説明

発泡成形体

【課題】高温及び/又は長時間の条件で成形した場合であっても、気泡が収縮することなく充分な大きさを有する発泡成形体を提供する。
【解決手段】基材樹脂中に気泡が分散した発泡成形体であって、前記気泡は、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成されるものであり、前記熱膨張性マイクロカプセルは、100℃から300℃まで加熱したときの最大発泡変位Dmaxを100%、該最大発泡変位Dmaxを示した温度をTDmaxとしたとき、TDmax+20℃での発泡変位が80%以上、TDmax+40℃での発泡変位が70%以上であり、160〜180℃の範囲の一定温度で加熱したときの最大発泡変位Dmax’を100%、該最大発泡変位Dmax’を示した時間をtDmax’としたとき、tDmax’+10分の時点での発泡変位が95%以上である発泡成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温及び/又は長時間の条件で成形した場合であっても、気泡が収縮することなく充分な大きさを有する発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用部材、又は、自動車、鉄道、線路、橋梁、建物等に用いられる部材として、従来から、ゴム、熱可塑性エラストマー等の基材樹脂を板状等に成形した、クッション性、制振性等の性能に優れた成形体が用いられている。また、クッション性、制振性等の性能を更に向上させるために、基材樹脂を発泡成形することが検討されている。
【0003】
基材樹脂を発泡成形する方法として、例えば、基材樹脂に、加熱すると分解してガスが発生するアゾジカルボンアミド等の化学発泡剤を加えて発泡成形する方法、炭酸ガス等のガスの溶解性を高めて基材樹脂に溶解させ、その後にガスの溶解性を下げることでガスを発生させる方法等が挙げられる。これらの方法によれば、例えば、直径が500μmを超えるような比較的大きな気泡を有する発泡成形体が得られる。
しかしながら、これらの方法で得られる発泡成形体は繰り返し圧縮に対する耐疲労性が不充分であり、また、強度が低く、使用時に成形体表面が膨れたり、引き裂かれたり、剥がれたりすることがある。
【0004】
このような問題に対し、基材樹脂に、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルを加えて発泡成形する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、ゴム質材料(A)からなるマトリックス中に、平均直径が200μm以下のミクロの大きさの球殻状の膨張中空微小球(B)が三次元的に均一に分散配置した複合構造の成形物からなり、かつゴム質材料(A)100重量部に対する膨張中空微小球(B)の割合が0.3〜5重量部である防振材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−303524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルを用いることにより、熱膨張後のシェルが気泡の補強材として働くため、発泡成形体の耐疲労性、強度等を向上させることができる。しかしながら、高温及び/又は長時間の条件で成形する必要のある基材樹脂を用いた場合には、一旦熱膨張した熱膨張性マイクロカプセルが成形条件に耐えられず収縮してしまう、いわゆる「へたり」と呼ばれる現象が生じ、気泡が小さくなってクッション性等の性能が低下してしまう。
【0007】
本発明は、高温及び/又は長時間の条件で成形した場合であっても、気泡が収縮することなく充分な大きさを有する発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材樹脂中に気泡が分散した発泡成形体であって、前記気泡は、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成されるものであり、前記熱膨張性マイクロカプセルは、100℃から300℃まで加熱したときの最大発泡変位Dmaxを100%、該最大発泡変位Dmaxを示した温度をTDmaxとしたとき、TDmax+20℃での発泡変位が80%以上、TDmax+40℃での発泡変位が70%以上であり、160〜180℃の範囲の一定温度で加熱したときの最大発泡変位Dmax’を100%、該最大発泡変位Dmax’を示した時間をtDmax’としたとき、tDmax’+10分の時点での発泡変位が95%以上である発泡成形体である。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、気泡を形成するための熱膨張性マイクロカプセルとして、100℃から300℃まで加熱したとき、及び、160〜180℃の範囲の一定温度で加熱したときに特定の熱膨張特性を示す熱膨張性マイクロカプセルを用いることにより、高温及び/又は長時間の条件で成形した場合であっても、気泡が収縮することなく充分な大きさを有する発泡成形体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の発泡成形体は、基材樹脂中に気泡が分散した発泡成形体である。本明細書中、気泡とは、基材樹脂中に分散した空孔部分を意味する。
