説明

発光有機部品、幾つかの発光有機部品を有するアレイ、および電極構造

本発明は、電極および対向電極、並びに、上記電極と上記対向電極との間に配置された有機領域を備える発光有機部品、特に発光有機ダイオードに関する。上記有機領域は、その平坦な伸長部分にわたって均一な材料組成で、上記電極と上記対向電極との間に形成され、上記電極は、互いに電気的に短絡された櫛形サブ電極によって形成され、上記櫛形サブ電極は、各櫛形電極接続区域から突出している複数の櫛形電極区域が、少なくとも上記有機領域との重複領域において、互いに噛み合いながら配置されている。さらに、本発明は、幾つかの発光有機部品の直列接続を有するアレイと、電子部品のための電極構造とに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、発光有機部品、幾つかの発光有機部品を有するアレイ、および電極構造に関する。
【0002】
発明の背景
近年、有色光、特に白色光を放射する有機発光ダイオード(OLED)の形の発光有機部品が、益々関心を集めるようになってきた。有機発光部品の技術は、照明技術の分野における用途に大きな潜在的可能性を有していることが、一般的に知られている。現時点で、有機発光ダイオードは、従来の電球の範囲の能力効率まで達している(Forrest et al., Adv. Mat. 7(2004), 624を参照)。
【0003】
通常、有機発光ダイオードは、基板上に配置された層構造によって形成される。この層構造内では、電極と対向電極との間に、有機層アレイが配置されており、電位が、電極および対向電極を介して、有機層アレイに供給され得る。この有機層アレイは、有機材料から構成されており、発光領域を含む。この発光領域の内部では、電位が電極および対向電極に印加されると、電荷キャリア、すなわち電子およびホールが再結合し、有機層アレイの中に注入され、そこで、発光領域に輸送される。電気的にドープされた層を有機層アレイに組み入れることによって、光生成時の効率を大幅に増大させることを実現可能である。
【0004】
有機発光部品は、幅広い種類の用途領域において、任意の色の光を生成するために用いられ得る。この用途領域には、特に、ディスプレイ装置、照明装置、および信号装置が含まれる。
【0005】
一実施形態では、白色光を放射するように、有機発光部品を設計可能である。このような部品は、現在市場で優勢である、例えば白色灯、ハロゲンランプ、低電圧蛍光灯などといった照明技術に対する、重要な代替物になる可能性を有している。
【0006】
けれども、有機発光部品の技術を商業化することを成功させるには、依然として、重要な技術的課題を解決する必要がある。具体的には、一般的な照明用途に必要とされる大量の光量を、OLED部品によって生成することが課題の1つである。1つのOLED部品によって放射される光量は、2つの要因によって決定される。これらの要因とは、部品の発光区域の光度、および、発光面積の寸法である。有機発光部品の光度は、自在に増大させることはできない。さらに、光度は、有機部品の耐用年数にも実質的に影響する。OLED部品の光度が、例えば2倍になると、その耐用年数は、2〜4分の1に短縮される。ここで、耐用年数とは、OLED部品の初期光度が、一定の電流で動作している間に、その半分の値に低下するまでの時間と定義される。
【0007】
照明用途のためのOLED部品の発光面積は、放射される所望の光量に応じて選択されなければならない。発光面積を、数平方センチメートルから1平方メートルよりも大きな寸法までの範囲内にあるようにする必要がある。
【0008】
電気部品として、OLED部品は、典型的には約2V〜約20Vの範囲の低電圧で動作される。OLED部品中を流れる電流は、発光面積によって決定される。OLED部品が約100cmの比較的小さな発光面積である場合、50cd/Aの推定電流効率および5000cd/mの用途光度に、既に、1Aの電流が必要とされることになる。
【0009】
しかし、有機発光部品にこのような電流を供給するには、重大な技術的課題がある。この課題を解決するには、商業用の照明用途では、どうしても費用効率的にさらなる負担がかかってしまう。公知のように、電流供給の電力損失は、導線の電気抵抗、および、流れる電流の2乗に比例している。従って、大電流においても電力損失を小さく維持するためには、極めて低抵抗の、すなわち大きな断面を有する電気導線を使用する必要がある。しかし、これは、特に平坦な設計を際立った特性とする部品においては、回避すべきである。部品に大きな表面が求められるならば、供給電流をさらに増大させなければならず、これは、電流供給における問題をさらに悪化させることになる。
【0010】
このため、1つの有機発光部品において、幾つかのOLED素子を電気的に直列接続させることが提案されている(GB第2 392 023 A号参照)。ここでは、有機発光部品の全表面積は、1つまたはそれ以上の直列接続において互いに電気的に連結された個々のOLED部品に分割されている。この方法では、発光部品の動作電圧は、直列に接続されたOLED部品の数と同じ数の倍数で増大し、流れる電流は、同じ数の倍数で低減する。従って、動作電流が低減すると同時に動作電圧が増加することによって、同じ性能の発光部品の駆動を著しく簡略化することが実現される。なぜなら、一般に、電気部品に高電圧を供給することのほうが、大電流を供給することよりも、はるかに容易だからである。OLED部品の直列接続を使用することによる他の利点は、2つの電極、すなわちカソードとアノードとの間に短絡が生じた場合に、OLED部品のうちの1つ、すなわち有機発光部品の発光区域の一部が故障しても、発光部品は、全体的にはまだ光を放射し、放射される全光量は、引き続き不変のままで維持される点である。なぜなら、動作電圧が、故障したOLED部品ではなく故障せずに残っているOLED部品のために上昇するからである。従って、このような、OLED部品の直列接続を有する発光部品は、OLED部品のうちの1つが短絡した後でも、まだ使用可能である。これに反して、単一のOLED部品だけを有する有機発光部品は、アノードとカソードとの間に短絡が生じた場合には、使用不可能である。
【0011】
しかし、複数のOLED部品を直列接続することによってOLED発光部品を製造するには、複雑な製造方法が必要である。一方では、支持基板上に形成された電極をパターニングして、直列接続された個々のOLED部品に割当てられた電極を規定することが必要である。さらに、個々のOLED部品の有機層アレイと、該有機層アレイの上に形成されるカバー電極とをパターニングする必要がある。このためには、幾つかの公知の方法が、考慮される。
【0012】
真空蒸着法によって堆積可能な有機材料が使用されているOLEDの場合における、好適なパターニング法は、シャドーマスクを用いた蒸着法である。他の方法には、例えば、LITI(「Laser Induced Thermal Imaging」)を用いた堆積法がある。この方法では、有機材料が積載されたキャリアフィルムから、少なくとも一部の有機材料を、基板の上に移転させ、該基板において、精度が抜群に高いレーザーによってキャリアフィルムを加熱する。しかし、このLITI法は、OLED部品の有機層アレイのパターニングにのみ使用可能である。通常は、銀、アルミニウム、若しくはマグネシウムなどの金属、または、インジウムスズ酸化物などの透明な導電性酸化物から構成されるカバー電極をパターニングするには、他のパターニング法を用いなければならない。
