説明

発電設備におけるタービン発電機架台

【課題】発電施設に設置されるタービン及び発電機を支持する台座であるタービン発電機架台において、効率的に耐震性を向上させる。
【解決手段】タービン発電機架台において、タービン発電機架台の耐震性を向上させる場合、タービン発電機架台の架台下部のみの柱脚をタービン発電機の軸方向またはこれと直交する方向の少なくとも一方向に拡幅し、または柱脚間隔をタービン発電機の軸方向またはこれと直交する方向の少なくとも一方向にタービン発電機架台外側へ拡大し、かつ柱脚の自重増により発生する曲げモーメントの増大を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所、原子力発電所等のタービンを有する発電設備におけるタービン建屋内に構築されるタービン発電機支持架台に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の大規模地震の発生に伴い、各種プラント設備において耐震強度の一層の向上が求められてきており、火力発電所、原子力発電所等の発電設備においても耐震強度の向上は大きな課題である。特に発電設備の重要要素であるタービン建屋内に構築されるタービン発電機支持架台について、十分な強度を持つことが必要である。
【0003】
図7、図8を用いて従来技術における代表的なタービン発電機架台について説明する。一般にタービン発電機架台1は、図7に示すように鉄筋コンクリートで形成された柱脚と梁とで構成されたラーメン構造を有しており、柱脚2と、柱脚2を連結する梁3と、柱脚2の間に設けられた壁4と、タービンや発電機および付属設備を載置する架台床5により構成される。タービン発電機架台1は、大きく分けると図8に示す様にタービン設備と発電機設備を直接支持する架台上部Aと、支持した荷重を建屋の床に伝え、かつ耐震性能を担保する架台下部Bから構成される。
【0004】
また、タービン発電機架台1は建屋10の基礎マット床6上に構築され、柱脚7、オペレーティングフロア8、梁9等から成る構造体に囲まれて設置されている。タービン発電機架台1は構造体との納まり具合や施工性などから、基礎マット床6からほぼ同一形状で垂直に立ち上がる構造となっている。なお、タービン発電機架台1は、建屋10の構造体とは構造的に分離して構築される。
【0005】
タービン発電機架台の耐震性を向上させる技術については、特許文献1に記載のものが知られている。図9、図10に示すこのタービン発電機架台1は、柱脚2と梁3と架台床5を有するラーメン構造を持ち、建屋10内に設けたタービン発電機架台1にタービン12、13及び発電機11を載置し、タービンと発電機の連結軸方向と同一方向、またはこれと直角方向に、タービン発電機架台1外側に突出した控壁(バットレス)からなる耐震壁15、16を設けて耐震強度の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−126296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、鉄筋コンクリート製のタービン発電機架台の耐震強度向上に関する主要な設計項目は、柱脚や梁等の躯体断面内に配列される鉄筋本数(鉄筋量)である。柱や梁の施工においては、鉄筋コンクリートの強度を確保するため躯体断面における鉄筋の周りに十分にコンクリートが充填される必要がある。使用される鉄筋は直径がほぼ50mm前後の大径のものを例えば200mm間隔で設置するため、通常の施工方法の場合には鉄筋段数すなわち躯体断面に配列される鉄筋の配列数は最大でも4段以内が施工上の限界であるという実際的制約がある。
【0008】
しかし、特にタービン発電機架台の高耐震化を考えた場合、地震荷重の増大により柱脚の躯体断面における必要とされる鉄筋の段数がこれより増える可能性があり、上述した施工性の限界と相反するものであった。
【0009】
また、耐震強度を改善するためには柱脚幅を拡大する必要があるが、タービン発電機架台は、通常は施工性および建屋側との納まりから基礎マット床から運転床までほぼ同一形状で垂直に立ち上がっている。したがって、柱脚幅を拡大して柱脚の自重が増加すると、タービン発電機架台上部の重量が従来より大きくなり、これによる地震荷重に対する曲げモーメントが増大し、かえって柱脚下部への負担が増えるというジレンマに陥る。
【0010】
特許文献1に記載のタービン発電機架台はこの点に配慮したものであり、柱脚の寸法増大と架台上部の自重増加は回避できる。しかし、柱脚と耐震壁で配筋状況が異なるため施工性が悪くなる。また、耐震壁15、16と建屋10の構造体7、8、9は分離構造となつていることにより、建屋10の構造体7、8、9の下部に耐震壁15が設置されると、タービン発電機架台と建屋側の躯体取合い構造が複雑になり施工性が悪くなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、タービン建屋内の構造体に囲まれて設置された鉄筋コンクリートからなるラーメン構造をもつタービン発電機架台であって、タービンおよび発電機を載置する架台床と、該架台床を支持する柱脚を有する架台上部と、前記架台上部をタービン建屋基礎に支持する架台梁と柱脚からなる架台下部を有する発電設備におけるタービン発電機架台において、前記架台下部のみの曲げモーメント強度を増加したことを特徴とする。
