説明

発光型の透明導電層及びこれを備えた電子放出素子

【課題】発光型の透明導電層、及びこれを備えた電子放出素子を提供する。
【解決手段】透明導電性酸化物及びドーパントを含む発光型の透明導電層及び前面基板と、前記前面基板の一面に備わる第1電極と、前記第1電極の一面に備わる蛍光層と、前記前面基板と所定の間隔をおいて対向配置される背面基板と、前記背面基板上に形成された電子放出を制御するための第2電極と、前記第2電極と電気的に連結された電子放出部を含み、第1電極は、発光型の透明導電層の電子放出素子であり、該電子放出素子は、電子放出表示装置またはバックライトユニットなどに利用可能である。これにより、蛍光層を発光させられない剰余電子も発光に寄与できるようになり、色純度、色再現範囲、輝度及び演色性まで改善された素子を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光型の透明導電層及びこれを備えた電子放出素子に関するものであり、より詳細には蛍光層の発光に寄与できない剰余電子を発光させることができる発光型の透明導電層、及びこれを備えた電子放出素子に関する。前記電子放出素子は、電子放出表示装置、バックライトユニット、該バックライトユニットを備えた平板表示装置に多様に利用可能である。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子放出素子は、電子放出源として熱陰極を利用する方式と、冷陰極を利用する方式とがある。
【0003】
前記で、冷陰極を利用する方式の電子放出素子としては、FEA(Field Emitter Array)型、SCE(Surface Conduction Emitter)型、MIM(Metal−Insulator−Metal)型、及びMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)型、BSE(Ballistic Electron Surface Emitting)型などが知られている。
【0004】
前記FEA型は、仕事関数が小さいか、またはβ関数(電子挙動の微分方程式を解く際に得られるパラメーター)の高い物質を電子放出源として使用する場合、真空中で電界差により容易に電子が放出される原理を利用したものであり、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)などを主材質とする先端が尖っているチップ構造物やグラファイト、DLC(Diamond Like Carbon)のようなカーボン系物質、そして最近ナノチューブ(Nano Tube)やナノワイヤー(Nano Wire)のようなナノ物質を電子放出源に適用した素子が開発されている。
【0005】
前記SCE型は、第1基板上に互いに対向して配置された第1電極と第2電極との間に配置された導電性薄膜に微細亀裂を提供することによって電子放出部を形成した素子である。前記素子は、前記電極に電圧を印加し、前記導電性薄膜の表面に電流を流し、前記微細亀裂の電子放出部から電子が放出される原理を利用する。
【0006】
前記MIM型とMIS型電子放出素子は、それぞれ金属−誘電層−金属(MIM)と金属−誘電層−半導体(MIS)構造からなる電子放出部を形成し、誘電層を挟んで位置する2つの金属、または金属と半導体との間に電圧を印加するとき、高い電子電位を有する金属または半導体から低い電子電位を有する金属側に電子が移動及び加速されることにより放出される原理を利用した素子である。
【0007】
前記BSE型は、半導体のサイズを半導体中の電子の平均自由行程より小さな寸法領域まで縮少すれば、電子が散乱せずに走行する原理を利用し、オーミック電極上に金属または半導体を含む電子供給層を形成し、電子供給層上に絶縁層と金属薄膜を形成し、オーミック電極と金属薄膜とに電源を印加することによって電子を放出させる素子である。
【0008】
前述のような多様な電子放出部から放出された電子は、電子放出部に配向するよう配置された蛍光層に、照射されて発光に寄与する。特許文献1には、カソード、カーボンナノチューブ(CNT)フィルム、誘電層、ゲート電極、アノード及び蛍光層を備えた電界放出表示素子であって、前記アノード層が透明導電性層からなる電界放出表示素子が開示されている。
【0009】
