説明

発電システム

【課題】発熱機器の熱と冷却媒体との温度差を高く維持することで効率的に発電し得る発電システムを提供する。
【解決手段】各バルブ41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b,45a,45b,46a,46b,47a,47bの開閉により、高温側ヒートシンク(41〜44)内を流れる高温側冷却液W1と高温側ヒートシンク(45〜47)内を流れる低温側冷却液W2との間に介在する熱電変換ユニット51〜56を介した熱交換時の伝熱面積が変更可能に構成される。そして、温度センサ61にて検出される冷却液温度Tが安全上限温度Tを超えることなく熱交換時の温度差を大きくするように、制御ユニット61にて実行される発電処理により、各バルブの開閉が制御されて伝熱面積が変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される発熱機器にて発生した熱とこの熱を冷却するための冷却媒体との温度差を利用して発電する発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される発熱機器等の熱源にて発生した熱とこの熱を冷却するための冷却媒体との温度差を利用して発電する発電システムに関連する技術として、下記特許文献1に開示される水冷式の発電ユニットが知られている。この発電ユニットは、受熱盤の後面側に熱電モジュールが配設され、この熱電モジュールの後面側に冷却ユニットが配設されて構成されている。熱電モジュールは、2種の異なる金属又は半導体を接合してその両端に温度差を生じさせると起電力が発生するという、いわゆるゼーベック効果を利用したものである。そして、冷却ユニットは、良熱伝導性の金属で形成した筐体と、その内側の冷却室に設けた複数の冷却フィンとを有しており、筐体の底部に穿設された注水口から冷却水が注入されると、この冷却水で前壁部や冷却フィンが冷却される。また、受熱盤を加熱する熱源としては、温泉場の地熱や高温の源泉、ゴミ焼却時の排熱等の高温熱源が想定されている。そして、高温熱源からの熱が受熱盤に伝熱され、冷却ユニットが冷却されることで、高温熱源の温度と冷却ユニットの温度との温度差が熱電モジュールに加わり、当該熱電モジュールによる発電がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−057335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱電モジュール等の熱電変換手段は、高温側と低温側との温度差に応じて発電するように構成される。しかしながら、上記特許文献1に開示されるような高温側の構成と低温側の構成とを、発熱機器の発熱と冷却媒体との温度差を利用して発電する発電システムに適用すると、以下のような問題が生じる。
すなわち、上述のような構成では、熱電変換手段に加わる温度差は、発熱機器からの熱量や冷却媒体の温度および流量などに依存するため、発熱機器が過剰に冷却される場合等には、熱電変換手段に加わる温度差が小さくなるので、効率的な発電が困難になってしまう。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、発熱機器の熱と冷却媒体との温度差を高く維持することで効率的に発電し得る発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発電システムは、車両に搭載される発熱機器(11)にて発生した熱が伝熱された高温側冷却媒体(W1)と、当該高温側冷却媒体を冷却するためこの熱が伝熱された後に放熱器(21)にて放熱された低温側冷却媒体(W2)との熱交換時の温度差を利用した熱電変換手段(51〜56)により発電する発電システム(40)であって、前記高温側冷却媒体と前記低温側冷却媒体との間に介在する前記熱電変換手段を介した熱交換時の伝熱面積を変更可能な変更手段(41〜47,41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b,45a,45b,46a,46b,47a,47b)と、前記発熱機器の発熱温度(T)を検出する温度検出手段(62)と、前記温度検出手段にて検出される前記発熱温度が当該発熱機器の許容される上限温度(T)を超えることなく前記熱交換時の温度差を大きくするように、前記変更手段を制御して前記伝熱面積を変更する制御手段(61)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発電システムにおいて、前記高温側冷却媒体と前記低温側冷却媒体とが混流することなく前記熱電変換手段を介して熱交換する発電状態と、前記高温側冷却媒体と前記低温側冷却媒体とを前記熱電変換手段を介することなく混流することで前記発電状態よりも前記発熱機器の冷却を高めた高冷却状態とのいずれかの状態に切り替え可能な切替手段(31,32,14a,14b,24a,24b,31a,31b,32a,32b)を備え、前記制御手段は、前記温度検出手段にて検出される前記発熱温度が前記上限温度よりも低く設定される所定の温度(TH2)に達すると、前記切替手段を前記高冷却状態に切り替えるように制御することを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、変更手段により、高温側冷却媒体と低温側冷却媒体との間に介在する熱電変換手段を介した熱交換時の伝熱面積が変更可能に構成される。そして、温度検出手段にて検出される発熱機器の発熱温度が上限温度を超えることなく熱交換時の温度差を大きくするように、制御手段により、変更手段が制御されて伝熱面積が変更される。
【0009】
