する。
【0012】
図9のメモリ611には、例えば図10に示すようなレコードが記憶される。即ち、局番ABCDEにおける輻輳の有無、局番と加入者番号とを合わせた電話番号0-ABCDE-FGHJにおける輻輳の有無などがメモリ611によって記憶される。
図11は、図6の輻輳制御サーバ423を示している。輻輳制御サーバ423は、プロセッサ710、メモリ711及び信号送受信器712を含む。信号送受信器712は、信号線430を介して発側呼処理装置420と信号を送受信したり、信号線433を介して着側呼処理装置と信号を送受信したりする。プロセッサ710は、信号送受信器712が受信した信号と、メモリ711のレコードとに基づいて輻輳制御のための信号を生成し、信号送受信器712を介して送信する。
【0013】
図11のメモリ711には、例えば図12に示すような情報が記憶される。即ち、局番ABCDEに対する呼数密度分配値c/n及びこの呼数密度分配値の通知先となる通知先発側呼処理装置のリスト、局番と加入者番号とを合わせた電話番号0-ABCDE-FGHJに対する呼数密度d/m及びこの呼数密度の通知先となる通知先発側呼処理装置のリストなどがメモリ611によって記憶される。
【0014】
例えば、着側呼処理装置421において輻輳が発生すると、次のような手順で輻輳制御が行われる。まず、着側呼処理装置421内部のプロセッサ610は、局番ABCDEの輻輳を検出する。プロセッサ610は、メモリ611における局番ABCDEのレコードに輻輳有りを示す情報を格納させる。この輻輳情報は、輻輳制御サーバ423内部のプロセッサ710によって収集され、局番ABCDEの輻輳が検知される。プロセッサ710は、局番ABCDEに対して発信を許容する呼数密度分配値を算出すると共に、通知先発側呼処理装置のリストを作成し、これらをメモリ711に記憶させる。そして、プロセッサ710は、信号送受信器712を介して、上記リストに従って呼数密度分配値を発側呼処理装置420などに通知する。この通知を受けると、発側呼処理装置420内部のプロセッサ410は、局番ABCDEに対する呼数密度をメモリ411に記録する。以後、プロセッサ410は、メモリ411のレコードを参照して、呼接続を要求されている電話番号が輻輳の発生している局番を含んでいるか否か、或いは、輻輳の発生している電話番号であるか否かを判定する。呼接続を要求されている電話番号が輻輳の発生している局番を含んでいる場合、輻輳の発生している電話番号である場合などには、プロセッサ410は配分された呼数密度の範囲内であるか否かを更に判定する。配分された呼数密度の範囲内であれば、プロセッサ410は、信号線431を介して着側呼処理装置421への呼接続を行う。
【0015】
次に上記輻輳制御の制御内容である呼数密度制御について述べる。尚、呼数密度制御の詳細は非特許文献1に記載されている。
呼数密度制御とは、ある時間幅T内に多くとも1呼のみを発呼するように制御する発信規制手法の1つである。この時間幅Tは、本例においては輻輳制御サーバ423内部のプロセッサ710が収集した輻輳情報に基づいて呼数密度分配値を算出することにより導出され、各発側呼処理装置に通知される。尚、発側呼処理装置間で上記時間幅Tが異なっていてもよい。具体的には、プロセッサ710は、着側呼処理装置421を含む多数の着側呼処理装置から収集した輻輳情報(輻輳の発生している局番または電話番号)に基づいて、着側呼処理装置421が受け入れ可能な呼数密度を算出し、当該呼数密度を配分する発側呼処理装置のリストを作成し、メモリ711に記憶させる。そして、プロセッサ710は、発側呼処理装置420を含む多数の発側呼処理装置に、輻輳の発生している局番または電話番号と、それらに対して配分された呼数密度とを通知する。
【0016】
