説明

発泡成形品の製造方法および梱包材

【課題】本体部の周縁に起立部を有する発泡成形品を、金型における取り数を大幅に増やすことにより、安価に製造できる方法を提供する。
【解決手段】本体部の周縁に起立部を有する発泡成形品の製造方法であって、前記本体部の起立部が形成される側の板面は、雄型金型20および雌型金型30のそれぞれに形成された凸部21,31が型締め時に互いに交互に入り込むことにより画成される連続した凸部の側面21b,31bにより成形し、前記起立部の内面は、型締め時に互いに交互に入り込んだ前記凸部の先端面21a,31aにより成形する発泡成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形品の製造方法に関するもので、詳しくは、被梱包物を挟持するため等の起立部を本体部の周縁に有する発泡成形品の製造方法および該製造方法により製造された梱包材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡合成樹脂、例えば、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等を原料とする型内ビーズ発泡成形品は、軽量であり、緩衝特性にも優れているため、各種梱包材に広く使用されている。
【0003】
例えば、ガスコンロを梱包するにあっては、図8に示したように、起立部101を本体部102の周縁に有する左右で1セットの発泡成形品100が使用され、該発泡成形品100を起立部101を利用してガスコンロGの端部にそれぞれ装着し、段ボール(図示せず)に収納することにより梱包される。この場合、発泡成形品100に形成された起立部101は、ガスコンロGの端部の保護及び位置決めの作用を果たすとともに、対向する起立部101間で被梱包物Gを挟持し、自動梱包ライン等において装着した発泡成形品100が容易に被梱包物Gから脱落しないようにする作用を果たす。なお、図中103は、本体部102の板面に穿設された肉盗み等のための透孔である。
【0004】
このような周縁に起立部を有する発泡成形品は、自動成形機を使用して、一般的に次のようにして製造される。
図9は、自動成形機に搭載された金型部分の概念的な縦断面図である。この自動成形機においては、発泡成形品が充填成形されるキャビティ50を形成するよう、雄型金型51と雌型金型52とが、フレーム53、54にそれぞれ固定されて対向配置されている。そして、雌型金型52は固定され、雄型金型51は、成形された発泡成形品を取り出すことができるよう、図9において左右方向に移動可能に配置されている。
【0005】
そして、上記自動成形機を使用し、先ず、雄型金型51と雌型金型52とを型閉してキャビティ50を形成し、このキャビティ50内に、ポリスチレンなどの予備発泡させた原料ビーズを充填する。次いで、キャビティ内に充填された原料ビーズを加熱用スチームで加熱し、溶融発泡させて成形する。その後、発泡成形体を冷却し、冷却後、雄型金型51を移動させることにより型開し、所定形状に成形された発泡成形品を金型から取り出す。
【0006】
上記した方法で、周縁に起立部101を有する発泡成形品100を製造するにあたっては、自動成形、特に、成形品の取り出しが可能なように、図9に示したように、成形品100の起立部101が抜き方向と平行に形成されるように、雄型金型51と雌型金型52との設計がなされ、例えば、図10に示したように、発泡成形品100の本体部102の形成部位を金型板面に配置した、いわゆる平取りの左右5セット取りの金型が設計されていた。なお、図10は、雌型金型52の正面図であり、左右1セットとなる発泡成形品100の取り出し前の状態を概念的に示したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した周縁に起立部を有する発泡成形品の製造方法にあっては、最も広い面積の本体部102の形成部位を金型板面に配置しているため、取り数が制限され、成形品1個当たりのエネルギー使用量が多く、またサイクルタイムも長いものとなるため、製造原価が高騰すると言う課題を有していた。
【0008】
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、本体部の周縁に起立部を有する発泡成形品を、金型における取り数を大幅に増やすことにより、安価に製造できる方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、被梱包物を挟持するため等の起立部は、本体部の周縁に断続的に存在すれば十分にその目的を達成し得ることに着目し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、次の〔1〕〜〔6〕の発泡成形品の製造方法および梱包材とした。
【0010】
〔1〕 本体部の周縁に起立部を有する発泡成形品の製造方法であって、前記本体部の起立部が形成される側の板面は、雄型金型および雌型金型のそれぞれに形成された凸部が型締め時に互いに交互に入り込むことにより画成される連続した凸部の側面により成形し、前記起立部の内面は、型締め時に互いに交互に入り込んだ前記凸部の先端面により成形することを特徴とする、発泡成形品の製造方法。
〔2〕 上記〔1〕に記載の発泡成形品の製造方法により製造された、本体部の周縁に起立部を有する梱包材。
〔3〕 上記本体部は略矩形状であり、一方の対向する起立部は、断続的且つ交互に前記本体部に形成され、他方の対向する起立部は、連続的に前記本体部に形成されていることを特徴とする、上記〔2〕に記載の梱包材。
