説明

白血球免疫グロブリン様受容体(LIR)と命名される免疫調節剤ファミリー

【課題】免疫グロブリンスーパーファミリーの免疫受容体分子の新規のファミリー、白血球免疫グロブリン様受容体(LIR)ポリペプチドの提供。
【解決手段】LIRファミリーメンバーをコードする配列およびそれらの推定アミノ酸配列、規定された配列を有すオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズするDNAにコードされるポリペプチド、LIRファミリーのポリペプチドを産生するための方法、およびLIRファミリーメンバーに対するアンタゴニストな抗体。LIRファミリーメンバーは、自己免疫疾患、および抑制された免疫機能に関連する疾病状態の治療に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
免疫系の細胞活性は、細胞表面の相互作用及び関連したシグナルプロセスの複雑なネットワークによって制御されている。細胞表面の受容体がそのリガンドによって活性化されると、シグナルがその細胞に送られるが、動員されるシグナル伝達経路に依存して、シグナルは阻害的又は活性的になり得る。多くの受容体システムに対して、細胞の活性は、活性シグナルと阻害性シグナルとのバランスによって調節される。これらのいくつかでは、そのリガンドによる細胞表面受容体の動員に関連した陽性シグナルが、そのリガンドによる別の細胞表面受容体の関与によって送られる陰性シグナルによってダウンモジュレートされる又は阻害されることが知られている。
【0002】
これらの陽性及び陰性シグナル伝達経路の生化学的メカニズムが、既知の多くの免疫系受容体及びリガンド相互作用に対して研究されてきた。陽性シグナル伝達に介在する多くの受容体は、イムノレセプターチロシンベース活性化モチーフ(ITAM)として知られている、チロシンホスファターゼのリン酸化部位を含む細胞質テールを有する。陽性シグナル伝達に共通する機械的な経路は、受容体の細胞質ドメイン及び他のシグナル伝達分子上の部位をリン酸化するチロシンキナーゼの活性化を含む。受容体がリン酸化されると、シグナル伝達分子の結合部位が形成され、シグナル伝達経路を発動し、細胞を活性化する。阻害的な経路は、ITAMのようにチロシンキナーゼによってリン酸化されるイムノレセプターチロシンベース阻害性モチーフ(ITIM)を有する受容体を含む。これらのモチーフを有する受容体が阻害性のシグナル伝達に関わるのは、活性化された受容体又はシグナル伝達分子からチロシンを除去することによってシグナル伝達を妨害するチロシンホスファターゼのための結合部位を、これらのモチーフが提供するからである。活性化及び阻害メカニズムの詳細については多くのことがわかっていないが、免疫系における機能バランスが相反する活性及び阻害性シグナルに依存していることは明らかである。
【0003】
陽性及び陰性のシグナル伝達のバランスによって調節されている免疫系活動の1例は、B細胞の増殖である。B細胞抗原受容体はB細胞表面の免疫グロブリンであり、抗原と結合すると、B細胞の増殖を導く陽性シグナルを仲介する。しかしながら、B細胞はまた低親和性のIgG受容体であるFcγRIIb1を発現している。ある抗原が可溶性免疫グロブリンとの免疫複合体の一部となるとき、この免疫複合体は、この抗原を介したB細胞抗原受容体と可溶性免疫グロブリンを介したFcγRIIb1の両方を動員することによって、B細胞に結合し得る。B細胞受容体複合体とFcγRIIb1の同時動員は、活性化シグナルをダウンモジュレートし、B細胞の増殖を妨げる。FcγRIIb1受容体はITIMモチーフを含み、これがB細胞受容体との同時動員時のチロシンホスファターゼとの相互作用を介して阻害性のシグナルをB細胞へ伝達すると考えられている。
【0004】
ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞溶解活性は、細胞機能を発動する陽性シグナルとその活動を妨げる阻害性シグナルとのバランスによって調節されている免疫系活動のもうひとつの例である。NKの細胞毒性を活性化する受容体は完全には理解されていない。しかしながら、NK細胞が特定の受容体を有する細胞表面のMHCクラスI抗原を標的細胞が発現していれば、標的細胞はNKによる殺細胞作用から防御される。キラー阻害性受容体(KIR)として知られているこの特定の受容体は、そのMHCリガンドによって動員されるときに陰性のシグナルを送り、NK細胞の細胞毒活性をダウンレギュレートする。
【0005】
KIRは、免疫グロブリンのスーパーファミリー又はC型レクチンファミリーに属する(Lanier等、Immunology Today 17:86〜91,1996を参照のこと)。既知のヒトNK−KIRは免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、その細胞外、膜貫通及び細胞質領域に種々の相違点及び類似点を示す。KIRの多くに共通した細胞質ドメインのアミノ酸配列は、YxxL/Vという配列を有するITIMモチーフである。ある場合には、リン酸化されたITIMが、シグナル伝達経路の分子を脱リン酸化して細胞の活性化を妨げるチロシンホスファターゼを補充することが示されている(Burshtyn等、Immunity 4:77〜85,1996を参照のこと)。KIRは、一般に、26個のアミノ酸だけ離れたこれらモチーフの2つ[YxxL/V(x)26YxxL/V]を有する。ヒト白血球抗原(HLA)C対立遺伝子(MHCクラスI分子)に対してそれぞれ特異的である少なくとも2つのNK細胞受容体は、阻害性及び活性受容体として存在する。これら受容体は、細胞外部分では相同性が高いが、その膜貫通及び細胞質部分では主要な相違点を有する。この相違点の1つは、阻害性受容体ではITIMモチーフが出現しているのに活性受容体ではITIMモチーフが欠損していることである(Biassoni等、Journal Exp.Med.183:645〜650,1996を参照のこと)。
【0006】
マウス肥満細胞、gp49B1によって発現されるイムノレセプターも免疫グロブリンスーパーファミリーの一員であるが、細胞活性化をダウンレギュレートすることが知られていて、一対のITIMモチーフを含む。gp49B1は、ヒトKIRと高度の相同性を共有する(Katz等、Cell Biology、93:10809〜10814,1996)。マウスNK細胞もイムノレセプターファミリーであるLy49ファミリーを発現し、これもITIMモチーフを含み、ヒトKIRと同じように機能する。しかしながら、Ly49イムノレセプターにはヒトKIRとの構造的相同性が無く、細胞外にC型レクチンドメインを含み、レクチンスーパーファミリー分子のメンバーになっている(Lanier等、Immunology Today 17:86〜91,1996を参照のこと)。
【0007】
相反するキナーゼとホスファターゼによって仲介される免疫系の活性及び阻害性シグナルが免疫系のバランスを維持するのにきわめて重要であるのは明らかである。活性シグナルが優勢であるシステムは自己免疫及び炎症につながる。阻害性シグナルが優勢であるシステムは被感染細胞又は癌細胞をより攻撃し得ない。新しい活性又は阻害性受容体を単離することは、受容体を介して伝達される生物学的なシグナルを研究するためにきわめて望ましい。さらに、そのような分子を同定することは、自己免疫、炎症及び感染に関連した病的状態を調節及び治療する手段を提供する。
【0008】
例えば、アゴニスト性の抗体又はリガンドのついたITIMモチーフを有する新発見の細胞表面受容体を動員することは、免疫系が過剰に活動していて過度の炎症又は免疫病理が存在している病的状態にある細胞機能をダウンレギュレートするために使用され得る。一方、受容体又は受容体の可溶型に特異的なアンタゴニスト性の抗体を使用することは、細胞表面受容体と受容体リガンドとの相互作用を妨害し、抑制された免疫機能に関連している病的状態にある特定の免疫機能を活性化するために使用され得る。逆に、ITIMモチーフを欠いている受容体は、上記のように、一度動員されれば活性シグナルを送るので、抗体及び可溶性受容体の効果は記載したものとは反対になる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要約
本発明は、本明細書で白血球免疫グロブリン様受容体(LIR)ポリペプチドと呼ぶ、免疫グロブリンスーパーファミリーの新ファミリーのイムノレセプター分子を提供する。本発明の範囲内には、本明細書に開示されるLIRファミリーメンバーをコードするDNA配列及びそれから導かれるアミノ酸配列がある。本発明にさらに含まれるのは、規定された配列を有するオリゴヌクレオチドプローブ又はそのプローブに相補的なDNA又はRNAにハイブリダイズするDNAにコードされるポリペプチドである。本発明はまた、LIRファミリーメンバーをコードするDNAを含む組換え発現ベクターを含む。さらに本発明の範囲内には、上記の核酸配列及びその核酸配列に相補的な配列によってコードされるポリペプチドと実質的に同一である又は実質的に類似したポリペプチドを、遺伝子暗号の縮重性によりコードするヌクレオチド配列がある。
【0010】
さらに、本発明は、DNA配列をコードするLIRファミリーメンバーを含む組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞を、LIRポリペプチドファミリーメンバーを発現させるのに適した条件で培養し、発現されたLIRポリペプチドを培養物から回収することによってLIRファミリーのポリペプチドを産生するための方法を含む。
【0011】
本発明はまた、LIR及びLIRファミリーメンバーに対するアゴニスト性およびアンタゴニスト性の抗体を提供する。
さらに本発明のなかには、LIRファミリーメンバーの可溶性部分及びIgのFc部分を含む融合タンパク質がある。
【0012】
陰性シグナル伝達のLIRが細胞機能をダウンレギュレートできないことに起因する自己免疫疾患が介在した障害は、LIRファミリーメンバーのアゴニスト性抗体又はリガンドの治療有効量を、そのような障害に罹っている患者へ投与することによって治療され得る。抑制された免疫機能に起因する病的状態が介在する障害は、陰性シグナル伝達LIRの可溶型を投与することによって治療され得る。逆に、活性シグナル伝達LIRの不全に起因した疾患によって介在される障害は、活性受容体のアゴニスト性抗体を投与することによって治療され得る。自己免疫機能に起因した状態によって介在される障害は、活性受容体の可溶型を投与することによって治療され得る。
【0013】
発明の詳細な説明
MHCクラスI抗原との配列類似性を有するウイルスの糖タンパク質を使用して、LIR−P3G2と名付ける新しいポリペプチド及びLIRポリペプチドファミリーと命名する新しい細胞表面ポリペプチドファミリーを単離・同定した。このLIRポリペプチドファミリーメンバーは、免疫グロブリン様ドメインを有する細胞外領域を含むことで、免疫グロブリンスーパーファミリーの新しいサブファミリーメンバーとされる。LIRファミリーメンバーは、非常に類似した細胞外部分を有することで特徴づけられる一方で、その膜貫通領域及び細胞質領域で区別され得る3つのポリペプチド・グループを含む。LIRポリペプチドの1グループは正に荷電した残基及び短い細胞質テールを含む膜貫通領域を有し、第二のグループは非極性の膜貫通領域及び長い細胞質テールを有する。第三のグループは、膜貫通領域も細胞質テールも無い可溶性タンパク質として発現されるポリペプチドを含む。
【0014】
LIR−P3G2は様々な細胞によって発現され、HLA−B44分子、HLA−A2MHC分子及び実施例14に記載される対立形質(allele)を認識する。LIR−pbm8と命名される別のLIRファミリーメンバーも様々な細胞によって発現され、数多くのMHCクラスI分子を認識する。既知の分子から類推して、LIR−P3G2、LIR−pbm8及びLIRメンバーは、免疫認識及び/又は自己/非自己の区別においてある役割を演じている。
【0015】
以下の実施例1〜3は、P3G2(LIR−P3G2)及び18A3(LIR−18A3)と命名される実質的に同一のポリペプチドをコードするcDNAを単離することを記載する。簡潔に言えば、クラスIMHC様分子であるUL18をまず発現させ、UL18を用いてP3G2及び18A3を単離・同定することによって、LIR−P3G2ファミリーメンバーを単離した。単離されたP3G2のcDNA及び18A3のcDNAのヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:3と表示される。SEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:3と表されるcDNAによってコードされるアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:2及びSEQ ID NO:4と表示される。P3G2のアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)は、16個のアミノ酸(アミノ酸1〜16)のシグナルペプチドを含む458個のアミノ酸(1〜458)の予測される細胞外ドメイン、25個のアミノ酸(アミノ酸459〜483)からなる膜貫通ドメイン及び167個のアミノ酸(アミノ酸484〜650)からなる細胞質ドメインを有する。細胞外ドメインは4つの免疫グロブリン様ドメインを含む。Ig様ドメインIはアミノ酸17〜118付近を含み、Ig様ドメインIIはアミノ酸119〜220付近を含み、Ig様ドメインIIIはアミノ酸221〜318付近を含み、Ig様ドメインIVはアミノ酸319〜419付近を含む。重要なことに、このポリペプチドの細胞質ドメインは4つのITIMモチーフを含み、それぞれがYxxL/Vのコンセンサス配列を有する。第一のITIMモチーフ対がアミノ酸533−536及び562−565に見出され、第二の対はアミノ酸614−617及び644−647に見出される。この特徴は、KIRにはITIMモチーフが1対しかないことを除けば、KIRに見出されるITIMモチーフと同一である。
【0016】
18A3アミノ酸配列は、16個のアミノ酸(アミノ酸1〜16)のシグナルペプチドを含む459個のアミノ酸(1〜459)からなる予測される細胞外ドメイン、25個のアミノ酸(アミノ酸460〜484)からなる膜貫通ドメイン及び168個のアミノ酸(アミノ酸485〜652)からなる細胞質ドメインを有する。18A3のアミノ酸配列(SEQ ID NO:4)は、P3G2のアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)と実質的に同一であるが、ただし、18A3はさらに2つのアミノ酸(アミノ酸438及び552)を有し、アミノ酸142位がP3G2ではスレオニン残基であるのに対し、18A3ではイソロイシン残基になっている点が異なる。さらに、18A3は155位のアミノ酸にセリン残基を有するが、P3G2は155位にイソロイシン残基を有する。最後に、18A3ポリペプチドはアミノ酸627位にグルタミン酸を有するが、P3G2は、18A3ポリペプチドの627残基に相当する625位にリジンを有する。18A3細胞質ドメインのITIMモチーフは、アミノ酸534−537と564−567位及び616−619と646−649位である。グリコシレーション部位はアミノ酸の3つ組、Asn−X−Yに存在し、ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸であり、YはSer又はThrである。従って、LIR−P3G2の潜在的なグリコシレーション部位は、アミノ酸140−142、281−283、302−304及び341−343に存在し、LIR−18A3上のグリコシレーション部位は、281−283、302−304及び341−343に存在する。これらのコードされるポリペプチドの特徴は、I型膜貫通糖タンパク質に一致している。
【0017】
実施例8〜10は、LIR−P3G2の細胞外領域をコードするDNAから得られたプローブにハイブリダイズするプラスミドでcDNAライブラリーをプローブすることによって、8つの追加的なLIRポリペプチドファミリーメンバーを単離同定することを記載する。単離されたLIRファミリーメンバーのヌクレオチド配列(cDNA)は、SEQ ID NO:7(pbm25と命名)、SEQ ID NO:9(pbm8と命名)、SEQ ID NO:11(pbm36−2と命名)、SEQ ID NO:13(pbm36−4と命名)、SEQ ID NO:15(pbmhhと命名)、SEQ ID NO:17(pbm2と命名)、SEQ ID NO:19(pbm17と命名)及びSEQ ID NO:21(pbmnewと命名)と表される。それらによってコードされるアミノ酸配列は、SEQ ID NO:8(pbm25と命名)、SEQ ID NO:10(pbm8と命名)、SEQ ID NO:12(pbm36−2と命名)、SEQ ID NO:14(pbm36−4と命名)、SEQ ID NO:16(pbmhhと命名)、SEQ ID NO:18(pbm2と命名)、SEQ ID NO:20(pbm17と命名)及びSEQ ID NO:22(pbmnewと命名)とそれぞれ表される。
【0018】
SEQ ID NO:10、12、14、16、18、20及び22のLIRファミリーメンバーに対して同定された細胞外、膜貫通及び細胞質領域を以下に示す。SEQ ID NO:8に表されるポリペプチドは、膜貫通及び細胞質領域の無い可溶性タンパク質である。当業者に理解されるように、上記のP3G2及び18A3の膜貫通領域及び下記に示すLIRポリペプチドファミリーメンバーのそれは、そのような領域に関連した疎水性ドメインを同定するための従来からの判断基準に準じて同定される。従って、任意に選択される膜貫通領域の正確な境界部分は、上記のものとは異なる可能性がある。典型的には、ドメインの両端で、膜貫通領域は5アミノ酸以上ずれない。当技術分野で知られていて、タンパク質のそのような疎水性領域を同定するために有用なコンピュータ・プログラムが入手可能である。
【0019】
SEQ ID NO:8(LIR−pbm25)に示されるポリペプチドは、アミノ酸1−439及びシグナルペプチドのアミノ酸1−16からなる全アミノ酸配列を含む細胞外ドメインを有する。SEQ ID NO:10(LIR−pbm8)に示されるアミノ酸配列は、16個のアミノ酸シグナルペプチド(アミノ酸1−16)を含む、458アミノ酸の予測される細胞外領域(1−458)、アミノ酸459−483を含む膜貫通ドメイン、及びアミノ酸484−598を含む細胞質ドメインを有する。細胞外ドメインは4つの免疫グロブリン様ドメインを含み、細胞質ドメインはアミノ酸533−536及び562−565にITIMモチーフを含む。
【0020】
SEQ ID NO:12(LIR−pbm36−2)に示されるアミノ酸配列は、アミノ酸1−16由来の16個のアミノ酸シグナルペプチドを含む、予測される細胞外ドメイン、アミノ酸262−280を含む膜貫通ドメイン、及びアミノ酸281−289からなる細胞質ドメインを有する。膜貫通ドメインは264位に荷電したアルギニン残基を含み、細胞質ドメインは短く、9アミノ酸だけの長さでしかない。
【0021】
SEQ ID NO:14(LIR−pbm36−4)に示されるアミノ酸配列は、アミノ酸1−16由来のシグナルペプチドを含むアミノ酸1−461の予測される細胞外ドメイン、アミノ酸462−480を含み、アミノ酸464位に荷電したアルギニン残基を有する膜貫通ドメイン、及びアミノ酸481−489を含む細胞質ドメインを有する。SEQ ID NO:14の細胞外領域は、SEQ ID NO:12のそれとほとんど同一であるが、SEQ ID NO:12の細胞外領域には2つの免疫グロブリン様ドメインがあるのに対し、それは4つの免疫グロブリンドメインを有する。SEQ ID NO:12及びSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列は、同一の遺伝子から選択的にスプライスされる転写産物によってコードされるタンパク質である可能性がある。
【0022】
SEQ ID NO:16(LIR−pbmhh)に示されるアミノ酸配列は、アミノ酸1−449及びアミノ酸1−16由来のシグナルペプチドを含む予測される細胞外ドメイン、荷電したアルギニン残基をアミノ酸452位に有するアミノ酸450−468を含む膜貫通ドメイン、及びアミノ酸469−483を含む細胞質ドメインを有する。細胞質ドメインは短くて、15アミノ酸の長さである。細胞外ドメインは4つの免疫グロブリン様ドメインを含む。
【0023】
