説明

発泡エラストマー及びその製造方法

【課題】天然ゴムラテックスに含まれるアレルゲンが効率よく変性・不活化されていると共に天然ゴムラテックス特有の臭いも低減されており、更にはダニ抗原等の他のアレルゲンの不活化効果をも有する発泡エラストマー、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】天然ゴムラテックスを含むラテックス原料に、少なくとも加硫剤とタンニン酸とを混合し、含気処理後、成形して乾燥させるか、あるいは、天然ゴムラテックスを含む発泡エラストマーを、タンニン酸の溶液に浸漬し、乾燥させることにより、タンニン酸を含有する発泡エラストマーを得る。この発泡エラストマーは、タンニン酸を0.01〜10質量%含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ゴムラテックスに含まれるアレルゲンや臭いが低減された発泡エラストマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、天然ゴムラテックスは、ゴム樹(ヘベア・ブラジリエンス樹)から採取された白色樹液に、凝固防止のために少量のアンモニアと保存剤等を添加後、濃縮し、加硫剤・加硫促進剤等を加えて加熱することにより製造されている。
【0003】
この天然ゴムラテックスは、優れた機械的物性(伸び、弾性、皮膜の強さ等)と良好な加工性を有していることから、医療用手袋や各種カテーテル、絆創膏等の医療用具をはじめとして、炊事用手袋、授乳用具、避妊具等の日用品等の幅広い分野で利用されている。また、天然ゴムラテックスにエアを混合して凝固させたフォームラバー(本発明においては発泡エラストマーという)は、圧縮特性、制振特性、緩衝性等に優れていることから、マットレス、枕、敷布団、椅子や座席用クッション、絨毯の裏打ち、ドアのパッキング等に利用されている。
【0004】
しかし、近年、天然ゴムラテックス製品に接触することにより、掻痒感や蕁麻疹、鼻・目・喉の症状、喘息発作、アナフィラキシーショック等のアレルギー(以下、ラテックスアレルギーという)が起こることが報告され、問題となっている。天然ゴムラテックスには、1.5%程度の蛋白質が含まれており、この蛋白質が上記のようなラテックスアレルギーの原因物質(アレルゲン)であることが分かっている。この蛋白質は、最終的な天然ゴム製品まで残存して、使用中に溶出し、アレルゲンとして作用する。
【0005】
そのため、ラテックスアレルギーを低減するための様々な方法が提案されており、例えば、下記特許文献1には、天然ゴムラテックスを用いてなる浸漬製品を200℃以上の水蒸気に接触させて、溶出蛋白質量を減少させることを特徴とする低アレルギー性天然ゴム製品の製造方法が開示されている。
【0006】
下記特許文献2には、新鮮な天然ゴムラテックスに尿素系化合物からなる蛋白質変成剤を添加し、当該ラテックス中の蛋白質を変成処理した後に除去することを特徴とする脱アレルゲン化天然ゴムラテックスの製造方法が開示されている。
【0007】
下記特許文献3には、予め脱タンパク処理した天然ゴムラテックスに、苛性アルカリを加えてケン化処理することを特徴とする低アレルギー性天然ゴムラテックスの製造方法が開示されている。
【0008】
下記特許文献4には、蛋白質の分解処理が施された天然ゴムであって、数平均分子量が4500以上である蛋白質及び蛋白質分解物が検出されないことを特徴とする低アレルギー性天然ゴムが開示されている。
【0009】
下記特許文献5には、蛋白質の含有量が窒素含有率において0.1%以下のレベルまで除去された脱蛋白天然ゴムを、全ゴム固形分に対して30重量%以上の割合で含有するゴムラテックスから形成されたことを特徴とするフォームラバーが開示されている。
【0010】
下記特許文献6には、天然ゴムラテックスに含まれる蛋白由来の窒素分を低減してその含有量を0.05%以下にしたことを特徴とする脱蛋白天然ゴムラテックススポンジが開示されている。
【0011】
下記特許文献7には、天然ゴムラテックス製品を、二酸化炭素臨界超過条件下にさらし、12〜18分間抽出処理後、30分間以上の減圧時間を経て、大気圧還元する臭、アレルギー蛋白抽出除去方法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−126488号公報
【特許文献2】特開2005−15614号公報
【特許文献3】特開2003−20301号公報
【特許文献4】特開2002−145903号公報
【特許文献5】特開2000−336102号公報
【特許文献6】特開2000−7708号公報
