説明

発光装置

【課題】塗布法によってインキを選択的に供給する際に、インキを供給すべき領域以外に塗布されたインキが、インキを供給すべき領域に逆流することを防ぐとともにインキが混合することを防ぐことのできる構造の発光装置を提供する。
【解決手段】支持基板と、前記支持基板上に設けられる複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子を区分けする隔壁とを備える発光装置であって、前記隔壁は、前記複数の有機EL素子が設けられる領域を囲むように配置される外周部と、前記外周部に囲まれる領域においてストライプ状に配置され、長手方向の一端および他端がそれぞれ前記外周部に連結されている複数本の仕切り部とを有しており、前記有機EL素子は、互いに隣り合う仕切り部間に配置されており、前記外周部の、前記ストライプ部長手方向の一端および他端には、前記支持基板に向かう凹みが設けられている発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ということがある。)は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを含んで構成される。この有機EL素子に電圧を印加すると、陽極から正孔が注入されるとともに陰極から電子が注入され、注入された正孔と電子とが発光層において結合し、発光する。
【0003】
有機EL素子には、電極間に設けられる発光層などの所定の層を塗布法よって簡易に形成できるという利点がある。例えば発光層を形成する材料を含むインキを所定の塗布法によって成膜し、さらにこれを固化することによって発光層を形成することができる。
【0004】
塗布法としては、タクトタイムが短いことやノズルの目詰まりが少ないことなどから、ノズルプリンティング法が検討されている。ノズルプリンティング法は、液柱状のインキをノズルから連続的に吐出させながらこのノズルを移動させることによって、インキを連続的に塗布する方法である。
【0005】
ノズルプリンティング法によって発光層を形成する方法について図4,5を参照して説明する。図4は有機EL素子を形成するために従来用いられているパターン塗布用の基板1の平面図である。図5は、図4の切断面線V−Vから見たパターン塗布用の基板1の断面図である。
【0006】
有機EL素子は例えば表示装置の光源として用いられる。表示装置では複数の有機EL素子が支持基板3上に設けられる。
【0007】
図4,5に示すように支持基板3には有機EL素子の一対の電極のうちの一方の電極4や、各有機EL素子を電気的に絶縁する絶縁膜5などが設けられている。さらに支持基板3上には、有機EL素子を塗布法によって形成する際に塗布液を所定の位置に収容するための隔壁2が設けられている。この隔壁2は、複数の有機EL素子が設けられる領域を囲む外周部2aと、外周部2aによって囲まれる領域内においてストライプ状に配置され、一端および他端がそれぞれ外周部2aに連結されている複数本の仕切り部2bとを有する。
【0008】
有機EL素子は表示装置においてマトリクス状に配置される。具体的には互いに隣り合う各仕切り部2b間に配置され、各仕切り部2b間において仕切り部2bの長手方向に沿って離散的に配置される。
【0009】
このようなパターン塗布用の基板1に発光層を形成する際には、まずノズルプリンティング装置のノズルから、発光層を形成する材料を含むインキを液柱状に吐出しながら、仕切り部2b間に沿ってノズルを走査し、仕切り部2b間にインキを選択的に供給する。次に、供給されたインキを固化することによって発光層が形成される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−75640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図6,7はノズルプリンティング法によりインキを供給した後の従来のパターン塗布用の基板1の平面図であり、インキにはハッチングを施している。ノズルプリンティング法ではインキの吐出を止めることなく、いわゆる一筆書きでインキを供給するので、インキを供給すべき領域以外にもインキが供給される。具体的には図6,7では隔壁2の外周部2a上にもインキが塗布される。隔壁2の外周部2a上に塗布されたインキは外周部2a上で濡れ拡がるため、隣り合う列に塗布されたインキ同士が接触することがあり、さらにこれが仕切り部2bに逆流することがある。そうすると例えば隣り合う列のインキの種類が異なる場合には混色の問題が生じる。また逆流したインキによって、仕切り部2bの長手方向の両端部の発光層が厚膜化することがある。
【0012】
従って本発明の目的は塗布法によってインキを選択的に供給する際に、インキを供給すべき領域以外に塗布されたインキが、インキを供給すべき領域に逆流することを防ぐとともにインキが混合することを防ぐことのできる構造の発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、支持基板と、
前記支持基板上に設けられる複数の有機エレクトロルミネッセンス素子と、
前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を区分けする隔壁とを備える発光装置であって、
前記隔壁は、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が設けられる領域を囲むように配置される外周部と、前記外周部に囲まれる領域においてストライプ状に配置され、長手方向の一端および他端がそれぞれ前記外周部に連結されている複数本の仕切り部とを有しており、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、互いに隣り合う仕切り部間に配置されており、
前記外周部の、前記ストライプ部長手方向の一端および他端には、前記支持基板に向かう凹みが設けられている発光装置に関する。
【0014】
また本発明は、前記凹みの底面は、アニソールに対する接触角が30°未満である発光装置に関する。
【0015】
また本発明は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は一対の電極を有し、
該発光装置は、前記一対の電極のうちの前記支持基板寄りに配置される一方の電極と同じ部材によって構成されるダミー電極を、前記支持基板と前記凹みとの間にさらに有し、
前記凹みが前記ダミー電極表面まで達するように設けられている発光装置に関する。
【0016】
また本発明は、前記一方の電極および前記ダミー電極は塗布法によって形成されてなる、発光装置に関する。
【0017】
また本発明は、前記一方の電極が、光透過性を示す膜本体に、導電性を有するワイヤ状の導電体が配置されて構成されている発光装置に関する。
【0018】
また本発明は、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子をそれぞれ電気的に絶縁する絶縁膜と、該絶縁膜と同じ部材によって構成されるダミー絶縁膜とをさらに有し、
前記絶縁膜は、前記隔壁と前記支持基板との間に設けられており、
