説明

発光モジュール、発光パネルおよび照明装置

【課題】短絡性の不良が顕在化した発光素子により、無駄に電力が消費されない発光モジュールを提供することを目的の一とする。または、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、隣接して設けられた他の発光素子の信頼性が損なわれることがない発光パネルを提供することを目的の一とする。
【解決手段】短絡性の不良を含む発光素子が発する熱に着眼し、熱的に発光素子に結合された正温度係数サーミスタ(PTC Thermintor)を介して、該発光素子に電力を供給する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光モジュール、発光モジュールを複数備えた発光パネルおよびそれを用いた照明装置に関する。特に、面状の発光領域を備える発光素子を有する発光モジュール、該発光モジュールを複数備えた発光パネルおよびそれを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の電極の間に膜状に広がる発光性の有機化合物を含む層(EL層ともいう)を設けた発光素子が知られている。このような発光素子は例えば有機EL素子と呼ばれ、一対の電極の間に電圧を印加すると、発光性の有機化合物から発光が得られる。また、有機EL素子を用いた発光デバイスとしては、表示装置や、面状の照明装置などをその例に挙げることができる。なお、表示装置において有機EL素子は、アクティブマトリクス基板上に形成される。
【0003】
例えば、有機EL素子を用いた照明器具が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−108651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、EL層の厚さは数十nmから数百nm程度と薄いため、一対の電極の間に異物が混入すると、短絡性の不良が発生し易いという問題がある。なお、本明細書において短絡性の不良とは、一対の電極が、電圧を印加する前から短絡している場合だけでなく、電圧を印加した結果(例えば電流がEL層の厚さが局所的に薄い部分に集中して流れた結果)短絡していなかった一対の電極が短絡する場合も含むものとする。
【0006】
有機EL素子の一対の電極が短絡すると、該有機EL素子は点灯しなくなるだけでなく、発熱し、電力を無駄に消費してしまう。また、隣接して他の有機EL素子が設けられている場合は、短絡した有機EL素子が発する熱で隣接する他の有機EL素子が破壊されてしまう、または劣化してしまう場合がある。
【0007】
特に、定電圧電源に接続された有機EL素子が短絡すると、該有機EL素子が点灯しなくなるだけでなく、発熱により火災が引き起こされてしまう場合もある。なぜなら、短絡により電気抵抗が小さくなった有機EL素子に、定電圧電源から多量の電流が供給されてしまうからである。
【0008】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、無駄に電力が消費されない発光モジュールを提供することを目的の一とする。または、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、隣接して設けられた他の発光素子の信頼性が損なわれることがない発光パネルを提供することを目的の一とする。
【0009】
または、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、無駄に電力が消費されない照明装置を提供することを目的の一とする。または、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、信頼性が損なわれることがない照明装置を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、短絡性の不良を含む発光素子が発する熱に着眼した。そして、熱的に発光素子に結合された正温度係数サーミスタ(PTC Thermistor:Positive temperature Coefficient Thermistor)を介して、該発光素子に電力を供給する構成に想到し、上記課題の解決に至った。
【0011】
すなわち、本発明の一態様は、一対の電極の間に発光性の有機化合物を含む層を有する発光素子と、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタと、を有し、発光素子は正温度係数サーミスタから電力が供給される発光モジュールである。
【0012】
上記本発明の一態様の発光モジュールは、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタから、該発光素子に電力を供給する構成を有する。これにより、該正温度係数サーミスタが該発光素子の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。その結果、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光モジュールを提供できる。
【0013】
また、本発明の一態様は、一対の電極の間に発光性の有機化合物を含む層を有する発光素子と、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタと、を有し、発光素子は正温度係数サーミスタから電力が供給され、一対の電極の一方は発光性の有機化合物を含む層が発する光を透過し、一対の電極の他方の側に、正温度係数サーミスタが発光素子と重ねて設けられる発光モジュールである。
【0014】
上記本発明の一態様の発光モジュールは、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタから該発光素子に電力が供給され、該発光素子は発光性の有機化合物を含む層が発する光を透過する電極を一対の電極の一方に備え、一対の電極の他方の側に該正温度係数サーミスタを備える構成を有する。これにより、該正温度係数サーミスタが該発光素子の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。また、該発光素子の一対の電極の一方の側、言い換えると該正温度係数サーミスタが設けられていない側に発光を取り出すことができる。その結果、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光モジュールを提供できる。また、発光素子が発する光を正温度係数サーミスタが遮ることがない発光モジュールを提供できる。
【0015】
また、本発明の一態様は、前記発光素子と前記正温度係数サーミスタが導電材料を介して熱的に結合された上記の発光モジュールである。
【0016】
上記本発明の一態様の発光モジュールは、発光素子と導電材料を介して熱的に結合された正温度係数サーミスタから、該発光素子に電力を供給する構成を有する。これにより、該導電材料は電力を発光素子に供給し、且つ発光素子が発する熱を該正温度係数サーミスタに伝導する働きを兼ね備える。その結果、発光モジュールの外形を大きくすることなく、該正温度係数サーミスタが該発光素子の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。よって、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光モジュールを提供できる。
