発光装置、車両用前照灯、及び照明装置
【課題】発光部の劣化を抑制することが可能な発光装置を提供する。
【解決手段】ヘッドランプ1は、レーザ素子2から出射されたレーザ光を受けて発光する発光部4を備え、発光部4の取付位置または取付角度を変えることにより、発光部4におけるレーザ光の照射位置を変化させることが可能である。
【解決手段】ヘッドランプ1は、レーザ素子2から出射されたレーザ光を受けて発光する発光部4を備え、発光部4の取付位置または取付角度を変えることにより、発光部4におけるレーザ光の照射位置を変化させることが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光部の劣化を抑制することが可能な発光装置、車両用前照灯、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、励起光源としてLED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等の半導体発光素子を用い、これらの励起光源から生じた励起光を、蛍光体を含む発光部に照射してインコヒーレントな照明光を発生させる発光装置の研究が盛んになってきている。
【0003】
このような発光装置に関する技術の例として特許文献1が開示されている。
【0004】
特許文献1の光源装置は、短波長のレーザ光を出射するレーザダイオードと、該レーザダイオードからのレーザ光を平行光線束とするコリメータと、該コリメータからの平行光線束のレーザ光を集光するコンデンサと、該コンデンサで集光したレーザ光を吸収し自然放出光を放出する蛍光体とを有する。これにより、特許文献1の光源装置では、光量が大きいレーザ光が蛍光体によって吸収作用を受け、蛍光体から蛍光を自然放出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−295319号公報(平成15年10月15日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術には次のような問題がある。
【0007】
特許文献1における反射鏡(リフレクタ)の焦点位置近傍に載置された蛍光部をレーザ等で励起することで発光部からの発光を利用する投光器では、レーザ光の照射が集中する焦点位置近傍に蛍光部の劣化が生じやすい。そして、その劣化によって蛍光部から出射される蛍光の光量が減少するといった問題を生じる。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、発光部の劣化を抑制することが可能な発光装置、車両用前照灯、及び照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る発光装置は、上記の課題を解決するために、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、上記発光部の取付位置または取付角度を変えることにより、上記発光部における上記励起光の照射位置を変化させることが可能であることを特徴としている。
【0010】
一般に、発光部は、反射鏡の焦点位置における部分が最も強く励起される。そのため、従来の発光装置は、長期間使用されると、焦点位置およびその近傍における発光部の劣化が生じるケースが見受けられた。そして、従来の発光装置は、発光部が固定されるものであったため、その発光部の劣化に対処することができず、したがって、長期間の使用に適さないという問題があった。
【0011】
この点、本発明に係る発光装置は、発光部の取付位置または取付角度を変えることにより、発光部における励起光の照射位置を変化させることが可能である。
【0012】
したがって、本発明に係る発光装置は、発光部に劣化が生じる前に、あるいは発光装置の性能劣化が僅かにでも認められることを契機として、励起光の発光部における照射位置を変化させることで発光部の劣化を抑えることを可能とする。これにより、発光部の使用可能期間が延びるため、本発明に係る発光装置は、長期間の使用が可能となる。
【0013】
ここで、本発明に係る発光装置は、発光部の取付位置を変えることで上記照射位置を変化させることができる。つまり、本発明に係る発光装置は、発光部の取付位置を複数有することにより上記照射位置を変化させることができる。あるいは、本発明に係る発光装置は、発光部の取付角度を変えることにより、上記照射位置を変化させることができる。つまり、本発明に係る発光装置は、発光部の取付角度を変えることが可能な構造を有することで上記照射位置を変化させることができる。
【0014】
それゆえ、本発明に係る発光装置は、極めてシンプルな構造により発光装置の長寿命化を実現することができる。
【0015】
本発明に係る発光装置は、上記の課題を解決するために、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、上記発光部は、動作装置の往復運動によって変位されることにより、上記発光部における上記励起光の照射位置を変化させることが可能であることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、本発明に係る発光装置では、発光部は、動作装置の往復運動によって変位される。そして、発光部が変位されることにより、励起光の発光部における照射位置が変化するため、発光部の劣化を抑えることができる。
【0017】
上記往復運動は、特定の機構によって行われるものに限らず、クランク機構やピストン機構などの一般的な機器、装置等を用いてよい。
【0018】
また、本発明に係る発光装置は、上記の課題を解決するために、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、上記発光部は、交換可能に配設されることを特徴としている。
【0019】
本発明に係る発光装置では、発光部は交換可能に配設される。
【0020】
したがって、本発明に係る発光装置は、発光部の劣化が生じる前に、あるいは発光装置の性能劣化が僅かにでも認められることを契機として、励起光の発光部における照射位置を変化させることで発光部の劣化を抑えることを可能とする。
【0021】
また、本発明に係る発光装置では、上記発光部を支持する支持部材を備え、上記発光部は、上記支持部材を取り替えることにより、新たな発光部に交換される構成であってよい。
【0022】
一般に、発光装置では、発光部は支持部材によって支持されている。この点、本発明に係る発光装置は、支持部材を取り替えることにより新しい発光部への交換することができるため、より迅速かつ容易に、また、現実的な使用態様に即して発光部の交換を実現することができる。
【0023】
また、本発明に係る発光装置では、上記発光部において発光した光を反射する反射鏡を備え、上記励起光は、上記反射鏡の焦点位置またはその近傍に照射される構成であってよい。
【0024】
上記構成によれば、励起光の照射位置は、反射鏡の焦点位置またはその近傍に位置する。そのため、励起光の照射位置が固定された状態において、励起光の照射位置に対して発光部が相対的に移動(変位)することで、励起光の発光部における照射位置が変化することにより、発光部の劣化を抑えることができる。
【0025】
また、本発明に係る発光装置では、上記励起光源は、レーザ光を出射するレーザ光源である構成であってよい。
【0026】
励起光がレーザ光である場合、発光部は、レーザ光源から発せられた高い出力および光密度のレーザ光による劣化を受けやすい。そのため、本発明に係る発光装置は、特に励起光源がレーザ光である場合に、発光部の劣化が抑えられるという効果を発揮することができる。
【0027】
また、本発明に係る発光装置では、上記発光部は、上記励起光を受けて蛍光を発する蛍光体を少なくとも含む構成であってよい。
【0028】
また、本発明に係る車両用前照灯は、上記の発光装置を含む構成であってよい。
【0029】
また、本発明に係る照明装置は、上記の発光装置を含む構成であってよい。
【0030】
本発明に係る発光装置は、車両用前照灯や照明装置などに好適に適用することができる。これにより、例えば本発明に係る発光装置を車両用前照灯に適用した場合、長期間にわたって使用可能な車両用前照灯を実現することができ、上記従来の課題を容易に解決することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る発光装置は、以上のように、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、上記発光部の取付位置または取付角度を変えることにより、上記発光部における上記励起光の照射位置を変化させることが可能であるという構成である。
【0032】
また、本発明に係る発光装置は、以上のように、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、上記発光部は、動作装置の往復運動によって変位されることにより、上記発光部における上記励起光の照射位置を変化させることが可能であるという構成である。
【0033】
また、本発明に係る発光装置は、以上のように、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、上記発光部は、交換可能に配設される構成である。
【0034】
それゆえ、本発明に係る発光装置は、発光部の劣化を抑制することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示すヘッドランプ1の概略上面図を示す。
【図3】パラボラミラーの回転放物面を示す概念図である。
【図4】(a)はパラボラミラーの上面図、(b)はパラボラミラーの正面図、(c)はパラボラミラーの側面図である。
【図5】自動車におけるヘッドランプの配設方向を示す概念図である。
【図6】本実施の形態に係る他のヘッドランプの概略上面図を示し、(a)はヘッドランプが第1の位置に配設されている状態を、(b)はヘッドランプが第2の位置に配設されている状態を、(c)はヘッドランプが第3の位置に配設されている状態を、(d)はヘッドランプ200が第4の位置に配設されている状態を示す。
【図7】発光部を金属ベースに取り付ける構成を示す図であり、(a)は、金属ベースの第1の位置に発光部を取り付ける構成を、(b)は、金属ベースの第2の位置に発光部を取り付ける構成を、それぞれ説明するための図である。
【図8】発光部の取り付け角度が変更される様子を示す図である。
【図9】本実施の形態に係る他のヘッドランプの概略上面図を示す。
【図10】本実施の形態に係る他のヘッドランプの側面図を示す。
【図11】本実施の形態に係る他のヘッドランプの概略上面図を示す。
【図12】本実施の形態に係る他のヘッドランプの概略上面図を示す。
【図13】本実施の形態に係る他のヘッドランプにおける発光部の往復運動を実現するクランク機構を説明するための図である。
【図14】反射型ヘッドランプの概略側面図を示す。
【図15】透過型ヘッドランプの概略側面図を示す。
【図16】金属部材を使用しない、反射型ヘッドランプの概略側面図を示す。
【図17】透明部材を使用しない、透過型ヘッドランプの概略側面図を示す。
【図18】本実施の形態に係る他のヘッドランプの側面図を示す。
【図19】本実施の形態に係る他のヘッドランプの概略上面図であり、レーザ素子が発光部に対して3方向からレーザ光を照射する様子を示す図である。
【図20】上部に発光部が塗布された金属部材が金属ベースに取り付けられた様子を示す図である。
【図21】金属部材が金属ベースから取り外された様子を示す図である。
【図22】発光部の交換をネジにより行う方法を説明するための図である。
【図23】発光部の交換を嵌めこみにより行う方法を説明するための図である。
【図24】発光部の交換をバネを介して行う方法を説明するための図である。