【0012】
また、タービン発電機架台において、前記タービン発電機架台の架台下部柱脚の柱脚サイズのみを増やすためタービン発電機の軸方向またはこれと直交する方向の少なくとも一方向に拡幅させ曲げモーメント強度を増加させ、耐震強度を向上させたことを特徴とする。
【0013】
また、タービン発電機架台において、前記タービン発電機架台の架台下部柱脚部へ耐震強度を要求されている方向に対し架台下部柱脚の間隔をタービン発電機の軸方向またはこれと直交する方向に拡大させ、前記タービン発電機架台のラーメン構造強度を増加して耐震強度を向上させたことを特徴とする。
【0014】
また、タービン発電機架台において、前記タービン発電機架台の架台下部柱脚の間隔をタービン発電機の軸方向またはこれと直交する方向の少なくとも一方向に拡大させ、耐震強度を向上させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるタービン発電機架台は、タービン発電機架台下部の柱脚を、タービン及び発電機軸方向と同一方向またはこれに直角な方向に対し曲げモーメント強度を増加するように構成したので、タービン発電機架台の剛性が増大し、タービン及び発電機の軸方向あるいは直角方向に生じた地震力に対して鉄筋量を増やすことなく十分な耐震強度を備えることができる。
【0016】
また、タービン発電機架台架台下部のみの曲げモーメント強度を増加することによりタービン発電機架台上部の重量増が抑えられ、結果として過大な曲げモーメントの発生が抑制され、耐震強度の向上に一層効果的な構成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1を示す模式図
【図2】本発明の実施例2を示す模式図
【図3】本発明の実施例3を示す模式図
【図4】本発明の実施例4を示す模式図
【図5】本発明の実施例2によるタービン発電機架台の斜視図
【図6】本発明の実施例2によるタービン発電機架台の模式図
【図7】従来技術によるタービン発電機架台の斜視図
【図8】従来技術によるタービン発電機架台の模式図
【図9】他の従来技術によるタービン発電機架台の斜視図
【図10】他の従来技術によるタービン発電機架台の断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を各実施例と図面について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1に本発明の実施例1を示す。1はタービン発電機架台、2は柱脚、3は架台梁、5は架台床である。タービン発電機架台1は、タービン設備と発電機設備を直接支持する架台上部Aと、支持した荷重を建屋の基礎マット床に伝え、かつ耐震性能を担保する架台下部Bから構成される。点線は柱脚の中心軸である。
【0020】
タービン発電機架台1の下部架台Bにおける柱脚2の両側に、補強部分Sを付加して柱脚2を拡幅する。補強部分Sは柱脚2と一体に形成され、その強度は同等の幅をもつ柱脚と変わらない。このように構成すると、タービン発電機架台1の架台下部Bのみが拡幅され曲げモーメント強度が増加する一方で架台上部A の自重は増加しないから、耐震強度が増すとともに自重増加により発生する曲げモーメントの増加は最小限に抑制される。
【0021】
この場合の補強部分Sを含む柱脚の中心軸は従来の橋脚と同一位置にある。また補強部分Sと建屋10の構造物が干渉しない様に双方の位置寸法を設計する。
【実施例2】
【0022】
図2に本発明の実施例2を示す。下部架台Bの柱脚2の外側のみに、補強部分Sを付加して柱脚2を拡幅する。補強部分Sは柱脚2と一体に形成され、その強度は同等の幅をもつ柱脚と変わらない。また、架台下部Bの柱脚2の中心軸についてみると、架台下部Bの中心軸は架台上部Aの中心軸より外側に移動しており、より強度の高い安定したラーメン構造となっていることが分かる。
【0023】
以下、さらに実施例2のタービン発電機架台の具体的構成について、図5、図6を参照しながら説明する。実施例2による斜視図を図5に、タービン発電機架台のタービン及び発電機軸方向と直角方向断面の模式図を図6に示す。
【0024】
タービン発電機架台1の下部構造体としては、図5、6に示すように、タービン発電機架台の架台上部柱脚19に対し架台下部柱脚17の柱脚を外側に拡幅した構造としている。
【0025】
一般に、地震発生時にタービン発電機架台1の柱脚や梁に生ずる地震荷重は各部材の剛性により決定されるので、タービン側及び発電機側の各部材の剛性をバランスよく配分し均一化してタービン発電機架台全体ににねじれを生じさせないことが重要となる。従つて、柱脚の拡幅寸法もしくは柱脚間隔は、タービン発電機架台においてタービン側及び発電機側の剛性分担が最もバランスよくなるように構造解析等により決定する。
