説明

発光媒体および発光媒体の確認方法

【課題】有価証券などが偽造されたものかどうかを簡易かつ迅速に判別することができる発光媒体を提供する。
【解決手段】有価証券を構成する発光媒体10は、発光画像12を有している。この発光画像12は、第1蛍光体を含む第1蛍光インキ13を用いて基材11上に形成された絵柄領域20と、絵柄領域20に隣接するよう、第2蛍光体を含む第2蛍光インキ14を用いて基材11上に形成された背景領域25と、からなっている。ここで、UV−Aが照射されたとき、第1蛍光インキ13は、第1色の光を発光し、第2蛍光インキ14は、第1色または第1色と同色として視認される色の光を発光する。また、UV−Cが照射されたとき、第1蛍光インキ13は、第2色の光を発光し、第2蛍光インキ14は、第2色または第2色と同色として視認される色の光を発光する。そして、UV−AとUV−Cが同時に照射されたとき、第1蛍光インキ13は、第3色の光を発光し、第2蛍光インキ14は、第4色の光を発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の波長領域内の不可視光が同時に照射されたときに現れる発光画像を有する発光媒体に関する。また本発明は、当該発光媒体の確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金券やプリペイドカードを含む有価証券や、免許証を含む身分証明書など、偽造を防止することが必要とされる媒体において、セキュリティ性を高めるため、近年、マイクロ文字、コピー牽制パターン、赤外線吸収インキまたは蛍光インキなどが利用されている。このうち蛍光インキとは、可視光下ではほとんど視認されず、不可視光(紫外線または赤外線)が照射されたときに視認される蛍光体を含むインキである。このような蛍光インキを用いることにより、有価証券などに、特定の波長領域内の不可視光が照射されたときにのみ現れる蛍光画像(発光画像)を形成することができる。これによって、有価証券が汎用のカラープリンターなどにより容易に偽造されるのを防ぐことができる。
【0003】
また、偽造防止効果をさらに高めるため、蛍光インキを用いて、肉眼によっては視認されない発光画像を有価証券に形成することが提案されている。例えば特許文献1において、第1蛍光インキと第2蛍光インキとを用いて形成された発光画像を有する媒体が開示されている。この場合、第1蛍光インキおよび第2蛍光インキは、肉眼で見たときは、可視光下および紫外線下で互いに同一の色として視認され、かつ、判別具を介して見たときは、互いに異なる色として視認されるインキとなっている。このため、有価証券に形成された発光画像が容易に偽造されることはなく、このことにより、蛍光インキによる偽造防止効果が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4418881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有価証券が偽造されたものかどうかを判別するための手順は、簡易かつ迅速に実施されることが好ましい。従って、判別具などの道具を用いることなく、肉眼によって、有価証券が偽造されたものかどうかを簡易かつ迅速に判別することができる媒体が求められている。
【0006】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る発光媒体および当該発光媒体の確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材上に発光画像を有する発光媒体において、前記発光画像は、第1蛍光体を含む第1領域と、第2蛍光体を含む第2領域と、を有し、前記第2領域の少なくとも一部が前記第1領域に隣接し、第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、または第2波長領域内の不可視光が照射されたときに、前記第1蛍光体と、前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光し、第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたとき、前記第1蛍光体と、前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光することを特徴とする発光媒体である。
【0008】
本発明による発光媒体において、第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、前記第1蛍光体は、第1色の光を発光し、前記第2蛍光体は、第1色または第1色と同色として視認される色の光を発光し、第2波長領域内の不可視光が照射されたとき、前記第1蛍光体は、第2色の光を発光し、前記第2蛍光体は、第2色または第2色と同色として視認される色の光を発光してもよい。
【0009】
本発明による発光媒体において、第1波長領域内の不可視光が照射されたときに、前記第1蛍光体から発光される光の色と、前記第2蛍光体から発光される光の色と、の間の色差が、好ましくは10以下となっており、さらに好ましくは3以下となっている。また、第2波長領域内の不可視光が照射されたときに、前記第1蛍光体から発光される光の色と、前記第2蛍光体から発光される光の色と、の間の色差が、好ましくは10以下となっており、さらに好ましくは3以下となっている。さらに、第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたときに、前記第1蛍光体から発光される光の色と、前記第2蛍光体から発光される光の色と、の間の色差が10より大きくなっている。
【0010】
本発明による発光媒体において、前記第1領域および前記第2領域は、同一の所定パターンで設けられた前記第1蛍光体および前記第2蛍光体からそれぞれ形成されてもよい。
【0011】
本発明は、基材上に発光画像を有する発光媒体の確認方法において、上記記載の発光媒体を準備する工程と、第1波長領域内の不可視光を発光媒体に照射して、発光画像の第1領域と第2領域とが判別されないことを確認する工程と、第2波長領域内の不可視光を発光媒体に照射して、発光画像の第1領域と第2領域とが判別されないことを確認する工程と、第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とを同時に発光媒体に照射して、発光画像の第1領域と第2領域とが判別されることを確認する工程と、を備えたことを特徴とする発光媒体の確認方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による発光媒体は、基材上に発光画像を有している。発光画像は、第1蛍光体を含む第1領域と、第2蛍光体を含む第2領域と、を有している。このうち第2領域の少なくとも一部は、第1領域に隣接している。ここで、第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、または第2波長領域内の不可視光が照射されたときに、第1蛍光体と、第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光する。また、第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたとき、前記第1蛍光体と、前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光する。このため、第1領域と第2領域とにより構成される発光画像のパターンは、第1波長領域内の不可視光または第2波長領域内の不可視光が単独で照射されたときには視認されず、第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されてはじめて視認される。これによって、簡易かつ迅速に発光画像の確認を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の発光媒体からなる偽造防止媒体により構成される有価証券の一例を示す平面図。
