発光装置
【課題】開口率、発光効率及び寿命を向上させた発光装置を提供する。
【解決手段】基板10と、基板10上にある複数の多面構造体11と、基板10上にある複数の画素20と、を有し、画素20が、互いに発光色が異なる少なくとも2種類の発光素子部(21A,21B,21C,21D)を有し、前記発光素子部が、第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間にある発光層と、を有し、前記発光素子部が、多面構造体11の傾斜面上にあり、画素20が、ストライプ配列で配列されていることを特徴とする、発光装置1。
【解決手段】基板10と、基板10上にある複数の多面構造体11と、基板10上にある複数の画素20と、を有し、画素20が、互いに発光色が異なる少なくとも2種類の発光素子部(21A,21B,21C,21D)を有し、前記発光素子部が、第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間にある発光層と、を有し、前記発光素子部が、多面構造体11の傾斜面上にあり、画素20が、ストライプ配列で配列されていることを特徴とする、発光装置1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する。)は、実用化に向けての研究が活発に行われている。有機EL素子は、例えば、ガラス基板等の基板上に電極材料や有機材料を蒸着させるという方法で製造される。ここでシャドウマスクを用いると、複数種類の色(例えば、3色)の有機EL素子を所定の位置に選択的に形成することができるので、いわゆるパターニングが可能となる。しかしシャドウマスクの精度及び熱膨張の観点から、通常のシャドウマスクを用いたパターン化成膜技術は大型の表示装置を製造する際に適用するのが困難である。
【0003】
そこでシャドウマスクを用いないで有機EL素子を製造する方法が検討されている。例えば、特許文献1には、厚く形成した素子分離膜をシャドウマスクとして利用してパターン化された有機EL素子を製造する方法及びこの方法によって製造された発光装置が提案されている。また、非特許文献1には、シャドウマスクを用いないで有機EL素子を製造する方法として、三角錐や四角錐の立体構造物の各傾斜面(角錐面)上に発光色が異なる有機EL素子を形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−155538号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,Vol.77,No.7,p936−938
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にて提案されている発光装置は、厚く形成した素子分離膜によって開口率が小さいという問題が生じていた。また非特許文献1には、画素単位における発光装置のコンセプトは開示されているが、実際に発光装置を作製する上で重要となる画素配列等といったディスプレイを作製する上での実質的な課題については何ら言及されていない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされるものであり、その目的は、開口率、発光効率及び寿命を向上させた発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発光装置は、基板と、
前記基板上にある複数の多面構造体と、
前記基板上にある複数の画素と、を有し、
前記画素が、互いに発光色が異なる少なくとも2種類の発光素子部を有し、
前記発光素子部が、第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間にある発光層と、を有し、
前記発光素子部が、前記多面構造体の傾斜面上にあり、
前記画素が、ストライプ配列で配列されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、開口率、発光効率及び寿命を向上させた発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の発光装置を構成する多面構造体の例を示す斜視図である。
【図2】本発明の発光装置における実施形態の例を示す概略図であり、(a)は発光装置の平面図であり、(b)は、(a)の発光装置を構成する画素の斜視図である。
【図3】本発明の発光装置における成膜材料の選択的成膜方法の具体例を示す平面図である。
【図4】図2の発光装置の構成部材である基板を作製するプロセスを示す断面模式図である。
【図5】図5は、図4に示されるプロセスで作製した基板から発光装置を作製するプロセスを示す断面模式図である。
【図6】(a)は、実験例1で作製した多面構造体付基板を示す模式図であり、(b)は、基板上に設置される立体構造を示す模式図である。
【図7】実験例1における真空蒸着の具体的方法を示す模式図である。
【図8】実験例1における発光材料の成膜手順を示す平面図である。
【図9】実験例2で作製された発光装置を構成する発光素子部を示す断面概略図である。
【図10】実験例2で作製した発光装置の概略図である。
【図11】実施例2で作製した発光装置から出力された、単色発光スペクトル及び全色発光スペクトルを示す図である。
【図12】(a)は、実験例3で作製した多面構造体付基板を示す模式図であり、(b)は、基板上に設置される立体構造を示す模式図である。
【図13】実験例3における真空蒸着の具体的方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の発光装置は、基板と、この基板上にある複数の多面構造体と、この基板上に設けられる複数の画素と、を有している。ここで発光装置を構成する画素は、互いに発光色が異なる少なくとも2種類の発光素子部を有している。そして画素に含まれる発光素子部は、第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間にある発光層と、を有している。ただし、第一電極と発光層との間及び発光層と第二電極との間のいずれかにおいて、介在層を適宜設けてもよい。具体的には、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層等を介在層として設けてもよい。
【0012】
本発明においては、発光素子部が、多面構造体の傾斜面上にある。本発明において、多面構造体とは、例えば、下記(i)乃至(iii)の立体形状をいうものである。
(i)四角錐
(ii)2n角錐(nは、3以上の自然数)
(iii)三角プリズム(三角柱)
ただし、上記(i)乃至(iii)は、あくまでも本発明において想定し得る多面構造体の具体例に過ぎないものであり、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。上記(i)乃至(iii)以外の形状を有する多面構造体については、後述する。
【0013】
(i)の場合、多面構造体を構成する四角錐の図形的な要素、具体的には、底面の形状、許容される高さ、頭頂点の位置等に関しては、本発明では、特に限定されるものではない。ここで四角錐に含まれる4面の角錐面のうち所定の面上に選択的に成膜材料を成膜することがより容易になるという観点から、四角錐の中でも底面が正方形あるいは長方形であって、平面側から投影したときに頭頂点が底面の中心と一致するものが好ましい。また四角錐の中でも全ての角錐面が正三角形である正四角錐が、特に好ましい。
【0014】
(ii)の場合、多面構造体は、傾斜面(角錐面)の数が2の倍数であることから、2n面ある傾斜面に2種類のそれぞれ異なる色や種類の材料を成膜することが可能である。
【0015】
(iii)の場合、三角柱を構成する3面の側面のうち一つの面を底面に見立てることで、傾斜面が2面現れる。このためこの2面の傾斜面にそれぞれ異なる材料を成膜することにより画素1つに対して2種類の発光素子部を形成することができる。尚、上述のように、所定の側面を底面に見立てたときに側面になる三角形の形状については、特に限定されるものではない。蒸着プロセスの関係上、好ましくは、基板面に対する傾斜面の角度がそれぞれ90°未満である三角形であり、より好ましくは、基板面に対する傾斜面の角度がそれぞれ60°以下である三角形である。上記三角形の具体的な形状として、好ましくは、二等辺三角形であり、特に好ましくは、正三角形である。尚、側面となる三角形の形状を適宜設定することにより傾斜面の面積を適宜調整することが可能である。これを利用すれば、二つの傾斜面にそれぞれ設けられる発光素子部の面積(発光面積)を任意に変更することができる。
【0016】
本発明において、多面構造体の形状は、上記(i)乃至(iii)に示される形状の他に、傾斜面が2n面ある立体形状が挙げられる。例えば、図1に示される多面構造体が挙げられる。図1に示される多面構造体は、立方体又は正四角柱の一部を切削加工することによって作製される立体構造である。図1に示される多面構造体は傾斜面が2面あるため、(iii)の場合と同様に、2面の傾斜面にそれぞれ異なる材料を成膜することにより画素1つに対して2種類の発光素子部を形成することができる。
【0017】
以上説明した多面構造体は、傾斜面を有することが重要である。このことから、多面構造体の上部が、頭頂点が無い平面であってもよいし、曲面でもあっても構わない。
【0018】
また本発明において、発光装置を構成する画素は、ストライプ配列で配列されている。尚、画素の配列の詳細については、後述する。
【0019】
本発明の発光装置において、基板の材質は特に問わない。有機材料からなる基板であってもよいし、無機材料からなる基板であってもよい。ここで有機材料からなる基板を採用する場合、例えば、厚さが薄いプラスチックフィルムを基板として本発明の発光装置をフレキシブルな発光装置とすることができる。また無機材料からなる基板を採用する場合、例えば、ガラス基板を採用することができる。
【0020】
本発明の発光装置においては、基板が発光素子部から出力された光を透過させる部材か否かは特に問われない。例えば、光を透過させる部材を基板として採用して、基板側から光を取り出す形式にしてもよい。あるいはガラス等の光透過部材に単位素子を駆動するためのTFT等のスイッチング素子や他の部材を設けた結果として、それ自体が実質的に光を透過しない部材となっている基板も採用することができる。
【0021】
本発明の発光装置は、多面構造体を形成する傾斜面上に設けられる発光素子部を個別に駆動させるための発光素子部の数に対応する数のスイッチング素子が備えられている。ここでスイッチング素子として、例えば、TFTを採用することができる。尚、本発明の発光装置は、駆動形式がアクティブマトリクス形式であることが好ましいが、単純マトリクス駆動形式であってもよい。
【0022】
上述したように、本発明の発光装置において、発光素子部は、陽極と陰極との間に少なくとも発光層を有していればよい。また各発光素子部は、発光層を含めた両電極間にある層の層構成がそれぞれ異なっていてもよいし、共通する層においてその層の組成を各発光素子部ごとに異なるものにしてもよい。
【0023】
また、本発明は、主に、発光素子部が有機EL素子である発光装置について説明しているが、発光材料としては有機材料でもよいし、無機材料でもよい。従って、発光材料として、一般的なLED材料や、無機EL材料、あるいはクアンタムドット材料等でもよい。
【0024】
