説明

白水系における堆積物の形成を測定及び調節する方法

本発明は、白水系、好ましくは抄紙機及び/又は板紙抄紙機再循環系における、無機及び/又は有機堆積物を測定及び調節する方法に関する。前記方法によれば、1つ以上のプローブが前記白水系に導入され、次いで事前に選択した曝露期間後に前記系から取り除かれて、表面分析のために前処理される。前記プローブに集積した堆積物は、顕微鏡法、及び/又はガスクロマトグラフィー法、及び/又は質量分析法によって測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白水系、好ましくは抄紙機及び/又は板紙抄紙機の循環系における無機及び/又は有機堆積物の測定及び調節のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な技術、特に水力工学において、工場の能力を低減させるか又は製品の品質における低下を生じさせる、工業的な工場において堆積物が形成する現象がファウリング(fouling)として知られている。ファウリングは、その起源又は堆積した物質の性質によって区別され得る。
【0003】
純粋な無機堆積物はスケール、例えば熱交換器、冷却塔、及び逆浸透施設などにおける石灰のかす又はボイラースケール堆積物が知られている[Flemming, H.-C.: "Biofilme und Wassertechnologie", Tell II: Unerwunschte Biofilme - Phanomene und Mechanismen. Gwf Wasser Abwasser 133, No. 3 (1992)参照]。
【0004】
これらの堆積物が主に生物学的な原因である場合、つまり、堆積物が代謝産物又は細胞外高分子物質(EPSとしても既知)のような他の主要な有機物質だけでなく、生きている生物、主に微生物並びに軟体動物及び他の高等生物を含有する場合には、「バイオファウリング」という用語が使用される。
【0005】
Blancoらは、それらの起源によって、その様な堆積物も非生物(stickle, 樹脂及び石灰のかす/ボイラースケール)と生物(ヘドロ)とに分類している(Blanco M.A., Negro C., Gaspar I., and Tijero J., Slime problems in the paper and board industry. Appl. Microbiol Biotechnol (1996) 46:203-208参照)。製紙における堆積物の形成のメカニズムを理解するために、Kanto Oqvistらは、有機性(生物学的なヘドロを含む)と無機性との間を区別する異なる分類を使用している(Kanto Oqvist L., Jorstad U., Pontinen H., Johnsen L., Deposit control in the paper industry, 3rd ECOPAPERTECH Conference, June 2001, 269-280)。
【0006】
用語「バイオファウリング」は、用語「バイオフィルム」とも関連する。
【0007】
バイオフィルムは、境界面に、つまり微生物がコロニー形成しない又はし得ない環境における表面は事実上存在しないため事実上いずれにおいても生じ得る、微生物によるコロニー形成の特別な形態を表わす。長期間に亘って微生物のコロニー形成に抵抗し得る物質は未だ知られていない(Charaklis, W. G., Marshall, K. C.: "Biofilms: a basis for an interdisciplinary approach" in W. G. Charaklis, K. C. Marshall (EDS), "Biofilms", John Wiley, New York (1990), p. 3 -15)。
【0008】
さらに、バイオフィルム及びバイオフィルム生物はこれまで知られている最も古い生命であり、最も適応力のある生命である。それらは、天然の水塊にだけでなく、生命に適しないと通常解されている場所においても遭遇する。
【0009】
技術システムにおいて、例えば、超純粋の生産のための栄養が枯渇した工場並びに製紙業の配管システムにおいて、バイオフィルムが認められ得る。
【0010】
既に示したように、無機及び/又は有機堆積物及び特にバイオフィルムは、工業的な工場において非常に破壊的な影響を与えることが可能であるため、莫大な経済的損失を生じさせる。さらに、工業的な工場のバイオファウリングによって特に生じる問題は、非常に多様であることが示されている。
【0011】
このうち極めて大きなものは、例えば、微生物のフィルムが腐食を生じさせるか又は悪化させるため、微生物誘発腐食(MIC)である。この過程では、バイオフィルム生物が、腐食に伴う電気化学的なプロセスを加速する。
【0012】
バイオフィルムの特に粘弾性の性質により、微生物が密集した表面は、非常に大きな摩擦抵抗を示し、配管システム又は熱交換器において、流量の減少を生じさせ、圧力の損失又は熱交換における悪化を増大させ得る。極端な場合においては、これが、最終的に配管システム全体の妨害物及び熱交換器の過度の負担となる。
【0013】
他の主要な問題は、例えば、バイオフィルムの断片が剥がれ落ちることである。製紙業においては、これが紙の汚れを生じさせるだけでなく、工場の操業停止をも生じさせ、結果として経済的な悪影響を生じさせ得る。
【0014】
さらに、無機及び/又は有機堆積物の問題、特にファウリング又はバイオファウリングの問題に関しては、技術的な工場においてその様な堆積物を完全に排除することが、多くの場合に不可能であるか、又は経済的な観点から、許容しきれない非常に高いコストにおいてのみ可能であることに言及すべきである。これは、例えば、望ましくないバイオフィルムの形成があるしきい値まで容認され、これらの無機及び/又は有機堆積物を低減又はそれらに対抗するために必要とされる手段が、このしきい値を超えた際に開始されることを意味する。
【0015】
その様な対抗手段を開始して、それらの効果の成功を調べる必要が予測されるために、関心のあるシステムの現在の状態に対する、信頼できる説明を可能にする測定パラメーターを提供するモニタリング方法又はシステムが必要とされている。
【0016】
監視システムのための方法又はモニタリング方法は、基本的に2つの群に分けられる。第一の群は、システムから影響を受けている表面の一片を回収し、関心のある堆積物をそこから開放して調べることを必要とする方法に関する。破壊的方法としても知られる、その様な方法は、従来の実験室の測定方法を使用する古典的又は生化学的な方法である。
