発光層および発光素子
【課題】高効率な有機発光素子を提供する。
【解決手段】電子輸送性の高い有機材料(N型有機材料)の層と正孔輸送性の高い有機材料(P型有機材料)の層との間にイリジウム錯体等の有機発光材料の極めて薄い膜(単分子膜等)を設ける。上記の構成では、有機発光材料の層において、N型有機材料のLUMOから有機発光材料のLUMOに電子が、P型有機材料のHOMOから有機発光材料のHOMOに正孔が、それぞれ注入されることにより、有機発光材料が励起状態となり、発光する。
【解決手段】電子輸送性の高い有機材料(N型有機材料)の層と正孔輸送性の高い有機材料(P型有機材料)の層との間にイリジウム錯体等の有機発光材料の極めて薄い膜(単分子膜等)を設ける。上記の構成では、有機発光材料の層において、N型有機材料のLUMOから有機発光材料のLUMOに電子が、P型有機材料のHOMOから有機発光材料のHOMOに正孔が、それぞれ注入されることにより、有機発光材料が励起状態となり、発光する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア注入型の有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリア注入型の有機ELの発光現象を応用した製品が実用化されつつある(例えば、特許文献1参照)。通常、発光材料の取りうる励起状態は、一重項励起状態と三重項励起状態の2種類あり、前者は確率論的に後者の3分の1程度であると考えられている。
【0003】
発光材料の基底状態は一重項状態であり、通常の有機分子では、一重項励起状態から基底状態への遷移は可能であるが、三重項励起状態から基底状態への遷移は禁制である。すなわち、一重項励起状態が基底状態へ遷移することで発光することはできるが、多くの場合、三重項励起状態が発光して基底状態へ遷移することはなく、さまざまな準位を経過して基底状態へ到達する。その経過において、エネルギーは熱として放出される。このような現象を熱失活という。
【0004】
上述の通り、一重項励起状態となる確率は三重項励起状態となる確率の3分の1であるので、発光材料に注入されたエネルギーの多くが熱として失われるため効率が悪く、また、多くの発熱を伴うため有機材料の劣化の原因ともなる。
【0005】
このような問題を解決するため、発光材料の中に、重金属(特にイリジウム)を有する有機金属錯体を5重量%程度添加することで、発光効率を高める技術が開発された(非特許文献1参照)。この技術においては、主成分をホスト、添加する有機発光材料をゲスト(あるいはドーパント)と呼ぶ。この技術では、図2(A)に示すように、発光層にはホスト202中に有機発光材料分子201が均等にドーピングされている。
【0006】
なお、有機発光材料の濃度を10重量%以上とすると、1つの有機発光材料分子の発光が、他の有機発光材料分子に吸収され、結果として、発光効率の低下につながる(これを濃度消光という)ため、有機発光材料の濃度を10重量%以上とすることを避けることが必要とされる。
【0007】
この技術においては、三重項励起状態にあるホスト分子は、その状態を有機発光材料分子に移すことにより、基底状態に戻り、有機発光材料分子は逆にホストから励起状態を受け継いで、三重項励起状態となる。有機発光材料分子は、スピン軌道相互作用により発光して三重項励起状態から基底状態となることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公開2011/0001146号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】M.A.Baldo, S.Lamansky, P.E.Burrrows, M.E.Thompson, S.R.Forrest, ”Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl.Phys.Lett., 75 (1999) p.4.
【非特許文献2】Shengyi Yang, Xiulong Zhang, Yanbing Hou, Zhenbo Deng, and Xurong Xu ”Charge carriers at organic heterojunction interface: Exciplex emission or electroplex emission?”, J. Appl. Phys. , 101, (2007) 096101.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ホストとなる物質は電子あるいは正孔のいずれか一方の輸送性は高いものの、他方の輸送性は劣ることが通常であり、そのため、発光層の中において、発光が生じる部分は、輸送性の低いキャリアが注入される電極に近い領域で生じると想定される。そのため、本来、得られるべき効率より低い効率でしか得られていないものと考えられる。
【0011】
例えば、あるホストが電子輸送性に優れた材料である場合、相対的にそのホストの正孔輸送性は劣るため、そのようなホストを有する発光層においては、図2(B)に示すように、正孔と電子の再結合およびそれに伴う発光は、もっぱら正極側で生じることとなる。一方、発光層の中央より負極側では、発光がほとんど起こらないと想定される。
【0012】
すなわち、この発光層においては、電子(あるいはアニオン)は負極から発光のおこる領域にかけての発光層の多くの部分で比較的多い状態を維持する。正極近傍では発光により消費されるため電子の数が低下する。一方、正孔の移動度が低いため正孔(あるいはカチオン)が存在するのは正極近傍に偏ることとなる。
【0013】
有機発光材料分子は発光層に均等にドーピングされているが、上記のように発光が偏った部分で起こると、発光が起こらない部分の有機発光材料分子は全く使用されず、一方で発光が起こる部分の有機発光材料分子は常に励起と発光を繰り返すこととなり、発光が起こる部分では有機発光材料分子が不足するという事態ともなる。そのため、有機発光材料分子に状態を移行できないまま熱失活して基底状態へ戻るホスト分子も多くなる。このようなホスト分子は発光効率の低下の要因となる。
【0014】
有機発光材料が励起状態となるには、直接再結合過程かエネルギー移動過程を経る必要がある。エネルギー移動過程には、フェルスター機構とデクスター機構という2つの過程が存在するとされるが、いずれも、有機発光材料の三重項励起状態と基底状態のエネルギー差とホストの三重項励起状態と基底状態のエネルギー差の差が小さい方がエネルギー移動の効率がよいとされる。
【0015】
なお、エネルギー移動には一定の時間が必要であるため、例えば、ホストの一重項励起状態のように寿命の短い励起状態からは、十分に有機発光材料にエネルギー移動できていない可能性がある。
【0016】
このように有機発光材料の三重項励起状態と基底状態のエネルギー差とホストの三重項励起状態と基底状態のエネルギー差の差が小さいということは、有機発光材料が三重項励起状態となった後に、ホストにその状態が戻される場合が多い、ということでもある。その例を図2(C)を用いて説明する。図において、S0_hはホストの基底状態の、T1_hはホストの三重項励起状態の、S1_hはホストの一重項励起状態の、S0_gは有機発光材料の基底状態の、T1_gは有機発光材料の三重項励起状態の、S1_gは有機発光材料の一重項励起状態の、それぞれエネルギー準位を示す。
【0017】
ホストの一重項励起状態と三重項励起状態は有機発光材料の三重項励起状態に移され、これが、有機発光材料の基底状態に戻ることにより発光する。通常、ホストの三重項励起状態のエネルギー準位は有機発光材料の三重項励起状態のエネルギー準位よりも高くなるようにする。これは、有機発光材料の三重項励起状態からホストの三重項励起状態に遷移することを防止するためである。したがって、これのエネルギー準位の差が大きいほどこの目的には好ましい。
【0018】
もし、有機発光材料の三重項励起状態とホストの三重項励起状態のエネルギー準位がほとんど変わらなければ、熱的な励起によって有機発光材料の三重項励起状態がホストに遷移することもある。もちろん、この結果、ホストの三重項励起状態は熱失活して基底状態に戻る(この現象をクエンチという)。