本発明の発光装置において、画素を構成する発光素子部の発光色の組み合わせは、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)からなる光の3原色であってもよいし、その他の組み合わせであってもよい。またシアン系の材料とイエロー系の材料を個別に成膜して画素全体の発光色を白色(W)にしてもよい。一方、発光素子部をそれぞれ異なる種類の材料で形成してもよい。また、成膜方法としては、限定されるものではないが、指向性がある成膜方法が好ましく、蒸着、スパッタ、CVD等が望ましい。
【0025】
尚、本発明の発光装置において、発光装置を構成する多面構造体は、傾斜面の数が偶数の立体形状である。このため、1つの画素から赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の光を出力させるには、下記(i)及び(ii)に示される2種類の発光素子を適宜組み合わせるのが好ましい。
(i)発光色が1色である発光素子
(ii)発光色が2色以上である発光素子
【0026】
例えば、青色発光する発光素子部と、緑色発光する発光素子部と、緑色又は青色及び赤色の発光をする発光素子部で画素を形成する。もちろん、画素を構成する発光素子部の組み合わせはこれに限定されるものではない。基本的には、2の倍数からなる多面構造の斜面を2分した面に対して、それぞれ異なる材料を成膜できることから、積層することにより考えられ得る全ての成膜パターンが可能である。
【0027】
本発明の発光装置は、具体的には、パソコン等のディスプレイやテレビジョンや電車内の広告用表示装置や自動車内に取り付けられるカーナビゲーション装置等の部材として使用される。ここで本発明の発光装置を画像表示装置として利用する場合は、例えば、自動車の運転席の表示部や携帯電話の表示部に用いられる。またこの画像表示装置をレーザープリンタや複写機等の電子写真方式の画像形成装置の操作パネル部分として利用してもよい。あるいはスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置の表示部として利用してもよい。
さらに、2つの傾斜面からなる立体構造に2つ以上異なる材料をパターン化して成膜するためには、例えば、一方が少なくとも1色、他方は2色発光するよう、一方には青色の層を、他方には緑色のみの層と緑色と赤色の積層するように蒸着すればよい。もちろん、その他の層構成も可能である。基本的には、2の倍数からなる多面構造の斜面を2分した面に対して、それぞれ異なる材料を成膜できることから、積層することにより考えられ得る全ての成膜パターンが可能である。
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の発光装置の実施形態について説明する。
【0029】
[実施形態1]四角錐型
【0030】
(1−1)発光装置の概要
図2は、本発明の発光装置における実施形態の例を示す概略図であり、(a)は発光装置の平面図であり、(b)は、(a)の発光装置を構成する画素の斜視図である。
【0031】
図2の発光装置1は、基板10と、基板10上に設けられる多面構造体11と、基板10上に設けられる画素20と、からなる。図2の発光装置1において、多面構造体11は、図2(b)に示されるように、四角錐型の立体構造体である。また図2の発光装置1において、画素20は、4種類の発光素子部(21A,21B,21C,21D)を有している。ここで各発光素子部(21A,21B,21C,21D)は、多面構造体11の傾斜面(四角錐の角錐面)上にそれぞれ設けられている。
【0032】
(1−2)画素の配列
図2の発光装置1において、発光装置1を構成する画素20は、ストライプ状に配列されている。
【0033】
ところで、発光装置は、開口率を極力大きくするという観点から、装置を構成する画素は極力隙間なく配列させる必要がある。四角錐型の画素を有する発光装置において、この画素を隙間なく基板上に配列する方法としては、表1のように、画素をストライプ状に配列(ストライプ配列)させたり、画素をデルタ状に配列(デルタ配列)させたりする方法がある。
【0034】
【表1】
【0035】
ここで表1に示されるように、画素の土台となる四角錐形状の多面構造体をデルタ状に配列することで、四角錐形状の多面構造体を隙間なく配列することが可能である。しかしデルタ配列で配列した当該多面構造体の傾斜面上に蒸着膜を形成しようとすると、互いに隣り合う多面構造体が遮蔽体(蒸着材料の蒸気を遮蔽するもの)として機能してしまい、当該構造物の所望の傾斜面上に選択的に成膜ができない。あるいは、1つの面上に2以上の蒸着膜が重複することにより混色が発生する。これを避けるためには、隣り合う画素の画素間ピッチを大きくする必要があるが、画素間ピッチの拡大により、ディスプレイの開口率が小さくなる。このことから、発光効率・寿命が低下する問題がある。
【0036】
一方、四角錐形状の多面構造体をストライプ配列した場合には、蒸着の方法によっては薄膜を成膜するときに当該多面構造体が遮蔽体として機能することがなく、また当該多面構造体の配列によって生じる混色も発生することもない。従って、発光装置の開口率を向上させることができる。よって、画素の土台となる四角錐形状の多面構造体をストライプ状に配列させると、発光装置の発光効率・寿命を向上させることができる。以上より、四角錐形状の画素をストライプ配列にするために画素の土台となる四角錐形状の多面構造体をストライプ配列にするのが望ましい。
【0037】
(1−3)好ましい成膜方法
次に、本実施形態における好ましい成膜方法(蒸着方法)について説明する。四角錐形状の多面構造体をストライプ配列した場合であっても蒸着材料を蒸着・成膜する際に、当該蒸着材料の蒸気の方向によっては上述した混色が発生し得る。このため蒸着材料の蒸気の方向を一定の方向に制御する必要がある。本実施形態の場合では、四角錐形状の多面構造体に含まれ互いに隣接する2面の傾斜面が確認できる2本の稜を基準線とし、当該基準線と垂直の方向に蒸着材料の蒸気の方向を制御するのが好ましい。尚、この方向の制御は、xy座標系等の平面座標系における方向制御であるため実際に蒸着を行う際には、上述した互いに隣接する2面の傾斜面のみが見える方向になるように3次元的に角度調整を行うのがより好ましい。
【0038】
以下、図面を参照しながら、発光材料等の選択的成膜方法について説明する。図3は、本発明の発光装置における成膜材料の選択的成膜方法の具体例を示す平面図である。
尚、図3(a)乃至(c)は、正四角錐形状の多面構造体がxy座標系に沿ってストライプ配列されている場合の具体例である。
【0039】
図3(a)は、例えば、赤色系発光材料(R)の蒸気を(−1,1,−1)の方向から当てた後、緑色系発光材料(G)の蒸気を(1,−1,−1)の方向から当てることによって得られる態様である。本発明の発光装置は、図3(a)に示されるように、四角錐形状(正四角錐)の多面構造体に含まれ互いに隣接する2面の傾斜面が確認できる2本の稜(L1,L2)を境界線として、2種類の発光材料を所定の面に選択的に成膜することができる。
【0040】
図3(b)は、図3(a)に示される態様からさらに青色系発光材料(B)の蒸気を(1,1,−1)の方向から当てることによって得られる態様である。
【0041】
図3(c)は、まず青色系発光材料(B)の蒸気を全面に蒸着した後、緑色系発光材料(G)の蒸気を(1,1,−1)の方向から当て、次いで赤色系発光材料(R)の蒸気を(−1,1,−1)の方向から当てることによって得られる態様である。
【0042】
図3(b)及び(c)に示されるように、本発明の発光装置は、蒸着材料の蒸気を所定の方向から照射することによって、蒸着材料を所定の領域に選択的に成膜することができる。つまり蒸着材料の塗り分けを行うことができる。また図3(b)及び(c)に示されるように、3色の発光材料を所定の傾斜面(角錐面)に選択的に蒸着する場合には、発光色が1つの発光素子部と、発光色が2色以上の発光素子部とがそれぞれ少なくとも1つ存在する。
【0043】
(1−4)発光装置の製造方法
次に、図2の発光装置1の製造方法の具体例について述べる。
【0044】
[多面構造体を有する基板の作製]
図4は、図2の発光装置の構成部材である基板を作製するプロセスを示す断面模式図である。
【0045】
図2の発光装置1の製造する際には、まず始めに、表面に電極12が形成された基板10を用意する、もしくは基板10上の所定の位置に電極12を形成する(図4(a))。そしてこの基板10上の所定の領域に、四角錘状の多面構造体11を作製する。ここで多面構造体11を作製する方法は特に限定されるものではない。例えば、モールドプロセスや、フォトリソグラフィ、ナノインプリント等のいずれの方法を採用することができる。
【0046】
以下、モールドプロセスを用いた方法を具体例として説明する。まず、所望の立体形状(四角錐形状)にするためのマスター基板をダイアモンドツール等で作製する。作製されるマスター基板は、CuやNi等の金属製であることが望ましい。ここで形成される多面構造体11の配列がストライプ配列になるように、マスター基板には所定のパターニングが施されているのが望ましい。次に、基板10上に層間絶縁膜13を塗布した(図4(b))後、先程作製したマスター基板を、層間絶縁膜13が塗布された基板10に対してプレスすることで、層間絶縁膜13の成形を行う。次に、UV露光等により層間絶縁膜13を硬化させた後、マスター基板と基板10とを剥離することにより、基板10上の所望の位置に四角錘形状の多面構造体11が形成される(図4(c))。
【0047】
以上述べたプロセスにおいて、層間絶縁膜13の構成材料としてUV硬化樹脂が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。ただし発光素子部から出力される光の進行方向が基板側(ボトムエミッション型)の発光装置を作製する場合には、層間絶縁膜13の構成材料として透明樹脂を使用することが望ましい。もちろん層間絶縁膜13の構成材料は、樹脂等の有機材料である必然性は無く、塗布型プロセスで膜を形成することが可能であるならば、例えば、SiO等の無機材料を使用してもよい。また、フォトリソグラフィ法により多面構造体12を作製する場合は、層間絶縁膜13を塗布型プロセスで成膜する必要が無いため、ドライプロセスによって成膜される材料を使用しても構わない。層間絶縁膜13をドライプロセスで成膜する場合、層間絶縁膜13の構成材料としては、CVD法やスパッタ法等で成膜したSiO,SiN,SiNO等のSi化合物であることが望ましい。
【0048】
次に、作製した多面構造体11上に、発光素子部(21A,21B,21C,21D)の構成部材である第1電極22を作製する。第1電極22の構成材料は、発光素子部の発光が基板10側から出力されるボトムエミッション型の発光装置と、発光素子部の発光が基板10とは反対側から出力されるトップエミッション型の発光装置と、においてそれぞれ異なる。
【0049】
例えば、ボトムエミッション型の発光装置の場合は、第1電極22の構成材料は、透明導電材料又は半透明導電材料であることが望ましい。透明導電材料として、具体的には、インジウム化合物であるITO,IZO等が挙げられる。一方、半透明導電材料として、具体的には、Agや、Agとその他の金属からなる合金、Al等のその他の金属を、光透過性を有する程度の膜厚で成膜した薄膜が望ましい。もちろん第1電極22は、インジウム化合物からなる透明導電膜と金属等からなる金属薄膜とからなる積層型電極にしてもよい。
【0050】
実際に第1電極22を形成する際には、まず第1電極22となる電極薄膜を形成し(図4(d))、次いでフォトリソグラフィによるパターン形成プロセスを行う(図4(e))。これにより、所望の形状の第1電極22が多面構造体12の傾斜面(角錐面)上に形成される。
【0051】