前記ダミー絶縁膜は、前記支持基板と前記凹みとの間に設けられており、
前記凹みが前記ダミー絶縁膜表面まで達するように設けられている発光装置に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、塗布法によってインキを選択的に供給する際に、インキを供給すべき領域以外に塗布されたインキが、インキを供給すべき領域に逆流することを防ぐとともにインキが混合することを防ぐことのできる構造の発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の発光装置11の平面図である。
【図2】発光装置11の端面図である。
【図3】インキを塗布した状態の支持基板21の平面図である。
【図4】有機EL素子を形成するために用いられている従来のパターン塗布用の基板1の平面図である。
【図5】図4の切断面線V−Vから見たパターン塗布用の基板1の断面図である。
【図6】ノズルプリンティング法によりインキを供給した後の従来のパターン塗布用の基板1の平面図である。
【図7】ノズルプリンティング法によりインキを供給した後の従来のパターン塗布用の基板1の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の発光装置は、支持基板と、前記支持基板上に設けられる複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子を区分けする隔壁とを備える。
【0022】
隔壁は、前記複数の有機EL素子が設けられる領域を囲むように配置される外周部と、前記外周部により囲まれる領域においてストライプ状に配置され、一端および他端がそれぞれ前記外周部に連結されている複数本の仕切り部とを有している。また有機EL素子は、互いに隣り合う仕切り部間に配置されている。そして前記外周部の、前記仕切り部長手方向の一端および他端には、前記支持基板に向かう凹みが設けられている。
【0023】
<発光装置の構成>
まず発光装置の構成について図1,2を参照して説明する。図1は本発明の発光装置11の平面図であり、図2は発光装置11の端面図である。図2(1)は図1に示す発光装置11を行方向Xに垂直な平面で切断したときの、発光装置11の端部の端面を拡大して示しており、図2(2)は図1に示す発光装置11を列方向Yに垂直な平面で切断した端面を示している。
【0024】
以下では複数の有機EL素子が搭載された発光装置11の一例として、アクティブマトリクス駆動方式の表示装置について説明する。なお本発明はアクティブマトリクス駆動方式に限らす、例えばパッシブマトリクス駆動方式の表示装置にも適用可能であり、これら表示装置以外の所定の発光装置にも適用可能である。
【0025】
支持基板21上において複数の有機EL素子31はマトリクス状に設けられる。具体的には支持基板21上において行方向Xに等間隔をあけるとともに、列方向Yに等間隔をあけてそれぞれが離散的に配置される。行方向Xおよび列方向Yは、互いに垂直な方向であるとともに、支持基板21の厚み方向Zに垂直な方向である。なお通常の表示装置には無数の有機EL素子が設けられるが、図1では理解を容易にするために20個の有機EL素子が4行4列のマトリクス状に配列された発光装置を示している。また図2では有機EL素子に関しては、一対の電極のうちの一方の電極のみを示しており、その他の構成については図示していない。
【0026】
支持基板21上にはさらに有機EL素子31を区分けする隔壁41が設けられている。隔壁41は、複数の有機EL素子31が設けられる領域を囲むように配置される外周部42と、この外周部42に囲まれる領域においてストライプ状に配置される複数本の仕切り部43とを有している。仕切り部43は、長手方向の一端および他端がそれぞれ外周部42に連結されている。外周部42と仕切り部43とは一体に形成されている。
【0027】
本実施形態では隔壁41の外周部42は略矩形状の枠体を構成する。なお外周部42は複数の有機EL素子31が設けられる領域を囲む形状であればよく、略矩形状の枠体でなくともよい。
【0028】
複数の仕切り部43は、本実施形態では列方向Yに長手方向を一致させてそれぞれ配置され、それぞれが行方向Xに等間隔をあけて配置される。本実施形態では仕切り部43の長手方向と列方向Yとが一致するため、以下では仕切り部43の長手方向を列方向Yということがある。この仕切り部43は各有機EL素子31を区分けするために設けられる。
【0029】
各有機EL素子31は互いに隣り合う仕切り部43間に設けられる。なお行方向Xの一端に設けられる仕切り部43と外周部42とにより構成される凹所、及び行方向Xの他端に設けられる仕切り部43と外周部42とにより構成される凹所も、本明細書では仕切り部43間に含まれる。本実施形態では各有機EL素子31は各仕切り部43間において、列方向Yに沿って等間隔をあけて配置される。
【0030】
前記外周部42の列方向Y(仕切り部長手方向)の一端および他端には、前記支持基板に向かう凹み44が設けられている。
【0031】
有機EL素子31は後述するように一対の電極を有しており、発光装置11は、一対の電極32のうちの前記支持基板21寄りに配置される一方の電極32と同じ部材によって構成されるダミー電極45を、前記支持基板21と前記凹み44との間にさらに有し、且つ前記凹み44が前記ダミー電極45表面にまで達するように設けられていることが好ましい。なお外周部42の列方向Y(仕切り部長手方向)の一端および他端には、支持基板21に向かう段差が形成されていればよく、凹み44がダミー電極45に達するまで形成されていなくてもよい。またダミー電極45が設けられていない形態では、凹み44は支持基板21に達するまで形成されていてもよい。なおダミー電極45は図1では行方向Xに連なるように設けているが、一方の電極32と同様に、行方向Xに離散的に設けてもよい。またダミー電極45は、一方の電極32と同一の部材に限らずに、親液性を示す部材によって構成されていればよく、例えば後述する絶縁膜と同一の部材によって形成してもよい。
【0032】
凹み44の底部は、この底部に塗られたインキが仕切り部43間に逆流することを防ぐために、底部においてインキが濡れ拡がることが好ましく、そのためには凹み44の底部は、隔壁よりも親液性を示すことが好ましい。具体的には凹み44の底部は、アニソールに対する接触角が30°未満であることが好ましい。ダミー電極45を設け、かつ凹み44が前記ダミー電極45表面まで達するように設けられている場合には、凹み44の底部はダミー電極45の表面に相当する。
【0033】
導電性を示す一対の電極のうちの一方の電極32は通常隔壁よりも親液性を示すため、このような部材と同一の部材でダミー電極45を形成する場合には、親液性を示すダミー電極45を一方の電極32と同一の工程で作製することができる。そのためダミー電極を設けない発光装置を形成するための工程数よりも工程数が増加することなく親液性を示すダミー電極45を作製することができる。
【0034】