これにより、発熱機器から高温側冷却媒体に伝熱される熱量が小さくなる場合でも、変更手段を制御して発熱温度が上限温度を超えない程度に熱電変換手段を介した熱交換時の伝熱面積を小さくすることで、高温側冷却媒体の冷却が必要最小限に制御されて、熱電変換手段に加わる熱交換時の温度差を大きくすることができる。すなわち、発熱機器からの熱量や冷却媒体の温度および流量などが変化する場合でも、熱電変換手段を介した熱交換時の伝熱面積が変更されることで、熱電変換手段を介した熱交換時の温度差を大きく維持することができる。
したがって、発熱機器の熱と冷却媒体との温度差を高く維持することで効率的に発電することができる。
【0010】
請求項2の発明では、切替手段により、高温側冷却媒体と低温側冷却媒体との両冷却媒体が混流することなく熱電変換手段を介して熱交換する発電状態と、両冷却媒体を熱電変換手段を介することなく混流することで発熱機器の冷却を高めた高冷却状態とのいずれかの状態に切り替え可能に構成される。そして、温度検出手段にて検出される発熱温度が上限温度よりも低く設定される所定の温度に達すると、制御手段により、切替手段が上記高冷却状態に切り替わるように制御される。
【0011】
これにより、発熱温度が上記所定の温度に達する場合には、熱電変換手段を介した熱交換が実施されないため、熱電変換手段を介することによる伝熱損失がなくなり、両冷却媒体間の熱交換効率が向上する。その結果、冷却媒体を用いた発熱機器の冷却性能が向上するので、発熱機器の発熱温度を上限温度よりも低い温度に下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る発電システムを概念的に示す説明図である。
【図2】図1の発電システムの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】図3(A)は、本発明に係る高温側冷却液および低温側冷却液の流れと熱電変換ユニットとの関係を示す説明図であり、図3(B)は、比較例に係る冷却液の流れと熱電変換ユニットとの関係を示す説明図である。
【図4】インバータの熱が放熱される伝熱経路を説明する説明図である。
【図5】図5(A)は熱抵抗を可変とする場合の発生熱量とインバータの温度との関係を示すグラフであり、図5(B)は熱抵抗を一定とする場合の発生熱量とインバータの温度との関係を示すグラフである。
【図6】熱電変換ユニットに加わる温度差を説明するための説明図である。
【図7】伝熱面積を変化させた各段階を説明する説明図である。
【図8】制御ユニットにより実行される発電処理の流れを例示するフローチャートである。
【図9】温度センサにて測定される冷却液温度とインバータの温度状態との関係を示す説明図である。
【図10】温度センサにて測定される冷却液温度の時間変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る発電システムの一実施形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の発電システム40の一例を概念的に示す説明図である。
図1に示すように、本発明に係る発電システム40は、車両に搭載される発熱機器にて発生した熱とこの熱を冷却するための冷却媒体(冷却液)との温度差を利用して発電するシステムである。
【0014】
まず、発熱機器にて発生した熱を冷却する冷却構成について、説明する。
本実施形態では、冷却が必要な発熱機器として、例えば、インバータ11が採用されており、このインバータ11を冷却するために当該インバータ11の外面に設けられるウォータジャケット12には、高温側ウォーターポンプ13により高温側配管14内を循環する高温側冷却媒体として高温側冷却液W1が流入するように構成されている。また、高温側配管14には、後述する熱電変換ユニットを介した熱交換により冷却された高温側冷却液W1が流れ込むコンデンスタンク15が設けられている。
【0015】
また、本実施形態では、発熱機器を冷却する放熱器としてラジエータ21とクーリングファン22とが採用されており、ラジエータ21には、低温側ウォーターポンプ23により低温側配管24内を循環する低温側冷却媒体として低温側冷却液W2が流入するように構成されている。また、低温側配管24には、ラジエータ21にて放熱された低温側冷却液W2が流れ込むコンデンスタンク25が設けられている。
【0016】
高温側配管14および低温側配管24には、両配管を連結可能な高温側バイパス31と低温側バイパス32とが設けられている。高温側バイパス31は、バルブ31aを介して高温側ウォーターポンプ13から流出する高温側冷却液W1を引き込み可能に高温側配管14に連結されるとともに、バルブ31bを介して高温側配管14からの高温側冷却液W1をラジエータ21に流入可能に低温側配管24に連結されている。低温側バイパス32は、バルブ32aを介してラジエータ21から流出する低温側冷却液W2を引き込み可能に低温側配管24に連結されるとともに、バルブ32bを介して低温側配管24からの低温側冷却液W2をウォータジャケット12に流入可能に高温側配管14に連結されている。
【0017】
また、高温側配管14には、高温側バイパス31が連結する部位から下流側にバルブ14aが設けられるとともに、低温側バイパス32が連結する部位から上流側にバルブ14bが設けられている。また、低温側配管24には、高温側バイパス31が連結する部位から上流側にバルブ24aが設けられるとともに、低温側バイパス32が連結する部位から下流側にバルブ24bが設けられている。
【0018】
これにより、高温側配管14のバルブ14a,14bと、低温側配管24のバルブ24a,24bとが開弁状態となり、高温側バイパス31のバルブ31a,31bと、低温側バイパス32のバルブ32a,32bとが閉弁状態となるように切り替えられることで、高温側配管14内の高温側冷却液W1と低温側配管24内の低温側冷却液W2とがそれぞれ混流することなく独立して環流する独立環流状態となる。この独立環流状態において、後述する熱電変換ユニットを介して高温側冷却液W1と低温側冷却液W2との間で熱交換がなされることで、高温側冷却液W1が冷却され、この冷却された高温側冷却液W1が流れるウォータジャケット12によりインバータ11が冷却されることとなる。なお、高温側バイパス31および低温側バイパス32と、バルブ14a,14b,24a,24b,31a,31b,32a,32bは、特許請求の範囲に記載の「切替手段」の一例に相当し得る。
