説明

発泡性キャンディ

【課題】良好な生産性及び保存安定性を保持しつつ、優れた発泡性を発揮できる発泡性キャンディを提供する。
【解決手段】本発明は、発泡性成分及び糖類を含有する発泡性キャンディであって、前記糖類100質量%中に、糖アルコールを98質量%以上含有し、かつ前記糖アルコール100質量%中に、エリスリトールを2〜18質量%含有する発泡性キャンディである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性キャンディに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発泡性キャンディは、砂糖等の糖類と水とを混合し、加熱により煮詰めて水分を蒸発させた後に香料等の添加物を配合してキャンディ生地を調製し、ここに発泡性成分を練り込み、押し型により切断・成型して製造される。かかる発泡性キャンディは、食した際に唾液等の水分によって、溶解すると同時に発泡性成分が分解され、口腔内にシュワシュワとした発泡感をもたらすこととなる。
【0003】
こうした発泡性キャンディとして、様々な配合処方のものが開発されている。例えば、特許文献1には、発泡性成分に加えてのど作用性成分を配合することによって、のどに対する作用効果が増強される、発泡性成分を含有するのどケア用アメが開示されている。また、特許文献2には、発泡性成分に加えて麦芽糖類を特定の量で含有することによって、良好な保存安定性及び生産性を有する発泡性キャンディが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−184号公報
【特許文献2】特開2004−16073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら発泡性キャンディに配合される有機酸や炭酸塩等の発泡性成分は、粉体状態でキャンディ生地に練り込むので、充分な発泡性を付与するためにその配合量を増大させると、キャンディ生地調製時の操作性が低下して調製しにくくなるおそれがあり、依然として改善の余地がある。
【0006】
本発明は、良好な生産性及び保存安定性を保持しつつ、優れた発泡感を発揮できる発泡性キャンディを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく種々検討した結果、糖類に含まれる糖アルコール中でのエリスリトール含有量を特定の量とすることで、発泡感が著しく向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、発泡性成分及び糖類を含有する発泡性キャンディであって、
前記糖類100質量%中に、糖アルコールを98質量%以上含有し、かつ
前記糖アルコール100質量%中に、エリスリトールを2〜12質量%含有する発泡性キャンディを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の発泡性キャンディによれば、特定の量で含有されるエリスリトールにより、味の低下を引き起こすことなく、発泡性成分と相まって強力な発泡感をもたらすことができる。また、調製時にキャンディ生地の良好な流動性を確保することができるので、発泡性成分をキャンディ生地中に非常に良好に分散させることができ、その結果、極めて優れた発泡感をもたらすことができる。加えて、調製が容易であるとともに保形性にも優れ、生産性の向上を図ることが可能である。さらに、調製時や保存時における熱や水分による分解や発泡を有効に低減して、優れた保存安定性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の発泡性キャンディは、発泡性成分及び糖類を含有する。かかる発泡性成分としては、有機酸と、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩とを含むのが好ましい。ここで、有機酸としては、25℃で固体の有機酸が好ましく、具体的には、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、マロン酸等が挙げられ、なかでも充分な発泡性かつ良好な発泡感を得る観点及び入手容易性の観点から、クエン酸、酒石酸が好ましく、特に、クエン酸が好ましい。
【0011】
炭酸塩及び炭酸水素塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられ、なかでも炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムが好ましく、特に、炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0012】