【0013】
パターニング法は、有機発光部品の製造過程においては、非常に手間がかかり、結果的に高コストである。シャドーマスクを用いる場合には、解像度が制限されるという問題がさらに存在する。すなわち、直列接続された個々のOLED部品間の距離が、シャドーマスクの棒の大きさによって制限されるという問題が存在する。これに関して、シャドーマスクの機械的安定性を確保するためには、シャドーマスクの棒の間の凹部の寸法に応じた、一定の棒幅が、シャドーマスクに必要とされる点に留意されたい。
【0014】
従って、シャドーマスクを用いてパターニングすることを簡略化するには、シャドーマスクによってパターニングされる領域を微細な解像度とすることをあきらめざるを得ない。この、シャドーマスクを用いたパターニングの簡略化は、直列接続されたOLED部品を、比較的大きく設計すること、例えば、約1cmの大きさに設計することによって行われ得る。この場合、シャドーマスクは、簡素な方法、例えば、位置合わせピンを用いた位置合わせ方法によって位置合わせすることが可能な程度の、低い精度でしか用いられ得ない。このような方法は、大量生産において生産可能であり、例えば、位置合わせマーカーを顕微鏡の下で用いた位置合わせ法に基づく微調節法よりも、極めて安価に生産可能である。
【0015】
また、シャドーマスクの使用は、達成可能な加工時間の点でも、限定要因となる。なぜなら、シャドーマスクを微調節することは、プロセスの全持続時間において、決して無視できない割合を占めるためである。位置合わせに関連する加工時間は、精度が低い方法を用いることによって、短縮可能である。
【0016】
有機発光部品の特定の製造方法、例えば連続的なロールツーロール法の場合、シャドーマスクを従来通り使用することによって、さらなる問題が生じる。この問題は、一方では、このような方法では、シャドーマスクを、電極および有機層アレイを有する積層が形成される基板と一緒に運搬する際に、基板に対するシャドーマスクの位置を変えてはならない点である。他方では、このような方法では、シャドーマスクを基板に揃えなければならない点である。ロールツーロール法では、任意により、基板を停止させなければならない。このため、高解像度のシャドーマスクの使用を必要としないプロセスを利用可能にすることが、望まれている。
【0017】
精度の低いシャドーマスクを使用することは、重大な欠点と関連しているため、実際には、最適なことではない。この場合、より大きなOLEDサブ領域しか形成することができない。もし、これらのサブ領域の1つが、短絡のために故障すると、部品の発光面積の大部分が、非アクティブになる。すなわち、部品の発光面積の大部分は、発光部品の動作中も暗いままである。しかし、部品全体は、これによって、その機能性に関して著しく悪影響を受ける。実際には、直列接続では、短絡したOLED部品中の電圧はわずかしか低下しないが、これによって、他のOLED部品のための電圧は増大する。このため、透過された光は全体としてわずかしか変化しないが、有機発光部品の光学的作用は、実質的に悪化する。このことは、多くの用途目的では、許容されない。発光部品は、観察者からは、不良と見なされる。さらに、OLED部品における電気的短絡によって、通常は全表面積にわたって分布されて流れる全電流が、短絡の地点だけを通って導かれる。このため、局所的に高い温度上昇が生じ、結果的に抵抗損が生じると共に、例えば有機層または無機層の層間剥離によって、抵抗が短絡の地点において著しく増加し、短絡の地点が絶縁される恐れがある。特に、将来のOLED発光素子として現在考えられているような薄膜封止を用いた場合に、発光部品を保護するために適用される封止が、この局所的な熱応力に耐えることができないという危険性が存在する。これらの欠点は、OLED部品の表面積が大きくなればなるほど、増大する。
【0018】
商業的成功には、発光有機部品の効率および耐用年数に加えて、当然、部品の外観も、重要な点である。OLEDでは、特に、透明電極の導電性が比較的低く、典型的には1Ω/sqと300Ω/sqとの間であるため、より大きな表面積上への光の放射が完全に均一ではないという特性がある。このことは、OLEDを通って流れる電流によって透明電極上に電圧降下が存在し、結果的に、OLDの所定の区域が、他の箇所よりも暗い光を放射することを意味している。この問題は、特に急勾配の電流電圧特性曲線を有するOLEDの場合に、特に顕著である。このOLEDに当てはまるのは、特に、能力効率が高く、照明用途に特に適していると考えられているpin型のOLEDである。OLEDの均一性を向上させるために、様々な示唆がなされている。いわゆる金属グリッド、すなわち、透明電極に接触し、電流輸送の大部分を行う薄い金属線が、広く用いられている。この解決法は、幾つかのコーティングステップと、フォトリソグラフィーステップとを組み合わせるため、技術的に手間がかかる。
【0019】
発明の概要
本発明の目的は、特に短絡が生じた場合にも部品の信頼性を向上させる、発光有機部品、幾つかの発光有機部品の直列接続を有するアレイ、および、電極構造を生成することにある。さらに、有機発光部品における発光特性も、向上させる必要がある。
【0020】
本発明によれば、この目的は、独立請求項1に係る発光有機部品、および、独立請求項14に係る幾つかの発光有機部品の直列接続を有するアレイによって、達成される。さらに、独立請求項15に係る電極構造が生成される。本発明の有効な形態は、従属請求項の主題である。
【0021】
本発明の一態様によれば、電極および対向電極、並びに、該電極と該対向電極との間に配置された有機領域を備える発光有機部品、特に発光有機ダイオードが生成される。有機領域は、その平坦な伸長部分にわたって均一な材料組成で、電極と対向電極との間に形成されており、電極は、互いに電気的に短絡された櫛形サブ電極によって形成されており、櫛形サブ電極は、各櫛形電極接続区域から突出した複数の櫛形電極区域が、少なくとも有機領域との重複領域において、互いに噛み合って配置されている。
【0022】
本発明のさらなる一態様によれば、上述の種類の幾つかの発光有機部品の直列接続を有するアレイ、特に照明装置またはディスプレイ装置が、生成される。
【0023】
本発明の他の一態様によれば、互いに電気的に短絡された櫛形サブ電極によって形成された1つの電極を備える、電子部品、特に有機発光部品のための電極構造が生成される。この櫛形サブ電極では、各櫛形電極接続区域から突出した櫛形電極区域が、少なくとも部分的に互いに噛み合いながら配置されている。典型的な一実施形態では、この電極は、ITOから構成されていてよい。
【0024】