【0019】
また、高温側配管14のバルブ14a,14bと、低温側配管24のバルブ24a,24bとが閉弁状態となり、高温側バイパス31のバルブ31a,31bと、低温側バイパス32のバルブ32a,32bとが開弁状態となるように切り替えられることで、高温側配管14内の高温側冷却液W1と低温側配管24内の低温側冷却液W2とが混流可能な状態となる。この混流状態では、高温側冷却液W1と低温側冷却液W2とが混流し、この混流した冷却液がラジエータ21にて放熱された後にウォータジャケット12に流れることで、インバータ11が冷却される。特に、高温側冷却液W1と低温側冷却液W2とが混流する状態では、熱電変換ユニットを介した熱交換がなくなり、より低い温度の冷却液がウォータジャケット12に流れるので、熱電変換ユニットを介して熱交換する独立環流状態と比較して、インバータ11の冷却性能を向上させることができる。この混流状態は、独立環流状態よりも冷却性能が向上する状態であることから、高冷却状態ともいう。
【0020】
次に、発電システム40の構成について、図1を用いて説明する。
図1に示すように、発電システム40は、高温側配管14内を流れる高温側冷却液W1と低温側配管24内を流れる低温側冷却液W2との温度差を利用して発電するシステムであり、高温側冷却液W1を流入可能に構成される4つの高温側ヒートシンク41〜44と、低温側冷却液W2を流入可能に構成される3つの低温側ヒートシンク45〜47とを備えている。
【0021】
高温側ヒートシンク41は、入口側のバルブ41aおよび出口側のバルブ41bを介して高温側配管14に接続され、両バルブ41a,41bが開弁状態となることで、高温側配管14内を流れる高温側冷却液W1が流入可能な状態となる。また、高温側ヒートシンク42は、入口側のバルブ42aおよび出口側のバルブ42bを介して高温側配管14に接続され、両バルブ42a,42bが開弁状態となることで、高温側配管14内を流れる高温側冷却液W1が流入可能な状態となる。また、高温側ヒートシンク43は、入口側のバルブ43aおよび出口側のバルブ43bを介して高温側配管14に接続され、両バルブ43a,43bが開弁状態となることで、高温側配管14内を流れる高温側冷却液W1が流入可能な状態となる。また、高温側ヒートシンク44は、入口側のバルブ44aおよび出口側のバルブ44bを介して高温側配管14に接続され、両バルブ44a,44bが開弁状態となることで、高温側配管14内を流れる高温側冷却液W1が流入可能な状態となる。
【0022】
低温側ヒートシンク45は、入口側のバルブ45aおよび出口側のバルブ45bを介して低温側配管24に接続され、両バルブ45a,45bが開弁状態となることで、低温側配管24内を流れる低温側冷却液W2が流入可能な状態となる。また、低温側ヒートシンク46は、入口側のバルブ46aおよび出口側のバルブ46bを介して低温側配管24に接続され、両バルブ46a,46bが開弁状態となることで、低温側配管24内を流れる低温側冷却液W2が流入可能な状態となる。また、低温側ヒートシンク47は、入口側のバルブ47aおよび出口側のバルブ47bを介して低温側配管24に接続され、両バルブ47a,47bが開弁状態となることで、低温側配管24内を流れる低温側冷却液W2が流入可能な状態となる。
【0023】
また、発電システム40は、加えられる温度差に応じた発電する熱電変換素子が複数配置されて熱電変換手段として構成される熱電変換ユニット(51〜56)を6つ備えており、これら各熱電変換ユニット51〜56にて発電した電力は、バッテリBにて蓄電されるように構成されている。
【0024】
特に、熱電変換ユニット51は、高温側ヒートシンク41と低温側ヒートシンク45との双方に熱交換可能に面接触するように配置されている。また、熱電変換ユニット52は、高温側ヒートシンク42と低温側ヒートシンク45との双方に熱交換可能に面接触するように配置されている。また、熱電変換ユニット53は、高温側ヒートシンク42と低温側ヒートシンク46との双方に熱交換可能に面接触するように配置されている。また、熱電変換ユニット54は、高温側ヒートシンク43と低温側ヒートシンク46との双方に熱交換可能に面接触するように配置されている。また、熱電変換ユニット55は、高温側ヒートシンク43と低温側ヒートシンク47との双方に熱交換可能に面接触するように配置されている。また、熱電変換ユニット56は、高温側ヒートシンク44と低温側ヒートシンク47との双方に熱交換可能に面接触するように配置されている。
【0025】
次に、発電システム40の電気的構成について、図2を用いて説明する。図2は、図1の発電システム40の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
図2に示すように、発電システム40は、全体的制御を司る制御ユニット61と、ウォータジャケット12から流出する冷却液の温度(以下、冷却液温度Tという)をインバータ11の発熱温度に相当する温度として測定する温度センサ62と、ラジエータ21から流出する冷却液の温度を測定する温度センサ63と、高温側配管14内を流れる冷却液の流量を測定する流量センサ64と、低温側配管24内を流れる冷却液の流量を測定する流量センサ65とを備えている。制御ユニット61は、各センサ62〜65と電気的に接続され、これら各センサ62〜65からの測定信号が入力されるように構成されている。
【0026】