しかし、従来技術によれば、電子放出部から照射された電子のうち、蛍光層の発光に寄与できずに損失される剰余電子は、蛍光層から熱として損失されたり、またはアノード電極の導電層を介して流れ出てしまい、実際の発光効率は満足できるほどではない。その上、前記剰余電子が熱の形で損失される現象は、蛍光層劣化の一原因になりもする。従って、電子放出素子の発光効率を改善する必要性は相変らず要求される。
【特許文献1】大韓民国特許公開第2001−0036947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述のような問題点を解決するために導出されたものであり、発光型の透明導電層及びそれを備えた電子放出素子を提供することを目的とする。前記電子放出素子は、電子放出表示装置またはバックライトユニットなどに利用可能である。従って、本発明は、また前記発光型の透明導電層を備えた電子放出表示装置、バックライトユニット及び前記バックライトユニットを備えた平板表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記本発明の課題を解決するために、本発明は、透明導電性酸化物及びドーパントを含む発光型の透明導電層を提供する。
前記本発明の他の課題を解決するために、本発明は、前面基板と、
前記前面基板の一面に備わる第1電極と、前記第1電極の一面に備わる蛍光層と、前記前面基板と所定の間隔をおいて対向配置される背面基板と、前記背面基板上に形成された電子放出を制御するための第2電極と、前記第2電極と電気的に連結された電子放出部と、を含み、前記第1電極は、発光型の透明導電層であり、前記発光型の透明導電層は、透明導電性酸化物及びドーパントを含む電子放出素子を提供する。
【0012】
前記本発明の課題を解決するために、本発明は、前述のような本発明の発光型の透明導電層を備えた電子放出表示装置を提供する。
【0013】
前記本発明の課題を解決するために、本発明は、発光型の透明導電層を備えたバックライトユニットを提供する。
【0014】
前記本発明の課題を解決するために、本発明は、前述のような本発明の発光型の透明導電層を適用したバックライトユニット、及び前記バックライトユニットの前方に配置され、前記バックライトユニットから供給される光を制御して画像を具現する受光素子を利用したディスプレイパネルを含む平板表示装置を提供する。
【0015】
前述のように、発光型の透明導電層を備えた本発明の電子放出素子によれば、蛍光層の発光に寄与できない剰余電子も、本発明の発光型の透明導電層によって発光に寄与できるようになり、色純度、色再現範囲、輝度及び演色性などが改善されうる。かかる発光型の透明導電層を利用すれば、発光効率の向上した電子放出素子、電子放出表示装置、バックライトユニット及び前記バックライトユニットを採用した平板表示装置を得ることができる。またそれだけではなく、特に表示装置に適用される場合には、発光型の透明導電層の発光特性をドーパントを利用して制御することにより、蛍光層だけでは不足していた色純度、色再現範囲、輝度及び演色といった特性を改善できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子放出素子は、電子放出部から放出されたが蛍光層での発光に寄与できない剰余電子を利用した追加発光の可能な発光型の透明導電層を備えることにより、優秀な色度、色再現範囲、輝度及び演色性を具現できる。かかる本発明の透明導電発光層を利用すれば、信頼性の向上した電子放出表示装置、バックライトユニット及び前記バックライトユニットを備えた平板表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
本発明の発光型の透明導電層は、透明導電性酸化物及びドーパントを含む。まず、前記透明導電性酸化物(Transparent Conductive Oxide:以下、“TCO”ともいう)は、前記発光型の透明導電層と接した蛍光層から発光された光が効果的に透過できるように、可視光線領域での透過率が80%以上である物質であることが望ましく、エネルギーバンドギャップは、3eV以上の物質でありうる。かかる透明導電性酸化物の具体的な例には、ZnO、SnO、In、ZnGa、CdSnOまたはSrTiOなどがあるが、これらに限定されるものではない。これらの透明導電性酸化物は、1種単独で用いられてもよく、2種以上が混合されてもよい。このうち、ZnOまたはSnOが望ましい。前記透明導電性酸化物により、本発明の発光型の透明導電層の導電性もまた改善可能である。
