説明

発熱具

【課題】使用時においても、良好な香りを呈する軽量化された発熱具を提供する。
【解決手段】本発明は、被酸化性金属及び活性炭を備える発熱部と、少なくとも一部が通気性であり、発熱部を収容する袋体と、を有し、ダマセノンを含有する香料組成物にて賦香されている発熱具である。袋体の少なくとも一部が坪量20〜90g/m2のシートで構成される。ダマセノンの含有量は、前記香料組成物全量に対して0.2〜0.7質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被酸化性金属の酸化反応によって発熱する発熱具に関し、種々のものが知られている。
特許文献1には、着用者の身体や衣類に貼り付けた状態で、フィット性や使用感が良好な発熱具が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、特定の2種類の溶解剤及び界面活性剤とともに経皮吸収性薬剤を発熱部に添加した発熱具が記載されている。特許文献2では、こうした発熱具により、発熱部の発熱に起因する経皮吸収性薬剤の皮膚への放出性が著しく良好になり、該薬剤の生理作用を効果的に付与できるとされている。
【0004】
また、香料が施されることで使用時に芳香を呈する発熱具も知られている(特許文献3〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−131597号公報
【特許文献2】特開2011−020991号公報
【特許文献3】特開2010−022405号公報
【特許文献4】特開2010−131088号公報
【特許文献5】特開2010−51690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、使用時の軽快さやエコロジーの観点から、発熱具に関しても薄型化や軽量化が要求されている。しかしながら、被酸化性金属の酸化反応によって発熱する発熱具において、袋体等の使用原料の軽量化を図ると、保存中の香りの変質を十分に抑制できないことを本発明者らは知見した。そのため、軽量化された発熱具であっても、保存中の香りの変質を十分に抑制して、製造直後と同等の良好な香りを呈することのできる技術が求められた。
【0007】
本発明の課題は、使用時においても、製造直後の良好な香りを呈する軽量化された発熱具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、特定成分を特定量含有させた香料組成物を被酸化性金属の酸化反応によって発熱する発熱具に採用することにより、坪量の比較的少ない袋体に発熱部が収容された発熱具であっても、保存中の香りの強度の低下及び香りの変質を著しく抑制できることを見出した。また、この発熱具によれば、香りの立ち上がりが早いことも新たに知見した。
【0009】
本発明は、
被酸化性金属及び活性炭を備える発熱部と、
少なくとも一部が通気性であり、前記発熱部を収容する袋体と、
を有する発熱具であって、
該発熱具は、ダマセノンを含有する香料組成物にて賦香されており、
前記袋体の少なくとも一部が坪量20〜90g/m2のシートで構成され、
前記ダマセノンの含有量は、前記香料組成物全量に対して0.2〜0.7質量%である、発熱具を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保存中の香りの強度の低下及び香りの変質を著しく抑制でき、使用時においても、製造直後と同等の良好な香りを呈し、且つ、香りの立ち上がりが早い軽量化された発熱具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の発熱具の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の発熱具の一例である蒸気発熱具を示す平面図である。
【図3】図1に示す蒸気発熱具の分解斜視図である。
【図4】図1に示す蒸気発熱具の長手方向に沿う断面図である。
【図5】蒸気発熱具の別の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の発熱具の一例を示す模式的な断面図である。図1に示す発熱具1は、被酸化性金属及び活性炭を備える発熱部10と、少なくとも一部が通気性であり、発熱部10を収容する袋体11とを有する。この袋体11の少なくとも一部は、坪量20〜90g/m2のシートで構成される。また、発熱具1は、ダマセノンを含有する香料組成物にて賦香されている。
【0014】
発熱具1は、被酸化性金属の酸化反応によって発熱して十分な温熱効果を付与するものであり、JIS規格S4100による測定において、発熱温度40〜60℃の性能を有することができる。発熱具1は、水蒸気の発生を伴う蒸気発熱具であってもよいし、水蒸気の発生を実質的に伴わずに発熱する、いわゆる使い捨てカイロであってもよいが、特に香りの変質が起こりやすい蒸気発熱具であると本発明の価値が高い。発熱具1は香料組成物により賦香されているため、使用時には、発熱とともに香料組成物により芳香する。
【0015】
発熱部10は、被酸化性金属、及び、活性炭を少なくとも含む発熱組成物を備える。この発熱組成物は、さらに電解質及び水を含むことが好ましい。
【0016】
被酸化性金属としては例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の粉末や繊維が挙げられる。これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コストの点から鉄、なかでも鉄粉が好ましく用いられる。被酸化性金属の含有量は、発熱組成物中、25〜80質量%が好ましい。
【0017】
活性炭としては例えば、椰子殻炭、木炭、暦青炭、泥炭、亜炭等が挙げられる。活性炭の含有量は、発熱組成物中、4〜35質量%が好ましい。
【0018】
電解質としては水に電解して被酸化金属の酸化を促進するものが良く、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は重金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物若しくは水酸化物等が挙げられ、中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点から塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄(第1、第2)等の各種塩化物が好ましく用いられる。電解質の含有量は、発熱組成物中、1〜15質量%が好ましい。