【図25】本実施の形態に係る他のヘッドランプの概略上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しつつ、本実施の形態に係るヘッドランプ1等について説明する。なお、以下ではヘッドランプについて主に説明しているが、ヘッドランプは本願発明を適用する照明装置の一例であり、本願を任意の照明装置に適用可能であることは言うまでもない。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0037】
本発明の実施の一形態について図1等に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0038】
〔ヘッドランプ1の構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係るヘッドランプ1の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、ヘッドランプ1は、レーザ素子(励起光源)2、レンズ3、発光部4、パラボラミラー(反射鏡)5、金属ベース7、およびフィン8を備えている。
【0039】
(レーザ素子2)
レーザ素子2は、励起光を出射する励起光源として機能する発光素子である。このレーザ素子2は、複数設けられていてもよい。この場合、複数のレーザ素子2のそれぞれから励起光としてのレーザ光が発振される。レーザ素子2を1つのみ用いてもよいが、高出力のレーザ光を得るためには、複数のレーザ素子2を用いる方が容易である。
【0040】
レーザ素子2は、1チップに1つの発光点を有するものであってもよく、1チップに複数の発光点を有するものであってもよい。レーザ素子2のレーザ光の波長は、例えば、405nm(青紫色)または450nm(青色)であるが、これらに限定されず、発光部4に含める蛍光体の種類に応じて適宜選択されればよい。
【0041】
また、励起光源として、レーザ素子の代わりに、発光ダイオード(LED)を用いることも可能である。
【0042】
(レンズ3)
レンズ3は、レーザ素子2から出射したレーザ光が発光部4に適切に照射されるように、当該レーザ光の照射範囲を調節(例えば、拡大)するためのレンズであり、レーザ素子2のそれぞれに配設されている。
【0043】
(発光部4)
発光部4は、レーザ素子2から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発するものであり、レーザ光を受けて発光する蛍光体を含んでいる。具体的には、発光部4は、封止材の内部に蛍光体が分散されているもの、または蛍光体を固めたものである。発光部4は、レーザ光を蛍光に変換するため、波長変換素子であると言える。
【0044】
この発光部4は、金属ベース7の上、かつ、パラボラミラー5の焦点位置を含むように配置されており、その様子が図2に示されている。図2は、図1に示すヘッドランプ1の概略上面図を示す。同図に示すように、発光部4は、金属ベース7の上部であって、パラボラミラー5の焦点位置(図中の点P)を含むように配置されている。そのため、発光部4から出射した蛍光は、パラボラミラー5の反射曲面に反射することで、その光路が制御される。
【0045】
発光部4の蛍光体として、例えば、酸窒化物系蛍光体(例えば、サイアロン蛍光体)またはIII−V族化合物半導体ナノ粒子蛍光体(例えば、インジュウムリン:InP)を用いることができる。これらの蛍光体は、レーザ素子2から発せられた高い出力(および/または光密度)のレーザ光に対しての熱耐性が高く、レーザ照明光源に最適である。ただし、発光部4の蛍光体は、上述のものに限定されず、窒化物蛍光体など、その他の蛍光体であってもよい。
【0046】
また、ヘッドランプの照明光は、所定の範囲の色度を有する白色にしなければならないことが、法律により規定されている。そのため、発光部4には、照明光が白色となるように選択された蛍光体が含まれている。
【0047】
例えば、青色、緑色および赤色の蛍光体を発光部4に含め、405nmのレーザ光を照射すると白色光が発生する。または、黄色の蛍光体(または緑色および赤色の蛍光体)を発光部4に含め、450nm(青色)のレーザ光(または、440nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する、いわゆる青色近傍のレーザ光)を照射することでも白色光が得られる。
【0048】
発光部4の封止材は、例えば、ガラス材(無機ガラス、有機無機ハイブリッドガラス)、シリコーン樹脂等の樹脂材料である。ガラス材として低融点ガラスを用いてもよい。封止材は、透明性の高いものが好ましく、レーザ光が高出力の場合には、耐熱性の高いものが好ましい。
【0049】
(反射鏡(パラボラミラー5))
パラボラミラー5は、発光部4が発生させた蛍光を反射し、所定の立体角内を進む光線束(照明光)を形成する。このパラボラミラー5は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された部材であってもよいし、金属製の部材であってもよい。
【0050】
図3は、パラボラミラー5の回転放物面を示す概念図であり、図4(a)はパラボラミラー5の上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図4(a)〜(c)は、説明図面をわかりやすく例示するよう直方体の部材の内部をくり抜くことでパラボラミラー5を形成した例を示している。
【0051】
図3に示すように、パラボラミラー5は、放物線の対称軸を回転軸として当該放物線を回転させることによって形成される曲面(放物曲面)を、上記回転軸を含む平面で切断することによって得られる部分曲面の少なくとも一部をその反射面に含んでいる。図4(a)および(c)において、符号5aで示す曲線が放物曲面を示している。また、図4(b)に示すように、パラボラミラー5を正面から見た場合、その開口部5b(照明光の出口)は半円である。
【0052】
また、レーザ素子2は、パラボラミラー5の外部に配置されており、パラボラミラー5には、レーザ光を透過または通過させる窓部6が形成されている。この窓部6は、開口部であってもよいし、レーザ光を透過可能な透明部材を含むものであってもよい。例えば、レーザ光を透過し、白色光(発光部4の蛍光)を反射するフィルターを設けた透明板を窓部6として設けてもよい。この構成では、発光部4の蛍光が窓部6から漏れることを防止できる。
【0053】
窓部6は、複数のレーザ素子2に共通のものが1つ設けられていてもよいし、各レーザ素子2に対応した複数の窓部6が設けられていてもよい。
【0054】
なお、パラボラミラー5の一部にパラボラではない部分を含めてもよい。また、反射鏡は、閉じた円形の開口部を有するパラボラミラーまたはその一部を含むものであってもよい。また、反射鏡は、パラボラミラーに限定されず、楕円面ミラーや自由曲面ミラーであってもよい。すなわち、反射鏡は、回転軸を中心として図形(楕円、円、放物線)を回転させることによって形成される曲面の少なくとも一部をその反射面に含んでいるものであればよい。
【0055】
(金属ベース7)
金属ベース7は、発光部4を支持する板状の支持部材であり、金属(例えば、銅や鉄)からなっている。それゆえ、金属ベース7は熱伝導性が高く、発光部4の発熱を効率的に放熱することができる。なお、発光部4を支持する部材は、金属からなるものに限定されず、金属以外の熱伝導性が高い物質(ガラス、サファイアなど)を含む部材でもよい。ただし、発光部4と当接する金属ベース7の表面は反射面として機能することが好ましい。上記表面が反射面であることにより、発光部4の上面から入射したレーザ光が蛍光に変換された後に、当該反射面で反射させてパラボラミラー5へ向かわせることができる。または、発光部4の上面から入射したレーザ光を上記反射面で反射させて、再度発光部4の内部に向かわせて蛍光に変換することができる。
【0056】
金属ベース7は、パラボラミラー5によって覆われているため、金属ベース7は、パラボラミラー5の反射曲面(放物曲面)と対向する面を有していると言える。金属ベース7の発光部4が設けられている側の表面は、パラボラミラー5の回転放物面の回転軸と概ね平行であり、当該回転軸を概ね含んでいることが好ましい。
【0057】
(フィン8)
フィン8は、金属ベース7を冷却する冷却部(放熱機構)として機能する。このフィン8は、複数の放熱板を有するものであり、大気との接触面積を増加させることにより放熱効率を高めている。金属ベース7を冷却する冷却部は、冷却(放熱)機能を有するものであればよく、ヒートパイプ、水冷方式や、空冷方式のものであってもよい。
【0058】
〔ヘッドランプ1の配設方法〕
図5は、ヘッドランプ1を自動車(車両)10の前照灯に適用した場合の、ヘッドランプ1の配設方向を示す概念図である。図5に示すように、ヘッドランプ1は、パラボラミラー5が鉛直下側に位置するように自動車10のヘッドに配設されてもよい。この配設方法では、上述のパラボラミラー5の投光特性により、自動車10の正面が明るく照らされるとともに、自動車10の前方下側も適度に照らしている。
【0059】
なお、ヘッドランプ1を自動車用の走行用前照灯(ハイビーム)に適用してもよいし、すれ違い用前照灯(ロービーム)に適用してもよい。また、自動車10の走行中に、走行状態に応じて、発光部4の照射面に照射されるレーザ光の光強度分布の制御を行ってよい。これにより、自動車10の走行中に任意の投光パターンにより投光することができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0060】
〔本発明の適用例〕
本発明の発光装置は、車両用前照灯のみならず、その他の照明装置に適用されてもよい。本発明の照明装置の一例として、ダウンライトを挙げることができる。ダウンライトは、家屋、乗物などの構造物の天井に設置される照明装置である。その他にも、本発明の照明装置は、車両以外の移動物体(例えば、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケットなど)のヘッドランプとして実現されてもよいし、サーチライト、プロジェクタ、ダウンライト以外の室内照明器具(スタンドランプなど)として実現されてもよい。
【0061】
〔配設位置の移動が可能な発光部4〕
次に、本実施形態の一実施例であるヘッドランプ200について、図6等を参照して説明する。なお、図1等により説明したのと同じ内容についてはその説明を省略する。
【0062】
図6は、ヘッドランプ200の概略上面図を示す。このうち、図6(a)はヘッドランプ200が第1の位置に配設されている状態を、図6(b)はヘッドランプ200が第2の位置に配設されている状態を示す。また、図6(c)はヘッドランプ200が第3の位置に配設されている状態を、図6(d)はヘッドランプ200が第4の位置に配設されている状態を示す。また、図中の点Pはパラボラミラー5の焦点位置を示し、発光部4の各角に記載されている番号(1〜4)は、正方形に形成された発光部4の各角の角番号を示す。
【0063】
図示するように、図6(a)では、焦点位置Pは発光部4の角1の近傍に位置する。図6(b)では、焦点位置Pは発光部4の角4の近傍に位置する。図6(c)では、焦点位置Pは発光部4の角3の近傍に位置する。図6(d)では、焦点位置Pは発光部4の角2の近傍に位置する。つまり、ヘッドランプ200では、発光部4は、パラボラミラー5の焦点位置Pを含む位置に配設されるものの、その取り付け位置は、図中の破線で示される領域内を移動(変位)可能に形成されている。この構成は、例えば図6(a)〜図6(d)に示す発光部4の4つの位置(第1〜第4の位置)それぞれで発光部4をネジ留め可能とすることで実現される。
【0064】
