説明

白金又は白金合金担持触媒の製造方法

【課題】 微細で粒子サイズが揃った白金又は白金合金粒子を均一かつ高分散で担体上に担持させることができる、安全性及び環境面で問題を生じることのない燃料電池触媒に適した白金又は白金合金担持触媒の製造方法を提供すること。
【解決手段】 ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸及びマレイン酸よりなる群から選ばれる有機カルボン酸と白金との塩又は錯体、ならびに場合によりさらに、該有機カルボン酸とパラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、金、銀、鉄、コバルト及びニッケルよりなる群から選ばれる金属との塩又は錯体を含有し、そして溶液中の白金の量が全金属量の20モル%以上であり且つ遊離の有機カルボン酸の濃度が100g/L以下である溶液を触媒担体に含浸させた後、還元処理及び適宜加熱処理することを特徴とする白金又は白金合金担持触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用触媒電極として適した白金又は白金合金担持触媒の製造方法に関し、さらに詳しくは、白金又は白金合金粒子を均一かつ高分散で担持した白金又は白金合金担持触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は小型で高い電流密度を取り出せることから、自動車用電源、家庭用分散型電源、携帯用電源としての利用が期待されている。
【0003】
この固体高分子型燃料電池にはPtを主とした金属触媒が用いられており、電極触媒の活性を高めることが望まれている。触媒の活性は金属触媒粒子を微細化して担体上に均一に分散させることにより高めることができる。
【0004】
白金系触媒の担持方法としては、従来から多数の方法が知られており、例えば、特許文献1には、塩化白金酸水溶液に亜硫酸ナトリウムを溶解させ、過酸化水素水溶液を滴下混合した後、水酸化ナトリウムによりコロイド溶液として、カーボン担体に担持し乾燥して触媒を作製する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、塩化白金酸のエタノール溶液をカーボン担体に含浸させた後、水素ガス雰囲気中にて180℃の温度で還元し、得られる白金担持成形体に塩化ルテニウムのエタノール溶液を含浸させた後、水素ガス雰囲気中にて180℃で還元して複合触媒成形体を得る方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、燃料電池用の白金-クロム-鉄合金触媒をカーボン担体上に担持する方法として、塩化白金酸水溶液にカーボン担体を分散させ、ヒドラジンを添加して還元を行い、得られる白金担持触媒を純水中に分散させ、別に、酢酸クロム及び硝酸第一鉄の水溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えて鉄とクロムの均質混合液を調製し、この混合液を白金担持触媒分散液に加えて水酸化ナトリウムを滴下しクロム及び鉄を水酸化物として析出させ、窒素雰囲気中にて800〜1000℃の温度で熱処理し、担持触媒を製造する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献に記載の燃料電池触媒の担持に使用される担持溶液は、還元又は高温での熱処理による合金化処理の際に触媒が凝集することがあり、必ずしも満足できるものではない。
【0008】
また、塩化白金酸などの無機化合物原料をカーボン担体に担持させ、雰囲気ガス下で熱処理する方法では、塩素、塩化水素、窒素酸化物ガスが発生し、人体への安全面での影響や環境面への影響が問題となる。
【0009】
さらに、無機原料化合物を使用する場合、還元によって発生するガスを処理するためのガス処理施設を製造設備に備える必要があり、設備費の増大を引き起こすという問題もある。
【特許文献1】特開平11−4595号公報
【特許文献2】特開平9−153366号公報
【特許文献3】特開平6−29028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主たる目的は、微細で粒子サイズが揃った白金又は白金合金粒子を均一かつ高分散で担体上に担持させることができる、安全性及び環境面で問題を生じることのない燃料電池触媒に適した白金又は白金合金担持触媒の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、種々検討を行った結果、今回、白金及び合金化のためのその他の金属を或る種の特定の有機カルボン酸の塩又は錯体の溶液の形態で触媒担体に含浸させることにより、上記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