上記部品に関連して、本発明は、発光有機部品内の各電極対によって構成される電極を、互いに電気的に短絡された幾つかの櫛形サブ電極によって形成するという考えを包含する。これは、このようにして形成された電極が、櫛形サブ電極から構成されるということを意味している。櫛形サブ電極において、各櫛形電極接続区域から突出した櫛形電極区域は、少なくとも有機領域との重複領域において、互いに噛み合っている。好ましい一形態では、この噛み合いは、突出した櫛形電極区域が、互いに対向し合う櫛形サブ電極と、交互に配置されるように、実施されていてよい。櫛形電極接続区域上に形成された、突出した櫛形電極区域は、突出した櫛形電極区域用の一種の接続部を形成する櫛形電極接続区域によって、電気的に短絡されている。上述の通りに実施された幾つかの部品は、直列接続に組み入れてもよい。
【0025】
櫛形サブ電極を有する電極を櫛形に形成することは、これが、電極構造を別個に生成する工程であっても、または、部品製造工程であっても、例えば、フォトリソグラフィー法による製造の間に生成することが可能である。このような微細なパターニングは、問題なく、且つ、追加的な手間を生じさせることなく行うことが可能であり、さらなる出費も必要としない。このようにして、突出した櫛形電極区域の噛み合いの間隔を、極めて短く保持することが可能である。この互いに噛み合った、突出した櫛形電極区域によって、発光有機部品が動作する間は、観察者の観点から均一な照明の外観が、生成される。
【0026】
この部品の製造、または複数の部品から成るアレイの製造では、位置合わせの精度に関して特別な要求は課せられない有機領域およびカバー電極を製造するために、簡素なシャドーマスク技術を用いてよい。
【0027】
他の利点は、提案する発光有機部品は、電極領域に短絡が生じた際に、より良好な損傷挙動を有している点である。個々の突出した櫛形電極区域が、短絡によって故障したとしても、動作中、観察者には、依然として、実質的に均一な発光領域が提供される。ここでは、突出した櫛形電極区域の領域内で起こる短絡の位置が、割当てられた櫛形電極接続区域から遠く離れれば離れるほど、部品の能力効率の維持はより良好になる。実際には、突出した櫛形電極区域の領域内の短絡は、発光有機部品を完全に故障させない。故障は、事実上、損傷を受けた、突出した櫛形電極区域の領域に限定される。提案する電極構造自体が、上述の利点の実施に貢献するものである。
【0028】
櫛形サブ電極から構成される電極用の材料としてITOが用いられている典型的な一実施形態では、この挙動は、ITOが、比較的高い層抵抗を有することに起因する。このため、突出した櫛形電極区域が高いアスペクト比、例えば、10:1のアスペクト比である場合、ITOの区域の抵抗も高くなる。しかし、提案する電極構造が用いられる部品が通常動作する際は、複数の突出した櫛形電極区域が並列接続されるため、極めて小さい電流だけが、個々の区域を流れる。このため、部品の効率は高い状態で維持される。電極と対向電極との間に短絡が生じた瞬間のみ、局所的に高い電流が生じるが、この高い電流は、突出した櫛形電極区域における高い抵抗によって制限される。従って、短絡の場合は、ITOから構成された、突出した櫛形電極区域の、損傷を受けた領域においてのみ、光は放射されなくなる。部品の残りの表面区域は、視覚的には変わらない光度で発光し続けることになる。例えばITOから形成された、突出した櫛形電極区域が、十分に薄く、例えば約10μmと数ミリメートルとの間の幅を有して実施されている場合、観察者は、短絡に全く気がつかないであろう。
【0029】
従って、一方では、局所的な短絡の場合でも、本発明によって、発光有機部品の能力効率を高く維持する可能性が実現される。さらに、提案する電極構造を有する部品の光学的外観は、局所的な短絡の場合にも、動作中は、観察者にとって実質的には中断されずに維持される。
【0030】
本発明の好ましいさらなる一発展形態は、互いに噛み合って、且つ、形状において相補的に配置された、突出した櫛形電極区域を提供する。ここで、形状において相補的であるとは、通常、電極と有機領域との間に可能な限り大きな重複が達成され得るように噛み合った、突出した櫛形電極区域の区域基本形状のことである。
【0031】
本発明の実用的な一形態では、非平行の横端面を有して形成された、突出した櫛形電極区域が提供され得る。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態は、各櫛形電極接続区域から離れるにつれてテーパ状になった区域基本形状、各櫛形電極接続区域から離れるにつれて広がった区域基本形状、三角形、および台形から成る区域基本形状の群から選択された1つの区域基本形状を有して形成された、突出した櫛形電極区域を提供する。従って、一般的に、このような区域基本形状は、一方向にテーパ状になった形状を特徴とする。突出した櫛形電極区域のテーパ状になった区域基本形状は、実施形態に応じて、割当てられた櫛形電極接続区域からテーパ状になっているか、または、これに向かってテーパ状になっている。一形態では、突出した櫛形電極区域上のテーパ状の形状が、櫛形電極接続区域から離間されてのみ始まっており、テーパ状の櫛形電極区域と割当てられた櫛形電極接続区域との間に、ほぼ平行な端面を有する導線区域が形成されるように、提供され得る。ここでは、重複領域が、導線区域と突出した櫛形電極区域のテーパ状の区域との間の遷移部において始まっているように、提供され得る。
【0033】
本発明のさらなる一発展形態は、好ましくは、突出した櫛形電極区域が、均一な区域基本形状を有して形成されていることを提供する。櫛形サブ電極は、全体的に、その区域基本形状に関して、全て同一に形成されていてよい。しかし、様々な発光有機部品に個々に適応させるために、その区域基本形状に関して、完全または部分的に異なって実施されている櫛形サブ電極を提供することも可能である。
【0034】
本発明の有効な一形態では、突出した櫛形電極区域が、有機領域の外側にある各櫛形電極接続区域によって、互いに電気的に短絡されていることが提供され得る。
【0035】
本発明のさらなる一発展形態は、対向電極が、有機領域の平坦な伸長部分内に、有機領域の平坦な伸長部分よりも小さな表面積の広がりを有して形成されていることを提供可能である。
【0036】
本発明の好ましい一発展形態は、各櫛形電極接続区域より遠位の、突出した櫛形電極区域の一端部が、有機領域の1つの端面で終結していることを提供する。これは、換言すると、突出した櫛形電極区域は、遠位端の領域内において、有機領域から突出していないことを意味している。
【0037】
本発明の実用的な一形態では、各櫛形電極接続区域よりも近位の、突出した櫛形電極区域の一端部が、有機領域の端面までの長さAを有し、突出した櫛形電極区域は、長さ比A:Dが、少なくとも1、好ましくは少なくとも3、およびより好ましくは少なくとも10で形成されることが提供され得る。ここで、Dは突出した櫛形電極区域の幅である。A:Dの比が1である場合、櫛形電極接続区域の近傍で短絡が生じても、拡散フィルムの使用によって、部品は、十分に離れた位置にいる観察者が裸眼で、すなわち、特別な拡大手段、例えば拡大鏡を用いずに観察する場合に、依然として均一に発光しているように見える。この場合、比A:Dが3である限り、均一な外観は、拡散フィルムなしでも実現されるであろう。比が10である場合でも、観察者は、十分に離れた距離から、拡散フィルムによって10本以上の光線に拡散された均一な光の強度を知覚することができる。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態は、櫛形サブ電極によって形成された電極が、基板側の電極であることを提供する。ベース電極とも呼ばれるこの基板側の電極の代わりに、上面電極またはカバー電極を、櫛形サブ電極によって形成してもよい。