SEQ ID NO:18(LIR−pbm2)に示されるアミノ酸配列は、アミノ酸1−259及びアミノ酸1−16のシグナルペプチドを含む予測される細胞外領域、アミノ酸260−280を含む膜貫通ドメイン、及びアミノ酸281−448を含む細胞質ドメインを有する。このLIRファミリーメンバーは、アミノ酸412−415及び442−445にITIMモチーフを含む細胞質ドメインを有する。細胞外ドメインは2つの免疫グロブリン様ドメインを含む。
【0024】
SEQ ID NO:20(LIR−pbm17)に示されるアミノ酸配列は、アミノ酸1−16のシグナルペプチドを含むアミノ酸1−443の予測される細胞外ドメイン、アミノ酸444−464を含む膜貫通ドメイン、及びアミノ酸465−631の細胞質ドメインを有する。細胞外ドメインは4つの免疫グロブリン様ドメインを含む。SEQ ID NO:20は、2対のITIM−YxxL/Vモチーフを細胞質ドメインに有する。第一の対はアミノ酸514−517及び543−546にあり、第二の対はアミノ酸595−598及び625−628にある。
【0025】
SEQ ID NO:22(LIR−pbmnew)に示されるアミノ酸配列は、アミノ酸1−16のシグナルペプチドを含むアミノ酸1−456の予測される細胞外ドメイン、アミノ酸457−579を含む膜貫通ドメイン、及びアミノ酸580−590の細胞質ドメインを有する。細胞外ドメインは、4つの免疫グロブリン様ドメインを含む。SEQ ID NO:22は、アミノ酸554−557及び584−587にITIMモチーフを有する。
【0026】
SEQ ID NO:2、4、8、10、12、14、16、18、20及び22に表される配列から、LIRファミリーが3つのグループのポリペプチドを含むことが示される。1つのグループは、膜貫通領域内の荷電アルギニン残基及びその短い細胞質領域によって区別されるSEQ ID NO:12、14及び16のポリペプチドを含む。第二のグループは、疎水性の細胞質ドメイン及び細胞質領域内におけるITIMモチーフの存在によって区別されるSEQ ID NO:2、4、10、18、20及び22を含む。第三のグループは、可溶性のポリペプチドとして発現され、膜貫通領域が無いSEQ ID NO:8のポリペプチドを含む。この可溶性ポリペプチドは、細胞表面のファミリーメンバーのその受容体との相互作用を妨げるように機能する可能性がある。また、この可溶性ポリペプチドは、その受容体と結合したときには、活性シグナルとして作用し得る。一般にLIRポリペプチドは、P3G2細胞外領域をコードするDNAにハイブリダイズするそのコードDNAの能力によって特徴づけられる。
【0027】
SEQ ID NO:2、4、8、10、12、14、16、18、20及び22に示されるLIRファミリーメンバーの細胞外領域は、59%〜84%に及ぶ高度の相同性を有する。SEQ ID NO:12とSEQ ID NO:14の細胞外領域は、これらポリペプチドが同一の遺伝子に由来するので、ほぼ100%の配列相同性を共有する。同様に、SEQ ID NO:2とSEQ ID NO:4は95%以上の配列相同性を共有するが、これらは同一遺伝子の対立遺伝子(アリル)であり得ると考えられる。他の免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーとの構造類似性を共有する一方で、LIRファミリーメンバーは免疫グロブリンスーパーファミリーのこれらメンバーに対して限られた相同性を有する。最も近い構造類似性を有する分子は、ヒトKIR及びマウスgp49である。しかしながら、LIR細胞外領域は、NKAT3及びp58CL−39の細胞外領域とそれぞれ38−42%の同一性しか共有しない。LIRファミリーメンバーの細胞外領域は、マウスgp49と35〜47%しか相同でない。対照的に、KIRは、全般に、81%相同であるNKAT3及びp58CL−39とは少なくとも80%のアミノ酸同一性を共有することが知られている。さらに、既知のKIR分子のなかには、ここで知られたLIRファミリーメンバーの2つを除くすべてに特徴的である4つの細胞外免疫グロブリンドメインを有するものはない。本明細書に開示されるLIR関連ポリペプチド間の高度の配列相同性及びKIRとの相対的に低い相同性に照らせば、このLIRポリペプチドは新規の免疫調節剤ファミリーメンバーなのである。
【0028】
LIRポリペプチドのアミノ酸配列の分析から、LIRポリペプチドのアミノ酸にある特定の広がり部分が高度に保存されていることが明らかにされる。この保存領域の1つはアミノ酸5−50の配列である。データベース検索から、LIRファミリーメンバーが、このLIR保存領域において、どんなに構造的に類似した先行ポリペプチドとも実質的に異なっていることが確かめられた。このデータベース検索及び構造分析は、データベースを検索し、アミノ酸配列を並置して、ある与えられた配列内の同一性及び変動性を決定するための局在配列検索ツールである、BLAST NBIを使用して実施された。BLAST NBIソフトウェアは、インターネットのhttp://www3.ncbl.nlm.nih.gov/entrez/blastでアクセス可能である。SEQ ID NO:2のアミノ酸5−50の配列との相同性を有する配列をBLAST NBIで検索したところ、最も構造的に類似したタンパク質であるFcγIIR、gp49B2型及びgp49B1型が、SEQ ID NO:2のアミノ酸5−50と、それぞれ63%、67%及び67%の同一性を有することが見出された。これは、SEQ ID NO:2のアミノ酸5−50に対するLIRファミリーの77%〜100%の同一性と対照的である。特に言うと、本発明のLIRファミリーメンバーは、SEQ ID NO:2のアミノ酸5−50と以下の同一性を有する:SEQ ID NO:8は96%の同一性、SEQ ID NO:10は90%の同一性、SEQ ID NO:12は96%の同一性、SEQ ID NO:14は91%の同一性、SEQ ID NO:16は97%の同一性、SEQ ID NO:18は77%の同一性、SEQ ID NO:20は80%の同一性、及びSEQ ID NO:22は80%の同一性を有する。
【0029】
本明細書に使用される配列同一性とは、同一である並置アミノ酸の数を比較される2つの配列のより短いアミノ酸の全数で割ったものである。配列を並置して配列の同一性及び変動性を決定するための多数のコンピュータ・プログラムが市販されている。これらのプログラムは、上記の同一性の定義に基づいた同一性の情報を提供する。1つの適切なコンピュータ・プログラムは、Devereux等によって記載され(Nucl.Acids Res.12:387,1984)、ウィスコンシン大学遺伝学コンピュータ・グループ(UWGCG)より供される、GAPプログラム、バージョン6.0である。GAPプログラムは、SmithとWaterman(Adv.Appl.Math 2:482,1981)によって修正された、NeedlemanとWunsch(J.Mol.Biol.48:443,1970)の並置法を利用している。GAPプログラムに対する好ましいデフォルト・パラメータは、(1)ヌクレオチド用の単一比較マトリックス(同一性に対する1の値及び非同一性に対する0の値を含む)及び、SchwartzとDayhoff編「タンパク質の配列及び構造アトラス」国立バイオメディカル研究財団、353〜358頁、1979に記載されるような、GribskovとBurgess、Nucl.Acids Res.14:6745,1986の加重比較マトリックス;(2)各ギャップに対する3.0のペナルティ及び各ギャップ内の各シンボルに対する追加的な0.10のペナルティ;及び(3)エンドギャップに対してはノーペナルティ、を含む。配列操作用GCGコンピュータ・パッケージの一部としてやはりウィスコンシン大学から供される他の類似プログラムに、BESTFITプログラムがある。
【0030】
もうひとつの態様では、本発明のポリペプチドは、アミノ酸配列(SEQ ID NO:28):
Leu Xaa Leu Ser Xaa Xaa Pro Arg Thr Xaa Xaa Gln Xaa Gly Xaa Xaa Pro Xaa Pro Thr Leu Trp Ala Glu Pro Xaa Ser Phe Ile Xaa Xaa70 Ser Asp Pro Lys Leu Xaa Leu Val Xaa Thr Gly
(ここで、XaaはGly又はArg;XaaはLeu又はVal;XaaはGly又はAsp;XaaはHis Arg又はCys;XaaはVal又はMet;XaaはAla又はThr;XaaはHis Pro又はThr;XaaはLeu Ile又はPhe;XaaはGly Asp又はAla;XaaはThr Ile Ser又はAla;XaaはGly又はVal;XaaはMet又はAla;Xaa70は70個のアミノ酸配列である)
を有するものとして独自に特徴付けられる保存配列を有する。
【0031】
上記のように、ある種のLIRファミリーメンバーは、細胞質ドメインにITIMモチーフ(YxxL/V25・26YxxL/V)を有する。KIR、CD22、FcγRIIblのような多くの免疫調節レセプターもその細胞質ドメインにITIMを有し、細胞機能をダウンレギュレート又は阻害する阻害性シグナルを送るように機能することが知られている。これら受容体は、ITIMモチーフへの結合を介してSHP‐1ホスファターゼと結合することが示されている。受容体によるSHP‐1ホスファターゼの補充は、この受容体の阻害性機能を調節する細胞内シグナル伝達経路のために必要とされるようである。実施例11に記載される実験は、LIR−P3G2及びLIR−pbm8がリン酸化とともにSHP‐1ホスファターゼと結合し、単球の活性化経路を介して阻害性シグナルを発生させることを実証している。KIR、CD22、FcγRIIblのような多くの免疫調節レセプターは、その細胞質ドメインにITIMを有し、細胞機能をダウンレギュレート又は阻害する阻害性シグナルを送るように機能することが知られている。従って、KIR、CD22、FcγRIIblとの類推によれば、ITIMモチーフを有するSEQ ID NO:2、4、10、18、20及び22に示されるLIRファミリーメンバーは、LIRが適切な受容体と共連結(coligate)されるとき、SHP‐1チロシンホスファターゼ又は他のチロシンホスファターゼとITIMとの相互作用を介して阻害性シグナルを伝達する。また、ITIMを有する免疫調節レセプターとの類推によれば、LIRファミリーメンバーは体液性、炎症性及びアレルギー性の応答に対して調節的な影響力を有する。
【0032】
SEQ ID NO:12、14及び16に示されるLIRファミリーメンバーは、比較的短い細胞質ドメインを有し、少なくとも1つの荷電残基を有する膜貫通領域を有し、ITIMモチーフを持たない。ITIMモチーフを欠き、荷電された膜貫通領域を有する膜タンパク質との類推によれば、これらのファミリーメンバーは細胞に対する刺激性又は活性シグナルを仲介する。例えば、膜貫通領域内に荷電残基を含む膜結合性のタンパク質は、イムノレセプターチロシンベース活性化モチーフ(ITAM)として知られるモチーフのある細胞質テールを有する他の膜結合性タンパク質と会合することが知られている。会合すると、ITAMはリン酸化され、活性化シグナルを伝達する。
【0033】
LIR−P3G2と命名されたLIRポリペプチドは、トランスフェクトされた細胞又は正常細胞の表面で発現される。このことは、フローサイトメトリー及び沈降法によって、LIR−P3G2が単球、NK細胞亜集団及びB細胞上に見出されることを示した、実施例3及び実施例5に記載された実験結果によって証明される。P3G2はT細胞の小サブセット(subset)上に検出された。P3G2は110〜120kDaの糖タンパク質として発現される。P3G2には4つの潜在的なグリコシレーション部位があるので、その分子量はグリコシレーションの度合いによって変化するだろう。グリコシレーション部位はアミノ酸の3つ組、Asn−X−Yに存在し、ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸であり、YはSer又はThrである。P3G2上の潜在的なグリコシレーション部位は、アミノ酸139−141、280−282、302−304及び340−342に存在する。
【0034】
実施例3に記載されるようにして単離されたP3G2−LIRの、UL18とは異なる細胞表面リガンドに結合する能力が試験された。実施例7に詳述される実験結果によって示されるように、P3G2はクラスIMHC抗原であるHLA−B44及びHLA−A2に結合する。同様に、実施例14に示すように、LIR−P3G2及びLIR−pbm8は様々なHLA−A、−B及び−Cの対立形質に結合し、広域スペクトルのMHCクラスI特性を認識する。クラスIMHC分子は、免疫監視、自己/非自己の区別、感染に対する免疫応答等において中心的な役割を担っているので、LIR−P3G2及びLIR−pbm8ポリペプチドも免疫応答の調節にある役割を演じている。腫瘍細胞及びウイルス被感染細胞を殺すNK細胞の溶解活性は、活性及び阻害性シグナルの微妙なモジュレーションによって調節されていることが知られている。LIR−P3G2及びLIR−pbm8が結合する同じHLAクラスI分子に特異的な受容体は、その引き金となるメカニズムにおいて、活性又は阻害性であり得る。類推すれば、MHCクラスI分子に結合するLIR−P3G2及びLIR−pbm8は、免疫系の細胞活性を均衡化する役割を担っていて、免疫系のバランスが崩れている病態の治療に有用である。
【0035】
本発明の範囲内には、本明細書に教示されるような中等度から高度のストリンジェント条件のもとでLIR−P3G2の細胞外DNAプローブにハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドがある。本発明のポリペプチドをコードするDNAにハイブリダイズするプローブは、SEQ ID NO:1のヌクレオチド310−1684又はそのフラグメントを包含するプローブを含む。ハイブリダイゼーション・プローブとして利用されるSEQ ID NO:1のフラグメントは、好ましくは17ヌクレオチド以上の長さであり、ヌクレオチド358−1684;ヌクレオチド322−459(LIR保存配列をコードする);又はSEQ ID NO:5、6、23、24、27及び1又はそれらのフラグメントに相補的であるDNA又はRNAを含み得る。SEQ ID NO:5、6、23、24及び27のフラグメントは制限部位のないこれらの配列を含む。ハイブリダイゼーション条件は、例えばSambrook等、「分子クローニング:研究室マニュアル」第2版、第1巻1.101〜104頁、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、1989に記載される中等度ストリンジェント条件であり得る。中等度ストリンジェント条件は、Sambrook等によって定義されるように、5xSSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)のプレ洗浄溶液、及び約55℃、5xSSC、一晩、というハイブリダイゼーション条件を含む。高度ストリンジェント条件は、より高い温度のハイブリダイゼーション及び洗浄を含む。当業者は、プローブの長さのような要因に応じて、必要ならば温度及び洗浄溶液の塩濃度が調整され得ることを認知されよう。好ましい実施形態は、少なくとも17のヌクレオチドを有するLIR−P3G2の細胞外領域のプローブにハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列を含む。好ましいハイブリダイズ条件は、デンハート液、0.05M TRIS(pH7.5)、0.9M NaCl、0.1%ピロリン酸ナトリウム、1%SDS及び200μg/mLのサケ精子DNAからなるハイブリダイゼーション溶液にて63℃の温度で16時間処理した後、63℃で1時間2xSSCで洗浄し、63℃で1時間1xSSCで洗浄することを含む。
【0036】
本発明は、SEQ ID NO:2、4、8、10、12、14、16、18、20及び22に示されるものと異なるが、高度に相同であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。この例は、限定しないが、他の哺乳類種由来の相同体、変異体(天然に存在する変異体及び組換えDNA技術によって産生される変異体)及び所望の生物学的活性を保持しているLIR P3G2及びLIRファミリーメンバーのフラグメントを含む。好ましくは、そのようなポリペプチドは、SEQ ID NO:2、4、8、10、12、14、16、18、20及び22に記載されるLIRポリペプチドに関連した生物学的活性を示し、SEQ ID NO:2、4、8、10、12、14、16、18、20及び22に示されるポリペプチドのシグナルペプチド及び細胞外ドメインの任意のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、そのようなポリペプチドは、SEQ ID NO:2、4、8、10、12、14、16、18、20及び22に示されるポリペプチドのシグナルペプチド及び細胞外ドメインの任意のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一である。ポリペプチド間の同一性の程度を決定することは、タンパク質の配列を分析するために設計された任意のアルゴリズム又はコンピュータ・プログラムを使用して達成され得る。以下に記載される市販のGAPプログラムは1つのそのようなプログラムである。他のプログラムは、やはり市販されているBESTFIT及びGCGプログラムを含む。
【0037】
本発明の範囲内には、MHCクラスI又は他のリガンドとの結合といった、LIRポリペプチドファミリーメンバーに所望される生物学的性質を保持しているLIRポリペプチドフラグメントがある。1つのそのような実施形態では、LIRポリペプチドフラグメントは、細胞外ドメインのすべて又は部分を含むが、ポリペプチドの細胞膜上での保持を引き起こし得る膜貫通領域を欠く、可溶性のLIRポリペプチドである。可溶性のLIRポリペプチドは、それが発現される細胞から分泌され得る。有利には、この可溶性LIRが発現と同時に分泌されるように、異種のシグナルペプチドがN末端に融合する。可溶性のLIRポリペプチドは、このシグナルペプチドをとりこんだ細胞外ドメイン及びシグナルペプチドが開裂されている細胞外ドメインを含む。
【0038】
可溶型LIRファミリーメンバーの使用は、ある応用にとって有利である。そのような1つの利点は、組換え宿主細胞から可溶型を精製することの容易さである。可溶性タンパク質は細胞から分泌されるので、回収プロセスの間に細胞からタンパク質を抽出する必要がない。さらに、一般に可溶性タンパク質は静脈内投与により適していて、所望の免疫機能を仲介するために、細胞表面のLIRファミリーメンバーとそのリガンドとの相互作用を阻止することに使用され得る。
【0039】
可溶性LIRポリペプチドは、シグナルペプチドを排除した細胞外ドメインを含む、細胞外ドメイン全体又はその任意の所望されるフラグメントを含む。従って、例えば可溶性LIRポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸x−458(xはアミノ酸1又は17である)、SEQ ID NO:4のアミノ酸x−459(xはアミノ酸1又は17である)、SEQ ID NO:8のアミノ酸x−439(xはアミノ酸1又は17である)、SEQ ID NO:10のアミノ酸x−458(xはアミノ酸1又は17である)、SEQ ID NO:12のアミノ酸x−241(アミノ酸xはアミノ酸1又は17である)、SEQ ID NO:14のアミノ酸x−461(xはアミノ酸1又は17である)、SEQ ID NO:16のアミノ酸x−449(xはアミノ酸1又は17である)、SEQ ID NO:18のアミノ酸x−259(xはアミノ酸1又は17である)、SEQ ID NO:20のアミノ酸x−443(xはアミノ酸1又は17である)、SEQ ID NO:22のアミノ酸x10−456(x10はアミノ酸1又は17である)、を含む。上記に同定された可溶性LIRポリペプチドは、シグナルペプチドを含む及び除外するLIR細胞外領域を含む。更なる可溶性LIRポリペプチドは、MHCクラスI分子を含むリガンドとの結合のような、所望される生物学的活性を保持しているファミリーメンバーの細胞外ドメイン・フラグメントを含む。
【0040】