また、制御ユニット61は、後述する発電処理などに応じて、高温側ウォーターポンプ13を駆動するモータ13aと、低温側ウォーターポンプ23を駆動するモータ23aと、クーリングファン22を駆動するモータ22aと、各バルブ14a,14b,24a,24b,31a,31b,32a,32b,41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b,45a,45b,46a,46b,47a,47bとを、駆動制御可能に構成されている。
【0027】
次に、本実施形態の特徴的部分である発電構成について、図3〜図6を用いて説明する。図3は、図3(A)は、本発明に係る高温側冷却液W1および低温側冷却液W2の流れと熱電変換ユニットとの関係を示す説明図であり、図3(B)は、比較例に係る冷却液Woの流れと熱電変換ユニットとの関係を示す説明図である。図4は、インバータ11の熱が放熱される伝熱経路を説明する説明図である。図5(A)は熱抵抗を可変とする場合の発生熱量とインバータ11の温度との関係を示すグラフであり、図5(B)は熱抵抗を一定とする場合の発生熱量とインバータ11の温度との関係を示すグラフである。図6は、熱電変換ユニット(51〜56)に加わる温度差を説明するための説明図である。
【0028】
熱電変換ユニット51〜56を構成する各熱電変換素子の発電量は、当該熱電変換素子を通過した熱量と熱電変換効率とで決まり、熱電変換素子を通過した熱量は、インバータ11の発生熱量に依存する。熱電変換効率は、熱電変換素子の内部抵抗と外部負荷抵抗の比によって変動するが、最適な比のときに得られる最大効率ηmaxは、以下の式(1)により表され、熱電変換素子に加わる温度差と熱電変換素子の性能とに依存する。
ηmax=(T−T)/T
×((1+ZT)1/2−1)/((1+ZT)1/2+(T/T)) ・・・(1)
ここで、Tは、熱電変換素子の高温面の温度であり、Tは、熱電変換素子の低温面の温度である。
このため、温度差を可能な限り大きく維持し、熱電変換効率を高めることで、熱電変換ユニットでの発電量を大きくすることができることがわかる。
【0029】
そこで、熱電変換ユニットに加わる温度差を大きくするため、図3(A)に例示するように、熱電変換ユニットを、混流しない高温側冷却液W1と低温側冷却液W2との間に介在させて熱交換時の温度差が加わるように配置する。これにより、図3(B)に例示するように1つの循環経路を流れる冷却液Woの温度差を利用する比較例と比較して、熱電変換ユニット51〜56に加わる温度差を大きくすることができる。
【0030】
また、本実施形態では、図4に示すように、インバータ11にて発熱した熱は、ウォータジャケット12、高温側冷却液W1、高温側ヒートシンク(41〜44)、熱電変換ユニット(51〜56)の高温面、熱電変換ユニット(51〜56)の低温面、低温側ヒートシンク(45〜47)、低温側冷却液W2、ラジエータ21を介して大気に放熱される。
【0031】
インバータ11の温度は、上記放熱過程での全温度差と大気気温との和となり、この全温度差は、発生熱量と全熱抵抗とで決まることとなる。ここで、全熱抵抗は、図4での高温側経路熱抵抗と、熱電変換ユニットでの熱抵抗と、低温側経路熱抵抗とからなり、全熱抵抗に占める熱電変換ユニットでの熱抵抗の割合を大きくすることで、熱電変換ユニットに加わる温度差を大きくすることができる。
【0032】
全温度差は、以下の式(2)に示すように、発生熱量と全熱抵抗とで決まることから、全温度差を大きくするためには、全熱抵抗は、発生熱量に応じて変化させることが有効である。
全温度差[℃]=発生熱量[W]×全熱抵抗[℃/W] ・・・(2)
【0033】
そこで、図5(A)に例示するように、例えば、大気温度が30℃、インバータ11の安全上限温度が90℃であって、インバータ11の温度を80℃に維持するため適正な全温度差ΔTを50℃とする場合、発生熱量が500[W]であると、全熱抵抗を0.1[℃/W]に変更する。また、発生熱量が1000[W]であると、全熱抵抗を0.05[℃/W]に変更し、発生熱量が1500[W]であると、全熱抵抗を0.033[℃/W]に変更することで、全温度差ΔTが適正な50℃に維持される。
【0034】
一方、図5(B)に例示するように、例えば全熱抵抗が0.05[℃/W]で一定である場合、発生熱量が500[W]であると、インバータ11の温度が55℃となり安全であるものの、全温度差ΔTが25℃で小さくなる。また、発生熱量が1500[W]であると、インバータ11の温度が105℃となり、安全上限温度(90℃)を超えてしまう。このように、全熱抵抗が一定では、全温度差ΔTを適正な温度に維持できないことがわかる。
【0035】
ここで、熱抵抗の配分という観点から考えると、ある熱抵抗要素の温度差は、以下の式(3)に示すように、全熱抵抗に占めるその要素の熱抵抗と全温度差とで決まる。
ある熱抵抗要素の温度差[℃]
=全温度差[℃]×(要素の熱抵抗[℃/W]/全熱抵抗[℃/W])・・・(3)
【0036】
この観点から、熱電変換ユニットに加わる温度差について、図6を用いて説明する。なお、図6の符号S1は、高温側経路熱抵抗:熱電変換ユニットでの熱抵抗:低温側経路熱抵抗との関係が2:1:2である場合を示し、符号S2は、高温側経路熱抵抗:熱電変換ユニットでの熱抵抗:低温側経路熱抵抗との関係が1:3:1である場合を示す。
【0037】
図6から分かるように、高温側経路に加わる温度差ΔTと低温側経路に加わる温度差ΔTとが双方とも大きくなる場合には熱電変換ユニットに加わる温度差ΔTを大きくできないが、高温側経路に加わる温度差ΔTと低温側経路に加わる温度差ΔTとが双方とも小さくなる場合には熱電変換ユニットに加わる温度差ΔTを大きくすることができる。すなわち、適切な全熱抵抗のうち、高温側経路熱抵抗および低温側経路熱抵抗が占める割合を小さくすることで、熱電変換ユニットでの熱抵抗が占める割合が大きくなり、熱電変換ユニットに対して大きな温度差を確保することができる。このことから、高温側および低温側の熱抵抗は可能な限り小さく設計し、熱電変換ユニットの熱抵抗を増減させて全熱抵抗を制御することで、熱電変換ユニットに加わる温度差を大きく確保できることがわかる。