【0019】
ただし、ホストの三重項励起状態のエネルギー準位を有機発光材料の三重項励起状態のエネルギー準位よりも過剰に高くすると、エネルギー移動の面で損失が生じる。逆に、ホストの三重項励起状態のエネルギー準位を有機発光材料の三重項励起状態のエネルギー準位と等しくすると、クエンチによって損失が生じる。このように、従来の発光機構では、十分に特性を引き出せていないおそれがある。
【0020】
発光層の厚さはせいぜい100nmと薄く、以上の事実を確認することは技術的に困難であるため、いまだにその問題すら知られていないともいえる。しかし、本発明者はそのような問題があり、それらの問題を解決できれば、これまで得られているより高い効率の発光を実現させることができると考えた。すなわち、本発明は上記のような問題点を根本的に解決する理論を提供し、その理論に基づいた新しいEL発光素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上記のような、ある程度の空間的な拡がりの中で発光する方法に代え、界面での発光を用いることにより、上記の課題を解決する。すなわち、本発明の一態様は、電子輸送性が正孔輸送性より高い有機材料(N型有機材料)の層と、正孔輸送性が電子輸送性より高い有機材料(P型有機材料)の層と、N型有機材料の層とP型有機材料の層に接する有機発光材料分子を有する層とを有し、有機発光材料分子を有する層の厚さ方向の分子(有機発光材料分子を含む)の数が1乃至5の有機発光層である。
【0022】
また、本発明の他の一態様は、N型有機材料の層と、P型有機材料の層と、N型有機材料の層とP型有機材料の層に接する厚さが1nm乃至10nmの有機発光材料分子を有する層とを有する有機発光層である。ここで、有機発光材料分子を有する層には、N型有機材料とP型有機材料の分子が含まれていてもよい。また、有機発光材料の分子の濃度は10重量%乃至50重量%、好ましくは、20重量%乃至50重量%とするとよい。有機発光材料分子を有する層は有機発光材料の濃度が従来の発光層のゲストの濃度よりも高く、かつ、薄いため、実質的には有機発光材料分子の膜として扱える。
【0023】
上記において、N型有機材料やP型有機材料、有機発光材料に用いる材料は、特許文献1に記載されている材料の中から選択されてもよい。もちろん、それ以外の材料も用いることが可能であり、既知の材料に限らない。有機発光材料は有機金属錯体であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の他の一態様は、上記発光層を有する発光素子である。左記発光素子は、2つ以上の上記発光層を有してもよい。また、2つ以上の上記発光層を有する場合には、それぞれの発光層の発する光の発光スペクトルは異なってもよい。
【0025】
また、本発明の他の一態様は、上記発光層と上記発光層とは異なる発光機構により発光する発光層を有する発光素子である。左記発光素子は、2つ以上の上記発光層を有してもよい。また、2つ以上の上記発光層を有する場合には、それぞれの発光層の発する光の発光スペクトルは異なってもよい。また、左記発光素子は、2つ以上の上記発光層とは異なる発光機構により発光する発光層を有してもよい。また、2つ以上の上記発光層とは異なる発光機構により発光する発光層を有する場合には、それぞれの発光層の発する光の発光スペクトルは異なってもよい。
【0026】
また、上記発光素子には、他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電子リレー層、中間層等を有してもよい。また、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電子リレー層、中間層を構成する材料は、例えば、特許文献1記載の材料を適宜用いればよい。もちろん、それ以外の材料も用いることが可能であり、既知の材料に限らない。
【0027】
また、本発明の他の一態様は、上記の発光層を有するパッシブマトリクス型表示装置、アクティブマトリクス型表示装置、照明装置である。パッシブマトリクス型表示装置、アクティブマトリクス型表示装置、照明装置の詳細については、特許文献1を参照できる。
【0028】
図1に本発明の概念図のいくつかを示す。図1(A)に示されるのは、N型有機材料の層102とP型有機材料の層103が有機発光材料分子101(G)を挟んだ発光層104の構造を示す。図1(B)はN型有機材料の層102とP型有機材料の層103の間に有機発光材料分子を有する層105を有する発光層104を示す。有機発光材料分子を有する層105の厚さは1nm乃至10nmとする。
【0029】
さらに、図1(C)は、図1(A)あるいは図1(B)に示される発光層104が正極106および負極107に挟まれた表示素子を示し、図1(D)は、それらに加えて、正孔注入層108、正孔輸送層109、電子注入層110、電子輸送層111を有する表示素子を示す。
【発明の効果】
【0030】
従来にも異種の有機半導体の界面での発光現象は観測されている。この際、エキサイプレックスあるいはエレクトロプレックスという励起錯体による発光が観測される(例えば、非特許文献2)。一般に、N型有機材料のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)とP型有機材料のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)が、このような励起錯体の、それぞれLUMOとHOMOとなり、そのエネルギー差の発光を生じる。
【0031】
すなわち、N型有機材料の層を移動してきた電子とP型有機材料の層を移動してきた正孔は、N型有機材料の層とP型有機材料の層の界面のN型有機材料分子とP型有機材料分子の双方あるいはいずれか一方に注入され、この界面のN型有機材料分子とP型有機材料分子が励起錯体を形成する。ただし、この場合、発光は一重項励起状態から基底状態へのものだけが許容され、三重項励起状態からの発光はないので、量子効率が悪い。
【0032】
これに対し、本発明の一態様では、N型有機材料の層とP型有機材料の層の界面に三重項励起状態から基底状態への遷移に伴う発光(燐光)を発することのできる1分子乃至5分子の厚さの有機発光材料分子を有する層を設けることにより、量子効率を高めることができる。
【0033】
上記の構造では、N型有機材料とP型有機材料が隔離されるので、両者の間のエキサイプレックスの生成確率が低下し、N型有機材料の層を移動してきた電子およびP型有機材料の層を移動してきた正孔は、いずれも有機発光材料分子に注入され、有機発光材料分子は一重項励起状態あるいは三重項励起状態となる。
【0034】
このような現象は直接再結合過程の一種であるが、特にN型有機材料およびP型有機材料から有機発光材料に直接、キャリアが注入される現象を、Guest Coupled with Complementary Hosts(GCCH)という。
【0035】
また、従来の発光機構の多くの部分を占めるエネルギー移動過程がほとんど存在しないことも特徴の一つである。上述のようにエネルギー移動過程においては、励起したN型有機材料あるいはP型有機材料のエネルギーの一定の比率が熱失活となるため、エネルギー移動過程によるゲストの励起は少ない方がよい。
【0036】
また、仮に、何らかの理由でN型有機材料分子とP型有機材料分子の間にエキサイプレックスが生成したとしても、近接して存在する有機発光材料分子の作用により、その励起状態は有機発光材料分子に移され、高い量子効率で発光することができる。
【0037】
本発明の一態様では、N型有機材料の層とP型有機材料の層との間に設けられる有機発光材料分子を有する層の有機発光材料の濃度が従来の発光素子の発光層の有機発光材料の濃度よりも高いことが特徴であるため、エキサイプレックスの励起状態は速やかに有機発光材料分子に移される。
【0038】
