説明

発泡成形品の成形方法および装置

【課題】離型ピンを使用することなく発泡成形品を成形型から取り出すことができる発泡成形品の成形方法および装置を提供する。
【解決手段】突き出しピン30a付きの充填器30を装着した凸金型12が取り付けられた固定型1と、この固定型1に対して水平方向に接離自在で凹金型22が取り付けられた移動型2とで形成するキャビティ内に発泡性樹脂ビーズを充填し、次いで、この金型を加熱して発泡性樹脂ビーズを発泡、融着させキャビティ内表面に添った成形品を成形し、その後、移動型2を離反させて型外へ成形品40を取り出す発泡成形品の成形方法であって、前記成形品40の取り出しを離型ピンを用いずに前記充填器32の突き出しピン30aの押し出しのみで行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型ピンの跡が無く優れた外観品質を有する発泡スチロール等の発泡成形品の成形方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、発泡スチロール等の発泡成形品は、電化製品等の緩衝材や魚箱などに広く用いられている。また、その成形方法としては、固定型とこの固定型に対して水平方向に接離自在な移動型とで形成されるキャビティ内に発泡性樹脂ビーズを充填し、次いで、この成形型を加熱して発泡性樹脂ビーズを発泡、融着させキャビティ内表面に添った成形品を成形し、その後、移動型を離反させて成形品を取り出すようにしたものが知られている(例えば、特許文献1や特許文献2を参照)。
【0003】
図3は従来の成形装置の一例を示すもので、1は固定型、2は移動型である。固定型1は、マスターフレーム11に凸金型12と裏板13を取り付けてチャンバ14を形成した構造となっており、移動型2は、マスターフレーム21に凹金型22と裏板23を取り付けてチャンバ24を形成した構造となっている。また、固定型1の背面側には、原料である発泡性樹脂ビーズの充填機30と、ピン装着用プレート32にセットした複数本の成形品取り出し用の離型ピン31が装着されている。
【0004】
このような成形装置では、前記凸金型12と凹金型22とで形成されるキャビティ内に発泡性樹脂ビーズを充填後、加熱により発泡性樹脂ビーズを発泡、融着させて成形品を成形し、その後、移動型を離反させて成形品を取り出している。しかしながら、成形品の取り出しは凸金型12に密着状態にある成形品を離型ピン31で強制的に押し出して行うため、製品上に離型ピン31の押し跡41が付いてしまい見栄えを低下させるという問題があった。
図4は上記の従来法により成形した成形品40を示すものであるが、離型ピン31の押し跡41が残っており、外観品質に劣るものとなっている。なお、前記離型ピン31は金型と密着状態にある成形品40を強制的に押し出すものであり複数個セットする必要があるため、セッティングに長時間を要し、また設備費も高くなる要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−148779号公報
【特許文献2】特開2010−23499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決して、離型ピンを使用することなく発泡成形品を成形型から取り出すことができ、この結果、離型ピンの押し跡のない高品質な発泡成形品を成形することができ、また離型ピンがないため装置をシンプルで組立作業や保守点検作業も容易な構造とすることができる発泡成形品の成形方法および装置を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明は、突き出しピン付きの充填器を装着した凸金型が取り付けられた固定型と、この固定型に対して水平方向に接離自在で凹金型が取り付けられた移動型とで形成するキャビティ内に発泡性樹脂ビーズを充填し、次いで、この金型を加熱して発泡性樹脂ビーズを発泡、融着させキャビティ内表面に添った成形品を成形し、その後、移動型を離反させて型外へ成形品を取り出す発泡成形品の成形方法であって、前記成形品の取り出しを離型ピンを用いずに前記充填器の突き出しピンの押し出しのみで行うようにしたことを特徴とする発泡成形品の成形方法である。
【0008】
