説明

発泡性樹脂組成物、発泡性樹脂シート、発泡体およびその製造方法

【課題】波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡することのできる、発泡性樹脂組成物、発泡性樹脂シート、発泡体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】極性樹脂と、中実のマトリクス樹脂に熱膨張性物質が含有されている発泡性樹脂粒子とを含有するか、または、無極性樹脂と、極性物質と、発泡性樹脂粒子とを含有する発泡性樹脂組成物を波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性樹脂組成物、発泡性樹脂シート、発泡体およびその製造方法、詳しくは、各種産業分野に用いられる発泡性樹脂組成物、発泡性樹脂シート、発泡体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱発泡性樹脂組成物は、樹脂および発泡剤を含有しており、例えば、加熱によりガスを発生させることにより発泡し、かかる発泡を利用して、各種産業分野に広く用いられている。
【0003】
例えば、ポリオレフィンおよび熱膨張性微小球を含有する熱発泡性補強剤組成物を、車体の鋼板に配置し、その後、それらを加熱炉に投入して加熱し、ポリオレフィンを発泡および硬化させることによって、鋼板を補強することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1の熱発泡性補強剤組成物において、発泡剤として用いられる熱膨張性微小球は、ガスバリアー性を有する熱可塑性樹脂からなる殻(シェル)と、その殻に内包される低沸点物質(コア、熱膨張剤)とを含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−244508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1の熱発泡性補強剤組成物においては、ポリオレフィンを発泡させるには、加熱によって、低沸点物質(コア)を熱膨張させるとともに、殻(シェル)を溶融または軟化させる必要がある。殻を十分に溶融または軟化させるためには、熱発泡性補強剤組成物を高温で加熱する必要がある。
【0007】
そのため、そのような熱発泡性補強剤組成物が配置される鋼板などの部材には、十分な耐熱性が必要とされる一方、かかる部材における耐熱性が不十分であれば、そのような部材(例えば、プラスチックなど)の保護の観点から、低温で加熱する必要があるが、その場合には、熱発泡性補強剤組成物の十分な発泡、さらには、それによる十分な補強を図ることができないという不具合がある。
【0008】
本発明の目的は、波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡することのできる、発泡性樹脂組成物、発泡性樹脂シート、発泡体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の発泡性樹脂組成物は、極性樹脂と、中実の樹脂マトリクスに熱膨張性物質が含有されている発泡性樹脂粒子とを含有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の発泡性樹脂組成物では、前記極性樹脂は、固体状の極性樹脂と、液体状の極性樹脂とを含むことが好適であり、また、前記極性樹脂において、前記固体状の極性樹脂は、前記液体状の極性樹脂より多く含まれていることが好適である。
【0011】
また、本発明の発泡性樹脂組成物は、さらに、充填剤を含有することが好適である。
【0012】
また、本発明の発泡性樹脂組成物は、無極性樹脂と、極性物質と、中実の樹脂マトリクスに熱膨張性物質が含有されている発泡性樹脂粒子とを含有することを特徴としている。
【0013】
また、本発明の発泡性樹脂組成物では、前記極性物質が、ヒドロキシル基を含有することが好適である。
【0014】
また、本発明の発泡性樹脂組成物は、波長100μm〜1kmの電磁波の照射によって発泡することが好適である。
【0015】
また、本発明の発泡性樹脂シートは、上記した発泡性樹脂組成物がシート状に形成されていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の発泡体は、上記した発泡性樹脂組成物を波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡させることにより得られることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の発泡体は、上記した発泡性樹脂シートを波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡させることにより得られることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の発泡体の製造方法は、上記した発泡性樹脂組成物を、波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡させることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の発泡体の製造方法は、上記した発泡性樹脂シートを、波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の発泡性樹脂組成物および発泡性樹脂シートに、波長100μm〜1kmの電磁波を照射すれば、電磁波の反射または電磁波によるスパーク(沿面放電)を確実に防止しつつ、極性樹脂または極性物質が加熱されて、その加熱により、発泡性樹脂粒子における熱膨張性物質を膨張させることができ、よって、極性樹脂または無極性樹脂を確実に発泡させることができる。これによって、本発明の発泡体を確実に得ることができる。
【0021】
とりわけ、この発泡性樹脂粒子では、熱膨張性物質が中実の樹脂マトリクスに含有されているので、波長100μm〜1kmの低出力の電磁波の照射に基づいて、極性樹脂または極性物質が低温で加熱されても、熱膨張性物質を確実に膨張させることができる。
【0022】
また、本発明の発泡性樹脂組成物および発泡性樹脂シートは、簡易な組成であり、軽量化を図ることができる。
【0023】
そして、本発明の発泡性樹脂組成物および発泡性樹脂シートと、それらが配置される部材とを加熱炉などに投入して高温で加熱しなくても、本発明の発泡性樹脂組成物および発泡性樹脂シートを、低温発泡が必要とされる各種産業分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、実施例における発泡充填性の評価方法の概略説明図であり、(a)は、発泡性樹脂組成物からなる発泡性樹脂シートを試験板の間に配置する工程、(b)は、発泡性樹脂シートを電磁波の照射により発泡させる工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