【特許文献7】特開2002−69102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1〜6に開示された方法では、天然ゴムラテックスに含まれる蛋白質(アレルゲン)を完全に分解・除去あるいは変性することは難しく、ある程度のアレルゲン低減効果は認められるものの、充分満足できる効果を得ることは難しかった。また、天然ゴムラテックス製品は特有の臭いを有しているが、上記の方法ではその臭いを消臭することはできなかった。
【0013】
一方、上記特許文献7に開示された方法では、アレルゲンとなる蛋白質の除去と臭いの除去が可能であるが、特殊な設備が必要であり、製造コストが非常に高くなってしまうという問題があった。
【0014】
更に、発泡エラストマーの場合、マットレス、枕、敷布団、椅子や座席用クッション、絨毯の裏打ち等に利用されることから、ダニ等の新たなアレルゲンの問題も出てくるため、別途、防ダニ・抗菌処理等を行う必要があった。
【0015】
したがって、本発明の目的は、天然ゴムラテックスに含まれるアレルゲンが効率よく変性・不活化されていると共に天然ゴムラテックス特有の臭いも低減されており、更にはダニ抗原等の他のアレルゲンの不活化効果をも有する発泡エラストマー、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の発泡エラストマーは、ラテックス原料として天然ゴムラテックスを含み、かつタンニン酸を含有することを特徴とする。
【0017】
本発明の発泡エラストマーは、タンニン酸を含有することにより、天然ゴムラテックスに含まれる蛋白質(アレルゲン)を効率よく変性・不活化してラテックスアレルギーを低減できると共に天然ゴムラテックス特有の臭いを消臭することができる。また、タンニン酸は、ダニ抗原等の他のアレルゲンに対する不活化活性も有しているので、他のアレルギーに対する抑止効果も有している。
【0018】
本発明の発泡エラストマーにおいては、前記タンニン酸を0.01〜10質量%含有することが好ましい。この態様によれば、作業性や加工性を損なうことなく、ラテックスアレルゲンの低減効果、天然ゴムラテックス特有の臭いの消臭、ダニ抗原等の他のアレルゲンの不活化効果を得ることができる。
【0019】
本発明の発泡エラストマーは、枕、敷き布団、マットレス、ベッド、ベッドパット、クッション、座布団、椅子、ベビーカー、水着、ブラジャーから選ばれた1種の芯材又はクッション材として好ましく用いられる。
【0020】
また、発泡エラストマーの製造方法の一つは、天然ゴムラテックスを含むラテックス原料に、少なくとも加硫剤とタンニン酸とを混合し、含気処理後、成形して乾燥させることを特徴とする。
【0021】
この製造方法によれば、天然ゴムラテックスを含むラテックス原料とタンニン酸を均一に混合することができるので、天然ゴムラテックスに含まれるアレルゲンや臭いを効率よく低減することができると共に、ダニ抗原等の他のアレルゲンの不活化効果をも付与できる。また、発泡エラストマー中にタンニン酸が封入されるので、汗や洗濯等によりタンニン酸が溶出することもなく、上記効果を長期間にわたって維持できる。
【0022】
本発明の発泡エラストマーの製造方法においては、前記タンニン酸をpH6〜10の水溶液に調整して添加することが好ましい。
【0023】
また、前記タンニン酸の水溶液のpH調整剤としてアンモニアを用いることが好ましい。
【0024】
これらの態様によれば、タンニン酸を添加した際に起こるラテックス原料の凝固を防ぐことができるので、作業性を損なうことがない。
【0025】
本発明の発泡エラストマーの製造方法のもう一つは、天然ゴムラテックスを含む発泡エラストマーを、タンニン酸の溶液に浸漬し、乾燥させることを特徴とする。
【0026】
この製造方法によれば、天然ゴムラテックスに含まれるアレルゲンや臭いを容易に低減することができ、更にはダニ抗原等の他のアレルゲンの不活化効果も付与できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ラテックスアレルギーの原因となるアレルゲンが充分に低減されているだけでなく、天然ゴムラテックス特有の臭いも低減され、更にはダニ抗原等の他のアレルゲンに対して不活化活性を有する発泡エラストマーを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の発泡エラストマーの原料として用いられる天然ゴムラテックス(以下、NRラテックスという)は、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、従来公知の脱蛋白処理を行って得られる脱蛋白天然ゴム(DPNR)ラテックスのいずれであってもよい。例えば、脱蛋白天然ゴム(DPNR)ラテックスを用いることにより、より高いラテックスアレルゲンの低減効果を得ることができる。
【0029】
