発熱体ユニット及び加熱装置
【課題】本発明は、小型で効率が高く、高い指向性と均一な加熱及び立ち上りの早い発熱体ユニット、及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】発熱体ユニットにおける発熱体(2)が高分子フィルム又は、フィラーを添加した高分子フィルムを熱処理することにより得られたグラファイトフィルムにより形成され、面方向に同等の熱伝導性を有しており、当該発熱体に電力を供給することにより、発熱体が高い効率で全面的に発熱するよう構成されている。
【解決手段】発熱体ユニットにおける発熱体(2)が高分子フィルム又は、フィラーを添加した高分子フィルムを熱処理することにより得られたグラファイトフィルムにより形成され、面方向に同等の熱伝導性を有しており、当該発熱体に電力を供給することにより、発熱体が高い効率で全面的に発熱するよう構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源として使用される発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置に関し、特に、炭素系物質を主成分としフィルム状に形成された発熱体を有する発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺形状の熱源として使用される従来の発熱体ユニットは、円筒状のガラス管内部に発熱体としてコイル状のタングステン線、若しくは棒状又は板状の炭素系焼結体が封入されて構成されている。このような発熱体ユニットが用いられている加熱装置としては、例えば複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置、及び電気暖房機器、調理機器、乾燥機等の電気機器等の熱源を必要とする各種機器が含まれる。
【0003】
上記のように各種機器において熱源として発熱体ユニットが広く用いられている。このため、発熱体ユニットに対しては、当該発熱体ユニットが用いられる機器の機能、形状、構成等の仕様に対応できるように各種の要求がある。例えば、熱源として高い温度になること、指定された温度を維持できること、温度調整範囲が広いこと、入力電力に対して高い効率で加熱エネルギーに変換できること、被加熱対象物を均一に加熱できること、指定された方向のみを加熱する指向性を有すること、電源投入時の突入電流が少ないこと、設定温度までの立ち上り時間が短いこと、及び発熱体ユニットの小型化が可能であり着脱が容易な構造であること等の要求がある。
【0004】
上記のような要求を満たすことを目的として、各種の発熱体ユニットが提案されている。例えば、高温度に加熱できる従来の発熱体ユニットとしては、炭素繊維に樹脂を含浸させ固着して形成されたテープ状の発熱体が、ガラス管の内部に封入されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−193130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように構成された従来の発熱体ユニットにおいては、発熱体が炭素繊維を長手方向に揃えて樹脂によりテープ状に固着して形成されている。このように形成された従来の発熱体において、炭素繊維が繋がった状態では炭素繊維と平行な方向(炭素繊維方向)の熱伝導性は優れているが、抵抗調整などを目的として加工を行った場合には炭素繊維が部分的に切断されるため、炭素繊維方向の熱伝導性は急激に悪くなる。また、炭素繊維方向と直交する方向の熱伝導性は低いため、熱源としての各発熱体ユニットにおいて温度ばらつきが発生し、信頼性の点で問題があった。さらに、炭素繊維の切断部分が起点となり亀裂が生じ、寿命が短くなるという問題があった。
【0007】
また、従来の発熱体ユニットにおける発熱体は、炭素繊維を樹脂により固着した構成であるため可撓性を有しておらず、加熱装置における熱源として要求される各種仕様に対応することが困難であった。
【0008】
本発明は、前述の従来の発熱体ユニットにおける課題を解決するものであり、小型で効率が高く、高い指向性と均一な加熱、及び立ち上りの早い発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決し、本発明の目的を達成するために、本発明の第1の観点の発熱体ユニットは、高分子フィルム又は、フィラーを添加した高分子フィルムを熱処理することにより得られたグラファイトフィルムにて形成され、面方向に2次元的等方向性の熱伝導性を有する発熱体と、
前記発熱体における対向する両端に電力を供給する電力供給部と、
前記発熱体及び前記電力供給部を内包する容器と、を具備し、
前記発熱体は、幅広部分と幅狭部分が交互に連続的に長手方向に配置され、
前記発熱体の幅広部分に孔を穿ち通電発熱経路を形成し、前記幅広部分は前記通電発熱経路において単位長さの抵抗値が異なる領域を有する。このように構成された発熱体ユニットは、高分子フィルム又は、フィラーを添加した高分子フィルムを熱処理することにより得られたグラファイトフィルムにて形成された発熱体が、面方向に同等の熱伝導性、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導性を有するため、通電により高い効率で全面が発熱し、立ち上がりの早い熱源となる。
【0010】
本発明の第2の観点の発熱体ユニットは、第1の観点の前記電力供給部が、前記発熱体を保持する保持ブロックを有し、前記発熱体における保持部分の少なくとも片側に耐熱性部材を有する。このように構成された発熱体ユニットにおいて、発熱体は電力供給部により確実に保持され信頼性の高い熱源となる。
【0011】
本発明の第3の観点の発熱体ユニットは、第1の観点の前記電力供給部が、前記発熱体を保持する保持ブロックを有し、前記保持ブロックにおける保持部分の一部に凸部が形成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいて、発熱体は電力供給部により確実に保持され信頼性の高い熱源となる。
【0012】
本発明の第4の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第3の観点の前記発熱体が可撓性、柔軟性、及び弾力性を有する材料で形成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、発熱体の加工、機器への組み込み、及び機器の設計が容易となる。
【0013】
本発明の第5の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第4の観点の前記発熱体における長手方向の少なくとも一部の領域が、単位長さの抵抗値が異なる形状で構成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、所望の温度分布を容易に、且つ確実に設定することが可能となる。
【0014】
本発明の第6の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第5の観点の前記容器が耐熱性を有するガラス管又はセラミックス管のいずれかにより構成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、耐熱性の容器により発熱体を構造的に保護することが可能となる。
【0015】
本発明の第7の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第6の観点の前記発熱体の長手方向に直交する断面形状の少なくとも一部が、曲面を有して形成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、発熱体を使用目的に応じての設計が容易となる。
【0016】
本発明の第8の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第7の観点の前記容器の長手方向の少なくとも一部の部位が、曲面を有する形状で構成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、使用目的に応じて設計の自由度を広げることができる。
【0017】
本発明の第9の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第8の観点の筒状である前記容器の少なくとも一方端を前記電力供給部において封止し、前記容器内に不活性ガスを充填している。このように構成された発熱体ユニットにおいては、発熱体の酸化を防止して長寿命化を図ることができる。
【0018】
本発明の第10の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第9の観点の前記発熱体が、厚み方向において複数のフィルム素材を互いに空隙を介して積層されたフィルム状であり、熱伝導率が200W/m・K以上の材料で形成されている。このように構成された発熱体ユニットは、炭素系物質を主成分としたフィルム状の発熱体が、厚み方向において複数のフィルム素材が積層されており、各々の面方向に同等の熱伝導性、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導性を有し、通電により高い効率で全面が発熱して、立ち上がりの早い熱源となる。
【0019】
本発明の第11の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第10の観点の前記発熱体が、厚みが300μm以下のフィルム状である。このように構成された発熱体ユニットにおいては、発熱体を使用目的の応じての設計が容易となるとともに、指向性の高い熱源を構築することが可能となる。
【0020】
本発明の第12の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第11の観点の前記発熱体における、外形形状、孔形状、および切込み形状の少なくとも一部がレーザーにより加工されている。このよう形成された発熱体ユニットは所望の形状が得られるとともに加工精度に優れ安定した抵抗値を得ることが可能となる。
【0021】
本発明の第13の観点の加熱装置は、前記の第1の観点乃至第12の観点の発熱体ユニットを有し、発熱体に対向する位置に反射手段を設けている。このように構成された加熱装置は、発熱体ユニットと発熱体ユニットからの輻射熱を反射する反射手段が設けているため、効率の高い熱源を有する加熱装置となる。
【0022】
本発明の第14の観点の加熱装置において、第13の観点の前記反射手段は長手方向の断面形状が曲面形状の反射板である。このように構成された加熱装置は、発熱体からの輻射熱により効率高く被加熱対象物を加熱することができる。
【0023】
本発明の第15の観点の加熱装置において、第13の観点の前記反射手段は長手方向の断面形状が曲面形状を有する反射板であり、当該反射板の一部に発熱体の方向に突出した凸部が形成されている。このように構成された加熱装置は、反射板により発熱体が加熱されないため、設計時の仕様通りの加熱状態を実現することができる。
【0024】
本発明の第16の観点の加熱装置は、第13の観点の前記反射手段が前記発熱体ユニットに形成された反射膜である。このように構成された加熱装置は、発熱体からの輻射熱により効率高く被加熱対象物を加熱することができる。
【0025】
本発明の第17の観点の加熱装置は、前記の第1の観点乃至第12の観点の発熱体ユニットを有し、前記発熱体ユニットの外周を取り囲むように筒体が配設されている。このように構成された加熱装置は、トナー定着機構を有する電子機器、及び調理機器等に適用することができる。
【0026】
本発明の第18の観点の加熱装置は、前記の第13の観点乃至第17の観点の加熱装置において、発熱体ユニットの電気的制御を行う制御回路を有し、前記制御回路がオンオフ制御、通電率制御、位相制御、及びゼロクロス制御のそれぞれの回路を単独、若しくは少なくとも二つを組み合わせて構成されている。このように構成された加熱装置は、精度高く所望の温度分布を有する熱源を構築することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、小型で効率が高く、高い指向性と均一な加熱及び立ち上りの早い発熱体ユニット、及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットの構成を示す平面図
【図2】本発明に係る実施の形態1における発熱体の構成を示す部分平面図
【図3】本発明に係る実施の形態1における保持ブロックの構成を示す部分断面図
【図4】本発明に係る実施の形態1における他の発熱体の各種構成例を示す部分平面図
【図5】本発明に係る実施の形態2における発熱体の各種構成例を示す部分平面図
【図6】本発明に係る実施の形態3における発熱体の各種構成例を示す部分平面図
【図7】本発明に係る実施の形態4の発熱体ユニットの構成を示す斜視図
【図8】本発明に係る実施の形態4における発熱体の構成を示す斜視図
【図9】本発明に係る実施の形態4の他の発熱体の各種構成例を示す斜視図
【図10】本発明に係る実施の形態5の加熱装置における熱輻射源の構成を示す断面図
【図11】本発明に係る実施の形態6の加熱装置における熱輻射源等の構成を示す断面図
【図12】本発明に係る実施の形態6の加熱装置における温度制御装置の概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ説明する。
【0030】
実施の形態1
本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットについて図1乃至図3を用いて説明する。図1は実施の形態1の発熱体ユニットの構造を示す正面図である。図1においては、当該発熱体ユニットが長尺形状であるため、その中間部分を破断して省略し、両端部分近傍を示している。図2は実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体の一部を示す正面図である。図3は実施の形態1の発熱体ユニットにおける一部を拡大して示した拡大図である。
【0031】
実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、透明な石英ガラスで形成されたガラス管1の内部に細長い発熱体2が配置されており、この発熱体2はガラス管1の長手方向にそって延設されている。また、ガラス管1の両端部分は平板状に溶着されており、アルゴンガス、窒素ガス又はアルゴンガスと窒素ガスの混合ガス等の不活性ガスとともに発熱体2をガラス管1の内部に封入している。ガラス管1の内部に封入されている不活性ガスであるアルゴンガス、窒素ガス又はアルゴンガスと窒素ガスの混合ガスは、高温度で使用した際、炭素系物質である発熱体2の酸化を防止するためである。
【0032】
図1に示すように、実施の形態1の発熱体ユニットは、熱輻射体としての細長い平板状の発熱体2と、この発熱体2の対向する両端に発熱体2を挟み保持する為の保持ブロック3とを有している。一方の保持ブロック3(図1においては左側の保持ブロック3)には第1の内部リード線部材11Aが取り付けられており、他方の保持ブロック3(図1においては右側の保持ブロック3)には第2の内部リード線部材11Bが取り付けられている。第1の内部リード線部材11A及び第2の内部リード線部材11Bのそれぞれは、ガラス管1の両端部分の溶着部分に埋設されたモリブデン箔8を介して、ガラス管1の両端から導出する外部リード線9と電気的に接続されている。
【0033】
第1の内部リード線部材11Aは、保持ブロック3(図1においては左側の保持ブロック3)の外周面に巻着したコイル部5と、螺旋状に形成され弾性を有するスプリング部6と、モリブデン箔8に接続された内部リード線7とにより一本の線材により構成されている。また、第2の内部リード線部材11Bは、保持ブロック3(図1においては右側の保持ブロック3)の外周面に巻着したコイル部5と、コイル部5に繋がった保持部4と、モリブデン箔8に接続された内部リード線7とにより一本の線材により構成されている。実施の形態1における第1の内部リード線部材11A及び第2の内部リード線部材11Bは、モリブデン線により形成された例で説明するが、タングステン、ニッケル、ステンレス等を材料とした弾性を有する金属線(丸棒形状、平板形状)を用いて形成してもよい。
【0034】
実施の形態1においては、保持ブロック3、モリブデン箔8、外部リード線9及び第1の内部リード線部材11Aにより第1の電力供給部10Aが構成されており、保持ブロック3、モリブデン箔8、外部リード線9及び第2の内部リード線部材11Bにより第2の電力供給部10Bが構成されている。
【0035】
なお、第1の内部リード線部材11Aにおけるスプリング部6は発熱体2に対して張力を与えるものであり、発熱体2が常に所望の位置に配置されるよう構成されている。即ち、発熱体2がガラス管1の略中心軸上に配置され、ガラス管1に接触しないよう配置されている。また、内部リード線7とコイル部5との間にスプリング部6を設けることにより、発熱体2における膨張収縮による変化を吸収することが可能となる。
なお、発熱体2における膨張収縮による変化に対し、発熱体2の材料自体が持つ伸び率又は発熱体2の形状による伸び率が大きい場合には、発熱体2の両側にあるそれぞれの内部リード線部材にスプリング部6を設ける必要はない。
【0036】
実施の形態1の発熱体ユニットにおいて、保持ブロック3の外周面にコイル部5が巻着されているが、保持ブロック3の外周面における発熱体2側の略半分にはコイル部5は巻着されておらず、露出した状態である。したがって、保持ブロック3において発熱体2から伝導した熱が放射されるよう構成されている。
【0037】
なお、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、発熱体2の両端に異なる構成の内部リード線部材11A及び11Bを設けた例で説明するが、本発明の発熱体ユニットでは発熱体2の両端に第1の内部リード線部材11Aと同様の構成部材を配設してもよく、その発熱体ユニットが用いられる加熱装置の仕様等に応じて適宜変更される。発熱体2のいずれか一端にスプリング部6を有する第1の内部リード線部材11Aを配置すれば、発熱体2の位置規制及び膨張収縮による変化の吸収は可能であるが、発熱体2の両側に第1の内部リード線部材11Aを配設すればさらなる効果が期待できる。
【0038】
なお、加熱装置において発熱体ユニットの長手方向が鉛直方向となるように組み込まれた場合には、スプリング部6が発熱体2より上側に配置されると発熱体2の温度でスプリング部6が加熱され弾性限度を超え熱膨張を吸収できなくなるおそれがあるため、スプリング部6を発熱体2の下側に配置した方が好ましい。
【0039】
また、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、第1の内部リード線部材11Aのコイル部5、スプリング部6及び内部リード線7、並びに第2の内部リード線部材11Bのコイル部5、保持部4及び内部リード線7が一体的に構成された例で説明したが、各々を別部材で構成してそれぞれが電気的に接合されていれば同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0040】
図2は、実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2を示す正面図である。
実施の形態1において用いた発熱体2は、フィルムを切断して形成したものであり、幅広部2Aと幅狭部2Bが交互に長手方向に連続して配置されている。図2に示したように、実施の形態1の発熱体ユニットにおいて用いた発熱体2は、いわゆるフィッシュボーン(魚骨)形状を有している。
【0041】
実施の形態1における発熱体2は、厚み(t)が100μmであり、最大幅(W1)が6mmであり、最小幅(W2)が約2mmであり、長さ(L)が250mm(図1参照)である。なお、発熱体2の長さや幅については、入力電圧及び発熱温度等により決定されており、当該発熱体ユニットが用いられる熱源としての仕様に応じて適宜変更が可能である。
【0042】
実施の形態1における発熱体2は、通電により電流が流れて発熱する部分(以降、通電発熱部分2Cと称す)、及び通電発熱部分2Cからの熱伝導により発熱する部分(以降、伝熱発熱部分2Dと称す)を有する構成である。このように構成された発熱体は、面方向に同等の熱伝導、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導を有している。もし、発熱体の熱伝導率が200W/m・Kに満たない場合、即ち二次元的等方向性の熱伝導性が悪い場合には、通電発熱部分2Cから伝熱発熱部分2Dへ伝導する熱が少なくなる。その結果、通電発熱部分2Cと伝熱発熱部分2Dの温度差が大きくなり、発熱体において温度ムラが生じる。
【0043】
本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットにおいて用いた発熱体2は、炭素系物質を主成分とし厚み方向において複数のフィルム素材の各層が互いに空隙を介して積層され、優れた二次元的等方向性の熱伝導性を有しており、熱伝導率が200W/m・K以上を有するフィルム状の材料で形成されている。したがって、発熱体2は、通電発熱部分2Cと伝熱発熱部分2Dとにおいて、発熱と熱伝導により温度ムラのない熱源となる。
【0044】
発熱体2の材料であるフィルム素材は、高分子フィルム又は、フィラーを添加した高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムであり、面方向の熱伝導率が600から950W/m・Kの特性を有する。天然の黒鉛を主成分とした粉末を成型し、焼成して圧延加工によりフィルム状としたものであれば、一般的には熱伝導率が200から400W/m・Kであるが、本発明の実施の形態1において用いた発熱体2は、前述のように面方向の熱伝導率が600から950W/m・Kという優れた二次元的等方向性の熱伝導を有する。
【0045】