まず、第1の発明の発泡性樹脂組成物について説明する。第1の発明の発泡性樹脂組成物は、極性樹脂と、発泡性樹脂粒子とを含有している。
【0026】
極性樹脂は、例えば、シアノ基、ヒドロキシル基(水酸基)、カルボニル基、アミノ基、エポキシ基、ハロゲン(例えば、塩素など)などの極性基を有する樹脂である。
【0027】
極性樹脂としては、例えば、極性ゴム、熱可塑性極性樹脂(ゴムを除く)、熱硬化性極性樹脂などが挙げられる。
【0028】
極性ゴムとしては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などの合成極性ゴムが挙げられる。
【0029】
アクリロニトリルブタジエンゴムは、ブタジエンとアクリロニトリルとの共重合体(ニトリルゴム)である。ニトリルゴムのアクリロニトリル含量は、例えば、20〜80質量%である。なお、アクリロニトリル含量は、例えば、JIS K 6384にて測定される。
【0030】
クロロプレンゴムは、クロロプレンの重合体である。クロロプレンゴムの塩素含量は、例えば、20〜80質量%である。
【0031】
極性ゴムは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0032】
極性ゴムのうち、好ましくは、ニトリルゴムが挙げられる。
【0033】
熱可塑性極性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド(ナイロンなど)などが挙げられる。
【0034】
PVAは、ポリ酢酸ビニル(−(CH(OCOCH)CH−)の加水分解(ケン化)により得られる。ポリ酢酸ビニルのケン化度は、例えば、80〜99モル%である。
【0035】
ポリアミドは、主鎖中にアミド結合を有する重合体であり、ジアミンとジカルボン酸との重縮合により得られる。ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などのナイロンなどが挙げられる。
【0036】
熱可塑性極性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0037】
熱硬化性極性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0038】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などの芳香族系エポキシ樹脂、例えば、脂肪族型エポキシ樹脂、例えば、脂環族型エポキシ樹脂、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0039】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、50〜20,000g/eqivである。
【0040】
フェノール樹脂は、フェノール、クレゾールなどのフェノール化合物と、ホルムアルデヒドとの付加・縮合により得られる。
【0041】
上記した極性樹脂の誘電率に関し、例えば、周波数2.45GHzにおける比誘電率εr’が1〜100で、かつ、誘電体損失角tanδが0.005〜0.5である。好ましくは、比誘電率εr’が3〜100で、かつ、誘電体損失角tanδが0.01〜0.5である。極性樹脂の誘電率が上記した範囲内であれば、極性樹脂が波長100μm〜1kmの電磁波(後述)を効率的に吸収して加熱される。
【0042】
上記した極性樹脂のうち、好ましくは、極性ゴムが挙げられる。
【0043】
また、極性樹脂の性状は、特に限定されず、例えば、液体状、半固体状および固体状のいずれであってもよい。
【0044】
液体状の極性樹脂の70℃における粘度は、例えば、0.1〜100Pa・s、好ましくは、1〜50Pa・sである。なお、70℃における粘度は、例えば、B型粘度計にて測定される。
【0045】
また、半固体状または固体状の極性樹脂のムーニー粘度は、例えば、10〜1000(ML1+4、100℃)、好ましくは、20〜500(ML1+4、100℃)である。
【0046】
上記した極性樹脂は、好ましくは、液体状の極性樹脂および固体状の極性樹脂を含み、さらに好ましくは、液体状の極性ゴムおよび固体状の極性ゴムを含んでいる。
【0047】
液体状の極性樹脂および固体状の極性樹脂が極性樹脂に含まれる場合には、極性樹脂において、好ましくは、固体状の極性樹脂が、液体状の極性樹脂より多く含まれている。
【0048】
すなわち、固体状の極性樹脂の配合割合が、固体状の極性樹脂および液体状の極性樹脂の総量に対して、例えば、50質量%を超過し、好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、75質量%以上であり、通常、99質量%以下である。
【0049】
固体状の極性樹脂が、液体状の極性樹脂より多く含まれていれば、発泡性樹脂組成物の取扱性を向上させることができる。
【0050】
また、極性樹脂の比重は、例えば、0.6〜1.4、好ましくは、0.8〜1.25である。
【0051】
極性樹脂の重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)は、例えば、1,000以上、好ましくは、2,000以上であり、通常、800,000以下である。
【0052】
極性樹脂の配合割合は、発泡性樹脂組成物に対して、例えば、10〜90質量%、好ましくは、10〜50質量%である。
【0053】
発泡性樹脂粒子は、中実の樹脂マトリクスに、熱膨張性物質が含有(含浸)されている。
【0054】
樹脂マトリクスは、熱膨張性物質を均一に含有でき、さらには、加熱によって硬化しにくい樹脂からなり、そのような樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0055】
熱可塑性樹脂は、熱可塑性エラストマーを含み、例えば、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルスルホン、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー、ポリアリレートなどが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、例えば、上記した熱可塑性極性樹脂なども挙げられる。
【0056】