【図2】図2は、本発明の実施の形態において、偽造防止媒体の発光画像を示す平面図。
【図3】図3は、図2に示す発光画像のIII−III線に沿った断面図。
【図4A】図4Aは、本発明の実施の形態における第1蛍光インキの蛍光発光スペクトルを示す図。
【図4B】図4Bは、本発明の実施の形態における第2蛍光インキの蛍光発光スペクトルを示す図。
【図4C】図4Cは、本発明の実施の形態において、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときの第1蛍光インキおよび第2蛍光インキの蛍光発光スペクトルを示す図。
【図5】図5は、本発明の実施の形態における第1蛍光インキおよび第2蛍光インキから発光される蛍光の色度を示すxy色度図。
【図6A】図6Aは、本発明の実施の形態において、UV−Aが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図6B】図6Bは、本発明の実施の形態において、UV−Cが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図6C】図6Cは、本発明の実施の形態において、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図7】図7は、本発明の実施の形態の第1の変形例において、偽造防止媒体の発光画像を示す平面図。
【図8】図8は、図7に示す発光画像のVIII−VIII線に沿った断面図。
【図9A】図9Aは、本発明の実施の形態の第1の変形例において、UV−Aが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図9B】図9Bは、本発明の実施の形態の第1の変形例において、UV−Cが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図9C】図9Cは、本発明の実施の形態の第1の変形例において、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図10】図10は、本発明の実施の形態の第4の変形例において、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときの第1蛍光インキおよび第2蛍光インキの蛍光発光スペクトルを示す図。
【図11】図11は、本発明の実施の形態の第4の変形例において、第1蛍光インキおよび第2蛍光インキから発光される蛍光の色度を示すxy色度図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図6Cを参照して、本発明の実施の形態について説明する。はじめに図1乃至図3を参照して、本発明の発光媒体からなる偽造防止媒体10全体について説明する。
【0015】
偽造防止媒体
図1は、本実施の形態による偽造防止媒体10により構成される商品券(有価証券)の一例を示す図である。図1に示すように、偽造防止媒体10は、基材11と、基材11上に形成された発光画像12と、を有している。本実施の形態においては、後述するように、発光画像12が、偽造防止媒体10の真偽を判別するための真偽判別用画像として機能する。この発光画像12は、図1に示すように、絵柄領域(第1領域)20と、絵柄領域20に隣接するよう形成された背景領域(第2領域)25と、からなっている。図1に示す例において、絵柄領域20は、「A」という文字(絵柄)からなっており、また背景領域25は、絵柄領域20を取り囲むよう形成されている。各領域20,25は、後述するように、不可視光により励起されて蛍光を発する蛍光インキを印刷することにより形成されている。
【0016】
偽造防止媒体10において用いられる基材11の材料が特に限られることはなく、偽造防止媒体10により構成する有価証券の種類に応じて適宜選択される。例えば、基材11の材料として、優れた印刷適性および加工適性を有する白色のポリエチレンテレフタレートが用いられる。基材11の厚みは、偽造防止媒体10により構成される有価証券の種類に応じて適宜設定される。
【0017】
発光画像12の大きさが特に限られることはなく、真偽判別のし易さや、求められる判別精度などに応じて適宜設定される。例えば、発光画像12の長さlおよびlは、それぞれ1〜210mmおよび1〜300mmの範囲内となっている。
【0018】
発光画像
次に図2および図3を参照して、発光画像12についてより詳細に説明する。図2は、可視光下での発光画像12を拡大して示す平面図であり、図3は、図2に示す発光画像12のIII−III線に沿った断面図である。
【0019】
はじめに図3を参照して、発光画像12の構造について説明する。図3に示すように、発光画像12の絵柄領域20および背景領域25は、基材11上に第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14をベタ印刷することにより形成されている。
【0020】
なお図3において、絵柄領域20の第1蛍光インキ13と背景領域25の第2蛍光インキ14とが接している例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、肉眼によっては視認され得ない程度の隙間が、絵柄領域20の第1蛍光インキ13と背景領域25の第2蛍光インキ14との間に形成されていてもよい。また、絵柄領域20の第1蛍光インキ13と背景領域25の第2蛍光インキ14との間において、第1蛍光インキ13と第2蛍光インキ14とが重なって形成されていてもよい。
【0021】
第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14の厚みtおよびtは、有価証券の種類や、印刷の方式などに応じて適宜設定されるが、例えば、厚みtは0.3〜100μmの範囲内となっており、厚みtは0.3〜100μmの範囲内となっている。なお、好ましくは、厚みtと厚みtはほぼ同一となっている。これによって、第1蛍光インキ13の厚みと第2蛍光インキ14の厚みの差に起因して、絵柄領域20と背景領域25の間の境界が視認されるのを抑制することができる。
【0022】
第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14は各々、後述するように、可視光下では発光せず、特定の不可視光下で発光する所定の蛍光体、例えば粒状の顔料を含んでいる。ここで、インキ13,14に含まれる顔料の粒径は、例えば0.1〜10μmの範囲内となっており、好ましくは0.1〜3μmの範囲内となっている。このため、インキ13,14に可視光が照射された場合、光が顔料粒子によって散乱される。従って、可視光下で発光画像12を見た場合、図2に示すように、絵柄領域20として白色絵柄領域21aが視認され、背景領域25として白色背景領域26aが視認される。また上述のように、本実施の形態における基材11は、白色のポリエチレンテレフタレートから形成されている。このため、可視光下において、基材11、発光画像12の絵柄領域20および背景領域25は全て白色のものとして視認される。従って、可視光下において発光画像12の絵柄領域20のパターンが現れることはない。このことにより、発光画像12を有する偽造防止媒体10が容易に偽造されるのが防がれている。