【0039】
本発明のさらなる一発展形態は、好ましくは、互いに噛み合った領域内の複数の突出した櫛形電極区域のうちの隣接し合う電極区域間の横方向の間隔が、少なくとも約10μmであることを提供する。こうすることによって、裸眼ではもう、突出した櫛形電極区域間の非発光領域の存在が解明できないことが実現される。
【0040】
本発明の有効な一形態では、少なくとも有機領域に平坦に重なった拡散素子が形成されることを提供可能である。拡散素子は、例えば、拡散ディスクまたは拡散フィルムとして、実施され得る。この平坦に重なった拡散素子は、部品が通常動作している間だけでなく、特に、短絡のために部品の一部が部分的に故障した場合にも、観察者にとって、部品の照明の外観を向上させることに貢献する。
【0041】
本発明のさらなる一発展形態は、突出した各櫛形電極区域に、1つの電気安全構造体が割当てられることを提供可能である。例えば安全ヒューズである電気安全構造体は、突出した櫛形電極区域のうちの1つに割当てられた幾つかの個々の安全構造体、または、一般的に幾つかの突出した櫛形電極区域のために形成された1つの安全構造体を備えていてよい。各安全構造体の設計は、増大した動作電流が生じた時に、各安全構造体が、独立して電気的絶縁を始動するように実施されている。このように、短絡が生じると、電極の、損傷を受けた区域は、他の区域から分離され、部品の残りの区域の動作が継続される。
【0042】
本発明の有効な一形態では、有機材料から構成される層を有する電気安全構造体が提供され得る。有機層は、電気的にドープされた層であってよい。本形態は、p型ドープされた半導体層、またはn型ドープされた半導体層として実施される。電気安全構造体は、完全にまたは部分的に、電気的にドープされた層によって形成されていてよい。好ましい一形態では、電気的にドープされた層は、その材料組成に関して、有機領域からの層と対応するように形成される。これは、製造工程において、安全構造体の電気的にドープされた層を、同様に形成された有機領域内の層と、同時に生成することができる(当該工程を製造工程に組み込むことが有効である限り)という利点を有している。電気的にドープされた層は、約10nmと約100μmとの間の層厚を有して形成されていることが好ましい。約10nmの層厚は、閉鎖された有機層を、通常の製造ラインで確実に形成するために少なくとも必要とされる厚さであると考えられる。100μmは、好適な技術プロセスの範囲内で尚も実現可能な層厚である。
【0043】
電気的にドープされた層を形成することに対して選択的または追加的に、電気的にドープされていない有機材料から構成される層を、安全構造体の一形態のために提供可能である。ドープされていない有機層の層厚については、ドープされた有機層に関する上述の説明が、適宜、当てはまる。
【0044】
本発明のさらなる一発展形態は、金属層を有する電気安全構造体を提供可能である。電気安全構造体は、完全または部分的に、金属層から形成されていてよく、一形態では、電気安全構造体は、金属層から成る。一形態では、金属層と、有機材料から構成される層とから成る電気安全構造体が提供され得る。一形態では、金属層を、次の層、すなわち電気的にドープされた有機層およびドープされていない有機層のうちの少なくとも1つと組み合わせてもよい。金属層は、有機層を、部分的または完全に覆っていてよい。これに関して、一実施形態では、金属層が、有機材料から構成される層を部分的または完全に覆うように提供してもよい。有機層は、電気的にドープされていても、またはドープされていなくても、割当てられた電極区域若しくはさらなる電極区域に接触して形成されていてもよいし、または、割当てられた電極区域若しくはさらなる電極区域に接触せずに形成されていてもよい。様々な実施形態において、金属層は、割当てられた電極区域だけに、または、1つ若しくは複数のさらなる電極区域だけに電気的に接触していてもよいし、これらの両方に電気的に接触していてもよい。
【0045】
有機層は、例えば、約10nmと約50μmとの間の層厚を有している。好ましくは、金属層は、約10nmと約10μmとの間の層厚を有して形成されている。
【0046】
層厚は、電極区域の領域内に短絡が生じた場合、およびこれに関連して電流の流れが増大した場合に、電気的にドープされた層が、例えば溶融によって、電気的に絶縁される程度まで強く加熱されるように、選択されている。電気的にドープされた層の有機材料と、発光有機部品が形成される基板表面とは、溶融時に、電気的にドープされた層が、脱架橋するように選択される。電気的にドープされた層は、金属層と組み合わせる場合、脱架橋の際に裂ける程度に十分に薄くなっている。また金属層は、短絡の場合に、十分に高い熱が、オーム抵抗によって生成され、有機材料から構成された電気的にドープされた層の溶融を引き起こす程度に薄くなっている。金属層と有機材料から構成された電気的にドープされた層とを組み合わせることは、安全構造体によって電気的絶縁作用が始動される温度を、正確に選択することが出来るという利点を有している。これによって、電気安全構造体を、電気的にドープされた層の溶融温度、金属層の厚さ、および、発光有機部品の設計、並びに、これによって生じる電流の流れというパラメータによって、個々の用途目的に適応させることが可能である。
【0047】
有機材料の溶融は、200°Cよりも低い温度で起こる場合が多い。金属または他の有機導体に基づいた電気安全構造体は、著しく高い温度においてのみ、焼き切れる。
【0048】
有機材料から構成される薄膜は、その融点よりも下の温度で既に架橋し得る。これは、例えば、液晶材料との関連においてしばしば生じることである。好ましい一形態では、安全構造体の有機層は、液晶材料から構成されている。
【0049】
電気安全構造体のために、任意で電気的にドープされた有機層と、金属層とを組み合わせることの他の利点は、金属層を、比較的厚くなるように選択することが可能な点にある。これは、金属層が、短絡の場合に、純金属製の安全構造体のように、高い温度にまで加熱される必要がないからである。これによって、通常動作の間の、安全構造体における抵抗損を低減することが可能である。しかし、この金属層は、有機材料から構成される層のうちの1つがこれを破壊させるには、十分に薄いことに留意されたい。
【0050】
本発明の好ましいさらなる一発展形態は、次の材料、すなわち、導電性酸化物および導電性セラミックから選択された1つの材料から構成される層を有する電気安全構造体を提供する。
【0051】
本発明の実用的な一形態では、安全ヒューズ構造体として実施された電気安全構造体が提供され得る。電流が増大することによって、電気安全構造体がアクティブになると、溶融が生じ、結果として電気的絶縁が起こる。
