説明

発芽大豆加工食品および前記食品の製造方法

【課題】粉末状の発芽大豆加工食品とその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による粉末状の発芽大豆加工食品は、原料大豆を発芽させ、発芽大豆を加熱,粉砕,および乾燥を同時に行なうことにより、溶解性が付与された原料大豆に食物繊維と、酵素活性化を高めた原料大豆のグルタミン酸と、原料大豆の澱粉が糖化した糖と、を含ませて構成されている。
前記粉末状の発芽大豆加工食品を製造する方法は、原料大豆を発芽させる発芽大豆製造ステップと、圧力空気噴射式の乾燥筒6を有する乾燥装置1に前記発芽大豆を逐次投入し、粉砕,加熱,乾燥を同時に行なうステップから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発芽大豆加工食品および前記食品の製造方法、さらに詳しく言えば発芽大豆を略同時に加熱,乾燥,粉末化するステップにより処理することによって、栄養化の高い粉末(黄粉状)の発芽大豆加工食品を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
発芽穀類の栄養に着目して発芽穀物の加工食品化が進められている。
下記特許文献1記載の発明は、ペースト状の大豆食品素材、発芽大豆を加水,加熱,破砕してホモゲナイズする前記ペースト状の大豆食品素材の製造方法および前記素材を用いる豆乳,豆腐,固形状食品の提案をしている。
特許文献2に記載の発明は、発芽穀物を加熱加圧して穀物菓子を製造する方法を提案している。
特許文献3記載の発明は、大豆加工食品およびその製造方法に係るものであり、発芽大豆そのものの発明を開示している。
特許文献4記載の発明は、発芽穀物の遠赤外線の処理方法を提案している。
【特許文献1】特開2004−305115号公報
【特許文献2】特開2000−041582号公報
【特許文献3】特開平11 −046713号公報
【特許文献4】特開平09 −163941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述した多くの発明に係る食品は、加工の進んだ最終食品であったり、さらに種々の食品の原料とすることができるものである。
【0004】
このように、発芽大豆自身の機能性(イソフラボン、サポニンの含有)や、ダイエット食品(食物繊維による満腹感の獲得)としての優れた特徴を十分に発揮できる加工食品の出現が強く望まれている。
加熱処理済の粉末状加工食品にすると、発芽大豆ココア(コーヒー)再焙煎や、パンの素材等の利用も期待される。しかしながら、豆腐などの様に加工残渣を排出せず、ゼロエミッションが可能であることが望ましい。
本発明の目的は、その後多くの加工をしなくても直接摂取することもできる黄粉状の大豆加工食品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記黄粉状の食品に最も良好な栄養成分状態を保持させることができる前記食品の加工方法であって、残滓の出ない方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明による請求項1記載の粉末状の発芽大豆加工食品は、
原料大豆を発芽させ、発芽大豆の加熱,粉砕,および乾燥を同時に行なった粉末状の発芽大豆加工食品において、
溶解性が付与された原料大豆に食物繊維と、
酵素活性化を高めた原料大豆のグルタミン酸と、
原料大豆の澱粉が糖化した糖と、
を含ませて構成したことを特徴とする。
本発明による請求項2記載の粉末状の発芽大豆加工食品は、請求項1記載の粉末状の発芽大豆加工食品において、
前記粉末状の発芽大豆加工食品のかさ比重は約450g/リットル、粒度は100〜300μmである。
本発明による請求項3記載の粉末状の発芽大豆加工食品は、請求項1記載の粉末状の発芽大豆加工食品において、
前記発芽大豆加工食品のイソフラボンまたは大豆サポニンの総量は、
同種の発芽を行わない大豆加工食品に対して大きく、GABAは、同種の発芽を行わない大豆加工食品には存在せず、前記発芽大豆加工食品にのみ存在するものである。
本発明による請求項4記載の発芽大豆加工食品の製造方法は、
原料大豆を発芽させる発芽大豆製造ステップと、