【0017】
従来からよく知られている破壊的方法は、別々に工場に取り込まれ、再び取り出されたバイオフィルムの除去できる培養物の表面を使用する。この目的を達成するために、培養物の表面又はいわゆる試片系が、前記系の代表的な位置で曝露され、所望の時間の後にそれらが回収され、オフラインの実験室の測定方法を使用して分析され得る(US 831 H参照)。
【0018】
他の古典的なモニタリング方法は、例えば、製紙業において既に長期間使用されているヘドロ測定板(slime measurement board)である(Klahre, J.; Lustenberger, M.; Flemming, H.-C.: Mikrobielle Probleme in der Papierfabrik − Teil 3: Monitoring. Das Papier 10 (1998), p. 590-596)。
【0019】
しかしながら、その様な実験室的な測定方法の欠点は、それらが労働力、物資、及び設備の観点において労力及び時間を多く投入することを要求する点である。さらに、これらの方法は、フィルムの増殖又は減退及び方法に関連しないばらつきを測定しようとする場合には、試験表面又は試片の細部まで行き届いた一定の処理を要求する。さらに、測定点が常に容易に入手可能なわけではなく、又は系全体を代表するものであるわけでなく、例えば、測定点で有効なフロー条件が、培養物表面のバイオフィルムの構造的な発達に直接的な影響を有する系に通常存在するものと異なる可能性がある。
【0020】
破壊的方法の上述の欠点から、リアルタイム(オンライン)且つシステム内で直接(インライン又はバイパスで)且つ非破壊的に、つまり工程における直接的な介入なしでバイオファウリングの程度を測定するために、多様な努力が現在為されている。それにもかかわらず、破壊的且つオフラインの従来技術から既知の方法に関して、多数のこれらの実験室的方法が、例えば現在市販されている幾つかのインライン測定装置よりも、無機及び有機堆積物、特にバイオフィルムを観察する日常的な実用においてより正確な結果を提供することに言及べきである。したがって、観察するシステムのために非常に正確な結果が必要である場合、又は短い観察期間のみが対象とされる必要がある場合は、その様な破壊的方法が第1の選択肢である。
【0021】
既に概述したように、微生物のヘドロのような堆積物は、製紙工程の際の多数の問題に寄与する。これらは、品質の損失、機械の有用性の低減、及びコストの増大を生じさせ得る(Blanco M.A., Negro C., Gaspar I., and Tijero J., Slime problems in the paper and board industry. Appl. Microbiol Biotechnol (1996) 46:203-208)。
【0022】
機械の循環、特に抄紙機及び/又は板紙抄紙機の循環系における堆積物は、エアロゾル及びの淡水、木材、フィラー、及び化学的な添加剤のような原料によって系に導入される物質の結果として生じる。効果的な対抗手段を開発するために、これらの物質と微生物との間の相互作用、それらの最初の発生から大量の堆積物の形成まで知って理解することが重要である(Kanto Oqvist L., Jorstad U., Pontinen H., Johnsen L, Deposit control in the paper industry, 3rd ECOPAPERTECH Conference, June 2001, 269-280; Mattila K., Weber A., Salkinoja-Salonen M.S., Structure and on-site formation of biofilms in paper machine water flow (2002). J Industr Microbiol Biotechnol 28, 268-279)。それにもかかわらず、堆積物の調節に関する大多数の提案は、現在まで、関心のあるシステムの現状に対する信頼できる説明をすることができない水相における測定に基づいている。
【0023】
例えば、バイオフィルムの堆積の形成に関連して、水相で測定される細胞数と表面に接着した集合体における細胞数との間の関係性は存在しないことが確認された。そのため、液体相における細菌の計数測定は、堆積物形成に対する寄与に関して信頼できる結論を出すことができないから、この方法は適切でなく、EPSの合成が細菌種及び数だけでなくそれらの栄養状態にも非常に大きく依存する(Klahre, J.; Lustenberger, M.; Flemming, H.-C.: Mikrobielle Probleme in der Papierfabrik - Teil 3: Monitoring. Das Papier 10 (1998), p. 590-596)。
【0024】
堆積物の形成に関しては、微生物がより容易に表面にドッキングし得る手段によって、開始フィルム(initiating film)が始めに形成されると考えられている(Schenker A.P., Singleton F.L., Davis C.K. (1998), Proc. EUCEPA, Chemistry in Papermaking, 12-14 Oct.: 331-354)。これに関連して、製紙業に由来するバクテリア株を使用して、洗浄された鉄の表面に棲息するバクテリアが直面する困難を発見したKolariらの研究を参照すべきである(Kolari M., Nuutinen J., Salkinoja-Salonen M.S., Mechanism of biofilm formation in paper machine by Bacillus species: the role of Deincoccus geothermalis (2001). J Industr Microbiol Biotechnol 27:343-351)。
【非特許文献1】Flemming, H.-C.: "Biofilme und Wassertechnologie", Tell II: Unerwunschte Biofilme - Phanomene und Mechanismen. Gwf Wasser Abwasser 133, No. 3 (1992)
