説明

白色二軸延伸ポリオレフィンフイルムおよびその製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、白色二軸延伸ポリオレフィンフイルム、およびその製造方法に関する。更に詳しくは、白くて光学濃度が高く隠蔽性に優れ、また耐衝撃性、水蒸気バリア性に優れた白色二軸延伸ポリオレフィンフイルムおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、白色二軸延伸ポリオレフィンフイルムとしては、炭酸カルシウム等の無機フィラーあるいはポリエステル等の結晶性で非相溶性樹脂をブレンドして延伸し、形成されたボイドの光散乱により、白色化するものが知られている(特公昭60ー37793号公報、特開昭61ー157547号公報、特開昭61ー157548号公報等)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ポリオレフィンに炭酸カルシウム等の無機フィラーあるいはポリエステル等の結晶性で非相溶性の樹脂と分散剤または流動開始剤を添加することにより白色化フイルムとした場合には、形成されたボイドの体積が大きく、またボイド形成物の吸湿性が高いために生産上の制約を必要とし、白色化フイルムは機械的強度、耐衝撃性、水蒸気バリア性に劣り、かつ、経日で白色度が低下するという問題点がある。そのため、該白色化フイルムを各種印刷用紙、各種ラベル、各種粘着テープ、各種包装紙等として用いる場合、要求される特性を十分に満足させることが困難であった。
【0004】本発明は、従来の白色二軸延伸ポリオレフィンフイルムの問題点を解決し、白くて光学濃度が高く隠蔽性に優れ、耐衝撃性、水蒸気バリア性に優れ、各種印刷用紙、各種ラベル、各種粘着テープ、各種包装紙等として好適な白色二軸延伸ポリオレフィンフイルムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的に沿う本発明の白色二軸延伸ポリオレフィンフイルムは、結晶性ポリプロピレン65〜93重量%と、熱変形温度が120℃以上の非晶性樹脂5〜20重量%と、融解温度が140℃以下のポリオレフィン樹脂2〜15重量%とからなり、フイルム断面が未発泡層を中心層としてその両側に発泡層を有した3層構造を有し、該未発泡の中心層の、該フイルム断面厚さに占める平均厚さ比率が5〜60%で、フイルム厚み30μmにおける光学濃度が0.40以上であることを特徴とするものからなる。
【0006】本発明の白色二軸延伸ポリオレフィンフイルムにおいては、結晶性ポリプロピレン(以下、PPと略称することもある。)は、その極限粘度[η]が1.4〜3.2dl/g、好ましくは1.6〜2.4dl/g、アイソタクチックインデックス(II)が95%以上、メルトフローインデックス(MFI)が1.0〜15g/10分の範囲であることが、フイルムの高い機械特性、耐衝撃性等の諸物性が得られること、および光学濃度の均一性が良好となることから、好ましい。プロピレン以外の第2成分、例えばエチレン、ブテン、ヘキセンなどを少量ランダムに共重合させてもよい。また、公知の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤などを含有させてもよい。
【0007】本発明における第2成分の非晶性樹脂の熱変形温度(ASTM−D648に準じて測定。荷重は18.6kg/cm2 )は、120℃以上であることが必要であり、好ましくは130〜180℃である。熱変形温度が120℃より低い場合は、延伸によるボイド形成が不十分で、隠蔽性の発現が困難となるので好ましくない。
【0008】非晶性樹脂として具体的には、重量平均分子量(以下Mwと略称することもある)40000以下のポリカーボネート樹脂(以下PCと略称することもある)が、PPへの分散性が良く、かつ化学的安定性に優れているので好ましい。さらに、このようなPCを用いることにより、未発泡層を中心層としてその両側に発泡層を有する3層構造のフイルムを容易に得ることができる。