【0038】
次に、熱電変換ユニットでの熱抵抗の制御因子を考えると、熱電変換ユニットでの熱抵抗は、高温側ヒートシンク(41〜44)、熱電変換ユニット(51〜56)の高温面、熱電変換ユニット(51〜56)の低温面、低温側ヒートシンク(45〜47)から構成されることから、この熱抵抗には熱伝導率および伝熱面積が影響することがわかる。ここで、熱伝導率は、物性値であり固有の値であるため、制御因子としては伝熱面積が有効であることがわかる。
【0039】
そこで、本実施形態では、熱電変換ユニット(51〜56)と高温側ヒートシンク(41〜44)および低温側ヒートシンク(45〜47)との熱交換状態を多段的に切り替えることで、熱交換時の伝熱面積を変化させる。この熱交換状態の多段的変化について、図7(A)〜(D)を用いて具体的に説明する。図7は、伝熱面積を変化させた各段階を説明する説明図であり、図7(A)は第1段階を示し、図7(B)は第2段階を示し、図7(C)は第3段階を示し、図7(D)は第4段階を示す。なお、図7では、説明の便宜上、熱交換するものに対してハッチングを付して概念的に示している。
【0040】
図7(A)にて示すように、第1段階では、熱電変換ユニット51を介して高温側ヒートシンク41および低温側ヒートシンク45が熱交換するように、バルブ41a,41b,45a,45bが開弁状態になる。また、図7(B)にて示すように、第2段階では、第1段階の熱交換状態に加えて、熱電変換ユニット52を介して高温側ヒートシンク42および低温側ヒートシンク45が熱交換するとともに熱電変換ユニット53を介して高温側ヒートシンク42および低温側ヒートシンク46が熱交換するように、バルブ42a,42b,46a,46bがさらに開弁状態になる。また、図7(C)にて示すように、第3段階では、第2段階の熱交換状態に加えて、熱電変換ユニット54を介して高温側ヒートシンク43および低温側ヒートシンク46が熱交換するとともに熱電変換ユニット55を介して高温側ヒートシンク43および低温側ヒートシンク47が熱交換するように、バルブ43a,43b,47a,47bがさらに開弁状態になる。また、図7(D)にて示すように、第4段階では、第3段階の熱交換状態に加えて、熱電変換ユニット56を介して高温側ヒートシンク44および低温側ヒートシンク47が熱交換するように、バルブ44a,44bがさらに開弁状態になる。すなわち、第1〜第4段階のうち、第1段階が最も伝熱面積が小さく、第4段階が最も伝熱面積が大きくなる。なお、高温側ヒートシンク41〜44および低温側ヒートシンク45〜47とバルブ41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b,45a,45b,46a,46b,47a,47bとは、特許請求の範囲に記載の「変更手段」の一例に相当し得る。
【0041】
以下、制御ユニット61にて実行される発電処理について、図8および図9を用いて詳細に説明する。図8は、制御ユニット61により実行される発電処理の流れを例示するフローチャートである。図9は、温度センサ62にて測定される冷却液温度Tとインバータ11の温度状態との関係を示す説明図である。なお、当該発電処理の開始時では、熱電変換ユニットを介した熱交換状態は、バルブ41a,41b,45a,45bが開弁状態に制御される第1段階であり、高温側冷却液W1および低温側冷却液W2は、高温側配管14のバルブ14a,14bと低温側配管24のバルブ24a,24bとが開弁状態に制御されることで、それぞれ独立して環流する。このような独立環流状態は、上記混流状態と異なり発電を伴う状態であるため、発電状態ともいう。
【0042】
まず、インバータ11が駆動開始した直後では、インバータ11の発生熱量も低く、温度センサ62にて測定される冷却液温度Tも低いことから、図8のステップS103に示す加算処理にて順次加算される時定数tが一定値tdを超えるまでステップS101に示す判定処理にてNoと判定される。そして、時定数tが一定値tdを超えると(S101でYes)、ステップS105に示す判定処理にて、温度センサ62にて測定される冷却液温度Tが遷移上限温度TH2より高いか否かについて判定される。
【0043】
なお、遷移上限温度TH2は、図9に示すように、インバータ11が安全に運転できる高温領域の下限値であり、例えば、この高温領域の上限値である安全上限温度Tが90℃である場合には、遷移上限温度TH2は、80℃に設定される。また、遷移上限温度TH2を上限値とし、この遷移上限温度TH2よりも低い値の遷移下限温度TH1を下限値とする高温側遷移領域は、熱交換時の伝熱面積が増加される温度領域である。また、遷移下限温度TH1を上限値とし、この遷移下限温度TH1よりも低い値の適温下限温度TL1を下限値とする適温領域は、熱交換時の伝熱面積が維持される温度領域である。
【0044】
ここで、温度センサ62にて測定される冷却液温度Tが遷移上限温度TH2以下である場合には(S105でNo)、ステップS107に示す判定ステップにて、段数NがNmaxであるか否かについて判定される。なお、段数Nは、伝熱面積を変化させたレベルを示し、具体的には、N=1は、図7(A)に示す第1段階を示し、N=2は、図7(B)に示す第2段階を示し、N=3は、図7(C)に示す第3段階を示し、N=4は、図7(D)に示す第4段階を示す。また、Nmaxは、高温側配管14内の高温側冷却液W1と低温側配管24内の低温側冷却液W2とが混流する混流状態を示す。
【0045】
