説明

発電ユニット及び発電ユニットの起動方法

【課題】発電起動する際に消費されるエネルギーを低減し、省エネルギー化を実現する。
【解決手段】蒸気タービンに供給する蒸気条件が成立するまで、ボイラに水を供給し、ボイラを通過した蒸気を復水して再びボイラに戻す起動系統と、この起動系統に水を循環させる運転を行うM−BFP12等の補機と、ボイラに対して通気、排気を行う通風系統と、通風系統の通気、排気運転を行うGRF54A、54B、FDF56A、56B、DNF58A、58B等の補機と、ボイラの温度及び圧力を検出する温度検出装置110及び圧力検出装置120と、起動系統補機及び通風系統補機への給電制御を行うメタクラ盤110とを備え、メタクラ盤110は、初期運転時におけるボイラの温度及び圧力に基づいて、起動系統補機を起動させてから通風系統補機を起動させる時期を設定し、起動時期に達したときに通風系統補機を起動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電ユニット及び発電ユニットの起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発電ユニットの通常起動時においては、M−BFP(モータ駆動給水ポンプ)を起動して、所定時間後(例えば、1分後)に通風系統の補機を起動している。通風系統の補機として、ボイラの中に送風する2台のFDF(押込送風機)、一度燃焼したガスを火炉の下から再度吹き込ませる2台のGRF(ガス再循環送風機)、燃焼したガスを外部に排気する2台のDNF(ガス排出機)を備えている。これらの通風系統の補機は、メタクラ盤(高圧閉鎖配電盤)によって給電制御される。
【0003】
ところで、発電ユニットにおいては、各種の大型補機の運転時間が長いとそれだけ、多くの燃料が消費されることになる。そこで、従来、電力需要に合わせて発電ユニットを起動、停止させること、例えば週末に停止して週明けに起動(週末起動)することにより、省エネルギーを図ることが、発電所において行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−68646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発電ユニットを停止してから起動するまでの間に、ボイラの圧力が低下していくが、ボイラの圧力が低下すると、M−BFP起動から、給水確立までに時間がかかってしまう。しかし、給水確立までの時間が延びるとそれだけ、ボイラ点火前において通風系統を無駄に駆動することになる時間が長くなり、通風系統を駆動するエネルギーを無駄に消費するおそれがある。また、ボイラに水が張られる前に、通風系統を駆動することは、通風系統の送風によってボイラを冷やしてしまい、ボイラを適正温度にするために余計なエネルギーを使ってしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決し、発電起動する際に消費されるエネルギーを低減し、省エネルギー化を実現した発電ユニット及び発電ユニットの起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0008】
(1) 本発明の発電ユニットは、ボイラの起動時に、蒸気タービンに供給する蒸気条件が成立するまで前記ボイラに水を供給し、前記ボイラを通過した蒸気を復水して再び前記ボイラに戻す起動系統と、この起動系統に水を循環させる運転を行う起動系統補機と、前記ボイラに対して通気、排気を行う通風系統と、前記通風系統の通気、排気運転を行う通風系統補機と、前記ボイラの温度及び圧力を検出する検出器と、前記起動系統補機及び前記通風系統補機への給電制御を行う給電制御装置とを備え、前記給電制御装置は、前記ボイラの初期運転時における前記ボイラの温度及び圧力に基づいて、前記起動系統補機を起動させてから前記通風系統補機を起動させる時期を設定し、当該時期に達したときに前記通風系統補機を起動させることを特徴とする。
【0009】