【0019】
発熱組成物中、水の含有量は、被酸化金属の酸化を良好に進行させる点や本発明の効果を十分発揮させる点や等から15〜30質量%が好ましい。
【0020】
発熱部10は、粉体状又はシート状の発熱組成物からなっていてもよい。発熱シート及び発熱粉体のうち、着用者がどのような姿勢であっても水蒸気を均一に適用し得る点や本発明の効果を十分発揮させる点等から、発熱シートを用いることが好ましい。また、発熱シートは、発熱粉体と比較して、発熱の温度分布を均一化することが容易であり、また、被酸化性金属の担持能力が優れている点からも本発明の効果を十分発揮させる点で有利である。発熱シートとしては、湿式抄造してなるものや、発熱粉体を紙等で挟持してなるものや、発熱粉体を水等に分散させたものを紙等に塗布してなるもの等が挙げられる。
【0021】
袋体11は、少なくともその一部が通気性であり、且つ、少なくともその一部が坪量20〜90g/m2のシートで構成されており、軽量化等の観点から、袋体の全体が坪量20〜90g/m2のシートであることが好ましい。保温の観点や、保存中の結露防止の観点や、必要な香り強度を長時間持続することができるという観点や、内部が透けて見えてしまうことを防ぐという観点から、坪量を20g/m2以上、好ましくは25g/m以上、更に好ましくは30g/m以上とすることが好ましい。また、発熱具の薄型化や軽量化を図り使用時の軽快さを向上させる観点や使用時の香りの立ち上がりが早くなる観点から坪量を90g/m2以下、好ましくは85g/m以下、更に好ましくは80g/m以下とすることが好ましい。このようなシートとしては、不織布、編み物地、通気性シート(例えば、多孔質シート、通気孔を有するプラスチックフィルム)、不織布と通気性シートとをラミネートした積層シート、編み物地と通気性シートとをラミネートした積層シート等が挙げられる。
【0022】
不織布としては、1種又は2種以上の繊維を用いて、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、カード法、熱融着法、水流交絡法、溶剤接着法により製造されたものを用いることができる。特に、風合いや、弾力性の観点から、伸縮性を有する不織布を用いることが好ましい。伸縮性を有する不織布としては、構成繊維として弾性繊維(例えば、ポリウレタン、ポリエステル)や立体捲縮性繊維を含む不織布が好ましく、例えばエアスルー不織布やスパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布等が好ましい。
【0023】
具体的な不織布の材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、エチレンプロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリアクリル等を含む合成繊維;セルロース、シルク、コットン、ウール等を含む天然繊維;あるいはそれらを複合した繊維等が挙げられる。
【0024】
通気性シートとしては、樹脂製の多孔質シートや通気穴を有する樹脂製のシートを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等を使用することができる。その厚みは、5〜200μmが好ましい。樹脂製の多孔質シートとしては、具体的には、熱可塑性樹脂及び該樹脂と相溶性のない有機又は無機のフィラーの溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸して得られたものであり、微細な多孔質構造になっているものや、通気穴を有する樹脂製のシートとしては非通気性シートや難通気性シートに針等で微細穴を設けたものや、あるいは前述の通気性シートに更に針等で微細穴を設けたものが好ましい。
【0025】
難通気性シートとしては、実質的に酸素を透過しないものであればよく、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニリデン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフォン、ポリアミド等を使用することができる。その厚みは、5〜200μmが好ましい。
【0026】
図1には、第1袋体シート11aと、第2袋体シート11bとの周縁部をシールすることで袋体11を構成する例を示す。第1袋体シート11a及び第2袋体シート11bは同種のものでもよく、あるいは異種のものでもよい。第1袋体シート11a及び第2袋体シート11bのどちらか一方を通気性にしてもよいし、両方を通気性としてもよい。両方を通気性とする場合、どちらか一方をもう片方よりも通気性の低いものとしてもよい。
【0027】
発熱具1の賦香に用いられる香料組成物は、ダマセノンを含有する。香料組成物中のダマセノンの含有量は、0.2〜0.7質量%である。下限を0.2質量%以上とすることで、保存中香りの強度を維持しつつ香料組成物全体の香りの変化を効果的に抑制することもできる。また、上限を0.7質量%以下とすることで、保存中のダマセノン自体の香りの変化を効果的に抑制することができる。中でも、0.4〜0.6質量%の範囲であることが好ましい。
【0028】
香料組成物に含有しているダマセノンの質量に対する、発熱部10中の活性炭の質量比(活性炭/ダマセノン)は、700〜3000であることが好ましい。下限を700以上とすることで、保存中の質的な香りの変化を抑制することができる。また上限を3000以下とすることで、保存中の量的な香りの変化を抑えつつ、ダマセノンそれ自体の香りの変化による質的な香りの変化を抑制することができる。上記活性炭/ダマセノンの質量比は、更に720〜2000の範囲とすることが特に好ましく、殊更に740〜1500の範囲とすることが好ましい。
【0029】
発熱具1の賦香に用いられる香料組成物は、ダマセノン以外のローズ様香料を1種又は2種以上含むことができる。これにより、発熱具1をローズ様に芳香させることができる。ダマセノン以外のローズ様香料の含有量は、香料組成物全体に対して、70〜80質量%であることが好ましい。
【0030】
ローズ様香料としては、具体的には、鎖状モノテルペンアルコール類、セスキテルペンアルコール類、モノテルペンアルコール若しくは脂環式アルコールの酢酸エステル類、ジヒドロジャスモン酸メチル、ヨノン、ダマスコン、テルペン系炭化水素又は芳香族アルコールが挙げられる。
