説明

発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子とその製造方法、着色樹脂予備発泡粒子、着色樹脂発泡成形体とその用途

【課題】色むらが無く、一様に着色したポリスチレン系着色樹脂発泡成形体を容易に製造することができる発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子とその製造方法の提供。
【解決手段】染料で着色された発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子において、アセトアニリド基含有染料を含有することを特徴とする発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子。ポリスチレン系樹脂粒子を耐圧密閉型の混合機に入れ、撹拌しながら60℃以上に加熱し、揮発性発泡剤を液状で耐圧密閉型混合機に圧入して揮発性発泡剤をポリスチレン系樹脂粒子に吸収させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法において、 アセトアニリド基含有染料を界面活性剤と水系媒体に予め分散させた後に添加して発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡剤を含み、着色されたポリスチレン系樹脂粒子からなる発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子とその製造方法に関し、特に、色むらが無く、一様に着色したポリスチレン系着色樹脂発泡成形体を容易に製造することができる発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子とその製造方法、該着色樹脂粒子を発泡させた着色樹脂予備発泡粒子、該着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた着色樹脂発泡成形体とその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂の発泡成形体は、運搬用容器や、包装用容器として広く利用されている。そのうち、鮮魚用や建材用途などでは他容器と区別する目的や、意匠性を高める為に着色して使用されている。
【0003】
例えば、鮮魚用ではブルー、パープル、建材用途ではオレンジ、グリーン等に着色された発泡成形体を使用する。一方、グレー色に着色しておくと、汚れが目立たないという利点があるので、構造部材として使用する用途にはグレー色に着色されることが多い。グレー色に着色された発泡性粒子を作るには、着色剤としてこれまでカーボンブラックが用いられるのが一般的であった。
【0004】
しかしカーボンブラックを含んだ発泡性粒子を作るには、ポリスチレン系樹脂の重合段階で添加する必要があり、発泡剤を含浸させるときに粒子にカーボンブラックを吸収させることができず製造工程が煩雑になる。
【0005】
一般に、着色された発泡性樹脂粒子を作るには、幾つかの方法が知られている。
例えば、特許文献1(特公平6−10270号公報)、特許文献2(特公平6−23266号公報)にあるように、発泡剤の添加過程で染料を添加する方法が知られている。
【0006】
また、上述の方法において染料又は顔料の離脱を防止するために、被覆剤を用いて染料又は顔料を樹脂粒子表面に被覆する方法があるが、この方法では内部までむらなく着色することができないだけでなく、被覆工程が余分に必要なために製造工程が複雑になるという欠点があった。これら従来処方に使用される染料は、親油性の強いものが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6−10270号公報
【特許文献2】特公平6−23266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の方法では、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子への着色にムラが生じ易くなる傾向にあった。
特に、2種以上の染料を混合して使用する場合に着色むらが生じ易く、着色した発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子を用いて製造した発泡成形体は、外観に劣るものとなりやすかった。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、色むらが無く、一様に着色したポリスチレン系着色樹脂発泡成形体を容易に製造することができる発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子とその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、ブルーに着色する場合や、2種以上併用してグレーに着色する場合にアセトアニリド基を有する染料を使用した場合や、更に、従来のアントラキノン系染料と併用しても色むらが生じ難いことを見出し、均一に染色できることを見出した。
【0011】
本発明は、染料で着色された発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子において、アセトアニリド基含有染料を含有することを特徴とする発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子を提供する。
【0012】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子において、前記アセトアニリド基含有染料が、DisperseBlue165、DisperseBlue79、DisperseRed82、DisperseRed152、DisperseRed167、DisperseRed277、DisperseYellow3からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0013】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子において、前記アセトアニリド基含有染料とアントラキノン系染料とを含有する構成としてもよい。
【0014】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子において、発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子中にポリエチレン系樹脂が含有されている構成としてもよい。
【0015】
また本発明は、ポリスチレン系樹脂粒子を耐圧密閉型の混合機に入れ、撹拌しながら60℃以上に加熱し、揮発性発泡剤を液状で耐圧密閉型混合機に圧入して揮発性発泡剤をポリスチレン系樹脂粒子に吸収させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法において、アセトアニリド基含有染料を界面活性剤と水系媒体に予め分散させた後に添加して発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子の製造方法において、前記アセトアニリド基含有系染料が、DisperseBlue165、DisperseBlue79、DisperseRed82、DisperseRed152、DisperseRed167、DisperseRed277、DisperseYellow3からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0017】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子の製造方法において、前記アセトアニリド基含有染料とアントラキノン系染料とを併用して添加する構成としてもよい。