【0019】
一方、発光型の透明導電層のうちドーパントは、本発明の発光型の透明導電層と接している蛍光層での発光に寄与できない剰余電子を利用し、追加発光させる活性化イオンの役割を果たす。前記ドーパントは、具現しようという色再現範囲により、Eu、Tb、Mn、Gd、Sm、Ho、Tm、Dy、Pr、Ce、Nd、Cu、Ag及びMgのうちから選択可能であるが、これに限定されるものではない。必要により、前記物質のうち二つ以上を組み合わせて使用することが可能であることは、言うまでもない。このうち、EuまたはMnが望ましい。
【0020】
かような透明導電性酸化物とドーパントとを含む発光型の透明導電層により、前記導電層と接した蛍光層に達した電子のうち、発光に寄与できずに蛍光層と前記導電層との間に伝達された剰余電子も、熱などの形で損失されずに発光に寄与できるようになる。特に、表示装置に適用される場合には、前記発光型の透明導電層により、蛍光層の発光特性が改善されうるので、色純度、色再現範囲、輝度及び演色性が大きく向上されうる。
【0021】
前記ドーパントの含有量は、前記透明導電性酸化物の含有量を基準に0.005モル%ないし15モル%、望ましくは0.005モル%ないし10モル%でありうる。前記ドーパントの含有量が透明導電性酸化物の含有量を基準に0.005モル%未満である場合には、所望レベルの追加発光効果を得られないという問題点があり、前記ドーパントの含有量が透明導電性酸化物の含有量を基準に15モル%を超える場合には、発光型の透明導電層の透光率が過度に低くなり、平板表示装置またはバックライトユニットに不適切となりうるという問題点がある。さらに具体的に、ドーパントとしてEuを使用する場合、Euの含有量は、透明導電性酸化物の含有量を基準に0.005モル%ないし15モル%、望ましくは0.05モル%ないし10モル%である。また、ドーパントとしてMnまたはTbを使用する場合、前記ドーパントの含有量は、透明導電性酸化物の含有量を基準に0.005モル%ないし2モル%が望ましい。
【0022】
前記発光型の透明導電層は、ガラス材などを含む基板の一面に蒸着工程及び熱処理工程により形成可能である。
【0023】
まず、前述のような透明導電性酸化物の粉末とドーパント含有物質とを混合し、発光型の透明導電層形成用のドーパントがドーピングされた透明導電性酸化物からなる前処理混合物を形成する。この後、前記前処理混合物を前熱処理してもよい。前記前熱処理は、例えば1,000℃ないし1,600℃の温度で、2ないし4時間行えるが、前熱処理工程の条件は、使用される透明導電性酸化物およびドーパント含有物質の特性に応じて種々変更できることは言うまでもない。前記ドーパント含有物質は、本発明で使用されるドーパントの酸化物でありうる。
【0024】
前記前処理混合物を基板の一面に蒸着させる。このとき、蒸着工程は、例えばスパッタリング法または電子ビーム蒸着法などが利用可能であるが、これらに限定されるものではない。さらに詳細に、スパッタリング法のうちでは、アルゴンプラズマを利用するRFスパッタリング法の利用が可能である。
【0025】
この後、前記蒸着工程で形成された薄膜を熱処理する。このとき、熱処理工程は、例えばファーネス法または急速加熱法などが利用可能であるが、これらに限定されるものではない。さらに詳細に、急速加熱法のうちでは、RTA(Rapid Temperature Annealing)法の利用が可能である。
【0026】
前記蒸着後の熱処理工程は、500℃ないし1,200℃、望ましくは500℃ないし1,100℃の温度範囲で行われる。熱処理工程の温度は、透明導電性酸化物により異なるが、例えば透明導電性酸化物としてSnOを使用する場合には、600℃で使用でき、透明導電性酸化物としてZnOを使用する場合には、1,000℃ないし1100℃で使用できる。熱処理工程温度が500℃未満である場合には、蒸着された発光型の透明導電層であるアノード電極が十分な強度を有することができないという問題点が生じ、熱処理工程温度が1,200℃を超える場合には、発光型の透明導電層をなす物質が酸化され、導電性が低下することがあるという問題点が発生しうるためである。発光型の透明導電層が形成される基板として、コーニングガラス(Corning glass,Dow Corning社製)または石英を使用するためには、前記蒸着後の熱処理温度が低いことが望ましい。