【0031】
鎖状モノテルペンアルコール類としては、例えばゲラニオール、シトロネロール、リナロール、ジヒドロリナロール、エチルリナロール、ネロール、ミルセノールなどを用いることができる。
【0032】
セスキテルペンアルコール類としては、鎖状のもの及び環状のもののいずれも用いることができる。鎖状のセスキテルペンアルコール類としては、例えばファルネソールやネロリドールなどを用いることができる。環状のセスキテルペンアルコール類としては、例えばサンタロール、セドロール、ベチベロール(混合体)、パチュリアルコールなどを用いることができる。
【0033】
モノテルペンアルコールの酢酸エステル類としては、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸エチルリナリル、酢酸ラヴァンジュリル、酢酸メンタニルなどを用いることができる。また、脂環式アルコールの酢酸エステル類としては、酢酸o−tert−ブチルシクロヘキシルや酢酸p−tert−ブチルシクロヘキシルなどが挙げられる。
【0034】
テルペン系炭化水素としては、鎖状のものであるミルセン及びファルネセン等;環状のものであるピネン、リモネン、カンフェン、フェランドレン、ターピネン、ターピノレン、p-サイメン、セドレン、カリオフィレン等が挙げられる。
【0035】
また、芳香族アルコールとしては、香気成分として用いられる各種の化合物、例えばベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、パンプルフルール(2−メチル−4−フェニルペンタノール)、ジメチルベンジルカルビノール、フェニルヘキサノール(3−メチル−5−フェニルペンタノール)等が挙げられる。
【0036】
また、発熱具1の賦香に用いられる香料組成物は、ローズ様香料を精油として含有することもできる。例えば天然精油の一種であるローズオイル等を用いることもできる。
【0037】
発熱具1の賦香に用いられる香料組成物を調合する場合、さらに、例えば「合成香料 化学と商品知識」(印藤元一著 化学工業日報社)に記載の香料成分を、本発明の効果を妨げない範囲で配合することもできる。具体的には、ヘキシルシンナミックアルデヒド、2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)−プロパナール、4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、バニリン等のアルデヒド類;アネトール、オイゲノール等のフェノール類;γ―ノナラクトン、γ―ウンデカラクトン等のラクトン類;アミルサリシレート、ベンジルベンゾエート、ベンジルサリシレート、シス−3−ヘキセニルベンゾエート、シス−3−ヘキセニルサリシレート、ヘキシルベンゾエート、ヘキシルサリシレート、フェネチルフェニルアセテート、ノニルアセテートなどのエステル類が挙げられる。
【0038】
発熱具1の賦香に用いられる香料組成物は、ダマセノンに加え、本発明の効果を妨げない範囲であれば、溶剤を含むことができる。溶剤としては、ジプロピレングリコール、エチルジグリコール、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート及びジエチルフタレート等が挙げられる。溶剤の含有量は、香料組成物全体に対して、1〜30質量%であることが好ましい。
【0039】
香料組成物の使用量は、その種類や発熱具1の具体的な用途等に応じ適切に選定することができる。香料組成物の種類にもよるが、一般的な範囲として、発熱部10の固形分量の1gに対して5〜60mgが好ましく、7〜45mgが更に好ましい。
【0040】
発熱具1を賦香する方法は、香料組成物が液体である場合は、発熱具1に対して香料組成物をスプレー等で直接添加する方法がある。また、シート材料や粉体や油脂の担体等に賦香して、賦香シートや粉末香料やペースト状の賦香物とし、発熱具1に添加する方法もある。香料組成物が固体である場合は、発熱具1に対して香料組成物を適宜添加する方法がある。
【0041】
香料組成物は、発熱部10と袋体11との間に施されていることが製品管理上好ましい。香料組成物を発熱部10と袋体11との間に施す具体的な方法としては、例えば、袋体11の内側面に香料組成物を直接塗布してもよいし、香料組成物にてシート材料を賦香してなる賦香シート12を間に配置して施してもよいし、粉体や油脂の担体に賦香して得られた粉末香料やペースト状の賦香物をシート状にして間に施してもよい。賦香シート12を用いた場合は、具体的には、袋体11の内側面に隣接するように配置して施してもよいし、賦香シート12を接着剤により袋体11の内側面に接着して施してもよい。ここで、本明細書において「隣接するように配置」とは、近くにあるが必ずしも接触していない状態、すなわち接触していてもしていなくても良い状態を意味する。
【0042】
図1では、香料組成物を含浸させた賦香シート12により発熱具1を賦香する例を示す。賦香シート12は、袋体11の片側の内側面に隣接するように配置されている。特に、第1袋体シート11aと、第2袋体シート11bのうち、第2袋体シート11b側に配置されている。第1袋体シート11aを着用者の肌に近い側に位置するものとし、第2袋体シート11bを着用者の肌から遠い側に位置するものとした場合、賦香シート12を着用者の肌から遠い側に位置する第2袋体シート11b側の内側面に配することにより、使用時の軽快さを向上させると共に十分な温熱効果を着用者の肌へ付与することが可能である。
第1袋体シート11a及び第2袋体シート11bの坪量は、本発明の効果を十分発揮させる点及び保温・使用時の温感・使用感から、肌に遠い側の第2袋体シート11bが肌に近い側の第1袋体シート11aと同じか又はそれよりも小さい方が好ましい。
第1袋体シート11a及び第2袋体シート11bの通気性は、本発明の効果を十分発揮させる点及び良好な発熱特性を奏させる観点から、肌に遠い側の第2袋体シート11bが肌に近い側の第1袋体シート11aと同じか又はそれよりも低い方が好ましい。
【0043】