ここで、二次元的等方向性の熱伝導とは、直交するX軸とY軸で設定される面における、あらゆる方向の熱伝導を示すものである。したがって、本発明において二次元的等方向性とは、例えば炭素繊維が同じ方向に並設して形成された発熱体における炭素繊維方向の1方向(X軸方向)、又は炭素繊維をクロスに編んで形成された発熱体における炭素繊維方向の2方向(X軸方向とY軸方向)だけを指すものではない。
本発明において用いられる発熱体2の材料であるフィルム素材は、積層構造を有し、面方向の層表面が平坦な面、凹凸面あるいは波うつ面等の各種の面形状を有しており、対向する各層の間には空隙が形成されている。このフィルム素材の積層構造において、各層間に形成される空隙の形成状態のイメージは、複数回(例えば、何十回、何百回)と重ね合わせるように折り曲げてパイ生地を作り、そのパイ生地を焼いて得た、パイの断面形状と類似している。したがって、本発明における発熱体2の材料であるフィルム素材は、前述のように、面方向の熱伝導率においては優れた二次元的等方向性の熱伝導性を有する材料である。
【0046】
前述のように製造されたフィルム素材として用いられる高分子フィルムとしては、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリピロメリットイミド(ピロメリットイミド)、ポリフェニレンイソフタルアミド(フェニレンイソフタルアミド)、ポリフェニレンベンゾイミタゾール(フェニレンベンゾイミタゾール)、ポリフェニレンベンゾビスイミタゾール(フェニレンベンゾビスイミタゾール)、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレンのうちから選ばれた少なくとも一種類の高分子フィルムを挙げることができる。また、高分子フィルムに添加されるフィラーとしては、リン酸エステル系、リン酸カルシウム系、ポリエステル系、エポキシ系、ステアリン酸系、トリメリット酸系、酸化金属系、有機錫系、鉛系、アゾ系、ニトロソ系およびスルホニルヒドラジド系の各化合物を挙げることができる。より具体的には、リン酸エステル系化合物として、リン酸トリクレジル、リン酸(トリスイソプロピルフェニル)、トリブチルホスフェ−ト、トリエチルホスフェ−ト、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスブトキシエチルフォスフェート等を挙げることができる。リン酸カルシウム系化合物としては、リン酸二水素カルシウム、リン水素カルシウム、リン酸三カルシウム、等を挙げることができる。また、ポリエステル系化合物としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸などとグリコール、グリセリン類とのポリマー等を挙げることができる。また、ステアリン酸系化合物としては、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル等を挙げることができる。酸化金属系化合物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛等を挙げることができる。トリメリット酸系化合物としては、ジブチルフマレート、ジエチルフタレート等を挙げることができる。鉛系化合物としては、ステアリン酸鉛、ケイ酸鉛等を挙げることができる。アゾ系化合物としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。ニトロソ系化合物としては、ニトロソペンタメチレンテトラミン等を挙げることができる。スルホニルヒドラジド系化合物としては、p−トルエンスルホニルヒドラジド等を挙げることができる。
【0047】
前記フィルム素材を積層し、不活性ガス中において2400℃以上で処理し、グラファイト化の過程で発生するガス処理雰囲気の圧力を調整することにより制御してフィルム状の発熱体が製造される。更に、必要に応じて、前記のように製造されたフィルム状の発熱体を圧延処理することにより、さらに良質のフィルム状の発熱体を得ることができる。このように製造されたフィルム状の発熱体を本発明の発熱体ユニットにおける発熱体2として用いる。
【0048】
なお、前記フィラーの添加量は、0.2〜20.0重量%の範囲が適当であり、より好ましくは1.0〜10.0重量%の範囲である。その最適添加量は、高分子の厚さによって異なり、高分子の厚さが薄い場合には添加量が多い方がよく、厚い場合には添加量は少なくてよい。フィラーの役割は熱処理後のフィルムを均一発泡の状態にすることにある。すなわち、添加されたフィラーは、加熱中にガスを発生し、このガスの発生した後の空洞が通り道となってフィルム内部からの分解ガスの穏やかな通過を助ける。フィラーはこうして均一発泡状態を作り出すのに役立つ。
【0049】
前述のように製造されたフィルム素材は、一般的にはトムソン型等の抜き型や、レーザー加工等により所望の形状に加工される。例えば、レーザー加工の一例として、発熱体2の面方向の熱伝導率が200W/m・K以上となるとCO2レーザー(波長10.600nm)等の熱加工作用を主体としたレーザー加工を用いた場合には、発熱体に熱を奪われてしまい、加工できないという問題がある。しかしながら、非熱加工作用を主体とした波長1064から380nmのレーザー加工、例えば、呼称1064nmの短波長レーザー加工を用いることにより所望の形状を精度高く加工することが可能となる。
【0050】
特に、実施の形態1における発熱体2を形成する場合には、呼称532nmの第二高調波レーザー加工を用いることにより、高精度に加工できることを発明者らは確認した。実施の形態1における発熱体2の材料は、フィルム素材であり、高分子フィルム又はフィラーを添加した高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムを材料としている。そして、発熱体2は、面方向の熱伝導率が600から950W/m・Kの特性を有する材料で形成されている。このような材料の発熱体2を、例えば、厚み(t)が100μm、最大幅(W1)が6mm、最小幅(W2)が約2mm、長さ(L)が250mmを有するように加工する場合などの複雑な形状に加工する場合には、呼称532nmの第二高調波レーザー加工を用いることが望ましい。以上のように、レーザー加工におけるレーザー波長が短くなると熱加工からケミカル加工に近づくために、発熱体2への熱の影響は小さくなり、加工によるススやバリの発生を抑え高精度の加工が実現できる。ただし、必ずしも発熱体2の外形形状の全てをレーザー加工する必要はなく幅広部分と幅狭部分のいずれか片方だけであってもかまわない。例えば、幅広部分が素材形状で決定される場合においては幅狭部分だけをレーザー加工すればよく、発熱体素材状等により適宜選択し得ることは言うまでもない。
【0051】
なお、好ましいレーザー加工方法は、発熱体2の材料すなわち面方向の熱伝導性及び形状によって、前述の非熱加工作用を主体としたレーザー加工波長(1064から380nm)を持つ加工方法から適宜選択し得ることは言うまでもない。さらに、上記説明した発熱体2を加工するためのレーザー加工方法は後述の他の実施の形態における発熱体ユニット、例えば図4の(b)に示す発熱体22の幅広部分の領域の孔、或いは図4の(e)に示す切込み等に採用できることは言うまでもない。
【0052】
以下、実施の形態1における発熱体ユニットの具体的な構成について説明する。
発熱体2の両端に設けられた保持ブロック3は、略円柱状であり、半円柱状に2分割されている。2分割された半円柱状の保持ブロック3の対向面となる内壁面の間には発熱体2が配置されて、保持ブロック3の外周面に第1の内部リード線部材11A又は第2の内部リード線部材11Bのコイル部5を巻線し、発熱体2が保持されるよう構成されている。この構成により、保持ブロック3は発熱体2の両端部分を保持して電気的に接続される。導電性材料の保持ブロック3は、発熱体2の熱を放熱して第1の内部リード線部材11A又は第2の内部リード線部材11Bのコイル部5に高熱を伝達しない放熱効果を有している。例えば、保持ブロック3の材料としては黒鉛が好ましい。ただ、保持ブロック3の材料としては、金属材料等の導電性に優れた材料であればよい。また、保持ブロック3の形状としては、円柱状に限定されるものではなく、矩形状等の製造容易な形状でよい。また、保持ブロック3は、放熱効果を更に高めた形状、例えば冷却フィン等を有する形状でもよい。
【0053】
さらに、実施例の形態1においては、保持ブロック3を2分割した構成例で説明したが、保持ブロックとしては複数に分割して発熱体を保持する構造でもよく、若しくは一体品で形成し、発熱体の厚み相当のスリットを設けて発熱体2を挿入する構成でも同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、図1に示す実施の形態1の保持ブロック3においては、2分割した保持ブロック3の内壁面により発熱体2を保持するよう構成されているが、内壁面に凸部分を形成して保持強度をさらに高めることができる。
図3は保持強度を高めた構成の一例である保持ブロック3Aの近傍を一部破断して示す側面図である。図3に示すフィルム状の発熱体2は、その内壁面の片側に耐熱性部材12を挟み込んだ構成となっている。
発熱体2は厚み方向に弾性を有する材料である。このため、上記のように構成された発熱体2が保持ブロック3Aの対向面により押圧されて、発熱体2はその弾性内で変形して凹凸部が形成される。この結果、例え発熱体2が高熱により大きな収縮力を生じても、耐熱性部材12が発熱体2に対し楔の役目となり、発熱体2が保持ブロック3Aから抜けることが確実に防止される。また、保持ブロック3Aにおける対向する内壁面の少なくとも一部に発熱体2の厚み以下の凸部若しくは凹凸部を設ける構成としてもよい。このように構成することにより、発熱体2が保持ブロック3Aから抜けることが防止される。
【0055】
前記のように構成された実施の形態1の発熱体ユニットにおいて、その両側から導出している外部リード線9に対して電力を供給すると、発熱体2に電流が流れ、発熱体2の抵抗により熱が発生する。このとき、発熱体2は炭素系物質を主成分とした材料で形成されているため発熱体2からは赤外線が放射される。
【0056】
実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2は、その表面形状を変えることにより放熱状態を変更することが可能である。例えば、同一のフィルム素材により形成された発熱体ユニットであっても、その厚みを薄くし、幅を広くすることにより、抵抗値の変更を伴わずに輻射面積を広くしてその輻射エネルギーを高めることが可能となる。
【0057】
実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2(図2参照)の寸法は、前述のように厚み(t)が100μmであり、最大幅(W1)が6mmであり、最小幅(W2)が約2mmであり、長さ(L)が250mm(図1参照)ある。最小幅(W2)の帯状の部分は、発熱体2において電流が流れて発熱する通電発熱部分2Cである。また、通電発熱部分2Cより外側にある発熱体2の突出部分は、通電発熱部分2Cからの熱を放熱する伝熱発熱部分2Dである。
【0058】
長手方向に延設された帯状の発熱体2は、幅方向と厚み方向の長さの比が5/1以上であるのが望ましい。幅方向の長さを厚み方向の長さより5倍以上大きくすることにより、幅方向を構成する面から放出する熱量が厚み方向を構成する面から放出する熱量より大幅に多くなり、発熱体2が指向性の高い熱源として使用することが可能となる。
【0059】
炭素系物質を主成分として、二次元的等方向性の熱伝導を有するフィルム状の材料で構成した発熱体2は、発熱効率が高く、温度が高くなるほど抵抗値が大きくなる正特性(PTC)である。このため、加熱を開始してから定格温度に達するまでの時間は極めて短い。したがって、点灯時の突入電流は発生するが、平衡後の温度にもよるが、突入電流は平衡時の2倍ほどであり、タングステン線で形成された発熱体の場合のような10倍までの突入電流は発生しない。このため、実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2は、フリッカーが発生しにくい特性を有している。また、この発熱体2の寿命は使用温度にもよるが、約10000時間である。これは、タングステン線で形成された発熱体の寿命の約2倍である。
【0060】
前述のフィルム素材から特に選ばれた少なくとも一種類の高分子フィルム或いは、前述のフィラーを添加した前記高分子フィルムを不活性ガス中において2400℃以上で処理し、グラファイト化の過程で発生するガス処理雰囲気の圧力を制御している。このように制御することにより、二次元的等方向性を有する熱伝導性を持ち、温度特性においては温度が上昇するとともに抵抗値が上昇する正特性(PTC)を有する発熱体2を製造することができる。このように製造された発熱体2は、発熱温度の安定を確保し、入力電圧が定電圧の場合において、熱変動に対して安定的な自己入力制御を行うことが可能な信頼性が高く安定的な熱源となる。
【0061】
図4は実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体の別の構成例を示す図である。図4の(a)から(i)において、発熱体は長尺であるため一方の保持ブロック3に接続さ
れた部分を示し、他方の保持ブロック3に接続された部分は省略している。
【0062】
図4において、(a)に正面図で示す発熱体21は幅方向の長さを一定とした長方形の帯形状であり、発熱体21に流れる電流Iは発熱体21の幅方向において均一に流れて、発熱体21の表面が均一に発熱する。
【0063】
図4の(b)に正面図で示す発熱体22の形状は、図2に示した発熱体2の幅広部2Aの領域に孔が穿かれた形状を有し、電流が幅広部2Aの端部まで流れるよう通電発熱経路が外周上に形成されている。即ち、図4の(b)に示す発熱体22は、電流が流れる通電発熱経路を、限られた発熱体ユニット長においてより長く構成したものである。このように構成された発熱体22は、入力電力、温度、サイズ等の設計余裕度を高めることができる。
【0064】
図4の(c)に正面図で示す発熱体23の形状は、帯形状の長尺形状の発熱体に複数の孔を長手方向に一列に配置した構成である。このように構成することにより、発熱体23の長手方向に連通する部分を2箇所有する形状、即ち通電発熱経路が2経路有する構成となる。このように構成されているため、発熱体23は保形性に優れており、ねじれ及び破断することがなく取り扱いが容易になる。
なお、形成される孔の位置は、一列に限定されるものではなく、被加熱対象物や組み込まれる機器の仕様等を考慮して複数孔の位置を設定してもよく、また複数列やランダムに複数孔を配置することも可能である。
また、孔形状は、図4の(c)で示した円形状である必要はなく、当該発熱体等の仕様、規格又はロゴ等を孔形状により表示したものでもよく、本発明の効果に影響するものではない。
【0065】
図4の(d)に斜視図で示す発熱体24の形状は、図2に示した発熱体2の伝熱発熱部分2Dの形状を変形させたものである。図2の発熱体2の伝熱発熱部分2Dは舌状で先端部分が略円形であるが、図4の(d)に示す発熱体24はその幅広部における伝熱発熱部分24Aの先端部分が矩形状である点だけが異なっている。したがって、図4の(d)の発熱体24は、図2の発熱体2と同様の効果を奏する。
【0066】
図4の(e)に斜視図で示す発熱体25の形状は、図4の(a)に示した帯形状の発熱体21の両側に切り込み25Aを入れたものである。このように構成することにより、中央部分が通電発熱部分となり、その両側で切り込み25Aの入った部分が伝熱発熱部分となり、簡単な構成により少ない電流で大きな発熱領域を形成することが可能となる。
【0067】
図4の(f)に斜視図で示す発熱体26の形状は、図4の(e)に示した発熱体25における伝熱発熱部分の一部を折り曲げて形成したものである。図4の(f)に示した発熱体26においては、伝熱発熱部分26Aを発熱体26の厚み方向に一つおきに前方又は後方(図4の(f)においては上方向又は下方向)に直角に折り曲げたものである。このように構成された発熱体26によれば、発熱体26の厚み方向に対しても輻射を行うことが可能となる。
【0068】
図4の(g)に斜視図で示す発熱体27は、図4の(e)に示した発熱体25における伝導発熱部の一部を切り起こした切り起こし部分27Aを形成したものである。このように構成することにより、図4の(e)に示した発熱体25に比べ、隣り合う伝導発熱部との接触を避けることが可能な構成となる。なお、図4の(e)の発熱体25と同様に中央部分が通電発熱部分となり、その両側の切り起こし部分27が伝熱発熱部分となる。このように図4の(g)に示す簡単な構成により少ない電流で大きな発熱領域を形成することが可能となる。
【0069】
図4の(h)に斜視図で示す発熱体28の形状は、図4の(a)に示した帯形状の発熱体21における中央部分に一定間隔で舌状の切り起こし部分28Aを設けたものである。なお、切り起こし部分28Aの形状は舌状に限定されるものではなく、伝熱発熱部分を形成可能な切り起こし形状であればよい。このように構成することにより、両側部分が通電発熱部分となり、中央部分が伝熱発熱部分となり、入力電力、温度、サイズ等の設計余裕度を高めることが可能となる。
また、図4の(h)の発熱体28は、図4の(c)の発熱体23と同様に保形性に優れ、ねじれ及び破断することがなく取り扱いが容易になる。
【0070】
図4の(i)に示す発熱体29の形状は、両側からの切り込み29Aを互い違いに入れたものである。発熱体29は、通電発熱部分の長さを、限られた発熱体ユニット長においてより長く構成したものであり、入力電力、温度、サイズ等の設計余裕度を高めることが可能となる。
【0071】
本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、発熱体が炭素系物質を主成分とするフィルム状であり、面方向の熱伝導性が実質的に同じである、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導を有している。特に、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、熱伝導率が200W/m・K以上を有し、厚みが300μm以下であるフィルム状で形成された発熱体を用いている。このため、実施の形態1の発熱体ユニットによれば、均一発熱が可能となる。また、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、発熱体が可撓性、柔軟性、及び弾力性を有すことにより、切り欠き、孔、曲げ、切り起こし等の加工が可能となり、設計余裕度の高い発熱体を構成とすることができる。
【0072】
以上の実施の形態1における説明においては、発熱体を透明石英ガラス管内に挿入し、そのガラス管内にガスを封入して高温度での使用する場合について説明した。しかし、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体は、ガラス管以外の容器を用いることが可能である。炭素系物質を主成分とし、二次元的等方向性の熱伝導を有し、そして可撓性、柔軟性、及び弾力性を有し、熱伝導性が200W/m・K以上を有し、厚みが300μm以下であるフィルム状の発熱体は、高温度(約1100℃)での使用だけでなく800℃前後においても酸化量が他の炭素系発熱体素材に比べ少なく、十分に使用に耐える組成構造である。これは、フィルム状の発熱体が密に成型されているためである。したがって、発熱体の使用温度により、その発熱体のための容器の材質を選定することができる。例えば、発熱体が180℃以下で使用されるのであれば、シリコン材質の容器を使用し、250℃以下で使用されるのであれば、フッ素樹脂材質の容器を使用し、800℃以下で使用されるのであれば、マイカ材質、セラミックス、結晶化ガラス、石英管、耐熱ガラス等の耐熱温度許容範囲での絶縁材料を選択することができる。なお、800℃以下の使用温度においては、容器内にガスを充填する必要がなく、発熱体ユニットの構成、形状を使用目的に合わせて自由に設計することが可能となる。このため、800℃以下の使用温度で使用される発熱体ユニットでは、設計の自由度を大幅に広げることができ、さらにコストの低減を図ることが可能となる。
なお、実施の形態1における管形状については、その断面形状が略円形状で説明したが、本発明においては必ずしも略円形状である必要はなく、発熱体ユニットの仕様目的に合わせ四角又は六角等の多角形状であってよく、さらには楕円形状であっても実施の形態1の発熱体ユニットと同様の効果を奏する。
【0073】
また、本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットにおいて、発熱体は可撓性、柔軟性、及び弾力性を有しているため、発熱体ユニットの使用の形態、目的等に応じて、発熱体ユニットを管状、矩形状、長手方向にそって曲部を形成した湾曲状、円形に形成した環状等に構成することが可能であることは言うまでもない。
【0074】
実施の形態2
以下、本発明に係る実施の形態2の発熱体ユニットについて図5を用いて説明する。図5は、実施の形態2の発熱体ユニットにおける発熱体の各種形状の具体例を示す正面図である。図5における各発熱体において、発熱体は長尺であり、同じパターン形状の繰り返しであるため、右側部分は省略して示している。
【0075】
実施の形態2の発熱体ユニットにおいて、前述の実施の形態1の発熱体ユニットと異なる点は発熱体の形状であり、その他は実施の形態1と同じである。したがって、実施の形態2の発熱体ユニットにおける発熱体の形状について説明し、その他の構成要素は実施の形態1の説明を適用する。
【0076】
実施の形態2の発熱体ユニットにおける発熱体は、発熱体の長手方向及び幅方向における温度分布を均一にするのではなく、温度分布に変化を持たせるものである。実施の形態2の発熱体ユニットにおける発熱体では、その長手方向の少なくとも一部に単位長さにおいて抵抗値の異なる領域が設けられている。実施の形態2における発熱体は、前述の実施の形態1において図2を用いて説明した発熱体2の変形例である。図5の(a)から(d)は、実施の形態2における発熱体の各種変形例を示している。