可溶性ポリペプチドを含めて、LIRファミリーメンバーフラグメントは、数多くの従来技術の任意の技術によって製造され得る。フラグメントをコードする所望されるLIRポリペプチドをコードするDNA配列は、LIRポリペプチドフラグメント産生用の発現ベクターの中へサブクローン化され得る。選択されたコードDNA配列は、有利にも、適切なリーダー又はシグナルペプチドをコードする配列に融合される。DNAフラグメントをコードする所望のLIRメンバーは、既知のDNA合成技術を用いて化学的に合成され得る。DNAフラグメントはまた、完全な長さのクローン化DNA配列を制限エンドヌクレアーゼで消化することによって産生され、適切なゲルに電気泳動することによって単離され得る。必要ならば、5’又は3’末端を所望される部位へ再構築するオリゴヌクレオチドを、制限酵素の消化によって産生されるDNAフラグメントへ結合してもよい。そのようなオリゴヌクレオチドは、所望されるコード配列の上流に制限エンドヌクレアーゼ開裂部位を含み、開始コドン(ATG)をコード配列のN末端に配置する可能性がある。
【0041】
所望されるタンパク質フラグメントをコードするDNA配列を入手するのに有用なもうひとつの技術は、有名なポリメラーゼ鎖反応(PCR)法である。所望されるDNAの末端を規定するオリゴヌクレオチドが、所望のDNAテンプレートから追加のDNAを合成するためのプローブとして使用される。オリゴヌクレオチドはまた制限エンドヌクレアーゼのための認識部位を含み、増幅されたDNAフラグメントを発現ベクターへ挿入することを促進し得る。PCR技術は、Saiki等、Science 239:487(1988);「組換えDNAの方法論」Wu等、編、アカデミックプレス社、サンディエゴ(1989)189〜196頁;及び「PCRプロトコール:方法と応用のガイド」Innis等、編、アカデミックプレス社(1990)に記載されている。
【0042】
本発明のLIRファミリーメンバーのDNAは、cDNA、化学合成されたDNA、PCRによって単離されたDNA、ゲノムDNA及びそれらの組み合わせを含む。ゲノムLIRファミリーDNAは、本明細書に開示されるLIRファミリーcDNAとのハイブリダイゼーションによって、標準的な技術を使用して単離され得る。LIRファミリーDNAから転写されるRNAも本発明に包含される。
【0043】
本発明の範囲内には、LIRポリペプチドコード領域のようなDNAフラグメント及び可溶性ポリペプチドをコードするDNAフラグメントがある。可溶性ポリペプチドをコードするDNAフラグメントの例は、LIRファミリーメンバーの全細胞外領域をコードするDNA及びシグナルペプチドを欠く領域のような細胞外領域フラグメントをコードするDNAを含む。より具体的には、本発明は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド310−2262(P3G2コード領域);SEQ ID NO:1のヌクレオチドx−1683(ここでxは310又は358であり、P3G2細胞外ドメインをコードする);SEQ ID NO:3のヌクレオチド168−2126(18A3のコード領域)及びSEQ ID NO:3のヌクレオチドx−1544(ここでxは168又は216であり、18A3の細胞外ドメインコード領域である);SEQ ID NO:7のヌクレオチドx−1412(ここでxは93又は141であり、pbm25のコード領域及び細胞外領域である);SEQ ID NO:9のヌクレオチド184−1980(pbm8のコード領域)及びSEQ ID NO:9のヌクレオチドx−1557(ここでxは184又は232であり、pbm8の細胞外ドメインコード領域である);SEQ ID NO:11のヌクレオチド171−1040(pbm36−2のコード領域)及びSEQ ID NO:11のヌクレオチドx−878(ここでxは171又は219であり、pbm36−2の細胞外ドメインをコードする);SEQ ID NO:13のヌクレオチド183−1652(pbm36−4のコード領域)及びSEQ ID NO:13のヌクレオチドx−1565(ここでxは183又は231であり、pbm36−4の細胞外ドメインをコードする);SEQ ID NO:15のヌクレオチド40−1491(pbmhhのコード領域)及びSEQ ID NO:15のヌクレオチドx−1386(ここでxは40又は88であり、pbmhhの細胞外ドメインをコードする);SEQ ID NO:17のヌクレオチド30−1376(pbm2のコード領域)及びSEQ ID NO:17のヌクレオチドx−806(ここでxは30又は78であり、pbm2の細胞外領域をコードする);SEQ ID NO:19のヌクレオチド66−1961(pbm17のコード領域)及びSEQ ID NO:19のヌクレオチドx−1394(ここでxは66又は114であり、pbm17の細胞外ドメインをコードする);SEQ ID NO:21のヌクレオチド67−1839(pbmnewのコード領域)及びSEQ ID NO:21のヌクレオチドx10−1434(ここでx10は67又は115であり、pbmnewの細胞外ドメインをコードする)を含む。
【0044】
本発明に含まれるのはSEQ ID NO:2、4、8、10、12、14、16、18、20及び22に表されるLIRファミリーメンバーの生物学的に活性なフラグメントをコードするDNAである。
【0045】
本発明は、上記の核酸配列によってコードされるポリペプチドと実質的に同一である又は実質的に類似しているポリペプチドを、遺伝暗号の縮重性によりコードするヌクレオチド配列、及びそれらに相補的な配列を包含する。従って、本発明には、天然の(native)ヒトLIRファミリーメンバーcDNAのコード領域を含む、生物学的に活性なLIRファミリーメンバーをコードするDNA又はそのフラグメント、及び、天然のLIRポリペプチドDNA配列又は本明細書に記載された天然のLIRファミリーメンバーのDNAに遺伝暗号の結果として縮重しているDNAがある。
【0046】
もうひとつの態様では、本発明は、組換え体であれ非組換え体であれ、所望の生物学的活性を保持している、LIRの変異体及び誘導体、さらにLIRファミリーポリペプチドの変異体及び誘導体を含む。本明細書に言及されるLIR変異体とは、本明細書に記載されるような天然のLIRポリペプチドと実質的に相同なポリペプチドであるが、変異体のアミノ酸配列は、1つ又はそれ以上の欠失、挿入又は置換のために天然のポリペプチド配列とは異なる。
【0047】
LIRファミリーの変異体は、天然のLIRヌクレオチド配列の突然変異から入手され得る。本発明には、LIRファミリーメンバーの天然のDNAに比較して1つ又はそれ以上のヌクレオチド追加、ヌクレオチド欠失又はヌクレオチド置換があるヌクレオチド配列を含み、所望の生物学的活性を有する変異体のLIRポリペプチド又は変異体のLIRファミリーメンバーをコードする、そのようなDNAの突然変異体又は変異体がある。 好ましくは、この生物学的活性は、天然のLIRポリペプチドのそれと実質的に同一である。
【0048】
本発明の変異体のアミノ酸配列及び変異体のヌクレオチド配列は、好ましくは天然のLIRファミリーメンバーの配列に対して少なくとも80%同一である。天然のアミノ酸又はヌクレオチド配列と変異体のアミノ酸又はヌクレオチド配列との相同性又は同一性を決定するための1つの方法は、そのような目的のために供されるコンピュータ・プログラムを使用して配列を比較することである。1つの好適なコンピュータ・プログラムは、Devereux等によって記載され(Nucl.Acids Res.12:387,1984)、ウィスコンシン大学遺伝学コンピュータ・グループ(UWGCG)より供される、GAPプログラム、バージョン6.0である。GAPプログラムは、SmithとWaterman(Adv.Appl.Math 2:482,1981)によって修正された、NeedlemanとWunsch(J.Mol.Biol.48:443,1970)の並置法を利用している。簡潔に言うと、GAPプログラムは、同一である並置されたシンボル(即ち、ヌクレオチド又はアミノ酸)の数を、比較される2つの配列のより短い方のシンボルの全数で割った数として同一性を定義する。GAPプログラムに対する好ましいデフォルト・パラメータは、(1)ヌクレオチド用の単一比較マトリックス(同一性に対する1の値及び非同一性に対する0の値を含む)及び、SchwartzとDayhoff編「タンパク質の配列及び構造アトラス」国立バイオメディカル研究財団、353〜358頁、1979に記載の、GribskovとBurgess、Nucl.Acids Res.14:6745,1986の加重比較マトリックス;(2)各ギャップに対する3.0のペナルティ及び各ギャップ内の各シンボルに対する追加的な0.10のペナルティ;及び(3)エンドギャップに対してはノーペナルティ、を含む。
【0049】
天然のLIRアミノ酸配列の変更は、数多くの既知技術から任意の技術を用いて提供され得る。上記のように、天然の配列フラグメントとの連結を可能にする制限部位が隣接した、突然変異体のコード配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することによって、選択される配列部位に突然変異を導入し得る。合成されたオリゴヌクレオチドを天然の配列フラグメントと連結した後では、得られる再構成されたヌクレオチド配列は、所望のアミノ酸挿入、置換又は欠失を有する類似体又は変異体ポリペプチドをコードするだろう。変異体ポリペプチドを製造するのに適したもうひとつの方法は、所望される置換、欠失又は挿入に準拠して変更された特定のコドンを有する遺伝子を提供する、オリゴヌクレオチド指向性部位特異的突然変異誘発法である。このような変更をするための技術は、以下の参考文献に開示されるものを含む:Walder等、Gene,42:133,1986;Bauer等、Gene,37:73,1985;Craik、Biotechniques,12−19,1985年1月;Smith等、「遺伝子工学:原理と方法」、プレナムプレス、1981;及び米国特許第4,518,584号及び4,737,462号。これらはすべて参考文献として本明細書に援用する。
【0050】
本発明の変異体ポリペプチドは、保存的に置換されている(つまり、天然のLIRポリペプチドファミリーメンバーの1つ又はそれ以上のアミノ酸残基が別の残基で置換されているが、変異体ポリペプチドは天然のLIRファミリーメンバーのそれと本質的に同等である所望の生物学的活性を保持しているということ)アミノ酸配列を含み得る。一般に、保存的な置換への数多くのアプローチが当技術分野でよく知られていて、本発明の変異体の製造に応用され得る。例えば、天然のポリペプチド配列のアミノ酸は、LIRポリペプチドの二次及び/又は三次構造を変化させないアミノ酸に置換され得る。他の適切な置換は、所期のリガンド結合ドメインの外側のアミノ酸に関する置換を含む。保存的なアミノ酸置換に対する1つのアプローチは、1つ又はそれ以上のアミノ酸を類似の物理化学的特性を有するアミノ酸で置換することを含む。例えば、1つの脂肪族残基をIle,Val,Leu又はAlaのような別の脂肪族残基に置換すること、1つの極性残基を別のもので置換すること(例えば、LysとArg;GluとAsp;又はGlnとAsn)又は、全領域を類似の疎水性又は親水性を有するものに置換する、といったことである。
【0051】
LIRポリペプチド変異体は、実施例5及び6に記載されるようにして細胞への結合性を試験され得るし、生物学的活性を確かめるために、実施例11に記載されるようにしてホスファターゼ結合活性を試験され得る。本発明の他のLIR変異体は、選択されたポリペプチドのCys残基が欠失又は1つ又はそれ以上の代替的なアミノ酸で置換されるような、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の変化によって変更されるポリペプチドを含む。これらのLIR変異体は、再生時に分子内ジスルフィド架橋を形成しない。Cys残基の欠失又は変化によって変更するために選択された天然に存在するLIRポリペプチドは、好ましくはCys残基によって形成されるジスルフィド架橋に依存する生物学的活性を有さない。他の可能な変異体は、隣接する二塩基性アミノ酸残基を修飾して、KEX2プロテアーゼ活性が存在する酵母系での発現を増強させる技術によって製造される。EP212,914は、タンパク質のKEX2プロテアーゼプロセシング部位を不活性化するための部位特異的突然変異誘発の技術を開示している。KEX2プロテアーゼプロセシング部位は、Arg−Arg、Arg−Lys及びLys−Arg対を変化させるために残基を欠失、追加または置換して、これらの隣接塩基性残基の出現をなくすことによって不活性化される。Lys−Lys及び対合は、KEX開裂に対する感受性がずっと弱いので、Arg−Lys又はLys−ArgをLys−Lysへ変換することは、KEX2部位を不活性化する、保存的で好ましいアプローチとなる。
【0052】
天然に存在するLIR変異体も本発明に包含される。このような変異体の例は、選択的mRNAスプライシング又はLIRポリペプチドのタンパク分解的な開裂から生じるタンパク質である。mRNAの選択的スプライシングは、天然に存在するこのタンパク質の可溶型のような、切断されているが(truncated)生物学的には活性なLIRポリペプチドを生じ得る。タンパク分解に帰せられる変異は、LIRポリペプチドから1つ又はそれ以上の末端アミノ酸がタンパク分解的に除去されることによって、N又はC末端が種々のタイプの宿主細胞で発現時に異なることを含む。さらに、タンパク分解的な開裂は、膜結合型のポリペプチドからLIRの可溶型を遊離し得る。他の天然に存在するLIR変異には、アミノ酸配列SEQ ID NO:2、4、8、10、12、14、16、18、20及び22の相違が遺伝的多型性、つまり個体間の対立遺伝子変異によるものがある。
【0053】
本発明の範囲内には、選択される化学的成分と結合体(conjugate)を形成するように修飾された天然の又は変異体のLIRポリペプチドを含む、LIRファミリーポリペプチドの誘導体がある。結合体は、天然の又は変異体のLIRにもうひとつの成分を共有結合することによって、又は天然の又は変異体のLIRにもうひとつの成分を非共有結合することによって、形成され得る。適切な化学的成分は、限定しないが、グリコシル基、脂質、リン酸、アセチル基、及び他のタンパク質又はそのフラグメントを含む。化学的成分をタンパク質に共有結合するための技術は当技術分野でよく知られていて、誘導的なLIRポリペプチドを製造するために概ね適している。例えば、アミノ酸側鎖上の活性な又は活性化された官能基が、化学的成分をLIRポリペプチドに共有結合させるための反応部位として使用され得る。同様に、N末端又はC末端は、化学的成分のために反応部位を提供し得る。他のタンパク質又はタンパク質フラグメントと結合したLIRポリペプチド又はフラグメントは、組換え培地において、N末端又はC末端融合生成物として製造され得る。例えば、結合又は融合部分は、N末端でLIR分子に結合したシグナル又はリーダー配列を含み得る。シグナル又はリーダーペプチドは、翻訳と同時に又は翻訳後に、結合体をその合成部位から細胞膜の内側又は外側へ移動させることを指令する。
【0054】
1つの有用なLIRポリペプチド結合体は、ポリ−His又は、米国特許第5,011,912号及びHopp等、Bio/Technology 6:1124,1988に記載された抗原同定ペプチドを取り込んでいるものである。例えば、FLAG(登録商標)ペプチド、Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(SEQ ID NO:29)は抗原性が強く、特定のモノクローナル抗体に可逆的に結合するエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイ及び容易な精製がそれによって可能になる。この配列は、ウシ粘膜エンテロキナーゼによって、Asp−Lys対合の直後の残基で特異的に開裂される。このペプチドでキャップされた融合タンパク質は、大腸菌内の細胞内分解に抵抗し得る。4E11と命名されたマウスのハイブリドーマは、ある2価金属カチオンの存在下でSEQ ID NO:29のペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生し、登録番号HB9259としてアメリカンタイプカルチャーコレクションに保管された。FLAG(登録商標)ペプチドと融合した組換えタンパク質を産生するのに有用な発現系、及びこのペプチドに結合し組換えタンパク質を精製するのに有用であるモノクローナル抗体は、イーストマンコダック社、サイエンティフィックイメージングシステム、ニューへーヴン、コネティカットから入手可能である。
【0055】
特に適したLIR融合タンパク質は、LIRポリペプチドがオリゴマーの形態であるものである。オリゴマーは、1つ上のLIRポリペプチドのシステイン残基間のジスルフィド結合によって、又はLIRポリペプチド鎖間の非共有結合的な相互作用によって、形成され得る。もうひとつのアプローチでは、LIRオリゴマーは、LIRポリペプチドに融合したペプチド成分間の共有結合的又は非共有結合的相互作用を介した、LIRポリペプチド又はそのフラグメントの結合によって形成され得る。好適なペプチド成分は、ペプチドリンカー又はスペーサー、又はオリゴマー化を促進する性質を有するペプチドを含む。抗体由来のロイシンジッパー及びある種のポリペプチドは、それのついたLIRポリペプチドのオリゴマー化を促進し得るペプチドである。
【0056】
オリゴマー形成を促進する他のLIR融合タンパク質は、抗体由来のポリペプチド(Fcドメインを含む)の様々な部分に融合した異種ポリペプチドを有する融合タンパク質である。そのような融合タンパク質の製造法は、Ashkenazi等、PNAS USA 88:10535,1991;Byrne等、Nature 344:667,1990及びHollenbaughとAruffo、「免疫学の最新プロトコール」補巻4,10.19.1〜10.19.11,1992に記載されているが、これらはすべて参考文献として本明細書に援用する。以下の実施例1及び5は、抗体由来のFc領域ポリペプチドへUL18及びP3G2を融合することによって、それぞれUL18:Fc及びP3G2:Fc融合タンパク質を製造する方法を記載する。このことは、P3G2:Fc融合タンパク質をコードしてP3G2:Fc融合タンパク質を発現する遺伝子融合物を、発現ベクターへ挿入することによって達成される。融合タンパク質は、Fcポリペプチド間に鎖間ジスルフィド結合が形成される抗体分子と同じようにアセンブルされ、2価のP3G2ポリペプチドを産生する。同様のアプローチでは、P3G2又は任意のLIRポリペプチドは、抗体の重鎖又は軽鎖の可変部で置換され得る。抗体の重鎖及び軽鎖のついた融合タンパク質が作られるならば、4つものLIR領域を有するLIRオリゴマーを形成することは可能である。
【0057】
本明細書に用いられているように、Fcポリペプチドは天然の及びムテインの形態、さらに、ダイマー化を促進するヒンジ領域を含む切断されたFcポリペプチドを含む。1つの好適なFcポリペプチドは、ヒトIgG1由来の天然のFc領域ポリペプチドであり、これはPCT出願WO93/10151に記載されていて、参考文献として本明細書に援用する。他の有用なFcポリペプチドは、米国特許第5,457,035号に記載されているFcムテインである。このムテインのアミノ酸配列は、アミノ酸19がLeuからAlaへ変化し、アミノ酸20がLeuからGluへ変化し、アミノ酸22がGlyからAlaへ変化していることを除けば、WO93/10151に示されている天然のFc配列のそれと同一である。このムテインFcは、免疫グロブリン受容体に対して減少した親和性を示す。
【0058】
あるいは、オリゴマーのLIRポリペプチド変異体は、ペプチドリンカーを介して結合した2つ又はそれ以上のLIRペプチドを含み得る。この例は、米国特許第5,073,627号(参考文献として援用する)に記載されたペプチドリンカーを含む。ペプチドリンカーによって離されたいくつかのLIRポリペプチドを含む融合タンパク質は、従来の組換えDNA技術によって産生され得る。
【0059】
オリゴマーのLIRポリペプチド変異体を製造するもうひとつ方法は、ロイシンジッパーの使用を含む。ロイシンジッパードメインとは、それが見出されるタンパク質のオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは最初いくつかのDNA結合タンパク質において同定された(Landschulz等、Science 240:1759,1988)。既知のロイシンジッパーのなかには、天然に存在するペプチド及び二量体化又は三量体化するペプチド誘導体がある。可溶性のオリゴマーLIRポリペプチド又はLIRファミリーのオリゴマーポリペプチドを産生するのに適したロイシンジッパードメインの例は、PCT出願WO94/10308(本明細書に参考文献として援用する)に記載されたものである。溶液内で二量体化又は三量体化するペプチドと融合した可溶性LIRポリペプチドを有する組換え融合タンパク質は、適切な宿主細胞で発現され、得られた可溶性オリゴマーポリペプチドは、培養上澄液から回収される。