なお、図2において、絵柄領域20と背景領域25との間の第1境界線15a、および、基材11と発光画像12との間の第2境界線15bは、便宜上描かれているものである。可視光下において、第1境界線15aまたは第2境界線15bは実際には視認されない。
【0023】
蛍光インキ
次に図4A乃至図5を参照して、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14についてより詳細に説明する。図4Aは、第1蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示す図であり、図4Bは、第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示す図であり、図4Cは、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときの第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルをあわせて示す図である。図5は、特定の波長領域内の光が照射された場合に第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14から発光される光の色度をXYZ表色系で示すxy色度図である。
【0024】
(第1蛍光インキ)
はじめに第1蛍光インキ13について説明する。図4Aにおいて、一点鎖線は、315〜400nmの波長域領域内(第1波長領域内)の紫外線(不可視光)、いわゆるUV−Aが照射されたときの第1蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示しており、実線は、200〜280nmの波長域領域内(第2波長領域内)の紫外線(不可視光)、いわゆるUV−Cが照射されたときの第1蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示している。なお図4Aに示す各蛍光発光スペクトルは、最大のピークにおけるピーク強度が1となるよう規格化されている。
【0025】
図4Aに示すように、第1蛍光インキ13は、UV−Aが照射されたとき、ピーク波長λ1Aが約610nmである赤色(第1色)の光を発し、UV−Cが照射されたとき、ピーク波長λ1Cが約525nmである緑色(第2色)の光を発する。このように、第1蛍光インキ13は、UV−A照射時とUV−C照射時で発光色が異なる、いわゆる二色性蛍光体(第1蛍光体)を含んでいる。このような二色性蛍光体は、例えば、UV−Aにより励起される蛍光体と、UV−Cにより励起される蛍光体と、を適宜組み合わせることにより構成される(例えば、特開平10−251570号公報参照)。
なおUV−C照射時には、図4Aに示すように約610nmの波長の光も発光される。しかしながら、約610nmの波長の光は、ピーク波長λ1Cが約525nmである光に比べて強度が小さいため、UV−C照射時、第1蛍光インキ13からの光は緑色光として視認される。
【0026】
(第2蛍光インキ)
次に第2蛍光インキ14について説明する。図4Bにおいて、一点鎖線は、UV−Aが照射されたときの第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示しており、実線は、UV−Cが照射されたときの第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示している。図4Aの場合と同様に、図4Bに示す各蛍光発光スペクトルは、最大のピークにおけるピーク強度が1となるよう規格化されている。
【0027】
図4Bに示すように、第2蛍光インキ14は、UV−Aを照射されたとき、ピーク波長λ2Aが約615nmである、赤色(第1色)の光または赤色(第1色)と同色として視認される光を発する。また第2蛍光インキ14は、UV−Cを照射されたとき、ピーク波長λ2Cが約520nmである、緑色(第2色)の光または緑色(第2色)と同色として視認される光を発する。このように第2蛍光インキ14も、第1蛍光インキ13と同様に、UV−A照射時とUV−C照射時で発光色が異なる、いわゆる二色性蛍光体(第2蛍光体)を含んでいる。
なおUV−C照射時には、図4Bに示すように約615nmの波長の光も発光される。しかしながら、約615nmの波長の光は、ピーク波長λ2Aが約520nmである光に比べて強度が小さいため、UV−C照射時、第2蛍光インキ14からの光は緑色光として視認される。
【0028】
上述のように、UV−Aを照射されたときに第1蛍光インキ13から発光される光のピーク波長λ1Aと、UV−Aを照射されたときに第2蛍光インキ14から発光される光のピーク波長λ2Aとは異なっており、その相違量Δλ(=λ1A−λ2A)は−5nmとなっている。同様に、UV−Cを照射されたときに第1蛍光インキ13から発光される光のピーク波長λ1Cと、UV−Cを照射されたときに第2蛍光インキ14から発光される光のピーク波長λ2Cとも異なっており、その相違量Δλ(=λ1C−λ2C)は+5nmとなっている。ΔλまたはΔλにおける符号が+であることは、第1蛍光インキ13のピーク波長が第2蛍光インキ14のピーク波長よりも長波長側であることを表している。また、ΔλまたはΔλにおける符号が−であることは、第1蛍光インキ13のピーク波長が第2蛍光インキ14のピーク波長よりも短波長側であることを表している。
【0029】
(同時照射時の蛍光発光スペクトル)
次に、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときの、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルについて説明する。図4Cにおいて、実線は、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときの第1蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示しており、二点鎖線は、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときの第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示している。
【0030】
上述のように、第1蛍光インキ13は、UV−Aを照射されたときピーク波長λ1Aの光を発光し、UV−Cを照射されたときピーク波長λ1Cの光を発光する。このため、図4Cに示すように、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときに第1蛍光インキ13から発光される光のスペクトルには、波長λ1Aにおけるピークと波長λ1Cにおけるピークとがそれぞれ含まれている。この場合、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときに第1蛍光インキ13から発光される光の色は、波長λ1Aを含む光の色と波長λ1Cを含む光の色とが加法混色することにより現れる緑みの黄色(第3色)となる。
【0031】
