説明

発泡性耐火塗料

【課題】非火災時の塗膜諸物性に優れるとともに、火災時には十分な発泡性、強度等を有する発泡炭化層が形成でき、優れた耐火性能を発揮することができる水性タイプの発泡性耐火塗料を提供する。
【解決手段】結合材、リン化合物、多価アルコール、及び必要に応じ造膜助剤を含む発泡性耐火塗料において、前記結合材は、官能基として水酸基を有し、樹脂固形分における水酸基価が0.1〜100mgKOH/gである合成樹脂エマルションを含む。結合材の乾燥被膜の125℃におけるメルトマスフローレイトは、5g/10min未満、190℃におけるメルトマスフローレイトは0.1g/10min以上100g/10min以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な発泡性耐火塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材や、コンクリート、木材、合成樹脂等の基材を火災から保護する材料として、火災時の温度上昇によって発泡層を形成する発泡性耐火塗料が知られている。
【0003】
発泡性耐火塗料は、塗料の成分中に、温度上昇により分解して不燃性のガスを発生する成分と、炭素化して多孔質の炭化層を形成する成分を含有しており、不燃性のガスの発生で火災の消火効果を発揮し、炭素化成分による多孔質炭化層の形成により断熱効果を発揮するものである。発泡性耐火塗料の利点としては、従来の耐火被覆材に比較すると薄膜化が可能であり、圧迫感が少なくスッキリとした感じに仕上げられること等が挙げられる。
【0004】
このような発泡性耐火塗料に関し、耐火性等の諸物性向上を目的とした種々の提案がなされている。例えば、特開平10-7947号公報(特許文献1)においては、難燃剤として、融点150℃以上で臭素含有率が50重量%以上の含臭素リン酸エステルを用いることが記載されている。特開平10-17796号公報(特許文献2)には、多価アルコール、含窒素発泡剤、難燃性脱水剤、合成樹脂に加えて、さらに膨張性黒鉛を配合することが記載されている。特開2000-169853号公報(特許文献3)には、アゾ化合物、ヒドラゾ化合物、ニトロソ化合物及びスルホニルヒドラジド化合物より選ばれる少なくとも1種と、膨張黒鉛等を併せて配合することが記載されている。特開2001-115093号公報(特許文献4)には、酸化チタンとしてアナターゼ型の結晶型を有する酸化チタンを配合することが記載されている。特開2001-323216号公報(特許文献5)においては、無機充填剤、リン系難燃剤等の平均粒度を10〜50μmに調整することが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、塗料分野では、環境に対する負荷低減の動き等を背景に水性化が進んでおり、このような発泡性耐火塗料についても、水性タイプの塗料が要望されている。上記特許文献においても、結合材として合成樹脂エマルション等の樹脂が使用できることを記載したものがある。
しかしながら、合成樹脂エマルションを用いた発泡性耐火塗料では、その配合処方に種々工夫を凝らしても、発泡炭化層の発泡性、強度等において実用上満足な性能を得ることは難しいのが現状である。
【0006】
合成樹脂エマルションを用いた発泡性耐火塗料の発泡性改良に関する技術としては、特開2001−164192号公報(特許文献6)が挙げられる。当該公報には、発泡性耐火塗料におけるバインダーとして、合成樹脂エマルションに可塑剤を添加して、120℃におけるメルトフローレートを5〜120g/10minに調整したものを使用することが記載されている。
しかしながら、このようなバインダーで構成される発泡性耐火塗料は、その形成塗膜が高温に晒されるとすぐに軟化し、柱、梁等の施工部位において、発泡前ないし発泡初期段階に塗膜の流下、ずり落ち、脱落等が生じてしまうおそれがある。また、発泡炭化層がある程度形成された場合であっても、発泡炭化層の緻密性に欠き、強度が不十分となりやすい。さらに、通常の状態下(非火災時)でも塗膜表面が軟らかく、耐汚染性、耐傷つき性等の塗膜物性も不十分である。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、非火災時の塗膜諸物性に優れるとともに、火災時には十分な発泡性、強度等を有する発泡炭化層が形成でき、優れた耐火性能を発揮することができる水性タイプの発泡性耐火塗料を提供することを目的とするものである。
【0008】
【特許文献1】特開平10-7947号公報
【特許文献2】特開平10-17796号公報
【特許文献3】特開2000-169853号公報
【特許文献4】特開2001-115093号公報
【特許文献5】特開2001-323216号公報
【特許文献6】特開2001−164192号公報
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、合成樹脂エマルションを結合材とする発泡性耐火塗料の耐火性能については、その合成樹脂エマルションを構成する樹脂成分の官能基の影響が極めて大きいことを突き止め、さらには、125℃及び190℃における合成樹脂エマルションのメルトマスフローレイト(以下「MFR」ともいう)を制御することが有効であることを見出し、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は、下記の発泡性耐火塗料に係るものである。