【0060】
タンパク質分子同士を架橋結合するのに有用な多くの試薬が知られている。例えば、この目的のために、ヘテロ二価性及びホモ二価性リンカーがピアスケミカルカンパニー、ロックフォード、イリノイから入手できる。このようなリンカーは、アミノ酸側鎖のある官能基と反応してポリペプチド同士をつなぐ、2つの官能基(例、エステル及び/又はマレイミド)を含む。
【0061】
本発明に利用され得る1つのタイプのペプチドリンカーは、所望の生物学的活性に必要な二次及び三次構造に各ドメインが正しく畳み込めることを確保するに十分な距離だけポリペプチドドメインを分離させる。リンカーはまた、リガンド結合部位を形成するために細胞外部分が適切な空間配向性をとることを可能にするべきである。
【0062】
適切なペプチドリンカーが当技術分野で知られていて、従来の技術によって利用され得る。適切なペプチドリンカーのなかには、米国特許第4,751,180号及び4,935,233号(いずれも参考文献として本明細書に援用する)に記載されたものがある。ペプチドリンカーは、ポリペプチド同士をつけるために使用される任意の従来法によって、LIRポリペプチドに結合され得る。上記のようなピアスケミカルカンパニーより入手できる架橋結合試薬は、利用され得るもののひとつである。このような試薬と反応する側鎖を有するアミノ酸は、例えばその末端で、ペプチドリンカーのなかに含まれ得る。好ましくは、ペプチドリンカーを介して形成される融合タンパク質は組換えDNA技術によって製造される。
【0063】
本発明の融合タンパク質は、あるタンパク質のC末端が別のタンパク質のN末端部分に融合しているリンカーと融合している構築体を含む。このように結合しているペプチドは、所望の生物学的活性を保持している単一のタンパク質を産生する。融合タンパク質の構成部分はその出現順に記載される(例えば、N末端ポリペプチドが最初に記載され、次いでリンカー、さらにC末端ポリペプチドが続く)。
【0064】
融合タンパク質をコードするDNA配列は、所望のタンパク質をコードする別々のDNAフラグメントを適切な発現ベクターに挿入する組換えDNA技術を用いて構築される。1つのタンパク質をコードするDNAフラグメントの3’末端は、配列の読み取りフレームがmRNAの翻訳から生物学的に活性な単一の融合タンパク質が生成される正しい位相になるようにして、(リンカーを介して)別のタンパク質をコードするDNAフラグメントの5’末端に連結される。N末端のシグナル配列をコードするDNA配列は、N末端ポリペプチドをコードするDNA配列上に保持され得るが、第二の(C末端)DNA配列への読み通しを妨げ得る終止コドンは除去される。逆に、翻訳停止に必要な終止コドンは第二のDNA配列上に保持される。シグナル配列をコードするDNAは、好ましくはC末端ポリペプチドをコードするDNA配列から除去される。
【0065】
望ましいポリペプチドリンカーをコードするDNA配列は、任意の適切な慣用技術を用い、2つのタンパク質をコードするDNA配列の間に、そして同じ読み枠で、挿入されてもよい。例えば、リンカーをコードし、そして適切な制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含む、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドを、FcおよびP3G2ポリペプチドをコードする配列の間に連結してもよい。
【0066】
本発明の範囲内に、LIRファミリーのポリペプチドを発現するための組換え発現ベクター、および発現ベクターで形質転換された宿主細胞がある。本発明の発現ベクターには、哺乳動物、微生物、ウイルスまたは昆虫遺伝子由来のものなど、適切な転写または翻訳制御ヌクレオチド配列に、機能可能であるように連結された、LIRファミリーメンバーをコードするDNAが含まれる。制御配列の例には、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、および転写および翻訳開始および終結を調節する適切な配列が含まれる。ヌクレオチド配列は、制御配列がLIR DNA配列と機能上、関連するとき、機能可能であるように連結されている。したがって、プロモーターヌクレオチド配列がLIR DNA配列の転写を調節するならば、プロモーターヌクレオチド配列は、LIR DNA配列に機能可能であるように連結されている。望ましい宿主細胞における複製能を与える複製起点、およびそれにより形質転換体が同定される選択遺伝子は、一般的に発現ベクターに組み込まれている。
【0067】
さらに、適切なシグナルペプチドをコードする配列を、発現ベクターに組み込んでもよい。シグナルペプチド(分泌リーダー)に対するDNA配列は、イン・フレームでLIR配列に融合させ、その結果LIRがまずシグナルペプチドを含む融合タンパク質として翻訳されてもよい。意図される宿主細胞において機能的なシグナルペプチドは、LIRポリペプチドの細胞外分泌を促進する。シグナルペプチドは、LIRポリペプチドが細胞から分泌される際、LIRポリペプチドから切断される。
【0068】
LIRポリペプチドを発現するのに適した宿主細胞には、原核細胞、酵母またはより高次の真核細胞が含まれる。細菌、真菌、酵母および哺乳動物細胞宿主で用いるのに適したクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Powelsら. Cloning Vectors: A Laboratory Manual, ニューヨーク州エルセビア(1985)に記載されている。細胞不含翻訳系もまた、本明細書に開示されるDNA構築物由来のRNAを用い、P3G2ポリペプチドを産生するのに用いてもよい。
【0069】
本発明の実施に適した原核宿主細胞には、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、大腸菌(E. coli)またはバチルス属(Bacilli)が含まれる。形質転換に適した原核宿主細胞には、例えば、大腸菌、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、およびシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、およびブドウ球菌属(Staphylococcus)内の多様な他の種が含まれる。大腸菌などの原核宿主細胞において、組換えポリペプチドの発現を容易にするため、P3G2ポリペプチドがN末端メチオニン残基を含んでもよい。N末端Metは、発現された組換えLIRポリペプチドから切断されてもよい。
【0070】
原核宿主細胞に用いるための発現ベクターは、一般的に、1つまたはそれ以上の表現型選択可能マーカー遺伝子を含む。表現型選択可能マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質耐性を与える、または独立栄養必要条件を供給するタンパク質をコードする遺伝子である。原核宿主細胞に有用な発現ベクターの例には、クローニングベクターpBR322(ATCC 37017)など、商業的に入手可能なプラスミド由来のものが含まれる。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性遺伝子を含み、そしてしたがって、形質転換細胞を同定する簡単な手段を提供する。適切なプロモーターおよびLIRファミリーDNAをpBR322ベクター中に挿入してもよい。他の商業的に入手可能なベクターには、例えば、pKK223-3(Pharmacia Fine Chemicals、スウェーデン・ウプサラ)およびpGEM1(Promega Biotec、米国ウィスコンシン州マディソン)が含まれる。
【0071】
組換え原核宿主細胞発現ベクターに通常用いられるプロモーター配列には、βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター系(Changら. Nature 75:615, 1978; およびGoeddelら, Nature 281:544, 1979)、トリプトファン-(trp)プロモーター系(Goeddelら, Nucl. Acids Res. 8:4057, 1980; およびEP-A-36776)およびtacプロモーター(Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, p.412, 1982)が含まれる。特に有用な原核宿主細胞発現系は、ファージλPLプロモーターおよびcI857ts熱不安定性リプレッサー配列を使用する。アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から入手可能な、λPLプロモーターの誘導体を組み込んだプラスミドベクターには、プラスチドpHUB2(大腸菌株JMB9、ATCC 37092に常住)およびpPLc28(大腸菌RP1、ATCC 53082に常住)が含まれる。
【0072】
また別に、LIRポリペプチドは、酵母宿主細胞、好ましくはサッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、S.セレビシエ(S. cerevisiae))において発現されてもよい。酵母の他の属、例えばピキア属(Pichia)またはクロイベロミセス属(Kluyveromyces)もまた使用してもよい。酵母ベクターは、しばしば、2μ酵母プラスミド由来の複製起点配列、自律複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、および選択可能マーカー遺伝子を含むであろう。酵母ベクターに適したプロモーター配列には、とりわけ、メタロチオネイン、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzemanら, J. Biol. Chem. 255:2073, 1980)または、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼなどの他の解糖酵素(Hessら, J. Adv. Enzyme Reg. 7:149, 1968; およびHollandら, Biochem. 17:4900, 1978)のプロモーターが含まれる。酵母発現に用いるのに適した他のベクターおよびプロモーターはHitzeman, EPA-73,675にさらに記載されている。他の選択は、Russellら(J. Biol. Chem. 258:2674, 1982)およびBeierら(Nature 300:724, 1982)により記載されるADH2プロモーターである。大腸菌での選択および複製のため、pBR322由来のDNA(Ampr遺伝子および複製起点)を上述の酵母ベクターに挿入することにより、酵母および大腸菌両方において複製可能なシャトルベクターを構築してもよい。
【0073】
酵母α因子リーダー配列を使用し、LIRポリペプチドを直接分泌させてもよい。α因子リーダー配列は、しばしば、プロモーター配列および構造遺伝子配列の間に挿入される。例えば、Kurjanら, Cell 30:933, 1982およびBitterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 81:5330, 1984を参照されたい。酵母宿主から組換えポリペプチドの分泌を容易にするのに適した他のリーダー配列が当業者に知られる。リーダー配列は、その3’端近傍に、1つまたはそれ以上の制限酵素部位を含むよう修飾されてもよい。これは、リーダー配列が構造遺伝子に融合するのを容易にするであろう。
【0074】
酵母形質転換プロトコルは当業者に知られる。こうしたプロトコルの1つがHinnenら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:1929, 1978により記載される。Hinnenらのプロトコルは、Trp形質転換体を、0.67%酵母窒素基剤、0.5%カザミノ酸、2%グルコース、10μg/mlアデニン、および20μg/mlウラシルからなる選択培地中で選択する。
【0075】
ADH2プロモーター配列を含むベクターにより形質転換された酵母宿主細胞は、発現を誘導するため「リッチ」培地中で増殖させてもよい。リッチ培地の例は、80μg/mlウラシルを補った、1%酵母エキス、2%ペプトン、および1%グルコースを有するものである。ADH2プロモーターの抑制解除(derepression)は、培地からグルコースが枯渇したとき起こる。
【0076】
哺乳動物または昆虫宿主細胞培養系を用いて、組換えLIRポリペプチドを発現してもよい。昆虫細胞において異種タンパク質を産生するためのバキュロウイルス系がLuckowおよびSummers, Bio/Technology 6:47 (1988) に論評されている。哺乳動物起源の樹立細胞株もまた、使用してもよい。適切な哺乳動物宿主細胞株の例には、サル腎臓細胞のCOS-7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら, Cell 23:175, 1981)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、およびBHK(ATCC CRL 10)細胞株、およびMacMahanら(EMBO J. 10:2821, 1991)により記載されるアフリカミドリザル(African green monkey)細胞株CVI(ATCC CCL 70)由来のCV-I/EBNA細胞株、COS-1(ATCC CRL-1650)が含まれる。
【0077】
哺乳動物宿主細胞発現ベクターのための転写および翻訳調節配列は、ウイルスゲノムより切り出されてもよい。よく用いられるプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)、およびヒトサイトメガロウイルス由来である。SV40ウイルスゲノム由来のDNA、例えばSV40起点、初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライシング、およびポリアデニル化部位を用い、哺乳動物宿主細胞における構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝要素を提供してもよい。ウイルス初期および後期プロモーターは、どちらもウイルス複製起点をも含んでもよい断片として容易にウイルスゲノムから得られるため、特に有用である(Fiersら, Nature 273:113, 1978)。SV40ウイルス複製起点部位に位置するHIND III部位からBgl I部位まで伸長するおよそ250 bp配列が含まれていれば、より小さいまたはより大きいSV40断片もまた用いてもよい。
【0078】
哺乳動物宿主細胞において用いるのに適した発現ベクターを、OkayamaおよびBerg(Mol. Cell. Biol. 3:280, 1983)に開示されたように構築してもよい。C127ネズミ乳腺上皮細胞における哺乳動物受容体cDNAの安定した高レベル発現に有用な1つの系を、実質的にCosmanら(Mol. Immunol. 23:935, 1986)に記載されたように構築してもよい。Cosmanら, Nature 312:768, 1984に記載される高発現ベクター、PMLSV N1/N4はATCC 39890として寄託されている。さらなる哺乳動物発現ベクターは、EP-A-0367566、およびWO 91/18982に記載されている。さらに、哺乳動物宿主細胞に用いられるさらなる発現ベクターには、pDC201(Simsら, Science 241:585, 1988)pDC302(Mosleyら, Cell 59:335, 1989)、およびpDC406(McMahanら, EMBO J. 10:2821, 1991)が含まれる。レトロウイルス由来のベクターもまた使用してもよい。他の好ましい発現ベクター系は、以下の実施例5に論じられるように、pDC409を使用する。
【0079】
LIRポリペプチド発現のための発現ベクターは、シグナルまたはリーダーペプチドをコードするDNAを含んでもよい。天然シグナル配列の代わりに、異種シグナル配列、例えば米国特許第4,965,195号に記載されるインターロイキン−7(IL-7)のシグナル配列;Cosmanら, Nature 312:768, 1984に記載されるインターロイキン−2受容体のシグナル配列;EP 367,556に記載されるインターロイキン−4シグナルペプチド;米国特許第4,968,607号に記載されるI型インターロイキン−1受容体シグナルペプチド;およびEP 460,846に記載されるII型インターロイキン−1シグナルペプチドを添加してもよい。
【0080】
本発明内にさらに意図されるのは、精製LIRファミリーポリペプチドである。本発明の精製ポリペプチドは、上述の組換え発現系から精製してもよいし、または天然発生細胞から精製してもよい。望ましい純度は、タンパク質の意図される用法に依存する可能性があり、該タンパク質がin vivo使用に意図されるとき、比較的高い純度が好ましい。好ましくは、LIRポリペプチド精製方法は、望ましいLIRタンパク質以外のタンパク質に対応するタンパク質バンドがSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により検出されないものである。当業者には、異なる糖鎖付加、翻訳後プロセシングの変動、および上述のそれらに匹敵するもののため、任意のLIRポリペプチドにも対応する複数のバンドがSDS-PAGEにより検出される可能性があることが認識されるであろう。最も好ましくは、任意の特定のLIRポリペプチドも、SDS-PAGEによる解析の際、単一のタンパク質バンドに示されるように、実質的に均一に精製される。タンパク質バンドは銀染色、クーマシーブルー染色により、またはタンパク質が適切に標識されている場合は、オートラジオグラフィーまたは蛍光により、視覚化してもよい。
【0081】
精製LIRポリペプチドを提供する1つの方法には、まず望ましいポリペプチドをコードするDNA配列を含む発現ベクターで形質転換した宿主細胞を、所期のLIRポリペプチドの発現を促進する条件下で培養し、そしてその後LIRポリペプチドを回収することが含まれる。当業者が認識するであろうように、ポリペプチドを回収する方法は、使用した宿主細胞の種類、およびポリペプチドが培地中に分泌されるか、細胞から抽出されるかなどの要因にしたがい、異なるであろう。
【0082】
発現系がポリペプチドを培地中に分泌するとき、培地をまず、商業的に入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外ろ過装置を用い、濃縮する。濃縮段階に続き、濃縮物をゲルろ過媒体などの適切な精製マトリックスに適用する。あるいは、陰イオン交換レジン、例えばジエチルアミノエチル(DEAE)側鎖を有するレジンマトリックスまたはレジン基質を使用してもよい。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロースまたはタンパク質精製に通常使用される他の種類のものであってもよい。同様に、陽イオン交換基、例えばスルホプロピルまたはカルボキシメチル官能性を不溶性マトリックス上に有する精製マトリックスも用いてもよい。スルホプロピル基が好ましい。精製LIRを提供するのに適した、さらに別の精製マトリックスおよび方法は、疎水性逆相媒体を用いた高性能液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)である。当業者は、前記の精製段階のいずれでもまたはすべてを、さまざまな組み合わせで使用し、精製LIRポリペプチドを提供してもよいことを認識するであろう。
【0083】
あるいは、LIRポリペプチドを免疫アフィニティー・クロマトグラフィーにより精製してもよい。LIRポリペプチドに結合する抗体を含むアフィニティー・カラムを慣用方法により調製し、そしてLIR精製に使用してもよい。実施例5は、免疫アフィニティー・クロマトグラフィーに利用してもよい、P3G2に向けられたモノクローナル抗体を生成する方法を記載する。
【0084】
細菌培養において産生された組換えタンパク質は、まず、凍結融解サイクル、超音波、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む、任意の簡便な方法によって宿主細胞を破壊してもよく、そしてその後、ポリペプチドが不溶性であれば細胞沈澱から、またはポリペプチドが可溶性であれば上清液体から、ポリペプチドを抽出することにより単離してもよい。最初の単離段階後、精製過程は、1つまたはそれ以上の濃縮、塩析、イオン交換、アフィニティー、またはサイズ排除クロマトグラフィー精製段階を含んでもよい。多くの適用に関し、最終的なRP-HPLC精製段階が有益である。