次に、第1電極22の端部を覆い絶縁するための層間絶縁膜14を形成する(図4(f)、(g))。本発明において、層間絶縁膜14もまた、その構成材料は特に限定されるものではないが、樹脂等の有機材料でもよいし、無機材料でもよい。無機材料を使用する場合は、例えば、塗布型プロセスで形成可能な無機材料、例えば、SiO等が使用される。また、フォトリソグラフィ法により層間絶縁膜14を作製・加工する場合は、塗布型プロセスで層間絶縁膜14を成膜する必要が無いため、ドライプロセスによって成膜される材料を使用しても構わない。層間絶縁膜14をドライプロセスで成膜する場合、層間絶縁膜14の構成材料としては、CVD法やスパッタ法等で成膜したSiO,SiN,SiNO等のSi化合物であることが望ましい。層間絶縁膜14も、層間絶縁膜13と同様に、フォトリソグラフィ等により所望の形状にパターン形成される。本実施形態では、図4(f)及び(g)に示されるように層間絶縁膜14を形成しているが、発光素子間で生じ得るショート等の問題が生じなければ、層間絶縁膜14を形成するプロセスを省略しても構わない。以上のプロセスにより、四角錐形状の多面構造体11が設けられている基板10を作製することができる。
【0052】
[発光装置の作製]
次に、上記プロセスにより作製した四角錐形状の多面構造体11が設けられている基板10から発光装置を作製するプロセスについて図面を参照しながら説明する。図5は、図4に示されるプロセスで作製した基板から発光装置を作製するプロセスを示す断面模式図である。
【0053】
まず作製した四角錐形状の多面構造体11が設けられている基板10(図5(a))の画素面(多面構造体11の傾斜面)に対して、真空蒸着により、発光材料等からなる膜を成膜する。まず、第1の機能層23である正孔注入層を成膜する(図5(b))。ここで正孔注入層を、各画素に共通する層として成膜する場合は、基板面が蒸着源と平行になるように設置した上で上記真空蒸着を行う。
【0054】
次に、第一発光層24aを成膜する(図5(c))。第一発光層24aは、各画素の所定の位置でパターン形成する。このことから、第一発光層24aを成膜する際には、その成膜面に対して蒸着源が平行になるように配置するのが望ましい。例えば、多面構造体11の傾斜面と基板の面とでなす角(画素角)が45°の場合、蒸着面から垂直に伸ばした垂線を軸として、この軸上の立体角ωに蒸着される質量をm0とし、この軸から角度θだけ傾いた方向の立体角ωに蒸着される質量をmφとする。ここで蒸着分子の有効蒸着角度を画素角に対して45°、水平方向に対して5°とした場合、蒸着角をα=0°,30°,45°,60°,70°と設定した場合の蒸着角度分布は下記式で示される。
【0055】
【数1】
【0056】
上記式を利用して蒸着角度分布を計算すると、蒸着角(α)が65°の時に蒸着される材料の収率が最大となることがわかる。従って、画素面に対して蒸着源を65°傾斜させて蒸着することが望ましい。ただし画素面に対して蒸着源が相対的に65°傾斜していればよいので、画素面に対して蒸着源を傾けてもよいし、蒸着源に対して基板を傾けてもよい。ただし、大型の基板で成膜する際には、基板を傾けるのは困難であるし、蒸着装置も大きくする必要性がある。係る場合では、好ましくは、蒸着源の方を傾ける。尚、正孔輸送層等の発光層以外の機能層についても各画素ごとにパターン形成する必要がある場合には、第一発光層24aと同様の方法で基板あるいは蒸着源を傾斜させて蒸着を行ってもよい。
【0057】
次に、第二発光層24bも第一発光層24aと同様に成膜する(図5(d))。第二発光層24bも第一発光層24aと同様にそれぞれの画素面に対して蒸着源を65°傾斜させて蒸着することが望ましい。
【0058】
次に、第2の機能層25である電子輸送層を成膜する(図5(e))。ここで電子輸送層を、赤色、緑色、青色の各画素に共通する層として成膜する場合は、基板面が蒸着源と平行になるように設置した上で上記真空蒸着を行う。また電子輸送層を各画素ごとにパターン形成する必要がある場合には、緑色発光層24gと同様の方法で基板あるいは蒸着源を傾斜させて蒸着を行ってもよい。
【0059】
次に、電子注入層(不図示)、第2電極26を順次形成する(図5(f))。電子注入層(不図示)や第2電極26を成膜する際には、上述した方法を利用して薄膜を成膜することができる。
【0060】
本発明の発光装置は、最後に、不活性ガス雰囲気中のグローブボックスにて、乾燥剤を入れた封止ガラス(不図示)とガラス基板の成膜面とをエポキシ樹脂接着剤を用いて封止する。もちろん、封止材料としては、ドライプロセスによって成膜される無機材料でもかまわない。例えば、ドライプロセスで形成される材料としては、CVDやスパッタ等で成膜したSiO,SiN,SiNO等のSi化合物であることが望ましい。このようにして、発光素子部20を設ける多面構造体11が四角錐である第1の実施形態の発光装置を作製することができる。
【0061】
(実験例1)
本実験例は、ガラス基板上に設けられる多面構造体が四角錐である基板の蒸着実験に関する実験例である。
【0062】
(1)多面構造体付基板の作製
四角錐形状の立体構造を作製し、この立体構造をガラス製のマザー基板(縦85mm×横100mm×厚さ0.7mm)上に設置して、多面構造体付基板を作製した。図6(a)は、本実験例で作製した多面構造体付基板を示す模式図であり、(b)は、基板上に設置される立体構造を示す模式図である。尚、図6(a)に示される多面構造体付基板は、基板30上に、9個の四角錐形状の立体構造31がストライプ配列で配列されている。
【0063】
本実験例で作製される四角錐形状の立体構造は、まずガラス基板(縦20mm×横20mm×厚さ0.7mm)を、一辺が20mmの正三角形になるように切断した。次に、切断したガラス基板(基板32)4枚を、図6(b)に示されるように辺で合わせた後、基板32同士が合わさっている辺にエポキシ樹脂接着剤を塗布・硬化させることで、四角錐形状の立体構造31を9個作製した。次に、この立体構造を、図6(a)に示されるように、マザー基板(基板30)に対してストライプ配列になるようにピッチを調整しながら配置した。次に、立体構造31の底辺部(基板32が合わさっていない辺の部分)にエポキシ樹脂接着剤を塗布して樹脂を硬化させた。このようにして、多面構造体(立体構造31)が四角錐である基板(多面構造体付基板)を作製した。
【0064】
(2)発光材料の蒸着
得られた多面構造体付基板を用いて、所定の面に発光材料を選択的に蒸着した。図7は、本実験例における真空蒸着の具体的方法を示す模式図である。
【0065】
本実験例においては、まず多面構造体付基板を真空蒸着機(VPC1100)に設置した。その際、図7に示されるように、蒸着源40から見たときに蒸着したい面31aのみが見えるように、多面構造体付基板を蒸着源の法線上、かつ当該基板の傾斜角を約60°に設置した。次に、3種の発光材料、即ち、青色発光材料(BF01)、緑色発光材料(L8)、赤色発光材料(RD−3)を順次蒸着した。図8は、本実験例における発光材料の成膜手順を示す平面図である。まず図8(a)に示されるように、4面ある傾斜面(角錐面)のうち2つの面に、青色発光材料からなる薄膜を成膜した。このとき当該薄膜の膜厚を30nmとし、成膜速度を1.0Å/sとした。次に、青色発光材料が成膜されていない傾斜面のみが蒸着源から見えるように、当該基板をその傾斜角を維持しつつ180°回転移動させた。次に、図8(b)に示されるように、多面構造体付基板の所定の面(青色発光材料からなる薄膜が形成されていない2つの面)に緑色発光材料を蒸着した。尚、緑色発光材料を蒸着する際の条件(膜厚、成膜速度)は、青色発光材料のときと同じである。次に、図7に示されるように、蒸着源40から見たときに赤色発光材料を蒸着したい面31aのみが見えるように、当該基板をその傾斜角を維持しつつ90°回転移動させた。次に、図8(c)に示されるように、多面構造体付基板の所定の面に赤色発光材料を蒸着した。尚、赤色発光材料を蒸着する際の条件(膜厚、成膜速度)は、青色発光材料のときと同じである。このようにして、多面構造体付基板が有する4面の傾斜面に対して、図8(d)に示されるように、3種の異なる色の発光材料をそれぞれ蒸着した。
【0066】
(3)蒸着膜の評価
4面の傾斜面に対して、3種の異なる色の発光材料がそれぞれ所定の傾斜面に蒸着されている多面構造体付基板の蒸着膜の状態、例えば、蒸着膜のつきまわり、混色の有無を評価するため、目視による確認とUV照射による目視評価をした。ここで目視による蒸着膜の評価を行ったところ、各傾斜面に蒸着されている蒸着膜について蒸着膜のつきまわり及び混色がないことを確認した。またUV照射下による目視評価を行ったところ、UV照射を行わないで目視したときの評価と同様に、蒸着膜のつきまわり及び混色がないことを確認した。
【0067】
(実験例2)
本実験例は、基板上に設けられる多面構造体が正四角錐であって、この正四角錐が有する4つの傾斜面に、赤色、緑色、青色の発光素子部がそれぞれ1:1:2の割合で設けられている発光装置の実験例である。以下に、本実験例で使用した材料の一部を示す。
【0068】
【化1】
【0069】
(1)発光素子部の作製
図9は、本実験例で作製された発光装置を構成する発光素子部を示す断面概略図である。図9の発光素子部50は、基板51上に、第1電極52、有機化合物層53、第2電極54が順次設けられている。
【0070】
(1−1)第1電極の作製
まずスパッタリング法により、正三角形状のガラス基板(基板51)上に、InZnOを成膜し、第1電極52を形成した。このとき第1電極52の膜厚を40nmとした。
【0071】
(1−2)有機化合物層の作製
次に、真空蒸着法により、第1電極52上に青色発光素子部を構成する有機化合物層53を形成した。まず化合物2を成膜して第1正孔輸送層を形成した。このとき第1正孔輸送層の膜厚を90nmとした。次に、化合物3を成膜して第2正孔輸送層を形成した。このとき第2正孔輸送層の膜厚を10nmとした。次に、化合物4と化合物5とを共蒸着して発光層を形成した。このとき発光層の膜厚を35nmとし、成膜速度をそれぞれ0.98Å/s(化合物4)、0.02Å/s(化合物5)と設定した。次に、化合物1を成膜して電子輸送層を形成した。このとき電子輸送層の膜厚を60nmとした。次に、LiFを成膜して電子注入層を形成した。このとき電子注入層の膜厚を0.5nmとした。
【0072】
次に、別の第1電極付基板を使用して、真空蒸着法により、第1電極52上に緑色発光素子部を構成する有機化合物層53を形成した。本実験例において、緑色発光素子部を構成する有機化合物層53を形成する際には、基本的には、上述した青色発光素子部を構成する有機化合物層53の形成方法を採用した。ただし、この際に、第2正孔輸送層の成膜を省略し、発光層を形成する際に化合物6と化合物7とを使用し成膜速度0.98Å/s(化合物6)、0.02Å/s(化合物7)で共蒸着した。
【0073】
次に、別の第1電極付基板を使用して、真空蒸着法により、第1電極52上に赤色発光素子部を構成する有機化合物層53を形成した。本実験例において、赤色発光素子部を構成する有機化合物層53を形成する際には、基本的には、上述した青色発光素子部を構成する有機化合物層53の形成方法を採用した。ただし、この際に、第2正孔輸送層の成膜を省略し、発光層を形成する際に化合物8、化合物9及び化合物10を使用し、成膜速度をそれぞれ0.68Å/s(化合物8)、0.02Å/s(化合物9)、0.30Å/s(化合物10)として共蒸着した。
【0074】
(1−3)第2電極の作製
