発破締固めによる改良効果の予測方法
【課題】地盤条件や発破仕様条件を考慮して地盤改良効果を予測することにより、精度の良い発破仕様を設定可能とする。
【解決手段】衝撃水圧比Ud/σV’と、発破箇所からの距離Dを1段当たりの装薬量Wの3乗根で除したスケールディスタンスD/W1/3とが対数の比例関係にあることを利用した関係式から、衝撃水圧比Ud/σV’を推定し、累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と過剰間隙水圧比Ur/σV’とが比例関係にあることを利用した関係式から、過剰間隙水圧比Ur/σV’を推定し、この過剰間隙水圧比Ur/σV’の推定値から地盤改良前後の補正Na値の増加倍率を推定することにより地盤改良の効果を予測する。
【解決手段】衝撃水圧比Ud/σV’と、発破箇所からの距離Dを1段当たりの装薬量Wの3乗根で除したスケールディスタンスD/W1/3とが対数の比例関係にあることを利用した関係式から、衝撃水圧比Ud/σV’を推定し、累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と過剰間隙水圧比Ur/σV’とが比例関係にあることを利用した関係式から、過剰間隙水圧比Ur/σV’を推定し、この過剰間隙水圧比Ur/σV’の推定値から地盤改良前後の補正Na値の増加倍率を推定することにより地盤改良の効果を予測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発破により地盤改良を行う発破締固め工法において、その改良効果を予測するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発破による緩い砂地盤の締固めに関しては、従来より、ヨーロッパや北米を中心にして数々の施工例が報告されている。本出願人等は、かかる発破による締固め工法を、我が国において例えば埋立て地や造成地など数々の軟弱地盤に適用し、その有効性について確認を行ってきた。これらの結果に基づいて、間隙水圧を短時間で消散させる方法(下記特許文献1)、発破によって発生する地盤振動を予測する方法(下記特許文献2)、発破による地盤締固め工法と他工法とを併用することで地盤を均質に改良する方法(下記特許文献3)などについて提案を行った。
【特許文献1】特開平11−117283号公報
【特許文献2】特開平11−181753号公報
【特許文献3】特開2002−47638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これまでは、発破の重要な要素となる単位装薬量(単位体積当たりの装薬量)を設定するに際し、地表面沈下量の実測値から推定される体積ひずみと、実際に使用した単位装薬量の実績データから経験的に必要火薬量を推定するものであった。従って、地盤条件や発破段数の影響などは考慮されておらず、前記単位装薬量の決定方法も体系化されたものではなかったため、発破の効果が発揮され易い地盤では、小さな単位装薬量で大きなひずみが生じてしまうなどの問題があった。
【0004】
具体的に、改良効果に影響を及ぼす地盤条件としては、N値、細粒分含有率、上載圧、改良対象層厚などがあり、また、改良効果に影響を及ぼす発破条件としては、1段当たりの装薬量、発破孔間隔、発破段数などが考えられるが、従来の方法では、前記地盤条件は考慮されておらず、かつ発破仕様(1段当たりの装薬量、発破孔間隔、発破段数、装薬火薬間の離隔)についての評価方法が体系化されていなかった。
【0005】
さらに、従来より発破により生じる衝撃水圧や間隙水圧は、地盤改良の効果や周辺への振動・騒音に影響を与えることが知られていたが、定量的な評価方法は確立していなかった。
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、地盤条件や発破仕様条件を考慮して地盤改良効果を予測することにより、精度の良い発破仕様を設定可能とした発破締固めによる改良効果の予測方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、必要単位装薬量から装薬量、段数、発破孔間隔、装薬深度等の発破仕様を設定する第1ステップと、
上記発破仕様に基づき、任意点で生じる衝撃水圧比Ud/σV’の累積値ΣUd/σV’を求める第2ステップと、
事前に、液状化の発生し易さ程度の指標値となる改良前の地盤定数と、累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と過剰間隙水圧比Ur/σV’との関係を示す勾配を直線近似で求めた比例係数CNaとの相関を得ておき、上記第2ステップで求めた累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と、前記改良前の地盤定数から求めた比例係数CNaとから過剰間隙水圧比Ur/σV’を求める第3ステップと、
事前に、地盤定数増加率(=改良後の地盤定数/改良前の地盤定数)と過剰間隙水圧比Ur/σV’との相関を得ておき、上記第3ステップで求めた過剰間隙水圧比Ur/σV’から地盤定数増加率を算出することにより発破締固めによる改良効果を予測することを特徴とする発破締固めによる改良効果の予測方法が提供される。
【0008】
請求項2に係る本発明として、必要単位装薬量から装薬量、段数、発破孔間隔、装薬深度等の発破仕様を設定する第1ステップと、
任意点で生じる衝撃水圧Udは、その地点での有効上載圧σV’、火薬量W、発破箇所までの距離Dで決定されるとの仮定の下、下式(11)によって衝撃水圧比Ud/σV’を算出するとともに、各段発時の衝撃水圧比Ud/σV’の累積値ΣUd/σV’を求める第2ステップと、
【数11】
ここで、Ud:衝撃水圧(kPa)、σV’:有効上載圧(土被り圧)(kPa)、C、n:実験結果から求まる係数、D:発破箇所からの距離(m)、W:1段当たりの装薬量(kg)である。
事前に、下式(5A)〜(5D)(道路橋示方書に準拠)に基づき求めた補正Na値と、累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と過剰間隙水圧比Ur/σV’との関係を示す勾配を直線近似で求めた比例係数CNaとの相関を得ておき、上記第2ステップで求めた累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と、前記比例係数CNaより、下式(12)に基づき過剰間隙水圧比Ur/σV’を求める第3ステップと、
【数5】
ここで、N:標準貫入試験から得られるN値、N1:有効上載圧100kN/m2相当に換算したN値、C1およびC2:細粒分含有率によるN値の補正係数、D50:平均粒径である。
【数12】
事前に、補正Na増加率(=改良後の補正Na値/改良前の補正Na値)と過剰間隙水圧比Ur/σV’との相関を得ておき、上記第3ステップで求めた過剰間隙水圧比Ur/σV’から補正Na増加率を算出することにより発破締固めによる改良効果を予測することを特徴とする発破締固めによる改良効果の予測方法が提供される。
【0009】
請求項3に係る本発明として、地盤改良の対象となる領域の前記過剰間隙水圧比Ur/σV’は2以上となるように前記発破仕様を設定する請求項1〜2いずれかに記載の発破を用いた発破締固めによる改良効果の予測方法が提供される。
【0010】
請求項4に係る本発明として、地盤改良の対象領域周辺の過剰間隙水圧比Ur/σV’は0.5以下となるように前記発破仕様を設定する請求項1〜3いずれかに記載の発破締固めによる改良効果の予測方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上詳説のとおり本発明によれば、地盤条件や発破仕様条件に基づいて、過剰間隙水圧を推測することにより、地盤改良効果を予測できるようになるため、精度の良い発破仕様が設定可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0013】