同様に、第2蛍光インキ14は、UV−Aを照射されたときピーク波長λ2Aの光を発光し、UV−Cを照射されたときピーク波長λ2Cの光を発光する。このため、図4Cに示すように、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときに第2蛍光インキ14から発光される光のスペクトルには、波長λ2Aにおけるピークと波長λ2Cにおけるピークとがそれぞれ含まれている。この場合、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときに第2蛍光インキ14から発光される光の色は、波長λ2Aを含む光の色と波長λ2Cを含む光の色とが加法混色することにより現れる黄色(第4色)となる。
【0032】
次に図5を参照して、第1蛍光インキ13または第2蛍光インキ14から発せられる光の色についてより詳細に説明する。図5に示す符号において、白抜きの三角または丸は、UV−A照射時に第1蛍光インキ13または第2蛍光インキ14から発せられる光の色度をそれぞれ示している。また、黒塗りの三角または丸は、UV−C照射時に第1蛍光インキ13または第2蛍光インキ14から発せられる光の色度をそれぞれ示している。また、斜線パターンの三角または丸は、UV−AとUV−Cの同時照射時に第1蛍光インキ13または第2蛍光インキ14から発せられる光の色度をそれぞれ示している。
【0033】
上述の赤色(第1色)は、図5において白抜きの三角で示される色度に対応しており、上述の緑色(第2色)は、図5において黒塗りの三角で示される色度に対応している。また、上述の緑みの黄色(第3色)は、図5において斜線パターンの三角で示される色度に対応しており、上述の黄色(第4色)は、図5において斜線パターンの丸で示される色度に対応している。
【0034】
図5に示すように、xy色度図において、UV−A照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、UV−A照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光の色度とは近接している。言い換えれば、UV−A照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、UV−A照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光の色度とが近接するよう、上述のΔλの値が設定されている。このため、UV−A照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光は、上述のように、UV−A照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光と同色の光として視認される。従って、第1蛍光インキ13を用いて形成された絵柄領域20と、第2蛍光インキ14を用いて形成された背景領域25とは、UV−A照射時、同色の領域として視認される。この場合、UV−A照射時、発光画像12全体が単一色(赤色)の画像として視認され、このため絵柄領域20のパターンが現れない。
【0035】
また図5に示すように、xy色度図において、UV−C照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、UV−C照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光の色度とは近接している。言い換えれば、UV−C照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、UV−C照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光の色度とが近接するよう、上述のΔλの値が設定されている。このため、UV−C照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光は、上述のように、UV−C照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光と同色の光として視認される。従って、第1蛍光インキ13を用いて形成された絵柄領域20と、第2蛍光インキ14を用いて形成された背景領域25とは、UV−C照射時、同色の領域として視認される。この場合、UV−C照射時、発光画像12全体が単一色(緑色)の画像として視認され、このため絵柄領域20のパターンが現れない。
【0036】
次に、図5に示されている第3色および第4色の色度について説明する。図5に示すように、xy色度図において、UV−AとUV−Cの同時照射時、第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、第2蛍光インキ14から発せられる光の色度は離れている。言い換えれば、UV−AとUV−Cの同時照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、UV−AとUV−Cの同時照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光の色度とが離れるよう、上述のΔλおよびΔλの値が設定されている。このため、UV−AとUV−Cの同時照射時、第2蛍光インキ14から発せられる光の色(第4色)は、第1蛍光インキ13から発せられる光の色(第3色)とは異なる色として認識される。従って、第1蛍光インキ13を用いて形成された絵柄領域20と、第2蛍光インキ14を用いて形成された背景領域25とは、UV−AとUV−Cの同時照射時、異色の領域として視認される。このため後述するように、UV−AとUV−Cの同時照射時には、絵柄領域20のパターンが視認される。
【0037】
UV−AとUV−Cの同時照射時、第2蛍光インキ14から発せられる光の色と、第1蛍光インキ13から発せられる光の色が異なることについて、より詳細に説明する。上述のように、第1蛍光インキ13からの光のスペクトルのピークλ1Aおよびλ1Cと、第2蛍光インキ14からの光のスペクトルのピークλ2Aおよびλ2Cとの間には、ΔλおよびΔλの相違がある。このため、第1蛍光インキ13から発せられる光と第2蛍光インキ14から発せられる光との間の色差は、UV−A照射時におけるΔλに起因する色差が、UV−C照射時におけるΔλに起因する色差によりさらに増幅されて生成される色差となると考えられる。このことにより、第1蛍光インキ13からは緑みの黄色(第3色)の光が発せられ、一方、第2蛍光インキ14からは、緑みの黄色(第3色)とは異色の黄色(第4色)の光が発せられると考えられる。
【0038】
なお本発明において、「同色」とは、肉眼では色の違いを判別できない程度に2つの色の色度が近接していることを意味している。より具体的には、「同色」とは、2つの色の色差ΔEabが10以下、好ましくは3以下であることを意味している。また「異色」とは、2つの色の色差ΔEabが10よりも大きいことを意味している。ここで色差ΔEabとは、L表色系におけるL、aおよびbに基づいて算出される値であり、肉眼で観察された場合の色の相違に関する指標となる値である。なお、L表色系におけるL、aおよびbや、XYZ表色系における三刺激値X、YおよびZは、光のスペクトルなどに基づいて算出される。またL、aおよびbと三刺激値X、Y、Zとの間には、周知の変換式に従う関係が成立している。
上記の三刺激値は、例えば分光光度計、色差計、測色計、色彩計、色度計等の計測器を用いることにより計測され得る。これらの計測器のうち分光光度計は、各波長の分光反射率を求めることができるので、三刺激値を精度良く計測することができ、このため色差の解析に適している。
色差ΔEabを算出するには、例えば、はじめに、比較する複数の媒体(インキ)からの光を分光光度計にて計測し、その結果に基づいて、三刺激値X、Y、Z、またはL、a、bを算出する。次に、複数の媒体(インキ)におけるL、a、bの差(ΔL、Δa、Δb)から、以下の式に基づいて色差を算出する。
