説明

発熱床材

【課題】 しかしながら、冬季はガラス床材表面に触れると冷たく感じる。また、冬季においては、透過性のある床材の裏面は室内床下側であり、床下側の冷気が床材に伝わるため、室内側のガラス面が冷やされる。また、室内の温度が床材に熱を奪われ、室温が下がるため、暖房器具のエネルギー効率が悪いという問題点がある。透過性のある床材の裏面に、断熱材を貼り付ければ透過性を損ねるため、断熱材を使用できないという問題点がある。
【解決手段】 本発明は透過性のある板材(1)と、板材(1)の面上に被履した光透過性及び導電性を有する金属薄膜のコーティング層である発熱層(4)と、発熱層(4)を保護や絶縁するための透過性のあるコーティング材(7)とを備える発熱床材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の建築物の床に組み込むことができる、発熱機能と透過性を有する発熱床材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、透過性のある床材にはガラスブロックを用いて構成する床材と、板ガラスを用いて構成する床材がある。これらの床材は建築物の床面に平らとなるように設置されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【特許文献1】 「特願2005−299306 図1」
【非特許文献1】 「SUGITA ACE STANDARD 建築金物総合カタログ2008、杉田エース株式会社、2008年、364ページ」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、冬季はガラス床材表面に触れると冷たく感じる。また、冬季においては、透過性のある床材の裏面は室内床の下地側であり、床の下地側の冷気が床材に伝わり、床材であるガラス面が冷やされることで、室内の温度が床材に熱を奪われ室温が下がるため、暖房器具のエネルギー効率が悪いという問題点がある。透過性のある床材の裏面に、断熱材を貼り付ければ透過性を損ねるため、断熱材を使用できない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発熱床材は、透過性のある板材(1)と、板材(1)の面上に被履した光透過性及び導電性を有する金属薄膜のコーティング層である発熱層(4)と、発熱層(4)を保護や絶縁するための透過性のあるコーティング材(7)とを備える発熱床材である。
【0005】
請求項2記載の発熱床材は、透過性のある板材(1)と、板材(1)の面上に被履した光透過性及び導電性を有する金属薄膜のコーティング層である発熱層(4)と、透過性のある補助板材(2)とを、この順に積層したものを備える発熱床材である。
【0006】
請求項3記載の発熱床材は、透過性のある板材(1)と、板材(1)の面上に被履した光透過性及び導電性を有する金属薄膜のコーティング層である発熱層(4)と、透過性のある補助板材(2)と、板材(1)と補助板材(2)を合せるための中間合わせ材(2)とを備える発熱床材である。
【0007】
請求項4記載の発熱床材は、透過性のある板材(1)は樹脂又はガラス又は陶器からなる請求項1又は2又は3記載の発熱床材である。
【0008】
請求項5記載の発熱床材は、透過性のある補助板材(2)は樹脂又はガラス又は陶器からなる請求項1又は2又は3記載の発熱床材である。
【0009】
請求項6記載の発熱床材は、発熱層(4)に配線された温度制御用部品(11)を備える請求項1から4のいずれかに記載の発熱床材である。
【0010】
請求項7記載の発熱床材は、板材(1)の廻りに4辺を保護するための弾性目地材(12)を介して取付けられた支持内枠(8)と、支持内枠(8)を建築物床にはめ込むために、建築物床下地に取付ける支持外枠(9)と、支持外枠(9)と支持内枠(8)との間に、介在状態となる緩衝帯材(13)とを備える請求項1から6のいずれかに記載の発熱床材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発熱床材によれば、床材自体が発熱するため、床材表面を触れても冷たく感じることは無く、室内温度は床材から放熱されることがないため、暖房器具のエネルギー効率がよい。また、透過性のある発熱体からなるので、透過性の床材の美観を損なうことがなく、床材事態が蓄熱材を兼ね備えるため、熱放出が緩やかに行われ、発熱するための通電が行われる時間が長く続き、電気消費量を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図示の実施例にもとづいて説明すると、
【0013】
