白胡椒及びその製造法
【課題】長期に亘る水への浸漬、ブランチングなどによる風味の減少などをなくし、白胡椒の色をより白くし、従来の方法よりも白胡椒の製造コストを削減し且つ効率良く白胡椒を製造する方法を提供すること、さらには胡椒の実の果皮、果肉を副生物として容易に利用できるようにすること。
【解決手段】腐敗臭がなく、1,8−cineol、α−phellandrene、およびβ−phellandreneのGC−FIDによるピーク面積の合計が15000[Pa*S]以上であり、且つ外種皮及び内種皮を有している白胡椒により上記課題が解決される。
【解決手段】腐敗臭がなく、1,8−cineol、α−phellandrene、およびβ−phellandreneのGC−FIDによるピーク面積の合計が15000[Pa*S]以上であり、且つ外種皮及び内種皮を有している白胡椒により上記課題が解決される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白胡椒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
香辛料の重要品目の一つである胡椒には、黒胡椒と白胡椒とがある。通常、黒胡椒は、胡椒(Piper nigrum L.)の未熟な実を収穫して乾燥して得られ、一方、白胡椒は、胡椒の完熟した実を収穫し、その果皮を除去してから乾燥して得られる。白胡椒は黒胡椒に比べると生産量が少なく、また香りも黒胡椒に比べると上品でマイルドであるため、白胡椒は黒胡椒よりも一般的に高価である。
【0003】
胡椒の実の構造を説明すると、図1の模式図に示すように、胡椒の実1は、その外側から順に、果皮2、果肉3、外種皮4、内種皮5、周乳6から構成される。上述のとおり、一般には白胡椒は、胡椒の実から果皮を除去したものであるが、正確には胡椒の実1から果皮2および果肉3を除去したもので、外種皮4が最外部に位置するように加工したものであり、この外種皮4が白色を呈する。尚、胡椒の実から果皮および果肉を除去したものを種子ともいう。
【0004】
白胡椒の具体的な製造方法としては、例えば、収穫された胡椒の実を麻の袋に充填し、川などの流水または溜池、プールなどの水中に7日から14日程度浸漬する。この水への浸漬により果皮が軟らかくなった後の胡椒の実を、麻の袋からザルなどに移し、水中で果皮(果肉)を除去すると同時に洗浄する。更に、この果皮(果肉)を除去した種子を天日乾燥などにより乾燥することで、一般的に流通している白胡椒の原形(ホール)が得られる(例えば、非特許文献1、p353及びp357〜359参照。)。
【0005】
上記の製造方法は、伝統的な方法であり、実際の生産場所は、例えば、小規模なものは栽培農家の近辺の小川や池であり、規模の大きなものは集荷場でのプールなどである。しかし、いずれの場合も、基本となる水への浸漬工程は管理された状態でないことが多く、品質上の改善の余地(課題)を有している。
【0006】
その課題の第1は、浸漬中の醗酵により3−メチルインドール(スカトール)や4−メチルフェノール(p−クレゾール)、3−メチルフェノール、ブタン酸など由来の発酵臭あるいは腐敗臭といわれる好ましくない臭いが発生し、白胡椒の重要な品質要件である本来の上品でマイルドな香りが大きく損なわれることである。
【0007】
課題の第2は、長時間の水への浸漬により、香気成分や精油成分の散逸が起こり、香りが弱くなることである。
【0008】
また課題の第3は、水への浸漬時間が7日から14日と長いため、その間に、胡椒の実の種子表面(果皮から外種皮にかけての部分)は、褐色化が進み、好ましい白色が損なわれ、商品価値が低下することである(この褐色化は、胡椒の実から溶出したポリフェノール類、クロロフィル類の酸化などに起因して浸漬水が褐色を呈することが原因と推察される。)。このように褐色化により好ましい白色が損なわれた場合は、必要に応じて次亜塩素酸ソーダ、亜硫酸ソーダなどの漂白剤による漂白処理が行われることがある。しかし、このような漂白処理は、化学薬品の使用、多量の水洗水の使用、等の面から好ましいことではない。
【0009】
さらに、課題の第4は、浸漬場への流水を通じた、土砂、化学物質、汚濁物質などによる汚染のおそれと、腐敗が進んだ場合の微生物汚染のおそれがあることである。
【0010】
また、白胡椒の他の製造方法として、乾燥済みの黒胡椒の実を麻の袋に充填し、前記と同様に、川などの流水または溜池、プールなどの水に7日から14日程度浸漬する方法も知られている。この方法も前記と同様に、果皮が軟らかくなった後に、麻の袋からザルなどに内容物を移し、水中で果皮(果肉)を除去する方法である。この方法においても、前記従来方法と同様な問題点を有しており、品質上、必ずしも好ましい製造方法とはいえない。
【0011】
上記のような伝統的な白胡椒の製造法における課題を解決するために、以下のような製造方法も提案されている。例えば、原料となる胡椒の実を沸騰水に10〜15分間浸漬するか、または蒸気により蒸すなどブランチング処理して果皮を軟化させた上、機械的に除去して白胡椒を製造する方法である(非特許文献1、p358〜359及びp372参照。)。
【0012】
機械的な果皮(果肉)の除去方法では、特に意識して薄皮(外皮種)を残さない限り、除去工程での種子の破壊により収率が低下するため、経済性の面で好ましい製造方法ではない。さらに、蒸気により蒸す方法では、香気成分が失われ香りの弱い白胡椒となるため、風味の面で好ましい製造方法ではない。
【0013】
また、沸騰水中に15〜25分間浸漬し(ブランチング処理)、果皮を軟化させて白胡椒を製造する方法が試みられている(非特許文献1、p358〜359及びp372参照。)。この方法によると、前記伝統的な製造法に較べて、醗酵臭が抑えられ、クリアな香りの白胡椒が出来る。しかし、沸騰水へ浸漬する方法(ブランチング処理)では、沸騰水中への浸漬により、香気成分が飛散して風味が弱くなる。さらに、溶出したポリフェノール、クロロフィルなどの酸化による褐変に起因すると推察される熱水の褐色化により種子の表面が着色するため、色の面で好ましい製造方法ではない。
【0014】
さらに、上記のような沸騰水へ浸漬する方法(ブランチング処理)と共に、またはブランチング処理を行わずに酵素処理を行うことによる胡椒の実の果皮除去が行われているが(非特許文献2、特許文献2参照。)、色の面、除去工程での種子の破壊による収率低下、酵素処理後の廃水の問題など課題が多く残されている。
【0015】
また、乾燥済みの黒胡椒の果皮を機械的に剥皮する方法も提案されている(例えば、特許文献1、及び非特許文献1のp372参照。)。しかし、従来の機械的方法では、剥皮工程での種子の破壊により収率が低下するため、経済性の面で好ましい製造方法ではない。また、酸あるいはアルカリなどの薬品により果皮を軟化させる方法も提案されてはいるが(例えば、非特許文献1、p372参照。)、未だ実用化されるには至っていない。
【0016】
このように、水に浸漬する伝統的な方法に代替しうる、色および風味が改良され、かつ衛生面も改善された高品質の白胡椒を効率よく低コストで製造する方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第07/017246号パンフレット
【特許文献2】国際公開第07/139094号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】P.N.Ravindran、BLACK PEPPER、THE NETHERLAND、Harwood Academic Publishers、2000/01)
【非特許文献2】Gopinathan K.M. & Manilal V.B.、Pectinolytic Decortication of Pepper (Piper nigrum L.)、J. Food Sci. Technol、2004、41(1)、p.74‐77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記の点に鑑み、本発明の目的とするところは、長期に亘る水への浸漬、ブランチングなどによる風味の減少などをなくし、白胡椒の色をより白くし、従来の方法よりも白胡椒の製造コストを削減し且つ効率良く白胡椒を製造する方法を提供すること、さらには胡椒の実の果皮、果肉を副生物として容易に利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、収穫後の生胡椒から擦り現象により果皮(果肉)を剥離することで排水負荷をかけることなく胡椒本来の風味を損なっておらず、且つ非常に白い白胡椒を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)腐敗臭がなく、1,8−cineol、α−phellandrene、およびβ−phellandreneのGC−FIDによるピーク面積の合計が15000[Pa*S]以上であり、且つ外種皮及び内種皮を有していることを特徴とする白胡椒。
【0022】
(2)β−phellandreneのGC−FIDによるピーク面積が11000[Pa*S]以上である(1)記載の白胡椒。
【0023】
(3)GC−FIDによる全香気成分のピーク面積の合計が120000[Pa*S]以上であり、かつ、前記全香気成分に下記香気成分から選択される少なくとも16種を含む(1)または(2)記載の白胡椒。
香気成分:α−phellandrene、β−phellandrene、1,8Cineol、α−pinene、α−Thujene、camphene、β−pinene、sabinene、Δ3−carene、myrcene、α−terpinene、limonene、γ−terpinene、trans−Ocimene、p−cymene、terpinolene、trans−4−thujanol、citronellal、δ−elemen、α−Copaene、linalool、Terpinen−4−ol、β−caryophyllene、α−humulene。