本発明に係る発破締固めによる改良効果の予測方法は、発破による締固め工法において、実測した地盤条件に対して、所定の地盤改良の効果が発揮されるように発破条件を設定するためのものであって、図1の設計フローに示されるように、設計仕様を設定するための調査・条件設定と、周辺地盤への振動・騒音の影響などを考慮しながら、必要単位装薬量から装薬量、段数、発破孔間隔、装薬深度等の発破仕様を決定する発破仕様の設定手順(以下、概略設計という。)と、地盤内の累積衝撃水圧比、過剰間隙水圧比を求め、発破締固めの改良効果を予測する改良効果の予測手順(以下、詳細設計という。)とから構成される。以下、各項目毎に詳述する。
【0014】
〔調査・条件設定〕
調査・条件設定では、地盤のボーリング調査を行って地盤の特性などを調査するとともに、地盤改良の目標値となる目標体積ひずみεVおよび目標Na値を設定することを目的とする。
【0015】
手順は、次述の現地調査および地盤調査による地盤の物性値などの結果に基づいて、液状化判定を行った後、改良目標値の設定を行う。
【0016】
前記現地調査では、施工現場周辺の用途や地盤構造などを調査し、前記地盤調査では、地盤のボーリング調査を行って現状地盤の物性(N値、平均粒径D50、細粒分含有率FC、地下水位、繰返し三軸強度比RL)を実測する。
【0017】
前記液状化判定では、前述の地盤調査で得られたN値と、繰返し三軸強度比RLとから、液状化の起こりやすさの判定を行い、所定の水平震度に対して液状化抵抗率(安全率)FL>1となる目標Na値を算出する。
【0018】
前記改良目標値の設定では、前記地盤調査で得られたN値と前記液状化判定で算出した目標N値とから、以下の手順で目標体積ひずみεVおよび目標Na値を算出する。
(目標体積ひずみεVの算出)
前記目標体積ひずみεVの算出手順は、前記地盤調査で得られたN値と前記液状化判定で算出した目標N値とから、地盤の相対密度Drを次式(1)のマイヤホフの提案式により求め、その後間隙比eを式(2)から算出する。
【数1】
ここで、Dr:相対密度(%)、σV’:有効上載圧(kN/m2)である。
【数2】
ここで、emax:最大間隙比、emin:最小間隙比である。
【0019】
前記最大間隙比、最小間隙比が既知でない場合は、次式(3A)、(3B)から推定する。
【数3】
目標体積ひずみεVは、式(4)によって表される。
【数4】
ここで、e0:改良前(事前)の間隙比、e:改良目標(事後)の間隙比である。
【0020】
(目標Na値の算出)
次に、前記目標Na値の算出手順は、次のとおりである。液状化のし易さは、N値、細粒分含有率、土被り圧に影響を受けることが知られており、道路橋示方書の液状化判定の方法では、これらの影響を考慮して補正したN値である補正Na値が用いられ、砂質土の場合、次式(5)により算出される。
【数5】
ここで、N:標準貫入試験から得られるN値、N1:有効上載圧100kN/m2相当に換算したN値、C1・C2:細粒分含有率によるN値の補正係数、D50:平均粒径である。
【0021】
発破による締固め工法は、発破によって人工的に生じさせた液状化後の再堆積を利用して地盤を締固めることから、締固めの効果にはある程度上限がある。そこで、本発明に係る設計方法は、後に詳述するように、これまでの実績から、Na値増加倍率(改良後Na値/改良前Na値)が1より大きくなるNa値が25以下の範囲である地盤に対して適用することが望ましい。
【0022】
〔概略設計〕
次に、概略設計では、地盤のNa値と体積ひずみとの関係から、発破に必要な火薬の量(単位装薬量P)を求めるとともに、発破に伴う周辺への振動・騒音の影響等を考慮して、発破条件の数値範囲を設定することを目的とする。
【0023】
概略設計の手順は、先ず前記調査・条件設定で設定した目標Na値、目標体積ひずみεVが得られるような単位装薬量Pを、これまでの実績データから推定し、発破条件(1孔当たりの装薬量P1、発破孔間隔S、1段当たりの装薬量Wおよび発破箇所からの距離D)を、振動・騒音の問題、最小土被りの問題、1孔内の火薬間の距離が小さくなる(死圧の問題:未反応の火薬が他の段の発破の衝撃圧を受け正常な爆ごうができなくなり、不発や点火の異常が生じる現象)などの問題を考慮しながら算定する。
【0024】
(単位装薬量Pの設定)
前記調査・条件設定で設定した目標Na値、目標体積ひずみεVが得られるような単位装薬量Pを推定するには、図2に示される発明者がこれまで蓄積した多数の測定データを基に作成された単位装薬量Pと体積ひずみεVの関係を利用することにより、容易に求めることができる。この図2は、単位装薬量Pで発破した時に発生した体積ひずみεVの実測値から、各種のNa値を有する地盤毎に一次式で近似したグラフであり、体積ひずみεVとは、改良後の沈下量を改良層厚Tで除した値を百分率(%)で示したものである。図2から明らかなように、体積ひずみεVの増加とともに、単位装薬量Pは比例的に増加し、Na値が小さい地盤(液状化し易い地盤)ほど、単位装薬量Pに対する体積ひずみの影響が大きくなる。単位装薬量Pと体積ひずみεVの関係式は、図2から、次式(6)のようにあらわすことができる。これによって目標体積ひずみεVに対する単位装薬量Pを簡易に求めることが可能となる。
【数6】
【0025】
ここで、C:Na値に対する係数で、その逆数(1/C)を単位装薬量係数と定義する。実績の結果、この単位装薬量係数(1/C)とNa値には、図3のような関係があり、この関係式は式(7)のようにあらわすことができる。この図および関係式も、前述のように、発明者の実績データに基づいて算出したものである。
【数7】
【0026】
(1孔当たりの装薬量P1、発破孔間隔Sの設定)
次に、前述のように得られた単位装薬量Pから、1孔当たりの装薬量P1および発破孔間隔Sを推定する。図4に示されるように、発破孔間隔Sを大きくとることは、全体の発破孔数が少なくなるため、発破孔の開孔作業が省略でき、施工上有利となるが、1孔当たりの装薬量を多くする必要があることから、後述する振動・騒音の問題、最小土被りの問題、1孔内の火薬間の距離が小さくなる問題が生じる。そこで、以下に述べるように、最適な装薬量および装薬段数、発破孔間隔の発破仕様を定める必要がある。
【0027】
1孔当たりの装薬量P1(kg/孔)は、発破孔を正方形千鳥配置とすると前記単位装薬量P(g/m3)を用いて式(8)の関係にある。
【数8】
【0028】
ここで、Reff:有効半径(m)で、発破孔間隔Sとは図4に示されるように、上式(8B)の関係にある。T:改良層厚、P:単位装薬量(g/m3)、S:発破孔間隔である。
【0029】
(装薬段数の設定)
次に、前記1孔当たりの装薬量P1に示される火薬量から、1発破孔に分散配設するための装薬段数(装薬段距離)を求める。この装薬段数を求める際に考慮すべき第1点目は、土被りである。この土被りとは、地表面から改良層厚Tの深さにかけて地盤中に埋め込まれる発破孔のうち、地表面から所定の深さ分だけ、地表面の土砂が発破によって飛散しないようにある一定以上の土砂の重量を確保するためのもので、地表面から第1段目の装薬段までの深さを言う。本発明者は、これまでの実績から、安全率を考慮した最小土被りを3.2mとすることを知見した。さらに、前記装薬段数を求める際に考慮すべき第2点目は、死圧の問題である。1孔内の装薬段間の離隔が小さいと、発破前の火薬が他の発破の衝撃圧を受け、不発や点火異常など正常な発破が行われない現象、いわゆる死圧を受ける問題が生じる。本発明者は、これまでの実績から、前記死圧の問題の解消するには、最小装薬段距離を2.0mとすることを知見した。前記最小土被りおよび最小装薬段距離の値以上となる土被りおよび装薬段距離を確保して、装薬段数(装薬段距離)を求める。
【0030】
(発破箇所からの距離D、1段当たりの装薬量Wの設定)
次に、発破箇所からの距離Dおよび1段当たりの装薬量Wの設定方法について説明する。発破箇所からの距離Dおよび1段当たりの装薬量Wは、周辺への振動・騒音の影響を考慮して設定しなければならない。振動・騒音の発生量は、1段当たりの装薬量Wおよび発破箇所からの距離Dから得られるスケールディスタンス(相似距離:D/W1/3)に基づいて、一般に次式(9)のように表すことができる。前記スケールディスタンスとは、相似距離とも呼ばれ、一般に爆発に伴う音や振動を検討する場合、発破箇所からの距離Dと爆薬の量Wが音や振動の大きさに関与する。これらの事象の相似性を考慮して距離Dを爆薬の量Wの平方根W1/2あるいは立方根W1/3で割った値D/W1/2、あるいはD/W1/3をスケールディスタンス又は相似距離といっている。