〔4〕 上記一方の対向する起立部は、長手方向の対向する起立部であることを特徴とする、上記〔3〕に記載の梱包材。
〔5〕 上記他方の対向する起立部は、上記一方の対向する起立部と一方端において連続したL字形状の起立部であることを特徴とする、上記〔3〕または〔4〕に記載の梱包材。
〔6〕 上記対向するL字形状の起立部は、その角部が本体部の対角線方向に位置するように配置されていることを特徴とする、上記〔5〕に記載の梱包材。
【発明の効果】
【0011】
上記した本発明に係る発泡成形品の製造方法によれば、発泡成形品の本体部の形成部位を金型板面に対して垂直に配置した、いわゆる縦取りの金型設計ができ、金型における取り数を大幅に増やすことが可能となり、本体部の周縁に起立部を有する発泡成形品を、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る発泡成形品の製造方法により製造された梱包材の一例を示した斜視図であり、被梱包物であるガスコンロの右側に装着する右梱包材を示した図である。
【図2】本発明に係る発泡成形品の製造方法により製造された梱包材の一例を示した斜視図であり、被梱包物であるガスコンロの左側に装着する左梱包材を示した図である。
【図3】図1のI−I線に沿う部分を成形する金型の構造を型締め状態で概念的に示した断面図である。
【図4】図1のII−II線に沿う部分を成形する金型の構造を型締め状態で概念的に示した断面図である。
【図5】図1のIII −III 線に沿う部分を成形する金型の構造を型締め状態で概念的に示した断面図である。
【図6】本発明に係る発泡成形品の製造方法に使用する雌型金型の正面図であり、発泡成形品の取り出し前の状態を概念的に示した図である。
【図7】本発明に係る梱包材を被梱包物であるガスコンロに装着する前の状態を示した斜視図である。
【図8】従来の梱包材を被梱包物であるガスコンロに装着する前の状態(a)、および装着後の状態(b)を、それぞれ示した斜視図である。
【図9】従来の発泡成形品の製造方法に使用されていた金型を搭載した自動成形機の概念的な縦断面図である。
【図10】従来の発泡成形品の製造方法に使用されていた雌型金型の正面図であり、発泡成形品の取り出し前の状態を概念的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、上記した本発明に係る発泡成形品の製造方法および梱包材の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1および図2は、本発明に係る発泡成形品の製造方法により製造された梱包材の一例を示した斜視図であり、図1は被梱包物であるガスコンロの右側に装着する右梱包材、図2は左側に装着する左梱包材をそれぞれ示し、両者で1セットである。右梱包材1Rと左梱包材1Lとは、ほぼ対称の形状のものであるが、右梱包材1Rには、特に本体部に切欠き凹部が形成されている点で相違している。以下、右梱包材1Rの形状およびその製造方法について中心に記載し、左梱包材1Lについては、同一の部材および部分には同一のアラビア数字に右梱包材であることを示すRに変えて左梱包材であることを示すLのローマ字を付してその説明を省略する場合がある。
【0015】
右梱包材1Rは、図1に示したように、略矩形状の本体部2Rと、該本体部2Rの板面に形成された切欠き凹部3Rと、本体部2Rの周縁に形成された起立部4Rとが、発泡合成樹脂、例えば、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等を原料とする型内ビーズ発泡により一体成形されたものである。
【0016】
長手方向の対向する上記起立部4−1Rは、断続的且つ交互に上記本体部2Rに形成され、短手方向の対向する起立部4−2Rは、連続的に上記本体部2Rに形成されている。また、短手方向の対向する上記起立部4−2Rは、長手方向の対向する起立部4−1Rと一方端において連続したL字形状の起立部に形成されており、該対向するL字形状の起立部4−2Rは、その角部5Rが対角線方向に位置するように上記本体部2Rに形成されている。
【0017】
上記形状の右梱包材1Rは、図3〜図5に示した構造の金型を使用して製造される。なお、図3は、図1のI−I線に沿う部分を成形する金型の構造、図4は、図1のII−II線に沿う部分を成形する金型の構造 図5は、図1のIII −III 線に沿う部分を成形する金型の構造を、それぞれ型締め状態で概念的に示した断面図である。
【0018】
金型10は、雄型金型20と雌型金型30とから構成されており、型締め時に両金型20,30間に形成されるキャビティ40内に、予備発泡させた原料ビーズが充填され、加熱されることにより所定の形状に成形される。
【0019】
雄型金型20および雌型金型30には、それぞれ凸部21,31が形成されており、該凸部21,31が、型締め時に互いに交互に入り込む。そして、これにより、図3に示したように、交互に入り込んだ凸部の先端面21a,31aと、金型の底面20a,30aとの間に、それぞれ起立部4−1Rを形成するキャビティ40aが画成される。また、雌型金型の内周面30bと、入り込んだ凸部の先端面21a,31aおよび側面21b,31bとの間に、L字形状の起立部4−2Rを形成するキャビティ40bが画成される。
【0020】
さらに、図4に示したように、型締め時に互いに交互に入り込んだ凸部21,31の連続する側面21b,31bと、雌型金型の内周面30bとの間に、略矩形状の本体部2Rを形成するキャビティ40cが画成される。また、図3および図5に示したように、雄型金型の凸部21の一つに設けた突起22の存在により、本体部2Rの板面に切欠き凹部3Rが形成される。