【0010】
1.結合材、リン化合物、多価アルコール、及び必要に応じ造膜助剤を含む発泡性耐火塗料であって、
前記結合材は、官能基として水酸基を有し、樹脂固形分における水酸基価が0.1〜100mgKOH/gである合成樹脂エマルションを含み、結合材の乾燥被膜(造膜助剤を含む場合は、結合材と造膜助剤の混合物の乾燥被膜)の125℃におけるメルトマスフローレイトが5g/10min未満、190℃におけるメルトマスフローレイトが0.1g/10min以上100g/10min以下であることを特徴とする発泡性耐火塗料。
2.前記合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対する、造膜助剤の含有量が50重量部以下である1.記載の発泡性耐火塗料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発泡性耐火塗料によれば、火災時において発泡性に優れた緻密な発泡炭化層が形成でき、鋼材等の基材の温度上昇を効果的に抑制することができる。非火災時には、耐汚染性、耐傷つき性等の塗膜諸物性において十分な性能を具備するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
本発明の発泡性耐火塗料は、結合材、リン化合物、及び多価アルコールを必須成分として含むものである。このうち、結合材としては、官能基として水酸基を有し、樹脂固形分における水酸基価が0.1〜100mgKOH/gである合成樹脂エマルションを用いる。本発明では、このような水酸基を有する合成樹脂エマルションを必須成分として使用することにより、発泡性に優れるとともに、その発泡状態において緻密さを具備する強度の高い発泡炭化層を形成することが可能となる。水酸基としては、炭素原子に結合したものが好適である。
【0013】
合成樹脂エマルションの樹脂固形分における水酸基価は0.1〜100mgKOH/gであり、好ましくは1〜80mgKOH/g、より好ましくは2〜60mgKOH/gである。合成樹脂エマルションの水酸基価が小さすぎる場合は、発泡炭化層の緻密さを高めることができず、発泡炭化層の強度が不十分となる。逆に水酸基価が大きすぎる場合は、発泡炭化層の発泡倍率が低下し、断熱性において十分な性能が得られ難い。なお、本発明における水酸基価は、樹脂固形分1gに含まれる水酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数によって表される値である。
【0014】
本発明における合成樹脂エマルションとしては、上記条件を満足するものが使用できるが、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または芳香族モノマーを主成分とするモノマー群の乳化重合物であり、該モノマー群において水酸基含有モノマーを0.5〜15重量%の比率で含むものが好適である。このような合成樹脂エマルションを使用すれば、本発明の効果を安定して得ることができる。また、塗膜の耐水性、耐久性等の諸物性を高めることもできる。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記する。
【0015】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。モノマー群における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重量比率は、通常30重量%以上、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である。上限は特に限定されないが、通常99.5重量%以下(好ましくは99重量%以下)程度である。
芳香族モノマーの具体例としては、例えばスチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。モノマー群における芳香族モノマーの重量比率は、通常5〜70重量%、好ましくは10〜50重量%である。
本発明における合成樹脂エマルションでは、そのモノマー組成においてこのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族モノマーのいずれか一方、または両方を含むものが使用できる。とりわけ(メタ)アクリル酸アルキルエステルと芳香族モノマーの両方を使用すれば、耐水性、耐火性等において有利な効果が得られ好ましい。
【0016】
本発明における合成樹脂エマルションでは、水酸基含有モノマーによって水酸基を付与することが望ましい。本発明では、このような水酸基含有モノマーが共重合された合成樹脂エマルションを使用することにより、発泡性に優れるとともに、その発泡状態において緻密さを具備する発泡炭化層を形成することが可能となる。具体的に、水酸基含有モノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。この他、水酸基とポリアルキレンオキサイド基を併有するモノマー、例えばポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート等も水酸基含有モノマーとして使用できる。このような水酸基とポリアルキレンオキサイド基を併有するモノマーを使用した場合は、上記効果に加え、貯蔵安定性、機械攪拌安定性等の塗料安定性を高めることができる。