なお、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩としては、優れた発泡性を保持しつつ、良好な保存安定性の発揮及び為害性の低減化を図る観点から、その混合前平均粒子径を50〜100μm、好ましくは80〜100μmとするのがよい。ここで、平均粒子径とは質量基準の平均粒子径であり、質量基準の累積粒度分布で50%の粒子径として定義され、例えば、JIS Z 8801−1に規定する篩分け法に従って、ロータップ型篩振盪機を用いて測定した値である。
【0013】
本発明の発泡性キャンディ全量100質量%中における上記発泡性成分の含有量は、充分な発泡性を得る観点から、その合計量が、通常1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%であるのが望ましい。発泡性成分の含有量が上記範囲内であると、発泡性成分の練り込み時における作業性の低下を有効に防止することができ、キャンディ生地中における発泡性成分の分散性の向上を容易に図ることが可能となる。このように、本発明の発泡性キャンディでは、優れた発泡感を保持したまま、発泡性成分の配合量を低減することも可能となり、その結果、優れた発泡感を保持したまま、更に優れた生産性及び保存安定性を有する発泡性キャンディを実現することができる。
【0014】
本発明の発泡性キャンディに含有される糖類としては、砂糖、麦芽糖、ブドウ糖、オリゴ糖等のほか、糖アルコールが挙げられる。糖アルコールとしては、エリスリトール、マルチトール(還元麦芽糖水飴)、還元パラチノース(パラチニット(登録商標))、ラクチトール(還元乳糖)、還元水飴、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等が挙げられる。そして、上記発泡性キャンディは糖類100質量%中に、糖アルコールを98質量%以上、好ましくは98.5〜100質量%含有する。糖類中における糖アルコールの含有量が上記範囲内であると、キャンディ生地の調製が容易であるとともに良好な保存安定性を保持することができる。
【0015】
本発明の発泡性キャンディは、糖アルコール100質量%中に、エリスリトールを2〜18質量%、好ましくは3〜15質量%、より好ましくは7〜12質量%含有する。エリスリトールの含有量が上記範囲内であると、キャンディ生地に良好な流動性を付与することができるので、調製作業が容易になるとともに、発泡性成分をキャンディ生地中に極めて良好に分散させることが可能となる。また、エリスリトール自体がもたらす清涼感が発泡性成分による発泡感を増強させる効果を発揮し、キャンディの発泡性を顕著に向上させることができる。さらに、キャンディ生地のベタツキを有効に抑制しつつ、良好な保形性と保存安定性とを保持することもできる。
【0016】
上記発泡性キャンディは、エリスリトール以外の糖アルコールとして、還元パラチノースを含有するのが好ましい。還元パラチノースを含有する場合、その含有量は、糖アルコール100質量%中に通常70〜98重量%、好ましくは75〜95重量%、より好ましくは80〜90重量%であるのが望ましい。還元パラチノースの含有量が上記範囲内であると、調製をより良好に行うことができるとともに、キャンディ生地中における発泡性成分の分散性をさらに向上させることができるため、発泡感のさらなる向上が期待される。また、還元パラチノースを含有することによるこれらの効果をより有効に発揮させる観点から、上記還元パラチノースと上記エリスリトールとの含有量の比(還元パラチノースの含有量/前記エリスリトールの含有量(質量比))は、好ましくは5〜30であり、より好ましくは6〜20、最も好ましくは7〜10であるのが望ましい。
【0017】
さらに、エリスリトール以外の好適な糖アルコールとして、還元パラチノースのほかに、流動性や味の点で他の糖アルコールと比較して好ましいマルチトールが挙げられ、その含有量は糖アルコール100質量%中に、20質量%以下、好ましくは15質量%以下であると良い。
【0018】
さらに、本発明の発泡性キャンディには、所望により、スペアミント油、ペパーミント油、ウインターグリーン油、サッサフラス油、セージ油、ユーカリ油、マヨナラ油、肉桂油、タイム油、レモン油及びオレンジ油等の天然香料や各種合成香料;サッカリンやスクラロース等の甘味料;ベニコウジ色素、アントシアニン系色素、クチナシ色素及びカロテン色素等の着色料を含有させてもよい。
【0019】
