説明

発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、予備発泡粒子及び発泡成形体

【課題】発泡成形体の耐割れ性に優れ、発泡剤の保持性に優れて長期に渡って高い発泡性を維持する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、その製造方法及び発泡成形体の提供。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系モノマーを含浸重合してポリスチレン系樹脂を生成させて得られるポリスチレン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含有させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、前記スチレン系モノマーがポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して140〜600質量部使用されると共に、樹脂粒子表面から中心を通って二分割した切片をテトラヒドロフランに浸漬してポリスチレン系樹脂成分を抽出した後、該切片の切断面を撮影した走査型電子顕微鏡画像において平均厚みが15〜150μmの表皮層が観察されると共に揮発性発泡剤を5.5〜13.0質量%含有することを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(ビーズ)とその製造方法、予備発泡粒子及び発泡成形体に関する。更に詳しくは、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、表皮層(シェル)を有するコア−シェル構造(図1参照)をしており、発泡剤の保持性が良いので長期に渡って高い発泡性を維持すると共に、ポリオレフィン系樹脂の配合比率が小さくても、耐割れ性に優れた発泡成形体を得ることができる。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン樹脂粒子にプロパン、ブタン、ペンタンなどの揮発性発泡剤を含浸することにより、発泡能が付与された発泡性ポリスチレン樹脂粒子が得られる。発泡性ポリスチレン樹脂粒子は、発泡剤の保持性が良好で、室温もしくは冷蔵状態で保管が可能で、適時にこれを加熱して予備発泡粒子とし、これを成形機の成形型内に充填して加熱して発泡成形体とすることが出来る。この発泡成形体は断熱性、緩衝性、軽量性に優れていることから、魚箱などの食品容器、家電製品などの緩衝材、建材用断熱材などとして広く用いられている。しかし、このポリスチレン樹脂発泡成形体(EPS)は、衝撃などによって割れやすいという問題があり、用途の拡大には限界があった。
【0003】
一方、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂からなる発泡成形体は、ポリスチレン樹脂発泡成形体の特長に加えて、柔軟性があって、割れにくい(耐割れ性に優れる)ことが知られている。しかし、ポリオレフィン系樹脂は発泡剤の保持性に劣ることから、発泡性樹脂粒子の状態で保管することはできず、しかも、発泡成形条件を精密に制御する必要があるため、製造コストが高くつくという問題がある。
【0004】
前記問題点を解決するために、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂を複合化した発泡成形体が提案されている。
【0005】
特許文献1(特開昭54−119563号公報)には、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂の欠点を互いに補完して両者の特性を両立させることを目的として、表面層が発泡ポリオレフィン系樹脂からなり芯部が発泡ポリスチレン系樹脂からなる二次発泡可能な発泡粒子が提案されている。
【0006】
また特許文献1には、この発泡粒子によれば、発泡剤が芯部の発泡ポリスチレン系樹脂に保持されているので、成形性が優れていると記載されている。更に、この発泡樹脂粒子から得られる発泡成形体は、剛性、柔軟性及び低温特性が優れていると記載されている。
【0007】
しかしながら、本発明者らが特許文献1に記載された樹脂粒子を追試したところ、ポリスチレン系樹脂粒子がポリオレフィン系樹脂で被覆されてなる樹脂粒子に発泡剤を含浸させて直ちに予備発泡しても、内部のポリスチレン系樹脂が大きく発泡するのみで、ポリオレフィン系樹脂は僅かに発泡するか又は発泡しなかった。また、その結果、発泡の過程で、表面のポリオレフィン系樹脂層とポリスチレン系樹脂との界面で分離し、目的とする発泡成形体を得ることは出来なかった。また、表面層からの発泡剤の逸散が顕著であり、発泡性樹脂粒子の状態での保管は困難であった。従って、この発泡粒子は工業的規模で実施されるには至っていない。
【0008】
前記方法以外に、水性媒体中でポリエチレン系樹脂粒子にスチレン系モノマーを含浸重合させることで、ポリエチレン系樹脂でポリスチレン系樹脂を改質した発泡性樹脂粒子がいくつか提案されている。
【0009】
例えば、本発明者らは、特許文献2(特公平7−45590号公報)において、含水二酸化けい素を0.01〜5質量%含有するスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に易揮発性発泡剤を含浸させてなる発泡性スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を提案している。
【0010】
しかしながら、改質した発泡性樹脂粒子およびその発泡成形体の性質は、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との比率に大きく影響を受ける。即ち、ポリエチレン系樹脂の比率が高い程、発泡成形体の耐割れ性は向上するが、発泡剤の保持性は急激に低下して発泡性樹脂粒子の発泡成形可能期間(以後、ビーズライフと記す。)は短くなり、耐割れ性とビーズライフの両立は困難であった。
【0011】
また、特許文献3(特開2006−70202号公報)において、無機核剤を含む融点95〜115℃のポリエチレン系樹脂成分100質量部に対して、スチレン系樹脂成分300〜1000質量部と揮発性発泡剤とを含有し、かつ、粒子表面から少なくとも5μmまでの表層部は0.8μm以下のスチレン系樹脂粒子が分散された状態であるスチレン改質ポリエチレン系発泡性樹脂粒子を提案している。
【0012】
前記改質発泡性樹脂粒子は、スチレン系樹脂成分がポリエチレン系樹脂成分より過剰に多いことにより、ビーズライフは改善しているものの耐割れ性は不充分であり、本発明の目的を達し得ない。
【0013】
加えて、本発明者らは、特許文献4(国際公開WO2005/021624号パンフレット)にポリオレフィン系樹脂で改質したポリスチレン系樹脂の発泡粒子とその製造方法を提案している。
【0014】
前記発泡粒子の基材樹脂粒子は、スチレン系モノマーの含浸重合条件の調整、すなわち撹拌所要動力を所定範囲内に調整すると共に、ポリオレフィン系樹脂粒子中におけるスチレン系モノマーの含有量を所定量に調整によって製造したものである。ポリオレフィン系樹脂粒子の中心部から表面に向かってスチレン系モノマー量が徐々に減少した状態とし、重合の進行と共にポリオレフィン系樹脂粒子中に生成したポリスチレン系樹脂に、スチレン系モノマーが逐次吸収されながら更に重合していくので、ポリオレフィン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂の生成に伴って中心部に近づけば近づく程、ポリスチレン系樹脂が豊富な状態になり、表面はポリオレフィン系樹脂がより高い比率で存在した状態となっている。
【0015】
前記発泡粒子において、その中心部ではポリスチレン系樹脂が高比率で含有されている一方、表面近傍部では、ポリオレフィン系樹脂が高比率で含まれかつポリスチレン系樹脂がその割合を粒子表面に近づくにつれて徐々に減少させつつポリオレフィン系樹脂中に微分散した状態となって、粒子表面はポリスチレン系樹脂が殆どない状態となっている。
【0016】
得られた発泡成形体の表面全面は、予備発泡粒子の表面近傍部に高比率で含有されているポリオレフィン系樹脂で覆われた構造となっていることから、優れた耐割れ性と共に耐薬品性をも備えている。
【0017】
しかしながら、この技術をもってしても発泡剤の保持性が低下し易い傾向は変わらず、発泡性樹脂粒子のビーズライフを長く維持することは難しく、依然として、耐割れ性とビーズライフの両立は容易でなかった。
【0018】
また、特許文献5(特開平2−284905号公報)には、導電性のカーボン粒子を含有するオレフィン系樹脂粒子を水に分散させた水性媒体中にスチレン系モノマーを供給して懸濁重合し、揮発性膨張剤を粒子に含浸させてカーボン含有スチレン改質発泡性オレフィン系樹脂粒子を製造するにあたり、水溶性の重合禁止剤を用いる方法が開示されている。
【0019】
水溶性重合禁止剤は水性媒体中に溶解し、カーボン含有オレフィン系樹脂粒子に吸収されつつある粒子表面付近のスチレンを含有するビニル単量体の重合を抑える。その結果として、得られるスチレン改質発泡性オレフィン系樹脂粒子の表面部分は、粒子中央部分に比べてポリスチレンの量が少なくなり、逆に、表面部分の方が導電性のカーボンの存在量が多いことから、導電性の優れたスチレン改質オレフィン系樹脂粒子が得られるとされている。
【0020】
前記のように、水溶性重合禁止剤はポリオレフィン系樹脂粒子の表面におけるスチレン系モノマーの重合を抑制する効果があり、その意味で発泡成形体の黒色度や導電性を改善することは可能である。しかしながら、スチレン系モノマーの重合の抑制はごく表面のみにとどまるので耐割れ性の改善効果は不充分である。よって、改質樹脂粒子中のポリオレフィン系樹脂の比率を下げることは出来ないので、発泡剤の保持性を高められず、同様に本発明の目的を達し得ない。
【特許文献1】特開昭54−119563号公報
【特許文献2】特公平7−45590号公報
【特許文献3】特開2006−70202号公報
【特許文献4】WO2005/021624号パンフレット