【数1】

【0039】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、偽造防止媒体10を作製する方法について説明する。次に、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査する方法について説明する。
【0040】
偽造防止媒体の作製方法
はじめに基材11を準備する。基材11としては、例えば、厚み188μmの白色のポリエチレンテレフタレートからなる基材が用いられる。次に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を用いて、基材11上に、絵柄領域20および背景領域25からなる発光画像を形成する。
【0041】
この際、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14としては、例えば、所定の蛍光特性を有する二色性蛍光体25重量%に、マイクロシリカ8重量%、有機ベントナイト2重量%、アルキッド樹脂50重量%およびアルキルベンゼン系溶剤15重量%を加えてオフセットインキ化されたインキがそれぞれ用いられる。このうち第1蛍光インキ13用の二色性蛍光体(第1蛍光体)としては、例えば、波長254nmの紫外線により励起されて緑色光を発光し、波長365nmの紫外線により励起されて赤色光を発光し、波長254nmおよび波長365nmの紫外線を同時に照射されて緑みの黄色光を発光する蛍光体DE−GR(根本特殊化学製)が用いられる。また第2蛍光インキ14用の二色性蛍光体(第2蛍光体)としては、例えば、波長254nmの紫外線により励起されて緑色光を発光し、波長365nmの紫外線により励起されて赤色光を発光し、波長254nmおよび波長365nmの紫外線を同時に照射されて黄色光を発光する蛍光体DE−GR1(根本特殊化学製)が用いられる。
【0042】
なお本実施の形態においては、波長365nmまたは波長254nmの紫外線照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光と第2蛍光インキ14から発せられる光との間の色差ΔEabが10以下、好ましくは3以下となるよう、インキ13,14の二色性蛍光体がそれぞれ選択されている。一般に、色差ΔEabが3程度で人間の目の識別能力(色を見分ける能力)の限界となる。従って、色差ΔEabを3以下とすることにより、肉眼での色の判別がより一層困難となり、これによって、真偽判別用の発光画像12のパターンが容易に解明されるのを防ぐことができる。
【0043】
また、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14における各構成要素の組成が上述の組成に限られることはなく、偽造防止媒体10に求められる特性に応じて最適な組成が設定される。
【0044】
確認方法
次に、図2および図6A乃至図6Cを参照して、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査(確認)する方法について説明する。
【0045】
(可視光照射時)
はじめに、可視光下での偽造防止媒体10を観察する。この場合、上述のように、基材11、発光画像12の絵柄領域20および背景領域25はそれぞれ白色のものとして視認される(図2参照)。このため、可視光下においては、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。
【0046】
(UV−A照射時)
次に、UV−A照射時の偽造防止媒体10を観察する。照射されるUV−Aとしては、例えば、波長365nmの紫外線が用いられる。
【0047】
図6Aは、UV−A照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−GRを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は赤色光を発光する。従って、絵柄領域20が赤色部分21bとして視認される。一方、背景領域25を形成する第2蛍光インキ14は蛍光体DE−GR1を含んでおり、このため、第2蛍光インキ14は赤色光を発光する。従って、背景領域25も赤色部分26bとして視認される。このように、UV−A照射時において、絵柄領域20および背景領域25は、同色の領域として視認される。従って、UV−A照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。
【0048】
(UV−C照射時)
次に、UV−C照射時の偽造防止媒体10を観察する。照射されるUV−Cとしては、例えば、波長254nmの紫外線が用いられる。
【0049】
図6Bは、UV−C照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−GRを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は緑色光を発光する。従って、絵柄領域20が緑色部分21cとして視認される。一方、背景領域25を形成する第2蛍光インキ14は蛍光体DE−GR1を含んでおり、このため、第2蛍光インキ14は緑色光を発光する。従って、背景領域25も緑色部分26cとして視認される。このように、UV−C照射時において、絵柄領域20および背景領域25は、同色の領域として視認される。従って、UV−C照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。
【0050】
(UV−AおよびUV−Cの同時照射時)
次に、UV−AおよびUV−Cを同時に照射した時の偽造防止媒体10を観察する。
【0051】
図6Cは、UV−AおよびUV−Cを同時に照射した時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。この場合、第1蛍光インキ13からは、UV−A照射時の赤色光とUV−C照射時の緑色光とが加法混色された光である緑みの黄色光が発せられる。一方、第2蛍光インキ14からは、UV−A照射時の赤色光とUV−C照射時の緑色光とが加法混色された光である黄色光が発せられる。このため、図6Cに示すように、絵柄領域20は緑みの黄色部分21dとして視認され、一方、背景領域25は黄色部分26dとして視認される。このように、UV−AおよびUV−Cを同時に照射した時、絵柄領域20および背景領域25は、異なった色の領域として視認される。従って、UV−AおよびUV−Cを同時に照射した時、発光画像12の絵柄領域20のパターンが視認される。
【0052】
可視光、UV−A、UV−Cが照射された場合、およびUV−AとUV−Cが同時に照射された場合に絵柄領域20および背景領域25の色が上述のように変化するのを検査することにより、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであることが確認される。
【0053】