(2) 本発明の発電ユニットの給電方法は、ボイラの起動時に蒸気タービンに供給する蒸気条件が成立するまで、前記ボイラに水を供給し、前記ボイラを通過した蒸気を復水して再び前記ボイラに戻す起動系統と、この起動系統に水を循環させる運転を行う起動系統補機と、前記ボイラに対して通気、排気を行う通風系統と、前記通風系統の通気、排気運転を行う通風系統補機とを備えた発電ユニットにおける、前記起動系統補機及び前記通風系統補機への給電方法であって、前記ボイラの初期運転時において前記ボイラの温度及び圧力に基づいて、前記起動系統補機を起動させてから前記通風系統補機を起動させる時期を設定し、当該時期に達したときに前記通風系統補機を起動させることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、起動系統補機を起動させた後に、通風系統を適正なタイミングで駆動することが可能になり、例えば、給水が全く確立していないときに通風系統を駆動することによる無駄なエネルギー消費を抑えることが可能になり、省エネルギー化を実現することが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、起動系統補機を起動させた後に、通風系統を適正なタイミングで駆動することが可能になり、例えば、給水が全く確立していないときに通風系統を駆動することによる無駄なエネルギー消費を抑えることが可能になり、省エネルギー化を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が適用されるボイラの水蒸気系統を示すブロック図である。
【図2】本発明が適用される通風系統を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態における起動制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1はボイラの起動系統を示すブロック図である。起動系統の機器は、脱気器10、M−BFP12、ボイラ50、図示しない蒸気タービン、フラッシュタンク24、復水器30、復水ポンプ32が含まれている。
【0015】
脱気器10は、復水器30からの復水は脱気するものである。M−BFP12は、脱気器10とボイラ50を連結する配管に設けられ、ボイラ50に水を送り出すものである。フラッシュタンク24は、ボイラ50からの廃蒸気を回収するものである。復水器30は、ボイラ50で得られた蒸気を使用後に復水するものである。復水ポンプ32は、復水器30の水を脱気器10に送り出すものである。
【0016】
また、ボイラ50は、水壁13、ケージ壁14、一次SH(過熱器)16及び二次SH18などによって構成される。脱気器10によって脱気された水はM−BFP12によって送り出され、M−BFP12から送り出された給水は、出口側に設けられた弁によって流量が調整され、高圧ヒータを通してボイラ50の水壁13に入る。
【0017】
ボイラ50に供給された水は、水壁13、ケージ壁14を通過する際に受熱・蒸発し蒸気となり、一次SH16、二次SH18を通過する際に所定の蒸気温度となって、二次SH18から蒸気タービンへ供給される。
【0018】
ボイラ起動時には、蒸気タービンに供給する蒸気条件が成立するまで、起動バイパス系統を使用してフラッシュタンク24を通し、復水器30、脱気器10を通って再び水壁13に戻るといった循環運転が行われる。この起動バイパス系統には一次SHバイパス系統Aと二次SHバイパス系統Bの2系統が装備されている。最初に初期運転として一次SH16の入口温度が規定温度になるまでは、ケージ壁14と一次SH16の入口間に設けられた配管19を有する一次SHバイパス系統Aを通して、ミニマム給水量の全量の循環運転を行う。
【0019】
この初期運転状態においては、一次SH16と二次SH18とを連結する連絡管17に設けられた図示しない弁及び連絡管17から分岐してフラッシュタンク24に連結される配管21の所定位置に設けられた二次SHバイパス弁22は全閉状態の運転である。
【0020】
起動バイパス運転における、一次SHバイパス系統Aは、配管19と、配管19における一次SH16の手前の流路からフラッシュタンク24に至るまでに設けた一次SHバイパス弁22などから構成され、ケージ壁14を出たミニマム給水量は、配管19を通り、一次SHバイパス弁20により一次SH16の出口圧力を一定に制御調整して、フラッシュタンク24に供給される。
【0021】
一次SH16の入口温度が既定値に達すると、次に二次SHバイパス弁22が開き、二次SHバイパス系統Bの運用に入り、順次起動バイパス運用がなされ、蒸気タービンに必要な蒸気条件を確立する運用がなされる。
【0022】