有機EL素子は一対の電極と該電極間に設けられる発光層とを含んで構成される。一対の電極のうちの支持基板21側に配置される一方の電極32は有機EL素子ごとに設けられ、支持基板21上において行方向Xに等間隔をあけるとともに、列方向Yに等間隔をあけてそれぞれが離散的に配置される。本実施形態では一方の電極32は板状であり、平面視で略矩形状である。
【0035】
一方の電極32が形成された支持基板21上には電気絶縁性を有する絶縁膜24が必要に応じて設けられる。この絶縁膜24には、一方の電極32の表面がそれぞれ露出する開口28が穿設されている。絶縁膜24は、一方の電極32の周縁部を覆うとともに、一方の電極32間にわたって連続して形成されており、格子状に設けられている。各開口28が形成されている領域に、いわゆる画素として互いに独立して発光する有機EL素子がそれぞれ形成される。この絶縁膜24によって有機EL素子31は互いに電気的に絶縁されている。前述の隔壁41を構成する仕切り部43は、格子状に形成される絶縁膜24に接して、この絶縁膜24上に設けられる。
【0036】
有機EL素子31は一対の電極間に発光層以外にも必要に応じて所定の有機層や無機層が設けられる。これら発光層を含む有機層および無機層は、各仕切り部43間に設けられ、列方向Yに沿って等間隔をあけて配置される複数の有機EL素子にまたがって、一枚の連なる層として設けられる。一対の電極間に設けられる有機層および無機層のうちの少なくとも一層は後述するノズルプリンティング法によって形成される。
【0037】
一対の電極のうちの他方の電極は、本実施形態では支持基板の厚み方向Zの一方から全有機EL素子にわたって連なるように形成される。すなわち共通の電極として他方の電極は設けられる。
【0038】
<発光装置の製造方法>
次に発光装置11の製造方法について説明する。
【0039】
まず支持基板21を用意する。次に有機EL素子31を構成する一対の電極のうちの支持基板21側に配置される一方の電極32をパターン形成する。
【0040】
一方の電極32は工程の簡易さから塗布法によって形成することが好ましい。例えば光透過性を示す膜本体に、導電性を有するワイヤ状の導電体が配置されて構成される、後述の導電性樹脂電極を形成することが好ましい。塗布法によって形成される電極の詳細については後述する。なお一方の電極32を形成する際に、この一方の電極32と同一の部材からなるダミー電極45を同時に形成することが好ましい。このようにダミー電極45を一方の電極32と同一の部材によって構成することにより、一方の電極32と同一の工程でダミー電極45を形成することができるため、工程数を増加させることなくダミー電極45を形成することができる。
【0041】
なお塗布法ではなく、例えばスパッタリング法や蒸着法により、後述する電極材料からなる導電膜を支持基板21全面に形成し、さらにフォトリソグラフィーによって導電膜をパターニングすることによってマトリクス状の電極32を形成してもよく、また所定の基台上に一方の電極をパターン形成しておき、これを支持基板上に転写してもよい。
【0042】
次に絶縁膜24を形成する。絶縁膜24は無機物または有機物から構成される。絶縁膜24を構成する無機物としては、例えばSiO2およびSiNなどが挙げられる。絶縁膜24は、プラズマCVD法やスパッタ法等の公知の方法により無機絶縁物を基板の全面に堆積させ、さらに堆積した無機物から成る薄膜をフォトリソグラフィーによって所定の形状にパターニングすることによって形成される。パターニングする際に前述した開口28が穿設される。開口28の行方向Xの幅、および列方向Yの幅は、それぞれ解像度などの設計によって適宜設定され、行方向Xの幅は通常30μm〜200μmであり、列方向Yの幅は通常100μm〜500μmである。
【0043】
またアクリル樹脂系、ノボラック樹脂系、ポリイミド樹脂系のポジ型またはネガ型の感光性材料(フォトレジスト)を用いて有機物から成る絶縁膜24を形成してもよい。例えばフォトレジストを基板上に塗布し、所定のマスクを介して所定の領域に光を照射し、現像することによって、所定の形状にパターニングされた絶縁膜24を得ることができる。パターニングする際に前述した開口28が穿設される。フォトレジストを塗布する方法としては、スピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター、スリットコーターなどを用いた方法を挙げることができる。
【0044】
このようにパターニングすることによって、支持基板21の厚み方向の一方から見て、格子状の絶縁膜24が形成される。絶縁膜24は、各有機EL素子31間の絶縁を図るために設けられる。絶縁膜24の膜厚は、各有機EL素子31間の絶縁を確保可能な厚さに設定され、通常0.1μm〜1μmであり、好ましくは0.2μm〜0.4μmである。また後述する有機材料の電気抵抗の大きさによっては絶縁膜24を設けなくてもよい。
【0045】
次に隔壁41を形成する。例えば前述したフォトレジストを全面に塗布し、所定のマスクを介して所定の領域に光を照射し、さらに現像することによって、外周部42および仕切り部43を有する隔壁41が形成される。本実施形態では現像において、フォトレジストから成る層に、列方向Yに延伸する複数本の開口が穿設されるとともに、該複数本の開口の両端から所定の幅を残して列方向Yの一方および他方を除去することにより、外周部42および仕切り部43が形成される。この現像においてダミー電極45の表面が露出する。このように外周部42および仕切り部43が同一工程で一体的に形成されるため、その高さは同じである。フォトレジストの塗布は、スピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター、スリットコーター等を用いた方法により行うことができる。隔壁41の仕切り部43は、仕切り部43を介して行方向Xに隣り合う有機EL素子31間の絶縁を図るとともに、行方向Xに隣り合う画素間の混色を防止するために設けられる。すなわち仕切り部43間により規定される凹所にインキが供給された際にこのインキが仕切り部43を越えて行方向Xに隣り合う凹所に溢れ出ることを防ぐためにこの仕切り部43は設けられている。隔壁41の高さはこのような観点から設定され、通常0.5μm〜1.5μmであり、好ましくは0.5μm〜1.0μmである。また仕切り部43の行方向Xの幅は、解像度などの設計によって適宜設定され、μm〜50μmであり、好ましくは5μm〜20μmである。また隣り合う仕切り部43間の間隔は、解像度などの設計によって適宜設定され、通常40μm〜220μmである。
【0046】
仕切り部43間に供給されたインキを隔壁間に収容するために、隔壁41は通常、撥液性を示すことが好ましい。有機物は、フッ素を含有する雰囲気においてプラズマ処理を行うことによって表面がフッ素化し、撥液化するので、隔壁41形成後にフッ素を含有する雰囲気においてプラズマ処理することによって隔壁41を撥液化することができる。例えばCF4プラズマ処理を行うことによって隔壁41の表面を撥液化することができる。なお前述した方法とは異なる方法によって隔壁41に撥液性を付与してもよく、例えば撥液性を示す材料を混合した材料を用いて隔壁41を形成してもよく、また隔壁41表面に撥液性を示す物質を被覆する工程を隔壁41形成後に設けてもよい。なお絶縁膜24を有機物によって形成した場合には、フッ素含有雰囲気においてプラズマ処理を行うことによって、該絶縁膜24も同時に撥液化される。