かくして、本発明は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸及びマレイン酸よりなる群から選ばれる有機カルボン酸と白金との塩又は錯体、ならびに場合によりさらに、該有機カルボン酸とパラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、金、銀、鉄、コバルト及びニッケルよりなる群から選ばれる金属との塩又は錯体を含有し、そして溶液中の白金の量が全金属量の20モル%以上であり且つ遊離の有機カルボン酸の濃度が100g/L以下である溶液を触媒担体に含浸させた後、還元処理及び適宜加熱処理することを特徴とする白金又は白金合金担持触媒の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、白金又は白金合金微粒子が担体上に均一かつ高分散で担持された触媒を容易に製造することができる。得られる白金又は白金合金微粒子が例えば導電性カーボン粉末上に担持された燃料電池用触媒は、従来の白金担持触媒よりも高分散に白金又は白金合金が担持されており、酸素還元活性が高く、しかも容易に合金化することができるため、高い一酸化炭素耐性を有しており、固体高分子型燃料電池に用いた場合その発電効率を顕著に向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明で使用する白金錯体及び合金化用金属錯体は金属に還元分解するときに二酸化炭素と水しか発生せず、したがって、本発明の製造方法は、塩素ガス、塩化水素ガス、NOxなどが全く発生せず、極めて安全で環境負荷もなく、工業的に触媒の量産が可能であり、従来の製造方法と比較して、触媒の製造設備コストを大幅に削減することができる。
【0015】
以下、本発明の製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0016】
本発明の方法に従い、白金を担体上に担持するのに使用されるギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸及びマレイン酸よりなる群から選ばれる有機カルボン酸と白金との塩又は錯体(以下、まとめて「白金錯体」という)は、少なくともその一部のものは既知であり、例えば、Inorganica Chimica Acta 357(2004)853−858、Chemische Berichte(1966)99(1)3408−3418などの文献に記載の方法により容易に入手することができる。本発明においては、白金錯体として、特にシュウ酸白金、マロン酸白金、マレイン酸白金が好ましく、中でも、シュウ酸白金が好適である。
【0017】
また、白金との合金化のために使用されるギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸及びマレイン酸よりなる群から選ばれる有機カルボン酸とパラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、金、銀、鉄、コバルト及びニッケルよりなる群から選ばれる金属との塩又は錯体(以下、まとめて「合金化用金属錯体」という)もまた、少なくともその一部のものは既知であり、市販もされており、さらに、上記文献に記載の方法に準じて製造することもできる。合金化において、特に有利に使用することのできる金属種としては、ルテニウム、コバルト、パラジウム、イリジウムが挙げられ、中でも、ルテニウ
ム、コバルトが好適である。これらの合金化用金属錯体はそれぞれ単独で又は2種もしくはそれ以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
上記白金錯体及び合金化用金属錯体は、溶液の状態で担体に含浸させることができる(以下、この溶液を「錯体溶液」という)。これら錯体を溶解させることができる溶媒としては、通常、脱イオン水が好適であるが、該錯体が水に溶けにくいような場合には、補助溶媒として、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸又はマレイン酸の水溶液などを使用することもできる。溶液中における白金錯体及び合金化用金属錯体の濃度は、特に制限されるものではないが、金属量で、それぞれ、通常10〜150g/L、好ましくは50〜100g/Lの範囲内とすることができる。また、白金錯体と合金化用金属錯体を併用する場合、白金が、溶液中の全金属量の20モル%以上、特に40モル%以上を占めるようにすることが望ましい。
【0019】
また、錯体溶液中には、白金錯体及び/又は合金化用金属錯体の調製の際に用いた過剰の未反応の有機カルボン酸が残存していてもよいが、その量があまりにも多いと、還元処理時に白金又は白金合金粒子の凝集が起こりやすくなるので、錯体溶液中の遊離の有機カルボン酸の濃度は、100g/L以下、特に1g/L以下に抑えることが望ましい。