また、ボイラ起動時には蒸気タービンへ供給する蒸気条件が成立するまで、水及び/又は蒸気からなる流体を、一次、二次SH起動バイパス系統A、Bを使用してフラッシュタンク24に通し、復水器、脱気器1へ循環させる運転が行われる。さらに、フラッシュタンク24からの水及び/又は蒸気が、フラッシュタンク水位調節弁28を備えた配管29を経由して復水器30に供給される。また、フラッシュタンク24からの水及び/又は蒸気は、配管29から分岐して脱気器10に連結し、脱気器加熱ドレン弁26を備えた配管27から、脱気器10に供給される。
【0023】
このように2つの起動バイパス系統は、ボイラ水張りとボイラ昇圧から始まり、蒸気タービン通気と蒸気タービン併入までの間に、給水あるいは復水を2つのバイパス系統を通してフラッシュタンク24から復水器30に回収・循環する系統である。
【0024】
図2はボイラの通風系統を示すブロック図である。本実施形態においては通風系統Aと通風系統Bの2つの系統を備えている。通風系統Aを構成する機器は、A−BSF(バイオマススラリー燃料供給器)52A、一度燃焼したガスをボイラ50の下から再度吹き込ませるA−GRF54A、ボイラの中に送風するA−FDF56A、燃焼したガスを煙突を介して外部に排気するA−DNF58A、燃焼したガスに含まれる窒素化合物を窒素と水に分解する排煙脱硝装置60Aなどから構成される。
【0025】
A−FDF56Aによってバイオマススラリー燃料が燃焼しているボイラ50内に外気が供給される。そして、燃焼したガスは、排煙脱硝装置60Aに送られる一方で、A−GRF54Aによってボイラ50の下に供給される。排煙脱硝装置60Aによって脱硝されたガスは、A−DNF58Aによって引かれ、煙突を介して外部に送られる。このように、通風系統Aによって外気をボイラ50に供給し、燃焼したガスを外部に排気するという運転が行われる。
【0026】
通風系統Bを構成する機器は、通風系統Bを構成する機器であるA−BSF52A、A−GRF54A、A−FDF56A、A−DNF58A、排煙脱硝装置60Aと同一の機器であるB−BSF52B、B−GRF54B、B−FDF56B、B−DNF58B、排煙脱硝装置60B等から構成される。
【0027】
B−FDF56Bによってバイオマススラリー燃料が燃焼しているボイラ50内に外気が供給される。そして、燃焼したガスは、排煙脱硝装置60Bに送られる一方で、B−GRF54Bによってボイラ50の下に供給される。そして、排煙脱硝装置60Bによって脱硝されたガスは、B−DNF58Bによって引かれ、煙突を介して外部に送られる。このように、通風系統Bによって外気をボイラ50に供給し、燃焼したガスを外部に排気するという運転が行われる。
【0028】
図3はメタクラ盤によって給電制御される補機を示す説明図である。メタクラ盤100には、M−BFP12、2台のGRF54A、54B、2台のFDF56A、56B、2台のDNF58A、58B、一次SH16の温度を検知する温度検知装置110、一次SH16の圧力を検知する圧力検知装置120が接続されている。また、メタクラ盤100には、M−BFP12、GRF54A、54B、FDF56A、56B、DNF58A、58Bに対する電力の供給及び遮断を行う遮断回路130が設けられている。また、メタクラ盤100には、メタクラ盤100全体の動作を制御するCPU140、及び各種のデータやプログラムが記憶されているメモリ150が設けられている。
【0029】
メモリ150には、M−BFP12を起動するときの一次SH16の温度及び残圧と、M−BFP12を起動後における通風系統の起動時期との対応関係のデータが記憶されている。具体的に、M−BFP12を起動するときの一次SH16の温度及び残圧によって起動系統による給水確立の時間が変化することから、一次SH16の温度及び残圧に応じた給水確立の時間のデータが通風系統の起動時期としてメモリ150に記憶されている。言い換えれば、給水が確立した時点で通風系統が起動するように通風系統の起動時期のデータが設定されている。
【0030】
例えば、パターン1として、一次SH16の圧力が6.5MPa以下で温度が140℃であれば、M−BFP12を起動してから20分後に通風系統を起動する。パターン2として、一次SH16の圧力が8.0MPa以下で温度が170℃であれば、M−BFP12を起動してから10分後に通風系統を起動する。このようなデータがメモリ150に記憶されている。
【0031】