【数9】
【0031】
ここで、上式(9)のK、nは実験結果から得られる係数である。
【0032】
上式(9)のうち騒音の発生量について、これまでの本発明者の実績から、発破箇所からの距離Dが50m以上であれば、音源の距離減衰が十分に行われ、公害騒音レベル基準値の85dB以下を満足できることが知見された。
【0033】
一方、上式(9)のうち振動(鉛直成分)の発生量については、上式(9)の係数K、nを本発明者の実験結果から推定した。その結果、スケールディスタンスに対する鉛直成分の振動速度(cm/sec)は、図5に示されるような関係にあることが明らかとなり、各係数を代入した式(10)が得られた。
【数10】
【0034】
ここで、D:発破箇所(発破領域境界)からの水平距離(m)、W:1段当たりの装薬量(対象地点から最短距離にある発破孔内の各装薬箇所のうち最も多い1段当たりの装薬量:kg/段)である。
【0035】
前式(10)から、1段当たりの装薬量Wおよび発破箇所からの距離Dを求める方法は、管理目標とする目標振動速度VVを設定し、この目標振動速度VVを満足するような1段当たりの装薬量Wおよび発破箇所からの距離Dを求める。具体的に実施例に基づいて説明すると、表1に示されるように、各目標振動速度VVに対して、1段当たりの装薬量を1〜6kg/段と1kg/段毎変化させたとき、それぞれの発破箇所からの距離Dを式(10)から算出して、換算表を作成しておく。この表1から、設定した1段当たりの装薬量Wおよび目標振動速度VVに対応する発破箇所からの距離Dの目安となる値が、容易に得られるようになる。なお、前述の通り、騒音の発生量を考慮して、発破箇所からの距離Dは50m以上を確保するようにする。
【表1】
【0036】
〔詳細設計〕
詳細設計では、前記概略設計で設定した発破条件に対して、発破により生じる衝撃水圧から過剰間隙水圧を推定することにより、地盤改良の効果を予測し、最終的な発破条件を決定することを目的とする。
【0037】
本発明者は、これまでの実績から、発破で生じる過剰間隙水圧と発破の瞬間に生じるピーク水圧である衝撃水圧の累積値との間には相関性があり、この関係を用いて任意地点での過剰間隙水圧の発生量を予測できることが知見できた。
【0038】
前記衝撃水圧とは、段発の各発破時に生じる地盤中のピーク水圧値をあらわし、前記過剰間隙水圧とは、段発の各発破間に地盤中に残留する水圧値をあらわす。段発時に生じる衝撃水圧と過剰間隙水圧について、具体的に発生状況の一例として図6に示される衝撃水圧と過剰間隙水圧の時系列波形の実測値に基づいて説明すると、図6は、秒時差0.3秒、12段発破(6孔×1孔上下2段装薬)時の時系列波形の実測値で、図6(A)は、段発中に地盤中の水圧が最大となる値に縦軸をフィットさせたグラフで、図6(B)は図6(A)の0kPa付近の縦軸を拡大したグラフである。衝撃水圧は、図6(A)に示されるように、各段発毎に突出して発生する各段発時のピーク値である。また、過剰間隙水圧は、図6(B)の水圧実測線L1に対する1200点隣接平均線L2に示されるように、各段発間に地盤中に残留する水圧の平均値であり、発破を重ねる毎に順次蓄積されて、増加する傾向にある。
【0039】
(衝撃水圧の推定)
前記衝撃水圧の推定方法について、以下詳述する。図7は1段当たりの装薬量Wを変化させたとき、発破箇所からの距離Dとその地点の衝撃水圧Udの実測値を示したものであり、図8は地表(GL)からの衝撃水圧の測定深度を変化させたとき、スケールディスタンスD/W1/3とその地点の衝撃水圧Udの実測値を示したものである。図7から、衝撃水圧Udは、発破箇所からの距離Dの増加に伴い対数曲線的に減少することと、1段当たりの装薬量Wの増加に伴い増加する傾向にあることと、1段当たりの装薬量Wが変化しても発破箇所からの距離Dの増加に伴い減少する対数曲線の形状がほぼ同形状をなしていることとが明らかとなった。図8から、衝撃水圧Udは、深度が浅い地点(測定深度が浅い)ほど距離減衰が大きくなることから、上載圧(土被り圧)の影響を受けることが判った。さらに、本発明者のこれまでの実績から、衝撃水圧Udは、砂質土層においては地盤の粒度や透水性、間隙比、強度などの地盤条件には、ほとんど影響を受けないことが知見された。
【0040】
以上の結果を考慮して、衝撃水圧Udを有効上載圧σV’で除した値を衝撃水圧比Ud/σV’と定義して、スケールディスタンスD/W1/3に対する関係を両対数線図上にあらわすと、図9に示されるようになる。この図から、衝撃水圧比Ud/σV’とスケールディスタンスD/W1/3の関係式は、式(11)のように表すことができる。なお、衝撃水圧Udは水圧測定深度が異なるため、有効上載圧σV’で除した応力比で整理することとする。
【数11】
ここで、Ud:衝撃水圧(kPa)、σV’:有効上載圧(土被り圧)(kPa)、C・n:実験結果から求まる係数、D:発破箇所からの距離(m)、W:1段当たりの装薬量(kg)なお、図9の近似式からC=503.48、n=-1.7968が得られた。
【0041】
上式(11)から、1段当たりの装薬量W、距離(m)から定まるスケールディスタンス(D/W1/3)から、任意地点での衝撃水圧比Ud/σV’が推定できる。
【0042】
(過剰間隙水圧の推定)
次に、前記過剰間隙水圧の推定方法について、以下詳述する。先ず、過剰間隙水圧の発生メカニズムについて、図10に基づいて説明する。図10に示されるように、第1回目の段発によって前述の衝撃水圧Ud1が発生し、その後この衝撃波は急激に収束するが、第2回目の段発による衝撃水圧Ud2の発生直前でも過剰な間隙水圧Ur1が残留する。この残留した過剰な間隙水圧を過剰間隙水圧Urと定義する。前述のように、第1回目の衝撃水圧Ud1によって生じた過剰間隙水圧Ur1が残留しているところに、第2回目の衝撃水圧Ud2が加わることによって、この第2回目の衝撃水圧Ud2によって生じる過剰間隙水圧Ur2は、Ur1より大きくなり、さらに段発を繰り返す毎に、過剰間隙水圧Urは図10に示されるように大きくなる。
【0043】
ここで、前記過剰間隙水圧と衝撃水圧との関係について、図11に基づいて詳述する。図11は発明者のこれまでの実績データであり、横軸は各段発毎に発生する衝撃水圧Ud1、Ud2、…の累積値(累積衝撃水圧ΣUd)を有効上載圧σV’で除した値(累積衝撃水圧比ΣUd/σV’)で、縦軸は過剰間隙水圧Urを有効上載圧σV’で除した値(過剰間隙水圧比Ur/σV’)であり、これらのデータを直線で近似した。この近似直線の傾きは、その地盤において過剰間隙水圧の発生のし易さをあらわす係数であり、比例係数CNaと定義する。図11の関係を式にあらわすと、式(12)となる。なお、上記過剰間隙水圧Urは水圧測定深度が異なるため、有効上載圧σV’で除した応力比で整理することとする。
【数12】
発明者のこれまでの実績データから、各種地盤において、前記比例係数CNaと地盤条件をあらわす補正Na値との関係をグラフ化すると図12のようになる。このグラフから、指数関数による近似曲線で近似すると、前式(12)の比例係数CNaは、次のようになる。
【数13】
上式(13)から得られる地盤のNa値に対する比例係数CNaと、前述の累積衝撃水圧比ΣUd/σV’の算出結果とを式(12)に代入することにより、過剰間隙水圧比Ur/σV’が推定することできる。
【0044】
(地盤改良効果の予測)
次に、上述の過剰間隙水圧比Ur/σV’を用いた地盤改良効果の予測方法について、以下に詳述する。
【0045】
過去に実施した地盤調査において、地盤改良の前後で補正Na値を測定し、そのNa値増加倍率(=改良後のNa値/改良前のNa値)と、調査箇所の推定過剰間隙水圧比Ur/σV’(式(12)による計算値)との関係を得て、グラフ化したものを図13に示す。前記Na値増加倍率とは、地盤改良効果の程度を示す値で、このNa値増加倍率が高い程、地盤改良の効果が大きいということを意味する。図13において、推定過剰間隙水圧比Ur/σV’とNa値増加倍率とは、相関性を示すことから、上式(12)から過剰間隙水圧比Ur/σV’を算出すれば、図13からNa値増加倍率を求めることができ、地盤改良の効果が予測できるようになる。