【0024】
(4)3−メチルインドールの含有量が、香気成分の全量に対して40ppb以下である(1)〜(3)の何れかに記載の白胡椒。
【0025】
(5)所定量の胡椒の実に所定量の水を添加し加圧攪拌して胡椒の実を摺擦し、果皮および果肉を除去した後、乾燥して得られ、外種皮及び内種皮を有していることを特徴とする白胡椒。
【0026】
(6)所定流量の胡椒の実に所定流量の水を添加し連続的に加圧攪拌する(5)記載の白胡椒。
【0027】
(7)前記胡椒の実の含水率が、15重量%以上である(5)または(6)に記載の白胡椒。
【0028】
(8)前記加圧攪拌が、攪拌筒と、該攪拌筒に内装され周面に螺旋状押出突条と攪拌突条とを同軸上に備えた攪拌ロールと、を含む加圧攪拌手段を用い、前記螺旋状押出突条により胡椒の実を圧送するとともに、前記攪拌突条により胡椒の実に剪断力を掛けることにより行われる(6)または(7)に記載の白胡椒。
【0029】
(9)前記攪拌ロールの回転速度が800rpm以上である(8)に記載の白胡椒。
【0030】
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の白胡椒を10重量%以上含むことを特徴とするスパイスミックス。
【0031】
(11)所定量の胡椒の実に所定量の水を添加し加圧攪拌して胡椒の実を摺擦し、果皮および果肉を除去した後、乾燥することを特徴とする白胡椒の製造方法。
【0032】
(12)所定流量の胡椒の実に所定流量の水を添加し連続的に加圧攪拌する(11)記載の白胡椒の製造方法。
【0033】
(13)前記胡椒の実の含水率が、15重量%以上である(11)または(12)に記載の白胡椒の製造方法。
【0034】
(14)前記加圧攪拌が、攪拌筒と、該攪拌筒に内装され周面に螺旋状押出突条と攪拌突条とを同軸上に備えた攪拌ロールと、を含む加圧攪拌手段を用い、前記螺旋状押出突条により胡椒の実を圧送するとともに、前記攪拌突条により胡椒の実に剪断力を掛けることにより行われる(12)または(13)に記載の白胡椒の製造方法。
【0035】
(15)前記攪拌ロールの回転速度が800rpm以上である(14)に記載の白胡椒の製造方法。
【発明の効果】
【0036】
本発明に従えば、長期間に亘る水への浸漬、ブランチングなどによる風味の減少などをなくし、従来の白胡椒よりさらにその色を白くした白胡椒を提供することができる。また、本発明に従えば、製造コストを削減し、且つ収率良く白胡椒を製造する方法を提供することができる。さらには胡椒の実の果皮、果肉を副生物として容易に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】胡椒の構造を模式的に示した断面図である。
【図2】加圧攪拌装置の概略図である。
【図3】実施例および比較例の全香気成分の香気成分量を示した図である。
【図4】実施例および比較例の香気成分1,8−cineol、α−phellandreneおよびβ−phellandreneの香気成分量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
本発明の白胡椒は、腐敗臭がなく、香気成分1,8−cineol、α−phellandreneおよびβ−phellandreneのGC−FIDによるピーク面積の合計が15000[Pa*S]以上であり、且つ外種皮、内種皮を有するものである。
【0039】
本発明の白胡椒には後述のように種々の香気成分が含まれるが、特に1,8−cineol、α−phellandreneおよびβ−phellandreneが上記の所定量以上含まれる。1,8−cineol(化学式:C10H18O)は、樟脳に似たさわやかな匂いとすっきりした味を持つものとされる。α−phellandreneおよびβ−phellandrene(いずれも化学式:C10H16)は、快い芳香を持つとされ、特にβ−phellandreneはペパーミント様で、わずかに柑橘系の香りを帯びるとされる。本発明の白胡椒には、このような香気成分が上記所定量以上含まれることから、白胡椒の風味が保持され、優れたものとなる。尚、上記香気成分のGC−FIDによるピーク面積の合計が15000[Pa*S]以上であると白胡椒の風味の力価が強くなる点で好ましく、18000[Pa*S]以上であるとより好ましい。更に、白胡椒の風味の観点から、β−phellandreneのGC−FIDによるピーク面積が11000[Pa*S]以上であってもよい。
【0040】
また本発明の白胡椒は、更にGC−FIDによる全香気成分のピーク面積の合計が120000[Pa*S]以上であり、かつ、香気成分として、上記の三成分に加え、α−pinene、α−Thujene、camphene、β−pinene、sabinene、Δ3−carene、myrcene、α−terpinene、limonene、γ−terpinene、trans−Ocimene、p−cymene、terpinolene、trans−4−thujanol、citronellal、δ−elemen、α−Copaene、linalool、Terpinen−4−ol、β−caryophyllene、α−humuleneの合計24成分から選択される少なくとも16種を含むものが好ましい。このように香気成分量が多く、かつ種々の香気成分が含まれると、より香り高く、風味の豊かな白胡椒となる。
【0041】
また、本発明の白胡椒は、前述の伝統的な方法により得られた白胡椒とは異なり腐敗臭がないものである。このような腐敗臭があるものは、たとえ香気成分が含まれていたとしても、上品でマイルドな香りが大きく損なわれることになる。主な腐敗臭の原因成分としては、3−メチルインドール(スカトール)が挙げられ、従来品より腐敗臭がしないという観点では、その含有量が40ppb以下であることが好ましく、10ppb以下であることがより好ましい。尚、3−メチルインドール(スカトール)の含有量は、GC−MSにより測定することができる。尚、本発明における香気成分には、腐敗臭成分は含まないものとする。
【0042】
以上のような本発明の白胡椒は、所定量の胡椒の実に所定量の水を添加し加圧攪拌して胡椒の実を摺擦し、果皮および果肉を除去した後、乾燥して得られる。
【0043】
本発明に用いる胡椒の実は、世界的に胡椒の原料として栽培されている植物種である胡椒(Piper nigrum L.)から収穫される実でよく、植物種内での変種、系統、品種などは問わない。前記胡椒の実を収穫する時期としては、赤くなる程度まで熟した時が風味の質の面から好ましいが、未熟であっても黒胡椒の原料となるレベルまで生育すれば使用できる。また、未熟な胡椒の実および完熟した胡椒の実が混在していてもよい。また、原料として使用する胡椒の実は、白胡椒の色をより白く、かつ風味の減少を抑制するためには、収穫した生のままの胡椒の実を直ぐに用いるのが良いが、収穫した胡椒の実を−20℃以下で凍結させたものを、自然解凍、あるいは温水解凍して用いても同様の効果が期待できる。また、生のまま乾燥したものを使用しても良い。
【0044】
原料として使用する胡椒の実の含水率は、果皮(果肉)の分離効率の観点から、15重量%以上であることが好ましい。水分量の測定は、赤外線水分計((株)ケット科学研究所製、FD−240)を用いて行うことができ、具体的な測定条件としては、試料5gを105℃で7分間加熱した時の減量を含水量とし、加熱前の総重量に対する比として算出したものを含水率とした。
【0045】
本発明の白胡椒は、上記含水率の胡椒の実から酵素を用いないで果皮および果肉の除去を行って得られる。例えば、所定量の胡椒の実に所定量の水を添加し加圧攪拌して胡椒の実を摺擦し、果皮および果肉を除去した後、乾燥することにより製造することができる。ここで「胡椒の実を摺擦する」とは、胡椒の実同士を相互に、および/または胡椒の実を後述の攪拌筒の内壁と、擦り合わせることを意味する。
【0046】
本発明では、上記の胡椒の実に水を添加して加圧攪拌し、胡椒の実を摺擦することにより、胡椒の実から果皮(果肉)を除去する。このような処理は、例えば図2に示す加圧攪拌装置を用いて行うことができる。図2に示す加圧攪拌装置7は、一端に供給口8を、他端に排出口9を有する攪拌筒10に、モーター(図示せず)により回転駆動自在とし、周面に突条11(螺旋状圧送突条11aおよび攪拌突条11b)を備えた攪拌ロール12を内装したものである。また、攪拌筒10には水タンク(図示せず)等の給水手段に連通した注水口13を設けるとともに、攪拌筒10の下側には果皮(果肉)が除去された状態の胡椒の実が漏出しない程度の細孔14を設け、その下側に水受樋15を設けてある。また、排出口9には調圧機構16を設けてある。供給口8には、投入口17と出口19を有し、定量送りスクリュー18が内装された搬送筒20を出口19を供給口8に臨ませて設けてある。
【0047】
攪拌筒10の内部形状は特に制限はないが、長さ方向に垂直な断面の形状は、多角形が好ましく、さらにその一角の角度が108〜120°であるのがより好ましい。角度が大きくなり過ぎると、負荷が不足するため十分に果皮(果肉)を剥離、除去することができなくなる傾向にある。また、攪拌筒10の内部の大きさは、内装する攪拌ロール12の最大幅および長さによるが、概ねその長さが250mm程度で、その最小幅は50mm程度で、最大幅は100mm程度である。尚、攪拌筒10の内部の最小幅と、攪拌ロール12の最大幅とのクリアランスは、概ね30mm程度である。
【0048】