上記基材樹脂は、発泡成形に通常用いられる基材樹脂であれば特に限定されないが、ゴム又は熱可塑性エラストマーが好ましい。本発明の発泡成形体においては、後述するような熱膨張特性を示す熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより気泡が形成されていることから、高温及び/又は長時間の条件で成形する場合であっても、気泡が収縮することなく充分な大きさを有することができる。従って、高温及び/又は長時間の条件で成形する必要のある基材樹脂であっても使用することができる。
【0011】
本明細書中、ゴムとは、室温において弾性を示す高分子物質を意味する。
上記ゴムは特に限定されず、天然ゴム(NR)であってもよく、合成ゴムであってもよく、天然ゴム(NR)又は合成ゴムに対して架橋反応(加硫反応ともいう)を施した架橋ゴム(加硫ゴムともいう)であってもよい。上記合成ゴムとして、例えば、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンアクリロゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、多硫化ゴム(T)等が挙げられる。これらのなかでは、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンアクリロゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)が好ましい。
【0012】
本明細書中、熱可塑性エラストマーとは、常温ではエラストマー、即ち、加硫ゴムの性質を示し、高温では熱可塑性を示す物質を意味する。
上記熱可塑性エラストマーは特に限定されず、例えば、スチレン系エラストマー(TPS)、オレフィン系エラストマー(TPO)、エステル系エラストマー(TPEE)、ウレタン系エラストマー(TPU)、アミド系エラストマー(TPAE)、塩ビ系エラストマー(TPVC)等が挙げられる。これらのなかでは、スチレン系エラストマー(TPS)、オレフィン系エラストマー(TPO)、エステル系エラストマー(TPEE)が好ましい。
【0013】
上記気泡は、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成されるものである。
上記熱膨張性マイクロカプセルは、加熱により、シェルが可塑化するとともにコア剤が気化して蒸気圧が高くなり、膨張する。従って、本発明の発泡成形体においては、熱膨張後のシェルが気泡の補強材として働き、耐疲労性、強度等が向上する。
【0014】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、100℃から300℃まで加熱したときの最大発泡変位Dmaxを100%、該最大発泡変位Dmaxを示した温度をTDmaxとしたとき、TDmax+20℃での発泡変位が80%以上である。TDmax+20℃での発泡変位が80%未満であると、高温で成形した場合には一旦熱膨張した熱膨張性マイクロカプセルが成形条件に耐えられず収縮してしまい、気泡が小さくなる。上記熱膨張性マイクロカプセルのTDmax+20℃での発泡変位は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
なお、上記熱膨張性マイクロカプセルのTDmax+20℃での発泡変位の上限は特に限定されず、100%に近くなるほど好ましい。
【0015】
また、上記熱膨張性マイクロカプセルは、TDmax+40℃での発泡変位が70%以上である。TDmax+40℃での発泡変位が70%未満であると、高温で成形した場合には一旦熱膨張した熱膨張性マイクロカプセルが成形条件に耐えられず収縮してしまい、気泡が小さくなる。上記熱膨張性マイクロカプセルのTDmax+40℃での発泡変位は75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
なお、上記熱膨張性マイクロカプセルのTDmax+40℃での発泡変位の上限は特に限定されず、100%に近くなるほど好ましい。
【0016】
上記最大発泡変位Dmaxの好ましい下限は1000μm、好ましい上限は2000μmである。Dmaxが1000μm未満であると、気泡が小さくなるため、発泡成形体のクッション性が低下し、特に静剛度、即ち、静的なばね性が高くなって硬くなることがある。Dmaxが2000μmを超えると、気泡が大きくなるため、発泡成形体の強度が低下し、使用時に成形体表面が膨れたり、引き裂かれたり、剥がれたりすることがある。
【0017】
上記熱膨張性マイクロカプセルを100℃から300℃まで加熱し、発泡変位を測定する方法として、例えば、TAinstruments社製MA2940等の熱機械分析装置(TMA)を用いて、例えば5℃/分等の昇温速度で100℃から300℃まで上記熱膨張性マイクロカプセルを加熱し、測定端子の垂直方向における変位を発泡変位として測定する方法等が挙げられる。なお、本明細書中、熱膨張性マイクロカプセルを100℃から300℃まで加熱するとは、100℃から300℃まで熱膨張性マイクロカプセル単体を加熱することを意味し、基材樹脂と熱膨張性マイクロカプセルとを含有する樹脂組成物を加熱することを意味するのではない。