【0017】
また、本発明の一態様は、前記正温度係数サーミスタに換えて、複数の正温度係数サーミスタが直列に接続された正温度係数サーミスタアレイから電力が供給される上記の発光モジュールである。
【0018】
上記本発明の一態様の発光モジュールは、発光素子と熱的に結合された複数の正温度係数サーミスタが直列に接続された正温度係数サーミスタアレイから該発光素子に電力を供給する構成を有する。これにより、該正温度係数サーミスタアレイを構成する複数の該正温度係数サーミスタが、該発光素子を複数に分割して該発光素子の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。その結果、短絡性の不良が発光素子の面積に比較して小さい場合であっても、正温度係数サーミスタアレイはその局所的な発熱を見逃すことなく、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光モジュールを提供できる。
【0019】
また、本発明の一態様は、上記の発光モジュールを隣接して複数備える発光パネルである。
【0020】
上記本発明の一態様の発光パネルは、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタから、該発光素子に電力を供給する発光モジュールを、隣接して複数備える構成を有する。これにより、該正温度係数サーミスタが該発光素子の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。その結果、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光パネルを提供できる。または、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、隣接して設けられた他の発光素子の信頼性が損なわれることがない発光パネルを提供できる。
【0021】
また、本発明の一態様は、上記の発光モジュールを用いた照明装置である。
【0022】
上記本発明の一態様の照明装置は、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタから、該発光素子に電力を供給する構成を有する発光モジュールが用いられている。これにより、該正温度係数サーミスタが該発光素子の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。その結果、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない照明装置を提供できる。
【0023】
なお、本明細書において、EL層とは発光素子の一対の電極間に設けられた層を示すものとする。従って、電極間に挟まれた発光物質である有機化合物を含む発光層はEL層の一態様である。
【0024】
また、本明細書において、熱的に結合された状態とは二つの構成要素間で熱が移動しうるように配置されている状態をいう。従って、二つの構成要素が直接接している状態をいうだけでなく、二つの構成要素の間に熱媒体となる構成要素が挟まれている状態も熱的に結合されている状態ということができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、無駄に電力が消費されない発光モジュールを提供できる。または、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、隣接して設けられた他の発光素子の信頼性が損なわれることがない発光パネルを提供できる。または、無駄に電力が消費されない照明装置を提供できる。または、信頼性が損なわれることがない発光モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態に係る発光モジュールを説明する図。
【図2】実施の形態に係る発光モジュールを説明する図。
【図3】実施の形態に係る発光モジュールを説明する図。
【図4】実施の形態に係る発光パネルを説明する図。
【図5】実施の形態に係る発光素子の構成を説明する図。
【図6】実施の形態に係る発光素子の構成を説明する図。
【図7】実施の形態に係る発光デバイスを用いた照明装置を説明する図。
【図8】実施の形態に係る発光モジュールを説明する図。
【図9】実施の形態に係る発光モジュールを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態では、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタから、該発光素子に電力を供給する構成を備える発光モジュールについて図1を参照して説明する。具体的には、基板上に有機EL素子と、該有機EL素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタを有し、該有機EL素子は該正温度係数サーミスタから電力が供給される発光モジュールについて説明する。
【0029】
本発明の一態様の発光モジュール150の構成を図1(A)に示す。図1(A)に例示する発光モジュール150は、基板100上に発光素子130と正温度係数サーミスタ140を有する。また、発光素子130は発光素子130を囲うシール材158と、封止材159と、基板100により大気中の不純物から隔離されている。
【0030】
基板100は発光素子130が発する光に対し透光性を有する。発光素子130は基板100に接する第1の電極101と、第1の電極101の端部を覆う隔壁104と、第1の電極101と重なる第2の電極102と、第1の電極101と第2の電極102の間に発光性の有機化合物を含む層103を備える。正温度係数サーミスタ140は、上部電極142と下部電極141の間に正温度係数を有するPTC層143を備える。
【0031】
発光素子130の第1の電極101は発光モジュール150の第1の端子151に電気的に接続されている。発光素子130の第2の電極102は、正温度係数サーミスタ140の上部電極142と電気的に接続するだけでなく、発光素子130が発する熱を正温度係数サーミスタ140に伝導する。また、下部電極141は発光モジュール150の第2の端子152と電気的に接続されている。
【0032】
なお、上記の発光モジュール150は発光素子130と正温度係数サーミスタ140を発光素子の第2の電極102を介して電気的及び熱的に結合する構成を有するが、この構成に限定されない。図示しないが、例えば、発光素子と正温度係数サーミスタを発光素子の第1の電極を介して電気的及び熱的に結合してもよい。または、発光素子と正温度係数サーミスタを発光素子の第2の電極を介して熱的に結合し、発光素子の第1の電極を介して電気的に結合してもよい。または、発光素子と正温度係数サーミスタを発光素子の第1の電極を介して熱的に結合し、発光素子の第2の電極を介して電気的に結合してもよい。
【0033】
<発光素子と正温度係数サーミスタを接続する材料>