【0009】上記PCとしては、芳香族ポリカーボネートが好ましく、直鎖状および分岐鎖状のポリカーボネートを用いることができる。該PCは、ホモポリマーまたは他のモノマーとの共重合体でもよい。また該PCの熱変形温度は、120℃以上、好ましくは130℃以上である。熱変形温度が120℃より低い場合は、ボイド形成が不十分で、隠蔽性の発現が困難となるので好ましくない。また、PCのMwは40000以下が好ましく、Mwが40000を越えると該PPへの分散性が悪化して、光学濃度むらができて隠蔽性が不十分となり、耐衝撃性、水蒸気バリア性も悪化するので好ましくない。また、溶融特性として、メルトフローインデックスが1〜50g/10分であることが、該PPへの分散性が良くて光学濃度が高くなるので好ましい。また、通常、PCは吸湿性であるが、本発明では該PPと混合して溶融押出する際に、乾燥せずに溶融混練しても問題なくボイド形成ができ、コスト面からも未乾燥使用が好ましい。
【0010】本発明のフイルム中に含まれる非晶性樹脂の含有量は、5〜20重量%であることが必要であり、特に10〜17重量%であることが望ましい。非晶性樹脂の含有量が本発明の範囲未満では、フイルムの断面構造より得られた未発泡の中心層の該フイルム断面厚さに占める平均厚さ比率が60%を越え、フイルムの白色度と光学濃度が不十分となる。また、この範囲を越えると、本発明のフイルムの耐衝撃性と水蒸気バリア性が悪化する。
【0011】また非晶性樹脂は、延伸工程で変形(たとえば楕円形に変形)しうる弾性を有していることが好ましい。本発明のフイルム中に分散した非晶性樹脂の形状としては、長径と短径の比が1.1以上であることが、ボイド形状が扁平となり、優れた機械特性や耐衝撃性が得られるので好ましい。
【0012】本発明のフイルム中に含まれる第3成分の融解温度が140℃以下のポリオレフィン樹脂(以下L−POと略称することもある)は、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体から選ばれた一種叉は二種以上の樹脂からなるものである。この中でエチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体(以下EPCと略称する)、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体としてはエチレン−アクリル酸エステル共重合体が、本発明フイルムの特徴である未発泡層を中心層としてその両側に発泡層を有した3層構造を得るのに好ましく、特にEPCとエチレン−アクリル酸エステル共重合体との混合物がより好ましい。また、該EPCおよびエチレン−アクリル酸エステル共重合体のメルトフローインデックス(MFI)が、1.0〜20g/10分の範囲が機械特性、耐衝撃性等の諸物性、および光学濃度の均一性が良好となるので好ましい。
【0013】本発明のフイルム中に含まれる第3成分のL−POの融解温度は、140℃以下であることが必要である。140℃を越えると、本発明フイルムの特徴である未発泡層を中心層としてその両側に発泡層を有した3層構造を得ることが難しく、また製膜安定性に劣り、フイルムの耐衝撃性、水蒸気バリア性も悪化する。
【0014】本発明のフイルム中に含まれるL−POの含有量は、2〜15重量%であることが必要であり、特に5〜12重量%であることが望ましい。該L−POの含有量が2重量%未満では、耐衝撃性と水蒸気バリア性が悪化する。また、この範囲を越えると、フイルムの断面構造より得られた未発泡の中心層のフイルム断面厚さに占める平均厚さ比率が60%を越え、フイルムの光学濃度が不十分となる。
【0015】非晶性樹脂の含有量が5〜20重量%、上記L−POの含有量が2〜15重量%であるから、残りの65〜93重量%が結晶性ポリプロピレンの含有量である。
【0016】本発明のフイルムの厚みは特に限定されるものではないが、好ましくは10〜120μm、より好ましくは20〜90μmである。
【0017】本発明のフイルムの断面構造は、未発泡層を中心層としてその両側に発泡層を有した3層構造を有し、該未発泡の中心層の該フイルム断面厚さに占める平均厚さ比率が5〜60%であることが必要である。フイルムの断面構造が、全て発泡層となり未発泡層を中心層としてその両側に発泡層を有した3層構造を有していないと、耐衝撃性と水蒸気バリア性に劣り好ましくない。また断面構造より得られた該未発泡の中心層のフイルム断面厚さに占める平均厚さ比率が5%以下では耐衝撃性と水蒸気バリア性に劣り、60%を越えると光学濃度が低く隠蔽性に劣る。