モノマー群における水酸基含有モノマーの比率は、通常0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%である。水酸基含有モノマーが0.1重量%よりも少ない場合は、発泡炭化層の緻密さを高めることが難しく、発泡炭化層の強度が不十分となりやすい。水酸基含有モノマーが15重量%よりも多い場合は、発泡倍率が不十分となり、耐水性等にも悪影響を及ぼすおそれがある。
【0017】
本発明における合成樹脂エマルションでは、そのモノマー成分として、ポリアルキレンオキサイド基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、及びニトリル基含有モノマーから選ばれる非イオン性モノマーを含むことが望ましい。このようなモノマーを使用することにより、高温時の発泡性能を保持しつつ、貯蔵安定性、機械攪拌安定性等の塗料安定性を高めることができる。
具体的に、ポリアルキレンオキサイド基含有モノマーとしては、例えばメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。カルボニル基含有モノマーとしては、例えばアクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等が挙げられる。ニトリル基含有モノマーとしては、例えばアクリロニトリル、メタアクリロニトリル等が挙げられる。
モノマー群における上記非イオン性モノマーの比率(合計重量比率)は、通常0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%とすることが望ましい。このような範囲内であれば、塗料安定性の点において優れた効果を得ることができる。
【0018】
本発明における合成樹脂エマルションでは、必要に応じ上記以外の重合性モノマーを構成成分とするものであってもよい。このような重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等のカルボキシル基含有モノマー;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのモノリン酸エステル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのモノリン酸エステル、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのモノリン酸エステル等のリン酸基含有モノマー;アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2-メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル等のアミノ基含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;その他、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、クロロプレン等が挙げられる。このうち、カルボキシル基含有モノマー、リン酸基含有モノマー及びスルホン酸基含有モノマーから選ばれるイオン性モノマーは、モノマー群において1重量%以下(好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下)の範囲内で使用することが望ましい。モノマー群においてかかるイオン性モノマーを含まない態様も好適である。
【0019】
本発明における合成樹脂エマルションとしては、特に、対水溶解度1g/100ml以下の疎水性モノマーを主成分とするモノマー群の乳化重合物であり、該モノマー群において水酸基含有モノマーを0.5〜15重量%の比率で含むもの好適である。一般に、合成樹脂エマルションを結合材とする発泡性耐火塗料では、十分な耐水性が得られず、降雨、結露等の影響により本来の発泡性能が発揮されなくなるおそれがある。これに対し、このような構成成分からなる合成樹脂エマルションを使用すれば、優れた耐水性を具備する塗膜が形成でき、降雨や結露等の影響による発泡性能の低下を抑制し、安定した発泡性能を発揮することが可能となる。なお、ここに言う対水溶解度とは、温度20℃の水100mlに対して溶解するモノマーの重量を示すものである。
【0020】
このような疎水性モノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げられる。このような疎水性モノマーの対水溶解度は1g/100ml以下であるが、好ましくは0.9/100ml以下、より好ましくは0.8g/100ml以下である。
【0021】
モノマー群における上記疎水性モノマーの重量比率は、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上である。上限は特に限定されないが、通常99.5重量%以下(好ましくは99重量%以下)程度である。
【0022】