発光素子と正温度係数サーミスタは電気的に接続され且つ熱的に結合される。例えば、図1(A)に例示する発光モジュールにおいて、連続する層で形成された第2の電極102と上部電極142が発光素子と正温度係数サーミスタを電気的に接続し且つ熱的に結合している。しかし、発光素子と正温度係数サーミスタを電気的に接続する構成要素と、熱的に結合する構成要素を同一の構成要素である必要はなく、例えば一の構成要素が発光素子と正温度係数サーミスタを電気的に接続し、他の構成要素が発光素子と正温度係数サーミスタを熱的に結合する構成であってもよい。
【0034】
発光素子130と正温度係数サーミスタ140を電気的に接続する材料としては導電率が高い材料が好ましい。具体的には、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、MoまたはWから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする合金膜、または金属窒化物膜(例えば、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜は、耐熱性や腐食性の問題を回避するために、下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、W、Cr、Ta、Nd、ScまたはYなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(例えば、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。
【0035】
また、発光素子130と正温度係数サーミスタ140を熱的に結合する材料としては、熱伝導率が高い材料が好ましい。熱伝導率が高い材料としては、代表的には金属をその例に挙げる事ができるが、必ずしも導電性を兼ね備える必要はない。例えば、熱伝導性グリスや熱伝導率の高い絶縁性の材料、具体的には熱伝導率の高いフィラーを分散したシリコーングリスやシリコーン樹脂を用いて熱的な結合を行い、別途導電性の材料を用いて電気的な接続を行う構成とすることもできる。
【0036】
高い導電率と高い熱伝導率を兼ね備える材料としては、導電率が高く、熱伝導率が高い金属を単体で、または他の材料と積層して用いることができる。例えば、金(Au),銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)が好ましい。複数の材料を積層して用いる例としては、発光性の有機化合物を含む層103に接する側にはキャリアの注入性に優れた仕事関数を有し且つ反射率の高い導電材料を用い、該導電材料に積層して特に導電率が高い材料及び/または熱伝導率の高い材料を用いる構成としても良い。
【0037】
このような構成を有する発光モジュール150の第1の端子151と第2の端子152を電源に接続すると、正温度係数サーミスタ140を介して発光素子130に電力を供給できる。また、電力を供給された発光素子130が備える発光性の有機化合物を含む層103は、第1の電極101の側から光を発する。また、発光素子130において短絡性の不良が顕在化すると、その熱が第2の電極102と接続された正温度係数サーミスタ140に伝導する。正温度係数サーミスタ140はその熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。
【0038】
<正温度係数を有するPTC層に用いることができる材料>
正温度係数を有するPTC層143に用いることができる材料としては、例えば、高分子材料に導電性のフィラーを分散したものや、チタン酸バリウムに不純物として希土類を添加したものを用いることができる。
【0039】
高分子材料に導電性のフィラーを分散した材料(PPTC(Polymer Positive temperature Coefficient)材料ともいう)は小型化が容易であり、導通状態においての電気抵抗が低いことから好ましい。PPTC材料に用いることができる高分子材料としては、例えばポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン等の絶縁性の高分子が好ましく、導電性のフィラーとしては、カーボンブラック、ニッケル粉などが好ましい。
【0040】
正温度係数サーミスタは、発光素子の耐熱性からその動作温度を適宜選定して用いればよい。例えば、100℃以上200℃以下の範囲で動作するものを適用できる。照明装置の多くが100℃を越えない環境において使用されることと、発光性の有機化合物を含む層に含まれる有機化合物のガラス転移点温度を越えた使用は発光素子の信頼性が損なわれてしまうことからである。正温度係数サーミスタは、その動作温度を超えると電気抵抗が急激に増大するため、正温度係数サーミスタが動作すると該正温度係数サーミスタに接続されている発光素子への電力の供給が中断または抑制される。従って、短絡性の不良が顕在化した発光素子が正温度係数サーミスタの動作温度を超えて発熱し続けることを防止できる。
【0041】
上記本発明の一態様の発光モジュールは、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタから、該発光素子に電力を供給する構成を有する。これにより、該正温度係数サーミスタが該発光素子の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。その結果、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光モジュールを提供できる。
【0042】
上記本発明の一態様の発光モジュールは、発光素子と導電材料を介して熱的に結合された正温度係数サーミスタから、該発光素子に電力を供給する構成を有する。これにより、該導電材料は電力を発光素子に供給し、且つ発光素子が発する熱を該正温度係数サーミスタに伝導する働きを兼ね備える。その結果、該正温度係数サーミスタは該発光素子の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制でき、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光モジュールを提供できる。
【0043】
<変形例1.>
本発明の一態様の発光モジュールの別の態様を図1(B)に示す。図1(B)に例示する発光モジュール150は、基板100上に正温度係数サーミスタ140と、正温度係数サーミスタ140上に発光素子130を有する。また、発光素子130は発光素子130を囲うシール材158と、発光素子130が発する光を透過する封止材159により大気中の不純物から隔離されている。
【0044】
基板100と発光素子130の間に、正温度係数サーミスタ140を備える。正温度係数サーミスタ140は下部電極141と発光素子の第1の電極101の間に正温度係数を有するPTC層143を備える。
【0045】
なお、基板100上に正温度係数サーミスタ140を設ける方法としては、別途作製された正温度係数サーミスタ140を基板100に表面実装してもよいし、基板100の表面に設けた下部電極141上に重ねて正温度係数を有するPTC層143を形成し、第1の電極101の端部を絶縁性の隔壁104で覆い、上部電極を兼ねる発光素子130の第1の電極101を積層して形成してもよい。正温度係数を有するPTC層143を下部電極141上に形成する方法としては、シート状に成型したPTC材料をラミネートする方法や、転写する方法が挙げられる。