前記の成形品の取り出しを、真空吸引により成形品が凹金型側に吸着している状態で移動型を固定型から離反させる工程と、成形品を凹金型から離れた状態で、かつ凸金型の凸部に落下しない程度に軽く係合した状態で保持する工程と、その後、充填器の突き出しピンにより前記係合状態を解除するように成形品を押し出して型外へ取り出す工程からなるものとすることが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0009】
また、固定型側及び移動型側の双方から成形品に向けて噴出するエア圧の制御を行うことにより、成形品を凹金型から離れた状態で、かつ凸金型の凸部に落下しない程度に軽く係合した状態で保持するようにすることが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【0010】
また、成形品を型外へ取り出す際に、移動型側から成形品に向けてエアを吹き付け成形品が凹部に入り込まないようにすることが好ましく、これを請求項4に係る発明とする。
【0011】
更に、前記のいずれかに記載の発泡成形品の成形方法を行う装置であって、突き出しピン付きの充填器を装着した凸金型が取り付けられた固定型と、この固定型に対して水平方向に接離自在で凹金型が取り付けられた移動型からなり、前記移動型に開閉位置を測定する開閉センサと、該開閉センサからの信号に基づき、成形品を凹金型から離れた状態で、かつ凸金型の凸部に落下しない程度に軽く係合した状態で保持するように移動型を位置決めして移動する電動モータを取り付けたことを特徴とする発泡成形品の成形装置を請求項5に係る発明とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、成形品の取り出しを従来の離型ピンを用いずに充填器の突き出しピンの押し出しのみで行うようにしたので、従来のように離型ピンの押し跡のない高品質な発泡成形品を成形することができ、また離型ピンがないため装置をシンプルで組立作業や保守点検作業も容易な構造とすることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、成形品の取り出しを、真空吸引により成形品が凹金型側に吸着している状態で移動型を固定型から離反させる工程と、成形品を凹金型から離れた状態で、かつ凸金型の凸部に落下しない程度に軽く係合した状態で保持する工程と、その後、充填器の突き出しピンにより前記係合状態を解除するように成形品を押し出して型外へ取り出す工程からなるものとしたので、取り出す直前では成形品が凹金型から離れた状態で、かつ凸金型の凸部に落下しない程度に軽く係合した状態でバランスをとっており、僅かな力を加えれば凸部との係合を解くことができることとなる。この結果、従来のような離型ピンを用いなくても充填器の突き出しピンの軽い押し出しにより容易に成形品を型外へ取り出すことが可能となる。
【0014】
請求項3に係る発明では、固定型側及び移動型側から成形品に向けて吹き付けるエア圧の制御を行うことにより、成形品を固定型の凸部に落下しない程度に軽く係合した状態で保持するようにしたので、成形品を固定型の凸部と嵌合させず、しかも落下することがないバランスした状態を確実に実現することができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、成形品を型外へ取り出す際に、移動型側から成形品に向けてエアを吹き付け成形品が凹部に入り込まないようにしたので、押し出された成形品が凹金型の凹部内に入り込むことを確実に防止することができる。
【0016】
また、請求項5に係る発明では、移動型に開閉位置を測定する開閉センサと、該開閉センサからの信号に基づき、成形品を凹金型から離れた状態で、かつ凸金型の凸部に落下しない程度に軽く係合した状態で保持するように移動型を位置決めして移動する電動モータを取り付けたので、移動型を正確に位置決めし、また繰り返しの停止も精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の成形装置の概略を示す断面図である。
【図2(a)】本発明の成形工程の概略を示す説明図である。
【図2(b)】本発明の成形工程の概略を示す説明図である。
【図2(c)】本発明の成形工程の概略を示す説明図である。
【図2(d)】本発明の成形工程の概略を示す説明図である。
【図2(e)】本発明の成形工程の概略を示す説明図である。
【図2(f)】本発明の成形工程の概略を示す説明図である。
【図3】従来の成形装置の概略を示す断面図である。