なお、例えば、先に正孔が有機発光材料分子に注入された場合、その有機発光材料分子は正の電気を帯びる(カチオンとなる)こととなるので、N型有機材料を移動する電子を引き寄せることとなる。これは、有機発光材料分子の励起状態のポテンシャルが低下することをも意味する。この場合、正孔の注入された有機発光材料分子(カチオン)と隣接する電子を有するN型有機材料分子(アニオン)の間で、励起錯体が形成されることがある。この励起錯体が基底状態に戻る過程で、有機発光材料分子の励起状態から基底状態のエネルギー差の発光を生じる。同様な理由で有機発光材料分子とP型有機材料分子の間で励起錯体が形成されることもある。
【0039】
なお、励起状態の有機発光材料分子が基底状態となるには、数μ秒以上の時間が必要であり、もし、従来の発光原理のようにホスト中に有機発光材料分子が分散された構造であると、ある有機発光材料分子が励起状態にある間に、その近辺に電子と正孔が注入されると、ホスト分子を励起状態とし、そのいくらかは有機発光材料分子が基底状態となる前に熱失活してしまう。
【0040】
このような現象は、発光層に過剰な電圧が印加され、過剰な電流が流れる場合に観測される。この場合、通常以上に、ホストが励起され、熱失活することにより、ホストの劣化を招く。
【0041】
しかし、上記のように、有機発光材料分子を有する層でN型有機材料とP型有機材料が分離された構成では、その間の有機発光材料分子が励起状態であっても、N型有機材料の電子がP型有機材料に注入される確率やP型有機材料の正孔がN型有機材料に注入される確率は非常に少ない。このため、熱失活の確率が低下し、量子効率を改善できる。
【0042】
なお、この状態では、N型有機材料の層(負極側)に電子が、P型有機材料の層(正極側)に正孔が滞留する状態であり、それらが外部電圧のいくらかを相殺し、有機発光材料に注入される電流を自動的に制御する構成となる。すなわち、有機発光材料やN型有機材料、P型有機材料に過剰な電流が注入され、それらが劣化することを防止できる。
【0043】
さらに、本発明の一態様では、N型有機材料からは電子が有機発光材料のLUMOに注入され、P型有機材料からは正孔が有機発光材料のHOMOに注入されるが、後述するように、N型有機材料(あるいはP型有機材料)の三重項励起状態のエネルギー準位と有機発光材料の三重項励起状態のエネルギー準位との差を大きくしても、エネルギーの損失にはつながらない。
【0044】
そのため、N型有機材料の三重項励起状態のエネルギー準位と有機発光材料の三重項励起状態のエネルギー準位との差を十分に大きくできる。すなわち、有機発光材料の三重項励起状態がN型有機材料の三重項励起状態に遷移する確率は極めて小さくできる。有機発光材料の三重項励起状態とP型有機材料の三重項励起状態の間においても同様である。
【0045】
なお、従来の構造の発光素子では、電子や正孔を閉じ込める目的から、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等を設けているが、本発明の一態様では、それらの1つあるいは複数を設けなくてもよい。そのため、これらの層を形成する工程を省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のさまざまな態様の例を説明する図。
【図2】従来の発光機構の様子を説明する図。
【図3】実施の形態1を説明する図。
【図4】実施の形態2を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0048】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様で使用できるN型有機材料、P型有機材料、有機発光材料の例を示す。N型有機材料の例として、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)の構造式を図3(A)に示す。
【0049】
一般に、ベンゼン環のような6員環芳香環の構成原子に、窒素原子のような炭素よりも電気陰性度が大きい原子(ヘテロ原子)を導入するとヘテロ原子に環上のπ電子が引きつけられ、芳香環は電子不足となりやすい。そのため、この部分で電子をトラップしやすい。一般に6員環のヘテロ芳香族化合物はN型有機材料となりやすい。
【0050】
なお、2mDBTPDBq−IIのLUMO準位は−2.78電子ボルト、HOMO準位は−5.88電子ボルト、三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は2.54電子ボルトである。
【0051】
P型有機材料の例として、4、4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)の構造式を図3(B)に示す。一般に、窒素原子が、ベンゼン環のような芳香環の外側にあって環と結合すると、窒素原子の非共有電子対がベンゼン環に供与されて電子過剰となり電子を放出しやすくなる(すなわち、正孔をトラップしやすくなる)。図において点線で囲まれた部分Bはπ電子が過剰となっている部位を示し、この部分で電子を放出(正孔をトラップ)しやすい。一般に芳香族アミン化合物はP型有機材料となりやすい。
【0052】
なお、PCBNBBのLUMO準位は−2.31電子ボルト、HOMO準位は−5.46電子ボルト、三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は2.40電子ボルトである。
【0053】
有機発光材料の例として、(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])の構造式を図3(C)に示す。一般にイリジウム錯体は、MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)励起状態という励起状態を形成する。これは、金属原子の軌道上にある電子が、配位子の軌道上に励起される状態であり、HOMOが金属原子付近に、LUMOが配位子付近に存在することを意味する。
【0054】
なお、[Ir(dppm)2(acac)]のLUMO準位は−2.98電子ボルト、HOMO準位は−5.56電子ボルト、三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は2.22電子ボルトである。
【0055】
図3(C)に示すように電子は点線で囲まれた部分Cに示される配位子にトラップされ、正孔は点線に囲まれた部分Dに示される金属原子から配位子にかけての領域でトラップされる。
【0056】
なお、有機発光材料には、他にビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)2(dpm)])、ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(acac)])等を用いてもよい。
【0057】
[Ir(mppr−Me)2(dpm)]のLUMO準位は−2.77電子ボルト、HOMO準位は−5.50電子ボルト、三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は2.24電子ボルトである。[Ir(tppr)2(dpm)]のLUMO準位は−2.28電子ボルト、HOMO準位は−5.28電子ボルト、三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は1.92電子ボルトである。
【0058】
また、N型有機材料としては、例えば、上述の2mDBTPDBq−II以外にも、2−[4−(3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq−III)、7−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq−II)、及び、6−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq−II)、4,4’,4’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P−II)のような電子を受け取りやすい化合物のうちいずれか一を用いればよい。