発光部4を金属ベース7に取り付ける構成を図7(a)、図7(b)に示す。図7は、発光部4を金属ベース7に取り付ける構成を示す図であり、図7(a)は、金属ベース7の第1の位置に発光部4を取り付ける構成を、図7(b)は、金属ベース7の第2の位置に発光部4を取り付ける構成を、それぞれ説明するための図である。
【0065】
図6を用いて説明した構成によれば、発光部4は、金属ベース7の破線で示す領域内を移動(変位)可能に配設される。この構成により、パラボラミラー5の焦点位置が発光部4の一箇所に集中することが回避されるため、発光部4の劣化を抑えることができ、その結果、ヘッドランプ200の長期間の使用が可能となる。
【0066】
なお、図6では、発光部4が正方形であるものとして説明している。しかしながら、発光部の形状は、正方形に限られず、例えば、円形、多角形、星型、矩形等の種々の形状であってよい。
【0067】
また、特にヘッドランプ200を自動車用のヘッドランプとして使用する場合には、例えば車検時、定期点検時において、発光部4の取り付け位置を定期的にシフトさせる運用とする。これにより、発光部4におけるレーザの励起位置を変更でき、経年使用による明るさの減少を気にすることなく使用でき、また、夜間の安全な運転を支援することが可能となる。
【0068】
なお、発光部4の取り付け位置の移動は手動による方法に限定されず、一定時間経過後取り付け位置を移動させる取り付け位置移動部により自動で移動させるなど、機械等により自動に移動させる方法でもよい。
【0069】
さらに、図6を参照して説明したヘッドランプ200では、発光部4を新品と交換するまでに、少なくとも4回の取り付け位置の変更が可能であり、それまではヘッドランプ200の光量を低下させることなく使用し続けることができる。したがって、ユーザは、図22等を参照して説明するヘッドランプ950(後述)と比べてより長期間、光量の低下を伴うことなくヘッドランプ200を使用することができる。
【0070】
なお、図6では、発光部4の取り付け位置は4箇所であるものとして説明している。しかしながら、上記取り付け位置は、4箇所に限られず、幾つであってもよい。そして、その取り付け位置の数が増えるほど、ユーザは、より長期間、光量の低下を伴うことなくヘッドランプ200を使用することができる。
【0071】
次に、配設位置の移動が可能な発光部4を実現する他の構成を図8により説明する。図8は、正方形状の発光部4の取付角度が変更される様子を示す図である。
【0072】
ここで、図8(b)は、図8(a)に示す発光部4を左に90度回転したときの様子を示す。図8(c)は、図8(b)に示す発光部4を左に90度回転したときの様子を示す。図8(d)は、図8(c)に示す発光部4を左に90度回転したときの様子を示す。このように、発光部4の取り付け角度を変更(変位)することによって、パラボラミラー5の焦点位置が発光部4の一箇所に集中することが回避されるため、発光部4の劣化を抑えることができ、その結果、ヘッドランプの長期間の使用が可能となる。
【0073】
なお、図8では、発光部4が正方形であるものとして説明している。しかしながら、発光部の形状は、正方形に限られず、例えば、円形、多角形、星型、矩形等の種々の形状であってよい。
【0074】
また、図8では、発光部4は、発光部4を取り付ける金属ベース7の取付面に平行に回転している。しかしながら、発光部は上記取付面に対して完全に平行に回転する必要はなく、発光部4の照射面において、レーザ光の照射位置が変化するように(レーザ光の照射位置が発光部4上の異なる位置となるように)回転すればよい。
【0075】
また、特に上記ヘッドランプを自動車用のヘッドランプとして使用する場合には、例えば車検時、定期点検時において、発光部4の取り付け角度を定期的にシフトさせる運用とする。これにより、発光部4におけるレーザの励起位置を変更でき、経年使用による明るさの減少を気にすることなく使用でき、また、夜間の安全な運転を支援することが可能となる。
【0076】
なお、発光部4の取り付け位置の移動は手動による方法に限定されず、一定時間経過後取り付け位置を移動させる取り付け位置移動部により自動で移動させるなど、機械等により自動に移動させる方法でもよい。
【0077】
〔移動自在な発光部4〕
次に、本実施形態の一実施例であるヘッドランプ300について、図9等を参照して説明する。なお、図1等により説明したのと同じ内容についてはその説明を省略する。
【0078】
図9は、ヘッドランプ300の概略上面図を示す。ヘッドランプ300では、環状の発光部4は、パラボラミラー5の焦点位置Pを含む位置に配設されている。また、発光部4を支持する金属部材は、図示しないモータに接続されており、そのモータの動作を受けて図中矢印の方向に回転(変位)する。
【0079】
上記構成を、図10により具体的に説明する。図10は、ヘッドランプ300の側面図を示す。ヘッドランプ300では、金属ベース7の上部に金属部材(支持部材)16が配設されている。そして、その金属部材16は発光部4を支持している。また、金属ベース7の下方にはモータ(動作装置)30が配設されており、そのモータ30は、金属部材16に接続している。そのため、金属部材16は、モータ30が動作することで、図9の矢印の方向に回転する。回転速度は必ずしも速くなくてよく、例えば1〜200Hz程度の速度でよい。
【0080】
ヘッドランプ300は、上記構成を備えることにより以下の効果を奏する。具体的には、ヘッドランプ300では、発光部4は、モータ30の動作を受けて常に回転する金属ベース7に支持されている。したがって、パラボラミラー5の焦点位置が発光部4の一箇所に集中することなく分散されることになるため、発光部の劣化が抑えられ、ヘッドランプ300を長期間使用することが可能となる。
【0081】
このヘッドランプ300を自動車用のヘッドランプとして使用すると、発光部4の特定の位置が劣化することがなくなるため、経年使用による明るさの減少が極めて遅くなり、夜間の安全な運転を支援することが可能となる。
【0082】
次に、本実施形態の一実施例であるヘッドランプ400について、図11等を参照して説明する。なお、図1等により説明したのと同じ内容についてはその説明を省略する。
【0083】
図11は、ヘッドランプ400の概略上面図を示す。また、図12は、ヘッドランプ500の概略上面図を示す。図11に示すように、ヘッドランプ400では、発光部4は図面左右方向に往復運動(変位)する。また、ヘッドランプ500では、発光部4は図面上下方向に往復運動する。この動作を、図13により説明する。
【0084】
図13は、ヘッドランプ400またはヘッドランプ500における発光部4の往復運動を実現するクランク機構40を説明するための図である。
【0085】
クランク機構40は、クランク・ディスク41と、スライダ42と、連接棒43とを備える。クランク・ディスク41は、例えばヘッドランプ400またはヘッドランプ500の電源と連動して回転運動が行われる。そして、そのクランク・ディスク41の回転運動が、連接棒43を介して、スライダ42に伝達される。このとき、クランク・ディスク41の回転運動は、往復運動としてスライダ42に伝達される。そのため、スライダ42に発光部4を連結することにより、クランク・ディスク41の往復運動を発光部4の横方向または縦方向への往復運動とすることができる。
【0086】
ヘッドランプ400およびヘッドランプ500は、上記構成により、レーザ素子2から出射される励起光の照射位置を発光部4の一箇所に集中させることなく分散させることができるため、発光部4の劣化を抑えることができ、長期間使用を実現することができる。
【0087】
なお、モータ30、クランク機構40による実施例を説明したが、本実施形態はこれら実施例に限定されない。例えば、発光部4を載置する金属ベースそのものが振動する実施例も考えられる。また、発光部4が、不定の方向に振動するバネ等によって金属ベース7に固定されており、そのバネの作用によって不定の方向に発光部4が移動する、といった実施例も考えられる。また、プログラム制御によって発光部4の移動を精密に制御して、発光部4の照射面上のほぼ全面にわたってレーザ光を均一に照射する実施例も考えられる。つまり、本実施形態には、レーザ素子2から出射される励起光の照射位置を発光部4の一箇所に集中させることなく分散させるという同様の技術的思想を有する種々の実施例が含まれる。
【0088】
〔反射型・透過型ヘッドランプについて〕
これまでの説明では、ヘッドランプは、パラボラミラー5が配設されている側から発光部4に対してレーザ光を照射する発光部の構成(本願ではこれを「反射型発光部」と称する。)を備えたヘッドランプに関するものであった。本実施形態では、反射型発光部を備えたヘッドランプを反射型ヘッドランプと称する。反射型ヘッドランプでは、パラボラミラー5が配設されている側から発光部4に対してレーザ光が照射され、それにより、発光部4は、レーザ光の照射面において蛍光を発する。そして、蛍光部4から発生した蛍光は、パラボラミラー5で反射して、ヘッドランプの外部に照射される。
【0089】
しかしながら、本実施形態は、パラボラミラー5が配設されている側とは反対側から、発光部4に対してレーザ光が照射される発光部の構成(本願ではこれを「透過型発光部」と称する。)を備えたヘッドランプにも適用することができる。本実施形態では、透過型発光部を備えたヘッドランプを透過型ヘッドランプと称する。透過型ヘッドランプでは、パラボラミラー5が配設されている側とは反対側から、発光部4に対してレーザ光が照射される。それにより、発光部4は、レーザ光の照射面と反対側の面(パラボラミラー5に対向する側の面)において蛍光を発する。そして、蛍光部4から発生した蛍光は、パラボラミラー5で反射して、ヘッドランプの外部に照射される。
【0090】
また、本実施形態は、金属部材16上に発光部4を設ける構成に限られず、金属部材16を備えていない構成や、透過型発光部の構成において、透明部材(支持部材)25上に発光部4を設ける構成も含む。これらの実施例を図14〜図17により説明する。
【0091】
図14は、反射型ヘッドランプ950の概略側面図を示す。図15は、透過型ヘッドランプ600の概略側面図を示す。また、図16は、金属部材を使用しない、反射型ヘッドランプ700の概略側面図を示す。図17は、透明部材を使用しない、透過型ヘッドランプ800の概略側面図を示す。
【0092】
図15のヘッドランプ600では、発光部4は、透明部材25上に設けられている。透明部材25は、熱伝導性が優れ、レーザの波長に対する透過性が高い材料が好ましい。透明部材25の一例としてガラスが挙げられる。そして、金属ベース7には開口50が形成されており、レーザ光が、その開口50を通って、透明部材25を透過して発光部4に照射される。
【0093】
図16のヘッドランプ700は、反射型ヘッドランプであって、発光部4は金属ベース7上に直接配設されている。
【0094】
図17のヘッドランプ800では、発光部4は、透明部材25を介することなく、金属ベース7上に直接配設されている。そして、レーザ光は、金属ベース7に形成された開口50を通って発光部4に照射される。
【0095】
図16、図17の発光部4は、蛍光体をプレート状に焼き固めることにより作製されており、バネや押さえ治具により金属ベース7に固定される。あるいは、発光部4は、図示しないモータ30やクランク機構40などに接続される構成であってもよい。これにより、発光部4は、パラボラミラー5の焦点位置を含むように配設され、レーザ光が照射される発光部4の面である照射面とパラボラミラー5の焦点位置との相対的な位置関係を変化させることが可能となる。
【0096】
さらに、本実施形態は、反射型ヘッドランプおよび透過型ヘッドランプの何れのタイプであっても、適用することができる。さらに、本実施形態に係るヘッドランプでは、金属部材16および透明部材25の有無にかかわらず、発光性能を維持した装置を提供することができる。そのため、発光部4を長期間使用することが可能となる。
【0097】
〔交換可能な発光部4〕
