説明

発振装置及び電子機器

【課題】圧電素子を発振源として使用している発振装置において、大型化することを抑制しつつ、出力を大きくする
【解決手段】第1振動子10は平面視で第2振動子20と重なっており、かつ開口26を有している。第2圧電素子24に入力される駆動信号を基準にしたときの第1圧電素子14に入力される駆動信号の位相差をθ、第1振動子10と第2振動子20の距離をL、駆動信号と同一周波数の音波の空気中における波長をλとした場合、以下の式(1)が満たされる。ただし、nは正数または0である。
L=(n+θ/(2π))×λ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカの一つに、圧電素子を振動部材上に固定した発振源として利用するものがある。このタイプのスピーカは、ボイスコイル及び磁石を用いた動電型のスピーカと比較して、小型化しやすい、という特徴がある。
【0003】
なお、特許文献1には、超音波診断装置に用いられる発振装置において、複数の圧電体と電極とを交互に積層させ、かつ電極間の距離が、圧電体の基本共振振動の波長の1/4倍とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−113007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧電素子を用いた発振装置は、出力を大きくしにくい。このため、発振装置を大型化することなく、発振装置の出力を大きくすることが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、圧電素子を発振源として使用しており、大型化することを抑制しつつ、出力を大きくすることができる発振装置及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、第1振動部材と、前記第1振動部材上に設けられた第1圧電素子を有する第1振動子と、
第2振動部材と、前記第2振動部材上に設けられた第2圧電素子を有する第2振動子と、
前記第1圧電素子及び前記第2圧電素子に同一周波数の駆動信号を入力する制御手段と、
を備え、
前記第2振動部材は、平面視で前記第1振動子と重なっており、かつ開口を有しており、
前記第2圧電素子に入力される前記駆動信号を基準にしたときの前記第1圧電素子に入力される前記駆動信号の位相差をθ、前記第1振動子と前記第2振動子の距離をL、前記駆動信号と同一周波数の音波の波長をλとした場合、以下の式(1)が満たされる発振装置。
L=(n+θ/(2π))×λ・・・(1)
【0008】
本発明によれば、上記した発振装置を有する電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧電素子を発振源として使用している発振装置において、大型化することを抑制しつつ、出力を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示した第1振動子の構成を示す平面図である。
【図3】図1に示した第2振動子の構成を示す平面図である。
【図4】図1の変形例を示す図である。
【図5】図1に示した発振装置を電子機器に取り付けた状態を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る発振装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。図2は、図1に示した第1振動子10の構成を示す平面図である。図3は、図1に示した第2振動子20の構成を示す平面図である。
【0013】
この発振装置は、第1振動子10、第2振動子20、及び制御部50を備えている。第1振動子10は、第1振動部材12及び第1圧電素子14を備えている。第1圧電素子14は、第1振動部材12上に設けられている。第2振動子20は、第2振動部材22及び第2圧電素子24を備えている。第2圧電素子24は、第2振動部材22上に設けられている。制御部50は、第1圧電素子14及び第2圧電素子24に、同一周波数の駆動信号を入力する。
【0014】
第2振動子20は平面視で第1振動子10と重なっており、かつ開口26を有している。そして第2圧電素子24に入力される駆動信号を基準にしたときの第1圧電素子14に入力される駆動信号の位相差をθ、第1振動子10と第2振動子20の距離をL、駆動信号と同一周波数の音波の空気中における波長をλとした場合、以下の式(1)が満たされる。ただし、nは正数または0である。
L=(n+θ/(2π))×λ・・・(1)
なお、位相差θは、第1圧電素子14に入力される駆動信号が、第2圧電素子24に入力される駆動信号に対して位相がどれだけ進んでいるかを示している。以下、詳細に説明する。
【0015】
第1振動部材12は、シート状であり、第1圧電素子14から発生した振動によって振動する。また第1振動部材12は、第1圧電素子14の基本共振周波数を調整する。機械振動子の基本共振周波数は、負荷重量と、コンプラインスに依存する。コンプラインスは振動子の機械剛性であるため、第1振動部材12の剛性を制御することで、第1圧電素子14の基本共振周波数を制御できる。なお、第1振動部材12の厚みは5μm以上500μm以下であることが好ましい。また、第1振動部材12は、剛性を示す指標である縦弾性係数が1Gpa以上500GPa以下であることが好ましい。第1振動部材12の剛性が低すぎる場合や、高すぎる場合は、機械振動子として特性や信頼性を損なう可能性が出てくる。なお、第1振動部材12を構成する材料は、金属や樹脂など、脆性材料である第1圧電素子14に対して高い弾性率を持つ材料であれば特に限定されないが、加工性やコストの観点からリン青銅やステンレスなどが好ましい。
【0016】
第1圧電素子14は、例えばPZTなどの圧電セラミックスにより形成されている。ただし、第1圧電素子14は、ポリフッ化ビニリデンなど、圧電性を示す高分子材料により形成されても良い。
【0017】
なお、第2振動部材22は第1振動部材12と同様の考え方で形成されており、第2圧電素子24は第1圧電素子14と同様の考え方で形成されている。
【0018】
また、第1振動子10と第2振動子20の基本共振周波数は、互いに等しいのが好ましい。例えば図1では、第1圧電素子14と第2圧電素子24の平面形状を同一にしているが、図4に示すように、第2圧電素子24を第1圧電素子14よりも大きくしても良い。また逆に、第2圧電素子24を第1圧電素子14よりも小さくしても良い。
【0019】
