説明

発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法

【課題】高温耐久性を改善せしめた発泡ポリウレタンエラストマーを製造する方法を提供する。
【解決手段】数平均分子量Mnが500〜4000のポリオールおよび芳香族ジイソシアネートを反応させて得られる末端イソシアネート基含有プレポリマーに、水、分子量48〜200の低分子量グリコールおよび数平均分子量Mn 1000〜3000の高分子量グリコールの混合物よりなる発泡剤を撹拌混合し、発泡反応を行うに際し、1,2-ジメチルイミダゾール触媒を含有する発泡剤を用いて発泡反応を行い、発泡ポリウレタンエラストマーを製造する。芳香族ジイソシアネートとしては、好ましくは3,3′-ジメチルフェニル-4,4′-ジイソシアネートが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法に関する。さらに詳しくは、自動車サスペンション部の補助スプリング(バンプストッパー)などの自動車用弾性体部品として有効に用いられる発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細なセル構造を有する発泡ポリウレタンエラストマーは、制震性、衝撃吸収性にすぐれており、高荷重時の動的特性、耐久性、耐ヘタリ性の観点から自動車サスペンション部の補助スプリングなどとして多く使用されている。特に、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)をベースとした発泡ポリウレタンエラストマーは、耐屈曲疲労特性にすぐれており、高耐久性が要求される補助スプリング部位に多く使用されている。しかるに、NDIは他のジイソシアネート化合物と比べて原料単価が高く、かつ反応性に富んでいることから取扱いが難しいといった問題があった。
【0003】
自動車用補助スプリングの破損メカニズムは、まず繰り返し屈曲変形により材料自体が発熱し、その際の温度によって材料の物理的特性が低下し、局所的な亀裂が発生することによるものと考えられる。従って、耐久性にすぐれた補助スプリング用材料は、高温環境下においても物理的特性が低下しないという性質が必要不可欠であり、これには強固な架橋構造を有するポリウレタン分子鎖の高次元構造が必要となる。
【0004】
しかるに、ジイソシアネート、高分子量ジオールおよび鎖延長剤(低分子量ジオール)を一括混合(ワンショット法)あるいは高分子量ジオールをあらかじめジイソシアネートと反応させてプレポリマーを調製したのち低分子量ジオールを用いて鎖延長を行う(プレポリマー法)といった従来の製造方法では、NDI以外の芳香族ジイソシアネートを用いてかかる強固な架橋構造を有するポリウレタン分子鎖の高次元構造を実現することはできなかった(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2008/026367
【特許文献2】特開2005−60552号公報
【特許文献3】特開2002−30129号公報
【特許文献4】特表平11−513719号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】産業調査会 事典出版センター発行 「プラスチック機能性高分子 材料事典」426頁 (2004)
【非特許文献2】日刊工業新聞社発行 「ポリウレタン樹脂ハンドブック」 118〜120頁 (1987年9月25日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人は先に、安価で取扱いの容易なジイソシアネート化合物を使用しながらも、高い耐久性、特に高荷重時の高い耐久性を達成せしめた発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法として、ポリオールおよび3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネートを反応させて得られる末端イソシアネート基含有プレポリマーに、水、分子量48〜200の低分子量グリコールおよび数平均分子量Mn 1000〜3000の高分子量グリコールの混合物よりなる発泡剤を撹拌混合し、発泡反応を行って発泡ポリウレタンエラストマーを製造する方法を、特許文献1で提案している。
【0008】