【0052】
1つの部品に関して説明した電極のための可能な形態は、単独で、または、電極構造自体に関して任意の組み合わせにおいて、提供可能である。ここで、電極構造を、独立した部品として、または半製品として、製造することも可能である。なぜなら、電極の製造は、有機発光部品または他の電子部品の場合のように、部品の製造に組み込んだ状態で実施可能だからである。様々な形態において、電極を有する電極構造を別個に製造することは、例えば、電極を形成した後に、記載した製造工程を単に中断し、有機領域の形成を継続しないことによって、実現可能である。このように形成された電極構造は、その後、任意の電子部品に使用可能である。これらの電子部品には、特に、有機太陽電池が含まれる。これに応じて、上述の利点は、これらの利点の根本が電極の形態自体にある限り、様々な形態の電極構造をもたらす。
【0053】
以下に、電極構造に関する好ましい形態について、より詳細に説明する。既に記載した説明に対応する同一の特徴に関しては、以下では、繰り返しを避けるために、説明を省略する。
【0054】
電極構造について、本発明の好ましいさらなる一発展形態は、互いに噛み合うと共に相補的である形状に配置された、突出した櫛形電極区域を提供する。電極構造について、本発明の実用的な一形態では、非平行の横端面を有して形成された、突出した櫛形電極区域が提供され得る。
【0055】
電極構造について、本発明の好ましい一実施形態は、各櫛形電極接続区域から離れるにつれてテーパ状になった区域基本形状、各櫛形電極接続区域から離れるにつれて広がった区域基本形状、三角形、および台形から成る区域基本形状の群から選択された1つの区域基本形状を有して形成された、突出した櫛形電極区域を提供する。
【0056】
電極構造について、本発明のさらなる一発展形態は、好ましくは、均一な区域基本形状を有して形成された、突出した櫛形電極区域を提供する。電極構造について、本発明の有効な一形態では、各櫛形電極接続区域によって、外部から互いに電気的に短絡された、突出した櫛形電極区域を提供可能である。
【0057】
本発明の好ましい一実施形態は、櫛形サブ電極によって形成された電極が、基板側の電極のために形成されることを提供する。ベース電極とも呼ばれるこの基板側の電極の代わりに、上面またはカバー電極を、櫛形サブ電極によって形成してもよい。
【0058】
電極構造について、本発明のさらなる一発展形態は、好ましくは、互いに噛み合った領域内の複数の突出した櫛形電極区域のうちの隣接し合う櫛形電極区域間の横方向の間隔が、少なくとも約10μmであることを提供する。
【0059】
電極構造について、本発明のさらなる一発展形態は、突出した各櫛形電極区域に、1つの電気安全構造体が割当てられることを提供可能である。
【0060】
電極構造について、本発明の有効な一形態では、有機材料から構成される層を有する電気安全構造体を提供することが可能である。
【0061】
電気的にドープされた層を形成することに対して選択的または追加的に、電気的にドープされていない有機材料から構成される層を、安全構造体の一形態のために提供可能である。これに対応して、ドープされていない有機層の層厚については、ドープされた有機層に関する上述の説明が、適宜、当てはまる。
【0062】
電極構造について、本発明のさらなる一発展形態は、金属層を有する電気安全構造体を提供可能である。
【0063】
電極構造について、本発明の好ましい一発展形態は、次の材料、すなわち、導電性酸化物および導電性セラミックのうちから選択された1つの材料から構成された層を有する電気安全構造体を提供する。
【0064】
電極構造について、本発明の実用的な一形態では、安全ヒューズ構造体として形成された電気安全構造体が提供され得る。
【0065】
発明の好ましい典型的な実施形態の説明
以下において、図面を参照しながら、好ましい典型的な実施形態を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0066】
図1は、櫛形サブ電極が互いに噛みあって配置されている発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。
【0067】
図2は、有機領域が上に配置された、図1に係る発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。
【0068】
図3は、互いに噛み合った櫛形サブ電極を備える、発光有機部品のための発光パターンを示す図である。
【0069】
図4は、台形状に突出した櫛形電極区域を有する、櫛形サブ電極が互いに噛み合った、発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。
【0070】
図5は、有機領域が上に配置された、図4に係る発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。
【0071】
図6は、櫛形サブ電極が噛み合っている、発光有機部品のための電極の一区域を示す図であり、台形状に突出した櫛形電極区域は、形状において相補的に配置され、導線区域によって櫛形電極接続区域に接続されている。
【0072】
図7は、有機領域が上に配置された、図6に係る発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。
【0073】
図8は、図1の発光有機部品のための電極の区域を詳細に示す概略的な図である。
【0074】
図9は、図7に係る、有機領域が上に配置された発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。突出した櫛形電極区域に割当てられた安全構造体が、概略的に図示されている。
【0075】
図1は、発光有機部品のための電極の一区域を示す図であり、ここでは、櫛形サブ電極1,2が噛み合って配置され、発光有機部品の電極を形成している。櫛形サブ電極1,2は、それぞれ、突出した櫛形電極区域5,6が形成された櫛形電極接続区域3,4を有している。
【0076】
図2は、有機領域7が上に配置された、図1に係る発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。有機領域7は、重複領域8において、互いに噛み合った櫛形電極区域5,6に重なっている。
【0077】
図3は、互いに噛み合っている櫛形サブ電極を備える発光有機部品のための発光パターンを示す図である。
【0078】
典型的な一実施形態において、20mm×20mmの能動領域を有するOLEDの形の発光有機部品が構成される。図1に概略的に示された透明なベース電極が、ガラス基板の上にパターニングされている。突出した櫛形電極区域1,2に対応する個々のストリップは、20mmの長さおよび0.45mmの幅を有している。隣接し合うストリップ間の間隔は、0.05mmである。透明なベース電極は、90nmの厚みを有するITOから成る。櫛形サブ電極を有して形成されたベース電極の上には、有機材料から構成されるオレンジ色を発光する積層が堆積される(図2参照)。