【0077】
図5の(a)に示す発熱体201において、その中央部分が通電発熱部分201Aであり、その両側(図5の(a)においては、通電発熱部分201Aの上下部分)に突出した複数の舌状部分が伝熱発熱部分201Bである。伝熱発熱部分201Bを有する幅広部は等間隔で長手方向に並設されており、発熱体201の最大幅、即ち幅広部の幅はZaである。長手方向における全ての幅広部の幅は同一である。
【0078】
図5の(a)に示すように、発熱体201の長手方向において等しい距離を有する領域XaとXbにおいて、通電発熱部分201Aの幅である最狭幅(Y1,Y2)が異なっている。即ち、第1の領域Xaの第1の最狭幅Y1が第2の領域の第2の最狭幅Y2より狭く形成されている(Y1<Y2)。このように、第1の最狭幅Y1が第2の最狭幅Y2より狭く(Y1<Y2)形成されているため、第1の領域Xaの抵抗値が第2の領域Xbの抵抗値に比べて大きくなり、第1の領域Xaの発熱温度が高くなる。このように、抵抗値の異なる領域を設けることにより、発熱体201の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0079】
図5の(b)に示す発熱体202は、伝熱発熱部分を有する幅広部202Aの最大幅Zbは全て同じであるが、幅広部202Aの間隔及び形状が長手方向において異なっている。発熱体202では、その長手方向において同じ長さを有する第3の領域Xcと第4の領域Xdにおいて、幅広部202Aの形成数が異なっている。即ち、第3の領域Xcにおける幅広部202Aの形成数は第4の領域Xdにおける幅広部202Aの形成数より多くなっている。図5の(b)に示した例においては、第3の領域Xcの幅広部202Aの形成数が9個であり、第4の領域Xdの幅広部202Aの形成数が6個である。また、第3の領域Xcの幅広部202Aの形状は、第4の領域Xdの幅広部202Aの形状に比べて、その長手方向の幅が狭く形成されており、第3の領域Xcが第4の領域Xdに比べて幅広部202Aを密度高く形成している。このようにパターン密度が異なる第3の領域Xcと第4の領域Xdが形成されているため、第3の領域Xcの抵抗値が第4の領域Xdの抵抗値に比べて大きくなり、第3の領域Xcの発熱温度が高くなる。このように、発熱体202の長手方向において抵抗値の異なる領域を設けることにより、発熱体202の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0080】
なお、図5の(b)に示す発熱体202においては、第3の領域Xc以外の領域は第4の領域Xdと同様に構成されているが、これらの配置は設定される温度分布により適宜変更される。
【0081】
図5の(c)に示す発熱体203は、その長手方向において等しい距離を有する第5の領域Xeと第6の領域Xfが、異なる最大幅を有している。第5の領域Xeの幅広部203Aの最大幅Zdは、第6の領域Xfの幅広部203Bの最大幅Zcより狭く(Zd<Zc)形成されている。但し、第5の領域Xeの幅広部203Bの長手方向の間隔と、第6の領域Xfの幅広部203Bの長手方向の間隔は同一である。このように第5の領域Xeのみ、その最大幅Zdを他の領域より狭く(Zd<Zc)することにより、第6の領域Xfの発熱量は第5の領域Xeの発熱量より多くなり、第6の領域Xfの温度を第5の領域Xeより高くすることができる。このように、発熱体の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0082】
図5の(d)に示す発熱体204は、第7の領域Xgにおける通電発熱部分204Aが他の領域の通電発熱部分204Aからずれた位置(図5の(d)においては下側にずれた位置)に形成されている。また、第7の領域Xgにおいては、通電発熱部分204Aの両側に形成された伝熱発熱部分204Bの形状が対象ではなく、上側に小さく、下側に大きく張り出した形状を有している。このように、発熱体204の一部の領域を片方にずらすことにより、発熱体204の長手方向の温度分布とともに幅方向の温度分布も設定可能となる。
【0083】
なお、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体は、図5に示したパターン形状に限定されるものではなく、抵抗値を変更可能な形状に各種変更可能である。また、実施の形態2における発熱体に前述の図4に示した構成等を付加することにより、長手方向の温度分布を所望の状態に変更できることは言うまでもない。
【0084】
特に、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体は、炭素系物質を主成分とし、二次元的等方向性の熱伝導を有し、可撓性、柔軟性、及び弾力性を有しており、熱伝導率が200W/m・K以上であり、厚みが300μm以下であるフィルム状で形成されている。このため、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体は、切り欠き、孔、曲げ、切り起こし等の所望の加工が可能となり、発熱体ユニットの構成に応じて適宜変更が容易に可能な構成である。
【0085】
実施の形態3
以下、本発明に係る実施の形態3の発熱体ユニットについて図6を用いて説明する。図6は、実施の形態3の発熱体ユニットにおける発熱体の各種形状を有する具体例を示す正面図である。図6において、各発熱体は長尺形状であり、同じパターン形状の繰り返しであるため、右側部分を省略して示している。
【0086】
実施の形態3の発熱体ユニットにおいて、前述の実施の形態1の発熱体ユニットと異なる点は発熱体の形状であり、その他は実施の形態1と同じである。したがって、実施の形態3の発熱体ユニットにおける発熱体の形状について説明し、その他の構成要素は実施の形態1の説明を適用する。
【0087】
実施の形態3の発熱体ユニットにおける発熱体は、発熱体の長手方向及び幅方向における温度分布を均一にするのではなく、温度分布に変化を持たせるものである。実施の形態3の発熱体ユニットにおける発熱体では、その長手方向の少なくとも一部に単位長さにおいて抵抗値の異なる領域が形成されている。実施の形態3における発熱体は、前述の実施の形態1において図4の(b)を用いて説明した発熱体22の変形例である。図6の(a)から(d)は、実施の形態3における発熱体の各種変形例を示している。
【0088】
図6の(a)に示す発熱体301の形状は、図2に示した発熱体2のように、幅広部301Aと幅狭部301Bの各領域が長手方向に交互に連続的に配置されている。そして、幅広部301Aの領域に孔が穿かれており、電流が幅広部301Aの端部まで流れるよう通電発熱経路が幅広部301Aの外周上に形成されている。即ち、図6の(a)に示す発熱体301は、電流が流れる通電発熱経路を、限られた発熱体ユニット長においてより長く構成したものである。
【0089】
図6の(a)に示す発熱体301は、幅広部301Aが等間隔で配置され、その最大幅がWaである。図6の(a)に示す発熱体301においては、その長手方向において同じ長さを有する第1の領域Taと第2の領域Tbが異なる形状の通電発熱経路を有している。第1の領域Taにおける通電発熱経路の幅t1は、第2の領域Tbにおける通電発熱経路t2より狭く(t1<t2)形成されている。このため、第1の領域Taの抵抗値が第2の領域Tbの抵抗値に比べて大きくなる。第1の領域Taと第2の領域Tbには同一電流が流れるため、第1の領域Taにおける発熱温度が第2の領域Xbにおける発熱温度より高くなり、発熱体301の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0090】
図6の(b)に示す発熱体302は、幅広部302Aの最大幅Wbは同じであるが、幅広部302Aの間隔が長手方向において異なっている。発熱体302では、その長手方向において同じ長さを有する第3の領域Tcと第4の領域Tdにおける幅広部302Aの形成数が異なっている。即ち、第3の領域Tcにおける幅広部302Aの形成数は第4の領域Tdにおける幅広部302Aの形成数より多くなっている。図6の(b)に示した例においては、第3の領域Tcの幅広部302Aが6個であり、第4の領域Tdの幅広部302Aが5個である。このように、発熱体302においては、第3の領域Tcの幅広部302Aの形成数が多く、第4の領域Tdの幅広部302Aの形成数が少なく設定されているため、発熱体302においてパターン密度が異なる第3の領域Tcと第4の領域Tdが形成されている。この結果、第3の領域Tcの抵抗値が第4の領域Tdの抵抗値に比べて大きくなり、第3の領域Tcの発熱温度が高くなる。このように、発熱体302の長手方向において抵抗値の異なる領域を設けることにより、発熱体302の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0091】
なお、図6の(b)に示す発熱体302においては、第3の領域Tc以外の領域は第4の領域Tdと同様に構成されているが、これらの配置は設定される温度分布により適宜変更可能である。
【0092】
図6の(c)に示す発熱体303は、その長手方向において等しい距離を有する第5の領域Teと第6の領域Tfが、異なる最大幅を有している。第5の領域Teの幅広部303Aの最大幅Wdは、第6の領域Tfの幅広部303Bの最大幅Wcより狭く(Wd<Wc)形成されている。但し、第5の領域Teの幅広部303Aの長手方向の間隔と、第6の領域Tfの幅広部303Bの長手方向の間隔は同一である。このように第5の領域Te幅広部303Aの最大幅Wcを他の領域の幅広部より狭く(Wd<Wc)することにより、第6の領域Tfの発熱量は第5の領域Teの発熱量より多くなり、第6の領域Tfの温度を高くすることができる。このように、発熱体303の長手方向において抵抗値の異なる領域を設けることにより、発熱体303の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0093】
図6の(d)に示す発熱体304は、第7の領域Tgにおける幅広部304Aが他の領域の幅広部304Bからずれた位置(図6の(d)においては下側にずれた位置)に形成されている。また、第7の領域Tgにおいて、幅広部304Aにおける幅狭部304Cからの通電発熱経路の長さが、幅狭部304Cの両側部分(図6の(d)においては上下部分)で異なっている。即ち、幅狭部304Cより下側の幅広部304Aの通電発熱経路は、幅狭部304Cより上側の幅広部304Aの通電発熱経路より長く形成されている。このように、発熱体304の一部の領域を片方にずらすことにより、発熱体304の長手方向の温度分布とともに幅方向の温度分布も設定可能となる。
【0094】
なお、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体は、図6に示したパターンに限定されるものではなく、抵抗値を変更できる形状であれば変更可能である。また、実施の形態3における発熱体に前述の図4に示した構成を付加することにより、長手方向の温度分布を所望の状態に変更できることは言うまでもない。
【0095】
実施の形態4
以下、本発明に係る実施の形態4の発熱体ユニットについて図7乃至図9を参照しつつ説明する。
【0096】
図7は本発明に係る実施の形態4の発熱体ユニットの構成を示す斜視図である。図8は実施の形態4の発熱体ユニットにおける発熱体を示す斜視図である。図9は実施の形態4の発熱体ユニットにおける発熱体の他の構成例を示す斜視図である。
実施の形態4の発熱体ユニットにおいて、前述の実施の形態1の発熱体ユニットと異なる点は、発熱体の形状であり、発熱体が曲面を有している点である。実施の形態4の発熱体ユニットは、前述の実施の形態1において説明した発熱体の幅を更に広くした発熱体を用いたものである。実施の形態4における発熱体を、耐熱管である石英ガラス管内に挿入するために、長手方向に対して直交する方向(幅方向)の発熱体の断面形状の少なくとも一部を曲面で形成して、幅の広い発熱体を容易に耐熱管内に収納できる構成としたものである。
【0097】
図7に示すように、実施の形態4の発熱体ユニットは、前述の実施の形態1の発熱体ユニットと同様に、熱輻射体としての細長い平板状の発熱体401と、この発熱体401の両端に固着される保持ブロック3とを有している。一方の保持ブロック3(図7においては左側の保持ブロック3)には第1の内部リード線部材11Aが取り付けられており、他方の保持ブロック3(図7においては右側の保持ブロック3)には第2の内部リード線部材11Bが取り付けられている。第1の内部リード線部材11A及び第2の内部リード線部材11Bのそれぞれは、ガラス管1の両端部分の溶着部分に埋設されたモリブデン箔8を介して、ガラス管1の両端から導出する外部リード線9と電気的に接続されている。
実施の形態4の発熱体ユニットにおいて、実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体以外は同様の構成を有しているため、同じ機能、構成を有すものには実施の形態1と同じ符号を付して詳細な説明は実施の形態1における説明を適用する。
【0098】
図8に示すように、実施の形態4の発熱体ユニットにおける発熱体401は、前述の実施の形態3において説明した図6の(c)の発熱体303を曲面に形成したものである。発熱体401は、その長手方向に直交する方向の断面形状が円弧状に形成されている。発熱体401の両端には平坦な被保持端部450が形成されている。被保持端部450は、2分割された保持ブロック3により保持されて保持される部位である。また、発熱体401は、その長手方向における略中央部分に他の領域より最大幅の狭い領域Vaが形成されている。したがって、長手方向における単位長さ当たりの領域Vaの発熱量は、他の領域の発熱量に比べて少なくなり、中央部分の発熱温度が低く設定されている。このように、抵抗値の異なる領域を設けて、発熱体401の長手方向において所望の温度分布を設定できる構成である。また、実施の形態4における発熱体401は、その長手方向に直交する方向の断面形状が曲面により構成されているため、発熱体401からの熱輻射を集中又は拡散することが可能である。なお、実施の形態4においてはガラス管1を用いた耐熱管の直径が発熱体401に比べて大きい場合であっても、曲面に形成された発熱体401を当該耐熱管内部に設けて、発熱体401からの熱輻射の集中又は拡散の機能を発揮させることも可能である。また、発熱体401の少なくとも一部を曲面で形成して、部分的に集中又は拡散の機能を発揮させることも可能である。
【0099】
図9の(a)、(b)及び(c)に示した発熱体402,403,404は、実施の形態4における発熱体401の変形例である。これらの発熱体402,403,404においても、図8に示した発熱体401と同様に、長手方向に直交する方向の断面形状が円弧状に形成されており、両端には平坦な被保持端部450が形成されている。
【0100】
図9の(a)に示す発熱体402は、幅広部402Aと幅狭部402Bが交互に連続的に形成されており、発熱体402の長手方向にそった中央部分に帯状の通電発熱部分402Cが形成されている。この通電発熱部分402Cの両側に形成された幅広部402Aにおける舌状部402Dには孔が形成されており、それぞれの舌状部402Dの端部に電流が流れるように通電発熱経路が形成されている。
【0101】
また、図9の(a)に示す発熱体402は、その長手方向の略中央部分に他の領域より最大幅の狭い領域Vbが形成されている。したがって、領域Vbの発熱量は他の領域の発熱量に比べて少なくなり、中央部分の発熱温度を他の部位より低く設定し発熱体402の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0102】
図9の(b)に示す発熱体403は、幅広部403Aが幅狭部403Bを挟んで等間隔で形成されており、発熱体403の長手方向にそった中央部分に帯状の通電発熱部分403Cが形成されている。また、図9の(b)に示す発熱体403は、その長手方向の略中央部分に他の領域より最大幅の狭い領域Vcが形成されている。したがって、発熱体403の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0103】
図9の(c)に示す発熱体404は、幅広部404Aが幅狭部404Bを挟んで等間隔で形成されている。また、図9の(c)に示す発熱体404は、その長手方向そった領域において、幅広部404Aの形状が異なる領域を形成している。図9の(c)に示すように、領域Vdは、幅広部404Aの舌状部の長さが他の領域より短く形成されている。また、領域Vdに隣接する領域Veは、通電発熱部分404Cの位置が他の部位よりずれた位置に形成されている。さらに、領域Veの幅広部404Aにおける通電発熱部分404Cの両側にある舌状部の長さが異なっている。具体的には、図9の(c)に示す発熱体404においては、領域Veの幅広部404Aの手前側の舌状部は長く形成されており、耐熱管、例えば石英ガラス管の内壁面にそって略半円弧状に形成されている。一方、領域Veの幅広部404Aの奥側の舌状部は短く形成されている。したがって、発熱体404の長手方向及び長手方向に直交する周方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0104】
本発明に係る実施の形態4の発熱体ユニットにおける発熱体は、炭素系物質を主成分とするフィルム状である。したがって、実施の形態4の発熱体ユニットにおける発熱体においては面方向の熱伝導性が実質的に同じである、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導を有している。実施の形態4の発熱体ユニットにおける発熱体は、可撓性、柔軟性、及び弾力性を有して高精度に加工可能な材料であるため、実施の形態4において用いた発熱体のように各種の変形が可能である。実施の形態4における発熱体においては、耐熱管の内径より最大幅が大きい場合には曲面を形成して当該耐熱管の内壁面にそって発熱体を配置することが可能である。また、発熱体の最大幅が耐熱管の内径より小さい場合であっても、発熱体からの熱輻射の集中や拡散を目的として、実施の形態4において説明した曲面を有する各種形状の発熱体を用いることも可能である。
【0105】
実施の形態4の発熱体ユニットにおいては、発熱体に曲部を設けることにより、発熱体を収納する耐熱管の形状(直径)が発熱体の形状による束縛から大幅に解放される。この結果、本発明の発熱体ユニットは熱容量を可変できる構成となり、例えば発熱体を変えずに耐熱管を小さくして熱容量を少なくすることにより、温度の立ち上がりが速くなるなど、目的に応じた設計が可能となる。
【0106】
また、発熱体を耐熱管の内壁面に近接して配置することにより、耐熱管の内壁温度を上昇することが可能となり、耐熱管からの熱輻射を増やすことが可能となる。
さらに、曲面により構成された発熱体において、長手方向のパターン形状と幅方向のパターン形状とを組み合わせて形成し、耐熱管内に挿入して発熱体ユニットを構成することにより、長手方向の温度分布だけでなく、円周方向の温度分布の設定が可能となる。この結果、本発明によれば立体的な温度分布を形成することが可能となり、本発明の発熱体ユニットの使用範囲を大幅に広げることができる。従来の発熱体ユニットにおいて複数本の発熱体ユニットを用いて立体的な温度分布を構成していたが、本発明によれば1本の発熱体ユニットで同様のものを構築することが可能となり、省スペース化と低コスト化を図ることができる。
【0107】
実施の形態5
以下、本発明に係る実施の形態5の加熱装置について図10を参照しつつ説明する。
実施の形態5の加熱装置は、前述の実施の形態1乃至実施の形態4の発熱体ユニットを熱輻射源として用いたものである。図10は本発明の発熱体ユニットを熱輻射源として用い、反射板若しくは反射膜を設けた構成を示す図である。図10においては、発熱体ユニットの延設方向に直交する方向で切断した断面図を示している。
【0108】
実施の形態5の加熱装置の一例として図10を用いて説明する。図10の(a)に示す加熱装置は前述の実施の形態1の発熱体ユニット(図1参照)を熱輻射源として用いたものである。図10の(b)及び(c)に示す加熱装置は前述の実施の形態4の発熱体ユニット(図7参照)を熱輻射源として用いたものである。
【0109】
図10の(a)に示す加熱装置は、発熱体ユニット50における発熱体2の平面部分に対向する位置に反射板51を設けた加熱装置である。反射板51は、長手方向(延設方向)に直交する断面形状が放物線形状を有し、発熱体2は反射板51の放物線における略焦点の位置に配置されている。この加熱装置においては、発熱体ユニット50と反射手段である反射板51とにより熱輻射源が構成されている。
【0110】
実施の形態5の加熱装置には、図10に示した熱輻射源である発熱体ユニット50の他に、発熱体ユニット50への電力を供給する電源部、電力を制御する制御部、装置外観を形成する筐体等の加熱装置において一般的に用いられている構成要素が含まれる。実施の形態5の加熱装置に関しては、本発明の加熱装置の特徴である熱輻射源である発熱体ユニットと反射手段について詳細に説明する。
【0111】
実施の形態5の加熱装置において、発熱体ユニット50に用いられている発熱体2は、炭素系物質を主成分とし、面方向の熱伝導性が同じである、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導を有するフィルム状の材料により帯状に形成されている。このため、発熱体2の平面部分から放射される熱量は幅面部分(厚みを構成する面)から放射される熱量に比べて飛躍的に大きい値を示す。即ち、発熱体2は指向性を有する熱放射体である。したがって、発熱体2の平面部分に対向する位置に反射板51を設けることにより、発熱体2の背面から放射された熱線が反射板51により反射され、反射板51の前方にある被加熱対象物を効率高く加熱することが可能となる。
【0112】
図10の(a)に示した加熱装置においては、発熱体ユニット50における発熱体の平面部分に対向する背面側の位置に反射板51を配設し、その反射板51の長手方向に直交する断面形状が放物線形状であり、熱輻射源である発熱体2における発熱中心が反射板51の焦点の位置に配置されている。このように発熱体2における発熱中心が反射板51の焦点の位置にあるため、図10の(a)に示した加熱装置は発熱体2からの輻射熱が反射板51により反射されて平行な熱線となり効率の高い熱輻射が可能となる。