【0018】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、160〜180℃の範囲の一定温度で加熱したときの最大発泡変位Dmax’を100%、該最大発泡変位Dmax’を示した時間をtDmax’としたとき、tDmax’+10分の時点での発泡変位が95%以上である。tDmax’+10分の時点での発泡変位が95%未満であると、高温及び/又は長時間の条件で成形した場合には一旦熱膨張した熱膨張性マイクロカプセルが成形条件に耐えられず収縮してしまい、気泡が小さくなる。上記熱膨張性マイクロカプセルのtDmax’+10分の時点での発泡変位は96%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。
なお、上記熱膨張性マイクロカプセルのtDmax’+10分の時点での発泡変位の上限は特に限定されず、100%に近くなるほど好ましい。
【0019】
上記最大発泡変位Dmax’の好ましい下限は500μm、好ましい上限は1500μmである。Dmax’が500μm未満であると、気泡が小さくなるため、発泡成形体のクッション性が低下し、特に静剛度、即ち、静的なばね性が高くなって硬くなることがある。Dmax’が1500μmを超えると、気泡が大きくなるため、発泡成形体の強度が低下し、使用時に成形体表面が膨れたり、引き裂かれたり、剥がれたりすることがある。
【0020】
上記熱膨張性マイクロカプセルを160〜180℃の範囲の一定温度で加熱し、発泡変位を測定する方法として、例えば、TAinstruments社製MA2940等の熱機械分析装置(TMA)を用いて、荷重1N、160〜180℃の範囲の一定温度で上記熱膨張性マイクロカプセルを加熱し、測定端子の垂直方向における変位を発泡変位として測定する方法等が挙げられる。なお、本明細書中、熱膨張性マイクロカプセルを160〜180℃の範囲の一定温度で加熱するとは、160〜180℃の範囲の一定温度で熱膨張性マイクロカプセル単体を加熱することを意味し、基材樹脂と熱膨張性マイクロカプセルとを含有する樹脂組成物を加熱することを意味するのではない。
【0021】
本発明の発泡成形体においては、上述のような熱膨張特性を示す熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより気泡が形成されていることから、高温及び/又は長時間の条件で成形した場合であっても、気泡が収縮することなく充分な大きさを有することができる。
上記熱膨張性マイクロカプセルに上述のような熱膨張特性を付与するためには、例えば、シェルを構成するポリマーとして、ニトリル系モノマーに由来する成分とカルボキシル基含有モノマーに由来する成分とカルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分とを有するポリマー、アクリロニトリルに由来する成分とアクリル酸に由来する成分とを有するポリマー、メタクリロニトリルに由来する成分とメタクリル酸に由来する成分とを有するポリマー等を用いることが好ましい。
また、上記熱膨張性マイクロカプセルに上述のような熱膨張特性を付与するためには、カルボキシル基含有モノマーに由来する成分を有するポリマーと熱硬化性樹脂とを含有するシェルを用いることも好ましい。
【0022】
上記ニトリル系モノマーに由来する成分とカルボキシル基含有モノマーに由来する成分とカルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分とを有するポリマーを用いた場合には、成形時の加熱によってカルボキシル基と、カルボキシル基と反応可能な官能基との反応が進行する。従って、熱膨張時にシェルが高度に架橋され、高い耐熱性と耐久性とを発揮できることから、高温及び/又は長時間の条件で成形した場合であっても、気泡が収縮することなく充分な大きさを有することができる。
【0023】
上記ニトリル系モノマーは、シェルに高い耐熱性とガスバリア性とを付与することができる。上記ニトリル系モノマーは特に限定されず、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマルニトリル、又は、これらの混合物等が挙げられる。これらのなかでは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが特に好ましい。
上記カルボキシル基含有モノマーは特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸が挙げられる。これらのなかでは、アクリル酸、及び、ポリマーのガラス転移温度を高めることのできるメタクリル酸が好ましい。
【0024】
上記カルボキシル基含有モノマーに由来する成分の割合は特に限定されないが、ポリマーを得る際の上記ニトリル系モノマー100重量部に対する上記カルボキシル基含有モノマーの配合量の好ましい下限が5重量部、好ましい上限が100重量部である。上記カルボキシル基含有モノマーの配合量が5重量部未満であると、上記カルボキシル基含有モノマーを配合する効果を充分に得ることができず、シェルの耐熱性、耐久性等が低下することがある。上記カルボキシル基含有モノマーの配合量が100重量部を超えると、シェルのガスバリア性が低下することがある。