また、攪拌筒10に内装された攪拌ロール12には、胡椒の実を圧送する部分と、圧送された胡椒の実を摺擦する部分と、を同軸上に、直列ないしは連続して設けてあり、胡椒の実を圧送する部分には螺旋状圧送突条11aを設け、圧送された胡椒の実を摺擦する部分には攪拌突条11bを設けてある。攪拌ロール12の回転数は、800rpm以上が好ましく、1800rpm以上がさらに好ましい。攪拌ロール12の回転速度が低いと胡椒の実のぶつかりが小さく、胡椒の実同士や胡椒と攪拌筒12内壁との擦り合わせた(摺擦した)場合の剪断力が小さくなるため、果皮(果肉)を剥離、除去し難くなる傾向にある。また、攪拌突条11bは、攪拌ロール12の長さ方向に対して平行あるいは一定の角度を有していても良いし、くの字状(あるいはV字状)に屈曲していても、その他波線状などであっても良い。また、突条11は攪拌ロール12の一端から他端にかけて連続して設けても良いし、切り欠き部分があっても良い。更に、攪拌突条11bの設置数、位置も特に制限はない。攪拌筒内の圧力は、調圧機構16により、仕上がり具合で調整する。
【0049】
加圧攪拌装置7は、次のように作動する。投入口17に投入された原料となる胡椒の実は、搬送筒20内を定量送りスクリュー18により一定流量で出口19から排出され、供給口8を経て攪拌筒10に入り、回転する攪拌ロール12の螺旋状圧送突条11aにより排出口9方向へ圧送され、調圧機構16により圧力を調整された状態で攪拌筒10内を通過して排出口9から排出される。この間に、注水口13からの水を添加すると同時に攪拌突条11bにより攪拌されることで、胡椒の実が相互に、および/または胡椒の実が攪拌筒内壁に擦り合わされて(摺擦されて)、胡椒の実に剪断力がかかり、果皮(果肉)が原料の胡椒の実から剥離する。添加された水の大部分は攪拌筒10の細孔14から排出され水受樋15に集められ処理される。若干の水が付着した状態の果皮(果肉)が除去された胡椒の実(種子)と剥離された果皮(果肉)とが排出口9から排出される。尚、定量送りスクリュー18による胡椒の実の供給速度(流量)は、速度が大きいと胡椒の実の割れが発生し、速度が小さいと果皮(果肉)が剥離されないため、80〜150kg/hであるのが好ましい。また、水の供給流量は、流量が小さいと果皮(果肉)の剥離効率が悪く、胡椒の実の割れが発生し、流量が大きいと効果が頭打ちとなるため、50〜300L/hrである。
【0050】
このようにして排出口9から排出された種子と剥離された果皮(果肉)とは、水の入った公知の攪拌槽に投入され、種子と果皮(果肉)とに分離され、かつ洗浄される。また、胡椒の実から果皮(果肉)の除去が十分でない場合は、種子と果皮(果肉)を分離したあと、再度種子を加圧攪拌装置にかけ上記工程を繰り返しても良い。このようにして得られた種子を乾燥し、さらに必要により殺菌することで、本発明の白胡椒を高収率で効率よく得ることができる。尚、乾燥条件としては、風味、腐敗性の観点から、30〜60℃で、8〜48時間行うのが好ましい。また、殺菌を行う場合は、スチーム殺菌などにより行うことができる。
【0051】
また、本発明においては酵素処理を行わないことから、その廃水処理の問題も生じない。しかも、分離、洗浄した果皮(果肉)は、伝統的な製法のように腐敗せず、また酵素の付着がないため、そのまま副産物として調味料、香味油などに容易に利用することができる。
【0052】
このようにして得られた本発明の白胡椒は、ホール状であり、伝統的な白胡椒の製法と異なり、長期間水に浸漬することがないため、腐敗臭がない。また、ブランチング処理を行わないため、加熱や水への浸漬に伴う香気成分量の減少が抑制され、特に上述の3種の香気成分を豊富に含むものである。
【0053】
また、水への長期の浸漬を行うことがなく、またブランチング処理を行わないため、溶出したポリフェノール、クロロフィルなどの酸化による褐変がなく、白胡椒の色を、従来のものよりも一層白くすることが可能である。
【0054】
このようなホール状の白胡椒からは、通常の粉砕方法により、粗挽きや各種サイズの白胡椒の粉末製品が得られる。また、洗浄(水洗)の終了した白胡椒は、回転式石臼磨砕機(例:マスコロイダー(増幸産業社製))、高速回転刃磨砕機(例:コミトロール(アシュール社製))、回転刃式フードカッターなどを使用してペースト状にして使用しても良い。当該磨砕時に加水してもよく、加水量により、マッシュ状、ペースト状、液状とすることができる。
【0055】
また、本発明の白胡椒は、米粉などの増量剤、黒胡椒などの他のスパイスなどと混ぜ合わせ、ミックススパイスとすることができる。この場合、白胡椒の含有量は、本発明の効果を享受できる点で、10重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。
【0056】
更に、本発明の白胡椒は、麺類への風味付け、ハム、ソーセージへの風味付け、ドレッシングへの風味付け等の用途に用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。尚、実施例の説明に先立ち、白胡椒の香気成分の測定方法および3−メチルインドールの測定方法を説明する。
【0058】
(測定方法)
<香気成分の測定方法>
白胡椒の香気成分は、GC−FID法によるガスクロマトグラフにより測定した。試料は、ミクロパウダー(MPW−G008、槇野産業(株)製)にて粉砕して作製した。
【0059】
検出器としてGC−FID(HP6890、ヒューレットパッカード社製)、ヘッドスペースサンプラーとしてTEKMAR 7000HT(TEKMAR社製)、カラムとしてDB−WAXを用いた。またシステムソフトウェアとしてHP−ケミステーション(横河アナリティカルシステムズ社製)を用いた。ヘッドスペースの加温条件は80℃で30分間であり、測定昇温条件は、以下の(1)〜(11)に従って順次昇温した。
(1)40℃ for 5min、(2)40〜80℃ 20℃/min、(3)80℃ for 4min、(4)80〜120℃ 10℃/min、(5)120℃ for 0min、(6)120〜140℃ 20℃/min、(7)140℃ for 3min、(8)140〜150℃ 10℃/min、(9)150℃ for 2min、(10)150〜250℃ 10℃/min、(11)250℃ for 8min。
【0060】
<3−メチルインドールの測定方法>
実施例・比較例で得られた白胡椒を、ワンダーブレンダー(型番:WB−1、大阪ケミカル社製)を用いて25000rpmで5分間粉砕した後、80メッシュふるいにかけた白胡椒粉末0.2g重量をバイアル瓶に充填し、蒸留水8mLを加え、固液分散系中の成分をツイスター(GESTEL社製)に吸着し、加熱脱着装置TDS(GESTEL社製)および5873型MS検出器(アジレント・テクノロジー社製)を装備した6890N型GC(アジレント・テクノロジー社製)を用いて分析を実施した。検量線として3−メチルインドール0.1gをMCT(アクターM−2 理研ビタミン製)100gに溶解し、MCTで10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppbとなるように希釈した。その希釈液0.2gを蒸留水8mLに加え、固液分散系中の成分をツイスター(GESTEL社製)に吸着し、加熱脱着装置TDS(GESTEL社製)および5873型MS検出器(アジレント・テクノロジー社製)を装備した6890N型GC(アジレント・テクノロジー社製)を用いて分析を実施し、3−メチルインドールの量を求めた。
【0061】
<ガスクロマトグラフ条件>
イニシャル温度:40℃
イニシャル温度保持時間:2分間
昇温スピード:100℃まで毎分3℃、その後240℃まで毎分5℃
最終温度:240℃
最終温度保持時間:30分間
キャリアーガス:ヘリウム 206kPa
キャリアーガス流量:2.1mL/min
MS(検出器条件):MS イオン源温度 230℃
MS 4重極温度 150℃
GERSTEL社製 TDSA
TDS条件:イニシャル温度:20℃
イニシャル温度保持時間:1分間
昇温スピード:毎分60℃
最終温度240℃
最終温度保持時間:5分間
CIS条件:イニシャル温度:−100℃
インシャル温度保持時間:0.2分
昇温スピード:毎秒12℃
最終温度:240℃
最終温度保持時間:10分間
【0062】
(実施例1)加圧攪拌装置を用いたベトナム産白胡椒
収穫後、−4℃に冷凍したベトナム産胡椒の実(水分58.8%)100重量部を常温の水で解凍し、図2に示す加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数:2400rpm)で処理を行ない、水洗により果皮(果肉)を大まかに除去した後、43重量部の種子を得た。得られた種子を再び前記加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数:2400rpm)で処理を行ない、水洗により果皮(果肉)を除去した後、39重量部の種子を得た。得られた種子を乾燥機(不二パウダル株式会社製、型式:100E)で40℃、48h乾燥し、27重量部の白胡椒を得た。得られた白胡椒について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。尚、表1、2中の数値の単位はいずれも[Pa*S]であり、また、上記方法における3−メチルインドールの検出限界は10ppbで、表3中、「N.D.」は3−メチルインドールが検出されなかったことを意味する。
【0063】
(実施例2)加圧攪拌装置で3回処理したベトナム産白胡椒
収穫後、−4℃に冷凍したベトナム産胡椒の実(水分58.8%)100重量部を常温の水で解凍し、図2に示す加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数2400rpm)で処理を行ない、水洗により果皮を大まかに除去後、43重量部の種子を得た。得られた種子を再び前記加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数:2400rpm)で処理を行ない、水洗により果皮(果肉)を除去後、39重量部の種子を得た。得られた種子を更に前記加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数:2400rpm)で処理を行ない、水洗した後、37重量部の種子を得た。得られた種子を乾燥機(不二パウダル株式会社製、型式:100E)で40℃、48h乾燥し、27重量部の白胡椒を得た。得られた白胡椒について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0064】