【0059】
またP型有機材料としては、上述のPCBNBB以外にも、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)、及び、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、9−フェニル−9H−3−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)カルバゾール(略称:PCCP)のような正孔を受け取りやすい化合物を用いればよい。
【0060】
上記の材料を用いて、図1(A)あるいは図1(B)に示される、N型有機材料の層102、P型有機材料の層103、有機発光材料分子101あるいは有機発光材料分子を有する層105等を構成できる。なお、これらを構成するN型有機材料、P型有機材料、有機発光材料の組み合わせは、実施の形態2で説明するように、HOMO準位、LUMO準位等を考慮することで、発光効率を高めることができる。
【0061】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光機構について図4を用いて説明する。図4(A)には、負極および正極から注入された電子と正孔が発光層にあるN型有機材料の層102とP型有機材料の層103を伝導しつつ、有機発光材料の単分子膜(有機発光材料分子101)に接近しつつある様子を示している。ここで、N型有機材料の層102を構成する分子のうち左の分子はアニオンであり、また、P型有機材料の層103を構成する分子のうち右の分子はカチオンである。
【0062】
なお、N型有機材料のLUMO準位En[電子ボルト]と有機発光材料のLUMO準位Ea[電子ボルト]の間には、En−0.5<Ea<En+0.5の関係があることが好ましい。また、P型有機材料のHOMO準位Ep[電子ボルト]と有機発光材料のHOMO準位Eb[電子ボルト]の間には、Ep−0.5<Eb<Ep+0.5の関係があることが好ましい。なお、Ea>Ebである。図4(A)及び図4(B)では、Ea=En、Eb=Epである。
【0063】
また、N型有機材料のHOMO準位とLUMO準位の間のエネルギー差は、有機発光材料のHOMO準位とLUMO準位の間のエネルギー差より0.5電子ボルト以上大きいことが好ましい。同じく、P型有機材料のHOMO準位とLUMO準位の間のエネルギー差は、有機発光材料のHOMO準位とLUMO準位の間のエネルギー差より0.5電子ボルト以上大きいことが好ましい。
【0064】
このような条件では、N型有機材料およびP型有機材料の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は、有機発光材料の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差より大きくなる。
【0065】
図4(B)には、N型有機材料の層102を伝導した電子とP型有機材料の層103を伝導した正孔が、それぞれ、有機発光材料分子のLUMOとHOMOに注入された様子を示している。このようにして、有機発光材料分子は三重項励起状態(励起子となり、発光する。
【0066】
ここで、注目すべきは、有機発光材料の三重項励起状態のエネルギー準位は、N型有機材料、P型有機材料のエネルギー準位よりも十分に低いため、有機発光材料の三重項励起状態がN型有機材料もしくはP型有機材料に遷移することはほとんどないということである。そのことを図4(C)を用いて説明する。
【0067】
図4(C)において、S0_hはN型あるいはP型有機材料の基底状態の、T1_hはN型あるいはP型有機材料の三重項励起状態の、S1_hはN型あるいはP型有機材料の一重項励起状態の、S0_gは有機発光材料の基底状態の、T1_gは有機発光材料の三重項励起状態の、S1_gは有機発光材料の一重項励起状態の、それぞれエネルギーレベルを示す。
【0068】
有機発光材料が三重項励起状態となる過程においては、直接再結合過程(GCCH)がほとんどであり、N型有機材料あるいはP型有機材料の励起状態は関与せず、したがって、N型有機材料あるいはP型有機材料から有機発光材料へのエネルギー移動過程を考慮する必要が無い。そのため有機発光材料を励起させる効率が高い。
【0069】
また、エネルギー移動過程を考慮する必要が無いので、有機発光材料の三重項励起状態とN型有機材料(あるいはP型有機材料)の三重項励起状態とのエネルギー準位の差を大きくすることも可能である。このため、有機発光材料分子が三重項励起状態となった後においても、有機発光材料分子の三重項励起状態がN型(あるいはP型)有機材料分子の三重項励起状態に遷移する確率は極めて小さく、この面でも効率を高めるうえで好ましい。
【符号の説明】
【0070】
101 有機発光材料分子
102 N型有機材料の層
103 P型有機材料の層
104 発光層
105 有機発光材料分子を有する層
106 正極
107 負極
108 正孔注入層
109 正孔輸送層
110 電子注入層
111 電子輸送層
201 有機発光材料分子
202 ホスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア注入型の有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリア注入型の有機ELの発光現象を応用した製品が実用化されつつある(例えば、特許文献1参照)。通常、発光材料の取りうる励起状態は、一重項励起状態と三重項励起状態の2種類あり、前者は確率論的に後者の3分の1程度であると考えられている。
【0003】
発光材料の基底状態は一重項状態であり、通常の有機分子では、一重項励起状態から基底状態への遷移は可能であるが、三重項励起状態から基底状態への遷移は禁制である。すなわち、一重項励起状態が基底状態へ遷移することで発光することはできるが、多くの場合、三重項励起状態が発光して基底状態へ遷移することはなく、さまざまな準位を経過して基底状態へ到達する。その経過において、エネルギーは熱として放出される。このような現象を熱失活という。
【0004】
上述の通り、一重項励起状態となる確率は三重項励起状態となる確率の3分の1であるので、発光材料に注入されたエネルギーの多くが熱として失われるため効率が悪く、また、多くの発熱を伴うため有機材料の劣化の原因ともなる。
【0005】
このような問題を解決するため、発光材料の中に、重金属(特にイリジウム)を有する有機金属錯体を5重量%程度添加することで、発光効率を高める技術が開発された(非特許文献1参照)。この技術においては、主成分をホスト、添加する有機発光材料をゲスト(あるいはドーパント)と呼ぶ。この技術では、図2(A)に示すように、発光層にはホスト202中に有機発光材料分子201が均等にドーピングされている。
【0006】
なお、有機発光材料の濃度を10重量%以上とすると、1つの有機発光材料分子の発光が、他の有機発光材料分子に吸収され、結果として、発光効率の低下につながる(これを濃度消光という)ため、有機発光材料の濃度を10重量%以上とすることを避けることが必要とされる。
【0007】
この技術においては、三重項励起状態にあるホスト分子は、その状態を有機発光材料分子に移すことにより、基底状態に戻り、有機発光材料分子は逆にホストから励起状態を受け継いで、三重項励起状態となる。有機発光材料分子は、スピン軌道相互作用により発光して三重項励起状態から基底状態となることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公開2011/0001146号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】M.A.Baldo, S.Lamansky, P.E.Burrrows, M.E.Thompson, S.R.Forrest, ”Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl.Phys.Lett., 75 (1999) p.4.