【0046】
発光素子130は、PTC層143上に形成された第1の電極101と、第1の電極101の端部を覆う隔壁104と、第1の電極と第1の電極と重なる第2の電極102の間に発光性の有機化合物を含む層103を備える。
【0047】
本変形例においては、正温度係数サーミスタ140の一方の電極が発光素子130の第1の電極101を兼ね、発光素子130と正温度係数サーミスタ140を電気的に接続し且つ熱的に結合している。従って、第1の電極101は熱伝導率が高い導電材料を含む構成が好ましく、特に導電率が高く、熱伝導率が高い金属を単体で、または他の導電材料と積層して用いる構成が好ましい。なお、発光素子130の第2の電極102には、発光性の有機化合物を含む層103が発する光に対して透光性を有する導電材料を用いる。
【0048】
このような構成を有する発光モジュール150の第1の端子151と第2の端子152を電源に接続すると、正温度係数サーミスタ140を介して発光素子130に電力を供給できる。また、電力を供給された発光素子130が備える発光性の有機化合物を含む層103は、第2の電極102の側から光を発する。また、発光素子130において短絡性の不良が顕在化すると、その熱は第1の電極101に接して設けられた正温度係数サーミスタ140に伝導する。正温度係数サーミスタ140はその熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。
【0049】
上記本発明の一態様の発光モジュールは、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタから、該発光素子に電力が供給され、該発光素子は発光性の有機化合物を含む層が発する光を透過する電極を一対の電極の一方に備え、一対の電極の他方の側に該正温度係数サーミスタを備える構成を有する。これにより、該正温度係数サーミスタは該発光素子の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。また、該発光素子の一対の電極の一方の側、言い換えると該正温度係数サーミスタが設けられていない側に発光を取り出すことができる。その結果、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光モジュールを提供できる。また、発光素子が発する光を正温度係数サーミスタが遮ることがない発光モジュールを提供できる。
【0050】
<変形例2.>
本発明の一態様の発光モジュールの別の態様を図1(C)に示す。図1(C)に例示する発光モジュール150は、基板100の一方の面に発光素子130と、基板100の他方の面に正温度係数サーミスタ140と、を互いに重なる位置に有する。また、発光素子130は発光素子130を囲うシール材158と、発光素子130が発する光を透過する封止材159により大気中の不純物から隔離されている。
【0051】
基板100は絶縁性の表面を有し、一方の面に発光素子130の第1の電極101を、他方の面に正温度係数サーミスタ140の下部電極141を備える。発光素子130は基板100の一方の面に接する第1の電極101と、第1の電極101の端部を覆う隔壁104と、第1の電極101と重なる第2の電極102と、第1の電極101と第2の電極102の間に発光性の有機化合物を含む層103を備える。正温度係数サーミスタ140は、基板100の他方の面に接する下部電極141と上部電極142の間に正温度係数を有するPTC層143を備える。
【0052】
発光素子130の第1の電極101は正温度係数サーミスタ140の下部電極141と、基板100に設けた開口部を介して電気的に接続する。また、正温度係数サーミスタ140の下部電極141は基板100に設けた開口部を介して、発光素子130が発する熱を正温度係数サーミスタ140に伝導する。正温度係数サーミスタ140の上部電極142は発光モジュール150の第1の端子151に電気的に接続されている。また、発光素子130の第2の電極102は発光モジュール150の第2の端子152と電気的に接続されている。
【0053】
本変形例においては、正温度係数サーミスタ140の下部電極141と発光素子130の第1の電極101は基板の開口部を介して接続し、発光素子130と正温度係数サーミスタ140は電気的に接続し且つ熱的に結合している。従って、下部電極141は熱伝導率が高い導電材料を含む構成が好ましい。特に導電率が高く、熱伝導率が高い金属を単体で、または他の導電材料と積層して用いる構成が好ましい。なお、発光素子130の第2の電極102には、発光性の有機化合物を含む層103が発する光に対して透光性を有する導電材料を用いる。
【0054】
このような構成を有する発光モジュール150の第1の端子151と第2の端子152を電源に接続すると、正温度係数サーミスタ140を介して発光素子130に電力を供給できる。また、電力を供給された発光素子130が備える発光性の有機化合物を含む層103は、第2の電極102の側から光を発する。また、発光素子130において短絡性の不良が顕在化すると、その熱が第1の電極101と接続された正温度係数サーミスタ140に伝導する。正温度係数サーミスタ140はその熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。
【0055】
上記本発明の一態様の発光モジュールは、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタから、該発光素子に電力が供給され、該発光素子は発光性の有機化合物を含む層が発する光を透過する電極を一対の電極の一方に備え、一対の電極の他方の側に該正温度係数サーミスタを備える構成を有する。これにより、該正温度係数サーミスタが該発光素子の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。また、該発光素子の一対の電極の一方の側、言い換えると該正温度係数サーミスタが設けられていない側に発光を取り出すことができる。その結果、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光モジュールを提供できる。また、発光素子が発する光を正温度係数サーミスタが遮ることがない発光モジュールを提供できる。
【0056】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0057】
(実施の形態2)
本実施の形態では、発光素子と熱的に結合された複数の正温度係数サーミスタが直列に接続された正温度係数サーミスタアレイから該発光素子に電力を供給する構成を適用した発光モジュールについて図2(A)、図2(B)を参照して説明する。具体的には、基板上に有機EL素子と、該有機EL素子と熱的に結合された複数の正温度係数サーミスタが直列に接続された正温度係数サーミスタアレイを有し、該有機EL素子は該正温度係数サーミスタアレイから電力が供給される発光モジュールについて説明する。
【0058】
本発明の一態様の発光モジュール250の構成の上面図を図2(A)に、図2(A)の切断線A−A’、及び切断線B−B’における断面を図2(B)に示す。