(実施例3)加圧攪拌装置を用いたインドネシア産白胡椒
収穫後、−4℃に冷凍したインドネシア産胡椒の実(水分60.8%)100重量部を常温の水で解凍し、図2に示す加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数3000rpm)で処理を行ない、水洗により果皮(果肉)を大まかに除去した後、41重量部の種子を得た。得られた種子を再び前記加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数:3000rpm)で処理を行ない、水洗により果皮(果肉)を除去した後、40重量部の種子を得た。得られた種子を乾燥機(不二パウダル株式会社製、型式:100E)で50℃、12h乾燥し、28重量部の白胡椒を得た。得られた白胡椒について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0065】
(比較例1)酵素を用いて作製したベトナム産白胡椒
収穫後、−4℃に冷凍したベトナム産胡椒の実(水分58.8%)100重量部を手によって大まかに果皮を除去した。種子と種子にこびりついている果肉を合わせて42重量部であった。当該種子42重量部を、21重量部の水と酵素1(商品名:ViscozymeL、novozymes社製、100FBG/g)0.042重量部及び酵素2(商品名:Celluclast 1.5L、novozymes社製、700EGU/g)0.042重量部からなる混合溶液に加え、45℃で3時間攪拌した。水洗により果皮(果肉)を除去して得られた種子を乾燥機(不二パウダル株式会社製、型式:100E)で50℃、12h乾燥し、27重量部の白胡椒を得た。得られた白胡椒について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0066】
(比較例2)加圧攪拌装置で処理後、酵素を用いて作製したベトナム産白胡椒
収穫後、−4℃に冷凍した胡椒の実(水分58.8%)を常温水で解凍し、図2に示す加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数2400rpm)で処理を行ない、水洗により果皮(果肉)を大まかに除去した。得られた種子42重量部を、21重量部の水と酵素1(商品名:ViscozymeL、novozymes社製、100FBG/g)0.042重量部及び酵素2(商品名:Celluclast 1.5L、novozymes社製、700EGU/g)0.042重量部からなる混合溶液に加え、45℃で3時間攪拌した。水洗し果皮(果肉)を除去した後、得られた種子を乾燥機(不二パウダル株式会社製、型式:100E)で50℃、12h乾燥し、27重量部の白胡椒を得た。得られた白胡椒について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0067】
(比較例3)伝統的製法のベトナム産白胡椒
伝統的な水漬法で生産されたベトナム産の白胡椒(「白胡椒原形V」、カネカサンスパイス社製)について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0068】
(比較例4)伝統的製法のインドネシア産白胡椒
伝統的な水漬法で生産されたインドネシア産の白胡椒(「白胡椒原形I」、カネカサンスパイス社製)について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0069】
(比較例5)伝統的製法のマレーシア産白胡椒
伝統的な水漬法で生産されたマレーシア産の白胡椒(「白胡椒原形M」、カネカサンスパイス社製)について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0070】
(比較例6)伝統的製法のタイ産白胡椒
伝統的な水漬法で生産されたタイ産の白胡椒(「白胡椒原形T」、カネカサンスパイス社製)について、上記方法により香気成分を測定した。測定結果を表1、2および図3、4に示す。
【0071】
(比較例7)伝統的製法の中国産白胡椒
伝統的な水漬法で生産された中国産の白胡椒(「白胡椒原形C」、カネカサンスパイス社製)について、上記方法により香気成分を測定した。測定結果を表1、2および図3、4に示す。
【0072】
(比較例8)黒胡椒から研磨により作製したマレーシア産白胡椒
伝統的な方法で生産された(胡椒の実を採取し天日乾燥させたもの)マレーシア産の黒胡椒の実(「黒胡椒原形M」、カネカサンスパイス社製、水分7.6%)100重量部を電動ミニヤスリ(製品名「ジョイロボH−025」、sumflex社製、ロータリーヘッド:16mmφ、82mm長、φ2.4/3.0mmコレット)にて50重量部になるまで果皮(果肉)を研磨除去し、白胡椒を得た。得られた白胡椒について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0073】
(官能評価)
上記実施例および比較例に記載の白胡椒をいわゆる湯溶き法により官能評価を行った。即ち、各白胡椒を粉末化し、その各粉末0.5gを90℃の熱水200mLにそれぞれ懸濁させサンプルを作製した。パネラー10人に各サンプルの匂いを嗅いでもらい、腐敗臭を感じるか否かについて評価した。更に、腐敗臭を感じなかったサンプルにおいて匂いの強さについて比較例1を基準の5として10段階で評価した(数値が大きくなるほど匂いが強くなるものとした。)。また、同様に腐敗臭を感じなかったサンプルにおいて匂いのフレッシュ感について比較例2を基準の5として10段階で評価した(数値が大きくなるほどフレッシュ感が高くなるものとした。)。評価結果を表4に示す。尚、評価結果は、各サンプルについての各パネラーの点数を合計し、その算術平均で示したものである。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【符号の説明】
【0078】
1 胡椒
2 果皮
3 果肉
4 外種皮
5 内種皮
6 周乳
7 加圧攪拌装置
8 供給口
9 排出口
10 攪拌筒
11 突条
11a 螺旋状圧送突条
11b 攪拌突条
12 攪拌ロール
13 注水口
14 細孔
15 水受樋
16 調圧機構
17 投入口
18 定量送りスクリュー
19 出口
20 搬送筒
【技術分野】
【0001】
本発明は、白胡椒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
香辛料の重要品目の一つである胡椒には、黒胡椒と白胡椒とがある。通常、黒胡椒は、胡椒(Piper nigrum L.)の未熟な実を収穫して乾燥して得られ、一方、白胡椒は、胡椒の完熟した実を収穫し、その果皮を除去してから乾燥して得られる。白胡椒は黒胡椒に比べると生産量が少なく、また香りも黒胡椒に比べると上品でマイルドであるため、白胡椒は黒胡椒よりも一般的に高価である。
【0003】
胡椒の実の構造を説明すると、図1の模式図に示すように、胡椒の実1は、その外側から順に、果皮2、果肉3、外種皮4、内種皮5、周乳6から構成される。上述のとおり、一般には白胡椒は、胡椒の実から果皮を除去したものであるが、正確には胡椒の実1から果皮2および果肉3を除去したもので、外種皮4が最外部に位置するように加工したものであり、この外種皮4が白色を呈する。尚、胡椒の実から果皮および果肉を除去したものを種子ともいう。
【0004】
白胡椒の具体的な製造方法としては、例えば、収穫された胡椒の実を麻の袋に充填し、川などの流水または溜池、プールなどの水中に7日から14日程度浸漬する。この水への浸漬により果皮が軟らかくなった後の胡椒の実を、麻の袋からザルなどに移し、水中で果皮(果肉)を除去すると同時に洗浄する。更に、この果皮(果肉)を除去した種子を天日乾燥などにより乾燥することで、一般的に流通している白胡椒の原形(ホール)が得られる(例えば、非特許文献1、p353及びp357〜359参照。)。
【0005】
上記の製造方法は、伝統的な方法であり、実際の生産場所は、例えば、小規模なものは栽培農家の近辺の小川や池であり、規模の大きなものは集荷場でのプールなどである。しかし、いずれの場合も、基本となる水への浸漬工程は管理された状態でないことが多く、品質上の改善の余地(課題)を有している。
【0006】
その課題の第1は、浸漬中の醗酵により3−メチルインドール(スカトール)や4−メチルフェノール(p−クレゾール)、3−メチルフェノール、ブタン酸など由来の発酵臭あるいは腐敗臭といわれる好ましくない臭いが発生し、白胡椒の重要な品質要件である本来の上品でマイルドな香りが大きく損なわれることである。
【0007】
課題の第2は、長時間の水への浸漬により、香気成分や精油成分の散逸が起こり、香りが弱くなることである。
【0008】
また課題の第3は、水への浸漬時間が7日から14日と長いため、その間に、胡椒の実の種子表面(果皮から外種皮にかけての部分)は、褐色化が進み、好ましい白色が損なわれ、商品価値が低下することである(この褐色化は、胡椒の実から溶出したポリフェノール類、クロロフィル類の酸化などに起因して浸漬水が褐色を呈することが原因と推察される。)。このように褐色化により好ましい白色が損なわれた場合は、必要に応じて次亜塩素酸ソーダ、亜硫酸ソーダなどの漂白剤による漂白処理が行われることがある。しかし、このような漂白処理は、化学薬品の使用、多量の水洗水の使用、等の面から好ましいことではない。
【0009】
さらに、課題の第4は、浸漬場への流水を通じた、土砂、化学物質、汚濁物質などによる汚染のおそれと、腐敗が進んだ場合の微生物汚染のおそれがあることである。