後述するように混流状態となるように各バルブが開閉されていない場合にはステップS107にてNoと判定され、ステップS109に示す判定処理にて時定数t’が一定値t’dより大きいか否かについて判定される。ここで、ステップS111にて示す時定数t’加算処理にて順次加算される時定数t’が一定値t’dを超えるまでステップS109にてNoと判定されて、ステップS105からの処理が繰り返される。
【0046】
そして、時定数t’が一定値t’dを超えると(S109でYes)、ステップS113に示す判定処理にて、冷却液温度Tが適温下限温度TL1より高くかつ遷移下限温度TH1より低いか否かについて判定される。ここで、冷却液温度Tが適温下限温度TL1より高くかつ遷移下限温度TH1より低い場合には(S113でYes)、熱交換時の伝熱面積を変化させることなく、現状の段数Nが維持される。
【0047】
一方、冷却液温度Tが遷移下限温度TH1以上となると(S113でNo,S115でYes)、ステップS117に示す開弁処理がなされる。この処理では、現状の段数Nが増加するように、対応するバルブが開弁状態となる。例えば、現状の段数NがN=1の第1段階(図7(A)参照)であることから、N=2の第2段階(図7(B)参照)に変更するため、第1段階におけるバルブの開閉状態に対して、バルブ42a,42b,46a,46bがさらに開弁状態になる。そして、ステップS119に示す段数加算処理にて、段数Nが1段階増加するようにN=2に設定され、ステップS121に示す時定数t’リセット処理にて、時定数t’がリセットされる。
【0048】
上述したステップS113の判定処理において、冷却液温度Tが適温下限温度TL1以下となると(S113でNo,S115でNo)、ステップS123に示す判定処理にて現状の段数NがN=1であるか否かについて判定される。ここで、現状の段数NがN=1であり、これ以上伝熱面積を減らすことができない状態では、現状の段数N(N=1)が維持される。
【0049】
一方、現状の段数NがN=1でない場合には、総伝熱面積を減らしてでも熱電変換ユニットに加える温度差を高めるため、ステップS125に示す閉弁処理がなされる。この処理では、現状の段数Nが減少するように、対応するバルブが閉弁状態となる。例えば、現状の段数NがN=3の第3段階(図7(C)参照)であることから、N=2の第2段階(図7(B)参照)に変更するため、第3段階におけるバルブの開閉状態に対して、バルブ43a,43b,47a,47bが閉弁状態になる。そして、ステップS127に示す段数減算処理にて、段数Nが1段階減少するようにN=2に設定され、ステップS129に示す時定数t’リセット処理にて、時定数t’がリセットされる。
【0050】
また、インバータ11の駆動に応じてその発生熱量が増加したことで、温度センサ62にて測定される冷却液温度Tが遷移上限温度TH2より高くなると(S105でYes)、発電よりもインバータ11の冷却を優先するために、ステップS131に示す混流処理がなされる。この処理では、高温側配管14のバルブ14a,14bと、低温側配管24のバルブ24a,24bとが閉弁状態となり、高温側バイパス31のバルブ31a,31bと、低温側バイパス32のバルブ32a,32bとが開弁状態となる。
【0051】
これにより、両バイパス31,32を介して高温側冷却液W1と低温側冷却液W2とが混流し、この混流した冷却液がラジエータ21にて放熱された後に熱電変換ユニットを介して熱交換されることなくウォータジャケット12に流れることとなる。その結果、より低い温度の冷却液がウォータジャケット12に流れる高冷却状態となるので、熱電変換ユニットを介して熱交換する場合と比較して、インバータ11を効果的に冷却することができる。
【0052】
そして、このような混流状態(高冷却状態)になると、ステップS133に示す処理にて、段数NがN=Nmaxに設定されるとともに、ステップS135に示す時定数リセット処理にて、時定数tがリセットされる。
【0053】
上述のように混流した冷却液によりインバータ11を冷却することで、温度センサ62にて測定される冷却液温度Tが遷移上限温度TH2以下になると(S105でNo)、段数N=Nmaxであることから、ステップS107にてYesと判定される。そして、ステップS137に示す独立環流処理がなされ、高温側配管14のバルブ14a,14bと、低温側配管24のバルブ24a,24bとが開弁状態となり、高温側バイパス31のバルブ31a,31bと、低温側バイパス32のバルブ32a,32bとが閉弁状態となる。そして、ステップS139に示す開弁処理がなされ、各ヒートシンクに連結するバルブが全て開弁状態となり、全ての熱電変換ユニット51〜56にて熱交換がなされる第4段階の熱交換状態となる。そして、ステップS141に示す最大段数変更処理にて、段数NがN=4に設定される。
【0054】
これにより、高温側配管14内の高温側冷却液W1と低温側配管24内の低温側冷却液W2とがそれぞれ混流することなく独立して環流する独立環流状態(発電状態)となり、熱電変換ユニット51〜56を介して高温側冷却液W1と低温側冷却液W2との間で熱交換がなされて、この熱交換時の温度差を利用した発電が再開されることとなる。
【0055】
ここで、上述した発電処理により制御される各バルブの開閉状態と冷却液温度Tとの関係について、図10を用いて説明する。図10は、温度センサ62にて測定される冷却液温度Tの時間変化を示すタイミングチャートである。
インバータ11が駆動開始し、インバータ11の発生熱量が高くなり温度センサ62にて測定される冷却液温度Tが遷移下限温度TH1以上になると(図10のP1参照)、ステップS115にてYesと判定され、高温側冷却液W1をより冷却するため、ステップS117以降の処理がなされ、熱交換状態が第1段階から第2段階に変更される。
【0056】