本発明の目的は、上記発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法において、さらに高温耐久性を改善せしめた発泡ポリウレタンエラストマーを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる本発明の目的は、数平均分子量Mnが500〜4000のポリオールおよび芳香族ジイソシアネートを反応させて得られる末端イソシアネート基含有プレポリマーに、水、分子量48〜200の低分子量グリコールおよび数平均分子量Mn 1000〜3000の高分子量グリコールの混合物よりなる発泡剤を撹拌混合し、発泡反応を行うに際し、1,2-ジメチルイミダゾール触媒を含有する発泡剤を用いて発泡反応を行い、発泡ポリウレタンエラストマーを製造する方法によって達成される。芳香族ジイソシアネートとしては、好ましくは3,3′-ジメチルフェニル-4,4′-ジイソシアネートが用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る方法を用いることにより製造される発泡ポリウレタンエラストマーは、芳香族ジイソシアネートとして安価で取扱いが容易な3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネート(トリジンジイソシアネート;TODI)をジイソシアネート化合物として用いて得られた発泡ウレタンエラストマーにあっても、原料単価の高いNDIをベースとしたものと同等の物性特性を有する発泡ウレタンエラストマーが得られるといったすぐれた効果を奏する。すなわち、NDI以外の安価なジイソシアネート化合物をポリオールに反応させて得られた発泡ポリウレタンエラストマーであっても、すぐれた屈曲疲労特性を有することができ、またくり返し圧縮により材料が発熱した環境に対しても、強固なゴム弾性を維持しており、高耐久性が要求される自動車サスペンション部の補助スプリングなどの自動車用弾性体部品として有効に用いられる。
【0011】
前述の如く、耐久性のすぐれた補助スプリング用材料は、高温環境下においても物理的特性が低下しないという性質が必要不可欠であり、これはポリウレタン分子鎖の高次構造に大きく依存する。このようなポリウレタン分子鎖の高次構造をとるためには、より強固な架橋構造を有することが必要であるが、本発明のポリウレタンエラストマーの製造方法での発泡硬化反応においては、最初に反応性の高い水や低分子量グリコールがウレタンプレポリマー中に存在する過剰量のジイソシアネートと反応するが、1,2-ジメチルイミダゾール触媒のようなウレタン化活性の高い触媒の存在下では、強靱なウレタン結合の割合が比較的高いハードセグメントが成長し、その後反応性の低い高分子量グリコールが残存するジイソシアネート基と反応してソフトセグメントを形成するため、強靱なハードセグメントとソフトセグメントが長鎖化し、ミクロ相分離がより進行することで、物理的架橋性が高くなると考えられる。
【0012】
すなわち、本発明方法によって得られたポリウレタンエラストマーは、より物理的架橋に富んだ高次構造を有しており、かつウレタン結合の割合が高い強靱なハードセグメントを有しているため、高い物理的特性を有する。例えば、一般的なゴム材料の引張試験方法において、100℃の雰囲気下に1時間保管し、同温度雰囲気下で破断時伸び試験を行った破断時伸び率は、常温雰囲気下での破断時伸び率の80%以上を維持しており、高温雰囲気下における物理的特性の低下が小さいといった特性を有する。
【0013】
さらに、本発明方法においては、ジイソシアネート成分と反応して剛直なウレア結合を形成する水と強靱なウレタン結合を形成するグリコールとが共存している発泡剤に、TDI/水システムの泡化反応による反応定数(2)とTDI/ジエチレングリコールのゲル化反応による反応定数(1)との比(2)/(1)が1.30×10-1以下のアミン系触媒である1,2-ジメチルイミダゾールを添加して用いることにより、ウレア形成反応よりもウレタン形成反応を活性化させることができ、このような樹脂化活性触媒を使用することで、靱性にすぐれかつ補助スプリングの耐久性に有益で、高温耐久性を発揮させる高次構造を有するポリウレタンエラストマーが得られることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ポリオールとしては、末端活性水素を有する長鎖グリコールである数平均分子量Mnが500〜4000、好ましくは1000〜3000、水酸基価が30〜150、好ましくは40〜100のものであれば特に限定されず、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、シリコーン系、1,4-ポリブタジエン系、1,2-ポリブタジエン系、ひまし油系等の各種ポリオールおよびこれらの混合物が用いられる。また、ポリオールのMnが500〜4000と規定されるのは、これ以下のMnでは、発泡ポリウレタンエラストマーの柔軟性が損なわれて脆くなり、一方これ以上のMnでは、発泡ポリウレタンエラストマーが低硬度となってしまい、十分な材料強度を得ることができないことによる。