【0046】
ここで、適切な地盤改良の効果があらわれる過剰間隙水圧比Ur/σV’の数値範囲について、図14に示される本発明者の実績データから検討する。図14は、本発明者の実績データに基づいて、改良前のNa値とNa値増加倍率との関係を、式(12)から得られる過剰間隙水圧比Ur/σV’の範囲毎に示したグラフである。この図14から、改良前のNa値が小さい(液状化し易い)地盤ほど、Na値増加倍率が高く(地盤改良の効果が高く)なるとともに、過剰間隙水圧比Ur/σV’の計算値が高い範囲にあることが判る。このことから、適切な地盤改良の効果があらわれる過剰間隙水圧比Ur/σV’の数値範囲について検討すると、図14中の測定結果の近似曲線に対して、Na値増加倍率が1を超える範囲、つまり地盤改良の効果があらわれる範囲は、改良前のNa値が約25以下の範囲であり、この範囲内に納まる過剰間隙水圧比Ur/σV’の数値範囲は、2以上であることが明らかとなった。以上の結果から、適切な地盤改良の効果を得るためには、各地点の過剰間隙水圧比Ur/σV’の数値範囲は、2以上であることが望ましい。
【0047】
また、周辺領域の沈下が問題となる場合、沈下量を考慮した過剰間隙水圧比Ur/σV’の数値範囲を、図15に示される本発明者の実績データから検討する。図15は、本発明者の実績データに基づいて、各地点の過剰間隙水圧比Ur/σV’と沈下量の各実測値の関係を示したグラフである。この図15から、過剰間隙水圧比Ur/σV’が0.5を超える地点では、地盤の沈下量が急激に増加する傾向にあることが明らかとなった。このことから、周辺領域の沈下が問題となる場合には、周辺領域の過剰間隙水圧比Ur/σV’が0.5以下となるように発破仕様を設定することにより、周辺の沈下を抑えることが可能となる。
【0048】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、補正Na値を指標に地盤改良効果を予測したが、前記指標値は液状化のし易さを示す地盤定数であればよい。液状化判定に用いられる他の地盤定数としては、例えば”港湾の施設の技術上の基準・同解説”(日本港湾協会 平成11年)に規定される等価N値がある。これは、下式(14)によって求められる定数である。なお、同等価N値は、同基準・同解説に記載されるように、細粒分による補正が行われる。
【数14】
ここで、N:土層のN値、σV':土層の有効上載圧(kN/m2)である。
【0049】
この場合には、単位装薬量Pを算出する際の単位装薬量係数(1/C)(上式(7)に相当する)は、下式(15)により求めるようにする。
【数15】
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る設計方法のフロー図である。
【図2】単位装薬量Pと体積ひずみεVの関係を示すグラフである。
【図3】単位装薬量係数(1/C)とNa値の関係を示すグラフである。
【図4】発破孔の配列例を示す地盤上面図である。
【図5】スケールディスタンスD/W1/3と鉛直成分の振動速度の関係を示すグラフである。
【図6】段発時に発生する地盤中の水圧変化をあらわす時系列波形で、(A)は衝撃水圧を、(B)は過剰間隙水圧を示すグラフである。
【図7】発破箇所からの距離Dとその地点の衝撃水圧Udを示すグラフである。
【図8】地表(GL)からの衝撃水圧の測定深度を変化させたとき、スケールディスタンスD/W1/3とその地点の衝撃水圧Udの関係を示すグラフである。
【図9】スケールディスタンスD/W1/3と衝撃水圧比Ud/σV’の関係を示すグラフである。
【図10】過剰間隙水圧の発生メカニズムを示す図である。
【図11】累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と過剰間隙水圧比Ur/σV’の関係を示すグラフである。
【図12】Na値と比例係数CNaの関係を示すグラフである。
【図13】推定過剰間隙水圧比Ur/σV’(式(12)による計算値)とNa値増加倍率(=改良後のNa値/改良前のNa値)の関係を示すグラフである。
【図14】改良前のNa値とNa値増加倍率の関係を示すグラフである。
【図15】過剰間隙水圧比Ur/σV’と沈下量の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1…発破孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、発破により地盤改良を行う発破締固め工法において、その改良効果を予測するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発破による緩い砂地盤の締固めに関しては、従来より、ヨーロッパや北米を中心にして数々の施工例が報告されている。本出願人等は、かかる発破による締固め工法を、我が国において例えば埋立て地や造成地など数々の軟弱地盤に適用し、その有効性について確認を行ってきた。これらの結果に基づいて、間隙水圧を短時間で消散させる方法(下記特許文献1)、発破によって発生する地盤振動を予測する方法(下記特許文献2)、発破による地盤締固め工法と他工法とを併用することで地盤を均質に改良する方法(下記特許文献3)などについて提案を行った。
【特許文献1】特開平11−117283号公報
【特許文献2】特開平11−181753号公報
【特許文献3】特開2002−47638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これまでは、発破の重要な要素となる単位装薬量(単位体積当たりの装薬量)を設定するに際し、地表面沈下量の実測値から推定される体積ひずみと、実際に使用した単位装薬量の実績データから経験的に必要火薬量を推定するものであった。従って、地盤条件や発破段数の影響などは考慮されておらず、前記単位装薬量の決定方法も体系化されたものではなかったため、発破の効果が発揮され易い地盤では、小さな単位装薬量で大きなひずみが生じてしまうなどの問題があった。
【0004】
具体的に、改良効果に影響を及ぼす地盤条件としては、N値、細粒分含有率、上載圧、改良対象層厚などがあり、また、改良効果に影響を及ぼす発破条件としては、1段当たりの装薬量、発破孔間隔、発破段数などが考えられるが、従来の方法では、前記地盤条件は考慮されておらず、かつ発破仕様(1段当たりの装薬量、発破孔間隔、発破段数、装薬火薬間の離隔)についての評価方法が体系化されていなかった。
【0005】
さらに、従来より発破により生じる衝撃水圧や間隙水圧は、地盤改良の効果や周辺への振動・騒音に影響を与えることが知られていたが、定量的な評価方法は確立していなかった。
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、地盤条件や発破仕様条件を考慮して地盤改良効果を予測することにより、精度の良い発破仕様を設定可能とした発破締固めによる改良効果の予測方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、必要単位装薬量から装薬量、段数、発破孔間隔、装薬深度等の発破仕様を設定する第1ステップと、
上記発破仕様に基づき、任意点で生じる衝撃水圧比Ud/σV’の累積値ΣUd/σV’を求める第2ステップと、
事前に、液状化の発生し易さ程度の指標値となる改良前の地盤定数と、累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と過剰間隙水圧比Ur/σV’との関係を示す勾配を直線近似で求めた比例係数CNaとの相関を得ておき、上記第2ステップで求めた累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と、前記改良前の地盤定数から求めた比例係数CNaとから過剰間隙水圧比Ur/σV’を求める第3ステップと、
