説明

発光管、蛍光ランプ装置及び照明器具

【課題】発光管における蛍光体層による光出力障害面の面積を小さくし、光出力の効率化の改善を図ることができる発光管、蛍光ランプ装置及び照明器具を提供することを目的とする。
【解決手段】管体の一端から他端にわたる中間部を折返し、少なくとも一端から中間部又は他端から中間部に至る間を屈曲形成してなり、内周面に蛍光体層17を有する発光管11において、管体の少なくとも一部の横断面が非真円形を有しており、この横断面の長軸111が、発光管12の軸線19と実質的に平行をなしている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内周面に蛍光体層を有し、屈曲形成された発光管、この発光管を備える蛍光ランプ装置及び照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、従来例を図7及び図8を参照して説明する。図7は、電球形蛍光ランプを示し、その一部を切欠いて示す正面図である。
【0003】
図7において、電球形蛍光ランプ10は、管体からなる発光管11と、発光管11を支持する仕切体12と、発光管11の点灯装置を構成し仕切体12に支持される回路基板13と、仕切体12に支持されるカバー部材14と、カバー部材14に支持される口金15及び仕切体12に支持される発光管11を覆うグローブ16とから構成される。
【0004】
発光管11は、1本の直管状のガラス管体を二等分するように折返し、二等分したガラス管の中央領域を頂部11aとして、一対の端部11b、11cを除いて直線部分を残すことなく全てを螺旋状に屈曲形成する。したがって、2重螺旋状の発光管となる。
【0005】
螺旋状をなす発光管11の成形は、1本の直管状のガラス管を加熱し、柔軟にした状態で二等分するように折返し、さらに二等分したガラス管の中央領域を頂部11aとして、螺旋状に形成された溝を有する型に沿わせて巻き付けることにより形成する。
【0006】
発光管11は、透明な無鉛ガラスで管外径寸法を約9.0mmに構成し、ガラス管の内面には、例えば、3波長の蛍光体層17を形成し、発光管の高さ寸法を約73mmに構成されている。
【0007】
発光管11の一対の端部11b、11cは、各端部が直線状に対向し、かつ垂直方向に延伸して位置するように形成する。
【0008】
また、発光管の各端部11b、11cは、電極封止端部を構成するフレアステムによって封止されており、電極11d、11eがフレアステムによって封装され、この各電極11d、11eは、一対のジュメット線に懸架されたフィラメントコイルを有している。発光管11内には、アルゴン(Ar)とクリプトン(Kr)の混合ガス等からなる放電媒体である希ガスが封入されている。
【0009】
各端部11b、11cから導出された、リードワイヤーは、点灯装置の出力端子に接続される。
【0010】
回路基板13は、発光管11の点灯装置を構成する回路部品を実装したもので、回路部品は、発光管11をインバータ等を用いて高周波点灯する点灯装置を構成するための部品で、商用電源電圧を整流するダイオード、平滑用の電解コンデンサ、スイッチング素子としてのトランジスタ又は電界効果形トランジスタ、共振兼バラスト巻線、共振用のコンデンサ、スイッチング制御用の部品等の電子部品で構成されている。
【0011】
カバー部材14は、上下に開口部を有する略円錐形の円筒状をなし、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの耐熱性合成樹脂で構成されている。
【0012】
カバー部材14の下方の他端開口部の外面に口金15を嵌合して支持する。口金15は、導電性の金属材料で構成し、商用電源に配線され接続されたソケットに、ねじ込み等の手段で電気的に接続されて取付けられるもので、例えば、E26型の口金で構成し、内面に空間部を、外面に雄ねじ部15aを形成されている。
【0013】
グローブ16は、透明又は光拡散性を有する乳白色などで、ガラス又は合成樹脂により、一般白熱電球のガラス球と略同一形状の滑らかな曲面形状を有するように形成されている。
【0014】
発光管11の管体内周面の蛍光体層17は、発光管11をその頂部を上として立設し、発光管11の一方の端部11b又は11cから蛍光体の懸濁液を注入した後、乾燥させて形成される(特許文献1参照)。
【0015】
図8は、図7における発光管11をa−a線に沿って切断して示す拡大断面図である。図から明らかなように管体の断面形状は真円である。
【0016】