熱可塑性樹脂のうち、好ましくは、スチレン系樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0057】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン系モノマーを含有するモノマーを重合させることにより得られるスチレン系重合体(スチレン系ホモポリマー)である。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、および、α−メチルスチレン、環ハロゲン化スチレン、環アルキル化スチレン、2−ビニルトルエン(o−メチルスチレン)、3−ビニルトルエン(m−メチルスチレン)、4−ビニルトルエン(p−メチルスチレン)などのスチレン誘導体などが挙げられる。これらスチレン系モノマーは、単独使用または2種以上併用される。スチレン系モノマーとして、好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0058】
スチレン系重合体として、好ましくは、ポリスチレン(ポリスチレンホモポリマー)が挙げられる。
【0059】
また、スチレン系樹脂としては、例えば、上記したスチレン系モノマーと、スチレン系モノマーと共重合可能な共重合性モノマーとのスチレン系共重合体(スチレン系コポリマー)も挙げられる。共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸および/またはメタクリル酸)と、炭素原子1〜8個を有するアルコールとのエステル(つまり、(メタ)アクリレート)、ジメチルフマレート、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニル、エチレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。これら共重合性モノマーは、単独使用または2種以上併用される。共重合性モノマーとして、好ましくは、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、エチレン、ブタジエンが挙げられる。
【0060】
スチレン系共重合体として、好ましくは、(メタ)アクリレート−スチレン共重合体(MS)、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)などが挙げられる。さらに好ましくは、MS、ASが挙げられる。
【0061】
MSは、(メタ)アクリル酸メチルとスチレンとの、ブロックまたはランダム共重合体であり、(メタ)アクリル酸メチル含量が、例えば、10〜60質量%である。
【0062】
ASは、アクリロニトリルとスチレンとの、ブロックまたはランダム共重合体であり、アクリロニトリル含量が、例えば、10〜60質量%である。
【0063】
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル(つまり、ポリアクリル酸メチルおよび/またはポリメタクリル酸メチル)、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピルなどが挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルが挙げられる。
【0064】
樹脂マトリクスは、中実(つまり、中空ではない)形状をなし、その密度は、例えば、0.9〜2.0g/cm、好ましくは、1.0〜1.5g/cmである。
【0065】
また、樹脂マトリクスのガラス転移温度は、例えば、50〜110℃、好ましくは、80〜90℃である。ガラス転移温度は、DMA法にて測定される。
【0066】
熱膨張性物質は、波長100μm〜1kmの電磁波の照射に基づいて極性樹脂が加熱されることにより膨張する物質であって、具体的には、後述する特定の温度で膨張する、つまり、気化(蒸発あるいは沸騰)する物質であって、例えば、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、不燃性ガスなどが挙げられる。
【0067】
炭化水素としては、例えば、飽和炭化水素、不飽和炭化水素が挙げられる。好ましく、飽和炭化水素が挙げられる。
【0068】
飽和炭化水素としては、例えば、直鎖状アルカン、分枝状アルカン、シクロアルカンなどが挙げられる。
【0069】
直鎖状アルカンとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭素数1〜7の直鎖状アルカン(脂肪族炭化水素)が挙げられる。
【0070】
分枝状アルカンとしては、例えば、2−メチルプロパン(イソブタン)、2−メチルブタン(イソペンタン)、2,2−ジメチルプロパン(ネオペンタン)、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、2,4−ジメチルペンタンなどの炭素数4〜7の分岐状アルカンが挙げられる。
【0071】
シクロアルカンとしては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどの炭素数3〜7のシクロアルカン(脂環族炭化水素)が挙げられる。
【0072】
飽和炭化水素として、好ましくは、直鎖状アルカンが挙げられる。
【0073】
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン(CCl)などのクロロ炭化水素、例えば、ジフルオロメタン(CF)などのフルオロ炭化水素、例えば、フロン22(商標、CHClF)、フロン12(商標、CCl)、フロン113(商標、CClFCClF)などのクロロフルオロ炭化水素が挙げられる。
【0074】
不燃性ガスとしては、例えば、炭酸ガスなどが挙げられる。
【0075】
これら熱膨張性物質のうち、好ましくは、炭化水素が挙げられる。
【0076】
熱膨張性物質の沸点は、例えば、−160〜120℃、好ましくは、−50〜100℃、さらに好ましくは、−5〜70℃である。
【0077】
熱膨張性物質の沸点が上記した範囲を超える場合には、発泡性樹脂組成物の波長100μm〜1kmの電磁波の照射による発泡が困難となる場合がある。熱膨張性物質の沸点が上記した範囲に満たない場合には、熱膨張性物質を極性樹脂に均一に含有させることが困難となる場合がある。
【0078】
発泡性樹脂粒子は、上記した樹脂マトリクスのモノマーを、溶媒および熱膨張性物質の存在下で、重合させることにより得ることができる。あるいは、上記した樹脂マトリクスのモノマーを、溶媒の不存在下で、かつ、熱膨張性物質の存在下で、重合させることにより得ることができる。
【0079】
好ましくは、樹脂マトリクスのモノマーを、溶媒および熱膨張性物質の存在下で、重合させる。
【0080】
溶媒としては、例えば、水などの水性溶媒、例えば、トルエンなどの有機溶媒などが挙げられる。好ましくは、水性溶媒が挙げられる。
【0081】
具体的には、発泡性樹脂粒子は、モノマーを、分散剤が配合され、かつ、熱膨張性物質が吹き込まれた(流入された)水性溶媒中に、水分散させながら、懸濁重合させることにより得る。上記した重合方法によれば、樹脂マトリクスに熱膨張性物質を均一に含有させることができる。