【0018】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子の製造方法において、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中にポリエチレン系樹脂が含有されている構成としてもよい。
【0019】
また本発明は、前記発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子を加熱し予備発泡させて得られた着色樹脂予備発泡粒子を提供する。
【0020】
また本発明は、前記着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた着色樹脂発泡成形体を提供する。
【0021】
また本発明は、前記着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた建材用断熱材を提供する。
【0022】
また本発明は、前記着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた食品容器を提供する。
【0023】
また本発明は、前記着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた搬送容器を提供する。
【0024】
また本発明は、前記着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた保冷断熱容器を提供する。
【0025】
また本発明は、前記着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた装飾ブロックを提供する。
【0026】
また本発明は、前記着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた土木用ブロックを提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子は、染料としてアセトアニリド基含有染料を含有するものなので、色むらが無く、一様に着色した着色樹脂発泡成形体を容易に製造することができる。
また、アセトアニリド基含有染料は、異なる色の染料を複数種組み合わせてポリスチレン系樹脂粒子の表面に含浸させることで、目的の混色を美麗かつ均一に着色できることから、着色のバリエーションを増やすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子は、染料で着色された発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子において、アセトアニリド基含有染料を含有することを特徴としている。
【0029】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子に用いられるポリスチレン系樹脂粒子としては、例えば、次の(1)〜(3)の製造方法で得られたポリスチレン系樹脂粒子を使用できる。
(1)水系懸濁液中にスチレン系単量体を主成分とする重合性単量体を分散させ重合を行い、ポリスチレン系樹脂粒子を得る、いわゆる懸濁重合法、
(2)水系懸濁液中にポリスチレン系樹脂種粒子を分散させた後に、スチレン系単量体を主成分とする重合性単量体を該種粒子に吸収させて重合を行い、ポリスチレン系樹脂粒子を得る、いわゆるシード重合法、
(3)押出機にポリスチレン系樹脂を投入して加熱溶融し、押出機吐出側に取り付けた多数の小孔を有するダイの該小孔から発泡剤混合樹脂を押し出し、その直後に水中で切断し、急冷することでポリスチレン系樹脂粒子を得る、いわゆる溶融押出法(水中カット法などとも称される)。
【0030】
前記(1)懸濁重合法及び(2)シード重合法で用いるスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系単量体を主成分とし、スチレン系単量体を通常、50質量%以上、好ましくは80質量%以上含む。これらのスチレン系単量体の中でも、スチレンが特に好ましい。
更にスチレン系単量体に併用可能な重合性単量体としては、スチレン系単量体と共重合可能なものであれば特に限定されず、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等が挙げられる。
【0031】
また(2)シード重合法で発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する場合、前記懸濁重合法により得られるポリスチレン系樹脂粒子を種粒子として使用したり、ポリスチレン系樹脂を押出機によりあらかじめ所望の粒子径に調整した後、種粒子として使用しても良い。
(2)シード重合法において押出機を用いて種粒子を作製する場合、或いは(3)溶融押出法において使用するポリスチレン系樹脂は、市販されている通常のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法などの方法で新たに作製したポリスチレン系樹脂などの、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂(バージンポリスチレン)を使用できる他、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたリサイクル原料を使用することができる。このリサイクル原料としては、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレーなどを回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したリサイクル原料などが挙げられる。
【0032】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の粒子径は、特に限定されないが、成形時の成形型キャビティ内への予備発泡粒子の充填性等から、通常、0.3〜2.0mm程度であり、0.3〜1.4mmが好ましい。
【0033】
本発明において、使用するポリスチレン系樹脂の分子量は、GPC法による質量平均分子量(Mw)が17万〜70万であるのが好ましい。ポリスチレン系樹脂の分子量が17万を下回ると、最終的に得られる発泡成形体の強度が低下し、また70万を上回ると充分な発泡性が得られ難くなるので好ましくない。
【0034】
前記(1)懸濁重合法および(2)シード重合法で使用する重合開始剤としては、通常、スチレンの懸濁重合において用いられるものであれば特に限定されず、例えばラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で、または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0035】