管体内周面に塗布された蛍光体層17は、その厚さが均一であることが望ましいが、管体に注入された蛍光体は、その粘度と重力にもよるが、通常は、図8に示すように、管体内周面を伝わり、重力方向下側の管体内周面底部に厚い蛍光体層17aを形成してしまうことになる。
【0017】
そして、この厚い蛍光体層17aは、その表面積に応じて管体から外部へ放射する光出力を低下させる光出力障害面18として作用する。つまり、厚い蛍光体層17aは、光のエネルギーを吸収してしまい、結果的に光出力を低下させてしまうことになる。
【0018】
したがって、光出力障害面の面積を小さくすることが必要となる。
【0019】
以上のような従来技術に対し、光出力障害面の面積を小さくすることを意図したものではないが、管体の横断面形状を楕円形等とした発光管がある(特許文献2参照)。
【0020】
この特許文献2に示されたものによれば、光出力障害面の面積を小さくすることが期待できる。
【特許文献1】特開2004−186147号公報
【特許文献2】特開2003−263972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、特許文献2に示されるものは、発光管軸線に対して、管体の横断面形状である楕円形の長軸が傾斜している形態である。このため、光出力障害面の面積をある程度小さくすることは可能であるが、まだ十分とはいえず、光出力の一層の効率化が期待されていた。
【0022】
そこで、本発明は、発光管における蛍光体層による光出力障害面の面積を小さくし、光出力の効率化の改善を図ることができる発光管、蛍光ランプ装置及び照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1に記載の発光管の発明は、管体の一端から他端にわたる中間部を折返し、少なくとも一端から中間部又は他端から中間部に至る間を屈曲形成してなり、内周面に蛍光体層を有する発光管において、管体の少なくとも一部の横断面が非真円形を有しており、この横断面の長軸が、発光管の軸線と実質的に平行をなしていることを特徴とする。
【0024】
請求項2に記載の発光管の発明は、管体横断面が楕円形であることを特徴とする。
【0025】
請求項3に記載の蛍光ランプ装置の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発光管と、発光管へ電力を供給する点等装置とを具備することを特徴とする。
【0026】
請求項4に記載の照明器具の発明は、請求項3に記載の蛍光ランプ装置を具備することを特徴とする。
【0027】
各発明において、特に指定しない限り用語の定義及び技術的意味は次による。
【0028】
非真円形とは、真円形のみを除外し、楕円形、三角形、四角形、菱形等の多角形等を含む概念である。
【0029】
中間部とは、管体の一端から他端にわたるいずれかの部分をいい、必ずしも二等分した部分を意味するものではない。
【0030】
発光管の軸線とは、発光管の端部側から折返しの部分側へ又はその逆に向かう方向をとらえた線分を意味する。
【0031】
管体の横断面とは、発光管の軸線に平行であって、管体に直交する面で切断した面を意味する。
【0032】
長軸が、発光管の軸線と実質的に平行とは、厳密な意味で平行であることを要するものではなく、長軸方向に蛍光体層の厚膜部の中心が位置するものであればよく、製造上の誤差、ズレ等を許容するものである。
【0033】
加えて、本発明の構成における形状的、位置的関係は幾何学的に厳密な内容を意味するものではない。
【0034】
なお、発光管とは、発光管全体に着目し、管体とは、発光管の部分に着目して用いているが、厳密な使い分けがなされている訳ではない。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、発光管における蛍光体層の厚膜部による光出力障害面の面積を小さくし、光出力の効率化を図ることができる発光管、蛍光ランプ装置及び照明器具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係る発光管、蛍光ランプ装置及び照明器具の実施形態を図1乃至図4を参照して説明する。なお、上述の従来例と同一又は相当部分には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0037】
まず、図1は、蛍光ランプ装置として電球形蛍光ランプ10を示し、その一部を切欠いて示す正面図である。ここで、図7に示した従来例と異なるのは発光管11の管体の断面の形状であり、断面は楕円形をなしている。