上記ニトリル系モノマー100重量部に対する上記カルボキシル基含有モノマーの配合量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部である。
【0025】
上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、マグネシウムモノアクリレート、ジンクモノアクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、グリシジル(メタ)アクリレート、ジンクモノアクリレートが好ましい。なお、本明細書中、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートとアクリレートとの両方を意味する。
【0026】
上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分の割合は特に限定されないが、ポリマーを得る際の上記ニトリル系モノマー100重量部に対する上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーの配合量の好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が30重量部である。上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーの配合量が0.01重量部未満であると、熱膨張時のシェルの架橋度が低下することがある。上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーの配合量が30重量部を超えると、シェルのガスバリア性が低下することがある。
上記ニトリル系モノマー100重量部に対する上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーの配合量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0027】
上記ニトリル系モノマーに由来する成分とカルボキシル基含有モノマーに由来する成分とカルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分とを有するポリマーは、更に、共重合可能な他のモノマーに由来する成分を有していてもよい。
上記他のモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、分子量が200〜600のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記他のモノマーとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン等のビニルモノマー等も挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記他のモノマーに由来する成分の割合は特に限定されないが、ポリマーを得る際の上記ニトリル系モノマー100重量部に対する上記他のモノマーの配合量の好ましい上限が40重量部である。上記他のモノマーの配合量が40重量部を超えると、シェルの耐熱性、耐久性、ガスバリア性等が低下することがある。
上記ニトリル系モノマー100重量部に対する上記他のモノマーの配合量のより好ましい上限は30重量部である。
【0029】
上記アクリロニトリルに由来する成分とアクリル酸に由来する成分とを有するポリマー、又は、上記メタクリロニトリルに由来する成分とメタクリル酸に由来する成分とを有するポリマーを用いた場合には、成形時の加熱によってニトリル基とカルボキシル基との環化反応が進行し、ポリアクリルイミド構造又はポリメタクリルイミド構造が形成される。従って、熱膨張時のシェルが高い耐熱性と耐久性とを発揮できることから、高温及び/又は長時間の条件で成形した場合であっても、気泡が収縮することなく充分な大きさを有することができる。
また、上記アクリロニトリルに由来する成分とアクリル酸に由来する成分とを有するポリマー、又は、上記メタクリロニトリルに由来する成分とメタクリル酸に由来する成分とを有するポリマーを用いた場合には、ニトリル基を有する成分とカルボキシル基を有する成分との他の組み合わせの場合と比べて、ポリマーを得る際の共重合反応の反応性、及び、環化反応の反応性が高く、ポリアクリルイミド構造又はポリメタクリルイミド構造が形成されやすいと推測される。
【0030】
上記アクリロニトリルに由来する成分とアクリル酸に由来する成分とを有するポリマー、及び、上記メタクリロニトリルに由来する成分とメタクリル酸に由来する成分とを有するポリマーもまた、上述のような共重合可能な他のモノマーに由来する成分を有していてもよい。
【0031】
