説明

発電設備内における重量物運搬装置及びその運搬方法

【課題】着脱式の吊上げ用の運搬器具を利用することで、天井部に梁、ビーム等がなく、フロア運搬機を走行させることができない狭い場所でも電動機等の重量物を安全かつ迅速に運搬する。
【解決手段】重量物Hを載置する架台2に取り付けたポール支持部3と、上部に掛止リング5を有する吊りピース6と、下部にポール支持部3に着脱自在に連結される連結部8をそれぞれ具備したポール4とを備え、発電設備内における電動機等の重量物Hを吊り上げて運搬する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電設備内に装置されている電動機等の重量物を分解点検する際に、この電動機等の運搬に用いる発電設備内における重量物運搬装置及びその運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電設備内において、例えば複数に並列しているオイルミストセパレータ換気ファン用電動機について分解点検する際に、この電動機のような重量物は、チェーンブロック等の器具を使用しないで人力で運搬している。このような電動機等を設置している個所の天井部には、梁、ビーム等がないため、チェーンブロック等の吊り上げ用の器具が使用できないからである。
【0003】
このような電動機等の重量物を運搬する運搬器具に関する技術について、例えば特許文献1の特開平8−324992号公報「昇降架台を有するフロア運搬機」に示すように、昇降架台に沿ってガイドされる昇降送り台を備えており、昇降送り台を少なくとも1つのチェーン接続部材によって、実質的に鉛直方向の少なくとも1本の荷重チェーンに固定している形式のフロア運搬機において、荷重チェーンが少なくとも部分的に、少なくとも片側の開いたチェーンガイド内でガイドされている昇降架台を有するフロア運搬機が提案されている。
【特許文献1】特開平8−324992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、重量が約50kgはある電動機等の重量物について、狭い場所で作業者が人力により運搬することは大変に危険な作業になりやすいという問題を有していた。そこで、特許文献1のようなフロア運搬機を利用して運搬することが望ましいが、このフロア運搬機は、発電設備内のような狭い場所では利用できないことが多かった。
【0005】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、着脱式の吊上げ用の運搬器具を利用することで、天井部に梁、ビーム等がなく、フロア運搬機を走行させることができない狭い場所でも電動機等の重量物を安全かつ迅速に運搬できる発電設備内における電動機運搬装置及びその運搬方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運搬装置によれば、発電設備内における電動機等の重量物(H)を吊り上げて運搬する重量物運搬装置(1)であって、前記重量物(H)を載置する架台(2)に取り付けたポール支持部(3)と、上部に掛止リング(5)を有する吊りピース(6)を、下部に前記ポール支持部(3)に着脱自在に連結される連結部(8)をそれぞれ具備したポール(4)と、を備えた、ことを特徴とする発電設備内における重量物運搬装置が提供される。
例えば、前記ポール(4)は、前記連結部(8)において水平方向に前記吊りピース(6)と共に回動自在になる構造にする。
【0007】
前記吊りピース(6)は、前記ポール(4)上部において水平方向に前後動するように構成することが好ましい。
前記吊りピース(6)は、前記ポール(4)上部を中心にしてその掛止リング(5)側が円弧状に可動するように構成することができる。
【0008】
本発明の運搬方法によれば、発電設備内における電動機等の重量物(H)を、吊り上げて運搬する重量物運搬方法であって、前記重量物(H)を載置する架台(2)にポール支持部(3)を取り付け、前記重量物(H)を吊り上げて運搬する際に、前記ポール支持部(3)に、上部に掛止リング(5)を有する吊りピース(6)を、下部に前記ポール支持部(3)に着脱自在に挿入される連結部(8)をそれぞれ具備したポール(4)を差し込み、前記重量物(H)を、前記吊りピース(6)の掛止リング(5)に掛けたチェーンブロック(7)で吊り上げ、吊り上げた重量物(H)を、前記ポール(4)と共に水平方向に所定の位置に移動させ、その位置においてその重量物(H)を降ろし、最後に、前記ポール支持部(3)から前記ポール(4)を外す、ことを特徴とする発電設備内における重量物運搬方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の発明では、天井部に梁、ビーム等がないような狭い発電設備内において、電動機等の重量物(H)を安全かつ迅速に運搬することができる。特に、ポール(4)は運搬作業時のみ設置する構造であり、複数台の重量物(H)の運搬に共用することができるため、設置コストを大幅に削減することができる。
【0010】
ポール(4)上部において水平方向に前後動するように構成した吊りピース(6)では、重量物(H)を吊り上げた後、ポール(4)と共に重量物(H)を水平方向に所定の位置に移動させることができる。即ち、重量物(H)を吊り上げた吊りピース(6)の移動半径の長さを可変できるので、重量物(H)を降ろす位置を微妙に調整することができる。
【0011】