【特許文献5】特開平2−284905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、従来の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において課題であった発泡成形体の耐割れ性に優れると共に、発泡剤の保持性に優れて長期に渡って高い発泡性を維持する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、その製造方法及び発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この研究過程において、本発明者らは、ポリオレフィン系樹脂を主体とした表皮層(シェル)を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡成形体は優れた耐割れ性を示し、改質樹脂におけるポリオレフィン系樹脂成分を少なく配合できることから、ビーズライフも延長されていることを見出した。さらに、該発泡性樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂粒子にラジカル捕捉剤を特定量含有させると同時に、該ポリオレフィン系樹脂粒子中にフェニルアセチレン系化合物の含有量が特定量以下のスチレン系モノマーを含浸重合することで製造できることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0023】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系モノマーを含浸重合してポリスチレン系樹脂を生成させて得られるポリスチレン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含有させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、前記スチレン系モノマーがポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して140〜600質量部含浸重合され、樹脂粒子表面から中心を通って二分割した切片をテトラヒドロフランに浸漬してポリスチレン系樹脂成分を抽出した後、該切片の切断面を撮影した走査型電子顕微鏡画像において平均厚みが15〜150μmの表皮層が観察され、且つ揮発性発泡剤が5.5〜13.0質量%含有されたことを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
【0024】
また本発明は、1)ポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、造粒してポリオレフィン系樹脂粒子とする工程と、2)水性媒体中に該ポリオレフィン系樹脂粒子を分散させ、スチレン系モノマーを該ポリオレフィン系樹脂粒子に含浸させながら油溶性ラジカル重合開始剤の存在下にて重合させ、重合の途中もしくは終了後に揮発性発泡剤を含浸させる工程とを含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
工程1)のポリオレフィン系樹脂の溶融押出しが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対してラジカル捕捉剤0.005〜0.5質量部の存在下で行われ、かつ工程2)の重合は、ポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して、フェニルアセチレンの含有量が150ppm以下のスチレン系モノマーを140〜600質量部用いることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0025】
また本発明は、前述した本発明に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡して得られる嵩密度が0.015〜0.25g/cmの予備発泡粒子を提供する。
【0026】
また本発明は、前述した本発明に係る予備発泡粒子を型内成形した発泡成形体を提供する。
【0027】
また本発明は、1)ポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、造粒してポリオレフィン系樹脂粒子とする工程であって、前記ポリオレフィン系樹脂の溶融押出しが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対してラジカル捕捉剤0.005〜0.5質量部の存在下で行われる工程と、2)水性媒体中に該ポリオレフィン系樹脂粒子を分散させ、スチレン系モノマーを該ポリオレフィン系樹脂粒子に含浸させながら油溶性ラジカル重合開始剤の存在下にて重合させ、重合の途中もしくは終了後に揮発性発泡剤を含浸させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程であって、前記重合は、ポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して、フェニルアセチレンの含有量が150ppm以下のスチレン系モノマーを140〜600質量部用いる工程と、3)前記得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させる工程とを含むことを特徴とする予備発泡粒子の製造方法を提供する。
【0028】
また本発明は、1)ポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、造粒してポリオレフィン系樹脂粒子とする工程であって、前記ポリオレフィン系樹脂の溶融押出しが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対してラジカル捕捉剤0.005〜0.5質量部の存在下で行われる工程と、2)水性媒体中に該ポリオレフィン系樹脂粒子を分散させ、スチレン系モノマーを該ポリオレフィン系樹脂粒子に含浸させながら油溶性ラジカル重合開始剤の存在下にて重合させ、重合の途中もしくは終了後に揮発性発泡剤を含浸させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程であって、前記重合は、ポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して、フェニルアセチレンの含有量が150ppm以下のスチレン系モノマーを140〜600質量部用いる工程と、3)前記得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を得る工程と、4)前記得られた予備発泡粒子を型内成形させる工程とを含むことを特徴とする発泡成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、従来の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の課題であったビーズライフが改善されており、耐割れ性に優れた発泡成形品を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
かくして本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系モノマーを含浸重合してポリスチレン系樹脂を生成させて得られるポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含有させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、前記スチレン系モノマーがポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して140〜600質量部含浸重合され、樹脂粒子表面から中心を通って二分割した切片をテトラヒドロフラン(THF)に浸漬してポリスチレン系樹脂成分を抽出した後、該切片の切断面を撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)画像において、平均厚みが15〜150μmの表皮層が観察され、且つ揮発性発泡剤が5.5〜13.0質量%含有されたことを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提供される。
【0031】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系モノマーを含浸重合してポリスチレン系樹脂を生成させて得られるポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含有させてなり、ポリスチレン系樹脂をポリオレフィン系樹脂で改質した樹脂を意味する。また、以下の記載において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を単に発泡性樹脂粒子と称する。
【0032】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に用いるポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、公知の重合方法で得られた樹脂が使用できる。また、ポリオレフィン系樹脂は、架橋していてもよい。例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。これらの低密度ポリエチレンは、0.90〜0.94g/cmの密度を有することが好ましく、0.91〜0.94g/cmの密度を有することがより好ましく、0.91〜0.93g/cmの密度を有することが最も好ましい。
【0033】
本発明において、前記ポリオレフィン系樹脂としては、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体であり、ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体又はスチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体であり、スチレン系モノマーは、スチレン、スチレンを主成分とするアクリル酸アルキルエステルとのコモノマーもしくはスチレンを主成分とするメタクリル酸アルキルエステルとのコモノマーであることがより好ましい。
【0034】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に用いるポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレンもしくはスチレンを主成分とし、スチレンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体である。他のモノマーとしては、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が例示される。これら他のモノマーは、実質的にポリスチレン系樹脂に対して30質量%を超えない範囲で使用してもよい。
【0035】
本発明において、ポリスチレン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して140〜600質量部の範囲のスチレン系モノマーから形成される。好ましいスチレン系モノマーの配合量は、150〜450質量部である。
【0036】
スチレン系モノマーの配合量が600質量部を超えると、予備発泡粒子を型内成形させて得られる発泡成形体の耐割れ性が低下する。一方、配合量が140質量部未満であると、耐割れ性は大幅に向上するが、発泡性樹脂粒子の表面からの発泡剤の逸散が速くなる傾向にあり、発泡剤の保持性が低下することによって発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のビーズライフは短くなる。
【0037】
更に、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(以後、発泡性樹脂粒子と記す。)は、表面から中心を通って二分割した切片をテトラヒドロフラン(THF)に浸漬してポリスチレン系樹脂成分を抽出した後、該切片の切断面を撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)画像において、平均厚みが15〜150μmの表皮層が観察される。