【0059】
図2に例示する発光モジュール250は、基板200上に発光素子230と正温度係数サーミスタ240a、正温度係数サーミスタ240b、正温度係数サーミスタ240cを含む9つの正温度係数サーミスタを有する。また、図2(B)には発光素子230を囲うシール材258と、発光素子230が発する光を透過する封止材259が図示されている。シール材258と封止材259により、発光素子230は大気中の不純物から隔離されている。
【0060】
基板200は熱伝導率が高い材料が好ましい。なぜなら、異常な発熱をすることなく動作する発光素子230が発する熱を排熱するヒートシンクとして、該基板が機能するからである。素子を実装する側の表面が絶縁性であって且つ全体としては熱伝導率が高い基板としては、表面を絶縁性の材料で被覆した金属基板などをその例に挙げることができる。
【0061】
発光モジュール250が有する正温度係数サーミスタアレイの構成について、図3(A)、図3(B)を用いて説明する。正温度係数サーミスタアレイ240の上面図を図3(A)に示す。正温度係数サーミスタアレイ240は、9個の正温度係数サーミスタ(240a、240b、240c、240d、240e、240f、240g、240h、240i)が直列に接続されて構成されている。
【0062】
正温度係数サーミスタを直列に接続する方法の一例を、図3(B)を用いて説明する。図3(B)は、正温度係数サーミスタ240a、正温度係数サーミスタ240b及び正温度係数サーミスタ240cの断面図であり、それぞれの正温度係数サーミスタは互いに直列に接続されている。なお、正温度係数サーミスタ240aは基板200に接する下部電極241aと上部電極242aの間にPTC層243aを備え、正温度係数サーミスタ240bは基板200に接する下部電極241bと上部電極242bの間にPTC層243bを備え、正温度係数サーミスタ240cは基板200に接する下部電極241cと上部電極242cの間にPTC層243cを備える。
【0063】
正温度係数サーミスタ240aと正温度係数サーミスタ240bは、上部電極242aと上部電極242bが互いに接続されており、正温度係数サーミスタ240bと正温度係数サーミスタ240cは下部電極241bと下部電極241cが互いに接続されている。このような構成とすることで互いが直列に接続され、正温度係数サーミスタ240a、正温度係数サーミスタ240b及び正温度係数サーミスタ240cの間を、図3(B)に示す太い矢印のように電流が流れるようになる。なお、正温度係数サーミスタアレイ240を流れる電流の一例を図3(A)に太い矢印で示す。
【0064】
このような構成の正温度係数サーミスタアレイ240を発光素子230に熱的に結合して設ける構成とすることで、発光素子230を複数の領域(本実施の形態では9個の領域)に分割して、発光素子230の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を監視できる。そして、複数の領域のうち1つの領域において短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知すると、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。その結果、短絡性の不良が発光素子の面積に比較して小さい場合であっても、正温度係数サーミスタアレイはその局所的な発熱を見逃すことなく、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光モジュールを提供できる。
【0065】
発光モジュール250が有する発光素子230は、正温度係数サーミスタアレイ上に設けられた平坦化膜247上に第1の電極201と、第1の電極201の端部を覆う隔壁204と、第1の電極201と重なる第2の電極202と、第1の電極201と第2の電極202の間に発光性の有機化合物を含む層203を備える(図2(B)参照)。
【0066】
なお、発光素子230の第2の電極202には、発光性の有機化合物を含む層203が発する光に対して透光性を有する導電材料を用いる。また、第2の電極202の端部は発光モジュール250の第2の端子252と接続している。
【0067】
発光素子230の第1の電極201は、平坦化膜247に設けた開口部を介して、正温度係数サーミスタアレイ240の上部電極242cと電気的に接続している。また、発光素子230と正温度係数サーミスタアレイ240は平坦化膜247を介して熱的に結合している。
【0068】
平坦化膜247は発光素子230に用いる第1の電極201の表面を平坦に形成するために用いられる。平坦化膜247にはポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の樹脂材料を用いることができる。また上記樹脂材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。特に、熱伝導率が高い材料を含む構成が好ましい。また、本実施の形態においては絶縁性の材料が好ましい。なぜなら、正温度係数サーミスタアレイを構成する正温度係数サーミスタの上部電極と発光素子の第1の電極の間を絶縁する必要があるためである。また、発光素子への不純物の拡散を防止するために、バリア性の高い膜を積層して設けてもよい。
【0069】
なお、正温度係数サーミスタの下部電極は平坦化膜247に設けた開口部を介して発光モジュール250の第1の端子251と接続されている。
【0070】
このような構成を有する発光モジュール250の第1の端子251と第2の端子252を電源に接続すると、正温度係数サーミスタアレイ240を介して発光素子230に電力を供給できる。また、電力を供給された発光素子230が備える発光性の有機化合物を含む層203は、第2の電極202の側から光を発する。また、発光素子230において短絡性の不良が顕在化すると、その熱は平坦化膜247を介して正温度係数サーミスタアレイ240に設けられた複数の正温度係数サーミスタのいずれかに伝導する。正温度係数サーミスタアレイ240を構成する正温度係数サーミスタは直列に接続されているため、いずれか1つでも短絡性の不良による熱を検知すれば、当該正温度係数サーミスタアレイによって該発光素子への電力の供給が中断、または抑制される。言い換えると、発光素子230に顕在化する短絡性の不良の発生を、複数の正温度係数サーミスタによって分割された領域毎に監視できる。
【0071】
上記本発明の一態様の発光モジュールは、発光素子と熱的に結合された複数の正温度係数サーミスタが直列に接続された正温度係数サーミスタアレイから該発光素子に電力を供給する構成を有する。これにより、該正温度係数サーミスタアレイを構成する複数の該正温度係数サーミスタが、該発光素子を複数に分割して該発光素子の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。その結果、短絡性の不良が発光素子の面積に比較して小さい場合であっても、正温度係数サーミスタアレイはその局所的な発熱を見逃すことなく、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光モジュールを提供できる。