【0015】
ポリオールと反応させるジイソシアネートとしては、3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネート(TODI)が好んで用いられるが、この他トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)等の芳香族ジイソシアネートも用いられる。これらの芳香族ジイソシアネートは、ポリオールのOH当量当りイソシアネート基が1当量より多く5当量以下、好ましくは4当量以下となるような割合で用いられる。ジイソシアネート成分が、これよりも少なく用いられると末端イソシアネート基含有プレポリマーが形成されず、一方これより多い割合で用いられると発泡ポリウレタンエラストマーの硬度が上昇し、緩衝部品としての使用に不向きとなる。
【0016】
ポリオールおよびジイソシアネートは、約90〜130℃で約15分間乃至約1時間程度反応させてプレポリマーを生成させる。
【0017】
発泡剤形成成分としては、末端イソシアネート基含有プレポリマー100重量部当り、水0.1〜5.0重量部、好ましくは0.2〜3.0重量部、分子量48〜200、好ましくは62〜160の低分子量グリコール0.1〜5.0重量部、好ましくは0.2〜3.0重量部および数平均分子量Mn1000〜3000、好ましくは1000〜2000の高分子量グリコール0.5〜70重量部、好ましくは1〜50重量部が用いられる。低分子量グリコールが用いられないと、ハードセグメントを成長させることができず、反対に高分子量グリコールが用いられないと、ソフトセグメントを成長させることができないため、いずれの場合にもハードセグメントとソフトセグメントを長鎖化させることができず、物理的架橋性を高めることができなくなる。
【0018】
低分子量グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどが、また高分子量グリコールとしては、好ましくはプレポリマー形成に用いられた範疇のもの、さらに好ましくは同種のポリオールが用いられ、具体的にはエチレンアジペートポリエステルポリオール、エチレンブチレンアジペートポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが用いられる。高分子量グリコールのMnが1000〜3000と規定されるのは、これ以下のMnでは、柔軟性を必要とするソフトセグメントを形成することができず、一方これ以上のMnでは、発泡剤が高粘度となり、取扱いが難しくなるため好ましくないことによる。
【0019】
本発明方法では、プレポリマーに水、低分子量グリコールおよび高分子量グリコールの混合物よりなる発泡剤を攪拌混合し、発泡反応を行うに際し、TDI/水システムの泡化反応による反応定数(2)とTDI/ジエチレングリコールのゲル化反応による反応定数(1)との比(2)/(1)が1.30×10-1以下のアミン系触媒である1,2-ジメチルイミダゾールを含有する発泡剤を用いて、発泡反応が行われる。
【0020】
TDI/水システムの泡化反応による反応定数(2)に対するTDI/ジエチレングリコールのゲル化反応による反応定数(1)の比(1)/(2)は、アミン触媒の反応活性を示す一つの指標であって、非特許文献2に記載されている。
【0021】
一般に、ポリウレタンの工業的な製造では、(A)、(B)の競争反応が起こり、
R-NCO+R′-OH → R-NHCOO-R′ (A)
2R-NCO+H2O → R-NHCONH-R+CO2 (B)
(A)の樹脂化反応(ゲル化反応;ウレタン形成反応)の反応活性を示す反応定数(1)と(B)の泡化反応(ウレア形成反応)の反応活性を示す反応定数(2)との比(2)/(1)によって規定される反応活性比が1.30×10-1以下のアミン系触媒が、本発明では用いられる。
【0022】