事前に、地盤定数増加率(=改良後の地盤定数/改良前の地盤定数)と過剰間隙水圧比Ur/σV’との相関を得ておき、上記第3ステップで求めた過剰間隙水圧比Ur/σV’から地盤定数増加率を算出することにより発破締固めによる改良効果を予測することを特徴とする発破締固めによる改良効果の予測方法が提供される。
【0008】
請求項2に係る本発明として、必要単位装薬量から装薬量、段数、発破孔間隔、装薬深度等の発破仕様を設定する第1ステップと、
任意点で生じる衝撃水圧Udは、その地点での有効上載圧σV’、火薬量W、発破箇所までの距離Dで決定されるとの仮定の下、下式(11)によって衝撃水圧比Ud/σV’を算出するとともに、各段発時の衝撃水圧比Ud/σV’の累積値ΣUd/σV’を求める第2ステップと、
【数11】
ここで、Ud:衝撃水圧(kPa)、σV’:有効上載圧(土被り圧)(kPa)、C、n:実験結果から求まる係数、D:発破箇所からの距離(m)、W:1段当たりの装薬量(kg)である。
事前に、下式(5A)〜(5D)(道路橋示方書に準拠)に基づき求めた補正Na値と、累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と過剰間隙水圧比Ur/σV’との関係を示す勾配を直線近似で求めた比例係数CNaとの相関を得ておき、上記第2ステップで求めた累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と、前記比例係数CNaより、下式(12)に基づき過剰間隙水圧比Ur/σV’を求める第3ステップと、
【数5】
ここで、N:標準貫入試験から得られるN値、N1:有効上載圧100kN/m2相当に換算したN値、C1およびC2:細粒分含有率によるN値の補正係数、D50:平均粒径である。
【数12】
事前に、補正Na増加率(=改良後の補正Na値/改良前の補正Na値)と過剰間隙水圧比Ur/σV’との相関を得ておき、上記第3ステップで求めた過剰間隙水圧比Ur/σV’から補正Na増加率を算出することにより発破締固めによる改良効果を予測することを特徴とする発破締固めによる改良効果の予測方法が提供される。
【0009】
請求項3に係る本発明として、地盤改良の対象となる領域の前記過剰間隙水圧比Ur/σV’は2以上となるように前記発破仕様を設定する請求項1〜2いずれかに記載の発破を用いた発破締固めによる改良効果の予測方法が提供される。
【0010】
請求項4に係る本発明として、地盤改良の対象領域周辺の過剰間隙水圧比Ur/σV’は0.5以下となるように前記発破仕様を設定する請求項1〜3いずれかに記載の発破締固めによる改良効果の予測方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上詳説のとおり本発明によれば、地盤条件や発破仕様条件に基づいて、過剰間隙水圧を推測することにより、地盤改良効果を予測できるようになるため、精度の良い発破仕様が設定可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0013】
本発明に係る発破締固めによる改良効果の予測方法は、発破による締固め工法において、実測した地盤条件に対して、所定の地盤改良の効果が発揮されるように発破条件を設定するためのものであって、図1の設計フローに示されるように、設計仕様を設定するための調査・条件設定と、周辺地盤への振動・騒音の影響などを考慮しながら、必要単位装薬量から装薬量、段数、発破孔間隔、装薬深度等の発破仕様を決定する発破仕様の設定手順(以下、概略設計という。)と、地盤内の累積衝撃水圧比、過剰間隙水圧比を求め、発破締固めの改良効果を予測する改良効果の予測手順(以下、詳細設計という。)とから構成される。以下、各項目毎に詳述する。
【0014】
〔調査・条件設定〕
調査・条件設定では、地盤のボーリング調査を行って地盤の特性などを調査するとともに、地盤改良の目標値となる目標体積ひずみεVおよび目標Na値を設定することを目的とする。
【0015】
手順は、次述の現地調査および地盤調査による地盤の物性値などの結果に基づいて、液状化判定を行った後、改良目標値の設定を行う。
【0016】
前記現地調査では、施工現場周辺の用途や地盤構造などを調査し、前記地盤調査では、地盤のボーリング調査を行って現状地盤の物性(N値、平均粒径D50、細粒分含有率FC、地下水位、繰返し三軸強度比RL)を実測する。
【0017】
前記液状化判定では、前述の地盤調査で得られたN値と、繰返し三軸強度比RLとから、液状化の起こりやすさの判定を行い、所定の水平震度に対して液状化抵抗率(安全率)FL>1となる目標Na値を算出する。
【0018】
前記改良目標値の設定では、前記地盤調査で得られたN値と前記液状化判定で算出した目標N値とから、以下の手順で目標体積ひずみεVおよび目標Na値を算出する。
(目標体積ひずみεVの算出)
前記目標体積ひずみεVの算出手順は、前記地盤調査で得られたN値と前記液状化判定で算出した目標N値とから、地盤の相対密度Drを次式(1)のマイヤホフの提案式により求め、その後間隙比eを式(2)から算出する。
【数1】
ここで、Dr:相対密度(%)、σV’:有効上載圧(kN/m2)である。
【数2】
ここで、emax:最大間隙比、emin:最小間隙比である。
【0019】
前記最大間隙比、最小間隙比が既知でない場合は、次式(3A)、(3B)から推定する。
【数3】
目標体積ひずみεVは、式(4)によって表される。
【数4】
ここで、e0:改良前(事前)の間隙比、e:改良目標(事後)の間隙比である。
【0020】
(目標Na値の算出)
次に、前記目標Na値の算出手順は、次のとおりである。液状化のし易さは、N値、細粒分含有率、土被り圧に影響を受けることが知られており、道路橋示方書の液状化判定の方法では、これらの影響を考慮して補正したN値である補正Na値が用いられ、砂質土の場合、次式(5)により算出される。
【数5】
ここで、N:標準貫入試験から得られるN値、N1:有効上載圧100kN/m2相当に換算したN値、C1・C2:細粒分含有率によるN値の補正係数、D50:平均粒径である。
【0021】
発破による締固め工法は、発破によって人工的に生じさせた液状化後の再堆積を利用して地盤を締固めることから、締固めの効果にはある程度上限がある。そこで、本発明に係る設計方法は、後に詳述するように、これまでの実績から、Na値増加倍率(改良後Na値/改良前Na値)が1より大きくなるNa値が25以下の範囲である地盤に対して適用することが望ましい。
【0022】
〔概略設計〕
次に、概略設計では、地盤のNa値と体積ひずみとの関係から、発破に必要な火薬の量(単位装薬量P)を求めるとともに、発破に伴う周辺への振動・騒音の影響等を考慮して、発破条件の数値範囲を設定することを目的とする。
【0023】
概略設計の手順は、先ず前記調査・条件設定で設定した目標Na値、目標体積ひずみεVが得られるような単位装薬量Pを、これまでの実績データから推定し、発破条件(1孔当たりの装薬量P1、発破孔間隔S、1段当たりの装薬量Wおよび発破箇所からの距離D)を、振動・騒音の問題、最小土被りの問題、1孔内の火薬間の距離が小さくなる(死圧の問題:未反応の火薬が他の段の発破の衝撃圧を受け正常な爆ごうができなくなり、不発や点火の異常が生じる現象)などの問題を考慮しながら算定する。
【0024】
(単位装薬量Pの設定)
前記調査・条件設定で設定した目標Na値、目標体積ひずみεVが得られるような単位装薬量Pを推定するには、図2に示される発明者がこれまで蓄積した多数の測定データを基に作成された単位装薬量Pと体積ひずみεVの関係を利用することにより、容易に求めることができる。この図2は、単位装薬量Pで発破した時に発生した体積ひずみεVの実測値から、各種のNa値を有する地盤毎に一次式で近似したグラフであり、体積ひずみεVとは、改良後の沈下量を改良層厚Tで除した値を百分率(%)で示したものである。図2から明らかなように、体積ひずみεVの増加とともに、単位装薬量Pは比例的に増加し、Na値が小さい地盤(液状化し易い地盤)ほど、単位装薬量Pに対する体積ひずみの影響が大きくなる。単位装薬量Pと体積ひずみεVの関係式は、図2から、次式(6)のようにあらわすことができる。これによって目標体積ひずみεVに対する単位装薬量Pを簡易に求めることが可能となる。
