説明

発光分析装置

【課題】 固体試料中に含まれる様々な種類の元素の濃度を容易に算出することができる発光分析装置を提供する。
【解決手段】 固体試料6の分析面6aと対向電極3との間で放電を行うことで発生した発光光が導入されることにより、発光光を、各元素に特有な波長を有する輝線スペクトルに分光する分光器4と、各輝線スペクトルの強度をそれぞれ検出する複数の受光素子5aを有する光検出器5とを備える発光分析装置1であって、アルゴリズムを記憶する記憶部22と、固体試料6の母材となる元素の種類と、測定対象とする元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲とが入力されることにより、アルゴリズムに基づいて、受光素子選択方法と放電発光条件と元素濃度算出条件とを決定し、決定した受光素子選択方法と放電発光条件と元素濃度算出条件とを用いて、測定対象とした種類の元素の濃度を算出する制御部21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパーク放電、アーク放電、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma=ICP)放電等の各種放電法やレーザ励起法等により、固体試料中に含まれる元素の濃度を算出する発光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼品種の多様化や高品質化や製鋼加工技術の発展に伴い、鉄鋼(固体試料)中に含まれる微量成分、特にマンガン、シリコン、硫黄、窒素、酸素、炭素等の元素の量を厳密にコントロールすることが要求されてきており、鉄鋼材や非鉄金属材等の生産工場等での製鋼・精練工程において、鉄鋼中に含まれる微量成分を定量することが重要になってきている。
このような製鋼・精練工程はオンライン操業であるため、定量結果が速やかに製鋼・精練工程にフィードバックされることが好ましい。
【0003】
そこで、近年、鉄鋼中に含まれる微量成分の定量を迅速に行うことができる発光分光分析方法が広く利用されるようになってきている。図4は、このような発光分光分析方法を用いる発光分析装置の一例を示す概略構成図である。
発光分析装置10は、開孔2aが形成されている発光スタンド2と、開孔2aと対向する位置に設置された対向電極3と、各元素に特有な波長を有する輝線スペクトルに分光する分光器4と、輝線スペクトルの強度を検出する受光素子15aを有する光検出器15と、発光分析装置10全体の制御を行うコンピュータ20とを備える(例えば、特許文献1参照)。
コンピュータ20においては、CPU(制御部)21やメモリ32を備え、さらにモニタ画面等を有する表示装置(表示せず)と、キーボードやマウス等を有する入力装置30とが連結されている。また、メモリ32には、複数種の標準試料を予め測定した標準試料情報が記憶されている。
【0004】
このような発光分析装置10を用いて、鉄鋼6中に含まれる測定対象とした種類の元素の濃度を算出するには、操作者は、まず、標準試料が発光スタンド2の開孔2aを塞ぐように、標準試料を当接する。次に、対向電極3に電圧を印加することにより、標準試料と対向電極3との間でアーク放電したりスパーク放電したりすることで発光させる。そして、発生した発光光を分光器4に導入することにより、分光器4で発光光を、各元素に特有な波長を有する輝線スペクトルに分光した後、光検出器15で輝線スペクトルの強度を検出する。これにより、操作者は、標準試料情報を用いて検量線を作成する。次に、採取した鉄鋼6を切断、研磨した後、鉄鋼6の分析面6aが発光スタンド2の開孔2aを塞ぐように、鉄鋼6を当接する。次に、対向電極3に電圧を印加することにより、鉄鋼6の分析面6aと対向電極3との間でアーク放電したりスパーク放電したりすることで発光させる。そして、発生した発光光を分光器4に導入することにより、分光器4で発光光を、各元素に特有な波長を有する輝線スペクトルに分光した後、光検出器15で輝線スペクトルの強度を検出している。これにより、輝線スペクトルの強度を示す測定データから鉄鋼6中に含まれる測定対象とする種類の元素の濃度を検量線を用いて算出している。
【0005】
ところで、発光分析装置10に設けられている光検出器15では、各元素に特有な波長を有する輝線スペクトルのうちから、測定対象とする種類の元素に対応する輝線スペクトルが照射される位置に、受光素子15aが予め配置されている。例えば、鉄鋼6中に含まれるマンガンの濃度と硫黄の濃度とを算出する場合には、マンガンに特有な波長を有する輝線スペクトルが照射される位置と、硫黄に特有な波長を有する輝線スペクトルが照射される位置とに、受光素子15aがそれぞれ配置されている。
【0006】
しかしながら、発光分析装置10を用いて、マンガンと硫黄とは異なる種類の元素であるシリコンの濃度を算出したいと思った場合には、シリコンに特有な波長を有する輝線スペクトルの強度を検出することができず、その結果、シリコンの濃度を算出することはできなかった。
そこで、様々な種類の元素の濃度を算出することができる発光分析装置11も開発されている。図5は、このような発光分析装置の一例を示す概略構成図である。なお、発光分析装置10と同様のものについては、同じ符号を付している。