上記カルボキシル基含有モノマーに由来する成分を有するポリマーと熱硬化性樹脂とを含有するシェルを用いた場合には、成形時の加熱によってカルボキシル基と熱硬化性樹脂との反応が進行する。従って、熱膨張時にシェルが高度に架橋され、高い耐熱性と耐久性とを発揮できることから、高温及び/又は長時間の条件で成形した場合であっても、気泡が収縮することなく充分な大きさを有することができる。
上記熱硬化性樹脂は、カルボキシル基と反応することができれば特に限定されないが、カルボキシル基と反応可能な官能基を分子中に2つ以上有することが好ましい。上記熱硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。これらのなかでは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が好ましい。
【0032】
上記エポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記フェノール樹脂は特に限定されず、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂等が挙げられる。これらのなかでは、ノボラック型フェノルー樹脂が好ましい。
【0033】
上記カルボキシル基含有モノマーに由来する成分を有するポリマーと熱硬化性樹脂とを含有するシェル中の上記熱硬化性樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は30重量%である。上記熱硬化性樹脂の含有量が0.01重量%未満であると、熱膨張時にシェルに熱硬化特性が現れないことがある。上記熱硬化性樹脂の含有量が30重量%を超えると、シェルのガスバリア性が低下することがある。
上記カルボキシル基含有モノマーに由来する成分を有するポリマーと熱硬化性樹脂とを含有するシェル中の上記熱硬化性樹脂の含有量のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0034】
なお、シェルを構成するポリマーが上記カルボキシル基含有モノマーに由来する成分を有する場合には、ポリマーが上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分を有することによっても、シェルが上記熱硬化性樹脂を含有することによっても、いずれの場合にも熱膨張時にシェルが高度に架橋され、高い耐熱性と耐久性とを発揮することができる。
ただし、ポリマーを得る際にカルボキシル基と、カルボキシル基と反応可能な官能基との反応が進行してしまうことによってその後の熱膨張が阻害されることを避けるためには、ポリマーが上記カルボキシル基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する成分を有するよりも、シェルが上記熱硬化性樹脂を含有することがより好ましい。
【0035】
上記揮発性液体は特に限定されず、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−へキサン、ヘプタン、石油エーテル等の低分子量炭化水素、CClF、CCl、CClF、CClF−CClF等のクロロフルオロカーボン、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル−n−プロピルシラン等のテトラアルキルシラン等が挙げられる。これらのなかでは、イソブタン、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−へキサン、石油エーテル、及び、これらの混合物が好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
上記気泡は、平均直径の好ましい下限が50μm、好ましい上限が300μmである。上記気泡の平均直径が50μm未満であると、発泡成形体のクッション性が低下し、特に静剛度、即ち、静的なばね性が高くなって硬くなることがある。上記気泡の平均直径が300μmを超えると、発泡成形体の強度が低下し、使用時に成形体表面が膨れたり、引き裂かれたり、剥がれたりすることがある。上記気泡の平均直径のより好ましい下限は70μm、より好ましい上限は200μmである。
また、上記気泡は、直径のCV値の好ましい上限が50%である。上記気泡の直径のCV値が50%を超えると、発泡成形体のクッション性が低下し、特に動剛度、即ち、動的なばね性が高くなって素早い圧縮に対して硬くなることがある。上記気泡の直径のCV値のより好ましい上限は40%である。
【0037】
本明細書中、気泡の平均直径、及び、気泡の直径のCV値とは、発泡成形体をカミソリ等の鋭利な刃物、マイクロトーム、集束イオンビーム等を用いて切断し、得られた断面を白金、金等でスパッタリングした後、電子顕微鏡にて150倍等の倍率で観察し、ノギスを用いて任意の50個(n=50)の気泡の直径diをそれぞれ計測したとき、下記式(1)及び(2)により算出される値を意味する。なお、気泡が球状ではない場合、気泡の直径とは、気泡の最長径を意味する。
平均直径=(Σdi)/n (1)
直径のCV値(%)=(直径の標準偏差/平均直径)×100 (2)
【0038】
本発明の発泡成形体は、静剛度、即ち、静的なばね性の好ましい上限が35N/mmである。静剛度が35N/mmを超えると、発泡成形体は硬くなり、クッション性が低下することがある。本発明の発泡成形体の静剛度のより好ましい上限は30N/mmである。