【0082】
このようにして得られる発泡性樹脂粒子は、中実の球状(ビーズ状)または中実のペレット状、好ましくは、中実のビーズ状に形成されている。
【0083】
発泡性樹脂粒子の最大長さの平均値(球状の場合には、平均粒子径)は、例えば、0.2〜4mm、好ましくは、0.4〜2.0mmである。発泡性樹脂粒子の最大長さの平均値が上記範囲を超えると、意匠性および発泡性の均一性が低下する場合がある。発泡性樹脂粒子の最大長さの平均値が上記範囲に満たないと、熱膨張性物質が容易に揮発してしまい、貯蔵安定性が損なわれる場合がある。
【0084】
そして、この発泡性樹脂粒子では、中実の樹脂マトリクスに熱膨張性物質が含有されている。
【0085】
すなわち、発泡性樹脂粒子は、中実(中空でない)で粒状の樹脂マトリクスの表面から内部にわたって、熱膨張性物質が浸透されている。
【0086】
熱膨張性物質の含有割合は、樹脂マトリクス100質量部に対して、例えば、1〜10質量部、好ましくは、2〜8質量部である。
【0087】
これにより、発泡性樹脂粒子では、低温、具体的には、例えば、120℃以下(具体的には、70〜120℃)、また、110℃以下(具体的には、70〜110℃)、さらには、100℃以下(具体的には、70〜120℃)の温度(熱膨張開始温度)で熱膨張が開始する。
【0088】
また、熱膨張後の発泡性樹脂粒子の密度は、例えば、0.005〜0.5g/cm、好ましくは、0.01〜0.1g/cmである。
【0089】
発泡性樹脂粒子の100℃における熱膨張倍率は、熱膨張性物質の含有割合にもよるが、例えば、2〜200倍、好ましくは、10〜100倍である。
【0090】
このような発泡性樹脂としては、市販品(発泡性ビーズ)を用いることができ、例えば、「カネパール」(発泡性ポリスチレンビーズまたは発泡性ポリメチルメタクリレートビーズ、カネカ社製)、「スチロダイヤ」(発泡性ポリスチレンビーズ)、「ヒートポール」(発泡性アクリロニトリル・スチレン系樹脂ビーズ、「クリアポール」(発泡性メチルメタクリレート−スチレン系樹脂ビーズ)(以上、JSP社製)、「エスレンビーズ」(発泡性ポリスチレンビーズ)、「PNビーズ」(特殊発泡ポリスチレンビーズ)(以上、積水化成品工業社製)などが挙げられる。
【0091】
発泡性樹脂粒子の配合割合は、極性樹脂100質量部に対して、例えば、30〜300質量部、好ましくは、50〜200質量部である。
【0092】
発泡性樹脂粒子の配合割合が上記した範囲に満たないと、発泡倍率が過度に低くなり、極性樹脂を十分に発泡させることができない場合がある。一方、発泡性樹脂粒子の配合割合が上記した範囲を超えると、発泡性樹脂粒子が樹脂から脱落する場合がある。
【0093】
また、発泡性樹脂組成物には、さらに、充填剤を含有させることができる。
【0094】
充填剤は、発泡性樹脂シートの成形性を向上させるために必要により発泡性樹脂組成物に配合される。
【0095】
充填剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ケイ素(シリカ)、水酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0096】
充填剤の平均粒子径は、例えば、0.01〜100μm、好ましくは、0.02〜50μmである。平均粒子径は、電子顕微鏡観察にて算出される。
【0097】
充填剤の350メッシュによる篩残分は、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
【0098】
これら充填剤は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、単独使用が挙げられる。
【0099】
そのような充填剤として、好ましくは、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0100】
充填剤の配合割合は、極性ゴム100質量部に対して、例えば、10〜1000質量部、重量の観点から、好ましくは、20〜500質量部である。
【0101】
そして、発泡性樹脂組成物は、例えば、上記した極性樹脂と発泡性樹脂粒子と(必要に比より配合される充填剤と)を配合して、攪拌混合することにより、調製する。
【0102】
具体的には、上記した極性樹脂と発泡性樹脂粒子と充填剤とを、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機などの混練機によって混練することにより、混練物として発泡性樹脂組成物を調製する。
【0103】
この混練では、例えば、発泡性樹脂粒子の熱膨張開始温度未満、具体的には、常温(20℃)〜70℃未満の温度、好ましくは、20〜55℃の温度で、極性樹脂と発泡性樹脂粒子と充填剤とを加熱する。
【0104】
これにより、第1の発明の発泡性樹脂組成物を得ることができる。
【0105】
なお、第1の発明の発泡性樹脂組成物には、第1の発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、硬化剤(エチレンジアミンなどのアミン化合物など)、硬化促進剤(イミダゾール化合物など)、さらには、無極性樹脂(または低極性樹脂)(例えば、ポリイソブチレンゴム、シリコーンゴムなどの無極性ゴムまたは低極性ゴム)、架橋剤、加硫剤、その他の発泡剤(発泡性樹脂粒子を除く発泡剤)、発泡促進剤、架橋促進剤、加硫促進剤、揺変剤、滑剤、顔料、スコーチ防止剤、安定剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、防カビ剤、難燃剤、粘着付与剤などの公知の添加剤を、適宜の割合で添加することもできる。
【0106】
次に、第2の発明の発泡性樹脂組成物について説明する。
【0107】
第2の発明の発泡性樹脂組成物は、無極性樹脂と、極性物質と、発泡性樹脂粒子とを含有している。
【0108】
無極性樹脂は、上記した極性基を有しない樹脂である。
【0109】
無極性樹脂としては、例えば、無極性ゴム、熱可塑性無極性樹脂(ゴムを除く)、熱硬化性無極性樹脂などが挙げられる。
【0110】
無極性樹脂として、好ましくは、無極性ゴムが挙げられる。
【0111】
無極性ゴムとしては、特に限定されず、例えば、ポリイソブチレンゴム(PIB)、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴムなどの炭化水素系ゴムなどが挙げられる。
【0112】
無極性ゴムは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0113】
無極性樹脂の重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)は、例えば、1,000〜1,000,000、好ましくは、10,000〜500,000である。