【0038】
前記測定方法をより具体的に説明すると、先ず、100mLの三角フラスコに50mLのテトラヒドロフラン(THF)を入れ、室温(20〜23℃)で2時間以上放置する。次に、カッターを使用して発泡性樹脂粒子を粒子の表面から中心を通って二分割する。そして、二分割した切片の一方を三角フラスコ内に入れてTHFに4時間浸漬した。次に、80メッシュの金網で切片とTHFをろ過し、金網上の切片はそのまま室温で4時間以上放置して切片中のTHFを自然乾燥させる。その後、金網から切片を取り出して、走査型電子顕微鏡(SEM)により、切片の切断面の画像を撮影(500〜1000倍)して表皮層の厚みを測定する。5個の切片の使用し、これらの平均値を算出して平均厚み(μm)とする。
【0039】
表皮層の平均厚みが15μm未満であると、目的とする耐割れ性とするにはポリオレフィン系樹脂の比率を高くする必要があり、その結果、発泡剤の保持性は低下してビーズライフは短くなる。また、150μmを超えると、耐割れ性は大幅に向上するが、発泡性樹脂粒子の表面からの発泡剤の逸散が多くなる傾向にあり、かえってビーズライフは短くなる。加えて発泡粒子表面からの発泡剤の逸散も顕著になることにより、型内での成形において粒子同士の融着が悪くなって耐割れ性が低下したり、収縮等による発泡成形体の外観の仕上がり状態が悪くなったりする傾向もある。好ましい表皮層の平均厚みとしては20〜100μmである。
【0040】
本発明の発泡性樹脂粒子は、前記特許文献4に記載された発泡粒子の基材樹脂粒子と類似してはいるが、その樹脂構造において本質的に異なる。特許文献4に記載された発泡粒子の基材樹脂粒子は、その中心部ではポリスチレン系樹脂が高比率で含有されている一方で、粒子表面に近づくにつれて徐々にポリスチレン系樹脂の割合が減少して、表面近傍部ではポリオレフィン系樹脂が高比率で含まれた構造(傾斜構造)となっているのに対して、本発明の発泡性樹脂粒子は、中心部よりもポリオレフィン系樹脂の比率が高い表皮層が粒子本体と明瞭に区別されているような構造(コア−シェル構造)をなしている(図1、図2参照)。
【0041】
この特異な構造により、得られる発泡成形体の耐割れ性を含めた物性強度は、更に改善される。その結果、発泡剤の保持性に劣るポリオレフィン系樹脂の比率をより小さく出来るので、発泡性樹脂粒子のビーズライフの延長も可能となる。
【0042】
本発明の発泡性樹脂粒子の表皮層(シェル)と表皮層以外の内部(コア)とは何れもポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とから構成されるが、表皮層と内部との境界で、構成樹脂の比率が大きく異なることが前記電子顕微鏡画像で明確に判る(図3参照)。
【0043】
すなわち、内部はポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂が相分離して微分散した構造(図5参照)であるのに対して、表皮層はポリオレフィン系樹脂に直径1〜5μmのポリスチレン系樹脂が粒子状に少量分散しているのみで、微分散状態は観察されない(図4参照)。
【0044】
従って、表皮層の主成分はポリオレフィン系樹脂であるが、ポリオレフィン系樹脂が100%ではなく、ポリスチレン系樹脂が分散しているために表面もよく発泡し、特許文献1の発泡性樹脂粒子とは全く異なった性状を示す。
【0045】
一方、従来技術のものは表皮層と内部との境界が不明瞭であって(図6、図7参照)、表皮層はポリオレフィン系樹脂にポリスチレン系樹脂が微分散(THF処理後は0.5μm程度の微細な無数の窪みとして観察される。)した状態となっている(図8参照)。
【0046】
本発明の発泡性樹脂粒子は揮発性発泡剤を含有する。揮発性発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ジメチルエーテル等の発泡剤が挙げられる。揮発性発泡剤は、単独で用いられても併用されてもよい。また、シクロヘキサンやシクロペンタン、ヘキサンなどを少量併用してもよい。特にペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタンの単独または混合物も含む)が好ましい。これら揮発性発泡剤の含有量としては、発泡性樹脂粒子に対して5.5〜13.0質量%である。揮発性発泡剤の含有量が5.5質量%未満であると、発泡性樹脂粒子の発泡性が低下し、嵩密度の低い高発泡倍率の予備発泡粒子が得られにくくなると共に、この予備発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体は融着率が低下し、耐割れ性が低下する。一方、13.0質量%を超えると、嵩密度0.015g/cm未満の高発泡倍率の予備発泡粒子も得られるが、気泡サイズが過大となり易く、成形性が低下したり、得られる発泡成形体の圧縮、曲げなどの強度特性が低下する。好ましい揮発性発泡剤の含有量は、6.0〜12.0質量%の範囲である。
【0047】
本発明の発泡性樹脂粒子の平均粒子径は800〜2400μmである。平均粒子径が800μmを下回ると、後述するポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、造粒してポリオレフィン系樹脂粒子とする時の収率が極端に悪化してコストアップが避けられないのに加え、発泡剤の保持性が低下してビーズライフが短くなる傾向を有するため好ましくなく、2400μmを越えると、複雑な形状をした発泡成形体を成形する際、成形型への充填性が悪くなる傾向を示す。好ましい平均粒子径は1200〜2000μmである。
【0048】
次に、前述した発泡性樹脂粒子を製造するために特に好ましい、本発明の発泡性樹脂粒子の製造方法を説明する。
本発明の製造方法は、1)ポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、造粒してポリオレフィン系樹脂粒子とする工程と、2)水性媒体中に該ポリオレフィン系樹脂粒子を分散させ、スチレン系モノマーを該ポリオレフィン系樹脂粒子に含浸させながら油溶性ラジカル重合開始剤の存在下にて重合させ、重合の途中もしくは終了後に揮発性発泡剤を含浸させる工程とを含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
工程1)のポリオレフィン系樹脂の溶融押出しが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対してラジカル捕捉剤0.005〜0.5質量部の存在下で行われ、かつ工程2)の重合は、ポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して、フェニルアセチレンの含有量が150ppm以下のスチレン系モノマーを140〜600質量部用いることを特徴としている。
【0049】
本発明の製造方法においては、先ず、押出機を使用して前記ポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、水中カット、ストランドカットなどにより造粒して微小ペレット状のポリオレフィン系樹脂粒子(以後、マイクロペレットとも記す。)を作製する。通常、使用するポリオレフィン系樹脂はペレット状またはグラニュラー状である。
【0050】
この際、予めポリオレフィン系樹脂にラジカル捕捉剤を添加しておくか、もしくは溶融押出しと同時に添加することにより、マイクロペレット中に均一にラジカル捕捉剤を含有させることが出来る。該マイクロペレットの形態は特に限定されず、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状等が挙げられる。
【0051】
次に、マイクロペレットを重合容器内の水性媒体中に分散させ、スチレン系モノマーを該マイクロペレットに含浸させながら油溶性ラジカル重合開始剤の存在下にて重合させる。油溶性ラジカル重合開始剤は、単独で、またはスチレン系モノマーやイソパラフィンなどの溶剤に溶解・分散させて、水性媒体に添加する。
【0052】
この際、スチレン系モノマーと比べて分子量の大きい油溶性ラジカル重合開始剤は、マイクロペレットの表面にとどまり易く、マイクロペレットの内部よりは表面付近でスチレン系モノマーの重合が起こり易い。
例えば、油溶性ラジカル重合開始剤として好適に使用できるジベンゾイルパーオキサイドの分子量は242であり、スチレン(同104)の約2倍となっている。
【0053】
しかしながら、マイクロペレットにラジカル捕捉剤が含有されていると、マイクロペレットの表面付近におけるスチレン系モノマーの重合は抑制されるので、その結果、表面より内部での重合が優先されるようになる。
【0054】
本発明の特徴となる成分であるラジカル捕捉剤としては、重合禁止剤(重合抑制剤を含む)、連鎖移動剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤などのラジカルを捕捉する作用を有する化合物で、水に溶解し難いのものが好ましい。
【0055】
重合禁止剤としは、t−ブチルハイドロキノン、パラメトキシフェノール、2,4−ジニトロフェノール、t−ブチルカテコール、sec−プロピルカテコール、N−メチル−N−ニトロソアニリン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリフェニルフォスファイト、トリス(ノニルフェニルフォスファイト)、トリエチルフォスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)フォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニルモノデシルフォスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)フォスファイト、ジラウリルハイドロゲンフォスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイトなどのフェノール系重合禁止剤、ニトロソ系重合禁止剤、芳香族アミン系重合禁止剤、亜リン酸エステル系重合禁止剤、チオエーテル系重合禁止剤などが例示される。
【0056】
また、連鎖移動剤としては、β−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレートなどが例示される。
【0057】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルジベンゾイルパーオキサイドプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジフォスフォナイト、ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどのフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などが例示できる。
【0058】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネートなどが例示できる。
【0059】