【0027】
前記蒸着後の熱処理工程は、空気雰囲気または水素雰囲気で行われる。水素雰囲気で行われることがさらに望ましい。それは、水素雰囲気下で熱処理する場合、還元雰囲気が形成され、発光型の透明導電層の透過率を向上させることができるためである。
【0028】
かような本発明の発光型の透明導電層は、電子放出素子に備わりうる。
前記電子放出素子としては、前面基板と、前記前面基板の一面に備わる第1電極と、前記第1電極の一面に備わる蛍光層と、前記前面基板と所定の間隔をおいて対向配置される背面基板と、前記背面基板上に形成された電子放出を制御するための第2電極と、前記第2電極と電気的に連結された電子放出部と、を含む電子放出素子であって、前記第1電極は、発光型の透明導電層であり、前記発光型の透明導電層は、透明導電性酸化物及びドーパントを含む電子放出素子が挙げられる。
【0029】
尚、第1電極は、アノード電極またはカソード電極であってもよく、好ましくはアノード電極であり、第2電極は、アノード電極またはカソード電極であってもよく、好ましくはカソード電極である。
【0030】
本発明の電子放出素子の一実施形態を、図1を参照して説明する。図1において、背面基板10の上面には、電子放出部18の電子放出を制御するカソード電極16が備わっている。前記背面基板10は、例えばガラス材などで形成可能である。前記カソード電極16は、ITO(イリジウムスズ酸化物、以下ITOと称する)、IZO(イリジウム亜鉛酸化物、以下IZOと称する)、Inなどの透明伝導性物質、またはMo、Ni、Ti、Cr、WまたはAgのような金属からなりうるが、それらに限定されるものではないことは、言うまでもない。前記カソード電極16は、ストライプ型、全面一体型のような多様な形で備わりうる。
【0031】
尚、電子放出部と第2電極との間に抵抗層などのような追加層が介在されてもよく、放出部は必ず第2電極の上部だけに形成されることはない。
【0032】
前記カソード電極16と電気的に連結された電子放出部18は、例えばモリブデン、シリコンなどを主材料とする先端の尖っているチップ構造物を含む電子放出源、カーボン系物質を含む電子放出源、微細亀裂が形成された導電性薄膜を利用した電子放出源、MIM構造またはMIS構造を利用した電子放出源のような多様な形態が可能である。このうち、電子放出部は電子放出源としてカーボン系物質を用いているのが好ましい。カーボン系物質としては、例えばカーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、ダイアモンド状カーボンなどの利用が可能であり、なかでもCNTが好ましく用いられる。
【0033】
一方、前記背面基板10と一定間隔をおいて前面基板20が互いに対向するように配置されている。前記前面基板20は、例えばガラス材などからなりうるが、これに限定されるものではない。以下で説明されるように、本発明の前面基板20の下面に備わるアノード電極22は、蒸着により形成可能であるが、前記前面基板20は、蒸着温度を考慮して選択可能である。前記前面基板20の下面には、発光型の透明導電層としてアノード電極22が備わっており、アノード電極22の下面には、蛍光層24が順に備わっている。前記アノード電極22と前記カソード電極16との間に、所定の電圧を印加すれば、電子放出部18から電子が放出され、前記放出された電子が蛍光層24に衝突することによって蛍光層24の蛍光物質が励起されて可視光を発散する。
【0034】
本発明によれば、前記アノード電極22は、発光型の透明導電層であり、前記発光型の透明導電層は、前述のような透明導電性酸化物及びドーパントを含む。前記発光型の透明導電層に関する詳細な説明は、前述した通りで省略する。前記発光型の透明導電層であるアノード電極22により、電子放出部18から放出されて蛍光層24に達した電子のうち、発光に寄与できずに蛍光層24の後膜に伝えられた剰余電子も発光に寄与できる。
【0035】
本発明は、前述のような発光型の透明導電層を備えた電子放出表示装置を提供する。