【0114】
また、無極性樹脂の密度は、例えば、0.8〜2.1g/cm、好ましくは、0.85〜2.0g/cmである。
【0115】
無極性ゴムとして、好ましくは、PIBが挙げられる。
【0116】
PIBは、イソブチレン(イソブテン)の重合により得られる合成ゴムである。
【0117】
PIBは、単独使用または2種以上併用することができ、好ましくは、種類が異なるPIBの併用が挙げられる。
【0118】
そのようなPIBとして、例えば、重量平均分子量100,000以上1,000,000以下の第1のPIBと、重量平均分子量1,000以上100,000未満の第2のPIBとの併用が挙げられる。
【0119】
第1のPIBの重量平均分子量は、好ましくは、200,000以上500,000以下である。
【0120】
第2のPIBの重量平均分子量は、好ましくは、25,000以上75,000以下である。
【0121】
無極性樹脂の配合割合は、発泡性樹脂組成物に対して、例えば、10〜90質量%、好ましくは、10〜50質量%である。
【0122】
また、無極性樹脂の配合割合は、例えば、PIBが2種類併用される場合、第1のPIBの配合割合が、無極性樹脂100質量部に対して、例えば、10〜90質量部、好ましくは、30〜70質量部であり、第2のPIBの配合割合が、無極性樹脂100質量部に対して、例えば、10〜90質量部、好ましくは、30〜70質量部である。
【0123】
極性物質は、例えば、シアノ基、ヒドロキシル基(水酸基)、カルボニル基、アミノ基、エポキシ基、エーテル基、ハロゲン(例えば、塩素など)などの極性基を含有する。
【0124】
極性物質としては、例えば、極性樹脂、低分子量極性化合物などが挙げられる。極性物質は、特定の電磁波を照射することによって加熱される物質として、発泡性樹脂組成物に含有される。
【0125】
極性樹脂としては、第1の発明と同様の極性樹脂が挙げられる。
【0126】
低分子量極性化合物は、分子量(または、重量平均分子量)が極性樹脂の重量平均分子量より低く、例えば、800以下である。
【0127】
低分子量極性化合物としては、例えば、ニトリル類、水、アルコール類、含窒素類、アミン類、エポキシド類、ハロゲン化物類、それらの誘導体などが挙げられる。低分子量極性化合物として、好ましくは、アルコール類が挙げられる。
【0128】
ニトリル類としては、例えば、アセトニトリルなどの1価ニトリル、例えば、コハク酸ニトリルなどの2価ニトリルなどが挙げられる。
【0129】
アルコール類としては、例えば、1価アルコール、2価アルコール、3価以上のポリオールが挙げられ、好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
【0130】
1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの直鎖状アルカンモノオール、例えば、イソブチルアルコール、3−メチル−1−ブタノールなどの炭素数4以上の分岐状アルカンモノオール、例えば、シクロブタノール、シクロペンタノールなどの炭素数4以上のシクロアルカンモノオール、例えば、フェノール、クレゾールなどの芳香族モノオールなどが挙げられる。
【0131】
2価アルコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのポリエチレングリコールなどのオキシエチレングリコールや、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールなどのオキシプロピレングリコールなどのオキシアルキレングリコールが挙げられる。
【0132】
また、2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのアルキレングリコールなども挙げられる。
【0133】
また、2価アルコールとしては、例えば、シクロペンタンジオールなどの炭素数5以上のシクロアルカンジオール、例えば、ヒドロキノン(ジヒドロキシベンゼン)などの芳香族グリコールなども挙げられる。
【0134】
2価アルコールとして、好ましくは、オキシアルキレングリコール、アルキレングリコール、さらに好ましくは、ジエチレングリコール(オキシエチレングリコール)、プロピレングリコールが挙げられる。
【0135】
3価以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの炭素数3以上のトリオール、例えば、ペンタエリスリトールなどの炭素数5以上のテトラオール、例えば、ジペンタエリスリトールなどの炭素数6以上のヘキサオールなどが挙げられる。
【0136】
含窒素類としては、例えば、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド化合物などが挙げられる。
【0137】
アミン類としては、例えば、ヘプチルアミンなどの炭素数7以上の1価アミン、例えば、エチレンジアミン、ペンタンジアミンなどの炭素数2以上の2価アミン、例えば、ジエチレントリアミンなどの炭素数4以上の3価アミン、例えば、トリエチレンテトラミンなどの炭素数6以上の4価アミンなどが挙げられる。
【0138】
エポキシド類としては、例えば、エポキシヘプタン、1,2−エポキシシクロドデカンなどの炭素数7以上の1価エポキシド、例えば、オクタジエンジエポキシドなどの炭素数8以上の2価エポキシドなどが挙げられる。
【0139】
ハロゲン化物類としては、例えば、クロロペンタン、クロロヘキサンなどの炭素数5以上のクロロアルカン、例えば、ブロモブタン、ブロモペンタンなどの炭素数4以上のブロモアルカンなどが挙げられる。
【0140】
誘導体としては、例えば、アルコール類の誘導体が挙げられ、具体的には、例えば、エチレンカルボナート、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタートなどのエステルエーテル類、例えば、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリングリシジルエーテルなどのグリコールエーテル類などが挙げられる。
【0141】
これら極性物質は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0142】
極性物質の沸点は、例えば、100〜300℃、好ましくは、150〜280℃、さらに好ましくは、170〜260℃である。
【0143】
上記した極性物質の誘電率に関し、例えば、周波数13MHzにおける比誘電率εr’が1〜100で、かつ、誘電体損失角tanδが0.005〜0.5である。好ましくは、比誘電率εr’が3〜100で、かつ、誘電体損失角tanδが0.01〜0.5である。極性物質の誘電率が上記した範囲内であれば、極性物質が波長100μm〜1kmの電磁波を効率的に吸収して加熱される。