本発明においては、ラテックス原料として上記NRラテックスのみを用いてもよいが、必要に応じて、更にスチレン−ブタジエンゴムラテックス(SBRラテックス)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、IRラテックス、DPL(解重合ラテックス)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、アクリルエマルジョン、ポリウレタン系ラテックス等の各種合成ラテックスを添加して用いることもできる。上記NRラテックスと上記合成ラテックスとを併用する場合、各ラテックスの配合割合は目的に応じて適宜選択すればよいが、NRラテックスの良好な特性を生かすために、通常、NRラテックスをゴム固形分換算で50質量%以上含むことが好ましい。
【0030】
また、本発明において用いられるタンニン酸は、下記一般式〔1〕で表される化合物であり、水に溶解し易く、水溶液は酸性を示す。また、アルコール、アセトン、グリセリン等に良好な可溶性を示し、石油エーテル、無水エーテル、クロロホルム等に不溶性である。
【0031】
【化1】

【0032】
(上記一般式〔1〕式中、Rは、同一又は異なってもよい水素原子又は下記一般式〔2〕で表される化合物よりなる官能基を表す。)
【0033】
【化2】

【0034】
(上記一般式〔2〕式中、Aは、同一又は異なってもよい水素原子又は下記一般式〔3〕で表される化合物よりなる官能基を表す。)
【0035】
【化3】

【0036】
タンニン酸は、没食子や五倍子等の植物タンニンに由来し、一般にガロイル没食子酸と称されることもある。また、タンニンの加水分解で生じることから「タンニン酸」の用語はタンニン自体を指称することもある。没食子や五倍子から得られるタンニン酸は、加水分解により没食子酸と微量のグルコースとを生じる。
【0037】
本発明において用いられるタンニン酸は、例えば、没食子や五倍子等を温湯で抽出して、抽出液を蒸発乾固して得たもの、また、これらを有機溶媒で抽出・精製したもの等、公知技術に準じた抽出方法によって得られるものであり、具体的には、加水分解型ガロタンニン、加水分解型エラジタンニン及び縮合型タンニンから選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられ、例えば、商品名「タンニン酸AL」(富士化学工業株式会社製)等の市販のものを用いることができる。
【0038】
以下、本発明の発泡エラストマーの製造方法について説明する。
【0039】
本発明の発泡エラストマーの製造方法は、(1)NRラテックスを含む原料に、少なくとも加硫剤とタンニン酸とを混合し、含気処理後、成形して乾燥させる方法、(2)NRラテックスを含む発泡エラストマーを、タンニン酸の溶液に浸漬し、乾燥させる方法の2つに大きく分けることができるが、上記(1)と(2)の方法を併用することもできる。
【0040】
まず、NRラテックスを用いた発泡エラストマーの基本的な製造工程の一例について説明する。
【0041】
A.ラテックス原料に、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、凝固剤、老化防止剤、界面活性剤、安定剤、起泡剤等から選ばれた必要な添加剤を添加する。
【0042】
B.空気を混入しながら起泡させる。この含気処理はバッチ式又は連続式起泡装置等の公知の起泡装置を用いて行う方法の他、過酸化水素等の発泡剤や起泡剤を用いて行うこともできる。含気率は、目的に応じて適宜設定すればよいが、通常、10〜60体積%が好ましく、20〜40体積%がより好ましい。
【0043】
C.加硫促進助剤を混入し、1〜2分程度の高速攪拌を行う。
【0044】
D.凝固剤を混入する。
【0045】
E.モールドへの注入、ベルトコンベヤへの押出しなど、各種の成形方法で成形する。なお、ベルトコンベヤへの押出しは、移動するベルト上に上記ラテックス原料をシート状に押出し、ベルトの搬送経路上方に配置されたヒータによって加熱する方法などが採用される。
【0046】
F.スチーム等の加熱手段によって加熱を行う。例えばスチームを用いる場合、加熱時間は20〜60分間が好ましい。
【0047】
G.型枠を外す。
【0048】
H.マイクロウエーブ加熱や、ヒーター加熱によって、乾燥させる。
【0049】
上記(1)の方法においては、上記A、B、C、D、のいずれかの工程で、タンニン酸を添加する。タンニン酸の添加量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.05〜2質量%が最も好ましい。
【0050】
タンニン酸は、水溶液にして添加することが好ましいが、粉体で添加することもできる。なお、タンニン酸の添加量が多い場合には、上記水溶液は、アンモニア等を添加してpH6〜10に調整して添加することが好ましい。なお、タンニン酸の水溶液に界面活性剤等を添加してもよい。