次に、真空蒸着法により、電子注入層上に、Alを成膜して第2電極54を形成した。このとき第2電極54の膜厚を200nmとし、成膜速度を1.0Å/sとした。最後に、窒素雰囲気中のグローブボックス内にて、乾燥剤を入れた封止ガラス(不図示)とガラス基板の成膜面とをエポキシ樹脂接着剤を用いて接着して各色の発光素子部をそれぞれ封止した。以上の方法により、発光素子部に相当する平面形状が正三角形である発光素子を合計4個作製した。ここで4個の発光素子のうち、2個が青色発光素子であり、1個が緑色発光素子であり、1個が赤色発光素子である。
【0075】
(2)発光装置の作製
得られた正三角形状の各色(赤色、緑色、青色)の発光素子部について、それぞれの辺を合わせた後、合わせた辺についてエポキシ樹脂接着剤を塗布・硬化させ、ピラミッド型の立体構造を作製した。図10は、本実験例で作製した発光装置の概略図である。図10の発光装置60は、赤色発光素子部50r、緑色発光素子部50g及び青色発光素子部50bを1:1:2の割合で有している。次に、発光面の屈折率をガラスと同等程度とするため、屈折率が1.5であるPDMS(Polydimethylsiloxane)をコーナーキューブ構造の内部に充填した。このようにして、赤色、緑色、青色のそれぞれの発光素子を配したピラミッド型の発光装置を作製した。
【0076】
(3)発光装置の評価
得られた発光装置を評価するため、各色(赤色、緑色、青色)の発光面からそれぞれ出力される単色発光スペクトルと、全発光素子部を駆動させたときの全色発光スペクトルとを測定した。
【0077】
図11は、本実施例で作製した発光装置から出力された、単色発光スペクトル及び全色発光スペクトルを示す図である。各発光素子部を個別に駆動して単色発光させることにより、各色(赤色、緑色、青色)の発光スペクトルを確認した。また、全発光素子部を駆動させたときにおいても、各色の発光スペクトルを確認した。さらに、全発光素子部を駆動させたときに出力される光の色度(CIE_x,y)は(0.31,0.27)であり、白色を呈することを確認した。
【0078】
[実施形態2]2n角錐型(nは、3以上の整数)
本発明の発光装置の実施形態には、発光装置を構成する多面構造体が四角錐である形態に限定されず、傾斜面(角錐面)が偶数面存在する2n角錐の形態、例えば、6角錐、8角錐、12角錐等も含まれる。傾斜面(角錐面)が偶数面存在する2n角錐は、2n角錐に含まれるn面の角錐面が確認できる2本の稜を境界線として2種類の発光材料をそれぞれ所定の領域に選択的に成膜することができる。また多面構造体が2n角錐の場合、成膜するごとに成膜位置を変えつつ成膜操作を2n回行うことにより、各傾斜面において積層体の構成がそれぞれ異なる発光素子部が形成される。
【0079】
本実施形態においては、発光装置を構成する多面構造体は、四角錐型と同様にストライプ配列にする必要がある。また所望の傾斜面(角錐面)に選択的に材料が成膜できるように、多面構造体に含まれ互いに隣接するn面の傾斜面が確認できる2本の稜を基準線とし、当該基準線と垂直の方向に蒸着材料の蒸気の方向を制御するのが好ましい。
【0080】
また発光装置を構成する多面構造体が円錐であってもよい。円錐の場合も2n角錐と同様の手法により、円錐面の所定の領域に選択的に発光材料等を選択的に成膜させることができる。
【0081】
これらの多面構造体は傾斜面の数が2の倍数個であることから、上述した2本の稜を境界線として、所定の面あるいは複数の面からなる領域にそれぞれ異なる色や種類の材料を成膜することが可能である。ここで多面構造体の傾斜面にそれぞれ異なる材料をパターン化して成膜するためには、ある特定の傾斜面に対してのみ成膜され、残りの傾斜面には成膜されないように、成膜材料の蒸気の向きを四角錐型と同様に適宜制御するのは好ましい。具体的には、成膜方向を傾斜面の傾きに対して垂直になるように成膜源を予め傾けて配置するのが望ましい。
【0082】
[実施形態3]三角プリズム(三角柱)型
上述したように、本発明の発光装置の実施形態には、多面構造体の形状が三角柱を横倒しにした三角プリズムのものも含まれる。
【0083】
三角プリズム型の画素は、デルタ配列で配列した場合でも隙間なく各画素を配列することが可能ではある。しかし、デルタ配列で配列した三角プリズム型の多面構造体の傾斜面に材料を成膜すると他の実施形態と同様に混色等が発生し得るため隣り合う画素の画素間ピッチを大きくする必要がある。従って、ディスプレイの開口率が小さくなることから、発光効率・寿命が低下する問題がある。一方、三角プリズム型の画素をストライプ配列した場合には、当該画素の配置形式によっては蒸着により成膜した蒸着膜が、互いに隣り合う画素を遮蔽することも無く、混色することも無いことから、開口率を最大にすることができる。従って、発光装置の発光効率・寿命を向上することができる。つまり、三角プリズム型の画素の配列方法としてはストライプ配列が好ましい。
【0084】
ところで多面構造体の形状が三角プリズム型である場合、平面視で確認できる三角プリズムの稜が薄膜を成膜する傾斜面と薄膜を成膜しない傾斜面とを分ける境界線になる。ここで三角プリズムの稜によって隔てられた2つの傾斜面のうちのいずれかの面に選択的に成膜することができるようにするために、平面視で確認できる三角プリズムの稜の向きは各多面構造体において同一にするのが望ましい。即ち、各多面構造体が有する稜がそれぞれ平行になるように配置するのが望ましい。仮に、三角プリズムの稜の向きが各多面構造体でばらばらであると、画素の土台となる多面構造体をストライプ配列で配列したとしてもこの多面構造体の傾斜面に材料を所定の傾斜面に選択的に成膜することができなくなることがある。
【0085】
また各画素の成膜状況を揃えるために、各画素の土台となる多面構造体の形状はいずれの画素においても同一あるいは実質同一であることが好ましい。
【0086】
一方、基板上にストライプ配列された三角プリズム型の発光装置の製造方法については、四角錐型の発光装置の製造方法と基本的には変わりがない。
【0087】
(実験例3)
本実験例は、ガラス基板上に設けられる多面構造体が三角プリズム(三角柱)である基板の蒸着実験に関する実験例である。
【0088】
(1)多面構造体付基板の作製
三角プリズム形状の立体構造を作製し、この立体構造をガラス製のマザー基板(縦85mm×横100mm×厚さ0.7mm)上に設置して、多面構造体付基板を作製した。図12(a)は、本実験例で作製した多面構造体付基板を示す模式図であり、(b)は、基板上に設置される立体構造を示す模式図である。尚、図12(a)に示される多面構造体付基板は、基板30上に、3個の三角プリズム形状の立体構造31が、各立体構造の稜がそろうようにストライプ配列で配列されている。またこの立体構造31は、画素3個分に相当する多面構造体である。
【0089】
本実験例で作製される四角錐形状の立体構造は、まずガラス基板(縦20mm×横60mm×厚さ0.7mm)を、2枚用意して、図12(b)に示されるように長辺同士で合わせた後、基板32同士が合わさっている辺にエポキシ樹脂接着剤を塗布・硬化させた。このとき両基板の接触角を60°に設定した。こうすることで、図12(b)に示される断面くの字型の立体構造31を3個作製した。次に、この立体構造を、図12(a)に示されるように、各立体構造がそれぞれ平行に配置されマザー基板(基板30)に対してストライプ配列になるようにピッチを調整しながら配置した。次に、立体構造31の底辺部(基板32が合わさっていない辺の部分)にエポキシ樹脂接着剤を塗布して樹脂を硬化させた。このようにして、多面構造体(立体構造31)が三角プリズム型である基板(多面構造体付基板)を作製した。
【0090】
(2)発光材料の蒸着
得られた多面構造体付基板を用いて、所定の面に発光材料を選択的に蒸着した。図13は、本実験例における真空蒸着の具体的方法を示す模式図である。
【0091】
本実施例においては、まず多面構造体付基板を真空蒸着機(VPC1100)に設置した。その際、図13に示されるように、蒸着したい面31aが蒸着源40に対して平行になるように、多面構造体付基板を蒸着源の法線上、かつ当該基板の傾斜角を約60°に設置した。次に、2種の発光材料、即ち、青色発光材料(BF01)、緑色発光材料(L8)を順次蒸着した。まず青色発光材料からなる薄膜を成膜した。このとき当該薄膜の膜厚を30nmとし、成膜速度を1.0Å/sとした。次に、多面構造体のもう一方の面が蒸着源に対して平行になるように多面構造体付基板を移動させると共に、この多面構造体付基板を蒸着源の法線上、かつ三角錐画素基板の傾斜角を約60°となるように設置した。次に、多面構造体付基板の所定の面に緑色発光材料を蒸着した。尚、緑色発光材料を蒸着する際の条件(膜厚、成膜速度)は、青色発光材料のときと同じである。このようにして、多面構造体付基板が有する2面の傾斜面に対して、2種の異なる色の発光材料をそれぞれ蒸着した。
【0092】
(3)蒸着膜の評価
2面の傾斜面に対して、2種の異なる色の発光材料がそれぞれ所定の傾斜面に蒸着されている多面構造体付基板の蒸着膜の状態、例えば、蒸着膜のつきまわり、混色の有無を評価するため、目視による確認とUV照射による目視評価をした。ここで目視による蒸着膜の評価を行ったところ、各傾斜面に蒸着されている蒸着膜について蒸着膜のつきまわり及び混色がないことを確認した。またUV照射下による目視評価を行ったところ、UV照射を行わないで目視したときの評価と同様に、蒸着膜のつきまわり及び混色がないことを確認した。
【0093】
[実施形態4]その他の形態
本発明の発光装置を構成する多面構造体は、上述した実施形態1乃至3にて示される立体形状に限定されるものではない。2m面(mは、1以上の整数。)の傾斜面と、これら傾斜面同士が合わさることで形成される少なくとも1本の稜(又は稜に相当するもの)と、を有する立体形状であれば、本発明の発光装置を構成する多面構造体に含まれ得る。例えば、図1に示される立体形状が挙げられる。
【0094】
図1に示される立体形状も、他の実施形態と同様の理由で、ストライプ配列で配列する必要がある。尚、ここでいうストライプとは、例えば、図1に示されている立体形状が行あるいは列方向に直線的に配置されることをいう。また上記立体形状が有する稜によって隔てられた(少なくとも2つの)傾斜面のうちのいずれかの面に選択的に成膜することができるようにするために、平面視で確認できる三角プリズムの稜の向きは各多面構造体において同一にするのが望ましい。つまり、各多面構造体が有する稜がそれぞれ平行になるように配置するが望ましい。
【符号の説明】
【0095】
1:発光装置、10(30、32、51):基板、11:多面構造体、20:画素、21A(21B,21C,21D):発光素子部
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する。)は、実用化に向けての研究が活発に行われている。有機EL素子は、例えば、ガラス基板等の基板上に電極材料や有機材料を蒸着させるという方法で製造される。ここでシャドウマスクを用いると、複数種類の色(例えば、3色)の有機EL素子を所定の位置に選択的に形成することができるので、いわゆるパターニングが可能となる。しかしシャドウマスクの精度及び熱膨張の観点から、通常のシャドウマスクを用いたパターン化成膜技術は大型の表示装置を製造する際に適用するのが困難である。
【0003】
