説明

発泡成形体および発泡床材

【課題】 本発明は、リビングや階段等でも使用できる十分な意匠を持ち、且つ転倒などの危険性を軽減するという安全面にも優れた床材を提供することにある。
【解決手段】 少なくとも、発泡剤として熱膨潤マイクロカプセルと固体状態でひずみ速度軟化の性質を有する熱可塑性樹脂とを含み、該熱可塑性樹脂を1.3〜5.0倍に発泡させてなる発泡成形体を提供する。また、前記発泡成形体を厚さ2〜30mmのシート状発泡成形体に成形し、該シート状発泡成形体を少なくとも1層含むことを特徴とする床材を提供する。衝撃の大きさの範囲によって固体状態でひずみ速度軟化の性質を有する熱可塑性樹脂が適宜軟化し、発泡している空隙に向かって変形していくことで、十分な衝撃吸収性能を発現することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃を加えたときにダメージを低減する作用のある発泡成形体に関するもので、主に建築物における室内床面に使用するための床材に関するものであり、特に、例えば浴室の脱衣所など水周りで滑りやすい部位や、病院や老人ホーム、階段など転倒による危険が高い箇所での用途に好適な床材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、戸建て住宅等の建築物における室内床面用の床材としては、木質系フローリング材やクッションフロアが広く普及しているが、安全面に配慮した床材という観点からは甚だ不十分なものであった。クッションフロアは一見ソフトで安全面に配慮しているかのように見えるが、クッションとなるには厚みが薄く衝撃吸収能力に乏しい上に、意匠的な問題より、水回りでの用途が多く、リビングや階段などにおける使用には向かないという問題がある(特許文献1参照)。
【0003】
また、ポリアミドと反応性ポリオレフィンとを反応押出することで、固体状態でのひずみ速度軟化の性質を持った樹脂が開発されているが、これは樹脂単体では衝撃吸収性が低く、軟化した際の樹脂の逃げ道が容易されて初めて十分な衝撃吸収性能が確保されるため、シートに対して垂直方向からの力に対しての衝撃吸収性は小さなものであった。また、シートに対して垂直方向の力に対する樹脂の逃げ道を確保するためには発泡成形が考えられるが、マトリックスとなるポリアミドの溶融粘度の低さ等のレオロジー特性から、これまでは発泡成形することが極めて困難であった。
【0004】
また、硬質材料の発泡体では、硬質材料の発泡体では、転倒の衝撃においては、十分にクッションが働かず安全性への寄与が少なく、また軟質材料の発泡体は、歩行感や意匠の面、傷つき等の表面性能で劣るため、床材としては不適当であった。
【特許文献1】特開2005−336954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の技術における上記のような問題点を解決するためになされたものであり、リビングや階段等でも使用できる十分な意匠を持ち、且つ転倒などの危険性を軽減するという安全面にも優れた床材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、少なくとも、発泡剤として熱膨潤マイクロカプセルと固体状態でひずみ速度軟化の性質を有する熱可塑性樹脂とを含み、該熱可塑性樹脂を1.3〜5.0倍に発泡させてなる発泡成形体である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記発泡成形体を厚さ2〜30mmのシート状発泡成形体に成形し、該シート状発泡成形体を少なくとも1層含むことを特徴とする床材である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、少なくとも、発泡剤として熱膨潤マイクロカプセルと固体状態でひずみ速度軟化の性質を有する熱可塑性樹脂とを含み、該熱可塑性樹脂を1.3〜5.0倍に発泡させてなる発泡成形体である。請求項1の発明によれば、衝撃の大きさの範囲によって固体状態でひずみ速度軟化の性質を有する熱可塑性樹脂が適宜軟化し、発泡している空隙に向かって変形していくことで、十分な衝撃吸収性能を発現することが可能となる。また、発泡剤として熱膨潤性マイクロカプセルを使用することにより、発泡剤自体がシェル構造を有しているため、独立気泡を維持することができ、熱可塑性樹脂に溶融時のレオロジーによらず均質な発泡をさせることが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記発泡成形体を厚さ2〜30mmのシート状発泡成形体に成形し、該シート状発泡成形体を少なくとも1層含むことを特徴とする床材である。請求項2の発明によれば、特に優れた衝撃吸収性能を有する床材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の発泡成形体は、固体状態でひずみ速度軟化の性質を持つ熱可塑性樹脂を1.3〜5.0倍に発泡させて成形されることを特徴とするものであるが、特に重要なことは想定される衝撃の大きさの範囲によって適宜熱可塑性樹脂が軟化し、発泡している空隙に向かって変形していくことで、十分な衝撃吸収性能を発現させることである。
また、常態においては十分な硬さを維持することで高い耐傷付き性能や意匠を持っていることも重要であり、さらには使用環境下での突き上げや目隙といったトラブルが発生しないように十分に配慮することも重要である。発泡倍率が1.3倍より小さいと、衝撃を受けて軟化した樹脂が、逃げるスペースが確保しきれず、衝撃吸収性が低下し、また、発泡倍率が5倍を超えると、それ自体が柔軟な構造になり、通常の樹脂でも衝撃を吸収しやすくなる。
【0011】
上記のような性能を十分に発揮するためには発泡剤として熱膨潤性マイクロカプセルを使用することが望ましい。これにより、均質な独立気泡を持つ発泡構造ができるため、衝撃吸収能力を高めることができる。一般的にひずみ速度軟化性の溶融樹脂を従来型の発泡剤例えば重曹やアゾジカルボンアミドなどの化学発泡剤、炭酸ガスや炭化水素などの物理発泡剤で発泡成形すると気泡の成長が局部に集中し、独立気泡にならず連泡する傾向がある。しかし、熱膨潤性マイクロカプセルは発泡剤自体にシェル構造を持つため、独立気泡を維持することができ、樹脂に溶融時のレオロジーによらず均質な発泡をすることが可能である。
【0012】