圧力空気噴射式の乾燥筒を有する乾燥装置に前記発芽大豆を逐次導入し、粉砕,加熱,乾燥を同時に行なうステップとを含む発芽大豆加工食品製造方法であって、
前記乾燥筒は、
筒内へ発芽大豆を順次投入する投入手段と、
前記発芽大豆を粉砕する圧力空気噴射部を有する粉砕手段と、
前記粉砕された発芽大豆を熱風中に分散させ回転上昇させる乾燥手段とを含んで構成されている。
本発明による請求項5記載の発芽大豆加工食品の製造方法は、請求項4記載の発芽大豆加工食品の製造方法において、
前記乾燥筒は円筒状の筒であり、前記各手段は前記円筒内において旋回流が発生する角度で前記筒に接続されている。
本発明による請求項6記載の発芽大豆加工食品の製造方法は、請求項4記載の発芽大豆加工食品の製造方法において、
前記圧力空気噴射部は、圧力空気供給装置に接続されたラバル管状のノズルであり熱風で吹き寄せられた発芽大豆を粉砕するものである。
本発明による請求項7記載の発芽大豆加工食品の製造方法は、請求項4記載の発芽大豆加工食品の製造方法において、
前記原料大豆を発芽させる発芽大豆製造ステップは、
原料大豆を発芽タンクに投入して浸積水温度を27℃〜42℃の範囲に維持して発芽させるステップである。
本発明による請求項8記載の発芽大豆加工食品の製造方法は、請求項4記載の発芽大豆加工食品の製造方法において、
前記発芽大豆を粉砕,加熱,乾燥を同時に行なうステップは、
自然脱水後の発芽大豆を超高速乾燥装置に連続的に定量投入するステップと、
円筒形状の乾燥塔には200℃〜230℃の熱風が円筒接線方向から供給され高速(流入風速40m/sec 〜70m/sec )の旋回流を形成するステップと、
を含んで構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明による方法によれば、短時間で水分蒸発が完了するから、加工食品の熱変成のばらつきが少ない。乾燥機排気温度を制御することにより、熱変成量をコントロールすることが出来るから、例えば、熱変成を最小限に押さえる(フリーズドライに近い乾燥処理)、ローストした状態(香ばしさを増す)等のコントロールが可能である。
また、砂糖やその他の人口甘味料を用いることなく天然の甘味が確保できる。製造された発芽大豆の栄養価は極めて高くしかも簡単に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面等を参照して本発明による方法および装置の実施の態様を説明する。
本発明方法は基本的に、原料大豆を発芽させる発芽大豆製造ステップと、圧力空気噴射式の乾燥塔を有する乾燥装置に前記発芽大豆を逐次導入し、粉砕,加熱,乾燥を同時に行なうステップ(以下簡単のために単に乾燥ステップ)とから構成されている。
【0008】
(発芽大豆の製造工程の実施例)
原料大豆を発芽させる発芽大豆製造ステップは次のとおりである。
(1)国産大豆を粗洗浄し、発芽タンクに投入する。
(2)大豆1に対して2倍の水を注入する。
(3)タンク内温度を37℃に保ちながらタンク底部から一定間隔で気泡を発生させる。
このばっ気操作により大豆発芽が均質化する。
(4)六時間毎に浸漬水を交換し、4回目に水切り排出する。
(5)自然脱水により1時間後(含水率≒90%)が乾燥装置に投入可能の状態となる。
【0009】
大豆発芽は、米や麦よりも高い温度を求める為に27℃〜42℃の範囲(人の入浴温度程度)が理想的であり、26℃以下では発芽にブレが出て、均一性に欠ける。43℃以上では高温障害が発生し、腐敗の原因になる。そのため、本発明ではタンク内の温度を27℃〜42℃で、この実施例では最も好ましい40℃を維持する。
この状態において大豆体内での酵素活性が強くなり、ミネラル、アミノ酸の結合が促進される発芽プロセスであり、このプロセスを経ることにより大豆蛋白が吸収されやすい溶解性に転換された。
【0010】
次に乾燥加工ステップについて説明する。
このステップは、圧力空気噴射式の乾燥塔を有する乾燥装置(特願2004−67131)により実施できる。前記装置は本件発明者等の発明に係るものであるが、他の同様な機能を実施できる装置があれば、それを利用できるからまず、前記乾燥装置の構成を説明する。
【0011】