【数6】
【0025】
ここで、C:Na値に対する係数で、その逆数(1/C)を単位装薬量係数と定義する。実績の結果、この単位装薬量係数(1/C)とNa値には、図3のような関係があり、この関係式は式(7)のようにあらわすことができる。この図および関係式も、前述のように、発明者の実績データに基づいて算出したものである。
【数7】
【0026】
(1孔当たりの装薬量P1、発破孔間隔Sの設定)
次に、前述のように得られた単位装薬量Pから、1孔当たりの装薬量P1および発破孔間隔Sを推定する。図4に示されるように、発破孔間隔Sを大きくとることは、全体の発破孔数が少なくなるため、発破孔の開孔作業が省略でき、施工上有利となるが、1孔当たりの装薬量を多くする必要があることから、後述する振動・騒音の問題、最小土被りの問題、1孔内の火薬間の距離が小さくなる問題が生じる。そこで、以下に述べるように、最適な装薬量および装薬段数、発破孔間隔の発破仕様を定める必要がある。
【0027】
1孔当たりの装薬量P1(kg/孔)は、発破孔を正方形千鳥配置とすると前記単位装薬量P(g/m3)を用いて式(8)の関係にある。
【数8】
【0028】
ここで、Reff:有効半径(m)で、発破孔間隔Sとは図4に示されるように、上式(8B)の関係にある。T:改良層厚、P:単位装薬量(g/m3)、S:発破孔間隔である。
【0029】
(装薬段数の設定)
次に、前記1孔当たりの装薬量P1に示される火薬量から、1発破孔に分散配設するための装薬段数(装薬段距離)を求める。この装薬段数を求める際に考慮すべき第1点目は、土被りである。この土被りとは、地表面から改良層厚Tの深さにかけて地盤中に埋め込まれる発破孔のうち、地表面から所定の深さ分だけ、地表面の土砂が発破によって飛散しないようにある一定以上の土砂の重量を確保するためのもので、地表面から第1段目の装薬段までの深さを言う。本発明者は、これまでの実績から、安全率を考慮した最小土被りを3.2mとすることを知見した。さらに、前記装薬段数を求める際に考慮すべき第2点目は、死圧の問題である。1孔内の装薬段間の離隔が小さいと、発破前の火薬が他の発破の衝撃圧を受け、不発や点火異常など正常な発破が行われない現象、いわゆる死圧を受ける問題が生じる。本発明者は、これまでの実績から、前記死圧の問題の解消するには、最小装薬段距離を2.0mとすることを知見した。前記最小土被りおよび最小装薬段距離の値以上となる土被りおよび装薬段距離を確保して、装薬段数(装薬段距離)を求める。
【0030】
(発破箇所からの距離D、1段当たりの装薬量Wの設定)
次に、発破箇所からの距離Dおよび1段当たりの装薬量Wの設定方法について説明する。発破箇所からの距離Dおよび1段当たりの装薬量Wは、周辺への振動・騒音の影響を考慮して設定しなければならない。振動・騒音の発生量は、1段当たりの装薬量Wおよび発破箇所からの距離Dから得られるスケールディスタンス(相似距離:D/W1/3)に基づいて、一般に次式(9)のように表すことができる。前記スケールディスタンスとは、相似距離とも呼ばれ、一般に爆発に伴う音や振動を検討する場合、発破箇所からの距離Dと爆薬の量Wが音や振動の大きさに関与する。これらの事象の相似性を考慮して距離Dを爆薬の量Wの平方根W1/2あるいは立方根W1/3で割った値D/W1/2、あるいはD/W1/3をスケールディスタンス又は相似距離といっている。
【数9】
【0031】
ここで、上式(9)のK、nは実験結果から得られる係数である。
【0032】
上式(9)のうち騒音の発生量について、これまでの本発明者の実績から、発破箇所からの距離Dが50m以上であれば、音源の距離減衰が十分に行われ、公害騒音レベル基準値の85dB以下を満足できることが知見された。
【0033】
一方、上式(9)のうち振動(鉛直成分)の発生量については、上式(9)の係数K、nを本発明者の実験結果から推定した。その結果、スケールディスタンスに対する鉛直成分の振動速度(cm/sec)は、図5に示されるような関係にあることが明らかとなり、各係数を代入した式(10)が得られた。
【数10】
【0034】
ここで、D:発破箇所(発破領域境界)からの水平距離(m)、W:1段当たりの装薬量(対象地点から最短距離にある発破孔内の各装薬箇所のうち最も多い1段当たりの装薬量:kg/段)である。
【0035】
前式(10)から、1段当たりの装薬量Wおよび発破箇所からの距離Dを求める方法は、管理目標とする目標振動速度VVを設定し、この目標振動速度VVを満足するような1段当たりの装薬量Wおよび発破箇所からの距離Dを求める。具体的に実施例に基づいて説明すると、表1に示されるように、各目標振動速度VVに対して、1段当たりの装薬量を1〜6kg/段と1kg/段毎変化させたとき、それぞれの発破箇所からの距離Dを式(10)から算出して、換算表を作成しておく。この表1から、設定した1段当たりの装薬量Wおよび目標振動速度VVに対応する発破箇所からの距離Dの目安となる値が、容易に得られるようになる。なお、前述の通り、騒音の発生量を考慮して、発破箇所からの距離Dは50m以上を確保するようにする。
【表1】
【0036】
〔詳細設計〕
詳細設計では、前記概略設計で設定した発破条件に対して、発破により生じる衝撃水圧から過剰間隙水圧を推定することにより、地盤改良の効果を予測し、最終的な発破条件を決定することを目的とする。
【0037】
本発明者は、これまでの実績から、発破で生じる過剰間隙水圧と発破の瞬間に生じるピーク水圧である衝撃水圧の累積値との間には相関性があり、この関係を用いて任意地点での過剰間隙水圧の発生量を予測できることが知見できた。
【0038】
前記衝撃水圧とは、段発の各発破時に生じる地盤中のピーク水圧値をあらわし、前記過剰間隙水圧とは、段発の各発破間に地盤中に残留する水圧値をあらわす。段発時に生じる衝撃水圧と過剰間隙水圧について、具体的に発生状況の一例として図6に示される衝撃水圧と過剰間隙水圧の時系列波形の実測値に基づいて説明すると、図6は、秒時差0.3秒、12段発破(6孔×1孔上下2段装薬)時の時系列波形の実測値で、図6(A)は、段発中に地盤中の水圧が最大となる値に縦軸をフィットさせたグラフで、図6(B)は図6(A)の0kPa付近の縦軸を拡大したグラフである。衝撃水圧は、図6(A)に示されるように、各段発毎に突出して発生する各段発時のピーク値である。また、過剰間隙水圧は、図6(B)の水圧実測線L1に対する1200点隣接平均線L2に示されるように、各段発間に地盤中に残留する水圧の平均値であり、発破を重ねる毎に順次蓄積されて、増加する傾向にある。
【0039】
(衝撃水圧の推定)
前記衝撃水圧の推定方法について、以下詳述する。図7は1段当たりの装薬量Wを変化させたとき、発破箇所からの距離Dとその地点の衝撃水圧Udの実測値を示したものであり、図8は地表(GL)からの衝撃水圧の測定深度を変化させたとき、スケールディスタンスD/W1/3とその地点の衝撃水圧Udの実測値を示したものである。図7から、衝撃水圧Udは、発破箇所からの距離Dの増加に伴い対数曲線的に減少することと、1段当たりの装薬量Wの増加に伴い増加する傾向にあることと、1段当たりの装薬量Wが変化しても発破箇所からの距離Dの増加に伴い減少する対数曲線の形状がほぼ同形状をなしていることとが明らかとなった。図8から、衝撃水圧Udは、深度が浅い地点(測定深度が浅い)ほど距離減衰が大きくなることから、上載圧(土被り圧)の影響を受けることが判った。さらに、本発明者のこれまでの実績から、衝撃水圧Udは、砂質土層においては地盤の粒度や透水性、間隙比、強度などの地盤条件には、ほとんど影響を受けないことが知見された。
【0040】
以上の結果を考慮して、衝撃水圧Udを有効上載圧σV’で除した値を衝撃水圧比Ud/σV’と定義して、スケールディスタンスD/W1/3に対する関係を両対数線図上にあらわすと、図9に示されるようになる。この図から、衝撃水圧比Ud/σV’とスケールディスタンスD/W1/3の関係式は、式(11)のように表すことができる。なお、衝撃水圧Udは水圧測定深度が異なるため、有効上載圧σV’で除した応力比で整理することとする。
【数11】