このように熱交換状態が第2段階に変更されたことで熱交換量が増えると、高温側冷却液W1がより冷却され、時定数t’が一定値t’dを超える前に、冷却液温度Tが遷移下限温度TH1を下回ることとなる(図10のP2参照)。そして、インバータ11の負荷が増えて当該インバータ11の発生熱量がさらに高くなるために冷却液温度Tが上昇し(図10のP3参照)、上昇する冷却液温度Tが再び遷移下限温度TH1以上になると(図10のP4参照)、ステップS115にてYesと判定され、高温側冷却液W1をさらに冷却するため、ステップS117以降の処理がなされ、熱交換状態が第2段階から第3段階に変更される。
【0057】
このように熱交換状態が第3段階に変更されたことで熱交換量がさらに増えると、高温側冷却液W1がさらに冷却され、時定数t’が一定値t’dを超える前に、冷却液温度Tが遷移下限温度TH1を下回ることとなる(図10のP5参照)。そして、インバータ11の負荷が減り当該インバータ11の発生熱量が低くなると冷却液温度Tが低下し(図10のP6参照)、低下する冷却液温度Tが適温下限温度TL1以下になると(図10のP7参照)、ステップS113、S115、S123にてそれぞれNoと判定され、総伝熱面積を減らしてでも熱電変換ユニットに加える温度差を高めるため、ステップS125以降の処理がなされ、熱交換状態が第3段階から第2段階に変更される。
【0058】
このように熱交換状態が第2段階に変更されたことで熱交換量が減ると、高温側冷却液W1の冷却が低下し、時定数t’が一定値t’dを超える前に、冷却液温度Tが遷移下限温度TH1を超えることとなる(図10のP8参照)。そして、再びインバータ11の負荷が増えて当該インバータ11の発生熱量がさらに高くなるために冷却液温度Tが上昇し(図10のP9参照)、上昇する冷却液温度Tが再び遷移下限温度TH1以上になると(図10のP10参照)、ステップS115にてYesと判定され、高温側冷却液W1をさらに冷却するため、ステップS117以降の処理がなされ、熱交換状態が第2段階から第3段階に変更される。
【0059】
そして、インバータ11の発生熱量が高いことから、時定数t’が一定値t’dを超えても冷却液温度Tが遷移下限温度TH1以上であると(図10のP11参照)、ステップS115にてYesと判定され、高温側冷却液W1をさらに冷却するため、ステップS117以降の処理がなされ、熱交換状態が第3段階から第4段階に変更される。
【0060】
そして、インバータ11の発生熱量が高い状態が維持されることで、冷却液温度Tが遷移上限温度TH2を超えると(図10のP12参照)、ステップS105にてYesと判定されて、発電よりもインバータ11の冷却を優先するために、ステップS131以降の処理がなされる。これにより、高温側冷却液W1および低温側冷却液W2が混流したより低い温度の冷却液がウォータジャケット12に流れる混流状態(高冷却状態)となり、インバータ11が効果的に冷却される。
【0061】
このように混流状態に切り替えられたことでインバータ11が優先的に冷却され、時定数tが一定値tdを超える前に、冷却液温度Tが遷移上限温度TH2以下となると(図10のP13参照)、ステップS105でNo、ステップS107でYesと判定されて、ステップS137以降の処理がなされる。これにより、混流状態(高冷却状態)から独立環流状態(発電状態)に切り替えられ、熱電変換ユニット51〜56による熱交換時の温度差を利用した発電が再開される。
【0062】
そして、インバータ11の負荷が減り当該インバータ11の発生熱量が低くなると冷却液温度Tが低下し(図10のP14参照)、低下する冷却液温度Tが適温下限温度TL1以下、すなわち適温領域内になると(図10のP15参照)、熱交換時の伝熱面積が維持されることとなる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る発電システム40では、各バルブ41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b,45a,45b,46a,46b,47a,47bの開閉により、高温側ヒートシンク41〜44内を流れる高温側冷却液W1と高温側ヒートシンク45〜47内を流れる低温側冷却液W2との間に介在する熱電変換ユニット51〜56を介した熱交換時の伝熱面積が変更可能に構成される。そして、温度センサ62にて検出される冷却液温度Tが安全上限温度Tを超えることなく熱交換時の温度差を大きくするように、制御ユニット61にて実行される発電処理により、各バルブの開閉が制御されて伝熱面積が変更される。
【0064】
これにより、インバータ11から高温側冷却液W1に伝熱される熱量が小さくなる場合でも、各バルブの開閉を制御して冷却液温度Tが安全上限温度Tを超えない程度に熱電変換ユニット51〜56を介した熱交換時の伝熱面積を小さくすることで、高温側冷却液W1の冷却が必要最小限に制御されて、熱電変換ユニット51〜56に加わる熱交換時の温度差を大きくすることができる。すなわち、インバータ11からの熱量や冷却液W1,W2の温度および流量などが変化する場合でも、熱電変換ユニット51〜56を介した熱交換時の伝熱面積が変更されることで、熱電変換ユニット51〜56を介した熱交換時の温度差を大きく維持することができる。
したがって、インバータ11の熱と冷却媒体との温度差を高く維持することで効率的に発電することができる。
【0065】
また、切替手段として、高温側バイパス31および低温側バイパス32と、バルブ14a,14b,24a,24b,31a,31b,32a,32bにより、高温側冷却液W1と低温側冷却液W2との両冷却液が混流することなく熱電変換ユニット51〜56の少なくともいずれかを介して熱交換する発電状態(独立環流状態)と、両冷却液W1,W2を熱電変換ユニット51〜56を介することなく混流することでインバータ11の冷却を高めた高冷却状態(混流状態)とのいずれかの状態に切り替え可能に構成される。そして、温度センサ62にて検出される冷却液温度Tが遷移上限温度TH2に達すると、制御ユニット61にて実行される発電処理により、上記切替手段が高冷却状態(混流状態)に切り替わるように制御される。