【非特許文献2】Blanco M.A., Negro C., Gaspar I., and Tijero J., Slime problems in the paper and board industry. Appl. Microbiol Biotechnol (1996) 46:203-208
【非特許文献3】Kanto Oqvist L., Jorstad U., Pontinen H., Johnsen L., Deposit control in the paper industry, 3rd ECOPAPERTECH Conference, June 2001, 269-280
【非特許文献4】Charaklis, W. G., Marshall, K. C.: "Biofilms: a basis for an interdisciplinary approach" in W. G. Charaklis, K. C. Marshall (EDS), "Biofilms", John Wiley, New York (1990), p. 3 -15
【非特許文献5】Klahre, J.; Lustenberger, M.; Flemming, H.-C.: Mikrobielle Probleme in der Papierfabrik - Teil 3: Monitoring. Das Papier 10 (1998), p. 590-596
【非特許文献6】Blanco M.A., Negro C., Gaspar I., and Tijero J., Slime problems in the paper and board industry. Appl. Microbiol Biotechnol (1996) 46:203-208
【非特許文献7】Kanto Oqvist L., Jorstad U., Pontinen H., Johnsen L, Deposit control in the paper industry, 3rd ECOPAPERTECH Conference, June 2001, 269-280
【非特許文献8】Mattila K., Weber A., Salkinoja-Salonen M.S., Structure and on-site formation of biofilms in paper machine water flow (2002). J Industr Microbiol Biotechnol 28, 268-279
【非特許文献9】Schenker A.P., Singleton F.L., Davis C.K. (1998), Proc. EUCEPA, Chemistry in Papermaking, 12-14 Oct.: 331-354
【非特許文献10】Kolari M., Nuutinen J., Salkinoja-Salonen M.S., Mechanism of biofilm formation in paper machine by Bacillus species: the role of Deincoccus geothermalis (2001). J Industr Microbiol Biotechnol 27:343-351
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
関心のある白水系の現状に対する信頼できる説明を可能にする調査方法が未だに非常に求められているため、特に、白水系における、好ましくは抄紙機及び/又は板紙抄紙機の循環系における無機、微生物、及び/又は有機堆積物の測定を可能にするために、その様な方法を提供することが、本発明の主題であった。さらに、前記方法は、各々の白水系について、特に各々の抄紙機及び/又は板紙抄紙機の循環系についての各種の処理プログラムが評価され得るように、表面における堆積物の形成、並びに白水系における無機、有機、及び微生物物質の間の相互作用を客観的に観察して理解することも可能にすべきである。前記方法は、可能であれば前記系における、pH、温度、化学的な添加剤、原料、再利用廃物、流速のようないかなるパラメーターの変化も対象とするようにin situで実施され、並びに/あるいは前記方法は、非常に正確な結果を得て、関心のある白水系の現状に対する信頼できる説明を得るために破壊的方法であることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の主題は、白水系に導入され、事前に選択した曝露期間後に前記系から再び取り出されて、表面試験のために前処理される1つ以上の被検物を使用し、前記被検体に形成される堆積物を顕微鏡法、及び/又はガスクロマトグラフィー法、及び/又は質量分析法を使用して測定する、白水系、好ましくは抄紙機及び/又は板紙抄紙機の循環系における、無機、微生物、及び/又は有機堆積物の測定及び調節のための方法によって達成される。
【0027】
驚くべきことに、堆積物の形成、特に製紙における堆積物の形成が、単純に微生物の活性にのみ起因するだけでなく、実際には無機物質と有機物質との間の相互作用及び微生物の作用がこれに寄与していることが、本発明の方法を使用して発見された。この理解に基づいて、特定の場合にあわせた処理プログラムを設計し、より少ない毒性物質(殺生物剤)を必要とし、通常より少ないコストであることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明によれば、1つ以上の被検物が調査対象の白水系、好ましくは抄紙機及び/又は板紙抄紙機の循環系に導入される。本発明の方法に使用する被検物の数は、調査対象の白水系に依存する。特に、本発明の方法が抄紙機及び/又は板紙抄紙機の循環系において利用される場合は、試片は常に、過去に問題が生じた位置に正確に置かれ、堆積物の発達が試験されるべきである。この場合、試験しようとする問題箇所における被検物の発達表面において前記系の実質的な評価をするために、可能であるならば、前記系におけるpH、温度、化学的な添加剤、原料、再利用廃物、流速などのようないかなるパラメーターの変化も対象とするように、本発明の方法をin situで実施することを確実にすることに注意すべきである。例えば、被検物が白水系のバイパスに位置する場合には、これは不可能である。被検物として好ましく使用されるものは、例えば、製紙工程のある点、例えばタンク、添加剤の容器、水が飛び散った領域、あるいは単純に濡れているか又は高湿のいかなる位置にも導入される従来の試片系である。
【0029】