【0085】
LIRポリペプチドおよび精製LIRポリペプチドを提供するさらなる方法は、タンパク質を分泌タンパク質として発現する、発酵酵母が関与する。大規模発酵により生じた分泌組換えタンパク質は、分離用HPLCカラム上での組換えタンパク質精製のための、2つの連続する逆相HPLC段階が含まれる、Urdalら(J. Chromatog. 296:171, 1984)に開示されたものと類似の方法により精製してもよい。
【0086】
pDC406ベクター中のLIR-P3G2 DNAは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに、1997年4月22日に寄託され、そして寄託番号第97995号を割り当てられた。寄託物はブダペスト条約に基づいて行われた。
【0087】
上記のように、そして実施例6および14に示されるように、LIR-P3G2およびLIR-pbm8は、ある種の単球、B細胞、およびNK細胞の表面上に見られるMHCクラスI受容体である。単球に関しては、MHCクラスI結合タンパク質であるLIRの発現により、単球がMHCクラスI分子を認識する何らかの必要性があることが示唆される。LIR-P3G2、LIR-pbm8 LIRおよびある種のさらなるLIRファミリーメンバーは、細胞質ITIMモチーフを含む。既知のMHCクラスI受容体分子の構造および機能との類推から、これらのLIRは、陰性シグナル伝達を媒介する阻害性受容体である。実際、実施例11に示される結果により、LIRがSHP-1と結合し、そしてFcR媒介活性化事象を阻害することが明らかである。したがって、単球は、細胞媒介溶解機構を抑制するため、クラスI受容体を発現している可能性がある。単球はFcRを介し、細胞外病原体を迅速に貪食(phagocyte)し、そして単球・FcR結合は、より多くの全身性媒介体、特にTNF-α、IL-6およびIL-8を産生することにより、免疫反応の伝播を誘導する。したがって、LIRは、自己組織に対する細胞溶解および炎症反応の単球およびマクロファージ制御において、役割を果たしている。FcRの活性化性シグナルおよびLIRの阻害性シグナルの間の相互作用により、自己反応性IgGが低レベルで循環中に存在し、そして免疫反応開始と共に単球膜に結合することが可能になる可能性がある。例えば、これらの阻害性受容体の発現は、発達する胚を母性抗体媒介同種認識から保護する可能性がある。
【0088】
DC系列細胞上のLIRに関し、実施例13に記載されるように、CD33+CD14-CD16-HLA-DR+DCは、LIR-P3G2およびLIR-pbm8を共発現する。DC FcRが免疫複合体の結合および結合に続くDC活性化の誘発において役割を果たしていることが示唆される。したがって、DC上に発現したLIRは、FcRの相互作用を通じてDC活性化を抑制する可能性がある。
【0089】
多くのLIRメンバーはITIMモチーフを欠いており、ITIMを欠く既知のMHCクラスI受容体の構造および機能との類推から、活性化受容体である。陰性シグナル伝達を媒介する受容体の不全により、自己免疫疾患が生じる可能性がある。したがって、ITIMモチーフを有するLIRファミリーメンバーをアゴニスト性抗体またはリガンドと結合させることを用い、免疫系が活発すぎ、そして過剰の炎症または免疫病理が存在する疾患状態における細胞機能を下方制御してもよい。一方、ITIMを有するLIR受容体に特異的なアンタゴニスト性抗体または該受容体の可溶性型を用い、細胞表面受容体と受容体のリガンドとの相互作用を遮断し、抑制された免疫機能に関連する疾患状態における特定の免疫機能を活性化させてもよい。ITIMモチーフを欠く受容体は、上述のようにひとたび結合されると活性化型シグナルを送るため、活性化型シグナルを媒介する受容体の不全により、免疫機能の抑制が生じる可能性がある。受容体をそのアゴニスト性抗体またはリガンドと結合させることを用い、抑制された免疫機能に関連する疾患を治療してもよい。活性化型LIR受容体に特異的なアンタゴニスト性抗体または該受容体の可溶性型を用い、活性化型受容体と受容体のリガンドとの相互作用を遮断し、活性化型シグナル伝達を下方制御してもよい。
【0090】
LIR-P3G2は多様な細胞に結合するため、LIR-P3G2を用い、これらの細胞を異種調製から精製または単離してもよい。さらに、P3G2プローブを用い、関連する分子を単離し、そして同定してもよい。
【0091】
欠陥のあるまたは不充分な量の任意のLIRポリペプチドが、直接または間接的に媒介する任意の疾患の治療の開発にも、本発明のLIRポリペプチドを用いてもよい。精製LIRタンパク質の治療的に有効な量を、こうした疾患を患う患者に投与する。また別に、こうした疾患を治療する遺伝子治療アプローチを開発するのに、LIR DNAを使用してもよい。本明細書における天然LIRヌクレオチド配列の開示により、欠陥のあるLIR遺伝子の検出、および正常なLIRコード遺伝子によるその置換が可能になる。欠陥のある遺伝子は、in vitro診断検定において、そして本明細書に開示される天然LIRヌクレオチド配列を、遺伝子に欠陥を持つと疑われる人由来のLIR遺伝子のものと比較することによって、検出してもよい。
【0092】
本発明はまた、LIRポリペプチド、またはその断片または変異体を生理学的に許容されるキャリアーまたは希釈剤と共に含んでもよい薬剤組成物も提供する。 こうしたキャリアーおよび希釈剤は使用される投薬量および濃度で、レシピエントに無害であろう。こうした組成物はさらに、緩衝液、アスコルビン酸のような抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、グルコース、ショ糖またはデキストリンを含む炭水化物、EDTAなどのキレート剤、グルタチオンおよび通常薬剤組成物に用いられる他の安定化剤および賦形剤(excipient)を含んでもよい。本発明の薬剤組成物は、適切な賦形剤溶液を希釈剤として用いる凍結乾燥物(lyophilizate)として処方されてもよい。薬剤組成物は、限定されるわけではないが、活性変異体、断片およびオリゴマーを含む、本明細書に記載される任意のLIRポリペプチドを含んでもよい。LIRポリペプチドは、薬剤的に有用な組成物を調製するのに用いられる既知の方法にしたがい、処方することができる。薬剤処方に通常使用される成分には、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th ed.(Mack Publishing Company、ペンシルバニア州イーストン, 1980)に記載されるものが含まれる。
【0093】
本発明の薬剤調製物は、患者、好ましくはヒトに、徴候に適した様式で投与されうる。したがって、例えば組成物を、静脈内投与、局所投与、連続注入、移植物からの持続放出などにより投与してもよい。適切な投薬量および投与頻度は、治療される徴候の性質および重症度、望ましい反応、患者の状態などの要因に依存するであろう。
【0094】
好ましい態様において、本発明の薬剤組成物に用いられるLIRポリペプチドは、LIRポリペプチドが実質的に天然または内因性起源の他のタンパク質を含まないように、望ましくは、産生過程のタンパク質汚染物質残留物の重量約1%未満を含むように、精製される。こうした組成物はしかし、安定剤、キャリアー、賦形剤または補治療剤(co-therapeutics)として添加される他のタンパク質を含んでもよい。
【0095】
本明細書に開示されるLIRをコードするDNAおよびDNA断片は、上述のようにLIRポリペプチドの産生に使用を見出される。1つの態様において、こうした断片は、LIR DNAの少なくとも約17の連続するヌクレオチド、より好ましくは少なくとも30の連続するヌクレオチドを含む。断片のDNAおよびRNA相補体は類似の有用性を有する。LIR核酸断片の用法の中に、プローブまたはポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーとしてのものがある。例えば、LIRの細胞外ドメインをコードするDNAの断片に対応するプローブを使用し、ノーザンブロットおよびサザンブロット検定などの、in vitro検定および他のプローブを用いる検定(probing assay)においてLIR核酸の存在を検出してもよい。LIRポリペプチドを発現する細胞の種類を、当業によく知られるプローブアッセイを用い、LIRファミリー核酸を用いて同定してもよい。当業者は、適切な長さのプローブを選択し、そして慣用的なPCR技術を適用し、DNA配列を単離しそして増幅する知識を有する。
【0096】
核酸断片はまた、種間ハイブリダイゼーション法におけるプローブとして用い、他の哺乳動物種からLIR DNAを単離してもよい。1つの例として、LIRポリペプチドの細胞外ドメインに対応するプローブを用いてもよい。プローブを慣用技術により(例えば32Pで)標識してもよい。
【0097】
LIR核酸の他の有用な断片は、標的LIR mRNA(センス)またはP3G2 DNA(アンチセンス)配列に結合することが可能な一本鎖核酸配列(RNAまたはDNAのどちらか)を含む、アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドである。こうした断片は一般的に、少なくとも約14ヌクレオチド、好ましくは約14から約30ヌクレオチドである。既定のタンパク質に対するcDNA配列に基づきアンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドを生成する技量は、例えば、SteinおよびCohen, Cancer Res. 48:2659, 1988およびvan der Krolら, BioTechniques 6:958, 1988に記載されている。
【0098】
標的核酸配列にアンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドが結合することにより、二本鎖分解の亢進、転写または翻訳の早過ぎる終結を含む、いくつかの手段の1つにより、または他の手段により、翻訳(RNA)または転写(DNA)を遮断する二本鎖の形成が起こる。このように、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用い、LIR発現を遮断してもよい。
【0099】
1つの態様において、結合方法に用いられるアンチセンスまたはセンスLIRオリゴヌクレオチドは、修飾糖・リン酸ジエステル骨格(またはWO 91/06629に記載されるものなど、他の糖結合)を有し、そしてこうした糖結合が内因性ヌクレアーゼに耐性であるオリゴヌクレオチドを含んでもよい。内因性ヌクレアーゼに耐性である糖結合を有するオリゴヌクレオチドは、in vivoで安定である(すなわち、酵素分解に抵抗することが可能である)が、標的ヌクレオチド配列に結合することが可能となる配列特異性を保持している。センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドの他の例には、WO 90/10448に記載されるものなど、有機部分に、およびポリ−(L−リシン)など、標的核酸配列へのオリゴヌクレオチドの親和性を増加させる他の部分に、共有結合されたオリゴヌクレオチドが含まれる。さらに、エリプチシンなどの挿入剤(intercalating agent)、およびアルキル化剤または金属錯体がセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合し、標的ヌクレオチド配列へのアンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドの結合特異性を修飾してもよい。
【0100】
アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、CaPO4媒介DNAトランスフェクション、エレクトロポレーションを含む、任意の遺伝子トランスファー法により、またはエプスタイン・バーウイルスなどの遺伝子トランスファーベクターを用いることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入されてもよい。アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドを適切なレトロウイルスベクターに挿入し、その後in vivoまたはex vivoで挿入配列を含むレトロウイルスベクターと細胞を接触させることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入される。適切なレトロウイルスベクターには、限定されるわけではないが、ネズミレトロウイルスM-MuLV、N2(M-MuLV由来のレトロウイルス)、またはDCT5A、DCT5B、DCT5Cと称される二重コピーベクター(PCT出願US 90/02656を参照されたい)由来のものが含まれる。
【0101】
センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、WO 91/04753に記載されるように、リガンド結合分子との結合体の形成により、標的ヌクレオチド配列を含む細胞に導入されてもよい。適切なリガンド結合分子には、限定されるわけではないが、細胞表面受容体、増殖因子、他のサイトカイン、または細胞表面受容体に結合する他のリガンドが含まれる。好ましくは、リガンド結合分子の結合体形成は、実質的にリガンド結合分子がその対応する分子または受容体に結合する能力に干渉せず、またはセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその結合体型が細胞内に入るのを遮断しない。
【0102】
また別に、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、WO 90/10448に記載されるように、オリゴヌクレオチド・脂質複合体の形成により、標的核酸配列を含む細胞に導入されてもよい。センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド・脂質複合体は、好ましくは、内因性リパーゼにより、細胞内で分離される。
【0103】
さらに別の側面において、本発明は、LIRポリペプチドに特異的に結合する抗体、すなわち抗体の抗原結合部位を通じ(非特異的結合と反対に)LIRポリペプチドに結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、LIRポリペプチドまたはその免疫原性断片を用いて生成してもよい。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を慣用技術により調製することができる。例えば、Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses. Kennetら(監修), Plenum Press, New York 1980; およびAntibodies: A Laboratory Manual, HarlowおよびLand(監修), Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー, 1988を参照されたい。P3G2-LIRと免疫反応するモノクローナル抗体を産生する典型的な方法は、さらに以下の実施例5に例示される。
【0104】
本発明の範囲に含まれるのは、LIRポリペプチドに特異的に結合する抗体の抗原結合断片である。こうした断片には、限定されるわけではないが、Fab、F(ab’)、およびF(ab’)2が含まれる。遺伝子工学技術により産生される抗体変異体および誘導体は、本発明の範囲内に意図される。
【0105】
本発明のモノクローナル抗体には、キメラ抗体、例えば、ネズミモノクローナル抗体のヒト化(humanized)型が含まれる。こうした抗体を既知の技術により調製し、そして抗体がヒトに投与されるとき、免疫原性を減少させる利点を提供してもよい。1つの態様において、ヒト化モノクローナル抗体は、ネズミ抗体の可変部(またはその抗原結合部位のみ)およびヒト抗体由来の定常部を含む。また別に、ヒト化抗体断片は、ネズミモノクローナル抗体の抗原結合部位およびヒト抗体由来の可変部断片(抗原結合部位を欠く)を含んでもよい。キメラおよび工学技術で作成されるさらなるモノクローナル抗体の産生方法は、Riechmannら, Nature 332:232, 1988; Lieら, PNAS 84:3439, 1987; Larrickら, Bio/Technology 7:934, 1989; およびWinterおよびHaris TIPS 14:139, 1993に記載されるものを含む。
【0106】
上述のように、本発明の抗体は、LIRポリペプチドの存在を検出するin vitroまたはin vivo検定において、およびアフィニティー・クロマトグラフィーでLIRポリペプチドを生成するのに有用である。
【0107】
さらに、LIRが標的細胞に結合するのを遮断することが可能な抗体を用い、LIRポリペプチドの生物学的活性を阻害してもよい。より具体的には、ITIMモチーフを有する1つまたはそれ以上のLIRファミリーメンバーに対しアンタゴニスト性である抗体の薬剤組成物を、細胞表面LIRとそのリガンドとの相互作用を遮断するため、個人に投与してもよい。その結果、免疫機能の活性化が起こり、そして免疫系の反応性が減少しているかまたは抑制されている疾患状態において、特に有益である。逆に、ITIMモチーフを欠く1つまたはそれ以上のLIRファミリーメンバーに対しアンタゴニスト性である抗体の薬剤組成物を用いて逆の効果を得てもよく、そして免疫系が活発すぎ、そして過剰の炎症または免疫病理が存在する疾患状態において有益である可能性がある。
【0108】
LIRポリペプチドと免疫反応する、少なくとも1つの抗体および適切な希釈剤、賦形剤またはキャリアーを含む薬剤組成物は、本発明に考慮される。適切な希釈剤、賦形剤、およびキャリアーは、本発明のポリペプチドを含む薬剤組成物に関連して記載される。

以下の実施例は、本発明のある態様を例示するため提供され、そして本発明の範囲を限定すると解釈されるためではない。
【実施例】
【0109】
実施例
実施例1
ウイルスタンパク質の単離および発現
HCMVで感染した細胞上に発現することが知られる、ウイルス糖タンパク質UL18を単離し、そして発現し、そしてその後UL18受容体を探索するため、UL18/Fc融合タンパク質を発現させそして用いることにより、本発明のP3G2ポリペプチドをコードするDNAを同定した。UL18をコードするDNAおよびそのアミノ酸配列が知られており、そしてBeck, S., B.G. Barrell, Nature 331:269-272, 1988に記載されている。以下はUL18を単離し、そしてUL18/Fc融合タンパク質を調製することを記載する。
【0110】
標準的技術を用い、HCMV(AD 169)に感染したヒト包皮繊維芽細胞から、3つの異なる転写段階、極初期(IE、8 p.i.h.)、初期(24 p.i.h.)および後期(48 p.i.h.)で、総RNAを単離した。UL18は感染において初期に転写されることが知られるため、IE総RNAをポリA+選択し、そしてcDNAキット(Pharmacia TIME SAVER cDNA Kit)を製造者の指示にしたがって用い、HCMV-IE cDNAライブラリーを構築するのに用いた。全長UL18遺伝子を単離するため、UL18遺伝子の末端配列を含むことが知られる2つのオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、そしてUL18遺伝子をHCMV-IE cDNAライブラリーから単離し、そして増幅するのに用いた。プライマーは以下の配列を有し、そしてPCR産物に組み込まれるNot I制限部位を含んだ。
【0111】
【化1】

【0112】
PCR条件は、1つの5分95℃サイクルに続き、95℃で45秒、58℃で45秒および72℃で45秒を30サイクル、そしてその後72℃5分を1サイクル、含んだ。PCR産物を1%アガロースゲル上で電気泳動し、そして分離したDNA産物を視覚化するためエチジウム・ブロミドを用い、大きさを決定した。およそ1.1kbの期待される大きさを有するDNAの存在を確認した。
【0113】
pDC406(McMahanら, EMBO J. 10:2821, 1991)由来であるが、単一のBgl II部位を有するベクター、pDC409発現ベクターをクローニング法のため選択した。PCR産物を、Not I部位を通じてpDC409発現ベクターにサブクローンし、配列決定し、そしてアミノ酸配列をDNA配列から推定した。決定されたヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、以前公表された配列(本章中)と同一であった。