前記で電子放出表示装置としては、前面基板と、前記前面基板の一面に備わる第1電極と、前記第1電極の一面に備わる蛍光層と、前記前面基板と所定の間隔をおいて対向配置される背面基板と、前記背面基板上に形成された電子放出を制御するための第2電極と、前記第2電極と電気的に連結された電子放出部と、を含む電子放出装置であって、前記第1電極は、発光型の透明導電層であり、前記発光型の透明導電層は、透明導電性酸化物とドーパントを含む電子放出表示装置が挙げられる。
【0036】
図2は、前述のような本発明による電子放出表示装置の一実施形態である。図2で、背面基板30の上部には、ゲート電極32が形成されており、ゲート電極32の上部には、絶縁層34が形成されている。絶縁層34には、複数個のビアホール34aが形成されており、前記絶縁層34上には、前記ビアホール34aに充填されるようにゲートアイルランド39が形成されている。前記ゲートアイルランド39は、前記ゲート電極32により電子放出部38aに印加される電界の影響を大きくし、電子放出部38aからの電子の放出を容易にするために形成され、導電性物質からなり、製造工程において、カソード電極36と前記ゲートアイルランド39の形成は、同時になされることも可能である。一方、前面基板40の下面には、アノード電極42が形成されている。前記アノード電極42は、前述のような発光型の透明導電層である。前記発光型の透明導電層に関する詳細な説明は、前述のようなので省略する。アノード電極42の下面には、蛍光層44が備わっており、前面基板40及び背面基板30間には、密封部材48が備わっている。
【0037】
前述のように、発光型の透明導電層が表示装置に適用される場合には、発光型の透明導電層のドーパントによって蛍光層の発光特性が改善されうるので、色純度、色再現の範囲及び演色性が大きく向上されうる。
【0038】
図3は、前述のような本発明の発光型の透明導電層を備えた電子放出表示装置の他の一実施形態である。図3で、背面基板50の上部には、カソード電極56が形成されており、カソード電極56の上部には、絶縁層54が形成されている。絶縁層54には、ゲートホール52aが形成されており、前記ゲートホール52aの内部に電子放出部58が形成される。図3には、円錘形の電子放出部58が図示されているが、電子放出部の形態は、これに限定されるものではないことは、言うまでもない。ゲート電極52は、絶縁層54上に形成される。一方、前面基板60の下面には、アノード電極62が形成されている。前記アノード電極62は、前述のような発光型の透明導電層である。前記発光型の透明導電層に関する詳細な説明は、前述のようなので省略する。アノード電極62の下面には、蛍光層64が備わっており、前面基板60及び背面基板50間には、密封部材68が備わっている。
【0039】
本発明の電子放出表示装置として、図2及び図3に図示された電子放出表示装置を例として説明したが、それらは、本発明による電子放出表示装置の例示に過ぎず、それ以外にも多様な構造の電子放出表示装置が本発明の電子放出表示装置に含まれうることは、言うまでもない。
【0040】
本発明は、前述のような発光型の透明導電層を備えたバックライトユニット、及びそれを備えた平板表示装置を提供する。
【0041】
前記バックライトユニットとしては、前面基板と、前記前面基板の一面に備わる第1電極と、前記第1電極の一面に備わる蛍光層と、前記前面基板と所定の間隔をおいて対向配置される背面基板と、前記背面基板上に形成された電子放出を制御するための第2電極と、前記第2電極と電気的に連結された電子放出部と、を含むバックライトユニットであり、前記第1電極は、発光型の透明導電層であり、前記発光型の透明導電層は、透明導電性酸化物及びドーパントを含むバックライトユニットが挙げられる。
【0042】
また平板表示装置としては前記バックライトユニットと、前記バックライトユニットの前方に配置され、前記バックライトユニットから供給され光を制御して画像を具現する受光素子を利用したディスプレイパネルと、を有することを特徴とする平板表示装置が挙げられる。
【0043】
本発明のバックライトユニットとして、特に平面発光構造を有した電子放出型バックライトユニットが望ましい。電子放出型バックライトユニットは、既存の冷陰極蛍光ランプなどを利用したバックライトユニットに比べ、電力消耗が少なく、広範囲の発光領域や比較的均一な輝度を示すことができるだけではなく、前述のような発光型の透明導電層を備えることにより、従来のバックライトユニットより高い輝度を表すことができる。