そこでシャドウマスクを用いないで有機EL素子を製造する方法が検討されている。例えば、特許文献1には、厚く形成した素子分離膜をシャドウマスクとして利用してパターン化された有機EL素子を製造する方法及びこの方法によって製造された発光装置が提案されている。また、非特許文献1には、シャドウマスクを用いないで有機EL素子を製造する方法として、三角錐や四角錐の立体構造物の各傾斜面(角錐面)上に発光色が異なる有機EL素子を形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−155538号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,Vol.77,No.7,p936−938
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にて提案されている発光装置は、厚く形成した素子分離膜によって開口率が小さいという問題が生じていた。また非特許文献1には、画素単位における発光装置のコンセプトは開示されているが、実際に発光装置を作製する上で重要となる画素配列等といったディスプレイを作製する上での実質的な課題については何ら言及されていない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされるものであり、その目的は、開口率、発光効率及び寿命を向上させた発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発光装置は、基板と、
前記基板上にある複数の多面構造体と、
前記基板上にある複数の画素と、を有し、
前記画素が、互いに発光色が異なる少なくとも2種類の発光素子部を有し、
前記発光素子部が、第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間にある発光層と、を有し、
前記発光素子部が、前記多面構造体の傾斜面上にあり、
前記画素が、ストライプ配列で配列されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、開口率、発光効率及び寿命を向上させた発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の発光装置を構成する多面構造体の例を示す斜視図である。
【図2】本発明の発光装置における実施形態の例を示す概略図であり、(a)は発光装置の平面図であり、(b)は、(a)の発光装置を構成する画素の斜視図である。
【図3】本発明の発光装置における成膜材料の選択的成膜方法の具体例を示す平面図である。
【図4】図2の発光装置の構成部材である基板を作製するプロセスを示す断面模式図である。
【図5】図5は、図4に示されるプロセスで作製した基板から発光装置を作製するプロセスを示す断面模式図である。
【図6】(a)は、実験例1で作製した多面構造体付基板を示す模式図であり、(b)は、基板上に設置される立体構造を示す模式図である。
【図7】実験例1における真空蒸着の具体的方法を示す模式図である。
【図8】実験例1における発光材料の成膜手順を示す平面図である。
【図9】実験例2で作製された発光装置を構成する発光素子部を示す断面概略図である。
【図10】実験例2で作製した発光装置の概略図である。
【図11】実施例2で作製した発光装置から出力された、単色発光スペクトル及び全色発光スペクトルを示す図である。
【図12】(a)は、実験例3で作製した多面構造体付基板を示す模式図であり、(b)は、基板上に設置される立体構造を示す模式図である。
【図13】実験例3における真空蒸着の具体的方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の発光装置は、基板と、この基板上にある複数の多面構造体と、この基板上に設けられる複数の画素と、を有している。ここで発光装置を構成する画素は、互いに発光色が異なる少なくとも2種類の発光素子部を有している。そして画素に含まれる発光素子部は、第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間にある発光層と、を有している。ただし、第一電極と発光層との間及び発光層と第二電極との間のいずれかにおいて、介在層を適宜設けてもよい。具体的には、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層等を介在層として設けてもよい。
【0012】
本発明においては、発光素子部が、多面構造体の傾斜面上にある。本発明において、多面構造体とは、例えば、下記(i)乃至(iii)の立体形状をいうものである。
(i)四角錐
(ii)2n角錐(nは、3以上の自然数)
(iii)三角プリズム(三角柱)
ただし、上記(i)乃至(iii)は、あくまでも本発明において想定し得る多面構造体の具体例に過ぎないものであり、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。上記(i)乃至(iii)以外の形状を有する多面構造体については、後述する。
【0013】
(i)の場合、多面構造体を構成する四角錐の図形的な要素、具体的には、底面の形状、許容される高さ、頭頂点の位置等に関しては、本発明では、特に限定されるものではない。ここで四角錐に含まれる4面の角錐面のうち所定の面上に選択的に成膜材料を成膜することがより容易になるという観点から、四角錐の中でも底面が正方形あるいは長方形であって、平面側から投影したときに頭頂点が底面の中心と一致するものが好ましい。また四角錐の中でも全ての角錐面が正三角形である正四角錐が、特に好ましい。
【0014】
(ii)の場合、多面構造体は、傾斜面(角錐面)の数が2の倍数であることから、2n面ある傾斜面に2種類のそれぞれ異なる色や種類の材料を成膜することが可能である。
【0015】
(iii)の場合、三角柱を構成する3面の側面のうち一つの面を底面に見立てることで、傾斜面が2面現れる。このためこの2面の傾斜面にそれぞれ異なる材料を成膜することにより画素1つに対して2種類の発光素子部を形成することができる。尚、上述のように、所定の側面を底面に見立てたときに側面になる三角形の形状については、特に限定されるものではない。蒸着プロセスの関係上、好ましくは、基板面に対する傾斜面の角度がそれぞれ90°未満である三角形であり、より好ましくは、基板面に対する傾斜面の角度がそれぞれ60°以下である三角形である。上記三角形の具体的な形状として、好ましくは、二等辺三角形であり、特に好ましくは、正三角形である。尚、側面となる三角形の形状を適宜設定することにより傾斜面の面積を適宜調整することが可能である。これを利用すれば、二つの傾斜面にそれぞれ設けられる発光素子部の面積(発光面積)を任意に変更することができる。
【0016】
本発明において、多面構造体の形状は、上記(i)乃至(iii)に示される形状の他に、傾斜面が2n面ある立体形状が挙げられる。例えば、図1に示される多面構造体が挙げられる。図1に示される多面構造体は、立方体又は正四角柱の一部を切削加工することによって作製される立体構造である。図1に示される多面構造体は傾斜面が2面あるため、(iii)の場合と同様に、2面の傾斜面にそれぞれ異なる材料を成膜することにより画素1つに対して2種類の発光素子部を形成することができる。
【0017】
以上説明した多面構造体は、傾斜面を有することが重要である。このことから、多面構造体の上部が、頭頂点が無い平面であってもよいし、曲面でもあっても構わない。
【0018】
また本発明において、発光装置を構成する画素は、ストライプ配列で配列されている。尚、画素の配列の詳細については、後述する。
【0019】
本発明の発光装置において、基板の材質は特に問わない。有機材料からなる基板であってもよいし、無機材料からなる基板であってもよい。ここで有機材料からなる基板を採用する場合、例えば、厚さが薄いプラスチックフィルムを基板として本発明の発光装置をフレキシブルな発光装置とすることができる。また無機材料からなる基板を採用する場合、例えば、ガラス基板を採用することができる。
【0020】
本発明の発光装置においては、基板が発光素子部から出力された光を透過させる部材か否かは特に問われない。例えば、光を透過させる部材を基板として採用して、基板側から光を取り出す形式にしてもよい。あるいはガラス等の光透過部材に単位素子を駆動するためのTFT等のスイッチング素子や他の部材を設けた結果として、それ自体が実質的に光を透過しない部材となっている基板も採用することができる。
【0021】
本発明の発光装置は、多面構造体を形成する傾斜面上に設けられる発光素子部を個別に駆動させるための発光素子部の数に対応する数のスイッチング素子が備えられている。ここでスイッチング素子として、例えば、TFTを採用することができる。尚、本発明の発光装置は、駆動形式がアクティブマトリクス形式であることが好ましいが、単純マトリクス駆動形式であってもよい。
【0022】
上述したように、本発明の発光装置において、発光素子部は、陽極と陰極との間に少なくとも発光層を有していればよい。また各発光素子部は、発光層を含めた両電極間にある層の層構成がそれぞれ異なっていてもよいし、共通する層においてその層の組成を各発光素子部ごとに異なるものにしてもよい。
【0023】
また、本発明は、主に、発光素子部が有機EL素子である発光装置について説明しているが、発光材料としては有機材料でもよいし、無機材料でもよい。従って、発光材料として、一般的なLED材料や、無機EL材料、あるいはクアンタムドット材料等でもよい。
【0024】
本発明の発光装置において、画素を構成する発光素子部の発光色の組み合わせは、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)からなる光の3原色であってもよいし、その他の組み合わせであってもよい。またシアン系の材料とイエロー系の材料を個別に成膜して画素全体の発光色を白色(W)にしてもよい。一方、発光素子部をそれぞれ異なる種類の材料で形成してもよい。また、成膜方法としては、限定されるものではないが、指向性がある成膜方法が好ましく、蒸着、スパッタ、CVD等が望ましい。
【0025】
尚、本発明の発光装置において、発光装置を構成する多面構造体は、傾斜面の数が偶数の立体形状である。このため、1つの画素から赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の光を出力させるには、下記(i)及び(ii)に示される2種類の発光素子を適宜組み合わせるのが好ましい。
(i)発光色が1色である発光素子
(ii)発光色が2色以上である発光素子
【0026】
例えば、青色発光する発光素子部と、緑色発光する発光素子部と、緑色又は青色及び赤色の発光をする発光素子部で画素を形成する。もちろん、画素を構成する発光素子部の組み合わせはこれに限定されるものではない。基本的には、2の倍数からなる多面構造の斜面を2分した面に対して、それぞれ異なる材料を成膜できることから、積層することにより考えられ得る全ての成膜パターンが可能である。
【0027】
本発明の発光装置は、具体的には、パソコン等のディスプレイやテレビジョンや電車内の広告用表示装置や自動車内に取り付けられるカーナビゲーション装置等の部材として使用される。ここで本発明の発光装置を画像表示装置として利用する場合は、例えば、自動車の運転席の表示部や携帯電話の表示部に用いられる。またこの画像表示装置をレーザープリンタや複写機等の電子写真方式の画像形成装置の操作パネル部分として利用してもよい。あるいはスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置の表示部として利用してもよい。
さらに、2つの傾斜面からなる立体構造に2つ以上異なる材料をパターン化して成膜するためには、例えば、一方が少なくとも1色、他方は2色発光するよう、一方には青色の層を、他方には緑色のみの層と緑色と赤色の積層するように蒸着すればよい。もちろん、その他の層構成も可能である。基本的には、2の倍数からなる多面構造の斜面を2分した面に対して、それぞれ異なる材料を成膜できることから、積層することにより考えられ得る全ての成膜パターンが可能である。