【0114】
UL18の細胞外領域および突然変異タンパク質(mutein)ヒトIgG1 Fc領域の融合タンパク質(UL18:Fc)を、まずUL18の細胞外領域に隣接するプライマーを用い、UL18の細胞外領域をコードするcDNAを単離することにより、調製した。該プライマーは、5’および3’末端に挿入されたSal IおよびBgl II制限酵素部位と共に合成し、その結果PCR増幅cDNAが、5’および3’端に、それぞれSal IおよびBgl II制限酵素部位を導入された。プライマーは以下の配列を有した:
【0115】
【化2】

【0116】
PCR反応条件は、テンプレートがここに記載されたように単離された全長遺伝子であること以外は、上述のようであった。
融合タンパク質、sUL18:Fcを発現するベクター構築物を、細胞結合研究において使用するために調製するため、ヒトIgG1抗体のFc領域をコードするDNA断片をBgl IIおよびNot I制限酵素を用いプラスミドから単離した。コードされるFc部分は、U.S. 5,457,035に記載される、免疫グロブリン受容体への親和性が減少した、突然変異タンパク質であった。sUL18遺伝子上のBgl II部位を用い、sUL18遺伝子DNAをFc遺伝子のBgl II部位に連結し、N末端Sal I制限部位およびC末端Not I制限部位を有するsUL18:Fc融合DNA構築物を形成した。この融合sUL18:Fc DNA構築物をその後、pDC409発現ベクターのSal IおよびNot I部位に連結し、409/sUL18/Fc DNA構築物を形成した。
【0117】
サル細胞株COS-1(ATCC CRL-1650)を用い、融合タンパク質の発現を確認した。6ウェルプレート中のCOS-1細胞(2 x 105細胞/ウェル)を、ウェル当たり約2μg のDNA構築物409/sUL18/Fcでトランスフェクションした。細胞を5% FBS/DMEM/F12(GIBCOより入手可能)中で、2−3日培養し、その後PBSで2回洗浄し、システイン/メチオニン枯渇RPMI(GIBCOよりRPMI 1640として入手可能)中で1時間飢餓させ、そして100μCi/mlの35S-Met/Cysで4時間、代謝的に標識した。付着していない細胞を除去するため、上清をスピンして透明にし、上清150μlをRIPA緩衝液(PBS中の0.05% Tween 20、0.1% SDS、1% Triton X-100、0.5%デオキシコール酸)100μlおよび50%プロテインA−Sepharose固体支持体ビーズ50μlと4℃で1時間インキュベーションした。プロテインA−Sepharoseは、融合タンパク質のFc部分に結合する固定プロテインAを有するSepharose固体支持体(Pharmaciaより入手可能)である。非結合成分を除去するため、固体支持体をRIPAで洗浄した後、プロテインA−Sepharose固体支持体に結合した融合タンパク質を、SDS-PAGE還元試料緩衝液35μlを用い、プロテインA−Sepharoseから溶出し、そしてその後100℃で5分熱した。溶出物をその後、14C標識タンパク質分子量マーカーと共に、4−20% SDSポリアクリルアミド勾配ゲル上で電気泳動した。電気泳動後、ゲルを8%酢酸で固定し、そしてAmershamから入手可能な増幅体(Amplifier)で室温で20分シグナルを増強した。ゲルを真空下で乾燥させた後、X線フィルムに曝露した。フィルム解析により、期待されたタンパク質、突然変異タンパク質IgGのFc領域およびFcに融合したUL18細胞外ドメインを含む100−120 kDaタンパク質が発現していることが確認された。
【0118】
ひとたび融合タンパク質を発現する細胞が同定されると、トランスフェクションされた細胞の大規模培養を増殖させ、融合タンパク質を発現する細胞から上清を収集した。この過程は、COS-1細胞をT175フラスコ中で、フラスコ当たり15μgのUL18/Fc/409融合DNAでトランスフェクションすることを含む。0.5%低免疫グロブリンウシ血清を含む培地中での培養7日後、0.2%アジ化物溶液を上清に添加し、そして上清を0.22μmフィルターを通し、ろ過した。その後およそ1 lの培養上清を、4.6 x 100 mmプロテインAカラム(PerSeptive BiosystemsのPOROS 20A)を用い、10 ml/分で、BioCad プロテインA HPLCタンパク質精製系を通過させた。プロテインAカラムは、上清中のsUL18/Fc融合タンパク質のFc部分と結合し、融合タンパク質を固定し、そして上清の他の構成要素がカラムを通過するのを許す。カラムをPBS溶液30 mlで洗浄し、そして結合したsUL18/FcをHPLCカラムから、pH 3.0に調整されたクエン酸で溶出した。溶出される精製sUL18/Fcを、pH 7.4の1M Hepes溶液を用い、溶出される際、中和した。集めた溶出タンパク質を、銀染色と共にSDS-PAGEを用い解析し、100−120 kDaのUL18/Fc融合タンパク質の発現を確認した。
【0119】
実施例2
UL18に結合する細胞株のスクリーニング
実施例1に記載されるように単離されたsUL18/Fcタンパク質を用い、標準的フローサイトメトリー方法論にしたがい、定量的結合研究を用い、前記タンパク質が結合する細胞株をスクリーニングした。スクリーニングされる各細胞株に関し、該方法は、PBS中の2% FCS(ウシ胎児血清)、5%正常ヤギ血清および5%ウサギ血清でブロッキングされるおよそ100,000の細胞を1時間インキュベーションすることを含んだ。その後ブロッキングされた細胞をPBS中の2% FCS、5%ヤギ血清および5%ウサギ血清中のsUL18/Fc融合タンパク質5μg/mlとインキュベーションした。インキュベーション後、試料をFACS緩衝液(PBS中の2% FCS)で2回洗浄し、そしてその後、マウス抗ヒトFc/ビオチン(Jackson Researchより購入)およびSAPE(Molecular Probesより購入したストレプトアビジン・フィコエリトリン)で処理した。この処理により、抗ヒトFc/ビオチンが結合した任意のsUL18/Fcにも結合するようになり、そしてSAPEが抗ヒトFc/ビオチンに結合するようになった結果、細胞に結合したsUL18/Fc上に蛍光同定標識が生じた。細胞を、蛍光検出フローサイトメトリーを用い、全ての結合したタンパク質に関しても解析した。結果により、UL18は、B細胞株CB23、RAJIおよびMP-1;単球性細胞株Thp-1およびU937;および初代B細胞および初代単球によく結合することが示された。UL18はT細胞株に検出可能であるように結合せず、または初代T細胞に結合しない。
【0120】
実施例3
P3G2 cDNAおよびポリペプチドの単離
以下は、UL18に結合することが見出された細胞株の1つのcDNAスクリーニングおよび該細胞株により発現される新規ポリペプチドの単離を記載する。米国特許第5,350,653号(本明細書に援用される)に記載されるように調製された、哺乳動物発現ベクターpDC406中のCB23 cDNAライブラリーを得、そしてプール当たりおよそ2,000クローンからなるプールから、プラスミドDNAを単離した。単離DNAをDEAE−デキストランを用いて、CV1-EBNA細胞(ATCC CRL 10478)にトランスフェクションした後、クロロキン処理を行った。CV1-EBNA細胞を完全培地(10%(v/v)ウシ胎児血清、50U/mlペニシリン、50U/mlストレプトマイシン、および2mM L−グルタミンを含むダルベッコの修飾イーグル培地)中で維持し、そして単一ウェルチャンバースライド中におよそ2 x 105細胞/ウェルの密度で蒔いた。スライドをPBS中のヒトフィブロネクチン10μg/mlの溶液1 mlで30分、前処理した後、PBSで1回洗浄した。層状に増殖する付着細胞から培地を除去し、そして66.6μM硫酸クロロキンを含む完全培地1.5 mlと置き換えた。DNA溶液(クロロキンを含む完全培地中の2μg DNA、0.5 mg/ml DEAE−デキストラン)約0.2 mlを細胞に添加し、そして混合物を37℃で約5時間インキュベーションした。インキュベーション後、培地を除去し、そして10% DMSO(ジメチルスルホキシド)を含む完全培地を添加することにより、2.5分間細胞にショックを与えた。ショックを与えた後、溶液を新鮮な完全培地で置き換えた。細胞を培養中で2から3日増殖させ、挿入DNA配列の一過性発現を可能にした。これらの条件により、生存CV1-EBNA細胞において30%から80%のトランスフェクション頻度が得られた。
【0121】
各スライドを、結合緩衝液(25 mg/mlウシ血清アルブミン、2 mg/mlアジ化ナトリウム、20 mM Hepes、pH 7.2、および50 mg/ml脱脂粉乳を含むRPMI 1640)中の1μg/mlの濃度のUL18:Fc 1 mlと、室温で1時間インキュベーションした。インキュベーションしたスライドを結合緩衝液で洗浄し、そしてその後Fc特異的125Iマウス抗ヒトIgG(Goodwinら, Cell 73:447-456, 1993を参照されたい)とインキュベーションした。この後、緩衝液での2回目の洗浄を行い、その後各スライドを、2.5%グルタルアルデヒド/PBS溶液で固定し、PBS溶液で洗浄し、そして空気乾燥させた。乾燥させたスライドをKodak GTNB-2写真感光乳剤(水で6倍希釈)に浸した。空気乾燥の後、スライドを暗箱に入れ、そして冷蔵した。3日後、スライドをKodak D19現像剤で現像し、水でリンスし、そしてAgfa G433C固定剤で固定した。固定スライドを25−40倍の倍率で顕微鏡下で個々に調べた。sUL18:Fcの結合を示す陽性細胞は、フィルムのバックグラウンドに対し、オートラジオグラフィーの銀粒子が存在することにより視覚化された。2つの陽性プールを同定した。各プールから細菌クローンを力価決定し、そしてプレートがおよそ各200コロニーを含むように蒔いた。各プレートをこすり、上述のようにCV1-EBNA細胞にトランスフェクションしそしてスクリーニングするためのプールされたプラスミドDNAを提供した。続く分割およびスクリーニングに続き、2つの陽性独立コロニーを得た。2つの陽性クローンのcDNA挿入物は、自動DNA配列決定により決定されたように、2922および2777ヌクレオチド長であった。2つの挿入物のコード領域は、P3G2および18A3と名付けられ、それぞれ1953(ヌクレオチド310‐2262)および1959(ヌクレオチド168−2126)ヌクレオチドであった。2つのcDNAクローンは、実質的に類似のタンパク質をコードし、そしておそらく同一遺伝子の異なる対立遺伝子に対応する。
【0122】
P3G2のcDNA配列およびコードされるアミノ酸は、それぞれ配列番号1および配列番号2に示される。18A3のcDNA配列およびコードされるアミノ酸は、それぞれ配列番号3および配列番号4に示される。P3G2アミノ酸配列(配列番号2)は16アミノ酸(アミノ酸1−16)の予測されるシグナルペプチド;442アミノ酸(アミノ酸17−458)の細胞外ドメイン;25アミノ酸(アミノ酸459−483)の膜貫通ドメインおよび、167アミノ酸(アミノ酸484−650)の細胞質ドメインを有する。細胞外ドメインには、4つの免疫グロブリン様ドメインが含まれる。Ig様ドメインIはほぼアミノ酸17−118を含み;Ig様ドメインIIはほぼアミノ酸119−220を含み;Ig様ドメインIIIはほぼアミノ酸221−318を含み;そしてIg様ドメインIVはほぼアミノ酸319−419を含む。重要なことに、本ポリペプチドの細胞質ドメインは4つのITIMモチーフを含み、各々はYxxL/Vのコンセンサス配列を有する。第一のITIMモチーフ対はアミノ酸553−536および562−565に見られ、そして第二の対はアミノ酸614−617および644−647に見られる。18A3のアミノ酸配列は、ほぼ同一で上述の特徴を有する。
【0123】
これらのコードされるポリペプチドの特徴は、I型膜貫通糖タンパク質に一致している。
【0124】
実施例4
P3G2融合タンパク質の調製
以下は、P3G2融合タンパク質を生成するのに用いられる方法を記載し、該タンパク質は、その後、前記タンパク質が結合する細胞株を同定し、そして最終的にUL18とは異なる、正常細胞表面P3G2リガンドを単離するのに用いられた。P3G2の細胞外領域および突然変異タンパク質ヒトFc領域の融合タンパク質(sP3G2:Fc)を、まずP3G2の細胞外領域に隣接するプライマーを用い、P3G2の細胞外領域をコードするcDNAを単離することにより、調製した。該プライマーは、5’および3’末端に挿入されたSal IおよびBgl II制限酵素部位と共に合成し、その結果PCR増幅cDNAが、5’および3’端に、それぞれSal IおよびBgl II制限酵素部位を導入された。プライマーは以下の配列を有した:
【0125】
【化3】

【0126】
PCR反応条件は、上述のようであり、そしてテンプレートは、実施例3に上述されたように単離された全長遺伝子P3G2遺伝子だった。
融合タンパク質、sP3G2:Fcを発現するベクター構築物を、細胞結合研究において使用するために調製するため、IgG1の突然変異タンパク質ヒトFc領域を実施例1に上述されるように、Bgl IIおよびNot I制限酵素を用いプラスミドから切り出した。sP3G2遺伝子上のBgl II部位を用い、sP3G2遺伝子DNAをヒト突然変異タンパク質Fc遺伝子のBgl II部位に連結し、N末端Sal I制限部位およびC末端Not I制限部位を有するsP3G2/Fc融合DNA構築物を形成した。この融合s P3G2:Fc DNA構築物を次いで、pDC409発現ベクターのSal IおよびNot I部位に連結し、409/sP3G2/Fc DNA構築物を形成した。
【0127】
サル細胞株COS-1(ATCC CTL-1650)を用い、融合タンパク質の発現を確認した。6ウェルプレート中のCOS-1細胞(2 x 105細胞/ウェル)を、ウェル当たり約2μgのDNA構築物409/sP3G2/Fcでトランスフェクションした。細胞を5% FBS/DMEM/F12(GIBCOより入手可能)中で培養し、そしてトランスフェクションの2または3日後、細胞をシステイン/メチオニン枯渇RPMI中で1時間飢餓させ、そしてトランスフェクションされた細胞を100μCi/mlの35S-Met/Cysで4時間、代謝的に標識した。付着していない細胞を除去するため、上清をスピンして透明にし、そして破片および上清150μlをRIPA緩衝液100μlおよび50%プロテインA−Sepharose固体支持体ビーズ50μlと4℃で1時間インキュベーションした。非結合成分を除去するため、固体支持体をRIPAで洗浄した後、プロテインA−Sepharose固体支持体に結合した融合タンパク質を、SDS-PAGE還元試料緩衝液30μlを用い、プロテインA−Sepharoseから溶出し、そしてその後100℃で5分熱した。溶出物をその後、14C標識タンパク質分子量マーカーと共に、4−20% SDSポリアクリルアミド勾配ゲル上で電気泳動した。電気泳動後、ゲルを8%酢酸で固定し、そしてAmershamから入手可能な増幅体で室温で20分シグナルを増強した。ゲルを真空下で乾燥させた後、X線フィルムに曝露した。フィルム解析により、120−130 kDaの分子量を有する、期待されたタンパク質が発現していることが確認された。
【0128】
ひとたび融合タンパク質発現細胞が確認されると、実施例1に上述されるように、トランスフェクションされた細胞の大規模培養を増殖させ、融合タンパク質を発現するCOS-1細胞から上清を収集した。実施例3に上述される方法にしたがい、BioCad系およびPerSeptive BiosystemsのPOROS 20Aカラムを用いてP3G2/Fc融合タンパク質を精製した。プールされた溶出タンパク質を、銀染色と共にSDS-PAGEを用い解析し、発現を確認した。
【0129】
実施例5
LIR-P3G2抗体の生成
以下の実施例は、P3G2を細胞上に発現する細胞を同定するためにフローサイトメトリー解析に用いられる、P3G2に対するモノクローナル抗体の生成を記載する。実施例4に記載されるように、COS-1細胞発現およびアフィニティー精製により、精製P3G2/Fc融合タンパク質を調製した。精製タンパク質または全長タンパク質をコードする発現ベクターでトランスフェクションされた細胞は、例えば米国特許第4,411,993号に記載される技術など、慣用技術を用い、P3G2に対するモノクローナル抗体を生成することが可能である。簡潔には、BALB-CマウスをP3G2/Fc 10μgで0、2および6週目に免疫した。一次免疫感作は、Vaxcell, Inc.のTITERMAXアジュバントと共に調製し、そして続く免疫感作は、不完全フロイントアジュバント(IFA)と共に調製した。11週目、PBS中の3−4μgの P3G2で、マウスをIV追加免疫した。IV追加免疫の3日後、脾臓細胞を採取し、そして50% PEG 1500水溶液を用い、Ag8.653骨髄腫融合パートナーと融合させた。ウェル当たり2 x 103細胞のPBS中のP3G2でトランスフェクションしたCOS-1細胞を用い、そしてポリスチレン96ウェルマイクロタイタープレートにプレート被覆抗原として乾燥させ、ELISAによりハイブリドーマ上清をスクリーニングした。次に、陽性上清をFACS解析およびP3G2でトランスフェクションしたCOS-1細胞を用いたRIPにより確認した。ハイブリドーマをクローン化し、そしてその後同一の検定を用いた。モノクローナル培養を拡大し、そして上清をBioRadプロテインAアガロースを用いたアフィニティー・クロマトグラフィーにより生成した。
【0130】
P3G2/Fcに対するモノクローナル抗体を用い、細胞上にP3G2を発現する細胞を同定するための標準的なフローサイトメトリー法を用い、細胞および細胞株をスクリーニングした。フローサイトメトリー解析でスクリーニングされた細胞株および細胞は、CB23、CB39、RAJI、AK778、K299、PS-1、U937、THP-1、ジャーカットおよびHSB2であった。スクリーニングされる各細胞株または細胞試料に関し、該方法は、PBS中の2% FCS(ウシ胎児血清)、5%正常ヤギ血清および5%ウサギ血清でブロッキングされたおよそ100,000の細胞を、FITC結合マウス抗P3G2抗体5μgと共に1時間インキュベーションすることを含んだ。インキュベーション後、試料をFACS緩衝液(PBS中の2% FCS)で2回洗浄した。細胞を、FITCを検出するための蛍光検出フローサイトメトリーを用い、全ての結合タンパク質に関しても解析した。結果により、LIR-P3G2抗体が、B細胞株CB23およびRAJI;単球性細胞株THP-1およびU937;および初代B細胞および初代単球によく結合することが示された。LIR-P3G2の最も高い発現は、CD16に対し明るく染色され、そしてCD14およびCD64に対してはそれより暗く染色される単球上で示された。該抗体はT細胞株に検出可能であるように結合せず、または初代T細胞に結合しない。
【0131】
関連する実験において、上述のように生成されたP3G2抗体を、免疫沈降実験に用いた。免疫沈降解析は、まずPBSで細胞を洗浄し、そして細胞を10 mMホウ酸ナトリウムおよび150 mM NaCl、pH 8.8のビオチン化緩衝液に再懸濁することにより、その後、DMSO中のビオチン−CNHS−エステル(Amershamより購入されたD−ビオチノイル−e−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)の10 mg/ml溶液5μlを細胞に添加することにより、2.5 x 106単球の表面をビオチン化することを含んだ。反応を、細胞1 ml当たり1M塩化アンモニウム10μlで止め、そして細胞をPBSで洗浄した後、細胞を0.5% NP40-PBS 1 mlで溶解し、そして溶解物を遠心分離後に回収した。その後、溶解物150μlに0.5% NP40-PBS 100μlを添加し、そして生じた混合物を抗体2μg/mlと4℃で16時間インキュベーションした。50%プロテインA−Sepharoseスラリー(slurry)50μlを、抗体混合物に添加し、そしてスラリーを4℃で1時間震蕩した。スラリーを遠心分離し、そして生じた沈澱をPBS中の0.5% NP40 0.75 mlで6回洗浄した。プロテインA−Sepharoseに結合したタンパク質を、SDS-PAGE還元試料緩衝液30μlで溶出し、そしてその後100℃で5分熱した。
【0132】