賦香シート12は、紙、不織布、織布等の繊維材料を含むシート材料や、多孔質性フィルム等、吸湿・吸油性を有するシート材料を含むことが好ましい。その材質は、例えば、シルク、コットン、ウール、セルロースの中でも木材パルプを主たる原料とする一般的な紙等の天然繊維や、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル等の合成繊維とすることができる。中でも、紙等のセルロースを含有する天然繊維、例えば吸水紙が、保存中の香りの変化を効果的に抑制させることができ、製造直後と同等の良好な香りを呈すると共に、軽量化を図ることが可能な点で好ましい。
【0044】
また、発熱具1は、保持手段を有していてもよい。すなわち、発熱具1は、人体へ当接できるように耳掛部や保持具等の保持手段を有していたり、人体または衣類等に貼り付けできるように構成されることもできる。この場合、袋体11の第1袋体シート11aの外側面に粘着剤層を形成させて人体へ直接貼付したり、袋体11の第2袋体シート11bの外側面に粘着剤層を形成させて下着等の衣類へ貼付した状態で人体へ当接させることができる。
【0045】
発熱具1に用いられる粘着剤の材料としては、アクリル系、ウレタン系、ゴム系、シリコン系、ポリイソブチレン系、スチレン−イソブチレン−スチレン(SIS)系、スチレン−イソブチレン系、ポリアクリル酸系の水溶性高分子等を使用することができる。
【0046】
発熱具1は、その使用前は、その全体が酸素バリア性を有する包装材(図示せず)で密封されることが好ましい。この包装材を構成するフィルムは特に限定されないが、具体的にはアルミニウム等の金属フィルムや、ポリプロピレン等のポリオレフィン、PET、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂フィルム、又はこれらの合成樹脂フィルムにセラミック若しくはアルミニウム等を蒸着したフィルムが挙げられる。また、包装材の酸素透過係数(ASTM D3985)が10cm3・mm/(m2・day・MPa)以下、特に2cm3・mm/(m2・day・MPa)以下であるようなものが好ましい。
【0047】
つづいて、本実施形態の発熱具1の作用効果について説明する。発熱具1によれば、少なくとも一部が坪量20〜90g/m2のシートで構成される袋体11を備え、ダマセノンを0.2〜0.7質量%含有する香料組成物により賦香されているため、使用時における軽快さと良好な芳香とを両立することができる。したがって、ユーザのリラクゼーション効果を高めることが可能である。この発熱具1によれば、使用時における香り立ちが十分になり、また保存中の香りの質や強度の変化を効果的に抑制させることができる。また、使用時の香りの立ち上がりが早く、必要な香り強度を長時間持続することもできる。また、この発熱具1では、発熱特性を劣化させる懸念もない。
【0048】
発熱具1のより具体的な一例として、蒸気発熱具100について以下に説明する。図2には、蒸気発熱具100の平面図が示されている。この蒸気発熱具100は、いわゆるアイマスクタイプのものであり、ヒトの目及びその周囲に当接させて、所定温度に加熱された水蒸気(以下、「蒸気温熱」とも言う。)を目及びその周囲に付与するために用いられるものである。この蒸気発熱具100はダマセノンを含有する香料組成物に賦香されており、具体的には、使用時に蒸気温熱を発生させるとともにローズ様の芳香を呈するものである。
【0049】
蒸気発熱具100は本体部101と耳掛け部102とを有している。本体部101は、長手方向Xとこれに直交する幅方向Yを有する横長の形状をしている。本体部101は略長円形をしている。耳掛け部102は一対で用いられ、各耳掛け部102は本体部101の長手方向(X方向)の各端部にそれぞれ取り付けられている。蒸気発熱具100は、各耳掛け部102を着用者の耳に掛けて、本体部101を着用者の両目を覆うように装着される。この着用状態下、蒸気発熱具100から発生した蒸気温熱が着用者の目に施され、また香気成分が揮散し、それらによって目の疲れや充血、眼精疲労が緩和され、またリラックス感が得られる。更に入眠感も誘発される。
【0050】
図3には、蒸気発熱具100の分解斜視図が示されている。同図においては、耳掛け部102は本体部101上に配置されている。また図4には、蒸気発熱具100のX方向に沿う断面図が示されている。蒸気発熱具100の本体部101は、発熱部121と、該発熱部121を収容する袋体110とを有する。発熱部121は、少なくとも一部に通気性を有する収容体122内に収容されて発熱体120を構成している。発熱部121は、図1の発熱部10に対応し、袋体110が図1の袋体11に対応する。蒸気発熱具100の賦香に用いられる香料組成物は、図1の発熱具1で使用しうる香料組成物と同様である。すなわち、香料組成物全体に対して0.2〜0.7質量%のダマセノンを含有するものである。
【0051】
蒸気発熱具100では、袋体110は、着用者の肌に近い側に位置する第1袋体シート110aと、着用者の肌から遠い側に位置する第2袋体シート110bとを有している。
【0052】
第2袋体シート110bは、少なくとも一部が坪量20〜90g/m2のシートであると、内部が透けて見えてしまうことを防止する観点や保温の観点から好ましく、特に第2袋体シート110bの全部が坪量20〜90g/m2のシートであることが好ましい。
【0053】
また、第1袋体シート110aも第2袋体シート110bと同様の理由から少なくとも一部が坪量20〜90g/m2であるとよい。特に第1袋体シート110aの全部が坪量20〜90g/m2のシートであることが好ましい。
【0054】
保温・使用時の温感・使用感、及び、本発明の効果を十分発揮させる点から、坪量は、肌に遠い側の第2袋体シート110bが肌に近い側の第1袋体シート110aと同じか又はそれよりも小さい方が好ましい。第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bの厚み、構成繊維の太さは、適切に選択すればよい。
【0055】
第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bは同形であり、略長円形をしている。そして、第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bの外形が本体部101の外形をなしている。第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bはそれらを重ね合わせ、それらの周縁部を接合し、かつX方向の中央部をY方向に沿って接合することで(図3の点々部分)、内部に2つの空間を有する袋体110となされる。第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bを接合するためには、例えばホットメルト接着剤を用いることができる。