【0038】
図2は、図1における発光管11をA−A線に沿って切断して示す管体の拡大断面である。ここにおいて、発光管11の管体は、断面が楕円形である。
【0039】
図3において、図3(a)は、本実施形態を説明するために模式的に表した模式図である。この模式図は、発光管11の管体を軸線に平行であって、管体に直交する面で切断した管体横断面を示し、この横断面の長軸が、発光管11の軸線と平行をなしている。模式図は、図1において、発光管11の管体の横断面として、具体的には、図中B−B線に沿って発光管11を切断して示す断面図に対応している。
【0040】
19は、発光管11の軸線としてとらえており、この軸線19は、発光管11の端部11b、11c側から折返しの部分側へ又はその逆に向かう方向をとらえた線分であり、螺旋状をなす発光管11の回転中心軸でもある。
【0041】
管体の横断面は楕円形をなしており、楕円形には、長軸111と短軸112が存在するが、ここで長軸111は、発光管11の軸線19との関係において、ほぼ平行状態となっている。つまり、楕円形をなす管体が発光管11の軸線19に対して傾斜していないことを意味する。
【0042】
また、長軸111は短軸112に対して、1.7倍の長さになっている。長軸111は短軸112に対して、1.2倍以上の寸法関係が適切であると考えられる。
【0043】
これに対して、本実施形態の理解を容易にするため、上述の特許文献2に示された構成を同様に模式的に取上げて説明する。
【0044】
図3(b)は、図3(a)に対応する特許文献2に示される発光管の管体の横断面であり、管体の横断面が楕円形ではあるものの、楕円形の長軸111が発光管11の軸線19と非平行の状態となっている。つまり、楕円形が傾いているということになる。
【0045】
ここで、発光管11に蛍光体層17を形成する場合について説明すると、上述の従来例においても説明したが、発光管11の頂部を上として立設し、発光管11の一方又は双方の端部11b、11cから蛍光体の懸濁液を注入し、乾燥させて、つまり、蛍光体注入工程と乾燥工程を経て、蛍光体層17の形成を完了する。
【0046】
この過程において、図3(a)に示されるように、発光管11に注入された蛍光体は、蛍光体内周面を伝わり、管体内周面底部に溜まり、厚い蛍光体層17aを形成することになるが、管体の横断面が楕円形であり、深い弧の部分11fが底面側であるため、厚い蛍光体層17aにおける光出力障害面18の面積Waが小さくなる。
【0047】
これに対し、図3(b)に示されるものにおいては、管体横断面の楕円形状が傾斜している。このため、蛍光体が溜まる底面側の楕円形部分における弧11gが本実施形態に比し、浅くなる。つまり、弧が大きくなり、結果的に光出力障害面18の面積Wbが大きくなるものである。
【0048】
このように、図3に示された特許文献2に示されたものとの比較においても、本実施形態による光出力障害面18の面積が小さいことが分かる。
【0049】
したがって、本実施形態によれば、蛍光体の厚みによる光出力障害面18の面積を小さくすることができ、発光管11から外部へ光を放射するに際し、効率的であるということができる。
【0050】
なお、本実施形態では、発光管11の蛍光体層17の形成に関し、発光管11の頂部を上として立設し、発光管11の一方の端部から蛍光体の懸濁液を注入する場合について説明したが、逆に、発光管11の端部11b、11c側を上として立設し、この一方又は双方の端部11b、11cから蛍光体の懸濁液を注入するようにしてもよい。この場合も、蛍光体注入工程と乾燥工程を経て蛍光体層17の形成を完了する。
【0051】
次に、上記のように構成された電球形蛍光ランプを光源とした照明器具の構成を説明する。
【0052】
図4に示すように、20は店舗等の天井面Xに設置されたダウンライト式の照明器具で、下面に開口部21aを有する金属製の箱状をなした本体ケース21と、開口部21aに嵌合される金属製の反射体22で構成する。
【0053】
反射体22は、例えば、ステンレス等の金属板で構成し、下面周囲に飾り枠22aを一体に形成する。反射体22の上面板の中央部には、電球形蛍光ランプの口金をねじ込むソケット23を設置する。
【0054】
このソケット23に、上述した電球形蛍光ランプ10の口金15をねじ込む。これにより螺旋状をなす発光管11を有する電球形蛍光ランプ10が設置されたダウンライト式照明器具が構成される。
【0055】