【非特許文献2】Shengyi Yang, Xiulong Zhang, Yanbing Hou, Zhenbo Deng, and Xurong Xu ”Charge carriers at organic heterojunction interface: Exciplex emission or electroplex emission?”, J. Appl. Phys. , 101, (2007) 096101.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ホストとなる物質は電子あるいは正孔のいずれか一方の輸送性は高いものの、他方の輸送性は劣ることが通常であり、そのため、発光層の中において、発光が生じる部分は、輸送性の低いキャリアが注入される電極に近い領域で生じると想定される。そのため、本来、得られるべき効率より低い効率でしか得られていないものと考えられる。
【0011】
例えば、あるホストが電子輸送性に優れた材料である場合、相対的にそのホストの正孔輸送性は劣るため、そのようなホストを有する発光層においては、図2(B)に示すように、正孔と電子の再結合およびそれに伴う発光は、もっぱら正極側で生じることとなる。一方、発光層の中央より負極側では、発光がほとんど起こらないと想定される。
【0012】
すなわち、この発光層においては、電子(あるいはアニオン)は負極から発光のおこる領域にかけての発光層の多くの部分で比較的多い状態を維持する。正極近傍では発光により消費されるため電子の数が低下する。一方、正孔の移動度が低いため正孔(あるいはカチオン)が存在するのは正極近傍に偏ることとなる。
【0013】
有機発光材料分子は発光層に均等にドーピングされているが、上記のように発光が偏った部分で起こると、発光が起こらない部分の有機発光材料分子は全く使用されず、一方で発光が起こる部分の有機発光材料分子は常に励起と発光を繰り返すこととなり、発光が起こる部分では有機発光材料分子が不足するという事態ともなる。そのため、有機発光材料分子に状態を移行できないまま熱失活して基底状態へ戻るホスト分子も多くなる。このようなホスト分子は発光効率の低下の要因となる。
【0014】
有機発光材料が励起状態となるには、直接再結合過程かエネルギー移動過程を経る必要がある。エネルギー移動過程には、フェルスター機構とデクスター機構という2つの過程が存在するとされるが、いずれも、有機発光材料の三重項励起状態と基底状態のエネルギー差とホストの三重項励起状態と基底状態のエネルギー差の差が小さい方がエネルギー移動の効率がよいとされる。
【0015】
なお、エネルギー移動には一定の時間が必要であるため、例えば、ホストの一重項励起状態のように寿命の短い励起状態からは、十分に有機発光材料にエネルギー移動できていない可能性がある。
【0016】
このように有機発光材料の三重項励起状態と基底状態のエネルギー差とホストの三重項励起状態と基底状態のエネルギー差の差が小さいということは、有機発光材料が三重項励起状態となった後に、ホストにその状態が戻される場合が多い、ということでもある。その例を図2(C)を用いて説明する。図において、S0_hはホストの基底状態の、T1_hはホストの三重項励起状態の、S1_hはホストの一重項励起状態の、S0_gは有機発光材料の基底状態の、T1_gは有機発光材料の三重項励起状態の、S1_gは有機発光材料の一重項励起状態の、それぞれエネルギー準位を示す。
【0017】
ホストの一重項励起状態と三重項励起状態は有機発光材料の三重項励起状態に移され、これが、有機発光材料の基底状態に戻ることにより発光する。通常、ホストの三重項励起状態のエネルギー準位は有機発光材料の三重項励起状態のエネルギー準位よりも高くなるようにする。これは、有機発光材料の三重項励起状態からホストの三重項励起状態に遷移することを防止するためである。したがって、これのエネルギー準位の差が大きいほどこの目的には好ましい。
【0018】
もし、有機発光材料の三重項励起状態とホストの三重項励起状態のエネルギー準位がほとんど変わらなければ、熱的な励起によって有機発光材料の三重項励起状態がホストに遷移することもある。もちろん、この結果、ホストの三重項励起状態は熱失活して基底状態に戻る(この現象をクエンチという)。
【0019】
ただし、ホストの三重項励起状態のエネルギー準位を有機発光材料の三重項励起状態のエネルギー準位よりも過剰に高くすると、エネルギー移動の面で損失が生じる。逆に、ホストの三重項励起状態のエネルギー準位を有機発光材料の三重項励起状態のエネルギー準位と等しくすると、クエンチによって損失が生じる。このように、従来の発光機構では、十分に特性を引き出せていないおそれがある。
【0020】
発光層の厚さはせいぜい100nmと薄く、以上の事実を確認することは技術的に困難であるため、いまだにその問題すら知られていないともいえる。しかし、本発明者はそのような問題があり、それらの問題を解決できれば、これまで得られているより高い効率の発光を実現させることができると考えた。すなわち、本発明は上記のような問題点を根本的に解決する理論を提供し、その理論に基づいた新しいEL発光素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上記のような、ある程度の空間的な拡がりの中で発光する方法に代え、界面での発光を用いることにより、上記の課題を解決する。すなわち、本発明の一態様は、電子輸送性が正孔輸送性より高い有機材料(N型有機材料)の層と、正孔輸送性が電子輸送性より高い有機材料(P型有機材料)の層と、N型有機材料の層とP型有機材料の層に接する有機発光材料分子を有する層とを有し、有機発光材料分子を有する層の厚さ方向の分子(有機発光材料分子を含む)の数が1乃至5の有機発光層である。
【0022】
また、本発明の他の一態様は、N型有機材料の層と、P型有機材料の層と、N型有機材料の層とP型有機材料の層に接する厚さが1nm乃至10nmの有機発光材料分子を有する層とを有する有機発光層である。ここで、有機発光材料分子を有する層には、N型有機材料とP型有機材料の分子が含まれていてもよい。また、有機発光材料の分子の濃度は10重量%乃至50重量%、好ましくは、20重量%乃至50重量%とするとよい。有機発光材料分子を有する層は有機発光材料の濃度が従来の発光層のゲストの濃度よりも高く、かつ、薄いため、実質的には有機発光材料分子の膜として扱える。
【0023】
上記において、N型有機材料やP型有機材料、有機発光材料に用いる材料は、特許文献1に記載されている材料の中から選択されてもよい。もちろん、それ以外の材料も用いることが可能であり、既知の材料に限らない。有機発光材料は有機金属錯体であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の他の一態様は、上記発光層を有する発光素子である。左記発光素子は、2つ以上の上記発光層を有してもよい。また、2つ以上の上記発光層を有する場合には、それぞれの発光層の発する光の発光スペクトルは異なってもよい。
【0025】
また、本発明の他の一態様は、上記発光層と上記発光層とは異なる発光機構により発光する発光層を有する発光素子である。左記発光素子は、2つ以上の上記発光層を有してもよい。また、2つ以上の上記発光層を有する場合には、それぞれの発光層の発する光の発光スペクトルは異なってもよい。また、左記発光素子は、2つ以上の上記発光層とは異なる発光機構により発光する発光層を有してもよい。また、2つ以上の上記発光層とは異なる発光機構により発光する発光層を有する場合には、それぞれの発光層の発する光の発光スペクトルは異なってもよい。