【0044】
一方、本発明のバックライトユニットは、自発的に発光して画像を形成することができなく、外部から入射される光を用いて画像を形成する受光型平板表示装置に備わりうる。例えば、本発明のバックライトユニットは、バックライトユニットから供給される光を制御して画像を具現する受光素子を利用したディスプレイパネルの前面に備わって使われうる。かかる平板表示装置の具体的な例として、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)がある。
【0045】
以下、本発明の実施例及び比較例を記載する。下記実施例は、本発明を一層明確に表現するための目的で記載されるだけであり、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
実施例1
1モル%のEuがドーピングされたSnOを150wattで30分間Arプラズマを利用するRFスパッタリングを利用し、ガラス材基板に蒸着させた。これより形成された薄膜を、RTA法を利用し、700℃で1時間空気雰囲気において熱処理した。これより得た試片をサンプル1とする。
【0047】
実施例2
熱処理温度を900℃としたという点を除いては、前記実施例1に記載された方法と同じ方法で試片を形成した。これより得た試験片をサンプル2とする。
【0048】
実施例3
1モル%のMnがドーピングされたZnOを150wattで30分間Arプラズマを利用するRFスパッタリングを利用し、ガラス材基板に蒸着させた。これより形成された薄膜を、急速昇温法を利用し、1,000ないし1,100℃の温度範囲で1時間水素雰囲気において熱処理した。これより得た試験片をサンプル3とする。
【0049】
実施例4
空気雰囲気で熱処理したという点を除いては、前記実施例3に記載された方法と同じ方法で試験片を形成した。これより得た試験片をサンプル4とする。
【0050】
実施例5
ドーパントとしてMnの代わりにTbを使用したという点を除いては、前記実施例3に記載された方法と同じ方法で試験片を形成した。これより得た試験片をサンプル5とする。
【0051】
実施例6
透明導電性物質としてZnOの代わりにInを使用したという点を除いては、前記実施例3に記載された方法と同じ方法で試験片を形成した。これより得た試験片をサンプル6とする。
【0052】
実施例7
透明導電性物質としてZnOの代わりにInを使用し、ドーパントとしてMnの代わりにTbを使用したという点を除いては、前記実施例3に記載された方法と同じ方法で試験片を形成した。これより得た試験片をサンプル7とする。
【0053】
比較例
SnO及びEuの代わりにITOを使用したという点を除いては、前記実施例2に記載された方法と同じ方法で試験片を形成した。これより得た試験片をサンプルAとする。
【0054】
評価例1:透過率の評価
前記サンプル1、3、4及びAについて透過率を評価した。透過率評価は、UV−visible スペクトロメータ装置を380nmないし780nmの可視光線領域で作動させて行った。
【0055】
サンプル1及びAの透過率を図4に表した。図4から、本発明によるサンプル1の透過率がサンプルAの透過率より高いだけではなく、波長別でも一定であることを確認することができる。
【0056】
一方、サンプル3及び4の透過率を図5に表した。図5から、水素雰囲気下で熱処理されたサンプル3の透過率が、空気雰囲気下で熱処理されたサンプル4の透過率より高く、波長別でも一定であることを確認することができる。
【0057】
評価例2−発光特性の評価
前記サンプル1の間接的な発光特性評価のために、1モル%のEuがドーピングされたSnO粉末のフォトルミネッセンス(photoluminescence)を測定した。前記粉末は、SnO粉末に1モル%のEu粉末をドーピングした後、1,600℃で2時間熱処理して得たものである。前記粉末を、以下で粉末1とする。フォトルミネッセンスは、500Wで作動する量子係数スペクトロメータ(ISSPCI)を使用して測定した。粉末1の発光特性を図6に表した。図6は、365nmの紫外線励起条件下で、フォトルミネッセンスを測定したものであり、592nmで高いピークを示しているが、それにより赤色で発光することが確認可能である。
【0058】