【0144】
また、極性物質の密度は、例えば、0.6〜1.4g/cm、好ましくは、0.8〜1.25g/cmである。
【0145】
極性物質の配合割合は、無極性樹脂100質量部に対して、例えば、3〜50質量部、好ましくは、3〜30質量部である。
【0146】
極性物質の配合割合が上記下限に満たないと、無極性樹脂が十分に加熱されない場合がある。
【0147】
一方、極性物質の配合割合が上記上限を超えると、加熱され過ぎて、無極性樹脂が劣化する場合がある。
【0148】
熱膨張性物質については、特定の電磁波の照射に基づいて極性物質が加熱されることにより膨張する物質であること以外は、第1の発明と同様である。
【0149】
また、発泡性樹脂組成物には、第1の発明と同様の充填剤を含有させることができる。
【0150】
これら充填剤は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、単独使用が挙げられる。
【0151】
そのような充填剤として、好ましくは、タルクが挙げられる。
【0152】
充填剤の配合割合は、無極性ゴム100質量部に対して、例えば、5〜1000質量部、質量の観点から、好ましくは、10〜500質量部である。
【0153】
そして、第2の発明の発泡性樹脂組成物は、例えば、上記した無極性樹脂と極性物質と発泡性樹脂粒子と(必要により配合される充填剤と)を配合して、攪拌混合することにより、調製する。
【0154】
具体的には、上記した無極性樹脂と極性物質と発泡性樹脂粒子と充填剤とを、第1の発明と同様の混練機によって混練することにより、混練物として発泡性樹脂組成物を調製する。
【0155】
この混練では、例えば、発泡性樹脂粒子の熱膨張開始温度未満、具体的には、常温(20℃)〜70℃未満の温度、好ましくは、20〜55℃の温度で、無極性樹脂と極性物質と発泡性樹脂粒子と充填剤とを加熱する。
【0156】
これにより、第2の発明の発泡性樹脂組成物を得ることができる。
【0157】
なお、第2の発明の発泡性樹脂組成物には、第2の発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤を、第1の発明の配合割合と同じ配合割合で、添加することもできる。
【0158】
添加剤については、無極性樹脂を含まない以外は、第1の発明と同様である。
【0159】
そして、上記により得られた本発明(第1の発明および第2の発明)の発泡性樹脂組成物(混練物)を、例えば、カレンダー成形、押出成形、射出成形あるいはプレス成形などの成形方法によって、シート状などの所定形状に形成する。
【0160】
混練物の成形では、発泡性樹脂粒子の熱膨張開始温度未満、具体的には、常温(20℃)あるいは70℃未満の温度、好ましくは、20〜55℃の温度で、混練物を加熱する。
【0161】
また、シート状に形成する場合には、そのシートの厚みは、例えば、0.2〜10mmである。
【0162】
これによって、発泡性樹脂組成物を、本発明の発泡性樹脂シートとして得ることができる。
【0163】
そして、このようにして得られた発泡性樹脂シートは、波長100μm〜1kmの電磁波の照射によって発泡する電磁波発泡樹脂シートとして用いられる。
【0164】
波長100μm〜1kmの電磁波には、波長100μm以上1mm未満のサブミリ波、1mm以上10mm未満のミリ波(EHF)、10mm以上100mm未満のセンチ波(SHF)、100mm以上1m未満の極超短波(UHF)、波長1m以上10m未満の超短波(VHF)、10m以上100m未満の短波(HF)、100m以上1km以下の中波(MF)が含まれる。
【0165】
これら電磁波のうち、サブミリ波、ミリ波、センチ波および極超短波を含む、波長100μm以上1m未満の電磁波が、マイクロ波とされる。
【0166】
また、超短波、短波および中波を含む、波長1m以上1km以下の電磁波が、超短・中波(高周波)とされる。
【0167】
発泡性樹脂シートに、波長100μm〜1kmの電磁波が照射されると、電磁波が極性樹脂(第1の発明)または極性物質(第2の発明)に吸収され、それによって、極性樹脂または極性物質が加熱される。すると、その加熱により、発泡性樹脂粒子における熱膨張性物質が膨張するので、それによって、発泡性樹脂組成物を確実に発泡させることができる。これによって、発泡体を確実に得ることができる。
【0168】
同時に、第1の発明の発泡性樹脂シートは、極性樹脂と発泡性樹脂粒子とを含有すればよく、また、第2の発明の発泡性樹脂シートは、無極性樹脂と極性物質と発泡性樹脂粒子とを含有すればよいので、波長100μm〜1kmの電磁波を吸収しつつ、電磁波の反射および電磁波によるスパーク(沿面放電)の発生を確実に防止することができる。
【0169】
そのため、発泡性樹脂シートを効率よく発泡させながら、スパークに起因する電磁波発生装置の損傷を防止することができる。
【0170】
とりわけ、この発泡性樹脂粒子では、熱膨張性物質が中実の樹脂マトリクスに含有されているので、極性樹脂または極性物質が波長100μm〜1kmの電磁波に低い照射出力(例えば、マイクロ波の場合は、260W以下、超短・中波の場合は、100W以下)で照射されて、極性樹脂または極性物質が低温(例えば、140℃以下、より具体的には、70〜130℃)に加熱されても、熱膨張性物質を確実に膨張させることができる。
【0171】
すなわち、電磁波がマイクロ波の場合は、波長が、例えば、100μm以上1m未満、周波数が、例えば、300MHzを超え3THz以下、マイクロ波の照射出力が、例えば、100〜2,000W、照射時間が、例えば、0.2〜30分間(好ましくは、0.5〜10分間)で、発泡性樹脂シートが発泡する。
【0172】
一方、電磁波が超短・中波の場合は、波長が、1m以上1km以下、周波数が、例えば、0.3MHz以上300MHz以下、超短・中波の照射出力が、例えば、10〜2,000W、照射時間が、例えば、0.2〜30分間(好ましくは、0.5〜10分間)で、発泡性樹脂シートが発泡する。
【0173】
上記した波長100μm〜1kmの電磁波の照射により、発泡性樹脂シートは、比較的低温に加熱され、具体的には、その温度が、例えば、140℃以下であり、より具体的には、70〜130℃である。
【0174】
また、上記した発泡性樹脂組成物および発泡性樹脂シートは、簡易な組成であり、軽量化を図ることができる。
【0175】
その結果、本発明の発泡性樹脂シートを、それが配置される部材とともに加熱炉などに投入して高温で加熱しなくても、波長100μm〜1kmの電磁波の照射によって発泡できる。そのため、例えば、熱可塑性樹脂(プラスチック)などからなる樹脂成形品など、低温発泡が必要とされる各種産業分野に用いることができる。
【0176】