【0010】
また、白胡椒の他の製造方法として、乾燥済みの黒胡椒の実を麻の袋に充填し、前記と同様に、川などの流水または溜池、プールなどの水に7日から14日程度浸漬する方法も知られている。この方法も前記と同様に、果皮が軟らかくなった後に、麻の袋からザルなどに内容物を移し、水中で果皮(果肉)を除去する方法である。この方法においても、前記従来方法と同様な問題点を有しており、品質上、必ずしも好ましい製造方法とはいえない。
【0011】
上記のような伝統的な白胡椒の製造法における課題を解決するために、以下のような製造方法も提案されている。例えば、原料となる胡椒の実を沸騰水に10〜15分間浸漬するか、または蒸気により蒸すなどブランチング処理して果皮を軟化させた上、機械的に除去して白胡椒を製造する方法である(非特許文献1、p358〜359及びp372参照。)。
【0012】
機械的な果皮(果肉)の除去方法では、特に意識して薄皮(外皮種)を残さない限り、除去工程での種子の破壊により収率が低下するため、経済性の面で好ましい製造方法ではない。さらに、蒸気により蒸す方法では、香気成分が失われ香りの弱い白胡椒となるため、風味の面で好ましい製造方法ではない。
【0013】
また、沸騰水中に15〜25分間浸漬し(ブランチング処理)、果皮を軟化させて白胡椒を製造する方法が試みられている(非特許文献1、p358〜359及びp372参照。)。この方法によると、前記伝統的な製造法に較べて、醗酵臭が抑えられ、クリアな香りの白胡椒が出来る。しかし、沸騰水へ浸漬する方法(ブランチング処理)では、沸騰水中への浸漬により、香気成分が飛散して風味が弱くなる。さらに、溶出したポリフェノール、クロロフィルなどの酸化による褐変に起因すると推察される熱水の褐色化により種子の表面が着色するため、色の面で好ましい製造方法ではない。
【0014】
さらに、上記のような沸騰水へ浸漬する方法(ブランチング処理)と共に、またはブランチング処理を行わずに酵素処理を行うことによる胡椒の実の果皮除去が行われているが(非特許文献2、特許文献2参照。)、色の面、除去工程での種子の破壊による収率低下、酵素処理後の廃水の問題など課題が多く残されている。
【0015】
また、乾燥済みの黒胡椒の果皮を機械的に剥皮する方法も提案されている(例えば、特許文献1、及び非特許文献1のp372参照。)。しかし、従来の機械的方法では、剥皮工程での種子の破壊により収率が低下するため、経済性の面で好ましい製造方法ではない。また、酸あるいはアルカリなどの薬品により果皮を軟化させる方法も提案されてはいるが(例えば、非特許文献1、p372参照。)、未だ実用化されるには至っていない。
【0016】
このように、水に浸漬する伝統的な方法に代替しうる、色および風味が改良され、かつ衛生面も改善された高品質の白胡椒を効率よく低コストで製造する方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第07/017246号パンフレット
【特許文献2】国際公開第07/139094号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】P.N.Ravindran、BLACK PEPPER、THE NETHERLAND、Harwood Academic Publishers、2000/01)
【非特許文献2】Gopinathan K.M. & Manilal V.B.、Pectinolytic Decortication of Pepper (Piper nigrum L.)、J. Food Sci. Technol、2004、41(1)、p.74‐77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記の点に鑑み、本発明の目的とするところは、長期に亘る水への浸漬、ブランチングなどによる風味の減少などをなくし、白胡椒の色をより白くし、従来の方法よりも白胡椒の製造コストを削減し且つ効率良く白胡椒を製造する方法を提供すること、さらには胡椒の実の果皮、果肉を副生物として容易に利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、収穫後の生胡椒から擦り現象により果皮(果肉)を剥離することで排水負荷をかけることなく胡椒本来の風味を損なっておらず、且つ非常に白い白胡椒を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)腐敗臭がなく、1,8−cineol、α−phellandrene、およびβ−phellandreneのGC−FIDによるピーク面積の合計が15000[Pa*S]以上であり、且つ外種皮及び内種皮を有していることを特徴とする白胡椒。
【0022】
(2)β−phellandreneのGC−FIDによるピーク面積が11000[Pa*S]以上である(1)記載の白胡椒。
【0023】
(3)GC−FIDによる全香気成分のピーク面積の合計が120000[Pa*S]以上であり、かつ、前記全香気成分に下記香気成分から選択される少なくとも16種を含む(1)または(2)記載の白胡椒。
香気成分:α−phellandrene、β−phellandrene、1,8Cineol、α−pinene、α−Thujene、camphene、β−pinene、sabinene、Δ3−carene、myrcene、α−terpinene、limonene、γ−terpinene、trans−Ocimene、p−cymene、terpinolene、trans−4−thujanol、citronellal、δ−elemen、α−Copaene、linalool、Terpinen−4−ol、β−caryophyllene、α−humulene。
【0024】
(4)3−メチルインドールの含有量が、香気成分の全量に対して40ppb以下である(1)〜(3)の何れかに記載の白胡椒。
【0025】
(5)所定量の胡椒の実に所定量の水を添加し加圧攪拌して胡椒の実を摺擦し、果皮および果肉を除去した後、乾燥して得られ、外種皮及び内種皮を有していることを特徴とする白胡椒。
【0026】
(6)所定流量の胡椒の実に所定流量の水を添加し連続的に加圧攪拌する(5)記載の白胡椒。
【0027】
(7)前記胡椒の実の含水率が、15重量%以上である(5)または(6)に記載の白胡椒。
【0028】
(8)前記加圧攪拌が、攪拌筒と、該攪拌筒に内装され周面に螺旋状押出突条と攪拌突条とを同軸上に備えた攪拌ロールと、を含む加圧攪拌手段を用い、前記螺旋状押出突条により胡椒の実を圧送するとともに、前記攪拌突条により胡椒の実に剪断力を掛けることにより行われる(6)または(7)に記載の白胡椒。
【0029】
(9)前記攪拌ロールの回転速度が800rpm以上である(8)に記載の白胡椒。
【0030】
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の白胡椒を10重量%以上含むことを特徴とするスパイスミックス。
【0031】
(11)所定量の胡椒の実に所定量の水を添加し加圧攪拌して胡椒の実を摺擦し、果皮および果肉を除去した後、乾燥することを特徴とする白胡椒の製造方法。
【0032】
(12)所定流量の胡椒の実に所定流量の水を添加し連続的に加圧攪拌する(11)記載の白胡椒の製造方法。
【0033】
(13)前記胡椒の実の含水率が、15重量%以上である(11)または(12)に記載の白胡椒の製造方法。
【0034】
(14)前記加圧攪拌が、攪拌筒と、該攪拌筒に内装され周面に螺旋状押出突条と攪拌突条とを同軸上に備えた攪拌ロールと、を含む加圧攪拌手段を用い、前記螺旋状押出突条により胡椒の実を圧送するとともに、前記攪拌突条により胡椒の実に剪断力を掛けることにより行われる(12)または(13)に記載の白胡椒の製造方法。
【0035】
(15)前記攪拌ロールの回転速度が800rpm以上である(14)に記載の白胡椒の製造方法。
【発明の効果】
【0036】
本発明に従えば、長期間に亘る水への浸漬、ブランチングなどによる風味の減少などをなくし、従来の白胡椒よりさらにその色を白くした白胡椒を提供することができる。また、本発明に従えば、製造コストを削減し、且つ収率良く白胡椒を製造する方法を提供することができる。さらには胡椒の実の果皮、果肉を副生物として容易に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】胡椒の構造を模式的に示した断面図である。
【図2】加圧攪拌装置の概略図である。
【図3】実施例および比較例の全香気成分の香気成分量を示した図である。
【図4】実施例および比較例の香気成分1,8−cineol、α−phellandreneおよびβ−phellandreneの香気成分量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
本発明の白胡椒は、腐敗臭がなく、香気成分1,8−cineol、α−phellandreneおよびβ−phellandreneのGC−FIDによるピーク面積の合計が15000[Pa*S]以上であり、且つ外種皮、内種皮を有するものである。
【0039】
本発明の白胡椒には後述のように種々の香気成分が含まれるが、特に1,8−cineol、α−phellandreneおよびβ−phellandreneが上記の所定量以上含まれる。1,8−cineol(化学式:C10H18O)は、樟脳に似たさわやかな匂いとすっきりした味を持つものとされる。α−phellandreneおよびβ−phellandrene(いずれも化学式:C10H16)は、快い芳香を持つとされ、特にβ−phellandreneはペパーミント様で、わずかに柑橘系の香りを帯びるとされる。本発明の白胡椒には、このような香気成分が上記所定量以上含まれることから、白胡椒の風味が保持され、優れたものとなる。尚、上記香気成分のGC−FIDによるピーク面積の合計が15000[Pa*S]以上であると白胡椒の風味の力価が強くなる点で好ましく、18000[Pa*S]以上であるとより好ましい。更に、白胡椒の風味の観点から、β−phellandreneのGC−FIDによるピーク面積が11000[Pa*S]以上であってもよい。