ここで、Ud:衝撃水圧(kPa)、σV’:有効上載圧(土被り圧)(kPa)、C・n:実験結果から求まる係数、D:発破箇所からの距離(m)、W:1段当たりの装薬量(kg)なお、図9の近似式からC=503.48、n=-1.7968が得られた。
【0041】
上式(11)から、1段当たりの装薬量W、距離(m)から定まるスケールディスタンス(D/W1/3)から、任意地点での衝撃水圧比Ud/σV’が推定できる。
【0042】
(過剰間隙水圧の推定)
次に、前記過剰間隙水圧の推定方法について、以下詳述する。先ず、過剰間隙水圧の発生メカニズムについて、図10に基づいて説明する。図10に示されるように、第1回目の段発によって前述の衝撃水圧Ud1が発生し、その後この衝撃波は急激に収束するが、第2回目の段発による衝撃水圧Ud2の発生直前でも過剰な間隙水圧Ur1が残留する。この残留した過剰な間隙水圧を過剰間隙水圧Urと定義する。前述のように、第1回目の衝撃水圧Ud1によって生じた過剰間隙水圧Ur1が残留しているところに、第2回目の衝撃水圧Ud2が加わることによって、この第2回目の衝撃水圧Ud2によって生じる過剰間隙水圧Ur2は、Ur1より大きくなり、さらに段発を繰り返す毎に、過剰間隙水圧Urは図10に示されるように大きくなる。
【0043】
ここで、前記過剰間隙水圧と衝撃水圧との関係について、図11に基づいて詳述する。図11は発明者のこれまでの実績データであり、横軸は各段発毎に発生する衝撃水圧Ud1、Ud2、…の累積値(累積衝撃水圧ΣUd)を有効上載圧σV’で除した値(累積衝撃水圧比ΣUd/σV’)で、縦軸は過剰間隙水圧Urを有効上載圧σV’で除した値(過剰間隙水圧比Ur/σV’)であり、これらのデータを直線で近似した。この近似直線の傾きは、その地盤において過剰間隙水圧の発生のし易さをあらわす係数であり、比例係数CNaと定義する。図11の関係を式にあらわすと、式(12)となる。なお、上記過剰間隙水圧Urは水圧測定深度が異なるため、有効上載圧σV’で除した応力比で整理することとする。
【数12】
発明者のこれまでの実績データから、各種地盤において、前記比例係数CNaと地盤条件をあらわす補正Na値との関係をグラフ化すると図12のようになる。このグラフから、指数関数による近似曲線で近似すると、前式(12)の比例係数CNaは、次のようになる。
【数13】
上式(13)から得られる地盤のNa値に対する比例係数CNaと、前述の累積衝撃水圧比ΣUd/σV’の算出結果とを式(12)に代入することにより、過剰間隙水圧比Ur/σV’が推定することできる。
【0044】
(地盤改良効果の予測)
次に、上述の過剰間隙水圧比Ur/σV’を用いた地盤改良効果の予測方法について、以下に詳述する。
【0045】
過去に実施した地盤調査において、地盤改良の前後で補正Na値を測定し、そのNa値増加倍率(=改良後のNa値/改良前のNa値)と、調査箇所の推定過剰間隙水圧比Ur/σV’(式(12)による計算値)との関係を得て、グラフ化したものを図13に示す。前記Na値増加倍率とは、地盤改良効果の程度を示す値で、このNa値増加倍率が高い程、地盤改良の効果が大きいということを意味する。図13において、推定過剰間隙水圧比Ur/σV’とNa値増加倍率とは、相関性を示すことから、上式(12)から過剰間隙水圧比Ur/σV’を算出すれば、図13からNa値増加倍率を求めることができ、地盤改良の効果が予測できるようになる。
【0046】
ここで、適切な地盤改良の効果があらわれる過剰間隙水圧比Ur/σV’の数値範囲について、図14に示される本発明者の実績データから検討する。図14は、本発明者の実績データに基づいて、改良前のNa値とNa値増加倍率との関係を、式(12)から得られる過剰間隙水圧比Ur/σV’の範囲毎に示したグラフである。この図14から、改良前のNa値が小さい(液状化し易い)地盤ほど、Na値増加倍率が高く(地盤改良の効果が高く)なるとともに、過剰間隙水圧比Ur/σV’の計算値が高い範囲にあることが判る。このことから、適切な地盤改良の効果があらわれる過剰間隙水圧比Ur/σV’の数値範囲について検討すると、図14中の測定結果の近似曲線に対して、Na値増加倍率が1を超える範囲、つまり地盤改良の効果があらわれる範囲は、改良前のNa値が約25以下の範囲であり、この範囲内に納まる過剰間隙水圧比Ur/σV’の数値範囲は、2以上であることが明らかとなった。以上の結果から、適切な地盤改良の効果を得るためには、各地点の過剰間隙水圧比Ur/σV’の数値範囲は、2以上であることが望ましい。
【0047】
また、周辺領域の沈下が問題となる場合、沈下量を考慮した過剰間隙水圧比Ur/σV’の数値範囲を、図15に示される本発明者の実績データから検討する。図15は、本発明者の実績データに基づいて、各地点の過剰間隙水圧比Ur/σV’と沈下量の各実測値の関係を示したグラフである。この図15から、過剰間隙水圧比Ur/σV’が0.5を超える地点では、地盤の沈下量が急激に増加する傾向にあることが明らかとなった。このことから、周辺領域の沈下が問題となる場合には、周辺領域の過剰間隙水圧比Ur/σV’が0.5以下となるように発破仕様を設定することにより、周辺の沈下を抑えることが可能となる。
【0048】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、補正Na値を指標に地盤改良効果を予測したが、前記指標値は液状化のし易さを示す地盤定数であればよい。液状化判定に用いられる他の地盤定数としては、例えば”港湾の施設の技術上の基準・同解説”(日本港湾協会 平成11年)に規定される等価N値がある。これは、下式(14)によって求められる定数である。なお、同等価N値は、同基準・同解説に記載されるように、細粒分による補正が行われる。
【数14】
ここで、N:土層のN値、σV':土層の有効上載圧(kN/m2)である。
【0049】
この場合には、単位装薬量Pを算出する際の単位装薬量係数(1/C)(上式(7)に相当する)は、下式(15)により求めるようにする。
【数15】
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る設計方法のフロー図である。
【図2】単位装薬量Pと体積ひずみεVの関係を示すグラフである。
【図3】単位装薬量係数(1/C)とNa値の関係を示すグラフである。
【図4】発破孔の配列例を示す地盤上面図である。
【図5】スケールディスタンスD/W1/3と鉛直成分の振動速度の関係を示すグラフである。
【図6】段発時に発生する地盤中の水圧変化をあらわす時系列波形で、(A)は衝撃水圧を、(B)は過剰間隙水圧を示すグラフである。
【図7】発破箇所からの距離Dとその地点の衝撃水圧Udを示すグラフである。
【図8】地表(GL)からの衝撃水圧の測定深度を変化させたとき、スケールディスタンスD/W1/3とその地点の衝撃水圧Udの関係を示すグラフである。
【図9】スケールディスタンスD/W1/3と衝撃水圧比Ud/σV’の関係を示すグラフである。
【図10】過剰間隙水圧の発生メカニズムを示す図である。
【図11】累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と過剰間隙水圧比Ur/σV’の関係を示すグラフである。
【図12】Na値と比例係数CNaの関係を示すグラフである。
【図13】推定過剰間隙水圧比Ur/σV’(式(12)による計算値)とNa値増加倍率(=改良後のNa値/改良前のNa値)の関係を示すグラフである。
【図14】改良前のNa値とNa値増加倍率の関係を示すグラフである。
【図15】過剰間隙水圧比Ur/σV’と沈下量の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1…発破孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要単位装薬量から装薬量、段数、発破孔間隔、装薬深度等の発破仕様を設定する第1ステップと、
上記発破仕様に基づき、任意点で生じる衝撃水圧比Ud/σV’の累積値ΣUd/σV’を求める第2ステップと、