次に、本実施形態の一実施例であるヘッドランプ950について、図18等を参照して説明する。なお、図1等により説明したのと同じ内容についてはその説明を省略する。
【0098】
図18は、本実施の形態に係るヘッドランプ960の側面図を示す。ヘッドランプ960は、レーザ素子2を3個有する。3つのレーザ素子2はそれぞれ、9mmΦの金属パッケージに実装されており、波長405nm、2Wのレーザ光を出力する。そして、レーザ素子2は、発光部4に対して3方向からレーザ光を照射する。このとき、レーザ素子2から出射されたレーザ光は、集光レンズ3を通して、発光部4上の1mmΦのエリアに集光される。
【0099】
図19は、ヘッドランプ960の概略上面図であり、レーザ素子2が発光部4に対して3方向からレーザ光を照射する様子を示す図である。図面の上側から、レーザ素子2a、レーザ素子2b、及びレーザ素子2cがその順序で配設されている。そして、レーザ素子2a、レーザ素子2b、及びレーザ素子2cは、発光部4に対して、発光部4上の1mmΦのエリア(図中、発光部4の環状部)にレーザ光を集中的に照射する。
【0100】
パラボラミラー5は、樹脂製パラボラミラーの内面にアルミニウムがコーティングされたものであり、前面開口部は半径30mmの半円形であり、奥行きは30mmである。
【0101】
発光部4は、白色で発光するように3種類のRGB蛍光体が混合されている。このとき、赤色蛍光体は、CaAlSiN3:Euであり、緑色蛍光体は、β−SiAlON:Euであり、青色蛍光体は(BaSr)MgAl10O17:Euで構成されている。また、発光部4の厚さは0.1mmの薄膜状に形成されており、上記蛍光体の粉末が、透明樹脂に混ぜられて金属ベース7の表面に塗布されている。発光部4は、パラボラミラー5の焦点が、レーザ光が照射される発光部4の面である照射面の中心位置近傍となるように配置されている。つまり、レーザ素子2は、パラボラミラー5の焦点位置に相当する部分をレーザ光で励起する。
【0102】
さらに、発光部4は、照射面の延長線(図中のLで示す線)がパラボラミラー5の開口部の最外部と交わるように、金属ベース7の表面に対して一定の角度を有するように傾けて配置されている。これにより、金属ベース7の外部から発光部4における発光点が直視されなくなるため、外部から見たときのギラツキや幻惑等が抑制される。また、これにより、発光部4から出射される蛍光を、効率的かつ無駄なくパラボラミラー5で反射することができる。
【0103】
金属ベース7は、アルミニウム等の放熱効率の高い材質からなり、この金属ベース7がレーザおよび発光部4による熱を放熱する役割も果たす。
【0104】
さらに、ヘッドランプ960は、一定の使用期間を経過した発光部4を、新しい発光部4と交換可能に構成されている。そのことを、図20、図21により説明する。
【0105】
図20は、上部に発光部4が塗布された金属部材(支持部材)15が金属ベース7に取り付けられた様子を示す図である。また、図21は、金属部材15が金属ベース7から取り外された様子を示す図である。
【0106】
各図に示すように、発光部4は、発光部4が塗布された金属部材15とともに金属ベース7から容易に取り外しができ、かつ、新しい金属部材15と交換可能な構成で実現されている。このように、一定期間使用(点灯)するごとに新品の発光部4(発光部4が塗布された金属部材15)を交換可能な構成とすることで、ヘッドランプ960は、その明るさの減少を補填しつつ、長期間使用することができる。
【0107】
なお、金属部材15の材質は特に限定されないが、金属部材15が取り付けられる金属ベース7と同じ材質であることが好ましい。これにより、異なる種類の金属材料が電気的に接触して発生しうる異種金属接触腐食を防ぐことができる。
【0108】
次に、交換可能な発光部4を実現する他の構成である発光部4のみを交換する構成を図22により説明する、図22は、発光部4の交換をネジにより行う方法を説明するための図である。
【0109】
同図に示すように、発光部4は、板状の金属部材16上に載置されている。その金属部材16は、金属ベース7に形成された凹部に嵌め込まれ、ネジ17aおよびネジ17bにより金属ベース7に固定される。なお、金属部材16は、金属ベース7に対して、ネジ留めとともに、あるいはネジ留めの代わりに、接着剤での接着、半田付けにより取り付けられてもよい。上記構成によれば、発光部を容易に交換することができる。
【0110】
次に、交換可能な発光部4を実現する他の構成を図23により説明する、図23は、発光部4の交換を嵌めこみにより行う方法を説明するための図である。
【0111】
同図に示すように、発光部4は、棒状の金属部材18上で支持されている。その金属部材18は、金属ベース7に形成された開口部に嵌め込まれ(あるいは、ねじ込まれ)、金属ベース7に固定される。なお、金属部材18は、金属ベース7に対して、嵌め込みとともに、あるいは嵌め込みの代わりに、接着剤での接着、半田付けにより取り付けられてもよい。上記構成によれば、発光部を容易に交換することができる。
【0112】
次に、交換可能な発光部4を実現する他の構成を図24により説明する、図24は、発光部4の交換をバネを介して行う方法を説明するための図である。
【0113】
同図に示すように、発光部4は、板状の金属部材16上に支持されている。その金属部材16は、金属ベース7に形成された凹部に嵌め込まれ、バネ19aおよびバネ19bを用いたバネ押さえにより金属ベース7に固定されている。金属部材16は、金属ベース7に対して、バネ押さえとともに、あるいはバネ押さえの代わりに、接着剤での接着、半田付け、嵌め込みにより取り付けられてもよい。上記構成によれば、発光部を容易に交換することができる。
【0114】
以上、図22〜図24により説明した構成によれば、発光部4は、金属ベース7から容易に取り外しができ、かつ、新しい発光部と交換することができる。
【0115】
また、このヘッドランプ950を自動車用のヘッドランプとして使用する場合には、例えば車検時、定期点検時に発光部4を新しい発光部と交換する運用を行うことにより、経年使用による明るさの減少を気にすることなく使用でき、また、夜間の安全な運転を支援することもできる。さらに、ユーザの好みにより、蛍光部材の色味(色温度)を規制範囲内で自由に選択して取り付け(交換)することもできる。
【0116】
なお、発光部4を新しい発光部と交換することが可能な構成は、当然に、上記説明した構成に限られず、他の構成で実現されてもよい。
【0117】
〔変形例〕
さらに、本実施形態に含まれる種々のバリエーションを説明する。
【0118】
ヘッドランプ1等では、反射鏡としてパラボラミラー5が使用されるものとして説明している。しかしながら、本実施形態では、反射鏡の形状は限定されない。例えば、反射鏡は、円形ミラー、楕円ミラー、自由曲面型のミラー、マルチファセットなどを使用することができる。また、投光手段としてプロジェクションレンズを用いてもよい。
【0119】
また、本実施形態では、レーザ素子2で発生するレーザの波長、集光方法も限定されない。例えば、レーザ光の波長は、405nmに限定されず450nm等であってよい。さらに、レーザの集光方法は、レンズ集光、楔型導光パーツ、凹面鏡集光などであってよい。また、本実施形態では、蛍光体の種類、発光部の形状、発光部からの発光色も限定されない。
【0120】
その一例を図25により説明する。図25は、ヘッドランプ970の概略上面図を示す。
【0121】
ヘッドランプ970では、レーザ素子2を2個有する(図面では-1つのみ記載)。2つのレーザ素子2はそれぞれ、9mmΦの金属パッケージに実装されており、波長405nm、2Wのレーザ光を出力する。このとき、レーザ素子2から出射されたレーザ光は、集光レンズ3を通して、発光部4上の1mmΦのエリアに集光される。
【0122】
リフレクタ60は、樹脂製パラボラミラーの内面にアルミニウムがコーティングされてたものであり、前面開口部は直径50mmの円形であり、奥行きは13mmである。
【0123】
発光部4は、白色で発光するように3種類のRGB蛍光体が混合されている。このとき、赤色蛍光体は、CaAlSiN3:Euであり、緑色蛍光体は、β−SiAlON:Euであり、青色蛍光体は(BaSr)MgAl10O17:Euで構成されている。また、発光部4の厚さは2mmΦ×0.1mmの薄膜状に形成されており、上記蛍光体の粉末が、透明樹脂に混ぜられて金属ベース7の表面に塗布されている。発光部4は、リフレクタ60の焦点が、レーザ光が照射される発光部4の面である照射面の中心位置近傍となるように配置されている。つまり、レーザ素子2は、リフレクタ60の焦点位置に相当する部分をレーザ光で励起する。なお、発光部4は図示しない金属部材上に設けられており、金属部材は、金属支柱70に設けられている。また、窓部6から発光部4の照射面までの奥行きは12mmである。また、その金属支柱70は、リフレクタ60に支持されており、発光部4からの熱を逃がす役割を果たしている。
【0124】
ヘッドランプ970では、金属部材が設けられた金属支柱70を交換可能な構成とし、一定期間経過ごとに交換する運用とすることにより、発光部4の劣化による影響を受けることなく長期間の使用を可能としている。
【0125】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、発光部の劣化を抑制することが可能な発光装置に関し、特に、車両用前照灯、及び照明装置に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0127】
1 ヘッドランプ
2 レーザ素子(励起光源)
3 集光レンズ
4 発光部
5 パラボラミラー(反射鏡)
7 金属ベース
8 フィン
15、16、18 金属部材(支持部材)
25 透明部材(支持部材)
17a、17b ネジ
19a、19b バネ
30 モータ(動作装置)
40 クランク機構(動作装置)
60 リフレクタ
70 金属支柱(支持部材)
P 焦点位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光部の劣化を抑制することが可能な発光装置、車両用前照灯、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、励起光源としてLED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等の半導体発光素子を用い、これらの励起光源から生じた励起光を、蛍光体を含む発光部に照射してインコヒーレントな照明光を発生させる発光装置の研究が盛んになってきている。
【0003】
このような発光装置に関する技術の例として特許文献1が開示されている。
【0004】
特許文献1の光源装置は、短波長のレーザ光を出射するレーザダイオードと、該レーザダイオードからのレーザ光を平行光線束とするコリメータと、該コリメータからの平行光線束のレーザ光を集光するコンデンサと、該コンデンサで集光したレーザ光を吸収し自然放出光を放出する蛍光体とを有する。これにより、特許文献1の光源装置では、光量が大きいレーザ光が蛍光体によって吸収作用を受け、蛍光体から蛍光を自然放出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−295319号公報(平成15年10月15日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術には次のような問題がある。
【0007】