本発明における合成樹脂エマルションは、上記重合性モノマーを適宜混合したモノマー群を乳化重合することにより製造することができる。重合方法としては公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合等を採用することもできる。重合時には、乳化剤、開始剤、分散剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤等を使用することもできる。乳化剤として反応性乳化剤を使用することもできる。
【0023】
合成樹脂エマルションのガラス転移温度は、上記重合性モノマーの種類、混合比率等を選定することで調整できる。このガラス転移温度は、最終的な要求性能等を考慮して適宜設定すればよいが、通常は−50〜80℃程度、好ましくは−40〜60℃程度である。本発明では、ガラス転移温度が異なる2種以上の合成樹脂エマルションを使用することもできる。なお、合成樹脂エマルションのガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。
【0024】
本発明の発泡性耐火塗料では、このような合成樹脂エマルションの1種または2種以上を結合材として用いるものであるが、本発明の効果が損なわれない限り、その他の結合材を併用することもできる。複数の結合材を使用する場合、上記合成樹脂エマルションの比率は結合材の固形分中50重量%以上(好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上)となるようにすればよい。勿論、結合材として、上記合成樹脂エマルションのみを使用する態様も好適である。
【0025】
本発明では、結合材の乾燥被膜(造膜助剤を含む場合は、結合材と造膜助剤の混合物の乾燥被膜)の125℃におけるMFRを5g/10min未満(好ましくは4g/10min以下、より好ましくは3g/10min以下)とし、かつ、190℃におけるMFRを0.1g/10min以上100g/10min以下(好ましくは0.3g/10min以上80g/10min以下、より好ましくは0.5g/10min以上60g/10min以下)に設定する。
【0026】
本発明では、このような物性値を具備する結合材を用いることにより、火災時には、発泡性に優れた緻密な発泡炭化層が形成でき、非火災時には、耐汚染性、耐傷つき性等の塗膜諸物性において十分な性能を具備する塗膜を得ることができる。具体的には、125℃におけるMFRが上記範囲内であることにより、形成塗膜が高温に晒されたときの、結合材の早期軟化が抑制され、塗膜の密着性低下、垂れ、流下、ずり落ち、脱落等を防止することができる。さらに、非火災時における耐汚染性、耐傷つき性等にも有利である。190℃におけるMFRが上記範囲内であることにより、発泡開始時に結合材が適度に軟化し、発泡性、緻密性、強度等に優れた発泡炭化層が得られる。発泡炭化層のずり落ち等も抑制できる。
【0027】
125℃のMFRが上記範囲を超えると、形成塗膜が高温に晒された場合、発泡炭化層形成前における塗膜の密着性低下や、塗膜の垂れ、流下、ずり落ち、脱落等が生じやすくなる。また、非火災時における耐汚染性、耐傷つき性等の塗膜物性が不十分となる。190℃のMFRが上記範囲よりも小さすぎると、火災時の塗膜の発泡が不十分となり、基材の温度上昇抑制に有効な断熱性能が得られ難くなる。190℃のMFRが上記範囲を超える場合は、発泡炭化層において大きな空洞が生じたり、気泡が突き破られたりして、発泡炭化層の緻密性や強度が損なわれてしまう。また、発泡炭化層のずり落ち等が生じやすくなる。
【0028】
なお、本発明におけるMFRは、JIS K7210:1999「熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」により、試験温度125℃、190℃において、それぞれ荷重2.16kgとして測定されるものである。この測定には、250mm×175mmのポリプロピレン製トレーに固形分が32gとなるように結合材を流し込み、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で3日間乾燥して得た被膜を、試験装置のシリンダ内に充填可能な大きさに細断したものを試料として供する。
【0029】
本発明の発泡性耐火塗料におけるリン化合物は、火災時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、結合剤炭化促進効果等の少なくとも1つの効果を発揮し、樹脂の燃焼を抑制する作用を発揮することができる成分である。このようなリン化合物としては、例えばトリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N, N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート、三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物等が挙げられる。このうち、本発明では特にポリリン酸アンモニウムが好ましい。これらリン化合物は、表面処理や表面被覆が施されたものであってもよい。リン化合物の混合比率は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、通常50〜2000重量部(好ましくは100〜1000重量部)である。