【0020】
さらに、錯体溶液には、必要に応じて、担体に含浸させる時の担体のヌレをよくするために、界面活性剤を含ませることができる。該界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、エチレングリコール、N、N-ジメチルエタノールアミン等の非イオン界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩のような陽イオン界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩のような陰イオン界面活性剤:アルキルベンジルスルホン酸アンモニウム塩のような両性界面活性剤などを挙げることができる。
【0021】
一方、触媒担体としては、特に制限されるものではなく、従来から触媒の担体として使用されているものが同様に使用可能であり、特に、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレンなどの導電性カーボン担体が好適である。
【0022】
これらの担体に上記錯体溶液を含浸させた後、還元処理及び適宜加熱処理することにより、目的とする白金又は白金合金担持触媒を取得することができる。
【0023】
具体的には、例えば、ロータリーエバポレーターや混錬機などの中で担体に錯体溶液を添加し十分に混合した後、乾燥し、得られる白金錯体又は合金化用金属錯体が付着した担体を、次いで、還元性ガス(例えば、水素ガス、一酸化炭素ガスなど)又は不活性ガス(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなど)雰囲気中で、約200〜約800℃、好ましくは約300〜約400℃の温度で加熱処理し、白金錯体又は合金化用金属錯体を金属に還元すると同時に合金化する。これによって、担体上に微細で粒子サイズが揃った白金又は白金合金粒子が高度に分散・担持された燃料電池用として適した触媒を得ることができる。
【0024】
また、例えば、錯体溶液中に担体を分散させ、分散溶液を約40〜約100℃の温度に加熱し、還元剤、例えば、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、エーテル類、還元性ガス(例えば水素)、ヒドラジンなどを導入して、白金錯体又は合金化用金属錯体を金属に還元すると同時に担体上に析出させ、白金又は白金と合金化用金属が付着した担体を得、白金と合金化用金属が付着した担体の場合には、それを不活性ガス(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなど)雰囲気中で、約200〜約800℃、好ましくは約300〜約600℃の温度で加熱処理することによって合金化する。これによって、また、担体上に微細で粒子サイズが揃った白金又は白金合金粒子が高度に分散
・担持された燃料電池用として適した触媒を得ることができる。
【0025】
得られる触媒の白金又は白金合金の担持量は、厳密に制限されるものではないが、一般には5〜80質量%、特に20〜60質量%の範囲内が適当である。白金又は白金合金の担持量は、例えば、錯体溶液の濃度、白金錯体又は合金化用金属錯体の含浸量などにより調整することができる。
【0026】
また、担持された白金合金における白金量は、全金属量の20モル%以上、特に40モル%以上であることが望ましい。合金中の白金量が20モル%より少ないと、触媒から合金化金属成分が溶出し、触媒の安定性及び触媒性能が低下する可能性がある。
【0027】
以上述べた本発明の方法により製造される触媒は、後述の実施例から明らかなように、少なくとも100m/gという非常に高い金属表面積を有しており、燃料電池用触媒として、大きな酸素還元電流値を示す。
【0028】
しかも、本発明で使用する白金錯体及び合金化用金属錯体は容易に金属に還元分解され、合金化することができるので、本発明によれば、高い一酸化炭素耐性を有する白金合金担持触媒を簡単に製造することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
製造例1
白金換算で20gのシュウ酸白金を130mLの純水に溶解させ、得られた水溶液に非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレントリデシルエーテル)を0.2g加え、さらに純水で濃度を調整し、白金濃度が100g/Lである白金担持用溶液を得た。
【0031】
製造例2
白金換算で20gのマレイン酸白金を130mLの純水に溶解させ、製造例1と同様にして溶液中の白金濃度が100g/Lである白金担持用溶液を得た。
【0032】
製造例3