【0047】
次に一対の電極間に設けられる所定の有機層または無機層を形成する。有機EL素子は後述するように種々の層構成を有するが、以下では一対の電極間に発光層のみが設けられる構成の有機EL素子について説明する。
【0048】
本実施形態ではノズルプリンティング装置を用いて発光層を塗布法によって形成する方法について説明する。ノズルプリンティング装置としては市販のものを用いることができ、例えば大日本スクリーン製造社製のNP-300Gを用いることができる。
【0049】
まずノズルプリンティング装置を使って、発光層を形成する材料を含むインキを仕切り部43間に供給する。インキは後述する発光材料と溶媒とを含む。ノズルプリンティング装置のノズルから液柱状のインキを吐出させた状態で、仕切り部43間の上方に配置されたノズルを長手方向の一方に移動させることによって、仕切り部43間にインキが供給される。ノズルプリンティング法では、いわゆる一筆書きでインキを塗布していく。すなわち液柱状のインキをノズルから吐出させながら、ノズルの走査として以下の(1)〜(4)の工程をこの順で繰返すことによって、各仕切り部43間にインキを順次供給することができる。(1)まず仕切り部43間上方に配置されるノズルを、列方向Yの一方から他方(図1では下)に移動させ、(2)次に行方向Xの一方(図1では右)に隣り合う仕切り部43間の上方にノズルを移動させて、(3)さらに仕切り部43間上方に配置されるノズルを、列方向Yの他方から一方(図1では上)に移動させ、(4)そして行方向Xの一方(図1では右)に隣り合う仕切り部43間の上方にノズルを移動させる。
【0050】
図3はインキを塗布した状態の支持基板21の平面図であり、インキにはハッチングを施している。ノズルプリンティング法ではインキの吐出を止めることなく連続的にインキを塗布するため、隔壁41の外周部42を越えてインキが塗布される。すなわち仕切り部43間以外の領域にもインキが塗布される。本実施形態では外周部42の列方向Y(仕切り部長手方向)の一端および他端に凹み44が形成されているため、隔壁41の外周部42を越えて塗布されたインキが、この凹み44に供給される。そしてこの外周部42は、仕切り部43間と凹み44とを隔離する仕切りとして機能する。これによって隔壁41の外周部42を越えて塗布されたインキが、仕切り部43間に逆流することを防ぐことができる。
【0051】
特に本実施形態ではダミー電極45が一方の電極32と同一部材で構成される。一方の電極32は通常親液性を示し、アニソールに対する接触角が30°未満である。本実施形態ではこのような親液性を示すダミー電極45が露出して設けられている。したがって隔壁41の外周部42を越えて塗布されたインキはダミー電極45上で濡れ拡がることになり、一度ダミー電極45上に塗布されたインキは、ダミー電極45上に確保されるため、隔壁41の外周部42を越えて塗布されたインキが、仕切り部43間に逆流することを効率的に防ぐことができる。
【0052】
このように隔壁41の外周部42を越えて塗布されたインキが仕切り部43間に逆流することを防ぐことができるため、仕切り部43間に供給されて塗布成膜された塗布膜の膜厚を、列方向Yにわたって均一にすることができる。
【0053】
なお仕切り部43の長手方向の一端および他端がそれぞれ連結する外周部の列方向Yの幅Lが広ければ、この外周部上でインキが濡れ拡がり、結果として外周部上に塗布されたインキが仕切り部43間に逆流してしまうことになる。そのためこの外周部上でのインキの濡れ拡がりを防ぐためにも、仕切り部43の長手方向の一端および他端がそれぞれ連結する外周部の列方向Yの幅Lは、200μm以下が好ましく、さらに好ましくは100μm以下である。
【0054】
なおモノクロ表示装置用の表示パネルであれば、混色の問題は生じないが、例えばカラー表示装置用の表示パネルであれば、混色が重大な問題となる。例えばカラー表示装置用の表示パネルであれば、赤色で発光するR発光材料と、緑色で発光するG発光材料と、青色で発光するB発光材料とをそれぞれ含む3種類のインキを列毎に塗り分ける必要がある。具体的にはR発光材料を含むインキ、G発光材料を含むインキ、B発光材料を含むインキをそれぞれ2列の間隔をあけてそれぞれ仕切り部43間に塗布することによって3種類のインキを塗り分けている。ノズルプリンティング法を用いた場合には、各種類のインキはそれぞれ前述した一筆書きで2列の間隔をあけて仕切り部43間に塗布する。凹み44を設けていない従来の基板を用いた場合、外周部42上に塗布された3種類のインキが外周部42上で混ざり合うとともに、混ざったインキが仕切り部43間に逆流するために混色が生じうるが(例えば図6,7参照)、本実施形態では、インキが濡れ拡がることによって、凹み44においてインキが混ざり合ったとしても、凹み44を設けることによって外周部42が仕切りとして機能するため、混ざり合ったインキが仕切り部43間に逆流することを防ぐことができるので、混色の問題を防ぐことができる。
【0055】
なおなおダミー電極45は図1では行方向Xに連なるように設けているが、一方の電極32と同様に、行方向Xに離散的に設けた場合、親液性を示すダミー電極45上にインキが保持されるため、凹み44においてインキが混ざり合うこと自体を防ぐこともできる。
【0056】
インキを塗布後、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気および真空雰囲気などの雰囲気において所定の温度で所定の時間加熱することによって、発光層を形成することができる。
【0057】
発光層を形成した後、例えば他方の電極を形成する。本実施形態では他方の電極は、後述する電極材料を用いて蒸着法およびスパッタリング法などによって、例えば支持基板の厚み方向Zの一方から全有機EL素子にわたって連なるように形成される。
【0058】
以上の説明では一対の電極間に発光層のみが設けられる形態について説明したが、一対の電極間には、発光層とは異なる所定の層を設けることができる。これら所定の層は、塗布法を用いて形成することが可能であれば、発光層と同様に、所定の層を形成する材料を含むインキを用いて、前述したノズルプリンティング法によって形成することが好ましい。
【0059】
陰極と発光層との間に設けられる層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。陰極と発光層との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極に接する層を電子注入層といい、この電子注入層を除く層を電子輸送層という。
【0060】
電子注入層は、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有する層である。電子輸送層は、陰極、電子注入層または陰極により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する層である。正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお電子注入層、及び/又は電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。