前記の重合において、ポリスチレン系樹脂粒子中に残留するスチレン系単量体を低減するために、高温分解型の重合開始剤を使用し、最終の重合温度を115℃以上に設定するのが好ましい。高温分解型の重合開始剤としては、例えばt−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタンなどの半減期10時間を得るための温度が100〜115℃のものが挙げられる。なお、高温分解型の重合開始剤を過剰に加えると分解副生成物であるアルコール類が発生するので好ましくない。 また、前記の重合において、ポリスチレン系樹脂粒子の分子量を調整し、単量体の残留量を減少させるという点で、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃の範囲にある重合開始剤を2種以上組合わせて用いるのが好ましい。
【0036】
前記(1)懸濁重合または(2)シード重合を行う際に、スチレン系単量体の小滴または種粒子を水性媒体中に分散させるために、懸濁剤を用いてもよい。懸濁剤としては、例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性無機化合物等が挙げられる。なお、難水溶性無機化合物を用いる場合にはアニオン界面活性剤を併用するのが好ましい。 前記アニオン界面活性剤としては、例えば脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸またはその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩;アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩などが挙げられる。前記のようにして得られるポリスチレン系樹脂粒子に、懸濁重合含浸法あるいは後含浸法によって発泡剤および可塑剤を含浸させることにより、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造することができる。
【0037】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子に用いられるアセトアニリド基含有染料としては、分子内にアセトアニリド基を有している染料化合物であればよく、特に限定されない。本発明の特に好ましい実施形態において、アセトアニリド基含有染料としては、DisperseBlue165、DisperseBlue79、DisperseRed82、DisperseRed152、DisperseRed167、DisperseRed277、DisperseYellow3からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0038】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子において、前記アセトアニリド基含有染料の含有量は、0.003〜0.40質量%の範囲内であることが好ましく、0.005〜0.40質量%の範囲内であることがより好ましく、0.02〜0.40質量%がさらに好ましく、0.04〜0.30質量%が最も好ましい。アセトアニリド基含有染料の含有量が前記範囲未満であると、最終的に得られる発泡成形体の着色度合が弱くなってしまう。一方、アセトアニリド系染料の含有量が前記範囲を超えると、コスト高となるばかりか、成形性が低下するために好ましくない。
【0039】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子において、色の異なる2種類以上のアセトアニリド基含有染料又はアセトアニリド基含有染料と別種の染料とを含有させることによって、所望の混色に着色することもできる。混色を得るための染料の種類や組み合わせは特に限定されない。
【0040】
アセトアニリド系染料に他の染料を組み合わせる場合、他の染料としては、例えば、SolventYellow167、SolventYellow114、SolventYellow163、SolventYellow93、SolventYellow33、SolventYellow16、SolventGreen5、SolventYellow104、SolventOrange60、SolventYellow14、SolventOrange63、VatRed41、SolventRed149、SolventRed111、SolventRed135、SolventRed179、SolventRed146、SolventRed22、SolventRed52、SolventViolet31、SolventViolet13、SolventBlue35、SolventBlue36、SolventBlue97、SolventBlue87、SolventGreen3、PigmentRed170等が挙げられる。
【0041】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子に用いられる発泡剤としては、一般の熱可塑性樹脂発泡体の製造に用いられている炭素数5以下の脂肪族炭化水素、例えばn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。
【0042】
前記発泡剤の含有割合は、ポリスチレン系樹脂粒子に対して3〜10質量%の範囲が好ましく、4〜9質量%がより好ましく、5〜9質量%がさらに好ましく、5〜8質量%が最も好ましい。前記含有割合が3質量%を下回ると、低密度化が困難であるばかりでなく、成形時の二次発泡力を高める効果が得られないために発泡成形体の外観が劣るようになる。また、含有割合が10質量%を上回ると、発泡成形時の収縮、予備発泡粒子中の残存ガスの調整時間の遅延、かつ成形サイクルが長くなり、生産性の点から好ましくない。
【0043】
前記発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子は、物性を損なわない範囲内において、従来から発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造に使用されている、可塑剤、発泡セル造核剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤等を必要に応じて適宜使用してもよい。また、ジンクステアレート等の粉末状金属石鹸類を前記発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子の表面に塗布しておけば、発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子の予備発泡工程において予備発泡粒子同士の結合を減少させることができて好ましい。
【0044】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子は、染料としてアセトアニリド基含有染料を含有するものなので、色むらが無く、一様に着色したポリスチレン系着色樹脂発泡成形体を容易に製造することができる。
また、アセトアニリド基含有染料は、異なる色の染料を複数種組み合わせてポリスチレン系樹脂粒子の表面に含浸させることで、目的の混色を美麗かつ均一に着色できることから、着色のバリエーションを増やすことができる。
【0045】
本発明に係る発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂粒子を耐圧密閉型の混合機に入れ、撹拌しながら60℃以上に加熱し、揮発性発泡剤を液状で耐圧密閉型混合機に圧入して揮発性発泡剤をポリスチレン系樹脂粒子に吸収させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する際に、アセトアニリド基含有染料を界面活性剤と水系媒体に予め分散させた後に添加して発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子を得る方法によって製造される。