【0030】
多価アルコールは、火災による結合剤の炭化とともにそれ自体も脱水炭化していくことにより、断熱性に優れた厚みのある発泡炭化層を形成する作用を有する。多価アルコールとしては、例えばペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ネオペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、イノシトール、マンニトール、グルコースフルクトース、デンプン、セルロース等が挙げられる。多価アルコールの混合比率は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、通常5〜600重量部(好ましくは10〜400重量部)である。
【0031】
本発明の発泡性耐火塗料には、必要に応じ造膜助剤を加えることができる。この造膜助剤は、基本的には、塗膜形成過程における合成樹脂エマルション粒子同士の融着を補助する機能を有し、塗膜形成後には塗膜外に気散するものである。但し、諸条件によっては塗膜形成後にその一部が残存し、樹脂の可塑化に影響を与える場合がある。
【0032】
本発明では、塗料中に造膜助剤を含む場合であっても、125℃及び190℃におけるMFRが前述の範囲内となるように調整する。造膜助剤の含有量は、MFRが前記規定値を満たす範囲内で設定すればよいが、その含有量が多すぎるとMFRが高くなってしまい、先に述べたような本発明の効果が得られ難くなる。具体的に、造膜助剤の含有量は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し50重量部以下(好ましくは40重量部以下)とすることが望ましい。本発明塗料においては、塗膜形成能が発現される限り造膜助剤は混合しなくてもよい(すなわち含有量0重量部)が、安定した塗膜形成能を得るには、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し2重量部以上(好ましくは5重量部以上)混合することが望ましい。
【0033】
造膜助剤の具体例としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0034】
本発明の発泡性耐火塗料には、上述の各成分に加え充填剤を配合することもできる。充填剤としては、例えば、タルク等の珪酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;粘土、クレー、シラス、マイカ、シリカ等の天然鉱物類等が挙げられる。充填剤の混合比率は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、通常5〜600重量部(好ましくは10〜400重量部)である。
【0035】
また、本発明塗料には、発泡剤を配合することもできる。発泡剤としては、例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾビステトラゾール及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。発泡剤の混合比率は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、通常5〜600重量部(好ましくは10〜400重量部)である。
【0036】
本発明塗料には、上記以外の成分として、通常塗料に使用可能な各種添加剤等を配合することもできる。このような成分としては、例えば顔料、繊維、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。また、膨張性黒鉛、未膨張バーミキュライト等の膨張性物質を配合することもできる。
本発明塗料は、以上のような成分を常法により均一に混合することで製造することができる。通常は、1液型の形態とすればよい。
【0037】
本発明の発泡性耐火塗料は、耐火性を付与すべき被塗物に塗付積層することによってその効果を発揮することができる。被塗物としては、例えば、壁、柱、床、梁、屋根、階段の各部位が挙げられる。このような被塗物は、コンクリート、鋼材等の基材で形成されており、防錆処理等が施されていてもよい。また、本発明の発泡性耐火塗料は、コンクリート、鋼材だけでなく、木質部材、樹脂系部材等への基材に適用することも可能である。
【0038】
発泡性耐火塗料を被塗物に塗付する際には、スプレー、ローラー、刷毛、こて、へら等の塗装器具を使用して、一回ないし数回塗り重ねて塗装すれば良い。塗装時には、必要に応じ水等で塗料を希釈することもできる。最終的に形成される発泡性耐火塗料の塗膜厚は、所望の耐火性能、適用部位等により適宜設定すれば良いが、通常は0.2〜5mm程度である。
【0039】
本発明では、発泡性耐火塗料により形成される塗膜を保護するために、必要に応じ上塗層を積層することもできる。このような上塗層は、公知の水性型あるいは溶剤型の塗料を塗付することによって形成することができる。上塗層としては、例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、フッ素樹脂系等の塗料を用いることができる。これらの塗装は、公知の塗装方法によれば良く、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。ただし、本発明の範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