前記サンプル1及び2の実質的な発光特性の評価のために、サンプル1及び2のフォトルミネッセンスを測定して図7に表した。図7は、330nmの紫外線励起条件下でサンプル1及び2の発光特性を測定したものであり、592nmで高いピークを示しており、それから赤色で発光することを確認することができる。
【0059】
サンプル1のさらに他の発光特性評価のために、サンプル1のカソードルミネッセンスを測定して図8に表した。カソードルミネッセンスは、Kimball Physics FRA−2X1−2/EGPS−2X1電子ガンシステム(electrongun(E−gun)system)を利用して測定した。前記電子ガンシステムを70μA/cmのビーム電流密度及び500eVないし1,000eVの励起エネルギー条件下で作動させた。図8によれば、バックグラウンドが示されはするが592nm領域でピークを表し、それからサンプル1は、赤色で発光することを確認できる。
【0060】
一方、サンプル3の発光特性評価のために、サンプル3のカソードルミネッセンスを測定した。カソードルミネッセンス測定に使われた装置は、前述したところと同一であった。測定結果を図9に表した。図9によれば、520nmで高いピークを示し、これによりサンプル3は緑色で発光することを確認できる。
【0061】
本発明は、図面及び実施例を参考に説明されたが、それは例示的なものに過ぎず、当技術分野で当業者ならば、それから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点が理解できるであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求範囲の技術的思想によって決まるものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の発光型の透明導電層及びこれを備えた電子放出素子は、例えば電子放出表示装置、バックライトユニット及び該バックライトユニットを備えた平板表示装置に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による電子放出素子の一実施形態を概略的に図示した断面図である。
【図2】本発明による電子放出表示装置の一実施形態を概略的に図示した断面図である。
【図3】本発明による電子放出表示装置の他の一実施形態を概略的に図示した断面図である。
【図4】本発明による発光型の透明導電層の一実施形態とITO層の透過率を表したグラフである。
【図5】異なる熱処理条件下で形成された本発明による発光型の透明導電層の他の一実施形態とITO層の透光率を表したグラフである。
【図6】本発明による発光型の透明導電層の一実施形態をなす物質のフォトルミネッセンスを表したグラフである。
【図7】本発明による発光型の透明導電層の一実施例のフォトルミネッセンスを表したグラフである。
【図8】本発明による発光型の透明導電層の一実施例のカソードルミネッセンスを表したグラフである。
【図9】本発明をなす発光型の透明導電層の他の実施例のカソードルミネッセンスを表したグラフである。
【符号の説明】
【0064】
10,30,50 背面基板
32,52 ゲート電極
52a ゲートホール
34,54 絶縁層
34a ビアホール
16,36,56 カソード電極
18,38a,58 電子放出部
39 ゲートアイルランド
20,40,60 前面基板
22,42,62 アノード電極
24,44,64 蛍光層
48,68 密封部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電性酸化物及びドーパントを含む発光型の透明導電層。
【請求項2】
前記透明導電性酸化物は、ZnO、SnO、In、ZnGa、CdSnO及びSrTiOからなる群から選択された少なくとも1つの物質であることを特徴とする請求項1に記載の発光型の透明導電層。
【請求項3】
前記ドーパントは、活性化イオンの役割を果たし、かつEu、Tb、Mn、Gd、Sm、Ho、Tm、Dy、Pr、Ce、Nd、Cu、Ag及びMgからなる群から選択された一つ以上の物質であることを特徴とする請求項1または2に記載の発光型の透明導電層。
【請求項4】
前記ドーパントの含有量は、前記透明導電性酸化物の含有量を基準に0.005モル%ないし15モル%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の発光型の透明導電層。