【0079】
1)p型ドープされたホール輸送層:テトラフルオロ−テトラシアノキノンジメタン(F−TCNQ)でドープされた、50nmの4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(Starburst TDATA)、
2)ホール側の中間層:10nmのN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(TPD)、
3)橙赤色発光層:イリジウム(III)−ビス−(2−メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)(RE076,ADS)でドープされた20nmのビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(alpha-NPD)、
4)電子側の中間層:10nmのバソフェナントロリン(BPhen)、
5)n型ドープされた電子輸送層:Csでドープされた50nmのBPhen、
6)カソード:100nmのアルミニウム。
【0080】
ガラス基板を通して、オレンジ色の発光が観察され、部品が、1つ置きに両側面から、より明るい光を放射している複数のストリップに分割されていることが、裸眼で確認できる。これは、図3に、概略的、且つ、強調して示されている。このように放射する部品は、既にこの形態で使用可能である。光の著しい放射は、デザイン素子、例えば、車のテールランプとして用いてよい。補足的に、このように形成された部品に、拡散フィルムを載せてもよい。こうすることによって、完全に均一な光の放射の印象が得られる。これは、全てのストリップが、同じ方向から接触されている場合、すなわち、互いに噛み合った櫛形サブ電極が形成されていない場合には、当てはまらないであろう。なぜなら、拡散フィルムを用いても、光度の勾配が、明確に観察され得るからである。
【0081】
図4は、2つの櫛形サブ電極1,2の台形状に突出した櫛形電極区域40,41を有する、櫛形サブ電極が噛み合った発光有機部品のための電極の一区域示す図である。
【0082】
図4では、突出した櫛形電極区域40,41が、接続点(櫛形電極接続区域)からテーパ状になっている様子が、概略的に示されている。このような形状は、抵抗損を低減し、部品の能力効率を上げる。三角形や台形だけでなく、様々な形状の構造が考慮される。しかし、これらの実施形態では、突出した櫛形電極区域は全て、接続点からテーパ状になっている。
【0083】
図5は、有機領域7が上に配置された、図4に係る発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。
【0084】
図6は、櫛形サブ電極が噛み合っている、発光有機部品のための電極の一区域を示す図であり、台形状に突出した櫛形電極区域60,61は、形状において相補的に配置され、導線区域62によって櫛形電極接続区域3,4に接続されている。ここで、最も狭い地点は、直接、突出した各櫛形電極区域60,61の接続点にある。これによって、実際には、抵抗損は増大するが、光の放射の均一性は、必要に応じて、向上させることが可能である。
【0085】
図7は、有機領域7が上に配置された、図6に係る発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。
【0086】
図8は、図1の発光有機部品のための電極の区域を詳細に示す、概略的な図である。
次のパラメータが示されている。Aは、突出した櫛形電極区域の近位の端部から有機領域の端面までの長さ、Bは、関連付けられる櫛形電極接続区域から突出した櫛形電極区域の長さ、Cは、隣接し合う櫛形電極区域間の間隔、および、Dは、突出した櫛形電極区域の幅である。
【0087】
図9は、図7に係る、有機領域7が上に配置された発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。突出した櫛形電極区域に割当てられた安全構造体90が、概略的に図示されている。安全構造体90は、例えば、安全ヒューズである。
【0088】
さらなる典型的な実施形態について、以下に詳細に説明する。ここでは、特に、図8のパラメータの相互作用について詳細に説明する。
【0089】
典型的な一実施形態では、直列接続された5つの発光有機部品を、ガラス基板(図示されていない)上に堆積させる。これらが一緒になって、発光有機部品のアレイを形成する。
【0090】
最初に、ITOから構成される各ベース電極を、フォトリソグラフィーによって、突出した櫛形電極区域を有して櫛状にパターニングする。突出した櫛形電極区域は、櫛形電極接続区域上に形成される。突出した櫛形電極区域の長さBは、20mmであり、これらの幅Dは、いずれの場合も1mmである。ITOの層抵抗は、20Ω/□である。平行な、突出した櫛形電極区域の数は、N=100であり、これらの間隔Cは、20μmである。このようにして、まず、電極構造を、任意により別個に設けられる製造工程において、生成する。電極構造は、独立した製品、または半製品を示す。電極構造が半製品の場合、さらなる加工工程(部品の製造のすぐ後のプロセスであろうと、後のプロセスの過程内であろうと)に用いることが可能である。
【0091】
部品にそれぞれ、60cd/Aの電流効率Eの、緑色の光を放射する有機層領域を、電極構造の大きな面積上に蒸着させる。このために、それ自体が公知の、緑色の光を放射する燐光発光材料Ir(ppy)を有する有機積層を用いる(He et al., Appl. Phys. Lett., 85(2004), 3911)参照)。Vの電圧Uおよび約10mA/cmの電流密度において、6000cd/mの光度Hを得る。隣接し合う部品の金属カバー電極または上面電極間の間隔Aは、3mmである。
【0092】
ここで、ITOから構成される、突出した櫛形電極区域のうちの1つの電極区域の中央に、短絡が形成されるならば、この区域の領域の内部に形成されたOLED部品を流れる電流は、ITO導線から部品までの経路抵抗によってのみ、制限される。まさにこの場合の導線抵抗は、S(B/2D)であり、すなわち200Ωである。短絡が当該区域の中央にあるため、係数は、1/2である。
【0093】
残りの突出した櫛形電極区域に形成されたOLED部品は全て、依然、動作可能である。これらの、ITO経路抵抗を含む全抵抗は、約20Ωである。これは、動作電圧、表面積、および電流密度から容易に計算可能である。ここで、OLED部品が、その発光面積全体において、均一な光度で発光していると推測される。実際には、電極を通して電流を供給することによって一定の電圧降下が生じるため、OLED部品の領域の照度は、幾分暗くなる。
【0094】
結果的には、10%よりも少ない電流が短絡の上を流れ、90%よりも多い電流が残りのOLED部品の上を流れる。これはまた、このような短絡が生じた場合にも、アレイ全体が、依然として、90%よりも多い光を放射していることを意味している。このような5つの部品から成るアレイ全体では、短絡にもかかわらず、依然として約98%の光の放射が観察され得る。これは、突出した櫛形電極区域の中央に短絡が生じた場合に当てはまる。短絡が、櫛形電極接続区域からさらに離れて形成されるならば、ITOの経路抵抗はさらに高くなり、このため、短絡に関連する電流も、最大2分の1小さくなる。これは、この場合にも、依然として99%の光が、部品のアレイから放射されることを意味している。