【0040】
また本発明の白胡椒は、更にGC−FIDによる全香気成分のピーク面積の合計が120000[Pa*S]以上であり、かつ、香気成分として、上記の三成分に加え、α−pinene、α−Thujene、camphene、β−pinene、sabinene、Δ3−carene、myrcene、α−terpinene、limonene、γ−terpinene、trans−Ocimene、p−cymene、terpinolene、trans−4−thujanol、citronellal、δ−elemen、α−Copaene、linalool、Terpinen−4−ol、β−caryophyllene、α−humuleneの合計24成分から選択される少なくとも16種を含むものが好ましい。このように香気成分量が多く、かつ種々の香気成分が含まれると、より香り高く、風味の豊かな白胡椒となる。
【0041】
また、本発明の白胡椒は、前述の伝統的な方法により得られた白胡椒とは異なり腐敗臭がないものである。このような腐敗臭があるものは、たとえ香気成分が含まれていたとしても、上品でマイルドな香りが大きく損なわれることになる。主な腐敗臭の原因成分としては、3−メチルインドール(スカトール)が挙げられ、従来品より腐敗臭がしないという観点では、その含有量が40ppb以下であることが好ましく、10ppb以下であることがより好ましい。尚、3−メチルインドール(スカトール)の含有量は、GC−MSにより測定することができる。尚、本発明における香気成分には、腐敗臭成分は含まないものとする。
【0042】
以上のような本発明の白胡椒は、所定量の胡椒の実に所定量の水を添加し加圧攪拌して胡椒の実を摺擦し、果皮および果肉を除去した後、乾燥して得られる。
【0043】
本発明に用いる胡椒の実は、世界的に胡椒の原料として栽培されている植物種である胡椒(Piper nigrum L.)から収穫される実でよく、植物種内での変種、系統、品種などは問わない。前記胡椒の実を収穫する時期としては、赤くなる程度まで熟した時が風味の質の面から好ましいが、未熟であっても黒胡椒の原料となるレベルまで生育すれば使用できる。また、未熟な胡椒の実および完熟した胡椒の実が混在していてもよい。また、原料として使用する胡椒の実は、白胡椒の色をより白く、かつ風味の減少を抑制するためには、収穫した生のままの胡椒の実を直ぐに用いるのが良いが、収穫した胡椒の実を−20℃以下で凍結させたものを、自然解凍、あるいは温水解凍して用いても同様の効果が期待できる。また、生のまま乾燥したものを使用しても良い。
【0044】
原料として使用する胡椒の実の含水率は、果皮(果肉)の分離効率の観点から、15重量%以上であることが好ましい。水分量の測定は、赤外線水分計((株)ケット科学研究所製、FD−240)を用いて行うことができ、具体的な測定条件としては、試料5gを105℃で7分間加熱した時の減量を含水量とし、加熱前の総重量に対する比として算出したものを含水率とした。
【0045】
本発明の白胡椒は、上記含水率の胡椒の実から酵素を用いないで果皮および果肉の除去を行って得られる。例えば、所定量の胡椒の実に所定量の水を添加し加圧攪拌して胡椒の実を摺擦し、果皮および果肉を除去した後、乾燥することにより製造することができる。ここで「胡椒の実を摺擦する」とは、胡椒の実同士を相互に、および/または胡椒の実を後述の攪拌筒の内壁と、擦り合わせることを意味する。
【0046】
本発明では、上記の胡椒の実に水を添加して加圧攪拌し、胡椒の実を摺擦することにより、胡椒の実から果皮(果肉)を除去する。このような処理は、例えば図2に示す加圧攪拌装置を用いて行うことができる。図2に示す加圧攪拌装置7は、一端に供給口8を、他端に排出口9を有する攪拌筒10に、モーター(図示せず)により回転駆動自在とし、周面に突条11(螺旋状圧送突条11aおよび攪拌突条11b)を備えた攪拌ロール12を内装したものである。また、攪拌筒10には水タンク(図示せず)等の給水手段に連通した注水口13を設けるとともに、攪拌筒10の下側には果皮(果肉)が除去された状態の胡椒の実が漏出しない程度の細孔14を設け、その下側に水受樋15を設けてある。また、排出口9には調圧機構16を設けてある。供給口8には、投入口17と出口19を有し、定量送りスクリュー18が内装された搬送筒20を出口19を供給口8に臨ませて設けてある。
【0047】
攪拌筒10の内部形状は特に制限はないが、長さ方向に垂直な断面の形状は、多角形が好ましく、さらにその一角の角度が108〜120°であるのがより好ましい。角度が大きくなり過ぎると、負荷が不足するため十分に果皮(果肉)を剥離、除去することができなくなる傾向にある。また、攪拌筒10の内部の大きさは、内装する攪拌ロール12の最大幅および長さによるが、概ねその長さが250mm程度で、その最小幅は50mm程度で、最大幅は100mm程度である。尚、攪拌筒10の内部の最小幅と、攪拌ロール12の最大幅とのクリアランスは、概ね30mm程度である。
【0048】
また、攪拌筒10に内装された攪拌ロール12には、胡椒の実を圧送する部分と、圧送された胡椒の実を摺擦する部分と、を同軸上に、直列ないしは連続して設けてあり、胡椒の実を圧送する部分には螺旋状圧送突条11aを設け、圧送された胡椒の実を摺擦する部分には攪拌突条11bを設けてある。攪拌ロール12の回転数は、800rpm以上が好ましく、1800rpm以上がさらに好ましい。攪拌ロール12の回転速度が低いと胡椒の実のぶつかりが小さく、胡椒の実同士や胡椒と攪拌筒12内壁との擦り合わせた(摺擦した)場合の剪断力が小さくなるため、果皮(果肉)を剥離、除去し難くなる傾向にある。また、攪拌突条11bは、攪拌ロール12の長さ方向に対して平行あるいは一定の角度を有していても良いし、くの字状(あるいはV字状)に屈曲していても、その他波線状などであっても良い。また、突条11は攪拌ロール12の一端から他端にかけて連続して設けても良いし、切り欠き部分があっても良い。更に、攪拌突条11bの設置数、位置も特に制限はない。攪拌筒内の圧力は、調圧機構16により、仕上がり具合で調整する。
【0049】
加圧攪拌装置7は、次のように作動する。投入口17に投入された原料となる胡椒の実は、搬送筒20内を定量送りスクリュー18により一定流量で出口19から排出され、供給口8を経て攪拌筒10に入り、回転する攪拌ロール12の螺旋状圧送突条11aにより排出口9方向へ圧送され、調圧機構16により圧力を調整された状態で攪拌筒10内を通過して排出口9から排出される。この間に、注水口13からの水を添加すると同時に攪拌突条11bにより攪拌されることで、胡椒の実が相互に、および/または胡椒の実が攪拌筒内壁に擦り合わされて(摺擦されて)、胡椒の実に剪断力がかかり、果皮(果肉)が原料の胡椒の実から剥離する。添加された水の大部分は攪拌筒10の細孔14から排出され水受樋15に集められ処理される。若干の水が付着した状態の果皮(果肉)が除去された胡椒の実(種子)と剥離された果皮(果肉)とが排出口9から排出される。尚、定量送りスクリュー18による胡椒の実の供給速度(流量)は、速度が大きいと胡椒の実の割れが発生し、速度が小さいと果皮(果肉)が剥離されないため、80〜150kg/hであるのが好ましい。また、水の供給流量は、流量が小さいと果皮(果肉)の剥離効率が悪く、胡椒の実の割れが発生し、流量が大きいと効果が頭打ちとなるため、50〜300L/hrである。
【0050】
このようにして排出口9から排出された種子と剥離された果皮(果肉)とは、水の入った公知の攪拌槽に投入され、種子と果皮(果肉)とに分離され、かつ洗浄される。また、胡椒の実から果皮(果肉)の除去が十分でない場合は、種子と果皮(果肉)を分離したあと、再度種子を加圧攪拌装置にかけ上記工程を繰り返しても良い。このようにして得られた種子を乾燥し、さらに必要により殺菌することで、本発明の白胡椒を高収率で効率よく得ることができる。尚、乾燥条件としては、風味、腐敗性の観点から、30〜60℃で、8〜48時間行うのが好ましい。また、殺菌を行う場合は、スチーム殺菌などにより行うことができる。
【0051】
また、本発明においては酵素処理を行わないことから、その廃水処理の問題も生じない。しかも、分離、洗浄した果皮(果肉)は、伝統的な製法のように腐敗せず、また酵素の付着がないため、そのまま副産物として調味料、香味油などに容易に利用することができる。
【0052】
このようにして得られた本発明の白胡椒は、ホール状であり、伝統的な白胡椒の製法と異なり、長期間水に浸漬することがないため、腐敗臭がない。また、ブランチング処理を行わないため、加熱や水への浸漬に伴う香気成分量の減少が抑制され、特に上述の3種の香気成分を豊富に含むものである。
【0053】
また、水への長期の浸漬を行うことがなく、またブランチング処理を行わないため、溶出したポリフェノール、クロロフィルなどの酸化による褐変がなく、白胡椒の色を、従来のものよりも一層白くすることが可能である。
【0054】
このようなホール状の白胡椒からは、通常の粉砕方法により、粗挽きや各種サイズの白胡椒の粉末製品が得られる。また、洗浄(水洗)の終了した白胡椒は、回転式石臼磨砕機(例:マスコロイダー(増幸産業社製))、高速回転刃磨砕機(例:コミトロール(アシュール社製))、回転刃式フードカッターなどを使用してペースト状にして使用しても良い。当該磨砕時に加水してもよく、加水量により、マッシュ状、ペースト状、液状とすることができる。
【0055】
また、本発明の白胡椒は、米粉などの増量剤、黒胡椒などの他のスパイスなどと混ぜ合わせ、ミックススパイスとすることができる。この場合、白胡椒の含有量は、本発明の効果を享受できる点で、10重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。