前記ラジカル捕捉剤の中でも特にフェノール系酸化防止剤が好ましい。これを溶融押出し時に存在させることで、溶融押出時の高温によるポリオレフィン系樹脂の熱劣化(分子量低下、ゲル化、黄変、炭化物の生成など)も防止できるからである。
【0060】
前記ラジカル捕捉剤は、溶融押出の過程でその一部が消費(酸化など)された後、マイクロペレット中に均一に存在することになる。
【0061】
前記ラジカル捕捉剤の使用量としては、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.005〜0.5質量部である。0.005質量部未満であると、表層付近でのスチレン系モノマーの重合を抑えられないので、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする表皮層は15μm未満の厚みとなる。一方、0.5質量部を超えると、マイクロペレット内部でのスチレン系モノマーの重合も抑制されるので、重合時間が大幅に遅れて生産性は低下するだけでなく、樹脂粒子にはスチレン系モノマーが多く残留する傾向にある。
【0062】
前記ポリオレフィン系樹脂は他に、タルク、珪酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体等の発泡核剤、ヘキサブロモシクロドデカン、トリアリルイソシアヌレート6臭素化物等の難燃剤、カーボンブラック、酸化鉄、グラファイト等の着色剤などを含んでいてもよい。
【0063】
本発明の製造方法において用いる水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂粒子が分散されている水性媒体中、スチレン系モノマーをポリオレフィン系樹脂粒子中に含浸させながら油溶性ラジカル重合開始剤の存在下にて重合させてポリスチレン系樹脂粒子を得る。
【0064】
この際、使用するスチレン系モノマーとしては、フェニルアセチレンの含有量が150ppm以下のスチレン系モノマーに限定される。前記ラジカル捕捉剤を均一に含有するマイクロペレットに特定のスチレン系モノマーを含浸重合した後、発泡剤を添加することで、本発明の目的とする表皮層(シェル)を有するコア−シェル構造の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることが可能となる。
【0065】
本発明のスチレン系モノマーの主成分であるスチレンの製造方法としては、ベンゼンをエチレンと反応させてエチルベンゼンを形成した後、このエチルベンゼンをEB脱水素装置中で脱水素してスチレンを得る方法が主に採用されている。また、一部では、α−フェニルエチルアルコールを脱水してスチレンを得る方法も採用されている。
【0066】
α−フェニルエチルアルコールを脱水する方法では、実質的にフェニルアセチレンを含まないスチレンが得られるが、エチルベンゼンを脱水素する方法では、エチルベンゼンが1段階余計に脱水素されてフェニルアセチレンが副生される。その結果、脱水素装置からの生成物はスチレン、エチルベンゼン及び微量のフェニルアセチレンを含む。エチルベンゼンは蒸留などの方法により容易に低減できるが、フェニルアセチレンは沸点141〜142℃であり、スチレンの沸点145℃と極めて近接しているので、蒸留による分離は困難である。
【0067】
フェニルアセチレンの分子量はスチレンより僅かに小さく、水性媒体中に添加されたスチレンと共にマイクロペレット中に吸収される。しかしながら、スチレン系モノマーのフリーラジカル重合においては、フェニルアセチレンが存在すると、それが連鎖移動剤として働くのでスチレンモノマーの反応速度を低下させる。
【0068】
従って、マイクロペレット内部では前記ラジカル捕捉剤に加えてフェニルアセチレンも存在することになり、スチレン系モノマーのポリスチレン系樹脂への転化速度は遅くなり、順次、水性媒体中に添加されるスチレン系モノマーは水性媒体中に浮遊し易くなる傾向となる。その結果、かえってマイクロペレット表面での重合も起こり易くなる。特にフェニルアセチレンの相対的濃度が上昇する重合の後半ほどこの傾向は強くなると考えられる。
【0069】
本発明で使用するスチレン系モノマーは、前記のようにフェニルアセチレン含有量が少ないほど好ましい結果を招く。その意味で、α−フェニルエチルアルコールを脱水する方法で製造された、実質的にフェニルアセチレンを含まないスチレンを使用することが特に好ましい。α−フェニルエチルアルコールを工業的に製造する方法として、ハルコン法プロセスが知られている。
【0070】
尚、エチルベンゼンを脱水素してスチレンを製造する方法におけるフェニルアセチレンを低減する方法としては、(1)スチレンをアルミナ,活性アルミナ,シリカゲル,活性炭などの無機物質で処理する方法、(2)スチレンを有機アルミニウムと接触処理し、次いで前記無機物質で処理する方法、(3)スチレンを有機アルミニウムと接触処理し、次いで蒸留する方法などを例示できる。
【0071】
本発明で使用するスチレン系モノマーの使用量は、ポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して140〜600質量部である。スチレン系モノマーの使用量が600質量部を超えると、ポリオレフィン系樹脂粒子に含浸されずに、ポリスチレン系樹脂単独の粒子が発生するため好ましくない。加えて、予備発泡粒子を型内成形させて得られる発泡成形体の耐割れ性が低下するだけでなく、耐薬品性も低下するため好ましくない。
【0072】
一方、スチレン系モノマーの使用量が140質量部未満であると、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡剤を保持する能力が低下する場合があり、高発泡化も出来なくなるので好ましくない。また、発泡成形体の剛性も低下するため好ましくない。
【0073】
ここで、スチレン系モノマーの含浸及び重合は、ほぼ同時に進行させることが好ましい。この場合、ポリオレフィン系樹脂粒子中のスチレン系モノマーの含有量が0〜35質量%に維持されるようにスチレン系モノマーの添加速度を調整したり、重合温度を調整して、含浸及び重合することが好ましい。含浸を行った後に重合を行う場合、ポリオレフィン系樹脂粒子の表面近傍でのスチレン系モノマーの重合が起こり易かったり、ポリオレフィン系樹脂粒子中に含浸されなかったスチレン系モノマーが単独で重合して、多量の微粒子状のポリスチレン系樹脂粒子が生成する場合があり、好ましくない。
【0074】
前記含有量を算出する場合のポリオレフィン系樹脂粒子とは、ポリオレフィン系樹脂と含浸されたスチレン系モノマー、更に含浸されて既に重合したポリスチレン系樹脂とから構成された粒子を意味する。
【0075】
前記含有量を0〜35質量%に維持するために、スチレン系モノマーを重合容器内の水性媒体に連続的にあるいは断続的に添加する。更に、スチレン系モノマーを水性媒体中に徐々に添加していくのが好ましい。
【0076】
前記スチレン系モノマーを重合させる油溶性のラジカル重合開始剤としては、スチレン系モノマーの重合に汎用されている重合開始剤を使用できる。例えば、ジベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ヘキシルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。なお、これら油溶性のラジカル重合開始剤は、単独で用いられても併用されてもよい。
【0077】
前記重合開始剤を重合容器内の水性媒体に添加する方法としては、種々の方法が挙げられる。例えば、
(1)重合容器とは別の容器内でスチレン系モノマーに重合開始剤を溶解して含有させ、このスチレン系モノマーを重合容器内に供給する方法、
(2)重合開始剤をスチレン系モノマーの一部、イソパラフィン等の溶剤または可塑剤に溶解させて溶液を作製する。この溶液と、所定量のスチレン系モノマーとを重合容器内に同時に供給する方法、
(3)重合開始剤を水性媒体に分散させた分散液を作製する。この分散液とスチレン系モノマーとを重合容器内に供給する方法、
等が挙げられる。
【0078】
ラジカル重合開始剤の使用量は、通常スチレン系モノマーの使用総量の0.02〜2.0質量%添加することが好ましい。
【0079】
本発明の製造方法において、水性媒体中に水溶性のラジカル重合禁止剤を溶解させておく事が好ましい。水溶性のラジカル重合禁止剤はマイクロペレット極表面におけるスチレン系モノマーの重合を抑制するだけでなく、水性媒体中に浮遊するスチレン系モノマーが単独で重合するのを防止して、ポリスチレン系樹脂の微粒子の生成を減らすことが出来るからである。
【0080】
水溶性のラジカル重合禁止剤としては、例えば、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アルミニウムなどのチオシアン酸塩、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸銀、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウムなどの亜硝酸塩、メルカプトエタノール、モノチオプロピレングリコール、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオヒドロアクリル酸、チオ乳酸、チオリンゴ酸、チオエタノールアミン、1,2−ジチオグリセロール、1,3−ジチオグリセロールなどの水溶性イオウ含有有機化合物、さらにアスコルビン酸、アスコルビン酸ソーダ等を挙げることができる。これらの中でも特に亜硝酸塩が好ましい。
【0081】
前記水溶性のラジカル重合禁止剤の使用量としては、水性媒体の水100質量部に対して0.001〜0.04質量部が好ましい。
【0082】
なお、前記水性媒体中に分散剤を添加しておくことが好ましい。このような分散剤としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の有機系分散剤、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の無機系分散剤が挙げられる。この内、無機系分散剤が好ましい。
【0083】
無機系分散剤を用いる場合には、界面活性剤を併用することが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ等が挙げられる。
【0084】
重合容器の形状及び構造としては、従来からスチレン系モノマーの懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されない。また、撹拌翼の形状についても特に限定はなく、具体的には、V型パドル翼、ファードラー翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、プルマージン翼等のパドル翼、タービン翼、ファンタービン翼等のタービン翼、マリンプロペラ翼のようなプロペラ翼等が挙げられる。これら撹拌翼の内では、パドル翼が好ましい。撹拌翼は、単段翼であっても多段翼であってもよい。重合容器に邪魔板(バッフル)を設けてもよい。
【0085】