【0066】
これにより、冷却液温度Tが遷移上限温度TH2に達する場合には、熱電変換ユニット51〜56を介した熱交換が実施されないため、熱電変換ユニット51〜56を介することによる伝熱損失がなくなり、両冷却液W1,W2間の熱交換効率が向上する。その結果、冷却液を用いたインバータ11の冷却性能が向上するので、インバータ11の発熱温度を安全上限温度Tよりも低い温度に下げることができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明に係る発電システム40は、インバータ11にて発生した熱とこの熱を冷却するための冷却媒体(冷却液)との温度差を利用して発電することに限らず、エンジンなどの車両に搭載される発熱機器にて発生した熱とこの熱を冷却するための冷却媒体(冷却液)との温度差を利用して発電するように構成されてもよい。また、車両に搭載されない発熱機器であっても、ラジエータ21のような放熱器を用いた冷却がなされる発熱機器であれば、本発明に係る発電システム40を採用してもよい。
【0068】
(2)熱電変換ユニットは、6つ用意されることに限らず、2〜5つ用意されてもよいし、7つ以上用意されてもよい。この場合、各熱電変換ユニットは、冷却液の流入が制御可能な高温側ヒートシンクと低温側ヒートシンクとの間に介在するように配置することができる。また、熱交換状態は、第1段階〜第4段階までの4つの段階で変更されることに限らず、例えば、2つや3つの段階で変更されてもよいし、5つ以上の段階で変更されてもよい。
【0069】
(3)温度センサ62は、ウォータジャケット12から流出する冷却液の温度を冷却液温度Tとして測定することに限らず、インバータ11の発熱温度を直接測定するように構成されてもよい。この場合、温度センサ62の測定位置等に応じて、安全上限温度T、遷移下限温度TH1、遷移上限温度TH2、適温下限温度TL1などを適宜変更することができる。
【0070】
(4)制御ユニット61にて実行される発電処理では、温度センサ62にて測定される冷却液温度Tだけでなく、温度センサ63にて測定されるラジエータ21から流出する冷却液の温度や流量センサ64にて測定される高温側配管14内を流れる冷却液の流量、流量センサ65にて測定される低温側配管24内を流れる冷却液の流量に応じて、各バルブだけでなく、高温側ウォーターポンプ13を駆動するモータ13aや低温側ウォーターポンプ23を駆動するモータ23a、クーリングファン22を駆動するモータ22aを駆動制御して、インバータ11の冷却や、各熱電変換ユニット51〜56による発電量を制御してもよい。
【符号の説明】
【0071】
11…インバータ(発熱機器)
14…高温側配管
14a,14b…バルブ(切替手段)
21…ラジエータ(放熱器)
24…低温側配管
24a,24b…バルブ(切替手段)
31…高温側バイパス(切替手段)
32…低温側バイパス(切替手段)
31a,31b,32a,32b…バルブ(切替手段)
40…発電システム
41〜44…高温側ヒートシンク(変更手段)
41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b…バルブ(変更手段)
45〜47…低温側ヒートシンク(変更手段)
45a,45b,46a,46b,47a,47b…バルブ(変更手段)
51〜56…熱電変換ユニット(熱電変換手段)
61…制御ユニット(制御手段)
62…温度センサ(温度検出手段)
T…冷却液温度(発熱温度)
…安全上限温度(上限温度)
H1…遷移下限温度
H2…遷移上限温度(所定の温度)
L1…適温下限温度
W1…高温側冷却液(高温側冷却媒体)
W2…低温側冷却液(低温側冷却媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される発熱機器にて発生した熱が伝熱された高温側冷却媒体と、当該高温側冷却媒体を冷却するためこの熱が伝熱された後に放熱器にて放熱された低温側冷却媒体との熱交換時の温度差を利用した熱電変換手段により発電する発電システムであって、
前記高温側冷却媒体と前記低温側冷却媒体との間に介在する前記熱電変換手段を介した熱交換時の伝熱面積を変更可能な変更手段と、
前記発熱機器の発熱温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段にて検出される前記発熱温度が当該発熱機器の許容される上限温度を超えることなく前記熱交換時の温度差を大きくするように、前記変更手段を制御して前記伝熱面積を変更する制御手段と、
を備えることを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記高温側冷却媒体と前記低温側冷却媒体とが混流することなく前記熱電変換手段を介して熱交換する発電状態と、前記高温側冷却媒体と前記低温側冷却媒体とを前記熱電変換手段を介することなく混流することで前記発電状態よりも前記発熱機器の冷却を高めた高冷却状態とのいずれかの状態に切り替え可能な切替手段を備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段にて検出される前記発熱温度が前記上限温度よりも低く設定される所定の温度に達すると、前記切替手段を前記高冷却状態に切り替えるように制御することを特徴とする請求項1に記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−46504(P2013−46504A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183234(P2011−183234)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000143639)株式会社今仙電機製作所 (258)