このように本実施の形態によれば、偽造防止媒体10は、基材11と、第1蛍光体を含む第1蛍光インキ13を用いて基材11上に形成された絵柄領域20と、絵柄領域20に隣接するよう、第2蛍光体を含む第2蛍光インキ14を用いて基材11上に形成された背景領域25と、を備えている。ここで、UV−Aが照射されたとき、第1蛍光インキ13の第1蛍光体は、赤色(第1色)の光を発光し、第2蛍光インキ14の第2蛍光体は、赤色(第1色)または赤色(第1色)と同色として視認される色の光を発光する。また、UV−Cが照射されたとき、第1蛍光インキ13の第1蛍光体は、緑色(第2色)の光を発光し、第2蛍光インキ14の第2蛍光体は、緑色(第2色)または緑色(第2色)と同色として視認される色の光を発光する。そして、UV−AとUV−Cが同時に照射されたとき、第1蛍光インキ13の第1蛍光体は、緑みの黄色(第3色)の光を発光し、第2蛍光インキ14の第2蛍光体は、黄色(第4色)の光を発光する。このため、絵柄領域20と背景領域25とは、UV−AまたはUV−Cを単独で照射されたときには判別されず、UV−AおよびUV−Cを同時に照射されてはじめて判別される。すなわち、絵柄領域20のパターンは、UV−AまたはUV−Cを単独で照射されたときには視認されず、UV−AおよびUV−Cを同時に照射されてはじめて視認される。
このように、二色性蛍光体を含むインキを用いて絵柄領域20および背景領域25を形成することにより、単色性蛍光体を含むインキが用いられる場合に比べて、偽造防止媒体10の偽造を困難にすることができる。また、肉眼によって、発光画像12が正規のものかどうかを簡易かつ迅速に判別することが可能となる。
また、第1蛍光インキ13の第1蛍光体および第2蛍光インキ14の第2蛍光体を、UV−AまたはUV−Cがそれぞれ単独で照射されたとき同色または同色として視認される色を発光するよう選択することにより、発光画像12のパターンが容易に解明されるのを防ぐことができる。このことにより、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
また、UV−AおよびUV−Cが同時に照射されてはじめて絵柄領域20のパターンが現れるよう、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14の第1蛍光体および第2蛍光体を選択することにより、絵柄領域20のパターンが解明されるのをより強固に防ぐことができる。このことにより、偽造防止媒体10の偽造をさらに困難にすることができる。
【0054】
第1の変形例
なお本実施の形態において、発光画像12の絵柄領域20および背景領域25が、第1蛍光体を含む第1蛍光インキ13および第2蛍光体を含む第2蛍光インキ14を基材11上にベタ印刷することにより形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光体を含む第1蛍光インキ13および第2蛍光体を含む第2蛍光インキ14を同一の所定パターンで基材11上に印刷することにより、絵柄領域20および背景領域25を形成してもよい。以下、図7乃至図9Cを参照して、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14が基材11上にストライプ状に印刷される例について説明する。
【0055】
図7は、本変形例において、可視光下における偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図であり、図8は、図7に示す発光画像12のVIII−VIII線に沿った断面図である。図7および図8に示すように、本変形例においては、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を基材11上にストライプ状に印刷することにより、絵柄領域20および背景領域25が形成されている。
【0056】
次に、図7および図9A乃至図9Cを参照して、本変形例において、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査する方法について説明する。
【0057】
(可視光照射時)
可視光下においては、図7に示すように、絵柄領域20および背景領域25はそれぞれ、ストライプ状に配置された白色部分21a,26aから形成されている。このため、可視光下においては、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。
【0058】
(UV−A照射時)
図9Aは、UV−A照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20および背景領域25はそれぞれ、ストライプ状に配置された赤色部分21b,26bから形成されている。このため、UV−A照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。
また本変形例においては、基材11上に第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14がベタ印刷される場合に比べて、絵柄領域20の赤色部分21bと背景領域25の赤色部分26bとが接する部分がより少なくなっている。このため、仮に赤色部分21bと赤色部分26bとが接する部分において不規則に反射または屈折する光が存在する場合であっても、そのような光に起因して赤色部分21bと赤色部分26bとの間の境界が視認される可能性が低減されている。このことにより、UV−A照射時に絵柄領域20のパターンが解明されるのをより強固に防ぐことができる。
【0059】
(UV−C照射時)
図9Bは、UV−C照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20および背景領域25はそれぞれ、ストライプ状に配置された緑色部分21c,26cから形成されている。このため、UV−C照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。
また本変形例においては、基材11上に第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14がベタ印刷される場合に比べて、絵柄領域20の緑色部分21cと背景領域25の緑色部分26cとが接する部分がより少なくなっている。このため、仮に緑色部分21cと緑色部分26cとが接する部分において不規則に反射または屈折する光が存在する場合であっても、そのような光に起因して緑色部分21cと緑色部分26cとの間の境界が視認される可能性が低減されている。このことにより、UV−C照射時に絵柄領域20のパターンが解明されるのをより強固に防ぐことができる。
【0060】
(UV−AおよびUV−Cの同時照射時)
図9Cは、UV−AおよびUV−Cを同時に照射した時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20および背景領域25はそれぞれ、ストライプ状に配置された緑みの黄色部分21dおよび黄色部分26dから形成されている。このため、UV−AおよびUV−Cを同時に照射した時、発光画像12の絵柄領域20のパターンが視認される。
【0061】
なお本変形例において、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14が基材11上にストライプ状に印刷される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を様々なパターンで基材11上に印刷することができる。
例えば、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14が網点で基材11上に印刷されてもよい。この際の網点パーセントが特に限られることはなく、偽造防止媒体10に求められる特性に応じて網点パーセントが適宜設定される。
【0062】
第2の変形例