【0056】
更に、本発明の白胡椒は、麺類への風味付け、ハム、ソーセージへの風味付け、ドレッシングへの風味付け等の用途に用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。尚、実施例の説明に先立ち、白胡椒の香気成分の測定方法および3−メチルインドールの測定方法を説明する。
【0058】
(測定方法)
<香気成分の測定方法>
白胡椒の香気成分は、GC−FID法によるガスクロマトグラフにより測定した。試料は、ミクロパウダー(MPW−G008、槇野産業(株)製)にて粉砕して作製した。
【0059】
検出器としてGC−FID(HP6890、ヒューレットパッカード社製)、ヘッドスペースサンプラーとしてTEKMAR 7000HT(TEKMAR社製)、カラムとしてDB−WAXを用いた。またシステムソフトウェアとしてHP−ケミステーション(横河アナリティカルシステムズ社製)を用いた。ヘッドスペースの加温条件は80℃で30分間であり、測定昇温条件は、以下の(1)〜(11)に従って順次昇温した。
(1)40℃ for 5min、(2)40〜80℃ 20℃/min、(3)80℃ for 4min、(4)80〜120℃ 10℃/min、(5)120℃ for 0min、(6)120〜140℃ 20℃/min、(7)140℃ for 3min、(8)140〜150℃ 10℃/min、(9)150℃ for 2min、(10)150〜250℃ 10℃/min、(11)250℃ for 8min。
【0060】
<3−メチルインドールの測定方法>
実施例・比較例で得られた白胡椒を、ワンダーブレンダー(型番:WB−1、大阪ケミカル社製)を用いて25000rpmで5分間粉砕した後、80メッシュふるいにかけた白胡椒粉末0.2g重量をバイアル瓶に充填し、蒸留水8mLを加え、固液分散系中の成分をツイスター(GESTEL社製)に吸着し、加熱脱着装置TDS(GESTEL社製)および5873型MS検出器(アジレント・テクノロジー社製)を装備した6890N型GC(アジレント・テクノロジー社製)を用いて分析を実施した。検量線として3−メチルインドール0.1gをMCT(アクターM−2 理研ビタミン製)100gに溶解し、MCTで10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppbとなるように希釈した。その希釈液0.2gを蒸留水8mLに加え、固液分散系中の成分をツイスター(GESTEL社製)に吸着し、加熱脱着装置TDS(GESTEL社製)および5873型MS検出器(アジレント・テクノロジー社製)を装備した6890N型GC(アジレント・テクノロジー社製)を用いて分析を実施し、3−メチルインドールの量を求めた。
【0061】
<ガスクロマトグラフ条件>
イニシャル温度:40℃
イニシャル温度保持時間:2分間
昇温スピード:100℃まで毎分3℃、その後240℃まで毎分5℃
最終温度:240℃
最終温度保持時間:30分間
キャリアーガス:ヘリウム 206kPa
キャリアーガス流量:2.1mL/min
MS(検出器条件):MS イオン源温度 230℃
MS 4重極温度 150℃
GERSTEL社製 TDSA
TDS条件:イニシャル温度:20℃
イニシャル温度保持時間:1分間
昇温スピード:毎分60℃
最終温度240℃
最終温度保持時間:5分間
CIS条件:イニシャル温度:−100℃
インシャル温度保持時間:0.2分
昇温スピード:毎秒12℃
最終温度:240℃
最終温度保持時間:10分間
【0062】
(実施例1)加圧攪拌装置を用いたベトナム産白胡椒
収穫後、−4℃に冷凍したベトナム産胡椒の実(水分58.8%)100重量部を常温の水で解凍し、図2に示す加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数:2400rpm)で処理を行ない、水洗により果皮(果肉)を大まかに除去した後、43重量部の種子を得た。得られた種子を再び前記加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数:2400rpm)で処理を行ない、水洗により果皮(果肉)を除去した後、39重量部の種子を得た。得られた種子を乾燥機(不二パウダル株式会社製、型式:100E)で40℃、48h乾燥し、27重量部の白胡椒を得た。得られた白胡椒について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。尚、表1、2中の数値の単位はいずれも[Pa*S]であり、また、上記方法における3−メチルインドールの検出限界は10ppbで、表3中、「N.D.」は3−メチルインドールが検出されなかったことを意味する。
【0063】
(実施例2)加圧攪拌装置で3回処理したベトナム産白胡椒
収穫後、−4℃に冷凍したベトナム産胡椒の実(水分58.8%)100重量部を常温の水で解凍し、図2に示す加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数2400rpm)で処理を行ない、水洗により果皮を大まかに除去後、43重量部の種子を得た。得られた種子を再び前記加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数:2400rpm)で処理を行ない、水洗により果皮(果肉)を除去後、39重量部の種子を得た。得られた種子を更に前記加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数:2400rpm)で処理を行ない、水洗した後、37重量部の種子を得た。得られた種子を乾燥機(不二パウダル株式会社製、型式:100E)で40℃、48h乾燥し、27重量部の白胡椒を得た。得られた白胡椒について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0064】
(実施例3)加圧攪拌装置を用いたインドネシア産白胡椒
収穫後、−4℃に冷凍したインドネシア産胡椒の実(水分60.8%)100重量部を常温の水で解凍し、図2に示す加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数3000rpm)で処理を行ない、水洗により果皮(果肉)を大まかに除去した後、41重量部の種子を得た。得られた種子を再び前記加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数:3000rpm)で処理を行ない、水洗により果皮(果肉)を除去した後、40重量部の種子を得た。得られた種子を乾燥機(不二パウダル株式会社製、型式:100E)で50℃、12h乾燥し、28重量部の白胡椒を得た。得られた白胡椒について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0065】
(比較例1)酵素を用いて作製したベトナム産白胡椒
収穫後、−4℃に冷凍したベトナム産胡椒の実(水分58.8%)100重量部を手によって大まかに果皮を除去した。種子と種子にこびりついている果肉を合わせて42重量部であった。当該種子42重量部を、21重量部の水と酵素1(商品名:ViscozymeL、novozymes社製、100FBG/g)0.042重量部及び酵素2(商品名:Celluclast 1.5L、novozymes社製、700EGU/g)0.042重量部からなる混合溶液に加え、45℃で3時間攪拌した。水洗により果皮(果肉)を除去して得られた種子を乾燥機(不二パウダル株式会社製、型式:100E)で50℃、12h乾燥し、27重量部の白胡椒を得た。得られた白胡椒について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0066】
(比較例2)加圧攪拌装置で処理後、酵素を用いて作製したベトナム産白胡椒
収穫後、−4℃に冷凍した胡椒の実(水分58.8%)を常温水で解凍し、図2に示す加圧攪拌装置(攪拌ロールの回転数2400rpm)で処理を行ない、水洗により果皮(果肉)を大まかに除去した。得られた種子42重量部を、21重量部の水と酵素1(商品名:ViscozymeL、novozymes社製、100FBG/g)0.042重量部及び酵素2(商品名:Celluclast 1.5L、novozymes社製、700EGU/g)0.042重量部からなる混合溶液に加え、45℃で3時間攪拌した。水洗し果皮(果肉)を除去した後、得られた種子を乾燥機(不二パウダル株式会社製、型式:100E)で50℃、12h乾燥し、27重量部の白胡椒を得た。得られた白胡椒について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0067】
(比較例3)伝統的製法のベトナム産白胡椒
伝統的な水漬法で生産されたベトナム産の白胡椒(「白胡椒原形V」、カネカサンスパイス社製)について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0068】
(比較例4)伝統的製法のインドネシア産白胡椒
伝統的な水漬法で生産されたインドネシア産の白胡椒(「白胡椒原形I」、カネカサンスパイス社製)について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0069】
(比較例5)伝統的製法のマレーシア産白胡椒
伝統的な水漬法で生産されたマレーシア産の白胡椒(「白胡椒原形M」、カネカサンスパイス社製)について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0070】
(比較例6)伝統的製法のタイ産白胡椒
伝統的な水漬法で生産されたタイ産の白胡椒(「白胡椒原形T」、カネカサンスパイス社製)について、上記方法により香気成分を測定した。測定結果を表1、2および図3、4に示す。