同様に、ポール(4)上部を中心にしてその掛止リング(5)側が円弧状に可動するように構成した吊りピース(6)でも、重量物(H)を吊り上げた吊りピース(6)の移動半径の長さを可変できる。
【0012】
上記方法の発明では、電動機等の重量物(H)について分解点検の際に取り付ける方法、即ちポール(4)を常設していないので、発電設備内のパトロールの際には、このポール(4)は外されており、歩行の邪魔にならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の発電設備内における重量物運搬装置は、電動機等の重量物を載置する架台と、架台に取り付けたポール支持部と、上部に掛止リングを有する吊りピースと、下部にポール支持部に着脱自在に連結される連結部をそれぞれ具備したポールとを備えた装置である。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は実施例1の発電設備内における重量物運搬装置を示す正面図である。図2はポール支持部とポール連結部を示すものであり、(a)は縦断面図、(b)はb−b線断面図、(c)はc−c線断面図、(d)はd−d線断面図、(e)はe−e線断面図で
ある。
実施例1の重量物運搬装置1は、発電設備内において、機器のケーシングIに隣接する位置に電動機等の重量物Hを載置する架台2を配置し、この架台2にポール支持部3を取り付け、このポール支持部3に差し込んで重量物Hを吊り上げて運搬するポール4を備えた装置である。
【0015】
架台2は、発電設備内において、例えば複数に並列しているオイルミストセパレータ換気ファン用電動機のような重量物Hを載置する台である。この架台2は図示したように単純に床面に箱状のものを置いただけでなく、ケーシングI側又は他の機器(図示していない)から溶接した鋼材を突設するようにしたものを用いることもできる。
【0016】
ポール支持部3は、ポール4を支えるために架台2の脇に取り付けた略筒状の部材である。このポール支持部3は、架台2の脇に常設して取り付ける。但し、このポール支持部3が発電設備内において作業者がパトロールする際の通行の邪魔になるときは、架台2に着脱式に取り付けることも可能である。このポール支持部3は図示したように架台2の脇に床面に設置したものだけでなく、架台2の脇に強固に取り付けるものであれば、必ずしも床面から設置する必要はない。
【0017】
連結部8は、上部に掛止リング5を有する棒状の吊りピース6と、下部にポール支持部3に着脱自在に連結される連結部8をそれぞれ具備したものである。吊りピース6はその先の掛止リング5にチェーンブロック7等の吊り下げ具を掛け止め、重量物Hを吊り下げる部分である。
【0018】
連結部8は、ポール支持部3に差し込む部分である。これはポール4が発電設備内において作業者がパトロールする際の通行の邪魔にならないように、使用しないときにポール4を取り外せるようにするためでる。
【0019】
また、連結部8は、図2に示すように、ポール4をポール支持部3に挿入した状態で、吊りピース6と共に水平方向に回動させる部材である。図示するように、ポール4の下部の管内に、ベアリング9を入れ、そのベアリング9に隣接して、断面が円形の連結軸10を軸周りに回動自在に挿入し、この連結軸10の下側は、ポール4から露出させ、その断面形状が四角形になっている。この連結軸10の下側は、上述したポール支持部3の断面が四角形の筒内に着脱自在に嵌め込むようになっている。即ち、ポール支持部3は断面が四角形であるために、連結軸10の下側は回動しない。
【0020】
この連結部8とポール支持部3は、水平方向にポール4が吊りピース6と共に回動するものであれば、このような構造に限定されない。また、この連結部8の回動機能をポール支持部3側に組み込んで、ポール4側は単に接続するだけにすることも可能である。
【0021】
このように構成した、このポール4の連結部8をポール支持部3に差し込んだ状態で、ポール4は吊りピース6と共に水平方向に回動させる。そこで、吊りピース6で重量物Hを吊り下げた状態で、このポール4の軸方向を回動中心にして、この重量物Hを回動して移動することができる。
【0022】
図3は本発明の重量物運搬装置で電動機を運搬する方法を示す説明図であり、(a)はポールを取り付ける前の状態、(b)はポールを取り付ける状態、(c)は吊りピースにチェーンブロックを取り付ける状態、(d)は重量物を吊り上げ、回動移動させる状態、(e)は重量物を降ろす状態である。
本発明の運搬方法では、先ず、倉庫等の保管場所からポール4を取り出し、このポール4を分解点検する電動機等の重量物Hを載置する架台2まで運ぶ(図3(a))。
吊り上げて運搬する重量物Hの上方に、吊りピース6の掛止リング5が位置するように、ポール4の連結部8をポール支持部3に差し込む(図3(b))。
【0023】
吊りピース6の掛止リング5にチェーンブロック7を引っ掛ける。このチェーンブロック7下端のフック11を重量物Hに掛け止めて吊り上げる(図3(c))。
ポール4と共に重量物Hを水平方向に所定の位置に回動移動させる(図3(d))。その位置においてその重量物Hを降ろす(図3(e))。例えば台車12に載せて別の場所へ運搬する。
最後に、ポール支持部3からポール4を抜き取り、保管場所に戻す。
【0024】
本発明は、天井部に梁、ビーム等がない狭い発電設備内において、重量物Hを安全かつ迅速に運搬することができる。特に、ポール4は作業時のみ設置することで、複数台の重量物Hの運搬に共用することができる。
【実施例2】
【0025】