フィルムの問題が生じ得る白水系における多数の異なる部材及び工場に関してだけでなく、基本的に専門家は、被検物が生じ得る多数の物質、例えばステンレススチール、Cスチール、各種の金属合金、プラスチック、セラミック、ガラスなどを有する。多数の工業的な白水系、例えば冷却水、用水、プロセス水、及び飲用水において、及び多数の生産工場(例えば板紙抄紙機)において、ステンレススチールは、本発明の被検物のための代表的な物質であり、前記被検物は好ましくは酸耐性ステンレススチールから製造される。
【0030】
特に好ましい実施態様では、前記被検物は、調査対象の系において、適切な位置に固定され吊り下げられ得るように1mmの穴を有する、2mmの厚さのAISI 316 Iステンレススチールの円形のステンレススチール試片である。それにもかかわらず、本発明によれば、試片は被検物として他の形状および寸法であっても良い。
【0031】
被検物を固定するために、例えば、酸耐性ステンレススチールワイヤー及びこの目的に適切な他の固定化手段が、使用されて良い。
【0032】
被検物は、事前に選択した曝露期間で調査対象の白水系に置かれた状態にされる。事前に選択した期間の終わりに、前記被検物は系から取り出され、その後に続く表面試験のために前処理される。選択する曝露期間は、調査対象の白水系、特に堆積物に対する感受性に依存し、単純な試験で試して決定され得る。通常選択される曝露期間は、本発明によれば、1時間から100日の間、好ましくは1から50日、数時間から15日の間の曝露期間であり、特に好ましくは1、2、3、から12日までである。
【0033】
系から取り除かれた被検物は、次いで表面試験のための新しいサンプルとして直接前処理され、特に固定化され、その後分析されるか、又は観察しようとする白水系でまず固定化されて、次いでその後に続く分析が後の時点において実施されて良い。
【0034】
前記被検物に形成される堆積物は、顕微鏡法、特に電子顕微鏡法及び/又は電子分光法を使用して測定される。前記被検物、特に試片の表面は、好ましくは特定の顕微鏡法、例えばエネルギー分散型 X 線分析(EDX)と共に走査型電子顕微鏡(SEM)、並びに例えば速度写像(speed mapping)又は共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)及び落射蛍光顕微鏡(EP)を使用して、曝露後に調べられる。
【0035】
本発明によれば、堆積物の有機物部分は、好ましくは、ガスクロマトグラフィー法及び/又は質量分析法によって測定される。本発明によれば、ガスクロマトグラフィー法及び/又は質量分析法は、他の分析方法と組み合わされても良い。例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)は、赤外分光法(IR分光法)と組み合わされてよく、この場合にはIR分光分析はGCの検出器として役立つ。他のGC検出器は、炎イオン化検出器(FID)、熱伝導度検出器、光イオン化検出器(PID)、電子捕獲型検出器(ECD)、熱イオン化検出器(TID)、炎光光度検出器(FPD)、ホール検出器(HECD)、及び熱エネルギー分析器(TEA)などを含む。好ましい検出器、つまりGCとの組み合わせは、フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)及び質量分析である。さらに、赤外顕微鏡が、有機堆積物を調べるための好ましい方法の1つである。
【0036】
測定は、質量分析器と組み合わせた熱分解ガスクロマトグラフィー(以下、Py-GC/MSと称する)によって、特に好ましく実施される。
【0037】
本発明の方法は、広範な白水系、例えば抄紙機における表面上の堆積物の形成を調べることを可能にするため、特に有利である。調査の目的は、初期の堆積物形成から完全なバルク形成まで、調査対象の機械系における堆積物の実際の構造を分析することである。得られた結果に基づいて、次いで、機械に有害な堆積物の形成を妨げるための効果的な処理プログラムを開発することができる。その様な処理プログラムにおいて利用する製品は、例えば、スケール防止剤、分散剤、殺生物剤、安定剤などである。調査対象の系にあった処理プログラムのための1つ以上の上述の製品の選択は、本発明の方法を使用する事によって得た結果に依存する。
【0038】
本発明の方法は、系の表面における堆積物形成メカニズムの詳細な分析のために、従来技術から既知の他の方法とは有利に異なり、特に、本発明の方法は系中に何が循環しているかを分析しない。
【実施例】
【0039】
I.原料及び方法
使用する前に、試片をFEPA P1000(Struers)耐水研磨紙で磨き、次いでまず洗剤で洗浄し、続いてアセトンで洗浄した。
【0040】
かくして処理した、穴が開けられており、15mmの直径で2mmの厚さのAISI 316Lステンレススチールの試片を、抄紙機又は板紙抄紙機の各所、通常は堆積物の発生が確認されている高湿の箇所に導入した。酸耐性スチールワイヤーを使用して、前記試片を容器又は含水路に直接浸した。
【0041】
適切な曝露期間、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12日後に、前記試片を取り出して、表面試験のために前処理した(SEM/EDX又はCLSM)。
【0042】
SEM試験のための酸耐性ステンレススチール試片の固定化
SEM試験のために、例えば、Vaisanenら, 1998, (Vaisanen O.M., Weber A., Bennasar A., Rainey F.A., Busse H.-J., Salkinoja-Salonen M.S. Microbial communities of printing paper machines. J Appl Microbial (1998) 84: 1069-1084)に記載されているように、表面を固定化して良い。
【0043】
Kolari M., Mattila K., Mikkola R., Salkinoja-Salonen M.S. (Community structure of biofilms on ennobled stainless steel in Baltic Sea water (1998). J Industr Microbiol Biotechnol 21:261-274)によれば、前記試片は僅かに流れている水ですすぐ必要があり、その場合は前記試片が例えばピンセットで垂直に保持される。次いで、前記試片は、Sorensen緩衝液(KH2PO4とNa2HPO4の混合物)を使用して調製される、新しく調製した3%グルタルジアルデヒド中に2時間置く。前記グルタルアルデヒドを、前記試片を3つの異なる容器の新しく調製したSorensen緩衝液に浸して洗い落とした。試片のコロニー形成した面が全ての工程において覆われたままであることが重要である。