【0018】本発明のフイルムの3層構造の各層の樹脂組成(混合率)は同率であり、例えば、樹脂の種類あるいは樹脂組成の異なるポリマーを共押出して発泡層/未発泡層/発泡層とした多層積層フイルムは、生産性の点で好ましくない。
【0019】本発明のフイルムは、フイルム厚み30μmにおける光学濃度(OD)が0.40以上、好ましくは0.45以上である。0.40未満では、例えば包装用フイルムとして用いた場合、包装する内容物を隠蔽するのに不十分であり、また紙などの他の基材とラミネートした場合に、下地の表面が透けて見えやすくなるので好ましくない。
【0020】また、本発明のフイルムにおいては、その長さ方向と幅方向のシャルピー衝撃強度の和が15(kg・cm/mm2 )以上であることが望ましい。この範囲未満では、例えば包装紙、あるいは粘着テープの基材として用いた場合に実用に耐えない。
【0021】また、本発明のフイルムの水蒸気透過率は、3.0( g/m2 ・日/0.1mm)以下であることが望ましい。この範囲未満では、吸湿性の高い小菓子や米菓などの包装用として用いた場合に、長期保存性に劣る。
【0022】さらに、印刷をした際に、表面のテカテカ感やピカピカ感がなく、しっとりと落ちついた色調を与えるために、本発明のフイルムの光沢度は、100%未満、好ましくは90%以下であることが望ましい。光沢度が100%以上では、印刷をした際に、表面がテカテカやピカピカして印刷が見にくい。
【0023】本発明の白色二軸延伸ポリオレフィンフイルム(A層)にあっては、その少なくとも片面に、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体から選ばれた少なくとも一種の樹脂からなる樹脂層(B層)を積層してもよい。このB層の樹脂の中でもEPCがヒートシール力が高く、また水蒸気バリア性が高いので好ましい。
【0024】B層を積層した本発明のフイルムの積層構成は、B層/A層、又はB層/A層/B層である。B層の積層厚みは、2〜10μmが好ましい。
【0025】本発明のフイルムは、フイルム自身で包装用、ラベル用、粘着テープ用、カード用として使うことができる。また、紙、ポリエステルフイルム、ポリプロピレンフイルム、アルミ箔等と貼り合わせて使うこともできる。この場合、B層の表面に接着性を良くするためにコロナ放電処理を行なうことが好ましい。コロナ放電処理は公知の方法を用いることができるが、処理を施す時の雰囲気ガスとして、空気、炭酸ガス、窒素ガス、炭酸ガス/窒素ガスが好ましく、特に空気が簡便性、経済性の点で好ましい。
【0026】次に、本発明の白色二軸延伸ポリオレフィンフイルムの製造方法について説明する。結晶性PPと熱変形温度が120℃以上の非晶性樹脂と融解温度が140℃以下のポリオレフィン樹脂のそれぞれ特定範囲の混合物からなるA層樹脂を押出機に供給し、270℃以上、好ましくは280℃〜300℃の温度で溶融してT型口金でシート状に押出成形し、ドラフト比(口金リップ間隙/フイルム厚み)が1.5以上、好ましくは2.0〜4.0で該シートを20〜100℃、好ましくは40〜80℃の温度のドラムに巻き付けて冷却固化して、シート断面が未発泡層を中心層としてその両側に発泡層を有した3層構造を形成後、該シートを90℃〜130℃の温度に保ち周速差を設けた3本以上のロール間に通し、長手方向(縦方向)に延伸倍率1.02〜2倍の多段階延伸をした後、さらに160℃以下の温度で長手方向に2〜6倍に延伸し、合計4倍以上の倍率で縦延伸した後ただちに室温に冷却する。このときの延伸温度は次の横延伸性が悪化しない下限の温度140℃以下がフイルムの光学濃度が高くなるので好ましい。縦延伸を多段延伸したのちさらに延伸することにより、押出冷却固化された未延伸フイルムで形成された、未発泡層を中心層としてその両側に発泡層を有した3層構造のフイルム断面形態を維持しながら、小さくて扁平で均一なボイドの生成率を高くすることができ、さらに該未発泡の中心層の該フイルム断面厚さに占める平均厚さ比率が5〜60%となり、耐衝撃性と水蒸気バリア性に優れたフイルムを得ることができる。引き続き該延伸フイルムをテンターに導いて、170℃以下の温度、好ましくは150〜165℃の温度で幅方向(横方向)に5〜10倍に延伸し、次いで幅方向に2〜20%の弛緩を与えつつ、160〜170℃の温度で熱固定して巻取る。