図4は吊りピースを可動し得る状態に構成した実施例2の重量物運搬装置を示す正面図であり、(a)は吊りピースに重量物を吊り下げる状態、(b)は重量物を吊り下げた吊りピースを可動した状態である。
実施例2の重量物運搬装置1では、吊りピース6がポール4上部において水平方向に前後動するように構成した。例えば、重量物Hを降ろす場所がポール4から離れた位置にあるときに、この吊りピース6を可動して重量物Hを降ろす位置を微妙に調節することができる。逆に、重量物Hを降ろす場所がポール4に近いときも吊りピース6をポール4側に近づけるように可動する。
【0026】
実施例2の重量物運搬装置1は、ポール4の上部において、略T字形状に吊りピース6を組み付ける。この吊りピース6は垂直状態のポール4において水平方向に前後動するように構成する。この吊りピース6の長手方向にギヤ13を形成し、このギヤ13に噛合するギヤを、ハンドル14の回動操作により、吊りピース6を直線方向に可動させる。
【実施例3】
【0027】
図5は吊りピースを可動し得る状態に構成した実施例3の重量物運搬装置を示す正面図である。
実施例3の重量物運搬装置1では、吊りピース6がポール4上部を中心にしてその掛止リング5側が円弧状に可動するように構成した。例えば、ポール4の上部において、吊りピース6を略L字形状に組み付け、この吊りピース6の基端部に形成したギヤで角度を調整し得るように構成したものである。この実施例3の重量物運搬装置1でも、重量物Hを吊り上げた吊りピース6の半径の長さを可変することができる。
【0028】
なお、本発明は、着脱式の吊上げ用のポール4を利用することで、天井部に梁、ビーム等がなく、フロア運搬機を走行させることができない狭い場所でも安全かつ迅速に電動機等の重量物Hを運搬できる構成であれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の発電設備内における電動機運搬装置及びその運搬方法は、狭い空間であって重量物を運搬する際にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1の発電設備内における重量物運搬装置を示す正面図である。
【図2】ポ−ル支持部とポール連結部を示すものであり、(a)は縦断面図、(b)はb−b線断面図、(c)はc−c線断面図、(d)はd−d線断面図、(e)はe-e線断面図である。
【図3】本発明の重量物運搬装置で電動機を運搬する方法を示す説明図であり、(a)はポールを取り付ける前の状態、(b)はポールを取り付ける状態、(c)は吊りピースにチェーンブロックを取り付ける状態、(d)は重量物を吊り上げ、回動移動させる状態、(e)は重量物を降ろす状態である。
【図4】吊りピースを可動し得る状態に構成した実施例2の重量物運搬装置を示す正面図であり、(a)は吊りピースに重量物を吊り下げる状態、(b)は重量物を吊り下げた吊りピースを可動した状態である。
【図5】吊りピースを可動し得る状態に構成した実施例3の重量物運搬装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 重量物運搬装置
2 架台
3 ポール支持部
4 ポール
5 掛止リング
6 吊りピース
7 チェーンブロック
8 連結部
H 重量物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備内における電動機等の重量物(H)を吊り上げて運搬する重量物運搬装置(1)であって、
前記重量物(H)を載置する架台(2)に取り付けたポール支持部(3)と、
上部に掛止リング(5)を有する吊りピース(6)を、下部に前記ポール支持部(3)に着脱自在に連結される連結部(8)をそれぞれ具備したポール(4)と、を備えた、ことを特徴とする発電設備内における重量物運搬装置。
【請求項2】
前記ポール(4)は、前記連結部(8)において水平方向に前記吊りピース(6)と共に回動自在になる構造である、ことを特徴とする請求項1の発電設備内における重量物運搬装置。
【請求項3】
前記吊りピース(6)は、前記ポール(4)上部において水平方向に前後動するように構成したものである、ことを特徴とする請求項1の発電設備内における重量物運搬装置。
【請求項4】
前記吊りピース(6)は、前記ポール(4)上部を中心にしてその掛止リング(5)側が円弧状に可動するように構成したものである、ことを特徴とする請求項1の発電設備内における重量物運搬装置。
【請求項5】
発電設備内における電動機等の重量物(H)を、吊り上げて運搬する重量物運搬方法であって、
前記重量物(H)を載置する架台(2)にポール支持部(3)を取り付け、
前記重量物(H)を吊り上げて運搬する際に、前記ポール支持部(3)に、上部に掛止リング(5)を有する吊りピース(6)を、下部に前記ポール支持部(3)に着脱自在に挿入される連結部(8)をそれぞれ具備したポール(4)を差し込み、
前記重量物(H)を、前記吊りピース(6)の掛止リング(5)に掛けたチェーンブロック(7)で吊り上げ、
吊り上げた重量物(H)を、前記ポール(4)と共に水平方向に所定の位置に移動させ、その位置においてその重量物(H)を降ろし、
最後に、前記ポール支持部(3)から前記ポール(4)を外す、ことを特徴とする発電設備内における重量物運搬方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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