【0056】
第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bは、少なくとも一方向に伸縮性を有する伸縮性シートであることが好ましい。第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bが一方向にのみ伸縮性を有する場合、本体部101の長手方向(X方向)又は幅方向(Y方向)と一致することが好ましい。第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bが互いに直交する二方向に伸縮性を有する場合、該方向は、本体部101の長手方向及び幅方向とそれぞれ一致することが好ましい。ここで、伸縮性シートとは、伸長及び伸長回復性(収縮性)のいずれか一方又は両方の性質を有するシートを包含する。例えば、第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bの少なくとも一方が、一方向に伸長性を有するものであれば良く、また第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bの一方が伸長性を有し、他方が伸長及び伸長回復性を有するものであっても良い。
【0057】
袋体110には、そのX方向に延びる2つの長辺の中央部の位置において、該長辺からY方向に沿って内方に切れ込んだ略V字形のノッチ部113a,113bが形成されている。ノッチ部113a,113bは、切れ込みの程度が異なっている。ノッチ部113aは、蒸気発熱具100を装着したときに、着用者の眉間又はその近傍に位置する。ノッチ部113bは、蒸気発熱具100を装着したときに、着用者の鼻梁に位置する。したがって、ノッチ部113aよりもノッチ部113bの方が切れ込みの程度が大きくなっている。なお、図2に示すノッチ部113a,113bは、それらの少なくとも一方がスリットであってもよい。
【0058】
図3、4には、発熱部121が、少なくとも一部に通気性を有する収容体122内に収容されて発熱体120を構成したものが、更に袋体110に収容された蒸気発熱具100の例を図示する。この例では、具体的には、収容体122は、第1収容体シート122aと第2収容体シート122bとの周縁部を互いに接合して形成された形状を有している。収容体122は、接合した周縁部よりも内側の部分において非接合状態になっている。それによって収容体122には、発熱部121を収容する単一の空間が形成されている。香料組成物は、発熱部121と袋体110との間に施されていると好ましく、発熱体120と袋体110との間に施されていると更に好ましく、中でも収容体122の外側面に施されていると殊更好ましい。
【0059】
蒸気発熱具100において、香料組成物は、発熱部121と袋体110との間に施されていることが好ましいが、特に、発熱体120と袋体110との間に施されていることが好ましく、中でも、収容体122の外側面に施されていることが好ましい。香料組成物と発熱部121との間に第2収容体シート122bが介在すると、香料組成物と発熱部121との距離が遠くなるため、活性炭の影響を物理的に抑制することができる。
香料組成物を発熱体120と袋体110との間に施す具体例としては、例えば、香料組成物にてシート材料を賦香してなる賦香シート130を間に配置して施してもよいし、粉体や油脂の担体に賦香して得られた粉末香料やペースト状の賦香物をシート状にして間に施してもよい。
香料組成物を収容体122の外側面に施す具体例としては、収容体122の外側面のシートに香料組成物を直接塗布してもよい。なお、収容体122の外側面のシートを賦香シートと同等のものとし、このシートにダマセノンを含む香料組成物を施してもよい。すなわち、接着剤や熱融着等の方法を用いて第2収容体シート122bの外側面に賦香シートと同等のシートを積層し、収容体122の外側面のシートを賦香シートと同等のものとしてもよい。これにより、シートによる温度阻害をもたらさず十分な温熱効果を付与することができるとともに、賦香が容易であり、香料組成物の香り立ちが極めて高くなり、香りの変化を一層効果的に抑制することも可能となる。なお、賦香シート130の材料としては、図1の賦香シート12と同様なものを用いることができる。
第1収容体シート122aを着用者の肌に近い側に位置するものとし第2収容体シート122bを着用者の肌から遠い側に位置するものとした場合、賦香シート130を着用者の肌から遠い側に位置する第2収容体シート122b側の外側面に配するあるいは外側面に施すことにより、使用時の軽快さを向上させると共に十分な温熱効果を着用者の肌へ付与することが可能である。
【0060】
本発明では、第2収容体シート122bの通気度を、第1収容体シート122aの通気度よりも大きくすることもできる。これにより、発熱部中の活性炭の香料組成物への影響を一層抑制することが可能になる。すなわち、第2収容体シート122bの通気度を第1収容体シート122aの通気度の2倍以上、更に5倍以上、特に10倍以上とすることが好ましい。ここで、通気度はJIS P8117によって測定される値であり、一定の圧力のもとで100mlの空気が6.42cm2の面積を通過する時間で定義される。したがって、通気度が大きいことは空気の通過に時間がかかること、即ち通気性が低いことを意味している。逆に、通気度が小さいことは通気性が高いことを意味している。このように、通気度の大小と通気性の高低とは逆の関係を示す。
【0061】
なお、第1収容体シート122aは、空気及び水蒸気の透過が可能なように通気性を有していてよい。一方、第2収容体シート122bは、第1収容体シート122aよりも難通気性であるか、又は非通気性であってよい。第2収容体シート122bが難通気性である場合、該第2収容体シート122bの通気度を、5000秒以上とすることが好ましく、10000秒以上とすることが更に好ましく、20000秒以上とすることが一層好ましく、30000秒以上とすることが更に一層好ましい。一方、第1収容体シート122aの通気度は、第2収容体シート122bが非通気性であるか又は難通気性であるかを問わず、1000〜50000秒であることが好ましい。
【0062】