またB層の積層は、B層の樹脂をもう一台の押出機に供給して220〜280℃の温度で溶融した後、多層成形口金にてB層/A層またはB層/A層/B層の構成となるように口金内で合流させた後、積層シート状に成形する。また、別の積層方法としては、口金の上流の短管内でA層樹脂とB層樹脂とを合流せしめた後、T型口金でシート状に成形するか、または上記製膜工程で長手方向に延伸された延伸フイルムにB層の樹脂を押出ラミネートし、該積層フイルムをテンターに導き、幅方向に延伸される方法が用いられる。具体的には、B層の樹脂を押出機に供給し、240〜260℃の温度で溶融した後、カラス口型の口金にてシート状に溶融押出をし、その溶融シートを5〜50℃の温度の冷却ロールとゴムロールの間で該A層の未延伸シートを長手方向に延伸したフイルムと貼り合わせ圧着する。
【0027】本発明のフイルムは、目的に応じて帯電防止剤、耐候剤、防曇剤、滑り剤などの添加剤を添加、またはコーティングしてもよい。また、表面改質の目的で空気雰囲気中、不活性ガス雰囲気中等でコロナ放電処理などの公知の処理を施してもよい。また本発明のフイルムは、目的に応じてエンボス加工、印刷、押出ラミネーション加工、他の樹脂フイルム、紙、布などと張り合わせ加工を行なつて用いることもできる。
【0028】〔特性の測定方法並びに効果の評価方法〕本発明の特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次のとおりである。
(1)極限粘度([η])
試料0.1gを135℃のテトラリン100mlに完全溶解させ、この溶液を粘度計で135℃の恒温槽中で測定して、比粘度Sにより次式に従って極限粘度を求める。単位はdl/gとする。
[η]=S/0.1×(1+0.22×S)
【0029】(2)アイソタクチックインデックス(II)
試料を130℃で2時間真空乾燥する。これから重量W(mg)の試料をとり、ソックスレー抽出器に入れ沸騰n−ヘプタンで12時間抽出する。次に、この試料を取り出しアセトンで十分洗浄した後、130℃で6時間真空乾燥しその後、重量W' (mg)を測定し、次式で求める。
II(%)=W' /W×100
【0030】(3)フイルム厚みダイヤルゲージ式厚み計(JIS−B−7509、測定子5mmφ平型)を用いて測定した。
【0031】(4)シャルピー衝撃強度Charpy衝撃試験機によつて求められた値で、試験片を切断する方向に要したエネルギーE(kg/cm)を、サンプル幅(cm)で割った値で示し、算出法は次式による。
E=WR(cosβーcosα)
Wはハンマー重量(kg)、Rはハンマーの回転中心軸から重心までの距離(cm)、αはハンマー持ち上げ角、βは試験片切断後のハンマー振り上げ角である。測定雰囲気は25℃・65%RHである。
【0032】(5)光学濃度(OD)
マクベス社製濃度計TD−504を用いて測定した。入射光量をI0 、透過光量をIとすると、OD=−log(I/I0
で定義される。この値をフイルム厚み30μmに換算した値で表した。
【0033】(6)融解温度(Tm)及び溶融結晶化温度(Tmc)
示差走査熱量計(DSC−2型、パーキンエルマー社製)を用い、サンプル5mgを室温より、20℃/分の昇温速度で昇温していった際の結晶の融解に伴う融解吸熱ピークを融解温度(Tm)とする。ついで、280℃の溶融保持温度まで昇温し、5分間保持した後に20℃/分の冷却速度にて冷却していった時に、結晶化に伴う潜熱のピーク温度を溶融結晶化温度(Tmc)とした。
【0034】(7)重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量(Mw)は以下の測定条件により求めた。
装置:東ソ−製HLC−A−802型カラム:東ソ−製GMH6×2,G2000H8溶媒:テトラヒドロフラン温度:23℃流速:1.5ml/min
【0035】(8)メルトフローインデックス(MFI)
ASTM−D−1238に準じて、PPおよびEPCの樹脂は230℃,2.16kg、エチレン−アクリル酸エステル共重合体の樹脂は190℃,2.16kg、PCは300℃,1.2kgの条件で測定した。