そして、CPU140は、M−BFP12への給電を開始する制御を行う際に、温度検知装置110及び圧力検知装置120の検出結果に基づいて、メモリ150に記憶されているデータの中から、現在の一次SH16の温度及び残圧に対応する通風系統の起動時期を取得する。そして、CPU140は、M−BFP12への給電を開始してからの時間を計時し、取得した起動時期に到達したときに通風系統の補機、すなわち、2台のGRF54A、54B、2台のFDF56A、56B、2台のDNF58A、58Bへの給電を開始してこれらの補機を駆動させる。このように、本実施形態においては、M−BFP12を起動してから一定時間後に通風系統を起動するのではなく、一次SH16の温度及び残圧に応じて起動時間を変化させ、給水が確立されるタイミングで通風系統を起動するようになる。
【0032】
以上、説明したように構成された本実施形態によれば、ボイラの圧力が低下してM−BFP起動から、給水確立までに時間がかかる状態であったとしても、給水確立に合わせた適正なタイミングで通風系統を起動することが可能になる。このため、通風系統を駆動するエネルギーを無駄に消費することが防止される。ボイラに水が張られる間は通風系統の送風は停止しているため、送風によってボイラを冷やしてしまうことが防止され、ボイラを適正温度にするために余計なエネルギーを使ってしまうことが防止される。この効果は特に気温が低くボイラが冷めやすい冬場において、顕著なものとなる。
【0033】
具体的に、上述したパターン1の条件、すなわち、一次SH16の圧力が6.5MPa以下で温度が140℃の場合において、M−BFP12の起動直後に通風系統を起動する場合と、20分後に通風系統を起動する場合とをコスト面で比較したところ、次のようになる。
P=√3×6600V×481A×0.85×10−3×11円/KW
≠5.13万×0.33(20分)≠1.7万
すなわち、週末起動1回あたり1.7万のコスト低減を図ることが可能になる。このため、4回/月の起動の場合は年間のコスト低減額は、82万円となり、それだけ省エネルギー化を実現したことになる。
【符号の説明】
【0034】
10 脱気器
12 M−BFP
13 水壁
14 ケージ壁
16 一次SH
17 連絡管
18 二次SH
19、21、27、29 配管
20 一次SHバイパス弁
22 一次SHバイパス弁
24 フラッシュタンク
26 脱気器加熱ドレン弁
28 フラッシュタンク水位調節弁
30 復水器
32 復水ポンプ
50 ボイラ
54A A−GRF
54B B−GRF
56A A−FDF
56B B−FDF
58A A−DNF
58B B−DNF
60A、60B 排煙脱硝装置
100 メタクラ盤
110 温度検知装置
120 圧力検知装置
130 遮断回路
140 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの起動時に蒸気タービンに供給する蒸気条件が成立するまで、前記ボイラに水を供給し、前記ボイラを通過した蒸気を復水して再び前記ボイラに戻す起動系統と、
この起動系統に水を循環させる運転を行う起動系統補機と、
前記ボイラに対して通気、排気を行う通風系統と、
前記通風系統の通気、排気運転を行う通風系統補機と、
前記ボイラの温度及び圧力を検出する検出器と、
前記起動系統補機及び前記通風系統補機への給電制御を行う給電制御装置とを備え、
前記給電制御装置は、前記ボイラの初期運転時における前記ボイラの温度及び圧力に基づいて、前記起動系統補機を起動させてから前記通風系統補機を起動させる時期を設定し、当該時期に達したときに前記通風系統補機を起動させることを特徴とする発電ユニット。
【請求項2】
ボイラの起動時に蒸気タービンに供給する蒸気条件が成立するまで、前記ボイラに水を供給し、前記ボイラを通過した蒸気を復水して再び前記ボイラに戻す起動系統と、
この起動系統に水を循環させる運転を行う起動系統補機と、
前記ボイラに対して通気、排気を行う通風系統と、
前記通風系統の通気、排気運転を行う通風系統補機とを備えた発電ユニットにおける、
前記起動系統補機及び前記通風系統補機への給電方法であって、
前記ボイラの初期運転時において前記ボイラの温度及び圧力に基づいて、前記起動系統補機を起動させてから前記通風系統補機を起動させる時期を設定し、当該時期に達したときに前記通風系統補機を起動させることを特徴とする発電ユニットの給電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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