【0113】
図10の(b)に示す加熱装置は、前述の実施の形態4の発熱体ユニット(図7参照)を熱輻射源として用いたものであり、この発熱体ユニットにおける発熱体401の凹面部分に対向する位置に反射板53を設けたものである。反射板53は、長手方向(延設方向)に直交する断面形状が放物面形状を有し、発熱体401は反射板53の放物面における略焦点の位置に配置されている。また、反射板53は、その長手方向(延設方向)に直交する断面形状において、発熱体ユニット52に対向する中央部分に凸部53Aが形成されている。この加熱装置においては、発熱体ユニット52と反射手段である反射板53とにより熱輻射源が構成されている。
【0114】
図10の(b)のように構成された加熱装置の熱輻射源においては、発熱体401の凸面が被加熱対象物の方向に向いているため、熱輻射源の前方側の広い範囲を加熱することが可能となる。また、発熱体401の凹面から反射板53に放射された熱線の一部は、反射板53の凸部53Aの反射面に反射されて、反射板53の端部分で再反射し、前方側へ放射されている。このため、図10の(b)に示した加熱装置の熱輻射源においては、反射板53の前方側の広い範囲を略均一に加熱することが可能となる。さらに、反射板53に凸部53Aが形成されて、耐熱管であるガラス管の近くに配置されるため、ガラス管表面からの熱輻射も反射するとともに、反射板53が発熱体401に近づく構成となるため、さらに多くの熱輻射を行うことができる優れた熱輻射源となる。
【0115】
前記のように、図10の(b)に示した加熱装置においては、発熱体ユニット52における発熱体401の曲面凹側部分に対向する位置に反射板53を配設し、その曲面凹側部分の長手方向の中心部分に対向する反射板53における中心位置に発熱体401の方向に突出する凸部53Aが形成されている。この反射板53の凸部53Aに入射された熱線は、発熱体以外の方向に反射して、再度反射板53に入射して正面側に再反射するよう構成されている。このように構成された加熱装置においては、発熱体401からの輻射熱が凸部53Aの反射面により効率高く正面側に放射される。さらに、発熱体401の少なくとも一部がガラス管1で覆われているため発熱体401の温度が高くなり、加熱装置により加熱領域の温度分布を調整することが可能となる。
【0116】
また、図10の(b)に示した加熱装置においては、発熱体ユニット52の発熱体401の背面側に反射板53を配設し、その反射板53により反射された熱線が発熱体401を照射しないよう当該反射板53が構成されているため、発熱体401に対する反射板53による二次加熱に起因する温度上昇を防止することが可能となり、ばらつきがなく仕様の安定した加熱装置を実現することができる。発熱体ユニット52に用いられている発熱体401は、その抵抗変化率が発熱体自体の温度により変化するものである。また、発熱体ユニット52の定格の設定は、発熱体ユニット52の自己放熱のみを考慮して設定される場合が多くなっている。このように設定された発熱体ユニット52を加熱装置に組み込んだ場合、反射板53の形状により反射板53からの熱線により発熱体401の温度が上昇すると加熱装置の定格が変わることになる。したがって、図10の(b)に示した加熱装置は、反射板53により発熱体401が照射されないよう構成されているため、発熱体ユニット52の定格が反射板401による影響を受けることが無くなり、予め設定した所望の仕様を確実に有する加熱装置の設計が容易となる。
前記のように、反射手段である反射板51,53を発熱体ユニット50,52に設けることにより輻射効率の高い加熱装置を構築することができる。
【0117】
なお、図10の(a)及び(b)に示した反射板51,53の反射面形状は熱反射が平行となる放物面を有する曲面形状で説明したが、本発明における反射板としてはこのような構成に限定されるものではなく、被加熱対象物に応じて各種の形状、例えば円弧状、発熱体からの輻射熱を広げる拡散反射可能な曲面形状、拡散反射可能な多段の折り曲げ面を集合した形状等も構成することができる。
【0118】
また、図10の(b)に示した反射板53の凸部53Aは、三角形状のもので説明したが、本発明はこのような形状に限定されるものではなく、円弧面、拡散反射可能な曲面形状、拡散反射可能な多段の折り曲げ面を集合した形状なども構成することができる。
なお、図10の(a)及び(b)に示した発熱体ユニット50,52は、反射板51,53の側面端部より出っ張らないよう、反射板51,53の内側に配設した。このように発熱体ユニットを反射板51,53の内側に配設することにより、反射板51,53による反射(凸部53Aからの拡散輻射や凹部面からの乱輻射を含む)を効率高く行うことができる。
【0119】
また、反射板51,53の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、各種ステンレス等を用いることができる。また、反射板51,53の反射面には反射効率の高い反射材料のコーティングや、表面処理を行い、反射板51,53の反射率を高める処理を行った方がよいことは言うまでもない。
なお、反射板51,53における、長手方向(延設方向)に直交する断面形状は、放物線形状に限定されるものではなく、本発明においては少なくとも発熱体の背面からの輻射熱を発熱体の正面側に配置された被加熱対象物を加熱することが可能な形状、例えば曲面形状、多角形状等の拡散反射可能な形状であれば適用可能である。
【0120】
図10の(c)に示す加熱装置は、前述の実施の形態4の発熱体ユニット(図7参照)を熱輻射源として用いたものであり、この発熱体ユニットのガラス管1に反射膜55が形成されたものである。反射膜55は、ガラス管1の外周面における発熱体401の凹面部分に対向する位置であり、ガラス管1の略半分の領域に形成されている。この加熱装置においては、発熱体ユニット54と反射手段である反射膜55とにより熱輻射源が構成されている。反射膜55は、例えばアルミニウム蒸着、金転写又は、セラミックスコーティング等により形成される。
【0121】
図10の(c)に示した加熱装置においては、発熱体ユニット54における発熱体401の背面側に反射膜55を設け、その反射膜55により発熱体401からの熱輻射を実質的に同一方向に反射するよう構成している。このため、図10の(c)に示した加熱装置は、被加熱対象物を効率高く加熱することが可能となる。このように、発熱体ユニット54における背面側に反射膜55を設けることにより、その反射膜55により背面側に放射された輻射熱を発熱体401に返すことになり、発熱体401をより高温度にすることが可能となる。この結果、発熱体401は、その曲面凸側から高エネルギーの輻射熱を同一方向に放射し、被加熱対象物を効率高く加熱することが可能となる。
前記のように、反射手段である反射膜55をガラス管1の背面に形成することにより、小型で輻射効率の高い加熱装置を構築することができる。
【0122】
実施の形態6
以下、本発明に係る実施の形態6の加熱装置について図11を参照しつつ説明する。
図11は、実施の形態6の加熱装置として複写機を例に挙げて、その熱輻射源となる発熱体ユニット60等の近傍を示した図である。図11は発熱体ユニット60の長手方向(延設方向)に直交する方向で切断した断面図である。
実施の形態6の加熱装置である複写機は、前述の実施の形態4の発熱体ユニット(図7参照)を熱輻射源として用いたものである。実施の形態6の複写機において、発熱体ユニット60は、その長手方向に直交する断面が曲面に形成された発熱体401を有し、筒体61により取り囲まれて構成されている。なお、実施の形態6の加熱装置である複写機には、図11に示した発熱体ユニット等の他に、電力を供給する電源部、複写機構、複写機構を制御する制御部、装置外観を形成する筐体等の一般的に複写機に用いられている構成要素が含まれる。
【0123】
実施の形態6の加熱装置は、複写機であるため発熱体ユニット60を取り囲む筒体61はトナー定着ローラである。以下、筒体61をトナー定着ローラ61として説明する。
トナー定着ローラ61と加圧ローラ62は互いに接して回転するよう構成されている。トナー定着ローラ61と加圧ローラ62の間には、所望形状のトナー63を担持した紙64が挿入されて、加熱とともに加圧されて定着される。したがって、トナー定着ローラ61と加圧ローラ62との間に通されて、紙上のトナー63を効率よく定着させるために、発熱体401の曲面凸側がトナー定着ローラ61と加圧ローラ62と対向面(トナー定着領域)を含む領域を向くよう配置されている。但し、発熱体401の曲面凸側が向く方向は、トナー定着領域より上流側、即ちトナー定着ローラ61のトナー定着領域より前側の領域を向くよう配設されている。このように発熱体401を配設することにより、トナー定着ローラ61におけるトナー定着領域より上流側の部分も含めて加熱して、その部分の蓄熱量を上げ、発熱体401から放射された熱量を効果的にトナー定着に用いることが可能となる。
【0124】
実施の形態6の加熱装置おいて、発熱体ユニット60を取り囲むように配設されるトナー定着ローラ61である筒体は、発熱体ユニット60から放射された熱を所望方向へ熱輻射するものであり、発熱体401の曲面凸側の中心に対向する領域が熱輻射中心となる。この筒体(61)は、一体物で構成した例で説明したが、複数の部材を組み合わせて構成してもよい。
このように実施の形態6の加熱装置である複写機においては、指向性を有する発熱体ユニット60を効果的に配設して効率の高い熱輻射源とすることが可能となる。
【0125】
次に、実施の形態6の加熱装置における温度制御方法について図12を参照しつつ説明する。図12は、実施の形態6の加熱装置における温度制御装置の概略構成を示す図である。
【0126】
電源67から供給された電力が制御部66において、ユーザからの指令に従い制御され、発熱体ユニット60に通電される。通電された発熱体ユニット60の発熱体401は、高温度に発熱してトナー定着ローラ61の温度を所定の温度(トナー定着温度)まで上昇させる。トナー定着ローラ61にはセンサ部65が設けられており、トナー定着ローラ61の温度検知を行っている。センサ部65はトナー定着ローラ61の検知温度を制御部66にフィードバックしており、制御部66は発熱体ユニット60への電力を制御して、トナー定着ローラ61の温度調節を行っている。
【0127】
以上にように、実施の形態6の加熱装置においては、発熱体ユニットの通電制御を行う場合、その制御条件として検知温度を加味することが可能である。また、温度制御としては、例えばサーモスタット等の温度検知手段を用いたオンオフ制御、正確な温度を感知する温度感知センサを用いた入力電源の位相制御、さらに通電率制御、ゼロクロス制御等を単独で若しくはそれらを組み合わせて行うことにより、高精度な温度管理が可能な加熱装置を実現できる。
【0128】
したがって、前記のように構成された実施の形態6の加熱装置によれば、発熱体の配設位置による指向性制御と、検知温度による通電制御とにより、輻射特性に優れた加熱と高精度な温度管理が可能となる。
なお、実施の形態6の加熱装置においては、実施の形態4の発熱体ユニット(図7参照)を熱輻射源として用いた例で説明したが、熱輻射源としては前述の各実施の形態において説明したいずれの発熱体ユニットの構成でも適用可能であり、同様の効果を奏するものである。
【0129】
また、実施の形態6の加熱装置として複写機について説明したが、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置においてもトナー定着のための熱輻射源として本発明の発熱体ユニットを用いることができ、同様の効果を奏する。なお、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置において、トナー定着に用いた機構の場合、熱輻射源として用いられる発熱体ユニットはローラと呼ばれる筒体により取り囲まれて用いられる。
【0130】
なお、本発明の加熱装置としては、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置の他に、暖房用ストーブ等の電気暖房機器、調理加熱等の調理機器、食品等の乾燥機、及び短時間で高温度に加熱する必要のある装置を含むものである。
【0131】
本発明の加熱装置において、発熱体ユニットを取り囲む筒体であるローラの構成は、内側が金属材料により形成され、外側がシリコン樹脂によりコーティングされており、ローラの両サイドには駆動用のギヤ等が設けられている。なお、熱等の吸収性を高めるために、ローラの内側にはセラミックスや遠赤塗料等を設けてもよい。さらに、放熱・吸熱と強度の観点からアルミニウムと鉄等の複数の金属部材により筒体を構成して、さらに高い加熱効率を図ることも可能である。
【0132】
本発明の発熱体ユニットを熱源として調理機器に用いた場合、発熱体ユニットは筒状体により取り囲まれて配設される。筒状体は一体的若しくは複数の部材で構成された筒状の耐熱管である。調理機器の熱源として、発熱体が石英ガラス管で取り囲まれている発熱体ユニットをそのまま用いた場合、調理で使用される塩、しょう油等の調味料等に含まれるアルカリ金属イオン等で石英ガラス管が失透を起こし、破損してしまい、熱源としての発熱体ユニットが短寿命となってしまう。このため、発熱体ユニットを耐熱管である筒状体により取り囲むよう構成することにより、発熱体ユニットの長寿命化を図ることができる。
【0133】
なお、筒状体には優れた光透過性を有する結晶化ガラスや遠赤放射量の高いセラミックス等を使用することにより使用用途を広げることができる。
発熱体ユニットの被加熱対象物との位置関係は、発熱体における加熱中心を被加熱対象物側に向けることにより、被加熱対象物を効率高く加熱することができるのは言うまでもない。
【0134】
以上のように、本発明の発熱体ユニットにおいて、発熱体が炭素系物質を主成分として面方向に同等の熱伝導性を有する、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導を有するフィルム状であり、可撓性、柔軟性、及び弾力性を有している。さらに、発熱体は熱伝導率が200W/m・K以上であり、厚みが300μm以下で形成されている。このように構成された発熱体は、切り欠き、孔、曲げ、切り起こし等の加工が容易であり、発熱体の長手方向に垂直な断面形状が曲面を有する形状とすることが容易に可能である。さらに、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体は、この発熱体を内包する容器(耐熱管)の形態に応じて、管状、板状、管状を長手方向に曲げた湾曲状、管状を円形に形成した形状等の各種形状に変形することが可能であり、使用目的に応じて高精度に変形して装置内に組み込むことができる。
さらに、本発明の発熱体ユニットにおいては、その使用用途に合わせた形態に発熱体を形成して、発熱体における平面部分又は曲面部分から高い効率で熱輻射が行われるよう構成することができる。
【0135】
また、本発明の発熱体ユニットにおいて、発熱体は二次元的等方向性の熱伝導を有し、可撓性、柔軟性、及び弾力性を有するフィルム状であるため、電流が流れて発熱する通電発熱部分だけでなく、通電部分以外の部位においても通電発熱部分からの熱伝導により発熱する。このため、発熱体は複雑なパターン(形状)を有するように形成することが可能となり、加工における多少の肉厚差における発熱温度のムラを無くすことが可能となり、加工精度の余裕度を増すことができる。
【0136】
また、本発明の発熱体ユニットにおいては、筒状の耐熱管(図1に示すガラス管1)の両端部分を封止して耐熱管内にガスを充填することにより、耐熱管内の発熱体が酸化することなく発熱体の焼成温度以下で使用することができるため、発熱体の設計余裕度を広げている。さらに、本発明において用いた発熱体は可撓性、柔軟性、及び弾力性を有し、高温度に対して保形性が高いため、発熱体を所望の形状に形成することが可能であり、耐熱管材料の選定や、発熱体の保持方法における自由度を高めることができる。
【0137】
前述の実施の形態5において説明したように、図10の(a)に示した加熱装置においては、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体の平面部分に対向する背面側の位置に反射板を配設し、その反射板の長手方向に直交する断面形状が放物線形状であり、熱輻射源である発熱体における発熱中心が反射板の焦点の位置に配置されている。このように発熱体における発熱中心が反射板の焦点の位置にあるため、本発明の加熱装置は発熱体からの輻射熱が反射板により反射されて効率の高い熱輻射が可能となる。
【0138】
前述の実施の形態5において説明したように、図10の(b)に示した加熱装置においては、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体の曲面凹側部分に対向する位置に反射板を配設し、その曲面凹側部分の長手方向の中心部分に対向する反射板における中心位置に発熱体の方向に突出する凸部を設けている。この反射板の凸部に入射された熱線は、発熱体以外の方向に反射して、再度反射板に入射して正面側に再反射するよう構成されている。このように構成された加熱装置においては、発熱体からの輻射熱が凸部の反射面により効率高く正面側に放射される。さらに、発熱体の少なくとも一部が耐熱管で覆われているため、発熱体の温度が高くなり、本発明の加熱装置により加熱領域の温度分布を調整することが可能となる。
【0139】
また、図10の(b)に示した加熱装置においては、発熱体ユニットの発熱体の背面側に反射板を配設し、その反射板により反射された熱線が発熱体を照射しないよう当該反射板が構成されているため、発熱体に対する反射板による二次加熱に起因する温度上昇を防止することが可能となり、ばらつきがなく仕様の安定した加熱装置を実現することができる。発熱体ユニットに用いられている発熱体は、その抵抗変化率が発熱体自体の温度により変化するものである。また、発熱体ユニットの定格の設定は、発熱体ユニットの自己放熱のみを考慮して設定される場合が多くなっている。このように設定した発熱体ユニットを加熱装置に組み込んだ場合、反射板の形状により反射板からの熱線により発熱体の温度が上昇すると加熱装置の定格が変わることになる。したがって、本発明の加熱装置は、反射板により発熱体が照射されないよう構成されているため、発熱体ユニットの定格が反射板による影響を受けることがなくなり、予め設定した所望の仕様を確実に有する加熱装置の設計が容易となる。
【0140】
前述の実施の形態5において説明したように、図10の(c)に示した加熱装置においては、発熱体ユニットにおける発熱体の背面側に反射膜を設け、その反射膜により発熱体からの熱輻射を実質的に同一方向に反射するよう構成しているため、被加熱対象物を効率高く加熱することが可能となる。前記のように、発熱体ユニットにおける背面側に反射膜を設けることにより、その反射膜により背面側に放射された輻射熱を発熱体に返すことになり、発熱体をより高温度にすることが可能となる。この結果、発熱体は、その曲面凸側から高エネルギーの輻射熱を同一方向に放射し、被加熱対象物を効率高く加熱することが可能となる。
【0141】
また、本発明の加熱装置においては、前述の実施の形態6において説明したように、本発明の発熱体ユニットを設け、且つその発熱体ユニットを覆う筒体を配設した構成とすることも可能である。このように構成することにより、被加熱対象物等から発する異物、例えば肉汁、調味料等が筒体に遮られて直接発熱体ユニットに接することが防止される。これにより、発熱体ユニットの表面劣化による破損、断線を防止することが可能となり、長寿命の加熱装置を提供することができる。
【0142】
さらに、本発明の加熱装置においては、発熱体ユニットを、例えば複写機等の電子機器の熱源とした場合、発熱体ユニットを覆う筒体がトナー定着ローラとして用いて、このトナー定着ローラにおける紙が接する部分を効率高く加熱することが可能な構成となる。
また、本発明の加熱装置において、発熱体の少なくとも一部を耐熱管で覆った構成とすることにより、発熱体温度を高くすることが可能となり、加熱分布を変更することができる加熱装置を提供することが可能となる。
【0143】
また、本発明の発熱体ユニット及び加熱装置においては、炭素系物質を主成分として二次元的等方向性の熱伝導を有し、可撓性、柔軟性、及び弾力性を有しており、さらに熱伝導性が200W/m・K以上であり、厚みが300μm以下であるフィルム状の発熱体を用いており、この発熱体は放射率が、80%以上の高い特性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明に係る発熱体ユニットは小型で効率が高いため汎用性の高い熱源となり、さらにこの発熱体ユニットを用いた加熱装置は効率の高い加熱が可能となり有用である。
【符号の説明】
【0145】
1 ガラス管
2 発熱体
3 保持ブロック
4 保持部
5 コイル部
6 スプリング部
7 内部リード線
8 モリブデン箔
9 外部リード線
10A 第1の電力供給部
10B 第2の電力供給部
11A 第1の内部リード線部材
11B 第2の内部リード線部材
12 耐熱性部材
50、52、54、60 発熱体ユニット
51、53 反射板
55 反射膜
61 筒体
62 加圧ローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源として使用される発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置に関し、特に、炭素系物質を主成分としフィルム状に形成された発熱体を有する発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺形状の熱源として使用される従来の発熱体ユニットは、円筒状のガラス管内部に発熱体としてコイル状のタングステン線、若しくは棒状又は板状の炭素系焼結体が封入されて構成されている。このような発熱体ユニットが用いられている加熱装置としては、例えば複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置、及び電気暖房機器、調理機器、乾燥機等の電気機器等の熱源を必要とする各種機器が含まれる。