図1、図2に図示するように、この実施例において透過性のある板材1は樹脂又はガラス又は陶器からなり、前記板材1の片面に発熱層4が設けられている。この発熱層4は典型的には光透過性を有する金属薄膜のコーティング層であり、スズ、金、銀、インジウム、亜鉛、チタン等の金属酸化物を用いて形成することができる。さらに、発熱層4上に設けられた電極5が設けられている。この電極5は細長い箔状の導電性部材であり、図2に示すように、板材1に設けられた発熱層4の一辺に沿って板材1の一定幅にわたって付設され、板材1の対辺側にも同様の電極5が設けられている。これら2つの電極5の間にある発熱層4が電流路となるように構成され、2つの電極5にはそれぞれ電極端子(図示せず)と、電源に接続するためのリード線6が設けられている。また、発熱層4と電極5と電極端子の保護や絶縁するために、シリコーンやワニス等の透過性のあるコーティング材7が施されている。板材1の厚さは強度と蓄熱性を考慮すると15mm以上が必要であるが、床として要求される種々の条件、例えば、これにかかると想定される最大荷重等を考慮して決定される。
【0014】
図2、図3に図示するように、この実施例の発熱床材は透過性のある板材1と、前記板材1の片面に設けられている発熱層4と、発熱層4上に設けられた二つの電極5が設けられ、2つの電極5にはそれぞれ電極端子(図示せず)と、電源に接続するためのリード線6が一体成型され、さらに、発熱層4を保護するための補助板材2が積層されている。上記発熱層4は、構成される板材1又は補助板材2の面上に発熱層4を形成してもよい。また、板材1と補助板材2の合計の厚さは強度と蓄熱性を考慮すると15mm以上が必要であるが、床として要求される種々の条件、例えば、これにかかると想定される最大荷重等を考慮して決定される。
【0015】
図2、図4に図示するように、この実施例の発熱床材は透過性のある板材1と、前記板材1の片面に設けられている発熱層4と、発熱層4上に設けられた二つの電極5が設けられ、2つの電極5にはそれぞれ電極端子(図示せず)と、電源に接続するためのリード線6が一体成型され、さらに、一体成型された板材1と、補助板材2は、PVB(ポリビニール・ブチラール)等の樹脂による中間合わせ材3で合わせられている。上記発熱層4は、構成される板材1又は補助板材2のどの面上に発熱層3を形成してもよい。また、板材1と補助板材2と中間合わせ材3の合計の厚さは強度と蓄熱性を考慮すると15mm以上が必要であるが、床として要求される種々の条件、例えば、これにかかると想定される最大荷重等を考慮して決定される。
【0016】
図5に図示するように、この実施例の発熱床材は、図4で成型された発熱床材と、板材1の4辺保護をするための支持内枠8は、支持内枠8と板材1の縁面との間に介在させる弾性目地材12を充填し固定されている。弾性目地材12は、支持内枠8の上部内面と、板材1の縁部の端面との間に介在させる弾力性を持った目地材であり、設置される板材1の若干の水平方向の動きを許容しつつ該部位を埋める弾性力を備えたシリコーンその他の部材で構成することができる。支持外枠9は、支持内枠8を受けるための床構造の一部に固設されている。領域14は、板材1の外周から所定寸法だけ内側に設けられた帯状の領域である。この領域をそのまま透明にしておくと、透過性のある板材1を通して支持外枠9等の構造部材や電極5が見えてしまうため、この領域14にエッチングやサンドブラスト、塗料の塗布や印刷等による彩色、装飾板の取り付けといった加飾を施すことが好ましい。このような加飾はデザイン上の要請や滑り止め等の対策により上記以外の領域に適宜施して差し支えない。なお、板材1が既に色付板材、装飾板材等の場合にはこの限りではない。
【0017】
図5の実施例では、図4で構成された発熱床材を使用し、支持内枠8に固定されているが、図1及び図3で構成された発熱床材を支持内枠8に固定してもよい。
【0018】
図6に図示するように、発熱層4上に設けられた二つの電極5には、それぞれ電極端子(図示せず)が設けられ、電源に接続するためのリード線6が電極端子に固設されている。このリード線6は温度制御用部品11を介し、後述する電源ケーブル10に接続される。リード線6と、リード線6に接続されている温度制御用部品11と電源ケーブル10は支持内枠8の内部で接続配線され、支持内枠8から電源ケーブル9が露出し、適宜の接続器具が設けられる。
【0019】
電源ケーブル10は、発熱層4を発熱させるための電源を供給するためのケーブルであり、電源としては、商用交流電源(AC100V、50/60Hz)を用いるのが一般的であるが、設置環境に応じてそれ以外の電源を使用してもよい。
【0020】