発光分析装置11では、多数(例えば、7個)の受光素子5aを有する光検出器5を用いて、各輝線スペクトルの強度をそれぞれ検出している。また、メモリ33には、発光分析装置11において各受光素子5aが、どの元素に特有な波長を有する輝線スペクトルの強度を検出するかを識別する装置輝線スペクトル情報が記憶されている。これにより、各輝線スペクトルの強度を示す測定データから鉄鋼6中に含まれる様々な種類の元素の濃度を算出することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−069853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したような発光分析装置11では、様々な種類の元素の濃度を算出することができるようになるが、鉄鋼6の母材となる元素の種類と、測定対象となる元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲とに応じて、操作者が、装置輝線スペクトル情報を用いて複数の受光素子5aのうちから必要な受光素子5aを選択する受光素子選択方法や、対向電極3に電圧を印加するための放電発光条件や、測定データを取得するための測光条件や、測定データをデータ処理するためのデータ処理条件や、標準試料情報を用いて検量線を作成するための標準試料選択条件や、測定データを補正するための補正計算条件等を決定する必要があり、非常に手間がかかった。さらに、受光素子選択方法や放電発光条件や測光条件やデータ処理条件や標準試料選択条件や補正計算条件等を決定することは、発光分光分析方法の原理に関する知見を要求され、一般的な操作者が行うには困難であった。
そこで、本発明は、固体試料中に含まれる様々な種類の元素の濃度を容易に算出することができる発光分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の発光分析装置は、開孔が形成されている発光スタンドと、前記発光スタンドの内部で、前記開孔と対向する位置に設置された対向電極と、前記固体試料の分析面が発光スタンドの開孔を塞ぐように当接されて、前記固体試料の分析面と対向電極との間で放電を行うことで発生した発光光が導入されることにより、当該発光光を、各元素に特有な波長を有する輝線スペクトルに分光する分光器と、各輝線スペクトルの強度をそれぞれ検出する複数の受光素子を有する光検出器とを備え、前記対向電極に電圧を印加するとともに、前記受光素子で検出された輝線スペクトルの強度を示す測定データを取得することで、前記固体試料中に含まれる測定対象とした種類の元素の濃度を算出する発光分析装置であって、前記固体試料の母材となる元素の種類と、測定対象となる元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲とに基づいて、複数の受光素子のうちから受光素子を選択するための受光素子選択方法と、前記対向電極に電圧を印加するための放電発光条件と、測定データから元素の濃度を算出するための元素濃度算出条件とを決定するためのアルゴリズムを記憶する記憶部と、前記固体試料の母材となる元素の種類と、測定対象とする元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲とが入力されることにより、前記アルゴリズムに基づいて、受光素子選択方法と放電発光条件と元素濃度算出条件とを決定し、決定した受光素子選択方法と放電発光条件と元素濃度算出条件とを用いて、前記対向電極に電圧を印加するとともに、前記測定データを取得することで、測定対象とした種類の元素の濃度を算出する制御部とを備えるようにしている。
【0010】
本発明の発光分析装置によれば、記憶部は、固体試料の母材となる元素の種類と、測定対象となる元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲とに基づいて、受光素子選択方法と放電発光条件と元素濃度算出条件とを決定するためのアルゴリズムを記憶する。これにより、固体試料の母材となる元素の種類と、測定対象とする元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲とが入力されることにより、アルゴリズムに基づいて、受光素子選択方法と放電発光条件と元素濃度算出条件とを決定することができるようになっている。
【0011】
よって、操作者が本発明の発光分析装置を用いて、固体試料中に含まれる測定対象とする種類の元素の濃度を算出するには、まず、固体試料の母材となる元素の種類と、測定対象とする元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲とを入力する。このとき、操作者は、固体試料の母材となる元素の種類と、測定対象とする元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲とを入力するだけなので、発光分光分析方法の原理に関する知見を必要としない。
そして、操作者は、固体試料の分析面が発光スタンドの開孔を塞ぐように、固体試料を当接する。この後は、制御部が、自動的に測定対象とした種類の元素の濃度を算出することになる。