白金換算で20gのシュウ酸白金及びイリジウム換算で19.7gの酢酸イリジウムを130mLの純水に溶解させ、得られた水溶液に非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレントリデシルエーテル)を0.2g加え、さらに溶液中の白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が50mol%である白金−イリジウム合金担持用溶液を得た。
【0033】
製造例4
白金換算で20gのシュウ酸白金及びルテニウム換算で10gのシュウ酸ルテニウムを130mLの純水に溶解させ、製造例3と同様にして溶液中の白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が50mol%である白金−ルテニウム合金担持用溶液を得た。
【0034】
製造例5
白金換算で20gのシュウ酸白金及びパラジウム換算で10.9gのシュウ酸パラジウムを130mLの純水に溶解させ、製造例3と同様にして溶液中の白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が50mol%である白金−パラジウム合金担持用溶液を得た。
【0035】
製造例6
白金換算で20gのシュウ酸白金及びロジウム換算で10.5gのシュウ酸ロジウムを130mLの純水に溶解させ、製造例3と同様にして溶液中の白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が50mol%である白金−ロジウム合金担持用溶液を得た。
【0036】
製造例7
白金換算で20gのシュウ酸白金及び鉄換算で5.7gのシュウ酸鉄を130mLの純水に溶解させ、製造例3と同様にして溶液中の白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が50mol%である白金鉄合金担持用溶液を得た。
【0037】
製造例8
白金換算で20gのシュウ酸白金及びコバルト換算で6gのシュウ酸コバルトを130mLの純水に溶解させ、製造例3と同様にして溶液中の白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が50mol%である白金−コバルト合金担持用溶液を得た。
【0038】
製造例9
白金換算で20gのシュウ酸白金及びニッケル換算で6gのシュウ酸ニッケルを130mLの純水に溶解させ、製造例3と同様にして溶液中の白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が50mol%である白金−ニッケル合金担持用溶液を得た。
【0039】
製造例10
白金換算で20gのシュウ酸白金、パラジウム換算で5.5gのシュウ酸パラジウム及び金換算で10.1gのシュウ酸金を130mLの純水に溶解し、製造例3と同様にして溶液中の白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が50mol%、パラジウム及び金の溶液中の全金属に対する各濃度が25mol%である白金−パラジウム−金合金担持用溶液を得た。
【0040】
製造例11
白金換算で20gのシュウ酸白金、パラジウム換算で5.5gのシュウ酸パラジウム及び銀換算で5.1gのシュウ酸銀を130mLの純水に溶解し、製造例3と同様にして溶液中の白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が50mol%、パラジウム及び銀の溶液中の全金属に対する各濃度が25mol%である白金−パラジウム−銀合金担持用溶液を得た。
【0041】
製造例12
白金換算で20gのシュウ酸白金及びコバルト換算で9.1gのシュウ酸コバルトを130mLの純水に溶解し、製造例3と同様にして溶液中の白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が40mol%である白金−コバルト合金担持用溶液を得た。
【0042】
製造例13
白金換算で20gの白金を含むシュウ酸白金及びコバルト換算で2gのシュウ酸コバルトを130mLの純水に溶解し、製造例3と同様にして溶液中の白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が80mol%である白金−コバルト合金担持用溶液を得た。
【0043】
比較製造例1
白金換算で20gの塩化白金酸を秤取し、純水130gに溶解させ、さらに純水で濃度を調整し、白金濃度が100g/Lである白金担持用溶液を得た。
【0044】
比較製造例2
ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液に純水を加えて濃度を調整し、白金濃度が100g/Lである白金担持用溶液を得た。
【0045】
比較製造例3
比較製造例1で得た白金担持溶液を200mL採取し、ルテニウム換算で10gの塩化ルテニウムを加え、常温で攪拌して溶解させ、白金−ルテニウム合金担持用溶液を得た。