具体的には、反応定数比が1.30×10-1以下のアミン系触媒としては、1,2-ジメチルイミダゾール(0.77×10-1)、N・(N′,N′-ジメチルアミノエチル)モルホリン(0.81×10-1)、テトラメチルグアニジン(1.04×10-1)、ジメチルアミノエタノール(1.23×10-1)等が知られているが、本発明では1,2-ジメチルイミダゾールが好んで用いられる。
【0023】
1,2-ジメチルイミダゾールは、末端イソシアネート基含有プレポリマー100重量部当り0.02〜0.7重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部の割合で用いられる。1,2-ジメチルイミダゾールの使用割合がこれよりも少ないと、硬化反応に時間を要し、成形サイクルが長くなるといった問題が生じ、一方これよりも多い割合で用いられると、硬化・発泡反応が速くなり、金型による注型成形が困難となる。
【0024】
一方、反応定数比が1.30×10-1よりも大きいアミン系触媒を用いると、耐高温へたり性の評価項目である圧縮永久歪が大きくなり、すなわち材料がへたると補助スプリングの形状を維持することができないため、耐久性に劣るようになる。また、この反応定数比が3×10-1程度のものを用いると、切断時伸び高温維持率(100℃の切断時伸び/常温での切断時伸び)の著しい低下が避けられなくなる。
【0025】
発泡ポリウレタンエラストマー製造に際し、触媒としてアミン系触媒を用いることは一般的に行われており、例えば特許文献2〜4にはアミン系触媒の例が多数列挙されており、その中には1,2-ジメチルイミダゾールも例示されているが、これは単なる例示にとどまっている。
【0026】
また、発泡剤とともに、セル構造を決定させる成分としてシリコーン整泡剤などの整泡剤が、一般にプレポリマー100重量部当り、0.1〜3.0重量部、好ましくは0.2〜2.0重量部の割合で用いられることが好ましい。上記各成分以外にも、さらに充填剤、2価金属の酸化物または水酸化物、滑剤等を必要に応じて適宜配合して用いることができる。
【0027】
これらのアミン系触媒含有発泡剤および整泡剤は、生成プレポリマーに混合され、所定容積の金型を用いて注型成形することによってポリウレタン化反応が進行し、それを離型した後、好ましくは約80〜150℃で約5〜24時間程度二次架橋(アニール)することにより、高い靱性を有しかつハードセグメントの凝集が高く、耐屈曲疲労性にすぐれた発泡ポリウレタンエラストマー成形品を得ることができる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例について本発明を説明する。ここに記載された各実施例、比較例、参考例では、発泡ポリウレタンエラストマーが次のような条件下で使用され、成形された。
発泡ウレタン化反応に用いられるプレポリマー温度:約70〜80℃
発泡ウレタン化反応に用いられる発泡剤温度:約50〜60℃
金型温度:約50〜60℃
離型時間:約15〜20分間
二次架橋:120℃、24時間
成形は、成形密度0.5g/cm3のシート形状および自動車サスペンション用補助スプリング形状の評価用サンプルとして成形され、シート形状への成形は、60×150×30mmに成形されたブロックを二次加硫後に60×150×2mmの大きさにスライスすることにより行われた。
【0029】
実施例1
数平均分子量Mn 2,000、水酸基価56のエチレンアジペート系ポリエステルポリオール100重量部を120℃で溶融させた後、予め120℃に加熱した反応器に仕込み、撹拌しながらTODI 40重量部(NCO/OH当量比3.0)を加えて30分間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た。これとは別に、60℃で溶融させた数平均分子量Mn 2,000、水酸基価56のエチレンアジペート系ポリエステルポリオール3937重量部に、水150重量部、1,4-ブタンジオール150重量部、1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー製品TOYOCAT-DM70;反応定数比0.77×10-1)40重量部および整泡剤(東レ・ダウコーニングシリコーン製品SH193OIL)100重量部を加え、これらを2時間撹拌混合して発泡剤を得た。
【0030】
上記温度条件下で、ウレタンプレポリマー:発泡剤を100:26.5の重量比率で混合し、撹拌して発泡反応を行い、成形した後、二次架橋を行い、評価用サンプルを得た。
【0031】
比較例1