第1収容体シート122a及び第2収容体シート122bの具体的な材料としては、通気度を支配しかつ粉体の漏れ出しを防止する等の点で、メルトブローン不織布や透湿性フィルムが好適に用いられる。なお、透湿性フィルムとしては、例えば熱可塑性樹脂及び該樹脂と相溶性のない有機又は無機のフィラーの溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸して得られた微細な多孔質構造を有するものを用いることができる。なお、前述の袋体11に用い得る通気性シートや難通気性シートであっても良い。第1収容体シート122a及び第2収容体シート122bは、1枚のシート材から構成されていてもよいし、複数のシート材の積層体から構成されていてもよい。
【0063】
発熱部121は、図1の発熱部10と同様な発熱組成物からなる。すなわち、発熱部121は、被酸化性金属、及び、活性炭を少なくとも含むが、さらに電解質及び水を含むことが好ましい。
【0064】
発熱部121は、例えば発熱シート又は発熱粉体からなる。ここでは、発熱部121として、発熱シートのうち特に繊維シートと呼ばれる繊維を含有したシートと、塗布シートと呼ばれる発熱粉体を水等に分散させたものを紙等に塗布してなるものを用いた例について説明する。発熱シートのうち繊維シートは、被酸化性金属、活性炭、繊維状物、電解質及び水を含む、含水状態であることが好ましい。すなわち、繊維シートは、被酸化性金属、活性炭及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させて構成されていることが好ましい。発熱シートのうち塗布シートは、被酸化性金属、活性炭、電解質及び水を含む発熱粉体水分散物を紙等に塗布したものであることが好ましい。このような発熱シートは、例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いて製造することができる。
【0065】
発熱シートは、一層であっても積層構造であってもよい。すなわち、発熱シートは、発熱シート自体が複数枚積層されたものであって良いし、あるいは、保水シート等が隣接して配され積層構造を成したものであっても良い。図4では、一例として、成形シート121aと、保水シート121bとの二層構造の発熱シートを示す。成形シート121aには、被酸化性金属と活性炭を含むことができ、その含有量は、成形シート121a中、被酸化性金属を60〜90質量%、及び活性炭を5〜25質量%とすることができる。また、保水シート121bは紙や、吸水性ポリマーが挟まれた紙が好ましい。成形シート121a及び保水シート121bは電解質水溶液を含むものであり、電解質水溶液には、1〜15質量%の電解質を含むものを用いることが好ましく、この電解質水溶液を該成形シート100質量部に対して30〜80質量部の量、発熱シート(成形シート121aと保水シート121bとの二層構造)に含有させることが好ましい。また、保水シート121bは、成形シート121aの第2袋体シート110b側に配置させることが好ましい。保水シート121bが介在することで香料組成物と発熱部との距離が遠くなるため、活性炭の影響を物理的に抑制することが可能であり好ましい。
【0066】
図4には、袋体110と発熱体120との固定の状態が示されている。発熱体120は、第2袋体シート110bの内側面と、第2収容体シート122bの外側面とが固定部103a、103bにより接続されることで、発熱体120が袋体110の内部に固定される。固定部103a、103bは、例えば、接着剤やヒートシール等とすることができる。
【0067】
蒸気発熱具100における耳掛け部102は、その使用前の状態では、図3及び図4に示すように、本体部101における第1袋体シート110a上に配置されている。蒸気発熱具100を使用するときには、図2に示すように、耳掛け部102をX方向の外方へ向けて反転させて、開いた状態にする。使用前の状態、すなわち左右の耳掛け部102が本体部101上に位置している状態においては、左右の耳掛け部102によって形成される輪郭は、本体部101の輪郭とほぼ同じになっている。
【0068】
本実施形態の蒸気発熱具100は、その使用前は、その全体が酸素バリア性を有する包装材(図示せず)によって包装されて、発熱部121が空気中の酸素と接触しないようになっている。包装材は、前述の発熱具1の包装材と同様なものを用いることができる。
【0069】
包装材に包装されるときの蒸気発熱具100の形態は、着用者の肌に近い側に位置する袋体11の第1袋体シート110aを内側にし、縦中心線Lで2つ折り畳むことが衛生上の面では好ましい。一方、このように包装すると、図2や図4で示す態様と比較して、2個の発熱体が近接してしまうことになる。また、蒸気発熱具100では、坪量が20〜90g/mの薄型のシートでその少なくとも一部が構成されている袋体110を使用する。そのため、片側の香料組成物が、もう片側の発熱体へ容易に移行することが懸念される。しかしながら、蒸気発熱具100は、ダマセノンを含む香料組成物により賦香されるため、このような態様で包装され、保存される場合においても、保存中の香りの強度の低下及び香りの変質を、顕著に抑制することが可能である。また、耳掛け部102が介在することで香料組成物と発熱部との距離が遠くなるため、活性炭の影響を物理的に抑制することが可能であり好ましい。耳掛け部102は、前述の発熱具1の袋体11と同様な材料を用いることができる。
【0070】
このような蒸気発熱具100においても、発熱具1と同様な効果を得ることができる。すなわち、蒸気発熱具100によれば、少なくとも一部が坪量20〜90g/m2のシートを備えた袋体110を有し、ダマセノンを0.2〜0.7質量%含有する香料組成物により賦香されているため、使用時における軽快さと良好な芳香とを両立することができる。また、蒸気発熱具100によれば、温熱とローズ様の芳香とともに、蒸気を発生させることができるため、ユーザのリラクゼーション効果をよりいっそう高めることが可能である。この蒸気発熱具100によれば、使用時における香り立ちが十分になり、また保存中の香りの変化を効果的に抑制することができる。また、使用時の香りの立ち上がりが早く、必要な香り強度を長時間持続することもできる。また、この蒸気発熱具100においても、発熱特性を劣化させる懸念はない。
【0071】