また、スチレン系モノマーをマイクロペレット中にて重合させる際の水性媒体の温度は、特に限定されないが、使用するポリオレフィン系樹脂の融点の−30〜+20℃の範囲であることが好ましい。より具体的には、70〜140℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。更に、水性媒体の温度は、スチレン系モノマーの重合開始から終了までの間、一定温度であってもよいし、段階的に上昇させてもよい。水性媒体の温度を上昇させる場合には、0.1〜2℃/分の昇温速度で上昇させることが好ましい。
【0086】
更に、架橋したポリオレフィン系樹脂からなる粒子を使用する場合、架橋は、スチレン系モノマーを含浸させる前に予め行なっておいてもよいし、マイクロペレット中にスチレン系モノマーを含浸、重合させている間に行なってもよいし、マイクロペレット中にスチレン系モノマーを含浸、重合させた後に行なってもよい。
【0087】
ポリオレフィン系樹脂の架橋に用いられる架橋剤としては、例えば、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン等の有機過酸化物が挙げられる。なお、架橋剤は、単独でも二種以上が併用してもよい。また、架橋剤の使用量は、通常、ポリオレフィン系樹脂粒子(マイクロペレット)100質量部に対して0.05〜1.0質量部が好ましい。
【0088】
架橋剤を添加する方法としては、例えば、架橋剤をポリオレフィン系樹脂に直接添加する方法、溶剤、可塑剤またはスチレン系モノマーに架橋剤を溶解させた上で添加する方法、架橋剤を水に分散させた上で添加する方法等が挙げられる。この内、スチレン系モノマーに架橋剤を溶解させた上で添加する方法が好ましい。
【0089】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(以後、発泡性樹脂粒子と記す)を得るために、前記スチレン系モノマーの含浸及び重合の途中もしくは終了後に揮発性発泡剤を含浸させる。揮発性発泡剤を含浸させる方法は、例えば、1)未だスチレン系モノマーが重合しつつある樹脂粒子もしくは、スチレン系モノマーの重合が完了した樹脂粒子が水性媒体中に分散している重合容器内に発泡剤を圧入する方法、2)樹脂粒子を加温可能な回転式混合機(タンブラー)に供給し、この回転式混合機内に発泡剤を圧入する方法等が挙げられる。
【0090】
更に、発泡助剤を揮発性発泡剤と共に用いてもよい。このような発泡助剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、d−リモネン等の溶剤、ジイソブチルアジペート、ジアセチル化モノラウレート、やし油等の可塑剤(高沸点溶剤)が挙げられる。なお、発泡助剤の添加量としては、重合が完了した樹脂粒子100質量部に対して0.1〜2.5質量部が好ましい。
【0091】
また、樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させる際には、必要に応じて結合防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、等の表面処理剤を添加してもよい。
【0092】
結合防止剤は、発泡性樹脂粒子を冷凍保管する際の粒子同士の合着、発泡性樹脂粒子を予備発泡させる際の発泡粒子同士の合着を防止する役割を果たす。具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0093】
融着促進剤は、前記予備発泡粒子を成形型内で成形する際の予備発泡粒子同士の融着を促進させる役割を果たす。具体例としては、ステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル等が挙げられる。
【0094】
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。
【0095】
なお、前記表面処理剤の総添加量は、重合が完了した樹脂粒子100質量部に対して0.01〜2.0質量部が好ましい。
【0096】
前記の方法において、通常、樹脂粒子に発泡剤を含浸させる際の樹脂温度は40〜100℃であり、また、含浸の時間は0.5〜10時間である。
【0097】
樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、好ましくは樹脂温度を30℃以下に冷却してから、水性媒体もしくは回転式混合機などから発泡性樹脂粒子を取り出す。
【0098】
取り出した本発明の発泡性樹脂粒子は、発泡剤の保持性(ビーズライフ)が大幅に改善されているので、10℃以下の冷蔵もしくは冷凍状態で長期間保管できる。
【0099】
次に、発泡性樹脂粒子から予備発泡粒子、更にその発泡成形体を得る方法について説明する。
【0100】
発泡剤が含浸された発泡性樹脂粒子は必要に応じて、水蒸気等の加熱媒体を用いて加熱して所定の嵩密度に予備発泡させれば、予備発泡粒子を得ることができる。
【0101】
予備発泡粒子は、0.015〜0.25g/cmの嵩密度を有する。好ましい嵩密度は、0.018〜0.20g/cmである。嵩密度が0.015g/cm未満であると、発泡粒子の独立気泡率が低下して、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の強度が低下するため好ましくない。一方、0.25g/cmを超えると、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加するので好ましくない。
【0102】
更に、この予備発泡粒子を成形機の型内に充填し、加熱して二次発泡させ、予備発泡粒子同士を融着一体化させることによって所望形状を有する発泡成形体を得ることができる。前記成形機としては、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子から発泡成形体を製造する際に用いられるEPS成形機などを用いることができる。
【0103】
前記のようにして得られた発泡成形体は、家電製品などの緩衝材(クッション材)、電子部品、各種工業資材、食品等の搬送容器などの用途に用いることができる。また、車輛用バンパーの芯材、ドア内装緩衝材等の衝撃エネルギー吸収材として好適に用いることもできる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例で測定する、重合時のポリオレフィン系樹脂粒子におけるスチレン系モノマーの最大含有量、発泡性樹脂粒子の平均粒子径、発泡剤含有量、予備発泡粒子の嵩密度、及び発泡成形体の融着率、耐割れ性について下記に示す。
【0105】
(スチレン系モノマーの最大含有量)
スチレン系モノマーを含浸されて重合しつつあるポリオレフィン系樹脂粒子の一部を重合容器内から取り出して水性媒体と分離した後、ポリオレフィン系樹脂粒子表面の水分をガーゼで除去して測定用試料とした。
【0106】
そして、測定用試料から0.08gを精秤し、トルエン40mL中に24時間浸漬してスチレン系モノマーを抽出した。このスチレン系モノマーを抽出した溶液に、ウイス試薬10mL、5質量%ヨウ化カリウム水溶液30mL及び1質量%でんぷん水溶液約30mLを入れ、N/40チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定して試料の滴定数(mL)とした。なお、ウイス試薬は、氷酢酸2リットルにヨウ素8.7g及び三塩化ヨウ素7.9gを溶解させることによって作製した。
【0107】
また、測定用試料をトルエン中に浸漬させることなく前記と同様の要領で滴定を行ってブランクの滴定数(mL)とした。そして、ポリオレフィン系樹脂粒子中のスチレン系モノマーの含有量を下記式に基づいて算出した。
【0108】
スチレン系モノマーの含有量(質量%)=0.1322×(ブランクの滴定数−試料滴定数)/測定用試料の質量(g)
【0109】
上述の測定をスチレン系モノマーを水性媒体中に添加し始めてから20分毎に行い、最も多かったスチレン系モノマーの含有量をスチレン系モノマーの最大含有量とした。
【0110】
(発泡性樹脂粒子の平均粒子径)
発泡性樹脂粒子約50gをロータップ型篩振とう機(飯田製作所社製)を用いて、篩目開き3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mm、0.425mm、0.355mm、0.300mm、0.250mm、0.212mm、0.180mmのJIS標準篩で5分間分級する。篩網上の試料質量を測定し、その結果から得られた累積質量分布曲線を元にして累積質量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径として求めた。
【0111】
(発泡性樹脂粒子の発泡剤含有量)
発泡性樹脂粒子を20mg採取し測定試料とした。この測定試料を熱分解炉(島津製作所社製、商品名:PYR−1A)の入り口にセットして15秒間に亘って窒素雰囲気下に放置して、測定試料を熱分解炉にセットした際の混入ガスを窒素と置換した。次に、測定試料を密閉後、200℃に保持された炉心内に供給して60秒間に亘って加熱して発泡剤成分を放出させ、この放出された発泡剤成分をガスクロマトグラフ(島津製作所社製、商品名:GC−14B、検出器:FID)を用いて下記条件にて発泡剤成分のチャートを得、予め測定しておいた、発泡剤成分の検量線に基づいて、前記チャートから発泡性樹脂粒子中の発泡剤含有量(質量%)を算出した。その測定条件は、カラム:ジーエルサイエンス社製、商品名「ポラパックQ」(80/100)(φ3mm×1.5m)、カラム温度:70℃、検出器温度:110℃、注入口温度:110℃、キャリアーガス:窒素、キャリアーガス流量:1mL/minとした。ガスクロマトグラフによって、発泡剤の含有量(質量%)を測定した。
【0112】
(予備発泡粒子の嵩密度)
予備発泡粒子の嵩密度は下記の要領で測定する。
まず、予備発泡粒子を500cm3 メスシリンダ内に500cm3 の目盛りまで充填する。
【0113】
なお、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cmの目盛りに達しているものがあれば、その時点で予備発泡粒子のメスシリンダ内への充填を終了する。
【0114】
次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の質量を少数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とする。そして、下記式により予備発泡粒子の嵩密度を算出した。
嵩密度(g/cm)=W/500
【0115】
(発泡成形体の融着率)
縦400mm×横300mm×高さ50mmの直方体形状の発泡成形体の表面にカッターで横方向に長さ300mm、深さ5mmの切り込み線を入れ、この切り込み線に沿って発泡成形体を二分割した。そして、発泡成形体の分割面における、発泡粒子について、100〜150個の任意の範囲について粒子内で破断している発泡粒子数(a)と、粒子間の界面で剥離している発泡粒子数(b)を測定し、下記式に基づいて融着率を算出した。
融着率(%)=100×(a)/〔(a)+(b)〕
【0116】
(発泡成形体の耐割れ性)
発泡成形体から縦215mm×横40mm×厚み20mmの平面長方形状の試験片を切り出した。そして、JIS K7211に準拠して、150mmの間隔を存して配設された一対の支点間に試験片を架設して321gの鋼球を落とし、落球衝撃値、即ち、50%破壊高さを下記式に基づいて算出した。