事前に、液状化の発生し易さ程度の指標値となる改良前の地盤定数と、累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と過剰間隙水圧比Ur/σV’との関係を示す勾配を直線近似で求めた比例係数CNaとの相関を得ておき、上記第2ステップで求めた累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と、前記改良前の地盤定数から求めた比例係数CNaとから過剰間隙水圧比Ur/σV’を求める第3ステップと、
事前に、地盤定数増加率(=改良後の地盤定数/改良前の地盤定数)と過剰間隙水圧比Ur/σV’との相関を得ておき、上記第3ステップで求めた過剰間隙水圧比Ur/σV’から地盤定数増加率を算出することにより発破締固めによる改良効果を予測することを特徴とする発破締固めによる改良効果の予測方法。
【請求項2】
必要単位装薬量から装薬量、段数、発破孔間隔、装薬深度等の発破仕様を設定する第1ステップと、
任意点で生じる衝撃水圧Udは、その地点での有効上載圧σV’、火薬量W、発破箇所までの距離Dで決定されるとの仮定の下、下式(11)によって衝撃水圧比Ud/σV’を算出するとともに、各段発時の衝撃水圧比Ud/σV’の累積値ΣUd/σV’を求める第2ステップと、
【数11】
ここで、Ud:衝撃水圧(kPa)、σV’:有効上載圧(土被り圧)(kPa)、C、n:実験結果から求まる係数、D:発破箇所からの距離(m)、W:1段当たりの装薬量(kg)である。
事前に、下式(5A)〜(5D)(道路橋示方書に準拠)に基づき求めた補正Na値と、累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と過剰間隙水圧比Ur/σV’との関係を示す勾配を直線近似で求めた比例係数CNaとの相関を得ておき、上記第2ステップで求めた累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と、前記比例係数CNaより、下式(12)に基づき過剰間隙水圧比Ur/σV’を求める第3ステップと、
【数5】
ここで、N:標準貫入試験から得られるN値、N1:有効上載圧100kN/m2相当に換算したN値、C1およびC2:細粒分含有率によるN値の補正係数、D50:平均粒径である。
【数12】
事前に、補正Na増加率(=改良後の補正Na値/改良前の補正Na値)と過剰間隙水圧比Ur/σV’との相関を得ておき、上記第3ステップで求めた過剰間隙水圧比Ur/σV’から補正Na増加率を算出することにより発破締固めによる改良効果を予測することを特徴とする発破締固めによる改良効果の予測方法。
【請求項3】
地盤改良の対象となる領域の前記過剰間隙水圧比Ur/σV’は2以上となるように前記発破仕様を設定する請求項1〜2いずれかに記載の発破を用いた発破締固めによる改良効果の予測方法。
【請求項4】
地盤改良の対象領域周辺の過剰間隙水圧比Ur/σV’は0.5以下となるように前記発破仕様を設定する請求項1〜3いずれかに記載の発破締固めによる改良効果の予測方法。
【請求項1】
必要単位装薬量から装薬量、段数、発破孔間隔、装薬深度等の発破仕様を設定する第1ステップと、
上記発破仕様に基づき、任意点で生じる衝撃水圧比Ud/σV’の累積値ΣUd/σV’を求める第2ステップと、
事前に、液状化の発生し易さ程度の指標値となる改良前の地盤定数と、累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と過剰間隙水圧比Ur/σV’との関係を示す勾配を直線近似で求めた比例係数CNaとの相関を得ておき、上記第2ステップで求めた累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と、前記改良前の地盤定数から求めた比例係数CNaとから過剰間隙水圧比Ur/σV’を求める第3ステップと、
事前に、地盤定数増加率(=改良後の地盤定数/改良前の地盤定数)と過剰間隙水圧比Ur/σV’との相関を得ておき、上記第3ステップで求めた過剰間隙水圧比Ur/σV’から地盤定数増加率を算出することにより発破締固めによる改良効果を予測することを特徴とする発破締固めによる改良効果の予測方法。
【請求項2】
必要単位装薬量から装薬量、段数、発破孔間隔、装薬深度等の発破仕様を設定する第1ステップと、
任意点で生じる衝撃水圧Udは、その地点での有効上載圧σV’、火薬量W、発破箇所までの距離Dで決定されるとの仮定の下、下式(11)によって衝撃水圧比Ud/σV’を算出するとともに、各段発時の衝撃水圧比Ud/σV’の累積値ΣUd/σV’を求める第2ステップと、
【数11】
ここで、Ud:衝撃水圧(kPa)、σV’:有効上載圧(土被り圧)(kPa)、C、n:実験結果から求まる係数、D:発破箇所からの距離(m)、W:1段当たりの装薬量(kg)である。
事前に、下式(5A)〜(5D)(道路橋示方書に準拠)に基づき求めた補正Na値と、累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と過剰間隙水圧比Ur/σV’との関係を示す勾配を直線近似で求めた比例係数CNaとの相関を得ておき、上記第2ステップで求めた累積衝撃水圧比ΣUd/σV’と、前記比例係数CNaより、下式(12)に基づき過剰間隙水圧比Ur/σV’を求める第3ステップと、
【数5】
ここで、N:標準貫入試験から得られるN値、N1:有効上載圧100kN/m2相当に換算したN値、C1およびC2:細粒分含有率によるN値の補正係数、D50:平均粒径である。
【数12】
事前に、補正Na増加率(=改良後の補正Na値/改良前の補正Na値)と過剰間隙水圧比Ur/σV’との相関を得ておき、上記第3ステップで求めた過剰間隙水圧比Ur/σV’から補正Na増加率を算出することにより発破締固めによる改良効果を予測することを特徴とする発破締固めによる改良効果の予測方法。
【請求項3】
地盤改良の対象となる領域の前記過剰間隙水圧比Ur/σV’は2以上となるように前記発破仕様を設定する請求項1〜2いずれかに記載の発破を用いた発破締固めによる改良効果の予測方法。
【請求項4】
地盤改良の対象領域周辺の過剰間隙水圧比Ur/σV’は0.5以下となるように前記発破仕様を設定する請求項1〜3いずれかに記載の発破締固めによる改良効果の予測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−132115(P2007−132115A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327333(P2005−327333)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年6月1日 佐藤工業株式会社中央技術研究所発行の「技術研究所報 2004 No.30」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年6月10日 社団法人地盤工学会中部支部発行の「第14回 調査・設計・施工技術報告会発表論文集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年8月20日 社団法人土木学会発行の「第60回年次学術講演会講演概要集(CD−ROM)」に発表
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年6月1日 佐藤工業株式会社中央技術研究所発行の「技術研究所報 2004 No.30」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年6月10日 社団法人地盤工学会中部支部発行の「第14回 調査・設計・施工技術報告会発表論文集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年8月20日 社団法人土木学会発行の「第60回年次学術講演会講演概要集(CD−ROM)」に発表
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
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