例えば、上記した発泡性樹脂シートが発泡した発泡体は、各種の部材の間または中空部材の内部空間に充填する各種産業分野の産業製品の充填材として用いることができる。
【0177】
各種の部材の間または中空部材の内部空間に充填するには、例えば、各種の部材の間または中空部材の内部空間に、発泡性樹脂シートを設置して、その後、設置された発泡性樹脂シートに、波長100μm〜1kmの電磁波を照射することにより、発泡性樹脂シートを発泡させて、発泡体を形成する。これにより、形成された発泡体によって、部材の間または中空部材の内部空間を充填する。
【0178】
そして、上記した充填材は、上記した部材または中空部材に対する、補強、制振(防振)、防音、防塵、断熱、緩衝、水密および気密、または、接着など、種々の効果を付与することができる。そのため、各種の部材の間または中空部材の内部空間に充填する、例えば、補強材、制振材(防振材)、防音材、防塵材、断熱材、緩衝材、止水材、封止材、または、接着材など、各種の産業製品の充填材として、好適に用いることができる。
【0179】
とりわけ、発泡性樹脂シートは、例えば、自動車、電気製品、住宅製品などのシールに用いられる。その場合には、発泡性樹脂シートを、例えば、自動車、電気製品または住宅製品の隙間に取り付けた後、波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡させる。これにより、発泡体により、かかる隙間を充填する。
【0180】
つまり、発泡性樹脂シートは、好ましくは、自動車外装シール材、電気製品シール材、住宅用シール材などとして、自動車、電気製品、住宅製品などの各種部材の隙間をシールするためのシール材として用いられる。そして、発泡体を、自動車、電気製品または住宅製品の防振材、防音材、防塵材、断熱材、緩衝材、止水材、封止材などとして、防振、防音、防塵、断熱、緩衝、水密および気密することができる。
【0181】
また、本発明の発泡性樹脂シートは、例えば、自動車の構造部材、具体的には、低温発泡が必要とされる樹脂製のバンパやインストルメントパネルなどの補強に用いられる。その場合には、まず、発泡性樹脂シートに、ガラスクロスなどから形成される拘束層を積層させることにより補強シートを作製する。次いで、作製した補強シートの発泡性樹脂シートを、上記した自動車の構造部材に貼着し、その後、波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡させる。そして、発泡体を備える鋼板補強シートにより、自動車の構造部材を補強することができる。
【0182】
なお、発泡性樹脂シートに波長100μm〜1kmの電磁波を照射するには、発泡性樹脂シートとそれが貼着された上記した自動車の構造部材とを、公知の電磁波発生装置に配置して、それらに波長100μm〜1kmの電磁波を照射する。あるいは、発泡性樹脂シートのみに波長100μm〜1kmの電磁波を照射することもできる。
【0183】
具体的には、電磁波がマイクロ波の場合は、まず、照射源と、それを覆う金属からなる防護壁とを備えるマイクロ波発生装置を用意する。次いで、発泡性樹脂シートが貼着された自動車の構造部材を防護壁内に投入して、その後、マイクロ波を照射する。
【0184】
一方、電磁波が超短・中波の場合は、まず、並行して対向配置される2つの電極を備える超短・中波発生装置を用意する。次いで、発泡性樹脂シートが貼着された自動車の構造部材を、2つの電極の間に配置する。次いで、電極に電圧を印加して電極間に超短・中波を発生させることにより、超短・中波を発泡性樹脂シートに照射する。
【0185】
超短・中波を用いる方法では、自動車の構造部材を電極の間に配置すればよく、マイクロ波の照射のように、防護壁内に投入することなく、超短・中波を発泡性シートに選択的かつ簡易に照射することができる。
【0186】
このようにして得られる発泡体は、その密度が、例えば、0.03〜1.0g/cm、好ましくは、0.05〜0.5g/cm、さらに好ましくは、0.06〜0.2g/cmである。なお、発泡体の密度は、JIS Z8807に準拠して測定される。
【0187】
発泡体の密度が上記した範囲外であれば、発泡体の充填性が低下する場合がある。
【0188】
また、発泡倍率(つまり、発泡性樹脂シートの発泡時の体積発泡倍率)が、例えば、2〜30倍、好ましくは、2.5〜20倍、さらに好ましくは、3〜10倍である。
【0189】
なお、発泡倍率は、[発泡性樹脂シート(発泡前の発泡性樹脂シート)の密度]/[発泡体(発泡後の発泡性樹脂シート)密度]として算出される。
【実施例】
【0190】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。
【0191】
実施例1〜9および比較例1〜5
各成分を、表1の配合処方に従って、ミキシングロールにて、50℃で、回転数10min−1、10分間混練して、発泡性樹脂組成物を混練物として調製した。その後、調製した発泡性樹脂組成物を、50℃、圧力50kg/cmで、5分間プレスすることにより、厚み2mmの発泡性樹脂シートを形成した。
【0192】
(評価)
(1) 密度および発泡倍率
上記により得られた発泡性樹脂シートを、直径19mmの円形状に打ち抜いてサンプルを作製し、その後、実施例1〜4および比較例1〜3については、作製したサンプルを、マイクロ波照射装置(型番CRE173−5、Convesta社製)の防護壁内に投入し、出力260Wで、所定時間(表1参照)、マイクロ波(波長12.2cm、周波数2.45GHz)をサンプルに照射することにより、サンプルを発泡させて、発泡体を得た。
【0193】
一方、実施例5〜9、ならび、比較例4および5については、作製したサンプルを、超短・中波発生装置(トランジスタ式高周波発振装置、電極間のギャップ15mm、山本ビニター社製)の電極の間に配置し、出力100Wで、所定時間(表1参照)、超短・中波(波長23m、周波数13MHz)をサンプルに照射させることにより、サンプルを発泡させて、発泡体を得た。
【0194】
発泡前後(発泡前のサンプルおよび発泡後の発泡体)の密度を、JIS Z8807に準拠してそれぞれ測定し、それらから発泡倍率を算出した。それらの結果を表1に示す。
(2) 発泡充填性
上記により得られた発泡性樹脂シートを、長さ50mm、幅20mmのサイズに切り取ってサンプル(1)を作製し、その後、作製したサンプル(1)を、図1(a)に示すサイズ(長さ50mm、幅25mm)のプラスチック製の試験板(2)の間において、下側の試験板(2)の上面の中央に載置した。
【0195】
その後、実施例1〜4および比較例1〜3については、それらを、マイクロ波照射装置(型番CRE173−5、Convesta社製)の防護壁内に投入し、上記と同様の条件で、マイクロ波をサンプルに照射することにより、図1(b)に示すように、サンプル(1)を発泡させて、発泡体(3)を得た。