【0044】
サンプルから水を除去するために、その都度、15分間、40%、60%、80%、及び96%のエタノールグラジエントに前記試片を置く。96%エタノールで15分たった後に、過剰量のエタノールを除去して、試片をしばらく放置して乾燥させる。
【0045】
ここで記載した方法で固定化した後に、次いで試片をEDX分析と共にSEMを使用して分析する。
【0046】
CLSM及びEP試験のための酸耐性ステンレススチール試片の固定化
落射蛍光顕微鏡法(EP)及び共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)のために、SEMのためのものと同一の酸耐性ステンレススチール試片が従来どおりに使用される。しかしながら、SEM試片とは異なり、前記試片は、各種事前に選択した曝露期間で系に置かれる。次いで、これらの試片は、新しいサンプルとして又は工場で固定化された後に、分析される。
【0047】
固定化時間は、サンプルの性質に依存する。ホルムアルデヒドとグルタルジアルデヒドの混合物を使用して、通常は室温で1から2時間の期間である。低濃度(<4%)のホルムアルデヒドを使用する固定化は平衡反応であるため、固定化後の洗浄工程は短くあるべきである。浸透圧をサッカロースで調節して良い。
【0048】
固定化剤
最も一般的な固定化剤は、純粋物であるか又は混合物のアルデヒドである。固定化剤における重要な成分は、2から4%の濃度のパラホルムアルデヒドである。
【0049】
PBS(ホスフェート緩衝溶液)中の4%パラホルムアルデヒド
4gのパラホルムアルデヒドを60mlのPBSに添加して、その溶液を60℃に加熱する。1NのNaOHを溶液が透明になるまでゆっくりと添加する。放置して室温まで冷却する。pH7.4に設定する(例えば、1N NaOH又は1N HClを使用して)。次いで、100mlの全量になるまでPBSを注ぎ足し、分取して、-20℃で保存する。沈殿を防止するために、それを水浴中で急速に融解させる。
【0050】
落射蛍光顕微鏡(EP)及び共焦点レーザー顕微鏡の双方において、例えば問題の原因として既知のある活性を有する群又は微生物の群、例えばEPS物質、生/死ストランド(live/dead strand)、DNA/RNA鎖などを染色するために、特定の色素が使用される。これらの色素は、堆積物フィルムの内部における微生物、ヘドロ、又は他の考えられる物質の量及び分布を示す。
【0051】
CLSMは堆積物の三次元描写を生じさせるため、落射蛍光顕微鏡法よりも有益である。しかしながら、CLSM法の欠点は、落射蛍光顕微鏡法よりも時間がかかる点である。
【0052】
CLSMのための試片は、特定の色素(Molecular Probes Inc.)を使用して死んでいる生物と生きている生物とを区別し得るKolariら, 1998(Kolari M., Mattila K., Mikkola R., Salkinoja-Salonen M.S. Community structure of biofilms on ennobled stainless steel in Baltic Sea water (1998). J Industr Microbiol Biotechnol 21:261-274)に記載された方法に従って試験する。
【0053】
堆積物の有機物部分の試験は、質量分析器と組み合わせた熱分解ガスクロマトグラフィー(Py-GC/MS)によって実施した。結果は、(全イオン電流(TIC)検出器における)保持時間に対する熱分解産物の強度でパイログラムとして得られる。熱分解産物の構造的特徴を検出するために、2マススペクトルが1秒ごとに記録された。上述の酸といった多数の極性化合物は、使用した非極性GCカラムにとって十分なほど揮発性ではないため、水酸化テトラメチルアンモニウム(THAM)を使用したメチル化を熱分解時において直接実施した。
【0054】
さらに、従来の寒天(Plate Count Agar from Merck, Darmstadt, Germany)上へのプレーティングも実施して、全細菌数の指標を得た。
【0055】
II.製紙業における堆積物形成を調べるためのスチール試片の使用
堆積物の形成を調べてその背景にあるメカニズムを理解するために、試片を各種の抄紙機及び板紙抄紙機の各所に導入した。所定の曝露時間(1から14日の間)後に、それらを取り出して、SEM分析のために即時に固定化した。分析はSEM-EDXを使用して実施した。
【0056】
試片の表面上に、各種のタイプの堆積物が認められた。無機、有機、及び微生物物質の間の相互作用を有する堆積物の例を図1に示す。
【0057】
本発明の方法の特に有利な特徴は、堆積物の初期のフィルムの性質を測定し得ることである。
【0058】
1週間曝露した後に、3つの基本的なタイプの全てを含有する複雑な堆積物が通常認められる。
【0059】
III.抄紙機の領域の各種の境界面における堆積物のタイプ
図2aからfは、抄紙機及び板紙抄紙機内の各種の境界面の領域に導入された試片の例を示す。それらは、抄紙機内の各種の位置における堆積物の各種の構造を示す。取り出した直後に、試片を固定化し、SEM-EDXを使用して試験した。
【0060】
気体-液体境界面、つまり循環の有酸素領域では、初期のフィルムが、1時間の曝露後に検出され得る場合がある。図2aでは、初期のフィルムは無機物質からなる。バクテリア又は他の微生物を形態的に示すものは、殆ど認められなかった。6日の曝露後の同位置における堆積物の構造は、複雑な組成を示す(図2b)。
【0061】
液体-固体境界面の領域では(図2c)、微生物は確認されず、同様にEDXで検出され得る無機物質も確認されなかった。一方、熱分解GC/MSは、堆積物における高い割合のAKD/ASA(アルキルケトン二量体/アルケニルコハク酸無水物)を示す。6日間の曝露後の同一の堆積物を図2dに示す。
【0062】
気体-固体境界面は、持続的に濡れることがない位置において、抄紙機内で認められる。これらの位置の典型的な堆積物は、無機塩及び微生物からなる(図2eからf)。この種類の堆積物は、例えば、ヘドロが多くの場合に複数の点でぶら下がっているスプレーチューブにおいて認められる。
【0063】
そのため、抄紙機の領域における各種の境界面において、堆積物の組成が非常に変化する。
【0064】
IV.