本発明の発泡性キャンディは、ドロップ、アメ等のハードキャンディの形態を有する。本発明の発泡性キャンディの製造法は、略均一構造の場合は常法によりキャンディ生地の調製及び成形を行えば良い。
【0020】
具体的な調製及び成形方法としては、例えば、糖アルコール類を180〜200℃にて加熱溶融し、次に加熱を停止して温度を低下させ、該キャンディ生地が100℃以下になった時点で、糖アルコール以外の糖類、及び発泡性成分を添加混合してキャンディ生地を調製し、得られたキャンディ生地を適宜成形する、という方法を採用することができる。なお、発泡性成分のうち、有機酸はキャンディ生地が100℃以下になった時点で添加し、さらに、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩は70℃以下になった時点で添加混合する。また、香料、甘味料、着色料、のど作用性成分等を配合する場合、各々の成分の特性に合わせ、適切なタイミングで添加混合するとよい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
[実施例1〜4、及び比較例1〜5]
表1〜2に示す組成に従って各キャンディ生地を調製し、発泡性成分が成形後のキャンディ生地中に略均一に含有される球状の発泡性キャンディを得た。具体的には、まず、糖アルコール類を180℃で煮詰めてキャンディ生地を調製し、次いでこれを冷却し、100℃以下になった時点で香料と甘味料(スクラロース)を添加して、混合した。続いて、クエン酸を添加して混合し、70℃以下になった時点で炭酸水素ナトリウムを添加し、混合した。得られたキャンディ生地を所定量に切断し、球状に成型した。
なお、用いた炭酸水素ナトリウムの添加前の平均粒子径をJIS Z 8801−1に規定する篩分け法に従って、ロータップ型篩振盪機で測定したところ、90μmであった。
【0023】
[評価方法]
得られた各キャンディについて、以下の方法に従い、生産性、保存安定性、発泡感、及び味の各評価を行った。結果を表1〜2に示す。
【0024】
(1)生産性:キャンディ成型後30〜60分経過しキャンディ温度が室温まで低下した時の外観を観察し、保形性を評価した。なお、保形性が良好であるほど、生産性が高いものと判断した。
○:球型を保っている
△:成型直後に比べて、球型が崩れている(軟化によりドーム状に変形)
×:軟化が激しく、成型が困難、または成型後すぐに球型が崩れている
【0025】
(2)保存安定性:アルミラミネートフィルムで各キャンディを個別包装し、30℃室内で6ヶ月間保存する前後の球径をノギスで測定した。
○:変化率が5%以内
×:変化率が5%超
【0026】
(3)発泡感:4人で試食し、発泡感を評価し、最も人数の多い評価を表1、2に示した。
◎:比較例1に比べて発泡感をかなり強く感じる
○:比較例1に比べて発泡感を強く感じる
×:比較例1と比べて発泡感が同程度又はそれ以下
【0027】
(4)味:4人で試食し、味を評価し、最も人数の多い評価を表1、2に示した。
○:比較例1に比べて発泡感を強く感じながらも、良好な味であった。
×:比較例1と比べて発泡感が同程度又はそれ以下であり、物足りない味であった。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
上記結果によれば、実施例1〜4のキャンディは、比較例1〜5のものと比べ、優れた発泡感を発揮しながら、良好な生産性及び保存安定性を保持し、味も良好であることがわかる。特に、比較例4ではキャンディが軟化し、変形してしまい、さらにこの軟化に伴って発泡性成分の分解が起こったため、試食時の発泡感、味も良好ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性成分及び糖類を含有する発泡性キャンディであって、
前記糖類100質量%中に、糖アルコールを98質量%以上含有し、かつ
前記糖アルコール100質量%中に、エリスリトールを2〜18質量%含有する発泡性キャンディ。
【請求項2】
前記糖アルコール100質量%中に、還元パラチノースを70〜98質量%含有する請求項1に記載の発泡性キャンディ。
【請求項3】
前記糖アルコール中における、前記還元パラチノースの含有量/前記エリスリトールの含有量(質量比)が、6〜30である請求項2に記載の発泡性キャンディ。
【請求項4】
前記発泡性成分が、有機酸と、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩とを含み、
発泡性キャンディ全量100質量%中に、前記発泡性成分を1〜30質量%含有する請求項1〜3の何れか一項に記載の発泡性キャンディ。