【0095】
短絡の最も不適切な位置は、櫛形電極接続区域に隣接した、突出した櫛形電極区域の領域内である。この場合、突出した櫛形電極区域がわずか3mmであること(櫛形電極接続区域と有機領域の端面との間の間隔に相当する)、すなわち60Ωの導線抵抗であることが有効である。これは、損傷を受けた部品が、約75%の光度、アレイ全体では95%の光度で、発光し続けることを意味している。従って、結果的に、短絡が最も不適切な位置で起こった場合にも、部品は依然として極めて良好に動作可能である。
【0096】
A対Dの比が低くなればなるほど、隣接する櫛形電極接続区域の近傍で起こる短絡の影響も大きくなる。従って、比A:Dは、有利には1よりも高く、好ましくは3よりも高く、および、最も好ましくは10よりも高い。櫛形電極接続区域の近傍に短絡が生じた場合に、A:Dの比が1の時は、拡散フィルムを用いることによって、例えば100個の突出した櫛形電極区域を有する部品は、十分に離れた位置にいる観察者が、裸眼で観察する場合、すなわち、特別の拡大手段、例えば拡大鏡を用いずに観察する場合に、依然として均一に発光しているように見える。この場合、比A:Dが3である限り、均一な外観は、拡散フィルムなしでも実現されるであろう。比が10である場合は、観察者は、十分に離れた距離から、拡散フィルムによって10本以上の光線に拡散された均一な光の強度を知覚することができる。
【0097】
発光有機部品のアレイ上、または1つの部品上に、幾つかの短絡が存在する場合も、部品は、依然として、動作可能であり続ける。しかし効率は、新たな短絡が加わる度に、さらに低下する。
【0098】
個々の部品を、短絡の場合にも効率がより高いように設計する一変形例は、突出した櫛形電極区域をより薄く設計することである。短絡を流れる電流の、部品の残りの領域を流れる電流に対する比を、さらに向上させることが可能である。しかし、ストリップ形の電極区域を、短絡の典型的な横方向の広がりよりも薄くすることは、実用的でない。従って、突出している電極区域を10μmよりも薄くすることは、意味がない。
【0099】
本発明を用いれば、特に、製品の歩留まりを大幅に上昇させることが可能である。なぜなら、散発的な短絡が形成された時でも、部品を使用することが可能だからである。
【0100】
光学的外観をさらに向上させるため、拡散素子を部品の中に組み入れることが提供され得る。これによって、一方では、突出した櫛形電極区域間の発光していない領域と、他方では、短絡によって故障した領域とが、他の発光領域から拡散された光によって、覆われる。
【0101】
基板側の電極だけでなく、カバーまたは上面電極も、特にストリップ形に、パターニングすることを提供可能である。これは、例えば平坦なカバー電極をレーザー処理することによって行うことが可能である。実際には、その後、この平坦なカバー電極は、ストリップ形に切断される。この場合、除去されるカバー電極の領域の真下に位置する有機積層の領域も、該領域が部品全体の機能を損ねずに、損傷させることが可能である。なぜなら、このように処理される領域はいずれにしても発光しないからである。
【0102】
提案する部品のアレイは、1つの部品を有していても、電気的に直列接続された幾つかの部品を有していても、ディスプレイにおいて使用することによって、特に、例えば、スタジアムのスクリーンなどにおける、数平方センチメートルの大きさの極めて大きな画素素子を有するディスプレイのための画素素子を形成することが可能である。ここでは、この照明素子のため、短絡の際に、画素全体が故障することは回避される。その代わり、観察者は、画素の光度がわずかに低下したことだけに気付く。画素の光度がわずかに低下することは、程度の差はあるが、無視できる程度である。
【0103】
ストリップ電極の領域自体において形成された部品が、動作光度において低いオーム抵抗を有しているならば部品の効率損失は、特に低いことが分かる。これは、特に、有機層積層中に電気的にドープされた領域を有するOLED部品の場合である。
【0104】
部品の光の放射は、輝度−電圧特性曲線が、動作光度の領域において、急勾配過ぎない時に、特に均一である。例えば、これは、0.4Vの電圧差が、最大40%、好ましくは最大20%の光度差を引き起こす場合である。
【0105】
隣接する部品の櫛形電極接続区域から間隔Kだけ分離された場所に短絡が生じた際に、提案する部品の効率Vの割合の低下には、簡略化した近似式が導かれる(ここで、A<K<Bが当てはまる)。
【0106】
V=UE/(MK)
ここで、Mは接続された部品の数を示し、Hは動作光度を示し、SはITOの層抵抗を示している。
【0107】
これは、結果的に、多数のさらなる設計規定を生じさせる。影響を受けない唯一のパラメータは、言うまでもなく、短絡の位置であるKである。これ以外では次の場合に、短絡時の効率損失が、特に低いことが分かる。
【0108】
−OLED部品の動作電圧が低く、有利には10Vよりも低く、好ましくは6Vよりも低く、および、より好ましくは4Vよりも低い場合、
−アレイの部品の数が多く、有利には10よりも多く、好ましくは27よりも多く、および、より好ましくは55よりも多い場合、
−突出した櫛形電極区域の数が多く、有利には10よりも多く、好ましくは30よりも多く、および、より好ましくは100よりも多い場合、
−OLED部品が、十分に明るく、有利には少なくとも500cd/mの光度で、好ましくは少なくとも1000cd/mの光度で、および、より好ましくは少なくとも5000cd/mの光度で、動作される場合。
【0109】
SとBとの積は、個別に考慮される。Sが大きければ大きいほど、Bを短くする必要がある。なぜなら、そうしなければ、通常の動作をする間のITO中の抵抗損が高くなり過ぎ、部品は、非効率的になるからである。S*Bが10〜1000mmΩ/□の範囲、好ましくは100〜1000mmΩ/□の範囲である時に、良好な結果が得られる。
【0110】
10Vは、1つの簡素なiii型の有機発光部品の近似の動作電圧である。6Vは、従来技術からそれ自体公知であるiii型の、より精度の高い有機発光部品の近似の動作電圧に相当する。4Vは、従来技術からそれ自体公知であるpin型の有機発光部品の近似の動作電圧である。さらに、10V、6V、および4Vは、それぞれ、単層のpin型OLED、二重に積層されたpin型OLED、および、三重に積層されたpin型OLEDの近似の動作電圧であると考えられ得る。
【0111】