本発明の発泡成形体は、動剛度、即ち、動的なばね性の好ましい上限が45N/mmである。動剛度が45N/mmを超えると、発泡成形体は素早い圧縮に対して硬くなり、クッション性が低下することがある。本発明の発泡成形体の動剛度のより好ましい上限は40N/mmである。
【0039】
本発明の発泡成形体を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記基材樹脂に上記熱膨張性マイクロカプセルを加えて混合し、成形機等に投入して発泡成形する方法、上記熱膨張性マイクロカプセルをポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のマスターバッチ用基材樹脂と熱混練してペレット状のマスターバッチを作製した後、上記基材樹脂にマスターバッチを加えて混合し、成形機等に投入して発泡成形する方法等が挙げられる。
【0040】
発泡成形する際の成形条件は特に限定されない。本発明の発泡成形体においては、上述のような熱膨張特性を示す熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより気泡が形成されることから、高温及び/又は長時間の条件で成形する場合であっても、気泡が収縮することなく充分な大きさを有することができる。上記成形条件として、例えば、180〜230℃程度の温度、1〜30分程度の時間が挙げられる。
発泡成形する際の成形方法は特に限定されず、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形等が挙げられる。また、発泡成形する際のスクリューの形状及び回転数は特に限定されず、スクリューの回転による剪断力と滞留時間とを考慮して適宜設計すればよい。
【0041】
また、発泡成形する際には、上記熱膨張性マイクロカプセルが潰れないように、低負荷で発泡成形を行うことが好ましく、より具体的には、押出成形時又は射出成形時の上記基材樹脂の溶融粘度は低いことが好ましいため、低粘度の基材樹脂を用いるか、成形温度を上げて上記基材樹脂の粘度を下げることが好ましい。
【0042】
本発明の発泡成形体を製造する際、上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量は特に限定されないが、上記基材樹脂100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量が1重量部未満であると、上記気泡の数が減少し、発泡成形体のクッション性が低下して硬くなることがある。上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量が10重量部を超えると、上記気泡の数が増加し、発泡成形体の強度が低下し、使用時に成形体表面が膨れたり、引き裂かれたり、剥がれたりすることがある。
上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量は、上記基材樹脂100重量部に対するより好ましい下限が1.5重量部、より好ましい上限が8重量部である。
【0043】
本発明の発泡成形体を製造する際には、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記熱膨張性マイクロカプセルに加えて、加熱すると分解してガスが発生するアゾジカルボンアミド等の化学発泡剤を配合してもよい。
上記化学発泡剤の配合量は、発泡成形体の耐疲労性、強度等を損なわないためには、上記熱膨張性マイクロカプセル100重量部に対する好ましい上限が50重量部である。
【0044】
本発明の発泡成形体の用途は特に限定されず、例えば、医療用部材、又は、自動車、鉄道、線路、橋梁、建物等に用いられる部材として有用である。より具体的には、本発明の発泡成形体は、医療用チューブ、自動車のインパネ表示、グリップ、グラスランチャネル、ブーツ、ホース及びタイヤ、鉄道、線路及び橋梁の鉄道制振板及びレールパッド、建物の制振材、靴底、電線ケーブル等に好適に用いられる。
なかでも、本発明の発泡成形体においては高温及び/又は長時間の条件で成形する必要のある基材樹脂であっても使用することができることから、本発明の発泡成形体は、靴底又はタイヤに使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、高温及び/又は長時間の条件で成形した場合であっても、気泡が収縮することなく充分な大きさを有する発泡成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0047】
(1.熱膨張性マイクロカプセルの製造)
(製造例1)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製、20重量%)25重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.8重量部と、塩化ナトリウム90重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。