【0036】(9)樹脂の熱変形温度ASTMーDー648の方法に準じて、荷重18.6kg/cm2 として測定して求めた温度を熱変形温度とした。
【0037】(10)ヒートシール力フイルムの接着層面同志を重ね合わせ、120℃に加熱保持された金属板とシリコンゴムの間に入れ、圧力1kg/cm2 ,1secの条件でヒートシールし、剥離速度300mm/分で90度剥離したときの強度を測定した。
【0038】(11)フイルム表面のデラミネーションフイルム表面に幅18mmのセロハンテープ(ニチバン(株)製、NO405)を長さ50mm貼りつけて、手剥離(速度:約200mm/sec)し、フイルム表面の表層部分の劈開の有無で判定した。
【0039】(12)水蒸気透過率JIS−Z−0208に従い、40℃・90%RHの条件で測定した値で、g/m2 ・日/0.1mm単位で表わす。
【0040】(13)フイルム断面構造観察電界放射形走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いてフイルム断面構造観察を行なった。中心層の未発泡層の比率は、発泡層と未発泡層の界面に平均境界線を引き、未発泡の中心層のフイルム断面厚さに占める平均厚さ比率で求めた。
【0041】(14)フイルム中の非晶性樹脂の形状観察電界放射形走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いてフイルム断面構造観察を行ない、非晶性樹脂100個の長形と短形の比の平均値を求めた。
【0042】(15)光沢度(JIS6−8741(方法2)60°鏡面光沢)
光沢度計(日本電色工業製、VG107型)を用いて、60°反射の時の光沢度を測定して求めた。
【0043】
【実施例】本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1〜3、比較例1〜4結晶化PP(極限粘度:1.80dl/g、MI:4.0g/10分、II:97%)樹脂に、非晶性樹脂としてPC(熱変形温度:138℃,分子量:22000)と、L−POとして融解温度が110℃のエチレンーメチルメタアクリル酸共重合体(EMMA)を表1に示した割合に混合して押出機に供給し、290℃の温度で溶融し、T型口金に導きシート状に押出成形し、ドラフト比2.0で60℃の温度のドラムに巻き付けてシート状に冷却固化した。該シートを110℃に保ち周速差を設けた4本のロールに通して長手方向にトータル延伸倍率1.25倍の多段延伸をした後、さらに120℃の温度で周速差の異なるロール間で長手方向に4.0倍延伸し、ただちに40℃に冷却した。次に該延伸フイルムをテンターに導き、165℃の温度に予熱し、引き続き155℃の温度で幅方向に10倍延伸し、次いで幅方向に5%の弛緩を与えつつ165℃の温度で熱処理をした後、冷却し巻き取った。フイルム特性は表2のとおりであった。本発明の範囲のフイルムは特定範囲の未発泡層を中心層とし、その両側に発泡層を有した3層構造を有しており、光学濃度が高くて隠蔽性に優れ、耐衝撃性、水蒸気バリア性にも優れたものであった。また、本発明の範囲を外れたフイルムは、光学濃度、耐衝撃性、水蒸気バリア性のいずれかに劣り、本発明で目的としたフイルムは得られなかった。
【0044】実施例4、5、比較例5、6、7実施例4では、L−POを融解温度が100℃のエチレン−メタアクリル酸共重合体(EMA)とし、実施例5では、L−POを融解温度が132℃のエチレン含有量4.5重量%のEPCとし、比較例5では、実施例1の非晶性樹脂をポリスチレン(PS)(熱変形温度:78℃)とし、比較例6では、実施例1の非晶性樹脂のPCの替わりに結晶性のポリエステル樹脂であるポリブチレンテレフタレート(PBT)(熱変形温度:58℃)とし、比較例7では、実施例1のL−POの替わりに、融解温度が162℃のPPとした以外は実施例1と全く同様にしてフイルムを製造した。得られたフイルムの特性は表2のとおりであった。本発明の範囲のフイルムは特定範囲の未発泡層を中心層とし、その両側に発泡層を有した3層構造を有しており、光学濃度が高くて隠蔽性に優れ、耐衝撃性、水蒸気バリア性にも優れたものであったが、範囲を外れたフイルムは、光学濃度、耐衝撃性、水蒸気バリア性および製膜性に劣り、本発明で目的としたフイルムは得られなかった。