【0046】
本製造方法において、ポリスチレン系樹脂粒子は、分散剤を含んだ水系媒体中に分散させておくことが好ましい。この分散剤としては、例えばピロリン酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム等の難水溶性無機化合物やポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子等が挙げられる。
【0047】
前記アセトアニリド基含有染料を水系媒体に分散させる際に用いる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤及び非イオン系界面活性剤の中から、使用する染料の分散性等を考慮して適宜選択して用いることができる。
【0048】
本発明の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子は、発泡樹脂成形体の製造分野において周知の装置及び手法を用い、水蒸気加熱等により加熱して予備発泡し、着色樹脂予備発泡粒子(以下、予備発泡粒子と記す。)とする。この予備発泡粒子は、製造するべき着色樹脂発泡成形体(以下、発泡成形体と記す。)の密度と同等の嵩密度となるように予備発泡される。本発明において、その嵩密度は限定されないが、通常は0.010〜0.10g/cmの範囲内とし、0.015〜0.050g/cmの範囲内とするのが好ましい。
【0049】
なお、本発明において予備発泡粒子の嵩密度とは、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。
<予備発泡粒子の嵩密度>
メスシリンダに予備発泡粒子を500cmの目盛りまで充填する。但し、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cmの目盛りに達していれば、充填を終了する。次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とする。次式により予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度(g/cm)=W/500
【0050】
<予備発泡粒子の嵩発泡倍数>
また、予備発泡粒子の嵩発泡倍数は、次式により算出される数値である。
嵩発泡倍数=1/嵩密度(g/cm
【0051】
前記予備発泡粒子は、発泡樹脂成形体の製造分野において周知の装置及び手法を用い、該予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、水蒸気加熱等により加熱して型内発泡成形し、ポリスチレン系樹脂発泡成形体(以下、発泡成形体と記す)を製造する。
本発明の発泡成形体の密度は特に限定されないが、通常は0.010〜0.10g/cmの範囲内とし、0.015〜0.050g/cmの範囲内とするのが好ましい。
【0052】
なお、本発明において発泡成形体の密度とは、JIS K7122:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した発泡成形体密度のことである。
<発泡成形体の密度>
50cm以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
【0053】
<発泡成形体の発泡倍数>
また、発泡成形体の発泡倍数は次式により算出される数値である。
発泡倍数=1/密度(g/cm
【0054】
本発明の発泡成形体は、前記発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子を加熱して予備発泡し、得られた予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し加熱し型内発泡成形して得られたものなので、色むらが無く、一様に着色した美麗な外観の発泡成形体を提供できる。
【0055】
本発明の発泡成形体の用途は、特に限定されないが、色むらが無く、一様に着色した美麗な外観の製品が得られることから、例えば、建材用断熱材、食品容器(魚箱、野菜収容箱など)、搬送容器、保冷断熱容器、装飾ブロック、土木用ブロックなどの用途において好適に使用し得る。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
以下の各実施例、比較例において、「質量部」は「部」と略記し、「質量%」は「%」と略記している。
【0057】
[実施例1]
内容積6リットルのオートクレーブに、水性媒体として純水2200部、ピロ燐酸マグネシウム5.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.2部の混合物を入れ、ポリスチレン系樹脂粒子(Mw:30万)2100部を加え、回転数250rpmで撹拌し、水性媒体中に懸濁したものを30℃に保持した。
次に、青色染料(DisperseBlue165)2.7部を予めドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.2部、純水100部に予備分散させたものをオートクレーブ内に投入した。
その後、この中にシクロヘキサン45部、発泡剤としてブタン160部を圧入した。
続いて100℃に昇温してこの温度に3時間保持して含浸を完結させ、その後冷却して発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子を得た。
こうして得られた発泡性粒子を嵩発泡倍数50倍に予備発泡させたところ、色むらが0.05%程度で殆ど認められない青色の予備発泡粒子を得た。
この予備発泡粒子を24時間室温に放置したのち、400×300×100mmの大きさのキャビティを有する成形型に入れ、ゲージ圧0.7kg/cmの水蒸気を30秒間成形型内に導入して発泡させ、その後5分間冷却して発泡成形体を得た。
この発泡成形体を50℃の乾燥室に入れて1日乾燥し、外観を目視で調べた。その結果、得られた発泡成形体は、発泡粒子同士が互いによく融着し、青色で色むらの少ない良質のものであった。
ここで、色むらは、目視で確認し、発泡成形体全体にわたり均一な着色状態であるものを、色むら無し、○(良好)とし、発泡成形体のいずれかに色むら(色の濃淡、色抜け等)があるものを、色むら有り、×(不良)として評価した。その結果を表1に記す。
【0058】
[実施例2]
青色染料に代えて、赤色染料(DisperseRed82)2.7部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を製造した。
この発泡成形体を50℃の乾燥室に入れて1日乾燥し、外観を目視で調べた。その結果、得られた発泡成形体は、発泡粒子同士が互いによく融着し、赤色で色むらの少ない良質のものであった。色むらの評価結果を表1に記す。
【0059】
[実施例3]
青色染料に代えて、黄色染料(DisperseYellow3)2.7部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を製造した。
この発泡成形体を50℃の乾燥室に入れて1日乾燥し、外観を目視で調べた。その結果、得られた発泡成形体は、発泡粒子同士が互いによく融着し、黄色で色むらの少ない良質のものであった。色むらの評価結果を表1に記す。