具体的には、制御部は、まず、決定した放電発光条件を用いて、対向電極に電圧を印加することにより、固体試料の分析面と対向電極との間でアーク放電したりスパーク放電したりすることで発光させる。そして、発生した発光光を分光器に導入することにより、分光器で発光光を、各元素に特有な波長を有する輝線スペクトルに分光した後、光検出器で各輝線スペクトルの強度をそれぞれ検出する。次に、制御部は、決定した受光素子選択方法を用いて、選択された受光素子で検出された測定データを取得する。最後に、制御部は、決定した元素濃度算出条件を用いて、固体試料中に含まれる測定対象とした種類の元素の濃度を算出する。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の発光分析装置によれば、操作者が、固体試料の母材となる元素の種類と、測定対象とする元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲とを入力するだけで、固体試料中に含まれる測定対象とした種類の元素の濃度を算出することができる。さらに、固体試料の母材となる元素の種類と、測定対象とする元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲とを入力するには、発光分光分析方法の原理に関する知見を要求されることもないので、一般的な操作者でも行うことができる。
【0013】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、上記の発明において、前記元素濃度算出条件は、測定データを取得するための測光条件、測定データをデータ処理するためのデータ処理条件、検量線を作成するための標準試料選択条件、及び、測定データを補正するための補正計算条件からなる群から選択される少なくとも1つの条件を含むようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る発光分析装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】発光分析装置のメモリに記憶されるアルゴリズムについて説明するための図である。
【図3】発光分析装置による元素濃度算出方法について説明するためのフローチャートである。
【図4】従来の発光分析装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】従来の発光分析装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0016】
図1は、実施形態に係る発光分析装置の一例を示す概略構成図である。また、図2は、発光分析装置のメモリ(記憶部)に記憶されるアルゴリズムについて説明するための図である。なお、発光分析装置11と同様のものについては、同じ符号を付している。
発光分析装置1は、発光スタンド2と、対向電極3と、分光器4と、光検出器5と、発光分析装置1全体の制御を行うコンピュータ20とを備える。
なお、固体試料6は、鉄鋼材の生産工場等での製鋼・精練工程において、オンライン操業で採取されるものである。
【0017】
発光スタンド2の上面には、円形状の開孔2aが形成されており、対向電極3は、発光スタンド2の内部で、開孔2aと対向する位置に設置されている。これにより、固体試料6や標準試料の分析面6aが、開孔2aを塞ぐように当接されて、対向電極3に電圧が印加されると、分析面6aと対向電極3との間でスパーク放電を行うことができるようになっている。
分光器4は、発光スタンド2の内部で、分析面6aと対向電極2aとの間でスパーク放電を行うことで発生した発光光が導入されるように配置されている。そして、分光器4は、発光光を、各元素に特有な波長を有する輝線スペクトルに分光する。
光検出器5は、各輝線スペクトルの強度をそれぞれ検出する複数(例えば、7個)の受光素子5aを有する。つまり、1個の受光素子5aは、対応付けられた元素に特有な波長を有する輝線スペクトルの強度を検出する。そして、複数の受光素子5aでそれぞれ検出された輝線スペクトルの強度は、コンピュータ20に出力されるようになっている。
【0018】
コンピュータ20においては、CPU(制御部)21やメモリ22を備え、さらにモニタ画面等を有する表示装置(表示せず)と、キーボードやマウス等を有する入力装置30とが連結されている。
メモリ22には、固体試料6の母材となる元素の種類(以下、「母材種類」ともいう)と、測定対象となる元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲(以下、「元素濃度」ともいう)と、固体試料6の母材の種類である合金種類とに基づいて、受光素子選択方法(以下、「輝線スペクトル情報」ともいう)と放電発光条件と測光条件とデータ処理条件と標準試料選択条件と補正計算条件とを決定するためのアルゴリズムが予め記憶されている。
【0019】
母材種類は、固体試料6の母材となる元素の種類であり、例えば、鉄や、銅や、アルミニウム等が挙げられる。メモリ22には、複数種の母材種類が母材情報とともに予め記憶されており、操作者によって入力装置30を用いて、複数種の母材種類から母材種類が選択されるようになっている。