【0026】
また、上記発光素子には、他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電子リレー層、中間層等を有してもよい。また、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電子リレー層、中間層を構成する材料は、例えば、特許文献1記載の材料を適宜用いればよい。もちろん、それ以外の材料も用いることが可能であり、既知の材料に限らない。
【0027】
また、本発明の他の一態様は、上記の発光層を有するパッシブマトリクス型表示装置、アクティブマトリクス型表示装置、照明装置である。パッシブマトリクス型表示装置、アクティブマトリクス型表示装置、照明装置の詳細については、特許文献1を参照できる。
【0028】
図1に本発明の概念図のいくつかを示す。図1(A)に示されるのは、N型有機材料の層102とP型有機材料の層103が有機発光材料分子101(G)を挟んだ発光層104の構造を示す。図1(B)はN型有機材料の層102とP型有機材料の層103の間に有機発光材料分子を有する層105を有する発光層104を示す。有機発光材料分子を有する層105の厚さは1nm乃至10nmとする。
【0029】
さらに、図1(C)は、図1(A)あるいは図1(B)に示される発光層104が正極106および負極107に挟まれた表示素子を示し、図1(D)は、それらに加えて、正孔注入層108、正孔輸送層109、電子注入層110、電子輸送層111を有する表示素子を示す。
【発明の効果】
【0030】
従来にも異種の有機半導体の界面での発光現象は観測されている。この際、エキサイプレックスあるいはエレクトロプレックスという励起錯体による発光が観測される(例えば、非特許文献2)。一般に、N型有機材料のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)とP型有機材料のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)が、このような励起錯体の、それぞれLUMOとHOMOとなり、そのエネルギー差の発光を生じる。
【0031】
すなわち、N型有機材料の層を移動してきた電子とP型有機材料の層を移動してきた正孔は、N型有機材料の層とP型有機材料の層の界面のN型有機材料分子とP型有機材料分子の双方あるいはいずれか一方に注入され、この界面のN型有機材料分子とP型有機材料分子が励起錯体を形成する。ただし、この場合、発光は一重項励起状態から基底状態へのものだけが許容され、三重項励起状態からの発光はないので、量子効率が悪い。
【0032】
これに対し、本発明の一態様では、N型有機材料の層とP型有機材料の層の界面に三重項励起状態から基底状態への遷移に伴う発光(燐光)を発することのできる1分子乃至5分子の厚さの有機発光材料分子を有する層を設けることにより、量子効率を高めることができる。
【0033】
上記の構造では、N型有機材料とP型有機材料が隔離されるので、両者の間のエキサイプレックスの生成確率が低下し、N型有機材料の層を移動してきた電子およびP型有機材料の層を移動してきた正孔は、いずれも有機発光材料分子に注入され、有機発光材料分子は一重項励起状態あるいは三重項励起状態となる。
【0034】
このような現象は直接再結合過程の一種であるが、特にN型有機材料およびP型有機材料から有機発光材料に直接、キャリアが注入される現象を、Guest Coupled with Complementary Hosts(GCCH)という。
【0035】
また、従来の発光機構の多くの部分を占めるエネルギー移動過程がほとんど存在しないことも特徴の一つである。上述のようにエネルギー移動過程においては、励起したN型有機材料あるいはP型有機材料のエネルギーの一定の比率が熱失活となるため、エネルギー移動過程によるゲストの励起は少ない方がよい。
【0036】
また、仮に、何らかの理由でN型有機材料分子とP型有機材料分子の間にエキサイプレックスが生成したとしても、近接して存在する有機発光材料分子の作用により、その励起状態は有機発光材料分子に移され、高い量子効率で発光することができる。
【0037】
本発明の一態様では、N型有機材料の層とP型有機材料の層との間に設けられる有機発光材料分子を有する層の有機発光材料の濃度が従来の発光素子の発光層の有機発光材料の濃度よりも高いことが特徴であるため、エキサイプレックスの励起状態は速やかに有機発光材料分子に移される。
【0038】
なお、例えば、先に正孔が有機発光材料分子に注入された場合、その有機発光材料分子は正の電気を帯びる(カチオンとなる)こととなるので、N型有機材料を移動する電子を引き寄せることとなる。これは、有機発光材料分子の励起状態のポテンシャルが低下することをも意味する。この場合、正孔の注入された有機発光材料分子(カチオン)と隣接する電子を有するN型有機材料分子(アニオン)の間で、励起錯体が形成されることがある。この励起錯体が基底状態に戻る過程で、有機発光材料分子の励起状態から基底状態のエネルギー差の発光を生じる。同様な理由で有機発光材料分子とP型有機材料分子の間で励起錯体が形成されることもある。
【0039】
なお、励起状態の有機発光材料分子が基底状態となるには、数μ秒以上の時間が必要であり、もし、従来の発光原理のようにホスト中に有機発光材料分子が分散された構造であると、ある有機発光材料分子が励起状態にある間に、その近辺に電子と正孔が注入されると、ホスト分子を励起状態とし、そのいくらかは有機発光材料分子が基底状態となる前に熱失活してしまう。
【0040】
このような現象は、発光層に過剰な電圧が印加され、過剰な電流が流れる場合に観測される。この場合、通常以上に、ホストが励起され、熱失活することにより、ホストの劣化を招く。
【0041】
しかし、上記のように、有機発光材料分子を有する層でN型有機材料とP型有機材料が分離された構成では、その間の有機発光材料分子が励起状態であっても、N型有機材料の電子がP型有機材料に注入される確率やP型有機材料の正孔がN型有機材料に注入される確率は非常に少ない。このため、熱失活の確率が低下し、量子効率を改善できる。
【0042】
なお、この状態では、N型有機材料の層(負極側)に電子が、P型有機材料の層(正極側)に正孔が滞留する状態であり、それらが外部電圧のいくらかを相殺し、有機発光材料に注入される電流を自動的に制御する構成となる。すなわち、有機発光材料やN型有機材料、P型有機材料に過剰な電流が注入され、それらが劣化することを防止できる。
【0043】
さらに、本発明の一態様では、N型有機材料からは電子が有機発光材料のLUMOに注入され、P型有機材料からは正孔が有機発光材料のHOMOに注入されるが、後述するように、N型有機材料(あるいはP型有機材料)の三重項励起状態のエネルギー準位と有機発光材料の三重項励起状態のエネルギー準位との差を大きくしても、エネルギーの損失にはつながらない。
【0044】
そのため、N型有機材料の三重項励起状態のエネルギー準位と有機発光材料の三重項励起状態のエネルギー準位との差を十分に大きくできる。すなわち、有機発光材料の三重項励起状態がN型有機材料の三重項励起状態に遷移する確率は極めて小さくできる。有機発光材料の三重項励起状態とP型有機材料の三重項励起状態の間においても同様である。