水145重量部、ドデシル硫酸ナトリウム4重量部、過硫酸アンモニウム0.5重量部と、表1の合成例1に示すモノマー(計100重量部)を混合し、窒素雰囲気下80℃で3時間、乳化重合を行い合成樹脂エマルションを製造した。以上の方法で得られた合成樹脂エマルションは、固形分41重量%であり、平均粒子径は130nmであった。なお、表1に示すモノマーのうち、対水溶解度1g/100ml以下の疎水性モノマーは、スチレン(対水溶解度0.03g/100ml)、シクロヘキシルメタクリレート(対水溶解度0g/100ml)、n−ブチルアクリレート(対水溶解度0.14g/100ml)である。メタクリル酸メチルの対水溶解度は1.6g/100mlである。
【0042】
次に、上記合成樹脂エマルション244重量部(固形分100重量部)に対し、ポリリン酸アンモニウム240重量部、ジペンタエリスリトール50重量部、造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート30重量部、二酸化チタン62重量部、水15重量部、分散剤10重量部、消泡剤2重量部、粘性調整剤1重量部を常法にて均一に混合、攪拌し、発泡性耐火塗料を製造した。なお、合成樹脂エマルションと造膜助剤を上記比率で混合して得た乾燥被膜の、125℃におけるMFRは2g/10min、190℃におけるMFRは24g/10minであった。
この塗料を用いて、次の各種試験を行った。
【0043】
(発泡倍率)
黒皮鋼板に塗料をフィルムアプリケーターにてwet膜厚1mmで塗付し、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下(以下「標準状態」という)で7日間養生させ、試験体を得た。この試験体を700℃で10分間加熱し、初期膜厚を基準とした発泡倍率を測定した。結果を表2に示す。なお、この試験における発泡倍率の評価基準は、発泡倍率15倍以上を「◎」、発泡倍率10倍以上〜15倍未満を「○」、発泡倍率5倍以上〜10倍未満を「△」、発泡倍率5倍未満を「×」とした。
【0044】
(緻密性)
発泡倍率を測定した試験体を切断し、その断面における発泡炭化層の緻密性を目視にて確認した。結果を表2に示す。評価基準は、緻密性が高いものを「◎」、緻密性が低いものを「×」とする4段階(◎>○>△>×)とした。
【0045】
(耐水性)
黒皮鋼板に塗料をフィルムアプリケーターにてwet膜厚1mmで塗付し、標準状態で7日間養生させ、試験体を得た。この試験体を23℃の水に3日間浸漬した後、その塗膜の表面状態を目視にて確認した。結果は表2に示す。評価基準は、ブリスターの発生が認められなかったものを「◎」、ブリスターの発生面積10%未満のものを「○」、ブリスターの発生面積が10%以上〜20%未満のものを「△」、ブリスターの発生面積が20%以上のものを「×」とした。
【0046】
(耐汚染性)
黒皮鋼板に塗料をフィルムアプリケーターにてwet膜厚1mmで塗付し、標準状態で7日間養生させ、試験体を得た。この試験体の表面に汚れ成分(黒色硅砂)を散布し、2時間放置した。次いで、試験板を垂直に立てた後、汚れ成分の残存の程度により耐汚染性を確認した。評価基準は、汚れ成分が残存しなかったものを「○」、残存したものを「×」とした。
【0047】
(耐火性)
錆止め塗装された角鋼管(断面300mm×300mm、高さ1200mm)に対し、塗料を乾燥厚み2.5mmとなるようにローラーで塗り付け、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)にて7日間乾燥させることにより試験体を作製した。この試験体を用いて加熱試験を実施した。この加熱試験は、ISO834の標準加熱曲線に準じて一定時間(1時間)加熱することにより行った。
この試験では、加熱時の基材温度を測定し、その最高値を確認するとともに、加熱後の外観を目視にて確認した。基材温度の評価基準は、最高値が500℃未満であったものを「◎」、500℃以上550℃未満を「○」、550℃以上600℃未満を「△」、600℃以上を「×」とした。また、外観の評価は、異常が認められなかったものを「○」、異常(ずれ落ち、脱落、不均一化等)が認められたものを「×」とした。
【0048】
(実施例2)
表1の合成例2に示すモノマー配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で合成樹脂エマルションを製造した。この合成樹脂エマルションは、固形分41重量%であり、平均粒子径は134nmであった。
次いで、合成例1の合成樹脂エマルションに替えて、この合成例2の合成樹脂エマルションを使用した以外は、実施例1と同様の方法で発泡耐火塗料を製造した。なお、実施例2において、合成樹脂エマルションと造膜助剤の混合物より得た乾燥被膜の125℃におけるMFRは2g/10min、190℃におけるMFRは28g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0049】