実施例において、アミン系触媒としてトリエチレンジアミン(エアープロダクツジャパン製品DABCO;反応定数比1.34×10-1)10重量部を用い、またウレタンプレポリマー:発泡剤重量比率を100:26.3に変更して、発泡反応および加硫を行い、評価用サンプルを得た。
【0032】
比較例2
実施例において、アミン系触媒として東ソー製品TOYOCAT D60;反応定数比3.00×10-1)40重量部を用いて、発泡反応および加硫を行い、評価用サンプルを得た。
【0033】
比較例3
実施例において、ウレタンプレポリマー成分のTODI量を30重量部に変更して用い、また発泡剤成分中エチレンアジペート系ポリエステルポリオールを用いず、アミン系触媒としての1,2-ジメチルイミダゾール量を35重量部に変更して用い、さらにウレタンプレポリマー:発泡剤重量比率を100:2.1に変更して、発泡反応および加硫を行い、評価用サンプルを得た。
【0034】
比較例4
比較例3において、アミン系触媒としてトリエチレンジアミン(DABCO)8重量部を用い、またウレタンプレポリマー:発泡剤重量比率を100:2.0に変更して、発泡反応および加硫を行い、評価用サンプルを得た。
【0035】
参考例
数平均分子量Mn 2,000、水酸基価56のエチレンアジペート系ポリエステルポリオール100重量部を120℃で溶融させた後、予め120℃に加熱した反応器に仕込み、撹拌しながらNDI 20重量部(NCO/OH当量比1.9)を加えて30分間反応させてウレタンプレポリマーを得た。これとは別に、水150重量部、1,4-ブタンジオール150重量部トリエチレンジアミン(DABCO)2重量部および整泡剤(SH1930IL)100重量部を2時間撹拌混合し、発泡剤を得た。
【0036】
ウレタンプレポリマー:発泡剤を100:1.5の重量比率で混合し、発泡反応および加硫を行い、評価用サンプルを得た。
【0037】
以上の各実施例、比較例および参考例で得られたシート形状の評価用サンプルを用いて、ガラス転移点、硬さ、常温および100℃での引張強さ、常温および100℃での破断時伸びおよび圧縮永久歪が測定され、また自動車サスペンション用補助スプリング形状の評価用サンプルを用いて、補助スプリング耐久性についての測定が行われた。
硬さ:スプリング式アスカーC型
引張強さ、破断時伸び:ASTM D412に対応するJIS K6261準拠(サンプル形状:ダンベル状3号形)
圧縮永久歪:ASTM D395に対応するJIS K6262準拠(13mm径、2mm厚シート3枚重ね、25%圧縮、80℃×70時間)
補助スプリング耐久性:10kN×1Hz×10万回圧縮後の亀裂有無で評価
亀裂なしを○、亀裂ありを×と評価し、亀裂が発生したもの
については亀裂発生時の圧縮回数を測定
【0038】
得られた結果は、配合比とともに次の表に示される。なお、各成分量は、ウレタンプレポリマー中のアジペートポリオール成分100重量部に対する重量部数を示している。
【0039】
因みに、発泡剤、アミン系触媒および整泡剤の重量部数は、次のようにして計算される。
プレポリマーXにおける各成分の配合量をxi、発泡剤Yにおける各成分の配合量をyiとし、X:Y=m:nの配合比としたとき、xi成分100重量部に対するyi成分の重量部数kiiは、次式によって算出される。
kii=(100×n×yi×Σxi)/(m×xi×Σyi)
【0040】
測定値に関しては、高温耐久性は、破断時伸びの高温時維持率と圧縮永久歪によって示され、高温時維持率は破損に対する製品耐久性に関係し、圧縮永久歪はへたりに対する製品耐久性に関係する。例えば、破断時伸びの高温時維持率が高く、高温環境下での実使用において破損し難い材料であっても、圧縮永久歪の値が大きく、へたり易い材料であれば、補助スプリングの形状を維持することができない。
【0041】
測定結果を、実施例および各比較例についてみると、本発明の特定のアミン系触媒を用いたことによる高温物性の改善効果は、発泡反応時に高分子量ポリオールを添加した場合に顕著であるが(実施例-比較例1)、高分子量ポリオールを添加しない場合には、高温時維持率のみに効果がみられるだけである(比較例3-4)。

比較例
実施例 参考例
〔組成〕
ウレタンポリマー
アジペートポリオール 100 100 100 100 100 100
TODI 40 40 40 30 30 −
NDI − − − − − 20
発泡剤
アジペートポリオール 33.37 33.37 33.37 − − −