図1は前記乾燥装置の構成図、図2は前記乾燥装置の乾燥筒の下部の平面断面図、図3は前記乾燥装置の乾燥筒の下部の一部切欠斜視図、図4は前記乾燥装置の乾燥筒の側面図である。この乾燥装置1は、図1に示すように、処理物供給装置のホッパ2と、圧力空気供給装置3と、熱風発生装置4と、熱交換機5と、圧力空気噴射部12を備えた乾燥筒6と、サイクロン7とを備えている。
【0012】
処理物供給装置のホッパ2から被乾燥物P(前述のステップで製造された発芽大豆)が通路14内のスクリューフィーダ17(図2〜図4参照)によって搬送され、投入口14Aを介して乾燥筒6内へ搬入されるようにしてある。
【0013】
圧力空気供給装置3は、例えば3〜5kgf/cm2 以上の高圧の圧力空気を生成し、この圧力空気を熱交換機5を経て乾燥筒6の圧力空気噴射部12に供給するための装置であり、この圧力空気の運動エネルギーによって被乾燥物Pを粉砕・分散および移送する装置である。そして、頭部6tおよび底部6bを有する乾燥筒6内へ被乾燥物Pを投入するよう乾燥筒6内壁より内側に向けて設けられた投入口14Aの一方の隣接位置に圧力空気噴射部12が設けられている。圧力空気供給装置3に接続された圧力空気噴射部12は、ラバル管状のノズル12Aを有している。このノズル12Aは、投入口14Aに対し、熱風発生装置4に接続された乾燥筒6内部の熱風噴射部13とは反対側に臨ませてある。
【0014】
熱風発生装置4は、燃料と外気との供給によって例えば約150〜300℃程度の熱風を発生し、この熱風をファン4Aを介して乾燥筒6の一端側内部における熱風噴射部13に供給するための装置である。熱風噴射部13は、これから発生する高温熱風を、投入口14Aから乾燥筒6内に送り込まれる被乾燥物Pに接触させるものである。そして、投入口14Aの一方の隣接位置に設けられた前記した圧力空気噴射部12から噴射される高温・高速・高圧気流によって、被乾燥物Pの表面水分が乾燥筒6内壁面に到達するまでにある程度蒸発させることができるようにしている。
【0015】
熱交換機5は、サイクロン7から発生分離されて大気中に放出される例えば温度約100℃程度の高温の排ガスの一部を循環させて、熱エネルギーの再利用による省エネ化を図るためのものであり、処理物供給装置のホッパ2からの被乾燥物P、圧力空気供給装置3からの圧力空気それぞれに対し熱エネルギーを付与した後、熱風発生装置4に送られてそこで約300℃以上に再度加熱されてからファン4Aを介して乾燥筒6の前記熱風噴射部13に供給するようにしてある。
【0016】
熱風発生装置4に接続された熱風噴射部13は、乾燥筒6内部の開口位置13Aから熱風を噴射する(図3)。図2,図3に示すように、投入口14Aの右に、ラバル管状のノズルを筒体の一端開口側に配置させて成る圧力空気噴射部12を臨ませる。当該ノズルの噴出開口部12Aは乾燥筒6内側へ向けて配置させられている。圧力空気噴射部12の他端開口側は熱交換機5を経て圧力空気供給装置3に接続されている(図1)。
【0017】
このラバル管状のノズルとは、最初に断面が小さくなっていくようなノズルを通して気体を加速し、断面が最小になる位置で音速にまで到達させ、次にノズルの断面を広くして気体を膨張させることによってさらに連続的に加速することで超音速流を得るという周知の構造である。そして、ノズルを通り抜ける気体の流量が特別な値であってノズルの噴出開口部12A位置の圧力が外側の圧力よりも低ければ気体の流出は不連続になってノズルの噴出開口部12Aの縁より斜め衝撃波が発生する。このとき気体流の外周部からの外圧によって気体は内側に強く圧縮されるのであるが、その強度があまり大きくない場合にのみ定常な衝撃波がノズルの噴出開口部12Aから発生する。このように気体はノズルの長方形状の噴出開口部12Aの縁から斜め衝撃波を発生しながら膨張と収縮を繰り返す切刃状のパルス波形をしたジェット噴流となって当該噴出開口部12Aから噴射され、この気体の超音速流および衝撃波を被乾燥物Pの粉砕・拡散に用いている。
【0018】
また、ノズルの噴出開口部12Aは、その開口形状を略長方形等の細長状に形成して開口面積を縮小することにより、噴射気体である圧力空気の消費量を削減可能となるようにしてある。このとき、ノズルの噴出開口部12Aの断面積は、ノズルを通り抜ける気体の設定された流量に応じてノズルの噴出開口部12A位置の圧力が外側の圧力よりも低いものとなるように設定されている。
【0019】