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の発光装置の実施形態について説明する。
【0029】
[実施形態1]四角錐型
【0030】
(1−1)発光装置の概要
図2は、本発明の発光装置における実施形態の例を示す概略図であり、(a)は発光装置の平面図であり、(b)は、(a)の発光装置を構成する画素の斜視図である。
【0031】
図2の発光装置1は、基板10と、基板10上に設けられる多面構造体11と、基板10上に設けられる画素20と、からなる。図2の発光装置1において、多面構造体11は、図2(b)に示されるように、四角錐型の立体構造体である。また図2の発光装置1において、画素20は、4種類の発光素子部(21A,21B,21C,21D)を有している。ここで各発光素子部(21A,21B,21C,21D)は、多面構造体11の傾斜面(四角錐の角錐面)上にそれぞれ設けられている。
【0032】
(1−2)画素の配列
図2の発光装置1において、発光装置1を構成する画素20は、ストライプ状に配列されている。
【0033】
ところで、発光装置は、開口率を極力大きくするという観点から、装置を構成する画素は極力隙間なく配列させる必要がある。四角錐型の画素を有する発光装置において、この画素を隙間なく基板上に配列する方法としては、表1のように、画素をストライプ状に配列(ストライプ配列)させたり、画素をデルタ状に配列(デルタ配列)させたりする方法がある。
【0034】
【表1】
【0035】
ここで表1に示されるように、画素の土台となる四角錐形状の多面構造体をデルタ状に配列することで、四角錐形状の多面構造体を隙間なく配列することが可能である。しかしデルタ配列で配列した当該多面構造体の傾斜面上に蒸着膜を形成しようとすると、互いに隣り合う多面構造体が遮蔽体(蒸着材料の蒸気を遮蔽するもの)として機能してしまい、当該構造物の所望の傾斜面上に選択的に成膜ができない。あるいは、1つの面上に2以上の蒸着膜が重複することにより混色が発生する。これを避けるためには、隣り合う画素の画素間ピッチを大きくする必要があるが、画素間ピッチの拡大により、ディスプレイの開口率が小さくなる。このことから、発光効率・寿命が低下する問題がある。
【0036】
一方、四角錐形状の多面構造体をストライプ配列した場合には、蒸着の方法によっては薄膜を成膜するときに当該多面構造体が遮蔽体として機能することがなく、また当該多面構造体の配列によって生じる混色も発生することもない。従って、発光装置の開口率を向上させることができる。よって、画素の土台となる四角錐形状の多面構造体をストライプ状に配列させると、発光装置の発光効率・寿命を向上させることができる。以上より、四角錐形状の画素をストライプ配列にするために画素の土台となる四角錐形状の多面構造体をストライプ配列にするのが望ましい。
【0037】
(1−3)好ましい成膜方法
次に、本実施形態における好ましい成膜方法(蒸着方法)について説明する。四角錐形状の多面構造体をストライプ配列した場合であっても蒸着材料を蒸着・成膜する際に、当該蒸着材料の蒸気の方向によっては上述した混色が発生し得る。このため蒸着材料の蒸気の方向を一定の方向に制御する必要がある。本実施形態の場合では、四角錐形状の多面構造体に含まれ互いに隣接する2面の傾斜面が確認できる2本の稜を基準線とし、当該基準線と垂直の方向に蒸着材料の蒸気の方向を制御するのが好ましい。尚、この方向の制御は、xy座標系等の平面座標系における方向制御であるため実際に蒸着を行う際には、上述した互いに隣接する2面の傾斜面のみが見える方向になるように3次元的に角度調整を行うのがより好ましい。
【0038】
以下、図面を参照しながら、発光材料等の選択的成膜方法について説明する。図3は、本発明の発光装置における成膜材料の選択的成膜方法の具体例を示す平面図である。
尚、図3(a)乃至(c)は、正四角錐形状の多面構造体がxy座標系に沿ってストライプ配列されている場合の具体例である。
【0039】
図3(a)は、例えば、赤色系発光材料(R)の蒸気を(−1,1,−1)の方向から当てた後、緑色系発光材料(G)の蒸気を(1,−1,−1)の方向から当てることによって得られる態様である。本発明の発光装置は、図3(a)に示されるように、四角錐形状(正四角錐)の多面構造体に含まれ互いに隣接する2面の傾斜面が確認できる2本の稜(L1,L2)を境界線として、2種類の発光材料を所定の面に選択的に成膜することができる。
【0040】
図3(b)は、図3(a)に示される態様からさらに青色系発光材料(B)の蒸気を(1,1,−1)の方向から当てることによって得られる態様である。
【0041】
図3(c)は、まず青色系発光材料(B)の蒸気を全面に蒸着した後、緑色系発光材料(G)の蒸気を(1,1,−1)の方向から当て、次いで赤色系発光材料(R)の蒸気を(−1,1,−1)の方向から当てることによって得られる態様である。
【0042】
図3(b)及び(c)に示されるように、本発明の発光装置は、蒸着材料の蒸気を所定の方向から照射することによって、蒸着材料を所定の領域に選択的に成膜することができる。つまり蒸着材料の塗り分けを行うことができる。また図3(b)及び(c)に示されるように、3色の発光材料を所定の傾斜面(角錐面)に選択的に蒸着する場合には、発光色が1つの発光素子部と、発光色が2色以上の発光素子部とがそれぞれ少なくとも1つ存在する。
【0043】
(1−4)発光装置の製造方法
次に、図2の発光装置1の製造方法の具体例について述べる。
【0044】
[多面構造体を有する基板の作製]
図4は、図2の発光装置の構成部材である基板を作製するプロセスを示す断面模式図である。
【0045】
図2の発光装置1の製造する際には、まず始めに、表面に電極12が形成された基板10を用意する、もしくは基板10上の所定の位置に電極12を形成する(図4(a))。そしてこの基板10上の所定の領域に、四角錘状の多面構造体11を作製する。ここで多面構造体11を作製する方法は特に限定されるものではない。例えば、モールドプロセスや、フォトリソグラフィ、ナノインプリント等のいずれの方法を採用することができる。
【0046】
以下、モールドプロセスを用いた方法を具体例として説明する。まず、所望の立体形状(四角錐形状)にするためのマスター基板をダイアモンドツール等で作製する。作製されるマスター基板は、CuやNi等の金属製であることが望ましい。ここで形成される多面構造体11の配列がストライプ配列になるように、マスター基板には所定のパターニングが施されているのが望ましい。次に、基板10上に層間絶縁膜13を塗布した(図4(b))後、先程作製したマスター基板を、層間絶縁膜13が塗布された基板10に対してプレスすることで、層間絶縁膜13の成形を行う。次に、UV露光等により層間絶縁膜13を硬化させた後、マスター基板と基板10とを剥離することにより、基板10上の所望の位置に四角錘形状の多面構造体11が形成される(図4(c))。
【0047】
以上述べたプロセスにおいて、層間絶縁膜13の構成材料としてUV硬化樹脂が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。ただし発光素子部から出力される光の進行方向が基板側(ボトムエミッション型)の発光装置を作製する場合には、層間絶縁膜13の構成材料として透明樹脂を使用することが望ましい。もちろん層間絶縁膜13の構成材料は、樹脂等の有機材料である必然性は無く、塗布型プロセスで膜を形成することが可能であるならば、例えば、SiO等の無機材料を使用してもよい。また、フォトリソグラフィ法により多面構造体12を作製する場合は、層間絶縁膜13を塗布型プロセスで成膜する必要が無いため、ドライプロセスによって成膜される材料を使用しても構わない。層間絶縁膜13をドライプロセスで成膜する場合、層間絶縁膜13の構成材料としては、CVD法やスパッタ法等で成膜したSiO,SiN,SiNO等のSi化合物であることが望ましい。
【0048】
次に、作製した多面構造体11上に、発光素子部(21A,21B,21C,21D)の構成部材である第1電極22を作製する。第1電極22の構成材料は、発光素子部の発光が基板10側から出力されるボトムエミッション型の発光装置と、発光素子部の発光が基板10とは反対側から出力されるトップエミッション型の発光装置と、においてそれぞれ異なる。
【0049】
例えば、ボトムエミッション型の発光装置の場合は、第1電極22の構成材料は、透明導電材料又は半透明導電材料であることが望ましい。透明導電材料として、具体的には、インジウム化合物であるITO,IZO等が挙げられる。一方、半透明導電材料として、具体的には、Agや、Agとその他の金属からなる合金、Al等のその他の金属を、光透過性を有する程度の膜厚で成膜した薄膜が望ましい。もちろん第1電極22は、インジウム化合物からなる透明導電膜と金属等からなる金属薄膜とからなる積層型電極にしてもよい。
【0050】
実際に第1電極22を形成する際には、まず第1電極22となる電極薄膜を形成し(図4(d))、次いでフォトリソグラフィによるパターン形成プロセスを行う(図4(e))。これにより、所望の形状の第1電極22が多面構造体12の傾斜面(角錐面)上に形成される。
【0051】
次に、第1電極22の端部を覆い絶縁するための層間絶縁膜14を形成する(図4(f)、(g))。本発明において、層間絶縁膜14もまた、その構成材料は特に限定されるものではないが、樹脂等の有機材料でもよいし、無機材料でもよい。無機材料を使用する場合は、例えば、塗布型プロセスで形成可能な無機材料、例えば、SiO等が使用される。また、フォトリソグラフィ法により層間絶縁膜14を作製・加工する場合は、塗布型プロセスで層間絶縁膜14を成膜する必要が無いため、ドライプロセスによって成膜される材料を使用しても構わない。層間絶縁膜14をドライプロセスで成膜する場合、層間絶縁膜14の構成材料としては、CVD法やスパッタ法等で成膜したSiO,SiN,SiNO等のSi化合物であることが望ましい。層間絶縁膜14も、層間絶縁膜13と同様に、フォトリソグラフィ等により所望の形状にパターン形成される。本実施形態では、図4(f)及び(g)に示されるように層間絶縁膜14を形成しているが、発光素子間で生じ得るショート等の問題が生じなければ、層間絶縁膜14を形成するプロセスを省略しても構わない。以上のプロセスにより、四角錐形状の多面構造体11が設けられている基板10を作製することができる。
【0052】
[発光装置の作製]
次に、上記プロセスにより作製した四角錐形状の多面構造体11が設けられている基板10から発光装置を作製するプロセスについて図面を参照しながら説明する。図5は、図4に示されるプロセスで作製した基板から発光装置を作製するプロセスを示す断面模式図である。
【0053】
まず作製した四角錐形状の多面構造体11が設けられている基板10(図5(a))の画素面(多面構造体11の傾斜面)に対して、真空蒸着により、発光材料等からなる膜を成膜する。まず、第1の機能層23である正孔注入層を成膜する(図5(b))。ここで正孔注入層を、各画素に共通する層として成膜する場合は、基板面が蒸着源と平行になるように設置した上で上記真空蒸着を行う。
【0054】