元素濃度は、測定対象となる元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲であり、例えば、0.005重量%以上2重量%未満のマンガンや、2重量%以上20重量%未満のマンガンや、0.001重量%以上1重量%未満のシリコンや、1重量%以上6重量%未満のシリコン等が挙げられる。メモリ22には、複数種の元素濃度が元素濃度情報とともに予め記憶されており、操作者によって入力装置30を用いて、複数種の元素濃度から元素濃度が選択されるようになっている。
合金種類は、固体試料6の種類であり、例えば、SUS−304やダクタイル鋳鉄等が挙げられる。メモリ22には、複数種の合金種類が合金内に含まれる母材情報及び元素濃度情報とともに予め記憶されており、操作者によって入力装置30を用いて、複数種の合金種類から合金種類が選択されるようになっている。合金種類を選択することによって、入力によって母材種類と元素濃度とを指定することなく、自動的に母材種類と元素濃度とが選択されるようになっている。
【0020】
輝線スペクトル情報は、複数の受光素子5aのうちから必要な受光素子5aを選択するための情報である。メモリ22には、輝線スペクトル基準情報として、複数種の輝線スペクトル情報が予め記憶されており、選択された母材種類と元素濃度又は合金種類に基づいて、複数種の輝線スペクトル情報から使用輝線スペクトル情報が選択されるようになっている。
放電発光条件は、対向電極3に電圧を印加する方法を決定するための情報である。メモリ22には、放電発光条件基準情報として、複数種の放電発光条件が予め記憶されており、選択された母材情報と元素濃度情報又は合金情報と、使用輝線スペクトル情報とに基づいて、複数種の放電発光条件から使用放電発光条件が選択されるようになっている。これにより、例えば、放電波形や周波数(例えば、400Hz)等が決定される。
【0021】
測光条件とは、測定データを取得する方法を決定するための情報である。メモリ22には、測光条件基準情報として、複数種の測光条件が予め記憶されており、選択された母材情報と元素濃度情報又は合金情報と、使用輝線スペクトル情報とに基づいて、複数種の測光条件から使用測光条件が選択されるようになっている。
データ処理条件は、測定データをデータ処理する方法を決定するための情報である。メモリ22には、データ処理条件基準情報として、複数種のデータ処理条件が予め記憶されており、選択された母材情報と元素濃度情報又は合金情報と、使用輝線スペクトル情報とに基づいて、複数種のデータ処理条件から使用データ処理条件が選択されるようになっている。これにより、例えば、対向電極3に電圧を所定の周波数で複数回印加することで、輝線スペクトルの強度が複数得られるが、その複数の輝線スペクトルの強度における5%(下限)〜95%(上限)の範囲を用いること等が決定される。
【0022】
標準試料選択条件は、検量線を作成する方法を決定するための情報である。メモリ22には、標準試料選択条件基準情報として、複数種の標準試料選択条件が予め記憶されており、選択された母材情報と元素濃度情報又は合金情報と、使用輝線スペクトル情報とに基づいて、複数種の標準試料選択条件から使用標準試料選択条件が選択されるようになっている。
補正計算条件は、測定データを補正する方法を決定するための情報である。メモリ22には、補正計算条件基準情報として、複数種の補正計算条件が予め記憶されており、選択された母材情報と元素濃度情報又は合金情報と、使用輝線スペクトル情報とに基づいて、複数種の補正計算条件から使用補正計算条件が選択されるようになっている。これにより、例えば、輝線スペクトルの強度の測定における無駄なピークの影響を削除する方法等が決定される。
【0023】
制御部21は、操作者によって入力装置30を用いて母材種類と元素濃度又は合金種類が入力されることにより、アルゴリズムに基づいて、使用輝線スペクトル情報と使用放電発光条件と使用測光条件と使用データ処理条件と使用標準試料選択条件と使用補正計算条件とを決定する。操作者は、決定された使用輝線スペクトル情報と使用放電発光条件と使用測光条件と使用データ処理条件と使用標準試料選択条件と使用補正計算条件とを用いて、検量線の作成と試料の分析とを行う。
ここで、発光分析装置1により、固体試料6中に含まれる測定対象とした種類の元素の濃度を算出する元素濃度算出方法の一例について説明する。図3は、発光分析装置1による元素濃度算出方法について説明するためのフローチャートである。
【0024】
まず、ステップS101の処理において、操作者は、入力装置30を用いて母材種類と元素濃度又は合金種類を入力する。このとき、例えば、合金種類として「SUS−304」と入力する。
次に、ステップS102の処理において、制御部21は、アルゴリズムに基づいて、使用輝線スペクトル情報と使用放電発光条件と使用測光条件と使用データ処理条件と使用標準試料選択条件と使用補正計算条件とを決定する。
【0025】
次に、ステップS103の処理において、制御部21は、標準試料の個数パラメータn=0とする。
次に、ステップS104の処理において、操作者は、nの標準試料の分析面6aが開孔2aを塞ぐように、nの標準試料を当接する。
次に、ステップS105の処理において、制御部21は、使用放電発光条件を用いて、対向電極3に電圧を印加することにより、nの標準試料の分析面6aと対向電極3との間でスパーク放電することで発光させる。そして、発生した発光光を分光器4に導入することにより、分光器4で発光光を、各元素に特有な波長を有する輝線スペクトルに分光した後、光検出器5で各輝線スペクトルの強度をそれぞれ検出する。