【図4】従来の成形方法により成形した成形品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明の成形装置の概略を示す断面図であり、1は固定型、2は移動型である。固定型1は、マスターフレーム11に凸金型12と裏板13を取り付けてチャンバ14を形成した構造となっており、一方、移動型2も、マスターフレーム21に凹金型22と裏板23を取り付けてチャンバ24を形成した構造となっている。
【0019】
前記プレート11、21の上部には、各々チャンバ14、24内へ加熱蒸気や冷却水やエア等を供給・排出する上部用役口16、26が設けられており、マスターフレーム11、21の下部にも、各々チャンバ14、24内へ加熱蒸気や冷却水やエア等を供給・排出する下部用役口17、27が設けられている。また、凸金型12と凹金型22には、前記チャンバ14、24と連通する多数のベントホール15、25が形成されている。
なお、本発明の成形装置では、固定型1の背面側の中央部に原料である発泡性樹脂ビーズの充填機30が装着されているが、従来のような成形品取り出し用の離型ピン、及びそのセット用プレートは装着されていないシンプルな構造となっている。また、前記充填機30は突き出しピン30a付きの構造となっている。
【0020】
次に、成形方法につき説明する。
先ず、固定型1の凸金型12と移動型2の凹金型22とで形成するキャビティ内に充填機30から発泡性樹脂ビーズを充填する。次いで、チャンバ14、24内へ加熱蒸気を導入して金型を加熱し、発泡性樹脂ビーズを発泡、融着させキャビティ内表面に添った成形品を成形する。その後、移動型2を固定型1から離反させて型外へ成形品を取り出す。
以上の成形工程は、基本的には従来の成形方法と同様の操作で行うことができ、本発明では、前記成形品の取り出しを離型ピンを用いずに前記充填器30の突き出しピン30aの押し出しのみで行うようにした点に特徴を有している。
【0021】
本発明においては成形品の取り出しは、真空吸引により成形品が凹金型側に吸着している状態で移動型を固定型から離反させる工程と、成形品を凹金型から離れた状態で、かつ凸金型の凸部に落下しない程度に軽く係合した状態で保持する工程と、その後、充填器の突き出しピンにより前記係合状態を解除するように成形品を押し出して型外へ取り出す工程からなるものである。
【0022】
以下に、成形品の取り出し工程について図2を参照しつつ説明する。
図2(a)に示すように、成形品40を成形した後に、移動型2内へエアを供給して成形品40を冷却すると同時に、キャビティ内表面から剥離する。次いで、図2(b)に示すように、移動型2側を真空吸引して成形品40を凹金型側に吸着した状態とし、この状態で移動型2を固定型から離反する方向(図面では右方向)へ移動させる。この吸着のための圧力としては、成形品の形状にもよるが、一般的な魚箱の場合であれば、−0.05〜−0.1MPa程度である。
なお、型内へのエアの供給は、用役口を通してチャンバ内へ供給された後、更にベントホールを通してキャビティ内へ送られることで行われる。
【0023】
次に、図2(c)に示すように、移動型2内へエアを供給して成形品40から移動型2を抜いた後、固定型側及び移動型側の双方から成形品40に向けてエアを噴出する。この時、固定型側及び移動型側からのエア圧の制御を行うことにより、成形品40を凹金型12から離れた状態で、かつ凸金型12の凸部12aに落下しない程度に軽く係合した状態で保持するようにバランスをとる。
このときのエア圧力は、一般的な魚箱の場合であれば、固定型側が0.02〜0.06MPa、移動型側が0.03〜0.08MPaの範囲内で調整可能である。
【0024】
そして、図2(d)に示すように、前記のバランスをとったままの状態で、更に移動型2を開いていく(図面では右方向)。
次に、図2(e)に示すように、成形品40が凹金型12から完全に退避した後は、移動型2の開き速度を高速にして更に移動型2を開いていく。これにより、成形時間の短縮化を図ることができる。
【0025】
最後に、図2(f)に示すように、充填器30の突き出しピン30aを押し出して成形品40の凸金型12の凸部12aとの係合状態を解除することにより、成形品を下方へ落下させ型外へ取り出す。
この場合、移動型側から成形品40に向けてエアを吹き付け成形品40が凹金型22の凹部に入り込まないようにしておくことが望ましい。
【0026】