【0051】
上記(2)の方法においては、上記工程Hの後に、更に下記工程を行う。
【0052】
I.タンニン酸の溶液に、発泡エラストマーを浸漬する。
【0053】
この場合、タンニン酸の溶液のタンニン酸濃度は0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましい。タンニン酸の添加量が少な過ぎると、NRラテックスに含まれるアレルゲンを充分に変性・不活性できないため、充分なアレルゲン低減効果が期待できず、消臭効果やダニ抗原等の他のアレルゲンの不活化効果も期待できない。また、タンニン酸の添加量が多過ぎると、発泡エラストマーが損傷しやすくなる。
【0054】
溶媒としては、有機溶媒を用いることもできるが、安全性やコスト等の点から水を用いることが好ましい。浸漬温度は、特に限定されないが、発泡エラストマーの損傷を防ぐため、室温付近が好ましい。浸漬時間は、発泡エラストマーの中心部までタンニン酸の溶液が十分浸透するように、浸漬温度に応じて適宜設定すればよいが、通常は、室温で30秒〜30分が好ましい。
【0055】
J.脱水して、タンニン酸の溶液を除去する。なお、タンニン酸の溶液は、回収して、繰り返し使用することができる。
【0056】
K.脱水する。
【0057】
L.マイクロウエーブ加熱や、ヒーター加熱によって、乾燥させる。
【0058】
なお、上記工程I,J,K,L,を、上記工程Gの次に行ってもよい。
【0059】
上記のようにして得られる本発明の発泡エラストマーの形状は特に限定されるものではなく、使用目的に応じてシート状、板状、ブロック状、球状等の様々な形状を選択でき、更に、裁断や穴あけ等の加工を施すこともできる。
【0060】
上記のようにして得られた発泡エラストマーは、様々な製品に利用することができ、例えば、枕、敷き布団、マットレス、ベッド、ベッドパット、クッション、座布団、椅子、ベビーカー、水着、ブラジャー等の芯材又はクッション材として好ましく用いられる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0062】
<実施例1>
ラテックス(原料)100kg(ゴム固形分60kg)、硫黄(加硫剤)、加硫促進剤(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)、加硫促進剤(2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩)、老化防止剤、分散剤を添加して均一に撹拌した。
【0063】
次いで、タンニン酸(加水分解型ガロタンニン、商品名「タンニン酸AL」、富士化学工業製)の水溶液を、タンニン酸で0.1質量%となるように、上記ラテックス原料中に添加した。
【0064】
このラテックス組成物に対して、バッチ式起泡装置を用いて含気処理を行い、加硫促進助剤(酸化亜鉛)を添加して高速撹拌した後、凝固剤を添加・混合し、直ちにモールドに流し込み、スチーム(100℃)で35分間加熱処理を行った。
【0065】
モールドから発泡エラストマーを取り出し、水洗いした後、遠心脱水してからマイクロウエーブ乾燥及びテンター乾燥を行い、タンニン酸を原料中に添加した発泡エラストマーを得た。
【0066】
<実施例2>
実施例1において、ラテックス原料中にタンニン酸の水溶液を添加せずに、発泡エラストマーを製造した。
【0067】
この発泡エラストマーを、タンニン酸(加水分解型ガロタンニン、商品名「タンニン酸AL」、富士化学工業製)を0.1質量%となるように溶解した水溶液中に5分間浸漬して取り出した。
【0068】
この発泡エラストマーを遠心脱水してからマイクロウエーブ乾燥及びテンター乾燥を行い、タンニン酸を浸漬により添加した発泡エラストマーを得た。
【0069】
<比較例>
実施例1において、ラテックス原料中にタンニン酸の水溶液を添加せずに、発泡エラストマーを製造した。この発泡エラストマーを比較例として、以下の試験に用いた。
【0070】
<試験例1> ダニ抗原の不活化試験
上記実施例1,2及び比較例で得られた発泡エラストマー100mgを、ダニ抗原(Der f1)溶解溶液2mlと24時間反応させた。
【0071】
反応後のダニ抗原量をモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定法(ELISA法)にて測定した。ELISA法は、抗Der f1抗体(INDOOR biotechnologies社製)、ビオチン標識抗Der f1抗体(INDOOR biotechnologies社製)、酵素(β−ガラクトシダーゼ)標識ストレプトアビジン(SIGMA社製)を用意し、常法に従って行った。
【0072】