次に、第一発光層24aを成膜する(図5(c))。第一発光層24aは、各画素の所定の位置でパターン形成する。このことから、第一発光層24aを成膜する際には、その成膜面に対して蒸着源が平行になるように配置するのが望ましい。例えば、多面構造体11の傾斜面と基板の面とでなす角(画素角)が45°の場合、蒸着面から垂直に伸ばした垂線を軸として、この軸上の立体角ωに蒸着される質量をm0とし、この軸から角度θだけ傾いた方向の立体角ωに蒸着される質量をmφとする。ここで蒸着分子の有効蒸着角度を画素角に対して45°、水平方向に対して5°とした場合、蒸着角をα=0°,30°,45°,60°,70°と設定した場合の蒸着角度分布は下記式で示される。
【0055】
【数1】
【0056】
上記式を利用して蒸着角度分布を計算すると、蒸着角(α)が65°の時に蒸着される材料の収率が最大となることがわかる。従って、画素面に対して蒸着源を65°傾斜させて蒸着することが望ましい。ただし画素面に対して蒸着源が相対的に65°傾斜していればよいので、画素面に対して蒸着源を傾けてもよいし、蒸着源に対して基板を傾けてもよい。ただし、大型の基板で成膜する際には、基板を傾けるのは困難であるし、蒸着装置も大きくする必要性がある。係る場合では、好ましくは、蒸着源の方を傾ける。尚、正孔輸送層等の発光層以外の機能層についても各画素ごとにパターン形成する必要がある場合には、第一発光層24aと同様の方法で基板あるいは蒸着源を傾斜させて蒸着を行ってもよい。
【0057】
次に、第二発光層24bも第一発光層24aと同様に成膜する(図5(d))。第二発光層24bも第一発光層24aと同様にそれぞれの画素面に対して蒸着源を65°傾斜させて蒸着することが望ましい。
【0058】
次に、第2の機能層25である電子輸送層を成膜する(図5(e))。ここで電子輸送層を、赤色、緑色、青色の各画素に共通する層として成膜する場合は、基板面が蒸着源と平行になるように設置した上で上記真空蒸着を行う。また電子輸送層を各画素ごとにパターン形成する必要がある場合には、緑色発光層24gと同様の方法で基板あるいは蒸着源を傾斜させて蒸着を行ってもよい。
【0059】
次に、電子注入層(不図示)、第2電極26を順次形成する(図5(f))。電子注入層(不図示)や第2電極26を成膜する際には、上述した方法を利用して薄膜を成膜することができる。
【0060】
本発明の発光装置は、最後に、不活性ガス雰囲気中のグローブボックスにて、乾燥剤を入れた封止ガラス(不図示)とガラス基板の成膜面とをエポキシ樹脂接着剤を用いて封止する。もちろん、封止材料としては、ドライプロセスによって成膜される無機材料でもかまわない。例えば、ドライプロセスで形成される材料としては、CVDやスパッタ等で成膜したSiO,SiN,SiNO等のSi化合物であることが望ましい。このようにして、発光素子部20を設ける多面構造体11が四角錐である第1の実施形態の発光装置を作製することができる。
【0061】
(実験例1)
本実験例は、ガラス基板上に設けられる多面構造体が四角錐である基板の蒸着実験に関する実験例である。
【0062】
(1)多面構造体付基板の作製
四角錐形状の立体構造を作製し、この立体構造をガラス製のマザー基板(縦85mm×横100mm×厚さ0.7mm)上に設置して、多面構造体付基板を作製した。図6(a)は、本実験例で作製した多面構造体付基板を示す模式図であり、(b)は、基板上に設置される立体構造を示す模式図である。尚、図6(a)に示される多面構造体付基板は、基板30上に、9個の四角錐形状の立体構造31がストライプ配列で配列されている。
【0063】
本実験例で作製される四角錐形状の立体構造は、まずガラス基板(縦20mm×横20mm×厚さ0.7mm)を、一辺が20mmの正三角形になるように切断した。次に、切断したガラス基板(基板32)4枚を、図6(b)に示されるように辺で合わせた後、基板32同士が合わさっている辺にエポキシ樹脂接着剤を塗布・硬化させることで、四角錐形状の立体構造31を9個作製した。次に、この立体構造を、図6(a)に示されるように、マザー基板(基板30)に対してストライプ配列になるようにピッチを調整しながら配置した。次に、立体構造31の底辺部(基板32が合わさっていない辺の部分)にエポキシ樹脂接着剤を塗布して樹脂を硬化させた。このようにして、多面構造体(立体構造31)が四角錐である基板(多面構造体付基板)を作製した。
【0064】
(2)発光材料の蒸着
得られた多面構造体付基板を用いて、所定の面に発光材料を選択的に蒸着した。図7は、本実験例における真空蒸着の具体的方法を示す模式図である。
【0065】
本実験例においては、まず多面構造体付基板を真空蒸着機(VPC1100)に設置した。その際、図7に示されるように、蒸着源40から見たときに蒸着したい面31aのみが見えるように、多面構造体付基板を蒸着源の法線上、かつ当該基板の傾斜角を約60°に設置した。次に、3種の発光材料、即ち、青色発光材料(BF01)、緑色発光材料(L8)、赤色発光材料(RD−3)を順次蒸着した。図8は、本実験例における発光材料の成膜手順を示す平面図である。まず図8(a)に示されるように、4面ある傾斜面(角錐面)のうち2つの面に、青色発光材料からなる薄膜を成膜した。このとき当該薄膜の膜厚を30nmとし、成膜速度を1.0Å/sとした。次に、青色発光材料が成膜されていない傾斜面のみが蒸着源から見えるように、当該基板をその傾斜角を維持しつつ180°回転移動させた。次に、図8(b)に示されるように、多面構造体付基板の所定の面(青色発光材料からなる薄膜が形成されていない2つの面)に緑色発光材料を蒸着した。尚、緑色発光材料を蒸着する際の条件(膜厚、成膜速度)は、青色発光材料のときと同じである。次に、図7に示されるように、蒸着源40から見たときに赤色発光材料を蒸着したい面31aのみが見えるように、当該基板をその傾斜角を維持しつつ90°回転移動させた。次に、図8(c)に示されるように、多面構造体付基板の所定の面に赤色発光材料を蒸着した。尚、赤色発光材料を蒸着する際の条件(膜厚、成膜速度)は、青色発光材料のときと同じである。このようにして、多面構造体付基板が有する4面の傾斜面に対して、図8(d)に示されるように、3種の異なる色の発光材料をそれぞれ蒸着した。
【0066】
(3)蒸着膜の評価
4面の傾斜面に対して、3種の異なる色の発光材料がそれぞれ所定の傾斜面に蒸着されている多面構造体付基板の蒸着膜の状態、例えば、蒸着膜のつきまわり、混色の有無を評価するため、目視による確認とUV照射による目視評価をした。ここで目視による蒸着膜の評価を行ったところ、各傾斜面に蒸着されている蒸着膜について蒸着膜のつきまわり及び混色がないことを確認した。またUV照射下による目視評価を行ったところ、UV照射を行わないで目視したときの評価と同様に、蒸着膜のつきまわり及び混色がないことを確認した。
【0067】
(実験例2)
本実験例は、基板上に設けられる多面構造体が正四角錐であって、この正四角錐が有する4つの傾斜面に、赤色、緑色、青色の発光素子部がそれぞれ1:1:2の割合で設けられている発光装置の実験例である。以下に、本実験例で使用した材料の一部を示す。
【0068】
【化1】
【0069】
(1)発光素子部の作製
図9は、本実験例で作製された発光装置を構成する発光素子部を示す断面概略図である。図9の発光素子部50は、基板51上に、第1電極52、有機化合物層53、第2電極54が順次設けられている。
【0070】
(1−1)第1電極の作製
まずスパッタリング法により、正三角形状のガラス基板(基板51)上に、InZnOを成膜し、第1電極52を形成した。このとき第1電極52の膜厚を40nmとした。
【0071】
(1−2)有機化合物層の作製
次に、真空蒸着法により、第1電極52上に青色発光素子部を構成する有機化合物層53を形成した。まず化合物2を成膜して第1正孔輸送層を形成した。このとき第1正孔輸送層の膜厚を90nmとした。次に、化合物3を成膜して第2正孔輸送層を形成した。このとき第2正孔輸送層の膜厚を10nmとした。次に、化合物4と化合物5とを共蒸着して発光層を形成した。このとき発光層の膜厚を35nmとし、成膜速度をそれぞれ0.98Å/s(化合物4)、0.02Å/s(化合物5)と設定した。次に、化合物1を成膜して電子輸送層を形成した。このとき電子輸送層の膜厚を60nmとした。次に、LiFを成膜して電子注入層を形成した。このとき電子注入層の膜厚を0.5nmとした。
【0072】
次に、別の第1電極付基板を使用して、真空蒸着法により、第1電極52上に緑色発光素子部を構成する有機化合物層53を形成した。本実験例において、緑色発光素子部を構成する有機化合物層53を形成する際には、基本的には、上述した青色発光素子部を構成する有機化合物層53の形成方法を採用した。ただし、この際に、第2正孔輸送層の成膜を省略し、発光層を形成する際に化合物6と化合物7とを使用し成膜速度0.98Å/s(化合物6)、0.02Å/s(化合物7)で共蒸着した。
【0073】
次に、別の第1電極付基板を使用して、真空蒸着法により、第1電極52上に赤色発光素子部を構成する有機化合物層53を形成した。本実験例において、赤色発光素子部を構成する有機化合物層53を形成する際には、基本的には、上述した青色発光素子部を構成する有機化合物層53の形成方法を採用した。ただし、この際に、第2正孔輸送層の成膜を省略し、発光層を形成する際に化合物8、化合物9及び化合物10を使用し、成膜速度をそれぞれ0.68Å/s(化合物8)、0.02Å/s(化合物9)、0.30Å/s(化合物10)として共蒸着した。
【0074】
(1−3)第2電極の作製
次に、真空蒸着法により、電子注入層上に、Alを成膜して第2電極54を形成した。このとき第2電極54の膜厚を200nmとし、成膜速度を1.0Å/sとした。最後に、窒素雰囲気中のグローブボックス内にて、乾燥剤を入れた封止ガラス(不図示)とガラス基板の成膜面とをエポキシ樹脂接着剤を用いて接着して各色の発光素子部をそれぞれ封止した。以上の方法により、発光素子部に相当する平面形状が正三角形である発光素子を合計4個作製した。ここで4個の発光素子のうち、2個が青色発光素子であり、1個が緑色発光素子であり、1個が赤色発光素子である。
【0075】
(2)発光装置の作製
得られた正三角形状の各色(赤色、緑色、青色)の発光素子部について、それぞれの辺を合わせた後、合わせた辺についてエポキシ樹脂接着剤を塗布・硬化させ、ピラミッド型の立体構造を作製した。図10は、本実験例で作製した発光装置の概略図である。図10の発光装置60は、赤色発光素子部50r、緑色発光素子部50g及び青色発光素子部50bを1:1:2の割合で有している。次に、発光面の屈折率をガラスと同等程度とするため、屈折率が1.5であるPDMS(Polydimethylsiloxane)をコーナーキューブ構造の内部に充填した。このようにして、赤色、緑色、青色のそれぞれの発光素子を配したピラミッド型の発光装置を作製した。
【0076】
(3)発光装置の評価
得られた発光装置を評価するため、各色(赤色、緑色、青色)の発光面からそれぞれ出力される単色発光スペクトルと、全発光素子部を駆動させたときの全色発光スペクトルとを測定した。
【0077】
図11は、本実施例で作製した発光装置から出力された、単色発光スペクトル及び全色発光スペクトルを示す図である。各発光素子部を個別に駆動して単色発光させることにより、各色(赤色、緑色、青色)の発光スペクトルを確認した。また、全発光素子部を駆動させたときにおいても、各色の発光スペクトルを確認した。さらに、全発光素子部を駆動させたときに出力される光の色度(CIE_x,y)は(0.31,0.27)であり、白色を呈することを確認した。
【0078】
[実施形態2]2n角錐型(nは、3以上の整数)