【0061】
正孔ブロック層が正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えばホール電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0062】
陽極と発光層との間に設けられる層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層などを挙げることができる。陽極と発光層との間に、一層のみが設けられる場合には、該層を正孔注入層という。陽極と発光層との間に、正孔注入層と正孔輸送層との両方の層が設けられる場合、陽極に接する層を正孔注入層といい、この正孔注入層を除く層を正孔輸送層という。
【0063】
正孔注入層は、陽極からの正孔注入効率を改善する機能を有する層である。正孔輸送層は、陽極、正孔注入層または陽極により近い正孔輸送層からの正孔注入を改善する機能を有する層である。電子ブロック層は、電子の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお正孔注入層、及び/又は正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。
【0064】
電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0065】
なお、電子注入層および正孔注入層を総称して電荷注入層と言う場合があり、電子輸送層および正孔輸送層を総称して電荷輸送層と言う場合がある。
【0066】
有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
f)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
e)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
l)陽極/発光層/電子注入層/陰極
m)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
n)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
本実施形態の有機EL素子は、2層以上の発光層を有していてもよく、2層の発光層を有する有機EL素子としては、上記a)〜n)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極と陰極とに挟持された積層体を「繰り返し単位A」とすると、以下のo)に示す層構成を挙げることができる。
o)陽極/(繰り返し単位A)/電荷注入層/(繰り返し単位A)/陰極
また、3層以上の発光層を有する有機EL素子としては、「(繰り返し単位A)/電荷注入層」を「繰り返し単位B」とすると、以下のp)に示す層構成を挙げることができる。
p)陽極/(繰り返し単位B)x/(繰り返し単位A)/陰極
なお記号「x」は、2以上の整数を表し、(繰り返し単位B)xは、繰り返し単位Bがx段積層された積層体を表す。
【0067】
ここで、電荷注入層とは電界を印加することにより、正孔と電子を発生する層である。電荷注入層としては、例えば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜を挙げることができる。
【0068】
有機EL素子は、通常基板側に陽極が配置されるが、基板側に陰極を配置するようにしてもよい。積層する層の順序、層数、および各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜設定することができる。
【0069】
次に、有機EL素子を構成する各層の材料および形成方法について、より具体的に説明する。
【0070】
<支持基板>
支持基板は、有機EL素子を製造する工程において変化しないものが好適に用いられ、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、およびシリコン基板、並びにこれらを積層したものなどが用いられる。なお有機EL素子を駆動する回路が形成された駆動基板を支持基板として用いてもよく、例えばTFT(Thin Film Transistor)基板を支持基板として設けてもよい。
【0071】
<陽極>
発光層から放射される光が陽極を通って素子外に出射する構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられ、光透過性を示す膜本体に、導電性を有するワイヤ状の導電体が配置されて構成される薄膜(以下、「導電性樹脂電極」ということがある)を電極として用いることができる。
【0072】
このような導電性樹脂電極は例えば塗布法によって形成することができる。膜本体は、可視光領域の光の透過率が高いものが好適に用いられ、樹脂や無機ポリマー、無機−有機ハイブリッド化合物などを含んで構成される。膜本体としては、導電性を有する樹脂が好適に用いられる。このようにワイヤ状の導電体に加えて、導電性を有する膜本体を用いることによって、電気抵抗を下げることができる。電極の膜厚は、電気抵抗および可視光の透過率などによって適宜設定され、例えば、0.02μm〜2μmであり、好ましくは0.02〜1μmであるである。
【0073】
ワイヤ状の導電体の径は、小さい方が好ましく、例えば400nm以下であり、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。膜本体に配置されるワイヤ状の導電体は、当該電極を通る光を回折または散乱するので、ヘイズ値を高めるとともに、光の透過率を低下させるが、可視光の波長程度または可視光の波長よりも小さい径のワイヤ状の導電体を用いることによって、可視光に対するヘイズ値を低く抑えるとともに、光の透過率の低下を抑制することができる。またワイヤ状の導電体の径は、小さすぎると抵抗が高くなるので、その径は10nm以上が好ましい。
【0074】
膜本体中に配置されるワイヤ状の導電体は、1本でも複数本でもよく、膜本体中において網目構造を形成していることが好ましい。例えば膜本体中において、1つまたは複数のワイヤ状の導電体は、膜本体の全体にわたって複雑に絡み合って配置され、網目構造を形成していることが好ましい。例えば1本のワイヤ状の導電体が複雑に絡み合ったり、複数本のワイヤ状の導電体が互いに接触し合って配置されたりする構造が、2次元的または3次元的に広がって網目構造を形成していればよい。この網目構造を形成するワイヤ状の導電体によって導電性樹脂電極の体積抵抗率を下げることができる。
【0075】
ワイヤ状の導電体は、例えば曲線状でも、針状でもよい。曲線状及び/又は針状の導電体が互いに接触し合って網目構造を形成することによって、体積抵抗率の低い電極を実現することができる。
【0076】
(ワイヤ状の導電体)