【0072】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0073】
(実施の形態3)
本実施の形態では、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタから、該発光素子に電力を供給する構成が、複数並列して設けられた発光モジュールについて図8(A)、図8(B)を参照して説明する。具体的には、基板上に設けられた正温度係数サーミスタの上部電極上に、マトリクス状に複数の有機EL素子が設けられた構成について説明する。なお、該正温度係数サーミスタと該有機EL素子のそれぞれは熱的に結合し、電気的に直列に接続されている。
【0074】
本発明の一態様の発光モジュール450の構成の上面図を図8(A)に、図8(A)の切断線A−A’、及び切断線B−B’における断面を図8(B)に示す。
【0075】
図8(A)に例示する発光モジュール450は、発光素子マトリクス430を有する。なお、例示する発光素子マトリクス430は発光素子が7行7列に設けられている。また、発光モジュール450は図8(B)に示すように、発光素子マトリクス430と基板400の間に正温度係数サーミスタ440を有する。
【0076】
正温度係数サーミスタ440は、下部電極441と、下部電極441上に正温度係数を有するPTC層443と、PTC層443上に上部電極を有する。図示されているように、作製を容易にするため、正温度係数サーミスタ440の下部電極441は連続する一層であってもよく、PTC層443も連続する一層であってもよい。本実施の形態で例示する正温度係数サーミスタ440の上部電極は7行7列に分割され、それぞれが発光素子マトリクス430を構成する発光素子の第1の電極を兼ねている。
【0077】
発光素子マトリクス430を構成する発光素子は、正温度係数サーミスタ440上に形成されている。本実施の形態で例示する発光素子は、正温度係数サーミスタ440の上部電極を兼ねる第1の電極と、第1の電極の端部を覆う隔壁404と、隔壁404の開口部で第1の電極と接する発光性の有機化合物を含む層403と、発光性の有機化合物を含む層403と接する第2の電極402を備える。例えば、図8(B)に示す第1の電極401は、正温度係数サーミスタ440の上部電極であり、且つ7行7列に配置された第1の電極の1つである。そして、第1の電極401と発光性の有機化合物を含む層403は隔壁404の開口部で互いに接している。
【0078】
また、図8(B)には発光素子マトリクス430を囲うシール材458と、発光素子マトリクス430が発する光を透過する封止材459が図示されている。発光素子マトリクス430は、シール材458と封止材459により大気中の不純物から隔離されている。
【0079】
なお、発光モジュール450を構成する発光素子マトリクス430および正温度係数サーミスタ440は、実施の形態2で説明した発光素子および正温度係数サーミスタと同様の材料を用いて作製できる。
【0080】
このような構成を有する発光モジュール450は、正温度係数サーミスタ440と発光素子が電気的に直列に接続された単位構成を7行7列のマトリクス状に有し、且つそれぞれの単位構成が正温度係数サーミスタ440の下部電極(図示されるものは連続する一層である)を介して電気的に並列に接続されている。このような構成とすることで、正温度係数サーミスタの動作温度を超えたPTC層は電気抵抗が増大、または絶縁化するため、動作温度を超えたPTC層は他のPTC層との電気的な導通を失い、電気的に独立する。
【0081】
7行7列のマトリクス状に配置された発光素子は、それぞれの第1の電極が接する正温度係数サーミスタ440のPTC層と熱的に結合している。従って、短絡性の不良が顕在化した発光素子はその直下にある、該発光素子と重なるPTC層を加熱する。加熱されて動作温度を超えたPTC層は、電気抵抗が増大または絶縁化し、該PTC層に接続された発光素子の第1の電極への電力の供給が中断、または抑制されることになる。
【0082】
なお、本実施の形態で例示した発光素子マトリクスは様々な大きさで形成することができる。好ましくは目視で認識し難い大きさ、具体的には直径5mm以下、特に1mm以下の微細な大きさが好ましい。また、マトリクス状の配置に限定されず、不規則に設けられていても良い。また、その形態も四角に限定されず、様々な形状とすることができる。例えば、不定型な形状が連続するものであってもよく、具体的にはPTC層に含まれる導電性のフィラー(例えば、カーボンブラックやニッケル粉)の形状が反映したものであってもよい。
【0083】
<変形例>
本発明の一態様の発光モジュールの別の態様を図9に示す。図9に例示する発光モジュール550は、基板500上に発光素子530と、正温度係数サーミスタ540を有する。
【0084】
本実施の形態で例示する変形例の正温度係数サーミスタ540は、下部電極541と、下部電極541上に正温度係数を有するPTC層543と、PTC層543上に上部電極を有する。本実施の形態で例示する正温度係数サーミスタ540の上部電極は発光素子530の第1の電極501を兼ねている。
【0085】
本実施の形態の第1の電極501は金属よりも導電率の低い材料を用いる。第1の電極501に用いることができる材料としては、例えば導電性高分子(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物)膜や、有機化合物にアクセプター性の材料(例えば、酸化モリブデン)を混合した膜や、有機化合物にドナー性の材料(例えば、Liなどアルカリ金属またはアルカリ土類金属)を混合した膜を用いることができる。
【0086】
また、第1の電極501はPTC層543の表面を平坦化する。特に、コーティング法により成膜できるものが便利である。
【0087】
正温度係数サーミスタ540の上部電極を兼ねる発光素子530の第1の電極501に導電性が抑制された膜を用いる意義について以下に説明する。発光素子は、第1の電極が接する正温度係数サーミスタ540のPTC層と熱的に結合している。従って、発光素子の一部に短絡性の不良が顕在化すると、該短絡性の不良と重なる領域のPTC層にその熱が伝導する。加熱されて動作温度を超えた領域のPTC層は、電気抵抗が増大または絶縁化し、該領域に接続された発光素子の第1の電極への電力の供給が中断、または抑制されることになる。
【0088】
このとき、正温度係数サーミスタ540の上部電極を兼ねる発光素子530の第1の電極501の導電性が抑制されていると、動作温度を超えた領域のPTC層の周りから、該短絡性の不良箇所に回り込む電流が抑制される効果を奏する。
【0089】
このような構成を有する発光モジュール550は、発光面積を大きくすることができる。
【0090】
上記本発明の一態様の発光モジュールは、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタから該発光素子に電力を供給する構成が、複数並列して設けられている。これにより、該正温度係数サーミスタの発光素子と熱的に結合された領域が該発光素子の短絡性の不良が顕在化した際に発する熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。その結果、短絡性の不良が発光モジュールの発光面積に比較して小さい場合であっても、正温度係数サーミスタはその局所的な発熱を見逃すことなく、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光モジュールを提供できる。