【0117】
50%破壊高さH50=Hi+d〔Σ(i×ni)/N±0.5〕
但し、H50:50%破壊高さ(cm)、
Hi:高さ水準(i)が0のときの試験片の高さ(cm)であり、試験片が破壊することが予測される高さ、
d:試験片の高さを上下させるときの高さ間隔(cm)、
i:Hiのときを0とし、1つずつ増減する高さ水準
(i=・・・−3、−2、−1、0、1、2、3、・・・)、
ni:各水準において破壊した(又は破壊しなかった)試験片の数
N:破壊した(又は破壊しなかった)試験片の総数(N=Σni)
何れか多い方のデータを使用する。なお、同数の場合はどちらを採用してもよい。
±0.5:破壊したデータを使用する時は負を、破壊しなかったデータを使用する時は正をとる。
【0118】
(実施例1)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(酢酸ビニル含有量:5質量%、融点:105℃、メルトフローレート:0.5g/10分、密度:0.93g/cm)100質量部及び珪素土(含水二酸化ケイ素)0.5質量部とラジカル捕捉剤としてn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.1質量部とを押出機に供給して溶融混練して水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)のポリオレフィン系樹脂粒子(マイクロペレット)を得た。なお、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートはJIS K6924−2、密度はJIS K7112に準拠して測定した値である。
【0119】
また、スチレンとしては、α−フェニルエチルアルコールを脱水する方法で製造された、フェニルアセチレンを含まないスチレンを準備した。
【0120】
内容積が100Lの重合容器内に、V型パドル翼(撹拌羽根3枚)を備えた重合装置を用意した。この重合容器内に、70℃の水100質量部、ピロリン酸マグネシウム0.8質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.002質量部及び亜硝酸ナトリウム0.005質量部をV型パドル翼で撹拌しながら供給して水性媒体とした。しかる後、水性媒体中に前記ポリオレフィン系樹脂粒子30質量部を撹拌しながら懸濁させた。そして、撹拌翼の回転数を150rpmに調整した。
【0121】
次に、スチレン10質量部にジクミルパーオキサイド0.02質量部を溶解して、前記水性媒体中に添加した後、水性媒体を130℃に加熱して2時間保持した。その後、水性媒体を90℃まで冷却し、水性媒体にドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02質量部を添加した。ここで、撹拌翼の回転数を110rpmに調整した。
【0122】
一方、油溶性ラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.20質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート0.02質量部、並びに、架橋剤としてジクミルパーオキサイド0.25質量部をスチレン19.5質量部とアクリル酸ブチルエステル0.5質量部の混合モノマーに溶解させて第一スチレン系モノマーを作製した。また、スチレン39.0質量部とアクリル酸ブチルエステル0.5質量部の混合モノマーに気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド0.07質量部を溶解させて第二スチレン系モノマーを作製した。
【0123】
そして、第一スチレン系モノマーを一時間当たり10質量部の割合で前記水性媒体中に連続的に滴下し、スチレン系モノマー、重合開始剤及び架橋剤をポリオレフィン系樹脂粒子中に含浸させながら、スチレン系モノマーをポリオレフィン系樹脂粒子中にて重合させた。
【0124】
次に、第一スチレン系モノマーの水性媒体への添加が終了した後、第二スチレン系モノマーを水性媒体中に一時間当たり15質量部の割合で連続的に滴下して、スチレン系モノマー及び気泡調整剤をポリオレフィン系樹脂粒子中に含浸させながら、スチレン系モノマーをポリオレフィン系樹脂粒子中にて重合させた。この重合の過程で、ポリオレフィン系樹脂粒子中のスチレン系モノマーの最大含有量を測定した。
【0125】
更に、水性媒体を撹拌しつつ、第二スチレン系モノマーの水性媒体への滴下が終了してから1時間放置した後、水性媒体を140℃に加熱して3時間保持した。しかる後、重合容器を冷却して樹脂粒子を得た。
【0126】
続いて、内容積が50L の耐圧回転混合機に、樹脂粒子100質量部、水1.0質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート1.0質量部を供給して回転させながら常温でペンタン(ノルマル60質量%、イソ40質量%の混合物)14質量部を圧入した。そして、回転混合機内を70℃に昇温して4時間保持した後に20℃まで冷却して平均粒子径が1500μmの発泡性樹脂粒子を取り出した。ここで、発泡性樹脂粒子中の表皮層の厚み、ペンタン含有量を測定した。
【0127】
前記取り出した発泡性樹脂粒子を5℃の保冷庫内で30日間保管した後、その一部をサンプリングしてペンタン含有量を測定した。また、予備発泡機(積水工機製作所社製 商品名「SKK−70」)に供給し、0.02MPaの圧力の水蒸気を用いて予備発泡させて嵩密度0.025g/cm3 の予備発泡粒子を得た。
【0128】
次に、前記予備発泡粒子を室温で7日間放置した後、成形機(積水工機製作所社製、商品名「ACE−3SP」)の成形型内に充填した。そして、成形型内に水蒸気を供給して予備発泡粒子を二次発泡させて、縦400mm×横300mm×高さ50mmの直方体形状の密度0.025g/cmの発泡成形体を製造した。発泡成形体の融着率及び耐割れ性を測定した。
【0129】
(実施例2)
スチレンとして、エチルベンゼンを脱水素して製造したスチレン(フェニルアセチレンを55ppm含有する)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子及び発泡成形体を得た。
【0130】
(実施例3)
スチレンとして、エチルベンゼンを脱水素して製造したスチレン(フェニルアセチレンを120ppm含有する)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子及び発泡成形体を得た。
【0131】
(比較例1)
スチレンとして、エチルベンゼンを脱水素して製造したスチレン(フェニルアセチレンを170ppm含有する)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子及び発泡成形体を得た。
【0132】
(比較例2)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を押出機に供給して溶融混練して水中カット方式により造粒してポリオレフィン系樹脂粒子(マイクロペレット)を得るにあたり、ラジカル捕捉剤としてn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子及び発泡成形体を得た。
【0133】
(比較例3)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を押出機に供給して溶融混練して水中カット方式により造粒してポリオレフィン系樹脂粒子(マイクロペレット)を得るにあたり、ラジカル捕捉剤としてn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.6質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を得た。しかし、発泡性樹脂粒子にはスチレン系モノマーが多量に残留し、その発泡成形体は収縮が大きく、外観の良好なものは得られなかった。
【0134】
(実施例4)
水性媒体中に懸濁させたポリオレフィン系樹脂粒子を20質量部としたこと、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.25質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート0.02質量部、並びに、架橋剤としてジクミルパーオキサイド0.25質量部をスチレン19.5質量部とアクリル酸ブチルエステル0.5質量部との混合モノマーに溶解させて第一スチレン系モノマーを作製したこと、スチレン49.5質量部とアクリル酸ブチルエステル0.5質量部との混合モノマーに気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド0.07質量部を溶解させて第二スチレン系モノマーを作製したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子及び発泡成形体を得た。
【0135】
(実施例5)
水性媒体中に懸濁させたポリオレフィン系樹脂粒子を35質量部としたこと、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.20質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート0.02質量部、並びに、架橋剤としてジクミルパーオキサイド0.25質量部をスチレン19.5質量部とアクリル酸ブチルエステル0.5質量部との混合モノマーに溶解させて第一スチレン系モノマーを作製したこと、スチレン34.5質量部とアクリル酸ブチルエステル0.5質量部との混合モノマーに気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド0.07質量部を溶解させて第二スチレン系モノマーを作製したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子及び発泡成形体を得た。
【0136】
(比較例4)
水性媒体中に懸濁させるポリオレフィン系樹脂粒子を10質量部としたこと、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.35質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート0.02質量部、並びに、架橋剤としてジクミルパーオキサイド0.20質量部をスチレン34.5質量部とアクリル酸ブチルエステル0.5質量部との混合モノマーに溶解させて第一スチレン系モノマーを作製し、第一スチレン系モノマーを一時間当たり10質量部の割合で水性媒体中に滴下したこと、更に、スチレン44.5質量部とアクリル酸ブチルエステル0.5質量部との混合モノマーに気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド0.07質量部を溶解させて第二スチレン系モノマーを作製し、第二スチレン系モノマーを一時間当たり10質量部の割合で水性媒体中に滴下したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子及び発泡成形体を得た。