次いで、アクリロニトリル(AN)30重量部、メタクリロニトリル(MAN)50重量部及びメタクリル酸(MAA)20重量部と、熱硬化性樹脂としてN,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)アニリン0.2重量部及び4,4’−イソプロピリデンジフェノールと1−クロロ−2,3−エポキシプロパンとの重縮合物1重量部と、水酸化亜鉛0.3重量部と、揮発性液体としてペンタン27重量部及びイソオクタン5重量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6重量部とからなる油性混合物を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら60℃で6時間、80℃で5時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルAを得た。
【0048】
(製造例2)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製、20重量%)25重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.8重量部と、塩化ナトリウム90重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。
次いで、アクリロニトリル(AN)80重量部及びアクリル酸(AA)20重量部と、水酸化亜鉛0.3重量部と、揮発性液体としてペンタン27重量部及びイソオクタン5重量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6重量部とからなる油性混合物を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら60℃で6時間、80℃で5時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルBを得た。
【0049】
(製造例3)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製、20重量%)25重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.8重量部と、塩化ナトリウム90重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。
次いで、アクリロニトリル(AN)20重量部、メタクリロニトリル(MAN)30重量部、メタクリル酸(MAA)30重量部及びメタクリル酸メチル(MMA)20重量部と、水酸化亜鉛0.3重量部と、揮発性液体としてペンタン27重量部及びイソオクタン5重量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6重量部とからなる油性混合物を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら60℃で6時間、80℃で5時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルCを得た。
【0050】
(製造例4)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製、20重量%)25重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.8重量部と、塩化ナトリウム90重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。
次いで、アクリロニトリル(AN)60重量部及びメタクリロニトリル(MAN)40重量部と、水酸化亜鉛0.3重量部と、揮発性液体としてペンタン27重量部及びイソオクタン5重量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.8重量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6重量部とからなる油性混合物を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら60℃で6時間、80℃で5時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルDを得た。
【0051】
(2.発泡変位の測定)
25μgの熱膨張性マイクロカプセルを直径7mm、深さ1mmのアルミ製容器に入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で、熱機械分析装置(TMA)(TAinstruments社製「TMA2940」)を用いて、5℃/分の昇温速度で100℃から300℃まで加熱し、測定端子の垂直方向における変位を発泡変位として測定した。このときの最大発泡変位Dmax、TDmax+20℃での発泡変位、及び、TDmax+40℃での発泡変位を表1に示した。