また、通知先発側呼処理装置のリストは、輻輳の種別に応じて異なる態様で作成される。例えば、地域輻輳であれば、輻輳の発生地域に設けられている着側呼処理装置への発呼を規制する必要がある。固定電話の場合には、局番(特に市外局番)が地理的位置と対応していることを利用可能である。即ち、輻輳の発生地域に対応する局番に対して発信を規制するようなリストが作成される。呼処理装置輻輳であれば、輻輳の発生した呼処理装置とその周辺への発呼を規制する必要がある。この場合には、対象となる呼処理装置の使用する局番に対して発信を規制するようなリストが作成される。加入者輻輳であれば、輻輳の発生している加入者の電話番号に対して発信を規制するようなリストが作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2003−338877号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】徳永裕史、川野弘道、「呼数密度制御に基づくトラヒックふくそう制御」、電子情報通信学会論文誌B, Vol.J 71-B, pp.322-329, 1988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで近年、加入者の要求を満たすために、通信事業者が番号ポータビリティまたは同番移行と呼ばれる手続を提供することがある。ここで、番号ポータビリティとは、個々の加入者を識別するための番号(例えば、サービスが電話である場合には電話番号)を継続利用しつつ、サービスを提供する通信業者を変更する手続である。また、同番移行とは、個々の加入者を識別するための番号を継続利用しつつ、同一通信事業者から受けるサービスを変更する手続である。同番移行は、例えば、同一通信事業者から受けるサービスを固定電話からIP電話に変更する手続である。
【0020】
番号ポータビリティを提供するためには、複数の異なる通信事業者の各々が提供する網において同一局番を使用する必要がある。また、同番移行を提供するためには、一通信事業者が提供する複数の網において同一局番を使用する必要がある。即ち、番号ポータビリティまたは同番移行を提供可能な通信網において、同一局番を使用する網は複数存在する。
【0021】
従って、輻輳の発生した呼処理装置を局番によって一意に識別することができない。また、輻輳の発生した加入者が収容される呼処理装置を局番及び加入者番号を組み合わせた電話番号によって一意に識別することができない。故に、従来の集中型の輻輳制御を、番号ポータビリティまたは同番移行を提供可能な通信網において適用することは困難である。
【0022】
従って、本発明は複数の網が同一局番を使用する通信網において輻輳範囲を識別した輻輳制御を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一態様に係る発側呼処理装置は、発信加入者からのサービス要求に応じて、同一の局番を使用する複数の着側呼処理装置のうち所望の着信加入者を収容する着側呼処理装置への接続を試みる接続手段と、前記複数の着側呼処理装置から輻輳範囲を示す輻輳識別情報を受信して管理する管理手段と、前記輻輳識別情報に基づいて前記輻輳範囲への接続を規制する規制手段とを具備する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数の網が同一局番を使用する通信網において輻輳範囲を識別した輻輳制御を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施形態に係る発側呼処理装置を含む通信網の一例を示す図。
【図2】図1の発側呼処理装置を示すブロック図。
【図3】図2のメモリに記憶されるデータの一例を示す図。
【図4】図1の着側呼処理装置を示すブロック図。
【図5】図4のメモリに記憶されるデータの一例を示す図。
【図6】従来の通信網の一例を示す図。
【図7】図6の発側呼処理装置を示すブロック図。
【図8】図7のメモリに記憶されるデータの一例を示す図。
【図9】図6の着側呼処理装置を示すブロック図。
【図10】図9のメモリに記憶されるデータの一例を示す図。
【図11】図6の輻輳制御サーバを示すブロック図。
【図12】図11のメモリに記憶されるデータの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示す通信網は、本発明の一実施形態に係る発側呼処理装置120を含む。図1の通信網は、集中型の輻輳制御を行う制御主体(輻輳制御サーバ423)が存在しない点及び着側呼処理装置121及び呼処理装置122が同一局番ABCDEを使用する点において図6の通信網と異なる。
【0027】