特許文献1における反射鏡(リフレクタ)の焦点位置近傍に載置された蛍光部をレーザ等で励起することで発光部からの発光を利用する投光器では、レーザ光の照射が集中する焦点位置近傍に蛍光部の劣化が生じやすい。そして、その劣化によって蛍光部から出射される蛍光の光量が減少するといった問題を生じる。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、発光部の劣化を抑制することが可能な発光装置、車両用前照灯、及び照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る発光装置は、上記の課題を解決するために、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、上記発光部の取付位置または取付角度を変えることにより、上記発光部における上記励起光の照射位置を変化させることが可能であることを特徴としている。
【0010】
一般に、発光部は、反射鏡の焦点位置における部分が最も強く励起される。そのため、従来の発光装置は、長期間使用されると、焦点位置およびその近傍における発光部の劣化が生じるケースが見受けられた。そして、従来の発光装置は、発光部が固定されるものであったため、その発光部の劣化に対処することができず、したがって、長期間の使用に適さないという問題があった。
【0011】
この点、本発明に係る発光装置は、発光部の取付位置または取付角度を変えることにより、発光部における励起光の照射位置を変化させることが可能である。
【0012】
したがって、本発明に係る発光装置は、発光部に劣化が生じる前に、あるいは発光装置の性能劣化が僅かにでも認められることを契機として、励起光の発光部における照射位置を変化させることで発光部の劣化を抑えることを可能とする。これにより、発光部の使用可能期間が延びるため、本発明に係る発光装置は、長期間の使用が可能となる。
【0013】
ここで、本発明に係る発光装置は、発光部の取付位置を変えることで上記照射位置を変化させることができる。つまり、本発明に係る発光装置は、発光部の取付位置を複数有することにより上記照射位置を変化させることができる。あるいは、本発明に係る発光装置は、発光部の取付角度を変えることにより、上記照射位置を変化させることができる。つまり、本発明に係る発光装置は、発光部の取付角度を変えることが可能な構造を有することで上記照射位置を変化させることができる。
【0014】
それゆえ、本発明に係る発光装置は、極めてシンプルな構造により発光装置の長寿命化を実現することができる。
【0015】
本発明に係る発光装置は、上記の課題を解決するために、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、上記発光部は、動作装置の往復運動によって変位されることにより、上記発光部における上記励起光の照射位置を変化させることが可能であることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、本発明に係る発光装置では、発光部は、動作装置の往復運動によって変位される。そして、発光部が変位されることにより、励起光の発光部における照射位置が変化するため、発光部の劣化を抑えることができる。
【0017】
上記往復運動は、特定の機構によって行われるものに限らず、クランク機構やピストン機構などの一般的な機器、装置等を用いてよい。
【0018】
また、本発明に係る発光装置は、上記の課題を解決するために、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、上記発光部は、交換可能に配設されることを特徴としている。
【0019】
本発明に係る発光装置では、発光部は交換可能に配設される。
【0020】
したがって、本発明に係る発光装置は、発光部の劣化が生じる前に、あるいは発光装置の性能劣化が僅かにでも認められることを契機として、励起光の発光部における照射位置を変化させることで発光部の劣化を抑えることを可能とする。
【0021】
また、本発明に係る発光装置では、上記発光部を支持する支持部材を備え、上記発光部は、上記支持部材を取り替えることにより、新たな発光部に交換される構成であってよい。
【0022】
一般に、発光装置では、発光部は支持部材によって支持されている。この点、本発明に係る発光装置は、支持部材を取り替えることにより新しい発光部への交換することができるため、より迅速かつ容易に、また、現実的な使用態様に即して発光部の交換を実現することができる。
【0023】
また、本発明に係る発光装置では、上記発光部において発光した光を反射する反射鏡を備え、上記励起光は、上記反射鏡の焦点位置またはその近傍に照射される構成であってよい。
【0024】
上記構成によれば、励起光の照射位置は、反射鏡の焦点位置またはその近傍に位置する。そのため、励起光の照射位置が固定された状態において、励起光の照射位置に対して発光部が相対的に移動(変位)することで、励起光の発光部における照射位置が変化することにより、発光部の劣化を抑えることができる。
【0025】
また、本発明に係る発光装置では、上記励起光源は、レーザ光を出射するレーザ光源である構成であってよい。
【0026】
励起光がレーザ光である場合、発光部は、レーザ光源から発せられた高い出力および光密度のレーザ光による劣化を受けやすい。そのため、本発明に係る発光装置は、特に励起光源がレーザ光である場合に、発光部の劣化が抑えられるという効果を発揮することができる。
【0027】
また、本発明に係る発光装置では、上記発光部は、上記励起光を受けて蛍光を発する蛍光体を少なくとも含む構成であってよい。
【0028】
また、本発明に係る車両用前照灯は、上記の発光装置を含む構成であってよい。
【0029】
また、本発明に係る照明装置は、上記の発光装置を含む構成であってよい。
【0030】
本発明に係る発光装置は、車両用前照灯や照明装置などに好適に適用することができる。これにより、例えば本発明に係る発光装置を車両用前照灯に適用した場合、長期間にわたって使用可能な車両用前照灯を実現することができ、上記従来の課題を容易に解決することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る発光装置は、以上のように、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、上記発光部の取付位置または取付角度を変えることにより、上記発光部における上記励起光の照射位置を変化させることが可能であるという構成である。
【0032】
また、本発明に係る発光装置は、以上のように、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、上記発光部は、動作装置の往復運動によって変位されることにより、上記発光部における上記励起光の照射位置を変化させることが可能であるという構成である。
【0033】
また、本発明に係る発光装置は、以上のように、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、上記発光部は、交換可能に配設される構成である。
【0034】
それゆえ、本発明に係る発光装置は、発光部の劣化を抑制することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示すヘッドランプ1の概略上面図を示す。
【図3】パラボラミラーの回転放物面を示す概念図である。
【図4】(a)はパラボラミラーの上面図、(b)はパラボラミラーの正面図、(c)はパラボラミラーの側面図である。
【図5】自動車におけるヘッドランプの配設方向を示す概念図である。
【図6】本実施の形態に係る他のヘッドランプの概略上面図を示し、(a)はヘッドランプが第1の位置に配設されている状態を、(b)はヘッドランプが第2の位置に配設されている状態を、(c)はヘッドランプが第3の位置に配設されている状態を、(d)はヘッドランプ200が第4の位置に配設されている状態を示す。
【図7】発光部を金属ベースに取り付ける構成を示す図であり、(a)は、金属ベースの第1の位置に発光部を取り付ける構成を、(b)は、金属ベースの第2の位置に発光部を取り付ける構成を、それぞれ説明するための図である。
【図8】発光部の取り付け角度が変更される様子を示す図である。
【図9】本実施の形態に係る他のヘッドランプの概略上面図を示す。
【図10】本実施の形態に係る他のヘッドランプの側面図を示す。
【図11】本実施の形態に係る他のヘッドランプの概略上面図を示す。
【図12】本実施の形態に係る他のヘッドランプの概略上面図を示す。
【図13】本実施の形態に係る他のヘッドランプにおける発光部の往復運動を実現するクランク機構を説明するための図である。
【図14】反射型ヘッドランプの概略側面図を示す。
【図15】透過型ヘッドランプの概略側面図を示す。
【図16】金属部材を使用しない、反射型ヘッドランプの概略側面図を示す。
【図17】透明部材を使用しない、透過型ヘッドランプの概略側面図を示す。
【図18】本実施の形態に係る他のヘッドランプの側面図を示す。
【図19】本実施の形態に係る他のヘッドランプの概略上面図であり、レーザ素子が発光部に対して3方向からレーザ光を照射する様子を示す図である。
【図20】上部に発光部が塗布された金属部材が金属ベースに取り付けられた様子を示す図である。
【図21】金属部材が金属ベースから取り外された様子を示す図である。
【図22】発光部の交換をネジにより行う方法を説明するための図である。
【図23】発光部の交換を嵌めこみにより行う方法を説明するための図である。
【図24】発光部の交換をバネを介して行う方法を説明するための図である。
【図25】本実施の形態に係る他のヘッドランプの概略上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しつつ、本実施の形態に係るヘッドランプ1等について説明する。なお、以下ではヘッドランプについて主に説明しているが、ヘッドランプは本願発明を適用する照明装置の一例であり、本願を任意の照明装置に適用可能であることは言うまでもない。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0037】
本発明の実施の一形態について図1等に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0038】
〔ヘッドランプ1の構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係るヘッドランプ1の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、ヘッドランプ1は、レーザ素子(励起光源)2、レンズ3、発光部4、パラボラミラー(反射鏡)5、金属ベース7、およびフィン8を備えている。
【0039】
(レーザ素子2)
レーザ素子2は、励起光を出射する励起光源として機能する発光素子である。このレーザ素子2は、複数設けられていてもよい。この場合、複数のレーザ素子2のそれぞれから励起光としてのレーザ光が発振される。レーザ素子2を1つのみ用いてもよいが、高出力のレーザ光を得るためには、複数のレーザ素子2を用いる方が容易である。
【0040】
レーザ素子2は、1チップに1つの発光点を有するものであってもよく、1チップに複数の発光点を有するものであってもよい。レーザ素子2のレーザ光の波長は、例えば、405nm(青紫色)または450nm(青色)であるが、これらに限定されず、発光部4に含める蛍光体の種類に応じて適宜選択されればよい。
【0041】
また、励起光源として、レーザ素子の代わりに、発光ダイオード(LED)を用いることも可能である。
【0042】
(レンズ3)
レンズ3は、レーザ素子2から出射したレーザ光が発光部4に適切に照射されるように、当該レーザ光の照射範囲を調節(例えば、拡大)するためのレンズであり、レーザ素子2のそれぞれに配設されている。
【0043】
(発光部4)