また、25μgの熱膨張性マイクロカプセルを直径7mm、深さ1mmのアルミ製容器に入れ、上から1Nの力を加えた状態で、熱機械分析装置(TMA)(TAinstruments社製「TMA2940」)を用いて、180℃の一定温度で加熱し、測定端子の垂直方向における変位を発泡変位として測定した。このときの最大発泡変位Dmax’、tDmax’+10分の時点での発泡変位を表1に示した。
【0052】
(実施例1〜2及び比較例1〜2)
表2に示す粉体状又はペレット状のマスターバッチ用基材樹脂100重量部と、滑剤としてステアリン酸10重量部とをコニカル二軸押出機(永田製作所製「OSC−30」)で混練し、約100℃になったところで表2に示す発泡剤100重量部を添加し、更に30秒間混練した後、押し出すと同時にペレット化し、マスターバッチペレットを得た。
ペレット状のエステル系エラストマー(東レデュポン社製「ハイトレル#3078」)100重量部と、表2に示す配合量のマスターバッチと、顔料マスターバッチ(東京インキ製「カラーMB」)3重量部とを成形機(ユニオンプラスチックス社製「USV30−20 EXTORUDER」)で混合し、表2に示す成形温度、成形時間、スクリュー回転数30rpmの条件で押出成形を行い、厚み10〜12mmの発泡成形体を得た。なお、EMMAとはエチレン−メタクリル酸メチル共重合体を意味する。
【0053】
<評価>
実施例及び比較例で得られた発泡成形体について以下の評価を行った。
(1)気泡の平均直径の測定
発泡成形体を片刃カミソリ(フェザー社製)を用いて切断し、得られた断面を金でスパッタリングした後、電子顕微鏡にて150倍で観察し、ノギスを用いて任意の50個(n=50)の気泡の直径diをそれぞれ計測し、上述した式(1)及び(2)により、気泡の平均直径、及び、気泡の直径のCV値を算出した。
【0054】
(2)クッション性
以下のように発泡成形体の静剛度及び動剛度を求めることにより、クッション性を評価した。
(2−1)静剛度の測定
発泡成形体の表面に圧子(ステンレス製、Φ15mm×10mmの円柱状)を置き、このときの圧子の高さを0とした。静的材料試験機(「EZGraph」、島津製作所社製)を用いて、圧子に91.5Nの加重を60秒与えたときの圧子の変位(S1)を測定し、その後、圧子に320Nの加重を60秒与えたときの変位(S2)を測定し、下記式(3)から静剛度を算出した。
静剛度(N/mm)=(320−91.5)/(S2−S1) (3)
【0055】
(2−2)動剛度の測定
発泡成形体の表面に圧子(ステンレス製、Φ15mm×10mmの円柱状)を置き、このときの圧子の高さを0とした。テンシロン万能材料試験(「UTA−500」、エーアンドディー社製)を用いて、圧子に下限設定91.5N、上限設定320Nのサイクル加重を1000サイクルかけ、900サイクルから1000サイクルまでの上限加重での平均加重(FU)と圧子の平均変位(SU)、及び、下限加重での平均加重(FD)と圧子の平均変位(SD)を測定し、下記式(4)から動剛度を算出した。
動剛度(N/mm)=(FU−FD)/(SU−SD) (4)
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、高温及び/又は長時間の条件で成形した場合であっても、気泡が収縮することなく充分な大きさを有する発泡成形体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂中に気泡が分散した発泡成形体であって、
前記気泡は、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張することにより形成されるものであり、
前記熱膨張性マイクロカプセルは、100℃から300℃まで加熱したときの最大発泡変位Dmaxを100%、該最大発泡変位Dmaxを示した温度をTDmaxとしたとき、TDmax+20℃での発泡変位が80%以上、TDmax+40℃での発泡変位が70%以上であり、160〜180℃の範囲の一定温度で加熱したときの最大発泡変位Dmax’を100%、該最大発泡変位Dmax’を示した時間をtDmax’としたとき、tDmax’+10分の時点での発泡変位が95%以上である
ことを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
基材樹脂がゴムであることを特徴とする請求項1記載の発泡成形体。
【請求項3】
ゴムが架橋ゴムであることを特徴とする請求項2記載の発泡成形体。
【請求項4】
熱膨張性マイクロカプセルは、カルボキシル基含有モノマーに由来する成分を有するポリマーと熱硬化性樹脂とを含有するシェルを有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の発泡成形体。
【請求項5】
靴底又はタイヤに使用されることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の発泡成形体。

【公開番号】特開2013−10900(P2013−10900A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145664(P2011−145664)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】