また本実施の形態において、第1蛍光インキ13として、蛍光体DE−GRを含むインキが用いられ、第2蛍光インキ14として、蛍光体DE−GR1を含むインキが用いられる例を示した。すなわち、以下に示す表1における組合せ_1のインキが用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14として、表1における組合せ_2乃至組合せ_6のいずれかのインキを用いてもよい。組合せ_2乃至組合せ_6の場合であっても、組合せ_1の場合と同様に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14は、UV−AまたはUV−Cが単独で照射されたとき同色または同色として視認される色を発光し、UV−AおよびUV−Cが同時に照射されたとき異色として視認される色を発光するインキとなっている。このため、発光画像12のパターンが容易に解明されるのを防ぐことができ、このことにより、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
なお表1において、「UV−A」または「UV−C」の列に示されている色は、UV−AまたはUV−Cが照射されたときに第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14から発せられる光の色をそれぞれ示している。また、蛍光体の列において、「DE−X」のうち、XがUV−C照射時の発光色を示しており、XがUV−A照射時の発光色を示している。例えば蛍光体DE−GRは、UV−C照射時に緑色光を発し、UV−A照射時に赤色光を発する蛍光体となっている。また、蛍光体の列において、「DE−X1」は、UV−AまたはUV−Cが単独で照射されたとき、「DE−X」と同色であるXまたはXの光を発し、UV−AおよびUV−Cが同時に照射されたとき、「DE−X」とは異色の光を発する蛍光体を表している。また、「蛍光体」の列に示されている名称は、いずれも根本特殊化学における製品名を表している。
【表1】

【0063】
第3の変形例
また本実施の形態において、上述のΔλおよびΔλを適宜設定することにより、UV−AまたはUV−Cが単独で照射されたとき同色または同色として視認される色を発光し、UV−AおよびUV−Cが同時に照射されたとき異色として視認される色を発光するインキ13,14が構成される例を示した。この場合、好ましくは、上述の例において示したように、Δλの符号とΔλの符号とが互いに異なるよう設定される。これによって、UV−A照射時におけるΔλに起因する色差が、UV−C照射時におけるΔλに起因する色差によりさらに増幅される際の色差の増幅の程度をより大きくすることができる。しかしながら、これに限られることはなく、UV−AまたはUV−Cが単独で照射されたとき同色または同色として視認される色を発光し、UV−AおよびUV−Cが同時に照射されたとき異色として視認される色を発光する限りにおいて、インキ13,14におけるΔλおよびΔλを任意に設定することができる。
【0064】
第4の変形例
また本実施の形態において、第1蛍光インキ13からの光のスペクトルのピークλ1Aおよびλ1Cと、第2蛍光インキ14からの光のスペクトルのピークλ2Aおよびλ2Cとを相違させることにより、UV−AおよびUV−Cが同時に照射されたときに第1蛍光インキ13から発光される光の色と第2蛍光インキ14から発光される光の色とを異ならせる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、以下に示すように、様々な方法により、UV−AまたはUV−Cが単独で照射されたとき同色または同色として視認される色を発光し、UV−AおよびUV−Cが同時に照射されたとき異色として視認される色を発光するインキ13,14を構成することができる。
【0065】
図10は、本変形例において、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときの第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示す図であり、図11は、本変形例において、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14から発光される蛍光の色度を示すxy色度図である。図10において、実線は、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときの第1蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示しており、二点鎖線は、UV−AとUV−Cが同時に照射されたときの第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示している。
【0066】
図10に示すように、緑色光に対応するピーク(波長525nm付近のピーク)において、第1蛍光インキ13からの光のピーク波長λ1Aと、第2蛍光インキ14からの光のピーク波長λ2Aとは一致している。同様に、赤色光に対応するピーク(波長610nm付近のピーク)において、第1蛍光インキ13からの光のピーク波長λ1Cと、第2蛍光インキ14からの光のピーク波長λ2Cとは一致している。このため、図11に示すように、xy色度図において、UV−A照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、UV−A照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光の色度は一致している。また、UV−C照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、UV−C照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光の色度も一致している。
【0067】
一方、図10に示すように、第1蛍光インキ13における2つのピーク(λ1Cのピークとλ1Aのピーク)の強度比と、第2蛍光インキ14における2つのピーク(λ2Cのピークとλ2Aのピーク)の強度比とは異なっている。このため、図11に示すように、xy色度図において、UV−AとUV−Cの同時照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、UV−AとUV−Cの同時照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光の色度は離れている。
【0068】
すなわち、UV−AとUV−Cが同時に照射されるときの発光スペクトルの2つのピークの強度比を相違させることによっても、UV−AまたはUV−Cが単独で照射されたとき同色または同色として視認される色を発光し、UV−AおよびUV−Cが同時に照射されたとき異色として視認される色を発光するインキ13,14を構成することができる。
この他にも、インキ13,14における発光スペクトルの形状を互いに相違させることにより、UV−AまたはUV−Cが単独で照射されたとき同色または同色として視認される色を発光し、UV−AおよびUV−Cが同時に照射されたとき異色として視認される色を発光するインキを構成することなどが考えられる。
【0069】
その他の変形例
また本実施の形態において、絵柄領域20が第1蛍光インキ13を用いて形成され、背景領域25が第2蛍光インキ14を用いて形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第2蛍光インキ14を用いて絵柄領域20を形成し、第1蛍光インキ13を用いて背景領域25を形成してもよい。この場合も、絵柄領域20のパターンは、UV−AまたはUV−Cが単独で照射されたときには視認されず、UV−AおよびUV−Cが同時に照射されてはじめて視認される。このことにより、偽造防止媒体10の偽造を困難にすることができる。