光度の値500cd/mは、光度の閾値を示す。この閾値から、本発明の、照明技術における用途が、特に有効なものとして、考えられる。照明部品の発光全面積が、1平方メートルであるならば、500cd/mの光度における光出力は、100Wの白色灯の光出力の約半分に相当する。1000cd/mの光度は、照明素子が、例えば天井灯のような照明状況において使用される限り、観察者に、ちょうどまぶしくない程度と知覚されるほぼ閾値に相当する。5000cd/mは、発光部品の発光表面積当たりの光出力と、発光部品の耐用年数との間を最大化するために、最も有効な値であると考えられる光度に相当する。製品を商業的に最適化するには、この領域における光度にとって、一方の、部品の作成および製造費用と、他方の、動作性能および耐用年数との間のバランスをとることが、有効であり得る。
【0112】
本発明をその様々な実施形態において実施するために、上述の明細書、特許請求の範囲、および図面において開示される本発明の特徴を、単独、および、任意の組み合わせで用いることが重要であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】櫛形サブ電極が互いに噛みあって配置されている発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。
【図2】有機領域が上に配置された、図1に係る発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。
【図3】互いに噛み合った櫛形サブ電極を備える、発光有機部品のための発光パターンを示す図である。
【図4】台形状に突出した櫛形電極区域を有する、櫛形サブ電極が互いに噛み合った、発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。
【図5】有機領域が上に配置された、図4に係る発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。
【図6】櫛形サブ電極が噛み合っている、発光有機部品のための電極の一区域を示す図であり、台形状に突出した櫛形電極区域は、形状において相補的に配置され、導線区域によって櫛形電極接続区域に接続されている。
【図7】有機領域が上に配置された、図6に係る発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。
【図8】図1の発光有機部品のための電極の区域を詳細に示す概略的な図である。
【図9】図7に係る、有機領域が上に配置された発光有機部品のための電極の一区域を示す図である。突出した櫛形電極区域に割当てられた安全構造体が、概略的に図示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極および対向電極、並びに、上記電極と上記対向電極との間に配置された有機領域を備える発光有機部品、特に発光有機ダイオードであって、上記有機領域は、上記有機領域の平坦な伸長部分にわたって均一な材料組成で、上記電極と上記対向電極との間に形成され、上記電極は、互いに電気的に短絡された櫛形サブ電極によって形成され、上記櫛形サブ電極は、各櫛形電極接続区域から突出している複数の櫛形電極区域が、少なくとも上記有機領域との重複領域において、互いに噛み合いながら配置されている、発光有機部品。
【請求項2】
上記突出した櫛形電極区域は、互いに噛み合って、且つ、形状において相補的に、配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の部品。
【請求項3】
上記突出した櫛形電極区域は、非平行の横端面を有して形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の部品。
【請求項4】
上記突出した櫛形電極区域は、各櫛形電極接続区域から離れるにつれてテーパ状になった区域基本形状、各櫛形電極接続区域から離れるにつれて広がった区域基本形状、三角形、および台形から成る、区域基本形状の群から選択された1つの区域基本形状を有して形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の部品。
【請求項5】
上記突出した櫛形電極区域は、均一な区域基本形状を有して形成されていることを特徴とする、請求項1〜4の少なくとも1項に記載の部品。
【請求項6】
上記突出した櫛形電極区域は、上記有機領域の外部の上記各櫛形電極接続区域によって、互いに電気的に短絡されていることを特徴とする、請求項1〜5の少なくとも1項に記載の部品。
【請求項7】
上記対向電極は、上記有機領域の平坦な伸長部分内に、上記有機領域の平坦な伸長部分よりも小さな表面積の広がりを有して形成されていることを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも1項に記載の部品。
【請求項8】
上記各櫛形電極接続区域よりも遠位の、上記突出した櫛形電極区域の1つの端部は、上記有機領域の1つの端面で終結していることを特徴とする、請求項1〜7の少なくとも1項に記載の部品。
【請求項9】
上記各櫛形電極接続区域よりも近位の、上記突出した櫛形電極区域の1つの端部は、上記有機領域の端面までの長さAを有しており、上記突出した櫛形電極区域は、長さ比A:Dが、少なくとも1、好ましくは少なくとも3、および、より好ましくは少なくとも10で形成されており、Dは、上記突出した櫛形電極区域の幅であることを特徴とする、請求項1〜8の少なくとも1項に記載の部品。
【請求項10】
上記櫛形サブ電極によって形成された上記電極は、基板側の電極であることを特徴とする、請求項1〜9の少なくとも1項に記載の部品。
【請求項11】
互いに噛み合った領域内の、上記突出した櫛形電極区域のうちの隣接し合う上記突出した櫛形電極区域間の横方向の間隔は、約10μmよりも短いことを特徴とする、請求項1〜10の少なくとも1項に記載の部品。
【請求項12】
少なくとも上記有機領域に平坦に重なり合った拡散素子が形成されていることを特徴とする、請求項1〜11の少なくとも1項に記載の部品。
【請求項13】
上記突出した櫛形電極区域に、それぞれ1つの電気安全構造体が割当てられていることを特徴とする、請求項1〜12の少なくとも1項に記載の部品。
【請求項14】
請求項1〜13の少なくとも1項に記載の幾つかの発光有機部品の直列接続を有する、アレイ、特に照明装置またはディスプレイ装置。
【請求項15】
互いに電気的に短絡された櫛形サブ電極によって形成された1つの電極を備える、電子部品、特に有機発光部品のための電極構造であって、上記櫛形サブ電極において、各櫛形電極接続区域から突出した櫛形電極区域が、少なくとも部分的に互いに噛み合いながら配置されている、電極構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−517048(P2011−517048A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504306(P2011−504306)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000957
【国際公開番号】WO2009/127175
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(503180100)ノヴァレッド・アクチエンゲゼルシャフト (47)
【Fターム(参考)】