また上記したように、第2振動子20には開口が設けられている。本実施形態では、第2振動部材22に開口26が設けられている。具体的には、第2振動部材22は、第2圧電素子24の中心から放射状に伸びる複数の梁を有している。これらの梁は、等間隔に配置されている。そして各梁の相互間に位置する部分が、開口26となっている。ただし、第2振動部材22を構成する梁は第2圧電素子24と重なっていれば良く、第2圧電素子24の中心まで延伸している必要はない。
【0020】
制御部50は、上記したように第1圧電素子14及び第2圧電素子24に駆動信号を入力する。発振装置をパラメトリックスピーカとして機能させる場合、制御部50は、外部から入力された音声データ(原信号)を変調してパラメトリックスピーカ用の変調データを生成し、このデータに基づいて駆動信号を生成する。すなわち第1圧電素子14及び第2圧電素子24には、同一の原信号から生成された同一周波数の駆動信号が入力される。ここで制御部50は、変調信号の周波数として、第1振動子10及び第2振動子20の共振周波数を用いる。ここで用いられる共振周波数は、基本共振周波数であるのが好ましい。
【0021】
本実施形態において、第1振動子10及び第2振動子20は、いずれも同一の支持部材40に支持されている。支持部材40は筒形状を有しており、第1振動部材12の外周部及び第1圧電素子14の外周部が、支持部材40の内側壁に固定されている。
【0022】
図5は、図1に示した発振装置を電子機器に取り付けた状態を示す図である。この図に示す例において、発振装置は、電子機器の筐体60の内壁に取り付けられる。詳細には、支持部材40の上端面が、筐体60の内壁に取り付けられる。筐体60には、音孔62が設けられている。そして支持部材40は、平面視で音孔62を内側に含んでいる。このため、音孔62は第1振動子10及び第2振動子20と対向し、第1振動子10および第2振動子20が発振した音波は、音孔62を介して筐体60の外部に放射される。
【0023】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態によれば、第2振動子20は開口26を有しているため、第1振動子10から発振された音波は、開口26を介して第2振動子20の上方に放射され、第2振動子20が発振した音波を重なる。ここで本実施形態では、上記した(1)式を満たしている。このため、第1振動子10が発振した音波は、第2振動子20が発振した音波と重なるタイミングにおいて、第2振動子20が発振した音波と同位相になる。この場合、2つの音波は互いに強めあうことになる。従って、発振装置の出力を大きくすることができる。
【0024】
また、第1振動子10及び第2振動子20を重ねているため、これらを同一面に配置する場合と比較して、発振装置を小型化できる。
【0025】
従って、発振装置が大型化することを抑制しつつ、発振装置の出力を大きくすることができる。
【0026】
なお、(1)式において、θ=π、またはθ=2πとすると、発振装置の設計は容易になる。
【0027】
また、第2振動子20の上に、第3の振動子が設けられても良い。この場合、第3の振動子と第2振動子20の関係は、第2振動子20と第1振動子10の関係と同様となる。
【0028】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る発振装置の構成を示す断面図である。この発振装置は、第1振動子10が第2振動部材16を有している点を除いて、第1の実施形態に係る発振装置と同様の構成である。
【0029】
本実施形態において、第1振動子10の振動部材は、第1振動部材12及び第2振動部材16によって構成されている。第1圧電素子14は第1振動部材12上に設けられている。第2振動部材16は、平面視で中空形状を有しており、この中空部分を塞ぐように、第1振動部材12が位置している。すなわち第2振動部材16の内周側の縁は第1振動部材12の縁に固定されており、第2振動部材16の外周側の縁は支持部材40に固定されている。
【0030】
第2振動部材16は、第1振動部材12よりも剛性が低い材料、例えばポリエチレンやウレタンなどの樹脂材料により形成されている。このため、第2振動部材16を設けることにより、第1振動子10の縁は、大きく振動できるようになる。従って、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られるほか、発振装置の出力をさらに大きくすることができる。
【0031】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
10 第1振動子
12 第1振動部材
14 第1圧電素子
16 第2振動部材
20 第2振動子
22 第2振動部材
24 第2圧電素子
26 開口
40 支持部材
50 制御部
60 筐体
62 音孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1振動部材と、前記第1振動部材上に設けられた第1圧電素子とを有する第1振動子と、
第2振動部材と、前記第2振動部材上に設けられた第2圧電素子とを有する第2振動子と、
前記第1圧電素子及び前記第2圧電素子に同一周波数の駆動信号を入力する制御手段と、
を備え、
前記第2振動部材は、平面視で前記第1振動子と重なっており、かつ開口を有しており、
前記第2圧電素子に入力される前記駆動信号を基準にしたときの前記第1圧電素子に入力される前記駆動信号の位相差をθ、前記第1振動子と前記第2振動子の距離をL、前記駆動信号と同一周波数の音波の波長をλとした場合、以下の式(1)が満たされる発振装置。ただし、nは正数または0である。
L=(n+θ/(2π))×λ・・・(1)
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置において、
前記θ=πである発振装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発振装置において、
前記θ=2πである発振装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発振装置において、
前記第1振動子は、前記第1振動部材に前記開口を有する発振装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の発振装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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