【請求項5】
前記ドーパントがドーピングされた透明導電性酸化物を基板上に蒸着させるステップ、及び
前記ステップから形成された薄膜を熱処理するステップ、
から形成されたことを特徴とする請求項1〜4に記載の発光型の透明導電層。
【請求項6】
前記熱処理ステップをファーネス法または急速加熱方法により行うことを特徴とする請求項5に記載の発光型の透明導電層。
【請求項7】
前記熱処理ステップを500℃ないし1,200℃の温度で行うことを特徴とする請求項5〜6に記載の発光型の透明導電層。
【請求項8】
前記熱処理ステップを水素雰囲気下で行うことを特徴とする請求項5〜7に記載の発光型の透明導電層。
【請求項9】
前面基板と、
前記前面基板の一面に備わる第1電極と、
前記第1電極の一面に備わる蛍光層と、
前記前面基板と所定の間隔をおいて対向配置される背面基板と、
前記背面基板上に形成された電子放出を制御するための第2電極と、
前記第2電極と電気的に連結された電子放出部と、
を含む電子放出素子であって、
前記第1電極は、発光型の透明導電層であり、
前記発光型の透明導電層は、透明導電性酸化物及びドーパントを含む電子放出素子。
【請求項10】
前記透明導電性酸化物は、ZnO、SnO、In、ZnGa、CdSnO及びSrTiOからなる群から選択された少なくとも1つの物質であることを特徴とする請求項9に記載の電子放出素子。
【請求項11】
前記ドーパントは、活性化イオンの役割を果たし、Eu、Tb、Mn、Gd、Sm、Ho、Tm、Dy、Pr、Ce、Nd、Cu、Ag及びMgからなる群から選択された一つ以上の物質であることを特徴とする請求項9または10に記載の電子放出素子。
【請求項12】
前記ドーパントの含有量は、前記透明導電性酸化物の含有量を基準に0.005モル%ないし15モル%であることを特徴とする請求項9〜11に記載の電子放出素子。
【請求項13】
前記電子放出部がカーボンナノチューブを含むことを特徴とする請求項9に記載の電子放出素子。
【請求項14】
前面基板と、
前記前面基板の一面に備わる第1電極と、
前記第1電極の一面に備わる蛍光層と、
前記前面基板と所定の間隔をおいて対向配置される背面基板と、
前記背面基板上に形成された電子放出を制御するための第2電極と、
前記第2電極と電気的に連結された電子放出部と、
を含む電子放出装置であって、
前記第1電極は、発光型の透明導電層であり、前記発光型の透明導電層は、透明導電性酸化物とドーパントを含む電子放出表示装置。
【請求項15】
前記透明導電性酸化物は、ZnO、SnO、In、ZnGa、CdSnO及びSrTiOのうちから選択された少なくとも1つの物質であり、前記ドーパントは、活性化イオンの役割を果たし、Eu、Tb、Mn、Gd、Sm、Ho、Tm、Dy、Pr、Ce、Nd、Cu、Ag及びMgのうちから選択された一つ以上の物質であることを特徴とする請求項14または15に記載の電子放出表示装置。
【請求項16】
前記ドーパントの含有量は、前記透明導電性酸化物の含有量を基準に0.005モル%ないし15モル%であることを特徴とする請求項14に記載の電子放出表示装置。
【請求項17】
前面基板と、
前記前面基板の一面に備わる第1電極と、
前記第1電極の一面に備わる蛍光層と、
前記前面基板と所定の間隔をおいて対向配置される背面基板と、
前記背面基板上に形成された電子放出を制御するための第2電極と、
前記第2電極と電気的に連結された電子放出部と、
を含むバックライトユニットであり、
前記第1電極は、発光型の透明導電層であり、前記発光型の透明導電層は、透明導電性酸化物及びドーパントを含むバックライトユニット。
【請求項18】
請求項17に記載のバックライトユニットと、
前記バックライトユニットの前方に配置され、前記バックライトユニットから供給され光を制御して画像を具現する受光素子を利用したディスプレイパネルと、
を有することを特徴とする平板表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−32355(P2006−32355A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210481(P2005−210481)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】