【0060】
[実施例4]
使用する染料を青色染料(DisperseBlue165)3.0部、赤色染料(DisperseRed82)2.5部を併用したこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を製造した。
この発泡成形体を50℃の乾燥室に入れて1日乾燥し、外観を目視で調べた。その結果、得られた発泡成形体は、発泡粒子同士が互いによく融着し、グレー色で色むらの少ない良質のものであった。色むらの評価結果を表1に記す。
【0061】
[比較例1]
染料としてアセトアニリド基を持たない青色染料(SolventBlue78)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
この発泡成形体を50℃の乾燥室に入れて1日乾燥し、外観を目視で調べた。その結果、得られた発泡成形体は、色むらが多く、外観に劣るものであった。色むらの評価結果を表1に記す。
【0062】
[比較例2]
染料としてアセトアニリド基を持たない青色染料(DisperseBlue102)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
この発泡成形体を50℃の乾燥室に入れて1日乾燥し、外観を目視で調べた。その結果、得られた発泡成形体は、色むらが多く、外観に劣るものであった。色むらの評価結果を表1に記す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の結果から、アセトアニリド基含有色素を用いて染色した実施例1〜4は、美麗に着色されて色むらの少ない良質の発泡成形体が得られた。
一方、アセトアニリド基を持たない染料を用いた比較例1,2で得られた発泡成形体は、色むらが多く、外観に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、発泡剤を含み、着色されたポリスチレン系樹脂粒子からなる発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子とその製造方法に関し、特に、色むらが無く、一様に着色した発泡成形体を容易に製造することができる発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子とその製造方法を提供する。また本発明は、前記発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子を予備発泡させて得られた予備発泡粒子、該予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた発泡成形体、建材用断熱材、食品容器、搬送容器、保冷断熱容器、装飾ブロック及び土木用ブロックを提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料で着色された発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子において、アセトアニリド基含有染料を含有することを特徴とする発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子。
【請求項2】
前記アセトアニリド基含有染料が、DisperseBlue165、DisperseBlue79、DisperseRed82、DisperseRed152、DisperseRed167、DisperseRed277、DisperseYellow3からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子。
【請求項3】
前記アセトアニリド基含有染料とアントラキノン系染料とを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子。
【請求項4】
発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子中にポリエチレン系樹脂が含有されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子。
【請求項5】
ポリスチレン系樹脂粒子を耐圧密閉型の混合機に入れ、撹拌しながら60℃以上に加熱し、揮発性発泡剤を液状で耐圧密閉型混合機に圧入して揮発性発泡剤をポリスチレン系樹脂粒子に吸収させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法において、
アセトアニリド基含有染料を界面活性剤と水系媒体に予め分散させた後に添加して発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記アセトアニリド基含有系染料が、DisperseBlue165、DisperseBlue79、DisperseRed82、DisperseRed152、DisperseRed167、DisperseRed277、DisperseYellow3からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5に記載の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
前記アセトアニリド基含有染料とアントラキノン系染料とを併用して添加することを特徴とする請求項5又は6に記載の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中にポリエチレン系樹脂が含有されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系着色樹脂粒子を加熱し予備発泡させて得られた着色樹脂予備発泡粒子。
【請求項10】
請求項9に記載の着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた着色樹脂発泡成形体。
【請求項11】
請求項9に記載の着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた建材用断熱材。
【請求項12】
請求項9に記載の着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた食品容器。
【請求項13】
請求項9に記載の着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた搬送容器。
【請求項14】
請求項9に記載の着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた保冷断熱容器。
【請求項15】
請求項9に記載の着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた装飾ブロック。
【請求項16】
請求項9に記載の着色樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた土木用ブロック。

【公開番号】特開2012−82380(P2012−82380A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281858(P2010−281858)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】