【0046】
比較製造例4
白金換算で20gのシュウ酸白金及びコバルト換算で57.2gのシュウ酸コバルトを130mLの純水に溶解し、製造例3と同様にして溶液中の白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が10mol%である白金−コバルト合金担持用溶液を得た。
【0047】
比較製造例5
白金換算で20gの塩化白金、パラジウム換算で5.5gの塩化パラジウム及び金換算で5.1gの塩化金酸を130mLの純水に溶解し、純水で濃度を調整し、白金濃度が100g/Lで且つ溶液中の全金属に対する白金濃度が50mol%、パラジウム及び金の溶液中の全金属に対する各濃度が25mol%である白金−パラジウム−金合金担持用溶液を得た。
【0048】
比較製造例6
製造例1で得た白金担持溶液を200mL採取し、該溶液にシュウ酸を30g投入し常温で攪拌して溶解させて白金担持用溶液を得た。該溶液中の遊離シュウ酸濃度を測定した結果150g/Lであった。
【0049】
実施例1〜13及び比較例1〜6
上記製造例1で得た白金担持用溶液を200mL採取し、カーボン担体(ケッチェンブラックEC)80gと混合した後、ロータリーエバポレーターを用いてカーボン担体表面に白金錯体を付着させ、400℃にて窒素雰囲気下で熱処理を行い、白金錯体を金属に還元して白金担持触媒−1を得た。
【0050】
製造例2〜13及び比較製造例1〜6で得た白金又は白金合金担持溶液を使用し、実施例1と同様にして白金及び白金合金担持触媒−2〜−13及び比較のための白金又は白金合金担持触媒−14〜−19を得た。
【0051】
次に、高精度全自動ガス吸着測定装置「BELSORP28SA」(日本ベル株式会社製、商品名)を使用し、上記白金又は白金合金担持触媒−1〜19の一酸化炭素の不可逆吸着量を求め、その値から触媒金属表面積(m/g−Pt)を算出した。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
上記の白金担持触媒−1、−8及び−14を用いて電極を作製し、硫酸溶液中にて電気化学測定を行い、0.85V(RHE)におけるPt単位重量あたりの酸素還元電流値を求めた。その結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
さらに白金合金担持触媒−4又は白金合金担持触媒−16を用いて作製したアノード極と、カーボンに白金を40wt%担持させた白金触媒を用いて作製したカソード極と固体高分子電解質膜「Nafion112」(デュポン社製)とを接合して電極接合体を作製
した。この電極接合体を使用して電池を組み立て、アノード極用ガスとして、水素ガス又は100ppmの一酸化炭素を含む水素ガスを使用した場合の燃料電池発電特性の評価を行った。それぞれのアノード電極用ガス使用時の電圧を求め、一酸化炭素ガスを含んだ条件での0.5A・cm−2負荷時における電圧低下率を算出した。なお、カソード極用ガスとしては酸素を使用した。その結果を表3に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
実施例14及び比較例7
製造例1及び比較製造例1で得た白金担持溶液をそれぞれ200mL採取し、各溶液中にカーボン担体(ケッチェンブラックEC)80gを分散させた。該溶液に還元剤として80%抱水ヒドラジン水溶液10gを添加し、80℃の温度でヒドラジンを還流させつつ白金錯体を還元し、担体上に白金粒子を析出させ担持させて白金担持触媒−20及び−21を得た。得られた白金担持触媒の白金表面積を前記と同様にして測定し、その結果を表4に示す。
【0058】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸及びマレイン酸よりなる群から選ばれる有機カルボン酸と白金との塩又は錯体、ならびに場合によりさらに、該有機カルボン酸とパラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、金、銀、鉄、コバルト及びニッケルよりなる群から選ばれる金属との塩又は錯体を含有し、そして溶液中の白金の量が全金属量の20モル%以上であり且つ遊離の有機カルボン酸の濃度が100g/L以下である溶液を触媒担体に含浸させた後、還元処理及び適宜加熱処理することを特徴とする白金又は白金合金担持触媒の製造方法。

【公開番号】特開2007−324092(P2007−324092A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156359(P2006−156359)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000198709)石福金属興業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】