【0071】
(比較例7)伝統的製法の中国産白胡椒
伝統的な水漬法で生産された中国産の白胡椒(「白胡椒原形C」、カネカサンスパイス社製)について、上記方法により香気成分を測定した。測定結果を表1、2および図3、4に示す。
【0072】
(比較例8)黒胡椒から研磨により作製したマレーシア産白胡椒
伝統的な方法で生産された(胡椒の実を採取し天日乾燥させたもの)マレーシア産の黒胡椒の実(「黒胡椒原形M」、カネカサンスパイス社製、水分7.6%)100重量部を電動ミニヤスリ(製品名「ジョイロボH−025」、sumflex社製、ロータリーヘッド:16mmφ、82mm長、φ2.4/3.0mmコレット)にて50重量部になるまで果皮(果肉)を研磨除去し、白胡椒を得た。得られた白胡椒について、上記方法により香気成分および3−メチルインドールを測定した。測定結果を表1〜3および図3、4に示す。
【0073】
(官能評価)
上記実施例および比較例に記載の白胡椒をいわゆる湯溶き法により官能評価を行った。即ち、各白胡椒を粉末化し、その各粉末0.5gを90℃の熱水200mLにそれぞれ懸濁させサンプルを作製した。パネラー10人に各サンプルの匂いを嗅いでもらい、腐敗臭を感じるか否かについて評価した。更に、腐敗臭を感じなかったサンプルにおいて匂いの強さについて比較例1を基準の5として10段階で評価した(数値が大きくなるほど匂いが強くなるものとした。)。また、同様に腐敗臭を感じなかったサンプルにおいて匂いのフレッシュ感について比較例2を基準の5として10段階で評価した(数値が大きくなるほどフレッシュ感が高くなるものとした。)。評価結果を表4に示す。尚、評価結果は、各サンプルについての各パネラーの点数を合計し、その算術平均で示したものである。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【符号の説明】
【0078】
1 胡椒
2 果皮
3 果肉
4 外種皮
5 内種皮
6 周乳
7 加圧攪拌装置
8 供給口
9 排出口
10 攪拌筒
11 突条
11a 螺旋状圧送突条
11b 攪拌突条
12 攪拌ロール
13 注水口
14 細孔
15 水受樋
16 調圧機構
17 投入口
18 定量送りスクリュー
19 出口
20 搬送筒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐敗臭がなく、α−phellandrene、β−phellandrene、および1,8−cineolのGC−FIDによるピーク面積の合計が15000[Pa*S]以上であり、且つ外種皮及び内種皮を有していることを特徴とする白胡椒。
【請求項2】
β−phellandreneのGC−FIDによるピーク面積が11000[Pa*S]以上である請求項1記載の白胡椒。
【請求項3】
GC−FIDによる全香気成分のピーク面積の合計が120000[Pa*S]以上であり、かつ、前記全香気成分に下記香気成分から選択される少なくとも16種を含む請求項1または2記載の白胡椒。
香気成分:α−phellandrene、β−phellandrene、1,8Cineol、α−pinene、α−Thujene、camphene、β−pinene、sabinene、Δ3−carene、myrcene、α−terpinene、limonene、γ−terpinene、trans−Ocimene、p−cymene、terpinolene、trans−4−thujanol、citronellal、δ−elemen、α−Copaene、linalool、Terpinen−4−ol、β−caryophyllene、α−humulene。
【請求項4】
3−メチルインドールの含有量が、40ppb以下である請求項1〜3の何れかに記載の白胡椒。
【請求項5】
所定量の胡椒の実に所定量の水を添加し加圧攪拌して胡椒の実を摺擦し、果皮および果肉を除去した後、乾燥して得られ、外種皮及び内種皮を有していることを特徴とする白胡椒。
【請求項6】
所定流量の胡椒の実に所定流量の水を添加し連続的に加圧攪拌する請求項5記載の白胡椒。
【請求項7】
前記胡椒の実の含水率が、15重量%以上である請求項5または6記載の白胡椒。
【請求項8】
前記加圧攪拌が、攪拌筒と、該攪拌筒に内装され周面に螺旋状押出突条と攪拌突条とを同軸上に備えた攪拌ロールと、を含む加圧攪拌手段を用い、前記螺旋状押出突条により胡椒の実を圧送するとともに、前記攪拌突条により胡椒の実に剪断力を掛けることにより行われる請求項6または7に記載の白胡椒。
【請求項9】
前記攪拌ロールの回転速度が800rpm以上である請求項8に記載の白胡椒。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の白胡椒を10重量%以上含むことを特徴とするスパイスミックス。
【請求項11】
所定量の胡椒の実に所定量の水を添加し加圧攪拌して胡椒の実を摺擦し、果皮および果肉を除去した後、乾燥することを特徴とする白胡椒の製造方法。
【請求項12】
所定流量の胡椒の実に所定流量の水を添加し連続的に加圧攪拌する請求項11記載の白胡椒の製造方法。
【請求項13】
前記胡椒の実の含水率が、15重量%以上である請求項11または12に記載の白胡椒の製造方法。
【請求項14】
前記加圧攪拌が、攪拌筒と、該攪拌筒に内装され周面に螺旋状押出突条と攪拌突条とを同軸上に備えた攪拌ロールと、を含む加圧攪拌手段を用い、前記螺旋状押出突条により胡椒の実を圧送するとともに、前記攪拌突条により胡椒の実に剪断力を掛けることにより行われる請求項12または13に記載の白胡椒の製造方法。
【請求項15】
前記攪拌ロールの回転速度が800rpm以上である請求項14に記載の白胡椒の製造方法。
【請求項1】
腐敗臭がなく、α−phellandrene、β−phellandrene、および1,8−cineolのGC−FIDによるピーク面積の合計が15000[Pa*S]以上であり、且つ外種皮及び内種皮を有していることを特徴とする白胡椒。
【請求項2】
β−phellandreneのGC−FIDによるピーク面積が11000[Pa*S]以上である請求項1記載の白胡椒。
【請求項3】
GC−FIDによる全香気成分のピーク面積の合計が120000[Pa*S]以上であり、かつ、前記全香気成分に下記香気成分から選択される少なくとも16種を含む請求項1または2記載の白胡椒。
香気成分:α−phellandrene、β−phellandrene、1,8Cineol、α−pinene、α−Thujene、camphene、β−pinene、sabinene、Δ3−carene、myrcene、α−terpinene、limonene、γ−terpinene、trans−Ocimene、p−cymene、terpinolene、trans−4−thujanol、citronellal、δ−elemen、α−Copaene、linalool、Terpinen−4−ol、β−caryophyllene、α−humulene。
【請求項4】
3−メチルインドールの含有量が、40ppb以下である請求項1〜3の何れかに記載の白胡椒。
【請求項5】
所定量の胡椒の実に所定量の水を添加し加圧攪拌して胡椒の実を摺擦し、果皮および果肉を除去した後、乾燥して得られ、外種皮及び内種皮を有していることを特徴とする白胡椒。
【請求項6】
所定流量の胡椒の実に所定流量の水を添加し連続的に加圧攪拌する請求項5記載の白胡椒。
【請求項7】
前記胡椒の実の含水率が、15重量%以上である請求項5または6記載の白胡椒。
【請求項8】
前記加圧攪拌が、攪拌筒と、該攪拌筒に内装され周面に螺旋状押出突条と攪拌突条とを同軸上に備えた攪拌ロールと、を含む加圧攪拌手段を用い、前記螺旋状押出突条により胡椒の実を圧送するとともに、前記攪拌突条により胡椒の実に剪断力を掛けることにより行われる請求項6または7に記載の白胡椒。
【請求項9】
前記攪拌ロールの回転速度が800rpm以上である請求項8に記載の白胡椒。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の白胡椒を10重量%以上含むことを特徴とするスパイスミックス。
【請求項11】
所定量の胡椒の実に所定量の水を添加し加圧攪拌して胡椒の実を摺擦し、果皮および果肉を除去した後、乾燥することを特徴とする白胡椒の製造方法。
【請求項12】
所定流量の胡椒の実に所定流量の水を添加し連続的に加圧攪拌する請求項11記載の白胡椒の製造方法。
【請求項13】
前記胡椒の実の含水率が、15重量%以上である請求項11または12に記載の白胡椒の製造方法。
【請求項14】
前記加圧攪拌が、攪拌筒と、該攪拌筒に内装され周面に螺旋状押出突条と攪拌突条とを同軸上に備えた攪拌ロールと、を含む加圧攪拌手段を用い、前記螺旋状押出突条により胡椒の実を圧送するとともに、前記攪拌突条により胡椒の実に剪断力を掛けることにより行われる請求項12または13に記載の白胡椒の製造方法。
【請求項15】
前記攪拌ロールの回転速度が800rpm以上である請求項14に記載の白胡椒の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2010−246393(P2010−246393A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93274(P2009−93274)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(594026170)株式会社カネカサンスパイス (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(594026170)株式会社カネカサンスパイス (4)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]