【0045】
なお、従来の構造の発光素子では、電子や正孔を閉じ込める目的から、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等を設けているが、本発明の一態様では、それらの1つあるいは複数を設けなくてもよい。そのため、これらの層を形成する工程を省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のさまざまな態様の例を説明する図。
【図2】従来の発光機構の様子を説明する図。
【図3】実施の形態1を説明する図。
【図4】実施の形態2を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0048】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様で使用できるN型有機材料、P型有機材料、有機発光材料の例を示す。N型有機材料の例として、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)の構造式を図3(A)に示す。
【0049】
一般に、ベンゼン環のような6員環芳香環の構成原子に、窒素原子のような炭素よりも電気陰性度が大きい原子(ヘテロ原子)を導入するとヘテロ原子に環上のπ電子が引きつけられ、芳香環は電子不足となりやすい。そのため、この部分で電子をトラップしやすい。一般に6員環のヘテロ芳香族化合物はN型有機材料となりやすい。
【0050】
なお、2mDBTPDBq−IIのLUMO準位は−2.78電子ボルト、HOMO準位は−5.88電子ボルト、三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は2.54電子ボルトである。
【0051】
P型有機材料の例として、4、4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)の構造式を図3(B)に示す。一般に、窒素原子が、ベンゼン環のような芳香環の外側にあって環と結合すると、窒素原子の非共有電子対がベンゼン環に供与されて電子過剰となり電子を放出しやすくなる(すなわち、正孔をトラップしやすくなる)。図において点線で囲まれた部分Bはπ電子が過剰となっている部位を示し、この部分で電子を放出(正孔をトラップ)しやすい。一般に芳香族アミン化合物はP型有機材料となりやすい。
【0052】
なお、PCBNBBのLUMO準位は−2.31電子ボルト、HOMO準位は−5.46電子ボルト、三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は2.40電子ボルトである。
【0053】
有機発光材料の例として、(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])の構造式を図3(C)に示す。一般にイリジウム錯体は、MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)励起状態という励起状態を形成する。これは、金属原子の軌道上にある電子が、配位子の軌道上に励起される状態であり、HOMOが金属原子付近に、LUMOが配位子付近に存在することを意味する。
【0054】
なお、[Ir(dppm)2(acac)]のLUMO準位は−2.98電子ボルト、HOMO準位は−5.56電子ボルト、三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は2.22電子ボルトである。
【0055】
図3(C)に示すように電子は点線で囲まれた部分Cに示される配位子にトラップされ、正孔は点線に囲まれた部分Dに示される金属原子から配位子にかけての領域でトラップされる。
【0056】
なお、有機発光材料には、他にビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)2(dpm)])、ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(acac)])等を用いてもよい。
【0057】
[Ir(mppr−Me)2(dpm)]のLUMO準位は−2.77電子ボルト、HOMO準位は−5.50電子ボルト、三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は2.24電子ボルトである。[Ir(tppr)2(dpm)]のLUMO準位は−2.28電子ボルト、HOMO準位は−5.28電子ボルト、三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は1.92電子ボルトである。
【0058】
また、N型有機材料としては、例えば、上述の2mDBTPDBq−II以外にも、2−[4−(3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq−III)、7−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq−II)、及び、6−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq−II)、4,4’,4’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P−II)のような電子を受け取りやすい化合物のうちいずれか一を用いればよい。
【0059】
またP型有機材料としては、上述のPCBNBB以外にも、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)、及び、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、9−フェニル−9H−3−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)カルバゾール(略称:PCCP)のような正孔を受け取りやすい化合物を用いればよい。
【0060】
上記の材料を用いて、図1(A)あるいは図1(B)に示される、N型有機材料の層102、P型有機材料の層103、有機発光材料分子101あるいは有機発光材料分子を有する層105等を構成できる。なお、これらを構成するN型有機材料、P型有機材料、有機発光材料の組み合わせは、実施の形態2で説明するように、HOMO準位、LUMO準位等を考慮することで、発光効率を高めることができる。
【0061】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光機構について図4を用いて説明する。図4(A)には、負極および正極から注入された電子と正孔が発光層にあるN型有機材料の層102とP型有機材料の層103を伝導しつつ、有機発光材料の単分子膜(有機発光材料分子101)に接近しつつある様子を示している。ここで、N型有機材料の層102を構成する分子のうち左の分子はアニオンであり、また、P型有機材料の層103を構成する分子のうち右の分子はカチオンである。
【0062】
なお、N型有機材料のLUMO準位En[電子ボルト]と有機発光材料のLUMO準位Ea[電子ボルト]の間には、En−0.5<Ea<En+0.5の関係があることが好ましい。また、P型有機材料のHOMO準位Ep[電子ボルト]と有機発光材料のHOMO準位Eb[電子ボルト]の間には、Ep−0.5<Eb<Ep+0.5の関係があることが好ましい。なお、Ea>Ebである。図4(A)及び図4(B)では、Ea=En、Eb=Epである。