A.堆積物調節コンセプトの設計が堆積物形成の開始の健全な理解を必要とする理由を説明する事例研究1
試片を各種の系に導入した。最大1日後に、それらを取り出して、即時に固定化した。SEM-EDXを使用して分析を実施した。
【0065】
第一の事例である100%二次繊維を使用する板紙抄紙機では、アルミニウム及び酸素を含有する初期フィルムが認められる(図3aからb)。これは、明らかに水酸化アルミニウムである(ワイヤ水(wire water)中のpH6.8に相当する)。
【0066】
第二の事例である100%二次繊維を使用する板紙抄紙機でも、表面にバクテリアの集団が同定される。無機物質はバクテリアのEPSに堆積し始めている(図3c−d)。
【0067】
第三の事例では、有機フィルムは1日後に視認できる。たとえ幾つかの位置からの堆積物サンプルの熱分解GC/MSが高い比率のAKD/ASAを検出したとしても、厳格な分類は困難である。無機物質は、EDX分析によって検出され得なかった。微生物の典型的な形態の傾向も明らかでない(図3eからf)。
【0068】
これらの結果から、試片表面上の初期のフィルムの組成は、特定の系に非常に強く依存することが結論付けられた。それにもかかわらず、効果的な対抗手段をとるために、初期フィルムの知識を有することが非常に重要である。既に説明したとおり、多数の種が純粋な金属表面に接着できないことから、通常は堆積物の形成を開始するのはバクテリアではないため、これはいっそう妥当である(Kolari M., Nuutinen J., Salkinoja-Salonen M.S., Mechanism of biofilm formation in paper machine by Bacillus species: the role of Deincoccus geothermalis (2001). J Industr Microbiol Biotechnol 27:343-351参照)。
【0069】
B.堆積物調節コンセプトの用意のための全細菌数の測定の不十分を説明する事例研究2
微生物のプレーティングを従来の寒天上において実施した。同時に、微生物を選択色素で染色して生きている種と死んでいる種との間を区別して、試片を試験した。これらの表面を共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)で分析した。調査した系は、同一の製紙工場からのワイヤ水及び生物学的水であった(100%二次繊維)。
【0070】
工程に戻された生物学的水では、1000cfu/ml未満が寒天上のプレーティングによって認められた。試片表面上では(同じ水流において9日後)、約30の糸状菌及び約300のバチルス菌が単位面積(50μm×50μm=0.0025mm2、図4)あたりに認められた。これは、mm2当たり12,000糸状菌及び約120,000バチルス菌に相当する。微生物活性全体のある種のみがプレーティングされ得たことが示された。これは、ヘドロの形成と通気培養物を計数することによって得られたコロニー数との間に相関関係が存在しないことを意味する。
【0071】
製紙における特別な問題が、糸状菌によって生じる。これらの種は、その形態から、品質及びいわゆる実行可能性の問題を生じさせるためよく知られている。不幸なことに、特別な事前の処理なしで、寒天上で培養することが非常に困難であるのが、まさにこれらの糸状菌である(Ramothokang T.R. and Drysdale G.D., Isolation and cultivation of filamentous bacteria implicated in activated sludge bulking. Water SA Vol. 29 No. 4 October 2003, 405-410)。
【0072】
そのため、好気性バクテリアの微生物プレーティングは、堆積物の問題を理解して適切な処理プログラムを設計することに対して有用でない。状態を真に理解して効果的な堆積物調節コンセプトを設計するために、表面上の堆積物形成が調べられ理解されるべきである。
【0073】
事例研究3:試片技術を使用して抗へドロ剤の効果を調べる
従来の殺生物剤スクリーニングの結果とヘドロ堆積物の実際の形成との間の相関関係を決定することを目的とした。100% TMPを使用する新聞印刷用紙抄紙機のワイヤ水に対して調査を実施した。殺生物剤スクリーニングを使用して、30分内に102までの細菌数の低減を達成するための最適殺生物剤濃度を決定することができた。この殺生物剤濃度でヘドロ形成を続いて実施するために、吊り下げた試片とともにフローセル系を利用した。
【0074】
殺生物剤スクリーニングのためにも使用したワイヤ水をこの系の保存用ボトルに注ぎ入れ、ワイヤ水路からのヘドロの多数の塊が豊富に存在した。系の温度(この場合は48℃)で調査を実施した。5日間の試験の間、殺生物剤を毎日投与した。曝露後、生きている生物と死んでいる生物とを区別するために、試片をすぐに選択的に染色し、次いでCLSMで分析した。
【0075】
各種の試験において、大きな違いが細菌数の低減において達成された(差>104cfu/ml)。微生物活性におけるこれらの違いは、しかしながら、図5aからgで示すような表面上に認められるものを反映しなかった。
【0076】