図7、図8を参照して、発熱床材を木造建築物の床の一部に組みこんだ支持外枠9の固設方法を詳しく説明する。床構造の一部、例えば、根太16に固定された補強材15の上面に支持外枠9の下面側が当設し、材質に応じて木ビス又はボルト等によってそれに固設する。なお、固設手段としては、これ以外に、木造、RC造、鉄骨造等の建築工法に応じて、その目的を達成し得る種々の構成を採用し得るのは云うまでもない。緩衝帯材13は、支持外枠9に配して、この上にその縁部を載置する支持内枠8との間に介在状態となるものであり、板材1に人の歩行その他によって加わった衝撃を緩和し、かつ衝撃音の床構造部への伝達を減衰させるべく作用するものである。従って該緩衝帯材13は、弾力性を持った合成ゴムその他の弾性材によって帯状に構成し、その緩衝帯材13は支持外枠9に何らかの手段で結合する。例えば支持外枠9に結合溝を構成した場合には、緩衝帯材13の下面に結合溝に結合可能な結合突条を形成しておき、結合溝に結合突条を結合させて固定できるようにする。
【0021】
この後、板材1と発熱層4と補助板材2、支持内枠8等が一体成型されたものを乗せ、支持内枠6から電源ケーブル10が露出し、給電の配線を行い、その中間には適宜の接続器具が設けられる。ただし支持内枠7等が一体成型されたものが開閉できるように、電源ケーブル10の給電配線は余長をとる。
【0022】
なお、17は仕上げ材であるフローリング。18は下地材である。
【0023】
この実施例の発熱床材は、以上のように、図8は取り外し状態を示している。図示するように建物の床の一部に簡単に部分的な透過性のある発熱床を構成することができる。
【0024】
また、この実施例の発熱床材によれば、吸盤等で板材1と発熱層4と補助板材2、支持内枠8等が一体成型されたものを持ち上げれば、極めて簡単に取り外すことができる。従って、この発熱床材の板材1や補助板材2にヒビ、割れ、破損が入る等の何らかの損傷が生じた場合等にその交換が容易にできる。またこの発熱床材の直下に、照明手段を配した場合等にも該発熱床材を取り外してその照明手段の交換等を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は建築分野で構造物床に対して利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】 実施例の発熱床材の断面拡大図
【図2】 図1における実施例の発熱床材の裏平面図
【図3】 実施例の発熱床材の図1とは別の断面拡大図
【図4】 実施例の発熱床材の図1、図3とは別の断面拡大図
【図5】 実施例の発熱床材の概略平面表図
【図6】 実施例の発熱床材の概略平面裏図
【図7】 実施例の発熱床ガラスを木造建築物の床の一部に組み込んだ状態の一部を示す断面拡大図
【図8】 実施例の発熱床ガラスを木造建築物の床の一部に組み込み、取り外し状態を示す断面図
【図9】 実施例を示した斜視図
【符号の説明】
【0027】
1 板材
2 補助板材
3 中間合わせ材
4 発熱層
5 電極
6 リード線
7 コーティング材
8 支持内枠
9 支持外枠
10 電源ケーブル
11 温度制御用部品
12 弾性目地材
13 緩衝帯材
14 領域
15 補強材
16 根太
17 フローリング
18 下地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過性のある板材(1)と、板材(1)の面上に被履した光透過性及び導電性を有する金属薄膜のコーティング層である発熱層(4)と、発熱層(4)を保護や絶縁するための透過性のあるコーティング材(7)とを備える発熱床材。
【請求項2】
透過性のある板材(1)と、板材(1)の面上に被履した光透過性及び導電性を有する金属薄膜のコーティング層である発熱層(4)と、透過性のある補助板材(2)とを、この順に積層したものを備える発熱床材。
【請求項3】
透過性のある板材(1)と、板材(1)の面上に被履した光透過性及び導電性を有する金属薄膜のコーティング層である発熱層(4)と、透過性のある補助板材(2)と、板材(1)と補助板材(2)を合せるための中間合わせ材(2)とを備える発熱床材。
【請求項4】
透過性のある板材(1)は樹脂又はガラス又は陶器からなる請求項1又は2又は3記載の発熱床材。
【請求項5】
透過性のある補助板材(2)は樹脂又はガラス又は陶器からなる請求項1又は2又は3記載の発熱床材。
【請求項6】
発熱層(4)に配線された温度制御用部品(11)を備える請求項1から4のいずれかに記載の発熱床材。
【請求項7】
板材(1)の廻りに4辺を保護するための弾性目地材(12)を介して取付けられた支持内枠(8)と、支持内枠(8)を建築物床にはめ込むために、建築物床下地に取付ける支持外枠(9)と、支持外枠(9)と支持内枠(8)との間に、介在状態となる緩衝帯材(13)とを備える請求項1から6のいずれかに記載の発熱床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−168873(P2010−168873A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30425(P2009−30425)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(509041795)株式会社住光 (1)
【Fターム(参考)】