【0063】
また、N型有機材料のHOMO準位とLUMO準位の間のエネルギー差は、有機発光材料のHOMO準位とLUMO準位の間のエネルギー差より0.5電子ボルト以上大きいことが好ましい。同じく、P型有機材料のHOMO準位とLUMO準位の間のエネルギー差は、有機発光材料のHOMO準位とLUMO準位の間のエネルギー差より0.5電子ボルト以上大きいことが好ましい。
【0064】
このような条件では、N型有機材料およびP型有機材料の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は、有機発光材料の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差より大きくなる。
【0065】
図4(B)には、N型有機材料の層102を伝導した電子とP型有機材料の層103を伝導した正孔が、それぞれ、有機発光材料分子のLUMOとHOMOに注入された様子を示している。このようにして、有機発光材料分子は三重項励起状態(励起子となり、発光する。
【0066】
ここで、注目すべきは、有機発光材料の三重項励起状態のエネルギー準位は、N型有機材料、P型有機材料のエネルギー準位よりも十分に低いため、有機発光材料の三重項励起状態がN型有機材料もしくはP型有機材料に遷移することはほとんどないということである。そのことを図4(C)を用いて説明する。
【0067】
図4(C)において、S0_hはN型あるいはP型有機材料の基底状態の、T1_hはN型あるいはP型有機材料の三重項励起状態の、S1_hはN型あるいはP型有機材料の一重項励起状態の、S0_gは有機発光材料の基底状態の、T1_gは有機発光材料の三重項励起状態の、S1_gは有機発光材料の一重項励起状態の、それぞれエネルギーレベルを示す。
【0068】
有機発光材料が三重項励起状態となる過程においては、直接再結合過程(GCCH)がほとんどであり、N型有機材料あるいはP型有機材料の励起状態は関与せず、したがって、N型有機材料あるいはP型有機材料から有機発光材料へのエネルギー移動過程を考慮する必要が無い。そのため有機発光材料を励起させる効率が高い。
【0069】
また、エネルギー移動過程を考慮する必要が無いので、有機発光材料の三重項励起状態とN型有機材料(あるいはP型有機材料)の三重項励起状態とのエネルギー準位の差を大きくすることも可能である。このため、有機発光材料分子が三重項励起状態となった後においても、有機発光材料分子の三重項励起状態がN型(あるいはP型)有機材料分子の三重項励起状態に遷移する確率は極めて小さく、この面でも効率を高めるうえで好ましい。
【符号の説明】
【0070】
101 有機発光材料分子
102 N型有機材料の層
103 P型有機材料の層
104 発光層
105 有機発光材料分子を有する層
106 正極
107 負極
108 正孔注入層
109 正孔輸送層
110 電子注入層
111 電子輸送層
201 有機発光材料分子
202 ホスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N型有機材料の層と、P型有機材料の層と、前記N型有機材料の層と前記P型有機材料の層に接する厚さ方向の分子の数が1乃至5の有機発光材料分子を有する層とを有する有機発光層。
【請求項2】
N型有機材料の層と、P型有機材料の層と、前記N型有機材料の層と前記P型有機材料の層に接する有機発光材料分子を10重量%乃至50重量%有する厚さが1nm乃至10nmの層とを有する有機発光層。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2において、有機発光材料分子はイリジウムを含む有機金属錯体であることを特徴とする有機発光層。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の有機発光層を有する発光素子。
【請求項5】
請求項4において、二以上の発光層を有することを特徴とする発光素子。
【請求項6】
請求項5において、一の発光層の発する光の発光スペクトルが他の発光層の発する光の発光スペクトルと異なることを特徴とする発光素子。
【請求項7】
正極と、負極と、N型有機材料の層と、P型有機材料の層と、前記N型有機材料の層と前記P型有機材料の層に接する厚さ方向の分子の数が1乃至5の有機発光材料分子を有する層とを有し、前記N型有機材料の層は、前記有機発光材料分子を有する層と負極に挟まれ、前記P型有機材料の層は、前記有機発光材料分子を有する層と正極に挟まれていることを特徴とする発光素子。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれか一において、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電子リレー層、中間層の少なくとも1つを有する発光素子。
【請求項1】
N型有機材料の層と、P型有機材料の層と、前記N型有機材料の層と前記P型有機材料の層に接する厚さ方向の分子の数が1乃至5の有機発光材料分子を有する層とを有する有機発光層。
【請求項2】
N型有機材料の層と、P型有機材料の層と、前記N型有機材料の層と前記P型有機材料の層に接する有機発光材料分子を10重量%乃至50重量%有する厚さが1nm乃至10nmの層とを有する有機発光層。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2において、有機発光材料分子はイリジウムを含む有機金属錯体であることを特徴とする有機発光層。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の有機発光層を有する発光素子。
【請求項5】
請求項4において、二以上の発光層を有することを特徴とする発光素子。
【請求項6】
請求項5において、一の発光層の発する光の発光スペクトルが他の発光層の発する光の発光スペクトルと異なることを特徴とする発光素子。
【請求項7】
正極と、負極と、N型有機材料の層と、P型有機材料の層と、前記N型有機材料の層と前記P型有機材料の層に接する厚さ方向の分子の数が1乃至5の有機発光材料分子を有する層とを有し、前記N型有機材料の層は、前記有機発光材料分子を有する層と負極に挟まれ、前記P型有機材料の層は、前記有機発光材料分子を有する層と正極に挟まれていることを特徴とする発光素子。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれか一において、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電子リレー層、中間層の少なくとも1つを有する発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−195572(P2012−195572A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39502(P2012−39502)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
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