尚、本願明細書において、呼処理装置という用語は、共通線信号を利用した電話における「交換機」と、SIP (Session Initiation Protocol)信号を利用したIP (Internet Protocol)電話における「SIPサーバ装置」との双方を包含する上位概念として使用される。呼処理装置は、電話の呼あるいはSIPのセッションについて、接続/開放の信号の処理を行う装置である。尚、音声、映像などのメディアに関する信号は、本実施形態の適用対象としていない。また、必要のない限り、呼とセッションとを区別せず「呼」と総称する。SIPサーバ装置の機能は、IMS (IP Multimedia Subsystem)モデルではCSCF (Call/Session Control Function)と呼ばれていて、呼(call)とセッション(session)の両方についての制御機能として扱われている。CSCFを含むIMSモデルの詳細は、文献「ゴンザロ・カマリロ、ミゲール・A・ガルシア・マーチン共著、「IMS標準テキスト」、リックテレコム、2006」に記載されている。また、発側及び着側という用語は、本実施形態を説明するために便宜上付与されているに過ぎず、これらの用語の有無に関わらず各呼処理装置は同一または類似の機能を有していてよい。例えば、呼処理装置122は、着側呼処理装置121と同一または類似の構成を有するものとして理解されてよい。
【0028】
発側呼処理装置120は、発信加入者100を含む多数の加入者を収容する。発側呼処理装置120は、信号線131及び132を夫々介して着側呼処理装置121及び呼処理装置122と接続されている。尚、信号線131及び132は、図示しない中継呼処理装置を含んでいてもよい。
【0029】
着側呼処理装置121は、着信加入者101を含む多数の加入者を収容する。着側呼処理装置121は局番ABCDEを使用しており、着信加入者101には加入者番号FGHJが割り当てられている。即ち、着信加入者101には電話番号0-ABCDE-FGHJが割り当てられている。着側呼処理装置121は、網111(識別子:N)に属している。
【0030】
呼処理装置122は、加入者102を含む多数の加入者を収容する。呼処理装置122は、着側呼処理装置121と同一の局番ABCDEを使用しており、加入者102には加入者番号XXXXが割り当てられている。即ち、加入者102には電話番号0-ABCDE-XXXXが割り当てられている。呼処理装置122は、網112(識別子:M)に属している。
【0031】
図1の通信網における呼接続手順の一例を説明する。例えば、番号ポータビリティまたは同番移行によって、着信加入者101の収容網が網112から網111へ移動したとする。発側呼処理装置120は、発信加入者100から着信加入者101への接続要求(電話番号0-ABCDE-FGHJ)を受信すると、所定の収容網を解決する方式を利用して、着信加入者101を現に収容する網111を特定する。そして、発側呼処理装置120は、網111または着側呼処理装置121への呼接続を行なう。
【0032】
発側呼処理装置120は、任意の既存または将来の収容網を解決する方式を利用してよい。既存の収容網を解決する方式の詳細は、文献「ITU-T、勧告Q.769.1、”Signaling System No. 7 -- ISDN User Port Enhancements for the Support of Number Portability,” December 1999」及び文献「IETF, RFC 3482, “Number Portability in the Global Switched Telephone Network (GSTN): An Overview,” February 2003」に記載されている。
【0033】
ここで、発側呼処理装置120の利用可能な、収容網を解決する方式を2つ例示する。この収容網を解決する方式は、個別データベース方式及び集中データベース方式である。
個別データベース方式は、対象となる局番が元来割り当てられていた網の呼処理装置が、収容網を移動した加入者の情報を個別に管理する方式である。本例であれば、対象となる局番ABCDEが元来割り当てられていた網112の呼処理装置122が、収容網の移動した着信加入者101の情報を管理している。発側呼処理装置120は、発信加入者100から着信加入者101への接続要求(電話番号0-ABCDE-FGHJ)を受信すると、局番ABCDEの個別データベースを有する呼処理装置122への呼接続を試みる。呼処理装置122は、個別データベースの参照により着信加入者101を収容していないことを判定して、着信加入者101を現に収容する網111を示す情報と共に呼処理を発側呼処理装置120に戻す。そして、発側呼処理装置120は、着信加入者101を現に収容する網111または着側呼処理装置121への呼接続を行う。