【0021】
上記した構造の金型は、発泡成形品の本体部2Rの形成部位を金型板面に対して垂直(抜き方向)に配置した、いわゆる縦取りの金型であり、例えば、図10に示した自動成形機に搭載する同一の金型板面積を有する金型に対し、図6に示したように、左右12セット取り(図10に示した従来であれば、左右5セット取り)の金型の設計ができる。これにより、成形品1個当たりのエネルギー使用量およびサイクルタイムを飛躍的に向上させることができ、製造原価を低減することができる。なお、図6は、雌型金型30の正面図であり、右梱包材1Rと左梱包材1Lとで1セットとなる発泡成形品の取り出し前の状態を概念的に示したものである。また、この左右の梱包材1R,1Lは、その一部を連結した割り型として成形できる金型構造としてもよい。
【0022】
上記の製造方法により製造された梱包材IR,1Lは、長手方向の対向する起立部4−1R,4−1Lは、断続的且つ交互に本体部2R,2Lに形成されたものではあるが、図7に示したように、十分に被梱包物であるガスコンロGの端部をその起立部間で挟持することができ、何ら梱包材としての機能を損なうものではない。また、短手方向の対向する起立部4−2R,4−2Lは、L字形状に形成されているとともに、そのL字の角部5R,5Lは、本体部2R,2Lの対角線方向に位置するように配置されているため、被梱包物であるガスコンロGの角部を保護できるとともに、強度的にバランスのよい梱包材となる。さらに、右梱包材IRの本体部2Rには、切欠き凹部3Rが形成されているため、該右梱包材IRをガスコンロGに装着した後においても、該切欠き凹部3Rを介してガスコンロGのロット番号等を読み取ることができる。
【0023】
以上、本発明に係る発泡成形品の製造方法および梱包材の実施の形態を説明したが、本発明は、何ら既述の実施の形態に限定されるものではない。
特に、金型の構造は、成形する本体部の起立部が形成される側の板面を、雄型金型および雌型金型のそれぞれに形成された凸部が型締め時に互いに交互に入り込むことにより画成される連続した凸部の側面により成形し、起立部の内面を、型締め時に互いに交互に入り込んだ前記凸部の先端面により成形する構造のものであれば、他の構造は、何ら実施の形態のものに限定されない。
【0024】
また、梱包材の形状も、一例を示したに過ぎず、例えば、本体部の起立部が形成される側の板面に補強等のための凸条を有するものであってもよく、また、断続的且つ交互に本体部に形成された起立部の内面側に段部を有するものであってもよい。本体部の板面に凸条を形成するためには、雄型金型或いは雌型金型に形成された凸部の側面が、型締め時に凹部が形成されるように並ぶよう設計すればよく、また、起立部の内面側に段部を形成するためには、雄型金型或いは雌型金型に形成された凸部の先端に段部を形成すればよい。
【符号の説明】
【0025】
1R 右梱包材
1L 左梱包材
2R,2L 本体部
3R 切欠き凹部
4R,4L 起立部
4−1R,4−1L 長手方向の対向する起立部
4−2R,4−2L 短手方向の対向する起立部
5R,5L L字の角部
10 金型
20 雄型金型
20a 雄型金型の底面
21 凸部
21a 凸部の先端面
21b 凸部の側面
30 雌型金型
30a 雄型金型の底面
30b 雄型金型の内周面
31 凸部
31a 凸部の先端面
31b 凸部の側面
40 キャビティ
40a 長手方向の対向する起立部を形成するキャビティ
40b 短手方向の対向する起立部を形成するキャビティ
40c 本体部を形成するキャビティ
G ガスコンロ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部の周縁に起立部を有する発泡成形品の製造方法であって、前記本体部の起立部が形成される側の板面は、雄型金型および雌型金型のそれぞれに形成された凸部が型締め時に互いに交互に入り込むことにより画成される連続した凸部の側面により成形し、前記起立部の内面は、型締め時に互いに交互に入り込んだ前記凸部の先端面により成形することを特徴とする、発泡成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡成形品の製造方法により製造された本体部の周縁に起立部を有する梱包材。
【請求項3】
上記本体部は略矩形状であり、一方の対向する起立部は、断続的且つ交互に前記本体部に形成され、他方の対向する起立部は、連続的に前記本体部に形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の梱包材。
【請求項4】
上記一方の対向する起立部は、長手方向の対向する起立部であることを特徴とする、請求項3に記載の梱包材。
【請求項5】
上記他方の対向する起立部は、上記一方の対向する起立部と一方端において連続したL字形状の起立部であることを特徴とする、請求項3または4に記載の梱包材。
【請求項6】
上記対向するL字形状の起立部は、その角部が対角線方向に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の梱包材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−228344(P2010−228344A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79778(P2009−79778)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(508264564)株式会社エイテクノデザイン (4)
【Fターム(参考)】