【0026】
次に、ステップS106の処理において、制御部21は、使用輝線スペクトル情報と使用測光条件とを用いて、選択された受光素子5aで検出された測定データを取得する。
次に、ステップS107の処理において、操作者は、n=n+1の標準試料を測定するか否かを判断する。n=n+1の標準試料を配置すると判断したときには、ステップS108の処理で、n=n+1とした後、ステップS104の処理に戻る。
【0027】
一方、n=n+1の標準試料を測定しないと判断したときには、ステップS109の処理において、操作者は、使用標準試料選択条件を用いて、検量線を作成する。
次に、ステップS110の処理において、操作者は、固体試料6の分析面6aが開孔2aを塞ぐように、固体試料6を当接する。
次に、ステップS111の処理において、制御部21は、使用放電発光条件を用いて、対向電極3に電圧を印加することにより、固体試料6の分析面6aと対向電極3との間でスパーク放電することで発光させる。そして、発生した発光光を分光器4に導入することにより、分光器4で発光光を、各元素に特有な波長を有する輝線スペクトルに分光した後、光検出器5で各輝線スペクトルの強度をそれぞれ検出する。
【0028】
次に、ステップS112の処理において、制御部21は、使用輝線スペクトル情報と使用測光条件とを用いて、選択された受光素子5aで検出された測定データを取得する。
次に、ステップS113の処理において、制御部21は、検量線と使用データ処理条件と使用補正計算条件とを用いて、固体試料6中に含まれる測定対象とした種類の元素の濃度を算出する。そして、例えば、「0.02重量%のマンガンと、0.05重量%のシリコン」と出力する。
そして、ステップS113の処理を終了したときには、本フローチャートを終了させる。
なお、1個の固体試料6を分析した後、新たな固体試料6を分析するときには、ステップS101の処理からステップS109の処理までの処理や、ステップS103の処理からステップS109の処理までの処理を省略してもよい。
【0029】
以上のように、本発明の発光分析装置1によれば、操作者が、母材種類と元素濃度又は合金種類を入力するだけで、固体試料6中に含まれる測定対象とした元素の濃度を算出することができる。さらに、母材種類と元素濃度又は合金種類を入力するには、発光分光分析方法の原理に関する知見を要求されることもないので、一般的な操作者でも行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、スパーク放電、アーク放電、誘導結合プラズマ放電等の各種放電法やレーザ励起法等により、固体試料中の成分を定量する発光分析装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1、10、11 発光分析装置
2 発光スタンド
2a 開孔
3 対向電極
4 分光器
5、15 光検出器
5a、15a 受光素子
6 固体試料
6a 分析面
21 制御部
22、32、33 メモリ(記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開孔が形成されている発光スタンドと、
前記発光スタンドの内部で、前記開孔と対向する位置に設置された対向電極と、
前記固体試料の分析面が発光スタンドの開孔を塞ぐように当接されて、前記固体試料の分析面と対向電極との間で放電を行うことで発生した発光光が導入されることにより、当該発光光を、各元素に特有な波長を有する輝線スペクトルに分光する分光器と、
各輝線スペクトルの強度をそれぞれ検出する複数の受光素子を有する光検出器とを備え、
前記対向電極に電圧を印加するとともに、前記受光素子で検出された輝線スペクトルの強度を示す測定データを取得することで、前記固体試料中に含まれる測定対象とした種類の元素の濃度を算出する発光分析装置であって、
前記固体試料の母材となる元素の種類と、測定対象となる元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲とに基づいて、複数の受光素子のうちから受光素子を選択するための受光素子選択方法と、前記対向電極に電圧を印加するための放電発光条件と、測定データから元素の濃度を算出するための元素濃度算出条件とを決定するためのアルゴリズムを記憶する記憶部と、
前記固体試料の母材となる元素の種類と、測定対象とする元素の種類及びその種類の元素の予想濃度範囲とが入力されることにより、前記アルゴリズムに基づいて、受光素子選択方法と放電発光条件と元素濃度算出条件とを決定し、
決定した受光素子選択方法と放電発光条件と元素濃度算出条件とを用いて、前記対向電極に電圧を印加するとともに、前記測定データを取得することで、測定対象とした種類の元素の濃度を算出する制御部とを備えることを特徴とする発光分析装置。
【請求項2】
前記元素濃度算出条件は、測定データを取得するための測光条件、測定データをデータ処理するためのデータ処理条件、検量線を作成するための標準試料選択条件、及び、測定データを補正するための補正計算条件からなる群から選択される少なくとも1つの条件を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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