【0026】
上記のような構成を有するタービン発電機架台1を備えたタービン建屋10に、特に水平方向の地震力が作用した場合について説明する。実施例2ではタービン発電機架台1上部の自重増による曲げモーメントを増加させることなく曲げモーメント強度を増加させ、従来のタービン発電機架台に対してより大きな地震力に耐えることができる。また、上記の結果、タービン発電機架台1の剛性が向上することにより、タービン発電機架台1の地震変位を低減させ、機器や配管設計上有利になる。また、従来と同様な地震力を想定する場合には、タービン発電機架台柱脚17の断面内に配列されている鉄筋本数を大幅に削減することができ、施工性を改善することができる。
【実施例3】
【0027】
次に、図3に本発明の実施例3について説明する。実施例3では、補強部分Sを付加した架台下部Bの柱脚2の幅Lは架台上部Aの柱脚2と同等とし、柱脚間隔のみを広げてタービン発電機架台1を強度の高いラーメン構造としている。これによりタービン発電機架台1の自重を殆ど増加させることなく、耐震強度を向上させることができる。
【実施例4】
【0028】
次に、図4に本発明の実施例4について説明する。実施例4では、架台下部Bの柱脚2を拡幅するとともに、柱脚間隔を広げタービン発電機架台1を強度の高いラーメン構造とするとともに、柱脚2自体の曲げモーメント強度を向上させている。この構造によればタービン発電機架台1の耐震強度を最も大きく向上させることができる。
【0029】
以上のように、本発明によれば、タービン発電機架台柱脚の架台下部を、タービン及び発電機軸方向と同一方向またはこれに直角な方向に拡幅し、及び/もしくはタービン発電機架台外側へ柱脚間隔の拡大を行う。
【0030】
これによれば、従来と同等の大きさの地震に対してはタービン発電機架台の地震変位を低減させ機器や配管設計が容易になるとともに、従来のタービン発電機架台よりも大きな地震力に耐えることができるようになる。
【0031】
また、生じる地震荷重がタービン発電機架台全体にわたつて平均化するため、鉄筋量が平均化しタービン発電機架台の施工性が向上する。また、従来と同様な地震力を想定する場合は、鉄筋本数を削減でき、施工性が向上する。さらに、復水機周辺の空間に余裕ができるため、内外の配管類の引き回しが容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
地震対策として更なる設備の高耐震化が要求され、耐震強度を向上させる必要のある各種プラント等の構造物に、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…タービン発電機架台
2…柱脚
3…架台梁
5…架台床
6…基礎マット床
7、8、9…構造体
10…タービン建屋
17…架台下部柱脚
19…架台上部柱脚
A…架台上部
B…架台下部
S…補強部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン建屋内の構造体に囲まれて設置された鉄筋コンクリートからなるラーメン構造をもつタービン発電機架台であって、タービンおよび発電機を載置する架台床と、該架台床を支持する柱脚を有する架台上部と、前記架台上部をタービン建屋基礎に支持する架台梁と柱脚からなる架台下部を有する発電設備におけるタービン発電機架台において、
前記架台下部のみの曲げモーメント強度を増加したことを特徴とするタービン発電機架台。
【請求項2】
請求項1に記載のタービン発電機架台において、前記タービン発電機架台の架台下部柱脚に補強部分を付加してタービン発電機の軸方向またはこれと直交する方向の少なくとも一方向に拡幅させ曲げモーメント強度を増加し、耐震強度を向上させたことを特徴とするタービン発電機架台。
【請求項3】
請求項1に記載のタービン発電機架台において、前記タービン発電機架台の架台下部柱脚の間隔をタービン発電機の軸方向またはこれと直交する方向の少なくとも一方向に拡大させ、前記タービン発電機架台のラーメン構造強度を増加して耐震強度を向上させたことを特徴とするタービン発電機架台。
【請求項4】
請求項2に記載のタービン発電機架台において、前記タービン発電機架台の架台下部柱脚の間隔をタービン発電機の軸方向またはこれと直交する方向の少なくとも一方向に拡大させ、耐震強度を向上させたことを特徴とするタービン発電機架台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−67705(P2012−67705A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214681(P2010−214681)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)