すなわち、プレートの各ウエルを抗Der f1抗体でコーティングした後、各サンプルと反応させたダニ抗原を添加し、プレート上に捕捉したダニ抗原に、ビオチン標識抗Der f1抗体を反応させた。このウエルを洗浄後、酵素標識ストレプトアビジンを反応させて再び洗浄した後、基質を加えて、各ウエルの酵素活性を吸光度(波長490nm)によって測定した。
【0073】
そして、標準抗原を加えたウエルの吸光度から標準曲線を作成して各水溶液のダニ抗原量を求めた。なお、不活化率は、比較例の発泡エラストマーを用いて得られた値を基準にして求めた。この結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1の結果からタンニン酸を添加した実施例1,2の発泡エラストマーでは、ダニ抗原が不活化されていることがわかる。
【0076】
<試験例2> ラテックス蛋白の不活化試験
実施例2において、発泡エラストマーを浸漬するタンニン酸水溶液の濃度を10質量%にした他は、実施例2と同様にして得られた発泡エラストマーについて、総蛋白量を、改良Lowry法(ASTM Method D5712-95)で、また、アレルゲン蛋白量を、ELISA法(ASTM Method D6499-00)で、それぞれ測定した(いずれも米国 LEAP Testing Service社にて測定)。この結果を表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
一般に、総蛋白量が100〜50μg/gであれば、健常者はほとんど感作されないと言われているが、表2に示されるように、実施例2の発泡エラストマーは、総蛋白量及びアレルゲン蛋白量共に、感作する虞のない量になっていることがわかる。
【0079】
<試験例3> 臭気分析
実施例1において、ラテックス原料中へのタンニン酸の添加量を2質量%にした他は、実施例1と同様にして得られた発泡エラストマー(タンニン酸2質量%含有)と、比較例で得られた発泡エラストマー(タンニン酸無添加)とについて、におい識別装置「FF−2A」(商品名、株式会社島津製作所製)を用いて、それぞれのにおいのアンモニアに対する臭気類似度と、臭気寄与を測定した(株式会社島津製作所製にて測定)。臭気類似度の測定結果を表3に、臭気寄与の測定結果を表4に示す。
【0080】
なお、臭気類似度とは、サンプルから得られる臭気について基準ガスに対するセンサーが得た値の類似度を表すものである。また、臭気寄与とはセンサーが得た値に人が感じる臭気についての補正を行った値を表すものである。
【0081】
【表3】

【0082】
表3の結果から、タンニン酸を添加した実施例1の発泡エラストマーは、アンモニアに対する臭気類似度が低くなっていることがわかる。
【0083】
【表4】

【0084】
表4の結果から、タンニン酸を添加した実施例1の発泡エラストマーは、アンモニアの値が0となり、NRラテックス特有の臭いに含まれるアンモニア臭が顕著に軽減されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の発泡エラストマーは、タンニン酸を含有することにより、天然ゴムラテックスに含まれるアレルゲンが効率よく変性・不活化されているのでラッテクスアレルギーの心配がないだけでなく、天然ゴムラテックス特有の臭いも低減され、更にはダニ抗原等の他のアレルゲンに対しても不活化活性を有しており、人体に直接触れる製品をはじめとして様々な製品に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラテックス原料として天然ゴムラテックスを含み、かつタンニン酸を含有することを特徴とする発泡エラストマー。
【請求項2】
前記タンニン酸を0.01〜10質量%含有する請求項1記載の発泡エラストマー。
【請求項3】
枕、敷き布団、マットレス、ベッド、ベッドパット、クッション、座布団、椅子、ベビーカー、水着、ブラジャーから選ばれた1種の芯材又はクッション材として用いられる請求項1又は2記載の発泡エラストマー。
【請求項4】
天然ゴムラテックスを含むラテックス原料に、少なくとも加硫剤とタンニン酸とを混合し、含気処理後、成形して乾燥させることを特徴とする発泡エラストマーの製造方法。
【請求項5】
天然ゴムラテックスを含む発泡エラストマーを、タンニン酸の溶液に浸漬し、乾燥させることを特徴とする発泡エラストマーの製造方法。

【公開番号】特開2008−56858(P2008−56858A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238055(P2006−238055)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(505342449)ヤマセイ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】