表面上で緑色に染色されたバクテリアが活性である(生きている)。これは、バイオフィルムで覆われている微生物が殺生物剤投与に対して、それほど敏感に反応していないことを示す(図5bからd)。これは、文献に記載された結果とも共通する(Kolari M., Nuutinen J., Rainey F.A., Colored moderately thermophilic bacteria in paper-machine biofilms (2003), J Industr Microbiol Biotechnol 30: 225-238; Grobe K.J., Zahller J., Stewart P.S., Role of dose concentration in biocide efficiency against Pseudomonas aereginosa biofilms (2002), J Industr Microbiol Biotechnol 29:10-15; Kanto Oqvist L., Jorstad U., Pontinen H., Johnsen L., Deposit control in the paper industry, 3rd ECOPAPERTECH Conference, June 2001, 269-280; and Watnick P., Kolter R., Biofilm, City of Microbes. (2000), J Bacteriol, 182: 2675-2679)。一方で、表面上の堆積物の減少は、水相における微生物数の容易に評価し得る変化無しでも可能である(図5eからf)。
【0077】
堆積物及びヘドロ形成の調査は、高へドロプログラムの効果の評価に必須であることに注意すべきである。水相における(細菌数の)測定は、これのためには不十分であり、ある場合では誤った方向に導く。
【0078】
事例研究4:堆積物の問題の予測及び処理のためのツールとしての試片方法
上述のフローセル設備において、さらに一連の測定を実施した。ふたたび、実際のワイヤ水を使用し、各種のサイズ剤を投与した。幾つかの試験では、ある抗ファウリング剤を使用した。試片を4時間後に取り出して、SEMを使用して試験した。
【0079】
結果として、図6aにおいて、ASAのカルシウムセッケンの典型的な有機堆積物がスチール表面に認められる。ASA堆積物は非常に容易に検出されるため、各種の抗ファウリング剤の効果がこの方法を使用して比較的容易に評価できる。ある場合では、多機能の堆積物調節剤を使用した。このフローセル実験の結果を図6bに示す。添加することによってASA堆積物からスチール表面が効果的に保護されることが明らかに認められる。
【0080】
従って、SEMと組み合わせたスチール試片法は、抗へドロ剤の効果及び/又は有効性を調べるために適切であるだけでなく、有機成分の堆積物(ファウリング)の形成を観察するためにも非常に適切である。
【0081】
事例研究5:実際の系における堆積物調節コンセプトの開発のための試片方法
抄紙機における堆積物の実際の形成は、機会のタイプ、原料、未処理の水の質、処理プログラム、循環の閉鎖の程度などに依存し、変化する。循環における堆積物の形成の理解は、堆積物の3つの成分(無機、微生物、及び有機)全てを処理し得る製品、例えばスケール防止剤、殺生物剤、及び分散剤を含めた堆積物調節剤を含むカスタムメイドの処理プログラムを開発するための余地を増大する。
【0082】
例えば、初期の堆積物フィルムが有機であることを最初の分析が示した場合は、殺生物剤のみからなる処理プログラムは効果的ではなかった。図7は、11から12日の処理後に堆積物がどう見えるかを示す。処理プログラムとして、カスタムメイドプログラム及び参照のプログラムを適用した。カスタムメイドプログラムはMFDAと殺生物剤との組み合わせであり、参照のプログラムは殺生物剤のみ使用した。
【0083】
最後に、実際の系における堆積物調節コンセプトの開発のための試片方法の使用について以下に述べる。
【0084】
試片方法は、抄紙機の領域における多数の異なる状況、例えば
・堆積物の初期の層の起源を調べること
・系の変更の場合に堆積物の生じやすさの変化を予測し、避けること
・現在の及び潜在的な堆積物調節コンセプトの効果を比較すること
・堆積物を形成するワイヤ水の含有物の傾向を評価すること
における分析ツールとして適切である。
【0085】
実施した試験の結果として、以下の結論が述べられる:
・起源及び組成に関しては、堆積物の初期の層は抄紙機ごとに変化する。
・プレーティング(計数)による水相における細菌数の測定は、堆積物形成を理解するためには効果的に役に立つものではない。
・堆積物調節コンセプトの有効性の評価は、堆積物及びヘドロ形成の調査を前提とする。水相の測定は、これに関しては好都合なものではない。
・表面をSEMで分析するスチール試片は、有機及び無機物質の堆積物形成、並びにヘドロの問題を調べるために有効に役立つ。各種の堆積物調節プログラムの有効性は、この方法を使用して現実的に評価され比較され得る。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、スチール試片表面のSEM画像である。前記試片は6日間100%二次繊維を使用する板紙抄紙機のワイヤ水路に置いた。
【図2】図2aはスチール試片表面のSEM画像である。100%熱機械パルプ(TMP)を使用する新聞印刷用紙抄紙機のワイヤ水中に1日間曝露した。図2bはスチール試片表面のSEM画像である。100%TMPを使用する新聞印刷用紙抄紙機のワイヤ水中で6日間曝露した。図2cはスチール試片表面のSEM画像である。希釈用ヘッドボックス(dilution headbox)の排水口において1日間曝露した。漂白した硬材/軟材製の上質紙の生産。図2dはスチール試片表面のSEM画像である。希釈用ヘッドボックスの排水口において6日間曝露した。漂白した硬材/軟材製の上質紙の生産。図2eはスチール試片表面のSEM画像である。100%二次繊維を使用する板紙抄紙機の下流に1日間曝露した。図2fはスチール試片表面のSEM画像である。100%TMPを使用する新聞印刷用紙抄紙機の下流に12日間曝露した。