【0070】
また本実施の形態において、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14として、UV−AまたはUV−Cに対する励起特性を有するインキが用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14として、UV−Bまたは赤外線に対する励起特性を有するインキを用いてもよい。すなわち、本発明における「第1波長領域内の不可視光」または「第2波長領域内の不可視光」として、任意の波長領域内の不可視光を用いることができる。
【0071】
また本実施の形態において、背景領域25が、絵柄領域20を取り囲むよう形成されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、背景領域25の少なくとも一部が絵柄領域20に隣接していればよい。
【0072】
また本実施の形態において、可視光下で、絵柄領域20および背景領域25がそれぞれ白色のものとして視認される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、少なくとも可視光下で絵柄領域20および背景領域25が同色の領域として視認されればよい。
【0073】
また本実施の形態において、第1波長領域内の不可視光または第2波長領域内の不可視光が単独で照射されたときに第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14から発光される光の色が、青色、赤色または緑色のいずれかの色である例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1波長領域内の不可視光または第2波長領域内の不可視光が単独で照射されたとき同色として視認され、第1波長領域内の不可視光および第2波長領域内の不可視光が同時に照射されたとき異色として視認される様々な組合せのインキをインキ13,14として用いることができる。
【0074】
また本実施の形態において、本発明の発光媒体が、有価証券などを構成する偽造防止媒体として用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、様々な用途において本発明の発光媒体を用いることができる。例えば玩具などの用途において、本発明の発光媒体を用いることができる。この場合も、第1波長領域内の不可視光または第2波長領域内の不可視光が単独で照射されたときには判別されず、第1波長領域内の不可視光および第2波長領域内の不可視光が同時に照射されてはじめて判別される絵柄領域および背景領域からなる発光画像により、玩具などに様々な機能や特質を付与することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 偽造防止媒体
11 基材
12 発光画像
13 第1蛍光インキ
14 第2蛍光インキ
15a 第1境界線
15b 第2境界線
20 絵柄領域
21a 白色部分
21b 赤色部分
21c 緑色部分
21d 緑みの黄色部分
25 背景領域
26a 白色部分
26b 赤色部分
26c 緑色部分
26d 黄色部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に発光画像を有する発光媒体において、
前記発光画像は、
第1蛍光体を含む第1領域と、
第2蛍光体を含む第2領域と、を有し、
前記第2領域の少なくとも一部が前記第1領域に隣接し、
第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、または第2波長領域内の不可視光が照射されたときに、前記第1蛍光体と、前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光し、
第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたとき、前記第1蛍光体と、前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光する
ことを特徴とする発光媒体。
【請求項2】
第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、前記第1蛍光体は、第1色の光を発光し、前記第2蛍光体は、第1色または第1色と同色として視認される色の光を発光し、
第2波長領域内の不可視光が照射されたとき、前記第1蛍光体は、第2色の光を発光し、前記第2蛍光体は、第2色または第2色と同色として視認される色の光を発光する
ことを特徴とする請求項1に記載の発光媒体。
【請求項3】
第1波長領域内の不可視光が照射されたときに、前記第1蛍光体から発光される光の色と、前記第2蛍光体から発光される光の色と、の間の色差が10以下であり、
第2波長領域内の不可視光が照射されたときに、前記第1蛍光体から発光される光の色と、前記第2蛍光体から発光される光の色と、の間の色差が10以下であり、
第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたときに、前記第1蛍光体から発光される光の色と、前記第2蛍光体から発光される光の色と、の間の色差が10より大きい
ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の発光媒体。
【請求項4】
第1波長領域内の不可視光が照射されたときに、前記第1蛍光体から発光される光の色と、前記第2蛍光体から発光される光の色と、の間の色差が3以下であり、
第2波長領域内の不可視光が照射されたときに、前記第1蛍光体から発光される光の色と、前記第2蛍光体から発光される光の色と、の間の色差が3以下であり、
第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたときに、前記第1蛍光体から発光される光の色と、前記第2蛍光体から発光される光の色と、の間の色差が10より大きい
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発光媒体。
【請求項5】
前記第1領域および前記第2領域は、同一の所定パターンで設けられた前記第1蛍光体および前記第2蛍光体からそれぞれ形成される
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の発光媒体。
【請求項6】
基材上に発光画像を有する発光媒体の確認方法において、
請求項1乃至5のいずれかに記載の発光媒体を準備する工程と、
第1波長領域内の不可視光を発光媒体に照射して、発光画像の第1領域と第2領域とが判別されないことを確認する工程と、
第2波長領域内の不可視光を発光媒体に照射して、発光画像の第1領域と第2領域とが判別されないことを確認する工程と、
第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とを同時に発光媒体に照射して、発光画像の第1領域と第2領域とが判別されることを確認する工程と、を備えた
ことを特徴とする発光媒体の確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−35453(P2012−35453A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175694(P2010−175694)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】