【0034】
集中データベース方式は、加入者を現に収容する網の情報を集中型の装置(収容網解決装置)が集中管理する方式である。本例であれば、発側呼処理装置120は、発信加入者100から着信加入者101への接続要求(電話番号0-ABCDF-FGHJ)を受信すると、収容網解決装置に着信加入者101を現に収容する網を問い合わせる。そして、発側呼処理装置120は、着信加入者101を現に収容する網111または着側呼処理装置121への呼接続を行う。
【0035】
図2に示すように、発側呼処理装置120は、プロセッサ210、メモリ211及びスイッチ212を有する。プロセッサ210は、例えば、メモリ211またはその他の記憶媒体に記憶されているプログラムを実行することなどにより様々な機能を実現できる。例えば、プロセッサ210は、呼接続制御機能221、輻輳識別情報管理機能222及び発信規制機能223を実現できる。尚、これら呼接続制御機能221、輻輳識別情報管理機能222及び発信規制機能223の一部または全部がプロセッサ210以外の手段(例えば専用回路)によって実現されても勿論よい。
【0036】
発側呼処理装置120は、発信加入者100と加入者回線201を介して接続されており、発信加入者100以外の加入者とも加入者回線を介して接続されている。呼接続制御機能221は、メモリ211のレコードを参照して、スイッチ212を制御することにより、加入者回線201と、呼処理信号を通信するための信号線202及びメディア信号(音声など)を通信するためのメディア線203とを交換してデータの送受信を実現する機能である。尚、呼接続制御機能221は、前述した収容網を解決する方式を実行することも含む。
【0037】
輻輳識別情報管理機能222は、外部(例えば着側呼処理装置121)から輻輳範囲を識別する輻輳識別情報を受信して管理する(例えばメモリ211に記憶させる)機能である。発信規制機能223は、輻輳識別情報管理機能222によって管理されている輻輳識別情報に基づいて輻輳範囲への発信を規制する機能である。
【0038】
図4に示すように、着側呼処理装置121は、プロセッサ310、メモリ311及びスイッチ312を有する。プロセッサ310は、例えばメモリ311またはその他の記憶媒体に記憶されているプログラムを実行することなどにより様々な機能を実現できる。例えば、プロセッサ310は、呼接続制御機能321、輻輳検出機能322、輻輳識別情報生成機能323及び輻輳識別情報通知機能324を実現できる。尚、これら呼接続制御機能321、輻輳検出機能322、輻輳識別情報生成機能323及び輻輳識別情報通知機能324の一部または全部がプロセッサ310以外の手段(例えば専用回路)によって実現されても勿論よい。
【0039】
着側呼処理装置121は、着信加入者101と加入者回線301を介して接続されており、着信加入者101以外の加入者とも加入者回線を介して接続されている。呼接続制御機能321は、メモリ311のレコードを参照して、スイッチ312を制御することにより、加入者回線301と、呼処理信号を通信するための信号線302及びメディア信号を通信するためのメディア線303とを交換してデータの送受信を実現する機能である。
【0040】
輻輳検出機能322は、着側呼処理装置121において発生した呼処理装置輻輳、着側呼処理装置121が収容する加入者において発生した加入者輻輳、着側呼処理装置121が設けられた地域において発生した地域輻輳などを検出する機能である。
輻輳識別情報生成機能323は、輻輳検出機能322によって検出された輻輳範囲を示す輻輳識別情報を生成する機能である。輻輳識別情報通知機能324は、輻輳識別情報生成機能323によって生成された輻輳識別情報を外部(例えば発側呼処理装置120)に通知する機能である。
【0041】
以下、本実施形態に係る発側呼処理装置120が行う発信規制方法を説明する。
着側呼処理装置121が、輻輳検出機能322によって何らかの輻輳を検出すると、輻輳識別情報生成機能323によって輻輳範囲を示す輻輳識別情報を生成する。輻輳識別情報は、例えば着側呼処理装置121の属する網111の識別子(番号)及び着側呼処理装置121の使用する市外局番または局番の組み合わせ、加入者輻輳の発生した加入者の電話番号など輻輳範囲を識別可能な任意の情報である。また、輻輳識別情報は、上記番号以外のルーティング情報(IPアドレス、URL、SIMカードの固有番号(IMSI(International Mobile Subscriber Identity))など)であってもよい。特に、前述した網識別子及び局番の組み合わせを輻輳識別情報として利用すれば、同一局番を使用する網が複数ある場合においても現実に輻輳の発生している網を識別することが可能となる。