【0003】
上記のように各種機器において熱源として発熱体ユニットが広く用いられている。このため、発熱体ユニットに対しては、当該発熱体ユニットが用いられる機器の機能、形状、構成等の仕様に対応できるように各種の要求がある。例えば、熱源として高い温度になること、指定された温度を維持できること、温度調整範囲が広いこと、入力電力に対して高い効率で加熱エネルギーに変換できること、被加熱対象物を均一に加熱できること、指定された方向のみを加熱する指向性を有すること、電源投入時の突入電流が少ないこと、設定温度までの立ち上り時間が短いこと、及び発熱体ユニットの小型化が可能であり着脱が容易な構造であること等の要求がある。
【0004】
上記のような要求を満たすことを目的として、各種の発熱体ユニットが提案されている。例えば、高温度に加熱できる従来の発熱体ユニットとしては、炭素繊維に樹脂を含浸させ固着して形成されたテープ状の発熱体が、ガラス管の内部に封入されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−193130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように構成された従来の発熱体ユニットにおいては、発熱体が炭素繊維を長手方向に揃えて樹脂によりテープ状に固着して形成されている。このように形成された従来の発熱体において、炭素繊維が繋がった状態では炭素繊維と平行な方向(炭素繊維方向)の熱伝導性は優れているが、抵抗調整などを目的として加工を行った場合には炭素繊維が部分的に切断されるため、炭素繊維方向の熱伝導性は急激に悪くなる。また、炭素繊維方向と直交する方向の熱伝導性は低いため、熱源としての各発熱体ユニットにおいて温度ばらつきが発生し、信頼性の点で問題があった。さらに、炭素繊維の切断部分が起点となり亀裂が生じ、寿命が短くなるという問題があった。
【0007】
また、従来の発熱体ユニットにおける発熱体は、炭素繊維を樹脂により固着した構成であるため可撓性を有しておらず、加熱装置における熱源として要求される各種仕様に対応することが困難であった。
【0008】
本発明は、前述の従来の発熱体ユニットにおける課題を解決するものであり、小型で効率が高く、高い指向性と均一な加熱、及び立ち上りの早い発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決し、本発明の目的を達成するために、本発明の第1の観点の発熱体ユニットは、高分子フィルム又は、フィラーを添加した高分子フィルムを熱処理することにより得られたグラファイトフィルムにて形成され、面方向に2次元的等方向性の熱伝導性を有する発熱体と、
前記発熱体における対向する両端に電力を供給する電力供給部と、
前記発熱体及び前記電力供給部を内包する容器と、を具備し、
前記発熱体は、幅広部分と幅狭部分が交互に連続的に長手方向に配置され、
前記発熱体の幅広部分に孔を穿ち通電発熱経路を形成し、前記幅広部分は前記通電発熱経路において単位長さの抵抗値が異なる領域を有する。このように構成された発熱体ユニットは、高分子フィルム又は、フィラーを添加した高分子フィルムを熱処理することにより得られたグラファイトフィルムにて形成された発熱体が、面方向に同等の熱伝導性、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導性を有するため、通電により高い効率で全面が発熱し、立ち上がりの早い熱源となる。
【0010】
本発明の第2の観点の発熱体ユニットは、第1の観点の前記電力供給部が、前記発熱体を保持する保持ブロックを有し、前記発熱体における保持部分の少なくとも片側に耐熱性部材を有する。このように構成された発熱体ユニットにおいて、発熱体は電力供給部により確実に保持され信頼性の高い熱源となる。
【0011】
本発明の第3の観点の発熱体ユニットは、第1の観点の前記電力供給部が、前記発熱体を保持する保持ブロックを有し、前記保持ブロックにおける保持部分の一部に凸部が形成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいて、発熱体は電力供給部により確実に保持され信頼性の高い熱源となる。
【0012】
本発明の第4の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第3の観点の前記発熱体が可撓性、柔軟性、及び弾力性を有する材料で形成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、発熱体の加工、機器への組み込み、及び機器の設計が容易となる。
【0013】
本発明の第5の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第4の観点の前記発熱体における長手方向の少なくとも一部の領域が、単位長さの抵抗値が異なる形状で構成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、所望の温度分布を容易に、且つ確実に設定することが可能となる。
【0014】
本発明の第6の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第5の観点の前記容器が耐熱性を有するガラス管又はセラミックス管のいずれかにより構成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、耐熱性の容器により発熱体を構造的に保護することが可能となる。
【0015】
本発明の第7の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第6の観点の前記発熱体の長手方向に直交する断面形状の少なくとも一部が、曲面を有して形成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、発熱体を使用目的に応じての設計が容易となる。
【0016】
本発明の第8の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第7の観点の前記容器の長手方向の少なくとも一部の部位が、曲面を有する形状で構成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、使用目的に応じて設計の自由度を広げることができる。
【0017】
本発明の第9の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第8の観点の筒状である前記容器の少なくとも一方端を前記電力供給部において封止し、前記容器内に不活性ガスを充填している。このように構成された発熱体ユニットにおいては、発熱体の酸化を防止して長寿命化を図ることができる。
【0018】
本発明の第10の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第9の観点の前記発熱体が、厚み方向において複数のフィルム素材を互いに空隙を介して積層されたフィルム状であり、熱伝導率が200W/m・K以上の材料で形成されている。このように構成された発熱体ユニットは、炭素系物質を主成分としたフィルム状の発熱体が、厚み方向において複数のフィルム素材が積層されており、各々の面方向に同等の熱伝導性、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導性を有し、通電により高い効率で全面が発熱して、立ち上がりの早い熱源となる。
【0019】
本発明の第11の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第10の観点の前記発熱体が、厚みが300μm以下のフィルム状である。このように構成された発熱体ユニットにおいては、発熱体を使用目的の応じての設計が容易となるとともに、指向性の高い熱源を構築することが可能となる。
【0020】
本発明の第12の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第11の観点の前記発熱体における、外形形状、孔形状、および切込み形状の少なくとも一部がレーザーにより加工されている。このよう形成された発熱体ユニットは所望の形状が得られるとともに加工精度に優れ安定した抵抗値を得ることが可能となる。
【0021】
本発明の第13の観点の加熱装置は、前記の第1の観点乃至第12の観点の発熱体ユニットを有し、発熱体に対向する位置に反射手段を設けている。このように構成された加熱装置は、発熱体ユニットと発熱体ユニットからの輻射熱を反射する反射手段が設けているため、効率の高い熱源を有する加熱装置となる。
【0022】
本発明の第14の観点の加熱装置において、第13の観点の前記反射手段は長手方向の断面形状が曲面形状の反射板である。このように構成された加熱装置は、発熱体からの輻射熱により効率高く被加熱対象物を加熱することができる。
【0023】
本発明の第15の観点の加熱装置において、第13の観点の前記反射手段は長手方向の断面形状が曲面形状を有する反射板であり、当該反射板の一部に発熱体の方向に突出した凸部が形成されている。このように構成された加熱装置は、反射板により発熱体が加熱されないため、設計時の仕様通りの加熱状態を実現することができる。
【0024】
本発明の第16の観点の加熱装置は、第13の観点の前記反射手段が前記発熱体ユニットに形成された反射膜である。このように構成された加熱装置は、発熱体からの輻射熱により効率高く被加熱対象物を加熱することができる。
【0025】
本発明の第17の観点の加熱装置は、前記の第1の観点乃至第12の観点の発熱体ユニットを有し、前記発熱体ユニットの外周を取り囲むように筒体が配設されている。このように構成された加熱装置は、トナー定着機構を有する電子機器、及び調理機器等に適用することができる。
【0026】
本発明の第18の観点の加熱装置は、前記の第13の観点乃至第17の観点の加熱装置において、発熱体ユニットの電気的制御を行う制御回路を有し、前記制御回路がオンオフ制御、通電率制御、位相制御、及びゼロクロス制御のそれぞれの回路を単独、若しくは少なくとも二つを組み合わせて構成されている。このように構成された加熱装置は、精度高く所望の温度分布を有する熱源を構築することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、小型で効率が高く、高い指向性と均一な加熱及び立ち上りの早い発熱体ユニット、及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットの構成を示す平面図
【図2】本発明に係る実施の形態1における発熱体の構成を示す部分平面図
【図3】本発明に係る実施の形態1における保持ブロックの構成を示す部分断面図
【図4】本発明に係る実施の形態1における他の発熱体の各種構成例を示す部分平面図
【図5】本発明に係る実施の形態2における発熱体の各種構成例を示す部分平面図
【図6】本発明に係る実施の形態3における発熱体の各種構成例を示す部分平面図
【図7】本発明に係る実施の形態4の発熱体ユニットの構成を示す斜視図
【図8】本発明に係る実施の形態4における発熱体の構成を示す斜視図
【図9】本発明に係る実施の形態4の他の発熱体の各種構成例を示す斜視図
【図10】本発明に係る実施の形態5の加熱装置における熱輻射源の構成を示す断面図
【図11】本発明に係る実施の形態6の加熱装置における熱輻射源等の構成を示す断面図
【図12】本発明に係る実施の形態6の加熱装置における温度制御装置の概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ説明する。
【0030】
実施の形態1
本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットについて図1乃至図3を用いて説明する。図1は実施の形態1の発熱体ユニットの構造を示す正面図である。図1においては、当該発熱体ユニットが長尺形状であるため、その中間部分を破断して省略し、両端部分近傍を示している。図2は実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体の一部を示す正面図である。図3は実施の形態1の発熱体ユニットにおける一部を拡大して示した拡大図である。
【0031】
実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、透明な石英ガラスで形成されたガラス管1の内部に細長い発熱体2が配置されており、この発熱体2はガラス管1の長手方向にそって延設されている。また、ガラス管1の両端部分は平板状に溶着されており、アルゴンガス、窒素ガス又はアルゴンガスと窒素ガスの混合ガス等の不活性ガスとともに発熱体2をガラス管1の内部に封入している。ガラス管1の内部に封入されている不活性ガスであるアルゴンガス、窒素ガス又はアルゴンガスと窒素ガスの混合ガスは、高温度で使用した際、炭素系物質である発熱体2の酸化を防止するためである。
【0032】
図1に示すように、実施の形態1の発熱体ユニットは、熱輻射体としての細長い平板状の発熱体2と、この発熱体2の対向する両端に発熱体2を挟み保持する為の保持ブロック3とを有している。一方の保持ブロック3(図1においては左側の保持ブロック3)には第1の内部リード線部材11Aが取り付けられており、他方の保持ブロック3(図1においては右側の保持ブロック3)には第2の内部リード線部材11Bが取り付けられている。第1の内部リード線部材11A及び第2の内部リード線部材11Bのそれぞれは、ガラス管1の両端部分の溶着部分に埋設されたモリブデン箔8を介して、ガラス管1の両端から導出する外部リード線9と電気的に接続されている。
【0033】
第1の内部リード線部材11Aは、保持ブロック3(図1においては左側の保持ブロック3)の外周面に巻着したコイル部5と、螺旋状に形成され弾性を有するスプリング部6と、モリブデン箔8に接続された内部リード線7とにより一本の線材により構成されている。また、第2の内部リード線部材11Bは、保持ブロック3(図1においては右側の保持ブロック3)の外周面に巻着したコイル部5と、コイル部5に繋がった保持部4と、モリブデン箔8に接続された内部リード線7とにより一本の線材により構成されている。実施の形態1における第1の内部リード線部材11A及び第2の内部リード線部材11Bは、モリブデン線により形成された例で説明するが、タングステン、ニッケル、ステンレス等を材料とした弾性を有する金属線(丸棒形状、平板形状)を用いて形成してもよい。
【0034】
実施の形態1においては、保持ブロック3、モリブデン箔8、外部リード線9及び第1の内部リード線部材11Aにより第1の電力供給部10Aが構成されており、保持ブロック3、モリブデン箔8、外部リード線9及び第2の内部リード線部材11Bにより第2の電力供給部10Bが構成されている。
【0035】
なお、第1の内部リード線部材11Aにおけるスプリング部6は発熱体2に対して張力を与えるものであり、発熱体2が常に所望の位置に配置されるよう構成されている。即ち、発熱体2がガラス管1の略中心軸上に配置され、ガラス管1に接触しないよう配置されている。また、内部リード線7とコイル部5との間にスプリング部6を設けることにより、発熱体2における膨張収縮による変化を吸収することが可能となる。
なお、発熱体2における膨張収縮による変化に対し、発熱体2の材料自体が持つ伸び率又は発熱体2の形状による伸び率が大きい場合には、発熱体2の両側にあるそれぞれの内部リード線部材にスプリング部6を設ける必要はない。
【0036】
実施の形態1の発熱体ユニットにおいて、保持ブロック3の外周面にコイル部5が巻着されているが、保持ブロック3の外周面における発熱体2側の略半分にはコイル部5は巻着されておらず、露出した状態である。したがって、保持ブロック3において発熱体2から伝導した熱が放射されるよう構成されている。
【0037】
なお、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、発熱体2の両端に異なる構成の内部リード線部材11A及び11Bを設けた例で説明するが、本発明の発熱体ユニットでは発熱体2の両端に第1の内部リード線部材11Aと同様の構成部材を配設してもよく、その発熱体ユニットが用いられる加熱装置の仕様等に応じて適宜変更される。発熱体2のいずれか一端にスプリング部6を有する第1の内部リード線部材11Aを配置すれば、発熱体2の位置規制及び膨張収縮による変化の吸収は可能であるが、発熱体2の両側に第1の内部リード線部材11Aを配設すればさらなる効果が期待できる。
【0038】
なお、加熱装置において発熱体ユニットの長手方向が鉛直方向となるように組み込まれた場合には、スプリング部6が発熱体2より上側に配置されると発熱体2の温度でスプリング部6が加熱され弾性限度を超え熱膨張を吸収できなくなるおそれがあるため、スプリング部6を発熱体2の下側に配置した方が好ましい。
【0039】
また、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、第1の内部リード線部材11Aのコイル部5、スプリング部6及び内部リード線7、並びに第2の内部リード線部材11Bのコイル部5、保持部4及び内部リード線7が一体的に構成された例で説明したが、各々を別部材で構成してそれぞれが電気的に接合されていれば同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0040】
図2は、実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2を示す正面図である。
実施の形態1において用いた発熱体2は、フィルムを切断して形成したものであり、幅広部2Aと幅狭部2Bが交互に長手方向に連続して配置されている。図2に示したように、実施の形態1の発熱体ユニットにおいて用いた発熱体2は、いわゆるフィッシュボーン(魚骨)形状を有している。
【0041】
実施の形態1における発熱体2は、厚み(t)が100μmであり、最大幅(W1)が6mmであり、最小幅(W2)が約2mmであり、長さ(L)が250mm(図1参照)である。なお、発熱体2の長さや幅については、入力電圧及び発熱温度等により決定されており、当該発熱体ユニットが用いられる熱源としての仕様に応じて適宜変更が可能である。
【0042】
実施の形態1における発熱体2は、通電により電流が流れて発熱する部分(以降、通電発熱部分2Cと称す)、及び通電発熱部分2Cからの熱伝導により発熱する部分(以降、伝熱発熱部分2Dと称す)を有する構成である。このように構成された発熱体は、面方向に同等の熱伝導、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導を有している。もし、発熱体の熱伝導率が200W/m・Kに満たない場合、即ち二次元的等方向性の熱伝導性が悪い場合には、通電発熱部分2Cから伝熱発熱部分2Dへ伝導する熱が少なくなる。その結果、通電発熱部分2Cと伝熱発熱部分2Dの温度差が大きくなり、発熱体において温度ムラが生じる。
【0043】
本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットにおいて用いた発熱体2は、炭素系物質を主成分とし厚み方向において複数のフィルム素材の各層が互いに空隙を介して積層され、優れた二次元的等方向性の熱伝導性を有しており、熱伝導率が200W/m・K以上を有するフィルム状の材料で形成されている。したがって、発熱体2は、通電発熱部分2Cと伝熱発熱部分2Dとにおいて、発熱と熱伝導により温度ムラのない熱源となる。
【0044】
発熱体2の材料であるフィルム素材は、高分子フィルム又は、フィラーを添加した高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムであり、面方向の熱伝導率が600から950W/m・Kの特性を有する。天然の黒鉛を主成分とした粉末を成型し、焼成して圧延加工によりフィルム状としたものであれば、一般的には熱伝導率が200から400W/m・Kであるが、本発明の実施の形態1において用いた発熱体2は、前述のように面方向の熱伝導率が600から950W/m・Kという優れた二次元的等方向性の熱伝導を有する。
【0045】
ここで、二次元的等方向性の熱伝導とは、直交するX軸とY軸で設定される面における、あらゆる方向の熱伝導を示すものである。したがって、本発明において二次元的等方向性とは、例えば炭素繊維が同じ方向に並設して形成された発熱体における炭素繊維方向の1方向(X軸方向)、又は炭素繊維をクロスに編んで形成された発熱体における炭素繊維方向の2方向(X軸方向とY軸方向)だけを指すものではない。
本発明において用いられる発熱体2の材料であるフィルム素材は、積層構造を有し、面方向の層表面が平坦な面、凹凸面あるいは波うつ面等の各種の面形状を有しており、対向する各層の間には空隙が形成されている。このフィルム素材の積層構造において、各層間に形成される空隙の形成状態のイメージは、複数回(例えば、何十回、何百回)と重ね合わせるように折り曲げてパイ生地を作り、そのパイ生地を焼いて得た、パイの断面形状と類似している。したがって、本発明における発熱体2の材料であるフィルム素材は、前述のように、面方向の熱伝導率においては優れた二次元的等方向性の熱伝導性を有する材料である。
【0046】