尚、本実施の形態では、ノズルの噴出開口部12Aの開口形状の最も好ましいものとして略長方形状としてあるが、本発明はこの形状に限定されるものではなく、例えば長円形状・楕円形状・紡錘形状・扁平菱形状・鼓形状・楔形状等の種々の形状に設定することもでき、要するに本発明では噴出開口部12Aの開口形状が従来のような円形ではなく細長状に形成されていれば良いのである。
【0020】
サイクロン7は、遠心力により処理後の被乾燥物Pの固形分と排ガス分とを分離するための装置であり、固形分はリサイクル利用され、排ガス分はその一部を熱交換機5へ戻して、処理物供給装置のホッパ2からの被乾燥物P、圧力空気供給装置3からの圧力空気それぞれに対する加熱に寄与させるようにしてある。尚、サイクロン7に替わって、被乾燥物Pを固形分と排ガスとに分離するバックフィルター式の分離捕集装置を使用しても良い。
【0021】
次に以上のように構成された実施の形態についての使用、動作の一例を説明するに、図1に示すように、圧力空気供給装置3によって高圧の圧力空気を生成し、この圧力空気を熱交換機5を経て乾燥筒6の圧力空気噴射部12に供給する。これと同時に熱風発生装置4によって熱風を発生し、この熱風をファン4Aを介して乾燥筒6内部における熱風噴射部13に供給する。このとき圧力空気はノズルの長方形状の噴出開口部12Aのへりから斜め衝撃波を発生しながら膨張と収縮を繰り返す切刃状のパルス波形をしたジェット噴流となって当該噴出開口部12Aから噴射される。
【0022】
被乾燥物P(本発明においては発芽大豆)は、熱交換機5を経て乾燥筒6に通じる投入口14Aから乾燥筒6内へ順次供給される。
こうして投入口14Aの他方隣接位置に設けられた熱風噴射部13の開口部13A(図3参照)から発生する高温熱風13’を、投入口14Aから乾燥筒6内に送り込まれる被乾燥物Pに接触させる。そして、投入口14Aの一方隣接位置に設けられた圧力空気噴射部12の噴出開口部12Aから噴射される高温・高速・高圧気流によって発生する気体の超音速流および衝撃波でもって被乾燥物Pを粉砕・拡散させる。同時に、被乾燥物Pの表面水分が乾燥筒6内壁面に到達するまでにある程度蒸発させる。図2に示すように熱風13’で押された被乾燥物Pは、時計方向に旋回しながら上昇し乾燥物排出管15(図1,図2,図4)を介して取り出される。
図4において6cは乾燥筒の中心を示す。熱風噴射方向13’は半径に対してθ13の角度を持ち、圧力空気噴射方向12’は半径に対してθ14の角度をもっている。
【0023】
乾燥筒6による処理後において、被乾燥物Pは管15を介してサイクロン7へ送られ、そこで遠心力により処理後の被乾燥物P(発芽大豆の加工食品)の固形(粉末成分)分と排ガス分とが分離される。
排ガス分はその一部を熱交換機5へ戻され、処理物供給装置のホッパ2からの被乾燥物P、圧力空気供給装置3からの圧力空気それぞれに対し熱エネルギーを付与した後、熱風発生装置4に送られてそこで再度加熱されてからファン4Aを介して乾燥筒6の前記熱風噴射部13に供給される。
【0024】
(乾燥ステップの実施例)圧力空気噴射式の乾燥塔を有する乾燥装置に前記ステップで得られた発芽大豆を逐次導入し、粉砕,加熱,乾燥を同時に行なう。
【0025】
前述自然脱水後の発芽大豆を超高速乾燥装置に連続的に定量投入する。
円筒形状の乾燥塔には200℃〜230℃の熱風が円筒接線方向から供給され高速(流入風速40m/sec 〜70m/sec )の旋回流を形成している。この旋回流中に投入された発芽大豆原料は熱風中で旋回流動をなしながら、乾燥塔壁との摩擦接触及び原料同士の衝突により粉化される。原料が粉化されるほどの強力な旋回流動中で水分蒸発も行われる為、はげしく均一な熱風との接触が可能となった。
【0026】
本乾燥装置は乾燥塔下部に原料を供給し乾燥品を上部から抜き出す(重力に逆らった)構造になっている為、原料が水分を多く含有し粒子比重が重い(1kg/L程度)状態のときは乾燥塔下部に滞留し、乾燥、粉砕が促進され粒子比重が軽く(0.5kg/L以下程度)になったものから順次旋回上昇気流に乗って乾燥筒上部に移動する。
乾燥筒内部は下部、上部、排出部に分けられ、その境に滞留リング及びアシストエアーゾーンを設け、各滞留ゾーンでの滞留時間を制御する。このゾーンの形成は被乾燥物Pの投入を断続することにより可能となる。
【0027】