発光部4は、レーザ素子2から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発するものであり、レーザ光を受けて発光する蛍光体を含んでいる。具体的には、発光部4は、封止材の内部に蛍光体が分散されているもの、または蛍光体を固めたものである。発光部4は、レーザ光を蛍光に変換するため、波長変換素子であると言える。
【0044】
この発光部4は、金属ベース7の上、かつ、パラボラミラー5の焦点位置を含むように配置されており、その様子が図2に示されている。図2は、図1に示すヘッドランプ1の概略上面図を示す。同図に示すように、発光部4は、金属ベース7の上部であって、パラボラミラー5の焦点位置(図中の点P)を含むように配置されている。そのため、発光部4から出射した蛍光は、パラボラミラー5の反射曲面に反射することで、その光路が制御される。
【0045】
発光部4の蛍光体として、例えば、酸窒化物系蛍光体(例えば、サイアロン蛍光体)またはIII−V族化合物半導体ナノ粒子蛍光体(例えば、インジュウムリン:InP)を用いることができる。これらの蛍光体は、レーザ素子2から発せられた高い出力(および/または光密度)のレーザ光に対しての熱耐性が高く、レーザ照明光源に最適である。ただし、発光部4の蛍光体は、上述のものに限定されず、窒化物蛍光体など、その他の蛍光体であってもよい。
【0046】
また、ヘッドランプの照明光は、所定の範囲の色度を有する白色にしなければならないことが、法律により規定されている。そのため、発光部4には、照明光が白色となるように選択された蛍光体が含まれている。
【0047】
例えば、青色、緑色および赤色の蛍光体を発光部4に含め、405nmのレーザ光を照射すると白色光が発生する。または、黄色の蛍光体(または緑色および赤色の蛍光体)を発光部4に含め、450nm(青色)のレーザ光(または、440nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する、いわゆる青色近傍のレーザ光)を照射することでも白色光が得られる。
【0048】
発光部4の封止材は、例えば、ガラス材(無機ガラス、有機無機ハイブリッドガラス)、シリコーン樹脂等の樹脂材料である。ガラス材として低融点ガラスを用いてもよい。封止材は、透明性の高いものが好ましく、レーザ光が高出力の場合には、耐熱性の高いものが好ましい。
【0049】
(反射鏡(パラボラミラー5))
パラボラミラー5は、発光部4が発生させた蛍光を反射し、所定の立体角内を進む光線束(照明光)を形成する。このパラボラミラー5は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された部材であってもよいし、金属製の部材であってもよい。
【0050】
図3は、パラボラミラー5の回転放物面を示す概念図であり、図4(a)はパラボラミラー5の上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図4(a)〜(c)は、説明図面をわかりやすく例示するよう直方体の部材の内部をくり抜くことでパラボラミラー5を形成した例を示している。
【0051】
図3に示すように、パラボラミラー5は、放物線の対称軸を回転軸として当該放物線を回転させることによって形成される曲面(放物曲面)を、上記回転軸を含む平面で切断することによって得られる部分曲面の少なくとも一部をその反射面に含んでいる。図4(a)および(c)において、符号5aで示す曲線が放物曲面を示している。また、図4(b)に示すように、パラボラミラー5を正面から見た場合、その開口部5b(照明光の出口)は半円である。
【0052】
また、レーザ素子2は、パラボラミラー5の外部に配置されており、パラボラミラー5には、レーザ光を透過または通過させる窓部6が形成されている。この窓部6は、開口部であってもよいし、レーザ光を透過可能な透明部材を含むものであってもよい。例えば、レーザ光を透過し、白色光(発光部4の蛍光)を反射するフィルターを設けた透明板を窓部6として設けてもよい。この構成では、発光部4の蛍光が窓部6から漏れることを防止できる。
【0053】
窓部6は、複数のレーザ素子2に共通のものが1つ設けられていてもよいし、各レーザ素子2に対応した複数の窓部6が設けられていてもよい。
【0054】
なお、パラボラミラー5の一部にパラボラではない部分を含めてもよい。また、反射鏡は、閉じた円形の開口部を有するパラボラミラーまたはその一部を含むものであってもよい。また、反射鏡は、パラボラミラーに限定されず、楕円面ミラーや自由曲面ミラーであってもよい。すなわち、反射鏡は、回転軸を中心として図形(楕円、円、放物線)を回転させることによって形成される曲面の少なくとも一部をその反射面に含んでいるものであればよい。
【0055】
(金属ベース7)
金属ベース7は、発光部4を支持する板状の支持部材であり、金属(例えば、銅や鉄)からなっている。それゆえ、金属ベース7は熱伝導性が高く、発光部4の発熱を効率的に放熱することができる。なお、発光部4を支持する部材は、金属からなるものに限定されず、金属以外の熱伝導性が高い物質(ガラス、サファイアなど)を含む部材でもよい。ただし、発光部4と当接する金属ベース7の表面は反射面として機能することが好ましい。上記表面が反射面であることにより、発光部4の上面から入射したレーザ光が蛍光に変換された後に、当該反射面で反射させてパラボラミラー5へ向かわせることができる。または、発光部4の上面から入射したレーザ光を上記反射面で反射させて、再度発光部4の内部に向かわせて蛍光に変換することができる。
【0056】
金属ベース7は、パラボラミラー5によって覆われているため、金属ベース7は、パラボラミラー5の反射曲面(放物曲面)と対向する面を有していると言える。金属ベース7の発光部4が設けられている側の表面は、パラボラミラー5の回転放物面の回転軸と概ね平行であり、当該回転軸を概ね含んでいることが好ましい。
【0057】
(フィン8)
フィン8は、金属ベース7を冷却する冷却部(放熱機構)として機能する。このフィン8は、複数の放熱板を有するものであり、大気との接触面積を増加させることにより放熱効率を高めている。金属ベース7を冷却する冷却部は、冷却(放熱)機能を有するものであればよく、ヒートパイプ、水冷方式や、空冷方式のものであってもよい。
【0058】
〔ヘッドランプ1の配設方法〕
図5は、ヘッドランプ1を自動車(車両)10の前照灯に適用した場合の、ヘッドランプ1の配設方向を示す概念図である。図5に示すように、ヘッドランプ1は、パラボラミラー5が鉛直下側に位置するように自動車10のヘッドに配設されてもよい。この配設方法では、上述のパラボラミラー5の投光特性により、自動車10の正面が明るく照らされるとともに、自動車10の前方下側も適度に照らしている。
【0059】
なお、ヘッドランプ1を自動車用の走行用前照灯(ハイビーム)に適用してもよいし、すれ違い用前照灯(ロービーム)に適用してもよい。また、自動車10の走行中に、走行状態に応じて、発光部4の照射面に照射されるレーザ光の光強度分布の制御を行ってよい。これにより、自動車10の走行中に任意の投光パターンにより投光することができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0060】
〔本発明の適用例〕
本発明の発光装置は、車両用前照灯のみならず、その他の照明装置に適用されてもよい。本発明の照明装置の一例として、ダウンライトを挙げることができる。ダウンライトは、家屋、乗物などの構造物の天井に設置される照明装置である。その他にも、本発明の照明装置は、車両以外の移動物体(例えば、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケットなど)のヘッドランプとして実現されてもよいし、サーチライト、プロジェクタ、ダウンライト以外の室内照明器具(スタンドランプなど)として実現されてもよい。
【0061】
〔配設位置の移動が可能な発光部4〕
次に、本実施形態の一実施例であるヘッドランプ200について、図6等を参照して説明する。なお、図1等により説明したのと同じ内容についてはその説明を省略する。
【0062】
図6は、ヘッドランプ200の概略上面図を示す。このうち、図6(a)はヘッドランプ200が第1の位置に配設されている状態を、図6(b)はヘッドランプ200が第2の位置に配設されている状態を示す。また、図6(c)はヘッドランプ200が第3の位置に配設されている状態を、図6(d)はヘッドランプ200が第4の位置に配設されている状態を示す。また、図中の点Pはパラボラミラー5の焦点位置を示し、発光部4の各角に記載されている番号(1〜4)は、正方形に形成された発光部4の各角の角番号を示す。
【0063】
図示するように、図6(a)では、焦点位置Pは発光部4の角1の近傍に位置する。図6(b)では、焦点位置Pは発光部4の角4の近傍に位置する。図6(c)では、焦点位置Pは発光部4の角3の近傍に位置する。図6(d)では、焦点位置Pは発光部4の角2の近傍に位置する。つまり、ヘッドランプ200では、発光部4は、パラボラミラー5の焦点位置Pを含む位置に配設されるものの、その取り付け位置は、図中の破線で示される領域内を移動(変位)可能に形成されている。この構成は、例えば図6(a)〜図6(d)に示す発光部4の4つの位置(第1〜第4の位置)それぞれで発光部4をネジ留め可能とすることで実現される。
【0064】
発光部4を金属ベース7に取り付ける構成を図7(a)、図7(b)に示す。図7は、発光部4を金属ベース7に取り付ける構成を示す図であり、図7(a)は、金属ベース7の第1の位置に発光部4を取り付ける構成を、図7(b)は、金属ベース7の第2の位置に発光部4を取り付ける構成を、それぞれ説明するための図である。
【0065】
図6を用いて説明した構成によれば、発光部4は、金属ベース7の破線で示す領域内を移動(変位)可能に配設される。この構成により、パラボラミラー5の焦点位置が発光部4の一箇所に集中することが回避されるため、発光部4の劣化を抑えることができ、その結果、ヘッドランプ200の長期間の使用が可能となる。
【0066】
なお、図6では、発光部4が正方形であるものとして説明している。しかしながら、発光部の形状は、正方形に限られず、例えば、円形、多角形、星型、矩形等の種々の形状であってよい。
【0067】
また、特にヘッドランプ200を自動車用のヘッドランプとして使用する場合には、例えば車検時、定期点検時において、発光部4の取り付け位置を定期的にシフトさせる運用とする。これにより、発光部4におけるレーザの励起位置を変更でき、経年使用による明るさの減少を気にすることなく使用でき、また、夜間の安全な運転を支援することが可能となる。
【0068】
なお、発光部4の取り付け位置の移動は手動による方法に限定されず、一定時間経過後取り付け位置を移動させる取り付け位置移動部により自動で移動させるなど、機械等により自動に移動させる方法でもよい。
【0069】
さらに、図6を参照して説明したヘッドランプ200では、発光部4を新品と交換するまでに、少なくとも4回の取り付け位置の変更が可能であり、それまではヘッドランプ200の光量を低下させることなく使用し続けることができる。したがって、ユーザは、図22等を参照して説明するヘッドランプ950(後述)と比べてより長期間、光量の低下を伴うことなくヘッドランプ200を使用することができる。
【0070】
なお、図6では、発光部4の取り付け位置は4箇所であるものとして説明している。しかしながら、上記取り付け位置は、4箇所に限られず、幾つであってもよい。そして、その取り付け位置の数が増えるほど、ユーザは、より長期間、光量の低下を伴うことなくヘッドランプ200を使用することができる。
【0071】
次に、配設位置の移動が可能な発光部4を実現する他の構成を図8により説明する。図8は、正方形状の発光部4の取付角度が変更される様子を示す図である。
【0072】