前述のように製造されたフィルム素材として用いられる高分子フィルムとしては、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリピロメリットイミド(ピロメリットイミド)、ポリフェニレンイソフタルアミド(フェニレンイソフタルアミド)、ポリフェニレンベンゾイミタゾール(フェニレンベンゾイミタゾール)、ポリフェニレンベンゾビスイミタゾール(フェニレンベンゾビスイミタゾール)、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレンのうちから選ばれた少なくとも一種類の高分子フィルムを挙げることができる。また、高分子フィルムに添加されるフィラーとしては、リン酸エステル系、リン酸カルシウム系、ポリエステル系、エポキシ系、ステアリン酸系、トリメリット酸系、酸化金属系、有機錫系、鉛系、アゾ系、ニトロソ系およびスルホニルヒドラジド系の各化合物を挙げることができる。より具体的には、リン酸エステル系化合物として、リン酸トリクレジル、リン酸(トリスイソプロピルフェニル)、トリブチルホスフェ−ト、トリエチルホスフェ−ト、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスブトキシエチルフォスフェート等を挙げることができる。リン酸カルシウム系化合物としては、リン酸二水素カルシウム、リン水素カルシウム、リン酸三カルシウム、等を挙げることができる。また、ポリエステル系化合物としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸などとグリコール、グリセリン類とのポリマー等を挙げることができる。また、ステアリン酸系化合物としては、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル等を挙げることができる。酸化金属系化合物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛等を挙げることができる。トリメリット酸系化合物としては、ジブチルフマレート、ジエチルフタレート等を挙げることができる。鉛系化合物としては、ステアリン酸鉛、ケイ酸鉛等を挙げることができる。アゾ系化合物としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。ニトロソ系化合物としては、ニトロソペンタメチレンテトラミン等を挙げることができる。スルホニルヒドラジド系化合物としては、p−トルエンスルホニルヒドラジド等を挙げることができる。
【0047】
前記フィルム素材を積層し、不活性ガス中において2400℃以上で処理し、グラファイト化の過程で発生するガス処理雰囲気の圧力を調整することにより制御してフィルム状の発熱体が製造される。更に、必要に応じて、前記のように製造されたフィルム状の発熱体を圧延処理することにより、さらに良質のフィルム状の発熱体を得ることができる。このように製造されたフィルム状の発熱体を本発明の発熱体ユニットにおける発熱体2として用いる。
【0048】
なお、前記フィラーの添加量は、0.2〜20.0重量%の範囲が適当であり、より好ましくは1.0〜10.0重量%の範囲である。その最適添加量は、高分子の厚さによって異なり、高分子の厚さが薄い場合には添加量が多い方がよく、厚い場合には添加量は少なくてよい。フィラーの役割は熱処理後のフィルムを均一発泡の状態にすることにある。すなわち、添加されたフィラーは、加熱中にガスを発生し、このガスの発生した後の空洞が通り道となってフィルム内部からの分解ガスの穏やかな通過を助ける。フィラーはこうして均一発泡状態を作り出すのに役立つ。
【0049】
前述のように製造されたフィルム素材は、一般的にはトムソン型等の抜き型や、レーザー加工等により所望の形状に加工される。例えば、レーザー加工の一例として、発熱体2の面方向の熱伝導率が200W/m・K以上となるとCO2レーザー(波長10.600nm)等の熱加工作用を主体としたレーザー加工を用いた場合には、発熱体に熱を奪われてしまい、加工できないという問題がある。しかしながら、非熱加工作用を主体とした波長1064から380nmのレーザー加工、例えば、呼称1064nmの短波長レーザー加工を用いることにより所望の形状を精度高く加工することが可能となる。
【0050】
特に、実施の形態1における発熱体2を形成する場合には、呼称532nmの第二高調波レーザー加工を用いることにより、高精度に加工できることを発明者らは確認した。実施の形態1における発熱体2の材料は、フィルム素材であり、高分子フィルム又はフィラーを添加した高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムを材料としている。そして、発熱体2は、面方向の熱伝導率が600から950W/m・Kの特性を有する材料で形成されている。このような材料の発熱体2を、例えば、厚み(t)が100μm、最大幅(W1)が6mm、最小幅(W2)が約2mm、長さ(L)が250mmを有するように加工する場合などの複雑な形状に加工する場合には、呼称532nmの第二高調波レーザー加工を用いることが望ましい。以上のように、レーザー加工におけるレーザー波長が短くなると熱加工からケミカル加工に近づくために、発熱体2への熱の影響は小さくなり、加工によるススやバリの発生を抑え高精度の加工が実現できる。ただし、必ずしも発熱体2の外形形状の全てをレーザー加工する必要はなく幅広部分と幅狭部分のいずれか片方だけであってもかまわない。例えば、幅広部分が素材形状で決定される場合においては幅狭部分だけをレーザー加工すればよく、発熱体素材状等により適宜選択し得ることは言うまでもない。
【0051】
なお、好ましいレーザー加工方法は、発熱体2の材料すなわち面方向の熱伝導性及び形状によって、前述の非熱加工作用を主体としたレーザー加工波長(1064から380nm)を持つ加工方法から適宜選択し得ることは言うまでもない。さらに、上記説明した発熱体2を加工するためのレーザー加工方法は後述の他の実施の形態における発熱体ユニット、例えば図4の(b)に示す発熱体22の幅広部分の領域の孔、或いは図4の(e)に示す切込み等に採用できることは言うまでもない。
【0052】
以下、実施の形態1における発熱体ユニットの具体的な構成について説明する。
発熱体2の両端に設けられた保持ブロック3は、略円柱状であり、半円柱状に2分割されている。2分割された半円柱状の保持ブロック3の対向面となる内壁面の間には発熱体2が配置されて、保持ブロック3の外周面に第1の内部リード線部材11A又は第2の内部リード線部材11Bのコイル部5を巻線し、発熱体2が保持されるよう構成されている。この構成により、保持ブロック3は発熱体2の両端部分を保持して電気的に接続される。導電性材料の保持ブロック3は、発熱体2の熱を放熱して第1の内部リード線部材11A又は第2の内部リード線部材11Bのコイル部5に高熱を伝達しない放熱効果を有している。例えば、保持ブロック3の材料としては黒鉛が好ましい。ただ、保持ブロック3の材料としては、金属材料等の導電性に優れた材料であればよい。また、保持ブロック3の形状としては、円柱状に限定されるものではなく、矩形状等の製造容易な形状でよい。また、保持ブロック3は、放熱効果を更に高めた形状、例えば冷却フィン等を有する形状でもよい。
【0053】
さらに、実施例の形態1においては、保持ブロック3を2分割した構成例で説明したが、保持ブロックとしては複数に分割して発熱体を保持する構造でもよく、若しくは一体品で形成し、発熱体の厚み相当のスリットを設けて発熱体2を挿入する構成でも同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、図1に示す実施の形態1の保持ブロック3においては、2分割した保持ブロック3の内壁面により発熱体2を保持するよう構成されているが、内壁面に凸部分を形成して保持強度をさらに高めることができる。
図3は保持強度を高めた構成の一例である保持ブロック3Aの近傍を一部破断して示す側面図である。図3に示すフィルム状の発熱体2は、その内壁面の片側に耐熱性部材12を挟み込んだ構成となっている。
発熱体2は厚み方向に弾性を有する材料である。このため、上記のように構成された発熱体2が保持ブロック3Aの対向面により押圧されて、発熱体2はその弾性内で変形して凹凸部が形成される。この結果、例え発熱体2が高熱により大きな収縮力を生じても、耐熱性部材12が発熱体2に対し楔の役目となり、発熱体2が保持ブロック3Aから抜けることが確実に防止される。また、保持ブロック3Aにおける対向する内壁面の少なくとも一部に発熱体2の厚み以下の凸部若しくは凹凸部を設ける構成としてもよい。このように構成することにより、発熱体2が保持ブロック3Aから抜けることが防止される。
【0055】
前記のように構成された実施の形態1の発熱体ユニットにおいて、その両側から導出している外部リード線9に対して電力を供給すると、発熱体2に電流が流れ、発熱体2の抵抗により熱が発生する。このとき、発熱体2は炭素系物質を主成分とした材料で形成されているため発熱体2からは赤外線が放射される。
【0056】
実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2は、その表面形状を変えることにより放熱状態を変更することが可能である。例えば、同一のフィルム素材により形成された発熱体ユニットであっても、その厚みを薄くし、幅を広くすることにより、抵抗値の変更を伴わずに輻射面積を広くしてその輻射エネルギーを高めることが可能となる。
【0057】
実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2(図2参照)の寸法は、前述のように厚み(t)が100μmであり、最大幅(W1)が6mmであり、最小幅(W2)が約2mmであり、長さ(L)が250mm(図1参照)ある。最小幅(W2)の帯状の部分は、発熱体2において電流が流れて発熱する通電発熱部分2Cである。また、通電発熱部分2Cより外側にある発熱体2の突出部分は、通電発熱部分2Cからの熱を放熱する伝熱発熱部分2Dである。
【0058】
長手方向に延設された帯状の発熱体2は、幅方向と厚み方向の長さの比が5/1以上であるのが望ましい。幅方向の長さを厚み方向の長さより5倍以上大きくすることにより、幅方向を構成する面から放出する熱量が厚み方向を構成する面から放出する熱量より大幅に多くなり、発熱体2が指向性の高い熱源として使用することが可能となる。
【0059】
炭素系物質を主成分として、二次元的等方向性の熱伝導を有するフィルム状の材料で構成した発熱体2は、発熱効率が高く、温度が高くなるほど抵抗値が大きくなる正特性(PTC)である。このため、加熱を開始してから定格温度に達するまでの時間は極めて短い。したがって、点灯時の突入電流は発生するが、平衡後の温度にもよるが、突入電流は平衡時の2倍ほどであり、タングステン線で形成された発熱体の場合のような10倍までの突入電流は発生しない。このため、実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2は、フリッカーが発生しにくい特性を有している。また、この発熱体2の寿命は使用温度にもよるが、約10000時間である。これは、タングステン線で形成された発熱体の寿命の約2倍である。
【0060】
前述のフィルム素材から特に選ばれた少なくとも一種類の高分子フィルム或いは、前述のフィラーを添加した前記高分子フィルムを不活性ガス中において2400℃以上で処理し、グラファイト化の過程で発生するガス処理雰囲気の圧力を制御している。このように制御することにより、二次元的等方向性を有する熱伝導性を持ち、温度特性においては温度が上昇するとともに抵抗値が上昇する正特性(PTC)を有する発熱体2を製造することができる。このように製造された発熱体2は、発熱温度の安定を確保し、入力電圧が定電圧の場合において、熱変動に対して安定的な自己入力制御を行うことが可能な信頼性が高く安定的な熱源となる。
【0061】
図4は実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体の別の構成例を示す図である。図4の(a)から(i)において、発熱体は長尺であるため一方の保持ブロック3に接続さ
れた部分を示し、他方の保持ブロック3に接続された部分は省略している。
【0062】
図4において、(a)に正面図で示す発熱体21は幅方向の長さを一定とした長方形の帯形状であり、発熱体21に流れる電流Iは発熱体21の幅方向において均一に流れて、発熱体21の表面が均一に発熱する。
【0063】
図4の(b)に正面図で示す発熱体22の形状は、図2に示した発熱体2の幅広部2Aの領域に孔が穿かれた形状を有し、電流が幅広部2Aの端部まで流れるよう通電発熱経路が外周上に形成されている。即ち、図4の(b)に示す発熱体22は、電流が流れる通電発熱経路を、限られた発熱体ユニット長においてより長く構成したものである。このように構成された発熱体22は、入力電力、温度、サイズ等の設計余裕度を高めることができる。
【0064】
図4の(c)に正面図で示す発熱体23の形状は、帯形状の長尺形状の発熱体に複数の孔を長手方向に一列に配置した構成である。このように構成することにより、発熱体23の長手方向に連通する部分を2箇所有する形状、即ち通電発熱経路が2経路有する構成となる。このように構成されているため、発熱体23は保形性に優れており、ねじれ及び破断することがなく取り扱いが容易になる。
なお、形成される孔の位置は、一列に限定されるものではなく、被加熱対象物や組み込まれる機器の仕様等を考慮して複数孔の位置を設定してもよく、また複数列やランダムに複数孔を配置することも可能である。
また、孔形状は、図4の(c)で示した円形状である必要はなく、当該発熱体等の仕様、規格又はロゴ等を孔形状により表示したものでもよく、本発明の効果に影響するものではない。
【0065】
図4の(d)に斜視図で示す発熱体24の形状は、図2に示した発熱体2の伝熱発熱部分2Dの形状を変形させたものである。図2の発熱体2の伝熱発熱部分2Dは舌状で先端部分が略円形であるが、図4の(d)に示す発熱体24はその幅広部における伝熱発熱部分24Aの先端部分が矩形状である点だけが異なっている。したがって、図4の(d)の発熱体24は、図2の発熱体2と同様の効果を奏する。
【0066】
図4の(e)に斜視図で示す発熱体25の形状は、図4の(a)に示した帯形状の発熱体21の両側に切り込み25Aを入れたものである。このように構成することにより、中央部分が通電発熱部分となり、その両側で切り込み25Aの入った部分が伝熱発熱部分となり、簡単な構成により少ない電流で大きな発熱領域を形成することが可能となる。
【0067】
図4の(f)に斜視図で示す発熱体26の形状は、図4の(e)に示した発熱体25における伝熱発熱部分の一部を折り曲げて形成したものである。図4の(f)に示した発熱体26においては、伝熱発熱部分26Aを発熱体26の厚み方向に一つおきに前方又は後方(図4の(f)においては上方向又は下方向)に直角に折り曲げたものである。このように構成された発熱体26によれば、発熱体26の厚み方向に対しても輻射を行うことが可能となる。
【0068】
図4の(g)に斜視図で示す発熱体27は、図4の(e)に示した発熱体25における伝導発熱部の一部を切り起こした切り起こし部分27Aを形成したものである。このように構成することにより、図4の(e)に示した発熱体25に比べ、隣り合う伝導発熱部との接触を避けることが可能な構成となる。なお、図4の(e)の発熱体25と同様に中央部分が通電発熱部分となり、その両側の切り起こし部分27が伝熱発熱部分となる。このように図4の(g)に示す簡単な構成により少ない電流で大きな発熱領域を形成することが可能となる。
【0069】
図4の(h)に斜視図で示す発熱体28の形状は、図4の(a)に示した帯形状の発熱体21における中央部分に一定間隔で舌状の切り起こし部分28Aを設けたものである。なお、切り起こし部分28Aの形状は舌状に限定されるものではなく、伝熱発熱部分を形成可能な切り起こし形状であればよい。このように構成することにより、両側部分が通電発熱部分となり、中央部分が伝熱発熱部分となり、入力電力、温度、サイズ等の設計余裕度を高めることが可能となる。
また、図4の(h)の発熱体28は、図4の(c)の発熱体23と同様に保形性に優れ、ねじれ及び破断することがなく取り扱いが容易になる。
【0070】
図4の(i)に示す発熱体29の形状は、両側からの切り込み29Aを互い違いに入れたものである。発熱体29は、通電発熱部分の長さを、限られた発熱体ユニット長においてより長く構成したものであり、入力電力、温度、サイズ等の設計余裕度を高めることが可能となる。
【0071】
本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、発熱体が炭素系物質を主成分とするフィルム状であり、面方向の熱伝導性が実質的に同じである、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導を有している。特に、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、熱伝導率が200W/m・K以上を有し、厚みが300μm以下であるフィルム状で形成された発熱体を用いている。このため、実施の形態1の発熱体ユニットによれば、均一発熱が可能となる。また、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、発熱体が可撓性、柔軟性、及び弾力性を有すことにより、切り欠き、孔、曲げ、切り起こし等の加工が可能となり、設計余裕度の高い発熱体を構成とすることができる。
【0072】
以上の実施の形態1における説明においては、発熱体を透明石英ガラス管内に挿入し、そのガラス管内にガスを封入して高温度での使用する場合について説明した。しかし、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体は、ガラス管以外の容器を用いることが可能である。炭素系物質を主成分とし、二次元的等方向性の熱伝導を有し、そして可撓性、柔軟性、及び弾力性を有し、熱伝導性が200W/m・K以上を有し、厚みが300μm以下であるフィルム状の発熱体は、高温度(約1100℃)での使用だけでなく800℃前後においても酸化量が他の炭素系発熱体素材に比べ少なく、十分に使用に耐える組成構造である。これは、フィルム状の発熱体が密に成型されているためである。したがって、発熱体の使用温度により、その発熱体のための容器の材質を選定することができる。例えば、発熱体が180℃以下で使用されるのであれば、シリコン材質の容器を使用し、250℃以下で使用されるのであれば、フッ素樹脂材質の容器を使用し、800℃以下で使用されるのであれば、マイカ材質、セラミックス、結晶化ガラス、石英管、耐熱ガラス等の耐熱温度許容範囲での絶縁材料を選択することができる。なお、800℃以下の使用温度においては、容器内にガスを充填する必要がなく、発熱体ユニットの構成、形状を使用目的に合わせて自由に設計することが可能となる。このため、800℃以下の使用温度で使用される発熱体ユニットでは、設計の自由度を大幅に広げることができ、さらにコストの低減を図ることが可能となる。
なお、実施の形態1における管形状については、その断面形状が略円形状で説明したが、本発明においては必ずしも略円形状である必要はなく、発熱体ユニットの仕様目的に合わせ四角又は六角等の多角形状であってよく、さらには楕円形状であっても実施の形態1の発熱体ユニットと同様の効果を奏する。
【0073】
また、本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットにおいて、発熱体は可撓性、柔軟性、及び弾力性を有しているため、発熱体ユニットの使用の形態、目的等に応じて、発熱体ユニットを管状、矩形状、長手方向にそって曲部を形成した湾曲状、円形に形成した環状等に構成することが可能であることは言うまでもない。
【0074】
実施の形態2
以下、本発明に係る実施の形態2の発熱体ユニットについて図5を用いて説明する。図5は、実施の形態2の発熱体ユニットにおける発熱体の各種形状の具体例を示す正面図である。図5における各発熱体において、発熱体は長尺であり、同じパターン形状の繰り返しであるため、右側部分は省略して示している。
【0075】
実施の形態2の発熱体ユニットにおいて、前述の実施の形態1の発熱体ユニットと異なる点は発熱体の形状であり、その他は実施の形態1と同じである。したがって、実施の形態2の発熱体ユニットにおける発熱体の形状について説明し、その他の構成要素は実施の形態1の説明を適用する。
【0076】
実施の形態2の発熱体ユニットにおける発熱体は、発熱体の長手方向及び幅方向における温度分布を均一にするのではなく、温度分布に変化を持たせるものである。実施の形態2の発熱体ユニットにおける発熱体では、その長手方向の少なくとも一部に単位長さにおいて抵抗値の異なる領域が設けられている。実施の形態2における発熱体は、前述の実施の形態1において図2を用いて説明した発熱体2の変形例である。図5の(a)から(d)は、実施の形態2における発熱体の各種変形例を示している。
【0077】
図5の(a)に示す発熱体201において、その中央部分が通電発熱部分201Aであり、その両側(図5の(a)においては、通電発熱部分201Aの上下部分)に突出した複数の舌状部分が伝熱発熱部分201Bである。伝熱発熱部分201Bを有する幅広部は等間隔で長手方向に並設されており、発熱体201の最大幅、即ち幅広部の幅はZaである。長手方向における全ての幅広部の幅は同一である。
【0078】
図5の(a)に示すように、発熱体201の長手方向において等しい距離を有する領域XaとXbにおいて、通電発熱部分201Aの幅である最狭幅(Y1,Y2)が異なっている。即ち、第1の領域Xaの第1の最狭幅Y1が第2の領域の第2の最狭幅Y2より狭く形成されている(Y1<Y2)。このように、第1の最狭幅Y1が第2の最狭幅Y2より狭く(Y1<Y2)形成されているため、第1の領域Xaの抵抗値が第2の領域Xbの抵抗値に比べて大きくなり、第1の領域Xaの発熱温度が高くなる。このように、抵抗値の異なる領域を設けることにより、発熱体201の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0079】