また、ひずみ速度軟化を発現する樹脂についても特に規定するものではないが、ポリアミドと反応性ポリオレフィンをリアクティブブレンドすることにより、ポリアミドのマトリックス中に数百nmのポリオレフィンが分散しており、さらにポリオレフィン中に数十nmのポリアミドミセルを形成されるモルフォルジーをもつ樹脂においてこの特性が確認されている。固体時にひずみ速度軟化の性質を示す樹脂であれば特に規定されるものではない。
【0013】
また、突き上げや目隙を防止するためには、発泡成形体の熱膨張率を下げることが最適であるが、そのためには適宜フィラーを分散させることが望ましい。
本発明に用いられるフィラーとしては公知の無機フィラー、および有機フィラーから適宜選択が可能である。
無機フィラーの具体例としては、タルク、非膨潤性雲母、膨潤性雲母、イオン交換を行った膨潤化雲母、炭酸カルシウム、ベントナイト、有機変性モンモリロナイト、水酸化マグネシウム、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、 ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。
有機フィラーの具体例としては、綿繊維、麻繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維、セルロース繊維、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、タンパク質、澱粉などが挙げられる。
【0014】
これらのフィラーは樹脂との密着を改善するためにエチレン/ 酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで公知の方法で処理されていても良い。また用途、目的に応じて単一で使用しても複数種を混合してもかまわない。
【0015】
フィラーの配合比については、特に規定するものではなく、フィラーの形状や床材の形状にもよるが、5重量%以上50重量部%以下が好ましく、さらには、15重量%以上35重量%以下がより好ましい。フィラーの配合比が少ないと、温度変化による突き上げや目隙の原因となり、多過ぎると衝撃の吸収性能が低下する。
【0016】
本発明の発泡成形体を含む床材としては、本発明の発泡成形体を厚さ2〜30mmのシート状に成形し、その成形したシート状発泡成形体を少なくとも1層以上含む構成であることが好ましい。このシート状発泡成形体は、公知の床材の層構成のどこに設けても効果があるが、表層に近い位置に設ける方が、衝撃吸収性に優れたものとなる。また、床材の最表層には意匠感を高めるために化粧シート貼りがされていることが好ましい。床材の層構成の一例を図1に示す。
【0017】
以下に、本発明の実施例について説明する。ただし、配合比は全体量を100とした重量%で表記する。ただし、発泡剤は外添加とし、例えば、発泡剤を3重量%入れると、全体量は103重量%となることとする。
また、発泡倍率の測定方法は、株式会社シロ産業電子比重計SMD−200Sを用いて、発泡剤を入れずに成形した密度と発泡成形体の密度を測定し、発泡剤を入れずに成形した密度÷発泡成形体の密度より算定した。曲げ弾性率の測定方法は、JIS K7171に従って測定した。
【実施例1】
【0018】
ポリアミドと反応性ポリオレフィンをリアクティブブレンドすることにより、ポリアミドのマトリックス中に数百nmのポリオレフィンが分散しており、さらにポリオレフィン中に数十nmのポリアミドミセルを形成された固体状態で、ひずみ速度軟化の性質を持つ熱可塑性樹脂70重量%、タルク30重量%を2軸押出機にて混練した後、発泡開始温度180℃、最大発泡温度230℃の熱膨張性マイクロカプセル10重量%を加えて、スリット幅2.5mmのリング状ダイから押出し、すぐに切り開いて冷却し、厚み6mmのシート状発泡成形体を作成した。その後、シート状発泡成形体の片面に湿気硬化型ホット−メルト接着剤にて化粧シートを貼り合わせして発泡倍率3.0倍、初期曲げ弾性率2000MPaの実施例の床材を作成した。
【0019】
<比較例1>
ランダムポリプロピレン70重量%、タルク30重量%を2軸押出機にて混練した後、発泡開始温度180℃、最大発泡温度230℃の熱膨張性マイクロカプセル10重量%を加えて、スリット幅2.5mmのリング状ダイから押出し、すぐに切り開いて冷却し、厚み6mmのシート状発泡成形体を作成した。その後、シート状発泡成形体の片面に湿気硬化型ホット−メルト接着剤にて化粧シートを貼り合わせして発泡倍率3.0倍、初期曲げ弾性率2000MPaの比較例1の床材を作成した。
【0020】
<比較例2>
市販のクッションフロア(厚さ3mm)を用意した。
【0021】
<比較例3>
市販の化粧シート貼りフローリング(厚さ12mm)を用意した。
【0022】
実施例および比較例1〜3の床材に厚み3mmのホモポリプロピレンの板を置き、高さ1mより1キログラムの鉄球を落下させて板の様子を観察した。実施例および比較例ともに各々3つずつ床材を用意し、サンプル1〜3として観察を行った。
その結果を表1に示す。実施例の床材が特に優れた衝撃吸収性能を有することが確認された。
【0023】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の床材の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0025】
1 化粧シート
2 基材
3 シート状発泡成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、発泡剤として熱膨潤マイクロカプセルと固体状態でひずみ速度軟化の性質を有する熱可塑性樹脂とを含み、該熱可塑性樹脂を1.3〜5.0倍に発泡させてなる発泡成形体。
【請求項2】
前記発泡成形体を厚さ2〜30mmのシート状発泡成形体に成形し、該シート状発泡成形体を少なくとも1層含むことを特徴とする床材。

【図1】
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【公開番号】特開2008−291163(P2008−291163A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140048(P2007−140048)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】