【0091】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0092】
(実施の形態4)
本実施の形態では、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタから、該発光素子に電力を供給する発光モジュールを隣接して複数備える発光パネルについて図4を参照して説明する。具体的には、基板上に有機EL素子と、該有機EL素子と熱的に結合された複数の正温度係数サーミスタが直列に接続された正温度係数サーミスタアレイを有し、該有機EL素子は該正温度係数サーミスタアレイから電力が供給される発光モジュールが隣接して設けられた発光パネルについて説明する。
【0093】
本発明の一態様の発光パネル350の構成の上面図を図4に示す。
【0094】
図4に例示する発光パネル350は、既に実施の形態2で説明した発光モジュール250と同じ構成を備える発光モジュール250a、発光モジュール250b、発光モジュール250c、発光モジュール250dが隣接して設けられた構成を有する。
【0095】
発光モジュール250aの第2の端子252aと発光モジュール250bの第1の端子251bは互いに接続され、発光モジュール250aと発光モジュール250bは直列に接続されている。また、発光モジュール250cの第2の端子252cと発光モジュール250dの第1の端子251dは互いに接続され、発光モジュール250cと発光モジュール250dは直列に接続されている。
【0096】
発光パネル350を構成する発光モジュールの端子、具体的には第1の端子251aと第2の端子252bを図示されない第1の定電流電源に接続し、第1の端子251cと第2の端子252dを図示されない第2の定電流電源に接続することで、発光パネル350を均一な明るさで点灯できる。
【0097】
また、発光パネル350を構成する発光モジュールの発光素子に短絡性の不良が顕在化すると、該発光モジュールが備える正温度係数サーミスタがその熱を検知し、該発光素子への電力の供給を中断、または抑制できる。その結果、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、電力が無駄に消費されない発光パネルを提供できる。または、短絡性の不良が顕在化した発光素子により、隣接して設けられた他の発光素子の信頼性が損なわれることがなり発光パネルを提供できる。
【0098】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0099】
(実施の形態5)
本実施の形態では、発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタから、該発光素子に電力を供給する構成を有する発光モジュールに用いることができる発光素子の構成の一例について図5及び図6を参照して説明する。
【0100】
本実施の形態で例示する発光素子は、第1の電極、第2の電極及び第1の電極と第2の電極の間に発光性の有機化合物を含む層(以下EL層という)を備える。本実施の形態では、基板上に形成された第1の電極は陽極として機能し、第2の電極が陰極として機能する。EL層は第1の電極と第2の電極の間に設けられ、該EL層の構成は第1の電極と第2の電極の材質に合わせて適宜選択すればよい。以下に発光素子の構成の一例を例示するが、発光素子の構成がこれに限定されないことはいうまでもない。
【0101】
<発光素子の構成例1.>
発光素子の構成の一例を図5(A)に示す。図5(A)に示す発光素子は、陽極1101と陰極1102の間にEL層1103が挟まれている。
【0102】
陽極1101と陰極1102の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、EL層1103に陽極1101の側からホールが注入され、陰極1102の側から電子が注入される。注入された電子とホールはEL層1103において再結合し、EL層1103に含まれる発光物質が発光する。
【0103】
EL層1103は、少なくとも発光物質を含む発光層を備えていればよく、発光層以外の層と積層された構造であっても良い。発光層以外の層としては、例えばホール注入性の高い物質、ホール輸送性の高い物質、ホール輸送性に乏しい(ブロッキングする)物質、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、並びにバイポーラ性(電子及びホールの輸送性の高い)の物質等を含む層が挙げられる。
【0104】
EL層1103の具体的な構成の一例を図5(B)に示す。図5(B)に示すEL層1103は、ホール注入層1113、ホール輸送層1114、発光層1115、電子輸送層1116、並びに電子注入層1117が陽極1101側からこの順に積層されている。
【0105】
<発光素子の構成例2.>
発光素子の構成の他の一例を図5(C)に示す。図5(C)に例示する発光素子は、陽極1101と陰極1102の間にEL層1103が挟まれている。さらに、陰極1102とEL層1103との間には中間層1104が設けられている。なお、当該発光素子の構成例2のEL層1103には、上述の発光素子の構成例1と同様の構成が適用可能であり、詳細については、発光素子の構成例1の記載を参酌できる。
【0106】
中間層1104は少なくとも電荷発生領域を含んで形成されていればよく、電荷発生領域以外の層と積層された構成であってもよい。例えば、第1の電荷発生領域1104c、電子リレー層1104b、及び電子注入バッファー1104aが陰極1102側から順次積層された構造を適用することができる。
【0107】
中間層1104における電子とホールの挙動について説明する。陽極1101と陰極1102の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、第1の電荷発生領域1104cにおいて、ホールと電子が発生し、ホールは陰極1102へ移動し、電子は電子リレー層1104bへ移動する。電子リレー層1104bは電子輸送性が高く、第1の電荷発生領域1104cで生じた電子を電子注入バッファー1104aに速やかに受け渡す。電子注入バッファー1104aはEL層1103に電子を注入する障壁を緩和し、EL層1103への電子注入効率を高める。従って、第1の電荷発生領域1104cで発生した電子は、電子リレー層1104bと電子注入バッファー1104aを経て、EL層1103のLUMO準位に注入される。
【0108】
また、電子リレー層1104bは、第1の電荷発生領域1104cを構成する物質と電子注入バッファー1104aを構成する物質が界面で反応し、互いの機能が損なわれてしまう等の相互作用を防ぐことができる。
【0109】
<発光素子の構成例3.>
発光素子の構成の他の一例を図6(A)に示す。図6(A)に例示する発光素子は、陽極1101と陰極1102の間にEL層が2つ設けられている。さらに、EL層1103aと、EL層1103bとの間には中間層1104が設けられている。
【0110】