図5には、蒸気発熱具100の別の例として、蒸気発熱具200を示す。蒸気発熱具100は、発熱体と袋体との間に、特に収容体の外側面に香料組成物が施された例を挙げたが、蒸気発熱具200では、発熱体と袋体との間に、特に収容体の外側に別途配されたシート材料に香料組成物が施された例を示す。具体的には、図5に示す蒸気発熱具200においては、袋体110と発熱体220との間に、賦香シート230が配されている。特に、袋体110における第2袋体シート110bと、発熱体220との間に、賦香シート230が隣接するように配置されていると好ましい。賦香シート230には、ダマセノンを含有する香料組成物が施されており、該香料組成物には、香料組成物全体に対して0.2〜0.7質量%のダマセノンを含有している。
【0072】
賦香シート230は、第2袋体シート110b及び発熱体220の収容体222と非接着状態になっており、隣接して配置された状態である。あるいは第2袋体シート110bと、位置ずれが起こらない程度に軽度に接着されている。賦香シート230を構成するシート材料としては、収容体222と同形でもよく、あるいは収容体222よりも小さな形状のものでもよい。中でも、発熱部221と同じ形状であると、発熱による香りの揮散が効率的で好ましい。
【0073】
発熱部221は、発熱部121と同じ態様である。発熱部221は一層であっても積層構造であってもよいし、図4で示すような二層構造であってもよい。
【0074】
発熱体220は、固定部203により袋体110に固定されている。上記説明した以外は、蒸気発熱具200は蒸気発熱具100と同様であり、蒸気発熱具100と同様な効果を得ることができる。例えば、第1収容体シート222aは第1収容体シート122aに対応し、第2収容体シート222bは第2収容体シート122bに対応する。
【0075】
なお、蒸気発熱具100及び蒸気発熱具200は、着用者の両目に当接させて使用するアイマスクを例に挙げて説明したが、これに代えて、これを着用者の身体、例えば肩、腰、肘、膝等に貼り付けて用いてもよい。あるいは衣類に貼り付けて用いてもよい。蒸気発熱具100を着用者の身体に貼り付ける場合には、耳掛け部102に代えて、粘着剤等の固定手段を設ければよい。すなわち、着用者の身体に貼り付けて用いる場合には、袋体110における第1袋体シート110aの表面に、粘着剤等の固定手段を設ければよく、着用者の衣類に貼り付けて用いる場合には、袋体110における第2袋体シート110bの表面に、粘着剤等の固定手段を設ければよい。
【0076】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0078】
実施例1−7、比較例1−4
図2ないし図4に示す構造の蒸気発熱具を以下の(1)ないし(3)の手順で作製した。なお、図4では、成形シートと保水シートとから構成される発熱部121の例を示すが、本実施例では、成形シートと別個に保水シートを設けずに、成形シートに保水シートの機能をもたせた発熱シートを作製した。
(1)シート状発熱部121の作製
<原料組成物配合>
・被酸化性金属:鉄粉、同和鉱業株式会社製、商品名「RKH」:83%
・繊維状物:パルプ繊維(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名 NBKP「Mackenzi(CSF200mlに調整)」):9%
・活性炭:平均粒径45μm、(日本エンバイロケミカル株式会社製、商品名「カルボラフィン」):8%
【0079】
前記原料組成物の固形分(被酸化性金属、繊維状物及び活性炭の合計)100部に対し、カチオン系凝集剤であるポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC(株)製、商品名「WS4020」)0.7部及びアニオン系凝集剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、商品名「HE1500F」0.18部を添加した。更に、水(工業用水)を、固形分濃度が12%となるまで添加しスラリーを得た。
【0080】
<抄造条件>
前記スラリーを用い、これを抄紙ヘッドの直前で0.3%に水希釈し、傾斜型短網抄紙機によって、ライン速度15m/分にて抄紙して湿潤状態の成形シートを作製した。
【0081】
<乾燥条件>
湿潤状態の成形シートをフェルトで挟持して加圧脱水し、そのまま140℃の加熱ロール間に通し、含水率が5%以下になるまで乾燥した。乾燥後の坪量は450g/m2、厚さは0.45mmであった。このようにして得られた成形シート121aの組成を熱重量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)を用いて測定した結果、鉄83%、活性炭9%、パルプ8%であった。
【0082】
<シート状発熱部121の作製>
得られた成形シートに、該成形シート100部に対し電解液量が42部となるように、下記電解液を注入した。毛管現象を利用して成形シート121a全体に電解液を浸透させて、矩形シート状の発熱部121(坪量:460g/m、寸法49mm×49mm)を得た。
【0083】
<電解液>
電解質:精製塩(NaCl)
水:工業用水
電解液濃度:5%
【0084】
(2)発熱体120の作製
収容体122における第1収容体シート122aを、炭酸カルシウムを含む多孔質の延伸ポリエチレン透湿性フィルム(JIS P8117による通気度2,500秒)から構成した。第2収容体シート122bは、ポリエチレン製の非透湿フィルムから構成した。該第2収容体シート122bの一面に吸水紙(坪量35g/m)を積層して、上述のシート状発熱部121の1枚を間にして、第1収容体シート122aと第2収容体シート122bとを、吸水紙が外方を向くように重ね、周縁部においてシートどうしを接合し、矩形の発熱体120を得た。そして吸水紙に、以下の表1に示すローズ様香料を含有する香料組成物を含浸させた。香料組成物の含浸量は、発熱部の固形分量1.05gに対して18mgとした。
【0085】
(3)蒸気発熱具100の作製
第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bとして、実施例1−7及び比較例1−3では、第1袋体シート110aは、ポリプロピレン不織布(ニードルパンチ法、坪量80g/m)、第2袋体シート110bは、ポリエチレンテレフタレート不織布(エアスルー法、坪量30g/m2)を用い、比較例4では、第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bの両方をポリエチレンテレフタレート不織布(ニードルパンチ法、坪量100g/m2、厚さ0.72mm;呉羽テック(株))を用い、図2に示すように、両袋体シート110a、110bの間に、前記で得られた発熱体120を2個挟み、周縁部及び縦中心線近傍において第1袋体シート110a、第2袋体シート110bどうしを接合した。更に、第1袋体シート110aの外側面に、図2に示すように不織布製の耳掛け部102を取り付け、目的とする蒸気発熱具100を得た。以上の各操作は、酸素が存在しない雰囲気下に行った。第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bは、図2中、X方向に伸縮可能なものであり、50%伸長時の荷重は0.8N/5cmであった。