溶出タンパク質を増強化学発光(ECL)タンパク質マーカーと共に4−20%勾配SDS-PAGEを用いて解析した。その後、ウェスタンブロットにおいて、電気泳動試料をニトロセルロース膜上に移した。膜をブロッキング試薬(PBS中の0.1% Tween-20および3%脱脂粉乳)で室温で1時間処理し、そしてその後PBS中の0.1% Tween-20で15分間1回、そして5分間2回洗浄した。洗浄した膜を1:100 HRP−ストレプトアビジン10 mlと30分インキュベーションし、そしてその後、PBS中の0.1% Tween-20で15分間1回、その後5分間4回洗浄した。
【0133】
結合したストレプトアビジンHRPをAmershamより購入し、そして製造者の指示にしたがい使用したECL検出試薬で検出した。現像した膜をX線フィルムに曝露し、そしてその後視覚化した。結果により、CB23細胞およびP3G2でトランスフェクションしたCOS-1細胞からLIR-P3G2が沈降したことが示され、P3G2がこれらの細胞により発現されていることが示された。
【0134】
実施例6
P3G2に結合する細胞および細胞株のスクリーニング
以下は、P3G2に結合する細胞および細胞株を同定するのに用いられるフローサイトメトリー解析を記載する。試験された細胞および細胞株は、CB23、HSB2、MP-1、ジャーカット、初代T細胞、初代B細胞、および初代NK細胞であった。試験される各細胞株または細胞に関し、該方法は、FACS緩衝液(0.2%アジ化物を含むPBS中の2% FCS)で細胞を3回洗浄し、そして各試料(105細胞)をブロッキング緩衝液(PBS中の2% FCS、5% NGSおよび5%ウサギ血清)100μl中で1時間インキュベーションすることを含んだ。各細胞株の4つの試験試料を調製し、各々は、試料に添加されたブロッキング緩衝液100μl中のW6/32(ATCC HB-95)0、2、5、または10μgを有した。W6/32はMHCクラスI重鎖に対する抗体である(抗HLA-A、B、およびC分子)。W6/32溶液の添加後、試料を氷上で1時間インキュベーションし、そしてその後FACS緩衝液200μlで3回洗浄した。その後、ブロッキング緩衝液中のP3G2/Fc 5μgを各試料に添加し、そして氷上で1時間インキュベーションした。P3G2/Fcは細胞上の結合部位に関し、W6/32と競合した。
【0135】
インキュベーション後、試料をFACS緩衝液200μlで3回洗浄し、そしてマウス抗ヒトFc/ビオチンおよびSAPEで45分処理した。この処理により、抗ヒトFc/ビオチンが細胞に結合した任意のsP3G2/Fcにも結合するようになり、そしてSAPEが抗ヒトFc/ビオチンに結合するようになった。SAPEは蛍光化合物であるため、適切な励起および放出条件を用いたSAPEの検出は、細胞に結合したP3G2/Fcを明確に同定する。最後に、処理細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、そしてフローサイトメトリーに供し、タンパク質に結合した細胞を同定した。
【0136】
結果により、W6/32は、試験されたすべての細胞および細胞株への結合に関し、P3G2と競合することが示された。P3G2結合は、W6/32 5μgで完全に遮断され、W6/32およびP3G2がMHCクラスI重鎖上の同一のまたは重なる部位に結合することが示された。
【0137】
実施例7
P3G2結合リガンドを単離するためのHSB2
cDNAライブラリーのスクリーニング
以下の実施例は、Tリンパ芽球白血球細胞株であり、P3G2に結合することが見出された細胞株の1つ、HSB-2由来のcDNAライブラリーをスクリーニングし、そしてP3G2結合リガンドを同定することを記載する。哺乳動物発現ベクターpDC302中のHSB2 cDNAライブラリーを、米国特許第5,516,658号に一般的に、そしてKozloskyら, Oncogene 10:299-306, 1995に具体的に記載されるように、調製した。簡潔には、選別されたHSB-2細胞からmRNAを単離し、そして第一のcDNA鎖をポリA+5μgおよびLife Scienceの逆転写酵素、AMV RTaseを用いて合成した。第二のcDNA鎖は、BRLのDNAポリメラーゼIを1.5U/μlの濃度で用い、合成した。Haymerleら, Nucl. Acids Res. 14:8615, 1986に記載されるような標準的技術を用い、cDNAをpDC302ベクターの適切な部位に連結した。
【0138】
大腸菌株DH5α細胞をpDC302中のcDNAライブラリーで形質転換した。ライブラリーを増幅した後、力価チェックにより、全部で157,200クローンがあることが示された。形質転換された細胞を15の異なるプレートに蒔いた。プール当たりおよそ2,000クローンからなるプールより、プラスミドDNAを単離した。単離DNAをDEAE−デキストランを用いて、CV1-EBNA細胞(ATCC CRL 10478)にトランスフェクションした後、クロロキン処理を行った。CV1-EBNA細胞を完全培地(10%(v/v)ウシ胎児血清、50U/mlペニシリン、50U/mlストレプトマイシン、および2mM L−グルタミンを含むダルベッコの修飾イーグル培地)中で維持し、そして単一ウェルチャンバースライド中におよそ2 x 105細胞/ウェルの密度で蒔いた。スライドをPBS中のヒトフィブロネクチン10μg/mlの溶液1 mlで30分、前処理した後、PBSで1回洗浄した。層状に増殖する付着細胞から培地を除去し、そして66.6μM硫酸クロロキンを含む完全培地1.5 mlと置き換えた。DNA溶液(クロロキンを含む完全培地中の2μg DNA、0.5 mg/ml DEAE−デキストラン)約0.2 mlを細胞に添加し、そして混合物を37℃で約5時間インキュベーションした。インキュベーション後、培地を除去し、そして10% DMSOを含む完全培地を添加することにより、2.5分間細胞にショックを与えた。ショックを与えた後、該完全培地を新鮮な完全培地で置き換え、そして細胞を培養中で3日増殖させ、挿入DNA配列の一過性発現を可能にした。これらの条件により、生存CV1-EBNA細胞において30%から80%のトランスフェクション頻度が得られた。
【0139】
各スライドを、結合緩衝液(25 mg/mlウシ血清アルブミン、2 mg/mlアジ化ナトリウム、20 mM Hepes、pH 7.2、および50 mg/ml脱脂粉乳を含むRPMI 1640)中の0.45μg/mlの濃度のP3G2:Fc 1 mlと、室温で1時間インキュベーションした。スライドをインキュベーションした後、結合緩衝液で洗浄し、そしてその後Fc特異的125Iマウス抗ヒトIgG(Goodwinら, Cell 73:447-456, 1993を参照されたい)とインキュベーションした。この後、緩衝液で2回目の洗浄を行い、その後スライドを、2.5%グルタルアルデヒド/PBS溶液で固定し、PBS溶液で洗浄し、そして空気乾燥させた。スライドをKodak GTNB-2写真感光乳剤(水で6倍希釈)に浸した。空気乾燥の後、スライドを暗箱に入れ、そして冷蔵した。3日後、スライドをKodak D19現像剤で現像し、水でリンスし、そしてAgfa G433C固定剤で固定した。固定スライドを25−40倍の倍率で顕微鏡下で個々に調べた。sP3G2:Fcの結合を示す陽性プールは、フィルムのバックグラウンドに対し、オートラジオグラフィーの銀粒子が存在することにより視覚化された。2つの陽性プールの力価を決定し、そしてプレートがおよそ各200クローンを含むように蒔いた。各プレートをこすり、上述のようにCV1-EBNA細胞にトランスフェクションしそしてスクリーニングするためのプールされたプラスミドDNAを提供した。続く分割およびスクリーニングに続き、各プールに対し1つの陽性独立コロニーを得た。陽性クローンのcDNA挿入物はクラスIのMHC抗原であるHLA-B44およびHLA-A2と同定された。
【0140】
実施例8:ノザンブロット分析
実施例4に記載された実験により、多くの細胞系列においてLIR−P3G2の表面発現が検出されたことから、従来法であるノザンブロット分析操作を用いて異なる組織型におけるLIR−P3G2およびLIR−P3G2に関連するmRNAの発現を研究した。ノザンブロット分析のために選択した細胞系列は、RAJI、PBT、PBM、YT、HEP3B、HELA、KB、KG−1、IMTLH、HPT、HFF、THP−1およびU937であった。以下に、ノザンブロット分析およびその結果について記載する。
【0141】
P3G2の細胞外領域をコードするcDNAを、P3G2の細胞外領域に隣接し、以下の配列を有すプライマーを用いて単離した:
【0142】
【化4】

【0143】
PCRの鋳型は上記実施例3で単離されたP3G2遺伝子の全長であった。PCR反応の条件は以下の通りであった:95℃5分を1サイクル;95℃45秒、64℃45秒、72℃45秒を30サイクル;そして72℃5分を1サイクル。PCR産物をInvitrogenから購入したPCRIIベクターに、販売元の指示に従ってクローン化した。P3G2の細胞外領域をコードする単離されたDNAを使用し、Ambion MAXSCRIPTキットを用いて製造元の指示に従ってリボプローブを作製した。
【0144】
種々のヒト細胞系列からのポリA選択RNAもしくは全RNAを含むノザンブロットは、RNA試料を1.1%アガロース−ホルムアルデヒドゲルで分離、製造元(Amersham社)の推奨に従ってHybond−N上にブロットし、そしてメチレンブルーで染色することでRNA濃度をモニターすることによって調製された。ブロットは1μgのポリA+RNAもしくは10μgの全RNAを用いて調製され、各ブロットは、前述のようにして調製された10cpm/mLのRNA細胞外P3G2リボプローブで63℃16時間反応させた。反応させたブロットに対して、2×SSC、63℃で30分間の洗浄を2回;1×SSC、63℃で30分間の洗浄を2回;0.1×SSC、63℃で5分間の洗浄を2回行った。
【0145】
反応させたブロットのオートラジオグラフを撮った。撮られたブロットから、P3G2RNAがRAJI、CB23およびU937で発現する3.5kbのRNAに;THP−1で発現するおよそ1.5kbのRNAに;そしてPBMで発現する1.5kbから3.5kbの複数のRNAにハイブリダイズすることが示された。これらの結果は、構造上P3G2と同様の細胞外ドメインを有する、異なる遺伝子群が、末梢血単球で発現しうることを示唆している。
【0146】
実施例9:LIRポリペプチドを単離するPBM cDNAライブラリーの探索
以下に、P3G2ポリペプチドに関連するポリペプチドを単離するための、従来的なサザンブロット法を用いた末梢血単球cDNAライブラリースクリーニング工程について記載する。末梢血単球のcDNAライブラリーは、実施例7に記載された操作と実質的に同じ操作を用いて調製された。
【0147】
プールあたり10,000クローンを有すcDNAプールで、当初15プールからのDNAを、BglII制限酵素で消化し、1%アガロースゲル上で100V、2時間電気泳動した。電気泳動したDNAを0.55%TBEバッファー中でHybondメンブレン上に電気ブロットすることによって、サザンブロットを調製した。ブロットされたDNAを、0.5M NaOH、0.6M NaCl溶液中で5分間変性させ、それから0.5M TRIS、1.5M NaCl(pH7.8)中で5分間中和した。メンブレンをSTRATALINKER UVクロスリンカーに20秒間置き、ブロットされたDNAをメンブレンに固定させた。メンブレンおよび結合したDNAを、10×Denhart’s溶液、0.05M TRIS(pH7.5)、0.9M NaCl、0.1%ピロリン酸ナトリウム、1% SDSおよび200μg/mL サケ精子DNAからなるプレハイブリダイゼーション溶液中に、63℃で2時間置き、それからシグナルペプチド並びにSalIおよびBglII制限部位を含み、LIR−P3G2細胞外領域をコードするDNAの32P標識されたプローブを用い、結合したDNAを反応させた。ハイブリダイゼーション溶液中のDNAプローブの濃度は、ハイブリダイゼーション溶液1mLあたり10CPMであった。反応させたブロットは、63℃で16時間インキュベートした後、2×SSC、63℃で1時間(途中1回溶液交換する);1×SSC、63℃で1時間(途中1回溶液交換する);そして0.1×SSC、68℃で45分間(途中1回溶液交換する)洗浄した。ブロットを乾燥させた後、オートラジオグラフを撮り、P3G2細胞外DNAプローブにハイブリダイズしたDNAバンドを可視化した。
【0148】
オートラジオグラフィーの結果、すべてのプールにプローブとハイブリダイズするDNAが含まれることが示された。7本の陽性DNAバンドを示した1つのプールを選択し、次いでプールあたり3,000クローンを有す10プールにさらに分割した。上記10プールに対して続いて行われたサザンブロット分析により、陽性にハイブリダイズするDNA配列を9つ示すプールが1つ得られた。標準的なコロニーハイブリダイゼーション技術により、ハイブリダイズする単一のクローンが単離された。
【0149】
フィルター上に2つに複製された細菌のコロニーを、500,000cpm/mLの濃度の上記P3G2細胞外プローブと63℃で16時間反応させた。ハイブリダイズさせたフィルターを、2×SSC、63℃で30分間;1×SSC、63℃で30分間;そして最後に0.1×SSC、68℃で15分間洗浄した。
【0150】
オートラジオグラフィーにより、複製したフィルター上で48クローンがハイブリダイズするものとして可視化され、これらのクローンから標準的なDNA調製法を用いて得られたDNAをBglIIで消化した。消化物のサザンブロットを得て、上記P3G2細胞外プローブに反応させた。7つの異なる大きさのクローン化されたインサートが、P3G2プローブに陽性にハイブリダイズするものとして同定された。各インサートのヌクレオチド配列は、自動シークエンス技術を用いて得られた。8つの異なるクローン化されたインサートの中で、1つはLIR−P3G2と同一の配列であった。その他は、新規のLIRポリペプチドファミリーのポリペプチドをコードするDNAとして同定された。単離されたLIRファミリーメンバーのヌクレオチド配列(cDNA)は、SEQ ID NO:7(pbm25と命名)、SEQ ID NO:9(pbm8と命名)、SEQ ID NO:11(pbm36−2と命名)、SEQ ID NO:13(pbm36−4と命名)、SEQ ID NO:15(pbmhhと命名)、SEQ ID NO:17(pbm2と命名)、およびSEQ ID NO:19(pbm17と命名)に示されている。それらによりコードされるアミノ酸配列は、SEQ ID NO:8(pbm25と命名)、SEQ ID NO:10(pbm8と命名)、SEQ ID NO:12(pbm36−2と命名)、SEQ ID NO:14(pbm36−4と命名)、SEQ ID NO:16(pbmhhと命名)、SEQ ID NO:18(pbm2と命名)、およびSEQ ID NO:20(pbm17と命名)に示されている。
【0151】
実施例10:LIR cDNA配列に対するヒト樹状細胞
cDNAライブラリーのスクリーニング
以下に、λZapをベクターとするヒト骨髄由来樹状細胞cDNAライブラリーを、放射線標識されたHh0779 cDNA断片でスクリーニングすることによる、LIRファミリーメンバーの単離および同定について記載する。Hh0779 cDNA断片は、以前ヒト樹状細胞cDNAライブラリーから単離されたHh0779クローンの0.7kbインサートであり、酵素PstIおよびSpeIによる制限消化によって得られる。Hh0779 cDNA断片を、Ambionから購入したDECA primeII DNAラベリングキットを用いて[α−32P]dCTPでラベルした。
【0152】
λZap cDNAライブラリーを、プレートあたり20,000pfuの密度でまき、最初のスクリーニングに際し計480,000プラークを供した。λZap cDNAを、Amershamから購入したHybondメンブレン上に2つに複製してブロットし、それから0.5N NaOHおよび0.5M NaCl溶液で5分間変性させた。メンブレンは、0.5M Tris(pH7.8)および1.5M NaClの溶液で5分間中和させ、それから2×SSCで3分間洗浄した。cDNAは、自動設定されたSTRATALINKER UVクロスリンカーを用いてHybondメンブレンに固定された。
【0153】
メンブレンは、10×Denhardt’s、0.05M Tris(pH7.5)、0.9M NaCl、0.1% ピロリン酸ナトリウム、1% SDSおよび4mg/mL 加熱変性済みサケ精子DNAを含むハイブリダイゼーションバッファー中で、65℃で2.25時間プレハイブリダイズさせた。プレハイブリダイゼーションの後、放射線標識されたHh0779 cDNAを、終濃度0.54×10cpm/mLとなるよう、ハイブリダイゼーションバッファーに添加した。ハイブリダイゼーション24時間後、メンブレンを0.25×SSC、0.25% SDSで65℃、1.5時間洗浄した。ブロットはそれからオートラジオグラフ用フィルムに感光させ、陽性クローンを可視化した。
【0154】
複製したメンブレン両方にハイブリダイゼーションシグナルを示した計146の陽性クローンが同定、単離され、次の使用のために保存された。146クローンの内、35個を2次スクリーニングのために選択した。選択されたクローンを低密度にまき、上述のハイブリダイゼーション条件を用いたHh0779プローブへのハイブリダイゼーション後に単独コロニーを単離した。それから、Stratageneから購入したVCSM13ヘルパーファージを用いて、λZapクローンからプラスミドを単離した。プラスミドDNAを制限酵素消化およびPCRにより分析し、24個の最も大きなインサートを持つクローンを選択し塩基配列を決定した。24個の配列決定されたクローンのうち、6個はLIR−P3G2を、3個はLIR−pbm2を、8個はLIR−pbm36−4およびLIR−pbm36−2を、1個はLIR−pbm8を、2個はLIR−pbmhhを、そして1個は新規の配列(LIR−pbmnewと命名)をコードしていた。3つのクローンが、LIRポリペプチドファミリーとは関連性のないアミノ酸配列をコードしていると同定された。
【0155】
実施例11:LIR−P3G2およびLIR−pbm8のチロシンホスファターゼSHP−1との会合
以下に、LIR−P3G2およびLIR−pbm8がSHP−1と会合することを証明するために行われた試験について記載する。ヒト単球を10% FBS加RPMI培地で培養し、遠心により濃縮し、最終的に2つの液に分注した。一方を50mM/mLの過バナジウム酸ナトリウム溶液で5分間刺激した。もう一方の分注液は刺激しなかった。刺激後、各分注液の細胞を、1% NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、50mM Tris(pH8)、2mM EDTA、0.5mM オルトバナジウム酸ナトリウム、5mMフッ化ナトリウム、25mM β−グリセロールリン酸塩、およびプロテアーゼ阻害剤を含むRIPAバッファー中で直ちに溶解させた。24×10細胞相当の試料を、Transduction Laboratoriesから購入した5μg/mLの抗SHP−1抗体、もしくは5μg/mLのアイソタイプの適合した抗体コントロール(抗Flag−M5 IgG1)とともに4℃で2時間インキュベートした。得られた免疫複合体をプロテインG−アガロース(Boehringer Mannheim)とともにインキュベートすることで沈殿させ、洗浄し、40mLの2×SDS−PAGEサンプルバッファーに再懸濁した。各々の免疫沈降物20μlを電気泳動ゲルにのせ、還元条件下で電気泳動し、Amershamから購入したニトロセルロースメンブレンに転移させた。ウェスタンブロットは、抗LIR−P3G2モノクローナル抗体血清および抗LIR−pbm8モノクローナル抗体抗血清に反応させ、免疫沈降物を昂進された化学ルミネセンス(NEN)により検出した。
【0156】
およそ120kDa(LIR−P3G2に相当)の分子量を持つ蛋白質が、SHP−1免疫沈降物中に容易に検出された、しかし、抗Flag−M5抗体コントロールで作製した免疫沈降物からは検出されなかった。同様に、LIR−pbm8に相当する、90−100kDaの蛋白質がSHP−1免疫沈降物中に検出されたが、コントロール免疫沈降物からは検出されなかった。LIR−P3G2のバンドもLIR−pbm8のバンドも、過バナジウム酸ナトリウム処理をしなかったものでは見られなかった。これにより、LIR−P3G2のチロシンリン酸化が、LIR−P3G2とSHP−1の会合に必須であり、LIR−pbm8のリン酸化が、LIR−pbm8とSHP−1の会合に必須であることが確認された。
【0157】