その後は、移動型2を閉じてキャビティを形成し、このキャビティ内に発泡性樹脂ビーズを充填後、この金型を加熱して発泡性樹脂ビーズを発泡、融着させ成形品を成形し、同様の取り出し工程を繰り返すが、本発明では離型ピンを使用することなく発泡成形品を成形型から取り出すので、従来のような離型ピンの押し跡のない高品質な発泡成形品を成形することが可能となる。また、離型ピンが存在しないので、それを作動させるエネルギコスト分だけ安価に生産でき、また成形サイクルも短縮化できることとなる。
【0027】
以上に説明したように、本発明では成形品を凹金型から離れた状態で、かつ凸金型の凸部に落下しない程度に軽く係合した状態で正確に保持するように制御するため、移動型を正確に位置決めするとともに繰り返し停止させる必要がある。
従って本発明の成形装置では、前記移動型2に開閉位置を測定する開閉センサ33と、該開閉センサ33からの信号に基づき、成形品を凹金型22から離れた状態で、かつ凸金型12の凸部12aに落下しない程度に軽く係合した状態で保持するように移動型2を位置決め移動する電動モータ34を取り付けた構造となっている(図1を参照)。なお、35は前記モータ34と移動型2を連結する連結部材である。
このように、本発明では従来のような離型ピンがないため装置をシンプルで組立作業や保守点検作業も容易な構造とすることができ、また安価に装置の生産ができることとなる。
【符号の説明】
【0028】
1 固定型
2 移動型
11,21 マスターフレーム
12 凸金型
12a 凸部
13,23裏板
14,24 チャンバ
15,25 ベントホール
16,26上部用役口
17,27下部用役口
22 凹金型
30 充填機
30a 突き出しピン
31 離型ピン
32 ピン装着用プレート
33 開閉位置センサ
34 電動モータ
35 連結部材
40 成形品
41 押し跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突き出しピン付きの充填器を装着した凸金型が取り付けられた固定型と、この固定型に対して水平方向に接離自在で凹金型が取り付けられた移動型とで形成するキャビティ内に発泡性樹脂ビーズを充填し、次いで、この金型を加熱して発泡性樹脂ビーズを発泡、融着させキャビティ内表面に添った成形品を成形し、その後、移動型を離反させて型外へ成形品を取り出す発泡成形品の成形方法であって、前記成形品の取り出しを離型ピンを用いずに前記充填器の突き出しピンの押し出しのみで行うようにしたことを特徴とする発泡成形品の成形方法。
【請求項2】
成形品の取り出しを、真空吸引により成形品が凹金型側に吸着している状態で移動型を固定型から離反させる工程と、成形品を凹金型から離れた状態で、かつ凸金型の凸部に落下しない程度に軽く係合した状態で保持する工程と、その後、充填器の突き出しピンにより前記係合状態を解除するように成形品を押し出して型外へ取り出す工程からなるものとした請求項1に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項3】
固定型側及び移動型側の双方から成形品に向けて噴出するエア圧の制御を行うことにより、成形品を凹金型から離れた状態で、かつ凸金型の凸部に落下しない程度に軽く係合した状態で保持するようにした請求項2に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項4】
成形品を型外へ取り出す際に、移動型側から成形品に向けてエアを吹き付け成形品が凹部に入り込まないようにした請求項2に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の発泡成形品の成形方法を行う装置であって、突き出しピン付きの充填器を装着した凸金型が取り付けられた固定型と、この固定型に対して水平方向に接離自在で凹金型が取り付けられた移動型からなり、前記移動型に開閉位置を測定する開閉センサと、該開閉センサからの信号に基づき、成形品を凹金型から離れた状態で、かつ凸金型の凸部に落下しない程度に軽く係合した状態で保持するように移動型を位置決めして移動する電動モータを取り付けたことを特徴とする発泡成形品の成形装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図2(e)】
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【図2(f)】
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