【図3】図3aはスチール試片のSEM画像である。100%二次繊維を使用する板紙抄紙機のワイヤ水に1日間曝露した。図3bは図3aの画像のEDX分析である。図3cはスチール試片のSEM画像である。100%二次繊維を使用する板紙抄紙機のワイヤ水に1日間曝露した。図3dは図3cの画像のEDX速度写像である。図3eはスチール試片表面のSEM画像である。希釈用ヘッドボックスの排水口において1日間曝露した。漂白した硬材/軟材製の上質紙の生産。図3fは図3eと同一の位置に由来する堆積物のPy-GCMS分析である。
【図4】図4は、スチール試片のCLSM画像である。100%二次繊維を使用する板紙工場の生物学的白水において9日間曝露した。
【図5】図5aはスチール試片表面のCLSM画像である。フローセルにおいて5日間曝露した。高へドロ剤は使用していない。全細菌数=107cfu/ml (cfu=コロニー形成単位)。図5bはスチール試片表面のCLSM画像である。フローセルにおいて5日間曝露した。イソチアゾリノン、200ppmの製品で処理した。全細菌数=<1000cfu/ml。図5cはスチール試片表面のCLSM画像である。フローセルにおいて5日間曝露した。DBNPA(ジブロモニトリルプロピオンアミド)、40ppmの製品で処理した。全細菌数=<1000cfu/ml。図5dはスチール試片表面のCLSM画像である。フローセルにおいて5日間曝露した。過酢酸、60ppmの製品で処理した。全細菌数=<1000cfu/ml。図5eはスチール試片表面のCLSM画像である。フローセルにおいて5日間曝露した。多機能堆積物調節剤(疎水性物質の分散)、30ppmの製品で処理した。全細菌数=107cfu/ml。図5fはスチール試片表面のCLSM画像である。フローセルにおいて5日間曝露した。多機能堆積物調節剤(溶媒のエマルション)、50ppmの製品で処理した。全細菌数=107cfu/ml。
【図6】図6aはスチール試片表面のSEM画像である。フローセルにおいて4時間曝露した。抗ファウリング剤は使用していない。図6bはスチール試片表面のSEM画像である。フローセルにおいて4時間曝露した。多機能堆積物調節剤(MDCA)で処理した。
【図7】図7は複数のスチール試片表面のSEM画像である。100%二次繊維を使用する新聞印刷用紙抄紙機のワイヤ水において12日間曝露した。多機能堆積物調節剤(MDCA)及び殺生物剤の組み合わせからなるカスタムメイドプログラムとの比較において、参照サンプルは、殺生物剤のみで処理した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白水系、好ましくは抄紙機及び/又は板紙抄紙機の循環系における、前記白水系に1つ以上の被検物を導入して無機及び/又は有機堆積物を測定及び調節するための方法であって、前記被検物は事前に選択した曝露期間後に前記系から取り出されて、表面試験のために前処理され、前記被検物に形成された堆積物を、顕微鏡法、及び/又はガスクロマトグラフィー法、及び/又は質量分析法を使用して測定することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記被検物が、タンク、添加剤の容器、水が飛び散った領域、又は濡れているか又は高湿な調査対象の白水系のいかなる位置にも導入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被検物が前記系から取り出される前の曝露期間が、1時間から100日までの範囲になるように選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記被検物が調査対象の白水系に事前に選択した曝露期間で置かれ、前記事前に選択した期間の終わりに、前記被検物を前記系から取り出して、即時にその後に続く表面試験のために前処理し、次いで前記被検物を、新しいサンプルとして分析するか又は観察しようとする白水系において直接固定化されたサンプルとして後の時点に分析することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記被検物上に形成された堆積物を、電子顕微鏡法及び/又は電子分光法を使用して測定することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記被検物上に形成された堆積物を、走査型電子顕微鏡(SEM)、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)、及び落射蛍光顕微鏡(EP)を使用して測定することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記被検物上に形成された有機堆積物を、質量分析器と組み合わせた熱分解クロマトグラフィー(Py-GC/MS)又は赤外顕微鏡を使用して測定することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図5f】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−533319(P2008−533319A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501233(P2008−501233)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002464
【国際公開番号】WO2006/097321
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(505301103)アシュランド・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティー・エルエルシー (40)
【Fターム(参考)】