ワイヤ状の導電体の材料としては、抵抗の低い金属が好適に用いられ、例えば、Ag、Au、Cu、Alおよびこれらの合金などを挙げることができる。ワイヤ状の導電体は、例えばN.R.Jana, L.Gearheart and C.J.Murphyによる方法(Chm.Commun.,2001, p617-p618)や、C.Ducamp-Sanguesa, R.Herrera-Urbina, and M.Figlarz等による方法(J. Solid State Chem.,Vol.100, 1992, p272〜p280)によって製造することができる。例えばアミノ基含有高分子系分散剤(アイ・シー・アイ・ジャパン社製、商品名「ソルスパース24000SC」)で表面を保護した銀ナノワイヤー(長軸平均長さ1μm、短軸平均長さ10nm)を用いることができる。
【0077】
光透過性を示す膜本体に、導電性を有するワイヤ状の導電体が配置されて構成される薄膜を形成する方法としては、例えばワイヤ状の導電体を樹脂に練り込むことによって、ワイヤ状の導電体を樹脂に分散させる方法、ワイヤ状の導電体と、樹脂とを分散媒に分散させた分散液を所定の塗布法によって成膜化する方法、およびワイヤ状の導電体を樹脂から成る膜の表面にコーティングし、導電体を膜中に分散させる方法などを挙げることができる。なお分散液には必要に応じて界面活性剤や酸化防止剤などの各種添加剤を加えてもよい。樹脂の種類は、屈折率、透光率および電気抵抗などの電極に求められる特性に応じて適宜選ばれる。
【0078】
またワイヤ状の導電体を分散させる量は、電極の電気抵抗、ヘイズ値および透光率などに影響するので、導電性樹脂電極に求められる特性に応じて適宜設定される。
【0079】
導電性樹脂電極は、導電性を有するワイヤ状の導電体を分散媒に分散させた分散液を、所定の塗布法によって塗布成膜し、この膜をさらに硬化することによって得られる。
【0080】
分散液は、ワイヤ状の導電体と樹脂とを分散媒に分散させることによって調製される。分散媒としては、たとえば樹脂を溶解または分散するものであればよく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒を挙げることができる。
【0081】
また樹脂としては例えば低密度または高密度のポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ジメタノ−オクタヒドロナフタレン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体;ポリメチルメタクリルイミドなどのアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン−アクリロニトリル系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロースなどの疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体などの水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶樹脂などのエンジニアリングプラスチック系樹脂などが挙げられる。
【0082】
樹脂としては導電性を有する樹脂が好適に用いられ、導電性を有する樹脂としては例えばポリアニリン、ポリチオフェンの誘導体などが挙げられる。例えば屈折率が1.7のポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(スタルク社製、商品名「BaytronP」)を用いることができる。
【0083】
導電性樹脂電極の屈折率は、樹脂などによって構成される膜本体の屈折率によって主に決まる。この膜本体の屈折率は例えば、用いる樹脂の種類によって主に決まるので、用いる樹脂を選択することによって、意図する屈折率を示す導電性樹脂電極を容易に形成することができる。例えば一方の電極が支持基板に接して設けられる場合、一方の電極と支持基板との屈折率差は小さい方が好ましく、例えば差の絶対値は0.4未満が好ましく、屈折率の数値としては1.8以下が好ましい。導電性樹脂電極の屈折率は、膜本体に用いる樹脂の種類を適宜選択することによって所期の値に設定することができるため、支持基板との屈折率の関係を上述の範囲内に設定することができる。
【0084】
なお感光性フォトレジストに用いられる感光性材料および光硬化性モノマーに、ワイヤ状の導電体を分散させた分散液を用いれば、塗布法およびフォトリソグラフィーによって所定のパターン形状を有する電極を容易に形成することができる。例えばトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製、商品名「NKエステル−TMPT」)および重合開始剤(日本チバ・ガイギー社製、商品名「イルガキュア907」)などを用いることができる。
【0085】
ワイヤ状の導電体を分散した分散液の塗布方法としては、ディッピング法、バーコータによるコーティング法、スピンコーターによるコーティング法、ドクターブレード法、噴霧塗布法、スクリーンメッシュ印刷法、刷毛塗り、吹き付け、ロールコーティングなどを挙げることができる。なお熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を用いる場合には、分散液を塗布した後に、加熱または光照射によって塗膜を硬化させることができる。
【0086】
通常光透過性を示す電極にはITOが使われている。ITOの屈折率は、2程度であり、ガラス基板の屈折率は、1.5程度であり、ITOに接する部分(たとえば発光層)の屈折率は、1.7程度なので、電極としてITOを用いた場合には、屈折率の低いガラス基板と発光層との間に、屈折率の高いITOが挟まれた構造を有することになる。そのため発光層から放射される光の一部が全反射などによってITOで反射され、光を効率的に外に出射させることができないことがある。しかしながら上述のような屈折率の低い導電性樹脂電極を用いることによって、電極での反射を抑制することができ、光を効率的に外に出射させることができる。
【0087】
なお上述した導電性樹脂電極以外にも、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を陽極として用いることができる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0088】
陽極には、光を反射する材料を用いてもよく、該材料としては、仕事関数3.0eV以上の金属、金属酸化物、金属硫化物が好ましい。
【0089】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができ、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0090】
<正孔注入層>
正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、および酸化アルミニウムなどの酸化物や、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、アモルファスカーボン、ポリアニリン、およびポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