【0196】
一方、実施例5〜9、ならび、比較例4および5については、プラスチック製の試験板(2)の間におかれたサンプル(1)を、超短・中波発生装置(トランジスタ式高周波発振装置、電極間のギャップ15mm、山本ビニター社製)の電極の間に配置し、上記と同様の条件で、超短・中波をサンプルに照射することにより、図1(b)に示すように、サンプル(1)を発泡させて、発泡体(3)を得た。
【0197】
そして、試験板(2)の間における発泡体(3)の発泡充填性を目視にて下記の基準にて評価した。その結果を表1に示す。
【0198】
(評価基準)
○:発泡充填性が良好であった。
【0199】
×:隙間(未充填部分)があり、発泡充填性がやや不良であった。
【0200】
【表1】

【0201】
なお、表1中、発泡性樹脂組成物の配合処方の欄の数値は、各成分の質量部数を示す。
【0202】
また、表1中、各成分において、「*」にて示す化合物および評価を以下に詳説する。
Nipol 1312*1:液体状のNBR、粘度4.5〜7Pa・s(70℃)、ニトリル含量:31質量%以上36質量%未満(中高ニトリル)、比重0.98、日本ゼオン社製
Nipol DN003*2:固体状のNBR、ムーニー粘度:77.5(ML1+4、100℃)、アクリロニトリル含量50質量%(極高ニトリル)、比重1.02、日本ゼオン社製
Nipol DN219*3:固体状のNBR、ムーニー粘度:27(ML1+4、100℃)、アクリロニトリル含量:33.5質量%(中高ニトリル)、比重0.98、日本ゼオン社製
Oppanol B50*4:ポリイソブチレンゴム、重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)340,000、密度0.92g/cm、比誘電率εr’2.2(50Hz、23℃)、誘電体損失角tanδ5×10−4以下(50Hz、23℃)、BASF社製
Oppanol B12*5:ポリイソブチレンゴム、重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)51,000、密度0.92g/cm、比誘電率εr’2.2(50Hz、23℃)、誘電体損失角tanδ5×10−4以下(50Hz、23℃)、BASF社製
KE−550−U*6:シリコーンゴム、密度1.21g/cm
炭酸カルシウム*7:平均粒子径0.05μm
酸化亜鉛*8:酸化亜鉛2種品、平均粒子径0.24〜0.3μm、三井金属鉱業社製
タルク*9:かさ密度0.5g/cm、350メッシュ篩残分1質量%以下、ソブエクレー社製
ジエチレングリコール*10:1級ジエチレングリコール、沸点244℃、密度1.12g/cm、キシダ化学社製
プロピレングリコール*11:工業用プロピレングリコール、沸点187℃、密度1.03g/cm、比誘電率32、ADEKA社製
HJM*12:発泡性ポリスチレンビーズ、炭化水素含有、平均粒子径0.5mm、熱膨張開始温度70℃、密度(熱膨張前)1.00g/cm、膨張倍率45倍(100℃)、積水化成品工業
K−BS*13:発泡性ポリスチレンビーズ、炭化水素含有、平均粒子径0.6mm、熱膨張開始温度70℃、密度(熱膨張前)1.00g/cm、膨張倍率45倍(100℃)、カネカ社製
K−M*14:発泡性ポリスチレンビーズ、炭化水素含有、平均粒子径1mm、熱膨張開始温度70℃、密度(熱膨張前)1.00g/cm、膨張倍率45倍(100℃)、カネカ社製
密度*15:JIS Z8807に準拠して測定
発泡倍率*16:体積発泡倍率=発泡前のサンプルの密度/発泡後の発泡体の密度
発泡前*17:照射による発泡前
発泡後*18:照射による発泡後
【符号の説明】
【0203】
1 発泡性樹脂シート(サンプル)
2 試験板(中空部材)
3 発泡体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性樹脂と、
中実の樹脂マトリクスに熱膨張性物質が含有されている発泡性樹脂粒子とを含有することを特徴とする、発泡性樹脂組成物。
【請求項2】
前記極性樹脂は、固体状の極性樹脂と、液体状の極性樹脂とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項3】
前記極性樹脂において、前記固体状の極性樹脂は、前記液体状の極性樹脂より多く含まれていることを特徴とする、請求項2に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、充填剤を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項5】
無極性樹脂と、
極性物質と、
中実の樹脂マトリクスに熱膨張性物質が含有されている発泡性樹脂粒子とを含有することを特徴とする、発泡性樹脂組成物。
【請求項6】
前記極性物質が、ヒドロキシル基を含有することを特徴とする、請求項5に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項7】
波長100μm〜1kmの電磁波の照射によって発泡することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の発泡性樹脂組成物がシート状に形成されていることを特徴とする、発泡性樹脂シート。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の発泡性樹脂組成物を波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡させることにより得られることを特徴とする、発泡体。
【請求項10】
請求項8に記載の発泡性樹脂シートを波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡させることにより得られることを特徴とする、発泡体。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の発泡性樹脂組成物を、波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡させることを特徴とする、発泡体の製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載の発泡性樹脂シートを、波長100μm〜1kmの電磁波の照射により発泡させることを特徴とする、発泡体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−107224(P2012−107224A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232771(P2011−232771)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】