【0086】
表1に示す各香料成分をそれぞれ上述の方法で賦香した後、得られた蒸気発熱具100を、第1袋体シート110aが内側になるように縦中心線Lで二つに折り畳み、酸素バリア性を有する袋(PET13μm/アルミニウム7μm/ポリプロピレン40μmの積層フィルム)の中に密閉封入し、香料成分の安定化のため一晩放置した。一晩放置した蒸気発熱具(これを賦香直後の蒸気発熱具という)、及び、50℃の恒温槽で7日間保存した蒸気発熱具の2種類について、個装容器(ピロー)を開封して、蒸気発熱具の発熱及び水蒸気発生を開始させ、開封から5分後における香料組成物の香り立ちを以下の基準で評価した。その結果を以下の表2に示す。なお、第2袋体シート110bの坪量、図2に示す蒸気発熱具100を縦中心線Lで切り離した1個あたりの活性炭の質量、及び、ダマセノンの質量、並びに、その質量比(活性炭/ダマセノン)をそれぞれ表1に示した。
【0087】
【表1】

【0088】
〔保存中の香りの強度の変化及びローズ香の変化についての評価〕
匂いの専門パネル2名に、各実施例及び各比較例の一晩放置したものと(これを賦香直後の蒸気発熱具という)、50℃の恒温槽で7日間保存したものの2種類について、ピローを開封して5分後の香りをそれぞれ嗅がせ、「香りの強度」を1〜5までの5段階絶対評価を行わせ、「ローズ香の特徴」を1〜5の5段階絶対評価を行わせ、平均した結果を表2に示した。
<香りの強度の評価基準:5段階絶対評価>
1:強度がかなり不足
2:強度が不足
3:必要な強度がある
4:強度がある
5:十分な強度がある
<ローズ香の評価基準:5段階絶対評価>
1:ローズ香の特徴がかなり乏しい
2:ローズ香の特徴がない
3:ローズ香の特徴が必要レベルに達している
4:ローズ香の特徴がある
5:十分にローズ香の特徴がある
【0089】
【表2】

【0090】
更に、実施例1、比較例1については蒸気発熱具を目元に装着した状態にて使用時の香りの強度の変化を以下の基準で評価した。それらの結果を以下の表3に示す。
【0091】
〔使用時の香りの強度の評価〕
蒸気発熱具(実施例1、比較例1)の50℃の恒温槽で7日間保存したものについて、匂いの専門パネル2名による評価を行った。ピローを開封し、第1袋体シート110a側を目元に当接した状態で装着させて、ピローを開封から5分ごとにて「香りの強度」を1〜5までの5段階絶対評価を行わせ、平均した結果を表3に示した。
<香りの強度の評価基準:5段階絶対評価>
1:強度がかなり不足
2:強度が不足
3:必要な強度がある
4:強度がある
5:十分な強度がある
【0092】
【表3】

【0093】
表2で示すように、実施例の蒸気発熱具は、50℃の恒温槽で7日間保存した後であっても量的にも質的にも製造直後(賦香直後)の良好な香りを呈していた。また、表3で示すように、実施例の蒸気発熱具は、香りの立ち上がりが早く、必要な香り強度を長時間持続できることが示された。なお、各実施例の賦香直後、及び、50℃の恒温槽で7日間保存後の蒸気発熱具は、香料組成物を含有しない蒸気発熱具と比較して、温度特性に差がないことが確認されている。
【符号の説明】
【0094】
1 発熱具
10 発熱部
11 袋体
11a 第1袋体シート
11b 第2袋体シート
12 賦香シート
100 蒸気発熱具
101 本体部
102 耳掛け部
103a 固定部
103b 固定部
110 袋体
110a 第1袋体シート
110b 第2袋体シート
113a ノッチ部
113b ノッチ部
120 発熱体
121 発熱部
122 収容体
122a 第1収容体シート
122b 第2収容体シート
121a 成形シート
121b 保水シート
130 賦香シート
200 蒸気発熱具
203 固定部
220 発熱体
221 発熱部
222 収容体
222a 第1収容体シート
222b 第2収容体シート
230 賦香シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被酸化性金属及び活性炭を備える発熱部と、
少なくとも一部が通気性であり、前記発熱部を収容する袋体と、
を有する発熱具であって、
該発熱具は、ダマセノンを含有する香料組成物にて賦香されており、
前記袋体の少なくとも一部が坪量20〜90g/m2のシートで構成され、
前記ダマセノンの含有量は、前記香料組成物全量に対して0.2〜0.7質量%である、発熱具。
【請求項2】
前記香料組成物に含有しているダマセノンの質量に対する、前記発熱部中の活性炭の質量比が、700〜2000である、請求項1記載の発熱具。
【請求項3】
前記香料組成物が、前記発熱部と前記袋体との間に施されている、請求項1又は2に記載の発熱具。
【請求項4】
前記発熱部が、少なくとも一部に通気性を有する収容体内に収容されて発熱体を構成しており、該発熱体と前記袋体との間に、前記香料組成物が施されている請求項3記載の発熱具。
【請求項5】
前記香料組成物が、前記収容体の外側面に施されている請求項4記載の発熱具。
【請求項6】
前記香料組成物が、賦香シートにて施されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の発熱具。
【請求項7】
前記賦香シートが、前記香料組成物をシート材料に施したものである請求項6記載の発熱具。
【請求項8】
前記シート材料が、セルロースを含有するものである請求項7記載の発熱具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−42963(P2013−42963A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183100(P2011−183100)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】