ここで、図8(b)は、図8(a)に示す発光部4を左に90度回転したときの様子を示す。図8(c)は、図8(b)に示す発光部4を左に90度回転したときの様子を示す。図8(d)は、図8(c)に示す発光部4を左に90度回転したときの様子を示す。このように、発光部4の取り付け角度を変更(変位)することによって、パラボラミラー5の焦点位置が発光部4の一箇所に集中することが回避されるため、発光部4の劣化を抑えることができ、その結果、ヘッドランプの長期間の使用が可能となる。
【0073】
なお、図8では、発光部4が正方形であるものとして説明している。しかしながら、発光部の形状は、正方形に限られず、例えば、円形、多角形、星型、矩形等の種々の形状であってよい。
【0074】
また、図8では、発光部4は、発光部4を取り付ける金属ベース7の取付面に平行に回転している。しかしながら、発光部は上記取付面に対して完全に平行に回転する必要はなく、発光部4の照射面において、レーザ光の照射位置が変化するように(レーザ光の照射位置が発光部4上の異なる位置となるように)回転すればよい。
【0075】
また、特に上記ヘッドランプを自動車用のヘッドランプとして使用する場合には、例えば車検時、定期点検時において、発光部4の取り付け角度を定期的にシフトさせる運用とする。これにより、発光部4におけるレーザの励起位置を変更でき、経年使用による明るさの減少を気にすることなく使用でき、また、夜間の安全な運転を支援することが可能となる。
【0076】
なお、発光部4の取り付け位置の移動は手動による方法に限定されず、一定時間経過後取り付け位置を移動させる取り付け位置移動部により自動で移動させるなど、機械等により自動に移動させる方法でもよい。
【0077】
〔移動自在な発光部4〕
次に、本実施形態の一実施例であるヘッドランプ300について、図9等を参照して説明する。なお、図1等により説明したのと同じ内容についてはその説明を省略する。
【0078】
図9は、ヘッドランプ300の概略上面図を示す。ヘッドランプ300では、環状の発光部4は、パラボラミラー5の焦点位置Pを含む位置に配設されている。また、発光部4を支持する金属部材は、図示しないモータに接続されており、そのモータの動作を受けて図中矢印の方向に回転(変位)する。
【0079】
上記構成を、図10により具体的に説明する。図10は、ヘッドランプ300の側面図を示す。ヘッドランプ300では、金属ベース7の上部に金属部材(支持部材)16が配設されている。そして、その金属部材16は発光部4を支持している。また、金属ベース7の下方にはモータ(動作装置)30が配設されており、そのモータ30は、金属部材16に接続している。そのため、金属部材16は、モータ30が動作することで、図9の矢印の方向に回転する。回転速度は必ずしも速くなくてよく、例えば1〜200Hz程度の速度でよい。
【0080】
ヘッドランプ300は、上記構成を備えることにより以下の効果を奏する。具体的には、ヘッドランプ300では、発光部4は、モータ30の動作を受けて常に回転する金属ベース7に支持されている。したがって、パラボラミラー5の焦点位置が発光部4の一箇所に集中することなく分散されることになるため、発光部の劣化が抑えられ、ヘッドランプ300を長期間使用することが可能となる。
【0081】
このヘッドランプ300を自動車用のヘッドランプとして使用すると、発光部4の特定の位置が劣化することがなくなるため、経年使用による明るさの減少が極めて遅くなり、夜間の安全な運転を支援することが可能となる。
【0082】
次に、本実施形態の一実施例であるヘッドランプ400について、図11等を参照して説明する。なお、図1等により説明したのと同じ内容についてはその説明を省略する。
【0083】
図11は、ヘッドランプ400の概略上面図を示す。また、図12は、ヘッドランプ500の概略上面図を示す。図11に示すように、ヘッドランプ400では、発光部4は図面左右方向に往復運動(変位)する。また、ヘッドランプ500では、発光部4は図面上下方向に往復運動する。この動作を、図13により説明する。
【0084】
図13は、ヘッドランプ400またはヘッドランプ500における発光部4の往復運動を実現するクランク機構40を説明するための図である。
【0085】
クランク機構40は、クランク・ディスク41と、スライダ42と、連接棒43とを備える。クランク・ディスク41は、例えばヘッドランプ400またはヘッドランプ500の電源と連動して回転運動が行われる。そして、そのクランク・ディスク41の回転運動が、連接棒43を介して、スライダ42に伝達される。このとき、クランク・ディスク41の回転運動は、往復運動としてスライダ42に伝達される。そのため、スライダ42に発光部4を連結することにより、クランク・ディスク41の往復運動を発光部4の横方向または縦方向への往復運動とすることができる。
【0086】
ヘッドランプ400およびヘッドランプ500は、上記構成により、レーザ素子2から出射される励起光の照射位置を発光部4の一箇所に集中させることなく分散させることができるため、発光部4の劣化を抑えることができ、長期間使用を実現することができる。
【0087】
なお、モータ30、クランク機構40による実施例を説明したが、本実施形態はこれら実施例に限定されない。例えば、発光部4を載置する金属ベースそのものが振動する実施例も考えられる。また、発光部4が、不定の方向に振動するバネ等によって金属ベース7に固定されており、そのバネの作用によって不定の方向に発光部4が移動する、といった実施例も考えられる。また、プログラム制御によって発光部4の移動を精密に制御して、発光部4の照射面上のほぼ全面にわたってレーザ光を均一に照射する実施例も考えられる。つまり、本実施形態には、レーザ素子2から出射される励起光の照射位置を発光部4の一箇所に集中させることなく分散させるという同様の技術的思想を有する種々の実施例が含まれる。
【0088】
〔反射型・透過型ヘッドランプについて〕
これまでの説明では、ヘッドランプは、パラボラミラー5が配設されている側から発光部4に対してレーザ光を照射する発光部の構成(本願ではこれを「反射型発光部」と称する。)を備えたヘッドランプに関するものであった。本実施形態では、反射型発光部を備えたヘッドランプを反射型ヘッドランプと称する。反射型ヘッドランプでは、パラボラミラー5が配設されている側から発光部4に対してレーザ光が照射され、それにより、発光部4は、レーザ光の照射面において蛍光を発する。そして、蛍光部4から発生した蛍光は、パラボラミラー5で反射して、ヘッドランプの外部に照射される。
【0089】
しかしながら、本実施形態は、パラボラミラー5が配設されている側とは反対側から、発光部4に対してレーザ光が照射される発光部の構成(本願ではこれを「透過型発光部」と称する。)を備えたヘッドランプにも適用することができる。本実施形態では、透過型発光部を備えたヘッドランプを透過型ヘッドランプと称する。透過型ヘッドランプでは、パラボラミラー5が配設されている側とは反対側から、発光部4に対してレーザ光が照射される。それにより、発光部4は、レーザ光の照射面と反対側の面(パラボラミラー5に対向する側の面)において蛍光を発する。そして、蛍光部4から発生した蛍光は、パラボラミラー5で反射して、ヘッドランプの外部に照射される。
【0090】
また、本実施形態は、金属部材16上に発光部4を設ける構成に限られず、金属部材16を備えていない構成や、透過型発光部の構成において、透明部材(支持部材)25上に発光部4を設ける構成も含む。これらの実施例を図14〜図17により説明する。
【0091】
図14は、反射型ヘッドランプ950の概略側面図を示す。図15は、透過型ヘッドランプ600の概略側面図を示す。また、図16は、金属部材を使用しない、反射型ヘッドランプ700の概略側面図を示す。図17は、透明部材を使用しない、透過型ヘッドランプ800の概略側面図を示す。
【0092】
図15のヘッドランプ600では、発光部4は、透明部材25上に設けられている。透明部材25は、熱伝導性が優れ、レーザの波長に対する透過性が高い材料が好ましい。透明部材25の一例としてガラスが挙げられる。そして、金属ベース7には開口50が形成されており、レーザ光が、その開口50を通って、透明部材25を透過して発光部4に照射される。
【0093】
図16のヘッドランプ700は、反射型ヘッドランプであって、発光部4は金属ベース7上に直接配設されている。
【0094】
図17のヘッドランプ800では、発光部4は、透明部材25を介することなく、金属ベース7上に直接配設されている。そして、レーザ光は、金属ベース7に形成された開口50を通って発光部4に照射される。
【0095】
図16、図17の発光部4は、蛍光体をプレート状に焼き固めることにより作製されており、バネや押さえ治具により金属ベース7に固定される。あるいは、発光部4は、図示しないモータ30やクランク機構40などに接続される構成であってもよい。これにより、発光部4は、パラボラミラー5の焦点位置を含むように配設され、レーザ光が照射される発光部4の面である照射面とパラボラミラー5の焦点位置との相対的な位置関係を変化させることが可能となる。
【0096】
さらに、本実施形態は、反射型ヘッドランプおよび透過型ヘッドランプの何れのタイプであっても、適用することができる。さらに、本実施形態に係るヘッドランプでは、金属部材16および透明部材25の有無にかかわらず、発光性能を維持した装置を提供することができる。そのため、発光部4を長期間使用することが可能となる。
【0097】
〔交換可能な発光部4〕
次に、本実施形態の一実施例であるヘッドランプ950について、図18等を参照して説明する。なお、図1等により説明したのと同じ内容についてはその説明を省略する。
【0098】
図18は、本実施の形態に係るヘッドランプ960の側面図を示す。ヘッドランプ960は、レーザ素子2を3個有する。3つのレーザ素子2はそれぞれ、9mmΦの金属パッケージに実装されており、波長405nm、2Wのレーザ光を出力する。そして、レーザ素子2は、発光部4に対して3方向からレーザ光を照射する。このとき、レーザ素子2から出射されたレーザ光は、集光レンズ3を通して、発光部4上の1mmΦのエリアに集光される。
【0099】
図19は、ヘッドランプ960の概略上面図であり、レーザ素子2が発光部4に対して3方向からレーザ光を照射する様子を示す図である。図面の上側から、レーザ素子2a、レーザ素子2b、及びレーザ素子2cがその順序で配設されている。そして、レーザ素子2a、レーザ素子2b、及びレーザ素子2cは、発光部4に対して、発光部4上の1mmΦのエリア(図中、発光部4の環状部)にレーザ光を集中的に照射する。
【0100】
パラボラミラー5は、樹脂製パラボラミラーの内面にアルミニウムがコーティングされたものであり、前面開口部は半径30mmの半円形であり、奥行きは30mmである。
【0101】
発光部4は、白色で発光するように3種類のRGB蛍光体が混合されている。このとき、赤色蛍光体は、CaAlSiN3:Euであり、緑色蛍光体は、β−SiAlON:Euであり、青色蛍光体は(BaSr)MgAl10O17:Euで構成されている。また、発光部4の厚さは0.1mmの薄膜状に形成されており、上記蛍光体の粉末が、透明樹脂に混ぜられて金属ベース7の表面に塗布されている。発光部4は、パラボラミラー5の焦点が、レーザ光が照射される発光部4の面である照射面の中心位置近傍となるように配置されている。つまり、レーザ素子2は、パラボラミラー5の焦点位置に相当する部分をレーザ光で励起する。
【0102】
さらに、発光部4は、照射面の延長線(図中のLで示す線)がパラボラミラー5の開口部の最外部と交わるように、金属ベース7の表面に対して一定の角度を有するように傾けて配置されている。これにより、金属ベース7の外部から発光部4における発光点が直視されなくなるため、外部から見たときのギラツキや幻惑等が抑制される。また、これにより、発光部4から出射される蛍光を、効率的かつ無駄なくパラボラミラー5で反射することができる。