【0137】
(比較例5)
水性媒体中に懸濁させるポリオレフィン系樹脂粒子を45質量部としたこと、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.15質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート0.02質量部、並びに、架橋剤としてジクミルパーオキサイド0.20質量部をスチレン15質量部に溶解させて第一スチレン系モノマーを作製し、第一スチレン系モノマーを一時間当たり10質量部の割合で水性媒体中に滴下したこと、更に、スチレン30質量部に気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド0.07質量部を溶解させて第二スチレン系モノマーを作製し、第二スチレン系モノマーを一時間当たり15質量部の割合で水性媒体中に滴下したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を得た。しかし、該発泡性樹脂粒子を5℃の保冷庫内で30日間保管すると、そのペンタン含有量が大幅に低下し、目標とする嵩密度0.025g/cmの予備発泡粒子及び密度0.025g/cmの発泡成形体は得られなかった。
【0138】
(比較例6)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を押出機に供給して溶融混練して水中カット方式により造粒するにあたり、ラジカル捕捉剤を使用しないでポリオレフィン系樹脂粒子(マイクロペレット)を得た。また、スチレンとしては、エチルベンゼンを脱水素して製造したスチレン(フェニルアセチレンを170ppm含有する)を使用した。
【0139】
実施例1において、水性媒体中に懸濁させるポリオレフィン系樹脂粒子を40質量部としたこと、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.15質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート0.02質量部、並びに、架橋剤としてジクミルパーオキサイド0.25質量部をスチレン14.5質量部とアクリル酸ブチルエステル0.5質量部との混合モノマーに溶解させて第一スチレン系モノマーを作製し、第一スチレン系モノマーを一時間当たり10質量部の割合で水性媒体中に滴下したこと、更に、スチレン34.5質量部とアクリル酸ブチルエステル0.5質量部との混合モノマーに気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド0.07質量部を溶解させて第二スチレン系モノマーを作製し、第二スチレン系モノマーを一時間当たり15質量部の割合で水性媒体中に滴下したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子及び発泡成形体を得た。
【0140】
(比較例7)
比較例6と同様に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を押出機に供給して溶融混練して水中カット方式により造粒するにあたり、ラジカル捕捉剤を使用しないでポリオレフィン系樹脂粒子(マイクロペレット)を得た。また、スチレンとしては、エチルベンゼンを脱水素して製造したスチレン(フェニルアセチレンを170ppm含有する)を使用した。
【0141】
実施例1で使用したものと同じ重合装置を用意した。この重合容器内に、70℃の水100質量部、ピロリン酸マグネシウム0.8質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.002質量部及び亜硝酸ナトリウム0.005質量部をV型パドル翼で撹拌しながら供給して水性媒体とした。しかる後、水性媒体中に前記ポリオレフィン系樹脂粒子30質量部を撹拌しながら懸濁させた。そして、撹拌翼の回転数を150rpmに調整した。
【0142】
次に、スチレン10質量部にジクミルパーオキサイド0.02質量部を溶解して、前記水性媒体中に添加した後、水性媒体を130℃に加熱して2時間保持した。その後、水性媒体を70℃まで冷却し、水性媒体にドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02質量部を添加した。ここで、撹拌翼の回転数を110rpmに調整した。
【0143】
一方、油溶性ラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.15質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート0.02質量部、架橋剤としてジクミルパーオキサイド0.25質量部、並びに、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド0.07質量部をスチレン59.0質量部とアクリル酸ブチルエステル1.0質量部との混合モノマーに溶解させてスチレン系モノマーを作製し、一時間当たり25質量部の割合で70℃の水性媒体中に添加してポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系モノマーを含浸させた。
【0144】
その後、水性媒体を90℃に加熱して5時間保持し、スチレン系モノマーをポリオレフィン系樹脂粒子中にて重合させた。更に、水性媒体を140℃に加熱して3時間保持した後、重合容器を冷却して樹脂粒子を得た。発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体については、実施例1と同様にして得た。
【0145】
(実施例6)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(融点:116℃、メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.913g/cm3 )100質量部及びタルク0.3質量部とラジカル捕捉剤としてペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.05質量部とを押出機に供給して溶融混練して、水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)のポリオレフィン系樹脂粒子を得た。なお、直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレート及び密度は、JIS K6922−1に準拠して測定した。
【0146】
実施例1と同一の重合装置を用い、この重合装置の重合容器内に、70℃の水100質量部、ピロリン酸マグネシウム0.8質量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02質量部及び亜硝酸ナトリウム0.01質量部をV型パドル翼で撹拌しながら供給して水性媒体とした。しかる後、水性媒体中に前記ポリオレフィン系樹脂粒子25質量部をV型パドル翼で撹拌しながら懸濁させた。そして、水性媒体を120℃に加熱した上で、撹拌翼の回転数を115rpmに調整した。
【0147】
一方、実施例1で使用したスチレン75質量部に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.35質量部を溶解させてスチレン系モノマーを作製した。
【0148】
そして、スチレン系モノマーを一時間当たり10質量部の割合で前記水性媒体中に連続的に滴下し、スチレン系モノマー及び重合開始剤をポリオレフィン系樹脂粒子中に含浸させながら、スチレン系モノマーをポリオレフィン系樹脂粒子中にて重合させた。
【0149】
更に、水性媒体を撹拌しつつ、スチレン系モノマーの水性媒体への滴下が終了してから1時間放置した後、水性媒体を140℃に加熱して1時間保持した。しかる後、重合容器を冷却して樹脂粒子を取り出した。
【0150】
続いて、内容積が100Lの耐圧容器内にV型パドル翼(撹拌羽根3枚)を備えた含浸装置を用意した。この含浸容器内に、水100質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.01質量部をV型パドル翼で撹拌しながら供給して水性媒体とした。しかる後、水性媒体中に前記樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート1.5質量部を供給して撹拌しながら懸濁させた。そして、撹拌の回転数を100rpmに調整した。次に、水性媒体を70℃に昇温した後にペンタン(ノルマル60質量%、イソ40質量%の混合物)12質量部を圧入した。ペンタンを圧入してから3時間70℃を保持した後に15℃まで冷却して平均粒子径が1300μmの発泡性樹脂粒子を取り出した。ここで、発泡性樹脂粒子中の表皮層の厚み、ペンタン含有量を測定した。
【0151】
前記取り出した発泡性樹脂粒子を5℃の保冷庫内で30日間保管した後、その一部をサンプリングしてペンタン含有量を測定した。また、予備発泡機(積水工機製作所社製、商品名「SKK−70」)に供給し、0.025MPaの圧力の水蒸気を用いて予備発泡させて嵩密度0.033g/cmの予備発泡粒子を得た。
【0152】
次に、前記予備発泡粒子を室温で7日間放置した後、成形機(積水工機製作所社製、商品名「ACE−3SP」)の成形型内に充填した。そして、成形型内に水蒸気を供給して予備発泡粒子を二次発泡させて、縦400mm×横300mm×高さ50mmの直方体形状の密度0.033g/cmの発泡成形体を製造した。発泡成形体の融着率及び耐割れ性を測定した。
【0153】
(比較例8)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を押出機に供給して溶融混練して水中カット方式により造粒するにあたり、ラジカル捕捉剤を使用しないでポリオレフィン系樹脂粒子(マイクロペレット)を得た。また、スチレンとしては、エチルベンゼンを脱水素して製造したスチレン(フェニルアセチレンを170ppm含有する)を使用した。
【0154】
更に、水性媒体中に懸濁させるポリオレフィン系樹脂粒子を40質量部としたこと、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.30質量部を前記スチレン60質量部に溶解させてスチレン系モノマーを作製し、これを一時間当たり10質量部の割合で水性媒体中に滴下したこと以外は実施例6と同様にして発泡性樹脂粒子及び発泡成形体を得た。
【0155】
実施例1〜6及び比較例1〜8において、スチレン系モノマーの含浸及び重合途中におけるポリオレフィン系樹脂粒子中のスチレン系モノマーの最大含有量、発泡性樹脂粒子の表皮層の厚み、ペンタン含有量、発泡成形体の融着率、耐割れ性を表1〜3に示した。尚、表中Stはスチレン、BAはアクリル酸ブチルエステルを表している。また、ペンタン保持率は下記式により算出した。
ペンタン保持率(%)=ペンタン含有量(質量%)30日後/ペンタン含有量(質量%)取出し直後×100
【0156】
【表1】

【0157】
【表2】

【0158】