(実施例3)
表1の合成例3に示すモノマー配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で合成樹脂エマルションを製造した。この合成樹脂エマルションは、固形分41重量%であり、平均粒子径は128nmであった。
次いで、合成例1の合成樹脂エマルションに替えて、この合成例3の合成樹脂エマルションを使用した以外は、実施例1と同様の方法で発泡耐火塗料を製造した。なお、実施例3において、合成樹脂エマルションと造膜助剤の混合物より得た乾燥被膜の125℃におけるMFRは2g/10min、190℃におけるMFRは31g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0050】
(実施例4)
表1の合成例4に示すモノマー配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で合成樹脂エマルションを製造した。この合成樹脂エマルションは、固形分41重量%であり、平均粒子径は132nmであった。
次いで、合成例1の合成樹脂エマルションに替えて、この合成例4の合成樹脂エマルションを使用した以外は、実施例1と同様の方法で発泡耐火塗料を製造した。なお、実施例4において、合成樹脂エマルションと造膜助剤の混合物より得た乾燥被膜の125℃におけるMFRは2g/10min、190℃におけるMFRは24g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0051】
(実施例5)
表1の合成例5に示すモノマー配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で合成樹脂エマルションを製造した。この合成樹脂エマルションは、固形分41重量%であり、平均粒子径は127nmであった。
次いで、合成例1の合成樹脂エマルションに替えて、この合成例5の合成樹脂エマルションを使用した以外は、実施例1と同様の方法で発泡耐火塗料を製造した。なお、実施例5において、合成樹脂エマルションと造膜助剤の混合物より得た乾燥被膜の125℃におけるMFRは2g/10min、190℃におけるMFRは32g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0052】
(実施例6)
表1の合成例6に示すモノマー配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で合成樹脂エマルションを製造した。この合成樹脂エマルションは、固形分41重量%であり、平均粒子径は129nmであった。
次いで、合成例1の合成樹脂エマルションに替えて、この合成例6の合成樹脂エマルションを使用した以外は、実施例1と同様の方法で発泡耐火塗料を製造した。なお、実施例6において、合成樹脂エマルションと造膜助剤の混合物より得た乾燥被膜の125℃におけるMFRは2g/10min、190℃におけるMFRは28g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0053】
(実施例7)
表1の合成例7に示すモノマー配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で合成樹脂エマルションを製造した。この合成樹脂エマルションは、固形分41重量%であり、平均粒子径は130nmであった。
次いで、合成例1の合成樹脂エマルションに替えて、この合成例7の合成樹脂エマルションを使用した以外は、実施例1と同様の方法で発泡耐火塗料を製造した。なお、実施例7において、合成樹脂エマルションと造膜助剤の混合物より得た乾燥被膜の125℃におけるMFRは2g/10min、190℃におけるMFRは32g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0054】
(実施例8)
表1の合成例8に示すモノマー配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で合成樹脂エマルションを製造した。この合成樹脂エマルションは、固形分41重量%であり、平均粒子径は132nmであった。
次いで、合成例1の合成樹脂エマルションに替えて、この合成例8の合成樹脂エマルションを使用した以外は、実施例1と同様の方法で発泡耐火塗料を製造した。なお、実施例8において、合成樹脂エマルションと造膜助剤の混合物より得た乾燥被膜の125℃におけるMFRは3g/10min、190℃におけるMFRは40g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0055】
(実施例9)
表1の合成例9に示すモノマー配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で合成樹脂エマルションを製造した。この合成樹脂エマルションは、固形分41重量%であり、平均粒子径は129nmであった。