【0091】
正孔注入層の成膜方法としては、例えば正孔注入材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水を挙げることができる。
【0092】
溶液からの成膜方法としては、ノズルプリンティング法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インキジェットプリント法などの塗布法を挙げることができ、本実施形態では前述したノズルプリンティング法が好適に用いられる。
【0093】
正孔注入層の膜厚は、素子設計に基づいて適宜最適な値が設定され、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0094】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0095】
これらの中で正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などの高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0096】
正孔輸送層の成膜方法としては、特に制限はないが、低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含む混合液からの成膜を挙げることができ、高分子の正孔輸送材料では、正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
【0097】
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。
【0098】
溶液からの成膜方法としては、前述した正孔中注入層の成膜法と同様の塗布法を挙げることができ、本実施形態では前述したノズルプリンティング法が好適に用いられる。
【0099】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
【0100】
正孔輸送層の膜厚は、素子設計に基づいて適宜最適な値が設定され、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0101】
<発光層>
発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。ドーパントは、例えば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。なお有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、発光層は、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108である高分子化合物を含むことが好ましい。発光層を構成する発光材料としては、例えば以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
【0102】
(色素系材料)
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などを挙げることができる。
【0103】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、例えば中心金属に、Al、Zn、Beなど、またはTb、Eu、Dyなどの希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを有する金属錯体を挙げることができ、例えばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体などを挙げることができる。
【0104】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどを挙げることができる。
【0105】
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0106】
また、緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0107】
また、赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0108】
(ドーパント材料)
ドーパント材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。なお、このような発光層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。
【0109】
<発光層の成膜方法>
発光層の成膜方法としては、発光材料を含む溶液を塗布する方法、真空蒸着法、転写法などを用いることができる。溶液からの成膜に用いる溶媒としては、前述の溶液から正孔輸送層を成膜する際に用いられる溶媒と同様の溶媒を挙げることができる。
【0110】
発光材料を含む溶液を塗布する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法およびノズルプリンティング法などのコート法、並びにグラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インキジェットプリント法などの塗布法を挙げることができ、本実施形態では前述したノズルプリンティング法が好適に用いられる。
【0111】
<電子輸送層>
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、公知のものを使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0112】
これらのうち電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0113】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子の電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、または溶液若しくは溶融状態からの成膜を挙げることができ、高分子の電子輸送材料では溶液または溶融状態からの成膜を挙げることができる。なお溶液または溶融状態からの成膜する場合には、高分子バインダーを併用してもよい。溶液から電子輸送層を成膜する方法としては、前述の溶液から正孔輸送層を成膜する方法と同様の成膜法を挙げることができ、本実施形態では前述したノズルプリンティング法が好適に用いられる。
【0114】
電子輸送層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定され、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0115】
<電子注入層>