【表3】

【0159】
表1〜3の結果からわかるように、本発明の発泡性樹脂粒子は、発泡剤の保持性が良好であり、ビーズライフに優れている。また、この発泡性樹脂粒子は表1〜3に示すように耐割れ性に優れた発泡体を提供できるものである。
【0160】
例えば、実施例1〜3の発泡性樹脂粒子(ポリオレフィン系樹脂/ポリスチレン系樹脂=30/70)は、比較例6の発泡性樹脂粒子(ポリオレフィン系樹脂/ポリスチレン系樹脂=40/60)と比べてポリオレフィン系樹脂の配合量が少ないにも係わらず、耐割れ性において同等の優れた性能を有しており、しかもビーズライフは格段と向上している。また、ポリオレフィン系樹脂に直鎖状低密度ポリエチレンを使用した実施例6と比較例8との比較においても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明によれば耐割れ性と融着率に優れた発泡成形体およびその原料ビーズである発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することができる。この樹脂粒子は発泡剤の保持性に優れており、長期間の保管が可能である。従って、必要な時に必要なだけの樹脂粒子を予備発泡、及び成形することができるので、生産効率が良く、発泡成形体を比較的安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子断面全体の走査型電子顕微鏡画像(倍率50倍)の一例である。
【図2】本発明の実施例5で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子断面の全体の走査型電子顕微鏡画像(倍率50倍)である。
【図3】本発明の実施例5で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子断面における表皮層の走査型電子顕微鏡画像(倍率500倍)である。
【図4】本発明の実施例5で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子断面における表皮層の走査型電子顕微鏡画像(倍率2000倍)である。
【図5】本発明の実施例5で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子断面の中心付近の走査過型電子顕微鏡画像(倍率2000倍)である。
【図6】本発明の比較例7で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子断面の全体の走査型電子顕微鏡画像(倍率50倍)である。
【図7】本発明の比較例7で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子断面における表皮層の走査型電子顕微鏡画像(倍率500倍)である。
【図8】本発明の比較例7で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子断面における表皮層の走査型電子顕微鏡画像(倍率2000倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系モノマーを含浸重合してポリスチレン系樹脂を生成させて得られるポリスチレン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含有させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、
前記スチレン系モノマーがポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して140〜600質量部含浸重合され、
樹脂粒子表面から中心を通って二分割した切片をテトラヒドロフランに浸漬してポリスチレン系樹脂成分を抽出した後、該切片の切断面を撮影した走査型電子顕微鏡画像において平均厚みが15〜150μmの表皮層が観察され、
且つ揮発性発泡剤が5.5〜13.0質量%含有されたことを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
表皮層の平均厚みが20〜100μmである請求項1記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
ポリスチレン系樹脂粒子に含まれるポリオレフィン系樹脂が分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体であり、ポリスチレン系樹脂がポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体又はスチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体である請求項1又は2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
揮発性発泡剤がペンタンである請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
平均粒子径が800〜2400μmである請求項1〜4のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項6】
1)ポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、造粒してポリオレフィン系樹脂粒子とする工程と、2)水性媒体中に該ポリオレフィン系樹脂粒子を分散させ、スチレン系モノマーを該ポリオレフィン系樹脂粒子に含浸させながら油溶性ラジカル重合開始剤の存在下にて重合させ、重合の途中もしくは終了後に揮発性発泡剤を含浸させる工程とを含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
工程1)のポリオレフィン系樹脂の溶融押出しが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対してラジカル捕捉剤0.005〜0.5質量部の存在下で行われ、かつ工程2)の重合は、ポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して、フェニルアセチレンの含有量が150ppm以下のスチレン系モノマーを140〜600質量部用いることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
ポリオレフィン系樹脂が分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体であり、スチレン系モノマーがスチレン、スチレンを主成分とするアクリル酸アルキルエステルとのコモノマーもしくはスチレンを主成分とするメタクリル酸アルキルエステルとのコモノマーである請求項6に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
スチレンがα−フェニルエチルアルコールを脱水して得られる請求項7に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
ラジカル捕捉剤がフェノール系酸化防止剤である請求項6〜8のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
水溶性ラジカル重合禁止剤を水性媒体の水100質量部に対して0.001〜0.04質量部用いる請求項6〜9のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項11】
水溶性ラジカル重合禁止剤が亜硝酸塩である請求項10に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項12】
スチレン系モノマーの含浸及び重合が、ポリオレフィン系樹脂粒子中のスチレン系モノマー含有量が35質量%以下となる条件下で行われる請求項6〜11のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡して得られる嵩密度が0.015〜0.25g/cmの予備発泡粒子。
【請求項14】
請求項13に記載の予備発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体。
【請求項15】
1)ポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、造粒してポリオレフィン系樹脂粒子とする工程であって、前記ポリオレフィン系樹脂の溶融押出しが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対してラジカル捕捉剤0.005〜0.5質量部の存在下で行われる工程と、2)水性媒体中に該ポリオレフィン系樹脂粒子を分散させ、スチレン系モノマーを該ポリオレフィン系樹脂粒子に含浸させながら油溶性ラジカル重合開始剤の存在下にて重合させ、重合の途中もしくは終了後に揮発性発泡剤を含浸させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程であって、前記重合は、ポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して、フェニルアセチレンの含有量が150ppm以下のスチレン系モノマーを140〜600質量部用いる工程と、3)前記得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させる工程とを含むことを特徴とする予備発泡粒子の製造方法。
【請求項16】
1)ポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、造粒してポリオレフィン系樹脂粒子とする工程であって、前記ポリオレフィン系樹脂の溶融押出しが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対してラジカル捕捉剤0.005〜0.5質量部の存在下で行われる工程と、2)水性媒体中に該ポリオレフィン系樹脂粒子を分散させ、スチレン系モノマーを該ポリオレフィン系樹脂粒子に含浸させながら油溶性ラジカル重合開始剤の存在下にて重合させ、重合の途中もしくは終了後に揮発性発泡剤を含浸させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程であって、前記重合は、ポリオレフィン系樹脂粒子100質量部に対して、フェニルアセチレンの含有量が150ppm以下のスチレン系モノマーを140〜600質量部用いる工程と、3)前記得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を得る工程と、4)前記得られた予備発泡粒子を型内成形させる工程とを含むことを特徴とする発泡成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−133449(P2008−133449A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274354(P2007−274354)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】