滞留リングは乾燥塔内部の各滞留ゾーンの境に位置し、各滞留ゾーンの直径を小さくすることで、各ゾーンからの排出量を制御する。
乾燥機投入直後の原料は含水率が高く、粒子比重が重い(1kg/L程度)為、遠心力により乾燥塔壁に沿って旋回流動している。乾燥、粉化が進み粒子比重が軽く(0.5kg/L以下)になり、粒子旋回流動直径が滞留リング直径以下になったものから上部滞留ゾーンに移動する。
【0028】
アシストエアーの働きについて説明する。上部滞留ゾーンではすでに粒子比重が軽くなった原料を求める含水率になるまで滞留させるが、乾燥装置運転初期において定常状態(上部滞留ゾーンに原料が満たされる)になるまで一時原料排出を押さえる必要がある。上部滞留ゾーン排出境界に高速エアーを注入することで軽くなった原料粒子を再加速し遠心力を持たせ、一時排出を押さえる。
【0029】
ブラストエアーの働きを説明する。ブラストエアーは、乾燥原料によっては乾燥機下部で堆積するものもあるため乾燥機下部に高圧エアを一定間隔で瞬時に吹込むことで乾燥原料の熱風との接触を均質化するためのものである。
乾燥機に供給される熱風は乾燥排ガスの80〜90%循環したものと外気10〜20%を混合したものをガスバーナーにて200℃〜230℃に加熱しているため、過熱蒸気乾燥と同様の状況を作り出し、原料の酸化を抑制している。また、放出する排ガス量を最小限に押さえているため、脱臭処理にかかるコストが少ない。
【0030】
乾燥筒排気温度は130℃〜180℃の範囲であり、170℃〜180℃は難分解性の食物繊維を溶解性に変質する温度帯であり、グルタミン酸(アミノ酸)の酵素活性が最も豊になる温度帯である。
【0031】
前述した方法により製造された発芽大豆加工食品の粒度分布は、概ね1000μm以下であり、好ましくは100〜300μmである。なお、かさ比重は約450g/リットルであった。甘味料等を施さなくともそれ自体が十分な甘味を提供できるものである。
【0032】
上記方法で製造した発芽大豆加工食品(本願食品)の成分分析を行い、現在市場に置かれている同種の加工食品(比較対象食品)についても同様な成分分析について、本願食品との対比検討を行なった。
前記比較対象食品は、国産大豆を炒り、通常の方法で粉末化した食品であって、熱湯をかけると一見コーヒー状の飲料となるので、黒大豆コーヒー(ブラックジンガー)という商品名で販売されている。以下は本願食品の成分と量を示し、比較対象食品の成分をカッコ内に示す。単位は100g当たりのグラム(g)数,kcal数,またはミリグラム(mg)数である。

水分 1.8g (2.5g)
たんぱく質 36.5g (40.9g)
脂質 25.7g (24g)
灰分 4.5g ( 〜 )
糖質 13.7g ( 〜 )
食物繊維 17.8g (20.6g)
エネルギー 468kcal (408kcal)
ナトリウム 11mg (1.3mg)
カルシウム 190mg (223mg)
カリウム 1.66g (1.97g)
リノール酸 11.8g (11.6g)
リン脂質 1.5g ( 〜 )

イソフラボン総量 305.2mg (69.5mg)
大豆サポニン 470mg (310mg)
GABA 142mg (0mg)
なお、GABAは、遊離γ−アミノ酪酸の略語である。
【0033】
以上の対比から注目すべきことは、本願食品はイソフラボン総量,大豆サポニンの量において比較対象食品の4.4倍および1.5倍ではるかに大きい値となっていることである。さらに、GABAについては対象食品には存在せず、本願食品が発芽工程を設けたことによる効果であると考えられる。
なお、このことは発芽玄米と玄米におけるGABAの比較においても同様な結果が得られている。さらに、本願食品のGABAと発芽玄米のそれを比較すると、本願食品の方がはるかに大きく、10倍程度になっている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明による発芽大豆の加工食品は乾燥粉末であり、広い用途を期待できる。古来大豆それ自体健康食品(畑の肉と言われるくらい)であることは万人の認めている食品であり、豆腐、納豆は日常的に消費されているが、西日本と東日本では食文化の相違から必ずしも必要絶対量が摂取されていない。単に栄養価を高めるために、発芽大豆をそのまま、マーケットに投入しても、料理方法や、利用範囲が不明確でその機能を発揮することは難しい。そこで、古来からある「きな粉」を本発明方法で実現することにより、現代風に微粉末化することで皮及び胚芽に多く含まれている、大豆サポニン、イソフラボンを全て商品の中に含有することが可能になり、現代病(婦人病:骨粗鬆症,更年期障害、前立腺ガン)の予防に大きな貢献ができる。