電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、例えばLiF/Caなどを挙げることができる。電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0116】
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数の小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す有機EL素子では、発光層からの光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光反射率の高い材料が好ましい。陰極には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表13族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また陰極としては、陽極の項で説明した塗布法により形成可能な導電性樹脂電極や、導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお、陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお、電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
【0117】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して適宜設定され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0118】
以上ではダミー電極を設ける形態を説明したが、他の実施の形態では、ダミー電極に換えて、絶縁膜と同じ部材によって構成されるダミー絶縁膜を設けてもよい。すなわち前記ダミー絶縁膜は、支持基板と凹みとの間に設けられており、凹みが前記ダミー絶縁膜表面まで達するように設けられている形態の発光装置である。この実施形態では凹みの底部はダミー絶縁膜の表面に相当する。
【0119】
ダミー絶縁膜は、前述の実施形態のダミー電極が設けられる部位に設けられてもよい。なおダミー絶縁膜は絶縁膜と一体に形成されていてもよい。すなわち前述の実施の形態におけるダミー電極が形成されている部位にまで絶縁膜が延伸して設けられ、ダミー電極が設けられている部位に延伸した絶縁膜を、ダミー絶縁膜としてもよい。
【0120】
ダミー絶縁膜は、絶縁膜の形成工程と同一の工程において形成することが好ましい。このようにダミー絶縁膜を絶縁膜と同一の部材によって構成することにより、絶縁膜と同一の工程でダミー絶縁膜を形成することができるため、工程数を増加させることなくダミー絶縁膜を形成することができる。
【0121】
ダミー電極の換わりとしてダミー絶縁膜を設ける場合、絶縁膜およびダミー絶縁膜は、隔壁よりも親液性を示すことが好ましい。具体的には凹みの底部は、アニソールに対する接触角が30°未満であることが好ましく、凹みの底部となるダミー絶縁膜は、アニソールに対する接触角が30°未満であることが好ましい。したがって絶縁膜の材料として例示したもののうちで、絶縁膜が親液性を示すような材料を用いて絶縁膜を形成することが必要である。絶縁膜およびダミー絶縁膜の材料としては、SiO2などの酸化物、酸化窒化物およびSiNがあげられ、SiO2などの酸化物および酸化窒が好ましく、親液性の高いSiO2がより好ましい。
【0122】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法などを挙げることができる。
【0123】
以上説明した発光装置は、表示装置に好適に用いることができ、さらには例えば液晶表示装置のバックライト、照明装置、スキャナの光源などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 基板
2 隔壁
2a 外周部
2b 仕切り部
3 支持基板
4 一方の電極
5 絶縁膜
11 発光装置
21 支持基板
24 絶縁膜
28 開口
31 有機EL素子
32 一方の電極
41 隔壁
42 外周部
43 仕切り部
44 凹み
45 ダミー電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板上に設けられる複数の有機エレクトロルミネッセンス素子と、
前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を区分けする隔壁とを備える発光装置であって、
前記隔壁は、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が設けられる領域を囲むように配置される外周部と、前記外周部に囲まれる領域においてストライプ状に配置され、長手方向の一端および他端がそれぞれ前記外周部に連結されている複数本の仕切り部とを有しており、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、互いに隣り合う仕切り部間に配置されており、
前記外周部の、前記ストライプ部長手方向の一端および他端には、前記支持基板に向かう凹みが設けられている発光装置。
【請求項2】
前記凹みの底面は、アニソールに対する接触角が30°未満である請求項2記載の発光装置。
【請求項3】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は一対の電極を有し、
該発光装置は、前記一対の電極のうちの前記支持基板寄りに配置される一方の電極と同じ部材によって構成されるダミー電極を、前記支持基板と前記凹みとの間にさらに有し、
前記凹みが前記ダミー電極表面まで達するように設けられている請求項1または2記載の発光装置。
【請求項4】
前記一方の電極および前記ダミー電極は塗布法によって形成されてなる、請求項3記載の発光装置。
【請求項5】
前記一方の電極が、光透過性を示す膜本体に、導電性を有するワイヤ状の導電体が配置されて構成されている請求項1〜4のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項6】
前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子をそれぞれ電気的に絶縁する絶縁膜と、該絶縁膜と同じ部材によって構成されるダミー絶縁膜とをさらに有し、
前記絶縁膜は、前記隔壁と前記支持基板との間に設けられており、
前記ダミー絶縁膜は、前記支持基板と前記凹みとの間に設けられており、
前記凹みが前記ダミー絶縁膜表面まで達するように設けられている請求項1または2記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−29119(P2011−29119A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176324(P2009−176324)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】