なお、陽極と陰極の間に設けるEL層は2つに限定されない。図6(B)に例示する発光素子は、EL層1103が複数積層された構造、所謂、積層型素子の構成を備える。但し、例えば陽極と陰極の間にn(nは2以上の自然数)層のEL層1103を設ける場合には、m(mは自然数、1以上(n−1)以下)番目のEL層と、(m+1)番目のEL層との間に、それぞれ中間層1104を設ける構成とする。
【0111】
また、当該発光素子の構成例3のEL層1103には、上述の発光素子の構成例1と同様の構成を適用することが可能であり、また当該発光素子の構成例3の中間層1104には、上述の発光素子の構成例2と同様の構成が適用可能である。よって、詳細については、発光素子の構成例1、または発光素子の構成例2の記載を参酌できる。
【0112】
EL層の間に設けられた中間層1104における電子とホールの挙動について説明する。陽極1101と陰極1102の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、中間層1104においてホールと電子が発生し、ホールは陰極1102側に設けられたEL層へ移動し、電子は陽極1101側に設けられたEL層へ移動する。陰極側に設けられたEL層に注入されたホールは、陰極側から注入された電子と再結合し、当該EL層に含まれる発光物質が発光する。また、陽極側に設けられたEL層に注入された電子は、陽極側から注入されたホールと再結合し、当該EL層に含まれる発光物質が発光する。よって、中間層1104において発生したホールと電子は、それぞれ異なるEL層において発光に至る。
【0113】
なお、EL層同士を接して設けることで、両者の間に中間層と同じ構成が形成される場合は、EL層同士を接して設けることができる。具体的には、EL層の一方の面に電荷発生領域が形成されていると、当該電荷発生領域は中間層の第1の電荷発生領域として機能するため、EL層同士を接して設けることができる。
【0114】
発光素子の構成例1乃至構成例3は、互いに組み合わせて用いることができる。例えば、発光素子の構成例3の陰極とEL層の間に中間層を設けることもできる。
【0115】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光モジュールを搭載した照明装置の一例について、図7を用いて説明する。
【0116】
本発明の一態様では、発光部が曲面を有する照明装置を実現することもできる。
【0117】
本発明の一態様は、自動車の照明にも適用することができ、例えば、ダッシュボードや、天井等に照明を容易に設置することもできる。
【0118】
図7(A)では、本発明の一態様を適用した、室内の天井に設ける照明装置901、壁面に設ける照明装置904及び卓上照明器具903を示す。本発明の一態様の発光モジュールは大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。
【0119】
図7(B)に別の照明装置の例を示す。図7(B)に示す卓上照明装置は、照明部9501、支柱9503、支持台9505等を含む。照明部9501は、本発明の一態様の発光モジュールを含む。このように、本発明の一態様では、曲面を有する照明装置を実現することができる。
【0120】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0121】
100 基板
101 電極
102 電極
103 発光性の有機化合物を含む層
104 隔壁
130 発光素子
140 正温度係数サーミスタ
141 下部電極
142 上部電極
143 PTC層
150 発光モジュール
151 端子
152 端子
158 シール材
159 封止材
200 基板
201 電極
202 電極
203 発光性の有機化合物を含む層
204 隔壁
230 発光素子
240 正温度係数サーミスタアレイ
240a 正温度係数サーミスタ
240b 正温度係数サーミスタ
240c 正温度係数サーミスタ
241a 下部電極
241b 下部電極
241c 下部電極
242a 上部電極
242b 上部電極
242c 上部電極
243a PTC層
243b PTC層
243c PTC層
247 平坦化膜
250 発光モジュール
250a 発光モジュール
250b 発光モジュール
250c 発光モジュール
250d 発光モジュール
251 端子
251a 端子
251b 端子
251c 端子
251d 端子
252 端子
252a 端子
252b 端子
252c 端子
252d 端子
258 シール材
259 封止材
350 発光パネル
400 基板
401 電極
402 電極
403 発光性の有機化合物を含む層
404 隔壁
430 発光素子マトリクス
440 正温度係数サーミスタ
441 下部電極
443 PTC層
450 発光モジュール
458 シール材
459 封止材
500 基板
501 電極
530 発光素子
540 正温度係数サーミスタ
541 下部電極
543 PTC層
550 発光モジュール
901 照明装置
903 卓上照明器具
904 照明装置
1101 陽極
1102 陰極
1103 EL層
1103a EL層
1103b EL層
1104 中間層
1104a 電子注入バッファー
1104b 電子リレー層
1104c 電荷発生領域
1113 ホール注入層
1114 ホール輸送層
1115 発光層
1116 電子輸送層
1117 電子注入層
9501 照明部
9503 支柱
9505 支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極の間に発光性の有機化合物を含む層を有する発光素子と、
前記発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタと、を有し、
前記発光素子は前記正温度係数サーミスタから電力が供給される発光モジュール。
【請求項2】
一対の電極の間に発光性の有機化合物を含む層を有する発光素子と、
前記発光素子と熱的に結合された正温度係数サーミスタと、を有し、
前記発光素子は前記正温度係数サーミスタから電力が供給され、
前記一対の電極の一方は前記発光性の有機化合物を含む層が発する光を透過し、
前記一対の電極の他方の側に、前記正温度係数サーミスタが前記発光素子と重ねて設けられる発光モジュール。
【請求項3】
前記発光素子と前記正温度係数サーミスタが導電材料を介して熱的に結合された請求項1または請求項2記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記正温度係数サーミスタに換えて、複数の正温度係数サーミスタが直列に接続された正温度係数サーミスタアレイを有する請求項1または請求項2記載の発光モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の発光モジュールを隣接して複数備える発光パネル。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の前記発光モジュールを用いた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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