【0042】
輻輳識別情報生成機能323によって生成された輻輳識別情報は、メモリ311に記憶される。例えば図5に示すように、輻輳識別情報(図5においては、網識別子、局番及び加入者番号の一部または全部によって表現されている)は、輻輳制御情報(図5においては、呼数密度分配値)及び通知先発側呼処理装置のリストと対応付けて記憶される。
【0043】
着側呼処理装置121は、輻輳識別情報通知機能324によって、メモリ311に記憶されている輻輳識別情報及び輻輳制御情報を、通知先発側呼処理装置のリスト(例えば発側呼処理装置120を含んでいる)に従って通知する。
発側呼処理装置120は、輻輳識別情報管理機能222によって、着側呼処理装置121から通知される輻輳識別情報及び輻輳制御情報を例えば図3に示すようにメモリ211に記憶させる。発側呼処理装置120は、メモリ211に記憶されている輻輳識別情報を利用して輻輳制御を行う。
【0044】
発信加入者100から呼接続を要求されると、発側呼処理装置120は発信規制機能223によって当該呼接続が発信規制の対象であるか否かを判定する。即ち、発信規制機能223は、発信加入者100から要求されている呼の接続先がメモリ211に記憶されている輻輳識別情報によって識別される輻輳範囲のいずれかに含まれるか否かを判定する。呼の接続先がいずれの輻輳範囲にも含まれていなければ、発側呼処理装置120は呼接続制御機能221によって呼接続を行う。一方、呼の接続先がいずれかの輻輳範囲に含まれていれば、発側呼処理装置120は発信規制機能223によって輻輳制御情報に基づく発信規制を行う。
【0045】
例えば、特定の着側呼処理装置121において輻輳が発生していれば、発信規制機能223は当該特定の着側呼処理装置121への発信を規制しつつ、当該特定の着側呼処理装置121と同一の局番を使用する他の呼処理装置(例えば、呼処理装置122)への接続を許容する。一方、特定の着信加入者101において輻輳が発生していれば、発信規制機能223は当該特定の着信加入者101への発信を規制しつつ、着側呼処理装置121に収容される当該特定の着信加入者101以外の加入者への接続を許容する。或いは、発信規制機能223は当該特定の着信加入者101を収容する着側呼処理装置121への発信を規制しつつ、当該着側呼処理装置121と同一の局番を使用する他の呼処理装置への接続を許容する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る発側呼処理装置は、着側呼処理装置から通知される輻輳識別情報に基づいて発信規制を行う。この輻輳識別情報は、輻輳範囲を識別するための情報である。従って、本実施形態に係る発側呼処理装置によれば、複数の網が同一番号を使用する通信網においても、輻輳範囲を識別して輻輳制御を行うことが可能となる。また、本実施形態に係る発側呼処理装置は、集中型の輻輳制御を行う制御主体を必要とせず、分散型の輻輳制御を実現することができる。即ち、本実施形態に係る発側呼処理装置によれば、輻輳制御のためのコスト削減にも寄与できる。
【0047】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。
【0048】
例えば、上記した実施形態の処理にかかるプログラムを、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納して提供することも可能である。記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD−ROM、CD−R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリ等、プログラムを記憶可能であって、かつ、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。
【0049】
また、上記した各実施形態の処理にかかるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0050】