次いで、合成例1の合成樹脂エマルションに替えて、この合成例9の合成樹脂エマルションを使用した以外は、実施例1と同様の方法で発泡耐火塗料を製造した。なお、実施例9において、合成樹脂エマルションと造膜助剤の混合物より得た乾燥被膜の125℃におけるMFRは2g/10min、190℃におけるMFRは22g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0056】
(実施例10)
合成例1の合成樹脂エマルション244重量部(固形分100重量部)に対し、ポリリン酸アンモニウム240重量部、ジペンタエリスリトール50重量部、造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート10重量部、二酸化チタン62重量部、水15重量部、分散剤10重量部、消泡剤2重量部、粘性調整剤1重量部を常法にて均一に混合、攪拌し、発泡性耐火塗料を製造した。なお、合成樹脂エマルションと造膜助剤を上記比率で混合して得た乾燥被膜の、125℃におけるMFRは0.3g/10min、190℃におけるMFRは9g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0057】
(実施例11)
合成例1の合成樹脂エマルション244重量部(固形分100重量部)に対し、ポリリン酸アンモニウム240重量部、ジペンタエリスリトール50重量部、造膜助剤としてエチレングリコールモノブチルエーテル15重量部、二酸化チタン62重量部、水5重量部、分散剤10重量部、消泡剤2重量部、粘性調整剤3重量部を常法にて均一に混合、攪拌し、発泡性耐火塗料を製造した。なお、合成樹脂エマルションと造膜助剤を上記比率で混合して得た乾燥被膜の、125℃におけるMFRは0.04g/10min、190℃におけるMFRは1g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0058】
(比較例1)
表1の合成例10に示すモノマー配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で合成樹脂エマルションを製造した。この合成樹脂エマルションは、固形分41重量%であり、平均粒子径は132nmであった。
次いで、合成例1の合成樹脂エマルションに替えて、この合成例10の合成樹脂エマルションを使用した以外は、実施例1と同様の方法で発泡耐火塗料を製造した。なお、比較例1において、合成樹脂エマルションと造膜助剤の混合物より得た乾燥被膜の125℃におけるMFRは2g/10min、190℃におけるMFRは24g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0059】
(比較例2)
表1の合成例11に示すモノマー配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で合成樹脂エマルションを製造した。この合成樹脂エマルションは、固形分41重量%であり、平均粒子径は130nmであった。
次いで、合成例1の合成樹脂エマルションに替えて、この合成例11の合成樹脂エマルションを使用した以外は、実施例1と同様の方法で発泡耐火塗料を製造した。なお、比較例2において、合成樹脂エマルションと造膜助剤の混合物より得た乾燥被膜の125℃におけるMFRは3g/10min、190℃におけるMFRは34g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0060】
(比較例3)
合成例1の合成樹脂エマルション244重量部(固形分100重量部)に対し、ポリリン酸アンモニウム240重量部、ジペンタエリスリトール50重量部、造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート60重量部、二酸化チタン62重量部、水20重量部、分散剤10重量部、消泡剤2重量部、粘性調整剤1重量部を常法にて均一に混合、攪拌し、発泡性耐火塗料を製造した。なお、合成樹脂エマルションと造膜助剤を上記比率で混合して得た乾燥被膜の、125℃におけるMFRは14g/10min、190℃におけるMFRは62g/10minであった。
得られた塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合材、リン化合物、多価アルコール、及び必要に応じ造膜助剤を含む発泡性耐火塗料であって、
前記結合材は、官能基として水酸基を有し、樹脂固形分における水酸基価が0.1〜100mgKOH/gである合成樹脂エマルションを含み、結合材の乾燥被膜(造膜助剤を含む場合は、結合材と造膜助剤の混合物の乾燥被膜)の125℃におけるメルトマスフローレイトが5g/10min未満、190℃におけるメルトマスフローレイトが0.1g/10min以上100g/10min以下であることを特徴とする発泡性耐火塗料。
【請求項2】
前記合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対する、造膜助剤の含有量が50重量部以下である請求項1記載の発泡性耐火塗料。

【公開番号】特開2008−13629(P2008−13629A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184699(P2006−184699)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】