したがって本発明は、健康指向の食品加工の分野に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明方法を実施するための乾燥装置の最良の形態を示す構成図である。
【図2】前記乾燥装置の乾燥筒の下部の平面断面図である。
【図3】前記乾燥装置の乾燥筒の下部の一部切欠斜視図である。
【図4】前記乾燥装置の乾燥筒の側面図である。
【符号の説明】
【0036】
P 被乾燥物(発芽大豆)
1 乾燥装置
2 ホッパ
3 圧力空気供給装置
4 熱風発生装置
5 熱交換機
6 乾燥筒(塔)
6t 乾燥筒頭部
6b 乾燥筒底部
7 サイクロン
12 圧力空気噴射部
12A 噴出開口部
13 熱風噴射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料大豆を発芽させ、発芽大豆の加熱,粉砕,および乾燥を同時に行なった粉末状の発芽大豆加工食品において、
溶解性が付与された原料大豆に食物繊維と、
酵素活性化を高めた原料大豆のグルタミン酸と、
原料大豆の澱粉が糖化した糖と、
を含ませて構成したことを特徴とする粉末状の発芽大豆加工食品。
【請求項2】
前記粉末状の発芽大豆加工食品のかさ比重は約450g/リットル、粒度は100〜300μmである請求項1記載の粉末状の発芽大豆加工食品。
【請求項3】
前記発芽大豆加工食品のイソフラボンまたは大豆サポニンの総量は、
同種の発芽を行わない大豆加工食品に対して大きく、GABAは、同種の発芽を行わない大豆加工食品には存在せず、前記発芽大豆加工食品にのみ存在するものである請求項1記載の粉末状の発芽大豆加工食品。
【請求項4】
原料大豆を発芽させる発芽大豆製造ステップと、
圧力空気噴射式の乾燥筒を有する乾燥装置に前記発芽大豆を逐次導入し、粉砕,加熱,乾燥を同時に行なうステップとを含む発芽大豆加工食品製造方法であって、
前記乾燥筒は、
筒内へ発芽大豆を順次投入する投入手段と、
前記発芽大豆を粉砕する圧力空気噴射部を有する粉砕手段と、
前記粉砕された発芽大豆を熱風中に分散させ回転上昇させる乾燥手段とを含む、
粉末状の発芽大豆加工食品の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の発芽大豆加工食品の製造方法において、
前記乾燥筒は円筒状の筒であり、前記各手段は前記円筒内において旋回流が発生する角度で前記筒に接続されている発芽大豆加工食品の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の発芽大豆加工食品の製造方法において、
前記圧力空気噴射部は、圧力空気供給装置に接続されたラバル管状のノズルであり熱風で吹き寄せられた発芽大豆を粉砕する発芽大豆加工食品の製造方法。
【請求項7】
請求項4記載の発芽大豆加工食品の製造方法において、
前記原料大豆を発芽させる発芽大豆製造ステップは、
原料大豆を発芽タンクに投入して浸積水温度を27℃〜42℃の範囲に維持して発芽させるステップである発芽大豆加工食品の製造方法。
【請求項8】
請求項4記載の発芽大豆加工食品の製造方法において、
前記発芽大豆を粉砕,加熱,乾燥を同時に行なうステップは、
自然脱水後の発芽大豆を超高速乾燥装置に連続的に定量投入するステップと、
円筒形状の乾燥塔には200℃〜230℃の熱風が円筒接線方向から供給され高速(流入風速40m/sec 〜70m/sec )の旋回流を形成するステップと、
を含む発芽大豆加工食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−345708(P2006−345708A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171973(P2005−171973)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000138325)株式会社ヤマウラ (11)
【Fターム(参考)】