【0103】
金属ベース7は、アルミニウム等の放熱効率の高い材質からなり、この金属ベース7がレーザおよび発光部4による熱を放熱する役割も果たす。
【0104】
さらに、ヘッドランプ960は、一定の使用期間を経過した発光部4を、新しい発光部4と交換可能に構成されている。そのことを、図20、図21により説明する。
【0105】
図20は、上部に発光部4が塗布された金属部材(支持部材)15が金属ベース7に取り付けられた様子を示す図である。また、図21は、金属部材15が金属ベース7から取り外された様子を示す図である。
【0106】
各図に示すように、発光部4は、発光部4が塗布された金属部材15とともに金属ベース7から容易に取り外しができ、かつ、新しい金属部材15と交換可能な構成で実現されている。このように、一定期間使用(点灯)するごとに新品の発光部4(発光部4が塗布された金属部材15)を交換可能な構成とすることで、ヘッドランプ960は、その明るさの減少を補填しつつ、長期間使用することができる。
【0107】
なお、金属部材15の材質は特に限定されないが、金属部材15が取り付けられる金属ベース7と同じ材質であることが好ましい。これにより、異なる種類の金属材料が電気的に接触して発生しうる異種金属接触腐食を防ぐことができる。
【0108】
次に、交換可能な発光部4を実現する他の構成である発光部4のみを交換する構成を図22により説明する、図22は、発光部4の交換をネジにより行う方法を説明するための図である。
【0109】
同図に示すように、発光部4は、板状の金属部材16上に載置されている。その金属部材16は、金属ベース7に形成された凹部に嵌め込まれ、ネジ17aおよびネジ17bにより金属ベース7に固定される。なお、金属部材16は、金属ベース7に対して、ネジ留めとともに、あるいはネジ留めの代わりに、接着剤での接着、半田付けにより取り付けられてもよい。上記構成によれば、発光部を容易に交換することができる。
【0110】
次に、交換可能な発光部4を実現する他の構成を図23により説明する、図23は、発光部4の交換を嵌めこみにより行う方法を説明するための図である。
【0111】
同図に示すように、発光部4は、棒状の金属部材18上で支持されている。その金属部材18は、金属ベース7に形成された開口部に嵌め込まれ(あるいは、ねじ込まれ)、金属ベース7に固定される。なお、金属部材18は、金属ベース7に対して、嵌め込みとともに、あるいは嵌め込みの代わりに、接着剤での接着、半田付けにより取り付けられてもよい。上記構成によれば、発光部を容易に交換することができる。
【0112】
次に、交換可能な発光部4を実現する他の構成を図24により説明する、図24は、発光部4の交換をバネを介して行う方法を説明するための図である。
【0113】
同図に示すように、発光部4は、板状の金属部材16上に支持されている。その金属部材16は、金属ベース7に形成された凹部に嵌め込まれ、バネ19aおよびバネ19bを用いたバネ押さえにより金属ベース7に固定されている。金属部材16は、金属ベース7に対して、バネ押さえとともに、あるいはバネ押さえの代わりに、接着剤での接着、半田付け、嵌め込みにより取り付けられてもよい。上記構成によれば、発光部を容易に交換することができる。
【0114】
以上、図22〜図24により説明した構成によれば、発光部4は、金属ベース7から容易に取り外しができ、かつ、新しい発光部と交換することができる。
【0115】
また、このヘッドランプ950を自動車用のヘッドランプとして使用する場合には、例えば車検時、定期点検時に発光部4を新しい発光部と交換する運用を行うことにより、経年使用による明るさの減少を気にすることなく使用でき、また、夜間の安全な運転を支援することもできる。さらに、ユーザの好みにより、蛍光部材の色味(色温度)を規制範囲内で自由に選択して取り付け(交換)することもできる。
【0116】
なお、発光部4を新しい発光部と交換することが可能な構成は、当然に、上記説明した構成に限られず、他の構成で実現されてもよい。
【0117】
〔変形例〕
さらに、本実施形態に含まれる種々のバリエーションを説明する。
【0118】
ヘッドランプ1等では、反射鏡としてパラボラミラー5が使用されるものとして説明している。しかしながら、本実施形態では、反射鏡の形状は限定されない。例えば、反射鏡は、円形ミラー、楕円ミラー、自由曲面型のミラー、マルチファセットなどを使用することができる。また、投光手段としてプロジェクションレンズを用いてもよい。
【0119】
また、本実施形態では、レーザ素子2で発生するレーザの波長、集光方法も限定されない。例えば、レーザ光の波長は、405nmに限定されず450nm等であってよい。さらに、レーザの集光方法は、レンズ集光、楔型導光パーツ、凹面鏡集光などであってよい。また、本実施形態では、蛍光体の種類、発光部の形状、発光部からの発光色も限定されない。
【0120】
その一例を図25により説明する。図25は、ヘッドランプ970の概略上面図を示す。
【0121】
ヘッドランプ970では、レーザ素子2を2個有する(図面では-1つのみ記載)。2つのレーザ素子2はそれぞれ、9mmΦの金属パッケージに実装されており、波長405nm、2Wのレーザ光を出力する。このとき、レーザ素子2から出射されたレーザ光は、集光レンズ3を通して、発光部4上の1mmΦのエリアに集光される。
【0122】
リフレクタ60は、樹脂製パラボラミラーの内面にアルミニウムがコーティングされてたものであり、前面開口部は直径50mmの円形であり、奥行きは13mmである。
【0123】
発光部4は、白色で発光するように3種類のRGB蛍光体が混合されている。このとき、赤色蛍光体は、CaAlSiN3:Euであり、緑色蛍光体は、β−SiAlON:Euであり、青色蛍光体は(BaSr)MgAl10O17:Euで構成されている。また、発光部4の厚さは2mmΦ×0.1mmの薄膜状に形成されており、上記蛍光体の粉末が、透明樹脂に混ぜられて金属ベース7の表面に塗布されている。発光部4は、リフレクタ60の焦点が、レーザ光が照射される発光部4の面である照射面の中心位置近傍となるように配置されている。つまり、レーザ素子2は、リフレクタ60の焦点位置に相当する部分をレーザ光で励起する。なお、発光部4は図示しない金属部材上に設けられており、金属部材は、金属支柱70に設けられている。また、窓部6から発光部4の照射面までの奥行きは12mmである。また、その金属支柱70は、リフレクタ60に支持されており、発光部4からの熱を逃がす役割を果たしている。
【0124】
ヘッドランプ970では、金属部材が設けられた金属支柱70を交換可能な構成とし、一定期間経過ごとに交換する運用とすることにより、発光部4の劣化による影響を受けることなく長期間の使用を可能としている。
【0125】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、発光部の劣化を抑制することが可能な発光装置に関し、特に、車両用前照灯、及び照明装置に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0127】
1 ヘッドランプ
2 レーザ素子(励起光源)
3 集光レンズ
4 発光部
5 パラボラミラー(反射鏡)
7 金属ベース
8 フィン
15、16、18 金属部材(支持部材)
25 透明部材(支持部材)
17a、17b ネジ
19a、19b バネ
30 モータ(動作装置)
40 クランク機構(動作装置)
60 リフレクタ
70 金属支柱(支持部材)
P 焦点位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、
上記発光部の取付位置または取付角度を変えることにより、上記発光部における上記励起光の照射位置を変化させることが可能であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、
上記発光部は、動作装置の往復運動によって変位されることにより、上記発光部における上記励起光の照射位置を変化させることが可能であることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、
上記発光部は、交換可能に配設されることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
上記発光部を支持する支持部材を備え、
上記発光部は、上記支持部材を取り替えることにより、新たな発光部に交換されることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
上記発光部において発光した光を反射する反射鏡を備え、
上記励起光は、上記反射鏡の焦点位置またはその近傍に照射されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
上記励起光源は、レーザ光を出射するレーザ光源であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
上記発光部は、上記励起光を受けて蛍光を発する蛍光体を少なくとも含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光装置を含むことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光装置を含むことを特徴とする照明装置。
【請求項1】
励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、
上記発光部の取付位置または取付角度を変えることにより、上記発光部における上記励起光の照射位置を変化させることが可能であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、
上記発光部は、動作装置の往復運動によって変位されることにより、上記発光部における上記励起光の照射位置を変化させることが可能であることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部を備え、
上記発光部は、交換可能に配設されることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
上記発光部を支持する支持部材を備え、
上記発光部は、上記支持部材を取り替えることにより、新たな発光部に交換されることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
上記発光部において発光した光を反射する反射鏡を備え、
上記励起光は、上記反射鏡の焦点位置またはその近傍に照射されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
上記励起光源は、レーザ光を出射するレーザ光源であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
上記発光部は、上記励起光を受けて蛍光を発する蛍光体を少なくとも含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光装置を含むことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光装置を含むことを特徴とする照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−4481(P2013−4481A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137852(P2011−137852)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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