このように構成された照明器具20は、光源となる電球形蛍光ランプの配光が一般白熱電球の配光に近似することで、照明器具内に配置されたソケット近傍の反射体への光の照射量が充分に確保され、反射体の光学設計とおりの器具特性を得ることができる。
【0056】
次に、本発明の他の実施形態を図5を参照して説明する。図5は、発光管11の横断面を示したものである。
【0057】
図5(a)は、断面略菱形であり、この管体横断面の長軸111が発光管11の軸線と平行となるように構成されている。
【0058】
同様に、図5(b)は、断面略三角形であり、この管体横断面の長軸111が発光管11の軸線と平行となるように構成されている。この場合、発光管11の端部側を上として立設し、一方又は双方の端部から蛍光体の懸濁液を注入する方式を採ったときは、蛍光体が溜まる深い弧の部分11fが発光管11の頂部側へ向くように管体を成形すればよい。
【0059】
図5(a)及び(b)に示されたこれらの実施形態によっても、発光管11における蛍光体層12による光出力障害面18の面積を小さくし、光出力の効率化を図ることができる。
【0060】
さらに、本発明の発光管の他の形状の実施形態を図6(a)及び(b)を参照して説明する。図6(a)は、発光管11の一端から他端にわたる中間部を折返し、一方の側のみを螺旋状に屈曲旋廻した1重螺旋状の発光管11である。15bは、発光管11の端部に接続された口金である。
【0061】
また、図6(b)は、発光管11の一端から他端にわたる中間部を折返し、一方の側のみを波状に屈曲した発光管11である。19は、発光管の軸線である。さらに、19a、19bも軸線としてとらえることができる。
【0062】
発光管の軸線とは、発光管の端部側から折返しの部分側へ又はその逆に向かう方向をとらえた線分を意味するから、この実施形態ばかりではなく、上述の各実施形態においても位置的に異なる無数の軸線が想定可能である。
【0063】
以上のように、本発明は、これら発光管形状のものにも適用可能である。
【0064】
さらにまた、本発明は、電球形蛍光ランプに限らず高出力の大形の屋外用照明器具にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態である電球形蛍光ランプを一部切り欠いて示す正面図である。
【図2】同発光管の断面を示す拡大図である。
【図3】同実施形態を説明するための模式図であり、(a)は本発明の実施形態の発光管の横断面図、(b)は従来例の発光管の横断面図である。
【図4】同実施形態である照明器具を示し、天井面に設置された照明器具を概略的に示した断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態としての発光管を示す横断面図である。
【図6】同他の実施形態としての発光管形状を示す正面図である。
【図7】従来の電球形蛍光ランプを一部切り欠いて示す正面図である。
【図8】同発光管の断面を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0066】
10 蛍光ランプ装置
11 発光管
17 蛍光体層
19 軸線
111 長軸
20 照明器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体の一端から他端にわたる中間部を折返し、少なくとも一端から中間部又は他端から中間部に至る間を屈曲形成してなり、内周面に蛍光体層を有する発光管において、管体の少なくとも一部の横断面が非真円形を有しており、この横断面の長軸が、発光管の軸線と実質的に平行をなしていることを特徴とする発光管。
【請求項2】
管体横断面が楕円形であることを特徴とする請求項1に記載の発光管。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の発光管と;
発光管へ電力を供給する点灯装置と;
を具備することを特徴とする蛍光ランプ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蛍光ランプ装置を具備することを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−265789(P2007−265789A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89128(P2006−89128)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】