図5の(b)に示す発熱体202は、伝熱発熱部分を有する幅広部202Aの最大幅Zbは全て同じであるが、幅広部202Aの間隔及び形状が長手方向において異なっている。発熱体202では、その長手方向において同じ長さを有する第3の領域Xcと第4の領域Xdにおいて、幅広部202Aの形成数が異なっている。即ち、第3の領域Xcにおける幅広部202Aの形成数は第4の領域Xdにおける幅広部202Aの形成数より多くなっている。図5の(b)に示した例においては、第3の領域Xcの幅広部202Aの形成数が9個であり、第4の領域Xdの幅広部202Aの形成数が6個である。また、第3の領域Xcの幅広部202Aの形状は、第4の領域Xdの幅広部202Aの形状に比べて、その長手方向の幅が狭く形成されており、第3の領域Xcが第4の領域Xdに比べて幅広部202Aを密度高く形成している。このようにパターン密度が異なる第3の領域Xcと第4の領域Xdが形成されているため、第3の領域Xcの抵抗値が第4の領域Xdの抵抗値に比べて大きくなり、第3の領域Xcの発熱温度が高くなる。このように、発熱体202の長手方向において抵抗値の異なる領域を設けることにより、発熱体202の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0080】
なお、図5の(b)に示す発熱体202においては、第3の領域Xc以外の領域は第4の領域Xdと同様に構成されているが、これらの配置は設定される温度分布により適宜変更される。
【0081】
図5の(c)に示す発熱体203は、その長手方向において等しい距離を有する第5の領域Xeと第6の領域Xfが、異なる最大幅を有している。第5の領域Xeの幅広部203Aの最大幅Zdは、第6の領域Xfの幅広部203Bの最大幅Zcより狭く(Zd<Zc)形成されている。但し、第5の領域Xeの幅広部203Bの長手方向の間隔と、第6の領域Xfの幅広部203Bの長手方向の間隔は同一である。このように第5の領域Xeのみ、その最大幅Zdを他の領域より狭く(Zd<Zc)することにより、第6の領域Xfの発熱量は第5の領域Xeの発熱量より多くなり、第6の領域Xfの温度を第5の領域Xeより高くすることができる。このように、発熱体の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0082】
図5の(d)に示す発熱体204は、第7の領域Xgにおける通電発熱部分204Aが他の領域の通電発熱部分204Aからずれた位置(図5の(d)においては下側にずれた位置)に形成されている。また、第7の領域Xgにおいては、通電発熱部分204Aの両側に形成された伝熱発熱部分204Bの形状が対象ではなく、上側に小さく、下側に大きく張り出した形状を有している。このように、発熱体204の一部の領域を片方にずらすことにより、発熱体204の長手方向の温度分布とともに幅方向の温度分布も設定可能となる。
【0083】
なお、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体は、図5に示したパターン形状に限定されるものではなく、抵抗値を変更可能な形状に各種変更可能である。また、実施の形態2における発熱体に前述の図4に示した構成等を付加することにより、長手方向の温度分布を所望の状態に変更できることは言うまでもない。
【0084】
特に、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体は、炭素系物質を主成分とし、二次元的等方向性の熱伝導を有し、可撓性、柔軟性、及び弾力性を有しており、熱伝導率が200W/m・K以上であり、厚みが300μm以下であるフィルム状で形成されている。このため、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体は、切り欠き、孔、曲げ、切り起こし等の所望の加工が可能となり、発熱体ユニットの構成に応じて適宜変更が容易に可能な構成である。
【0085】
実施の形態3
以下、本発明に係る実施の形態3の発熱体ユニットについて図6を用いて説明する。図6は、実施の形態3の発熱体ユニットにおける発熱体の各種形状を有する具体例を示す正面図である。図6において、各発熱体は長尺形状であり、同じパターン形状の繰り返しであるため、右側部分を省略して示している。
【0086】
実施の形態3の発熱体ユニットにおいて、前述の実施の形態1の発熱体ユニットと異なる点は発熱体の形状であり、その他は実施の形態1と同じである。したがって、実施の形態3の発熱体ユニットにおける発熱体の形状について説明し、その他の構成要素は実施の形態1の説明を適用する。
【0087】
実施の形態3の発熱体ユニットにおける発熱体は、発熱体の長手方向及び幅方向における温度分布を均一にするのではなく、温度分布に変化を持たせるものである。実施の形態3の発熱体ユニットにおける発熱体では、その長手方向の少なくとも一部に単位長さにおいて抵抗値の異なる領域が形成されている。実施の形態3における発熱体は、前述の実施の形態1において図4の(b)を用いて説明した発熱体22の変形例である。図6の(a)から(d)は、実施の形態3における発熱体の各種変形例を示している。
【0088】
図6の(a)に示す発熱体301の形状は、図2に示した発熱体2のように、幅広部301Aと幅狭部301Bの各領域が長手方向に交互に連続的に配置されている。そして、幅広部301Aの領域に孔が穿かれており、電流が幅広部301Aの端部まで流れるよう通電発熱経路が幅広部301Aの外周上に形成されている。即ち、図6の(a)に示す発熱体301は、電流が流れる通電発熱経路を、限られた発熱体ユニット長においてより長く構成したものである。
【0089】
図6の(a)に示す発熱体301は、幅広部301Aが等間隔で配置され、その最大幅がWaである。図6の(a)に示す発熱体301においては、その長手方向において同じ長さを有する第1の領域Taと第2の領域Tbが異なる形状の通電発熱経路を有している。第1の領域Taにおける通電発熱経路の幅t1は、第2の領域Tbにおける通電発熱経路t2より狭く(t1<t2)形成されている。このため、第1の領域Taの抵抗値が第2の領域Tbの抵抗値に比べて大きくなる。第1の領域Taと第2の領域Tbには同一電流が流れるため、第1の領域Taにおける発熱温度が第2の領域Xbにおける発熱温度より高くなり、発熱体301の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0090】
図6の(b)に示す発熱体302は、幅広部302Aの最大幅Wbは同じであるが、幅広部302Aの間隔が長手方向において異なっている。発熱体302では、その長手方向において同じ長さを有する第3の領域Tcと第4の領域Tdにおける幅広部302Aの形成数が異なっている。即ち、第3の領域Tcにおける幅広部302Aの形成数は第4の領域Tdにおける幅広部302Aの形成数より多くなっている。図6の(b)に示した例においては、第3の領域Tcの幅広部302Aが6個であり、第4の領域Tdの幅広部302Aが5個である。このように、発熱体302においては、第3の領域Tcの幅広部302Aの形成数が多く、第4の領域Tdの幅広部302Aの形成数が少なく設定されているため、発熱体302においてパターン密度が異なる第3の領域Tcと第4の領域Tdが形成されている。この結果、第3の領域Tcの抵抗値が第4の領域Tdの抵抗値に比べて大きくなり、第3の領域Tcの発熱温度が高くなる。このように、発熱体302の長手方向において抵抗値の異なる領域を設けることにより、発熱体302の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0091】
なお、図6の(b)に示す発熱体302においては、第3の領域Tc以外の領域は第4の領域Tdと同様に構成されているが、これらの配置は設定される温度分布により適宜変更可能である。
【0092】
図6の(c)に示す発熱体303は、その長手方向において等しい距離を有する第5の領域Teと第6の領域Tfが、異なる最大幅を有している。第5の領域Teの幅広部303Aの最大幅Wdは、第6の領域Tfの幅広部303Bの最大幅Wcより狭く(Wd<Wc)形成されている。但し、第5の領域Teの幅広部303Aの長手方向の間隔と、第6の領域Tfの幅広部303Bの長手方向の間隔は同一である。このように第5の領域Te幅広部303Aの最大幅Wcを他の領域の幅広部より狭く(Wd<Wc)することにより、第6の領域Tfの発熱量は第5の領域Teの発熱量より多くなり、第6の領域Tfの温度を高くすることができる。このように、発熱体303の長手方向において抵抗値の異なる領域を設けることにより、発熱体303の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0093】
図6の(d)に示す発熱体304は、第7の領域Tgにおける幅広部304Aが他の領域の幅広部304Bからずれた位置(図6の(d)においては下側にずれた位置)に形成されている。また、第7の領域Tgにおいて、幅広部304Aにおける幅狭部304Cからの通電発熱経路の長さが、幅狭部304Cの両側部分(図6の(d)においては上下部分)で異なっている。即ち、幅狭部304Cより下側の幅広部304Aの通電発熱経路は、幅狭部304Cより上側の幅広部304Aの通電発熱経路より長く形成されている。このように、発熱体304の一部の領域を片方にずらすことにより、発熱体304の長手方向の温度分布とともに幅方向の温度分布も設定可能となる。
【0094】
なお、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体は、図6に示したパターンに限定されるものではなく、抵抗値を変更できる形状であれば変更可能である。また、実施の形態3における発熱体に前述の図4に示した構成を付加することにより、長手方向の温度分布を所望の状態に変更できることは言うまでもない。
【0095】
実施の形態4
以下、本発明に係る実施の形態4の発熱体ユニットについて図7乃至図9を参照しつつ説明する。
【0096】
図7は本発明に係る実施の形態4の発熱体ユニットの構成を示す斜視図である。図8は実施の形態4の発熱体ユニットにおける発熱体を示す斜視図である。図9は実施の形態4の発熱体ユニットにおける発熱体の他の構成例を示す斜視図である。
実施の形態4の発熱体ユニットにおいて、前述の実施の形態1の発熱体ユニットと異なる点は、発熱体の形状であり、発熱体が曲面を有している点である。実施の形態4の発熱体ユニットは、前述の実施の形態1において説明した発熱体の幅を更に広くした発熱体を用いたものである。実施の形態4における発熱体を、耐熱管である石英ガラス管内に挿入するために、長手方向に対して直交する方向(幅方向)の発熱体の断面形状の少なくとも一部を曲面で形成して、幅の広い発熱体を容易に耐熱管内に収納できる構成としたものである。
【0097】
図7に示すように、実施の形態4の発熱体ユニットは、前述の実施の形態1の発熱体ユニットと同様に、熱輻射体としての細長い平板状の発熱体401と、この発熱体401の両端に固着される保持ブロック3とを有している。一方の保持ブロック3(図7においては左側の保持ブロック3)には第1の内部リード線部材11Aが取り付けられており、他方の保持ブロック3(図7においては右側の保持ブロック3)には第2の内部リード線部材11Bが取り付けられている。第1の内部リード線部材11A及び第2の内部リード線部材11Bのそれぞれは、ガラス管1の両端部分の溶着部分に埋設されたモリブデン箔8を介して、ガラス管1の両端から導出する外部リード線9と電気的に接続されている。
実施の形態4の発熱体ユニットにおいて、実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体以外は同様の構成を有しているため、同じ機能、構成を有すものには実施の形態1と同じ符号を付して詳細な説明は実施の形態1における説明を適用する。
【0098】
図8に示すように、実施の形態4の発熱体ユニットにおける発熱体401は、前述の実施の形態3において説明した図6の(c)の発熱体303を曲面に形成したものである。発熱体401は、その長手方向に直交する方向の断面形状が円弧状に形成されている。発熱体401の両端には平坦な被保持端部450が形成されている。被保持端部450は、2分割された保持ブロック3により保持されて保持される部位である。また、発熱体401は、その長手方向における略中央部分に他の領域より最大幅の狭い領域Vaが形成されている。したがって、長手方向における単位長さ当たりの領域Vaの発熱量は、他の領域の発熱量に比べて少なくなり、中央部分の発熱温度が低く設定されている。このように、抵抗値の異なる領域を設けて、発熱体401の長手方向において所望の温度分布を設定できる構成である。また、実施の形態4における発熱体401は、その長手方向に直交する方向の断面形状が曲面により構成されているため、発熱体401からの熱輻射を集中又は拡散することが可能である。なお、実施の形態4においてはガラス管1を用いた耐熱管の直径が発熱体401に比べて大きい場合であっても、曲面に形成された発熱体401を当該耐熱管内部に設けて、発熱体401からの熱輻射の集中又は拡散の機能を発揮させることも可能である。また、発熱体401の少なくとも一部を曲面で形成して、部分的に集中又は拡散の機能を発揮させることも可能である。
【0099】
図9の(a)、(b)及び(c)に示した発熱体402,403,404は、実施の形態4における発熱体401の変形例である。これらの発熱体402,403,404においても、図8に示した発熱体401と同様に、長手方向に直交する方向の断面形状が円弧状に形成されており、両端には平坦な被保持端部450が形成されている。
【0100】
図9の(a)に示す発熱体402は、幅広部402Aと幅狭部402Bが交互に連続的に形成されており、発熱体402の長手方向にそった中央部分に帯状の通電発熱部分402Cが形成されている。この通電発熱部分402Cの両側に形成された幅広部402Aにおける舌状部402Dには孔が形成されており、それぞれの舌状部402Dの端部に電流が流れるように通電発熱経路が形成されている。
【0101】
また、図9の(a)に示す発熱体402は、その長手方向の略中央部分に他の領域より最大幅の狭い領域Vbが形成されている。したがって、領域Vbの発熱量は他の領域の発熱量に比べて少なくなり、中央部分の発熱温度を他の部位より低く設定し発熱体402の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0102】
図9の(b)に示す発熱体403は、幅広部403Aが幅狭部403Bを挟んで等間隔で形成されており、発熱体403の長手方向にそった中央部分に帯状の通電発熱部分403Cが形成されている。また、図9の(b)に示す発熱体403は、その長手方向の略中央部分に他の領域より最大幅の狭い領域Vcが形成されている。したがって、発熱体403の長手方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0103】
図9の(c)に示す発熱体404は、幅広部404Aが幅狭部404Bを挟んで等間隔で形成されている。また、図9の(c)に示す発熱体404は、その長手方向そった領域において、幅広部404Aの形状が異なる領域を形成している。図9の(c)に示すように、領域Vdは、幅広部404Aの舌状部の長さが他の領域より短く形成されている。また、領域Vdに隣接する領域Veは、通電発熱部分404Cの位置が他の部位よりずれた位置に形成されている。さらに、領域Veの幅広部404Aにおける通電発熱部分404Cの両側にある舌状部の長さが異なっている。具体的には、図9の(c)に示す発熱体404においては、領域Veの幅広部404Aの手前側の舌状部は長く形成されており、耐熱管、例えば石英ガラス管の内壁面にそって略半円弧状に形成されている。一方、領域Veの幅広部404Aの奥側の舌状部は短く形成されている。したがって、発熱体404の長手方向及び長手方向に直交する周方向において所望の温度分布を設定することが可能となる。
【0104】
本発明に係る実施の形態4の発熱体ユニットにおける発熱体は、炭素系物質を主成分とするフィルム状である。したがって、実施の形態4の発熱体ユニットにおける発熱体においては面方向の熱伝導性が実質的に同じである、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導を有している。実施の形態4の発熱体ユニットにおける発熱体は、可撓性、柔軟性、及び弾力性を有して高精度に加工可能な材料であるため、実施の形態4において用いた発熱体のように各種の変形が可能である。実施の形態4における発熱体においては、耐熱管の内径より最大幅が大きい場合には曲面を形成して当該耐熱管の内壁面にそって発熱体を配置することが可能である。また、発熱体の最大幅が耐熱管の内径より小さい場合であっても、発熱体からの熱輻射の集中や拡散を目的として、実施の形態4において説明した曲面を有する各種形状の発熱体を用いることも可能である。
【0105】
実施の形態4の発熱体ユニットにおいては、発熱体に曲部を設けることにより、発熱体を収納する耐熱管の形状(直径)が発熱体の形状による束縛から大幅に解放される。この結果、本発明の発熱体ユニットは熱容量を可変できる構成となり、例えば発熱体を変えずに耐熱管を小さくして熱容量を少なくすることにより、温度の立ち上がりが速くなるなど、目的に応じた設計が可能となる。
【0106】
また、発熱体を耐熱管の内壁面に近接して配置することにより、耐熱管の内壁温度を上昇することが可能となり、耐熱管からの熱輻射を増やすことが可能となる。
さらに、曲面により構成された発熱体において、長手方向のパターン形状と幅方向のパターン形状とを組み合わせて形成し、耐熱管内に挿入して発熱体ユニットを構成することにより、長手方向の温度分布だけでなく、円周方向の温度分布の設定が可能となる。この結果、本発明によれば立体的な温度分布を形成することが可能となり、本発明の発熱体ユニットの使用範囲を大幅に広げることができる。従来の発熱体ユニットにおいて複数本の発熱体ユニットを用いて立体的な温度分布を構成していたが、本発明によれば1本の発熱体ユニットで同様のものを構築することが可能となり、省スペース化と低コスト化を図ることができる。
【0107】
実施の形態5
以下、本発明に係る実施の形態5の加熱装置について図10を参照しつつ説明する。
実施の形態5の加熱装置は、前述の実施の形態1乃至実施の形態4の発熱体ユニットを熱輻射源として用いたものである。図10は本発明の発熱体ユニットを熱輻射源として用い、反射板若しくは反射膜を設けた構成を示す図である。図10においては、発熱体ユニットの延設方向に直交する方向で切断した断面図を示している。
【0108】
実施の形態5の加熱装置の一例として図10を用いて説明する。図10の(a)に示す加熱装置は前述の実施の形態1の発熱体ユニット(図1参照)を熱輻射源として用いたものである。図10の(b)及び(c)に示す加熱装置は前述の実施の形態4の発熱体ユニット(図7参照)を熱輻射源として用いたものである。
【0109】
図10の(a)に示す加熱装置は、発熱体ユニット50における発熱体2の平面部分に対向する位置に反射板51を設けた加熱装置である。反射板51は、長手方向(延設方向)に直交する断面形状が放物線形状を有し、発熱体2は反射板51の放物線における略焦点の位置に配置されている。この加熱装置においては、発熱体ユニット50と反射手段である反射板51とにより熱輻射源が構成されている。
【0110】
実施の形態5の加熱装置には、図10に示した熱輻射源である発熱体ユニット50の他に、発熱体ユニット50への電力を供給する電源部、電力を制御する制御部、装置外観を形成する筐体等の加熱装置において一般的に用いられている構成要素が含まれる。実施の形態5の加熱装置に関しては、本発明の加熱装置の特徴である熱輻射源である発熱体ユニットと反射手段について詳細に説明する。
【0111】
実施の形態5の加熱装置において、発熱体ユニット50に用いられている発熱体2は、炭素系物質を主成分とし、面方向の熱伝導性が同じである、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導を有するフィルム状の材料により帯状に形成されている。このため、発熱体2の平面部分から放射される熱量は幅面部分(厚みを構成する面)から放射される熱量に比べて飛躍的に大きい値を示す。即ち、発熱体2は指向性を有する熱放射体である。したがって、発熱体2の平面部分に対向する位置に反射板51を設けることにより、発熱体2の背面から放射された熱線が反射板51により反射され、反射板51の前方にある被加熱対象物を効率高く加熱することが可能となる。
【0112】
図10の(a)に示した加熱装置においては、発熱体ユニット50における発熱体の平面部分に対向する背面側の位置に反射板51を配設し、その反射板51の長手方向に直交する断面形状が放物線形状であり、熱輻射源である発熱体2における発熱中心が反射板51の焦点の位置に配置されている。このように発熱体2における発熱中心が反射板51の焦点の位置にあるため、図10の(a)に示した加熱装置は発熱体2からの輻射熱が反射板51により反射されて平行な熱線となり効率の高い熱輻射が可能となる。
【0113】
図10の(b)に示す加熱装置は、前述の実施の形態4の発熱体ユニット(図7参照)を熱輻射源として用いたものであり、この発熱体ユニットにおける発熱体401の凹面部分に対向する位置に反射板53を設けたものである。反射板53は、長手方向(延設方向)に直交する断面形状が放物面形状を有し、発熱体401は反射板53の放物面における略焦点の位置に配置されている。また、反射板53は、その長手方向(延設方向)に直交する断面形状において、発熱体ユニット52に対向する中央部分に凸部53Aが形成されている。この加熱装置においては、発熱体ユニット52と反射手段である反射板53とにより熱輻射源が構成されている。
【0114】
図10の(b)のように構成された加熱装置の熱輻射源においては、発熱体401の凸面が被加熱対象物の方向に向いているため、熱輻射源の前方側の広い範囲を加熱することが可能となる。また、発熱体401の凹面から反射板53に放射された熱線の一部は、反射板53の凸部53Aの反射面に反射されて、反射板53の端部分で再反射し、前方側へ放射されている。このため、図10の(b)に示した加熱装置の熱輻射源においては、反射板53の前方側の広い範囲を略均一に加熱することが可能となる。さらに、反射板53に凸部53Aが形成されて、耐熱管であるガラス管の近くに配置されるため、ガラス管表面からの熱輻射も反射するとともに、反射板53が発熱体401に近づく構成となるため、さらに多くの熱輻射を行うことができる優れた熱輻射源となる。