H2O 1.27 1.27 1.27 0.96 0.96 0.68
1,4-ブタンジオール 1.27 1.27 1.27 0.96 0.96 0.68
アミン系触媒
ジメチルイミダゾール 0.34 − − 0.22 − −
トリエチレンジアミン − 0.08 − − 0.05 0.01
TOYOCAT D60 − − 0.34 − − −
整泡剤 0.85 0.85 0.85 0.64 0.64 0.45
〔測定項目〕
ガラス転移点(℃) -39 -38 -39 -36 -36 -34
引張強さ 74 75 74 74 75 73
常温(MPa) 〔A〕 5.6 5.5 5.2 5.3 5.4 6.2
100℃(MPa) 〔B〕 1.6 1.5 1.6 1.3 1.2 1.7
維持率(〔B〕/〔A〕;%) 29 27 31 25 22 27
破断時伸び
常温(%) 〔C〕 520 490 490 480 480 420
100℃(%) 〔D〕 430 400 300 280 270 350
維持率(〔D〕/〔C〕;%) 83 82 61 58 56 83
圧縮永久歪(%) 21 24 22 29 28 22
補助スプリング耐久性
(10万回圧縮)
破損の有無 ○ ○ ○ × × ○
亀裂発生時 (回) − − − 7000 7000 −
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明方法により得られた発泡ポリウレタンエラストマー成形物は、物理的架橋性に富んだ高次元構造を有しているため、繰返し圧縮により材料が発熱した環境に対しても強固なゴム弾性を維持しており、したがって高耐久機能が要求される自動車サスペンション部の補助スプリング材料などの自動車用弾性体部品として有効に使用される。
【0043】
こうした用途以外にも、例えばキャスタ、ロール、パッキン、シール材、防振部品、ボールジョイント等の機械・自動車・精密部品、シューソール、スキーブーツ、スノーチェーン等のスポーツ・レジャー用品、またコンベアベルト、キーボードシート、ガスケット、自動車配線等の電線、ロープ被覆などが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量Mnが500〜4000のポリオールおよび芳香族ジイソシアネートを反応させて得られる末端イソシアネート基含有プレポリマーに、水、分子量48〜200の低分子量グリコールおよび数平均分子量Mn 1000〜3000の高分子量グリコールの混合物よりなる発泡剤を撹拌混合し、発泡反応を行うに際し、1,2-ジメチルイミダゾール触媒を含有する発泡剤を用いて発泡反応を行うことを特徴とする発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法。
【請求項2】
芳香族ジイソシアネートとして3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネートが用いられる請求項1記載の発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法。
【請求項3】
末端イソシアネート基含有プレポリマー100重量部当り、水が0.1〜5.0重量部、低分子量グリコールが0.1〜5.0重量部、高分子量グリコールが0.5〜70重量部および1,2-ジメチルイミダゾールが0.02〜0.7重量部それぞれ用いられる請求項1または2記載の発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法。
【請求項4】
さらに、整泡剤が0.1〜3.0重量部用いられる請求項3記載の発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法。
【請求項5】
請求項1または4記載の方法により製造された発泡ポリウレタンエラストマー。
【請求項6】
自動車用弾性体部品として用いられる請求項5記載の発泡ポリウレタンエラストマー。
【請求項7】
自動車用弾性体部品が自動車サスペンション部の補助スプリングである請求項6記載の発泡ポリウレタンエラストマー。


【公開番号】特開2011−57894(P2011−57894A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210501(P2009−210501)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】