LIR結合にあたってFcγRIを介したチロシンリン酸化現象の阻害を研究するため、末梢血単球を、多くの抗体(α−LIR−1+α−LIR−2、α−CD11c、αCD14、αCD64、α−CD64+α−LIR−1、α−CD64+α−LIR−2、α−CD64+α−LIR−1+α−LIR−2、α−CD64+α−CD11c、α−CD64+α−CD14)のF(ab)型10μg/mLの存在下、非存在下でインキュベートした。続いてこれをポリクローナルF(ab)ヤギ抗マウス30μg/mLで架橋した。細胞溶解物を、抗リン酸化チロシン−アガロースコンジュゲートで一晩、免疫沈降し、電気泳動し、ニトロセルロースに転移させた。ウェスタンブロット分析は、PY−20および4G10のHRP結合抗リン酸化チロシンmAbを用いて行われた。このデータから、LIR−P3G2およびLIR−pbm8結合にあたり、FcγRIを介したチロシンリン酸化現象が特異的に阻害されることが示された。
【0158】
実施例12:LIRポリペプチドと免疫反応性のある抗体の作製
以下に、LIRファミリーメンバーと免疫反応性のあるモノクローナル抗体の作製について記載する。精製したLIRポリペプチドを、COS−1細胞発現および実施例4に記載したアフィニティー精製によって調製する。精製蛋白質もしくは蛋白質全長をコードする発現ベクターでトランスフェクトされた細胞は、従来の技術によって(例えば、米国特許第4,411,993号に記載された技術)、LIRポリペプチドに対するモノクローナル抗体を作製させることができる。簡単に記すと、BALB−Cマウスを10μgのLIRポリペプチドで0、2および6週目に免疫する。1次免疫は、TITERMAXアジュバントで、以降の免疫は不完全なFreundアジュバント(IFA)で調製する。11週目において、マウスは4回目のブーストを3−4μgのLIRポリペプチド(PBS溶液)でかけられる。4回目のブーストの3日後に脾細胞を回収し、50%PEG1500水溶液を用いて融合パートナーAg8.653ミエローマと融合させる。ハイブリドーマ上清を、PBSに懸濁したLIRでトランスフェクトされた細胞でウェルあたり7×10個をポリスチレン96穴マイクロタイタープレートに乾燥させてプレートコート抗原として用いた、ELISAによるスクリーニングを行う。陽性上清を、次いでLIRトランスフェクト細胞を用いたFACS分析およびRIPによって確認する。ハイブリドーマをクローン化し、同様にスクリーニングしていく。モノクローナル培養物を広げ、アフィニティークロマトグラフィーによって上清を精製する。
【0159】
実施例13:リンパ細胞および骨髄細胞上でのLIR−P3G2およびLIR−pbm8の発現に関するフローサイトメトリー分析
リンパ球集団におけるLIR−P3G2およびLIR−pbm8の異なる発現および分布を比較するため、新しく単離された末梢血単核細胞(PBMC)を、ビオチン標識された抗LIR−P3G2もしくは抗LIR−pbm8 mAbいずれかの存在下で、PE標識された抗CD3、抗CD19、もしくは抗CD56mAbで染色した。それから、染色された細胞を、APC標識されたストレプトアビジンで処理した。5×10の事象を表す密度プロットを、FACSキャリバー(Beckton Dickinson)で収集した。その結果から、LIR−P3G2がCD19B細胞の80−95%、CD3T細胞の5−15%、並びにCD56NK細胞の10−30%で発現していることが示された。同じ12名のドナーから試験に供された細胞上で、LIR−pbm8発現はCD19B細胞、CD3T細胞およびCD56NK細胞で検出されなかった。
【0160】
循環単球および樹状細胞(DC)を高率に含むカウンターカレントエルトリエイト画分(countercurrent elutriated fraction)を得た。単球は、表現型サブセットCD14CD16およびCD14CD16に従って特徴付けられる。末梢血DCは、表現型CD33CD14CD16HLA−DRで特徴付けられる。単球サブセットおよびDCを、FITC標識された抗CD14、PE標識された抗CD3、perCp標識された抗HLA−DR、並びに、ビオチン標識された抗CD16、抗LIR−P3G2もしくは抗LIR−pbm8のいずれかで染色した。それから染色した細胞をAPC標識されたストレプトアビジンで処理した。単球サブセットは共に、同レベルのLIR−P3G2およびLIR−pbm8を共発現しており、CD14CD16サブセットにおいてLIR−P3G2およびLIR−pbm8の発現が最も高く検出される。血液DCは、単球に比べLIR−P3G2およびLIR−pbm8の発現レベルが低い。これらの実験の結果は、LIR−P3G2がリンパ球、単球およびDC上で発現しており、LIR−pbm8が単球およびDC上で発現していることを示す。
【0161】
実施例14:HLAクラスIアリルに結合するLIR−P3G2およびLIR−pbm8のスクリーニング
以下に、HLAクラスIアリルに結合するLIR−P3G2およびLIR−pbm8をスクリーニングするのに使われたフローサイトメトリー分析について記載する。一連のHLAクラスIアリルをトランスフェクトされた、もしくはされていない、Bリンパ芽球細胞クラスI欠損721.221細胞系列を、染色に用いた。LIR−P3G2/FcおよびLIR−pbm8/Fc融合蛋白質を結合研究に使用し、共に、試験した11のHLA−A、HLA−B、およびHLA−Cアリルの7つに検出可能なほど結合した。LIR−P3G2/FcおよびLIR−pbm8/Fcは、概して、HLA−AもしくはHLA−CアリルよりもHLA−Bアリルに強い親和性で結合する。MHCクラスI重鎖に対する抗体(抗HLA−A、BおよびC分子)である、W6/32(ATCC HB−95)は、LIR−P3G2/FcおよびLIR−pbm8/Fcの、全てのクラスIトランスフェクタントへの結合を阻害する。最終的に、LIR−P3G2およびLIR−pbm8の結合は、MHCクラスI発現レベルには相関しない。以上のことから、LIR−P3G2およびLIR−pbm8は、いくつかの抗HLA−A、−Bおよび−Cアリルに結合し、同様の広範囲なMHCクラスI特異性を認識する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LIRポリペプチドをコードする単離されたDNAであって、上記LIRポリペプチドが:
a)SEQ ID NO:2のアミノ酸5から50;および
b)a)の配列に少なくとも77%同一なアミノ酸配列
からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含む、前記単離されたDNA。
【請求項2】
LIRポリペプチドをコードするDNAであって、前記LIRポリペプチドがアミノ酸配列:
Leu Xaa Leu Ser Xaa Xaa Pro Arg Thr Xaa Xaa Gln Xaa Gly Xaa Xaa Pro Xaa Pro Thr Leu Trp Ala Glu Pro Xaa Ser Phe Ile Xaa Xaa70 Ser Asp Pro Lys Leu Xaa Leu Val Xaa Thr Gly
(式中、XaaはGlyもしくはArg;XaaはLeuもしくはVal;XaaはGlyもしくはAsp;XaaはHis、ArgもしくはCys;XaaはValもしくはMet;XaaはAlaもしくはThr;XaaはHis、ProもしくはThr;XaaはLeu、IleもしくはPhe;XaaはGly、AspもしくはAla;XaaはThr、Ile、SerもしくはAla;XaaはGlyもしくはVal;XaaはMetもしくはAla;そしてXaa70は70アミノ酸の配列)
を含むものである、前記DNA。
【請求項3】
LIRポリペプチドをコードするDNAであって、前記LIRポリペプチドが:
a)SEQ ID NO:1のヌクレオチド310から1684から実質的に構成されるプローブと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるDNA;および
b)a)のプローブに相補的なDNAに高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるDNA
ここにおいて、前記高ストリンジェントな条件とは少なくとも63℃のハイブリダイゼーション温度を含む条件である、
からなるグループから選択されるDNAにコードされる、前記DNA。
【請求項4】
LIRポリペプチドをコードする単離されたDNAであって、前記LIRポリペプチドが:
a)SEQ ID NO:2;
b)SEQ ID NO:4;
c)SEQ ID NO:8;
d)SEQ ID NO:10;
e)SEQ ID NO:12;
f)SEQ ID NO:14;
g)SEQ ID NO:16;
h)SEQ ID NO:18;
i)SEQ ID NO:20;および
j)SEQ ID NO:22;
からなるグループから選択されるアミノ酸配列に少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、前記単離されたDNA。
【請求項5】
LIRポリペプチドが:
a)SEQ ID NO:2;
b)SEQ ID NO:4;
c)SEQ ID NO:8;
d)SEQ ID NO:10;
e)SEQ ID NO:12;
f)SEQ ID NO:14;
g)SEQ ID NO:16;
h)SEQ ID NO:18;
i)SEQ ID NO:20;および
j)SEQ ID NO:22;
からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の単離されたDNA。
【請求項6】
可溶性LIRポリペプチドをコードする単離されたDNAで、上記可溶性LIRポリペプチドが:
a)SEQ ID NO:2のアミノ酸xから458(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:4のアミノ酸xから459(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:8のアミノ酸xから439(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:10のアミノ酸xから458(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:12のアミノ酸xから241(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:14のアミノ酸xから461(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:16のアミノ酸xから449(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:18のアミノ酸xから259(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:20のアミノ酸xから443(xはアミノ酸1もしくは17);そして
SEQ ID NO:22のアミノ酸x10から456(x10はアミノ酸1もしくは17)、
からなるグループから選択される配列を含むLIRファミリーメンバーの細胞外ドメイン
b)可溶性LIRポリペプチドがMHC分子に結合する、a)のLIR細胞外ドメインのいずれかの断片、
からなるグループから選択される配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、前記単離されたDNA。
【請求項7】
可溶性LIRポリペプチドが:
a)SEQ ID NO:2のアミノ酸xから458(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:4のアミノ酸xから459(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:8のアミノ酸xから439(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:10のアミノ酸xから458(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:12のアミノ酸xから241(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:14のアミノ酸xから461(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:16のアミノ酸xから449(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:18のアミノ酸xから259(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:20のアミノ酸xから443(xはアミノ酸1もしくは17);そして
SEQ ID NO:22のアミノ酸x10から456(x10はアミノ酸1もしくは17)
からなるグループから選択される配列を含むLIRファミリーメンバーの細胞外ドメイン
b)a)のLIR細胞外ドメインのいずれかの断片
からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のDNA。
【請求項8】
a)SEQ ID NO:2のアミノ酸5から50;および
b)a)の配列に少なくとも77%同一なアミノ酸配列
からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含むLIRポリペプチド。
【請求項9】
アミノ酸配列:
Leu Xaa Leu Ser Xaa Xaa Pro Arg Thr Xaa Xaa Gln Xaa Gly Xaa Xaa Pro Xaa Pro Thr Leu Trp Ala Glu Pro Xaa Ser Phe Ile Xaa Xaa70 Ser Asp Pro Lys Leu Xaa Leu Val Xaa Thr Gly
(式中、XaaはGlyもしくはArg;XaaはLeuもしくはVal;XaaはGlyもしくはAsp;XaaはHis、ArgもしくはCys;XaaはValもしくはMet;XaaはAlaもしくはThr;XaaはHis、ProもしくはThr;XaaはLeu、IleもしくはPhe;XaaはGly、AspもしくはAla;XaaはThr、Ile、SerもしくはAla;XaaはGlyもしくはVal;XaaはMetもしくはAla;そしてXaa70は70アミノ酸の配列)
を含む、LIRポリペプチド。
【請求項10】
a)SEQ ID NO:1のヌクレオチド310から1684から実質的に構成されるプローブと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるDNA;および
b)a)のプローブに相補的なDNAに高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるDNA
ここにおいて、高ストリンジェントな条件とは、少なくとも63℃のハイブリダイゼーション温度を含む条件である
からなるグループから選択されるDNAにコードされる、単離されたポリペプチド。
【請求項11】
a)LIRファミリーメンバーの細胞外ドメインで
SEQ ID NO:2のアミノ酸xから458(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:4のアミノ酸xから458(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:8のアミノ酸xから439(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:10のアミノ酸xから458(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:12のアミノ酸xから242(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:14のアミノ酸xから461(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:16のアミノ酸xから449(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:18のアミノ酸xから259(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:20のアミノ酸xから443(xはアミノ酸1もしくは17);そして
SEQ ID NO:22のアミノ酸x10から456(x10はアミノ酸1もしくは17)
からなるグループから選択される配列を含む、前記細胞外ドメイン
b)a)のLIR細胞外ドメインのいずれかの断片で、リガンドに結合しうる断片
からなるグループから選択される配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、可溶性LIRポリペプチド。
【請求項12】
a)LIRファミリーメンバーの細胞外ドメインで
SEQ ID NO:2のアミノ酸xから458(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:4のアミノ酸xから458(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:8のアミノ酸xから439(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:10のアミノ酸xから458(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:12のアミノ酸xから242(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:14のアミノ酸xから461(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:16のアミノ酸xから449(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:18のアミノ酸xから259(xはアミノ酸1もしくは17);
SEQ ID NO:20のアミノ酸xから443(xはアミノ酸1もしくは17);そして
SEQ ID NO:22のアミノ酸x10から456(x10はアミノ酸1もしくは17)
からなるグループから選択される配列を含む、前記細胞外ドメイン
b)a)のヒトP3G2細胞外ドメインのいずれかの断片
からなるグループから選択されるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の可溶性ポリペプチド。
【請求項13】
a)SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6からなるグループから選択されるDNAに高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるDNA、ここにおいて、高ストリンジェントな条件とは少なくとも68℃でのハイブリダイゼーション温度を含む条件である:
からなるグループから選択されるDNAにコードされる単離されたポリペプチド。
【請求項14】
SEQ ID NO:2のアミノ酸17から458およびIgのFc領域を含む、融合蛋白質。
【請求項15】
SEQ ID NO:2のアミノ酸17から458をコードするDNAおよびIgのFc領域をコードするDNAを含む、融合DNA構築物。
【請求項16】
請求項1に記載のDNAを含む組換え発現ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞を、LIRポリペプチドの発現を促進する条件下で培養し、ポリペプチドを回収することを含む、LIRポリペプチドを調製する方法。
【請求項18】
適当な希釈担体および請求項8に記載のポリペプチドを含む、組成物。
【請求項19】
請求項16に記載の発現ベクターで形質転換もしくはトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項20】
請求項8に記載のポリペプチドに免疫反応性の抗体。

【公開番号】特開2008−131944(P2008−131944A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321166(P2007−321166)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【分割の表示】特願平10−546353の分割
【原出願日】平成10年4月23日(1998.4.23)
【出願人】(591123609)イミュネックス・コーポレーション (24)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNEX CORPORATION
【Fターム(参考)】