【0115】
前記のように、図10の(b)に示した加熱装置においては、発熱体ユニット52における発熱体401の曲面凹側部分に対向する位置に反射板53を配設し、その曲面凹側部分の長手方向の中心部分に対向する反射板53における中心位置に発熱体401の方向に突出する凸部53Aが形成されている。この反射板53の凸部53Aに入射された熱線は、発熱体以外の方向に反射して、再度反射板53に入射して正面側に再反射するよう構成されている。このように構成された加熱装置においては、発熱体401からの輻射熱が凸部53Aの反射面により効率高く正面側に放射される。さらに、発熱体401の少なくとも一部がガラス管1で覆われているため発熱体401の温度が高くなり、加熱装置により加熱領域の温度分布を調整することが可能となる。
【0116】
また、図10の(b)に示した加熱装置においては、発熱体ユニット52の発熱体401の背面側に反射板53を配設し、その反射板53により反射された熱線が発熱体401を照射しないよう当該反射板53が構成されているため、発熱体401に対する反射板53による二次加熱に起因する温度上昇を防止することが可能となり、ばらつきがなく仕様の安定した加熱装置を実現することができる。発熱体ユニット52に用いられている発熱体401は、その抵抗変化率が発熱体自体の温度により変化するものである。また、発熱体ユニット52の定格の設定は、発熱体ユニット52の自己放熱のみを考慮して設定される場合が多くなっている。このように設定された発熱体ユニット52を加熱装置に組み込んだ場合、反射板53の形状により反射板53からの熱線により発熱体401の温度が上昇すると加熱装置の定格が変わることになる。したがって、図10の(b)に示した加熱装置は、反射板53により発熱体401が照射されないよう構成されているため、発熱体ユニット52の定格が反射板401による影響を受けることが無くなり、予め設定した所望の仕様を確実に有する加熱装置の設計が容易となる。
前記のように、反射手段である反射板51,53を発熱体ユニット50,52に設けることにより輻射効率の高い加熱装置を構築することができる。
【0117】
なお、図10の(a)及び(b)に示した反射板51,53の反射面形状は熱反射が平行となる放物面を有する曲面形状で説明したが、本発明における反射板としてはこのような構成に限定されるものではなく、被加熱対象物に応じて各種の形状、例えば円弧状、発熱体からの輻射熱を広げる拡散反射可能な曲面形状、拡散反射可能な多段の折り曲げ面を集合した形状等も構成することができる。
【0118】
また、図10の(b)に示した反射板53の凸部53Aは、三角形状のもので説明したが、本発明はこのような形状に限定されるものではなく、円弧面、拡散反射可能な曲面形状、拡散反射可能な多段の折り曲げ面を集合した形状なども構成することができる。
なお、図10の(a)及び(b)に示した発熱体ユニット50,52は、反射板51,53の側面端部より出っ張らないよう、反射板51,53の内側に配設した。このように発熱体ユニットを反射板51,53の内側に配設することにより、反射板51,53による反射(凸部53Aからの拡散輻射や凹部面からの乱輻射を含む)を効率高く行うことができる。
【0119】
また、反射板51,53の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、各種ステンレス等を用いることができる。また、反射板51,53の反射面には反射効率の高い反射材料のコーティングや、表面処理を行い、反射板51,53の反射率を高める処理を行った方がよいことは言うまでもない。
なお、反射板51,53における、長手方向(延設方向)に直交する断面形状は、放物線形状に限定されるものではなく、本発明においては少なくとも発熱体の背面からの輻射熱を発熱体の正面側に配置された被加熱対象物を加熱することが可能な形状、例えば曲面形状、多角形状等の拡散反射可能な形状であれば適用可能である。
【0120】
図10の(c)に示す加熱装置は、前述の実施の形態4の発熱体ユニット(図7参照)を熱輻射源として用いたものであり、この発熱体ユニットのガラス管1に反射膜55が形成されたものである。反射膜55は、ガラス管1の外周面における発熱体401の凹面部分に対向する位置であり、ガラス管1の略半分の領域に形成されている。この加熱装置においては、発熱体ユニット54と反射手段である反射膜55とにより熱輻射源が構成されている。反射膜55は、例えばアルミニウム蒸着、金転写又は、セラミックスコーティング等により形成される。
【0121】
図10の(c)に示した加熱装置においては、発熱体ユニット54における発熱体401の背面側に反射膜55を設け、その反射膜55により発熱体401からの熱輻射を実質的に同一方向に反射するよう構成している。このため、図10の(c)に示した加熱装置は、被加熱対象物を効率高く加熱することが可能となる。このように、発熱体ユニット54における背面側に反射膜55を設けることにより、その反射膜55により背面側に放射された輻射熱を発熱体401に返すことになり、発熱体401をより高温度にすることが可能となる。この結果、発熱体401は、その曲面凸側から高エネルギーの輻射熱を同一方向に放射し、被加熱対象物を効率高く加熱することが可能となる。
前記のように、反射手段である反射膜55をガラス管1の背面に形成することにより、小型で輻射効率の高い加熱装置を構築することができる。
【0122】
実施の形態6
以下、本発明に係る実施の形態6の加熱装置について図11を参照しつつ説明する。
図11は、実施の形態6の加熱装置として複写機を例に挙げて、その熱輻射源となる発熱体ユニット60等の近傍を示した図である。図11は発熱体ユニット60の長手方向(延設方向)に直交する方向で切断した断面図である。
実施の形態6の加熱装置である複写機は、前述の実施の形態4の発熱体ユニット(図7参照)を熱輻射源として用いたものである。実施の形態6の複写機において、発熱体ユニット60は、その長手方向に直交する断面が曲面に形成された発熱体401を有し、筒体61により取り囲まれて構成されている。なお、実施の形態6の加熱装置である複写機には、図11に示した発熱体ユニット等の他に、電力を供給する電源部、複写機構、複写機構を制御する制御部、装置外観を形成する筐体等の一般的に複写機に用いられている構成要素が含まれる。
【0123】
実施の形態6の加熱装置は、複写機であるため発熱体ユニット60を取り囲む筒体61はトナー定着ローラである。以下、筒体61をトナー定着ローラ61として説明する。
トナー定着ローラ61と加圧ローラ62は互いに接して回転するよう構成されている。トナー定着ローラ61と加圧ローラ62の間には、所望形状のトナー63を担持した紙64が挿入されて、加熱とともに加圧されて定着される。したがって、トナー定着ローラ61と加圧ローラ62との間に通されて、紙上のトナー63を効率よく定着させるために、発熱体401の曲面凸側がトナー定着ローラ61と加圧ローラ62と対向面(トナー定着領域)を含む領域を向くよう配置されている。但し、発熱体401の曲面凸側が向く方向は、トナー定着領域より上流側、即ちトナー定着ローラ61のトナー定着領域より前側の領域を向くよう配設されている。このように発熱体401を配設することにより、トナー定着ローラ61におけるトナー定着領域より上流側の部分も含めて加熱して、その部分の蓄熱量を上げ、発熱体401から放射された熱量を効果的にトナー定着に用いることが可能となる。
【0124】
実施の形態6の加熱装置おいて、発熱体ユニット60を取り囲むように配設されるトナー定着ローラ61である筒体は、発熱体ユニット60から放射された熱を所望方向へ熱輻射するものであり、発熱体401の曲面凸側の中心に対向する領域が熱輻射中心となる。この筒体(61)は、一体物で構成した例で説明したが、複数の部材を組み合わせて構成してもよい。
このように実施の形態6の加熱装置である複写機においては、指向性を有する発熱体ユニット60を効果的に配設して効率の高い熱輻射源とすることが可能となる。
【0125】
次に、実施の形態6の加熱装置における温度制御方法について図12を参照しつつ説明する。図12は、実施の形態6の加熱装置における温度制御装置の概略構成を示す図である。
【0126】
電源67から供給された電力が制御部66において、ユーザからの指令に従い制御され、発熱体ユニット60に通電される。通電された発熱体ユニット60の発熱体401は、高温度に発熱してトナー定着ローラ61の温度を所定の温度(トナー定着温度)まで上昇させる。トナー定着ローラ61にはセンサ部65が設けられており、トナー定着ローラ61の温度検知を行っている。センサ部65はトナー定着ローラ61の検知温度を制御部66にフィードバックしており、制御部66は発熱体ユニット60への電力を制御して、トナー定着ローラ61の温度調節を行っている。
【0127】
以上にように、実施の形態6の加熱装置においては、発熱体ユニットの通電制御を行う場合、その制御条件として検知温度を加味することが可能である。また、温度制御としては、例えばサーモスタット等の温度検知手段を用いたオンオフ制御、正確な温度を感知する温度感知センサを用いた入力電源の位相制御、さらに通電率制御、ゼロクロス制御等を単独で若しくはそれらを組み合わせて行うことにより、高精度な温度管理が可能な加熱装置を実現できる。
【0128】
したがって、前記のように構成された実施の形態6の加熱装置によれば、発熱体の配設位置による指向性制御と、検知温度による通電制御とにより、輻射特性に優れた加熱と高精度な温度管理が可能となる。
なお、実施の形態6の加熱装置においては、実施の形態4の発熱体ユニット(図7参照)を熱輻射源として用いた例で説明したが、熱輻射源としては前述の各実施の形態において説明したいずれの発熱体ユニットの構成でも適用可能であり、同様の効果を奏するものである。
【0129】
また、実施の形態6の加熱装置として複写機について説明したが、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置においてもトナー定着のための熱輻射源として本発明の発熱体ユニットを用いることができ、同様の効果を奏する。なお、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置において、トナー定着に用いた機構の場合、熱輻射源として用いられる発熱体ユニットはローラと呼ばれる筒体により取り囲まれて用いられる。
【0130】
なお、本発明の加熱装置としては、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置の他に、暖房用ストーブ等の電気暖房機器、調理加熱等の調理機器、食品等の乾燥機、及び短時間で高温度に加熱する必要のある装置を含むものである。
【0131】
本発明の加熱装置において、発熱体ユニットを取り囲む筒体であるローラの構成は、内側が金属材料により形成され、外側がシリコン樹脂によりコーティングされており、ローラの両サイドには駆動用のギヤ等が設けられている。なお、熱等の吸収性を高めるために、ローラの内側にはセラミックスや遠赤塗料等を設けてもよい。さらに、放熱・吸熱と強度の観点からアルミニウムと鉄等の複数の金属部材により筒体を構成して、さらに高い加熱効率を図ることも可能である。
【0132】
本発明の発熱体ユニットを熱源として調理機器に用いた場合、発熱体ユニットは筒状体により取り囲まれて配設される。筒状体は一体的若しくは複数の部材で構成された筒状の耐熱管である。調理機器の熱源として、発熱体が石英ガラス管で取り囲まれている発熱体ユニットをそのまま用いた場合、調理で使用される塩、しょう油等の調味料等に含まれるアルカリ金属イオン等で石英ガラス管が失透を起こし、破損してしまい、熱源としての発熱体ユニットが短寿命となってしまう。このため、発熱体ユニットを耐熱管である筒状体により取り囲むよう構成することにより、発熱体ユニットの長寿命化を図ることができる。
【0133】
なお、筒状体には優れた光透過性を有する結晶化ガラスや遠赤放射量の高いセラミックス等を使用することにより使用用途を広げることができる。
発熱体ユニットの被加熱対象物との位置関係は、発熱体における加熱中心を被加熱対象物側に向けることにより、被加熱対象物を効率高く加熱することができるのは言うまでもない。
【0134】
以上のように、本発明の発熱体ユニットにおいて、発熱体が炭素系物質を主成分として面方向に同等の熱伝導性を有する、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導を有するフィルム状であり、可撓性、柔軟性、及び弾力性を有している。さらに、発熱体は熱伝導率が200W/m・K以上であり、厚みが300μm以下で形成されている。このように構成された発熱体は、切り欠き、孔、曲げ、切り起こし等の加工が容易であり、発熱体の長手方向に垂直な断面形状が曲面を有する形状とすることが容易に可能である。さらに、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体は、この発熱体を内包する容器(耐熱管)の形態に応じて、管状、板状、管状を長手方向に曲げた湾曲状、管状を円形に形成した形状等の各種形状に変形することが可能であり、使用目的に応じて高精度に変形して装置内に組み込むことができる。
さらに、本発明の発熱体ユニットにおいては、その使用用途に合わせた形態に発熱体を形成して、発熱体における平面部分又は曲面部分から高い効率で熱輻射が行われるよう構成することができる。
【0135】
また、本発明の発熱体ユニットにおいて、発熱体は二次元的等方向性の熱伝導を有し、可撓性、柔軟性、及び弾力性を有するフィルム状であるため、電流が流れて発熱する通電発熱部分だけでなく、通電部分以外の部位においても通電発熱部分からの熱伝導により発熱する。このため、発熱体は複雑なパターン(形状)を有するように形成することが可能となり、加工における多少の肉厚差における発熱温度のムラを無くすことが可能となり、加工精度の余裕度を増すことができる。
【0136】
また、本発明の発熱体ユニットにおいては、筒状の耐熱管(図1に示すガラス管1)の両端部分を封止して耐熱管内にガスを充填することにより、耐熱管内の発熱体が酸化することなく発熱体の焼成温度以下で使用することができるため、発熱体の設計余裕度を広げている。さらに、本発明において用いた発熱体は可撓性、柔軟性、及び弾力性を有し、高温度に対して保形性が高いため、発熱体を所望の形状に形成することが可能であり、耐熱管材料の選定や、発熱体の保持方法における自由度を高めることができる。
【0137】
前述の実施の形態5において説明したように、図10の(a)に示した加熱装置においては、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体の平面部分に対向する背面側の位置に反射板を配設し、その反射板の長手方向に直交する断面形状が放物線形状であり、熱輻射源である発熱体における発熱中心が反射板の焦点の位置に配置されている。このように発熱体における発熱中心が反射板の焦点の位置にあるため、本発明の加熱装置は発熱体からの輻射熱が反射板により反射されて効率の高い熱輻射が可能となる。
【0138】
前述の実施の形態5において説明したように、図10の(b)に示した加熱装置においては、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体の曲面凹側部分に対向する位置に反射板を配設し、その曲面凹側部分の長手方向の中心部分に対向する反射板における中心位置に発熱体の方向に突出する凸部を設けている。この反射板の凸部に入射された熱線は、発熱体以外の方向に反射して、再度反射板に入射して正面側に再反射するよう構成されている。このように構成された加熱装置においては、発熱体からの輻射熱が凸部の反射面により効率高く正面側に放射される。さらに、発熱体の少なくとも一部が耐熱管で覆われているため、発熱体の温度が高くなり、本発明の加熱装置により加熱領域の温度分布を調整することが可能となる。
【0139】
また、図10の(b)に示した加熱装置においては、発熱体ユニットの発熱体の背面側に反射板を配設し、その反射板により反射された熱線が発熱体を照射しないよう当該反射板が構成されているため、発熱体に対する反射板による二次加熱に起因する温度上昇を防止することが可能となり、ばらつきがなく仕様の安定した加熱装置を実現することができる。発熱体ユニットに用いられている発熱体は、その抵抗変化率が発熱体自体の温度により変化するものである。また、発熱体ユニットの定格の設定は、発熱体ユニットの自己放熱のみを考慮して設定される場合が多くなっている。このように設定した発熱体ユニットを加熱装置に組み込んだ場合、反射板の形状により反射板からの熱線により発熱体の温度が上昇すると加熱装置の定格が変わることになる。したがって、本発明の加熱装置は、反射板により発熱体が照射されないよう構成されているため、発熱体ユニットの定格が反射板による影響を受けることがなくなり、予め設定した所望の仕様を確実に有する加熱装置の設計が容易となる。
【0140】
前述の実施の形態5において説明したように、図10の(c)に示した加熱装置においては、発熱体ユニットにおける発熱体の背面側に反射膜を設け、その反射膜により発熱体からの熱輻射を実質的に同一方向に反射するよう構成しているため、被加熱対象物を効率高く加熱することが可能となる。前記のように、発熱体ユニットにおける背面側に反射膜を設けることにより、その反射膜により背面側に放射された輻射熱を発熱体に返すことになり、発熱体をより高温度にすることが可能となる。この結果、発熱体は、その曲面凸側から高エネルギーの輻射熱を同一方向に放射し、被加熱対象物を効率高く加熱することが可能となる。
【0141】
また、本発明の加熱装置においては、前述の実施の形態6において説明したように、本発明の発熱体ユニットを設け、且つその発熱体ユニットを覆う筒体を配設した構成とすることも可能である。このように構成することにより、被加熱対象物等から発する異物、例えば肉汁、調味料等が筒体に遮られて直接発熱体ユニットに接することが防止される。これにより、発熱体ユニットの表面劣化による破損、断線を防止することが可能となり、長寿命の加熱装置を提供することができる。
【0142】
さらに、本発明の加熱装置においては、発熱体ユニットを、例えば複写機等の電子機器の熱源とした場合、発熱体ユニットを覆う筒体がトナー定着ローラとして用いて、このトナー定着ローラにおける紙が接する部分を効率高く加熱することが可能な構成となる。
また、本発明の加熱装置において、発熱体の少なくとも一部を耐熱管で覆った構成とすることにより、発熱体温度を高くすることが可能となり、加熱分布を変更することができる加熱装置を提供することが可能となる。
【0143】
また、本発明の発熱体ユニット及び加熱装置においては、炭素系物質を主成分として二次元的等方向性の熱伝導を有し、可撓性、柔軟性、及び弾力性を有しており、さらに熱伝導性が200W/m・K以上であり、厚みが300μm以下であるフィルム状の発熱体を用いており、この発熱体は放射率が、80%以上の高い特性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明に係る発熱体ユニットは小型で効率が高いため汎用性の高い熱源となり、さらにこの発熱体ユニットを用いた加熱装置は効率の高い加熱が可能となり有用である。
【符号の説明】
【0145】
1 ガラス管
2 発熱体
3 保持ブロック
4 保持部
5 コイル部
6 スプリング部
7 内部リード線
8 モリブデン箔
9 外部リード線
10A 第1の電力供給部
10B 第2の電力供給部
11A 第1の内部リード線部材
11B 第2の内部リード線部材
12 耐熱性部材
50、52、54、60 発熱体ユニット
51、53 反射板
55 反射膜
61 筒体
62 加圧ローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルム又は、フィラーを添加した高分子フィルムを熱処理することにより得られたグラファイトフィルムにて形成され、面方向に2次元的等方向性の熱伝導性、及び温度が上昇するとともに抵抗値が上昇する正特性となる温度特性を有する発熱体を具備する発熱体ユニット。
【請求項2】
前記発熱体は、厚み方向において複数のフィルム素材を互いに空隙を介して積層されたフィルム状であり、面方向の熱伝導率が200W/m・K以上の特性を有する請求項1に記載の発熱体ユニット。
【請求項3】
前記発熱体は、厚みが300μm以下のフィルム状である請求項2に記載の発熱体ユニット。
【請求項1】
高分子フィルム又は、フィラーを添加した高分子フィルムを熱処理することにより得られたグラファイトフィルムにて形成され、面方向に2次元的等方向性の熱伝導性、及び温度が上昇するとともに抵抗値が上昇する正特性となる温度特性を有する発熱体を具備する発熱体ユニット。
【請求項2】
前記発熱体は、厚み方向において複数のフィルム素材を互いに空隙を介して積層されたフィルム状であり、面方向の熱伝導率が200W/m・K以上の特性を有する請求項1に記載の発熱体ユニット。
【請求項3】
前記発熱体は、厚みが300μm以下のフィルム状である請求項2に記載の発熱体ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−146405(P2011−146405A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98049(P2011−98049)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【分割の表示】特願2007−324418(P2007−324418)の分割
【原出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【分割の表示】特願2007−324418(P2007−324418)の分割
【原出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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