【0045】実施例6、7実施例1の樹脂組成(A層)と、B層の樹脂を実施例6ではエチレン含有量3.7重量%のEPCとし、実施例7ではメタアクリル酸含有量10重量%のEMAとし、別々の2台の押出機にそれぞれ供給し、A層樹脂は280℃、B層樹脂は260℃の温度で溶融し、多層成形口金にてB層/A層/B層となるように口金内で合流させた後、実施例1と全く同様にして二軸延伸複合フイルムを製造した。フイルム特性は、表2に示したように、光学濃度が高くて隠蔽性に優れ、耐衝撃性、水蒸気バリア性にも優れ、さらにA層/B層間のデラミがなく、ヒートシール力が高いものであった。
【0046】
【表1】


【0047】
【表2】


【0048】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の白色二軸延伸ポリオレフィンフイルムは、結晶性PPに特定の非晶性樹脂と特定の融解温度の樹脂を添加混合した樹脂を逐次二軸延伸し、未発泡層を中心層とし、その両側に発泡層を有した3層構造のフィルムであって、次のような優れた効果を生じるものである。
(1)白くて隠蔽性に優れ、印刷の白色下塗り層が省略でき印刷仕上がりが良い。
(2)二次加工で必要な機械強度、耐衝撃性に優れ、各種印刷用紙、粘着テープベース用として良好な特性を有する。
(3)ボイドの形状が小さく扁平で均一であることから、菓子やスナック類の包装用として必要な防湿性に優れている。
(4)無機粒子の添加がないので、製膜性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 結晶性ポリプロピレン65〜93重量%と、熱変形温度が120℃以上の非晶性樹脂5〜20重量%と、融解温度が140℃以下のポリオレフィン樹脂2〜15重量%とからなり、フイルム断面が未発泡層を中心層としてその両側に発泡層を有した3層構造を有し、該未発泡の中心層の、該フイルム断面厚さに占める平均厚さ比率が5〜60%で、フイルム厚み30μmにおける光学濃度が0.40以上であることを特徴とする白色二軸延伸ポリオレフィンフイルム。
【請求項2】 前記熱変形温度が120℃以上の非晶性樹脂が、重量平均分子量40000以下のポリカーボネート樹脂である請求項1の白色二軸延伸ポリオレフインフィルム。
【請求項3】 前記融解温度が140℃以下のポリオレフィン樹脂が、エチレン−α−オレフィン、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体から選ばれた少なくとも一種の樹脂である請求項1又は2の白色二軸延伸ポリオレフィンフイルム。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載の白色二軸延伸ポリオレフィンフイルム(A層)の少なくとも片面に、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体から選ばれた少なくとも一種の樹脂からなる樹脂層(B層)を積層してなる白色二軸延伸ポリオレフィンフイルム。
【請求項5】 結晶性ポリプロピレン65〜93重量%、熱変形温度が120℃以上の非晶性樹脂5〜20重量%、融解温度が140℃以下のポリオレフィン樹脂2〜15重量%の組成の樹脂を、ドラフト比1.5以上でシート状に溶融成形してシート断面が未発泡層を中心層としてその両側に発泡層を有する3層構造に形成し、該シートを、90℃〜130℃に保たれた3本以上の予熱ロール間に周速差を設けて2段階以上の多段延伸を行なった後さらに160℃以下の温度で延伸して合計4倍以上の倍率で縦延伸した後、170℃以下の温度で5倍以上の倍率で横延伸することを特徴とする白色二軸延伸ポリオレフィンフイルムの製造方法。

【特許番号】第2800926号
【登録日】平成10年(1998)7月10日
【発行日】平成10年(1998)9月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−126658
【出願日】平成4年(1992)4月21日
【公開番号】特開平5−295146
【公開日】平成5年(1993)11月9日
【審査請求日】平成8年(1996)6月11日
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)