本発明の発光装置の実施形態には、発光装置を構成する多面構造体が四角錐である形態に限定されず、傾斜面(角錐面)が偶数面存在する2n角錐の形態、例えば、6角錐、8角錐、12角錐等も含まれる。傾斜面(角錐面)が偶数面存在する2n角錐は、2n角錐に含まれるn面の角錐面が確認できる2本の稜を境界線として2種類の発光材料をそれぞれ所定の領域に選択的に成膜することができる。また多面構造体が2n角錐の場合、成膜するごとに成膜位置を変えつつ成膜操作を2n回行うことにより、各傾斜面において積層体の構成がそれぞれ異なる発光素子部が形成される。
【0079】
本実施形態においては、発光装置を構成する多面構造体は、四角錐型と同様にストライプ配列にする必要がある。また所望の傾斜面(角錐面)に選択的に材料が成膜できるように、多面構造体に含まれ互いに隣接するn面の傾斜面が確認できる2本の稜を基準線とし、当該基準線と垂直の方向に蒸着材料の蒸気の方向を制御するのが好ましい。
【0080】
また発光装置を構成する多面構造体が円錐であってもよい。円錐の場合も2n角錐と同様の手法により、円錐面の所定の領域に選択的に発光材料等を選択的に成膜させることができる。
【0081】
これらの多面構造体は傾斜面の数が2の倍数個であることから、上述した2本の稜を境界線として、所定の面あるいは複数の面からなる領域にそれぞれ異なる色や種類の材料を成膜することが可能である。ここで多面構造体の傾斜面にそれぞれ異なる材料をパターン化して成膜するためには、ある特定の傾斜面に対してのみ成膜され、残りの傾斜面には成膜されないように、成膜材料の蒸気の向きを四角錐型と同様に適宜制御するのは好ましい。具体的には、成膜方向を傾斜面の傾きに対して垂直になるように成膜源を予め傾けて配置するのが望ましい。
【0082】
[実施形態3]三角プリズム(三角柱)型
上述したように、本発明の発光装置の実施形態には、多面構造体の形状が三角柱を横倒しにした三角プリズムのものも含まれる。
【0083】
三角プリズム型の画素は、デルタ配列で配列した場合でも隙間なく各画素を配列することが可能ではある。しかし、デルタ配列で配列した三角プリズム型の多面構造体の傾斜面に材料を成膜すると他の実施形態と同様に混色等が発生し得るため隣り合う画素の画素間ピッチを大きくする必要がある。従って、ディスプレイの開口率が小さくなることから、発光効率・寿命が低下する問題がある。一方、三角プリズム型の画素をストライプ配列した場合には、当該画素の配置形式によっては蒸着により成膜した蒸着膜が、互いに隣り合う画素を遮蔽することも無く、混色することも無いことから、開口率を最大にすることができる。従って、発光装置の発光効率・寿命を向上することができる。つまり、三角プリズム型の画素の配列方法としてはストライプ配列が好ましい。
【0084】
ところで多面構造体の形状が三角プリズム型である場合、平面視で確認できる三角プリズムの稜が薄膜を成膜する傾斜面と薄膜を成膜しない傾斜面とを分ける境界線になる。ここで三角プリズムの稜によって隔てられた2つの傾斜面のうちのいずれかの面に選択的に成膜することができるようにするために、平面視で確認できる三角プリズムの稜の向きは各多面構造体において同一にするのが望ましい。即ち、各多面構造体が有する稜がそれぞれ平行になるように配置するのが望ましい。仮に、三角プリズムの稜の向きが各多面構造体でばらばらであると、画素の土台となる多面構造体をストライプ配列で配列したとしてもこの多面構造体の傾斜面に材料を所定の傾斜面に選択的に成膜することができなくなることがある。
【0085】
また各画素の成膜状況を揃えるために、各画素の土台となる多面構造体の形状はいずれの画素においても同一あるいは実質同一であることが好ましい。
【0086】
一方、基板上にストライプ配列された三角プリズム型の発光装置の製造方法については、四角錐型の発光装置の製造方法と基本的には変わりがない。
【0087】
(実験例3)
本実験例は、ガラス基板上に設けられる多面構造体が三角プリズム(三角柱)である基板の蒸着実験に関する実験例である。
【0088】
(1)多面構造体付基板の作製
三角プリズム形状の立体構造を作製し、この立体構造をガラス製のマザー基板(縦85mm×横100mm×厚さ0.7mm)上に設置して、多面構造体付基板を作製した。図12(a)は、本実験例で作製した多面構造体付基板を示す模式図であり、(b)は、基板上に設置される立体構造を示す模式図である。尚、図12(a)に示される多面構造体付基板は、基板30上に、3個の三角プリズム形状の立体構造31が、各立体構造の稜がそろうようにストライプ配列で配列されている。またこの立体構造31は、画素3個分に相当する多面構造体である。
【0089】
本実験例で作製される四角錐形状の立体構造は、まずガラス基板(縦20mm×横60mm×厚さ0.7mm)を、2枚用意して、図12(b)に示されるように長辺同士で合わせた後、基板32同士が合わさっている辺にエポキシ樹脂接着剤を塗布・硬化させた。このとき両基板の接触角を60°に設定した。こうすることで、図12(b)に示される断面くの字型の立体構造31を3個作製した。次に、この立体構造を、図12(a)に示されるように、各立体構造がそれぞれ平行に配置されマザー基板(基板30)に対してストライプ配列になるようにピッチを調整しながら配置した。次に、立体構造31の底辺部(基板32が合わさっていない辺の部分)にエポキシ樹脂接着剤を塗布して樹脂を硬化させた。このようにして、多面構造体(立体構造31)が三角プリズム型である基板(多面構造体付基板)を作製した。
【0090】
(2)発光材料の蒸着
得られた多面構造体付基板を用いて、所定の面に発光材料を選択的に蒸着した。図13は、本実験例における真空蒸着の具体的方法を示す模式図である。
【0091】
本実施例においては、まず多面構造体付基板を真空蒸着機(VPC1100)に設置した。その際、図13に示されるように、蒸着したい面31aが蒸着源40に対して平行になるように、多面構造体付基板を蒸着源の法線上、かつ当該基板の傾斜角を約60°に設置した。次に、2種の発光材料、即ち、青色発光材料(BF01)、緑色発光材料(L8)を順次蒸着した。まず青色発光材料からなる薄膜を成膜した。このとき当該薄膜の膜厚を30nmとし、成膜速度を1.0Å/sとした。次に、多面構造体のもう一方の面が蒸着源に対して平行になるように多面構造体付基板を移動させると共に、この多面構造体付基板を蒸着源の法線上、かつ三角錐画素基板の傾斜角を約60°となるように設置した。次に、多面構造体付基板の所定の面に緑色発光材料を蒸着した。尚、緑色発光材料を蒸着する際の条件(膜厚、成膜速度)は、青色発光材料のときと同じである。このようにして、多面構造体付基板が有する2面の傾斜面に対して、2種の異なる色の発光材料をそれぞれ蒸着した。
【0092】
(3)蒸着膜の評価
2面の傾斜面に対して、2種の異なる色の発光材料がそれぞれ所定の傾斜面に蒸着されている多面構造体付基板の蒸着膜の状態、例えば、蒸着膜のつきまわり、混色の有無を評価するため、目視による確認とUV照射による目視評価をした。ここで目視による蒸着膜の評価を行ったところ、各傾斜面に蒸着されている蒸着膜について蒸着膜のつきまわり及び混色がないことを確認した。またUV照射下による目視評価を行ったところ、UV照射を行わないで目視したときの評価と同様に、蒸着膜のつきまわり及び混色がないことを確認した。
【0093】
[実施形態4]その他の形態
本発明の発光装置を構成する多面構造体は、上述した実施形態1乃至3にて示される立体形状に限定されるものではない。2m面(mは、1以上の整数。)の傾斜面と、これら傾斜面同士が合わさることで形成される少なくとも1本の稜(又は稜に相当するもの)と、を有する立体形状であれば、本発明の発光装置を構成する多面構造体に含まれ得る。例えば、図1に示される立体形状が挙げられる。
【0094】
図1に示される立体形状も、他の実施形態と同様の理由で、ストライプ配列で配列する必要がある。尚、ここでいうストライプとは、例えば、図1に示されている立体形状が行あるいは列方向に直線的に配置されることをいう。また上記立体形状が有する稜によって隔てられた(少なくとも2つの)傾斜面のうちのいずれかの面に選択的に成膜することができるようにするために、平面視で確認できる三角プリズムの稜の向きは各多面構造体において同一にするのが望ましい。つまり、各多面構造体が有する稜がそれぞれ平行になるように配置するが望ましい。
【符号の説明】
【0095】
1:発光装置、10(30、32、51):基板、11:多面構造体、20:画素、21A(21B,21C,21D):発光素子部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上にある複数の多面構造体と、
前記基板上にある複数の画素と、を有し、
前記画素が、互いに発光色が異なる少なくとも2種類の発光素子部を有し、
前記発光素子部が、第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間にある発光層と、を有し、
前記発光素子部が、前記多面構造体の傾斜面上にあり、
前記画素が、ストライプ配列で配列されていることを特徴とする、発光装置。
【請求項2】
前記多面構造体が四角錐であり、前記発光素子部が前記四角錐の傾斜面上に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記多面構造体が2つの傾斜面を有する立体形状であり、前記発光素子部が前記傾斜面上に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記多面構造体が2n角錐(nは、3以上の自然数。)であり、前記発光素子部が前記傾斜面上に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記画素が、発光色が1色である発光素子部と、発光色が2色以上である発光素子部と、を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項1】
基板と、
前記基板上にある複数の多面構造体と、
前記基板上にある複数の画素と、を有し、
前記画素が、互いに発光色が異なる少なくとも2種類の発光素子部を有し、
前記発光素子部が、第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間にある発光層と、を有し、
前記発光素子部が、前記多面構造体の傾斜面上にあり、
前記画素が、ストライプ配列で配列されていることを特徴とする、発光装置。
【請求項2】
前記多面構造体が四角錐であり、前記発光素子部が前記四角錐の傾斜面上に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記多面構造体が2つの傾斜面を有する立体形状であり、前記発光素子部が前記傾斜面上に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記多面構造体が2n角錐(nは、3以上の自然数。)であり、前記発光素子部が前記傾斜面上に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記画素が、発光色が1色である発光素子部と、発光色が2色以上である発光素子部と、を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−129041(P2012−129041A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278795(P2010−278795)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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