100・・・発信加入者
101・・・着信加入者
102・・・加入者
111,112・・・網
120・・・発側呼処理装置
121・・・着側呼処理装置
122・・・呼処理装置
131,132・・・信号線
201・・・加入者回線
202・・・信号線
203・・・メディア線
210・・・プロセッサ
211・・・メモリ
212・・・スイッチ
221・・・呼接続制御機能
222・・・輻輳識別情報管理機能
223・・・発信規制機能
301・・・加入者回線
302・・・信号線
303・・・メディア線
310・・・プロセッサ
311・・・メモリ
312・・・スイッチ
321・・・呼接続制御機能
322・・・輻輳検出機能
323・・・輻輳識別情報生成機能
324・・・輻輳識別情報通知機能
400・・・発信加入者
401・・・着信加入者
411・・・網
420・・・発側呼処理装置
421・・・着側呼処理装置
423・・・輻輳制御サーバ
430,431,433・・・信号線
501・・・加入者回線
502・・・信号線
503・・・メディア線
510・・・プロセッサ
511・・・メモリ
512・・・スイッチ
601・・・加入者回線
602・・・信号線
603・・・メディア線
610・・・プロセッサ
611・・・メモリ
612・・・スイッチ
710・・・プロセッサ
711・・・メモリ
712・・・信号送受信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信加入者からのサービス要求に応じて、同一の局番を使用する複数の着側呼処理装置のうち所望の着信加入者を収容する着側呼処理装置への接続を試みる接続手段と、
前記複数の着側呼処理装置から輻輳範囲を示す輻輳識別情報を受信して管理する管理手段と、
前記輻輳識別情報に基づいて前記輻輳範囲への接続を規制する規制手段と
を具備する発側呼処理装置。
【請求項2】
前記規制手段は、前記輻輳識別情報が特定の着側呼処理装置における輻輳の発生を示す場合には、当該特定の着側呼処理装置への接続を規制しつつ、当該特定の着側呼処理装置と同一の局番を使用するその他の着側呼処理装置への接続を許容する請求項1記載の発側呼処理装置。
【請求項3】
前記規制手段は、前記輻輳識別情報が特定の着側呼処理装置に収容される特定の着信加入者における輻輳の発生を示す場合には、当該特定の着信加入者への接続を規制しつつ、前記特定の着側呼処理装置に収容されるその他の着信加入者への接続を許容する請求項1記載の発側呼処理装置。
【請求項4】
前記輻輳識別情報は、前記輻輳の発生している特定の着側呼処理装置の属する網及び当該特定の着側呼処理装置の使用する局番を示す情報を含む請求項1記載の発側呼処理装置。
【請求項5】
前記輻輳識別情報は、前記輻輳の発生している特定の着信加入者の局番及び加入者番号を示す情報を含む請求項1記載の発側呼処理装置。
【請求項6】
発信加入者からのサービス要求に応じて、同一の局番を使用する複数の着側呼処理装置のうち所望の着信加入者を収容する着側呼処理装置への接続を試みる発側呼処理装置によって実行される発信規制方法において、
前記複数の着側呼処理装置から輻輳範囲を示す輻輳識別情報を受信して管理することと、
前記輻輳識別情報に基づいて前記輻輳範囲への接続を規制することと
を具備する発信規制方法。
【請求項7】
前記輻輳識別情報が特定の着側呼処理装置における輻輳の発生を示す場合には、当該特定の着側呼処理装置への接続を規制しつつ、当該特定の着側呼処理装置と同一の局番を使用するその他の着側呼処理装置への接続を許容する請求項6記載の発信規制方法。
【請求項8】
前記輻輳識別情報が特定の着側呼処理装置に収容される特定の着信加入者における輻輳の発生を示す場合には、当該特定の着信加入者への接続を規制しつつ、前記特定の着側呼処理装置に収容されるその他の着信加入者への接続を許容する請求項6記載の発信規制方法。
【請求項9】
前記輻輳識別情報は、前記輻輳の発生している特定の着側呼処理装置の属する網及び当該特定の着側呼処理装置の使用する局番を示す情報を含む請求項6記載の発信制御方法。
【請求項10】
前記輻輳識別情報は、前記輻輳の発生している特定の着信加入者の加入者番号及び局番を示す情報を含む請求項6記載の発信規制方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate